以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る変位測定装置1の運用時を模式的に示すものである。変位測定装置1は、測定対象物Wの所定位置の変位を測定することができる装置またはシステムであり、単に変位計と呼ぶこともできるし、測距計あるいは高さ変位計等と呼ぶこともできる。また、詳細は後述するが、測定光を走査する走査モードで使用する場合には、画像センサに変位計が追加された装置、あるいは変位計の測定箇所が可変になった装置と呼ぶこともできる。また、この実施形態では、測定対象物Wの各部の変位を測定することができるので、三次元測定システムと呼ぶこともできる。また、この実施形態では、変位測定のことを高さ測定ともいう。
図1では、測定対象物Wが搬送用ベルトコンベヤB等の搬送装置によって搬送されている場合、即ち測定対象物Wが移動している場合を示しているが、これに限らず、測定対象物Wは静止していてもよい。また、一度に測定可能な測定対象物Wの数は1つまたは複数であり、複数の測定対象物Wの所定位置の変位を一度に測定することも可能である。測定対象物Wの種類は特に限定されない。
(変位測定装置1の全体構成)
図1に示す例では、変位測定装置1は、複数のセンサヘッド2と、子機アンプ3と、親機アンプ4と、設定機器5としてのモニタ装置5Aまたはパーソナルコンピュータ5Bとを備えている。センサヘッド2は1つであってもよく、設定機器5が不要な場合の最小構成としては、1つのセンサヘッド2と1つの親機アンプ4である。子機アンプ3と親機アンプ4が統合されたシステムであってもよい。
センサヘッド2は、接続線2aを介して子機アンプ3や親機アンプ4に接続され、相互通信可能に構成されている。子機アンプ3は単独では動作することができず、親機アンプ4と接続し、親機アンプ4から電力の供給を受けて動作可能になる。また、子機アンプ3と親機アンプ4とは相互通信可能に構成されている。親機アンプ4には複数の子機アンプ3を接続することが可能になっている。本実施形態では、親機アンプ4のみにEthernetコネクタが設けられており、親機アンプ4も子機アンプ3も、このEthernetコネクタを介してモニタ装置5Aやパーソナルコンピュータ5Bと通信可能となっている。尚、子機アンプ3を省略する、または子機アンプ3の機能を親機アンプ4に取り込むことによって1つのアンプとすることもできる。また、アンプ3、4の機能をセンサヘッド2に取り込むことで、アンプ3、4を省略することもできる。さらに、上述したEthernetコネクタは、親機アンプ4のみならず、子機アンプ3に設けることとしても構わない。
外部機器6は、例えばプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)とすることができる。PLCは、搬送用ベルトコンベアB及び変位測定装置1をシーケンス制御するための制御装置であり、汎用の装置を利用することができる。なお、図1は、あくまで変位測定装置1のシステム構成を示す一例である。本発明はこれに限られず、親機アンプ4や子機アンプ3は、IO入出力を備え、直接、外部装置6に接続されていてもよい。この場合、外部装置6からトリガ信号や結果出力信号などの物理的な信号が、外部装置6との間でやりとりされる。また、親機アンプ4にアナログ出力が設けられていてもよい。また、親機アンプ4及び子機アンプ3は、上述したEthernetコネクタを介して、外部機器6と通信してもよい。この場合、Ethernet/IPやPROFINET等、各種公知の通信プロトコルを利用して通信してもよい。
また、変位測定装置1は、その運用時において、外部機器6から接続線6aを介して、測定の開始タイミングを規定する測定開始トリガ信号を受信する。そして、変位測定装置1は、この測定開始トリガ信号に基づいて変位の測定や良否判定を行う。その結果は、信号線6aを介して外部機器6へ送信されるように構成することができる。
変位測定装置1の運用時には、変位測定装置1と外部機器6との間で、接続線6aを介して測定開始トリガ信号の入力と結果の出力が繰り返し行われる。なお、測定開始トリガ信号の入力や結果の出力は、上述したように、変位測定装置1と外部機器6との間の接続線6aを介して行ってもよいし、それ以外の図示しない通信線を介して行ってもよい。例えば、測定対象物Wの到着を検知するためのセンサ(図示せず)と変位測定装置1とを直接的に接続し、そのセンサから変位測定装置1へ測定開始トリガ信号を入力するようにしてもよい。変位測定装置1は、内部で生成する内部トリガによって動作するように構成することもできる。このように、変位測定装置1は、定期的に内部トリガを発行するモードを有していてもよい。
モニタ装置5Aとパーソナルコンピュータ5Bのうち、一方が親機アンプ4に対して接続線5aを介して接続され、相互通信可能に構成されているが、モニタ装置5Aとパーソナルコンピュータ5Bの両方が親機アンプ4に接続されていてもよい。モニタ装置5A及びパーソナルコンピュータ5Bは、変位測定装置1の各種設定や操作を行う操作装置であるとともに、センサヘッド2で撮像された画像や処理後の画像、各種測定値、測定結果、判定結果等を表示する表示装置でもある。モニタ装置5Aは専用品であるが、パーソナルコンピュータ5Bは汎用品を使用することができる。なお、モニタ装置5Aとして、いわゆるプログラマブル表示器などの汎用品を使用してもよいことは言うまでもない。
センサヘッド2と子機アンプ3または親機アンプ4との間の通信、親機アンプ4とモニタ装置5Aまたはパーソナルコンピュータ5Bとの間の通信、親機アンプ4と外部機器6との間の通信は、有線によるものであってもよいし、無線によるものであってもよい。親機アンプ4の通信ユニットは、特に限定されるものではないが、例えば、EtherNet/IP、PROFINET、CC-Link、DeviceNet、EtherCAT、PROFIBUS、BCD、RS-232C等を挙げることができる。
(モニタ装置5A及びパーソナルコンピュータ5B)
モニタ装置5A及びパーソナルコンピュータ5Bは、それぞれ、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示デバイスで構成された表示部8を備えている。表示部8には、後述するように、センサヘッド2で撮像された画像や、子機アンプ3や親機アンプ4で生成された画像、各種インターフェース等を表示することができるようになっている。
モニタ装置5Aは、タッチパネル式の入力部9(図7に示す)を備えており、使用者が表示部8上のどこにタッチしたか、その入力操作を受け付けることができるように構成されている。パーソナルコンピュータ5Bは、キーボードやマウス、タッチパッド、タッチパネル等からなる入力部9(図7に示す)を備えており、モニタ装置5Aと同様に入力操作を受け付けることができるように構成されている。タッチ操作は、例えばペンによる操作や指による操作であってもよい。
(センサヘッド2の構成)
図3や図4に示すように、センサヘッド2は、測定光を測定対象物Wに照射するための投光モジュール10と、角度検知センサ22と、測定対象物に一様な照明光を照射するための照明部30と、測定対象物Wから反射した測定光を受光する変位測定用受光部(第2受光部)40と、ハウジング50とを備えている。投光モジュール10、角度検知センサ22、照明部30及び受光部40は、ハウジング50の内部に一体的に収容されている。図2〜図5ではセンサヘッド2の上下方向を規定しているが、これは説明の便宜を図るためだけであり、運用時のセンサヘッド2の姿勢を限定するものではなく、どのような向き及び姿勢でセンサヘッド2を使用してもよい。
図7に示すように、センサヘッド2はアンプ通信部20とトリガ検知部21とを備えている。アンプ通信部20は、子機アンプ3や親機アンプ4と通信する部分であり、センサヘッド2と子機アンプ3や親機アンプ4との間で信号の送受を行っている。トリガ検知部21は、子機アンプ3や親機アンプ4から出力されたトリガ信号を検知する部分であり、このトリガ信号を検知すると変位の測定を行うように、センサヘッド2の各部に信号が出力される。なお、本実施形態では、センサヘッド2は、子機アンプ3や親機アンプ4から出力されたトリガ信号を検知する構成としているが、例えば後述するラインモードにおいて、センサヘッド2において自動的にトリガ信号を生成してもよい。この場合、トリガ信号を生成するトリガ信号生成部を有していてもよい。
(ハウジング50の構成)
図2〜図3に示すように、ハウジング50は全体として細長い形状とされている。投光モジュール10は、ハウジング50の内部において長手方向一方側に偏位した状態で該ハウジング50に固定されている。ハウジング50の長手方向一方側とは図4の右側である。照明部30及び変位測定用受光部40は、ハウジング50の内部において長手方向他方側に偏位した状態で該ハウジング50に固定されている。ハウジング50の長手方向他方側とは図4の左側である。
図2に示すように、ハウジング50の長手方向に延びる端壁部51には、投光モジュール10から照射された測定光が出射する測定光投光窓51aと、測定対象物Wから反射した照明光が入射する受光窓51bとが設けられている。測定光投光窓51aと受光窓51bは透明な部材で覆われている。尚、受光窓51bからは照明部30による照明光が照射される。また、ここでいう「透明な部材」は、バンドパスフィルタであってもよい。
(偏光フィルタ)
図6に示すように、ハウジング50は、受光窓51bのうち、集光光学系41と対向する第1領域と、発光ダイオード31〜34と対向する第2領域とに、それぞれ偏光成分が90度異なるように偏光フィルタ52aが取付可能に構成されている。図6に示す例では、偏光フィルタ52aを有する偏光フィルタアタッチメント52がハウジング50の端壁部51を覆うように取り付けられる例である。偏光フィルタアタッチメント52は、爪嵌合による固定方法やネジのような締結部材による固定方法等、ハウジング50に対して着脱自在な方法で取り付けられる。偏光フィルタアタッチメント52は、周囲の環境や測定対象物Wの表面状態等に応じて使用することができ、特にハレーションが起こる場合に偏光フィルタアタッチメント52を使用することで、ハレーションを除去することができる。
尚、上述した第1領域に取り付けられる受光窓51b側の偏光フィルタ52aの偏光成分は、測定光の偏光成分と平行になるようにすることができる。これにより、測定光の光量低下量を最小限に抑えることができる。具体的には、測定光は偏向方向が揃っているため、受光窓51bのうち上述した第1領域に、測定光の偏光方向と平行な向きに偏光フィルタを入れる。
(投光モジュール10の構成)
図3に示すように、投光モジュール10は、投光部10aと、走査部としてのMEMSミラー15と、これらが取り付けられるモジュール化部材10bとを有している。投光部10aは、測定光源としてのレーザー出力器12と、該レーザー出力器12からの光が入射するコリメートレンズ13及びシリンドリカルレンズ14とを有しており、図3等に示す第1方向に延びる帯状の測定光を生成して測定対象物Wに照射する部分である。測定光源はレーザー出力器12以外の光源であってもよい。
レーザー出力器12、コリメートレンズ13及びシリンドリカルレンズ14は、モジュール化部材10bに固定されており、相互の相対的な位置関係が変化しないようになっている。コリメートレンズ13がシリンドリカルレンズ14よりもレーザー出力器12に近い側に配置されている。コリメートレンズ13は、レーザー出力器12から出射された測定光の光線を平行化するためのレンズである。正確には、レーザー出力器12から出射された測定光は、測定対象物Wの測定領域周辺に集光するが、測定領域が十分遠いのでハウジング50内の光線は平行光に近い状態となっている。
シリンドリカルレンズ14は、第1方向に長軸を有するように配置されており、コリメートレンズ13から出射された測定光が入射し、第1方向に長い帯状の測定光を生成するためのレンズである。従って、レーザー出力器12から出力された測定光はコリメートレンズ13を通過することによって平行化されてからシリンドリカルレンズ14に入射して第1方向に長い帯状の測定光になる。シリンドリカルレンズ14により一方向は光線が集光し、その後拡散するが、もう一方の方向はレンズへの入射および透過の際通過する面が平行になっているため、シリンドリカルレンズ14以前にコリメートレンズ13で調整されたスポットの集光位置にはほとんど影響を与えない。
コリメートレンズ13及びシリンドリカルレンズ14は、測定光の光軸上において、MEMSミラー15のミラー面上又はその近傍位置に、第1方向に測定光を集光する焦点位置を有している。この焦点位置は、厳密にミラー面上になくてもよく、ミラー面から多少ずれていてもよい。ミラー面上又はその近傍位置に焦点があることで、MEMSミラー15が小さくても測定光を第2方向に走査することが可能になるので、センサヘッド2の小型化を実現できる。
また、コリメートレンズ13及びシリンドリカルレンズ14は、測定光がMEMSミラー15により反射された後に、測定対象物Wの測定領域に向かうにしたがって第1方向に拡散する帯状の測定光を生成するように構成されている。さらに、コリメートレンズ13及びシリンドリカルレンズ14は、測定対象物Wの測定領域上に、第2方向に測定光を集光する焦点位置を有している。
すなわち、三角測距では測定光が測定対象物Wに照射され、反射した光を受光系で結像し結像する位置で距離を測定している。結像する位置は、測定光の光量分布からピークや重心などを算出して決定している。したがって、光量分布の幅が狭い(集光された)測定光が測定対象物Wに当たる方が精度上有利になるので、光学系を上述したように設計している。
コリメートレンズ13及びシリンドリカルレンズ14は、投光レンズの一例である。投光レンズの構成はこれに限られるものではない。
図7に示すように、センサヘッド2はレーザー制御部12aを備えている。レーザー制御部12aは、レーザー出力器12からのレーザー光の出力/停止制御を実行する部分である。その具体的な制御については後述する。
(投光モジュール10の角度調整機構)
投光モジュール10は、図4に示す第1投光角度状態から、図8に示す第2投光角度状態まで取付角度を変化させることができる角度調整機構を介してハウジング50に取り付けられている。
すなわち、図9(図8に対応)や図10(図4に対応)に示すように投光モジュール10とは別体とされたベース部材53を備えており、このベース部材53がハウジング50の内側面に対して締結部材(図示せず)によって固定されるようになっている。そして、投光モジュール10はベース部材53に対して測定光の出射角度を調整可能に取り付けられている。尚、図4及び図8にはベース部材53が示されていないが、ベース部材53は、図4及び図8に示すハウジング50の反対側の内側面に設けられているためである。ベース部材53がいずれの内側面に固定されていてもよい。
ベース部材53には、3つの調整孔53aが形成されているが、調整孔53aの数はこれに限られるものではない。調整孔53aは、投光モジュール10の回動中心線(第1方向と平行)54を中心とした円周方向に互いに間隔をあけて設けられるとともに、当該円周方向に長い長孔で構成されている。投光モジュール10における調整孔53aと一致する部分には、例えばネジ等の締結部材56(仮想線で示す)が螺合するネジ孔55が形成されている。このネジ孔55に締結部材56を螺合させて締め込んでいくと、締結部材56の頭部がベース部材53における調整孔53aの周縁部を締結して投光モジュール10をベース部材53に対して固定することができる。
このように、投光モジュール10をベース部材53とは別体にしているので、投光モジュール10をベース部材53に対して動かすことにより、投光モジュール10からの測定光の出射角度を調整することが可能になる。測定光の出射角度を調整することで、変位を検出可能な距離、すなわち距離レンジを変えることができる。これにより、投光モジュール10を作り替えることなく、投光モジュール10の共通化を図りながら、距離レンジの異なった変位測定装置1を低コストで得ることができる。
(絞り部材16の構成)
図4、図5、図12に示す絞り部材16は、MEMSミラー15の走査ミラーにより走査される測定光の第1方向端部の光を絞るための部材である。図3では図示を省略しているが、実際には図4、図5、図12に示すように、コリメートレンズ13とシリンドリカルレンズ14との間に配設されている。
図11に示すように、絞り部材16は、測定光の第1方向端部(一端部)の光が通過するスリット16aと、測定光の第1方向端部以外の光が通過する開口部16bとを含んでいる。スリット16aは第1方向に長く延びるように形成されている。開口部16bの第1方向と直交する方向の寸法は、スリット16aの幅方向(第1方向と直交する方向)の寸法よりも長く設定されている。これにより、測定光の第1方向端部の光が、それ以外の光に比べてより絞られることになる。スリット16aと開口部16bとは第1方向に連続して1つの貫通孔を形成している。従って、絞り部材16を通過した測定光は第1方向について途切れることはない。
図12では測定光の光学系を模式的に示しており、測定光の第1方向端部の光を破線で示し、それ以外の光を実線で表している。測定光の第1方向端部の光は、略平行な光線のまま絞り部材16のスリット16aを通過して絞られた後、シリンドリカルレンズ14を透過し、MEMSミラー15に入射してミラー面で反射した後に角度検知センサ22の受光素子22aに入射する。測定光の第1方向端部の光以外の光は、絞り部材16の開口部16bを通過した後、シリンドリカルレンズ14を透過し、MEMSミラー15に入射してミラー面で反射する。
つまり、この実施形態では、走査ミラーの角度を検出するための光として、測定光の一部を利用することができるので、走査ミラーの角度検出専用の光源は不要になる。これにより、変位測定装置1の小型化及び低コスト化が可能になる。また、測定光と、走査ミラーの角度を検出するための光とが共通の光源から照射された光であることから、光源を別々にする場合に比べて精度を高めることができる。
図13に示す別形態のように、シリンドリカルレンズ14とMEMSミラー15との間に絞り部材16を配設してもよく、図12に示す場合と同様な作用効果を奏することができる。
このように測定光の一部を角度検出用の光として利用する場合には、測定光の第2方向の焦点が測定対象物Wの照射面にあるので、角度検知センサ22の受光素子22aには焦点がないことがある。このため、図14の(A)に示すように、角度検知センサ22の受光素子22aにおける受光量のピークが複数でき、その結果、ピーク位置を特定できなくなることがある。絞り部材16によって測定光の第1方向端部の光を絞ることで、角度検知センサ22の受光素子22aで受光する受光量分布を図14の(B)に示すように整形することができ、これにより、受光量のピーク位置が明確になるので、測定光の走査ミラーからの出射角度が正確に得られる。
また、測定光の第1方向端部の光以外の光は、絞り部材16の開口部16bを通過することで、特定の大きさのスポットになる。絞り部材16の開口部16bの大きさは大きすぎると測定領域内全域でのスポット径を小さくできず、また、小さすぎると回折で集光部のスポット径を小さくできなくなり、ひいては測定精度が悪くなる。また、絞り部材16の開口部16bが小さすぎるとレーザー出力器12で発光した光をほとんど遮ることになり効率よく外部に取り出せない。これらの条件を満たすように、絞り部材16の開口部16bの大きさが設定されている。
(MEMSミラー15の構成)
MEMSミラー15は、投光部10aのシリンドリカルレンズ14から出射された測定光を、第1方向と交差する第2方向(図3等に示す)に走査することが可能に構成された部材である。この実施形態では、第2方向が第1方向に対して直交しているが、これに限られるものではなく、第1方向と第2方向との交差角度は任意に設定することができる。また、図1において第1方向を搬送用ベルトコンベアBの幅方向とし、第2方向を搬送用ベルトコンベアBによる搬送方向とすることもできるし、その逆にすることもできる。
MEMSミラー15は従来から周知のものであるため、詳細な説明は省略するが、測定光を第2方向に走査可能な走査ミラーと、この走査ミラーを動かす駆動部とを有している。走査ミラーがシリンドリカルレンズ14の光出射面と対向するように、MEMSミラー15がモジュール化部材10bに固定されている。従って、ミラー面は、シリンドリカルレンズ14から出射された測定光の光軸上に設けられることになり、第1方向と平行な軸周りに回動する。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsのことであり、いわゆる微小電気機械システムのことである。この微小電気機械システムを用いることで、小型化を図りながら、走査ミラーの角度、即ち測定光の反射角度(測定光の照射角度)を高速でかつ小ピッチで変更することができるように構成されている。なお、MEMSミラー15は、別の言い方をすれば、1枚のミラーを1軸で回転可能なものと表現することもできる。また、2軸からなるMEMSミラーも考えられ、この場合、シリンドリカルレンズ14を使わなくてもよい。すなわち、2軸のうちの一方でレーザー走査を行うとともに、他方でレーザーを広げる(シリンドリカルレンズ14と同等の機能をもたせる)ようにしてもよい。
モジュール化部材10bは、MEMSミラー15で反射された測定光を外部に照射させることができるように透光部を有している。このモジュール化部材10bの透光部がハウジング5の測定光投光窓51aに向くようになっている。従って、MEMSミラー15で反射された測定光は、モジュール化部材10bの透光部及びハウジング5の測定光投光窓51aを通って測定対象物Wに照射されることになる。
図7に示すように、MEMSミラー15はミラー制御部15aを備えている。ミラー制御部15aは、MEMSミラー15の動作、即ち走査ミラーの角度調整、変更を実行する部分である。MEMSミラー15の具体的な制御については後述する。
走査部は、MEMSミラー15以外にも、ガルバノミラー、ステッピングモーターで回動するミラー等で構成することができ、測定光を走査可能なデバイスであればよい。
(変位測定用受光部40の構成)
図3に示すように、変位測定用受光部40は、測定対象物Wから反射した測定光を受光し、変位測定用の受光量分布を出力するとともに、測定対象物Wから反射した照明光(照明部30から照射された光)を受光し、輝度測定用の受光量分布を出力する2次元の受光素子からなるイメージセンサで構成することができる。この実施形態では、集光光学系41を有しており、測定光及び照明光は集光系光学系41を通して変位測定用受光部40の受光素子に達することになる。変位測定用受光部40の受光素子は特に限定されるものではないが、集光系光学系41を通して得られた光の強度を電気信号に変換するCCD(charge-coupled device)イメージセンサやCMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサ等である。集光系光学系41は、外部から入射する光を集光するための光学系であり、典型的には一以上の光学レンズを有している。集光系光学系41の光軸と、投光部10aの光軸とは交差する関係となっている。
この実施形態では、1つの変位測定用受光部40で変位測定用の受光量分布と輝度測定用の受光量分布の両方を出力可能に構成しているが、これに限られるものではない。例えば図15Aに示すように、変位測定用の受光部40Aと輝度測定用の受光部40Bをハウジング50の内部に配設し、さらにハーフミラーMをハウジング50の内部に配設し、ハウジング5内に入射した光(測定光及び照明光)をハーフミラーMによって分光して変位測定用の受光部40A及び輝度測定用の受光部40Bに入射させるようにしてもよい。測定光及び照明光は異なるタイミングで照射されるので、このような構成が可能になる。
また、図15Bに示すように、変位測定用の受光部40Aと輝度測定用の受光部40Bをハウジング50の内部に配設し、各々の光入射方向を、測定対象物Wに向く方向としてもよい。この場合、測定対象物Wで反射した測定光及び照明光がそれぞれ変位測定用の受光部40Aと輝度測定用の受光部40Bに入射することになる。
図7に示すように、変位測定用受光部40は撮像制御部40aを備えている。撮像制御部40aは、変位測定用受光部40による受光制御を実行する部分である。撮像制御部40aによる具体的な制御については後述する。
(照明部30の構成)
照明部30は、第1方向または第2方向に互いに離れて配設された複数の発光ダイオードを有しており、測定対象物Wに対して異なる方向から光を照射可能に構成されている。具体的には、図3や図5に示すように、照明部30は、第1発光ダイオード31、第2発光ダイオード32、第3発光ダイオード33及び第4発光ダイオード34と、これら発光ダイオード31〜34が取り付けられる板状の取付部材30aとを有している。取付部材30aは、ハウジング50の端壁部51に沿うようにかつ受光窓51bに臨むように配設されている。取付部材30aの中央部には、該取付部材30aを上下方向に貫通する貫通孔30bが形成されている。この貫通孔30bと一致するように、集光系光学系41の入射側が配置されており、測定対象物Wで反射した測定光及び照明光は取付部材30aの貫通孔30bを通って集光系光学系41に入射するようになっている。
第1〜第4発光ダイオード31〜34は、取付部材30aの貫通孔30bを囲むように配置され、下方に光を照射する姿勢となっている。したがって、第1〜第4発光ダイオード31〜34の光照射方向と、測定光の光軸とは交差する関係になる。
第1発光ダイオード31と第2発光ダイオード32とは互いに第1方向に離れており、第1発光ダイオード31と第3発光ダイオード33とは互いに第2方向に離れている。また、第2発光ダイオード32と第4発光ダイオード34とは互いに第2方向に離れており、第3発光ダイオード33と第4発光ダイオード34とは互いに第1方向に離れている。これにより、集光系光学系41の光軸の周囲の4方向から測定対象物Wに対して照明光を照射することが可能になる。
図7に示すように、照明部30は照明制御部35を備えている。照明制御部35は、第1〜第4発光ダイオード31〜34の点灯/消灯制御や明るさ調整を実行する部分である。第1〜第4発光ダイオード31〜34の具体的な制御については後述する。
この実施形態では、照明部30がセンサヘッド2に設けられていて変位測定用受光部40と一体化されているが、これに限らず、照明部30をセンサヘッド2と別体としてもよい。
また、発光ダイオードの数は4つに限られるものではなく、任意の数にすることができる。
(角度検知センサ22の構成)
図5に示すように、角度検知センサ22は、測定対象物Wの測定位置を含む領域に測定光が照射されたときのMEMSミラー15による測定光の走査角度を検出するためのセンサである。図12に示すように、角度検知センサ22は、MEMSミラー15の走査ミラーにより走査される測定光の第1方向端部の光が受光可能な位置に設けられており、第2方向に並んだ複数の画素を有する1次元の受光素子(第1受光部)22aと、演算処理を行う角度検出部22bとを有している。測定光の第1方向端部の光を受光素子22aに入射させると、第2方向に並んだ複数の画素のうち、いずれかの画素及びその画素近傍の画素に該光が当たることになり、画素間で受光量に明確な差が生じることになる。第2方向に並んだ複数の画素のうち、受光量が最も高くなる画素と、測定光の走査ミラーからの出射角度とを予め得ておけば、角度検出部22bが受光素子22aから出力された受光量分布に基づいて測定光の走査ミラーからの出射角度を検出することができる。この出射角度は、出射角度情報であり、出射角度情報は、出射角度そのものであってもよいし、出射角度を導き出すことができる各値等であってもよい。測定光の走査ミラーからの出射角度は、走査ミラーの照射角度を検出するということもできるので、角度検出部22bは走査ミラーの照射角度を検出する部分でもある。受光素子22aは、1次元のCMOSセンサであってもよいし、1次元の光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)であってもよい。さらに、本実施形態では、走査部としてMEMSミラー15を採用しているが、走査部としてガルバノミラーを採用した場合には、角度検知センサ22は、ガルバノミラーからの(リアルタイム)角度フィードバックを検出するセンサを利用することができる。
(設定情報記憶部23の構成)
図7に示すように、センサヘッド2には、各種メモリ等で構成された設定情報記憶部23が設けられている。設定情報記憶部23には、子機アンプ3や親機アンプ4から送信された様々な設定情報を記憶することができるようになっている。設定情報記憶部23に記憶される具体的な内容については後述する。設定情報記憶部23は、子機アンプ3や親機アンプ4に搭載されていてもよいし、センサヘッド2と子機アンプ3の両方に搭載されていてもよい。
(測定原理の説明)
ここでセンサヘッド2により得られた各情報に基づいて測定対象物Wの所定位置の変位を測定する原理について説明する。基本的には三角測距の原理を用いており、図16に模式的に示している。図16Aは、本実施形態で採用している方式であり、図16Bは、変形例となる方式であるが、いずれを採用しても構わない。図16A及び図16Bにおいて、投光部10aから照射された測定光はMEMSミラー15の動作によって第2方向に走査されて測定対象物Wに照射される。符号W1は、測定対象物Wの相対的に高い面を示し、符号W2は、測定対象物Wの相対的に低い面を示している。以下、図16Aの測定原理と、図16Bの測定原理(変形例)について詳述する。
図16Aでは、測定対象物Wの高さをZ、投光軸角度をθ2とする。投光軸角度θ2は、角度検知センサ22により検知可能である。三角測距の原理に従えば、変位測定用受光部40における第2方向(Y方向)の位置y(Y座標)と、投光軸角度θ2が求まれば、Zは一意に特定することができる。そこで、y、θ2、Zの各値を実験によって様々なパターンで計測し、(y,θ2,Z)を一組とするデータセットを、テーブルとして変位測定装置1に予め記憶させておくことができる。変位測定装置1の運用時には、検出されたyとθ2から、テーブルを参照してZを得ることができる。また、テーブルにない値は、補間処理によって得ることができる。さらに、変位測定装置1に予めテーブルを記憶させておかなくても、(y,θ2)からZを求めるための近似式を用意しておき、変位測定装置1の運用時には、その近似式を使ってZを算出するようにしてもよい。
ここで、図16Aでは、第2方向(Y方向)における測定位置(Y座標)と投光軸角度θ2とに基づいて高さZを求めるようにしているが、本発明はこれに留まらず、第1方向(図16Aでは紙面奥行方向)及び第2方向における測定位置(X座標及びY座標)と投光軸角度θ2とに基づいて高さZを求めるようにしてもよい。これは、本来、第1方向に真っ直ぐ延びた測定光(レーザー)と、変位測定用受光部40の受光素子22aの並び方向(図16Aでは紙面奥行方向)とは、完全に平行であることが望ましいところ、製造時の組み付けズレによって、これらが非平行となる場合がある。また、光学バラつきによって、レーザー自体が第1方向に沿って湾曲した形状になる場合もある。このような場合に、第2方向のY座標だけで測定位置を決めると、正しい変位測定が困難になる。そこで、第1方向(X方向)における測定位置(X座標)も加味した上で、高さZを求めてもよい。つまり、x、y、θ2、Zの各値を実験によって様々なパターンで計測し、(x,y,θ2,Z)を一組とするデータセットを、テーブルとして変位測定装置1に予め記憶させておく。そして、運用時には、(x,y,θ2)という3つのパラメータに基づいて、高さZを求めるようにしてもよい。これにより、より高精度な変位測定が可能になる。なお、上述したように、テーブルを記憶する方式に留まらず、運用時に近似式を使ってZを算出するようにしても構わない。
次に図16Bの変形例について説明する。図16Bでは、測定対象物Wの高さをZ、投受光間距離をA(図中の矢印参照)、受光軸角度をθ1、投光軸角度をθ2とする。受光軸角度θ1は変位測定用受光部40における測定光の受光位置により検出可能であり、また、投光軸角度θ2は角度検知センサ22により検出可能である。Aは既知であり、変位測定装置1に記憶させておく。Zは、特定の計算式により、A、θ1及びθ2を用いて算出することが可能である。特定の計算式について一例を挙げる。まず、図16の右方向を+X方向、図16の上方向を+Y方向とする、2次元座標平面を考え、その座標平面の原点を、MEMSミラー15の回転軸の位置とする。すると、図16において角度θ2で示す投光軸の直線は、y=tanθ2(直線の傾き)×xという1次方程式で表される。また、図16において角度θ1で示す受光軸の直線は、y=tanθ1(直線の傾き)×x+Atanθ1(切片)という1次方程式で表される。Zは、これら両直線の交点のy座標に相当するから、連立1次方程式を解いてy座標を求めると、−{Atanθ1tanθ2/(tanθ2−tanθ1)}で表される。すなわち、MEMSミラー15の回転軸の位置から符号W2までの距離は、このy座標の絶対値である。そして、MEMSミラー15の回転軸の位置からハウジング50までの距離は既知であるので、その分を差し引くと、Zを求めることができる。なお、このような計算式で算出してもよいし、Z、θ1、θ2の各値を実験によって様々なパターンで計測し、テーブルとして変位測定装置1に記憶させておき、変位測定装置1の運用時には、検出されたθ1、θ2からテーブルを参照してZを得ることもできる。テーブルに無い値は補間処理によって得ることができる。テーブルを用いることなく、都度、計算するようにしてもよい。なお、図16Bに示す受光軸角度をθ1は、受光量分布の第2方向におけるピーク位置と一対一の対応関係にある。
(アンプの構成)
図7は子機アンプ3の構成について示している。以下の説明では、子機アンプ3が各機能を実行するものとして説明するが、これら機能の全てを子機アンプ3が備えていてもよいし、一部または全部を親機アンプ4が備えていてもよい。また、子機アンプ3の機能の一部または全部をセンサヘッド2が備えていてもよい。さらに、子機アンプ3の機能の一部または全部をモニタ装置5Aまたはパーソナルコンピュータ5Bが備えていてもよい。
子機アンプ3は、センサヘッド通信部300と、トリガ制御部301と、記憶部320とを備えている。センサヘッド通信部300は、センサヘッド2と通信する部分であり、子機アンプ3とセンサヘッド2との間で信号の送受を行っている。トリガ制御部301は、トリガ信号をセンサヘッド2へ送出する部分である。外部機器6から接続線6aを介して測定の開始タイミングを規定する測定開始トリガ信号が入力されると、トリガ制御部301がトリガ信号を生成して送出するように構成されている。トリガ信号は周期的なトリガ信号であってもよい。
(輝度画像生成部302の構成)
図7に示す例では、子機アンプ3は、輝度画像生成部302も備えている。輝度画像生成部302は、測定対象物Wから反射した照明光をセンサヘッド2の変位測定用受光部40が受光したときに変位測定用受光部40から出力される輝度測定用の受光量を得て、その輝度測定用の受光量分布に基づいて測定対象物の輝度画像を生成するように構成されている。輝度画像生成部302は、図15A及び図15Bに示す例の場合、輝度測定用の受光部40Bから出力される輝度測定用の受光量分布に基づいて測定対象物の輝度画像を生成する。生成される輝度画像は、変位測定用受光部40から出力される輝度値が低いほど黒く、輝度値が高いほど白くなる画像することができ、白黒画像であってもよいし、カラー画像であってもよい。なお、輝度画像の生成方法については、如何なる方法を採用しても構わない。例えば、輝度測定用の受光量分布をそのまま輝度画像として採用してもよいし、或いは、センサヘッド2における前処理として、FPN補正やHDR補正などの各種処理を行ってもよいし、子機アンプ3における前処理として、ハレーション除去を実行するための合成処理を行ってもよい。
輝度画像生成部302で生成された輝度画像は表示部8に表示される。輝度画像を表示するためのユーザーインターフェースは、図7に示すように子機アンプ3が有するUI生成部303によって生成される。表示される輝度画像は、現在の測定対象物Wを撮像した画像、いわゆるライブビュー画像である。従って、表示部8は、輝度画像生成部302により生成された輝度画像を表示可能な部分である。
表示部8は、輝度画像上のX座標が第1方向の座標となり、輝度画像上のY座標が第2方向の座標となるように、該輝度画像を表示するように構成されている。表示部8に表示された状態にある輝度画像上のX方向は横方向であり、Y方向は縦方向である。なお、本実施形態では、UI生成部303は、子機アンプ3に設けることとしているが、モニタ装置5A又はパーソナルコンピュータ5B側に設けることとしてもよい。
(設定部304の構成)
図7に示すように、子機アンプ3は、設定部304も備えている。設定部304は、表示部8に表示された輝度画像上で、変位の測定を行う測定位置の設定を受け付ける部分である。使用者が、測定対象物Wの中で変位の測定を行いたい部分があるとき、その部分を表示部8に表示された輝度画像上でタッチ操作すると、設定部304がタッチ操作された位置を例えばXY座標で特定し、特定された位置を測定位置として設定する。つまり、測定位置の入力操作が行われたことを検出して測定位置を特定する。これにより、使用者による測定位置の設定を受け付けることができる。測定位置が設定されると、測定位置を示す目印を輝度画像に重畳させて表示する。目印は測定ポイントと呼ぶこともできる。目印は、例えばドラッグ操作によって別の箇所に移動させることもできる。
1つの輝度画像上に、互いに異なる複数の測定位置を設定することができる。この場合、複数の測定位置は第1方向に互いに離れていてもよいし、第2方向に互いに離れていてもよい。第2方向の位置が異なる複数の位置を、第1測定位置及び第2測定位置として設定可能することもできる。
測定位置の設定は、MEMSミラー15による測定光の走査可能範囲内でのみ受け付けるようにすることができる。MEMSミラー15による測定光の走査可能範囲は予め記憶させておくことができ、測定光の走査可能範囲外に測定位置が設定されても変位を測定することはできないので、測定光の走査可能範囲外には測定位置を設定できないようにする。測定光の走査可能範囲外に測定位置が行われると、その操作を受け付けないようにしてもよいし、測定光の走査可能範囲外にあることを使用者に報知するようにしてもよい。
設定部304は、測定位置の変位測定を行う変位測定範囲の設定が可能に構成されている。変位測定範囲が狭いということは測定光の走査範囲が狭くなるということなので、測定範囲が狭ければ狭いほど高速で測定することができる。この測定範囲はZ座標で表すことができる。
また、設定部304は、変位測定装置1の設定時に、輝度画像上で、測定位置の補正を行う位置補正用の領域の設定を受け付けるように構成されている。すなわち、変位測定装置1による測定時間を短くするためには測定光の走査範囲を狭めればよいのであるが、実際の測定対象物Wの測定現場では、測定対象物Wの位置や姿勢が一定であるとは限らず、変動することがあり、仮に測定光の走査範囲を狭く設定していると、測定対象物Wの位置や姿勢が変動した場合に、予め設定してある走査範囲内に測定対象物Wが入らず、その結果、測定ができなかったり、精度が低下して測定に失敗してしまうおそれがある。
この実施形態では、輝度画像が表示されている状態で、使用者が図7に示す入力部9を操作して位置補正用の領域の設定を行うと、その設定が設定部304により受け付けられる。位置補正用の領域の設定方法としては、例えば枠線で囲む方法、領域を着色する方法、領域を塗りつぶす方法等がある。枠線の形状としては、矩形であってもよいし、円形であってもよい。矩形の枠線で囲む方法の場合、タッチペン等を、囲もうとする領域の上の角部から下の角部へ動かす、あるいは下の角部から上の角部へ動かす方法がある。
位置補正用の領域74は、基本的には、位置補正だけに使用される。そして、位置補正用の領域74とは別に、各種測定ツールによる測定を行う領域(測定ツール用の領域)を設定する。一又は複数の測定ツール用領域は、位置補正用の領域74に対する相対的な位置関係とともに設定される。運転時には、位置補正用の領域74によってワークの位置や姿勢が特定された後、この相対的な位置関係を用いて、測定ツール用領域の位置や姿勢も補正される。なお、ここでは、位置補正用の領域74と測定ツール用の領域を個別に設定しているが、例えば、これら領域を共有化するようにしてもよい。
また、設定部304は、測定位置を含む当該測定位置近傍の領域の指定を受け付けるように構成されていてもよい。測定位置をピンポイントで指定する以外にも、ある程度の広さを持つように、測定位置とその近傍の領域を含む領域の指定を受け付けることができる。
以上は測定光を走査する走査モード時における設定方法であり、測定光を走査しないラインモード時には、X方向に延びる測定光上の一部を指定することで、位置補正用の領域の設定を行うことができる。表示部5には、測定対象物Wの輝度画像と、測定対象物Wに照射される測定光の位置を示す測定光位置表示線とが重畳表示されるようになっている。これにより、使用者は、測定光位置表示線上で少なくとも2箇所を指定すると、指定された2箇所の間の部分が位置補正用の領域であるとして設定される。ラインモードにおいても、測定位置とその近傍の領域を含む領域の指定を受け付けることができる。測定光位置表示線は、測定光の位置を示すものなので、仮想的な測定輝線と呼ぶこともできる。
(エッジ抽出部306の構成)
図7に示すように、子機アンプ3は、エッジ抽出部306も備えている。エッジ抽出部306は、輝度画像における測定対象物Wのエッジを抽出するように構成された部分である。エッジとは、広義には測定対象物Wの輪郭、外形線と定義できる。エッジ抽出処理自体は従来から周知の手法を用いることができ、例えば、輝度画像上の各画素の画素値を取得し、輝度画像上の画素値の変化がエッジ検出用のしきい値以上となる領域が存在する場合に、その境界部分がエッジであるとして抽出する。エッジ抽出の閾値は使用者が任意に調整することができる。
具体的には、輝度画像が表示されている状態で、上述した位置補正用の領域の設定を行うと、当該領域内でエッジ抽出処理が実行される。測定対象物Wの輪郭、外形線であると推定される部位がエッジとして抽出される。エッジ抽出部306で抽出されたエッジは輝度画像に重畳表示されるようになっている。エッジ抽出部306は、測定光を走査する走査モード(スキャンモード)時には、輝度画像上でのエッジを抽出し、測定光を走査しないラインモード時には、高さプロファイル上でのエッジを抽出する。なお、本発明はこれに限られず、例えばラインモード時において、測定光位置表示線76における輝度画像上でのエッジを抽出する機能を有していてもよい。
(補正情報記憶部320aの構成)
図7に示すように、子機アンプ3は補正情報記憶部320aも備えている。補正情報記憶部320aは、設定部304により設定された領域74内の位置補正用情報を、設定部304により設定される測定位置との相対位置情報とともに記憶する部分であり、子機アンプ3の記憶部320の一部として構成することができる。領域内の位置補正用情報とは、後述する位置補正部307で測定対象物Wの位置補正を行う際に必要な情報であり、位置補正の基準となり得る情報である。位置補正の基準となり得る情報としては、例えば、輝度画像生成部302で生成された輝度画像の一部、輝度画像の輝度情報、エッジ抽出部306で抽出されたエッジに関するエッジ情報(エッジの点群を含む)等を挙げることができる。位置補正用情報を輝度画像の一部とする場合、その画像をテンプレート画像と呼ぶこともできる。
輝度画像の一部とは、輝度画像生成部302で生成された輝度画像のうち、測定対象物Wの一部を示す画像とすることができ、測定対象物Wの位置及び姿勢を特定できるような範囲や位置の画像が好ましい。また、輝度画像の輝度情報とは、各画素の輝度値とすることができ、この場合も測定対象物Wの位置及び姿勢を特定できるような範囲や位置の画素値が好ましい。さらに、エッジ抽出部306で抽出されたエッジに関するエッジ情報とは、エッジ線の形状、長さ、エッジ線の個数、複数のエッジ線の相対位置座標等とすることができ、この場合も測定対象物Wの位置及び姿勢を特定可能なエッジ情報が好ましい。
この位置補正用情報と、領域の形状や大きさとを互いに関連付けるとともに、互いの相対的な位置関係を示す座標情報を補正情報記憶部320aに記憶する。記憶するタイミングは、エッジ抽出が完了した時点としてもよいし、後述するように、1つのプログラムの設定が完了した時点としてもよい。補正情報記憶部320aには、テンプレート画像とエッジ情報とを関連付けて記憶させてもよいし、テンプレート画像を記憶させずにエッジ情報を記憶させるようにしてもよい。
(位置補正部307の構成)
図7に示すように、子機アンプ3は位置補正部307も備えている。位置補正部307は、変位測定装置1が走査モードで運転している時に、輝度画像生成部302により新たに生成された輝度画像上で、補正用情報記憶部320aに記憶された位置補正用情報を用いて測定対象物Wの位置及び姿勢を特定し、相対位置情報を用いて測定位置の補正を行うように構成されている。
例えば、位置補正用情報としてテンプレート画像が記憶されている場合は、新たに生成された輝度画像にテンプレート画像が含まれているか否かを正規化相関によって検出し、テンプレート画像が含まれていることが検出された場合には、設定時におけるテンプレート画像の位置及び姿勢となるように、新たに生成された輝度画像を移動させるとともに、回転等させて、当該輝度画像の位置及び姿勢の補正を行う。このとき、テンプレート画像と測定位置との相対位置情報に基づいて新たに生成された輝度画像上の測定位置が同時に補正されることになる。
位置補正用情報としてエッジ情報が記憶されている場合には、対応するエッジが新たに生成された輝度画像に含まれているか否か検出し、対応するエッジが含まれていることが検出された場合には、設定時における輝度画像の位置及び姿勢となるように、新たに生成された輝度画像を移動させるとともに、回転等させて、当該輝度画像の位置及び姿勢の補正を行う。このとき、エッジ情報と測定位置との相対位置情報に基づいて新たに生成された輝度画像上の測定位置が同時に補正されることになる。
従って、実際の測定対象物Wの測定現場で測定対象物Wの位置や姿勢が変化したとしても、一定の位置及び姿勢に補正した上で測定を行うことが可能になる。なお、補正方法は、幾つか種類があり、上述したように、輝度画像を移動させたり回転させたりして、輝度画像の位置及び姿勢の補正を行ってもよいし、或いは、測定ツール用の領域を移動させたり回転させたりして、位置補正を行うようにしてもよい。また、変位測定装置1がラインモードで運転している時には、上述したように、高さプロファイル上でエッジ抽出が行われ、抽出されたエッジ情報と測定位置との相対位置情報に基づいて、位置補正を行うようにしてもよい。
(測定ツール選択部308の構成)
図7に示すように、子機アンプ3は測定ツール選択部308も備えている。測定ツール選択部308は、複数の測定ツールの中から1つまたは複数を選択可能にする部分である。測定ツールは、例えば測定対象物Wの段差の大きさを測定する段差ツール、測定対象物Wの所定位置の高さを測定する高さツール、後述する高さ面積ツール、測定対象物Wの位置を補正する位置補正ツール、測定対象物Wの所定範囲内の最小、最大高さを求めるMAX/MINツール等があるが、これら以外の測定ツールを設けてもよい。使用者が測定ツールを選択操作すると、選択した測定ツールが記憶部320に記憶される。
また、測定ツールには、変位の測定領域の大きさが異なる複数の測定ツールが含まれている。例えば、「小」、「標準」、「大」の中から1つを選択することができるようになっており、「小」が最も測定領域が小さく、「大」が最も測定領域が大きい。
(測定制御部305の構成)
測定制御部305は、設定部304により設定された測定位置及び設定部304により設定された変位測定範囲に測定光が照射されるように投光部10a及びMEMSミラー15を制御するように構成されており、このとき、設定部304で受け付けた領域のみに測定光が照射されるように投光部10a及びMEMSミラー15を制御するようにしてもよい。また、測定制御部305は、測定位置の輝度画像上におけるY座標に基づいて、MEMSミラー15による測定光の走査範囲を変更するように構成することができ、具体的には、測定位置のY座標と、変位測定を行う変位測定範囲とに基づいて、MEMSミラー15による走査範囲を当該MEMSミラー15により走査が可能な走査可能範囲よりも狭く設定する。
このことを図17及び図18を用いて詳しく説明する。図17(A)〜(D)は測定対象物Wの上方にセンサヘッド2を配置して測定を行う場合を側方から見た状態を示しており、斜線で示す範囲Bは輝度画像の視野範囲であるとともに、変位測定装置1によって高さ測定可能な範囲である。範囲B内であれば測定光を照射することができるようになっており、MEMSミラー15により走査が可能な走査可能範囲であるということもできる。図17(A)、(B)は第1の位置(Y方向中央部)に測定対象物Wがある場合を示しており、図17(C)、(D)は第1の位置からY軸方向マイナス側に離れた第2の位置に測定対象物Wがある場合を示している。
図17(A)において符号Dは、設定部304により設定された測定位置であり、Y座座標によって得られる。線Eと線Fは測定光の照射範囲を示しており、設定部304により設定された測定位置Dに測定光が照射されるように、測定制御部305がMEMSミラー15を制御する。これにより、高さ測定可能な範囲Bの全体に測定光を走査する場合に比べて測定時間を短くすることができる。
ところで、測定対象物Wが配置されている高さが分からない場合には、上下方向に延びる線Gで示すように、高さ測定可能な範囲BにおいてZ軸方向全体に測定光を走査する必要がある。この場合、図17(A)に線Eと線Fとで示す範囲θAに測定光を走査することになる。範囲θAに測定光を走査する場合であっても、高さ測定可能な範囲Bの全体に測定光を走査する場合に比べて測定時間を短くすることができるが、この実施形態では測定対象物WのZ方向の測定範囲を規定することで、更なる高速化を実現している。測定対象物WのZ方向の測定範囲は、上述したように設定部304で設定することができ、測定範囲の上端と下端とをそれぞれZ座標で表すことができる。測定対象物WのZ方向の測定範囲は、測定対象物Wの存在範囲であってもよいし、測定位置の変動範囲であってもよい。測定対象物WのZ方向の測定範囲が規定されることで、図17(B)に示すように、線Eと線Fとのなす角度が図17(A)で示す場合に比べて小さくて済む。線Eと線Fとのなす角度が小さいということは、測定光の走査範囲が狭いということであり、測定を高速化できる。
図17(C)は測定対象物Wが第2の位置にある場合を示しており、この場合も設定部304により設定された測定位置に基づいて測定光の照射範囲を狭めることができるので、高さ測定可能な範囲Bの全体に測定光を走査する場合に比べて測定時間を短くすることができる。図17(D)に示すように、測定対象物WのZ方向の測定範囲を規定すると、線Eと線Fとのなす角度が図17(C)で示す場合に比べて小さくて済むので、測定光の走査範囲が狭くなり、より一層の高速化を実現できる。
図18(A)は、図17(B)の条件で測定光を走査する様子を上方から見た図であり、測定光の延びる方向はX方向(図の左右方向)、測定光の走査方向はY方向(図の上下方向)となる。設定部304により設定された測定位置を目印72の円で表示している。この目印72の円内に測定光が照射されるように、測定光を線Eから線Fの間で複数回、Y方向に間隔をあけて照射する(実線で示す)。この走査処理は、相対的に大きなピッチで測定光を測定対象物Wに走査する第1走査処理である。第1走査処理の際に、測定位置を含む領域に測定光が照射されたときのMEMSミラー15による走査角度を上述した角度検出部22bが検出する。
その後、測定制御部305は、角度検出部22bにより検出された走査角度の周辺の照射角度を相対的に小さなピッチで走査する第2走査処理を行う。第2走査処理で照射する測定光を図18(A)に破線で示しており、測定光のY方向の間隔が第1走査処理(実線で示す)よりも短くなっており、少なくとも1以上(好ましくは少なくとも2以上)の測定光が目印72の円に照射されるようにY方向の間隔が設定されている。第1走査処理は、測定位置をサーチするための粗サーチ処理と呼ぶことができる。これに対して、第2走査処理は、粗サーチによってサーチされた測定位置を精密測定する処理と呼ぶことができる。
図18(B)は、図17(D)の条件で測定光を走査する様子を上方から見た図である。測定対象物Wが第2の位置にある場合も同様に、測定位置をサーチするための粗サーチ処理を行った後、精密測定処理を行うことができる。ただし、測定対象物Wが第2の位置にある場合は、第1の位置にある場合に比べて測定光の走査範囲が広くなる(θA<θB)ため、粗サーチ処理時における測定光の本数は多くなる(本例では5本→7本)。つまり、測定光の走査範囲はY座標に応じて変化させればよい。したがって、測定制御部308は、設定部304により設定された各測定位置に対して測定光の走査範囲を個別に設定可能に構成されている。
また、図17に示すように、測定制御部305は、少なくとも設定部304により設定された測定位置に測定光が照射されるように、MEMSミラー15の走査ミラーを走査可能範囲よりも狭い第1走査範囲で動作させ、測定位置に測定光が照射された際に角度検出部22bで検出された走査ミラーの第1照射角度を取得する。これは粗サーチ処理時に行われる。この第1照射角度を含み、第1走査範囲よりも狭い第2走査範囲で走査ミラーを動作させ、測定位置に測定光が照射された際に角度検出部22bで検出された走査ミラーの第2照射角度を取得する。これは精密測定処理時に行われる。測定制御部305は、測定位置に対して、第1走査範囲、第2走査範囲の順序で測定光を照射する。第1照射角度及び第2照射角度は記憶部320に記憶される。
測定位置が複数ある場合には、測定制御部305は、各測定位置に対して、第1走査範囲、第2走査範囲の順序で測定光を照射するように構成されている。第1測定位置及び第2測定位置がある場合、測定制御部305は、第1測定位置に対して第1走査範囲、第2走査範囲の順序で測定光を照射してから、第2測定位置に対して第1走査範囲、第2走査範囲の順序で測定光を照射するように構成することもできる。また、第1測定位置及び第2測定位置がある場合、測定制御部305は、第1測定位置及び第2測定位置に対して測定光を第1走査範囲で照射してから、第1測定位置及び第2測定位置に対して測定光を第2走査範囲で照射するように構成することもできる。
測定制御部305は、測定ツール選択部308で選択された測定ツールの測定領域の大きさに応じて測定位置を走査する測定光のピッチを変えるように構成されている。図19は高さツールのツールサイズを変更した場合を示しており、図19(A)に示すように目印72の大きさが大きいと測定光のピッチが大きくなり、図19(B)に示すように目印72の大きさが小さいと測定光のピッチが小さくなる。測定光のピッチは3段階以上に設定することもでき、目印72の内部に3本〜5本の測定光が入るように測定光のピッチを設定することができる。つまり、測定制御部305は、測定ツール選択部308で選択された測定ツールの測定領域に測定光が照射されるように走査ミラーを動作させ、具体的には、測定ツール選択部308で選択された測定ツールの測定領域に測定光がY方向(第2方向)に間隔をあけて複数回照射されるように、走査ミラーを動作させる。尚、測定領域に測定光が1回のみ照射させるように走査ミラーを動作させてもよい。
位置補正が行われたときには測定光の走査範囲や走査位置が変更される。すなわち、測定制御部305は、位置補正部307により補正された位置に、測定光が照射されるように投光部10a及びMEMSミラー15を制御する。このとき、位置補正部307により補正された測定位置のみに測定光が照射されるように投光部10a及びMEMSミラー15を制御するようにしてもよい。また、測定制御部305は、位置補正部307により補正された測定位置の輝度画像上におけるY座標に基づいて、MEMSミラー15による測定光の走査範囲を変更するように構成することができ、具体的には、位置補正部307により補正された測定位置のY座標と、変位測定を行う変位測定範囲とに基づいて、MEMSミラー15による走査範囲を当該MEMSミラー15により走査が可能な走査可能範囲よりも狭く設定する。
図20に示すように、第1測定位置、第2測定位置及び第3測定位置が設定されていて、それぞれを測定光で走査する必要がある場合、例えば第1測定位置を走査した後、第2測定位置を走査するのではなく、第1測定位置からY方向について近い測定位置にある第3測定位置を走査し、その後、第2測定位置を走査するようにMEMSミラー15を制御するのが好ましい。これにより、第1測定位置、第2測定位置及び第3測定位置の全てを測定する場合のMEMSミラー15による走査速度を高めることができる。
(モード選択部309の構成)
図7に示すように子機アンプ3はモード選択部309も備えている。モード選択部309は、変位測定装置1の運転時におけるモードの選択を可能にする部分であり、MEMSミラー15による走査を行わずに測定光を測定対象物Wに照射するラインモードと、測定光をMEMSミラー15によって走査して測定対象物Wに照射する走査モードとのうち、任意のモードを使用者が選択できる。ラインモードで変位を測定可能な場合には、測定光を走査しない分、高速に測定を完了することができる。一方、広い範囲を測定する場合には走査モードで対応することができる。ラインモードと走査モードの選択手段は、例えばUI生成部303でモード選択用のユーザーインターフェース(図示せず)を生成して表示部8に表示させ、使用者の選択をユーザーインターフェース上の操作によって受け付ける構成とすることができる。
測定制御部305は、モード選択部309により走査モードが選択されている場合に、測定対象物WのY方向(第2方向)の異なる位置に測定光が順次照射されるように投光部10a及びMEMSミラー15を制御する。一方、測定制御部305は、モード選択部309によりラインモードが選択されている場合に、測定対象物Wの第2方向の同一の位置に測定光が照射されるように投光部10a及びMEMSミラー15を制御するように構成されている。これによりモードの切替が実行される。
測定制御部305は、モード選択部309によりラインモードが選択されている場合に、走査ミラーを動作させずに、測定対象物Wの第2方向の同一の位置に測定光を照射するように構成されている。また、測定制御部305は、モード選択部309によりラインモードが選択されている場合に、走査ミラーを動作させて、第2方向の互いに近接する複数の位置に測定光を照射するように構成されている。
走査モードとラインモードとのいずれが選択されているかは、記憶部320の設定情報記憶部320fに記憶されている。
(出射方向調整部310の構成)
図7に示すように子機アンプ3は出射方向調整部310も備えている。出射方向調整部310は、モード選択部309によりラインモードが選択されている場合に、測定光の出射方向を第2方向について調整するための部分である。出射方向の調整は例えば使用者がユーザーインターフェース上で行うことができる。
(照射角度特定部311の構成)
図7に示すように子機アンプ3は照射角度特定部311も備えている。照射角度特定部311は、変位測定用受光部40から出力される測定位置に対応する受光素子の画素位置の受光量を連続的に取得し、測定光が測定位置に照射されたときの走査ミラーの照射角度を特定する部分である。測定対象物Wの測定位置を含む領域に測定光が照射されたときのMEMSミラー15による測定光の走査角度は、上述した角度検知センサ22で取得することができ、この角度検知センサ22からの出力値に基づいて、測定光が測定位置に照射されたときの走査ミラーの照射角度を算出することができる。得られた走査ミラーの照射角度は、測定光が測定位置に照射されたときの走査ミラーの照射角度として特定される。特定された走査ミラーの照射角度は記憶部320に記憶される。なお、測定光の照射角度を特定するにあたり、角度検知センサ22を用いなくても、MEMSミラー15への駆動信号に基づいて大まかな照射角度は特定することができる。しかし、温度特性の変化や経時変化などを考慮すると、正確な照射角度を知るためには、角度検知センサ22等によって角度測定することが好ましい。
(変位測定部312の構成)
図7に示すように子機アンプ3は変位測定部312も備えている。変位測定部312が用いている測定原理は、上述した三角測距の原理である。変位測定部312は、設定部304により設定された測定位置に照射された測定光が該測定位置から反射して変位測定用受光部40で受光されることによって変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布に基づいて、該測定位置の変位を測定する。また、変位測定部312は、測定位置から反射した測定光だけでなく、測定位置を含む領域から反射した測定光に基づいて変位を測定することもできる。すなわち、設定部304により設定された測定位置を含む領域に測定光が照射されたときに変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布に基づいて、当該測定位置の変位を測定するように構成することができる。測定結果は、図7に示す測定データ記憶部320eに記憶させることができる。なお、変位測定部312の機能は、センサヘッド2と子機アンプ3とに分割させるようにしてもよい。
また、変位測定部312は、相対的に大きなピッチで測定光を測定対象物Wに走査する第1走査処理の後、相対的に小さなピッチで測定光を走査する第2走査処理時に、測定位置を含む領域に測定光が照射されたときに得られた受光量分布に基づいて、当該測定位置の変位を測定するように構成されている。
また、位置補正が行われた場合には、位置補正部307により補正された測定位置に照射された測定光が該測定位置から反射して変位測定用受光部40で受光されることになる。変位測定部312は、位置補正が行われた場合にも、変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布に基づいて、該測定位置の変位を測定することができる。
また、変位測定部312は、三角測距の原理を利用することで、変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布を取得するとともに、測定位置に測定光が照射された際に角度検出部22bで検出された走査ミラーの角度(第2照射角度)と、測定位置のY方向(第2方向)の位置とに基づいて、該測定位置の変位を測定することができる。
さらに、上述したように、測定位置は、Y方向(第2方向)の位置に留まらず、X方向(第1方向)の位置にも基づいて、測定位置の変位を測定してもよい。具体的には、製造出荷時に、校正用データを記憶しておくことで対応できる。例えば、測定光を照射した状態で、校正用プレートを任意の高さZに配置して、輝度画像を撮像し、そのときの測定光が延びる方向を認識する。仮に、受光素子22aの長手方向と非平行になっていたり、湾曲したりしていれば、そのズレ分を校正用データとして記憶しておく。また、校正用プレートを、任意の高さZとは異なる複数の高さに配置変更し、その都度、輝度画像を撮像し、そのときの測定光が延びる方向を認識する。これにより、各高さZにおける校正用データを取得・記憶することができる。運転時には、測定位置のX方向(第1方向)の位置(X座標)に基づいて、上述した校正用データを使用して、正確な測定位置の変位を測定してもよい。
また、粗サーチ処理時に第1走査範囲で走査している間に変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布を変位測定部312が取得する間隔は、第1走査範囲よりも狭い第2走査範囲で走査している間に変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布を変位測定部312が取得する間隔よりも長く設定されている。これは、第1走査範囲を走査する際の測定光のピッチが第2走査範囲を走査する際の測定光のピッチよりも大きいことによる。ピッチが小さいと測定光の照射間隔が短くなり、これにより、受光量分布を取得する間隔が短くなる。
また、変位測定部312は、第2走査処理時、測定位置を含む領域に測定光が照射されたときに得られた受光量分布に基づいて、当該測定位置の変位を測定するように構成することもできる。さらに、変位測定部312は、測定光が照射される都度、変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布を取得して測定位置の変位を複数回測定し、得られた複数の変位を平均化処理するように構成することもできる。
また、変位測定部312は、照射角度特定部311により特定された照射角度と、測定光が測定位置に照射されたときの受光量分布のピーク位置とに基づいて、該測定位置の変位を測定することもできる。図21(A)は、X方向に延びる測定光を測定対象物Wに照射した際の変位測定用受光部40の受光量分布を示す図であり、中央部が両側よりも上に位置しているのは、その部分の高さが高いことによる。図21(A)の2本の破線で囲まれた範囲を抜き出して拡大すると図21(B)のようになり、受光量分布に基づいてピーク位置を取得することができる。ピーク位置の取得処理の詳細については後述する。
変位測定部312は、測定光が測定位置に照射されたときの受光量分布に基づいてピーク位置を推定するように構成することもできる。すなわち、受光量分布がY方向について連続して得られない場合には、周辺の受光量分布に基づいてピーク位置を推定することができる。
また、変位測定部312は、測定光が測定位置に照射されたときの受光量分布に複数のピークが存在する場合に、該複数のピークの中から1つ選択してピーク位置を決定するように構成することもできる。ピーク位置がY方向に間隔をあけて複数ある場合には、それらのうち、最も高いピークをピーク位置とすることができる。もちろん、最も高いピークをピーク位置とせず、複数あるピーク位置に基づいて、最適なピーク位置を推定しても構わない。
また、変位測定装置1の設定時に、測定光を第1のピッチで測定対象物Wの全体に走査した後、測定光を第1のピッチとは異なる第2のピッチで測定対象物Wの全体に走査するように、測定制御部305が投光部10a及びMEMSミラー15を制御することもできる。この場合、変位測定部312は、第1のピッチで走査されたときに変位測定用受光部40から順次出力された変位測定用の受光量分布に基づいて測定対象物Wの全体の第1高さデータを生成し、第2のピッチで走査されたときに変位測定用受光部40から順次出力された変位測定用の受光量分布に基づいて測定対象物Wの全体の第2高さデータを生成するように構成されている。
第1高さデータ及び第2高さデータはマスターデータであり、輝度画像と共に保存される3次元データを構成している。第1高さデータ及び第2高さデータを保持しておくことで、例えば設定時に測定ツールで測定しようとすると、測定位置に測定光を照射することなく、第1高さデータまたは第2高さデータから変位を取得して直ちに表示させることができる。また、一旦設定した後、測定ツールの位置を微調整する場合に、再度マスターとなる測定対象物Wを用意しなくても、変更後の測定位置の変位を出すことができる。
高さデータは、1つであってもよいが、測定光のピッチが異なる第1高さデータ及び第2高さデータを保持しておくことで、測定ツール毎、測定ツールの大きさ毎に、対応した高さデータから変位を読み出して表示することができる。例えば、細かいピッチで測定したマスターデータを1つ保持して、間引いて使うことも考えられるが、間引いて作ったマスターデータでは最終処理と完全に一致しないことがあるので、複数の測定光のピッチが異なる高さデータを保持しておくのが好ましい。高さデータは、記憶部320の高さデータ記憶部320bに記憶される。
また、変位測定部312は、モード選択部309によりラインモードが選択されている場合に、測定光が照射される都度、変位測定用受光部40から出力された変位測定用の受光量分布を取得して測定対象物の変位を複数回測定し、得られた複数の変位を平均化処理するように構成することもできる。なお、本明細書における「平均化」とは、狭義の意味での平均に留まらず、例えばトリム平均やメディアン等も含む広い概念である。
(良否判定部313の構成)
図7に示すように子機アンプ3は良否判定部313を備えている。良否判定部313は、輝度画像生成部302により生成された輝度画像に基づいて測定対象物Wの状態を判定した判定結果と、変位測定部312で測定した変位に基づいて測定対象物Wの状態を判定した判定結果とを組み合わせて測定対象物Wの良否判定を行うように構成されている。例えば、輝度画像上で一部が欠落しているか否かを検出し、欠落していない場合であっても、変位測定部312で測定した変位が基準値を外れている場合には、測定対象物Wが不良品であると判定することができる。反対に、変位測定部312で測定した変位が基準値であっても、輝度画像上で一部が欠落していると判定される場合には、測定対象物Wが不良品であると判定することができる。処理結果は、図7に示す処理結果記憶部320cに記憶させることができる。
(設定情報記憶部320fの構成)
設定情報記憶部320fにはプログラムが記憶されている。プログラムは、複数の設定情報からなるものであり、複数通り記憶させておくことができる。各プログラムに含まれる設定情報としては、例えば走査モード(スキャンモード)とラインモードのいずれが選択されているか、トリガ関連の設定、撮像関連の設定(明るさ、感度等)、マスターデータの有無、ヘッド傾き補正、適用される測定ツール及びそのパラメータ等が含まれている。使用者は、設定情報記憶部320fに記憶されているプログラムの中から任意のプログラムを選択して変位測定装置1の運転時に適用することができる。
(設定時及び運転時の具体例)
次に、変位測定装置1の設定時及び運転時の具体例について説明する。図22は、変位測定装置1の走査モードの設定時に行う手順を示すフローチャートである。
(走査モードの設定時)
走査モードの設定時のフローチャートにおけるステップSA1は、外部トリガや内部トリガ等を設定するステップであり、どのようなトリガ信号でどのように動作するかを設定する。トリガ条件の設定が行われると子機アンプ3やセンサヘッド2に設定情報が送られ、センサヘッド2はこの条件で動作するようになる。
ステップSA2では、輝度画像の明るさ設定が行われる。明るさ設定とは、露光時間、照明光量、撮像モード(HDRの有無)などのことである。HDRとは、ハイダイナミックレンジ合成のことである。明るさ設定は自動で行うこともできるし、手動で行うこともできる。
ステップSA3では、マスター登録を行う。マスターとは、輝度画像及び視野全体の3次元データ(高さデータ)のことであり、センサヘッド2が測定対象物Wの輝度画像を取得するとともに、測定対象物Wの全体に測定光を走査して変位を測定し、高さデータを取得する。輝度画像と高さデータとを対応させて図7に示す高さ画像記憶部320bに記憶させる。ステップSA3では、異なるピッチで測定光を走査して複数の高さデータを取得しておくことができる。尚、複数の高さデータを取得するにあたっては、種々の方法が考えられる。例えば、予め定められた最も細かいピッチで測定光を走査し、一の高さデータを取得し、このピッチよりも粗いピッチ(分解能が粗いピッチ)については、この一の高さデータを間引くことによって生成するようにしてもよい。さらには、マスター登録は省略してもよい。
ステップSA4では、測定ツールの選択を行う。測定ツールを選択すると、ステップSA5に進み各ツールの設定を行う。測定ツールの設定順に決まりはないが、処理順は位置補正ツールが最初に行われるようになっている。位置補正ツールは他の全測定ツールに対して1つだけ設定できるようにしてもよいし、他の測定ツール毎に個別に設定するようにしてもよい。
ステップSA6において測定ツールの追加が完了したか否かを判定し、測定ツールの追加が完了していない場合には、ステップSA4、SA5を経て測定ツールを追加する。測定ツールの追加が完了すると、ステップSA7に進む。ステップSA7では、出力割り当てを設定する。その後、ステップSA8において総合判定条件を設定する。
(走査モードの設定時のマスター登録)
次に、走査モードの設定時のマスター登録について詳細に説明する。図23に示すマスター登録フローチャートのステップSB1では、照明部30の第1〜第4発光ダイオード31〜34を点灯させる。ステップSB2では、輝度画像を撮像する。画像データは、例えば子機アンプ3の画像データ記憶部320d(図7に示す)に記憶される。
ステップSB3では、輝度画像全体の変位を測定可能となるようにMEMSミラー15を制御する。ステップSB4では、レーザー出力器12から発光させて帯状の測定光を測定対象物Wに照射する。ステップSB5で撮像し、ステップSB6で変位を測定する。尚、このとき撮像した画像は子機アンプ3に転送せずにセンサヘッド2において変位測定を実行するようにしてもよい。また、ステップSB5で撮像した画像からピーク位置の座標を算出する処理までをセンサヘッド2で行い、ピーク位置から実際の測定値への演算を子機アンプ3が行うように構成することもできる。
ステップSB7では、全ての測定データを使ってマスター高さデータ1を生成し、輝度画像の各画素に対して高さデータをマッピングする。ステップSB8では、2N回目の測定か否かを判定する。2N回目の測定であればステップSB9に進み、2N回目の測定でなければステップSB12に進む。ステップSB9では、2N回目の測定データのみを使ってマスター高さデータ2を生成し、輝度画像の各画素に対して高さデータをマッピングする。ステップSB10では、4N回目の測定か否かを判定する。4N回目の測定であればステップSB11に進み、4N回目の測定でなければステップSB12に進む。ステップSB11では、4N回目の測定データのみを使ってマスター高さデータ3を生成し、輝度画像の各画素に対して高さデータをマッピングする。ステップSB7、SB9、SB11は並行して行うようにしてもよい。
ステップSB12では測定が完了したか否かを判定し、測定が完了していない場合にはステップSB3に進み、上述した手順を再び行う。測定が完了していれば、ステップSB13に進む。三角測距では死角になる箇所の高さデータが生成されないので、ステップSB13で、輝度画像の各画素において高さデータがない画素を表示部8上で赤色斜線表示する。斜線表示されている様子を図28に示す。マスター高さデータ1〜3は、図7に示す高さデータ記憶部320bに記憶することができる。
(マスター高さデータ使用時)
次に、マスター高さデータ1〜3の使用時について図24に示すフローチャートに基づいて説明する。マスター高さデータ1〜3は、測定ツールの選択時に使用することができ、ステップSC1では、マスター高さデータ1〜3の中から、測定ツール種別、測定ツール設定に応じて使用するマスター高さデータを選択する。ステップSC2では、選択されたマスター高さデータと、測定ツールの測定位置及び範囲から測定値を算出する。ステップSC3では、ステップSC2で測定した値を表示部8に表示する。
段差ツールの場合は、2つの位置(点Aと点B)を指定すると、2点間の段差が数値で表示される。面積ツールの場合は、予め設定された色範囲内にある面が同じ色に着色されて表示される。ここで、面積ツールは、輝度画像から特徴(予め設定された色範囲内か否か)を抽出するための測定ツールであって、いわゆる画像処理ツールの一例である。他にも、輝度画像からエッジを抽出してエッジ幅などを測定するエッジツールなどが挙げられる。本実施形態では、このような画像処理ツールと、変位を測定するための変位測定ツールとの両方を、一つの輝度画像に設定することが可能である。
(出力割り当て設定)
出力割り当て設定では、外部への出力ピンに何を割り当てるか設定する。OFF/総合判定/ビジー/エラ/ツール1結果等を選択することができるが、これ以外を選択可能にしてもよい。
(総合判定条件設定)
総合判定条件設定では、測定ツールが「すべてOK」か「いずれかOK」を選択することができる。その他にも、測定ツール1がOKかつ測定ツール2がNGなら総合判定がOKとするような組み合わせパターンを出力することも可能である。
上述した設定が終了すると、変位測定装置1が設定モードから運転モードに遷移し運転を開始する。設定が終了するまではセンサヘッド2に設定情報を出力し、RAM値(揮発メモリ)のみの書き換えを行う。設定が終了すると、設定情報をROM値(不揮発メモリ)に書き込む。運転とは、変位測定装置1を測定現場で運用することである。
(ピーク位置取得)
図25は、測定光が測定対象物Wの測定位置に照射されたときの受光量分布のピーク位置を取得する手順を示すフローチャートである。ステップSE1では、測定対象物Wの測定位置の指定を受け付ける。これは設定部304により行うことができる。ステップSE2では、測定位置を含む近傍の撮像範囲(変位測定範囲)を指定する。ステップSE3では、測定位置を含む変位測定範囲の変位を測定可能となるようにMEMSミラー15を制御する。ステップSE4では、レーザー出力器12から発光させて帯状の測定光を測定対象物Wに照射する。
ステップSE5では変位測定用受光部40で撮像を行う。ステップSE6では変位測定用受光部40から出力される受光量分布から測定光のピーク位置の座標を算出する。また、ステップSE8では、1次元の受光素子22aで撮像を行う。変位測定用受光部40の撮像と、1次元の受光素子22aの撮像とは略同時である。これにより、誤差を小さくすることができる。ステップSE9では、上述したように角度検出部22bによって走査ミラーの角度を算出する。その後、ステップSE9では、測定光のピーク位置と、走査ミラーの角度(測定光の走査ミラーからの出射角度)とに基づいて、三角測距の原理を用いて高さ(変位)計算を行う。なお、上述したように、測定光のピーク位置としてのX座標に基づいて、校正用データを用いて高さ(変位)計算をしてもよい。これにより、温度特性の変化や経時変化を加味した上で、より正確な高さ計算を行うことが可能である。
(傾き補正機能)
変位測定装置1は、平坦な基準面の傾きを補正する傾き補正機能を有している。まず、使用者は、表示部8に表示されている高さ画像上で基準面を設定する。基準面は3点を指定することによって行うことができる。指定が終わると、子機アンプ3またはセンサヘッド2の信号処理部は、3点が全て同じ高さになるように、各画素の変位を演算する。演算後、基準面の高さが全て同じになる。
(測定光のピッチ最適化)
図26は、基準面方向に応じて測定光の照射ピッチを最適化する方法を説明する図である。符号200は基準面を示しており、また、符号201は変位測定範囲を示しており、また、符号202は測定光を示している。
図26の(A)では、基準面200が水平な場合に、変位測定範囲201に測定光202を5本照射する様子を示している。図26の(B)は、基準面200が右上がりに傾斜している場合を示しており、この場合に、仮に測定光202のピッチを(A)と同じにしていると、変位測定範囲201には測定光202が3本しか照射されなくなり、測定精度の低下を招くおそれがある。本例では、測定光202のピッチを基準面200の傾きに応じて変化させるピッチ変更制御を行うように構成されている。図26の(C)に示すように、基準面200が傾斜した場合には、水平である場合と同じ本数の測定光202が変位測定範囲201に照射されるように、測定光202のピッチを狭める。これにより、測定精度の低下を抑制できる。これは、上述した傾き補正によって基準面を決定した後に行うことができる。
(基準面高さ補正)
図27は、基準面高さ補正の概要を説明する図である。符号200は基準面を示しており、また、符号201は変位測定範囲を示しており、また、符号202は測定光を示しており、また、符号203は測定レンジを示している。ここで、測定対象物Wが台座に置かれた状態を想定する。測定対象物Wの天面を測定すると考えたときに、台座から見た測定対象物Wの相対的な高さ変動は、上下両方向で例えば5mmのように小さいが、台座の高さ変動が上下両方向で例えば20mmあった場合には、合計で上下両方向に25mmの測定レンジを設定する必要があり、測定時間が長くなるおそれがある。
本例では、上述した傾き補正によって台座を基準面として補正すると、基準面200に対して測定レンジ203だけ測定すればよいので、上下両方向で5mmの測定で済む。これにより測定時間を短くすることができる。
(走査モードの運転時)
図28は、変位測定装置1の走査モードの運転時に行う手順を示すフローチャートである。走査モードの運転時のフローチャートにおけるステップSG1では、外部機器6等から外部トリガを受け付ける。ステップSG2では、照明部30の第1〜第4発光ダイオード31〜34を点灯させる。ステップSG3では、輝度画像を撮像する。画像データは、例えば子機アンプ3の画像データ記憶部320d(図7に示す)に記憶される。
ステップSG4では位置補正ツールの適用があるか否かを判定する。設定時に位置補正ツールが選択されていればステップSG5に進み、設定時に位置補正ツールが選択されていなければステップSG7に進む。ステップSG5では位置補正ツールを実行し、ステップSG6では測定ツールの位置、即ち測定位置を補正する。ステップSG5及びSG6は位置補正部307で行われる。
ステップSG7では、画像処理ツールの適用があるか否かを判定する。設定時に画像処理ツールが選択されていればステップSG8に進み、設定時に画像処理ツールが選択されていなければステップSG9に進む。ステップSG8では各種画像処理を実行する。画像処理は従来から周知のものを挙げることができる。
ステップSG9では、リアルタイム傾き補正の適用があるか否かを判定する。設定時に傾き補正機能の実行が選択されていればステップSG10に進み、設定時に傾き補正機能の実行が選択されていなければステップSG18に進む。ステップSG10では、測定位置を含む変位測定範囲の変位を測定可能となるようにMEMSミラー15を制御する。ステップSG11では、レーザー出力器12から発光させて帯状の測定光を測定対象物Wに照射する。ステップSG12で撮像し、ステップSG13で変位を測定する。
ステップSG14では、3点の全て測定が完了したか否かを判定する。3点の全ての測定が完了していない場合には、3点の測定が完了するまで上述した処理を繰り返す。3点の全て測定が完了したらステップSG15に進み、基準面を計算する。その後、ステップSG16に進み、基準面方向に応じて変位測定範囲内への測定光の照射ピッチを最適化する。また、ステップSG17では、基準面の高さに応じて測定光の走査範囲を最適化する。
ステップSG18では、測定ツールの適用があるか否かを判定する。設定時に測定ツールが選択されていればステップSG19に進み、設定時に測定ツールが選択されていなければステップSG24に進む。ステップSG19では、測定ツールに応じて測定位置を含む変位測定範囲の変位を測定可能となるようにMEMSミラー15を制御する。ステップSG20では、レーザー出力器12から発光させて帯状の測定光を測定対象物Wに照射する。ステップSG21で撮像し、ステップSG22で変位を測定する。ステップSG23で全ての測定が完了した場合にはステップSG24に進み、全ての測定が完了していない場合には上述した測定を繰り返す。ステップSG24では、全ての測定ツールの処理結果を統合して総合判定結果を生成する。生成した総合判定結果は出力される。
(粗サーチ及び精密測定処理)
図29は、粗サーチ及び精密測定処理の基本フローチャートであり、図18に示すように実線で表される測定光による粗サーチ処理を行った後に、破線で表される測定光による精密測定を行う。
ステップSH1では、粗サーチの範囲及び測定光のピッチを決定する。本実施形態では、このピッチは後述する精密測定時のピッチよりも大きく、変位測定範囲の大きさによって異なっている。ステップSH2では、測定光のピッチが大きい粗サーチを実行する。ステップSH3では、測定対象物Wの粗い高さを確定する。ステップSH4では、精密測定の範囲及び測定光のピッチを決定する。精密測定の範囲は変位測定範囲を含む範囲である。測定光のピッチは、変位測定範囲に対して複数本の測定光を照射可能なピッチである。ステップSH5では、精密測定を実行する。ステップSH6では、測定対象物Wの精密な高さを確定する。
図30は、粗サーチ及び精密測定処理において複数のパターンを交互に実行する場合のフローチャートである。ステップSJ1では、複数のパターン(例:パターンA、パターンB、…)の走査順を決定する。ステップSJ2では、複数のパターンのうちから1つのパターンを選択する。ステップSJ3では、選択したパターンの粗サーチの範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSJ4では、測定光のピッチが大きい粗サーチを実行する。ステップSJ5では、測定対象物Wの粗い高さを確定する。ステップSJ6では、精密測定の範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSJ7では、精密測定を実行する。ステップSJ8では、測定対象物Wの精密な高さを確定する。ステップSJ9では、全パターンの走査が終了したか否か判定し、全パターンの走査が終了するまで上述した処理を繰り返す。
図31は、粗サーチ及び精密測定処理において複数のパターンの粗サーチを先に実行する場合のフローチャートである。ステップSK1では、複数のパターンの粗サーチの走査順を決定する。ステップSK2では、複数のパターンのうちから1つのパターンを選択する。ステップSK3では、選択したパターンの粗サーチの範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSK4では、測定光のピッチが大きい粗サーチを実行する。ステップSK5では、測定対象物Wの粗い高さを確定する。ステップSK6では、全パターンの粗サーチが終了したか否か判定し、全パターンの粗サーチが終了するまで上述した処理を繰り返す。
全パターンの粗サーチが終了すると、ステップSK7に進み、複数のパターンの精密測定の走査順を決定する。ステップSK8では、順番に精密測定を実行する。ステップSK9では、測定対象物Wの精密な高さを確定する。
図32は、粗サーチ及び精密測定処理において複数のパターンの粗サーチを同時に実行する場合のフローチャートである。ステップSL1では、複数のパターンを包含する粗サーチの範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSL2では、測定光のピッチが大きい粗サーチを実行する。ステップSL3では、パターン毎に粗い高さを確定する。ステップSL4では、複数パターンの各精密測定の走査順を決定する。ステップSL5では、複数のパターンのうちから1つのパターンを選択する。ステップSL6では、精密測定の範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSL7では、精密測定を実行する。ステップSL8では、測定対象物Wの精密な高さを確定する。ステップSL9では、全パターンの走査が終了したか否か判定し、全パターンの走査が終了するまで上述した処理を繰り返す。
図33は、粗サーチ及び精密測定処理において粗サーチ中に測定対象物の高さ情報が得られたタイミングで精密測定に移行する場合のフローチャートである。ステップSM1では、粗サーチの範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSM2では、測定光のピッチが大きい粗サーチを開始する。ステップSM3では、粗サーチ位置を順番に走査する。ステップSM4では、測定位置が特定されるか否かを判定する。測定位置が特定されなければステップSM3に戻り、粗サーチ位置を順番に走査する。測定位置が特定されれば、ステップSM5に進み、特定された測定位置に対する精密測定の範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSM6では、精密測定を実行する。ステップSM7では、測定対象物Wの精密な高さを確定する。
図34は、粗サーチ及び精密測定処理において粗サーチ及び精密測定の両方の結果から測定位置を特定する場合のフローチャートである。ステップSN1では、粗サーチの範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSN2では、測定光のピッチが大きい粗サーチを開始する。ステップSN3では、測定位置の粗サーチにより得られた高さ情報を記録する。ステップSN4では、精密測定の範囲及び測定光のピッチを決定する。ステップSN
5では、精密測定を実行する。ステップSN6では、ステップSN3で得られた粗サーチの高さ情報と、ステップSN5で得られた精密測定の結果から測定対象物の高さを特定する。
(ラインモード設定時)
図35はラインモード設定時のフローチャートである。外部トリガや内部トリガ等を設定するステップは省略している。ステップSP1では、輝度画像の明るさ設定が行われる。ステップSP2では、マスター登録を行う。ステップSP3では、測定ツールの選択を行い、測定ツールを選択すると、ステップSP4に進み各ツールの設定を行う。ステップSP5において測定ツールの追加が完了したか否かを判定し、測定ツールの追加が完了していない場合には、ステップSP3、SP4を経て測定ツールを追加する。測定ツールの追加が完了すると、ステップSP6に進む。ステップSP6では、出力割り当てを設定する。その後、ステップSP7において総合判定条件を設定する。なお、上述した走査モード(スキャンモード)と同様に、ステップSP2のマスター登録は省略してもよい。
(ラインモードの設定時のマスター登録)
次に、ラインモードの設定時のマスター登録について詳細に説明する。図36に示すマスター登録フローチャートのステップSQ1では、照明部30の第1〜第4発光ダイオード31〜34を点灯させる。ステップSQ2では、輝度画像を撮像する。ステップSQ3では、輝度画像全体の変位を測定可能となるようにMEMSミラー15を制御する。ステップSQ4では、レーザー出力器12から発光させて帯状の測定光を測定対象物Wに照射する。ステップSQ5で撮像し、ステップSB6で変位を測定する。
ステップSQ7では、輝度画像の各画素に対して高さデータをマッピングする。ステップSQ8では、輝度画像の各画素において高さデータがない画素を表示部8上で赤色斜線表示する。
(ラインモード運転時)
図37は、変位測定装置1のラインモードの運転時に行う手順を示すフローチャートである。ラインモードの運転時のフローチャートにおけるステップSR1では周期的にトリガ信号を出力する。ステップSR2では、照明部30の第1〜第4発光ダイオード31〜34を点灯させる。ステップSR3では、輝度画像を撮像する。ステップSR4では、測定位置を含む変位測定範囲の変位を測定可能となるようにMEMSミラー15を制御する。ステップSR5では、レーザー出力器12から発光させて帯状の測定光を測定対象物Wに照射する。ステップSR6で撮像し、ステップSR7で変位を測定する。
ステップSR8では位置補正ツールの適用があるか否かを判定する。設定時に位置補正ツールが選択されていればステップSR9に進み、設定時に位置補正ツールが選択されていなければステップSR11に進む。ステップSR9では位置補正ツールを実行し、ステップSR10では測定ツールの位置、即ち測定位置を補正する。
ステップSR11では、測定ツールの適用があるか否かを判定する。設定時に測定ツールが選択されていればステップSR12に進み、設定時に測定ツールが選択されていなければステップSR13に進む。ステップSR12では、測定ツールを実行する。全ての測定が完了した場合には、ステップSR13において全ての測定ツールの処理結果を統合して総合判定結果を生成する。生成した総合判定結果は出力される。
(実施形態の作用効果)
この実施形態によれば、測定光の第1方向端部の光を角度検知センサ22の受光素子22aで受光し、この受光素子22aから出力された受光量分布に基づいて測定光の走査ミラーからの出射角度を検出することができる。一方、走査ミラーにより走査された測定光は、測定対象物Wの第2方向の異なる位置からそれぞれ反射して変位測定用受光部40で受光される。変位測定用受光部40から出力された受光量分布と、その受光量分布が得られた時における測定光の走査ミラーからの出射角度情報とに基づいて測定対象物Wの変位を測定することができる。
したがって、走査ミラーの角度を検出するための光として、測定光の一部を利用することができるので、走査ミラーの角度検出専用の光源は不要になる。これにより、変位測定装置の小型化及び低コスト化が可能になる。また、測定光と、走査ミラーの角度を検出するための光とが共通の光源から照射された光であることから、光源を別々にする場合に比べて精度を高めることができる。
また、表示部8に表示された輝度画像上で変位の測定を行う測定位置を設定することにより、該測定位置に測定光を照射し、該測定位置から反射して変位測定用受光部40で受光された変位測定用の受光量分布に基づいて該測定位置の変位を測定することができるので、測定光を測定対象物Wの全体に走査して測定対象物Wの三次元形状測定を行うことなく、測定対象物Wの所定位置の変位を短時間で測定できる。
また、変位測定装置1の運転時に位置補正用情報を用いて測定対象物Wの位置及び姿勢を特定して測定位置の補正を行い、補正された測定位置に測定光を照射して測定位置の変位を測定することができるので、測定対象物Wの位置や姿勢が変動しても、測定対象物Wの所定位置の変位を短時間で測定できる。
また、測定光を第1走査範囲で走査させて測定位置に測定光が照射された際の走査ミラーの第1照射角度を特定し、その後、この第1照射角度を含み、第1走査範囲よりも狭い第2走査範囲で走査ミラーを動作させ、測定位置に測定光が照射された際の走査ミラーの第2照射角度を特定し、第2照射角度と、測定位置の第2方向の位置とに基づいて該測定位置の変位を測定するようにしたので、測定対象物Wの所定位置の変位を短時間で高精度に測定することができる。
また、測定光が測定位置に照射されたときの走査ミラーの照射角度を特定し、照射角度と、測定光が測定位置に照射されたときの受光量分布のピーク位置とに基づいて測定位置の変位を測定するようにしたので、測定対象物Wの所定位置の変位を短時間で測定できる。
また、走査モードが選択されている場合に測定対象物Wの第2方向の異なる位置に測定光を順次照射する一方、ラインモードが選択されている場合に測定対象物Wの同一の位置に測定光を照射し、変位測定用受光部40から出力された受光量分布に基づいて測定対象物Wの変位を測定することができるので、測定対象物Wが静止している場合であっても移動している場合であっても所定位置の変位を測定することができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。