JP2020075605A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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かかる電動パワーステアリング装置では、減速ギアやラック・ピニオンにより摩擦が大きく、また、アシストトルクを発生させるためのモータによりステアリング軸回りの等価慣性モーメントが大きい。
一方、SATが大きい高車速域ではSATが大きいため、ハンドル戻りの操舵角速度は低車速域に比べて速くなる傾向にあるが、慣性モーメントが大きいため慣性トルクも大きく、舵角の中立点でハンドルが収束せず、オーバーシュートしてしまうため、車両特性が不安定に感じられることがある。
例えば、下記特許文献1には、ドライバーによる操舵介入時でも滑らかなハンドル戻り制御を行うことを目的とした電動パワーステアリング装置が提案されている。
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、ドライバーの操舵状態に応じた最適な目標操舵角速度を設定することを目的とする。
(構成)
図1は、実施形態の電動パワーステアリング装置の一例の概要を示す。ステアリングホイール1のステアリング軸(コラム軸、ハンドル軸)2は、減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ラック・ピニオン機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)50が接続されており、車速VはCAN50から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN50以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN51も接続可能である。
記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するコントロールユニット30の機能は、例えばコントロールユニット30のプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
例えば、コントロールユニット30は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントロールユニット30はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTd及び車速Vに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Irefを演算する。
補正後電流指令値Irefnは、電流制限部33に入力されて、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部34に入力さる。
インバータ37は、駆動素子としてFET(Field Effect Transistor)を用い、FETのブリッジ回路で構成されている。
このように、セルフアライニングトルクSATは、ステアリングホイール1の操舵に対して1次遅れ特性を有する。このため、目標戻り操舵角速度ωtは、操舵トルクTd及びアシストトルクTaに加えて、実操舵角速度ωに応じて補正できるように構成する。これにより、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクSATの位相遅れを反映するように目標戻り操舵角速度ωtを補正できる。
操舵角θは、目標戻り操舵角速度ωtを設定する目標操舵角速度設定部120に入力される。
車速Vは、ステアリング軸トルク算出部111、目標操舵角速度設定部120、車速ゲインKPを出力する車速ゲイン部130、及び粘性係数Cを出力する粘性係数出力部133に入力される。
電流指令値Irefは、ステアリング軸トルク算出部111に入力される。ステアリング軸トルク算出部111は、操舵トルクTd及び電流指令値Irefに応じてステアリング軸トルクTsを算出し、実操舵角速度ω及び車速Vに応じてステアリング軸トルクTsを補正することにより補正後ステアリング軸トルクTs*を得る。ステアリング軸トルク算出部111の構成及び動作の詳細は後述する。
目標速度値ω1は、ローパスフィルタ(LPF)151に入力され、LPF151で運転者の操舵入力以上若しくは操舵入力に基づく車両運動特性以上の周波数(10Hz〜)を減衰された目標速度値ω2となり、加算部101に入力される。
目標操舵角速度ω0は、減算部103に加算入力され、実操舵角速度ωは減算部103に減算入力される。目標操舵角速度ω0と実操舵角速度ωの偏差SG1が減算部103で算出され、偏差SG1は乗算部132に入力されている。
乗算部132は、偏差SG1に操舵トルクゲインTh及び車速ゲインKPを乗算してハンドル戻し制御ゲインSG2(比例制御値)を得る。
第1実施形態のステアリング軸トルク算出部111は、操舵トルクTd及び電流指令値Irefに応じてステアリング軸トルクTsを算出し、実操舵角速度ω及び車速Vに応じてステアリング軸トルクTsを補正することにより補正後ステアリング軸トルクTs*を得る。
ゲイン部200は、電流指令値IrefをゲインKt倍してアシストトルクTaを算出する。加算部201は、アシストトルクTaと操舵トルクTdを加算してステアリング軸トルクTsを算出する。
このように、ステアリング軸トルクを実操舵角速度ωに応じて補正し、補正したステアリング軸トルクにより発生する操舵角速度によって目標戻り操舵角速度ωtを補正することにより、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクSATの位相遅れを反映するように目標戻り操舵角速度ωtを補正できる。
ステアリング軸トルクTsは、左右の操舵に応じて正負の符号を持つ。このため、目標戻り操舵角速度ωtを補正するにあたり、ステアリング軸トルクTsの符号と実操舵角速度ωの方向を考慮する。すなわち、ステアリング軸トルクTsと実操舵角速度ωの符号が一致しているときは切増し操舵であり、異符号のときは操舵角が中立である方向への切り戻し操舵であることを考慮し、両者の符号が一致するか否かに応じて異なる補正を行う。図9において、横軸は実操舵角速度ωとステアリング軸トルクTsの符号との乗算結果ω×sign(Ts)(以下、「正規化実操舵角速度」と表記する)を示し、横軸が正の領域は切増し状態を示し、横軸が負の領域は切り戻し状態を示す。
正規化実操舵角速度が0より大きい範囲では、正規化実操舵角速度が増大するに従ってステアリング軸トルク軸ゲインKtsは単調増加し、1より大きな正値を有する。また、正規化実操舵角速度の変化に対するステアリング軸トルク軸ゲインKtsの増加率は、正規化実操舵角速度が増大するほど低下する。また、車速Vが増加するほどステアリング軸トルク軸ゲインKtsは増加する。
また、車速Vが増加するほどステアリング軸トルク軸ゲインKtsは減少する。すなわち、車速Vが増加するほどステアリング軸トルク軸ゲインKtsの絶対値が減少する。
図10の(b)は、実操舵角速度ωの符号が正(ω>0)であるときの目標速度値ω3の変化を概略的に示し、図10の(c)は、実操舵角速度ωの符号が負(ω<0)であるときの目標速度値ω3の変化を概略的に示す。
一点鎖線は、ステアリング軸トルクTsにより発生する目標速度値ω2を加えていない目標戻り操舵角速度(−ωt)を示す。
実線は、ステアリング軸トルク軸ゲインKtsによる補正後ステアリング軸トルクTs*に基づいて算出した目標速度値ω2を目標戻り操舵角速度(−ωt)に加算して得られた目標速度値ω3を示す。
また、操舵角θが正である範囲ではステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向が負の方向となり、操舵角θが負である範囲ではステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向が正の方向となる。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標速度値ω3の増加方向と考えると、目標速度値ω3は減少している。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標速度値ω3の増加方向と考えると、目標速度値ω3は増加している。
また、実操舵角速度ωの符号が負である場合、操舵角θが正である範囲では切り戻し操舵が行われている。操舵角θが負である範囲では切り増し操舵が行われている。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標速度値ω3の増加方向と考えると、目標速度値ω3は減少している。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標速度値ω3の増加方向と考えると、目標速度値ω3は増加している。
実線は、補正後ステアリング軸トルクTs*による目標速度値ω3の特性曲線であり、破線は、ステアリング軸トルク軸ゲインKtsにより補正されないステアリング軸トルクTsに基づいて算出した場合の目標速度値ω2(図面において「ω2’」と表記する)を目標戻り操舵角速度(−ωt)に加算して得られた目標速度値ω3を示す。ω2’はステアリング軸トルクTs(操舵角θ)により変化するが、理解の容易のために正の一定値とした。
また、二点鎖線は実操舵角速度ωの軌跡であり、目標速度値ω3及び操舵角θの平面に示した。
目標速度値ω3の特性曲線(実線)と、実操舵角速度ωの軌跡(二点鎖線)との交点では、目標速度値ω3と実操舵角速度ωとの偏差がなくなりハンドル戻し制御電流HRが0となる。この交点よりも操舵角θが大きい領域では、目標速度値ω3が実操舵角速度ωよりも小さいため目標速度値ω3は正の実操舵角速度ωを遅らせるように働く。すなわち、切り増し操舵を妨げる方向に働く。
実操舵角速度ω(二点鎖線)及び目標速度値ω3の特性曲線(実線)との交点よりも操舵角θが大きい領域では、目標速度値ω3が実操舵角速度ωよりも小さいため目標速度値ω3は負の実操舵角速度ωを進めるように働く。すなわち切り戻し操舵を助ける方向に働く。
この領域では、目標速度値ω3と実操舵角速度ωとの間の速度偏差Δ3の大きさは、実操舵角速度ωによる補正がない場合の速度偏差Δ2の大きさよりも小さくなる。この結果、切り戻し操舵を妨げるダンピング効果が減少する。これによりドライバーは過度の粘性感を感じないで操舵することができる。
次に、図12を参照して、電流指令値補正部32の動作例を説明する。
先ず操舵トルクTd、電流指令値Iref、車速V、操舵角θ、実操舵角速度ωを入力(読み取り)し(ステップS1)、操舵トルクゲイン部110は操舵トルクゲインThを出力する(ステップS2)。
ステアリング軸トルク算出部111は、操舵トルクTd、電流指令値Iref、実操舵角速度ω、及び車速Vに基づいて補正後ステアリング軸トルクTs*を算出するステアリング軸トルク算出処理を実行する(ステップS3)。
ステップS30においてゲイン部200は、電流指令値IrefにゲインKt倍してアシストトルクTaを算出する。ステップS31において加算部201は、アシストトルクTaと操舵トルクTdを加算してステアリング軸トルクTsを算出する。
加算部101は、LPF151で目標速度値ω1をフィルタ処理して得られた目標速度値ω2を加算することにより目標戻り操舵角速度“−ωt”を補正して(ステップS11)、目標速度値ω3を得る。目標速度値ω3は、第2操舵系特性部160に入力される(ステップS12)。
偏差SG1は乗算部132に入力され、操舵トルクゲインTh及び車速ゲインKPが乗算され(ステップS14)、その乗算によってハンドル戻し制御ゲインSG2が求められる。
(1)電動パワーステアリング装置は、少なくとも操舵トルクTdに基づいて電流指令値Irefを演算し、電流指令値Irefに基づいてモータ20を駆動し、モータ20の駆動制御によって操舵系をアシスト制御する。
舵角センサ14はステアリング軸2の操舵角θを検出し、角速度変換部38はステアリング軸2の実操舵角速度ωを検出し、車速センサ12は車速Vを検出する。目標操舵角速度設定部120は、操舵角θ及び車速Vに応じて、ステアリング軸2を中立位置へ戻すための目標戻り操舵角速度(−ωt)を設定する。
これにより、実操舵角速度ωに応じて目標操舵角速度を補正することが可能となる。この結果、ドライバーの操舵状態に応じた最適な目標操舵角速度を設定できる。
これにより、切り増し操舵時や切り戻し操舵時に、操舵を妨げるハンドル戻し制御電流を低減できる。これによりドライバーは過度の反力を感じないで操舵することができる。また、切り戻し操舵を助けるハンドル戻し制御電流を増加できる。このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態のステアリング軸トルク算出部111は、実操舵角速度ωに応じた補正値を加えることによりステアリング軸トルクTsを補正する。
図14を参照する。第2実施形態のステアリング軸トルク算出部111は、ゲイン部200と、加算部201と、補正値算出部204と、加算部205を備える。
補正値算出部204が算出する補正値ΔTsは、例えば図15に示すような特性を有してよい。
ステアリング軸トルク算出部111は、実操舵角速度ωに応じた補正値ΔTsを加えることによりステアリング軸トルクTsを補正する。これにより、第1実施形態と同様に、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを目標戻り操舵角速度ωtに反映させることができる。この結果、切り増し操舵時や切り戻し操舵時に、操舵を妨げるハンドル戻し制御電流を低減できる。これによりドライバーは過度の反力を感じないで操舵することができる。また、切り戻し操舵を助けるハンドル戻し制御電流を増加できる。このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
第3実施形態では、車速V、目標速度値ω1及び実操舵角速度ωを入力し、正規化実操舵角速度を実操舵角速度ωと目標速度値ω1の符号を乗算して求める。そして、目標速度値補正ゲイン算出部202と同様にしてステアリング軸トルクゲインKtsを求め、目標速度値ω1にステアリング軸トルクゲインKtsを乗算し、補正された目標速度値ω1をローパスフィルタに入力する。
第6実施形態では、車速V及び実操舵角速度ωを入力し、補正値算出部204と同様にして補正値ΔTsを求め、目標速度値ω2に補正値ΔTsを加算し、補正された目標速度値ω2を加算部101に入力する。
また、第1実施形態、第3実施形態又は第4実施形態のいずれかは第2実施形態、第5実施形態又は第6実施形態のいずれかと組み合わせて実施してよい。
Claims (6)
- 少なくとも操舵トルクに基づいて電流指令値を演算し、前記電流指令値に基づいてモータを駆動し、前記モータの駆動制御によって操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置であって、
ステアリング軸の操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記ステアリング軸の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部と、
車速を検出する車速検出部と、
前記操舵角及び前記車速に応じて、前記ステアリング軸を中立位置へ戻すための目標戻り操舵角速度を設定する目標操舵角速度設定部と、
前記操舵トルク、前記電流指令値、及び前記操舵角速度に基づいて前記目標戻り操舵角速度を補正する目標操舵角速度補正部と、
前記目標操舵角速度補正部により補正された前記目標戻り操舵角速度に基づいてハンドル戻し制御電流を算出するハンドル戻し制御電流算出部と、
前記ハンドル戻し制御電流で補正された前記電流指令値で前記モータを駆動する駆動部と、
を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記目標操舵角速度補正部は、
前記操舵トルク及び前記電流指令値に応じて算出されるステアリング軸トルク又は目標速度値を前記操舵角速度に応じて補正し、
前記操舵角速度に応じて補正された前記ステアリング軸トルクによって発生する操舵角速度又は補正された前記目標速度値を加えることにより前記目標戻り操舵角速度を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記目標操舵角速度補正部は、前記操舵角速度に応じた補正ゲインを乗じることにより前記ステアリング軸トルク又は前記目標速度値を補正することを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記目標操舵角速度補正部は、前記操舵角速度に応じた補正値を加えることにより前記ステアリング軸トルク又は前記目標速度値を補正することを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記目標操舵角速度補正部は、前記操舵角速度が高いほど切り増し操舵時に前記目標戻り操舵角速度を減少させ、前記操舵角速度が高いほど切り戻し操舵時に前記目標戻り操舵角速度を増加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記目標操舵角速度補正部は、前記操舵角速度に応じて、前記操舵角の変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを反映するように前記目標戻り操舵角速度を補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
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