JP2020073828A - 電器機器の使用方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、インバータに近接するベアリング(軸受)部材、特にベアリングボールには軸受鋼(SUJ2等)の金属が用いられていた。
このような不具合を解決するために近年はモータのシャフトをアースしたり、モータの外周に電磁ノイズを遮蔽する金属を着けたりすることが試みられるようになっていた。例えば、特開2006−328273号公報(特許文献1)では、軸受内に導電性グリースを充填してアース効果を得ている。しかしながら、導電性グリースは経時変化や液漏れなどの問題を有していた。
本発明は上記したような問題を解決するためになされたものであって、50Hz以上で駆動するインバータにおいて、EMD電流や高周波循環電流の発生により電食現象の発生を抑制したインバータ近傍に使用する軸受を提供するものである。また、電食現象の発生を抑制してあるので、インバータおよびそれを用いた電器機器の信頼性をも向上させることができる。
インバータは、直流を交流に変換するインバータ制御回路を有している。交流はプラスとマイナスが周期的に変化するものであり、この周期的変化が周波数となる。インバータは、周波数の変化に応じて回転速度を制御する方式である。複数のギアを組合せて回転数を制御する方式と比べて、ギアチェンジのような複雑な構成部品を要しないので軽量化できる。
それに対し、本発明ではインバータ近傍で使用する軸受に用いられる複数個の転動体のうち、少なくとも1つ以上の転動体は絶縁性セラミックスまたは絶縁コーティングにより電気抵抗値が107Ω・cm以上としたものを用いている。
また、電気抵抗値が107Ω・cm以上の転動体の数は多ければ多いほど良く、すべての転動体が電気抵抗値が107Ω・cm以上であることが好ましい。また、電気抵抗値は1010Ω・cm以上であることが好ましい。また、電気抵抗値の測定は2端子法による電気抵抗測定器により測定するものとする。
このような絶縁性を有する転動体としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、酸化ケイ素、フッ素樹脂、エンジニアリング樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を主成分とするものが挙げられる。
酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、酸化ケイ素の少なくとも1種を主成分とするセラミックスは、必要に応じ、焼結助剤を添加し、焼結したセラミックス焼結体が挙げられる。また、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、酸化ケイ素のセラミックス焼結体は、いずれも電気抵抗値107Ω・cm以上の絶縁体(絶縁性セラミックス焼結体)である。この絶縁性を低下させないように焼結助剤を選定するものとする。セラミックス焼結体の中で、酸化イットリウムを焼結助剤として使った窒化ケイ素焼結体は摺動特性が優れているので好ましい。
金属部材では前述の通り電食現象が生じてしまうが、絶縁性の溶射膜を設けることにより、絶縁性セラミックス焼結体と同等の絶縁性を維持することができる。溶射膜の膜厚は2〜300μmの範囲が好ましい。溶射膜の膜厚が2μm未満では膜?れが生じる可能性があり、300μmを超えるとそれ以上の効果が得られない。また、これら溶射膜は軸受鋼(SUJ2)となじみが良いので優れた接合強度が得られる。
図1に軸受の一例を示した。図中、1は軸受、2は転動体(ベアリングボール)、3は内輪、4は外輪である。内輪が回転軸に固定され軸受として機能する。また、外輪、内輪、回転軸は軸受鋼(SUJ2)により形成されている。
通常、軸受には転動体が8〜20個使われている。前述のような絶縁性を有する転動体を少なくとも1個以上使えば、50Hz以上で稼働するインバータ近傍に使用される軸受において電食を抑制することができる。
また、複数個の転動体のうち、何個を絶縁性にすべきかについては、電気抵抗値が107Ω・cm以上の転動体の個数をP(個)、軸受の回転数をM(rpm)、インバータの駆動周波数をF(Hz)としたとき、P×M≧60F、を満たすことが好ましい。なお、軸受の回転数M(rpm)とは使用環境での最高回転数である。
例えば、軸受の回転数Mが5000rpm、インバータの駆動周波数Fが200Hzのとき、P×5000≧60×200、P≧2.4、よって3個以上を電気抵抗値107Ω・cm以上のものにすれば電食を効果的に防ぐことができる。
また、インバータの駆動周波数が4000Hz以下であることが好ましい。絶縁性を有する転動体を使うことにより電食を効果的に防ぐことが可能となるが、あまり周波数が高くなり過ぎると転動体の絶縁性だけでは電食抑制効果が不十分になるおそれがある。そのため、絶縁性転動体を使うときは、駆動周波数50〜4000Hzのインバータ近傍で使用する軸受に好適である。より好ましくは50〜1000Hzである。
(実施例1〜4、比較例1)
内輪(内径5cm)、外輪(外径8cm)に直径1cmの転動体(ベアリングボール)を8個組込んだインバータ用軸受を製造した。内輪および外輪は軸受鋼(SUJ2)で構成した。
転動体は、SUJ2製球体(電気抵抗値104Ω・cm)と、窒化ケイ素焼結体製球体(電気抵抗値1012Ω・cm以上)をそれぞれ用意し、表1に示す割合で用いた。
このようなインバータ用軸受をインバータモータに組込み電器機器用インバータモータを製造した。各インバータモータの電食試験を行った。軸受をインバータモータに組込んだ(インバータと軸受は1m以内に配置)。
インバータモータの電食の測定は、周波数100Hz、外輪側にて回転速度7000rpmで連続400時間稼動させた際に、マイクロフォン(ピックアップセンサー)で音の強さを測定し、そのセンサ出力が30dBを上回る場合を振動「有」とし、25dBを上回り30dB以下を振動「ややあり」、25dB未満の場合を振動「無」とした。なお、モータ稼働1時間後の摺動音はいずれも25dB未満であった。測定の結果を表1に示す。
内輪(内径8cm)、外輪(外径10cm)に直径1cmの転動体(ベアリングボール)を12個組込んだインバータモータ用軸受を製造した。内輪および外輪は軸受鋼(SUJ2)で構成した。
転動体は、SUJ2製球体(電気抵抗値104Ω・cm)と、窒化ケイ素焼結体製球体(電気抵抗値1012Ω・cm以上)をそれぞれ用意し、表2に示す割合で用いた。
次にインバータモータの駆動周波数を800Hz、回転速度を8000rpmに変えた以外は実施例1と同様のインバータモータを製造した。同様に振動の増加の有無で電食の有無を確認した。なお、軸受をインバータモータに組込んだ(インバータと軸受は1m以内に配置)。その結果を表2に示す。
実施例1において絶縁性転動体として、SUJ2に酸化アルミニウム溶射膜(膜厚3μm)を設けた電気抵抗値1010Ω・cm以上のものを用い、同様の測定を行った。なお、インバータモータと軸受は1m以内に配置した。その結果を表3に示す。
窒化珪素焼結体(電気抵抗値1012Ω・cm以上)を実施例13、エンジニアリング樹脂(電気抵抗値1013Ω・cm)を実施例14、酸化クロム溶射膜(膜厚100μm)を施したSUJ2球(電気抵抗値108Ω・cm以上)を実施例15として表4に示す条件でインバータ用軸受を構成し、実施例1と同様の方法で電食の有無を測定した。転動体の直径は1cmに統一し、軸受は転動体の全個数が16個のものを用いた。なお、インバータモータと軸受は1m以内に配置した。その結果を表4に示す。
2…転動体(ベアリングボール)
3…内輪
4…外輪
Claims (8)
- インバータモータの駆動周波数を50Hz以上4000Hz以下に制御する制御回路から1m以内の位置で使用される転がり軸受であって、
電気抵抗値が1010Ω・cm以上である絶縁性の転動体を含む複数の転動体を備え、
前記絶縁性の転動体は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種以上を含むセラミックス焼結体である、転がり軸受。 - 前記セラミックス焼結体は、窒化ケイ素焼結体である、請求項1に記載の転がり軸受。
- 前記セラミックス焼結体は、希土類酸化物をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の転がり軸受。
- 前記絶縁性の転動体の電気抵抗値が1012Ω・cm以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 前記絶縁性の転動体の個数は、前記複数の転動体の個数未満である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 前記転がり軸受は、前記インバータモータに設けられており、
前記駆動周波数100Hz、外輪側にて前記転がり軸受の回転速度7000rpmで前記インバータモータを連続400時間駆動させた際に生じる摺動音をピックアップセンサを用いて測定したとき、センサ出力が25dB未満である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の転がり軸受。 - 前記駆動周波数を50Hz以上1000Hz以下に制御する制御回路から1m以内の位置で使用される、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 前記転がり軸受は、工場用機器、サーバ、パーソナルコンピュータ、エレベータ、ポンプ、ファン、家庭用電化製品、電気自動車、および鉄道車両の少なくとも一つに設けられている、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の転がり軸受。
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