JP2020070353A - 防錆塗料組成物およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】アルキルシリケートの縮合物(A)と、亜鉛末(B)と、リン酸アルミニウム(C)とを含有し、前記亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))が、5.0〜11.0である防錆塗料組成物であり、該組成物に含まれる不揮発分に占める前記亜鉛末(B)の含有率が50〜70質量%である、防錆塗料組成物。【効果】本発明の防錆塗料組成物は、防食性、特に塩水噴霧耐性および屋外暴露耐性が高く、さらに溶接性が高い防錆塗膜を形成することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、鋼材加工工程等に用いられる防錆塗料組成物およびその用途に関する。さらに詳しくは、優れた防食性および溶接性を有する防錆塗膜を形成することができる防錆塗料組成物、およびこの防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜付き基材等に関する。
従来、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型鉄鋼構造物の建造中における発錆を防止する目的で、基材表面に防錆塗料が塗装されている。このような防錆塗料としては、ウォッシュプライマー、ノンジンクエポキシプライマー、エポキシジンクリッチプライマー等の有機防錆塗料、シロキサン系結合剤および亜鉛末を含有する無機ジンク防錆塗料が知られている。これらの防錆塗料のうち、溶接性に優れた無機ジンク防錆塗料が最も広く用いられている。
近年、溶接の自動化、高速化が進んできており、溶接速度の向上に伴い、従来の無機ジンク防錆塗料においては、ピットやブローホールのような溶接欠陥の発生が増加し、生産性向上の障壁となってきている。このため、より一層、溶接性の向上した無機ジンク防錆塗料が求められている。
また、屋外環境に晒される構造物に対しては高い屋外暴露耐性が求められ、また船舶、海洋構造物等の臨海地域で建造される構造物に対しては、海水に対する高い防食性が求められ、塩水噴霧耐性の向上が要求されている。
特許文献1には、バインダー樹脂と、Zn系金属粉と、Mgを含有する縮合リン酸アルミニウムとを含有する塗料組成物が開示されており、この塗料組成物は、薄膜で塗装しても、良好な耐食性を発現する塗膜を形成することができる旨が記載されている。
特許文献2には、鋼板の少なくとも片面上に、バインダー樹脂、亜鉛系金属粉と、Mgを含有する縮合リン酸アルミと、を含有する被膜を有する被覆鋼板が開示されており、この被覆鋼板は、長期の耐食性に優れ、環境にやさしく、安価である旨が記されている。
特許文献3には、硅素系無機化合物、亜鉛末およびリン酸塩系顔料および長石の少なくとも一方を含有した防錆塗料組成物が開示されており、この塗料組成物は、溶接の際に発生するピットやブローホール等の溶接欠陥の発生を大幅に減少させることができ、溶接の速度を向上させることができる旨が記載されている。
特許文献4には、珪素系無機化合物を結合剤とし、これに防錆顔料として亜鉛末および結晶水を有しない環状のメタリン酸アルミニウムを配合した防錆塗料組成物が開示されており、この塗料組成物は、鋼材の高熱下における加工工程においても白錆びが発生したり、亜鉛蒸気による溶接欠陥を生じたりすることのない、防錆性に優れた塗膜を形成することができる旨が記載されている。
特開2017−122186号公報 特開2017−121778号公報 特開平6―200188号公報 特開平11−116856号公報
しかし、前記特許文献に開示された塗料組成物から形成された塗膜および被覆鋼板は、溶接性のさらなる向上が求められるか、あるいは屋外暴露耐性または塩水噴霧耐性が不十分であった。
本発明は、上述の課題を解決しようとするものであって、防食性、特に塩水噴霧耐性および屋外暴露耐性、ならびに溶接性の高い防錆塗膜を形成することができる防錆塗料組成物、およびその用途を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定組成の防錆塗料組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
<1> アルキルシリケートの縮合物(A)と、亜鉛末(B)と、リン酸アルミニウム(C)とを含有し、
前記亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))が、5.0〜11.0である防錆塗料組成物であり、
該組成物に含まれる不揮発分に占める前記亜鉛末(B)の含有率が50〜70質量%である、防錆塗料組成物。
<2> 前記リン酸アルミニウム(C)が、トリポリリン酸二水素アルミニウムである<1>に記載の防錆塗料組成物。
<3> 前記防錆塗料組成物のPVC(顔料体積濃度)が、60〜70%である<1>または<2>に記載の防錆塗料組成物。
<4> <1>〜<3>のいずれかに記載の防錆塗料組成物から形成された防錆塗膜。
<5> <4>に記載の防錆塗膜からなり、平均乾燥膜厚が10μm以下である一次防錆塗膜。
<6> <4>に記載の防錆塗膜または<5>に記載の一次防錆塗膜と基材とを含有する防錆塗膜付き基材。
<7> 下記工程[1]および[2]を含む、防錆塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に<1>〜<3>のいずれかに記載の防錆塗料組成物を塗装する工程
[2]前記基材に塗装された前記防錆塗料組成物を乾燥させて前記基材上に塗膜を形成する工程
本発明の防錆塗料組成物は、防食性、特に塩水噴霧耐性および屋外暴露耐性が高く、さらに溶接性が高い防錆塗膜を形成することができる。
図1は、溶接試験の概要を示す図である。
以下、本発明の防錆塗料組成物(以下、「本組成物」ともいう。)、防錆塗膜、防錆塗膜付き基材およびその製造方法について、好適な態様を含めて詳細に説明する。
≪防錆塗料組成物≫
本組成物は、アルキルシリケートの縮合物(A)と、亜鉛末(B)と、リン酸アルミニウム(C)とを含有し、前記亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))が、5.0〜11.0である防錆塗料組成物であり、該組成物に含まれる不揮発分に占める前記亜鉛末(B)の含有量が50〜70質量%である。
本組成物は、前記成分(A)〜(C)を含み、前記成分(B)と前記成分(C)の質量比が特定の範囲にあり、かつ、成分(B)の含有比率が特定の範囲にあることから、塩水噴霧耐性が高く、さらに溶接性が高い防錆塗膜を形成することができる。
本組成物は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲で、導電性顔料;体質顔料;着色顔料;前記亜鉛末(B)、前記リン酸アルミニウム(C)および導電性顔料を除く防錆顔料;前記アルキルシリケートの縮合物(A)以外の結合剤(バインダー);その他の顔料;添加剤ならびに有機溶剤等を含有してもよい。
本組成物は、通常、アルキルシリケートの縮合物(A)を含有する主剤成分と、亜鉛末(B)およびリン酸アルミニウム(C)を含有するペースト成分とからなる2成分型の組成物である。また、必要に応じて、本組成物は、3成分以上からなる多成分型の組成物であってもよい。これらの主剤成分およびペースト成分は、通常、それぞれ別個の容器にて、保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
<アルキルシリケートの縮合物(A)>
アルキルシリケートの縮合物(A)は、重量平均分子量(Mw)が1,500〜8,000であることが好ましく、1,500〜7,000であることがより好ましい。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値であり、その詳細は実施例に記載したとおりである。
前記Mwが上記範囲にあると、塗料の乾燥時に短時間で常温、例えば5〜35℃での硬化が可能であり、また塗膜の防食性および基材との付着強度が向上するとともに、溶接時のブローホール(内泡)の発生の抑制効果が大きくなる。一方、Mwが上記下限値を下回ると、アルキルシリケートの縮合物(A)の硬化反応が遅く、短時間での硬化が求められる場合、塗膜の乾燥時に高温、例えば200〜400℃での加熱硬化が必要になる。Mwが上記上限値を上回ると、ポットライフが短くなる傾向にある。
アルキルシリケートの縮合物(A)に用いられるアルキルシリケートとしては、例えば、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラ−n−プロピルオルトシリケート、テトラ−i−プロピルオルトシリケート、テトラ−n−ブチルオルトシリケート、テトラ−sec−ブチルオルトシリケート、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート等の化合物が挙げられる。
アルキルシリケートの縮合物(A)は、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、アルキルシリケートと有機溶剤との混合溶液に塩酸等を添加し攪拌して、部分加水分解縮合物を生成させることにより、アルキルシリケートの縮合物(A)を製造することができる。
このようなアルキルシリケートの縮合物(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキルシリケートの縮合物(A)の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、不揮発分で通常10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%、より好ましくは16〜23質量%である。アルキルシリケートの縮合物(A)の含有量が前記範囲にあると、連続性を有する均質な塗膜とすることができ、結果として鋼材の発錆をより効果的に防止することができる。
前記不揮発分とは、本組成物の下記条件下における加熱残分を意味する。塗料組成物の加熱残分は、JIS K 5601 1−2の規格(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従い測定することができる。
<亜鉛末(B)>
前記亜鉛末(B)は、金属亜鉛の粉末、または亜鉛を主体とする合金の粉末であれば特に制限されず、例えば、亜鉛とアルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金が挙げられ、好ましくは亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−錫合金が挙げられる。また、このような亜鉛末(B)の形状は、特に制限されず、例えば、鱗片状、球状などのいずれであってもよい。このような亜鉛末(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本組成物における、前記亜鉛末(B)と後述するリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))は、5.0〜11.0であり、好ましくは5.0〜10.0であり、より好ましくは5.0〜9.0、特に好ましくは5.0〜8.0である。前記質量比((B)/(C))が前記範囲にあると、本組成物から形成される塗膜の防食性、特に塩水耐水性および屋外暴露耐性、ならびに溶接性が良好になる。質量比((B)/(C))が前記範囲の上限値を上回ると、相対的にリン酸アルミニウム量が少なくなり、溶接性が悪くなる傾向にある。一方、質量比((B)/(C))が前記範囲の下限値を下回ると、相対的にリン酸アルミニウム量が多くなり、溶接性は良好になるものの、屋外暴露耐性が悪化する傾向にある。これは、多量に存在するリン酸アルミニウムが亜鉛の犠牲防食作用を阻害することが原因であると考えられる。
本組成物に含まれる不揮発分に占める亜鉛末(B)の含有率は50〜70質量%であり、好ましくは50〜65質量%である。亜鉛末(B)の含有率が前記範囲にあると、本組成物から形成される塗膜の防食性、特に塩水耐水性および屋外暴露耐性、ならびに溶接性がバランスよく良好になる。亜鉛末(B)の含有率が前記範囲の上限値を上回ると、溶接時に発生する亜鉛ヒューム量が増加し、溶接作業者の健康面への悪影響が懸念されるとともに、溶接性が悪化する傾向にある。一方、亜鉛末(B)の含有率が前記範囲の下限値を下回ると、亜鉛末量が少ないため、各種防食性が悪化する傾向にある。
本組成物は、前記亜鉛末(B)として、鱗片状亜鉛末と球状亜鉛末を併用する態様、あるいは球状亜鉛末のみを含有する態様が好ましい。球状亜鉛末のみを含有する場合、球状亜鉛末は鱗片状亜鉛末と比べて安価であるため、経済的に優れているとともに、必要十分な防食性を有する塗膜を形成することができる。一方、鱗片状亜鉛は比表面積が大きいので、防錆塗膜中の亜鉛末間の接触が密になり易い傾向にある。したがって、鱗片状亜鉛末を含有する組成物は、形成される防錆塗膜中の亜鉛末(B)の含有量が比較的少量であっても、長期暴露後の防食性に優れた塗膜を形成することができる。
また、本組成物より形成された防錆塗膜が、溶接時等に800℃以上の高温で加熱された場合、鱗片状亜鉛末はその比表面積が大きいため酸化され易く、加熱後の防食性が低下することがある。一方、鱗片状亜鉛末と球状亜鉛末を併用した場合、防錆塗膜が前記高温で加熱された場合であっても、球状亜鉛末は内部に金属亜鉛が残存し易く、加熱後の防食性を維持できる傾向にある。
また、鱗片状亜鉛末は金属光沢色を有しており、塗膜を形成する際に、該亜鉛末粒子の主面が塗膜表面と平行に配向しやすいため、他の着色顔料を導入した場合でも色相が金属光沢色を帯びやすい傾向がある。したがって、鱗片状亜鉛末を用いる場合、色相設計に制限があることがある。一方、鱗片状亜鉛末と球状亜鉛末を併用することで相対的に鱗片状亜鉛末の含有量を減量することできるため、この傾向が緩和され、自由に色相設計をすることが可能となる。
前記亜鉛末(B)の市販品としては、例えば、鱗片状金属亜鉛末であるSTANDART Zinc flake GTT、STANDART Zinc flake G、STANDART Zinc flake AT(以上、ECKART GmbH製)、鱗片状亜鉛合金粉末であるSTAPA 4ZNAL7(亜鉛とアルミニウムとの合金;ECKART GmbH製)、STAPA 4 ZNSN30(亜鉛と錫との合金;ECKART GmbH製)、球状亜鉛末であるF−2000(本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
<リン酸アルミニウム(C)>
本組成物は、リン酸アルミニウム(C)を含有することにより、優れた塩水噴霧耐性および屋外暴露耐性等の防食性を発現し、さらに優れた溶接性をも発現する。
前記リン酸アルミニウム(C)は一般に防錆顔料として利用されてきたが、これを亜鉛末に対して特定割合で使用することにより、前記の防食性および溶接性を著しく向上させる効果が得られることは、これまで知られておらず、当業者ですら予想することができない新規な知見である。上記効果を発現する作用機序は明らかではないが、防食性については、亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)の質量比を特定の範囲に調整することで、亜鉛末の犠牲防食作用が制御され、長期的な防食性の発現に寄与していると推測される。また、溶接性については、本組成物より形成された塗膜で被覆された鋼材をアーク溶接する際に、溶接時の溶融プール内において、リン酸アルミニウム(C)を構成するPとAlのイオンが同時に存在することにより、アークの安定化に寄与しているためであると推測される。
リン酸アルミニウム(C)としては、第3リン酸アルミニウム、オルトリン酸二水素アルミニウム、ピロリン酸アルミニウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウムなどが挙げられる。防食性、溶接性付与の観点から、トリポリリン酸二水素アルミニウムに代表される縮合リン酸アルミニウムが好ましい。リン酸アルミニウム(C)の市販品としては、例えば、トリポリリン酸二水素アルミニウムであるK−WHITE#84、K−WHITE#105(テイカ(株)製)等を使用することができる。
本組成物における、亜鉛末(B)とリン酸二水素アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))は前述のとおりである。
<その他の成分>
本組成物は、その他の成分として、前記アルキルシリケート縮合物(A)以外の結合剤、導電性顔料、体質顔料、着色顔料、防錆顔料、その他の顔料、沈降防止剤、乾燥剤、流動性調整剤、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤、有機溶剤等を、本発明の目的および効果を損なわない範囲で適宜含有してもよい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<前記アルキルシリケート(A)以外の結合剤>
本組成物は、アルキルシリケートの縮合物(A)以外の結合剤として、例えば、ポリビニルブチラール樹脂等を含有してもよい。該ポリビニルブチラール樹脂の市販品としては、例えば、エスレックB BM−2(積水化学工業(株)製)が挙げられる。
このようなアルキルシリケート縮合物(A)以外の結合剤は、本組成物が、2成分型の組成物である場合、主剤成分に含有することが好ましい。
<導電性顔料>
本組成物は、形成される防錆塗膜の防食性を向上させることができる等の観点から、導電性顔料を含有することが好ましい。特に、亜鉛末(B)として、球状亜鉛末のみを含有する場合、防錆塗膜の犠牲防食効果を高める観点から、前記を併用することが好ましい。
具体的には、本組成物からなる防錆塗膜が優れた防食性を発揮するためには、前記亜鉛末(B)がイオン化した際に発生する電子を効率的に鋼材等の基材へ供給することが重要である。通常、防錆塗膜中の亜鉛末(B)同士が接触することによって通電効果を得ることができ、特に鱗片状亜鉛末を含有する防錆塗膜は、亜鉛末同士が接触し易い傾向にある。一方、亜鉛末(B)として球状亜鉛末のみを含有する防錆塗膜は、導電性顔料をさらに含有させることによって、導電性顔料が亜鉛末間を接続する役割を果たし、効果的な犠牲防食効果を得ることができ、良好な防食性を発揮することができる。
前記導電性顔料としては、例えば、亜鉛末(B)および後述するモリブデン以外の金属粉末、酸化亜鉛ならびに炭素粉末等が挙げられる。これらの中でも、安価で導電性の高い酸化亜鉛が好ましい。
前記酸化亜鉛の市販品としては、例えば、酸化亜鉛1種(堺化学工業(株)製)、酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製)等が挙げられる。
前記金属粉末としては、例えば、Fe−Si粉、Fe−Mn粉、Fe−Cr粉、磁鉄粉、リン化鉄が挙げられる。該金属粉末の市販品としては、例えば、フェロシリコン(キンセイマテック(株)製)、フェロマンガン(キンセイマテック(株)製)、フェロクロム(キンセイマテック(株)製)、フェロフォス2132(オキシデンタル ケミカルコーポレーション製)等が挙げられる。
前記炭素粉末としては、カーボンブラック等が挙げられる。該炭素粉末の市販品としては、例えば、三菱カーボンブラックMA−100(三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
前記導電性顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記導電性顔料を用いる場合、導電性顔料の含有量は、亜鉛末(B)100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。前記導電性顔料の含有量が前記範囲にあると、塗膜の犠牲防食効果を高め、防食性を向上させる点で好ましい。
また、導電性顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、0質量%を超えて10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。前記導電性顔料の含有量が前記範囲にあると、亜鉛末(B)の含有量を少なく抑えつつ防食性を維持できる点で好ましい。
<体質顔料>
前記体質顔料は、一般的な塗料に使用される無機顔料であれば特に制限されないが、耐熱性を有する無機顔料であることが好ましく、例えば、カリ長石、ソーダ長石、カオリン、マイカ、シリカ、タルク、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、珪酸ジルコニウム、珪灰石、珪藻土等が挙げられる。また、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム等の熱分解ガスを発生する無機顔料であってもよい。このような体質顔料としては、カリ長石、マイカが好ましい。
前記体質顔料の市販品としては、例えば、カリ長石であるUNISPAR PG−K10(Sibelco Malaysia Sdn. Bhd製)、マイカパウダー100メッシュ((株)福岡タルク工業所製)、カオリンASP−200(BASFジャパン(株))、珪酸ジルコニウムであるA−PAX45M(キンセイマテック(株)製)、FC−1タルク((株)福岡タルク工業所製)、シリカQZ−SW((株)五島鉱山製)、沈降性硫酸バリウム 100(堺化学(株)製)、珪藻土であるラヂオライト(昭和化学工業(株))等が挙げられる。
前記熱分解ガスを発生する無機顔料は、熱分解、例えば500〜1500℃での熱分解によってガス、例えばCO2、F2を発生する。このような顔料を含有する塗膜で被覆された鋼材を溶接する際に、溶接時の溶融プール内において、アルキルシリケートの縮合物(A)、および、後述する縮合物(A)以外の組成に由来するガスにより生じた気泡を、上記無機顔料由来のガスとともに、溶融プール内から除去する作用を有する。該顔料の市販品としては、例えば、蛍石400メッシュ(キンセイマテック(株)製)、NS#400(日東粉化工業(株)製)、炭酸マグネシウム(富田製薬(株)製)、炭酸ストロンチウムA(本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
前記体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような熱分解ガスを発生する無機顔料を用いる場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.2〜4質量%である。
また、熱分解ガスを発生する無機顔料以外の体質顔料を用いる場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.1〜25質量%である。
<着色顔料>
前記着色顔料は、無機系着色顔料および有機系着色顔料を含む。無機系着色顔料としては、前記導電性顔料以外の無機系着色顔料であれば特に制限されないが、例えば、酸化チタン、弁柄、銅・クロム・マンガンの複合酸化物等が挙げられる。有機系着色顔料としては、フタロシアニングリーンおよびフタロシアニンブルー等の有機系着色顔料を挙げることができる。該有機系着色顔料の市販品としては、例えば、TITONE R−5N(堺化学工業(株)製)、弁柄No.404(森下弁柄工業(株)製)、ダイピロキサイドブラック #9510(大日精化工業(株)製)、Heliogen Green L8690(BASFジャパン(株)製)、およびFASTOGEN Blue 5485(DIC(株)製)等が挙げられる。
前記着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機系着色顔料を用いる場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.1〜25質量%である。
有機系着色顔料を用いる場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.15〜2.0質量%である。
<防錆顔料>
前記防錆顔料は、前記亜鉛末(B)、リン酸アルミニウム(C)および導電性顔料以外の防錆顔料であり、塗膜の防食性をさらに向上させる目的で用いられる。前記防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、塩化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、ニトロ化合物等が挙げられる。
前記防錆顔料の市販品としては、例えば、リン酸カルシウム亜鉛系化合物であるLFボウセイCP−Z(キクチカラー(株)製)、亜リン酸亜鉛系(カルシウム)化合物であるプロテクスYM−70(太平化学産業(株)製)、亜リン酸亜鉛系(ストロンチウム)化合物であるプロテクスYM−92NS(太平化学産業(株)製)、シアナミド亜鉛系化合物であるLFボウセイZK−32(キクチカラー(株)製)、硫化亜鉛であるSachtolich HD(Sachleben Chemie GmbH製)、塩化亜鉛((株)長井製薬所製)等が挙げられる。
前記防錆顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
防錆顔料を用いる場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.1〜25質量%である。
<その他の顔料>
本組成物は、前記亜鉛末(B)、リン酸アルミニウム(C)、導電性顔料、体質顔料、着色顔料および防錆顔料以外の顔料を含有してもよい。このような顔料として、アルカリガラス粉末、モリブデンおよびモリブデン化合物等が挙げられる。
アルカリガラス粉末、モリブデンおよびモリブデン化合物は、例えばWO2014/014063等に例示されている。
<添加剤>
本組成物は、沈降防止剤、乾燥剤、流動性調整剤、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
前記沈降防止剤としては、例えば、有機ベントナイト系、酸化ポリエチレン系、ヒュームドシリカ系、アマイド系等の沈降防止剤が挙げられる。該沈降防止剤の市販品としては、例えば、TIXOGEL MPZ(BYK Additives GmbH製)、ディスパロン4200−20(楠本化成(株)製)、ディスパロンA630−20X(楠本化成(株)製)、AEROSIL 200(日本アエロジル(株)製)が挙げられる。
本組成物が沈降防止剤を含有する場合、その含有量は、本組成物が前記2成分型の組成物である場合、ペースト成分の不揮発分100質量%中に、通常0.5〜5.0質量%、好ましくは0.5〜3.0質量%である。前記沈降防止剤の含有量が前記範囲にあると、顔料の沈殿が少なく、ペースト成分と主剤成分とを混合する際の作業性の点で好ましい。
<有機溶剤>
本組成物は、亜鉛末(B)の分散性が向上すること、また塗装工程において鋼材へのなじみ性が良く、鋼材との密着性に優れた塗膜が得られることから、有機溶剤を含有することが好ましい。
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、グリコール系溶剤等の塗料分野で通常使用されている有機溶剤を用いることができる。
前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。前記エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。前記ケトン系溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンノン等が挙げられる。前記芳香族系溶剤としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン等が挙げられる。前記グリコール系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
本組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は、通常25〜50質量%、好ましくは35〜45質量%、より好ましくは38〜42質量%である。本発明の塗料組成物は、このような有機溶剤型組成物であることが好ましい。
また、本組成物は、平均乾燥膜厚が10μm以下の一次防錆塗膜を形成する場合、温度23℃において岩田粘度カップ(型式:NK−2、アネスト岩田(株)製)を用いて測定した粘度が9〜13秒であることが好ましく、9〜11秒であることがより好ましい。本組成物の粘度を上記範囲内に調整するため、本組成物に前記有機溶剤を適宜含有させてもよい。
<顔料体積濃度(PVC)>
本組成物は、顔料体積濃度(PVC)が好ましくは60〜70%であり、より好ましくは61〜68%、さらに好ましくは62〜67%である。本発明において顔料体積濃度(PVC)とは、本組成物の不揮発分中の顔料成分と、エタノールとトルエンを1対1の比率で混合した有機溶剤に23℃下で不溶な添加剤中の固体粒子とが本組成物の不揮発分に占める割合(体積基準)を百分率で表した濃度を指す。顔料体積濃度(PVC)は下式で求められる
「顔料成分」としては、例えば、亜鉛末(B)、リン酸アルミニウム(C)、導電性顔料、体質顔料、着色顔料、防錆顔料ならびにその他の顔料が挙げられる。「添加剤」としては、例えば、沈降防止剤、乾燥剤、流動性調整剤、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
PVCの算出にあたり、各成分の質量とその密度から、各成分の体積を算出する。また、アルキルシリケートの縮合物(A)については、SiO2換算のアルキルシリケートの縮合物(A)の質量とその密度から、その体積を算出する。
前記本組成物中の不揮発分の全体積は、本組成物の固形分の質量および真密度から算出することができる。本組成物の固形分の質量および真密度は、測定値でも、上述の通り、用いる原料から予め算出した値でも構わない。
前記顔料成分の全体積と前記添加剤中の固体粒子の全体積との和は、用いた顔料および添加剤中の固体粒子の質量および真密度から算出することができる。前記顔料および添加剤中の固体粒子の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。例えば、顔料成分の全体積と前記添加剤中の固体粒子の全体積との和は、本組成物の不揮発分より、前記エタノールとトルエンを1対1の比率で混合した有機溶剤を用いて、顔料および添加剤中の固体粒子と他の成分とを分離し、分離された顔料および固体粒子の質量および真密度を測定することで算出することができる。
本組成物のPVCを上記範囲に調整することにより、塗膜中の顔料を密にすることができ、平均乾燥膜厚が10μm以下の一次防錆塗膜を容易に形成することが可能となる。一方、本組成物のPVCが上記範囲の上限値を上回る場合、形成される塗膜中のアルキルシリケートの縮合物(A)および該縮合物(A)以外の結合剤の割合が低くなり、顔料の間に空隙ができやすくなるため、平均乾燥膜厚が10μm以下の一次防錆塗膜を形成することは困難になる。また、本組成物のPVCが上記範囲の下限値を下回る場合、形成される塗膜中の上記縮合物(A)および該縮合物(A)以外の結合剤の割合が高くなり、亜鉛末(B)同士の通電効果を得られにくくなるため、塗膜の防食性が低くなる場合がある。また、塗膜中の上記縮合物(A)由来の有機分が多くなるため、溶接性が低くなる場合がある。
本組成物は、PVCを上記範囲内に調整することにより、以下の(1)〜(3)の利益を得ることもできる。
(1)前記一次防錆塗膜は、塗装面積当りの塗料使用量を削減でき、塗装面積当りのVOC発生量が通常40g/m2以下となるため、環境負荷が低減される傾向にある。また、塗装面積当りの亜鉛末(B)の含有量も通常30g/m2以下となるため、資源保護の観点でも優れている。(2)平均乾燥膜厚10μm以下である一次防錆塗膜であっても、塗膜の長期暴露後の防食性が優秀である。(3)薄膜の一次防錆塗膜を形成できるため、鋼材の溶接工程における溶接速度を速くすることができ、生産性を向上することができる。
<防錆塗料組成物の用途>
本発明の防錆塗料組成物は、好ましくは一次防錆塗料組成物である。
一般的に、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型構造物用鋼材に適用する防錆塗膜には、大型構造物の建造工程の溶断、溶接等に支障がなく、建造期間中に鋼材の発錆を抑制するとともに、該防錆塗膜上に適用される上塗り塗膜との優れた付着性が求められる。よって、これらの性能に優れる本組成物より形成された防錆塗膜は、上記用途に好適に使用することができる。
<防錆塗膜および防錆塗膜付き基材>
本発明の防錆塗膜(以下「本防錆塗膜」ともいう。)は、上述の防錆塗料組成物から形成され、また、本発明の防錆塗膜付き基材は、鋼材等の基材と、前記基材表面に形成された、上述の防錆塗料組成物からなる防錆塗膜とを有する。
前記基材の材質としては、鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等の鉄鋼が挙げられる。また、前記基材は、必要により、ISO 8501−1における除錆度Sa2 1/2以上に相当する条件でブラスト処理されていることが好ましい。
本防錆塗膜の電磁式膜厚計を用いて測定した平均乾燥膜厚は、通常30μm以下、好ましくは5〜20μmである。また、本防錆塗膜が一次防錆塗膜である場合、平均乾燥膜厚は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5〜9μmである。
上記一次防錆塗膜において、溶接工程における亜鉛末(B)に起因するガスの発生を抑制することができる点より、単位面積当りの亜鉛末(B)の含有量は、通常5〜30g/m2、好ましくは5〜20g/m2であることが望ましい。なお、単位面積当りの亜鉛末(B)の含有量は、塗料組成物中の亜鉛末(B)の含有量、および測定して得られた平均乾燥膜厚より、塗膜中の単位面積当りの亜鉛末(B)の含有量を計算してもよいし、単位面積当りの塗膜に含まれる亜鉛末(B)の含有量を分析して求めてもよい。
<防錆塗膜付き基材の製造方法>
本防錆塗膜は、前述した本組成物より形成され、具体的には、下記工程[1]および[2]を含む工程を経ることで、製造することができる。
[1]基材に本防錆塗料組成物を塗装する工程
[2]前記基材上に塗装された前記防錆塗料組成物を乾燥させて前記基材上に塗膜を形成する工程
<工程[1]>
本組成物を基材上に塗装する方法としては特に制限されず、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、刷毛塗装、ローラー塗装等の従来公知の方法により塗装することができる。一般的に、造船所、製鉄所等で本組成物を塗装する場合、主にライン塗装機が用いられる。ライン塗装機のライン速度、塗装機内部に設置されたエアスプレー、エアレススプレー等の塗装圧力、スプレーチップのサイズ(口径)等の塗装条件は、形成したい防錆塗膜の膜厚に応じて適宜変更することができる。例えば、ライン塗装機は、ライン速度4.5m/min、チップサイズ(GRACO)617〜929塗装、2次(塗料)圧:3.8〜8.9MPa程度に設定すればよい。
<工程[2]>
本組成物は、常温で乾燥、硬化可能であるが、ライン塗装機のライン速度によっては、加熱・熱風乾燥させてもよい。加熱・熱風乾燥する場合、乾燥温度は、通常5〜40℃、好ましくは10〜30℃であり、その乾燥時間は、通常3〜15分、好ましくは5〜10分である。本組成物は、Mwが前記範囲にあるアルキルシリケートの縮合物(A)を用いることで、このような常温程度においても短時間で塗膜を硬化させることができる。したがって、本発明の塗料組成物は、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等における鋼板加工工程で行われる鋼板の前処理での使用に適している。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
<アルキルシリケートの縮合物(A)の調製方法>
〔調製例1〕
エチルシリケート40(コルコート(株)製)41.8部、工業用エタノール9.5部、脱イオン水5部、および35質量%塩酸0.1部を容器に仕込み、65℃で5時間攪拌した後、イソプロピルアルコール43.6部を加えて、アルキルシリケートの縮合物の溶液Aを調製した。
このようにして得られたアルキルシリケートの縮合物の溶液Aを、本組成物の主剤成分とした。よって、以下の記載において、アルキルシリケートの縮合物の溶液Aは、主剤成分Aとも記載する。
以下に示す測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で、得られたアルキルシリケートの縮合物の溶液Aに含有されるアルキルシリケートの縮合物の重量平均分子量(Mw)を測定した結果、Mwは3,000であった。なお、該溶液を少量秤取し、テトラヒドロフランを加えて希釈し、さらにその溶液をメンブレムフィルターで濾過して、GPC測定サンプルとした。
・装置:「Alliance 2695」(Waters社製)
・カラム:「TSKgel Super H4000」1本と「TSKgel Supe
r H2000」2本を連結(いずれも東ソー(株)製、内径6mm×長さ15cm)
・溶離液:テトラヒドロフラン99%(Stabilized with BHT)
・流速:0.6ml/min
・検出器:「RI−104」(Shodex社製)
・カラム恒温槽温度:40℃
・標準物質:ポリスチレン
<ペースト成分の調製方法>
〔調製例2〕
沈降防止剤として0.6部のTIXOGEL MPZ(BYK Additives GmbH製)と、有機溶剤として4.3部のキシレン、5.9部のイソブチルアルコールおよび4.0部の酢酸ブチル、リン酸アルミニウム(C)としてトリポリリン酸二水素アルミニウムである4.7部のK−WHITE #105、体質顔料として1.6部のUNISPAR PG−K10(Sibelco Malaysia Sdn. Bhd製)、をそれぞれポリエチレン製容器に仕込み、ガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて3時間振とうした。次いで、亜鉛末(B)として30.7部の球状亜鉛末F−2000(本荘ケミカル(株)製)を加えて、さらに5分間振とうして顔料成分を分散させた。その後、80メッシュの網を用いてガラスビーズを除去してペースト成分B−1を調製した。
〔調製例3〜14〕
下記表1に示す各原料を表1に記載の量で用いた以外は、調製例2と同様にして、ペースト成分B−2〜B−13を調製した。表1中の数値は質量部を示す。
なお、表1に記載の各成分の詳細は、表2に示すとおりである。
<防錆塗料組成物の調製方法>
[実施例1]
塗装直前に主剤成分Aとペースト成分B−1を表3に記載の量(数値)に従って混合し、実施例1の防錆塗料組成物を調製した。得られた防錆塗料組成物中の亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))、および亜鉛末含有量(重量%)を表3に示す。
[実施例2〜7および比較例1〜6]
実施例1と同様に、主剤成分と表1に記載の各ペースト成分を、表3に記載の量(数値)に従って塗装直前に混合し、実施例2〜7および比較例1〜6の各防錆塗料組成物を調製した。得られた防錆塗料組成物の亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))および、亜鉛末含有量(重量%)を表3に示す。
〔塗装条件〕
ライン塗装機(装置名:SP用コンベア塗装機、竹内工作所(株)製)を用いて、乾燥膜厚が約12μmとなるようにエアスプレー塗装した。
(1)防食性
サンドブラスト処理板(JIS G3101、SS400、寸法:150mm×70mm×2.3mm)のブラスト処理面に、前記塗装条件にて各防錆塗料組成物を塗装した。次いで、JIS K5600−1−6の規格に従い、塗装された組成物を温度23℃、相対湿度50%の恒温室内で1週間乾燥させ、得られた各防錆塗膜と前記処理板とからなる試験板を作成した。
作成した試験板をJIS K5600−7−1の規格に従い、濃度5%食塩水を用いて350時間の塩水噴霧試験を実施し、試験板全面積に対する発錆面積の比率(%)を求め、発錆の状態を評価した。
JIS K5600−7−6の規格に従い、0°(水平)で5か月間屋外暴露を行い、試験板全面積に対する発錆面積の比率(%)を求め、発錆の状態を評価した。
塩水噴霧試験および屋外暴露試験の評価基準は下記のとおりである。発錆の状態の評価基準(ASTM D610)を基に、下記基準により10段階で評価した。さらに防食性評価として、下記基準で評価が10、9または8であった組成物を「○」、7以下であった組成物を「×」と評価した。各塗料組成物の防食性評価結果を下記表5に示した。
10:発錆無し、または発錆面積が試験板の全面積の0.01%以下である。
9:発錆面積が試験板の全面積の0.01%を超え0.03%以下である。
8:発錆面積が試験板の全面積の0.03%を超え0.1%以下である。
7:発錆面積が試験板の全面積の0.1%を超え0.3%以下である。
6:発錆面積が試験板の全面積の0.3%を超え1%以下である。
5:発錆面積が試験板の全面積の1%を超え3%以下である。
4:発錆面積が試験板の全面積の3%を超え10%以下である。
3:発錆面積が試験板の全面積の10%を超え16%以下である。
2:発錆面積が試験板の全面積の16%を超え33%以下である。
1:発錆面積が試験板の全面積の33%を超え50%以下である。
0:発錆面積が試験板の全面積の50%を超え100%以下である。
(2)溶接性
2枚のサンドブラスト処理板(JIS G3101、SS400、下板寸法:600mm×100mm×12mm、上板寸法:600mm×50mm×12mm)のブラスト処理面に、前記塗装条件にて各防錆塗料組成物を塗装した。次いで、JIS K5600−1−6の規格に従い、塗装された組成物を温度23℃、相対湿度50%の恒温室内で1週間乾燥させて、図1(a−1)、(b−1)および(c−1)に示されるような、平面形状が長方形である上板20および下板10を作製した。図1(a−2)、(b−2)および(c−2)に示されるように、上板20が下板10に対して垂直になるように、上板20を下板10に接合した。図1(a−1)、(b−1)、(a−2)および(b−2)において、サンドブラスト処理板(上板20および下板10)のうちの密な斜線部は塗装箇所を示す。
次いで、炭酸ガス自動アーク溶接法により、図2(a−2)、(b−2)および(c−2)に示されるように、所定のトーチ角度およびトーチシフトを保ちつつ、上板20と下板10とを、第一溶接線側と第二溶接線側とが同時に溶接されるように、溶接した。このときの溶接条件を下記表4に示す。
次いで、溶接性は次のように評価した。
まず、溶接部のうち、溶接前の仮付け部を含む溶接始端部および終端部の長さ各50mmの範囲を除く長さ500mmの範囲に発生したピット数(個)およびガス溝長さ(mm)を確認した。さらに、前記表5に記載の溶接条件に基づいて、第一溶接線側の溶接線にレーザーノッチ(V字型カット)を入れ、第二溶接線側の溶接部を溶接線に沿ってプレスで破断し、破断面に発生しているブローホールの合計面積(ブローホールの幅×長さ×個数)を評価面積で割り、ブローホール発生率(%)を算出し、下記3段階で溶接性を評価した。各塗料組成物の溶接性評価結果を下記表5に示した。
〇:ブローホール発生率が8%未満である。
△:ブローホール発生率が8%以上、10%未満である。
×:ブローホール発生率が10%以上である。
10・・・サンドブラスト処理板(下板)
20・・・サンドブラスト処理板(上板)

Claims (7)

  1. アルキルシリケートの縮合物(A)と、亜鉛末(B)と、リン酸アルミニウム(C)とを含有し、
    前記亜鉛末(B)とリン酸アルミニウム(C)との質量比((B)/(C))が、5.0〜11.0である防錆塗料組成物であり、
    該組成物に含まれる不揮発分に占める前記亜鉛末(B)の含有率が50〜70質量%である、防錆塗料組成物。
  2. 前記リン酸アルミニウム(C)が、トリポリリン酸二水素アルミニウムである請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  3. 前記防錆塗料組成物のPVC(顔料体積濃度)が、60〜70%である請求項1または2に記載の防錆塗料組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物から形成された防錆塗膜。
  5. 請求項4に記載の防錆塗膜からなり、平均乾燥膜厚が10μm以下である一次防錆塗膜。
  6. 請求項4に記載の防錆塗膜または請求項5に記載の一次防錆塗膜と基材とを含有する防錆塗膜付き基材。
  7. 下記工程[1]および[2]を含む、防錆塗膜付き基材の製造方法。
    [1]基材に請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物を塗装する工程
    [2]前記基材に塗装された前記防錆塗料組成物を乾燥させて前記基材上に塗膜を形成する工程
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