JP2020068146A - 空気極触媒層 - Google Patents
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Abstract
Description
(a)エレクトロスピニング法によりプロトン伝導性材料からなる不織布を作製し、
(b)白金担持カーボン、プロトン伝導性材料、及び溶媒を含む触媒インクを作製し、
(c)不織布を触媒インクに浸漬し、乾燥させる
燃料電池用電極の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、燃料電池の発電出力の向上に有利な燃料電池用電極を製造できる点が記載されている。
(a)2本のノズルを用いて電解質樹脂及び非電解質樹脂をそれぞれエレクトロスピニングすることにより、電解質樹脂繊維及び非電解質樹脂繊維が交互に積層しているシートを作製し、
(b)種々の方法を用いて、シートに含まれる電解質樹脂繊維及び非電解質樹脂繊維の表面を触媒で被覆する
燃料電池用電極の製造方法が開示されている。
同文献には、非電解質樹脂繊維は高強度を有するため、電解質樹脂繊維及び非電解質樹脂繊維を交互に積層してシート状とした触媒層の空隙は、外力等により潰されることがない点が記載されている。
(a)薄膜裁断法を用いて樹脂繊維を作製し、
(b)ディップコート法を用いて樹脂繊維の表面を触媒層でコートし、
(c)触媒付き樹脂繊維をサーマルロールの間を通すことで熱圧着し(サーマルボンド法)、シート状の成形体を得る
固体高分子電解質型燃料電池用触媒層部材の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、プロトン伝導性の向上と、ガス拡散性の向上及び生成水の排出性の向上とを両立させた触媒層部材が得られる点が記載されている。
同文献には、このような方法により、触媒の一部が樹脂繊維の表層に埋め込まれた触媒被覆樹脂繊維が得られる点が記載されている。
これに対し、高分子電解質からなる繊維又は不織布を備えた触媒層は、プロトン伝導経路が連続した繊維状のプロトン伝導体で構成されるために、乾燥時においてもプロトン伝導経路が途切れにくくなる。そのため、このような触媒層を燃料電池に適用すると、低湿度環境下においても高い出力が得られる可能性がある。
また、特許文献3に記載されているように、サーマルボンド法を用いて触媒付き樹脂繊維をシート状に成形する方法では、高い空隙率を備えた触媒層は得られない。
1種又は2種以上のアイオノマ(A)を含む繊維の集合体からなる不織布と、
前記繊維の表面に付着している電極触媒と
を備え、
前記電極触媒は、触媒粒子を含むことを要旨とする。
[1. 空気極触媒層]
本発明に係る空気極触媒層は、
1種又は2種以上のアイオノマ(A)を含む繊維の集合体からなる不織布と、
前記繊維の表面に付着している電極触媒と
を備えている。
前記繊維は、前記アイオノマ(A)に曳糸性を付与するためのキャリアポリマをさらに含んでいても良い。
さらに、前記空気極触媒層は、前記繊維と接触していない前記触媒粒子の表面を覆う1種又は2種以上のアイオノマ(B)をさらに備えていても良い。
[1.1.1. アイオノマ(A)]
不織布は、アイオノマ(A)を含む繊維の集合体からなる。本発明において、繊維の主成分であるアイオノマ(A)の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
[A. 組成]
不織布を構成する繊維は、アイオノマ(A)のみからなるものでも良く、あるいは、アイオノマ(A)に加えてキャリアポリマをさらに含むものでも良い。
ここで、「キャリアポリマ」とは、アイオノマ(A)に曳糸性を付与するために添加されるポリマをいう。
上述したアイオノマ(A)の中でも、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマは、溶媒には溶解せず分散液となるため、紡糸に不可欠な曳糸性がない。そのため、例えば、アイオノマ(A)としてパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマを用い、湿式紡糸法により不織布を製造する時には、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマの分散液にキャリアポリマを添加するのが好ましい。
このような部位としては、例えば、
(a)エーテル結合(−O−)、
(b)水素や炭素よりも電気陰性度が高い原子を有する結合又は官能基群(例えば、エステル結合、アミド結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホ基、アミノ基、シアノ基、チオール基)
などがある。
不織布を構成する繊維が単独では曳糸性を示さないアイオノマ(A)とキャリアポリマとの混合物からなる場合、キャリアポリマの分子量は、曳糸性に影響を与える。好適な分子量は、キャリアポリマの種類により異なる。
例えば、キャリアポリマがPEOである場合、キャリアポリマの重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、十分な曳糸性が得られない。従って、Mwは、10万以上が好ましい。Mwは、好ましくは、100万以上、さらに好ましくは、500万以上である。
「キャリアポリマの含有量」とは、不織布に含まれるアイオノマ(A)の重量(W1)及びキャリアポリマの重量(W2)の和に対するキャリアポリマの重量の割合(=W2×100/(W1+W2))をいう。
不織布を構成する繊維が単独では曳糸性を示さないアイオノマ(A)とキャリアポリマとの混合物からなる場合、繊維中(すなわち、不織布中)のキャリアポリマの含有量は、曳糸性、溶媒に対する耐性、プロトン伝導度などに影響を与える。
一方、キャリアポリマの含有量が過剰になると、不織布の溶媒に対する耐性が低下する。加えて、アイオノマ(A)の体積分率が低下するため、不織布のプロトン伝導度が低下する。従って、キャリアポリマの含有量は、10wt%以下が好ましい。キャリアポリマの含有量は、好ましくは、5wt%以下、さらに好ましくは、3wt%以下である。
アイオノマ(A)を繊維状にすると、低湿度雰囲気下においてもプロトン伝導経路が途切れにくくなるという利点がある。一方、本発明において、繊維表面には電極触媒が担持される。そのため、繊維の直径が細くなりすぎると、繊維表面に電極触媒を担持するのが困難となる。従って、繊維の直径は、1nm以上が好ましい。繊維の直径は、好ましくは、50nm以上、さらに好ましくは、100nm以上である。
[1.2.1. 触媒粒子の組成]
電極触媒は、触媒粒子を含む。電極触媒は、触媒粒子のみからなるものでも良く、あるいは、カーボン担体の表面に触媒粒子が担持された触媒担持カーボンでも良い。特に、触媒担持カーボンは、触媒粒子が微細化され、触媒使用量を低減できるので、電極触媒として好適である。
本発明において、触媒粒子の組成は、特に限定されない。また、触媒粒子は、金属、有機物、金属酸化物のいずれであっても良い。
(a)Pt、Pd、Ir、Ruなどの貴金属、若しくは、これらの合金、
(b)Pt−M合金(Mは、Fe、Co、Niなどの卑金属元素)、
(c)貴金属若しくは卑金属と炭素や窒素が結合した有機金属錯体、
(d)金属を含まないグラフェンやカーボンナノチューブ若しくはこれらの窒化物、
などがある。
「接触率(R)」とは、繊維と接触している電極触媒の割合であって、次の式(1)で表される値をいう。
R(%)=W1×100/W2 …(1)
但し、
W1は、前記繊維の表面に前記電極触媒が隙間なく付着していると仮定した時の、前記電極触媒の理論担持重量、
W2は、前記空気極触媒層に含まれる前記電極触媒の実重量。
A=2VA/r …(2)
電極触媒1個当たりの投影面積をa(cm2)、繊維の表面に電極触媒が隙間なく付着していると仮定した時の電極触媒の理論担持個数をN(個)とすると、次の式(3)が成り立つ。
N=A/a=2VA/ar …(3)
さらに、電極触媒1個当たりの重量をW3(g)とすると、次の式(4)が成り立つ。
W1=NW3=2VAW3/ar …(4)
本発明に係る空気極触媒層は、アイオノマ(B)をさらに備えていても良い。
「アイオノマ(B)」とは、前記繊維と接触していない前記触媒粒子の表面を覆うために添加されるアイオノマをいう。
繊維には、アイオノマ(A)が含まれているので、繊維と接触している触媒粒子には、繊維を介してプロトンが供給される。一方、繊維と接触していない触媒粒子(以下、「非接触粒子」ともいう)には、繊維を介したプロトン輸送が難しい。このような場合には、非接触粒子の表面をアイオノマ(B)で覆うのが好ましい。アイオノマ(B)は、後述するように、触媒インクに添加される。
[1.4.1. 空隙率]
空気極触媒層には、適度な空隙が必要である。これは、触媒粒子表面に酸素を供給するため、及び、触媒粒子表面から反応生成物である水を排出するためである。空気極触媒層の空隙率が小さすぎると、酸素の供給及び水の排出が阻害される。従って、空気極触媒層の空隙率は、30%以上が好ましい。空隙率は、好ましくは、50%以上である。
一方、空隙率が過度に大きくなると、空気極触媒層の機械的強度が低下する。従って、空隙率は、100%未満が好ましい。空隙率は、好ましくは、70%以下である。
「IB/C比」とは、前記電極触媒に含まれる前記カーボン担体の重量(C)に対する、前記空気極触媒層に含まれる前記アイオノマ(B)の重量(IB)の比をいう。
電極触媒が触媒担持カーボンである場合において、IB/C比は、空気極触媒層の酸素還元活性に影響を与える。IB/C比が小さくなりすぎると、触媒粒子へのプロトン輸送が阻害されやすくなる。従って、IB/C比は、0.4以上が好ましい。IB/C比は、好ましくは、0.75以上である。
一方、IB/C比が大きくなりすぎると、空気極触媒層の電子伝導性が低下する。従って、IB/C比は、5以下が好ましい。IB/C比は、好ましくは、1以下である。
「IT/C比」とは、前記電極触媒に含まれる前記カーボン担体の重量(C)に対する、前記空気極触媒層に含まれるすべてのアイオノマ(T)の重量(IT)の比をいう。
「すべてのアイオノマ(T)の重量(IT)」とは、空気極触媒層に含まれるアイオノマ(A)の重量(IA)とアイオノマ(B)の重量(IB)との和をいう。
一方、IT/C比が大きくなりすぎると、触媒層が厚くなりすぎ、プロトン輸送抵抗が大きくなりすぎる。従って、IT/C比は、10以下が好ましい。IT/C比は、好ましくは、5以下である。
「屈曲度τ」とは、次の式(5)で表される値をいう。
τ=ε・σBulk/σeff …(5)
但し、
εは、前記空気極触媒層に含まれるすべてのアイオノマ(T)の体積分率、
σBulkは、前記アイオノマ(T)のみからなる緻密な材料(バルク材)のプロトン伝導度、
σeffは、前記σBulkと同一条件下で測定された前記空気極触媒層の有効プロトン伝導度。
一方、不織布を構成する繊維の中に孤立しているものがある場合、孤立している繊維はプロトン伝導に寄与しない。プロトン伝導に寄与しない繊維を含む不織布の有効プロトン伝導度σeffは、理想的なプロトン伝導度(ε・σBulk)より小さくなる。すなわち、屈曲度τが大きいことは、実質的にプロトン伝導に寄与していないアイオノマの割合が多いことを表す。
後述する方法を用いると、相対湿度:30〜100%RH、及びセル温度:80℃において、屈曲度τが1.0以上6.0以下である空気極触媒層が得られる。製造条件をさらに最適化すると、屈曲度τは、上記の条件下において、5.0以下、あるいは、4.0以下となる。
本発明に係る空気極触媒層は、
(a)基材の表面に、アイオノマ(A)を含む繊維を堆積させる第1工程と、
(b)繊維の表面に電極触媒を含む触媒インクを散布する第2工程と、
を交互に繰り返すことにより製造することができる。
まず、基材の表面に、アイオノマ(A)を含む繊維を堆積させる(第1工程)。第1工程は、具体的には、
(a)アイオノマ(A)及び必要に応じてキャリアポリマを含む溶液又は融液を調製する工程と、
(b)溶液又は融液を紡糸し、基板表面に繊維を堆積させる工程と
を備えている。
まず、アイオノマ(A)を含む溶液又は融液を調製する。溶液又は融液には、必要に応じて、キャリアポリマがさらに含まれていても良い。
繊維がキャリアポリマを含む場合において、アイオノマ(A)とキャリアポリマの混合物を溶融させることが可能である時には、繊維の作製には融液を用いることができる。一方、アイオノマ(A)とキャリアポリマの混合物を溶解又は分散させることが可能な溶媒がある時には、繊維の作製には溶液を用いることができる。
溶媒としては、特に、沸点が200℃以下のアルコールが好ましい。その中でも、溶媒は、エタノールが好ましい。これは、環境負荷が小さく、工業的な大量生産に適しているためである。
一般に、固形分濃度が高くなるほど、乾燥にかかる時間を短縮でき、溶媒の使用量を減らすことができる。一方、固形分濃度が高くなりすぎると、粘度が高くなるため成形しにくくなる。また、泡の混入が問題となる。
最適な固形分濃度は、アイオノマ(A)及びキャリアポリマの種類、配合量などにより異なるが、通常は、1wt%〜40wt%程度である。
次に、溶液又は融液を紡糸し、基板の表面に繊維を堆積させる。本発明において、紡糸方法は特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。紡糸方法としては、例えば、電界紡糸法、メルトブロー法などの湿式紡糸法などがある。
次に、繊維の表面に電極触媒を含む触媒インクを散布する(第2工程)。第2工程は、具体的は、
(a)電極触媒及び必要に応じてアイオノマ(B)を含む触媒インクを調製する工程と、
(b)繊維の表面に触媒インクを散布する工程と
を備えている。
まず、電極触媒を溶媒に分散させた触媒インクを調製する。触媒インクには、必要に応じて、アイオノマ(B)がさらに含まれていても良い。
触媒インクの溶媒は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な溶媒を選択することができる。溶媒としては、例えば、水、アルコール、メタノール、THF、DMFなどがある。
触媒インクの固形分濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な濃度を選択することができる。通常、触媒インクの固形分濃度は、0.5wt%〜10wt%程度である。
次に、繊維の表面に、触媒インクを散布する。本発明において、散布方法は特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。散布方法としては、例えば、エレクトロスプレー・デポジション法、スプレー法、超音波スプレー法などがある。
以下、第1工程と第2工程を必要回数だけ繰り返す。各工程の繰り返し回数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な繰り返し回数を選択することができる。通常、繰り返し回数は、5回〜20回程度である。
高分子電解質は、プロトン伝導性を発現するためには適度な含水状態にあることが必要である。そのため、従来の触媒層を備えた燃料電池を低湿度環境下で運転し続けると、触媒層アイオノマが乾燥により収縮する。その結果、触媒層内におけるプロトン伝導経路が途切れ、燃料電池の出力が低下する。
[1. 試料の作製]
[1.1. 空気極触媒層の作製]
[1.1.1. 実施例1]
[A. 繊維溶液の調製]
アイオノマ(A)には、ナフィオン(登録商標)溶液(ケマーズ(株)製、D2020)を用いた。キャリアポリマには、ポリエチレンオキサイド(PEO、MW〜7,000,000)を用いた。さらに、溶媒には、メタノールを用いた。
メタノールにナフィオン(登録商標)溶液及びPEOを添加し、繊維溶液を調製した。固形分に占めるナフィオン(登録商標)の重量割合は、99wt%とした。固形分に占めるPEOの重量割合(キャリアポリマ濃度)は、1wt%とした。また、繊維溶液の固形分(アイオノマ(A)+PEO)の濃度は、6wt%とした。
電極触媒には、白金担持カーボンPt/C(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、白金重量比率:30wt%)を用いた。アイオノマ(B)には、ナフィオン(登録商標)溶液(ケマーズ(株)製、D2020)を用いた。さらに、溶媒には、水/メタノール=10/90(w/w)の混合溶媒を用いた。
混合溶媒に白金担持カーボン及びナフィオン(登録商標)溶液を添加し、触媒インクを調製した。IB/C比は、0.4とした。また、触媒インクの固形分(アイオノマ(B)+Pt/C)の濃度NVは、1.5wt%とした。
基板には、ナフィオン(登録商標)膜(NR211、膜厚:25μm)を用いた。基板表面への繊維溶液の電界紡糸と、堆積した繊維表面への触媒インクのエレクトロスプレー・デポジションとを交互に繰り返すことにより、基板表面に触媒層を形成した。繊維径は、約300nmであった。
電界紡糸の条件は、電圧:15kV、紡糸口とコレクタ間の距離:15cmとした。
また、エレクトロスプレー・デポジションの条件は、電圧:15kV、紡糸口とコレクタ間の距離:10cmとした。この時、電界紡糸を168秒、次いでエレクトロスプレー・デポジションを461秒実施し、これを1サイクルとして、7サイクル実施して触媒層を形成した。
[A. 触媒インクの調製]
溶媒として、水/エタノール=7.5/2.5(w/w)の混合溶媒を用い、IB/C比が1.0、固形分濃度が10wt%となるように、原料を配合した以外は、実施例1と同様にして、触媒インクを作製した。
[B. 電解質膜−空気極触媒層接合体の作製]
基板には、ポリテトラフルオロエチレンシートを用いた。基板上に触媒インクを塗布し、乾燥させ、触媒層を得た。次に、ホットプレスにて、電解質膜の片面に触媒層を転写し、電解質膜−空気極触媒層接合体を得た。電解質膜には、ナフィオン(登録商標)膜(NR211、膜厚:25μm)を用いた。
電界紡糸及びエレクトロスプレー・デポジションの条件は、実施例1と同一とした。電界紡糸を144秒、エレクトロスプレー・デポジションを563秒実施し、これを1サイクルとして、7サイクル実施して触媒層を形成した。
電解質膜の他方の面にさらに燃料極触媒層を接合し、MEAを得た。燃料極触媒層には、比較例1で作製した触媒層を用いた。さらに、MEAの両面に、それぞれ、ガス拡散層及びセパレータを配置し、燃料電池を得た。
[2.1. SEM観察]
空気極触媒層の上面及び断面のSEM観察を行った。
空気極触媒層の厚み、Pt目付量、IT/C比、アイオノマ体積分率、空隙率、Pt/C体積分率、及び接触率(R)を求めた。
空気極触媒層の厚みは、断面SEM像から求めた。
Pt目付量は、作製した触媒層を空気中、900℃で加熱し、残ったPtの重量を計ることで求めた。
次に、アイオノマ重量(IT)を求める。ITは、触媒インク由来の重量(IB)と、繊維由来の重量(IA)との和である。IBは、IB/Cと、上記のCの重量との積から求まる。IAは、触媒層の重量から、Pt重量、C重量、及びIBを除くことで求まる。
最後に、IAとIBの和をC重量で割ることでIT/Cを求めた。
(a)ITをその密度(ナフィオン(登録商標)の場合は、2g/cm3)で割ることでアイオノマの体積を求め、
(b)アイオノマの体積を触媒層の見かけの体積で割る
ことにより求めた。見かけの体積は、SEM像から求めた厚みと、触媒層の投影面積(本実施例では、1cm2)との積から求めた。
Pt/C体積分率は、
(a)Ptの重量をその密度(21.45g/cm3)で割ることでPtの体積を求め、カーボン重量をその密度で割ることでカーボンの体積を求め、
(b)Ptとカーボンの総体積を触媒層の見かけの体積で割る
ことにより求めた。
空隙率は、
(a)触媒層の見かけの体積から、触媒層に含まれる各成分の体積の総和を差し引いて空隙の体積を求め、
(b)空隙の体積を触媒層の見かけの体積で割る
ことにより求めた。
表2に示す条件下で、交流インピーダンスの測定、及び電流−電圧曲線(Current-voltage curve)(以下、「IV曲線」ともいう)の測定を行った。なお、アノードは、常にカソードと同湿度、同圧力とした。また、セル温度は、すべて80℃とした。以下、電位は、すべてアノード(RHE)に対して示した。
[参考文献1] R&D Review of Toyota CRDL vol. 39, No.3
[3.1. SEM観察]
図1(A)に、実施例1で得られた触媒層の上面の電子顕微鏡写真を示す。図1(B)に、実施例1で得られた触媒層の断面の電子顕微鏡写真を示す。図1より、繊維の表面に電極触媒が付着している様子が確認できる。
表3に、各空気極触媒層の組成を示す。表3より、Pt目付量に大きな差がないことが分かる。後述するように、これらは性能が異なるが、性能の相違はPt目付量以外によると考えられる。
[3.3.1. 有効プロトン伝導度σeff及び屈曲度τ]
図2に、実施例1及び比較例1で得られた触媒層の屈曲度τの相対湿度依存性を示す。図3に、実施例1及び比較例1で得られた触媒層の有効プロトン伝導度σeffの相対湿度依存性を示す。図2及び図3より、以下のことが分かる。
(2)30%RH及び50%RHの低湿度条件下において、比較例1の屈曲度τは、実施例1のそれの約6倍になった。これは、低湿度域ではプロトン伝導経路(アイオノマの連続性)が失われていることを示している。おそらく、比較例1では、プロトン伝導経路が乾燥で途切れていると考えられる。
(3)実施例1の場合、体積分率の影響を除いた屈曲度τは、全湿度領域で1に近い。これは、太く連続した繊維が低湿度域でも維持されるために、高いプロトン伝導度が維持されたためと考えられる。
図4に、実施例1及び比較例1で得られた燃料電池の30%RHでのIV曲線を示す。図5に、実施例1及び比較例1で得られた燃料電池の50%RHでのIV曲線を示す。さらに、図6に、実施例1及び比較例1で得られた燃料電池の100%RHでのIV曲線を示す。図4〜図6より、以下のことが分かる。
(2)相対湿度が30%RH及び50%RHである場合、実施例1の0.4Vにおける電流値は、いずれも、比較例1のそれの2倍以上であった。これは、太く連続した繊維が低湿度域でも維持されるため、及びこれによって高いプロトン伝導度が維持されたためと考えられる。
図7に、実施例1〜2及び比較例1で得られた燃料電池の30%RHでのIV曲線を示す。図7より、以下のことが分かる。
(1)実施例1の30%RHでのIV性能は、比較例1のそれに比べて遙かに高くなった。これは、接触率(R)が相対的に高いために、触媒粒子表面にプロトンと電子が効率良く輸送されたためと考えられる。
(2)実施例2は、アイオノマの繊維比率(触媒層に含まれるアイオノマの総重量(IT)に対する繊維の重量(IA)の割合)が約80%であるにもかかわらず、30%RHでのIV性能は、比較例1のそれに比べて若干高い程度であった。これは、接触率(R)が相対的に低いために、触媒粒子近傍のプロトン伝導経路が低湿度において途切れやすくなるためと考えられる。
[1. 試料の作製]
実施例1と同様にして、繊維溶液を調製した。また、触媒インクの固形分濃度を変えた以外は、実施例1と同様にして、触媒インクを調製した。触媒インクの固形分濃度は、1.5wt%〜10wt%とした。
次に、基板表面に厚さ約20μmの不織布が形成されるまで、繊維溶液の電界紡糸のみを行った。不織布の厚さ以外の電界紡糸の条件は、実施例1と同一とした。さらに、得られた不織布を、触媒インクに含まれる溶媒又は触媒インクに浸漬した。
電界紡糸直後の不織布、及び、溶媒又は触媒インクに浸漬後の不織布の電子顕微鏡観察を行った。図8(A)に、電界紡糸直後の不織布の上面の電子顕微鏡写真を示す。図8(B)に、触媒インクに含まれる溶媒で膨潤させた不織布の断面の電子顕微鏡写真を示す。図8(C)に、触媒インク(固形分濃度:10wt%)に浸漬した不織布の断面の電子顕微鏡写真を示す。図8より、以下のことが分かる。
(2)不織布を溶媒に浸漬すると、図8(B)に示すように、不織布の空隙が失われた。これは、不織布が溶媒を吸収して膨潤したためと考えられる。
(3)以上のことから、不織布を触媒インクに浸漬する方法では、不織布が溶媒を吸収して膨潤するために、不織布の内部にある繊維表面に電極触媒を担持することができないことが分かった。
[1. 試料の作製]
[1.1. 繊維溶液の調整]
実施例1と同様にして、繊維溶液を調製した。
電極触媒には、白金担持カーボンPt/C(田中貴金属工業(株)製、TEC10V30E、白金重量比率:30wt%)を用いた。アイオノマ(B)には、ナフィオン(登録商標)溶液(ケマーズ(株)製、D2020)を用いた。さらに、溶媒には、水/メタノール=33/66(w/w)の混合溶媒を用いた。
混合溶媒に白金担持カーボン、ナフィオン(登録商標)溶液及びPEOを添加し、触媒インクを調製した。IB/C比は、0.4とした。また、触媒インクの固形分(アイオノマ(B)+Pt/C)の濃度NVは、10wt%とした。固形分に占めるPEOの濃度(キャリアポリマ濃度)は、0wt%とした。
電界紡糸用のノズルには、内径:0.2mm、外径:0.8mmの同心円状に配置された2個のノズルからなる2重ノズルを用いた。コレクタには、アルミホイルを用いた。2重ノズル−コレクタ間に電圧を印加し、内側のノズルに繊維溶液(芯溶液)を送液すると同時に、外側のノズルに触媒インク(鞘溶液)を送液することにより、コレクター表面に繊維溶液及び触媒インクを噴射した。紡糸電圧は20kVとし、繊維溶液の送液速度は1mL/hとし、触媒インクの送液速度は8mL/hとした。
表4に、比較例3の実験条件を示す。なお、表4には、特許文献4の実験条件も併せて示した。
図9に、比較例3で得られた試料の上面の電子顕微鏡写真を示す。図9において、黒点は触媒インクが落下した乾燥したものであり、背景はアルミホイルである。図9より、特許文献4とほぼ同じ電界紡糸条件である比較例3では、電界紡糸自体が起こらず、目視できるサイズの液滴がコレクタに落下していることが分かる。
溶液の固形分濃度が濃くなるほど、溶液が電子伝導体となりやすいため、電荷蓄積は起こりにくいと考えられる。逆に、溶液の固形分濃度が薄くなるほど、電荷蓄積が起きやすくなると考えられる。しかし、比較例3は、特許文献4よりも固形分濃度の低い溶液を用いているにもかかわらず、電荷蓄積が生じず、繊維を紡ぐことができなかった。
Claims (12)
- 1種又は2種以上のアイオノマ(A)を含む繊維の集合体からなる不織布と、
前記繊維の表面に付着している電極触媒と
を備え、
前記電極触媒は、触媒粒子を含む空気極触媒層。 - 前記アイオノマ(A)は、パーフルオロスルホン酸ポリマである請求項1に記載の空気極触媒層。
- 前記繊維は、前記アイオノマ(A)に曳糸性を付与するためのキャリアポリマをさらに含む請求項1又は2に記載の空気極触媒層。
- 前記繊維の直径が1nm以上5000nm以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載の空気極触媒層。
- 空隙率が30%以上100%未満である請求項1から4までのいずれか1項に記載の空気極触媒層。
- 次の式(1)で表される接触率(R)が20%以上100%以下である請求項1から5までのいずれか1項に記載の空気極触媒層。
R(%)=W1×100/W2 …(1)
但し、
W1は、前記繊維の表面に前記電極触媒が隙間なく付着していると仮定した時の、前記電極触媒の理論担持重量、
W2は、前記空気極触媒層に含まれる前記電極触媒の実重量。 - 前記繊維と接触していない前記触媒粒子の表面を覆う1種又は2種以上のアイオノマ(B)をさらに備えた請求項1から6までのいずれか1項に記載の空気極触媒層。
- 前記アイオノマ(B)は、パーフルオロスルホン酸ポリマである請求項7に記載の空気極触媒層。
- 前記電極触媒は、カーボン担体の表面に前記触媒粒子が担持された触媒担持カーボンである請求項1から8までのいずれか1項に記載の空気極触媒層。
- 前記電極触媒に含まれる前記カーボン担体の重量(C)に対する、前記空気極触媒層に含まれる前記アイオノマ(B)の重量(IB)の比(=IB/C)が0.4以上5以下である請求項9に記載の空気極触媒層。
- 前記電極触媒に含まれる前記カーボン担体の重量(C)に対する、前記空気極触媒層に含まれるすべてのアイオノマ(T)の重量(IT)の比(=IT/C)が2.0以上10以下である請求項9又は10に記載の空気極触媒層。
- 次の式(5)で表される屈曲度τが1.0以上6.0以下である請求項1から11までのいずれか1項に記載の空気極触媒層。
τ=ε・σBulk/σeff …(5)
但し、
εは、前記空気極触媒層に含まれるすべてのアイオノマ(T)の体積分率、
σBulkは、前記アイオノマ(T)のみからなる緻密な材料(バルク材)のプロトン伝導度、
σeffは、前記σBulkと同一条件下で測定された前記空気極触媒層の有効プロトン伝導度。
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