JP2020066556A - 左官用水硬性組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような水硬性組成物に関し、要求される物性として、良好な作業性(塗りやすさ・仕上げのしやすさ)、高い保水性(ドライアウト等による硬化不良防止)、ダレ(ズレ)防止性(塗布したモルタルの自重による変形防止、張り付けたタイルのズレ防止)等が求められており、作業現場での合理化が進む近年、これらの要求は益々高度になってきている。
特許文献2には、(A)成分としてアルカリ増粘型ポリマー、及び(B)成分としてエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基を有する特定の単量体(1b)とメタクリル酸、アクリル酸等の特定の単量体(2b)とを構成単量体として含み、構成単量体中の単量体(1b)と単量体(2b)の合計量が90質量%以上100質量%以下である共重合体を含有し、水硬性組成物に優れた流動性と材料分離抵抗性を付与でき、且つより優れた貯蔵安定性を有する1剤型の水硬性組成物用混和剤が開示されている。
また左官用途で使用される水硬性組成物は、ポンプによる圧送や型枠へ流し込む必要性があるコンクリート構造物やコンクリート製品と異なり、ダレが生じないように自立する(低流動性)必要があり、また作業中に生じる微弱な加振条件下でもダレが生じない方が好ましく、振動条件下でも自立する(低流動性)必要があるという点で特殊な用途である。
本発明において、(A)成分であるアルカリ増粘型ポリマーは、エマルションの形態で、水硬性粉体と水とともに混合するため、スラリー中で、(A)成分が容易に分散しやすく、水硬性粉体に均一に作用することができると考えられる。また、(A)成分が高分子であるため、該スラリー中の水硬性粉体を凝集させることができると考えられる。これら2つの効果が作用することで、(A)成分が該スラリー中の水硬性粉体粒子全体に対して均一な架橋構造を形成し、当該粒子を均一に凝集させることで、作業時にダレが生じず自立性(低流動性)のあるスラリーを実現できると考えられる。また該スラリーが高塩濃度である場合でも、(A)成分をエマルションの形態として混合すれば、(A)成分が低保水性であり、連続相である水を増粘させないため、良好な作業性を実現できると考えられる。
<(A)成分>
(A)成分は、アルカリ増粘型ポリマーである。
アルカリ増粘型ポリマーとは、このポリマーが、アルカリ、例えば、セメントのアルカリに接触すると中和され、水に可溶性となって、該ポリマーと水とを含む混合物の粘性を上昇させる性質を有することをいう。例えば、アルカリ増粘型ポリマーは、該ポリマーと水とを含む混合物が、pH9以上で増粘するポリマーであってよい。ポリマーがアルカリ増粘型であるかどうかは、例えば、当該ポリマーと水とを含有する混合物のpH12.5での粘度が、pH9未満での粘度の2倍以上であることで確認できる。混合物におけるポリマーと水の割合は任意であり、pH及び粘度の測定温度は20℃を選択できる。混合物は、水溶液、エマルション、スラリーが挙げられる。なお、粘度の測定方法としては、実施例に記載の方法が挙げられる。
不飽和カルボン酸(1a1)としては、
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アコニット酸、及びクロトン酸等の不飽和カルボン酸、
無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、及び
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノエチル等の不飽和カルボン半エステル、
などが挙げられる。
ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸、
リン酸−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、リン酸水素ビス[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]等の不飽和リン酸、
ビニルフェノール等の不飽和フェノール、
などが挙げられる。
なお、エチレン性不飽和化合物(2a)からは、酸性基を含む化合物は除かれる。従って、酸性基を含む不飽和化合物(1a)は、エチレン性不飽和化合物(2a)には該当しない。
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる単量体(2a’)は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルから選ばれる1種以上の単量体が好ましい。
(A)成分が、不飽和カルボン酸(1a1)とエチレン性不飽和化合物(2a)の共重合体である場合、不飽和カルボン酸/エチレン性不飽和化合物の質量比は、良好なアルカリ増粘性が得られる観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.6以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは1.5以下である。この共重合体は、構成単量体中の不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の合計量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、また100質量%であってもよい。
不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合等の方法が挙げられる。
共重合体(A)においても、単量体(2a’)は、エステル部分の炭素数が、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる単量体が好ましい。エステル部分の炭素数は、−C(O)−O−R1aにおいて(R1aは炭化水素基)、−C(O)−O−の炭素を含む炭素数である。
共重合体(A)は、ダレ防止性の観点から、単量体(1a’)と単量体(2a’)の合計中、単量体(1a’)の割合が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
また、共重合体(A)は、構成単量体中の単量体(1a’)と単量体(2a’)の合計量が好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、また100質量%であってもよい。
*GPC条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:TsKgelα―M+TsKgelα―M(東ソー株式会社製)
溶離液:60mmol/Lリン酸、50mmol/L LiBr―DMF
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:1mg/mL
標準物質:ポリスチレン換算(分子量既知の単分散ポリスチレン、分子量:590、3,600、30,000、96,400、929,000、8,420,000)
本発明の左官用水硬性組成物の製造方法では、良好な作業性の観点から、更に(B)成分として、分散剤を混合することが好ましい。
R1b、R2b:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
R3b:水素原子又は−COO(AO)n1X1
X1:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n1:AOの平均付加モル数であり、2以上300以下の数
q:0以上2以下の数
を示す。〕
R4b、R5b、R6b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
一般式(1b)中、R2bは、メチル基が好ましい。
一般式(1b)中、R3bは、水素原子が好ましい。
一般式(1b)中、X1は、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1b)中、AOは、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(1b)中、n1は、AOの平均付加モル数であり、ダレ防止性と良好な作業性の観点から、2以上、好ましくは5以上、そして、300以下、好ましくは140以下、より好ましくは120以下の数である。
一般式(1b)中、qは、0が好ましい。
一般式(2b)中、R5bは、メチル基が好ましい。
一般式(2b)中、R6bは、水素原子が好ましい。
(CH2)rCOOM2については、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1とM2は同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基である。
M1、M2のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M1とM2は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
一般式(2b)中の(CH2)rCOOM2のrは、1が好ましい。
*GPC条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV−8020
カチオン性重合体は、下記一般式(3b)で表される化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物に由来するモノマー単位〔以下、モノマー単位(3b)という〕を含有するカチオン性重合体がより好ましい。
Yの−C(O)O−(R24b−O)n−R25bでは、R25bは、炭素数8以上、更に10以上、そして、18以下、更に14以下のアルキル基が好ましい。R24bは、エチレンが好ましい。n2は0以上、好ましくは20以下、より好ましくは10以下の数である。nは0が更に好ましい。
本発明の左官用水硬性組成物の製造方法に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、セメント、具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、及び普通ポルトランドセメントから選ばれるセメントがより好ましい。
また、水硬性粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉末が挙げられる。
本発明の左官用水硬性組成物の製造方法は、(A)成分の混合量が、水硬性粉体100質量部に対して、ダレ防止性の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下、より更に好ましくは0.9質量部以下、より更に好ましくは0.6質量部以下、より更に好ましくは0.3質量部以下となるように、(A)成分を含むエマルションを混合する。
ここで、水/水硬性粉体比(W/C)は、水硬性組成物中の水と粉体の質量百分率(質量%)であり、水/粉体×100で算出される。
なお、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
なお、粗骨材を使用する場合は、1000kg/m3以下であることが好ましく、850kg/m3以下であることがより好ましく、700kg/m3以下であることが更に好ましく、500kg/m3以下であることがより更に好ましく、300kg/m3以下であることがより更に好ましく、100kg/m3以下であることがより更に好ましく、50kg/m3以下であることがより更に好ましく、25kg/m3以下であることがより更に好ましく、10kg/m3以下であることがより更に好ましく、1kg/m3以下であることがより更に好ましい。本発明の左官用水硬性組成物の製造方法は、粗骨材を混合しないことが好ましい。
すなわち、本発明の左官用水硬性組成物の製造方法として、水と、(A)成分を含むエマルションと、更に任意成分である(B)成分とを含む液状組成物を調製し、該液状組成物を水硬性粉体、更には水硬性粉体と骨材の混合物に添加し、混合する、左官用水硬性組成物の製造方法が挙げられる。
本発明は、(A)成分を含むエマルション、水硬性粉体、及び水を配合してなる、左官用水硬性組成物に関する。
本発明の左官用水硬性組成物は、本発明の左官用水硬性組成物の製造方法に記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の左官用水硬性組成物において、(A)成分、水硬性粉体、任意成分である(B)成分、骨材、その他の任意成分は、本発明の左官用水硬性組成物の製造方法に記載した態様と同じである。また本発明の左官用水硬性組成物の製造方法に記載した(A)成分の混合量、(B)成分の混合量、質量比(B)/(A)は、混合量を配合量に置き換えて、本発明の左官用水硬性組成物に適用できる。
(A−1):構成単量体として、アクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチルから構成される共重合体、アクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸エチル=40質量%/30質量%/30質量%、重合平均分子量(Mw)557,000、数平均分子量(Mn)84,900
固形分1.0質量%の共重合体(A−1)の水性エマルジョンがpH2.7、粘度5.5mPa・sを与えたのに対し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液によりpH12.5、固形分1.0質量%に調整した共重合体(A−1)の水性エマルジョンは粘度20mPa・sを与えたことから、共重合体(A−1)はアルカリ増粘型ポリマーであると判断した。pHと粘度は何れも20℃での値である(以下の(A)成分でも同様)。粘度はB型粘度計(BM型VISCOMETER:TOKIMEC INC.製、測定条件:ローターNo.2、60rpm)で測定した。pHはpH計(HM−30S:東亜ディーケーケー社製)で測定した。
固形分1.0質量%の共重合体(A−2)の水性エマルジョンがpH2.7、粘度4.5mPa・sを与えたのに対し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液によりpH12.5、固形分1.0質量%に調整した共重合体(A−2)の水性エマルジョンは粘度30mPa・sを与えたことから、共重合体(A−2)はアルカリ増粘型ポリマーであると判断した。
固形分1.0質量%の共重合体(A−3)の水性エマルジョンがpH2.7、粘度5.5mPa・sを与えたのに対し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液によりpH12.5、固形分1.0質量%に調整した共重合体(A−3)の水性エマルジョンは粘度30mPa・sを与えたことから、共重合体(A−3)はアルカリ増粘型ポリマーであると判断した。
固形分1.0質量%の共重合体(A−4)の水性エマルジョンがpH2.7、粘度5.5mPa・sを与えたのに対し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液によりpH12.5、固形分1.0質量%に調整した共重合体(A−4)の水性エマルジョンは粘度150mPa・sを与えたことから、共重合体(A−4)はアルカリ増粘型ポリマーであると判断した。
(A’−1):ベントナイト、富士フィルム和光純薬(株)製
(A’−2):ヒドロキシエチルセルロース、富士フィルム和光純薬(株)製
(B−1):構成単量体として、単量体(1b)と単量体(2b)から構成される共重合体、単量体(2b)/単量体(1b)=メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(9)モノメタクリレート(カッコ内は平均付加モル数)=47モル%/53モル%、重量平均分子量(Mw)=70,000
(B−2):ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(マイテイ150:花王株式会社製)
(B−3):メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルの硫酸塩を由来とするモノマー単位からなるホモポリマー、重量平均分子量(Mw)56,000、カオーセラMD−P、花王(株)製
(B−4):構成単量体として、単量体(1b)と単量体(2b)から構成される共重合体、単量体(2b)/単量体(1b)=メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(120)モノメタクリレート(カッコ内は平均付加モル数)=60モル%/40モル%、重量平均分子量(Mw)=60,000
(B−5):構成単量体として、単量体(1b)と単量体(2b)から構成される共重合体、単量体(2b)/単量体(1b)=メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(120)モノメタクリレート(カッコ内は平均付加モル数)=90モル%/10モル%、重量平均分子量(Mw)=55,500
<左官用モルタルの調製>
ホバート型ミキサー((株)関西機器製作所製、KC−8)に、表1に記載の配合で、セメント、砂を加えて10秒間空練りを行った。次に、表2に記載の各成分を混合した水を、空練りしたセメントと砂の混合物に加えて、2分間撹拌(撹拌速度:公転62rpm,自転141rpm)を行うことで左官用モルタルを調製した。なお表2中の実施例1−1〜1−12において、(A)成分を水に混合する際、(A)成分は、固形分濃度が15質量%のエマルションを用いた。また表2中の比較例1−2〜1−4において、(A’)成分を水に混合する際、(A’)成分は粉体(固形分濃度100質量%)を用いた。また表2中の比較例1−5において、(A)成分として、共重合体(A−1)を用いているが、共重合体(A−1)を水に混合する際、エマルションとしてではなく、共重合体(A−1)を10質量%水酸化ナトリウム水溶液によりpH12.5、固形分15質量%に調製した水溶液を用いた。
水の添加量は、表1に記載の配合の水量となるように調製した。なお水の配合量には、(A)成分、(A’)成分(B)成分の添加量が含まれる。
水:水道水(配合量は、(A)成分、(A’)成分、及び(B)成分を含む)
セメント:普通ポルトランドセメント、太平洋セメント製と住友大阪セメント製を質量比50/50で混合した物、比重3.16
砂:京都府城陽産、表乾比重2.54g/cm3
混練直後の左官用モルタルを、JIS R 5201準じて、フローコーン(上径70mm×下径100mm×高さ60mm)に充填し、フローテーブル上に垂直に引き上げてから1分後の広がりを初期モルタルフローとして測定した。結果を表2に示す。ダレ抑制の観点から、初期モルタルフローは120mm以下が好ましい。次に初期モルタルフロー測定直後に、フローテーブルを10秒間に15回タッピングした際のモルタルフローを測定し(表2中では「タップ後モルタルフロー」と表記)、初期モルタルフローとのフロー差を算出した。結果を表2に示す。鏝による作業性の観点から、フロー差は95mm以上が好ましい。
モルタルで作製した板を水平面に置き、100×100×30(厚さ)mmの枠を乗せ、調製した左官用モルタルを枠に充填した。その後、枠を外し、モルタルで作製した板を地面との角度が90°の傾斜にして静置させた。モルタルの自重によるダレが止まるまで静置し、ダレが止まったのを確認してから、型枠があったときのモルタル形状からはみ出た部分の地面から垂直方向の長さを測定した。結果を表2に示す。当該長さは、ダレ防止の観点から、200mm以内に収まることが好ましい。
モルタルで作製した板に、調製した左官用モルタルを、鏝を用いて約5mmの厚さで塗りつけて、ベタツキと鏝の軽さを評価した。ベタツキはモルタルを塗った後に、塗りつけたモルタルから鏝を離す時にかかる腕の負担を下記基準で官能的に評価した。また鏝の軽さは約5mmの厚さに塗る時の鏝の軽さとスムーズさを下記基準で官能的に評価した。結果を表2に示す。
ベタツキ
1:モルタルから鏝を離す際に、ベタツキを感じ、腕に負担がかかる。
2:モルタルから鏝を離す際に、ベタツキを感じるが、腕に負担を感じない。
3:鏝が簡単に離れ、腕に負担を感じない。
鏝の軽さ
1:重く、腕に負荷を感じる。
2:負担は軽いが、塗る時に力を要する。
3:ほとんど力を入れることなくスムーズに塗ることができる。
<左官用ペーストの調製>
市販されている補修材(ハイモルマックス#10、昭和電工建材社製)を用いて、下記評価を行った。
ハイモルマックス#10に、表3に記載の各成分を混合した水を加えて、ハンドミキサー(Panasonic社製、型番 MK−H4)で30秒撹拌(撹拌速度950rpm)し、左官用ペーストを調製した。なお(A)成分を水に混合する際、(A)成分は、固形分濃度が30質量%のエマルションを用いた。
水の添加量は、ハイモルマックス♯10を100質量部に対し、水42質量部の水を混ぜて調製した。なお水の配合量には、(A)成分、(B)成分の添加量が含まれる。
調製した左官用ペーストを、円筒状コーン(φ50mm×50mm)に充填し、垂直に引き上げた時の広がり(もっとも長い直径の長さとそれと垂直方向の長さの平均値)をペーストフローとして測定した。測定は、混練終了直後(0分後)に測定した。結果を表3に示す。ペーストフローは、ダレ防止性の観点から、75mm以下が好ましい。
レオロジーの評価として、調製した左官用ペーストを、下記条件にて、20℃におけるせん断速度のせん断応力依存性を測定した。せん断速度が0.5(1/s)になった時のせん断応力を降伏値とし、せん断応力が降伏値から1500Paにおけるせん断速度とせん断応力の傾きを塑性粘度とした。結果を表3に示す。
・測定装置名:(株)アントンパール・ジャパン製 MCR301
・アプリケーション:RHEOPLUS
・測定治具:パラレルプレートPP−25(d=1mm)
・せん断応力の範囲:1〜1500(Pa)
降伏値は流体を流動化させるのに必要な応力であり、降伏値が高い値を示すほど、ダレを抑制できる。一方で、塑性粘度はせん断応力下での流体の変形抵抗性を示し、塑性粘度が低いほど、良好な作業性を実現できる。
ベニヤ板に、調製した左官用ペーストを、鏝を用いて塗りつけて、ダレ性と鏝の軽さを評価した。ダレ性は、地面から垂直方向に設置したベニヤ板に、該左官用ペーストを約3cmの厚みに塗って静置した時の自重によるダレ具合を、目視で下記基準に従って評価した。鏝の軽さは約5mmの厚さに塗る時の鏝の軽さとスムーズさを下記基準で官能的に評価した。
ダレ性
1:静置するとダレが発生する。
2:静置してもダレは発生しないが、若干の振動を加えるとダレが発生する。
3:振動を加えてもダレが発生しない。
鏝の軽さ
1:重く、腕に負荷を感じる
2:負担は軽いが、塗る時に力を要する
3:ほとんど力を入れることなくスムーズに塗ることができる
Claims (12)
- (A)アルカリ増粘型ポリマー(以下、(A)成分という)を含むエマルション、水硬性粉体、及び水を混合する、左官用水硬性組成物の製造方法。
- (A)成分が、酸性基を含む不飽和化合物(1a)とエチレン性不飽和化合物(2a)とを構成単量体として含む共重合体である、請求項1に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (A)成分が、不飽和カルボン酸(1a1)と、エチレン性不飽和化合物(2a)とを構成単量体として含む共重合体である、請求項1又は2に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (A)成分が、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる単量体(1a’)と、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる単量体(2a’)とを構成単量体として含む共重合体である、請求項1〜3の何れか1項に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- 単量体(2a’)におけるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのエステル部分の炭素数が1以上8以下である、請求項4に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (A)成分の混合量が、水硬性粉体100質量部に対して、0.02質量部以上2.0質量部以下となるように前記エマルションを混合する、請求項1〜5の何れか1項に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- 更に、(B)分散剤(以下、(B)成分という)を混合する、請求項1〜6の何れか1項に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (B)成分が、ポリカルボン酸系重合体、ナフタレン系重合体、及びカチオン性重合体から選ばれる1種以上の分散剤である、請求項7に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (B)成分が、下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含む共重合体である、請求項7又は8に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
〔式中、
R1b、R2b:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
R3b:水素原子又は−COO(AO)n1X1
X1:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n1:AOの平均付加モル数であり、2以上300以下の数
q:0以上2以下の数
を示す。〕
〔式中、
R4b、R5b、R6b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕 - 単量体(1b)と単量体(2b)の合計に対する単量体(2b)の割合が、10モル%以上80モル%以下である、請求項9に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (A)成分の混合量と(B)成分の混合量との質量比(B)/(A)が、0.05以上3以下となるように、前記エマルションと(B)成分を混合する、請求項7〜10の何れか1項に記載の左官用水硬性組成物の製造方法。
- (A)アルカリ増粘型ポリマー(以下、(A)成分という)を含むエマルション、水硬性粉体、及び水を配合してなる、左官用水硬性組成物。
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