以下に、本発明における加熱調理器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の断面模式図である。
加熱調理器は、本体1と、本体1の内側に内装固着された容器収納部2と、容器収納部2内に着脱自在に収納され、有底筒状で上面が開口した鍋状の容器6とを備えている。また、加熱調理器は、容器6の上面開口を覆う内蓋8と、本体1に開閉自在に係止され、内蓋8に連結されて内蓋8を覆う外蓋10とを備えている。内蓋8と外蓋10とで容器6を覆う蓋体が構成されている。
容器収納部2の外壁部には、スパイラル状に旋回された電磁誘導加熱用の加熱コイル3が設けられている。加熱コイル3には高周波電流が供給され、これにより発生する磁界で容器6を誘導加熱する。なお、容器6の加熱装置は、電磁誘導加熱用の加熱コイル3に限られたものではなく、ヒータ等としても良い。
容器収納部2の底中央部には貫通孔が形成され、貫通孔内には温度センサ4が配置されている。温度センサ4は、圧縮バネ5により下方から支持されて容器6の底部に接触して配置され、容器6の温度を計測する。
容器6には取っ手部7が設けられ、取っ手部7が容器収納部2に備える保持部(図示せず)上に係止されて本体1内に容器6が保持される。また、容器6の上面開口周囲には、外方に延びるフランジ部6aが形成されている。内蓋8の周縁部にはシールである蓋パッキン9が設けられ、蓋パッキン9により容器6のフランジ部6aおよび容器6の内壁面との密閉性が得られるようになっている。
内蓋8には内蓋通気孔11が貫通して設けられており、内蓋8および外蓋10には、内蓋通気孔11を介して容器6内と加熱調理器外とを連通する連通流路が形成されている。連通流路は、いずれも中空で構成された、連通流路15aと、連通流路15bと、連通流路15cで構成されており、連通流路15aの先には、内蓋通気孔11に密閉接続するための経路パッキン13が配置されている。
内蓋8にはさらに蒸気孔17が形成され、蒸気孔17には蒸気排出弁18が配置されている。蒸気排出弁18は、容器6内の圧力によって自動的に開閉されて容器6内を密閉または非密閉とする弁である。蒸気排出弁18の下流には、蒸気排出口20を備えるカートリッジ19がカートリッジパッキン21にて経路の密閉を維持した状態で接続配置される。
また、内蓋8にはセンサ孔24が貫通して設けられており、外蓋10にはセンサ孔24を介して容器6内の温度を計測する蓋センサ22と、センサ孔24と外蓋10とを密閉する蓋センサパッキン23と、が配置されている。
外蓋10には容器6内の空気を吸引して容器6内を減圧する減圧ポンプ14を備える。連通流路15aと連通流路15bとの間には三方向電磁弁12が配置されている。三方向電磁弁12は、外蓋10内の流路を、流路Aまたは流路Bに切り替える。流路Aは、容器6内の空気を、内蓋通気孔11から連通流路15a、連通流路15b、減圧ポンプ14および連通流路15cを経て外蓋10の外面に開口した外蓋通気孔16aから排出する流路である。流路Bは、加熱調理器外の空気を、外蓋通気孔16bから連通流路15d、連通流路15b、減圧ポンプ14および連通流路15cを経て外蓋通気孔16aに排出する流路である。
減圧ポンプ14は、容器6内の空気を吸引して、流路Aを介して外蓋通気孔16aから外部へと排気する。また、減圧ポンプ14は、外蓋通気孔16bから外気を吸引して、流路Bを介して外蓋通気孔16aから外部へと排気する。外蓋通気孔16aおよび外蓋通気孔16bは、外蓋10の側面または底面に配置されることで、減圧ポンプ14への水分および異物の侵入を防ぎ、故障リスクを抑制することができる。なお、図1では、容器6内の空気を外部に排気する排気孔として、外蓋通気孔16aおよび外蓋通気孔16bを外蓋10に配置した構成としているが、排気孔を、本体1の側面部または底部等に配置しても良い。
外蓋10にはさらに、調理に関する設定を行う画面を表示するとともに、画面上でのユーザーによる設定操作等を受け付ける操作表示装置25が設置されている。なお、図1には操作表示装置25が本体1に設置されているが、外蓋10に設置されていても良い。操作表示装置25は、スマートフォンまたはタブレット等、本体1以外の場所に提示され、本体1と通信を行うことで操作表示装置25上で操作された制御内容に設定変更するようにしても良い。
操作表示装置25は、ユーザーからの操作入力を受け付ける操作部(図示せず)と、入力された情報および加熱調理器の動作状態などを表示する表示部(図示せず)と、操作音および警報音等を出力する音出力部(図示せず)とを有する。なお、操作表示装置25は、操作部と表示部とが一体的に構成されるものに限定されず、表示部を別個に設ける構成としても良い。
図2は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器のブロック図である。加熱調理器は、加熱調理器全体を制御する制御装置26を備えている。制御装置26には、減圧ポンプ14と、操作表示装置25と、加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ部27と、温度センサ4と、蓋センサ22とが電気的に接続されている。制御装置26は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
制御装置26は、操作表示装置25を介して入力される指示に従い、制御装置26に備えた記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することで、後述する加熱制御処理を実行する。このとき、制御装置26には、温度センサ4および蓋センサ22の検知結果、ならびに計時部(図示せず)により計測された経過時間が入力され、制御装置26はこれらの情報を用いて、加熱コイル3、減圧ポンプ14および三方向電磁弁12を制御する。
計時部は、制御装置26からの指示に基づいて経過時間を計測する。計時部が計測した経過時間は、制御装置26に出力される。記憶部は、制御装置26によって実行されるプログラムおよび各種データを記憶するメモリである。また、記憶部には、操作表示装置25を介して入力される調理方法、調理量、調理温度、調理時間および予約時刻等の各種情報が記憶される。さらに、記憶部には、各調理方法における基本の調理シーケンスと、後述の注意表示部37および食材目安表示部39のそれぞれの表示条件とが予め記憶される。
なお、調理方法の中には、基本の加熱圧力制御工程が同一で、異なる調理方法名の組み合わせが含まれていても良い。例えば、“茹で”と“蒸し”はどちらも100℃で設定時間、沸騰させる制御であるが、制御内容が同様であっても、あえて調理方法を別に表示することによって、ユーザーがわかりやすい表現でそれぞれを表示することができ、使い勝手が向上する。
基本の調理シーケンスとは、各調理方法において操作表示装置25において設定される情報を変数とし、操作表示装置25で設定されない情報を定数とした一連の制御工程である。操作表示装置25で設定されない情報とは、例えば、加熱および圧力制御のタイミングおよびトリガ等である。制御装置26は、操作表示装置25の設定に従って各変数を更新し、加熱コイル3および減圧ポンプ14を含む加熱調理器の各部を制御する。
また、操作表示装置25にさらにオプションボタンを設け、基本の調理シーケンスの前後または途中に、基本の調理シーケンスの制御とは異なる加熱圧力調理制御を追加できるようにしても良い。具体的には例えば、基本の調理シーケンスの後に仕上げ工程および余熱工程を設けるなどが該当する。
この加熱調理器は、一般的な100℃における調理の他、100℃未満の低温での動作が求められている。また、この加熱調理器は、100℃未満の低温であっても、沸騰が継続される状態を維持する動作が求められている。沸騰状態を維持することによって、容器6内で煮汁の対流が促進されるため、沸騰していない場合に比べ、容器6内の加熱ムラを軽減することができる。加熱ムラを軽減することで、容器6内の被調理物を均一に加温し食材の仕上がりを安定させて、おいしさを向上させることができる。
例えば、炊飯器では一般に米の糊化温度以下(35℃〜65℃)で水を吸水させる吸水工程を設け、吸水後に昇温して沸騰状態を維持することで、水分を十分に含んだおいしい仕上がりを得ることができる。しかし、低温では沸騰が起きないため、加熱面に近い鍋底付近と加熱面から遠い水面付近とでは、温度差が生じやすく、仕上がりのムラに繋がる。これに対し、沸騰によって対流を促進することで、このムラを軽減することができるため、炊飯後の仕上がりを均一にし、食味を向上することができる。
また、炊飯以外の調理においても、沸騰が継続される状態を維持することで、加熱ムラを軽減し、仕上がりを均一にすることができる。特に、低温で蒸し調理を行う場合などはメリットが大きい。通常、低温(例えば70℃)で保温していても、沸騰が起きていないため水面から離れた空間の温度は上昇しにくく、温度ムラも大きい。しかし、沸騰させることによって70℃付近の水蒸気を発生させ、対流も生まれるため、容器内全体の温度が70℃付近で安定しやすく、被加熱物に対しては水蒸気の凝縮熱も与えられるため、早く加熱することができる。
ここで、本実施の形態は、操作表示装置25の表示に特徴を有しており、以下、詳細に説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の一例を示す図である。
操作表示装置25は、複数の操作ボタン31a〜31h(以下、各ボタンを区別しない場合は操作ボタン31という)、調理方法設定部32、調理量設定部33、調理温度設定部34、火力設定部35、時間表示部36、注意表示部37、ロック表示部38および食材目安表示部39を含む。
操作ボタン31は、調理方法設定ボタン31a、調理量設定ボタン31b、切/あたためボタン31c、温度/火力設定ボタン31d、時間設定ボタン31e、真空保存/解除ボタン31f、予約/延長ボタン31gおよびスタート/一時停止ボタン31hを含む。
調理方法設定ボタン31aは、調理方法設定部32に表示される複数の選択肢のいずれかを選択する際に押下される。調理量設定ボタン31bは、調理量設定部33に表示される調理量を選択する際に押下される。切/あたためボタン31cは手動で調理を終了する場合または設定をリセットしたい場合などに押下され、押下されると待機画面に戻る。また、待機画面で切/あたためボタン31cが押下された場合には、あたため動作が行われる。
温度/火力設定ボタン31dは、温度および火力の設定を行う際に押下される。時間設定ボタン31eは調理時間または予約時間を選択する際に押下される。真空保存/解除ボタン31fは手動で真空保存または真空解除を行う場合に押下される。予約/延長ボタン31gは予約調理の際、または調理終了後、設定を保持したまま調理時間を延長する際に押下される。スタート/一時停止ボタン31hは調理開始時および調理中食材を入れる場合など、調理を一時中断する際に押下される。
調理方法設定部32では、真空調理、低温調理、無水調理、炊飯、蒸し、茹でおよび炒めの複数の選択肢の中から、いずれかの調理方法が選択される。ここで、真空調理とは、容器内を真空にし、容器内の圧力を変動させたり、低温で沸騰させたりして調理を行う調理方法である。低温調理とは、容器内を常圧下で100℃未満の一定の温度に保って調理を行う調理方法である。容器内に入れる食材は、気密な袋に入れた状態で高真空にしてから密閉し、投入することで、空気の熱膨張を抑えて熱伝達を向上させることができるが、そのまま入れても良い。真空調理および低温調理のいずれも、温度センサ4で計測された容器6の温度を調理温度まで上昇させる昇温工程と、容器6の温度を一定の調理温度に保つ温調工程と、容器6の温度を予め設定された保温温度に維持する保温工程とを有する。
調理方法設定ボタン31aを押下すると、調理方法設定部32に表示される、各選択肢を囲む枠が1つずつ移動するように点灯する。なお、図3は、操作表示装置25に表示される全てのアイコン等を表示した図であって、図3では、調理方法の全ての選択肢に枠が示された状態を示している。本実施の形態では選択肢を枠で囲むものとしているが、選択肢を点滅させるようにしても良いし、文字の色を変更したり、太字にしたりしても良い。
調理方法の選択が変更された場合、調理温度設定部34には、予め制御装置26が備える記憶部に記憶されたその調理方法に適する調理温度が表示され、時間表示部36には、その調理方法に適する調理時間が表示される。例えば、真空調理または低温調理は65℃または50分、無水調理は95℃または40分、煮込みは100℃または30分等の調理時間が表示される。また、調理方法によっては火力設定部35に、同様にその調理方法に適する火力が表示される。例えば、“茹で”は火力:中などが表示される。こうすることによって、ユーザーは各調理方法に関する知識がなくても、その調理方法がどの温度帯で調理を行うことに適しているのかを判断することができる。
なお、調理方法設定部32では、肉じゃが、カレーまたはローストビーフなど、自動調理メニューを選択したり、肉、魚、野菜、卵または練り物など、食材を選択したりするようにしても良い。その場合においても、各メニューまたは食材に応じて適切な調理温度および調理時間を予め記憶部に記憶しておき、例えば食材が選択されると、その食材に適切な調理温度および調理時間を表示すれば良い。食材またはメニューを選択する場合には、調理方法を選択する場合よりも、食材自身の性質を踏まえてさらに正確に調理温度と調理時間を設定することが可能となる。
調理量設定部33では、容器6に投入された食材および煮汁の調理量が設定される。調理量設定ボタン31bを押下すると、調理量設定部33に表示されるアイコンが変化し、調理量が1つずつ段階的に増加する。なお、図3では容器6に対し、調理量を3分割としているがこの限りではない。また、調理量をアイコンで表示するとしたが、文字で表示してもよく、要するに調理量を識別可能な識別情報を表示すればよい。このように調理量を“少”、“中”、“多”のように文字で表示しても良いが、ユーザーによって“少”、“中”、“多”といった量の感覚には差があるため、アイコンで図示する方が、感覚の差を緩和することができ、適切な調理量の設定ができる。また、アイコンに対応する調理量の線を容器6に刻印することによって、ユーザー間の個人差をさらに緩和することが可能である。このように、調理量設定部33では、調理量が設定項目として設定され、“少”、“中”、“多”のいずれかが設定内容として設定される。
調理量設定ボタン31bが押下されると、調理量設定部33の表示の切り替えに伴い、時間表示部36の調理時間も切り替わる。このように、調理方法を設定した上で、調理量を設定することで、時間表示部36の表示が、設定した調理量に適した調理時間に切り替わる。よって、調理方法設定部32で設定される調理方法のうち、特に低温調理および真空調理に慣れていないユーザーでも、大体の調理時間を把握することができる。制御装置26の記憶部には、調理方法と調理量との組み合わせに応じた調理時間が記憶されており、制御装置26は、記憶部に記憶された情報に基づいて、時間表示部36の表示を切り替える。
温度/火力設定ボタン31dは、温度および火力の一方または両方を設定する際に押下される。例えば、真空調理および低温調理の場合、100℃より低い一定の温度に容器6の温度を調整することになる。温度を調整するには、容器6の温度を温度センサ4等で計測しながら間欠的に容器6を加熱することが必要であり、火力を設定する必要性は乏しい。つまり、温度を調整する調理の場合、火力を上げたところで休止時間が長くなったり、オーバーシュートが大きくなったりするだけであり、火力を設定する必要性は乏しい。よって、温度/火力設定ボタン31dは、真空調理および低温調理の場合、自動的に温度のみ設定可能な温度設定ボタンとなり、火力の設定は行えないボタンとして機能する。
一方、蒸し調理および茹で調理は、ほぼ100℃で調理することが前提であるから、ユーザーが温度を設定する必要はない。また、炒め調理においても、ユーザーは火力のみを設定することが一般的であり、温度を設定する必要性は低い。よって、炒め調理においては、火力のみを設定するようにしても問題はない。したがって、温度/火力設定ボタン31dは、蒸し調理、茹で調理および炒め調理の場合、自動的に火力のみ設定可能な火力設定ボタンとなり、温度の設定は行えないボタンとして機能する。
このように、温度/火力設定ボタン31dは、調理方法に応じて自動的に温度設定ボタンまたは火力設定ボタンとして機能し、温度か火力のいずれか一方のみを設定可能なボタンとなる。このため、温度設定ボタンと火力設定ボタンとをそれぞれ別々に設ける必要がなく、ボタンを1つにまとめることができる。これにより、温度設定ボタンと火力設定ボタンとをそれぞれ別々に設ける場合と比べて、どの調理方法においても、操作するボタンの位置および流れが変わらず、ユーザーの取り扱い易さを改善することができる。制御装置26の記憶部には、調理メニューに応じて温度および火力のどちらを設定するのかを示す温度火力情報が記憶されている。制御装置26は、ユーザーによって設定された調理方法と記憶部に記憶された温度火力情報に基づいて、温度/火力設定ボタン31dを温度設定ボタンまたは火力設定ボタンとして機能させる。
なお、ここでは、温度/火力設定ボタン31dが、調理方法に応じて自動的に温度設定ボタンまたは火力設定ボタンとして機能するとしたが、温度および火力の両方を設定可能なボタンとして機能するようにしても良い。炒め調理の場合、高火力で加熱し続けると、容器6の温度が容器6に施されたコーティングの耐熱温度を超えたり、その他の周辺部材が耐熱温度を超えたりする恐れがある。このため、炒め調理に関しては、温度/火力設定ボタン31dを、温度および火力の両方を設定可能なボタンとして機能させ、強火にした場合でも耐熱温度を超えないよう温度を調整できる構成としても良い。また、炒め調理では、ホットプレートのように比較的低い温度(例えば110℃)で温調してゆっくりと炒めたり、逆に比較的高い温度(例えば180℃)で温調して食材表面に急速に焦げ色をつけたりすることもある。このため、炒め調理では温度も調整できる構成とすると、より使い勝手がよい。
時間設定ボタン31eは、調理時間および予約の時間を設定する際に押下される。時間設定ボタン31eは一定時間以上、長押しすると10分ずつ時間を増加させるなど、従来、炊飯器等で用いられる公知の機能を搭載する。
注意表示部37は、現在設定されている設定内容での調理が、予め制御装置26の記憶部に記憶された殺菌条件を満たさない場合に表示される。注意表示部37は、真空調理および低温調理の設定に関してユーザーに注意を促す第1警報として表示される。注意表示部37は、図3に示すように注意を示すアイコンでも良いし、文字でも良い。また、注意表示部37の表示は、点灯としてもよいし、より注意を促すため点滅するようにしてもよい。なお、操作表示装置25上に表示された調理情報とは、調理量設定部33、調理温度設定部34および時間表示部36にそれぞれ表示される調理量、調理温度および調理時間の少なくとも1つ以上を含む。
例えば、調理温度設定部34に45℃が表示されている場合、45℃では殺菌が行われず、むしろ増殖する危険性がある。また、例えば時間表示部36に5分と表示されている場合、5分では調理時間が短すぎて殺菌が行われず、むしろ増殖する危険性がある。また、例えば調理温度設定部34が63℃、時間表示部36が25分と表示されていた場合、食品衛生上、被調理物の中心温度が63℃を30分以上維持することが目安であるから、この場合も殺菌が十分に行われず、好ましく無い。
これらのような殺菌条件を満たさない設定がされていた場合に、不適切な設定である旨を注意表示部37によって知らせることで、専門的な知識がなくとも、ユーザーの設定ミスを防ぐことができる。
ここで、殺菌条件は、調理方法が真空調理および低温調理である場合に設定される条件である。殺菌条件には、例えば以下のような条件が設定される。なお、殺菌条件には、要するに十分な殺菌を行うことが可能な調理内容を特定できる条件であればよく、以下の条件に限定されるものではない。
(1)調理方法に応じた最低調理温度を特定した条件
(2)調理方法に応じた最低調理温度および最低調理時間の両方を特定した条件
(3)調理方法と食材との組み合わせに応じて最低調理温度を特定した条件
(4)調理方法と食材との組み合わせに応じて最低調理温度および最低調理時間の両方を特定した条件
(5)調理方法と食材と調理量との組み合わせに応じて最低調理温度および最低調理時間の両方を特定した条件
なお、食品衛生上の加熱温度および時間はあくまでも目安であるから、注意表示部37が表示されていた場合でも調理を開始することはできる。一般にローストビーフおよび温泉卵など、食味を維持するために中心部が63℃×30分または75℃×1分を満たしていない状態で調理を完了する場合も多い。これは賞味期限または消費期限内であれば、牛肉および卵の内部には、健康な人が食べる上で食中毒に関与する菌がほとんどいないことが前提となっている。このため、注意の表示はあくまでも目安であるが、低温調理に詳しくないユーザーに対して、設定の再確認を促すには十分な効果がある。
また、本実施の形態では、現在設定されている設定内容での調理が設定殺菌条件を満たさない場合にユーザーに注意を促す第1警報の報知として、注意表示部37により操作表示装置25に文字またはアイコンで表示するとしたが、この方法に限られない。本体1にLEDを設けて点灯または点滅させたり、本体1に設けたスピーカーから警報音を流したりなどして報知しても良い。加えて、食品衛生上の殺菌の目安は時代とともに変化しており、今後も変化する可能性があるため、殺菌条件は通信端末を使用して更新できるようにしておくと良い。
ロック表示部38は、容器6の内部が少なくとも大気圧未満である場合に表示される。ロック表示部38は、ユーザーに注意を促す第2警報として表示される。容器6内が減圧されると、内蓋8が大気圧によって容器6に強く押し付けられ、加熱調理器の外蓋10を開けようとしても開けることができない。無理に開けようとすれば関連する部品が破損する恐れがある。そこで、容器6内が減圧中は、“蓋が開かない”ということをユーザーに明示するため、図3に示すようにロック表示部38に鍵のアイコンを表示する。なお、アイコンに限らず、施錠中またはロック中等、文字による表示を行っても良い。これによって、“減圧中”と表示するよりも、より直観的に蓋が開かないということをユーザーに知らせることが可能である。
また、本実施の形態では、蓋が開かないことを示す第2警報の報知として、ロック表示部38により操作表示装置25に文字またはアイコンで表示するとしたが、この方法に限られない。本体にLEDを設けて点灯または点滅させたり、本体1に設けたスピーカーから警報音を流したりなどして報知しても良い。
ロック表示部38に鍵のアイコンが表示されて“蓋が開かない”ことが示されている場合において、蓋を開きたい場合には、切/あたためボタン31c、真空保存/解除ボタン31fおよびスタート/一時停止ボタン31hのいずれかを押下すればよい。制御装置26は、この押下を検知すると、減圧ポンプ14を停止させるとともに、三方向電磁弁12を制御して流路Aから流路Bに切り替える。これにより容器6内の圧力が大気圧に戻ると、ロック表示部38の表示が消灯し、ユーザーは外蓋10および内蓋8を開けることが可能となる。なお、蓋を開けた際、ロック表示部38の表示が消灯する以外に、例えばバックライトを消灯するなどとしても良い。
食材目安表示部39は、調理温度設定部34に表示された調理温度での調理に適した食材、例えば魚、肉または野菜などの食材がある場合に、その食材のアイコンを表示する。例えば一般に肉は、55℃〜65℃程度の温度で調理することで、筋基質タンパク質の主成分であるコラーゲンの収縮を抑えて柔らかくジューシーに仕上げることができる。また、魚類の場合には、種類にもよるが40℃〜55℃程度の低温でコラーゲンの収縮が起こるものが多く、肉類と同じ温度で温調してもおいしく調理することができない。また、野菜類は低温では軟化せず、むしろ60℃程度の温度では細胞壁付近で起こる化学反応の影響で組織強度が高まり、長時間維持すると硬くなってしまう。つまり、魚類および野菜類に関しても、これら食材の性質に応じて調理に適切な温度帯がある。
したがって、調理温度設定部34に表示されている調理温度が例えば肉の調理に適した温度帯内の温度であれば、肉のアイコンを表示する。これによって、ユーザーは、調理温度を設定しながら食材目安表示部39を確認し、自分が調理する食材が食材目安表示部39に表示されるときの温度を調理温度に設定すれば良い。したがって、ユーザーは、専門的な知識がなくとも容易に調理温度を設定することが可能となる。
制御装置26の記憶部には、食材ごとに、その食材に適した温度帯に関する情報が予め記憶されており、制御装置26は、この情報に基づいて食材目安表示部39の表示を切り替える。具体的には、制御装置26は第1の食材と、第1の食材に適した第1の温度帯とを対応付けて記憶するとともに、第2の食材と、第2の食材に適した第2の温度帯とを対応付けて記憶すればよい。ここで、第1の温度帯と第2の温度帯とは必ずしも異なっていなくてもよく、同じでも良いし、一部の温度帯が重なっていてもよい。したがって、調理温度設定部34に表示されている調理温度が複数の食材にとって好ましい温度である場合には、複数の食材が食材目安表示部39に表示されても良い。また、すべての調理方法で食材目安表示部39を表示しても良いが、主にユーザーが温度設定を行う調理方法にのみ適用すれば良い。
また、食材目安表示部39は本実施の形態では操作表示装置25にアイコンで食材を表示するとしたが、文字で表示しても良く、要するに食材を識別可能な識別情報を表示すれば良い。
以上、操作表示装置25について説明したが、図3に示した操作表示装置25は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、操作表示装置25の全体をタッチパネルで形成しても良いし、ボタンを省略または分割しても良い。また、すべてのボタンにLEDを設け、次の操作ボタンを点滅させるなどして、ユーザーの次の操作をアシストしても良い。
以下、加熱調理器の動作について説明する。図1に示した加熱調理器は、低温調理および真空調理の他、炊飯等の調理も可能である。しかし、本実施の形態は低温調理および真空調理に関する設定を行う場合の操作表示装置25の表示動作に特徴があるため、次の図4には低温調理および真空調理を行う場合の動作フローチャートを示す。
図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。以下の説明では、ユーザーの操作に応じた画面の遷移についての記載があるが、画面の遷移制御は制御装置26によって行われる。なお、図4において「◆」マークがある動作はユーザーによって行われる動作、「◆」マークの無い動作は制御装置26によって行われる動作である。
はじめに、ユーザーは、任意のメニューを作るため、米、肉、魚、野菜、水および調味料等のうちの適宜の材料を容器6内に入れる。その後、ユーザーは取っ手部7を把持して容器6を容器収納部2に載置し、外蓋10を閉める。これにより、内蓋8の蓋パッキン9が容器6のフランジ部6aに圧接されて容器6内が密閉される。
そして、加熱調理器の電源が入れられると、次の図5に示す待機画面が操作表示装置25に表示される。なお、待機画面の表示の前に、スタートアップの画面を表示しても良い。
図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の待機画面の一例を示す図である。
待機画面には、現在の時刻が表示される。そして、待機画面においてユーザーにより操作ボタン31が押下されると、操作表示装置25の画面は次の図6に示す設定画面に移行する。操作ボタン31のいずれのボタンが押下されても、図6に示す設定画面が操作表示装置25に表示される。
図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の設定画面の一例を示す図である。図7は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の設定画面の他の一例を示す図である。
ユーザーは、設定画面上において、まず調理方法設定ボタン31aにて、調理方法を設定する(ステップS1)。調理方法設定ボタン31aが押下されると、押下される度に選択肢を囲む枠が1つずつ移動するように枠の表示が消灯および点灯する。そして、スタート/一時停止ボタン31hがユーザーに押下された時点で、調理方法設定部32に表示されている複数の選択肢の中で、枠に囲まれている1つが調理方法として設定される。
調理方法が設定されると、調理温度設定部34には、設定された調理方法に適した調理温度が表示される(ステップS2)。また、時間表示部36には、設定された調理方法に適した調理時間が表示される(ステップS3)。この際、本実施の形態では、初期設定として、調理量が“少”の状態の調理時間を時間表示部36に表示するようにしている。しかし、初期設定の調理量は、“中”または“多”など、いずれでも良い。図6には、調理方法として真空調理が設定され、調理温度設定部34に65℃、時間表示部36に50分と表示された例を示している。
なお、本実施の形態において初回使用時の設定画面には、制御装置26の記憶部に予め記憶された初期設定情報に基づいて調理温度および調理時間が表示される。初期設定情報とは、メーカー側が予め用意した、調理方法に適した調理温度および調理時間である。2回目以降の使用時には、ユーザーが前回、実際に調理を実行した際の情報を表示しても良い。この際には、調理量設定部33にも、ユーザーが前回、設定した際の調理量を反映すると良い。
次にユーザーは調理量設定ボタン31bを操作し、調理量を設定する(ステップS4)。ユーザーは容器6に刻印された調理量線の目安に従い、被調理物の調理量を設定する。なお、本実施の形態における加熱調理器は、物理的な開閉を妨げる施錠機能は搭載しておらず、減圧時以外は操作中および調理中であっても外蓋10を開けることが可能である。
調理量設定ボタン31bが押下されると、調理量設定部33に表示されるアイコンが変化し、調理量が1つずつ段階的に増加する。また、調理量の変更に伴い、時間表示部36の調理時間が自動的に切り替わる(ステップS5)。すなわち、すでに設定されている調理方法と、ここで設定した調理量とから、調理に適切な調理時間が時間表示部36に表示される。例えば、調理量を“少”から“多”に変更すると、時間表示部36の調理時間が、50分から100分に切り替わる(図7参照)。
調理時間を切り替える方法としては、従来公知の方法を採用すれば良い。例えば調理方法と調理量とに応じて一意的に時間が決まるよう、調理方法と、調理量と、調理時間とを対応付けたテーブルを記憶部に記憶させておく。そして、調理方法と調理量とに基づいてテーブルを検索し、対応する調理時間を決定するなどの方法を採用すれば良い。なお、ここでは、調理量に応じて調理時間を変更するとしたが、調理量に応じて調理温度を変更するようにしてもよいし、また、調理温度と調理時間の両方を変更するようにしてもよい。
次にユーザーは調理温度および調理時間を微調整する(ステップS6)。すなわち、ユーザーは、温度/火力設定ボタン31dを操作して調理温度を微調整するとともに、時間設定ボタン31eを操作して調理時間を微調整する。なお、調理温度設定部34にはすでに調理温度が表示されている。よって、ユーザーは、すでに表示されている温度での調理を望む場合は設定を変更しなくても良い。しかし、ユーザーによっては温度を微調整したい場合があり、また食材によっても調理温度が異なるから、微調整したい場合には温度/火力設定ボタン31dを用いて微調整を行えば良い。このように、調理温度を調理方法によって一意的に決めるのではなく、ユーザーが自由に変更可能とすることで、ユーザーの好みに応じた調理が可能となる。
温度の具体的な調整操作としては、温度/火力設定ボタン31dを押下する度に、調理温度設定部34の温度が例えば1℃刻みで増加または減少する。また、一定時間以上、温度/火力設定ボタン31dを長押しすることによって、調理温度設定部34の温度が例えば5℃または10℃刻みで増加または減少する。ただし、具体的な温度はこの限りではない。
また、調理温度と同様に調理時間も既に時間表示部36に表示されている。よって、ユーザーは、すでに表示されている調理時間での調理を望む場合は設定を変更しなくても良い。しかし、ユーザーによっては時間を微調整したい場合があるため、微調整したい場合には時間設定ボタン31eを用いれば良い。このように、調理時間を調理方法によって一意的に決めるのではなく、ユーザーが自由に変更可能とすることで、ユーザーの好みに応じた調理が可能となる。
時間の具体的な調整操作としては、時間設定ボタン31eを押下する度に、時間表示部36の時間が例えば1分刻みで増加または減少する。また、一定時間以上、時間設定ボタン31eを長押しすることによって、時間表示部36の時間が例えば5分または10分または30刻みで増加または減少する。ただし、具体的な時間はこの限りではない。
ところで、制御装置26は、調理温度設定部34に表示された調理温度が食材目安表示を行う温度帯内にあるかをチェックしており(ステップS7)、温度帯内にある場合、該当の食材を食材目安表示部39に表示する(ステップS8)。食材目安表示部39の表示は、調理温度設定部34に表示された調理温度に応じて切り替わる。つまり、調理温度が変更されると、その変更に応じて食材目安表示部39の表示が切り替わる。具体的には、調理温度設定部34に表示された調理温度に適する食材だけが食材目安表示部39に表示される。
これによって、ユーザーは容器6に投入した食材と照らし合わせることで、専門的な知識がなくても調理温度を設定することができる。例えば肉を調理したい場合には、図6に示すように調理温度設定部34の温度が65℃の時点で肉のアイコンが点灯しているから、65℃は、肉の調理に適する温度であることがわかる。また、調理温度設定部34の温度が65℃の時点で野菜のアイコンは消灯していることから、野菜を含む調理を行う場合には調理温度の変更が好ましいことがわかる。
また、調理温度の中でも特に一般に適する温度がある場合、その温度において食材目安表示部39の食材アイコンを点滅させるようにしても良い。これによって、ユーザーは、アイコンが点灯する温度に幅がある場合であっても、最適な調理温度を点滅によって知ることができる。例えば、肉の場合、レアに仕上げるか、ミディアムに仕上げるか、ウェルダンに仕上げるかなど、焼き加減によって調理温度はある程度幅を持つが、一般的なミディアムを調理できる温度(例えば63℃)で肉アイコンを点滅させると良い。
加えて、調理方法によって最適温度を切り替えても良い。例えば、調理方法が“茹で”の場合には95℃〜100℃で野菜アイコンを点灯させるが、“ブランチング”(図示せず)の場合には65℃〜70℃で野菜アイコンを点灯させる。野菜を低温で加熱すると硬化するため、通常の調理では向かないが、ブランチングにおいては敢えて低温で行うことで冷凍後もシャッキリ感を残すことができる。
本実施の形態において、調理時間は、設定した調理温度を維持する時間とするが、調理開始からの時間としても良い。しかし、低温調理においては、殺菌条件を満たすため、A℃をB分間維持するという考えで調理時間を設定することが多い。このため、調理時間は、昇温時間を省いた時間とした方が、ユーザーにとって設定が容易である。
また、制御装置26は、現在設定されている設定内容での調理が殺菌条件を満たすかどうかをチェックしており(ステップS9)、満たさない場合、注意表示部37を表示する(ステップS10)。そして、制御装置26は、調理温度および調理時間の変更に応じて注意表示部37の表示または消灯を適宜切り替える。これによって、ユーザーは専門的な知識がなくとも、殺菌条件を満たす調理内容を設定することが可能となる。
すべての設定が完了したら、ユーザーは予約/延長ボタン31gを押して調理を完了したい時刻を予約するか、またはスタート/一時停止ボタン31hを押下して調理を開始させる(ステップS11)。予約/延長ボタン31gが押下された場合(ステップS12)、次の図8に示す予約画面が表示され、予約画面上でユーザーは調理時刻を設定する(ステップS13)。
図8は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の予約画面の一例を示す図である。
図8に示す予約画面上で、ユーザーは調理を完了したい調理完了時刻を設定し、スタート/一時停止ボタン31hを押下することで、調理完了時刻の設定を完了する。その他、予約調理における操作および制御等は、従来の炊飯器等で公知の方法を採用すれば良い。
一方、すぐに調理を開始する場合、ユーザーはスタート/一時停止ボタン31hを押下する。スタート/一時停止ボタン31hが押下されると、時間表示部36には終了時刻が表示される。すなわち、現在時刻に、設定した調理時間を追加した時刻が時間表示部36に表示される。時間表示部36の表示によりユーザーは終了時刻が分かる。
制御装置26は、予約の場合もすぐに調理を始める場合も、スタート/一時停止ボタン31hが押下された際、操作表示装置25に表示されている調理方法および調理情報を、制御装置26の記憶部に記憶されている初期設定情報に上書きして記憶する(ステップS14)。つまり、必要に応じて微調整される等して最終的に設定された調理情報を記憶部に記憶する。ここで記憶される調理情報は、調理時間、火力および調理量の一部または全部を含む。
このように制御装置26の記憶部に記憶された初期設定情報を上書きすることで、ユーザーによって次回以降、調理方法が設定された際、その調理方法が過去に行われた際に実際に使用された設定を、各設定表示部に表示させることができる。これにより、ユーザーの使い勝手を向上できる。なお、本記憶動作は調理を終了した段階で行うようにしても良い。そうすることで、仮にユーザーが調理の途中で切/あたためボタン31cを押下して調理動作を中断した場合、中断するまでの時間を実際の調理時間として記憶することができる。
ここで、本実施の形態では、調理方法を“真空調理”、量を“多め”、調理温度を“65℃”、調理時間を“100分”と設定したものとする。そして、スタート/一時停止ボタン31hが押下されると、次の図9に示す調理画面が表示されるとともに調理制御が開始される(ステップS15)。
図9は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の調理画面の一例を示す図である。
調理画面は、現在調理中の調理内容が表示された画面である。ここでは真空調理であるため、ロック表示部38の表示が点灯している。本実施の形態の加熱調理器は、外蓋10または内蓋8を容器6に固定する施錠機構を持たないが、減圧中は大気圧に押されることによって蓋を開けることができなくなる。このため、ロック表示部38によって蓋が開かない旨を表示することで、無理に蓋が開けられないようにする。
ステップS15の調理制御は、従来公知の制御を行えばよい。制御装置26は、予め記憶部に記憶された真空調理の調理シーケンスに基づいて、調理温度を65℃、調理時間を100分に設定して調理を実行する。なお、圧力の設定は一般ユーザーにとって馴染みがないため、真空調理用の圧力として予め設定された圧力となるように加熱調理器側で自動的に行う。
ステップS11でスタート/一時停止ボタン31hが押下されると、まず加熱コイル3にインバータ部27から高周波電流が供給され、高周波磁界が発生し、容器6の加熱コイル3との対向面が励磁され、容器6の底面に渦電流が誘起される。この渦電流と、容器6の持つ抵抗とによりジュール熱が生じ、容器6の底面が発熱して加熱が行われる。そして、温度センサ4で計測された容器6の温度が調理温度に到達すると、昇温工程が終了して温調工程に移行し、インバータ部27の制御により調理温度を保つ。そして、設定時間が終了すると、調理制御を終了する。
三方向電磁弁12は、調理開始時には流路Bに切り替えられており、減圧を行うときのみ、流路Bから流路Aに切り替えられて減圧ポンプ14と容器6内とを連通する。そして、減圧ポンプ14が駆動されることによって、容器6内の空気が、内蓋通気孔11、連通流路15a、連通流路15bおよび連通流路15cを介して外蓋通気孔16aから外部へ排出され、容器6内の圧力が低下していく。そして、容器6の温度が、容器6内の圧力における沸点になると、容器6内に収容された被調理物が沸騰し、減圧低温沸騰が開始される。なお、容器6内の圧力Pは大気圧1.0atm以下の圧力となる。
そして、操作表示装置25で設定された調理時間が終了すると(ステップS16)、調理終了となる。ここで、ユーザーは、例えば真空保存/解除ボタン31fを押下して蓋のロックを解除してから、外蓋10および内蓋8を開けて容器6内の被調理物の調理状態を確認する。加熱不足であると判断した場合には、再び内蓋8および外蓋10を閉めて予約/延長ボタン31gを押下する(ステップS17)。予約/延長ボタン31gの押下により次の図10に示す延長設定画面が表示される。
図10は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の延長設定画面の一例を示す図である。
延長設定画面を確認したユーザーは、時間設定ボタン31eを操作して時間表示部36の延長時間を設定する(ステップS18)。図10の延長設定画面には、調理方法の“真空調理”と、延長時間として設定された“15分”とが表示されている。
そして、ユーザーは、スタート/一時停止ボタン31hを押下する(ステップS19)。スタート/一時停止ボタン31hが押下されると、制御装置26は、時間表示部36に表示された延長時間を、記憶部に記憶されている直前の調理時間に加算して再度記憶する(ステップS20)。これにより、次回使用時に、今回の調理で実際にかかった時間が時間表示部36に表示され、よりユーザーの使い勝手を向上できる。具体的には例えば、同様の調理方法および調理量であれば調理時間の延長が不要となる。なお、本記憶動作は調理が完了した段階で行うようにしても良い。そうすることで、仮にユーザーが延長動作の途中で切/あたためボタン31cを押下して延長動作を中断した場合、中断するまでの時間を追加して記憶することができ、より実際の調理時間に近づけることができる。
また、制御装置26は、ステップS19でスタート/一時停止ボタン31hが押下されると、延長設定画面で設定された延長時間、直前に調理した設定と同様の調理制御を再び行う(ステップS21)。なお、本実施の形態では延長時の調理制御は、延長前の調理時と同一、つまりここでは“真空調理”の制御を行うとしたが、例えば減圧は行わず、調理温度の設定のみを引き継ぐようにしても良い。
そして、延長時間が終了すると(ステップS22)、容器6内を予め設定された保温温度に維持する保温工程に移行する(ステップS23)。保温工程では、三方向電磁弁12を流路Aから流路Bに切り替える。そして、保温工程では、一定時間、減圧ポンプ14を運転して流路Bを乾燥させるとともに、容器6を予め設定された保温温度に維持する。
なお、保温工程では、三方向電磁弁12を流路Aから流路Bに切り替えた後、減圧ポンプ14を停止してもよいが、そのまま駆動すると、外蓋通気孔16bから外気を吸引し、流路Bを介して外蓋通気孔16aに排気する。これによって、沸騰時に減圧ポンプ14が吸引した水分を排出し、減圧ポンプ14の内部を含む流路Bを乾燥させることに繋がる。なお、減圧ポンプ14の駆動音が大きい場合には一定時間で減圧ポンプ14を停止しても良い。そして、保温中は、操作表示装置25に次の図11のような保温画面が表示される。
図11は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の操作表示装置の保温画面の一例を示す図である。
保温画面には、調理方法の“真空調理”と、調理終了からの経過時間としての“0分”と、ロック表示部38の鍵のアイコンとが表示されている。
保温工程に入った後、調理された被加熱物を加熱調理器から取り出したい場合には、ユーザーは例えば真空保存/解除ボタン31fを押下して(ステップS24)、蓋のロックを解除してから取り出せば良い。
以上説明したように、本実施の形態によれば、低温調理または真空調理を設定する操作が行われると、設定された調理を行う場合の調理情報である調理温度および調理時間の一方または両方を操作表示装置25に表示する。このため、低温調理および真空調理に関して専門知識の少ない一般ユーザーでも容易に調理情報の設定を完了することができる。
なお、本実施の形態では、低温調理および真空調理の両方の調理が可能な加熱調理器を示したが、低温調理専用または真空調理専用の加熱調理器であってもよい。この場合、調理方法自体を設定する操作は不要である。よって、低温調理専用または真空調理専用の加熱調理器であれば、操作表示装置25上で調理方法に関する何らかの設定操作が行われると、調理温度および調理時間の一方または両方を操作表示装置25に表示する。例えば低温調理専用の加熱調理器であれば、温度または時間等を設定する設定ボタンが押下されると、低温調理に適した調理温度および調理時間の一方または両方を操作表示装置25に表示する。
また、制御装置26は、調理量が設定されると、調理時間および調理温度の一方または両方を変更するようにしたので、低温調理および真空調理に関して専門知識の少ない一般ユーザーでも容易に調理情報の設定を完了できる。
また、調理量が変更されると、調理量設定部33の表示が変更後の調理量を示す表示に変更されるため、視覚的に調理量を確認できて使い勝手が良い。
また、操作表示装置25上の操作でユーザーが調理情報を変更可能としたので、ユーザーの好みに応じた調理が可能となる。
また、調理方法が設定されると、過去に同じ調理方法が設定された際の調理情報が操作表示装置25に表示されるようにしたので、ユーザーの使い勝手を向上できる。
また、調理温度が設定されると、設定された調理温度での調理に適した1または複数の食材のアイコンが操作表示装置25に表示されるようにしたので、ユーザーは、専門的な知識がなくとも容易に調理温度を設定できる。
また、現在設定されている設定内容での調理を行うと、予め設定された殺菌条件を満たさない場合、注意表示部37によってユーザーに注意を促す報知が行われるようにした。これにより、専門的な知識がなくとも容易に調理情報を設定できる。なお、調理情報には、調理時間、火力および調理量の一部または全部が含まれる。
また、温度火力設定ボタン31dは、調理方法に応じて火力または温度の一方のみの設定を受け付けるボタンに切り替わるようにした。このため、温度設定ボタンと火力設定ボタンとをそれぞれ別々に設ける場合に比べて、どの調理方法においても、操作するボタンの位置および流れが変わらず、ユーザーの取り扱い易さを改善することができる。
また、容器6内が少なくとも大気圧未満の場合に、ロック表示部38の表示により蓋体が開かないことを報知するようにしたので、蓋が無理に開けられることを防止できる。
また、制御装置26は、操作表示装置25に表示された調理情報に基づいた調理が完了または中断された際、調理情報の一部または全部を、調理方法と対応付けて記憶する。これにより、次回以降、調理方法が設定された際、その調理方法が過去に行われた際に実際に使用された設定を、各設定表示部に表示させることができる。
また、制御装置26は、操作表示装置25に表示された調理情報に基づいた調理が完了後、調理時間が延長された場合に、延長された時間を、調理情報に含まれる調理時間に加算した時間を記憶する。これにより、次回使用時に、今回の調理で実際にかかった時間が時間表示部36に表示され、よりユーザーの使い勝手を向上できる。
また、制御装置26は、容器6内を大気圧未満で調理温度に保つ温調工程を有し、真空調理の温調工程では、容器6内の被調理物を大気圧未満の圧力で沸騰するように加熱装置と減圧ポンプ14とを制御する。これにより、被調理物の真空調理が可能である。