実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器について説明する。図1は、本実施の形態1に係る加熱調理器100の構成の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、加熱調理器100は、本体1と、本体1に開閉自在に係止された外蓋2とを備えている。
[加熱調理器100の構成]
本体1の内側には、容器カバー3が設けられている。容器カバー3には、有底筒状で上面が開口した鍋状の容器4が着脱自在に収納されている。容器4内には、被加熱物である食材等の内容物が収容される。容器カバー3の外壁には、加熱装置5が設けられている。加熱装置5は、例えば、容器カバー3にスパイラル状に旋回された加熱コイル5aであり、高周波電流が供給されることにより発生する磁界で容器4を誘導加熱する。加熱装置5の加熱動作は、制御装置50によって制御される。なお、加熱装置5として、この例に限られず、電流が供給されることによって熱を発生するヒータ等が用いられてもよい。
容器カバー3の底面の中央部には貫通孔が形成され、貫通孔内に温度センサ6が配置されている。温度センサ6は、圧縮ばね7によって下方から支持され、容器4の底部に接触するように配置される。温度センサ6は、容器4の温度を計測する。
容器4には取っ手部8が設けられている。取っ手部8は、容器カバー3に設けられた図示しない保持部上に係止される。これにより、容器4が本体1内に保持される。容器4の上面開口の周囲には、外方に延出するフランジ部4aが形成されている。
外蓋2には、容器4の上面開口を覆う蓋体である内蓋9が連結されている。内蓋9の周縁には、シール材である蓋パッキン10が設けられている。蓋パッキン10は、外蓋2を閉じた際に、容器4のフランジ部4aおよび内壁と内蓋9との密閉性が得られるようになっている。
内蓋9には、貫通する内蓋通気孔16が設けられている。外蓋2には、外面に開口する外蓋通気孔17a~17cと、内蓋通気孔16と外蓋通気孔17a~17cのそれぞれとの間に設けられた、容器4の内外を連通する連通管18a~18cとが形成されている。連通管18a~18cは、中空状に形成され、内蓋通気孔16側の端部には、内蓋通気孔16に密閉接続するための経路パッキン19が配置されている。
連通管18aには、減圧装置である減圧ポンプ20と、経路切替弁21が配置されている。減圧ポンプ20は、内蓋通気孔16を介して容器4内の空気を吸引し、吸引した空気を連通管18aおよび外蓋通気孔17aを介して外部に排出することにより、容器4内を減圧する。減圧ポンプ20の駆動は、制御装置50によって制御される。経路切替弁21は、減圧ポンプ20よりも内蓋通気孔16側に設けられ、減圧ポンプ20の吸気口と、外蓋通気孔17cとに接続されている。経路切替弁21は、制御装置50の制御に基づき、減圧ポンプ20と、外蓋通気孔17cまたは内蓋通気孔16とを連通する。
連通管18bには、開閉弁22が配置されている。開閉弁22は、連通管18bの内蓋通気孔16から外蓋通気孔17bに至る流路を開閉する。開閉弁22の開閉動作は、制御装置50によって制御される。
なお、外蓋通気孔17aは、外蓋2の側面または底面に配置されると好ましい。これは、減圧ポンプ20への水分および異物の侵入を防ぎ、故障を抑制するためである。また、外蓋通気孔17a~17cは、容器4内の空気を外部に排気するための排気孔として配置されているが、このような排気孔は、これに限られず、例えば本体1の側面または底部等に配置してもよい。
内蓋9には蒸気孔11が形成されている。蒸気孔11には蒸気排出弁12が配置されている。蒸気排出弁12は、容器4内を密閉または非密閉とする。経路切替弁21および開閉弁22によって内蓋通気孔16が閉じた状態で、容器4内の内容物が加温されて蒸気が発生し、容器4内の圧力が1atmを超えた際に、蒸気排出弁12が開く。また、容器4内が低圧となった場合、蒸気排出弁12は自重によって閉じる。
蒸気排出弁12の下流には、カートリッジ13が配置されている。カートリッジ13は、蒸気排出口14を備えている。蒸気排出口14は、蒸気排出弁12が開いた際に、蒸気排出弁12を介して容器4内の蒸気を排出する。カートリッジ13には、蒸気の排出経路を密閉するためのカートリッジパッキン15が設けられている。
内蓋9には、貫通するセンサ孔23が設けられている。外蓋2には、蓋センサ24と蓋センサパッキン25とが配置されている。蓋センサ24は、センサ孔23を介して容器4内の温度または圧力を計測する。蓋センサパッキン25は、センサ孔23と外蓋2とを密閉するために設けられている。
(操作表示装置26)
本体1には、報知手段である操作表示装置26が設置されている。操作表示装置26は、ユーザによる調理モードの選択操作等の入力、ならびに動作状態等の表示を行う。操作表示装置26には、操作部としての各種ボタンと、表示部としてのLED(Light Emitting Diode)およびLCD(Liquid Crystal Display)等が設けられている。なお、操作表示装置26は、本体1に設置される場合に限られず、例えば外蓋2に設置されてもよい。また、操作表示装置26に対する操作および表示等の各種機能は、スマートフォン等の外部の機器によって実現されてもよい。
図2は、図1の操作表示装置26による表示について説明するための概略図である。図2に示すように、操作表示装置26には表示領域27が設けられ、表示領域27には、温度表示部27a、圧力表示部27bおよび沸騰表示部27cが設けられている。
温度表示部27aは、加熱装置5による容器4に対する加熱によって変化する容器4内の温度状態を表示する。温度表示部27aは、複数のLEDで構成され、例えば複数のLEDの点灯または消灯状態により、容器4内の温度状態を段階的に表示する。この例において、温度表示部27aは、3つのLEDで構成され、容器4内の温度を常温から100℃まで4段階で表示する。
例えば、温度表示部27aにおいて、3つのLEDすべてが消灯している状態は、容器4内の温度が常温程度であることを示す。また、3つのLEDすべてが点灯している状態は、容器4内の温度が100℃程度であることを示す。
圧力表示部27bは、減圧ポンプ20が駆動することによって変化する容器4内の圧力の高さを表示する。圧力表示部27bは、複数のLEDで構成され、例えば複数のLEDの点灯または消灯状態により、容器4内の圧力の高さを段階的に表示する。この例において、圧力表示部27bは、3つのLEDで構成され、容器4内の圧力を大気圧から真空まで4段階で表示する。ここで、「真空」とは、減圧ポンプ20の性能によって決定され、例えば0.2atm未満とする。
例えば、圧力表示部27bにおいて、3つのLEDすべてが消灯している状態は、容器4内の圧力が大気圧程度であることを示す。また、3つのLEDすべてが点灯している状態は、容器4内の圧力が真空(0.2atm未満)程度であることを示す。
沸騰表示部27cは、容器4内の内容物が沸騰しているか否かを表示する。沸騰表示部27cは、例えばLEDで構成され、LEDの点灯または消灯により、内容物の沸騰状態を表示する。例えば、沸騰表示部27cにおいて、LEDが点灯している状態は、内容物が沸騰していることを示す。また、LEDが消灯している状態は、内容物が沸騰していないことを示す。
(制御装置50)
また、図1の加熱調理器100は、制御装置50を備えている。制御装置50は、加熱調理器100全体を制御する。特に、本実施の形態1において、制御装置50は、温度センサ6および蓋センサ24の計測結果に基づき、操作表示装置26への表示を制御する。制御装置50は、マイクロコンピュータなどの演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能が実現され、もしくは各種機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア等で構成されている。なお、制御装置50は、本体1に設けられてもよいし、外蓋2に設けられてもよい。
図3は、図1の制御装置50の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置50には、減圧ポンプ20、経路切替弁21、開閉弁22、温度センサ6、蓋センサ24および操作表示装置26、ならびに、加熱コイル5aに高周波電流を供給するインバータ部30が電気的に接続されている。
図4は、図1の制御装置50の構成の一例を示す機能ブロック図である。図4では、操作表示装置26による表示に係る機能についてのみ図示する。図4に示すように、制御装置50は、温度検知部51、圧力検知部52、沸騰検知部53、表示制御部54および記憶部55を備えている。
温度検知部51は、温度センサ6によって計測された容器4の温度に基づき、調理中または調理終了後の容器4内の内容物の温度帯を検知する。
圧力検知部52は、蓋センサ24が圧力センサである場合に、蓋センサ24で計測された容器4内の圧力に基づき、調理中または調理終了後の容器4内の圧力を検知する。また、圧力検知部52は、加熱調理器100が圧力センサを備えていない場合に、記憶部55に予め記憶された各種情報に基づき、容器4内の圧力を算出して検知する。
具体的には、調理時において、圧力検知部52は、記憶部55に予め記憶された減圧ポンプ20の減圧速度に基づき、減圧開始からの経過時間に応じた容器4内の圧力を算出する。この場合の減圧速度は、容器4内の空気量によっても異なるため、圧力検知部52は、減圧ポンプ20が駆動する前の昇温工程における昇温速度によって容器4内の空気量を判断し、空気量に基づいて容器4内の圧力を算出するとよい。
また、調理終了後において、圧力検知部52は、記憶部55に予め記憶された開閉弁22を開放した際の昇圧に要する時間に基づき、昇圧開始からの経過時間に応じた容器4内の圧力を算出する。
なお、この場合には、容器4内が大気圧に戻り、外蓋2を開放できる状態になるタイミングが正確に判断できず、圧力の表示が遅れる可能性がある。そこで、圧力検知部52は、蒸気排出弁12を利用して容器4内が大気圧になったタイミングを正確に表示するとよい。容器4内の圧力が大気圧に戻った場合、蒸気排出弁12は、容器4内に向かう力がかからなくなるため、減圧状態での状態から微少な変形や変位が発生する。この変位に連動したタッチセンサ等のセンサを用いることにより、容器4内が大気圧に戻ったタイミングを正確に検知することができる。また、蒸気排出弁12の固定部に圧力検知手段を設け、直接蒸気排出弁12にかかる力を検知してもよい。
沸騰検知部53は、蓋センサ24が容器4内の温度を計測する温度センサである場合に、蓋センサ24によって計測された温度と、温度センサ6による容器4の温度とに基づき、容器4内の内容物の沸騰を検知する。なお、容器4の温度は、大気圧状態では入力電力量に比例して昇温するが、沸騰を開始すると入力電力量に関わらず、一定の温度を維持するようになる。そのため、昇温時と同様の電力で入力が続けられると、温度センサ6にて検知する容器4の温度勾配が変化する。そこで、沸騰検知部53は、この温度勾配に基づき、温度勾配が予め設定された閾値以下となった場合に、沸騰を検知してもよい。
表示制御部54は、温度検知部51、圧力検知部52および沸騰検知部53のそれぞれで検知された結果に基づき、操作表示装置26による表示を制御する。具体的には、表示制御部54は、温度検知部51による検知結果に基づき、操作表示装置26の温度表示部27aのLEDの点灯および消灯を制御する。表示制御部54は、圧力検知部52による検知結果に基づき、操作表示装置26の圧力表示部27bのLEDの点灯および消灯を制御する。表示制御部54は、沸騰検知部53による検知結果に基づき、操作表示装置26の沸騰表示部27cのLEDの点灯および消灯を制御する。
記憶部55は、制御装置50の各部で用いられる各種情報を予め記憶する。記憶部55に記憶された各種情報は、温度検知部51、圧力検知部52および沸騰検知部53のそれぞれからの要求に応じて読み出される。
また、記憶部55には、調理の際に用いられる温度等の設定条件が対応付けられた調理モードが記憶されていてもよい。
[加熱調理器100の動作]
次に、上記構成を有する加熱調理器100の動作について説明する。本実施の形態1に係る加熱調理器100は、容器4内を減圧し、容器4の内容物を低温で沸騰させる低温沸騰モードによる調理を行う。低温沸騰モードは、昇温工程、低温沸騰維持工程および昇圧工程を有している。なお、以下では、肉、魚、野菜等の収容物を「食材」と適宜称し、調味料および水等の収容物を「調味液」と適宜称して説明することがある。
昇温工程は、容器4内の温度を100℃未満の設定温度Tまで昇温する工程である。低温沸騰維持工程は、容器4を密閉した状態で、設定温度Tまで昇温した容器4内の温度を維持するとともに、圧力を設定温度Tにおける飽和蒸気圧まで減圧させて内容物を沸騰させ、沸騰を維持する工程である。昇圧工程は、容器4内の圧力を大気圧まで昇圧する行程である。
低温沸騰維持工程では、容器4内が減圧することにより、容器4内の温度が100℃未満であっても沸騰する。そのため、容器4内では、大気圧における同温度で維持された場合よりも対流が促進されて熱伝達が向上し、内容物が均一に加熱されて調理時間が短縮される。また、調理時間が短縮されることによって食材からの脱水が抑制され、おいしさが向上する。さらに、容器4内の空間が100℃未満の蒸気で満たされることにより、煮汁から露出した食材の部分まで加熱されるため、少ない煮汁でも均一な仕上がりを得ることができる。すなわち、余分な煮汁を投入する必要がない。
本実施の形態1に係る加熱調理器100における低温沸騰モードによる調理動作について、図1および図3を参照しながら説明する。ここでは、加熱装置5として加熱コイル5aが用いられる場合を例にとって説明する。
まず、ユーザによって、任意のメニューを調理するのに必要な肉、魚および野菜等の食材と、水および調味料等の調味液とが容器4内に投入される。その後、ユーザが取っ手部8を把持することにより、容器4が容器カバー3に載置され、外蓋2が閉じられる。これにより、内蓋9の蓋パッキン10が容器4のフランジ部4aに圧接され、容器4内が密閉される。
次に、ユーザによって操作表示装置26が操作され、各種の調理モードの中から低温沸騰モードが選択される。例えば、操作表示装置26に設けられた図示しないボタンがユーザによって操作され、調理または保存の条件が設定される。調理または保存の条件には、例えば、容器4内の圧力、圧力上昇速度、調理時間および温度等が含まれる。
そして、ユーザによって各種条件が設定され、操作表示装置26の図示しないスイッチがオンとされると、制御装置50に調理開始指示が与えられ、低温沸騰モードによる調理が開始される。このとき、制御装置50には、設定された各種条件が指示として与えられる。
なお、容器4内の圧力、圧力上昇速度、調理時間および温度等の条件の組み合わせは、例えば調理モードとして制御装置50に予め記憶されてもよい。これにより、各種条件を設定する際に、記憶された調理モードがユーザによって選択されるだけで、調理または保存の条件が自動的に設定される。そのため、ユーザが容易に各種条件を設定することができる。
各種条件の設定が制御装置50に与えられると、昇温工程が開始される。この場合、加熱コイル5aには、インバータ部30から高周波電流が供給され、高周波磁界が発生する。容器4の加熱コイル対向面は、発生した高周波磁界によって加熱コイル5aと磁気結合して励磁され、容器4の底面に渦電流が誘起される。そして、誘起された渦電流と容器4の抵抗とによりジュール熱が生じ、容器4の底面が発熱して容器4内の内容物が加熱される。その後、容器4の温度が設定温度Tに到達すると、インバータ部30が制御され、設定温度を維持した状態で容器4内を減圧する低温沸騰維持工程が開始される。
低温沸騰維持工程において、制御装置50は、温度センサ6によって検出された容器4の温度に基づき、容器4内の内容物の温度が70℃等の設定温度Tを維持するように、加熱装置5による加熱を制御する。ここで、「容器4内の内容物の温度が設定温度Tを維持する」とは、容器4内の内容物の温度が設定温度Tを含む温度範囲を維持することを示すものとする。
制御装置50は、内容物の温度が設定温度Tに到達する前後で、開閉弁22を閉塞するとともに、内蓋通気孔16と減圧ポンプ20とが連通するように経路切替弁21を制御し、減圧ポンプ20を駆動する。このとき、制御装置50は、容器4内の圧力が設定温度Tの飽和蒸気圧である設定圧力Pとなるように、減圧ポンプ20の駆動を制御する。これにより、容器4内が密閉状態となるとともに、内部の空気が外部に排出されて容器4内の圧力が徐々に低下し、大気圧未満となる。容器4内の圧力が設定圧力Pに到達すると、容器4内の内容物が沸騰する。制御装置50は、容器4内の内容物が沸騰するまで、減圧ポンプ20を駆動する。
内容物の沸騰検知は、例えば、蓋センサ24の検知結果に基づき判断することができる。蓋センサ24が容器4内の温度を計測する温度センサである場合、制御装置50は、蓋センサ24と温度センサ6とのそれぞれの計測結果に基づき、内容物の沸騰を判断する。具体的には、制御装置50は、蓋センサ24で計測される温度を容器4内の空間温度とし、蓋センサ24で計測された空間温度と、温度センサ6で計測された容器4の温度との温度差が設定値以下となった場合に、内容物の沸騰を検知する。
また、蓋センサ24が容器4内の圧力を計測する圧力センサである場合、制御装置50は、圧力センサの計測結果に基づき、内容物の沸騰を検知してもよい。具体的には、制御装置50は、蓋センサ24で計測された容器4内の圧力が設定圧力Pに到達した場合に、内容物の沸騰を検知する。
さらに、制御装置50は、減圧ポンプ20の駆動時間を予め設定し、設定された駆動時間だけ減圧ポンプ20を駆動するようにしてもよい。なお、この場合には、内容物の量に応じて容器4内の減圧に要する時間が変化する。そのため、制御装置50は、昇温工程における設定温度Tまでの昇温時間に基づいて内容物の量を算出し、算出結果に応じて減圧ポンプ20の駆動時間を変化させてもよい。
調理が終了した後、操作表示装置26に設けられた減圧解除ボタンがユーザによって押下されると、昇圧工程が開始される。昇圧工程において、制御装置50は、開閉弁22を開放して容器4内と外部とを連通させる。これにより、減圧状態となっている容器4内に大気が流入し、容器4内が大気圧まで昇圧される。
なお、低温沸騰モードによる調理開始後、調理途中で外蓋2を開ける必要が生じる場合がある。この場合、ユーザは、操作表示装置26に設けられた一時停止ボタンを押下する。これにより、制御装置50は、加熱装置5による加熱を停止するように制御する。
一時停止ボタンが操作されたときに、容器4内が減圧状態となっていた場合、制御装置50は、開閉弁22を開放させ、容器4内に外気を流入させ、容器4内を昇圧する。このとき、制御装置50は、容器4内の圧力が減圧状態から大気圧に変化したことがわかるように、操作表示装置26による表示を変化させるとよい。
また、本実施の形態1に係る加熱調理器100では、さらに、減圧保存モードおよび温めモードを備えている。減圧保存モードは、調理された容器4内の内容物または食事後に残った内容物を高真空状態で保存するモードであり、保存工程を有している。
保存工程は、調理された内容物を高真空状態で保存する工程である。保存工程は、調理が終了した直後に行われる場合には、そのまま容器4への加熱が停止される。また、保存工程は、食事後に残った内容物を保存する場合には、容器4への加熱が行われ、残った内容物を再度加熱して殺菌した後に、加熱が停止される。
食事後に残った内容物を保存する場合、ユーザにより残った内容物が容器4内に投入される。その後、容器4が容器カバー3に載置され、外蓋2が閉じられる。そして、ユーザによって操作表示装置26が操作され、各種の調理モードの中から減圧保存モードが選択され、保存の条件が設定される。その後、ユーザによって各種条件が設定され、操作表示装置26の図示しないスイッチがオンとされると、制御装置50に保存開始指示が与えられ、減圧保存モードによる保存が開始される。
保存工程では、容器4に対する加熱が停止され、容器4内が密閉状態で放冷される。制御装置50は、加熱装置5によって容器4を加熱し、内容物に対して例えば75℃の温度で1分間だけ維持された際の加熱殺菌能力と同等以上の加熱を行う。そして、制御装置50は、密閉を維持した状態で容器4を放冷する。
容器4内は、徐々に温度が低下し、蒸気の復水および空気の体積収縮によって密閉状態で徐々に自然減圧する。そのため、外部からの菌等の流入を防ぎながら真空状態で衛生的に内容物が保存される。このとき、容器4内の空気量および蒸気量によっては、減圧ポンプ20を用いて減圧した場合よりも高真空状態とすることができる。具体的には、容器4内がより高温の蒸気で満たされ、かつ容器4内の空気量が少ない場合に、容器4内が高真空状態となる。
減圧保存モードでは、容器4内を加熱し、殺菌していることが表示される。これにより、容器4の温度状態および殺菌している様子が外部から確認できるため、ユーザは安心して内容物を保存することができる。
温めモードは、容器4内の内容物を予め設定された温度まで温めるモードである。温めモードでは、内容物を温めている間、容器4内の温度帯が表示される。これにより、ユーザが内容物を触るなどして温度を直接確認する必要がない。そのため、ユーザは内容物の温めの必要性を判断することができ、手間を省くことができる。
なお、上述では、低温沸騰維持工程において、1つの温度帯に対応付けられた工程による調理が行われる場合について説明したが、これはこの例に限られない。例えば、本実施の形態1に係る加熱調理器100では、複数の温度帯に対応する工程を組み合わせて調理が行われてもよい。
また、加熱調理器100による調理モードは、上述した調理モードに限られない。例えば、加熱調理器100は、ある温度を維持した際に、当該温度での飽和蒸気圧よりも高く、大気圧よりも低い圧力に減圧する、あるいは、減圧状態から大気圧に変化させることにより、内容物に対して味を染み込ませる効果を得るモードを備えてもよい。
[操作表示装置26による表示]
操作表示装置26による表示について説明する。本実施の形態1において、加熱調理器100は、容器4内の状態を操作表示装置26に表示する。以下では、低温沸騰モードで調理を行う場合におけるそれぞれの動作状態での表示について説明する。
(調理設定時の表示)
調理動作が設定される場合、操作表示装置26には、ユーザによって設定された容器4内の温度帯、圧力および加熱時間等の各種条件が表示される。また、ユーザによって調理モードが選択されることによって各種条件が設定される場合、操作表示装置26には、選択された調理モードに対応する各種条件が表示される。このとき、操作表示装置26には、調理モードの名称が共に表示されるようにしてもよい。
各種条件のうちの温度帯は、例えば複数の温度帯の中から調理の内容に応じて適宜選択することができ、操作表示装置26は、選択された温度帯を示す情報を表示する。温度帯として、例えば、肉が収縮せず柔らかく仕上がる「60℃~75℃」、魚に短時間で火を通し過加熱を抑制することができる「75℃~90℃」、および野菜を軟化させながら食感よく仕上げる「85℃~100℃」のうちいずれかの温度帯が選択される。
操作表示装置26は、選択された温度帯の値をそのまま表示してもよい。また、これに限られず、操作表示装置26は、それぞれの温度帯に対して調理に使用する食材を対応付け、選択された温度帯に対応する「肉」、「魚」および「野菜」等の食材の名称を表示してもよい。
加熱時間は、例えば10分毎の設定時間間隔で設定された複数の加熱時間から適宜選択することができ、操作表示装置26は、選択された時間を表示する。操作表示装置26は、選択された時間をそのまま表示してもよい。また、これに限られず、操作表示装置26は、「短」、「中」および「長」等の相対的な時間の長さを示す情報を表示してもよい。
圧力について、操作表示装置26は、例えば選択された温度帯における飽和蒸気圧を設定圧力として表示する。操作表示装置26は、設定圧力をそのまま表示してもよい。また、これに限られず、操作表示装置26は、「低」、「中」および「高」等の相対的な圧力の高さを示す情報を表示してもよい。
なお、温度帯および加熱時間は、微調整できるようにすると、ユーザの好みに合わせた調理ができるので好ましい。この場合、操作表示装置26は、微調整によって変更された温度帯および加熱時間を表示する。
(調理時および調理終了後の表示)
調理が行われている場合および調理終了後、操作表示装置26には、その時点での容器4内の温度、圧力および沸騰しているかどうか等の容器4内の状態が表示される。調理が行われている場合および調理終了後の容器4内の温度、圧力および沸騰状態は、図2の温度表示部27aに表示される。
(温度表示)
温度表示部27aによる容器4内の温度の表示について説明する。図5は、図2の温度表示部27aの表示例を示す概略図である。図5には、温度表示部27aの第1の温度表示例28a~第4の温度表示例28dが示されている。
第1の温度表示例28aでは、容器4内の温度が、設定温度Tよりも高く、かつ大気圧での沸点である100℃までの温度帯に含まれているときの表示が示されている。この場合、温度表示部27aでは、3つのLEDのうち、すべてのLEDが点灯される。
第2の温度表示例28bでは、容器4内の温度が、設定温度Tを含む温度帯に含まれているときの表示が示されている。この場合、温度表示部27aでは、3つのLEDのうち、左から1番目および2番目のLEDが点灯される。
第3の温度表示例28cでは、容器4内の温度が、常温よりも高く、かつ設定温度Tよりも低い温度帯に含まれているときの表示が示されている。この場合、温度表示部27aでは、3つのLEDのうち、左から1番目のLEDが点灯される。
第4の温度表示例28dでは、容器4内の温度が、常温付近の温度帯に含まれているときの表示が示されている。この場合、温度表示部27aでは、3つのLEDのうち、すべてのLEDが消灯される。なお、温度表示部27aの3つのLEDすべてが消灯していると、容器4内の温度が常温であるのか、あるいは温度表示がなされていないのかをユーザが判断し難い。そのため、第4の温度表示例28dは、温度の段階表示には含めなくてもよい。
このように、本実施の形態1では、温度表示部27aにより、調理が行われている際の容器4内の温度が、設定温度Tの付近である場合、設定温度Tよりも高い温度帯である場合、および設定温度Tよりも低い温度帯である場合のいずれかで表示される。すなわち、温度表示部27aには、設定温度Tを基準として低い温度帯から高い温度帯までの少なくとも3段階で表示される。これにより、容器4内の温度状態をユーザが容易に把握することができる。
また、設定温度および加熱時間が同一であっても、容器4内に投入された食材量および調味液量によって昇温時間が異なり、調理全体の時間がユーザの想定した調理時間とは異なる場合がある。このとき、容器4内の温度を上述したように段階的に表示することにより、現在の調理状態が昇温中または温度維持中のいずれかであることが明確に示される。そのため、ユーザが、調理が終了しなかったり、調理が早すぎたりすること等に不安を感じることを抑制することができる。
さらに、調理終了後にも、容器4内の温度が温度表示部27aに表示されることにより、ユーザが容器4に触れたり、温め直したりすることなく、容器4内の温度を確認することができる。
なお、容器4内の温度の表示は、調理モード等によって設定温度Tが異なることにより、それぞれの温度帯が異なるため、調理モードに応じて表示を変更してもよい。
(圧力表示)
圧力表示部27bによる容器4内の圧力の表示について説明する。図6は、図2の圧力表示部27bの表示例を示す概略図である。図6には、温度表示部27aの第1の温度表示例28a~第4の温度表示例28dが示されている。
第1の圧力表示例29aでは、容器4内の圧力が大気圧であるときの表示が示されている。この場合、圧力表示部27bでは、3つのLEDのうち、すべてのLEDが消灯される。なお、圧力表示部27bの3つのLEDすべてが消灯していると、容器4内の圧力が大気圧であるのか、あるいは圧力表示がなされていないのかをユーザが判断し難い。そのため、第1の圧力表示例29aは、圧力の段階表示には含めなくてもよい。
第2の圧力表示例29bでは、容器4内の圧力が、設定圧力Pよりも高く、かつ大気圧よりも低いときの表示が示されている。この場合、圧力表示部27bでは、3つのLEDのうち、左から1番目のLEDが点灯される。
第3の圧力表示例29cでは、容器4内の圧力が設定圧力Pであるときの表示が示されている。この場合、圧力表示部27bでは、3つのLEDのうち、左から1番目および2番目のLEDが点灯される。
第4の圧力表示例28dでは、容器4内の圧力が、設定圧力Pよりも低いときの表示が示されている。この場合、圧力表示部27bでは、3つのLEDのうち、すべてのLEDが点灯される。
このように、本実施の形態1では、圧力表示部27bにより、調理時および調理終了後の容器4内の圧力が、設定圧力Pの付近である場合、設定圧力Pよりも高い場合、および設定圧力Pよりも低い場合のいずれかで表示される。すなわち、圧力表示部27bには、設定圧力Pを基準として低い圧力から高い圧力までの少なくとも3段階で表示される。これにより、容器4内の圧力の高さをユーザが容易に把握することができる。
また、容器4内の圧力の高さを表示する場合、従来は、圧力を数値で表示させることが多いが、数値による圧力表示は、ユーザにとって圧力の程度を把握し難い。そのため、本実施の形態1のように、容器4内の圧力を3段階といった段階的に表示させることにより、容器4内の圧力の高さをユーザが直感的に把握することができる。
さらに、減圧ポンプ20が駆動した場合には、駆動音が発生するが、減圧ポンプ20の駆動による駆動音の発生と同時に、容器4内の圧力を表示することにより、駆動音の発生が容器4内の減圧によるものであることを示すことができる。そのため、ユーザが安心して加熱調理器100を使用することができる。
さらにまた、調理が終了して容器4内の圧力を昇圧する場合にも、上述したように、容器4内の圧力が段階的に表示される。減圧状態から大気圧まで昇圧するには一定の時間を要するが、容器4内の圧力を段階的に表示することにより、ユーザは、加熱調理器100の外蓋2を開放するタイミングを容易に判断することができる。そのため、大気圧に昇圧されるまでの待ち時間のストレスを抑制することができる。
また、容器4内の圧力を昇圧する際には、外蓋通気孔17bから容器4内に空気が流入することによる空気音が発生するが、空気音の発生と同時に、容器4内の圧力を表示することにより、空気音の発生が容器4内の昇圧によるものであることを示すことができる。そのため、ユーザが安心して加熱調理器100を使用することができる。
さらに、内容物に対する保存工程中は、調理中よりも高真空状態であるため、外蓋2を開放できるまでの時間がより長くなるが、上述したようにして容器4内の圧力が表示されることにより、ユーザはストレスなく保存工程を待つことができる。
(沸騰表示)
沸騰表示部27cによる容器4内の内容物の沸騰状態の表示について説明する。沸騰表示部27cでは、内容物の沸騰が検知された場合に、LEDを点灯させる。これにより、ユーザは、容器4内の内容物が沸騰しているか否かを容易に把握することができる。
ここで、容器4内の内容物が沸騰状態となると、容器4内で蒸気が発生し、減圧ポンプ20の吸い込み経路および排出経路を形成する連通管18a、および外蓋通気孔17aに結露が発生する。本実施の形態1では、沸騰が検知されたと同時に沸騰状態を表示させるため、沸騰によって結露が発生して水滴等が排出された場合でも、水滴が排出された原因が沸騰にあることをユーザに対して容易に報知することができる。そのため、水滴の排出が故障と誤診断されるのを抑制することができる。
なお、本実施の形態1では、外蓋通気孔17aが直接外部と連通しているが、これに限られず、外蓋通気孔17aは、例えばカートリッジや水受け等を介して外部と連通するようにし、水滴が外部に直接排出されないようにしてもよい。これにより、本体1の汚れを防止することができるとともに、故障と誤診断されるのを抑制することができる。
このように、本実施の形態1では、調理時および調理終了後に、容器4内の温度、圧力および沸騰状態を表示させることにより、ユーザが容器4内の状態を容易に確認できるため、ユーザは、安心して外蓋2を開放することができる。
なお、この例において、容器4内の温度表示および圧力表示は、複数のLEDを用いて段階的に表示するように説明したが、これはこの例に限られない。例えば、温度表示部27aおよび圧力表示部27bをそれぞれ1つのLEDで構成し、LEDの点滅速度または点滅パターンを異ならせたり、LEDの色を変化させたりすることにより、容器4内の温度および圧力を段階的に表示させてもよい。さらに、温度および圧力の数値が併用されてもよい。さらにまた、沸騰表示部27cについても同様に、LEDの点滅速度、点滅パターン、あるいは色を変化させることによって、沸騰状態を表示してもよい。
また、本実施の形態1では、容器4内の圧力、温度および沸騰状態をLEDまたはLCD等を用いて表示するように説明したが、これに限られず、容器4内の状態を報知することができれば、音声または振動等による報知を行ってもよい。
さらに、内容物に味を染み込ませる効果を得るメニュー等のその他のメニューでも、容器4内の状態が表示されることにより、ユーザは、蓋が不透明であるために外部から確認することが困難である容器4内の状態を把握することができる。そして、ユーザが設定間違いに早く気付いたり、調理時間の微調整がしやすくなったりするという効果を奏することもできる。さらにまた、容器4内の温度を把握できることにより、ユーザが蓋を開けた際の蒸気の放出や温度に驚くことを抑制できる。
以上のように、本実施の形態1に係る加熱調理器100では、昇温工程および低温沸騰維持工程の際の容器4内の圧力が段階的に表示される。これにより、ユーザは、昇温工程および低温沸騰維持工程の際の容器4内の圧力の高さを容易に確認することができる。そのため、ユーザは、調理中であっても、容器4内の圧力の高さに応じて安心して外蓋2を開放することができる。
また、加熱調理器100では、低温沸騰維持工程の際の減圧速度と、容器4内の減圧を開始してからの経過時間とに基づき、容器4内の圧力を算出する。これにより、加熱調理器100に圧力センサが設けられていない場合でも、低温沸騰維持工程の際の容器4内の圧力を検知して表示することができる。
さらに、加熱調理器100では、開閉弁22を開放して設定圧力Pに減圧された容器4内の圧力を大気圧まで昇圧する昇圧工程が行われ、昇圧制御の際の容器4内の圧力の高さが操作表示装置26に段階的に表示される。これにより、ユーザは、昇圧工程の際の容器4内の圧力の高さを容易に確認することができる。そのため、ユーザは、調理終了後に安心して外蓋2を開放することができる。
さらにまた、加熱調理器100では、昇圧工程に要する時間と、容器4内の昇圧を開始してからの経過時間とに基づき、容器4内の圧力が算出される。これにより、加熱調理器100に圧力センサが設けられていない場合でも、昇圧工程の際の容器4内の圧力を検知して表示することができる。
また、加熱調理器100では、容器4内の圧力の高さが、設定圧力P、設定圧力Pよりも低い圧力および設定圧力Pよりも高い圧力の少なくとも3段階で表示される。これにより、ユーザは、容器4内の圧力を直感的に判断することができる。
さらにまた、加熱調理器100では、昇温工程および低温沸騰維持工程の際の容器4内の温度状態が操作表示装置26に段階的に表示される。これにより、ユーザは、昇温工程および低温沸騰維持工程の際の容器4内の温度の状態を容易に確認することができる。そのため、ユーザは、調理中であっても、容器4内の温度状態に応じて安心して外蓋2を開放することができる。
また、加熱調理器100では、容器4内の温度状態が、設定温度Tを含む温度帯、設定温度Tよりも低い温度帯および設定温度Tよりも高い温度帯の少なくとも3段階で表示される。これにより、ユーザは、容器4内の温度を直感的に判断することができる。
さらにまた、加熱調理器100では、低温沸騰維持工程の際の容器4内の沸騰状態が操作表示装置26に表示される。これにより、ユーザは、低温沸騰維持工程の際の容器4内の沸騰状態を容易に確認することができる。そのため、ユーザは、調理中であっても、容器4内の沸騰状態に応じて安心して外蓋2を開放することができる。
以上、本発明の実施の形態1について説明したが、本発明は、上述した本発明の実施の形態1に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、加熱調理器100は、減圧ポンプ20のクリーニング動作を行ってもよい。
制御装置50は、容器4内の減圧を開始する前に、経路切替弁21によって減圧ポンプ20を連通管18cと連通させ、予め設定された時間だけ減圧ポンプ20を駆動し、減圧ポンプ20内の汚れおよび水滴を外部に排出するクリーニング動作を行う。これにより、減圧ポンプ20の性能が低下し、容器4内の減圧をした際に、到達圧力が想定よりも高くなってしまうことを抑制することができる。なお、クリーニング動作を行う際には、圧力表示とは別に、クリーニングの表示を行うと、ユーザが駆動音の発生要因を把握しやすくなってより好ましい。
また、容器4内の温度および圧力の高さを表示する場合、常に温度および圧力を監視して表示を更新するようにすると、制御装置50におけるメモリが不足する可能性がある。そのため、この場合には、一定時間毎に温度および圧力を検知して、表示を更新するとよい。これにより、温度および圧力の表示の更新頻度が少なくなり、メモリ不足を解消することができる。