JP2020059641A - 光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法 - Google Patents

光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】質量%で、SiO2成分:23〜33%、B2O3成分:5〜13%、ZrO2成分:1〜10%、Nb2O5成分:31〜48%、Na2O成分:5〜16%、CaO成分:3超〜10%、Li2O成分:0超〜5%、である、光学ガラスの提供。【効果】高分散でありながらΔPg,Fの値が小さく、耐プレス失透性を高いレベルで両立させることができる。これに加えて、本実施形態に係る光学ガラスは、低コスト、高屈折率な光学ガラスとすることもできる。【選択図】図1

Description

本発明は、光学ガラス、これを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、及び光学装置、並びに光学ガラスの製造方法に関する。
カメラ等の光学装置に用いられる光学素子に使用可能な光学ガラスとして、例えば、特許文献1には、SiO−B−Nb系の光学ガラスが開示されている。これらのガラスは、例えば、ガラス転移温度(T)より高い温度で加熱し、軟化した状態で成形(リヒートプレス)することでレンズ形状等の所望の形状に加工される。
特開2007−169157号公報
本発明の第一の態様は、質量%で、SiO成分:23〜33%、B成分:5〜13%、ZrO成分:1〜10%、Nb成分:31〜48%、NaO成分:5〜16%、CaO成分:3超〜10%、LiO成分:0超〜5%、である、光学ガラスである。
本発明の第二の態様は、上述した光学ガラスを用いた光学素子である。
本発明の第三の態様は、上述した光学ガラスを含む光学系である。
本発明の第四の態様は、上述した光学ガラスを含む交換レンズである。
本発明の第五の態様は、上述した光学ガラスを含む光学装置である。
本発明の第六の態様は、上述した光学ガラスの原料を1340〜1400℃で加熱する工程を少なくとも含み、かつ、原料50gが融解するまでの時間が、15分未満である、光学ガラスの製造方法である。
図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。 図2(a)、(b)は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の概略図であり、図2(a)は撮像装置の正面図であり、図2(b)は撮像装置の背面図である。 図3は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。 図4は、本実施例の光学ガラスの部分分散比(Pg,F)とアッベ数(ν)の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本明細書中において、特に断りがない場合は、各成分の含有量は全て酸化物換算組成のガラス全重量に対する質量%であるものとする。なお、ここでいう酸化物換算組成とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が溶融時に全て分解されて酸化物に変化すると仮定し、当該酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
本実施形態に係る光学ガラスは、質量%で、SiO成分:23〜33%、B成分:5〜13%、ZrO成分:1〜10%、Nb成分:31〜48%、NaO成分:5〜16%、CaO成分:3超〜10%、LiO成分:0超〜5%、である。
従来の光学ガラスは、高分散になるほど(アッベ数νが小さくなるほど)、異常分散性を示す値であるΔPg,Fが大きくなる傾向にある。光学系の設計の自由度を高めるため、高分散でありながらΔPg,Fの値が小さい光学ガラスが求められているが、小さなΔPg,Fとリヒートプレス時における耐失透性(耐プレス失透性)の両立が難しいという問題があった。この点、本実施形態に係る光学ガラスは、高分散でありながらΔPg,Fの値が小さく、耐プレス失透性を高いレベルで両立させることができる。これに加えて、本実施形態に係る光学ガラスは、低コスト、高屈折率な光学ガラスとすることもできる。
以下、本実施形態に係る光学ガラスの成分を説明する。
SiOは、ガラス骨格を形成し、ΔPg,Fを低下させる成分である。この含有量について、質量%で23%未満の場合には、ガラスの耐失透性が不十分となる。また、33%を超える場合には、ガラスを高屈折率とすることが難しくなり、ガラス自体の粘性が増大するため、成形が困難となる。かかる観点から、SiOの含有量の下限は、24%であることが好ましく、上限は30%であることが好ましい。
は、ガラス骨格を形成し、ΔPg,Fを低下させる成分である。この含有量について、質量%で5%未満の場合には、ガラスの耐失透性が悪化する。また、13%を超える場合には、ガラスを高屈折率とすることが難しくなり、粘性が低下することによって耐失透性も悪化する。かかる観点から、Bの含有量の下限は、8%であることが好ましく、上限は、12%であることが好ましい。
ZrOは、ガラスの屈折率を高め、高分散とする成分であるとともに、ΔPg,Fを低下させる効果を有する。この含有量について、質量%で1%未満の場合には異常分散性が不十分であり、かつ、高屈折率高分散とすることが難しくなる。また、10%を超える場合には耐失透性が低下する。かかる観点から、ZrOの含有量の下限は、3%であることが好ましく、上限は、8%であることが好ましい。
Nbは、屈折率を高め、ガラスを高分散化させる成分である。この含有量について、質量%で48%を超える場合には耐失透性が低下する。31%未満の場合には、高屈折率、高分散とすることが難しくなる。かかる観点から、Nbの含有量の下限は、33%であることが好ましく、上限は、45%であることがより好ましい。
NaOは、原料の溶融性を高め、異常分散性を増大させる成分である。この含有量について、質量%で16%を超える場合には高屈折率とすることが難しくなり、耐失透性も低下する。5%未満の場合には、溶融性が低下し、ガラスの耐失透性が低下するとともに異常分散性が不十分となる。かかる観点から、NaOの含有量の下限は、6%であることが好ましく、上限は、12%であることが好ましい。
CaOは、ガラスの耐プレス失透性を高める成分である。この含有量について、質量%で10%を超える場合には、ガラスを高分散とすることが難しくなる。また、3%以下の場合には、ガラスの耐プレス失透性が低下する。かかる観点から、CaOの含有量の下限は、3.5%であることが好ましく、上限は、6%であることが好ましい。
LiOは、ガラスの屈折率を高め、原料の溶融性と耐プレス失透性を向上させる成分である。この含有量について、5%を超える場合には、耐失透性及び耐プレス失透性が低下する傾向にある。また、LiOを含有しない場合には、ガラス原料の溶融性及び耐失透性が低下する傾向にある。かかる観点から、LiOの含有量の下限は、1%であることが好ましく、上限は、4%であることが好ましい。
そして、本実施形態に係る光学ガラスは、La成分:0〜2%、Ta成分:0〜3%、WO成分:0〜3%、ZnO成分:0〜4%、BaO成分:0〜3%、Al成分:0〜2%、KO成分:0〜5%、Sb成分:0〜1%からなる群より選ばれる1種以上を更に含有することが好ましい。
さらに、上述した各成分のより好ましい組み合わせとしては、La成分:0〜2%、Ta成分:0〜3%、WO成分:0〜3%、ZnO成分:0〜4%、BaO成分:0〜3%、Al成分:0〜2%、KO成分:0〜5%、Sb成分:0〜1%である。
Laは、ガラスの恒数調整に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、その含有量の上限は、2%であることが好ましく、1%であることがより好ましい。
Taは、ガラスの屈折率を高め、高分散化し、ΔPg,Fを低下させる成分であり、コストの観点から、その含有量の上限は、3%であることが好ましく、1.5%であることがより好ましく、1%であることが更に好ましい。
その一方で、本実施形態に係る光学ガラスは、Ta等の高価な成分の含有率を高くしなくても、高屈折率、高分散であり、小さなΔPg,Fを実現できる。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、Taは、実質的に含有しないことがより更に好ましい。本明細書中において「実質的に含有しない」とは、当該成分が、不純物として不可避的に含有される濃度を越えて、ガラス組成物の特性に影響する構成成分として含有されないことを意味する。例えば、100ppm程度の含有量であれば、実質的に含有しないとみなす。
WOは、ガラスの屈折率を高め、高分散化させる成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、その含有量の上限は、3%であることが好ましく、2.5%であることがより好ましい。
ZnOは、ガラスの屈折率を高める成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、その含有量の上限は、4%であることが好ましく、2%であることがより好ましい。
BaOは、ガラスの屈折率を高める成分であり、耐プレス失透性を一層向上させる観点から、その含有量の上限は、3%であることが好ましく、1%であることがより好ましい。
Alは、ガラスを高分散化し、化学的耐久性を向上させる成分であり、耐プレス失透性を一層向上させる観点から、その含有量の上限は、2%であることが好ましく、1%であることがより好ましい。
Oは、ガラスの屈折率を高め、原料の溶融性を向上させる成分であり、耐プレス失透性を一層向上させる観点から、その含有量の上限は、5%であることが好ましく、2%であることがより好ましい。
Sbは、ガラスを清澄する脱泡剤として機能させることができ、その含有量の上限は1%であればよく、これにより十分な効果が得られる。
TiOは、ガラスの屈折率を高め、高分散化させる成分であるが、ΔPg,Fを大きく増加させ、透過率も悪化させる成分であるため、実質的に含有しないことが好ましい。
成分及びKO成分及びLiO成分及びNaO成分の和に対するSiO成分の比SiO/(B+KO+LiO+NaO)は、ガラス原料の高い溶融性を発現するために、その下限値は0.86であることが好ましく、0.87であることがより好ましく、0.88であることが更に好ましい。一方、その上限値は1.77であることが好ましく、1.76であることがより好ましく、1.75であることが更に好ましい。
SiO成分に対するCaO成分の比CaO/SiOは、高い耐プレス失透性を発現するために、0.12以上であることが好ましく、0.14以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましい。一方、その上限値は0.43以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましく、0.20以下であることが更に好ましい。
なお、本実施形態に係る光学ガラスは、その他必要に応じて清澄、着色、消色、光学恒数の調整等の目的で、上述した成分以外のもので、公知の清澄剤や着色剤、脱泡剤、フッ素化合物、リン酸等の成分をガラス組成に適量添加することができる。また、上述した成分に限らず、本実施形態の効果が得られる範囲でその他の成分を添加することもできる。
上述した各成分については、不純物の含有量が少ない高純度品を原料として使用することが好ましい。例えば、SiO原料、B原料のうち1又は2以上について高純度品を使用することが好ましい。高純度品とは、当該成分を99.85質量%以上含むものである。高純度品の使用によって、不純物量が少なくなる結果、例えば、波長400nm以下の光の内部透過率をより高くできる傾向がある。
次に、本実施形態に係る光学ガラスの物性等について説明する。
本実施形態に係る光学ガラスの好適例としては、屈折率(n)については、1.71を下限、1.80を上限とした、1.71〜1.80の範囲であるものが挙げられる。また、アッベ数(ν)については、28を下限、35を上限とした、28〜35の範囲であるものが挙げられる。さらに、異常分散性を示す値(ΔPg,F)については、0.0035以下であるものが挙げられる。なお、屈折率、アッベ数、及び異常分散性については、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
さらに、本実施形態に係る光学ガラスとしては、屈折率(n)が、1.71〜1.80であり、アッベ数(ν)が、28〜35であり、異常分散性を示す値(ΔPg,F)が、0.0035以下である、という各物性を併せ持つことが好ましい。なお、ΔPg,Fは0.0015以下であることがより好ましく、0以下であることが更に好ましい。
またさらに、本実施形態に係る光学ガラスとしては、部分分散比(Pg,F)が、0.598以下であることが好ましい。部分分散比については、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
上述したように、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率(屈折率(n)が大きいこと)、高分散(アッベ数(ν)が小さいこと)でありながら、異常分散性を示す値(ΔPg,F)を小さくすることができる。またさらに、部分分散比を小さくすることができる。このような光学ガラスを用いると、例えば、光学レンズ等の光学素子を薄型化することができ、色収差や他の収差が良好に補正された光学系を設計することができる。
また、量産時のリヒートプレス時におけるプレス成形性の確保等の観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、プレス失透テスト時における異物の発生が少ないこと、すなわち耐プレス失透性に優れることが望まれる。なお、ここでの異物とは、ガラス中に生じ得る微小な結晶のことを意味する。本実施形態に係る光学ガラスの好適例では、プレス失透テスト時における異物発生個数を110個未満に抑えることができる。プレス失透テストを実施する条件は、リヒートプレスを実施する条件よりも異物が発生しやすい条件であるため、プレス失透テスト時における異物発生個数が110個未満であれば、リヒートプレスを実施した際にガラス中に異物が発生することを効果的に抑制することができる。プレス失透テスト及び異物発生個数については、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
光学系の可視光透過率の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、内部透過率の80%表示値(光路長10mmにおける内部透過率が80%となる波長;λ80)は、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは395nm以下である。当該波長については、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
本実施形態に係る光学ガラスの比重(S)は、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.4以下である。これにより、光学素子等とした際には軽量化が可能となる。
本実施形態に係る光学ガラスのガラス転移温度(T)は、好ましくは560℃以下であり、より好ましくは555℃以下である。これにより、リヒートプレス時の成型性を一層向上させることができる。なお、このようなガラス転移温度とすることで、モールド成形性の向上にも効果がある。ガラス転移温度については、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
本実施形態に係る光学ガラスの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、製造条件は、適宜好適な条件を選択することができる。例えば、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の原料を目標組成となるように調合し、好ましくは1100〜1500℃、より好ましくは1340〜1400℃にて溶融し、攪拌することで均一化し、泡切れを行った後、金型に流し成形する製造方法等を採用できる。このようにして得られた光学ガラスは、必要に応じてリヒートプレス等を行って所望の形状に加工し、研磨等を施すことで、所望の光学素子とすることができる。
そして、この場合において、光学ガラスの原料50gを1340〜1400℃の温度で加熱したときの、当該原料が融解するまでの時間が、15分未満であることが好ましい。1340〜1400℃の温度範囲において短時間でガラス原料が融解しなければ、残存するガラス原料がガラス中へ混入する原因となる。また、残存するガラス原料を融解しようとして、更に高温での加熱や長時間の加熱保持を行うと、ガラスの生産効率の低下や透過率悪化の原因となる。このような観点から、ガラス原料の融解時間は15分未満であることが好ましい。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスの製造方法としては、当該原料を1340〜1400℃で加熱する工程を少なくとも含み、かつ、この原料50gが融解するまでの時間が、15分未満であることが好ましい。
本実施形態に係る光学ガラスは、カメラや顕微鏡等の光学装置の備えるレンズ等の光学素子として好適である。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれる。これら光学素子を含む光学系としては、例えば、対物レンズ、集光レンズ、結像レンズ、カメラ用交換レンズ等が挙げられる。そして、これらは、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、多光子顕微鏡等の顕微鏡に用いることができる。なお、光学装置としては、上述した撮像装置や顕微鏡に限られず、ビデオカメラ、テレコンバーター、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、レーザー距離計、プロジェクタ等も含まれる。以下にこれらの一例を説明する。
<撮像装置>
図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。
撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、当該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光が、カメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
図2は、光学装置を撮像装置とした場合の他の例の概略図である。図2(a)は撮像装置CAMの正面図を、図2(b)は撮像装置CAMの背面図を示す。
撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLのシャッタ(不図示)が開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニターMに表示される。撮影者は、液晶モニターMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、メモリー(不図示)に記録保存する。
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
<多光子顕微鏡>
図3は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。
多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラー205の方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
本発明の実施例及び比較例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
各表に、各実施例及び各比較例に係る光学ガラスについて、各成分の酸化物基準の質量%による化学組成、屈折率(n)、アッベ数(ν)、ガラス転移温度(T)、比重(S)、部分分散比(Pg,F)、異常分散性(ΔPg,F)、作製したガラスの耐失透性の観察状況、及びプレス失透テストの実施結果とともに示したものである。
<光学ガラスの作製>
各実施例及び各比較例に係る光学ガラスは、以下の手順で作製した。まず、各表に記載の化学組成(質量%)となるよう、酸化物、炭酸塩、及び硝酸塩等のガラス原料を合計の重量が100gとなるよう秤量した。次に、秤量した原料を混合して内容量100mL程度の白金坩堝に投入し、1340〜1400℃の温度で70分程度溶融させて攪拌均質化した。清澄を行った後、金型等に鋳込んで徐冷し、成形することで各サンプルを得た。
<光学ガラスの測定>
・屈折率(n)とアッベ数(ν
各サンプルの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、屈折率測定器(株式会社島津デバイス製造製:KPR−2000)を用いて測定及び算出した。アッベ数(ν)は下記式(1)に基づき算出した。屈折率の値は、小数点以下第6位までとした。

ν=(n−1)/(n−n)・・・・(1)
:波長587.562nmの光に対するガラスの屈折率
:波長486.133nmの光に対するガラスの屈折率
:波長656.273nmの光に対するガラスの屈折率
・内部透過率(λ80
各サンプルの内部透過率(λ80)は、厚み方向と平行に光が入射した際の波長200〜700nmの範囲における厚さ10mm当たりの表面反射による損失を含まない透過率を測定し、80%となる波長をλ80として表記した。
・ガラス転移温度(T
各サンプルのガラス転移温度(T)は、昇温速度4℃/分で測定した示差熱分析(DTA)曲線から求めた。
・比重(S
各サンプルの比重(S)は、4℃における同体積の純水に対する質量比をアルキメデス法によって測定した。
・ガラス原料の融解時間
ガラス原料の融解時間は、ガラス原料50gをよく混合した上で白金坩堝に入れ、1340〜1400℃の温度で加熱保持したときの、ガラス原料が融解するまでの時間を意味する。本実施例においては、白金坩堝中に目視でガラス原料の溶け残りが確認できなくなったことにより、ガラス原料が融解したと判断した。
・耐失透性
各サンプルの耐失透性は、作製したガラスを研磨加工し、失透の有無を、顕微鏡(倍率100倍)を用いて目視で確認した。各表の「失透有り」とは、試料中に失透部分が観察されたことを意味し、「失透無し」とは、試料中に失透部分が観察されなかったことを意味する。
・プレス失透テスト時の異物個数
プレス失透テストにより耐プレス失透性を評価した。プレス失透テストは耐失透性の確認時に目視で異物が確認されなかったガラスを20mm角に加工し、670〜700℃の炉内に置いて30分間保持し、炉から取り出して急冷することで行った。ガラスを研磨加工し、ガラスに強い光を照射しながら顕微鏡100倍(実視野2.2°)による目視観察を行い、一視野中に存在した異物個数をプレス失透テスト時の異物個数として記載した。
・部分分散比(Pg,F
各サンプルの部分分散比(Pg,F)は下記式(2)に基づき算出した。なお、部分分散比の値は、小数点以下第4位までとした。

g,F=(n−n)/(n−n)・・・・(2)
:波長587.562nmの光に対するガラスの屈折率
:波長486.133nmの光に対するガラスの屈折率
:波長656.273nmの光に対するガラスの屈折率
:波長435.835nmの光に対するガラスの屈折率
・異常分散性を示す値(ΔPg,F
各サンプルの異常分散性を示す値(ΔPg,F)を以下に示す方法に準拠して求めた。
(1)基準線の作成
まず、正常部分分散ガラスとして、以下に示すアッベ数(ν)と部分分散比(Pg,F)を有する2つのガラス「F2」「K7」を基準材として選んだ。そして、各ガラスについて、横軸にアッベ数をとり、縦軸に部分分散比(Pg,F)をとり、2つの基準材に対応する2点を結ぶ直線を基準線とした。

光学ガラスF2の特性:ν=36.33、Pg,F=0.5834
光学ガラスK7の特性:ν=60.47、Pg,F=0.5429

(2)ΔPg,Fの算出
次に、図4に示すように、横軸をアッベ数(ν)、縦軸を部分分散比(Pg,F)としたグラフ上に各実施例の光学ガラスに対応する値をプロットし、上記した硝種のアッベ数(ν)に対応する基準線(実線)上の点と、その縦軸の値(Pg,F)との差分を、異常分散性を示す値(ΔPg,F)として算出した。なお、部分分散比(Pg,F)が基準線の上側にある場合、ΔPg,Fは正の値を有し、部分分散比(Pg,F)が基準線の下側にある場合、ΔPg,Fは負の値を有する。
<表1>
Figure 2020059641

Figure 2020059641
<表2>
Figure 2020059641

Figure 2020059641
<表3>
Figure 2020059641

Figure 2020059641
<表4>
Figure 2020059641

Figure 2020059641
<表5>
Figure 2020059641

Figure 2020059641
<表6>
Figure 2020059641

Figure 2020059641
耐失透性の確認時に失透が確認された場合には、プレス失透テストは実施しなかった。また、比較例2では、プレス失透テスト実施時に失透し、目視でガラスが白濁していることが確認されたため、プレス失透テスト時の異物個数には「白濁」と記載した。また、比較例7では、ガラスに失透は見られなかったものの、高いΔPg,Fを示したため、プレス失透テストは実施しなかった。また、比較例8、9では、プレス失透テスト時の異物個数が300個以上であり、十分な耐プレス失透性が得られなかった。
以上、本実施例の光学ガラスは、高い屈折率(n)、小さいアッベ数(ν)、小さいΔPg,Fを有し、耐プレス失透性に優れることが確認された。また、本実施例の光学ガラスは、ガラス作製時におけるガラス原料の融解時間が短いため、生産効率に優れることが確認された。また、高価な原料を使用しないため低コストで製造することができ、透過率に優れ、比重も小さいことが確認された。
1・・・撮像装置、101・・・カメラボディ、102・・・レンズ鏡筒、103・・・レンズ、104・・・センサチップ、105・・・ガラス基板、106・・・マルチチップモジュール、2・・・多光子顕微鏡、201・・・パルスレーザ装置、202・・・パルス分割装置、203・・・ビーム調整部、204,205,212・・・ダイクロイックミラー、206・・・対物レンズ、207,211,213・・・蛍光検出部、208・・・集光レンズ、209・・・ピンホール、210・・・結像レンズ、S・・・試料、CAM・・・撮像装置、WL・・・撮影レンズ、EF・・・補助光発光部、M・・・液晶モニター、B1・・・レリーズボタン、B2・・・ファンクションボタン

Claims (19)

  1. 質量%で、
    SiO成分:23〜33%、
    成分:5〜13%、
    ZrO成分:1〜10%、
    Nb成分:31〜48%、
    NaO成分:5〜16%、
    CaO成分:3超〜10%、
    LiO成分:0超〜5%、
    である、光学ガラス。
  2. 質量%で、
    La成分:0〜2%、
    Ta成分:0〜3%、
    WO成分:0〜3%、
    ZnO成分:0〜4%、
    BaO成分:0〜3%、
    Al成分:0〜2%、
    O成分:0〜5%、
    Sb成分:0〜1%、
    である、請求項1に記載の光学ガラス。
  3. SiO/(B+KO+LiO+NaO)が0.86〜1.77の範囲内であり、
    CaO/SiOが0.12以上である、
    請求項1又は2に記載の光学ガラス。
  4. Ta成分を実質的に含有しない、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  5. TiO成分を実質的に含有しない、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  6. d線に対する屈折率(n)が、1.71〜1.80である、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  7. アッベ数(ν)が、28〜35である、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  8. 異常分散性を示す値(ΔPg,F)が、0.0035以下である、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  9. 部分分散比(Pg,F)が0.598以下である、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  10. 670〜700℃で30分間加熱した後、100倍の顕微鏡の一視野(実視野2.2°)中に存在する異物個数が、110個未満である、
    請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  11. 光路長10mmにおける内部透過率が80%となる波長(λ80)が、400nm以下である、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  12. 比重(S)が、3.5以下である、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  13. ガラス転移温度(T)が、560℃以下である、
    請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  14. 前記光学ガラスの原料50gを1340〜1400℃の温度で加熱したときの、前記原料が融解するまでの時間が、15分未満である、
    請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた光学素子。
  16. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学ガラスを含む光学系。
  17. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学ガラスを含む交換レンズ。
  18. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学ガラスを含む光学装置。
  19. 前記光学ガラスの原料を1340〜1400℃で加熱する工程を少なくとも含み、かつ、
    前記原料50gが融解するまでの時間が、15分未満である、
    請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学ガラスの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112125511A (zh) * 2020-09-28 2020-12-25 成都光明光电股份有限公司 光学玻璃
WO2022102045A1 (ja) * 2020-11-12 2022-05-19 株式会社ニコン 光学ガラス、光学素子、光学系、接合レンズ、カメラ用交換レンズ、顕微鏡用対物レンズ及び光学装置

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