JP2021011409A - 光学ガラス、光学素子、光学系、交換レンズ及び光学装置 - Google Patents

光学ガラス、光学素子、光学系、交換レンズ及び光学装置 Download PDF

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【課題】高屈折率、低分散で、かつ、低比重である光学ガラスの提供。【解決手段】質量%で、SiO2成分:7.5〜10.5%、B2O3成分:13.5〜16.5%、La2O3成分:38〜50%、Gd2O3成分:6.3超〜7.5%、Y2O3成分:6〜13%、Nb2O5成分:6.5〜8.5%、BaO成分:0超〜2.5%、ZrO2成分:4.5〜7.5%であるガラス組成とする。【選択図】なし

Description

本発明は、光学ガラス、光学素子、光学系、交換レンズ及び光学装置に関する。
近年、高画素数のイメージセンサーを備えた撮像機器等が開発されており、これらに用いられる光学系について高い解像度が求められている。特許文献1には、このような光学系に使用可能な光学ガラスの一例が開示されている。
特開2014−210695号公報
本発明の第一の態様は、質量%で、SiO成分:7.5〜10.5%、B成分:13.5〜16.5%、La成分:38〜50%、Gd成分:6.3超〜7.5%、Y成分:6〜13%、Nb成分:6.5〜8.5%、BaO成分:0超〜2.5%、ZrO成分:4.5〜7.5%である、光学ガラスである。
本発明の第二の態様は、上述した光学ガラスを用いた光学素子である。
本発明の第三の態様は、上述した光学素子を含む光学系である。
本発明の第四の態様は、上述した光学系を備える交換レンズである。
本発明の第五の態様は、上述した光学系を備える光学装置である。
図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。 図2は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の正面図である。 図3は、図2の撮像装置の背面図である。 図4は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、本明細書中において特に断りがない場合、各成分の含有量は、酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%であるものとする。ここでいう酸化物換算組成とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が溶融時に全て分解されて酸化物に変化すると仮定し、当該酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
また、本明細書中において「実質的に含有しない」とは、当該成分が、不純物として不可避的に含有される濃度を越えて、ガラス組成物の特性に影響する構成成分として含有されないこと、を意味する。例えば、製造過程における100ppm以下程度のコンタミネーションについては、実質的に含有されていないものとする。
本実施形態に係る光学ガラスは、質量%で、SiO成分:7.5〜10.5%、B成分:13.5〜16.5%、La成分:38〜50%、Gd成分:6.3超〜7.5%、Y成分:6〜13%、Nb成分:6.5〜8.5%、BaO成分:0超〜2.5%、ZrO成分:4.5〜7.5%である、光学ガラスである。
光学系に使用される光学ガラスとして、高屈折率で低分散なものが望まれている。加えて、光学系に対する軽量化の要望も高まっている。従来の光学ガラスでは、高屈折率、低分散をある程度のレベルで達成できたとしても、比重が大きくなる傾向にあり、このような要望に応えることができないという問題があった。この点について、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率、低分散でありながら、従来ではなし得なかった程度の低比重を実現できるものである。さらに、本実施形態に係る光学ガラスは、低コストにも寄与する。ここでいう低コストは、後述するように原料費が高い材料を使用しなくても優れた物性を発現できることや、低比重の光学ガラスを使用することで各種製品の製造費を低減できること等から達成される。すなわち、本実施形態に係る光学ガラスは、高価な原料を多量に含有せずとも高屈折率、低分散でありながら、低比重を達成することができる。
従来、高屈折率、低分散である光学ガラスを得ようとするために、屈折率を高めるべくLa、Gd,Yといった希土類成分の比率を高くする傾向にあった。しかしながら、本発明者らは、意外にも、Y等の比率を所定の割合に制御することで、高屈折率、低分散でありながら、従来になかった程度の低比重が達成できるという知見を得た。そして、本発明者らは、かかる知見に基づき鋭意研究した結果、本実施形態に係る光学ガラスを完成するに至ったものである。
以下、本実施形態に係る光学ガラスの組成について説明する。
SiOは、ガラス骨格を形成し、液相温度(Tl)を低下させ、化学的耐久性を向上させる成分である。そして、SiOの含有量が少なすぎると、失透が生じ易くなる傾向がある。SiOの含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向にある。このような観点から、SiOの含有量は、7.5〜10.5%である。この上限は、好ましくは10%であり、より好ましくは9.5%である。この下限は、好ましくは8%であり、より好ましくは8.5%である。このような範囲とすることで、耐失透性を高め、成形性を良好にしながら高屈折率化を図ることができる。
は、ガラス骨格を形成し、液相温度(Tl)を低下させ、化学的耐久性を向上させる成分である。そして、Bの含有量が少なすぎると、溶融性が悪化するとともに、失透が生じ易くなる傾向がある。Bの含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向にある。また、溶融時の粘性が低下して成形が容易でなくなる傾向にある。このような観点から、Bの含有量は、13.5〜16.5%である。この上限は、好ましくは16%であり、より好ましくは15.5%である。この下限は、好ましくは14%であり、より好ましくは14.5%である。このような範囲とすることで、耐失透性を高め、成形性を良好にしながら高屈折率化を図ることができる。
Laは、屈折率を高め、分散を下げる(アッベ数(ν)を増大させる)成分である。そして、Laの含有量が少なすぎると、屈折率が低下する。Laの含有量が多すぎると、ガラスが不安定化して溶融性が低下し、失透が生じやすくなる。このような観点から、Laの含有量は、38〜50%である。この上限は、好ましくは48%であり、より好ましくは47%である。この下限は、好ましくは40%であり、より好ましくは41%である。このような範囲とすることで、耐失透性を低下させずに高屈折率、低分散を実現することができる。
Gdは、屈折率を高め、分散を下げる(アッベ数(ν)を増大させる)成分である。そして、Gdの含有量が少なすぎると、屈折率が低下する。Gdの含有量が多すぎると、ガラスが不安定化して溶融性が低下し、失透が生じやすくなる。このような観点から、Gdの含有量は、6.3超〜7.5%である。この上限は、好ましくは7%であり、より好ましくは6.9%である。この下限は、好ましくは6.35%であり、より好ましくは6.4%である。このような範囲とすることで、耐失透性を低下させずに高屈折率、低分散を実現することができる。
は屈折率を高め、分散を下げる(アッベ数(ν)を増大させる)成分であり、比重を低下させる成分でもある。そして、Yの含有量が少なすぎると、比重が増大する傾向がある。Yの含有量が多すぎると、ガラスが不安定化して溶融性が低下し、失透が生じやすくなる。このような観点から、Yの含有量は6〜13%である。この上限は、好ましくは12%であり、より好ましくは11.5%である。この下限は、好ましくは7%であり、より好ましくは8%である。このような範囲とすることで、耐失透性を低下させずに高屈折率、低分散、低比重を実現することができる。
Nbは、高屈折率化及び高分散化させる(アッベ数(ν)を低下させる)効果を有する成分である。そして、Nbの含有量が少なすぎると、高屈折率化が困難となる。Nbの含有量が多すぎると、溶融性が低下して液相温度(Tl)が上昇し、高温での処理が必要となるとともに、高分散化する。Nbの含有量は、6.5〜8.5%である。この上限は、好ましくは8%である。この下限は、好ましくは7%であり、より好ましくは7.5%である。このような範囲とすることで、高分散化させずに高屈折率化を実現することができる。
BaOは、屈折率を高め、分散を下げる(アッベ数(ν)を増大させる)成分である。そして、BaOの含有量が少なすぎると、高分散化する。BaOの含有量が多すぎると、高屈折率化が困難となる。このような観点から、BaOの含有量は、0超〜2.5%である。この上限は、好ましくは2%であり、より好ましくは1.5%である。この下限は、好ましくは0.5%である。このような範囲とすることで、低分散化が可能となる。
ZrOは、高屈折率化及び高分散化させる効果を有する成分である。そして、ZrOの含有量が少なすぎると、高屈折率化が困難となる。ZrOの含有量が多すぎると、高分散化し、溶融性が低下して液相温度(Tl)が上昇し、高温での処理も必要となる。また、耐失透性が低下してガラス化が困難となる傾向がある。このような観点から、ZrOの含有量は、4.5〜7.5%である。この上限は、好ましくは7%であり、より好ましくは6.5%である。この下限は、好ましくは5%であり、より好ましくは5.5%である。このような範囲とすることで、高分散化させずに高屈折率化を実現することができる。
加えて、各成分の組み合わせや割合については、以下の好適例が更に挙げられる。
本実施形態に係る光学ガラスは、WO、ZnO、MgO及びSbからなる群より選ばれる1種以上を更に含有していてもよい。それらの中でも、とりわけ好ましい組み合わせとしては、WO成分:0〜5%、ZnO成分:0〜5%、MgO成分:0〜3%、Sb成分:0〜1%の組み合わせが挙げられる。
WOは、屈折率を高める効果を有する。WO含有量は、好ましくは0〜5%である。この上限は、より好ましくは4%であり、更に好ましくは3%である。この下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは1%である。
ZnOは、光学ガラスの屈折率を高め、ガラス転移温度を低下させる効果を有する。ZnOの含有量は、好ましくは0〜5%である。この上限は、より好ましくは4%であり、更に好ましくは3%である。この下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%である。
MgOは、光学恒数値の調整に有用である。MgOの含有量は、好ましくは0〜3%である。この上限は、より好ましくは2%であり、更に好ましくは1.5%である。この下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%である。
Sbは、光学ガラスの脱泡を促進する。Sbの含有量は、好ましくは0〜1%である。この上限は、より好ましくは0.5%であり、更に好ましくは0.3%である。この下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.1%である。
本実施形態に係る光学ガラスは,Taを実質的に含有しないことが好ましい。Taを含有すると、原料費が増大する傾向にある。この点について、本実施形態に係る光学ガラスは、Taを実質的に含有せずとも、高屈折率、低分散でありながら、低比重な光学ガラスとすることができるので、一層のコストダウンを図ることもできる。
本実施形態に係る光学ガラスは,TiOを実質的に含有しないことが好ましい。TiOを含有すると、透過率が低下する傾向にある。本実施形態に係る光学ガラスは、TiOを実質的に含有せずとも、高屈折率、低分散でありながら、低比重な光学ガラスとすることができる。
LaとGdとYとYbとの総量に対する、Gdの比(Gd/(La+Gd+Y+Yb))は、0.05超〜0.12であることが好ましい。この比の上限は、より好ましくは0.11であり、更に好ましくは0.10である。この比の下限は、より好ましくは0.06である。このような範囲とすることで、耐失透性を高め、屈折率を高くすることができる。
に対するSiOの比(SiO/B)は、好ましくは0.60〜0.80である。この比の上限は、より好ましくは0.70であり、更に好ましくは0.68である。この比の下限は、より好ましくは0.62であり、更に好ましくは0.65である。このような範囲とすることで、ガラスの粘性を高め、成型性を高めることができる。
GdとYとの総量に対するGdの比(Gd/(Gd+Y))は、0.50以下であることが好ましい。この比の上限は、より好ましくは0.49である。この比の下限は、より好ましくは0.30であり、更に好ましくは0.34である。このような範囲とすることで、ガラスを効果的に低比重化することができる。
その他、必要に応じて清澄、着色、消色や光学恒数値の微調整等の目的で、上記以外の成分で、公知の清澄剤や着色剤、脱泡剤、フッ素化合物、リン酸等の成分を、本実施形態の効果が得られる範囲で、ガラス組成に適量添加することができる。また、上記成分に限らず、本実施形態の効果が得られる範囲で、その他の成分を添加することもできる。
上述した各原料は、不純物の含有量が少ない高純度品を使用するのが好ましい。例えば、SiO原料、B原料、La原料のうち1又は2以上について、高純度品を使用することが好ましい。高純度品とは、当該成分を99.85質量%以上含むものである。高純度品の使用によって、不純物量が少なくなる結果、例えば波長410nm以下の光の内部透過率をより高くできる傾向がある。
本実施形態に係る光学ガラスの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、製造条件は、適宜公的な条件を選択することができる。好適例の一つとしては、上述した各原料に対応する酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、硫酸塩、炭酸塩及び硝酸塩等から選ばれる1種をガラス原料として選択し、これを混合し、1300〜1400℃の温度で熔融させて攪拌均一化する工程を行い、その後、冷却して、成形する工程を含む方法が挙げられる。
より具体的には、酸化物、水酸化物、硫酸塩、リン酸化合物、炭酸塩、硝酸塩等の原料を目標組成となるように調合し、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1100〜1300℃にて熔融し、撹拌することで、均一化し、泡切れを行った後、金型に流し成形する製造方法を採用できる。このようにして得られた光学ガラスは、必要に応じてリヒートプレス等を行って所望の形状に加工し、研磨等を施すことで、所望の光学ガラスや光学素子を得ることができる。
そして、本実施形態に係る光学ガラスの組成は、熔融しやすいため、攪拌均一化が容易であり、生産効率に優れる。すなわち、光学ガラスの原料50gを1300〜1380℃の温度で加熱したときの、当該原料が融解するまでの時間が、好ましくは15分未満であり、より好ましくは13分以下であり、更に好ましくは10分以下である。ここでいう「融解するまでの時間」とは、光学ガラスの構成に必要な原料に対する加熱保持を開始した時点から、これらの原料が熔融し、目視で液面付近に確認できなくなるまでの時間をいう。
1300〜1380℃の温度範囲において、上述したような短時間でガラス原料が融解するため、残存するガラス原料がガラス中へ混入することを抑制できる。また、残存するガラス原料を無理に融解させようとして、高温での加熱や長時間の加熱保持を行うと、ガラスの生産効率の低下や透過率悪化の原因となり得るが、本実施形態によればかかる不具合も発生しない。
次に、本実施形態に係る光学ガラスの物性等について説明する。
本実施形態に係る光学ガラスは、屈折率(n)の範囲が、好ましくは1.815〜1.840である。この上限は、より好ましくは1.835である。この下限は、より好ましくは1.820である。このように、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率(屈折率(n)が大きいこと)を低分散(アッベ数(ν)が大きいこと)で実現できる。高屈折率である光学ガラスを用いると、例えば、光学レンズ等の光学素子を薄型化する設計が可能となる。
本実施形態に係る光学ガラスは、アッベ数(ν)の範囲が、好ましくは41.0〜43.5である。この上限は、より好ましくは43.0である。この下限は、より好ましくは42.0である。一般的に、屈折率が高いほどアッベ数(ν)が小さくなる傾向にあり、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率な光学ガラスとしては低分散(アッベ数(ν)が大きい)である。
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率とアッベ数の好適な組み合わせとしては、屈折率(n)が、1.815〜1.840であり、かつ、アッベ数(ν)が、41.0〜43.5である。かかる屈折率とアッベ数を有する光学ガラスは、実用に耐え得る程度の高屈折率かつ低分散な光学ガラスとして好適に使用できる。例えば、かかる光学ガラスを、他の光学ガラスと組み合わせることで、色収差や他の収差が良好に補正された光学系を設計可能である。
本実施形態に係る光学ガラスは、比重(S)が4.72以下であり、より好ましくは4.71以下である。本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率、低分散でありながら、この程度の低比重を実現することができる。そして、この程度に低比重な光学ガラスを用いることで、例えば、光学系の軽量化や製造費の軽減を図ることができる。
本実施形態に係る光学ガラスは、カメラや顕微鏡等の光学装置の備えるレンズ等の光学素子として好適である。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれる。これら光学素子を含む光学系としては、例えば、対物レンズ、集光レンズ、結像レンズ、カメラ用交換レンズ等が挙げられる。そして、これらは、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、多光子顕微鏡等の顕微鏡に用いることができる。なお、光学装置としては、上述した撮像装置や顕微鏡に限られず、ビデオカメラ、テレコンバーター、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、レーザ距離計、プロジェクタ等も含まれる。以下にこれらの一例を説明する。
<撮像装置>
図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。
撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、当該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光がカメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
図2は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の正面図であり、図3は、図2の撮像装置の背面図である。
この撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLのシャッタ(不図示)が開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニタLMに表示される。撮影者は、液晶モニタLMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、メモリ(不図示)に記録保存する。
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
このようなデジタルカメラ等に用いられる光学系には、より高い解像度、軽量化、小型化が求められる。これらを実現するには光学系に高屈折率なガラスを用いることが有効である。特に、高屈折率でありながらより低い比重(Sg)を有し、高いプレス成形性を有するガラスの需要は高い。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる光学機器の部材として好適である。なお、本実施形態において適用可能な光学機器としては、上述した撮像装置に限らず、例えばプロジェクタ等も挙げられる。光学素子についても、レンズに限らず、例えばプリズム等も挙げられる。
<多光子顕微鏡>
図4は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡2の構成の例を示すブロック図である。
多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラー205の方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。各表は実施例及び比較例に係る光学ガラスについて、各成分の酸化物基準の質量%による組成、及び得られた光学ガラスの物性の評価結果を示したものである。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<光学ガラスの作製>
各実施例及び各比較例に係る光学ガラスは、以下の手順で作製した。まず、各表に記載の組成(質量%)となるよう、酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、炭酸塩、及び硝酸塩等のガラス原料を秤量した。次に、秤量した原料を混合して白金ルツボに投入し、1300〜1380℃の温度で溶融させて攪拌均一化した。泡切れを行った後、適当な温度に下げてから金型等に鋳込んで徐冷し、成形することで、各サンプルを得た。
<光学ガラスの測定>
・屈折率(n)とアッベ数(ν
各サンプルの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、屈折率測定器(株式会社島津デバイス製造製:KPR−2000)を用いて測定及び算出した。なお、アッベ数(ν)は、下記式(1)に基づき算出した。なお、屈折率の値は、小数点以下第6位までとした。

ν=(n−1)/(n−n)・・・・(1)
:波長587.562nmの光に対するガラスの屈折率
:波長486.133nmの光に対するガラスの屈折率
:波長656.273nmの光に対するガラスの屈折率
・比重(S
各サンプルの比重(S)は、4℃における同体積の純水に対する質量比から求めた。
・ガラス原料の融解時間
ガラス原料の融解時間は、ガラス原料50gをよく混合した上で白金坩堝に入れ、1300〜1380℃の温度で加熱保持を開始したときから、ガラス原料が融解するまでの時間を意味する。本実施例においては、白金坩堝中のガラス液面に目視でガラス原料の溶け残りが確認できなくなったことにより、ガラス原料が融解したと判断した。
各実施例及び各比較例の結果を、表1〜表4に示す。なお、特に断りがない限り、表中の成分の含有量は質量%基準である。
Figure 2021011409
Figure 2021011409
Figure 2021011409
Figure 2021011409
以上より、各実施例はいずれも、高屈折率、低分散でありながら、低比重であることが確認された。さらに、各実施例のサンプルはいずれも、失透が認められなかった。一方、比較例1は、比重が4.74と高いものであった。また、比較例2,3は、サンプルに失透が認められたため、各種物性値を測定することができなかった。
1…撮像装置、101…カメラボディ、102…レンズ鏡筒、103…レンズ、104…センサチップ、105…ガラス基板、106…マルチチップモジュール、2…多光子顕微鏡、201…パルスレーザ装置、202…パルス分割装置、203…ビーム調整部、204,205,212…ダイクロイックミラー、206…対物レンズ、207,211,213…蛍光検出部、208…集光レンズ、209…ピンホール、210…結像レンズ、S…試料、CAM…撮像装置、WL…撮影レンズ、EF…補助光発光部、LM…液晶モニタ、B1…レリーズボタン、B2…ファンクションボタン

Claims (13)

  1. 質量%で、
    SiO成分:7.5〜10.5%、
    成分:13.5〜16.5%、
    La成分:38〜50%、
    Gd成分:6.3超〜7.5%、
    成分:6〜13%、
    Nb成分:6.5〜8.5%、
    BaO成分:0超〜2.5%、
    ZrO成分:4.5〜7.5%である、
    光学ガラス。
  2. 質量%で、
    WO成分:0〜5%、
    ZnO成分:0〜5%、
    MgO成分:0〜3%、
    Sb成分:0〜1%である、
    請求項1に記載の光学ガラス。
  3. Taを実質的に含有していない、
    請求項1又は2に記載の光学ガラス。
  4. 屈折率(n)が、1.815〜1.840であり、かつ、
    アッベ数(ν)が、41.0〜43.5である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  5. 比重(S)が、4.72以下である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  6. 原料50gを1300〜1380℃の温度で加熱したときの、当該原料が融解するまでの時間が、15分未満である、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  7. 質量%基準で、
    LaとGdとYとYbとの総量に対する、Gdの比(Gd/(La+Gd+Y+Yb))が、0.05超〜0.12である、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  8. 質量%基準で、
    に対するSiOの比(SiO/B)が、0.60〜0.80である、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  9. 質量%基準で、
    GdとYとの総量に対するGdの比(Gd/(Gd+Y))が、0.50以下である、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた光学素子。
  11. 請求項10に記載の光学素子を含む光学系。
  12. 請求項11に記載の光学系を備える交換レンズ。
  13. 請求項11に記載の光学系を備える光学装置。
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