JP2020058886A - 輸液容器及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は輸液容器に関し、薬液充填過程において袋状体をトレイに立て掛けた場合に折れ曲がりを防止し、効率的な薬液充填を行なうことを目的とする。【解決手段】輸液容器は、プラスチックフィルムにより構成される袋状体58をトレイ78に立て掛けてチャック80によりチャックし、薬液を充填し封止して外周部に固定されたプラスチック成形品であるポート部材とを具備して成る。輸液バッグを構成する、プラスチックフィルムはスティフネステスタ法による湿熱滅菌処理前におけるフィルムループ強度が500mN以上であると共にプラスチックフィルムの弾性率は湿熱滅菌処理後においては400Mpa以下である。【選択図】 図8

Description

この発明は輸液容器及びその製造方法に関するものである。
プラスチックフィルムにより構成される袋状体に薬液を充填し封止してなる輸液バッグと、輸液バッグの外周部に固定されたプラスチック成形品であるポート部材とを具備して成る輸液容器は公知である。輸液容器は湿熱下での滅菌工程を通した後に外装バックに収容し、製品とされる。プラスチックフィルムより成る縦長の袋状体への薬液の充填方法として袋状体を横置きに且つ直立させて行う場合がある(特許文献1)。この場合、薬液充填に先立ち、袋状体はトレイに幾分斜めに立て掛けられ、両側上部をチャックで把持することにより直立させ、袋状体の上部に残された開口部を介して薬液充填が行われる。この充填方法の場合、チャックによる確実な把持動作のために、袋状体はトレイに折れ曲がることなく立て掛けられることが肝要である。
また本発明の関連技術として、プラスチックフィルムを多層構造とし、そのうち一層をエチレン−ビニールアルコール共重合体樹脂にて構成することによりプラスチックフィルムにガスバリヤ性を持たせるものが公知である。
国際公開WO2014/104281号公報 特許第5100308号公報
プラスチックフィルムより成る縦長の袋状体への薬液の充填方法として袋状体を横置きに且つ直立させて行う場合、チャックによる確実な把持動作のために、袋状体はトレイに折れ曲がることなく立て掛けられ、その姿勢を維持することが重要であるが、従来から薬液充填用の袋状体の素材として利用されていたポリエチレンやポリプロピレンは製品とした後に硬くなり過ぎないため製品とした後の取り扱い性や製品に尖った部位が残留しても怪我等することがない等安全性に優れているが、本来が柔軟な性質のものであるため、輸液容器用に常用される300μm程度のフィルム厚みをとっても、薬液充填過程において袋状体をトレイに立て掛けた場合に折れ曲がり易く、チャックによる確実な把持動作を行いえず、作業効率の低下、惹いては製品コスト増の原因となっていた。
本発明者等は検討の結果、プラスチックフィルムより成る縦長の袋状体を横置きとし且つ立てたときの耐折れ曲がり性に対してスティフネステスタ法によるフィルムループ強度が強く関連していることを見出し本発明に達した。即ち、本発明によれば、プラスチックフィルムにより構成される袋状体に薬液を充填し封止してなる輸液バッグと、輸液バッグの外周部に固定されたプラスチック成形品であるポート部材とを具備して成り、プラスチックフィルムはスティフネステスタ法による湿熱滅菌処理前におけるフィルムループ強度が500mN以上であると共にプラスチックフィルムの弾性率は湿熱滅菌処理後においては400Mpa以下である輸液容器が提供される。
本発明の輸液容器においてスティフネステスタ法による湿熱滅菌処理前におけるフィルムループ強度は570mN以上であることがチャックによる所期の把持動作実現のためにはより好ましい。また、湿熱滅菌処理前のプラスチックフィルムの弾性率は700Mpa以下であることが、ポート部材のシール性及び薬液の必要な充填量の確保の観点からも製品とした後の取り扱い性の観点からも好ましい。
本発明において、プラスチックフィルムは多層構造とし、基材層はポリエチレンやポリプロピレン等の従来からよく使用されていたポリエチレン等のポリオレフィン樹脂から構成することができる。そして、多層フィルムの湿熱滅菌処理前におけるフィルムループ強度を大きくするため、エチレン−ビニールアルコール共重合体樹脂(EVОH樹脂)やナイロン等のポリアミド樹脂からなる層を付加することができる。EVОH樹脂層等は湿熱滅菌処理前におけるフィルムループ強度を高めることにより袋状体を横置きとし且つ立てたときの耐折れ曲がり性が良好となり、袋状体への薬液充填時の作業性を高めることができ、フィルムループ強度の値はフィルムの弾性率の値と比例関係とまでではないが、一応の関連はあるが、また輸液バッグの湿熱処理後にはEVОH樹脂層はその弾性率が湿熱処理前より小さくなり400Mpa以下なるため、製品としての取扱性が悪くなることはない効果がある。
多層フィルム中の一層をEVОH樹脂層とすることは特許文献2に記載されているように輸液容器に非通気性(ガスバリヤ性)を具有させ、アミノ酸製剤や一部のビタミン製剤等の酸化され易い輸液製剤の安定保存性を確保することができる点で有利となる。そして、この特許に記載のように湿熱滅菌処理した輸液バッグは脱酸素剤と共にガスバリヤ性フィルムより成る外装バッグに収容することができる。即ち、輸液バッグは滅菌のため水蒸気等により加熱(湿熱処理)され、EVОH樹脂は加熱により一旦通気性を失うが常温に戻すと緩慢であるが非通気性を回復する。湿熱処理直後の輸液バッグを外装バッグに脱酸素剤とともに収容し、樹脂層が通気性を持っている間に輸液バッグ内に残留する酸素を外装バッグ中の脱酸素剤に吸着させ、エチレン−ビニールアルコール共重合体樹脂層が非通気性完全に回復した状態においては、輸液バック中に残留する酸素を本来の低レベルに抑えるようにしている。本発明では薬液充填時の袋状体の耐折れ曲り性を高めるためEVОH樹脂層を20〜60μmといった大きな厚み値としているため、湿熱滅菌処理後12時間以内におけるプラスチックフィルムの酸素透過度が最大でも300cc/m・day・atm程度にしかならないが、薬液充填時の窒素ガス等の不活性ガス置換によって充填時の残留酸素量を3cc以下に抑えることによりEVОH樹脂層のガスバリヤ性の完全回復後には輸液バッグ内の残留ガス量をアミノ酸製剤や一部のビタミン製剤等の酸化され易い輸液製剤の安定保存性を確保できるレベルまで抑制する効果を奏することができる。
図1はこの発明の実施である輸液容器の平面図である。 図2は図1のII−II線に沿った矢視断面図である。 図3は図1のIII−III線に沿った矢視断面図である。 図4は図1の輸液容器における輸液バッグを構成する多層フィルムの模式的断面図である。 図5は筒状フィルムシートからの袋状体の成形を説明する図である。 図6は図5の袋状体からの輸液容器の製造工程における段階(a)−(c)を概略的に示す図である。 図7は図6に後続するこの段階(d)−(e)を概略的に示す図である。 図8は袋状体への薬液の充填のため袋状体をトレイに立て掛ける工程を模式的に説明する図である。 図9はスティフネステスタ法によるフィルムループ強度の測定方法を模式的に説明する図である。 図10は本発明の輸液容器を構成するプラスチックフィルムに関し、EVОH樹脂層の厚みXの各値につき、酸素透過度と滅菌後経過時間経過(日)との関係を示すグラフである。
〔輸液バッグ及びそれを多層プラスチックフィルム〕
この発明の輸液容器における輸液バッグは多層プラスチックフィルムにより構成され、薬液を充填するための輸液バッグと、輸液バッグの外周部に固定された排出ポート及び混注ポート等のプラスチック製のポート部材とを具備している。
輸液バッグを構成する多層プラスチックフィルムは輸液バックとしてスタンドに懸架装着して使用することから薄すぎるものは適さないし、過剰に厚すぎると取扱性が良くないのでその厚み(多層フィルムの全厚)としては200μm〜300μmである。そして、プラスチックフィルムのベースの層は透明性及びコストの観点でポリオレフィン樹脂を採用することができ、ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等があり、ポリエチレンが輸液用途の点で最も好ましい。後述のように輸液バッグを構成する多層フィルムは、そのうち少なくとも一層は薬液充填の際にはループ強度を高め、薬液を充填した輸液バッグの湿熱滅菌後に軟化して弾性率を適正な値にまで低下されるためのエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂やポリアミド樹脂等の非ポリエチレン層を備えるが、上記厚み範囲はこの非ポリエチレン層を含めた厚みである。
本発明の輸液容器における輸液バッグは縦長の実質的に矩形の平坦な形状をなす。このような輸液バッグは筒状のプラスチックフィルムをシート状物とし、このシート状物を輸液バッグの輪郭線に沿って溶着(剥離不能溶着)し、溶着部に沿って切断することで、上下のプラスチック多層フィルム切片の外周を輸液バッグの略輪郭線に準じて上下溶着した縦長の袋状体が得られる。バッグは縦方向の片側若しくは両側の溶着部にプラスチック成形品であるポート部材(片側のみの場合は排出ポート、両側の場合は片側に排出ポート、反対側に混注ポート)が溶着により取り付けた状態となっている。本発明の実施においては、後で詳細に説明するが、袋状体への薬液充填する際に、この縦長の袋状体を断面鍵状のトレイに立て掛けて行うが、輸液バッグの縦方向の端部にはポート部材が取付済であることから、ポート部材と干渉しないようにバックは横置きとされる。トレイの側壁より高い部位から突出した袋状体のフリー部分を両側にてチャックにて把持することにより直立させ、横置きの状態の袋状体の上部を切除することで開口させ、薬液の充填を行なう。トレイを立て掛け、そのご直立させて充填を行なうことから、袋状体を構成する多層プラスチックフィルムは折れ曲がり難い必要がある。折れ曲がったままチャックされると薬液充填時の窒素置換による空気排出が理想的に行なえず、残留空気量を所期の値(上述のように3cc)に抑えることができなくなり、結局は薬液の充填に失敗することになり、不良品の発生によるコスト増の原因となる。薬液バッグをトレイに立て掛けたときの耐折れ曲がり性については、フィルムの肉厚を大きくすることによっても折れ曲がり難くなる。フィルム肉厚については前述のように完成した製品の取り扱い性の関連であまり厚くすることはできない。本発明者等は、立て掛けたときの折れ曲がり難さについて鋭意検討の結果、スティフネステスタ法によるフィルムのループ強度が強い相関があることを発見し、スティフネステスタ法によるループ強度が500mN以上、好ましくは570mN以上とすることにあり、立て掛けたときの折れ曲がりが発生せず不正チャックを生ぜず良好な薬液充填作業性が得られることがわかった。そして、ループ強度はフィルムの弾性率と1対1ではないがある程度の相関を具有しており、ループ強度を600mN以上とすると、弾性率は500Mpa以上となるが、湿熱滅菌処理後においては通常のポリエチレン多層フィルムよりなる輸液バッグと同程度の400Mpaとすることで製品とした状態でもフィルムが硬くなりすぎることがなく、製品を落としても裂け目が生ずることがないことが分かり本発明に到達した。
また、フィルムの弾性率であるが、上述のように、滅菌前においてはフィルムループ強度との関係で500Mpa以上となり、弾性率が高いことは薬液充填のための袋状体へのポート部材との全周密着性(シール性)及び袋状体への薬液の充填時の膨らみ易さ(薬液充填性)を悪化させ得るが、検討によれば、薬液充填時、即ち、湿熱滅菌処理前のプラスチックフィルムの弾性率を700Mpa以下とすることによりシール性及び薬液充填性についても必要な性能を確保することができることが判明した。
このような特性を呈する多層フィルムとしては、上述のポリエチレン等の基材層に加えて、薬液充填前には袋体を立て掛けた状態での薬液充填を確実に行わしめるため、基材としてのポリエチレン層等を補強してフィルムを折れ曲がり難くし(ループ強度を高め)、薬液充填を行ない湿熱滅菌後には落下しての裂けない等の製品としての取り扱い性を高めるためフィルムを柔軟とする(弾性率を下げる)ための特別な層を備えている。薬液充填時に本発明の多層フィルムはこのような特別な層を構成するためのプラスチックとしてはエチレン−ビニルアルコール共重合体や、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。そして、これらの樹脂は酸素不透過性を備えているため、アミノ酸などの酸化しやすい輸液製剤の収容に適している。そして、これらの樹脂の中で、輸液用途の観点ではエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(以下EVОH樹脂)が好ましい。EVОH樹脂におけるエチレン含有割合は輸液製品に要求される110℃以上での滅菌工程における耐熱性の観点から19〜38モルである。
本発明の輸液容器は薬液充填密閉後に加熱滅菌処理を受ける。加熱滅菌処理は水蒸気により湿熱下で行われその条件としては温度105℃〜115℃であり、加熱時間は20分〜40分である。
EVОH樹脂層は、 多層フィルムにおける上述の200μm〜300μmの全肉厚範囲において、20μ〜60μm、好ましくは30μ〜50μmの肉厚を備えている。周知のようにEVОH樹脂は酸素不透過性を持っており、アミノ酸製剤やビタミン製剤等のように酸化劣化し易い輸液製剤のための所謂酸素バリア層として役立てることができる。
本発明においては、滅菌処理直後に輸液容器は外装バックに脱酸素剤と共に収容され、外装バックは溶着により封止され、最終的な製品となる。外装バックとしてはガスバリヤ性のアルミニューム蒸着フィルムやアルミニューム箔等にて形成することができる。
EVОH樹脂は水分の存在下での加熱によりビニルアルコール結合部が水と反応することにより一時的に酸素不透過性を失うことが知られている。輸液バッグでは薬液の充填・密封後に湿熱滅菌工程に付することが必須であり、輸液バッグを構成する多層フィルムのうちの少なくとも一層をEVОH樹脂とした場合においても湿熱滅菌後一時的に酸素透過性を呈し、その程度(酸素透過度)時間と共に徐々に減少して行き、最終的には湿熱滅菌処理前の酸素バリアとして機能する元の状態に復帰する。湿熱滅菌後の酸素透過度は1気圧においてフィルム単位面積当たり1日に透過する酸素量(単位はcc/m・day・atm)で表される。特許文献2の技術では湿熱滅菌後の酸素透過度を滅菌処理後12時間以内において200cc/m・day・atm以上としている。特許文献2の技術では薬液充填時における酸素置換を行わないことから、薬液充填後の輸液バッグ中の残留空気量が多くなるが、酸素透過度を滅菌処理後12時間以内において200cc/m・day・atm以上とすることで、輸液バッグ中に大量に残留した酸素は輸液バッグを構成するフィルムを介して外装バッグ中に収容された脱酸素剤に吸収され、最終的には輸液バッグ中の溶存酸素濃度がアミノ酸製剤やビタミン製剤等の酸化され易い輸液製剤の安定保存性を確保できるレベルまで低下することができるとされる。本発明においては、湿熱滅菌後の酸素透過度は滅菌処理後12時間以内において最大でも300cc/m・day・atmである。これは、薬液充填を輸液バッグを立て掛けて行う際の姿勢安定性を得るため、輸液バッグを構成する多層フィルムのループ強度を大きくするべくEVОH樹脂層を厚くしたこととの関係による。即ち、本発明においも、湿熱処理後の輸液バッグはガスバリヤ性の外装バッグに脱酸素剤と一緒に収容することにより、輸液バッグに残留する酸素を輸液バッグを構成するフィルムを介して吸着することは行うが、残留酸素の透過性は引用文献2の技術と比較して良くない。しかしながら、本発明者らの検討によれば、薬液充填後、輸液バッグヘッドスペースの酸素残留量を滅菌直前の数値として3cc以下にすることにより、湿熱滅菌後の酸素透過度が滅菌処理後12時間以内において最大300cc/m・day・atm程度であっても、酸素透過度を回復した平衡時において、輸液バッグに残留する酸素量を特許文献1と同等とすることは可能である。輸液バッグへの薬液充填時に、輸液バッグの輸液注入部位を窒素等の不活性ガス置換する工程は追加的に必要となるが、輸液バッグに収容される薬液の250cc〜500ccの充填量に対し、輸液バッグのヘッドスペースを20cc〜60ccとし、残留酸素量を3ccとすることは、輸液バッグの液面上方の空間の窒素置換率を5%〜15%とすれば十分であり、不活性ガス置換に技術的に格別なことは必要ではなく、コスト増要因と言えば言えるがそれ程のことではなく、本発明のように横置きにして薬液充填を行う場合の作業性(不正チャックの防止)の向上による利益を凌駕するものではない。
本発明により湿熱滅菌後の酸素透過度が滅菌処理後12時間以内において最大300cc/m・day・atmであるため、透析に使用される重曹製剤のように炭酸ガスを放出する製剤では、滅菌時に炭酸ガスの放出を抑制するためpHの上昇を抑えることができる利点がある。
本発明の輸液容器としては、輸液バッグにおける薬液を収容する空間が一つのものも空間が二又はそれ以上のものでもよい。薬液を収容する空間が一つの場合は、イソロイシンやロイシン等のアミノ酸製剤や特定のビタミン製剤(アスコルビン等)等の酸化を受け易いものに適している。また、本発明は薬液を収容する空間が二つの若しくはそれ以上の場合にも適用でき、これらの空間は輸液バッグの上下対向面を剥離可能に溶着することにより形成し、それぞれの空間に薬液を充填する。輸液時に輸液バッグの輸液収容部分を押圧することに溶着部が剥離され、それぞれの空間に収容されていた薬液が混合される。このような二液混合タイプにおいては、一方の空間に収容される薬液としては、アミノ酸製剤や特定のビタミン製剤(アスコルビン等)等であり、他方の空間に収容される薬液としては、ブドウ糖や電解質等である。
本発明の輸液容器としては、また、上述の二室(若しくは複室)タイプの輸液バッグ中に小型バッグを設置したものもある。小型バッグは鉄やマグネシウム等の微量元素収容のためのものであり、二室間での薬液の混合のための剥離シールの開通に連動して開通するように仕組まれており、二室間での混合薬液に小型バッグからの少量薬剤が混合されるようにされる。
本発明の好ましい実施においては、多層フィルムは基材層であるポリエチレンは外層側と内層側とのそれぞれで適当な密度の一層もしくは多層構造となっており、内層と外層とのポリエチレン層間にその間にポリエチレンより成る接着剤層を介してEVОH樹脂層を配置したトータルで5〜6層の構成である。このような多層構造フィルムはフィルム総数分の同心円配置の環状ノズルを使用したブロー成形によって筒状に成形される。各環状ノズルは夫々の通路を介してそこから押し出されるべき夫々の素材のためのペレット状樹脂のホッパに接続される。ポリエチレンについては、各種の密度のペレットが提供されており、適宜の比率で混合することにより所期の密度とすることができる。各ホッパからのペレットは夫々のスクリュ押出機により夫々の環状ノズルに向けて押し出され、その間において溶融され、ノズル中心からのブローエアーによってブロー成形が行われ、多層フィルムに構成することができる。
〔本発明における輸液容器の具体的構造例〕
図1−図3は本発明の実施である複室容器を示しており、この複室容器の構造は本発明者等による特許文献1と同様な構成のものであり、多層プラスチックフィルムにて形成された外袋10(内部の隔室に薬液を収容しポート部材と共に封止した状態で本発明の輸液バッグとなる)と、同じく多層プラスチックフィルムにて形成された内袋12と、プラスチック成形品である排出ポート14と、プラスチック成形品である混注ポート16とから成る。
外袋10を構成する多層フィルムの模式的構造が図4に示され、6層構成であり、外袋10の外面となる第1層はポリエチレン等からなる表面層、第2層及び第4層はポリエチレン等から成る接着層、第3層はEVОH樹脂等から成るガスバリヤ層、第5層はポリエチレン等からなり、第6層は外袋10の最内層であり、ポリエチレン等からなる。
図1において、外袋10は平べったい縦長の実質的な矩形をなし、図2及び図3に示すように外袋10を構成するプラスチック軟質フィルムは一対(上下)のフィルム片18及び20を備えており、その外縁部全周を対向面において沿って剥離不能溶着、即ち強シールすることにより袋状に形成して構成される。外袋10に沿ったこの強シール部を図1において符号22にて表す。強シール部22には外袋10の下部において排出ポート14が、外袋10の上部には混注ポート16が液密状態を維持するように固着されている。排出ポート14及び混注ポート16は強シール部22において外袋10と一体化されている。排出ポート14及び混注ポート16はその筒形状を維持し得る肉厚のプラスチックの金型成形品であり、その構造は基本的には同様であるが、排出ポート14について説明すると、排出ポート14は図2に示すように、筒状本体23とキャップ24とゴム栓26を備え、筒状本体23は先端部23-1が強シール部22によって外袋10と一体化され、筒状本体23はテーパ部23-2を介して外袋10の外部に突出し、筒状本体23の端部にキャップ24が固着(溶着)されている。キャップ24の端部にゴム栓26が装着され、ゴム栓26は輸液セットのニードルを穿刺するためものものである。混注ポート16(図1)は排出ポート14と同様な構成を有したものであり、図示しないが、排出ポート14のゴム栓26と同様なゴム栓を供えており、混注用のニードルの穿刺を行うことができるようになっている。
図1−図3において強シール部(剥離不能溶着部)及び弱シール部(剥離可能溶着部)はすべてフィルム対向面を溶着することにより構成されるが、断面(図2及び図3)では明確化のため強シール部及び弱シール部における溶着部位は太線(強シールは実線、弱シールは破線)にて表している。
外袋10における外周の強シール部22における上部には輸液時に輸液スタンドに懸架するための開口部27(図1)が形成される。
図1において、28は外袋10を構成する上下のフィルム片18及び20を対向面にて剥離可能に溶着して構成される弱シール部である(図3も参照)。弱シール部28は外袋10の高さ方向の中間部位を全幅にわたり、即ち、外袋10の両側の強シール部22まで強シール部22と流密に一体連接するように延設されており、そのため、外袋10の内部空間は上下の第1及び第2の隔室29, 30に分離される。第1及び第2の隔室29, 30に液状薬剤が個々に(分離状態で)収容される。弱シール部28は、隔室29, 30の薬液収容部位を外部から加圧した場合に剥離させることができる。
内袋12は鉄分やマグネシウム分等の微量元素を収納するためのものである。内袋12は平たく細長い矩形をなし外袋10の内部における下側隔室30と排出ポート14との間に収容されている。内袋12は横長の矩形をなすが、隔室30と近接側である上辺部が強シール部34によって外袋10に連結・固着され、外袋10の内部の液圧に応動して開封が行われる。内袋12は多層ポリエチレンフィルムより成る基材層の上に環状ポリオレフィン系樹脂(COP)表面層(内袋12の内面となる層)を形成することができる。基材層を構成するポリエチレン層とCOP樹脂層とは樹脂間の強い親和性によりインフレーション成形による加熱下で強固に一体化した状態で袋状に成形することができる。図2に示すように、内袋12は上下のフィルム片36, 37よりなり、上下のフィルム片36, 37は全周に沿って溶着されており、この溶着部は弱シール部40として構成され、弱シール40によって内部が薬剤収容室42, 44を形成し、ここに微量元素含有液が別個に収容される。強シール部34は図1に示すように内袋12の外周の弱シール38の上辺に強溶着されていることから、隔室29, 30間の薬液の混合のため外力により弱シール部28の開通させたとき、内袋12の弱シール部38, 40も開通され、薬液の混合が行われる。尚、内袋12は一室のみのものであっても良い。
排出制御室46は下側隔室30と排出ポート14との間において外袋10の内部に形成され、かつ排出ポート14に常時開口している。また、内袋12との一般的位置関係であるが第2の隔室30と排出ポート14との間において排出制御室46の内側に内袋12は配置されている。
外袋10に対する内袋12の固定構造について更に説明すると、内袋12の上辺部は強シール部34と幅方向においては、強シール部22まで延設され、内袋12の両辺部とともに外袋10を構成する上下のフィルム片18及び20間に強シールされている。そのため、下側隔室30と排出制御室46とは分離された状態で外袋10に対する内袋12の固定が行なわれる。排出制御室46には小量の水が充填され、隔室29, 30への薬液充填後の輸液容器の滅菌時に、排出制御室46に充填された小量の水は蒸気となり、外袋10の内部において内袋12の外周部の効率的な滅菌に役立てることができる。また、内袋12の排出ポート14側では局部的強シール47により外袋10の内面が内袋12に弱シール部38において溶着され、この局部的強シール47は特許文献1にも記載されているように内袋12の開通をスムースに行わせるものである。
〔本発明における輸液容器の製造工程の説明〕
次に、図1−図3の輸液容器の整合工程を説明すると、上述のようにブロー成形された多層フィルムは平坦に圧潰されたシートとし、一旦ロールに巻き取られる。図5において、50はロールから引き出されたシートを示しており、シートは上下2層を重ねた状態となっている。シート50は中心線Lの片側のみ示す。シート50には図5に示すような繰り返しパターン(1リピートをaにて示す)で上下層の強溶着(剥離不能溶着)が行われる。また、1リピート長aが一枚の輸液バッグに相当する。中心線Lの反対側には同様なパターンが対称に形成される。即ち、1リピート長aから2枚の輸液バッグとなる袋状体を切り出すことができる。シート送り方向における所定位置に強シール用金型が設置され、同ステーションにおいて、1リピート長aにおける輪郭線52の外側においてシール金型間で上下層の剥離不能溶着(強シール)が行われ、輪郭線52の内側は溶着されず、ここが輸液バッグの空洞部として残ることになる。強シール用金型とは下流側の加工位置に弱シール金型が配置され、強溶着部にクロスする部位54にて弱シール金型は剥離可能溶着を実施し、これが製品の弱シール部28となる。そして、シート50からの切り出しステーションにおいては、輪郭線56に沿って袋状体58の切り出しが行われる。
図6(a)−(c)及び図7(d)−(e)により、袋状体58からの図1〜図3の輸液バッグの製造工程を概略的に順を追ってすると、図6(a)において部位58-1, 58-2, 58-3は最終製品(図1)において外周の強シール部22の部分となり、また、部位54は前述のように最終製品において弱シール28となる部位である。60, 62で示す部位は上下フィルム切片は未溶着の空洞部を呈し、空洞部60は製品の上側隔室29となる部分、空洞部62は製品の下側隔室30となりまた内袋12の収容部位となる部分である。溶着部位58-1, 56-2間における未溶着部位64は後工程で混注ポート16の装着のための開口部分である。溶着部位58-2, 58-3間における未溶着部位66は製品の上側隔室29となる空洞部60への輸液の導入のための開口部である。
図6(a)において、内袋12は既に完成した状態にある。内袋12は図1−図3を参照して既に説明のように、外周を弱シール部38とし、薬剤収容室42, 44に微量薬剤が収納済となっている。図6(a)では袋状体58は横置きとして図示されているが、内袋12は縦配置とし、内袋12の挿入は下側から行われるのが好ましい。即ち、空洞部62において袋状体58は両側から一対の吸盤(図示しない)に付着せしめられ、一対の吸盤を離間移動することにより空洞部62においてフィルムが開かれる。この状態において、内袋12はロボットによって矢印方向に送り出され、内袋12は空洞部62内における定位置14´にセットされる。
工程(b)は袋状体58への内袋12の挿入後の袋状体58に対する固着(強シール)工程を示す。この場合、袋状体58は、一連のシール金型(図示せず)間に順次位置され、一連のシール金型を順次上下合体させることにより、内袋12の弱シール部38の長手方向の両側辺部を袋状体58と一体化させる溶着部58-4及び58-5並びに製品(図1)における内袋12の下側隔室30側の側辺部を外袋10に一体化させる強シール部34が形成され、また、図6(a)の空洞部62は図6(b)では下側が閉じた空洞部70となる。溶着部58-5は溶着部58-3とで、開口部68を形成し、開口部68は製品の下側隔室30となる空洞部70に対する薬液充填のための開口部となる。また、溶着部58-4により排出ポートの装着部となる開口部72が形成される。
溶着部58-4, 58-5, 34の形成を行うシール金型は別個に構成されるが、特に、強シール部34の形成のためのシール金型の動作について付言すると、強シール部34の形成のためのシール金型は同シール部34の大きさに準じた大きさの加熱面を持っているが、外袋10を構成するフィルム片18, 20の内面と内袋12を構成するフィルム36, 37の外面とはポリエチレンフィルム同士であり、150℃程度の温度で、シール金型により図2及び図3に示す内袋12の隔室30の側への延出端部36-1, 37-1(図2)に至るまで強シールされ、強シール部34が形成される。シール金型は、当然に、内袋12を構成するフィルム片36, 37における隔室30の側への延出端部36-1, 37-1の内面同士も加圧するが、内袋12の内面を構成する環状ポリオレフィン系樹脂は溶融温度が高いため、150℃程度に加熱したシール金型では内袋12を構成するフィルム片36, 37における隔室30の側への延出端部36-1, 37-1は内面同士では溶着されない。また、内袋12の弱シール部38にもシール金型の熱が加わるが弱シール部38は弱シールのままである。
図6の工程(c)においては開口部64へ混注ポート16が挿入され、開口部64を形成する上下フィルムが混注ポート16の対抗面に溶着され、混注ポート16が全周にて封止されるようにされ、また、開口部72に排出ポート14が挿入され、周囲の袋状体58の未シール部位への排出ポート14の装着及び強シールがされ、開口部72を形成する上下フィルムが排出ポート14の対抗面に溶着され、排出ポート14が全周にて封止されるようにされる。混注ポート16及び排出ポート14の夫々の溶着の際、略半円形の加熱面を備えた上下一対のシール型を使用し、開口部64, 72を形成する上下のフィルムを混注ポート16、排出ポート14に押し付けシールを行う。この際に、フィルムが硬すぎると、フィルムが混注ポート16、排出ポート14に全周で沿い付け難くなり、シール漏れが発生し得る。従って、混注ポート16、排出ポート14の周面へ密着性の観点からはフィルムの硬さ(=弾性率)には上限があり、後述の通り700Mpa程度が上限となる。
図7(d)は製品(図1)において第1及び第2の隔室29, 30となる袋状体の空洞部60, 70への薬液の充填工程を示す。薬液充填のための袋状体58の開口部66, 68は横に開いていることから薬液の充填は図7(d)に示す通りに縦長の袋状体58を横にして立てた状態にて行われる。図8は袋状体58を横にして立てた状態にするための装置を模式的に示しており、図8に示すように袋状体58はその真ん中付近をロボットアーム75の先端の吸引保持カップ76に吸引保持される。ロボットアーム75を前進・下降させ、図8に示すように断面鍵形状のトレイ78まで運び、吸引保持カップ76の吸引を解除することにより袋状体58をトレイ78に立て掛けることができ、そして、吸引保持カップ76は初期位置まで後退される。保持トレイ78はロボットによるトレイ78への装着性のため余裕を持った溝幅を有しており、袋状体58は保持トレイ78に立て掛けられた状態ではトレイ78の断面鍵形状における高い側の壁面に寄り掛かるように幾分傾斜する。チャック80は図8の紙面の直交方向に離間して一対設けられ、各チャック80が一対の把持部80A, 80Bを有している。チャック80は通常は図8の紙面の直交方向に後退位置し、かつ夫々の一対の把持部80A, 80Bは開いているが、袋状体58がトレイ78に立て掛けられると図8の紙面に直交方向に所定位置まで前進する。そして、各チャック80の一対の把持部80A, 80Bは矢印のように向き合うように前進し、一対の把持部80A, 80B は80A’, 80B’に示すように袋状体58の上端における両側部を挟着すると共に、袋状体58は想像線58´で示すようにトレイ78上において直立位置される。一対のチャック80の把持部80A’, 80B’による袋状体58の上端における両側部での把持状態は図7(d)に示される。そしてトレイ78上での袋状体58の直立状態において空洞部60, 70への薬液の充填が行われる。即ち、図7(d)において、薬液充填パイプ82, 84が開口部60, 70に夫々正対するように位置される。薬液充填パイプ82, 84には夫々窒素置換用の窒素ガスパイプ86, 88が並設される。袋状体58を形成するフィルムは開口部60, 70を構成する部位で両側より吸引カップ(図示しない)に係合吸着され、夫々の吸引カップを引き離すことにより、袋状体58を形成するフィルムは両側に開かれ、開口部60, 70は大きく開かれる。そして、薬液の充填パイプ82, 84及び並設の窒素ガスパイプ86, 88が開口部60, 70を介して空洞部60, 70内へ下降導入される。そして窒素ガスの噴出により空洞部60, 70を窒素で置換しつつ空洞部60, 70への充填パイプ82, 84からの輸液導入が行われる。
薬液充填のために袋状体58はトレイ78にやや斜めに立て掛けるが、トレイ78の壁面より上の部位が図8の想像線58″のように折れ曲がってしまう(不正チャックとなる)ことがある。そのため、チャック80によりチャックされた袋状体58も折れ曲がったままとなり、このまま薬液の充填が実施され、窒素置換による空気の排出がうまく行かず、残留酸素量を所期のレベルに抑えることができない原因となる。このような袋状体58の折れ曲がりは本発明者等の検討によれば、スティフネステスタ法によるフィルムループ強度と強い相関があり、フィルムループ強度は500mN以上、好ましくは、570mN以上である。これによりチャックミスが生ぜず効率的な薬液充填を実現することができる。
図7(e)は薬液充填完了後に図7(d)の開口部60, 70を構成するフィルムの上縁対向面を強シールしまた局部的強シール47の形成が行われ、輸液バッグとして完成状態(図1)とする。

周知のブロー成形法により図4に示す6層構成の筒状フィルム(フィルム径は440mm)を得た。第1層は輸液バッグの外層のとなるポリエチレン層(ポリエチレンの密度=0.93であり、厚みは50μmであった。
第2層及び第4層はポリエチレンによる接着層(ポリエチレンの密度=0.89)であり、厚みは20μmであった。
第3層はEVОH樹脂によるガスバリア層であり、クラレ株式会社社製の商品名エバールのペレットより得たものであり、本層を構成するEVОH樹脂におけるエチレンの含有率は27モルであった。
第5層はポリエチレンによる輸液バッグの層(ポリエチレンの密度=0.9)である。
第6層はポリエチレンによる輸液バッグの最内層(ポリエチレンの密度=0.95)である。
第3層のガスガスバリア層の厚み(X)と第5層のポリエチレン層の厚み(Y)であるが、第3層のガスガスバリア層の厚みXは10μ、20μ、30μ、40μ、50μ、60μの6種類とし、ガスガスバリア層の厚みXに応じて、第5層(ポリエチレン層)の厚み(Y)を145μ、135μ、125μ、115μ、105μ、95μとし、即ち、X+Y=155μとし、6層全体の厚みが50+20×2+155+25=270μmと一定とした。このようにして、EVОH樹脂層を備えた6種類の多層フィルムより成るブロー成形による筒状フィルムを得た。この6種類のガスガスバリア層の各厚みXの各々の筒状フィルムについて以下の手順で袋状体の形成、薬液の充填、開口部の封止による輸液容器の形成、湿熱処理が行われたが、表に示す試験結果より、第3層はEVОH樹脂によるガスバリア層における厚みX=20μ、30μ、40μ、50μについて、夫々、本発明の第1,第2,第3,第4実施例とし、厚みX=10μ、60μについては、夫々、第1,第2比較例とする。
ブロー成形された多層フィルムをシート状(シート幅は440mm)に圧潰し、巻き取ることによりロールとし、ロールより引き出されたシートに対し、図5に示す長手方向のシート区分a毎に同図で示すパターンの強シール(シール温度は150℃)を行い、カットライン56によりカットすることにより、縦長380mmで、横幅280mmの袋状体58を得た。
ポリエチレン樹脂(密度=0.93)よりなる外層(厚み20μm)と、ポリエチレン樹脂(密度=0.94)より成る接着層(厚み90μm)と、環状ポリオレフィン系樹脂(日本ゼオン株式会社製の商品名ゼオネクスのペレット)より成る内層(厚み20μm)の3層よりなる多層フィルムを内層外周同士で剥離可能に溶着(溶着温度=170℃)し、剥離可能シール40により区画された隔室42, 44に夫々微量元素含有液を収容した縦長170mm,横幅縦長50mmの内袋12を得た。
内袋12を図6(a)に示すように、袋状体58内に導入し、一連のシール型(シール温度は150℃)でシールし、図6(b)に示す剥離不能溶着部34, 58-3, 58-4, 58-5, 58-6及び開口部64及び72 を得た。ついで、図6(c)に示すように袋状体58の開口部64及び72に夫々混注ポート16及び排出ポート14を挿入し、断面半円形のシール型(シール温度は150℃)により開口部64及び72を形成するフィルム部位を混注ポート16及び排出ポート14に押付け、溶着することにより、夫々、混注ポート16及び排出ポート14を袋状体58に一体化させ、薬液充填が完了した輸液バッグを得た。このときの開口部64及び72を形成するフィルム部位の混注ポート16及び排出ポート14に対する全周での密着性をシール強度、漏洩有無の目視判断、更には顕微鏡観察にて評価し、表1にシール性として結果を示す。
また、袋状体58を構成する多層フィルムのスティフネステスタ法によるフィルムループ強度試験を行なった。このフィルムループ強度試験はスティフネステスタ(東洋精機製作所製)により行なった。即ち、袋状体58、即ち滅菌前の輸液バッグ、についてそれを構成するプラスチックフィルムを幅15mm、長さ150mmの試験片Sに切断し、この試験片を図9のようにスティフネステスタのチャック90, 92間に長さ100mmのループを作るようにチャックし、スティフネステスタの加圧部94により押し潰し距離15mm、押し潰し速度3.3mm/秒でループを潰したときの反発力(単位はmN)として計測した。結果は表に示す。
また、袋状体58についてそれを構成するプラスチックフィルムを同じく、幅15mm、長さ150mmの試験片に切断し、この試験片を引張試験機(株式会社エーアンドディ製)により弾性率を測定した。引張試験条件はチャック間距離100mmにて装着し、引張り速度50mm/分であった。結果は表に示す。
図6(d)のように得られた袋状体58は図8に示すようにその中央部位を吸引カップにて吸着することによりロボットアームに保持され、トレイ78に立て掛けられた。このときの輸液バッグが折り曲らずに立った状態を維持するか否かを各サンプルについて官能評価し、結果を耐折れ曲り性として表1に示す。
トレイ78に立て掛けられた袋状体58はその両側上部においてチャック80にてチャックされ、図8の想像線58´のように直立され、ついで、袋状体58の開口部66, 68を吸引カップで拡開させつつ図7(d)の充填パイプ82, 84及び窒素ガスパイプ86, 88が開口部66, 68を介して、袋状体58の空洞部60, 70を臨むように挿入され、薬液の充填が行われた。空洞部60にはアミノ酸及びビタミン含有液が300ccが充填され、空洞部70にはブドウ糖及び電解質含有液がノズルより500cc導入され、その際の窒素ガスの噴出量は10〜16L/分であった。空洞部60, 70への薬液の充填後間をおかずに開口部66, 68を構成するフィルム部位はシール金型(シール温度150℃)で挟着され、図6(e)に示す輸液容器を得た。空洞部60, 68への薬液充填時に袋状体58は充填量の増大に順応して膨らむ必要が所要量の充填のためにはあり、スムースな膨らみが得られるか否かを充填性として官能的評価を行った。
図6(e)のようにして得られた輸液容器は、直後に、湿熱下の滅菌に付された。滅菌条件は、水蒸気温度は110℃、圧力は0.2atm、滅菌時間は25分であった。
滅菌後の輸液バッグは、間を置かずに、大きさ330mm×330mmのアルミニューム蒸着フィルム製の外装バッグに脱酸素剤(三菱ガス化学株式会社製の商品名“エージレス”)と共に封入した。
また、EVОH樹脂層を備えた実施例1〜4及び比較例1及び2の滅菌後の輸液バッグについて、それを構成する多層フィルムの酸素透過度をMOCON社製のOX-TRAN2/20を使用し、JIS K 7126 B法(等圧法)に準拠して行った。結果を図に示す。図において横軸は滅菌後の経過時間(日)、縦軸は酸素透過度(cc/m・day・atm)である。滅菌処理後12時間(半日)経過後の酸素透過度の値については表に示す。
比較例
ポリエチレン単層フィルム(ポリエチレン樹脂の密度は0.93)、厚み250μについて、上述実施例に関し記載と同一の手順にて輸液容器を製造した。これを比較例3とする。
ポリエチレン3層フィルム(樹脂の組成は密度0.95/0.92/0.95)、厚み300μについて、上述実施例に関し記載と同一の手順にて輸液容器を製造した。これを比較例4とする。
ポリプロピレン多層フィルム(シールドエアージャパン合同会社製の商品名“クライオバック”のもの)、厚み190μについて、上述実施例に関し記載と同一の手順にて輸液容器を製造した。これを比較例5とする。
表1における滅菌前及び滅菌後の弾性率及びループ強度の値は各実施例及び比較例について3個のデータの平均値である。
〔試験結果の検討〕
表1に示すようにEVОH樹脂によるガスバリア層を備えていても比較例1に示すように厚みX=10μの場合、ループ強度が小さいため、袋状体への輸液充填のため袋状体を横にしてトレイに立て掛けたときに折れ曲がりが生じやすく、不正チャックミスの発生が大きかった。X=20μの場合は、おおむね良好な耐折れ曲り性が得られたが頻発はしないが折れ曲りする場合もあったので、△の表示とした。また、比較例2の厚みX=60μの場合、ループ強度が大きいことから、充填性は当然良好であったが、フィルムの弾性率が大き過ぎるため(フィルムが硬すぎるため)、袋状体の膨らみが十分得られず、所期の量の薬液の充填に支障を来たし、また薬液のポート部材のシール時にその全周にて沿い付け密着させ難く、シール性が不良となりやすかった(×表示)。EVОH樹脂はポリエチレン樹脂等と比較して高価であることからコスト的な観点でもEVОH樹脂層の厚みに上限を設けることは有利である。これに対して、ガスガスバリア層の厚みX=20μ、30μ、40μ(実施例1〜実施例4)の場合は、滅菌前のループ強度が適正であることから充填性が良好であり、また弾性率も高すぎずポートシール性も充填性も良好であった。X=50μについては、概ね良好であるが、弾性率が高いため、充填性及びポートシール性について若干劣るため△の判断となっている。また、滅菌前の弾性率が高くても滅菌後の弾性率は従来のポリエチレン等による輸液バッグと同程度の適正な値に下がるため(弾性率は400mN以下)、製品の取扱性を損なうことはないことが判明した。特に、実施例2及び実施例3のガスガスバリア層の厚みX=30μ、40μの場合が充填性、ポートシール性が調和の観点からベストモードともいうべきものであった。表1より充填性及びポートシール性の良否は薬液充填時、換言すれば、滅菌前の弾性率に依拠しており弾性率は700mN以下が好ましい。
EVОH樹脂を備えない比較例3〜5の場合、弾性率が小さいことからポートシール性及び充填性の問題は当然皆無であったがループ強度が十分高くないため、耐折れ曲り性に関しては本発明実施例に対して明らかに劣っていることが分かる。
図10はEVОH樹脂によるガスバリア層を備えた比較例1及び2及び実施例1〜4の場合の酸素透過度の滅菌後経過時間経過(日)に対する変化を示す。12時間経過時の酸素透過度の値は表1に示す。本発明では12時間経過時の酸素透過度は最大でも300cc/m・day・atmであるが、日数が経過すると1.5cc/m・day・atm程度の殆ど同一値に低下することが分かる。
また、表2は実施例2のフィルムについて内寸110mm×235mmの袋状体を作成し、アスコルビン酸(115%液)を充填密封し、酸素残留量を0cc,1cc,2cc,3cc,5cc,10ccと変えたときの、規定充填量値300ccに対する%値にて表した実充填量値を初期時、25℃で1月経過時、40℃で1月経過時の夫々にて測定した結果を示す。酸素残留量を3cc以下に抑えることにより経時的品質劣化に関わらず100%以上の実充填量が1月経過時において得られることが分かる。
Figure 2020058886
Figure 2020058886
10…外袋
12…内袋
14…排出ポート
16…混注ポート
22…強シール部
26…ゴム栓
28…弱シール部
29…第1の隔室
30…第2の隔室
34…強シール部
38…内袋外周の弱シール部
40…内袋の内部を区画する弱シール部
46…排出制御室
50…多層筒状フィルムシート
58…袋状体
76…袋状体を保持するためのロボットの吸引カップ
78…袋状体を立て掛けるためのトレイ
80…チャック
80A, 80B…チャックの把持部
82, 84…薬液充填パイプ
86, 88…窒素ガスパイプ

Claims (2)

  1. ポリエチレン層を基材層として多層構造をなしかつ薬液充填性を確保するに十分高い弾性率値を有したプラスチックフィルムの少なくとも一層がガスバリヤ性のフィルム層より構成され、その外縁部に開口部を有した袋状体に、その開口部から不活性ガスと共に酸化を受けやすい薬液を充填かつ封止し、湿熱滅菌することにより構成される薬液バッグと、
    前記薬液バッグを脱酸素剤と共に収容するガスバリヤ性の外装バッグと、
    を具備して構成され、
    外装バッグに収容された湿熱滅菌された薬液バッグを構成する袋状体のプラスチックフィルムの弾性率は、湿熱滅菌前の薬液バッグを構成する袋状体の前記高いプラスチックフィルム弾性率値より低くかつ良好な製品取扱性を得ることができる弾性率値に低下(軟化)されていることを特徴とする輸液容器。
  2. ポリエチレン層を基材層とした多層構造をなしかつ薬液充填性を確保するに十分高い弾性率値を有したプラスチックフィルムの少なくとも一層がガスバリヤ性のフィルム層より構成される袋状体を準備し、前記袋状体の外縁部に設けられた開口部から酸化を受けやすい薬液を不活性ガスと共に充填かつ封止することにより薬液バッグに構成し、前記薬液バッグに湿熱滅菌を施し、湿熱滅菌に付すことにより前記プラスチックフィルムの弾性率を前記高い弾性率値から良好な製品取扱性を得ることができる低い弾性率値に低下(軟化)させ、その後薬液バッグをガスバリヤ性の外装バッグに脱酸素剤と共に収容することを特徴とする輸液容器の製造方法。
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