以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“S[1]”によって参照されるソース接続端子は(図1参照)、ソース接続端子S[1]と表記されることもあるし、端子S[1]と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。各実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。ラインは配線と同義である。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。周期的にレベルがローレベルとハイレベルとの間で切り替わる任意の信号又は電圧について、当該信号又は電圧の1周期分の区間の長さに対する、当該信号又は電圧のレベルがハイレベルとなる区間の長さの割合を、デューティと称する。FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
<<基本実施形態>>
本発明の基本実施形態を説明する。図1は、本発明の基本実施形態に係るモータ駆動システム1の構成図である。モータ駆動システム1は、ドライバIC10、MPU(micro-processing unit)20、外部接続装置30、モータ40及び出力トランジスタM[1]〜M[4]を備える。MPU20、外部接続装置30、モータ40及び出力トランジスタM[1]〜M[4]は、ドライバIC10の外部に設けられる。この内、MPU20及び出力トランジスタM[1]〜M[4]はドライバIC10に対し外付け接続される。外部接続装置30はMPU20に接続される。モータ40は、ドライバIC10の負荷としてのブラシ付き直流モータである。
ドライバIC10は、制御ロジック11及びゲート駆動回路12を備え、更に、モータ40のブラシの摩耗状態の検出及び判定に用いられる回路も備えているが、当該回路は図1では示していない(後に詳説する)。また、これらの他にも、ドライバIC10には、必要な電圧を生成するためのチャージポンプ回路や、各出力トランジスタでの過電流の発生有無を検出する回路などが設けられるが、それらの図示は省略している。
図2はドライバIC10の概略的な外観図である。ドライバIC10は、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品であり、ドライバIC10に設けられる各回路及び各素子は半導体にて集積化されて半導体集積回路を構成する。ドライバIC10の筐体には、ドライバIC10の外部に対して露出した外部端子が複数設けられている。尚、図2に示されるドライバIC10の外部端子の数は例示に過ぎない。
ドライバIC10に設けられる複数の外部端子には、ゲート接続端子G[1]〜G[4]と、ソース接続端子S[1]〜S[2]及びSCOMと、グランドに接続されるグランド端子GNDと、直流の所定の電源電圧VCC(例えば5V)を受けるための電源入力端子VINと、通信/制御端子群TMGと、が含まれる。端子群TMGは複数の外部端子から成る。制御ロジック11を含む、ドライバIC10内の任意の回路は電源電圧VCCに基づき駆動する。但し、ドライバIC10内の幾つかの回路は、電源電圧VCCと異なる他の直流電圧を駆動電圧として駆動しうる。
出力トランジスタM[1]〜M[4]は、夫々、Nチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。図示されていないが、各出力トランジスタを構成するMOSFETにおいて、MOSFETのソースからドレインに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードがMOSFETに対して並列に形成及び接続される。尚、出力トランジスタM[1]及びM[2]をPチャネル型のMOSFETにて構成する変形も可能である。
図1の構成では、出力トランジスタM[1]〜M[4]にてモータ40に対するフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)が構成されており、この際、出力トランジスタM[1]及びM[2]がハイサイドトランジスタとして機能し、出力トランジスタM[3]及びM[4]がローサイドトランジスタとして機能する。
詳細には、出力トランジスタM[1]及びM[2]の各ドレインは所定の正の電源電圧VPWR(例えば12V)が加わる電源ラインに接続され、出力トランジスタM[3]及びM[4]の各ソースはグランドに接続される。出力トランジスタM[1]のソースと出力トランジスタM[3]のドレインはノードNDaにて共通接続され、出力トランジスタM[2]のソースと出力トランジスタM[4]のドレインはノードNDbにて共通接続される。ノードNDa及びNDb間にモータ40が接続される。
ノードNDaからモータ40を介しノードNDbに向かう電流が流れるとき、モータ40は第1回転方向に回転し(この回転を正転と称する)、ノードNDbからモータ40を介しノードNDaに向かう電流が流れるとき、モータ40は第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転する(この回転を逆転と称する)。モータ40に流れる電流をモータ電流と称する。モータ電流において、ノードNDaからノードNDbに向かう電流の極性を正とし、その逆を負とする。また、モータ40の両端子間の電圧をモータ電圧と称する。モータ電圧はノードNDa及びNDb間の電圧に等しい。
出力トランジスタM[1]〜M[4]のゲートは、夫々、ドライバIC10のゲート接続端子G[1]〜G[4]に接続される。出力トランジスタM[1]及びM[2]のソースは、夫々、ドライバIC10のソース接続端子S[1]及びS[2]に接続される。出力トランジスタM[3]及びM[4]のソースはソース接続端子SCOMに共通接続される。
ゲート駆動回路12は、出力トランジスタM[1]〜M[4]のゲートを駆動する回路であって、ゲート接続端子G[1]〜G[4]と、ソース接続端子S[1]〜S[2]及びSCOMと、グランド端子GNDとに接続される。ゲート駆動回路12は、制御ロジック11の制御の下、自身に接続された各端子を通じて出力トランジスタM[1]〜M[4]のゲート電圧を個別に制御し、これによって、出力トランジスタM[1]〜M[4]の状態を個別に制御する。出力トランジスタM[1]〜M[4]の状態の制御には、出力トランジスタM[1]〜M[4]をオン状態にする制御、出力トランジスタM[1]〜M[4]をオフ状態にする制御が含まれる。出力トランジスタM[1]〜M[4]のゲート電圧を、夫々、VG[1]〜VG[4]にて表す。尚、ドライバIC10内において、チャージポンプ回路(不図示)等を利用し、電源電圧VPWRよりも高い電位を有する内部電源電圧が生成され、その内部電源電圧を用いることで、出力トランジスタM[1]及びM[2]をオン状態とすることができる。
制御ロジック11は、通信/制御端子群TMGを介しMPU20と双方向通信が可能である。制御ロジック11及びMPU20間の双方向通信は、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)により実現される。SPIによる双方向通信をSPI通信と称する。MPU20は、SPI通信用の信号以外にPWM信号(パルス幅変調信号)をドライバIC10に供給することができ、PWM信号が供給されているとき、制御ロジック11は、当該PWM信号に従って各出力トランジスタM[1]〜M[4]がスイッチングされるよう、ゲート駆動回路12を制御することができる。
ドライバIC10は、MPU20からの指示に従い、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40を、正転連続駆動方式、逆転連続駆動方式、正転PWM駆動方式及び逆転PWM駆動方式を含む複数の駆動方式の何れかにて駆動することができる。
正転連続駆動方式では、出力トランジスタM[1]〜M[4]が継続的に夫々、オン、オフ、オフ、オンに維持され(即ち、出力トランジスタM[1]及びM[4]が常時オンとされ且つ出力トランジスタM[2]及びM[3]が常時オフとされ)、モータ40を正転させるための正のモータ電流が継続的にトランジスタM[1]及びM[4]を通じてモータ40に供給される。
逆転連続駆動方式では、出力トランジスタM[1]〜M[4]が継続的に夫々、オフ、オン、オン、オフに維持され(即ち、出力トランジスタM[2]及びM[3]が常時オンとされ且つ出力トランジスタM[1]及びM[4]が常時オフとされ)、モータ40を逆転させるための負のモータ電流が継続的にトランジスタM[2]及びM[3]を通じてモータ40に供給される。
正転PWM駆動方式では、出力トランジスタM[2]及びM[4]が夫々オフ及びオンに維持された状態で、MPU20から供給される第1PWM信号に基づき、出力トランジスタM[1]及びM[3]がスイッチング駆動される。第1PWM信号はハイレベル又はローレベルをとる二値信号であり、第1PWM信号がハイレベルであるときには、出力トランジスタM[1]及びM[3]が夫々オン状態及びオフ状態とされ、第1PWM信号がローレベルであるときには、出力トランジスタM[1]及びM[3]が夫々オフ状態及びオン状態とされる。故に、正転PWM駆動方式では、第1PWM信号のデューティに応じた正のモータ電流が出力トランジスタM[1]、M[3]及びM[4]を通じてモータ40に流れ、モータ40が正転することになる。
逆転PWM駆動方式では、出力トランジスタM[1]及びM[3]が夫々オフ及びオンに維持された状態で、MPU20から供給される第2PWM信号に基づき、出力トランジスタM[2]及びM[4]がスイッチング駆動される。第2PWM信号はハイレベル又はローレベルをとる二値信号であり、第2PWM信号がハイレベルであるときには、出力トランジスタM[2]及びM[4]が夫々オン状態及びオフ状態とされ、第2PWM信号がローレベルであるときには、出力トランジスタM[2]及びM[4]が夫々オフ状態及びオン状態とされる。故に、逆転PWM駆動方式では、第2PWM信号のデューティに応じた負のモータ電流が出力トランジスタM[2]、M[3]及びM[4]を通じてモータ40に流れ、モータ40が逆転することになる。
外部接続装置30は、MPU20に接続された発光素子、表示装置等から成るが、外部接続装置30の利用方法等については後述される。
周知如く、ブラシ付き直流モータは、整流子、ブラシ、ロータ及びステータを備えて構成され、整流子及びブラシを介してロータのコイルに電流(モータ電流)を流すことでトルクを発生させる。この際、ブラシ付き直流モータでは、整流子とブラシが接触した状態で回転が行われるため(ロータが回転するため)ブラシが摩耗してゆく。以下に述べるブラシとは、特に記述無き限り、ブラシ付き直流モータであるモータ40に設けられたブラシを指す。
図3(a)を参照し、モータ駆動システム1には、評価信号取得部60及び摩耗判定部70が設けられ、それらを用いてブラシの摩耗状態を評価及び判定することができる。詳細な構成は後述されるが、図3(b)に示す如く、評価信号取得部60及び摩耗判定部70の双方がドライバIC10内に設けられても良いし、図3(c)に示す如く、評価信号取得部60をドライバIC10に設けつつ摩耗判定部70をマイコン20にて実現するようにしても良い。
出力トランジスタM[1]〜M[4]の何れかを通じてモータ40にモータ電流を供給している所定の通電条件下において、ブラシの摩耗の程度が相対的に小さいときには相対的に大きなモータ電流が流れることが期待され、ブラシの摩耗の程度が相対的に大きいときにはブラシ及び整流子間の接触抵抗の増大によりモータ電流が相対的に小さくなることが予想される。この特性を利用し、評価信号取得部60は、出力トランジスタM[1]〜M[4]の何れかを通じてモータ40にモータ電流を供給している所定の通電条件下においてモータ電流の大きさに依存する評価信号を取得し、摩耗判定部70は、その評価信号に基づきモータ40のブラシの摩耗状態を判定する。
上記所定の通電条件は、正転連続駆動方式によりモータ40にモータ電流が供給される正転連続通電条件、又は、逆転連続駆動方式によりモータ40にモータ電流が供給される逆転連続通電条件であると良い。但し、上記所定の通電条件は、正転PWM駆動方式によりモータ40にモータ電流が供給される正転PWM通電条件、又は、逆転PWM駆動方式によりモータ40にモータ電流が供給される逆転PWM通電条件でありうる。以下、評価信号として幾つかの種類の評価信号を挙げるが、何れの評価信号も、所定の通電条件下において取得される信号である。即ち例えば、出力トランジスタM[1]〜M[4]が全てオフとなっている条件下で評価信号取得部60にて取得される信号は評価信号ではない。
ブラシの摩耗状態は、ブラシの摩耗が相対的に小さい第1状態(以下、ブラシ良好状態と称する)と、ブラシの摩耗が相対的に大きい第2状態(以下、ブラシ不良状態と称する)と、に大別される。ブラシ良好状態及びブラシ不良状態を対比したとき、ブラシ不良状態の方がブラシ良好状態よりもブラシの摩耗の程度が大きく、ブラシ及び整流子間の接触抵抗が大きいことになる。摩耗判定部70は、上記評価信号に基づき、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属するのか否か(換言すれば、ブラシ良好状態とブラシ不良状態の何れに属するのか)を判定することができる。
以下、ブラシ摩耗に関わる構成の具体例及び動作例やドライバIC10の変形技術などを説明する実施形態として、複数の実施形態を説明する。上述の基本実施形態にて述べた事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施形態に適用され、後述の各実施形態において、基本実施形態で述べた事項と矛盾する事項については各実施形態での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施形態の内、任意の実施形態に記載した事項を、他の任意の実施形態に適用することもできる(即ち複数の実施形態の内の任意の2以上の実施形態を組み合わせることも可能である)。
尚、以下では、1以上4以下の任意の整数iを用いて、出力トランジスタM[1]〜M[4]の内の任意の出力トランジスタを記号“M[i]”にて参照することがある。出力トランジスタ以外の部品等についても同様とされうる。
<<第1実施形態>>
本発明に係る第1実施形態を説明する。第1実施形態では、所定の通電条件下において、モータ電流が流れる出力トランジスタM[i]のドレイン−ソース間電圧を評価電圧として取り扱い、評価電圧を示す信号を評価信号として用いる。出力トランジスタM[i]のドレイン−ソース間電圧は、出力トランジスタM[i]のソースの電位から見たドレインの電位を指す。モータ電流が出力トランジスタM[i]に流れるとき、当該モータ電流は出力トランジスタM[i]の第1電極及び第2電極間を通じて流れる。ここで、第1電極及び第2電極の内、一方はドレインであり、他方はソースである。以下、ドレイン−ソース間電圧を電圧VDSと表記することがある。
出力トランジスタM[i]の電圧VDSは、出力トランジスタM[i]のオン抵抗(即ちドレイン及びソース間抵抗)と出力トランジスタM[i]のドレイン電流との積で表されるので、モータ電流が出力トランジスタM[i]のドレイン電流として流れる環境下において、ブラシの摩耗の程度が大きいがためにモータ電流が小さくなると、それに連動して出力トランジスタM[i]の電圧VDSも小さくなる。第1実施形態では、この特性を注目し、電圧VDSを用いて摩耗判定を行う。
尚、出力トランジスタM[i]がオンとされているとき、出力トランジスタM[i]のゲート電圧は十分に高く、出力トランジスタM[i]のオン抵抗は一定であるとする。
第1実施形態は以下の実施例EX1_1〜EX1_5を含む。実施例EX1_1〜EX1_5において、電圧VDSに基づき摩耗判定を行う具体例を説明する。
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。図4は、実施例EX1_1に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。実施例EX1_1において、ドライバIC10内には、所定の判定電圧VREF1を生成する電圧源111と、比較器112とが設けられる。判定電圧VREF1は所定の正の直流電圧値を有する。
実施例EX1_1では、逆転連続通電条件にてモータ40が駆動されている状況が想定されており、このとき、出力トランジスタM[1]〜M[4]は、夫々、オフ、オン、オン、オフである。
図4の構成において、出力トランジスタM[3]のドレイン電圧が加わるソース接続端子S[1]が比較器112の反転入力端子に接続され、出力トランジスタM[3]のソース電圧が加わるソース接続端子SCOMが電圧源111の負側端子に接続され、電圧源111の正側端子が比較器112の非反転入力端子に接続されている。出力トランジスタM[3]のソース−ドレイン間電圧VDSが端子S[1]及びSCOM間に加わる。逆転連続通電条件において、出力トランジスタM[3]の電圧VDSが評価電圧として機能し、出力トランジスタM[3]の電圧VDSを示す信号が評価信号Sa1として機能する。図4の構成において、評価信号Sa1を伝搬する配線及び端子が評価信号取得部60を構成すると考えることができる。
電圧源111の挿入により比較器112の非反転入力端子には判定電圧VREF1が加わるため、比較器112では、出力トランジスタM[3]の電圧VDS(即ち評価電圧)が判定電圧VREF1と比較されることになり、その比較結果を示す判定信号Sa2が比較器112から出力される。即ち、比較器112は、出力トランジスタM[3]の電圧VDSが判定電圧VREF1よりも高いとき(換言すれば、評価電圧の大きさが判定電圧VREF1の値よりも大きいとき)ローレベルの判定信号Sa2を出力し、出力トランジスタM[3]の電圧VDSが判定電圧VREF1よりも低いとき(換言すれば、評価電圧の大きさが判定電圧VREF1の値よりも小さいとき)ハイレベルの判定信号Sa2を出力する。出力トランジスタM[3]の電圧VDSが判定電圧VREF1とちょうど一致するとき判定信号Sa2のレベルはローレベル又はハイレベルとなる。
図4の構成において、制御ロジック11は摩耗判定部70の機能を備える。即ち制御ロジック11は、逆転連続通電条件にてモータ40が駆動されている状況において、判定信号Sa2のレベルがローレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、判定信号Sa2のレベルがハイレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
判定電圧VREF1の値が可変となるように電圧源111が形成されていても良く、この場合、SPI通信を介したMPU20からの指示に基づき電圧源111での判定電圧VREF1の値が設定されても良い。判定電圧VREF1の調整を通じてブラシ摩耗の判定閾値を調整することができ、様々な種類のモータに適応できるようになる。
また、ノイズによる誤判定等の抑止を図るべく、比較器112と制御ロジック11との間に判定信号Sa2の高域周波数成分を低減するローパスフィルタを設け、当該低減後の判定信号Sa2を用いてブラシの摩耗状態の判定を行っても良い。或いは、当該ローパスフィルタの機能を制御ロジック11に持たせても良い。
また図4の構成では、出力トランジスタM[3]の電圧VDSを評価電圧として用いているが、出力トランジスタM[3]の電圧VDSの代わりに出力トランジスタM[2]の電圧VDSを評価電圧として用いても良い。
また、逆転PWM通電条件にてモータ40が駆動されている場合でも、実施例EX1_1の方法を適用可能である。但し、この場合には、出力トランジスタM[2]又はM[3]の電圧VDSの時間的な平均電圧を生成する平均化回路(不図示)をドライバIC10に追加し、得られた平均電圧を判定電圧VREF1と比較することで判定信号Sa2を生成すると良い。また、このときのPWM信号のデューティは或る定められたデューティとされる(判定電圧VREF1と比較される上記平均電圧はデューティに依存するため)。
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。実施例EX1_1では、モータ40の逆転時のみ適応した構成を示したが、当然ながら、モータ40の正転時に適応した構成もドライバIC10に設けることができる。即ち、図5に示す構成を採用可能である。図5は、実施例EX1_2に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。
実施例EX1_2において、ドライバIC10内には、モータ40の逆転時に用いられる電圧源111及び比較器112と、モータ40の正転時に用いられる電圧源113及び比較器114と、が設けられる。電圧源111及び比較器112は図4に示したものと同じであり、電圧源111及び比較器112と各端子及び出力トランジスタとの接続関係並びに電圧源111及び比較器112の動作は実施例EX1_1に示した通りである。
電圧源113は所定の判定電圧VREF2を生成する。判定電圧VREF2は所定の正の直流電圧値を有する。
図5の構成において、出力トランジスタM[4]のドレイン電圧が加わるソース接続端子S[2]が比較器114の反転入力端子に接続され、出力トランジスタM[4]のソース電圧が加わるソース接続端子SCOMが電圧源113の負側端子に接続され、電圧源113の正側端子が比較器114の非反転入力端子に接続されている。出力トランジスタM[4]のソース−ドレイン間電圧VDSが端子S[2]及びSCOM間に加わる。
実施例EX1_1にて上述したように、逆転連続通電条件においては、出力トランジスタM[3]の電圧VDSが評価電圧として機能し、出力トランジスタM[3]の電圧VDSを示す信号が評価信号Sa1として機能する。一方、正転連続通電条件においては、出力トランジスタM[4]の電圧VDSが評価電圧として機能し、出力トランジスタM[4]の電圧VDSを示す信号が評価信号Sa3として機能する。図5の構成において、評価信号Sa1及びSa3を伝搬する配線及び端子が評価信号取得部60を構成すると考えることができる。
逆転時に関わる電圧源111及び比較器112の動作は実施例EX1_1に示した通りであるので、正転時に関わる電圧源113及び比較器114の動作を説明する。電圧源113の挿入により比較器114の非反転入力端子には判定電圧VREF2が加わる。このため、比較器114では、出力トランジスタM[4]の電圧VDS(即ち評価電圧)が判定電圧VREF2と比較されることになり、その比較結果を示す判定信号Sa4が比較器114から出力される。即ち、比較器114は、出力トランジスタM[4]の電圧VDSが判定電圧VREF2よりも高いとき(換言すれば、評価電圧の大きさが判定電圧VREF2の値よりも大きいとき)ローレベルの判定信号Sa4を出力し、出力トランジスタM[4]の電圧VDSが判定電圧VREF2よりも低いとき(換言すれば、評価電圧の大きさが判定電圧VREF2の値よりも小さいとき)ハイレベルの判定信号Sa4を出力する。出力トランジスタM[4]の電圧VDSが判定電圧VREF2とちょうど一致するとき判定信号Sa4のレベルはローレベル又はハイレベルとなる。
図5の構成において、制御ロジック11は摩耗判定部70の機能を備える。即ち、逆転連続通電条件にてモータ40が駆動されている状況において、制御ロジック11は、判定信号Sa2に注目し、判定信号Sa2のレベルがローレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、判定信号Sa2のレベルがハイレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。同様に、正転連続通電条件にてモータ40が駆動されている状況において、制御ロジック11は、判定信号Sa4に注目し、判定信号Sa4のレベルがローレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、判定信号Sa4のレベルがハイレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
電圧源111と同様に(実施例EX1_1参照)、判定電圧VREF2の値が可変となるように電圧源113が形成されていても良く、この場合、SPI通信を介したMPU20からの指示に基づき電圧源113での判定電圧VREF2の値が設定されても良い。判定電圧VREF2の調整を通じてブラシ摩耗の判定閾値を調整することができ、様々な種類のモータに適応できるようになる。
また、ノイズによる誤判定等の抑止を図るべく、比較器114と制御ロジック11との間に判定信号Sa4の高域周波数成分を低減するローパスフィルタを設け、当該低減後の判定信号Sa4を用いてブラシの摩耗状態の判定を行っても良い。或いは、当該ローパスフィルタの機能を制御ロジック11に持たせても良い。
判定電圧VREF2の値は、電圧源111が生成する判定電圧VREF1と一致していても良いし、不一致でも良い。両者が一致する場合にあっては、単一の電圧源を電圧源111及び113として兼用して良い。また、単一の比較器を時分割で用いることにより単一の比較器を比較器112及び114として兼用するようにしても良い。この場合、モータ40の逆転時おいては当該単一の比較器にて出力トランジスタM[3]の電圧VDSと判定電圧VREF1とが比較されて当該単一の比較器から判定信号Sa2が出力されるように、且つ、モータ40の正転時おいては当該単一の比較器にて出力トランジスタM[4]の電圧VDSと判定電圧VREF2とが比較されて当該単一の比較器から判定信号Sa4が出力されるように、当該単一の比較器への入力を切り替えれば良い。
また図5の構成では、正転時において、出力トランジスタM[4]の電圧VDSを評価電圧として用いているが、出力トランジスタM[4]の電圧VDSの代わりに出力トランジスタM[1]の電圧VDSを評価電圧として用いても良い。逆転時についての同様の変形は実施例EX1_1にて述べた通りである。
また、正転PWM通電条件にてモータ40が駆動されている場合でも、実施例EX1_2の方法を適用可能である。但し、この場合には、出力トランジスタM[1]又はM[4]の電圧VDSの時間的な平均電圧を生成する平均化回路(不図示)をドライバIC10に追加し、得られた平均電圧を判定電圧VREF2と比較することで判定信号Sa4を生成すると良い。また、このときのPWM信号のデューティは或る定められたデューティとされる(判定電圧VREF2と比較される上記平均電圧はデューティに依存するため)。逆転時についての同様の変形は実施例EX1_1にて述べた通りである。
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。図6は、実施例EX1_3に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。実施例EX1_3において、ドライバIC10内には演算増幅器121とA/D変換器122とが設けられ、ドライバIC10に対して抵抗123及び124が外付け接続される。
実施例EX1_3では、逆転連続通電条件にてモータ40が駆動されている状況が想定されており、このとき、出力トランジスタM[1]〜M[4]は、夫々、オフ、オン、オン、オフである。
図6の構成において、出力トランジスタM[3]のドレイン電圧が加わるソース接続端子S[1]が演算増幅器121の非反転入力端子に接続され、演算増幅器121の反転入力端子は抵抗123を介してグランドに接続されると共に抵抗124を介して自身の出力端子に接続される。抵抗123及び124はドライバIC10の外部に設けられているので、演算増幅器121の反転入力端子と抵抗123との間にはドライバIC10の1つの外部端子(例えば端子SCOMであって良い)が介在し、演算増幅器121の出力端子と抵抗124との間にはドライバIC10の他の1つの外部端子が介在する。
演算増幅器121と抵抗123及び124とで増幅回路が形成される。出力トランジスタM[3]の電圧VDSは当該増幅回路にて増幅されて、増幅された出力トランジスタM[3]の電圧VDSが演算増幅器121の出力端子に表れる。逆転連続通電条件において、演算増幅器121の出力端子に表れる、増幅された出力トランジスタM[3]の電圧VDSが評価電圧として機能し、その評価電圧を示す信号が評価信号Sa5として機能する。図6の構成において、演算増幅器121並びに抵抗123及び124を含む評価信号Sa5を生成及び伝搬する回路が評価信号取得部60を構成すると考えることができる。
A/D変換器122は、アナログの評価電圧を示す評価信号Sa5を、アナログ−デジタル変換することによりデジタル評価信号Sa6を生成する。デジタル評価信号Sa6は、評価信号Sa5による評価電圧の値を示すデジタル信号である。A/D変換器122も評価信号取得部60の構成要素に含まれると考えるようにしても良い。デジタル評価信号Sa6はMPU20に伝送される。この際、デジタル評価信号Sa6はSPI通信にてドライバIC10からMPU20に伝送されて良い。但し、デジタル評価信号Sa6を伝送するための専用端子を、ドライバIC10の外部端子として設けるようにしても良い。
図6の構成において、MPU20は摩耗判定部70の機能を備える。即ちMPU20は、所定の判定電圧値を保持しており、デジタル評価信号Sa6にて示される評価電圧の値(即ち評価電圧の大きさ)を判定電圧値と比較する。そして、MPU20は、逆転連続通電条件にてモータ40が駆動されている状況において、デジタル評価信号Sa6にて示される評価電圧の値が判定電圧値以上であるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、デジタル評価信号Sa6にて示される評価電圧の値が判定電圧値より小さいときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
また、ノイズによる誤判定等の抑止を図るべく、演算増幅器121並びに抵抗123及び124により構成される増幅回路とA/D変換器122との間に、評価信号Sa5の高域周波数成分を低減するローパスフィルタを設けても良い。或いは、当該ローパスフィルタの機能を増幅回路又はMPU20に持たせても良い。
また図6の構成では、出力トランジスタM[3]の電圧VDSを評価電圧として用いているが、出力トランジスタM[3]の電圧VDSの代わりに出力トランジスタM[2]の電圧VDSを評価電圧として用いても良い。
また、逆転PWM通電条件にてモータ40が駆動されている場合でも、実施例EX1_3の方法を適用可能である。但し、この場合には、出力トランジスタM[2]又はM[3]の電圧VDSの時間的な平均電圧を生成する平均化回路(不図示)をドライバIC10に追加し、当該平均電圧を示す信号又は当該平均電圧の増幅電圧を示す信号を評価電圧Sa5としてA/D変換器122に入力すると良い。また、このときのPWM信号のデューティは或る定められたデューティとされる(判定電圧値と比較される上記平均電圧の値はデューティに依存するため)。演算増幅器121並びに抵抗123及び124により構成される増幅回路に上記平均化回路の機能を持たせても良い。
また抵抗123及び124をドライバIC10内に設けるようにしても良い。演算増幅器121を含んで構成される増幅回路の増幅率は任意であり、1でも良い。増幅率が1であるとき抵抗123及び124は不要であり、演算増幅器121にてボルテージフォロアが形成されても良い。
[実施例EX1_4]
実施例EX1_4を説明する。実施例EX1_3では、モータ40の逆転時のみ適応した構成を示したが、当然ながら、モータ40の正転時にも適応するようにドライバIC10に構成しても良い。例えば図7に示す構成を採用可能である。図7は、実施例EX1_4に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。
実施例EX1_4に係るドライバIC10は、実施例EX1_3に係るドライバIC10に対しマルチプレクサ125を追加したものであり、その他の点については、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、実施例EX1_3の記載が実施例EX1_4にも適用される。
実施例EX1_4に係る図7の構成では、出力トランジスタM[3]のドレイン電圧が加わるソース接続端子S[1]又は出力トランジスタM[4]のドレイン電圧が加わるソース接続端子S[2]がマルチプレクサ125を介して選択的に演算増幅器121の非反転入力端子に接続される。制御ロジック11によりマルチプレクサ125の接続状態が制御される。即ち、モータ40を逆転させているときには演算増幅器121の非反転入力端子に対して端子S[1]が接続されるように、且つ、モータ40を正転させているときには演算増幅器121の非反転入力端子に対して端子S[2]が接続されるように、制御ロジック11はマルチプレクサ125を制御する。モータ40を逆転させているときとは、逆転連続通電条件又は逆転PWM通電条件にてモータ40を駆動するときを指し、モータ40を正転させているときとは、正転連続通電条件又は正転PWM通電条件にてモータ40を駆動するときを指す。
演算増幅器121並びに抵抗123及び124にて構成される増幅回路は、出力トランジスタM[3]又はM[4]の電圧VDSを増幅し、増幅された出力トランジスタM[3]又はM[4]の電圧VDSが演算増幅器121の出力端子に表れる。モータ40を逆転させているときには、演算増幅器121の出力端子に、増幅された出力トランジスタM[3]の電圧VDSが評価電圧として表れ、その評価電圧を示す信号が評価信号Sa5として機能する。モータ40を正転させているときには、演算増幅器121の出力端子に、増幅された出力トランジスタM[4]の電圧VDSが評価電圧として表れ、その評価電圧を示す信号が評価信号Sa5として機能する。図7の構成において、演算増幅器121、抵抗123及び124並びにマルチプレクサ125を含む、評価信号Sa5を生成及び伝搬する回路が評価信号取得部60を構成すると考えることができる。
実施例EX1_3で述べたように、A/D変換器122は、アナログの評価電圧を示す評価信号Sa5を、アナログ−デジタル変換することによりデジタル評価信号Sa6を生成する。以下では、説明の便宜上、モータ40を正転させているときに得られる信号Sa5及びSa6を夫々記号“Sa5_F”及び“Sa6_F”にて参照し、モータ40を逆転させているときに得られる信号Sa5及びSa6を夫々記号“Sa5_R”及び“Sa6_R”にて参照する。
図7の構成において、MPU20は摩耗判定部70の機能を備える。即ちMPU20は、所定の判定電圧値を保持しており、デジタル評価信号Sa6_F又はSa6_Rにて示される評価電圧の値(即ち評価電圧の大きさ)を当該判定電圧値と比較する。そして、MPU20は、デジタル評価信号Sa6_F又はSa6_Rにて示される評価電圧の値が当該判定電圧値以上であるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、デジタル評価信号Sa6_F又はSa6_Rにて示される評価電圧の値が当該判定電圧値より小さいときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
また図7の構成では、正転時において、出力トランジスタM[4]の電圧VDSを評価電圧として用いているが、出力トランジスタM[4]の電圧VDSの代わりに出力トランジスタM[1]の電圧VDSを評価電圧として用いても良い。逆転時についての同様の変形は実施例EX1_3にて述べた通りである。
また図7では、基本的に、逆転連続通電条件又は正転連続通電条件にてモータ40が駆動されるときに適応した構成が示されているが、実施例EX1_3に示したように逆転PWM通電条件でモータ40が駆動されるときにも、また正転PWM通電条件でモータ40が駆動されるときにも実施例EX1_4に示した構成を利用できる。但し、この場合には、モータ電流が流れる出力トランジスタM[i]の電圧VDSの時間的な平均電圧を生成する平均化回路(不図示)をドライバIC10に追加し、当該平均電圧を示す信号又は当該平均電圧の増幅電圧を示す信号を評価電圧Sa5としてA/D変換器122に入力すると良い。また、このときのPWM信号のデューティは或る定められたデューティとされる(判定電圧値と比較される上記平均電圧の値はデューティに依存するため)。演算増幅器121並びに抵抗123及び124により構成される増幅回路に上記平均化回路の機能を持たせても良い。
また図7の構成では、評価信号Sa5_Fを生成するための回路と評価信号Sa5_Rを生成するための回路が共通の回路にて構成されているが、前者の回路と後者の回路を別個に設けるようにしても良い。この場合、価信号Sa5_Fを生成するための回路及び評価信号Sa5_Rを生成するための回路と、A/D変換器122との間に、マルチプレクサを配置すれば良い。
[実施例EX1_5]
実施例EX1_5を説明する。実施例EX1_5では、実施例EX1_4に示した構成(図7)が用いられる。また、図8(a)に示す如く、MPU20には不揮発性メモリであるメモリ21(保持部)が設けられているものとする。但しメモリ21はMPU20に対して外付け接続されたメモリであっても良い。
MPU20は、或るタイミングt1又はタイミングt1直後において、タイミングt1にて得られたデジタル評価信号Sa6に基づく基準電圧値Pa[t1]をメモリ21に書き込む。ここで書き込まれる基準電圧値Pa[t1]は、タイミングt1でのデジタル評価信号Sa6_Fである信号Sa6_F[t1]に基づく基準電圧値Pa[t1]_F、又は、タイミングt1でのデジタル評価信号Sa6_Rである信号Sa6_R[t1]に基づく基準電圧値Pa[t1]_Rである(図8(b)参照)。
その後、タイミングt2において、デジタル評価信号Sa6_Fが信号Sa6_F[t2]として取得される、又は、デジタル評価信号Sa6_Rが信号Sa6_R[t2]として取得される。信号Sa6_F[t2]にて示される評価電圧の値(即ち、モータ40が正転しているタイミングt2での評価電圧の値)を対比電圧値Pa[t2]_Fにて表し、信号Sa6_R[t2]にて示される評価電圧の値(即ち、モータ40が逆転しているタイミングt2での評価電圧の値)を対比電圧値Pa[t2]_Rにて表す。
タイミングt1は、任意のタイミングであって良いが、モータ40がモータ駆動システム1に設置された直後のタイミング(ブラシの摩耗は全く又は殆ど無いタイミング)であると良い。タイミングt2はタイミングt1の後の任意のタイミングである。尚、メモリ21に基準電圧値Pa[t1]_F及びPa[t1]_Rの双方が保持されても良い。この場合、t1は時間幅を有した概念と解され、基準電圧値Pa[t1]_F及びPa[t1]_Rの元となる信号Sa6_F[t1]及びSa6_R[t1]は別々の時刻で得られるものとする。
基準電圧値Pa[t1]_Fは、信号Sa6_F[t1]にて示される評価電圧の値(即ち、モータ40が正転しているタイミングt1での評価電圧の値;初期値)から所定の判定電圧値だけ低い値を持つ(図8(c)参照)。MPU20は、タイミングt2にて対比電圧値Pa[t2]_F(即ち、モータ40が正転しているタイミングt2での評価電圧の値)を取得した後、対比電圧値Pa[t2]_Fを基準電圧値Pa[t1]_Fと比較し、対比電圧値Pa[t2]_Fが基準電圧値Pa[t1]_F以上であればブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、対比電圧値Pa[t2]_Fが基準電圧値Pa[t1]_Fよりも小さければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
或いは、基準電圧値Pa[t1]_Fは、信号Sa6_F[t1]にて示される評価電圧の値(即ち、モータ40が正転しているタイミングt1での評価電圧の値;初期値)そのものであっても良い。この場合、MPU20は、タイミングt2にて対比電圧値Pa[t2]_F(即ち、モータ40が正転しているタイミングt2での評価電圧の値)を取得した後、対比電圧値Pa[t2]_Fを基準電圧値Pa[t1]_Fと比較し、対比電圧値Pa[t2]_Fが基準電圧値Pa[t1]_Fより所定の判定電圧値以上小さければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定し、そうでなければブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定する。
基準電圧値Pa[t1]_Rは、信号Sa6_R[t1]にて示される評価電圧の値(即ち、モータ40が逆転しているタイミングt1での評価電圧の値;初期値)から所定の判定電圧値だけ低い値を持つ。MPU20は、タイミングt2にて対比電圧値Pa[t2]_R(即ち、モータ40が逆転しているタイミングt2での評価電圧の値)を取得した後、対比電圧値Pa[t2]_Rを基準電圧値Pa[t1]_Rと比較し、対比電圧値Pa[t2]_Rが基準電圧値Pa[t1]_R以上であればブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、対比電圧値Pa[t2]_Rが基準電圧値Pa[t1]_Rよりも小さければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
或いは、基準電圧値Pa[t1]_Rは、信号Sa6_R[t1]にて示される評価電圧の値(即ち、モータ40が逆転しているタイミングt1での評価電圧の値;初期値)そのものであっても良い。この場合、MPU20は、タイミングt2にて対比電圧値Pa[t2]_R(即ち、モータ40が逆転しているタイミングt2での評価電圧の値)を取得した後、対比電圧値Pa[t2]_Rを基準電圧値Pa[t1]_Rと比較し、対比電圧値Pa[t2]_Rが基準電圧値Pa[t1]_Rより所定の判定電圧値以上小さければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定し、そうでなければブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定する。
このように、実施例EX1_5では、評価電圧の大きさ(即ち、出力トランジスタM[i]を通じてモータ40にモータ電流が供給されているときの出力トランジスタM[i]の電圧DSの大きさ)がブラシの摩耗の進行に伴って低下してゆくことに注目し、タイミングt1での評価電圧の大きさに基づく基準電圧値(Pa[t1]_F、Pa[t1]_R)を、いわば初期値として、メモリ21に保持させておく。そして、その後のタイミングt2での評価電圧の大きさ(Pa[t2]_F、Pa[t2]_R)を基準電圧値と比較することで、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属するか否かを判定する。
<<第2実施形態>>
本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態では、モータ電流を測定するための電流センサを用い、所定の通電条件下で当該電流センサにより測定されたモータ電流の大きさを示す信号を評価信号として用いる。ブラシの摩耗の程度が大きくなるとモータ電流が相対的に小さくなるため、モータ電流の大きさから摩耗の程度の判定が可能となる。
第2実施形態は以下の実施例EX2_1〜EX2_3を含む。実施例EX2_1〜EX2_3において、モータ電流に基づき摩耗判定を行う具体例を説明する。
[実施例EX2_1]
実施例EX2_1を説明する。図9は、実施例EX2_1に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。出力トランジスタM[3]及びM[4]のソースが共通接続されるノードとグランドとの間にセンス抵抗RSNSが挿入され、モータ電流はセンス抵抗RSNSを介して流れる。センス抵抗RSNSにて電流センサが構成される。但し、モータ電流が流れる電流経路上に直列にセンス抵抗RSNSが挿入される限りセンス抵抗RSNSの配置位置は任意であって良い(後述の実施例EX2_2及びEX2_3においても同様)。しかしながら、出力トランジスタM[3]及びM[4]のソース電位はノードNDa及びNDbでの電位の如く電源電圧VPWRの電位及びグランド電位間でスイッチングしないため、出力トランジスタM[3]及びM[4]のソース及びグランド間にセンス抵抗RSNSに配置することが電流検出の精度向上にとって好ましく(スイッチングノイズが混入しにくい)、後段回路を低電圧用の素子にて形成できることからも好ましい。尚、第1実施形態は、出力トランジスタM[i]のオン抵抗をセンス抵抗RSNSとして用いた実施形態であると解することもできる。
実施例EX2_1において、ドライバIC10内には、前処理部141と、比較器142と、所定の判定電圧VREF3を生成する電圧源143とが設けられる。判定電圧VREF3は所定の正の直流電圧値を有する。
センス抵抗RSNSの両端間電圧(即ち、モータ電流に応じてセンス抵抗RSNSに発生する電圧降下)を示す信号Sb0は、ドライバIC10に設けられた2つの外部端子を通じて前処理部141に入力される。図9の構成において、その2つの外部端子はソース接続端子SCOM及びグランド端子GNDである。前処理部141は、信号Sb0のノイズを低減するためのフィルタ回路、信号Sb0を増幅するための増幅回路、及び、増幅後の信号Sb0の絶対値を得る絶対値回路などを含む。所定の通電条件下において、前処理部141は、信号Sb0に基づきモータ電流の大きさを示す電圧信号である評価信号Sb1を生成する。評価信号Sb1の電圧値とモータ電流の大きさとは正比例の関係にあり、モータ電流の大きさが増加するにつれて評価信号Sb1の電圧値も単調増加するものとする。図9の構成において、評価信号Sb1を生成する前処理部141が評価信号取得部60を構成すると考えることができる。センス抵抗RSNSも評価信号取得部60の構成要素に含まれると解することも可能である。
比較器142において、反転入力端子には評価信号Sb1が入力され、非反転入力端子には判定電圧VREF3が印加される。故に、比較器142は、評価信号Sb1の電圧と判定電圧VREF3との高低関係に応じた判定信号Sb2を出力する。後の説明からも明らかとなるが、判定電圧VREF3の値は、ブラシの摩耗程度の大小を峻別するための境界の判定電流値を表すことになる。
比較器142は、評価信号Sb1の電圧が判定電圧VREF3より高いとき(換言すれば、モータ電流の大きさが判定電圧VREF3にて示される判定電流値より大きいとき)、ローレベルの判定信号Sb2を出力し、評価信号Sb1の電圧が判定電圧VREF3より低いとき(換言すれば、モータ電流の大きさが判定電圧VREF3にて示される判定電流値より小さいとき)、ハイレベルの判定信号Sb2を出力する。評価信号Sb1の電圧が判定電圧VREF3とちょうど一致するとき判定信号Sb2のレベルはローレベル又はハイレベルとなる。
図9の構成において、制御ロジック11は摩耗判定部70の機能を備える。即ち制御ロジック11は、所定の通電条件でモータ40が駆動されている状況において、判定信号Sb2のレベルがローレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、判定信号Sb2のレベルがハイレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
判定電圧VREF3の値が可変となるように電圧源143が形成されていても良く、この場合、SPI通信を介したMPU20からの指示に基づき電圧源143での判定電圧VREF3の値が設定されても良い。判定電圧VREF3の調整を通じてブラシ摩耗の判定閾値を調整することができ、様々な種類のモータに適応できるようになる。
また、ノイズによる誤判定等の抑止を図るべく、比較器142と制御ロジック11との間に判定信号Sb2の高域周波数成分を低減するローパスフィルタを設け、当該低減後の判定信号Sb2を用いてブラシの摩耗状態の判定を行っても良い。高域周波数成分の低減機能が前処理部141にて十分に備わっている場合には、この限りではない。
評価信号Sb1を得る際の通電条件及びブラシの摩耗状態の判定を行う際の通電条件は、基本的には正転連続通電条件又は逆転連続通電条件であるが、正転PWM通電条件又は逆転PWM通電条件であっても良い。但し、正転PWM通電条件又は逆転PWM通電条件にて評価信号Sb1を得る際には、センス抵抗RSNSの両端間電圧の時間的な平均電圧を生成する機能を前処理部141に設けておき、当該平均電圧に基づき評価信号Sb1を生成すると良い。また、このときのPWM信号のデューティは或る定められたデューティとされる(上記平均電圧はデューティに依存するため)。
[実施例EX2_2]
実施例EX2_2を説明する。図10は、実施例EX2_2に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。実施例EX2_1(図9)では、前処理部141に加えて比較器142及び電圧源143がドライバIC10に設けられていたのに対し、実施例EX2_2(図10)では、前処理部141に加えて比較器142及び電圧源143の代わりにA/D変換器145がドライバIC10に設けられている。この点を除き、実施例EX2_1に係る構成と実施例EX2_2に係る構成は共通であり、共通する部分の説明を省略する。
A/D変換器145は、モータ電流の大きさを表すアナログの評価信号Sb1を、アナログ−デジタル変換することによりデジタル評価信号Sb3を生成する。デジタル評価信号Sb3はモータ電流の値を表すデジタル信号である。実施例EX2_2においては、A/D変換器145も評価信号取得部60の構成要素に含まれると考えるようにしても良い。デジタル評価信号Sb3はMPU20に伝送される。この際、デジタル評価信号Sb3はSPI通信にてドライバIC10からMPU20に伝送されて良い。但し、デジタル評価信号Sb3を伝送するための専用端子を、ドライバIC10の外部端子として設けるようにしても良い。
図10の構成において、MPU20は摩耗判定部70の機能を備える。即ちMPU20は、所定の判定電流値を保持しており、デジタル評価信号Sb3にて示されるモータ電流の大きさを判定電流値と比較する。そして、MPU20は、所定の通電条件でモータ40が駆動されている状況において、デジタル評価信号Sb3にて示されるモータ電流の大きさが判定電流値以上であるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、デジタル評価信号Sb3にて示されるモータ電流の大きさが判定電流値より小さいときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。ここにおける通電条件は正転連続通電条件又は逆転連続通電条件であり、また正転PWM通電条件又は逆転PWM通電条件でありうることは実施例EX2_1に示した通りである。
[実施例EX2_3]
実施例EX2_3を説明する。実施例EX2_3では、実施例EX2_2に示した構成(図10)が用いられる。また、図11(a)に示す如く、MPU20には不揮発性メモリであるメモリ21(保持部)が設けられているものとする。但しメモリ21はMPU20に対して外付け接続されたメモリであっても良い。
MPU20は、或るタイミングt1又はタイミングt1直後において、タイミングt1にて得られたデジタル評価信号Sb3である信号Sb3[t1]に基づく基準電流値Pb[t1]をメモリ21に書き込む(図11(b)参照)。その後、タイミングt2において、デジタル評価信号Sb3が信号Sb3[t2]として取得される。信号Sb3[t1]、Sb3[t2]は、夫々、タイミングt1、t2におけるモータ電流の大きさを表す。また信号Sb3[t2]にて示されるモータ電流の値を対比電流値Pb[t2]と称する。タイミングt1及びt2ではモータ40が共通の通電条件にて駆動されているものとする。例えば、タイミングt1及びt2ではモータ40が、共通して正転連続通電条件にて駆動されているものとする、又は、共通して逆転連続通電条件にて駆動されているものとする。
タイミングt1は、任意のタイミングであって良いが、モータ40がモータ駆動システム1に設置された直後のタイミング(ブラシの摩耗は全く又は殆ど無いタイミング)であると良い。タイミングt2はタイミングt1の後の任意のタイミングである。
基準電流値Pb[t1]は、信号Sb3[t1]にて示されるモータ電流の大きさ(即ちタイミングt1でのモータ電流の大きさ;初期値)から所定の判定電流値だけ低い値を持つ(図11(c)参照)。MPU20は、タイミングt2にて対比電流値Pb[t2](即ちタイミングt2でのモータ電流の大きさ)を取得した後、対比電流値Pb[t2]を基準電流値Pb[t1]と比較し、対比電流値Pb[t2]が基準電流値Pb[t1]以上であればブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、対比電流値Pb[t2]が基準電流値Pb[t1]よりも小さければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
或いは、基準電流値Pb[t1]は、信号Sb3[t1]にて示されるモータ電流の大きさ(即ちタイミングt1でのモータ電流の大きさ;初期値)そのものであっても良い。この場合、MPU20は、タイミングt2にて対比電流値Pb[t2](即ちタイミングt2でのモータ電流の大きさ)を取得した後、対比電流値Pb[t2]を基準電流値Pb[t1]と比較し、対比電流値Pb[t2]が基準電流値Pb[t1]より所定の判定電流値以上小さければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定し、そうでなければブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定する。
このように、実施例EX2_3では、所定の通電条件下におけるモータ電流の大きさがブラシの摩耗の進行に伴って低下してゆくことに注目し、タイミングt1でのモータ電流の大きさに基づく基準電流値(Pb[t1])を、いわば初期値として、メモリ21に保持させておく。そして、その後のタイミングt2でのモータ電流の大きさ(Pb[t2])を基準電流値と比較することで、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属するか否かを判定する。
<<第3実施形態>>
本発明に係る第3実施形態を説明する。第3実施形態では、所定の通電条件でのモータ40の両端子間電圧(即ちノードNDa及びNDb間の電圧)を評価電圧として取り扱い、評価電圧を示す信号を評価信号として用いる。既に述べたように、モータ40の両端子間電圧(即ちノードNDa及びNDb間の電圧)はモータ電圧と称される。
ブラシの摩耗の程度が大きくなると、ブラシ及び整流子間の接触抵抗が大きくなり、所定の通電条件下でのモータ電圧が大きくなる。第3実施形態では、この特性を注目し、モータ電圧を用いて摩耗判定を行う。
第3実施形態は以下の実施例EX3_1〜EX3_3を含む。実施例EX3_1〜EX3_3において、モータ電圧に基づき摩耗判定を行う具体例を説明する。
[実施例EX3_1]
実施例EX3_1を説明する。図12は、実施例EX3_1に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。実施例EX3_1において、ドライバIC10内には、前処理部161と、比較器162と、所定の判定電圧VREF4を生成する電圧源163とが設けられる。判定電圧VREF4は所定の正の直流電圧値を有する。
モータ電圧を示す信号Sc0が端子S[1]及びS[2]間が加わって前処理部161に入力される。前処理部161は、信号Sc0のノイズを低減するためのフィルタ回路、信号Sc0を増幅するための増幅回路、及び、増幅後の信号Sc0の絶対値を得る絶対値回路などを含む。所定の通電条件下において、前処理部161は、信号Sc0に基づきモータ電圧の大きさを示す電圧信号である評価信号Sc1を生成する。評価信号Sc1の電圧値とモータ電圧の大きさとは正比例の関係にあり、モータ電圧の大きさが増加するにつれて評価信号Sc1の電圧値も単調増加するものとする。図12の構成において、評価信号Sc1を生成する前処理部161が評価信号取得部60を構成すると考えることができる。
比較器162において、非反転入力端子には評価信号Sc1が入力され、反転入力端子には判定電圧VREF4が印加される。故に、比較器162は、評価信号Sc1の電圧と判定電圧VREF4との高低関係に応じた判定信号Sc2を出力する。後の説明からも明らかとなるが、判定電圧VREF4の値は、ブラシの摩耗程度の大小を峻別するための境界の判定電圧値を表すことになる。
比較器162は、評価信号Sc1の電圧が判定電圧VREF4より低いとき(換言すれば、モータ電圧の大きさが判定電圧VREF4にて示される判定電圧値より小さいとき)、ローレベルの判定信号Sc2を出力し、評価信号Sc1の電圧が判定電圧VREF4より高いとき(換言すれば、評価電圧としてのモータ電圧の大きさが判定電圧VREF4にて示される判定電圧値より大きいとき)、ハイレベルの判定信号Sc2を出力する。評価信号Sc1の電圧が判定電圧VREF4とちょうど一致するとき判定信号Sc2のレベルはローレベル又はハイレベルとなる。
図12の構成において、制御ロジック11は摩耗判定部70の機能を備える。即ち制御ロジック11は、所定の通電条件でモータ40が駆動されている状況において、判定信号Sc2のレベルがローレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、判定信号Sc2のレベルがハイレベルであるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
判定電圧VREF4の値が可変となるように電圧源163が形成されていても良く、この場合、SPI通信を介したMPU20からの指示に基づき電圧源163での判定電圧VREF4の値が設定されても良い。判定電圧VREF4の調整を通じてブラシ摩耗の判定閾値を調整することができ、様々な種類のモータに適応できるようになる。
また、ノイズによる誤判定等の抑止を図るべく、比較器162と制御ロジック11との間に判定信号Sc2の高域周波数成分を低減するローパスフィルタを設け、当該低減後の判定信号Sc2を用いてブラシの摩耗状態の判定を行っても良い。高域周波数成分の低減機能が前処理部161にて十分に備わっている場合には、この限りではない。
評価信号Sc1を得る際の通電条件及びブラシの摩耗状態の判定を行う際の通電条件は、基本的には正転連続通電条件又は逆転連続通電条件であるが、正転PWM通電条件又は逆転PWM通電条件であっても良い。但し、正転PWM通電条件又は逆転PWM通電条件にて評価信号Sc1を得る際には、モータ電圧の時間的な平均電圧を生成する機能を前処理部161に設けておき、当該平均電圧に基づき評価信号Sc1を生成すると良い。また、このときのPWM信号のデューティは或る定められたデューティとされる(上記平均電圧はデューティに依存するため)。
[実施例EX3_2]
実施例EX3_2を説明する。図13は、実施例EX3_2に関わる動作の実現に寄与するドライバIC10の一部構成を、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40と共に示した図である。実施例EX3_1(図12)では、前処理部161に加えて比較器162及び電圧源163がドライバIC10に設けられていたのに対し、実施例EX3_2(図13)では、前処理部161に加えて比較器162及び電圧源163の代わりにA/D変換器165がドライバIC10に設けられている。この点を除き、実施例EX3_1に係る構成と実施例EX3_2に係る構成は共通であり、共通する部分の説明を省略する。
A/D変換器165は、モータ電圧の大きさを表すアナログの評価信号Sc1を、アナログ−デジタル変換することによりデジタル評価信号Sc3を生成する。デジタル評価信号Sc3はモータ電圧の値を表すデジタル信号である。実施例EX3_2においては、A/D変換器165も評価信号取得部60の構成要素に含まれると考えるようにしても良い。デジタル評価信号Sc3はMPU20に伝送される。この際、デジタル評価信号Sc3はSPI通信にてドライバIC10からMPU20に伝送されて良い。但し、デジタル評価信号Sc3を伝送するための専用端子を、ドライバIC10の外部端子として設けるようにしても良い。
図13の構成において、MPU20は摩耗判定部70の機能を備える。即ちMPU20は、所定の判定電圧値を保持しており、デジタル評価信号Sc3にて示されるモータ電圧の大きさを判定電圧値と比較する。そして、MPU20は、所定の通電条件でモータ40が駆動されている状況において、デジタル評価信号Sc3にて示されるモータ電圧の大きさが判定電圧値以下であるときには、ブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、デジタル評価信号Sc3にて示されるモータ電圧の大きさが判定電圧値より大きいときには、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。ここにおける通電条件は正転連続通電条件又は逆転連続通電条件であり、また正転PWM通電条件又は逆転PWM通電条件でありうることは実施例EX3_1に示した通りである。
[実施例EX3_3]
実施例EX3_3を説明する。実施例EX3_3では、実施例EX3_2に示した構成(図13)が用いられる。また、図14(a)に示す如く、MPU20には不揮発性メモリであるメモリ21(保持部)が設けられているものとする。但しメモリ21はMPU20に対して外付け接続されたメモリであっても良い。
MPU20は、或るタイミングt1又はタイミングt1直後において、タイミングt1にて得られたデジタル評価信号Sc3である信号Sc3[t1]に基づく基準電圧値Pc[t1]をメモリ21に書き込む(図14(b)参照)。その後、タイミングt2において、デジタル評価信号Sc3が信号Sc3[t2]として取得される。信号Sc3[t1]、Sc3[t2]は、夫々、タイミングt1、t2におけるモータ電圧の大きさを表す。また信号Sc3[t2]にて示されるモータ電圧の値を対比電圧値Pc[t2]と称する。タイミングt1及びt2ではモータ40が共通の通電条件にて駆動されているものとする。例えば、タイミングt1及びt2ではモータ40が、共通して正転連続通電条件にて駆動されているものとする、又は、共通して逆転連続通電条件にて駆動されているものとする。
タイミングt1は、任意のタイミングであって良いが、モータ40がモータ駆動システム1に設置された直後のタイミング(ブラシの摩耗は全く又は殆ど無いタイミング)であると良い。タイミングt2はタイミングt1の後の任意のタイミングである。
基準電圧値Pc[t1]は、信号Sc3[t1]にて示されるモータ電圧の大きさ(即ちタイミングt1でのモータ電圧の大きさ;初期値)から所定の判定電圧値だけ高い値を持つ(図14(c)参照)。MPU20は、タイミングt2にて対比電圧値Pc[t2](即ちタイミングt2でのモータ電圧の大きさ)を取得した後、対比電圧値Pc[t2]を基準電圧値Pc[t1]と比較し、対比電圧値Pc[t2]が基準電圧値Pc[t1]以下であればブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定し、対比電圧値Pc[t2]が基準電圧値Pc[t1]よりも大きければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定する。
或いは、基準電圧値Pc[t1]は、信号Sc3[t1]にて示されるモータ電圧の大きさ(即ちタイミングt1でのモータ電圧の大きさ;初期値)そのものであっても良い。この場合、MPU20は、タイミングt2にて対比電圧値Pc[t2](即ちタイミングt2でのモータ電圧の大きさ)を取得した後、対比電圧値Pc[t2]を基準電圧値Pc[t1]と比較し、対比電圧値Pc[t2]が基準電圧値Pc[t1]より所定の判定電圧値以上大きければブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定し、そうでなければブラシの摩耗状態がブラシ良好状態に属すると判定する。
このように、実施例EX3_3では、所定の通電条件下におけるモータ電圧の大きさがブラシの摩耗の進行に伴って低下してゆくことに注目し、タイミングt1でのモータ電圧の大きさに基づく基準電圧値(Pc[t1])を、いわば初期値として、メモリ21に保持させておく。そして、その後のタイミングt2でのモータ電圧の大きさ(Pc[t2])を基準電圧値と比較することで、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属するか否かを判定する。
<<第4実施形態>>
本発明に係る第4実施形態を説明する。制御ロジック11又はMPU20により、ブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定されることを、ブラシ不良判定と称する。制御ロジック11にてブラシの摩耗状態がブラシ不良状態に属すると判定されたときには、その旨がMPU20にて伝達される。MPU20は、上述の任意の方法を用いてブラシ不良判定が成されたとき、報知部としての機能を有する外部接続装置30に所定の摩耗報知を行わせることができる。摩耗報知は、報知対象者に対する報知であり、報知対象者はモータ駆動システム1のユーザ及び管理者を含む。後述されるようにモータ駆動システム1が車両に搭載される場合にあっては、報知対象者は車両の搭乗者(運転者を含む)及び車両の管理者を含み、車両の管理者は車両の修理等を行う人間を含み得る。
ブラシ不良判定が成されたことを報知対象者が知覚できる限り、摩耗報知の態様は任意である。例えば、外部接続装置30が発光素子を含む場合、摩耗報知にて、当該発光素子を所定の発光パターンにて発光させても良い。或いは、外部接続装置30が液晶ディスプレイ等の表示装置を含む場合、摩耗報知にて、当該表示装置に所定の摩耗報知用画像を表示させても良い。
摩耗報知が行われることで、報知対象者はモータ40のメンテナンス時期を容易に知ることができる。
[第5実施形態]
本発明に係る第5実施形態を説明する。直流モータをフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)で駆動する構成例を上述したが、直流モータを駆動するための回路構成はこれに限定されない。例えば、図15に示す如く、モータ40として4つのモータ40[1]〜40[4]を駆動する回路構成が採用されて良い。
図15の構成では、1以上4以下の各整数iについて、電源電圧VPWRが加わる端子と出力トランジスタM[i]のドレインとの間にブラシ付き直流モータであるモータ40[i]が直列に挿入される。出力トランジスタM[1]〜M[4]の各ソースはグランドに接続されると共にソース接続端子SCOMに接続される。
ゲート駆動回路12は、制御ロジック11の制御の下で、個別にゲート電圧VG[1]〜VG[4]を制御することで出力トランジスタM[1]〜M[4]の状態を制御し、これによってモータ40[1]〜40[4]を個別に駆動することができる。
モータ40[1]〜40[4]に対し個別にブラシの摩耗状態の判定を行って良い。即ち、出力トランジスタM[i]を継続的にオンに維持する連続通電条件又は出力トランジスタM[i]をスイッチング駆動するPWM通電条件にてモータ電流を出力トランジスタM[i]を通じてモータ40[i]に供給し、そのときにおける出力トランジスタM[i]の電圧VDS、モータ電流(モータ40[i]に流れる電流)又はモータ電圧(モータ40[i]の両端子間電圧)に基づき、モータ40[i]のブラシの摩耗状態を判定することができ、この判定をモータごとに行うことができる。また、この判定に第1〜第3実施形態にて示した任意の方法を利用できる。
図15の構成に第1実施形態の方法を適用する場合、出力トランジスタM[i]の電圧VDSを示す信号を処理する処理回路(例えば、図4の構成では電圧源111及び比較器112に相当)を、出力トランジスタごとにドライバIC10に設けても良いし、その処理回路を1つだけ設けて、単一の処理回路を時分割で用いて出力トランジスタM[1]〜M[4]間で共用するようにしても良い。
同様に、図15の構成に第2実施形態の方法を適用する場合、モータ電流を示す信号を処理する処理回路(例えば、図9の構成では前処理部141、比較器142及び電圧源143に相当)を、出力トランジスタごとにドライバIC10に設けても良いし、その処理回路を1つだけ設けて、単一の処理回路を時分割で用いて出力トランジスタM[1]〜M[4]間で共用するようにしても良い。
同様に、図15の構成に第3実施形態の方法を適用する場合、モータ電圧を示す信号を処理する処理回路(例えば、図12の構成では前処理部161、比較器162及び電圧源163に相当)を、出力トランジスタごとにドライバIC10に設けても良いし、その処理回路を1つだけ設けて、単一の処理回路を時分割で用いて出力トランジスタM[1]〜M[4]間で共用するようにしても良い。
また、第4実施形態に示した方法をモータ40[1]〜40[4]の夫々に適用し、上記摩耗報知をモータごとに行っても良い。
[第6実施形態]
本発明に係る第6実施形態を説明する。図16に示す如く、自動車などの車両300に対して本発明の実施形態に係るモータ駆動システム310を搭載することができる。モータ駆動システム310は、図1のモータ駆動システム1と同じものであって良いし、図1のモータ駆動システム1に対し、第5実施形態(図15参照)に示した変形を適用したものであって良い。
モータ駆動システム310におけるモータ40は、車両300に搭載され且つモータを必要とする任意の車両部品に用いられ、当該車両部品としては、冷却用ファン、空気調和機、パワーウィンドウ及びスライドドアなどがある。
例えば、パワーウィンドウをモータ40で駆動する際、パワーウィンドウの駆動開始直後及び駆動終了直前では、正転又は逆転PWM駆動方式によりモータ40への供給電力を相対的に小さくしてパワーウィンドウの動きをゆっくりとしたものとし、パワーウィンドウの駆動の中間部分では、正転又は逆転連続駆動方式によりモータ40への供給電力を相対的に大きくしてパワーウィンドウを素早く動かす、といったことがMPU20の制御の下で行われる。このような使用形態では、正転又は逆転連続駆動方式によりモータ40の駆動が行われている区間に上述の評価信号の取得及びブラシの摩耗状態の判定を行うと良い。
また、モータ駆動システム310は、ドライバIC10、出力トランジスタM[1]〜M[4]及びモータ40の組を複数備えているものであっても良く、このとき、MPU20は、複数の組に設けられた複数のモータ40のブラシの摩耗状態を一括して管理及び認識するものであって良い。これについて、上記複数のモータ40を第1〜第nのモータ40と称して説明を加える。nは2以上の任意の整数である。
モータ駆動システム310では第1〜第nのモータ40に対して個別に上述してきた方法によるブラシの摩耗状態判定が行われ、MPU20は、モータ40ごとに、モータ40のブラシの摩耗状態がブラシ良好状態及びブラシ不良状態の何れに属しているのかを認識し、上記メモリ21に保持する。そして例えば、第1及び第2のモータ40のみに対してブラシ不良判定が成された場合、MPU20は、第1及び第2のモータ40を特定した摩耗報知を外部接続装置30に行わせることができる。例えば、第1及び第2のモータ40が、車両部品としての空気調和機における送風機用のモータ及び風向切り替え用のモータであるとき、文字「エアコンエラー」を外部接続装置30としての表示装置に表示させる摩耗報知を行っても良いし、より詳細に文字「エアコンの送風機エラー」及び「エアコンの風向切り替え器エラー」を上記表示装置に表示させる摩耗報知を行っても良い。
この後、車両300が故障調査又は修理を担う業者に持ち込まれたとき、当該業者の故障調査者は、摩耗報知を参照することで、何れのモータに不具合が生じているのかを容易に知ることができる。また、故障調査者は、車両300に設けられた専用端子にテスターを接続してメモリ21の保持データを読み出すことで、何れのモータに不具合が生じているのかを詳細且つ確実に知ることができ、必要なモータ40の交換作業を素早く行うことが可能となる。
[第7実施形態]
本発明に係る第7実施形態を説明する。第7実施形態では、上述の基本実施形態及び第1〜第6実施形態に適用可能な応用技術や変形技術を説明する。
出力トランジスタM[1]〜M[4]はドライバIC10に内蔵されるものであっても良い。
上述の各実施形態では、モータ電流の大きさに依存する評価信号に基づき、モータ40のブラシの摩耗状態を2段階で分類判定しているが、当該評価信号に基づき、モータ40のブラシの摩耗状態を3段階以上で分類判定するようにしても良い。
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
出力トランジスタM[i]はMOSFET以外の種類のトランジスタであっても良く、例えば、バイポーラトランジスタ、接合型FET(電界効果トランジスタ)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として構成されていても良い。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
[発明の考察]
上述の各実施形態にて具体化された本発明について考察する。
本発明に係るモータドライバ装置は、ブラシ付きの直流モータを駆動するためのモータドライバ装置において、出力トランジスタを通じて前記直流モータにモータ電流を供給している所定の通電条件下において前記モータ電流の大きさに依存する評価信号を取得する評価信号取得部と、前記評価信号に基づき前記直流モータのブラシの摩耗状態を判定する摩耗判定部と、を備えたことを特徴とする。
これにより、ブラシ付き直流モータのブラシの摩耗状態を良好に判定することが可能となり、当該判定結果を外部に対して報知するといったことも可能となる。結果、管理者等がブラシの摩耗状態を頻繁に確認する必要がなくなる、といったことが期待される。
上述の各実施形態において、本発明に係るモータドライバ装置の構成要素には、少なくともドライバIC10が含まれ、MPU20も含まれ得る。出力トランジスタM[i]又は外部接続装置30も、本発明に係るモータドライバ装置の構成要素に含まれると解することも可能である。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。