JP2020056021A - オレフィン重合用触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】 オレフィン重合触媒として有効に機能し、特にエチル分岐が少ないポリエチレンを製造可能とする触媒を創出する。【解決手段】 一般式(1)(式中現れる各記号の意味は、本明細書にて定義されるとおりである)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする、α−オレフィン重合用触媒である。【選択図】 なし

Description

本発明は、特定の構造を有する錯体を含む新規な触媒に関するものであり、より詳しくは、窒素を含む複素環構造を有する三座配位子による錯体を必須成分とした触媒組成物と、それによるオレフィン重合に関するものである。
オレフィン重合体は、樹脂材料の中でも物性や成形性などの諸性質に優れ、経済性や環境問題適合性なども高く、非常に汎用されかつ重要な産業資材である。
しかし、オレフィン重合体は極性基を持たないため、他の材料との接着性や印刷適性、又はフィラーなどとの相溶性のような物性が要求される用途への適用は困難であるなど、課題も多くある。特に、ポリエチレン樹脂に関しては、エチル分岐などの短鎖分岐に由来して、密度が低下して機械物性に劣り、単体で用いる場合はもちろんのこと、他の樹脂との組成物として用いる場合においても、その応用範囲は限られたものとなる。
それらを解決するため、近年において、いわゆるポストメタロセンと称される、後周期遷移金属錯体触媒の開発、及びこれによるオレフィン重合体の物性制御が行われてきている。オレフィン重合用のポストメタロセン触媒としては、例えば、ジイミノピリジン骨格を有する三座配位鉄錯体、ビスアリールイミノピリジン鉄など、鉄触媒が用いられ、これら触媒によるエチレン重合結果が知られている(特許文献1〜3、非特許文献1)。
三座配位子は数多く知られており、多種の触媒反応に用いられている。例えば、カルバゾール骨格を有する化合物や、イソインドリン骨格を有するものも知られている(非特許文献2、3、4)。
特表2006−501067号公報 特許第4108141号公報 特表2002−513823号公報
Organometallics, 2005, 24, 4878-4881 Tetrahedron 66 (2010) 7707-7719 J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 13538-13541 J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 4972-4983
鉄錯体を用いたエチレン重合については、上記のように報告がされているが、特許文献1では、短鎖分岐を少なくするために亜鉛化合物の添加が必須であり、添加していない重合の場合、エチル分岐は多い値となっている。また、非特許文献1では、得られるポリエチレンはMMAOを用いた場合で、エチル分岐が9〜17個/1000Cであり、満足のいくものが得られてはいなかった。特許文献3は、PP重合評価も行っているが、得られたポリマーの詳細は不明である。非特許文献2、3のようなメタロセン以外の配位子を有する遷移金属錯体においても、重合の評価を詳細に行った例は知られていない。このように、オレフィン重合における分岐の発生を制御し、諸性質に優れたポリオレフィン、特にエチル分岐の少ないポリエチレンを製造可能とする触媒の開発が望まれている。
本発明の目的は、諸性質に優れたオレフィン系重合体、特に分岐量が少ないエチレン重合体の製造を可能とする、オレフィン重合触媒として有効に機能する触媒系を創出することである。本発明者らは、上記の課題の解決を目指して鋭意検討した結果、特定の遷移金属錯体を含有する触媒が、上記の目的に適う重合用触媒の成分として機能することを見出し、本発明を創出するに至った。
そして、本発明の基本発明(第一発明)を構成する触媒は、下記一般式(1)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする、α−オレフィン重合用触媒である。
Figure 2020056021

[式(1)中、
、R、R11、R12、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示し、
及びCは、炭素原子であり、
及びZは、各々独立して、直接結合であるか、又は不飽和結合若しくはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、ZとC、ZとC、CとA、又はAとCの結合は、少なくとも1つが不飽和結合を形成していてもよく、
Aは、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1〜4の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、
中の2点、Z中の2点、A中の2点、ZとA又はZとAの組は、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
20、R21は、各々独立して、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示し、
Mは、周期表8〜10族の遷移金属からなる群より選択される金属原子を示し、
Qは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、Qを含む環状構造内には、不飽和結合を含んでいてもよく、
Yは、窒素原子又はリン原子であり、
nは、1又は2であり、
mは、1から3の整数であり、
pは、0又は1であり、
Xは、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜10のエステル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基、及びハロゲンからなる群より選択される置換基を示す。]
本発明の触媒又は触媒組成物により、諸性質に優れたオレフィン系重合体、特に分岐量が少ないエチレン重合体を効率的に製造することが達成される。本発明の金属錯体によるポリオレフィン重合用触媒又は触媒組成物、及び、それを用いたオレフィンの重合方法は、工業的な観点から、非常に有用である。
以下においては、本発明の触媒又は触媒組成物及びそれを用いたオレフィン重合体の製造方法について、項目ごとに、詳細に説明する。
<遷移金属錯体>
(1)基本構成
本発明における触媒又は触媒組成物は、前記一般式(1)で示される、三座配位子を有する遷移金属錯体を含むものである。ここで、当該三座配位子は、3つのヘテロ環構造を有し、それらが各々有するヘテロ原子を遷移金属の配位座とすることができる、複素環含有化合物である。すなわち、当該複素環含有化合物は、窒素原子又はリン原子を含有する4〜7員のヘテロ環を構成要素とする単環又は縮合環(第一の環)が、直接又はリンカーを介して、2つの窒素原子、窒素原子及び酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選択されるヘテロ原子の組を有する環構造(第二、第三の環)と2箇所において結合している。第一の環の種類としては、窒素原子又はリン原子を含有する4〜7員のヘテロ環である限り特に制限されない。ヘテロ環部分が5員環であるものが好ましい。また、カルバゾールのような縮合環となっているものを採用することもできる。このとき、縮合環を構成する各々の環は、リンカーとして第二、第三の環との結合点を兼ねていてもよい。第一の環が成す構造の非限定的な例としては、ピロール、ピペリジン、モルホリン、ホスホール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、カルバゾール、イソインドリン、アクリジンなどが挙げられる。第二、第三の環がとる構造の種類としては、当該ヘテロ原子の組が、炭素原子を1つ介して存在する5〜7員の環であれば特に制限はない。5員環のものが好ましい。窒素原子のうち1つは、隣接する炭素原子と二重結合を形成していてもよい。そのような環構造の非限定的な基として、ジヒドロオキサゾリル基、オキサゾリル基、ジヒドロ−1,3−オキサジニル基、テトラヒドロ−1,3−オキサゼピニル基(以上窒素原子と酸素原子の組合せ);ジヒドロイミダゾリル基、テトラヒドロピリミジニル基、ヘキサヒドロピリミジニル基(以上2つの窒素原子);ジヒドロチアゾリル基、ジヒドロ1,3−チアジニル基、テトラヒドロ−1,3−チアゼピニル基(以上窒素原子と硫黄原子の組合せ)等が挙げられる。
「炭化水素基」は、特定された数の炭素原子を有する炭素骨格からなる構造を意味し、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ベンジルやビフェニルなどこれらの基が2つ以上結合してなる構造が含まれる。また、本明細書において「炭化水素基」は通常1価の基を指すが、2価以上の価数を有することが特記されている場合は、当該「炭化水素基」は、上記の基又は構造中の水素原子が価数に応じて少なくとも1個、結合手で置き換わった構造であることを示す。
炭素数1〜30の炭化水素基は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基である。アルキル基、シクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、exo−ノルボルニル基、endo−ノルボルニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5−デシル基などである。これらの中で、好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基である。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シンナミル基、スチリル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられ、これらのアリール基の芳香環に置換基が存在していてもよい。存在させうる置換基の例としては、アルキル基、アリール基、融合アリール基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルブテニル基、トリル基、キシリル基、p−エチルフェニル基などである。これらの中で、好ましいアリール基としては、フェニル基、置換フェニル基であり、置換フェニル基の置換基として、好ましい具体例は、メチル基、エチル基、t-ブチル、フェニル基であり、更に、特に好ましくは、メチル基である。また、ジフェニルメチル基なども挙げることができる。
「ハロゲン原子」は、周期表第17族に属する元素を意味し、具体的にはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、好ましくは塩素である。ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基状の水素原子を、1つ以上ハロゲン原子で置換した構造が挙げられる。具体的に好ましい例として、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
「アルコキシ基」は、末端に酸素原子が結合した炭化水素基のうち、芳香環に当該酸素が結合していないものを意味する。好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数1〜30の炭化水素基を、アルコキシ基で置換した構造が挙げられる。具体的に好ましい例として、メトキシメチル基又はメトキシエチル基等が挙げられる。
「シリル基」は、ケイ素原子を末端に有する置換基を意味し、炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基は、好ましくは、炭素数3〜18の炭化水素で置換されたシリル基であり、好ましい具体例は、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基である。これらの中で、更に好ましい置換基としては、トリメチルシリル基又はジメチルフェニルシリル基であり、特に好ましくは、トリメチルシリル基である。
Xは、中心金属Mに結合する1価の基であり、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜10のエステル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基、ハロゲンからなる群より選択された置換基を示す。
「酸素原子若しくは窒素原子を含む」とは、炭化水素基の末端以外のメチレン基(−CH−)が1つ以上、酸素原子若しくは窒素原子により置き換えられたことを意味する。但し、隣接する2以上の炭素原子が置き換えられることはない。窒素原子で置き換えられた場合は、2級アミノ基又は3級アミノ基を構成することができる。
炭素数1〜10のアルコキシ基は、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
炭素数6〜20のアリーロキシ基は、好ましくは、炭素数6〜12のアリーロキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ基及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基、3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ基又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基、3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ基である。
炭素数2〜10のアシル基は、好ましくは、炭素数2〜8のアシル基であり、好ましい具体例は、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ヴァレリル基、イソヴァレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基としては、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基であり、特に好ましくは、ベンゾイル基である。
炭素数2〜10のアシルオキシ基は、RC(=O)O−(ここで、Rは炭素数1〜9の炭化水素基を表す)で表される基であり、好ましくは、炭素数2〜8のアシルオキシ基である。この場合、好ましいRとして炭素数1〜7の炭化水素基が例示される。
炭素数2〜10のエステル基は、好ましくは、炭素数2〜8のエステル基であり、好ましい具体例は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、(4−グリシジルブトキシ)カルボニル基、フェノキシカルボニル基、スクシン酸無水物基、スクシン酸イミド基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、スクシン酸無水物基が挙げられ、特に好ましくは、メトキシカルボニル基、スクシン酸無水物基である。
炭素数1〜12の置換アミノ基の好ましい具体例は、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、モルホリニル基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基は、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基である。
一般式(1)におけるYは、窒素原子又はリン原子である。すなわち、一般式(1)で示される遷移金属錯体は、窒素原子3つ又は窒素原子2つ及びリン原子1つの組から選択される3個のヘテロ原子で、Mで示される金属原子に三座配位する配位子を有する。リン原子はMで示される金属原子種への配位能が良好となる傾向があるが、配位子全体の合成の容易性等の観点からは、Yが窒素原子であることがより好ましい。
一般式(1)におけるAは、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1〜4の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、前記Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。したがって、一般式(1)で表される遷移金属錯体は、前記Y、A、炭素原子であるC及びCからなる、4〜7員のヘテロ環を有する。
一般式(1)におけるZ及びZは、各々独立して、各々独立して、直接結合であるか、又は不飽和結合若しくはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。また、Z中の2点、Z中の2点、ZとA又はZとAの組は、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよい。
及びZは、前記Yを含むヘテロ環と、窒素原子及びQを有する2つのヘテロ環を連結するか、或いは、前記Yを含むヘテロ環と一緒になって縮合環構造を形成し、一般式(1)で示される遷移金属錯体の配位子部分を三座の配位子とするように存在している。配位子設計の観点からは、Z及びZは、例えばメチレン基であるか前記Aと連結して縮合環を形成することで、炭素原子2つがY及び複素環との間に介在するように設計されることが好ましい。該炭化水素基上には、Rの定義と同様の範囲を有する置換基が1つ以上置換されていてもよい。
一般式(1)において、Y、C、C、A、Z及びZからなる構造は、例えばZとC、ZとC、CとA、又はAとCの結合の少なくとも1つが不飽和結合を形成していてもよい。
一般式(1)において、R、R、R11、R12をはじめとする置換基は、第一〜第三の環に不斉炭素原子を生じるか、又はそれ自体が不斉炭素原子を有するような基であることがある。この場合において、一般式(1)で示される錯体はどのような立体配置をとることもできるが、単一の光学異性体種であることが好ましい。特にR、R11が水素原子でR、R12が水素以外の置換基の組合せ、又は、R、R12が水素原子でR、R11が水素以外の置換基の組合せが特に好ましい。
Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、レニウム、白金が挙げられる。好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル又はパラジウムである。
nは、Mで示される金属原子の価数によって決まる値であり、1又は2の整数である。また、MにはXのほかに、中性配位子が配位していてもよい。具体的にはカルボニル、トリフェニルホスフィン、アセトニトリル、ピリジン、テトラヒドロフランを示すことができる。
Qは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を表し、複素環が窒素以外に有するヘテロ原子の種類を特定する。mは、複素環の環員数を特定する整数であり、1〜3の範囲である。したがって、前記一般式(1)で示される遷移金属錯体は、5〜7員の複素環構造を2つ有する。また、当該複素環は、不飽和結合を有していてもよい。好ましくは、不飽和結合は、Z又はZが結合する炭素原子と、当該複素環が必ず有する窒素原子との間に存在する。
20及びR21は、前記Qが窒素原子のときに存在する基である。よってQが窒素原子のとき、一般式(1)におけるpの値は1であり、Qが酸素原子又は硫黄原子であるときは、pの値は0である。
前記一般式(1)で示される遷移金属錯体の更なる一態様として、本発明のα−オレフィン重合用触媒は、下記一般式(1A)で示される遷移金属錯体を含むことが、より好ましい。
Figure 2020056021

[式(1A)中、
、R、R11、R12、R〜Re、Z、Z、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、前記定義のとおりであり、
及びZは,各々独立して,不飽和結合を含んでいてもよく、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を示し、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、或いはZはC又はA’と一緒になって二重結合を形成していてもよく、ZはC又はA’と一緒になって二重結合を形成していてもよく、
とZ、ZとZ、ZとZ、ZとA’、ZとA’は、互いに連結して、不飽和結合を含んでいてもよい炭素環式若しくは複素環式の環構造を形成していてもよく,該環構造は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
とC、ZとCは、不飽和結合を形成していてもよく、
A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1又は2の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基はZ1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。]
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、より好ましい一態様として、下記一般式(1B)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1B)中,
、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、前記定義のとおりであり、
〜R及びR13〜R17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、RとR、RとA’、A’とR17、R17とR13の組は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1又は2の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。]
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、さらに好ましい一態様として、下記一般式(1C)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1C)中,
、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、前記定義のとおりであり、
、R、R13及びR17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、
及びR並びに/又はR13及びR17は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1又は2の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、下記:
Figure 2020056021

で示される構造に含まれている結合は、Yを含む結合を除く少なくとも1つが、二重結合を形成している。]
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、さらに好ましい一態様として、下記一般式(1D)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1D)中、
、R、R11、R12、R〜Re、M、n、Xは、前記定義のとおりであり、
31〜R33、R41〜R43は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示し、
A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1〜2の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。]
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、別の好ましい一態様として、下記一般式(1a)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1a)中,
、R、R11、R12、R〜Re、Z、Z、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、前記定義のとおりであり、
及びZは、各々独立して、不飽和結合を含んでいてもよく、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を示し、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、或いは、
とZ、ZとZ、ZとZは、互いに連結して、不飽和結合を含んでいてもよい炭素環式若しくは複素環式の環構造を形成していてもよく、当該環はR1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
、Z、Z、Zを有し、Yを含む5員環は、不飽和結合を含んでいてもよい。]
本態様は、前記式(1)におけるAが炭素数2の直鎖状炭化水素基である場合、すなわちYを含むヘテロ環が5員環を形成する場合に相当する。
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、別の好ましい一態様として、下記一般式(1b)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1b)中、
、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、前記定義のとおりであり、
〜R及びR13〜R17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、RとR、RとR17、R17とR13の組は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよい。]
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、別の好ましい一態様として、下記一般式(1c)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1c)中、
、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、前記定義のとおりであり、
、R、R13及びR17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、
及びR並びに/又はR13及びR17は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
下記:
Figure 2020056021

で示される構造に含まれている結合は、Yを含む結合を除く少なくとも1つが、二重結合を形成している。]
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、別の好ましい一態様として、下記一般式(1d)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする。
Figure 2020056021

[式(1d)中、
、R、R11、R12、R〜Re、M、n、Xは、前記定義のとおりであり、
31〜R33、R41〜R43は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示す。]
式(1)、(1A)〜(1D)、(1a)〜(1d)で示される、三座配位子を有する遷移金属錯体の好ましい具体例として、以下の化合物が挙げられる。これらは例示であり、これらに限定されないのは自明である。
Figure 2020056021
Figure 2020056021
<金属錯体の合成>
(1)基本的な合成経路
一般式(1)で示される遷移金属錯体の合成は、当業者に公知の方法を用いて行うことができる。すなわち、配位子である複素環含有化合物を、遷移金属を含有する錯体前駆体と反応させて、得ることができる。配位子の合成方法も、当業者に公知の方法を用いることができる。具体的な合成例は、実施例における配位子の合成例として、詳細に記述されている。錯体前駆体と配位子を反応させて得られる金属錯体の合成経路は、目的化合物の構造から任意に定めることができる。
(2)錯体前駆体
錯体前駆体は、8〜10族の遷移金属化合物である。好ましい具体例は、2価若しくは3価の鉄、0価若しくは2価のニッケル若しくはパラジウム化合物又は錯体であり、特に、塩化鉄、塩化ニッケル、塩化パラジウムなどの金属ハロゲン化物;酢酸鉄、酢酸パラジウムなどの酢酸塩;カルボニル、トリフェニルホスフィン、アセチルアセトン、η−シクロオクタジエン、アセトニトリル、ピリジンなどの配位子を有する錯体である。
(3)錯体前駆体との反応
本発明における錯体前駆体の使用量は、配位子である複素環含有化合物1モルに対して、通常、0.5〜3モル、好ましくは0.7〜1.5モルの範囲である。錯体合成反応は、α−オレフィンとの共重合に使用する反応器中で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。錯形成後に、金属錯体を単離抽出して触媒に用いてもよいし、単離せずに触媒に用いてもよい。
<第2成分>
さらなる一態様において、本発明の触媒組成物は、成分(A)として前記一般式(1)、(1A)〜(1D)、(1a)〜(1d)のいずれかで示される遷移金属錯体に加えて、成分(B)として、成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩を含有する。
(1)成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物
成分(B)の一つである、成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物として、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
(RAl(X(3−t)
(上記式中、Rは、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基を示し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのいずれでも差し支えないが、メチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基であることが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物などに含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。MAO溶液を溶媒留去して得られた固体状のドライメチルアルミノキサン(DMAO)もまた好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いてもよい。
また、成分(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリス(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
これらの中でも、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、更に好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい化合物として例示される。
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式で示される化合物である。
[L1−H][B(R2)(R3)(X4)(X5)]
上記式中、L1は中性ルイス塩基であり、[L1−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウムなどのブレンステッド酸を示す。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(t−ブチル)アンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−ジメチル−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。
更に、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
また、上記一般式中、R2及びR3は、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などに代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子が好ましい。更に、X4及びX5は、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
上記一般式で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式で表される。
[L2][B(R2)(R3)(X4)(X5)]
一般式中、L2は、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、t−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトンなどが挙げられる。また、R2、R3、X4及びX5は、先に定義したとおりである。
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
更に好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
以上例示した化合物群のなかでも、成分(B)としては、アルミノキサン又はホウ素化合物であることが好ましい。
(2)イオン交換性層状珪酸塩
更に、成分(B)の具体例として、イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)が挙げられる。イオン交換性層状珪酸塩は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。珪酸塩は、各種公知のものが知られており、具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている。
本発明において、成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩として好ましく用いられるものは、スメクタイト族に属するもので、具体的にはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどを挙げることができる。中でも、共重合体部分の重合活性、分子量を高める観点からモンモリロナイトが好ましい。
大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英やクリストバライトなど)が含まれることが多く、本発明で用いられるスメクタイト族の珪酸塩に夾雑物が含まれていてもよい。
珪酸塩は酸処理及び/又は塩類処理を行ってもよい。該処理においては、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。
成分(B)として、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物やボレート化合物、イオン交換性層状珪酸塩との混合物を用いることもできる。更に、それぞれを単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
<第3成分>
本発明の更なる別の一態様は、前記成分(A)及び(B)に加えて、成分(C)として、アルキルアルミニウム化合物を含有する。成分(C)として使用されるアルキルアルミニウム化合物の一例は、次の一般式で表される。
Al(R4)(3−a)
一般式中、R4は、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。
一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
これらの中では、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。また、上記の有機アルミニウム化合物を2種以上併用してもよい。また、上記のアルミニウム化合物をアルコール、フェノールなどで変性して用いてもよい。これらの変性剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールなどが例示され、好ましい具体例は、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールである。
<触媒組成物の調製方法>
本発明に係るオレフィン重合用触媒組成物の調製法においては、例えば、成分(A)に必要に応じて(B)、(C)を接触させる方法がとられる。成分(A)及び(B)の2成分を含む触媒組成物の場合、予め両者を混合して調製してもよいし、いずれか一方の成分が存在する重合系中に他方の成分を添加することで調製してもよい。成分(A)、(B)、(C)の3成分を含む触媒組成物の場合、各成分の接触順序など具体的な方法は特に限定されないが、次の様な方法を例示することができる。
(i)成分(A)と成分(B)とを接触させた後に、成分(C)を添加する方法
(ii)成分(A)と成分(C)とを接触させた後に、成分(B)を添加する方法
(iii)成分(B)と成分(C)とを接触させた後に、成分(A)を添加する方法
(iv)各成分(A)、(B)、(C)を同時に接触させる方法。
更に、各成分中で別種の成分を混合物として用いてもよいし、別々に順番を変えて接触させてもよい。なお、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。また、成分(B)と成分(C)とを接触させた後、成分(A)と成分(C)の混合物を加えるというように、成分を分割して各成分に接触させてもよい。
上記の各成分(A)(B)(C)の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。接触は、−20℃から溶媒の沸点の間の温度で行うことができ、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
<重合方法>
(1)モノマー
上記したオレフィン重合用触媒は、α−オレフィンの単独重合又は二種類以上のα−オレフィンの共重合に使用可能である。α−オレフィン類には、炭素数2〜30、好ましくは2〜8のものが包含され、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが例示される。更に好ましくは、エチレン、プロピレンが挙げられる。α−オレフィン類は、2種類以上のα−オレフィンを共重合させることも可能である。共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレンなどのスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン類、ノルボルネン、シクロペンテンなどの環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチルなどの含酸素化合物類の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。
(2)重合方法
重合反応は、触媒の存在下、好ましくはスラリー重合、バルク重合又は気相重合にて、行うことができる。スラリー重合の場合、実質的に酸素、水などを断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレンなどを重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレンなどの液体モノマーも溶媒として使用するバルク重合も好ましい様態の一つである。
重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜10時間、好ましくは5分〜5時間が採用されるのが普通である。
重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤール化合物が使用される。
これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウム、トリ−n−オクチルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
本発明の触媒又は触媒組成物は、重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
以下において、本発明を実施例によって具体的に説明し、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。しかしながら、以下の実施例はあくまで例示であり、本発明の範囲がこれら具体的実施例のみに限定されないことは自明である。
<評価方法>
(1)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm)、測定温度:140℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)、カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)、流速:1.0mL/分、注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の銘柄であり、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
(2)融点(Tm)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。
融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとし、該ピークのピーク面積をΔHmとした。
(3)NMR
[試料調製]
試料200mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、窒素置換した後封管し、150℃のブロックヒーターで均一に溶解した。
NMR測定は10mmφのノーマルプローブを装着したブルカージャパン(株)のAV400型NMR装置を用いた。
エチル分岐量は、炭素原子1000個当たりのエチル分岐の数(個/1000C)のことであって、その定量には、13C−NMRを用いた。13C−NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角を45°、パルス間隔を2.76秒、積算回数を75000回以上、プロトンブロードバンドデカップリング法で測定をした。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
エチル分岐量の算出方法
上記測定条件で得られる13C−NMRスペクトルを用い、以下の式からエチル分岐量(個/1000C)を求めた。
エチル分岐量(個/1000C)=I(B)/4×1000/I(total)
ここで、I(B)、I(total)は以下の式で示される量である。また、補正係数1〜10は、表1に示した。
I(B)= I39.71〜39.68×補正係数10+I33.86〜33.83×補正係数9
+I11.16〜11.13×補正係数1

I(total)= I(B)+I13.96〜13.90×補正係数2
+I22.73〜22,69×補正係数3
+I26.58〜26.50×補正係数4
+I27.30〜22,25×補正係数5
+I31.48〜27.39×補正係数6
+I32.06〜32.02×補正係数7
+I33.77〜33.75×補正係数8
Figure 2020056021

上記各々の式においてIは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI39.71〜39.68は39.71ppmと39.68ppmの間に検出したポリマー由来の13Cシグナルの積分強度を示す。
本発明における遷移金属錯体の合成経路を以下に示す。なお、以下の合成例で特に断りのない限り、操作は不活性ガス雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
[実施例1]
(1−1)(N,N,N)―(1,8−ビス(4−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾリル)−3,6−ジフェニルカルバゾレート)鉄ジクロライド(錯体A)の合成
Figure 2020056021

工程1:3,6−ジフェニルカルバゾールの合成
3,6−ジヨードカルバゾール6.26g(15mmol)、水20ml、ジメトキシエタン120mLの溶液に、フェニルボロン酸5.47g(45mmol)、酢酸パラジウム167mg(0.7mmol)トリ(o-トリル)ホスフィン454mg(1.5mmol)、水酸化バリウム7.68g(45mmol)を順次加え、80℃で12時間加熱した。反応物を濃縮しジクロロメタンを加えて水洗した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧乾固した。その後、石油エーテルで洗浄し、3,6−ジフェニルカルバゾールの粗精製物を黄色固体として4.8g得た。
工程2:1,8−ジブロモ−3,6−ジフェニル−カルバゾールの合成
3,6−ジフェニルカルバゾール2.00g(6.26mmol)の酢酸20mlの溶液に、20℃で臭素2.20gを滴下した。そのまま12時間撹拌した。反応液を炭酸水素ナトリウム溶液に投入し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を炭酸ナトリウム溶液、塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し減圧乾固させた。ジクロロメタン/石油エーテル混合液で洗浄し、1,8−ジブロモ−3,6−ジフェニル-カルバゾールの粗精製品2.0gを黄色固体として得た。
工程3:1,8−ジシアノ−3,6−ジフェニル−カルバゾールの合成
1,8−ジブロモ−3,6−ジフェニル−カルバゾールの粗精製品4.0g(8.4mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50mlの溶液にシアン化銅2.25g(25.2mmol)を加え、130℃で12時間撹拌した。反応液をアンモニア水中に投入し、固体をろ別した。固体をジクロロメタンで溶解し、アンモニア水、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し濃縮し、析出した固体を濾過し、1,8−ジシアノ−3,6−ジフェニル−カルバゾール1.8gを黄色固体として得た。
工程4:1,8−ビス(4-フェニル−4,5―ジヒドロオキサゾリル)−3,6−ジフェニルカルバゾールの合成
1,8−ジシアノ−3,6−ジフェニル−カルバゾール1.8g(4.9mmol)のクロロベンゼン20mLの溶液に、塩化亜鉛2.66g(19.5mnol)、2−アミノ−2−フェニルエタノール2.67g(19.5mmol)を加えた。その後、130℃で36時間撹拌した。
冷却後、反応溶液をエチレンジアミン水溶液中に加え、ジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥した。シリカゲルカラムで精製し、1,8−ビス(4-フェニル−4,5―ジヒドロオキサゾリル)−3,6−ジフェニルカルバゾール0.25g(収率8.4%)を無色固体として得た。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ4.30(t,2H),δ4.96(t,2H),δ5.62(t,2H),δ7.09〜7.86(br,20H),δ8.21(s,2H),δ8.98(s,2H),δ12.1(s,1H).
工程5:(N,N,N)―(1,8−ビス(4−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾリル)−3,6−ジフェニルカルバゾレート)鉄ジクロライド(錯体A)の合成
1,8−ビス(4-フェニル−4,5―ジヒドロオキサゾリル)−3,6−ジフェニルカルバゾール 1.95g(3.2mmol)、塩化鉄(II)0.41g(3.2mmol)、テトラヒドロフラン20mlを混合し、6.5時間加熱還流した。その後、空気中60℃で3時間加熱撹拌した。冷却後、反応液をセライトでろ過し、溶剤を減圧留去した。ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶を行い(N,N,N)―(1,8−ビス(4−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾリル)−3,6−ジフェニルカルバゾレート)鉄ジクロライドの黒緑色結晶2.1g(収率89%)を得た。
(1−2)錯体Aによるエチレン重合(事前接触法)
錯体A 25mgをトルエン10mLに溶解させ、そこにMMAO−3A/ヘキサン溶液(Al=5.9wt%,東ソーファインケム社製)20mLを加えて、5分間撹拌し錯体溶液を調製した。
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内にトルエン790mLを導入し、続いてMMAO−3A/ヘキサン溶液20mLを加えた。リアクター内をエチレンで置換して、80℃まで昇温した。エチレンで2.5MPaまで昇圧した。そこに先に調製した錯体溶液を、Nで圧入した。30分間エチレン圧2.5MPaを維持した後、エタノールを圧入して、重合を停止した。
得られたスラリーを塩酸/エタノール中に投入し、ろ過、エタノール洗浄、乾燥を行い0.57gのポリマーを得た。触媒の活性は33,500(g-PE/mol-Fe/h)、得られたポリマーは分子量(Mw)=1,048,000、分子量分布(Mw/Mn)=3.1、融点は136.7(℃)であった。NMRより求めたMe分岐の数は検出限界以下(0.1個/1000C以下)であった。
重合結果を、表2に記載する。
[実施例2]
錯体Aによるエチレン重合(リアクター添加法)
錯体A 25mgをトルエン10mLに溶解させ錯体溶液を調製した。
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内にトルエン790mLを導入し、続いてMAO/トルエン溶液(Al=20wt%、日本アルキルアルミ社製)20mLを加えた。リアクター内をエチレンで置換して、80℃まで昇温した。エチレンで2.5MPaまで昇圧した。そこに先に調製した錯体溶液を、Nで圧入した。60分間エチレン圧2.5MPaを維持した後、エタノールを圧入して、重合を停止した。
得られたスラリーを塩酸/エタノール中に投入し、ろ過、エタノール洗浄、乾燥を行い0.6gのポリマーを得た。触媒の活性は35,300(g-PE/mol-Fe/h)、得られたポリマーは分子量(Mw)=1,206,000、分子量分布(Mw/Mn)=3.1、融点は136.6(℃)であった。NMRより求めたMe分岐の数は検出限界以下(0.1個以下/1000C)であった。
重合結果を表2に記載する。
[実施例3]
(3−1)(N,N,N)−(1,3−ビス((4−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾリル)メチレン)イソインドレート)鉄ジクロライド(錯体B)の合成
Figure 2020056021

工程1:(イソインドール−1,3−ジイリデン)ビス(酢酸エチル)の合成
フタルイミド10g(68mmol)及び(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸エチル 118g(340mmol)を混合した。混合物を140℃で24時間加熱した。反応混合をシリカゲルカラムで精製し、(イソインドール−1,3−ジイリデン)ビス(酢酸エチル)4.7g(収率24%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.36(t,6H),δ4.29(q,4H),δ5.64(s,2H),δ7.53(m,2H),δ7.69(m,2H),δ11.50(br,2H).
工程2:(イソインドール−1,3−ジイリデン)ビス(N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)-アセトアミド)の合成
イソインドール−1,3−ジイリデン)ビス(酢酸エチル)10.3g(36mmol)及び(R)−2−アミノ−2−フェニルエタノール 24.6g(180mmol)を混合した。 次に、固体混合物を120℃で加熱した。 得られた混合物に水素化ナトリウム 290mg(7.2mmol)を加え、反応混合物を12時間撹拌した。
反応物を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。 有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。 粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、(イソインドール−1,3−ジイリデン)ビス(N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)-アセトアミド)を5.7g(収率34%)得た。
工程3:1,3−ビス((4,5−ジヒドロ−4−フェニル−2−オキサゾリル)メチレン) −2,3−ジヒドロ−1H−イソインドールの合成
三ふっ化(ジエチルアミノ)硫黄4.08g(25.3mmol)を(イソインドール−1,3−ジイリデン)ビス(N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)−アセトアミド)5.4g(11.50mmol)のジクロロメタン 200ml溶液に0℃で加えた。その後、 0℃で1時間撹拌し、炭酸カリウム4.8g(34mmol)を加えた。得られた混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液200mLに注いだ。その後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。粗生成物をアルミナカラムで精製し、1,3−ビス((4,5−ジヒドロ−4−フェニル−2−オキサゾリル)メチレン)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール1.9g(収率39%)を黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ4.08(t,2H),δ4.66(t,2H),δ5.31(t,2H),δ5.73(s,2H),δ7.22(m,2H),δ7.31(m,8H),δ7.51(dd,2H),δ7.72(dd,2H),δ11.90(br,1H).
工程4:(N,N,N)−(1,3−ビス((4−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾリル)メチレン)イソインドレート)鉄ジクロライド(錯体B)の合成
1,3−ビス((4,5−ジヒドロ−4−フェニル−2−オキサゾリル)メチレン)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール 1.0g(2.3mmol)、塩化鉄(II)0.29g(2.3mmol)、テトラヒドロフラン15mlを混合し、3時間加熱還流した。その後、空気中60℃で3時間加熱撹拌した。冷却後、反応液をセライトでろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶を行い((N,N,N)−(1,3−ビス((4−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾリル)メチレン)イソインドレート)鉄ジクロライド(錯体B)の黒茶色結晶0.26g(収率19%)を得た。
(3−2)錯体Bによるエチレン重合(事前接触法)
錯体B 20mgをトルエン10mLに溶解させ、そこにMMAO−3A/ヘキサン溶液(Al=5.9wt%,東ソーファインケム社製)20mLを加えて、5分間撹拌し錯体溶液を調製した。
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内にトルエン790mLを導入し、続いてMMAO−3A/ヘキサン溶液20mLを加えた。リアクター内をエチレンで置換して、80℃まで昇温した。エチレンで2.5MPaまで昇圧した。そこに先に調製した錯体溶液を、Nで圧入した。30分間エチレン圧2.5MPaを維持した後、エタノールを圧入して、重合を停止した。
得られたスラリーを塩酸/エタノール中に投入し、ろ過、エタノール洗浄、乾燥を行い2.47gのポリマーを得た。触媒の活性は136,000(g-PE/mol-Fe/h)、得られたポリマーは分子量(Mw)=266,000、分子量分布(Mw/Mn)=2.2、融点は135.2(℃)であった。NMRより求めたMe分岐の数は検出限界以下(0.1個/1000C以下)であった。
重合結果を、表2に記載する。
Figure 2020056021
表2から明らかなように、本発明の触媒又は触媒組成物は、ポリエチレンの重合触媒として有用である。特に、得られたポリエチレンは融点が非常に高くメチル基の分岐が非常に少なく、高密度で機械物性に優れたものである。
すなわち、本発明の触媒又は触媒組成物は、諸性質に優れたポリオレフィンを製造可能とする触媒であるため、フィルム成形などのポリオレフィンの製造、適用分野において非常に有用である。

Claims (15)

  1. 下記一般式(1)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1)中、
    、R、R11、R12、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示し、
    及びCは、炭素原子であり、
    及びZは、各々独立して、直接結合であるか、又は不飽和結合若しくはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、ZとC、ZとC、CとA、又はAとCの結合は、少なくとも1つが不飽和結合を形成していてもよく、
    Aは、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1〜4の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、
    中の2点、Z中の2点、A中の2点、ZとA又はZとAの組は、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
    20、R21は、各々独立して、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNRe(Reは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)で置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示し、
    Mは、周期表8〜10族の遷移金属からなる群より選択される金属原子を示し、
    Qは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、Qを含む環状構造内には、不飽和結合を含んでいてもよく、
    Yは、窒素原子又はリン原子であり、
    nは、1又は2であり、
    mは、1から3の整数であり、
    pは、0又は1であり、
    Xは、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜10のエステル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基、及びハロゲンからなる群より選択される置換基を示す。]
  2. 下記一般式(1A)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1A)中、
    、R、R11、R12、R〜Re、Z、Z、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    及びZは、各々独立して,不飽和結合を含んでいてもよく、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を示し、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、或いはZはC又はA’と一緒になって二重結合を形成していてもよく、ZはC又はA’と一緒になって二重結合を形成していてもよく、
    とZ、ZとZ、ZとZ、ZとA’、ZとA’は、互いに連結して、不飽和結合を含んでいてもよい炭素環式若しくは複素環式の環構造を形成していてもよく、該環構造は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
    とC、ZとCは、不飽和結合を形成していてもよく、
    A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1又は2の2価の直鎖状炭化水素基であり,該炭化水素基はZ1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。]
  3. 下記一般式(1B)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1B)中,
    、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    〜R及びR13〜R17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、RとR、RとA’、A’とR17、R17とR13の組は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
    A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1又は2の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。]
  4. 下記一般式(1C)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1C)中,
    、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    、R、R13及びR17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、
    及びR並びに/又はR13及びR17は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
    A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1又は2の2価の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、下記:
    Figure 2020056021

    で示される構造に含まれている結合は、Yを含む結合を除く少なくとも1つが、二重結合を形成している。]
  5. 下記一般式(1a)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1a)中,
    、R、R11、R12、R〜Re、Z、Z、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    及びZは、各々独立して、不飽和結合を含んでいてもよく、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を示し,該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、或いは、
    とZ、ZとZ、ZとZは、互いに連結して、不飽和結合を含んでいてもよい炭素環式若しくは複素環式の環構造を形成していてもよく、当該環はR1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
    、Z、Z、Zを有し、Yを含む5員環は、不飽和結合を含んでいてもよい。]
  6. 下記一般式(1b)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1又は5に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1b)中、
    、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    〜R及びR13〜R17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、RとR、RとR17、R17とR13の組は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよい。]
  7. 下記一般式(1c)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1又は5に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1c)中、
    、R、R11、R12、R〜Re、R20、R21、M、Q、Y、n、m、p、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    、R、R13及びR17は、各々独立して、Rと同義であるか、或いは、
    及びR並びに/又はR13及びR17は、各々一緒になって、1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜30の炭化水素基によって連結され、飽和若しくは不飽和の環を形成していてもよく、当該環は脂環族、ヘテロ環式基、若しくは芳香族基が更に縮合していてもよく、
    下記:
    Figure 2020056021

    で示される構造に含まれている結合は、Yを含む結合を除く少なくとも1つが、二重結合を形成している。]
  8. Yが窒素原子であり、Qが酸素原子又は硫黄原子であり、mが1である遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のα−オレフィン重合用触媒。
  9. 下記一般式(1D)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする、請求項1、2、4、8のいずれか一項に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1D)中、
    、R、R11、R12、R〜Re、M、n、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    31〜R33、R41〜R43は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示し、
    A’は、不飽和結合を含んでいてもよい炭素数1〜2の直鎖状炭化水素基であり、該炭化水素基は、R1’(ここでR1’は、Rと同義である)で示される置換基で1つ以上置換されていてもよい。]
  10. 下記一般式(1d)で示される遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1、5、7、8のいずれか一項に記載のα−オレフィン重合用触媒。
    Figure 2020056021

    [式(1d)中、
    、R、R11、R12、R〜Re、M、n、Xは、請求項1に定義されたとおりであり、
    31〜R33、R41〜R43は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、末端以外の1つ以上のメチレン基(−CH−)がO、S又はNReで置き換えられていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素数2〜30の炭化水素基、及び炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選択される置換基を示す。]
  11. 前記Mが鉄、コバルト、ニッケル又はパラジウムである遷移金属錯体を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のα−オレフィン重合用触媒。
  12. 成分(A):請求項1〜11のいずれか一項に記載の遷移金属錯体、及び
    成分(B):前記遷移金属錯体と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
    を含むことを特徴とする、α−オレフィン重合用触媒組成物。
  13. 前記成分(B)がアルミノキサン又はホウ素化合物であることを特徴とする、請求項12に記載のα−オレフィン重合用触媒組成物。
  14. さらに、下記の成分(C)を含むことを特徴とする、請求項12又は13に記載のα−オレフィン重合用触媒組成物。
    成分(C):アルキルアルミニウム化合物
  15. 請求項1〜11のいずれか一項に記載のα−オレフィン重合用触媒又は請求項12〜14のいずれか一項に記載のα−オレフィン重合用触媒組成物を用いて、α−オレフィンを重合させることを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
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