JP2020051849A - 光学系、それを備える照明装置及び測距装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 製造が容易でありながら良好な光学性能を有する小型な光学系、それを備える照明装置及び測距装置を提供すること。【解決手段】 光学系20は、光源11からの光を対象物に導く光学系であって、光源11の側から順に配置された第1及び第2の回折素子L1,L2を備え、第1及び第2の回折素子L1,L2の夫々は、回折面を含む平板で構成されており、光軸を含む第1の断面及び光軸を含み第1の断面に垂直な第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(1)を満足する。−0.050≦f1/f≦0.050 (1)【選択図】 図1
Description
本発明は、光源からの光を対象物に導く光学系に関し、例えば車載システムや監視システム等の測距装置に好適なものである。
対象物(被照射面)までの距離を計測する測距装置として、照明装置により対象物を照明し、対象物からの反射光を受光するまでの時間やその反射光の位相に基づいて対象物までの距離を算出するものが知られている。
特許文献1には、測距装置における照明装置に用いられる光学系として、複数のレンズから成るものが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載されている光学系を小型化しようとすると、各レンズの曲率を大きくすることが必要になる。この場合、各レンズを高い精度で形成することが難しくなり、かつ各レンズの組立誤差(配置誤差)に起因して生じる光学性能の変化が大きくなってしまう。よって、このような光学系を測距装置に適用した場合、各レンズの組立誤差によって被照射面における照明光のスポットサイズが大きくなり、測距精度が低下してしまう可能性が生じる。
本発明は、製造が容易でありながら良好な光学性能を有する小型な光学系、それを備える照明装置及び測距装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明の一側面としての光学系は、光源からの光を対象物に導く光学系であって、前記光源の側から順に配置された第1及び第2の回折素子を備え、該第1及び第2の回折素子の夫々は、回折面を含む平板で構成されており、前記第1の回折素子の焦点距離をf1、前記光学系の焦点距離をfとするとき、光軸を含む第1の断面及び光軸を含み該第1の断面に垂直な第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
−0.050≦f1/f≦0.050 (1)
−0.050≦f1/f≦0.050 (1)
本発明によれば、製造が容易でありながら良好な光学性能を有する小型な光学系、それを備える照明装置及び測距装置を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面は、便宜的に実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。また、各図面において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る照明装置1の光軸を含むYZ断面における要部概略図(模式図)である。本実施形態に係る照明装置1は、光源部10と光学系(照明光学系)20を備えている。図1では、光軸方向をZ方向、垂直方向(第1の方向)をY方向、水平方向(第2の方向)をX方向としている。以下の説明において、YZ断面を垂直断面(第1の断面)、ZX断面を水平断面(第2の断面)とも呼ぶ。
本実施形態に係る光源部10は、光源11、コリメータ部12、及び走査部13を備え、光学系20に向けて光(照明光)を射出している。光源11としては、例えば半導体レーザなどを採用することができる。コリメータ部12は、1枚以上のレンズ(コリメータレンズ)で構成され、光源11から射出された発散光を平行光に変換する。ただし、ここでの平行光とは、厳密な平行光に限らず、弱発散光や弱収束光等の略平行光を含むものとする。
走査部13は、コリメータ部12からの平行光を偏向することで、光学系20を介して不図示の対象物を走査する。なお、対象物は光学系20の+Z側に配置されているものとする。走査部13としては、ガルバノミラーやMEMSミラーなどの可動ミラーや、電圧の印加により屈折率が変化する結晶素子や液晶素子などの光学素子を採用することができる。特に、後者の光学素子によれば、ミラーを駆動するための機構(駆動部)を設ける必要がなくなるため、装置全体の小型化と低コスト化を実現することができる。
なお、照明装置1において、要求される照明範囲(照明画角)が確保できるのであれば、必要に応じてコリメータ部12や走査部13を備えない構成を採用してもよい。コリメータ部12は、特に照明装置1が走査部13を備えている場合に、駆動部などの各部材と光路との干渉を回避し易くすることができるという効果を奏する。
本実施形態に係る光学系20は、光源側(−Z側)から順に配置された第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2を備え、光源部10からの光を対象物に導光(照射)している。なお、必要に応じて、第1の回折素子L1とそれよりも対象物側(+Z側)に配置された第2の回折素子L2との間に他の光学素子が配置されていてもよい。光学系20は、入射光の角度(入射角)を変換し、その入射角とは異なる角度(出射角)の出射光として射出する機能を有する。
第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2の夫々は、回折面を含む平板(透過部材)で構成されている。すなわち、各回折素子は、ベース面が平面形状である回折面又は平面形状である屈折面を含む。ただし、ここでの平面形状とは、厳密な平面に限らず、製造誤差などで生じた僅かな曲率(曲率半径3000mm以上に相当)を有する曲面等の略平面を含むものとする。
このような平板で構成される回折素子は、レンズと比較して製造が容易であり、かつ組立誤差が生じた場合の光学性能に与える影響が小さい。よって、本実施形態に係る構成を採用すれば、レンズを採用する場合と比較して、容易かつ高精度に光学系を製造することができ、かつ全系を小型化することができる。したがって、光学系20を測距装置に適用した場合の、組立誤差に起因する測距精度の低下を抑制することが可能になる。
仮に、各回折素子をレンズなどの屈折力を有する光学素子で構成した場合、組立誤差等によって各光学素子が光軸に垂直な方向(X方向又はY方向)へ偏心すると、曲面形状の光学面(レンズ面)に対する光線の入射位置が変化してしまう。これにより、光学系20の光学性能(照明性能)が低下してしまう可能性が生じる。一方、本実施形態に係る各回折素子によれば、各回折素子が偏心した場合の光学性能への影響を低減することができる。このとき、より良好な回折効率を実現するためには、各光学面が光軸に対して垂直になるように、すなわち各光学面が互いに平行になるように各回折素子を配置することが望ましい。
ここで、本実施形態に係る光学系20は、第1の回折素子L1の焦点距離をf1、光学系20の(全系の)焦点距離をfとするとき、光軸を含む第1の断面及び光軸を含み第1の断面に垂直な第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(1)を満足する。
−0.050≦f1/f≦0.050 (1)
−0.050≦f1/f≦0.050 (1)
条件式(1)を満足することで、第1の回折素子L1のパワーを適度に設定することができる。これにより、光学系20を小型化しつつ、光学系20のパワー小さくすることができるため、光学系20を測距装置に適用する際に生じる組立誤差による光学性能への影響をより低減することが可能になる。条件式(1)の範囲から外れた場合、光学系20を小型化しつつ組立誤差による光学性能への影響をより低減することが難しくなる。さらに、以下の条件式(1a)及び(1b)を順に満足することがより好ましい。
−0.045≦f1/f≦0.045 (1a)
−0.040≦f1/f≦0.040 (1b)
−0.045≦f1/f≦0.045 (1a)
−0.040≦f1/f≦0.040 (1b)
また、第2の回折素子L2の焦点距離をf2とするとき、第1及び第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(2)又は(3)の何れかを満足することが望ましい。なお、条件式(2)又は(3)の何れを満足するかについては、光学系20が拡大系又は縮小系の何れであるかに応じて決定すればよい。
1.2≦|f1/f2|≦10.0 (2)
1.2≦|f2/f1|≦10.0 (3)
1.2≦|f1/f2|≦10.0 (2)
1.2≦|f2/f1|≦10.0 (3)
条件式(2)及び(3)は、光学系20の角倍率に関する条件式である。条件式(2)又は(3)の下限値を下回ると、光学系20の角倍率が1に近づき過ぎてしまう。この場合、光学系20に入射する軸外主光線の入射角に対する、光学系20から出射する軸外主光線の出射角の変化率が小さくなり、十分な照明範囲(測距範囲)を確保することが難しくなる。また、条件式(2)又は(3)の上限値を上回ると、光学系20の角倍率が大きくなり過ぎてしまい、全系を小型化しつつ収差を良好に補正することが難しくなる。
さらに、以下の条件式(2a)及び(2b)を順に満足するか、あるいは以下の条件式(3a)及び(3b)を順に満足することがより好ましい。
1.5≦|f1/f2|≦8.0 (2a)
1.8≦|f1/f2|≦5.0 (2b)
1.5≦|f2/f1|≦8.0 (3a)
1.8≦|f2/f1|≦5.0 (3b)
1.5≦|f1/f2|≦8.0 (2a)
1.8≦|f1/f2|≦5.0 (2b)
1.5≦|f2/f1|≦8.0 (3a)
1.8≦|f2/f1|≦5.0 (3b)
また、光軸から第1及び第2の回折素子の第1輪帯の格子頂点までの距離を各々SL1[μm]及びSL2[μm]、第1及び第2の回折素子の回折面の間の距離をDd[mm]、光源11から出射する光のうちピーク強度を有する光の波長をλs[nm]とする。なお、第1輪帯の格子頂点とは、各回折素子において光軸に最も近い輪帯に含まれる回折格子の頂点のことを指す。このとき、本実施形態に係る光学系20は、第1及び第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
0.85≦(SL12±SL22)/(2λs×Dd)≦1.15 (4)
0.85≦(SL12±SL22)/(2λs×Dd)≦1.15 (4)
ただし、条件式(4)における「±」は、第2の回折素子L2が正のパワー(焦点距離)を有する場合は「+」、第2の回折素子L2が負のパワー(焦点距離)を有する場合は「−」となる。条件式(4)を満足することで、各回折素子のパワーのバランスを適切に設定することができる。これにより、各回折素子の製造を容易にしつつ、光学系20からの出射光を平行光に近づけることができ、より遠くの対象物まで照明することが可能になる。
条件式(4)の範囲から外れた場合、各回折素子のパワーのバランスを良好に保つことが難しくなる。そのため、各回折素子の製造を容易にすることや、光学系20からの出射光を平行光に近づけることが難しくなる。さらに、以下の条件式(4a)及び(4b)を順に満足することがより好ましい。
0.87≦(SL12±SL22)/(2λs×Dd)≦1.13 (4a)
0.90≦(SL12±SL22)/(2λs×Dd)≦1.10 (4b)
0.87≦(SL12±SL22)/(2λs×Dd)≦1.13 (4a)
0.90≦(SL12±SL22)/(2λs×Dd)≦1.10 (4b)
また、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2の少なくとも一方を、第1の断面と第2の断面とで互いに異なるパワーを有するアナモフィック光学素子とすることが望ましい。このように、何れかの回折素子をアナモフィック光学素子とすることで、光源部10からの光の出射角を第1及び第2の断面で互いに独立して制御することができる。これにより、光学系20において第1及び第2の断面でのより良好な光学性能を実現することができる。本実施形態に係る各回折素子は平板で構成されているため、レンズと比較して容易かつ高精度にアナモフィック形状とすることができる。
なお、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2の少なくとも一方がアナモフィック光学素子である場合、第1及び第2の断面の両方において上述した各条件式を満足することが望ましい。これにより、第1及び第2の断面の両方において上述した効果を得ることができる。また、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2の設計自由度を向上させるためには、各回折素子の両方をアナモフィック光学素子とすることが好ましい。
図2は、アナモフィック光学面を有する回折素子の模式図であり、第1の断面(YZ断面)及び第2の断面(ZX断面)の夫々を示している。なお、図2において、回折素子の縮尺や回折面における回折格子の数などは、実際のものとは異なる。図2に示すように、第1の断面における光軸Aから回折格子の光軸Aに最も近い(第1輪帯の)格子頂点までの距離S1と、第2の断面における光軸Aから回折格子の光軸Aに最も近い格子頂点までの距離S2とは互いに異なる。これは、各回折面のパワーが第1の断面と第2の断面とで互いに異なること、すなわち各回折面がアナモフィック光学面であるということを意味している。
このような回折面を形成する場合は、リソグラフィ技術を用いることが望ましい。リソグラフィ技術を用いることで、切削や研磨又はモールド成形などの技術を用いる場合と比較して、回折面を高精度に形成することができる。リソグラフィ技術を用いる場合は、例えば図3に示すように、回折面における曲面形状を、階段状に配列された微小な矩形形状で近似したものなどを採用してもよい。
なお、本実施形態のように、平板における平面形状の光学面に回折面を設ける場合は、レンズなどにおける曲面形状の光学面に回折面を設ける場合とは異なり、軸上から最軸外にわたって回折面が与える位相差を変化させる必要がない。よって、各回折素子の製造を容易にするためには、各回折面の格子高さを軸上から最軸外にわたって均一にすることが望ましい。ここで、光学系20は3枚以上の回折素子を備えていてもよく、回折素子以外の光学素子を備えていてもよい。ただし、光学系20の全系の更なる小型化を実現するためには、本実施形態のように光学系20を2枚の回折素子で構成することが望ましい。
第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2は、光学系20を構成する光学素子の中で、最もパワーの絶対値が大きい上位二つであることが望ましい。言い換えると、光学系20を構成する光学素子の中で、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2の何れか一方のパワーの絶対値が最も大きく、他方のパワーの絶対値が二番目に大きいことが望ましい。これにより、上述した各条件式による更に大きな効果を得ることができる。なお、各回折素子の何れのパワーの絶対値を最も大きくするかについては、光学系20の仕様(拡大系か縮小系かなど)に応じて決定すればよい。あるいは、必要に応じて各回折素子に絶対値の同じパワーを持たせてもよい。
また、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2のうち光源側に配置された第1の回折素子L1は、正のパワーを有することが望ましい。第1の回折素子L1が正のパワーを有することで、第2の回折素子L2に向かう光を収束させることができ、第2の回折素子L2を小型化することが可能になる。このとき、第2の回折素子L2に対する光の入射角が小さくなるため、第2の回折素子L2の回折効率を向上させることも可能になる。
なお、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2は、夫々の回折面が互いに対向するように配置されていることが望ましい。この構成によれば、各回折面の間の媒質が空気のみとなるため、各回折素子を構成する平板の厚みの製造誤差による光学性能への影響を低減することができる。また、必要に応じて各回折格子における入射面と出射面の両方を回折面としてもよい。ただし、各回折面を形成する際のチャッキング工程などを考慮すると、各回折素子の製造を容易にするためには、入射面と出射面の何れか一方のみを回折面とすることが望ましい。
また、光源11から出射するピーク強度を有する光の波長λs[nm]は、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
850≦λs≦14000 (5)
850≦λs≦14000 (5)
条件式(5)を満たす赤外域の波長帯域においてピーク強度を有する光を射出する光源を用いることで、リソグラフィ技術における搬送工程などにおいて生じる各回折面の汚れによる測距性能への影響を低減することができる。また、このような光源を用いることで、照明装置1を測距装置に適用した場合に、照明装置1から対象物に至る光路上における霧などの障害物による測距性能への影響も低減することができる。
条件式(5)の下限値を下回ると、各回折面の汚れや障害物による測距性能への影響を低減することが難しくなる。また、条件式(5)の上限値を上回ると、ピーク強度を有する光の波長が長くなり過ぎてしまい、それに応じて各回折面における回折格子の格子高さを大きくすることが必要になり、各回折面の製造の難易度が上がってしまう。さらに、以下の条件式(5a)及び(5b)を順に満足することがより好ましい。
875≦λs≦13000 (5a)
900≦λs≦12000 (5b)
875≦λs≦13000 (5a)
900≦λs≦12000 (5b)
また、各回折素子の少なくとも一つは、シリコン材料で構成されていることが望ましい。ただし、ここでのシリコン材料は、シリコン(Si)を主成分とする材料を示し、シリコンのみから成るものに限らず、微小量のシリコン以外の物質(不純物)が含まれているものであってもよい。光学系20を2枚の回折素子のみで構成する場合、十分な照明性能を得るためには各回折素子のパワーを大きくすることが必要になる。この場合、各回折素子における回折格子の格子高さに対して配列間隔(格子ピッチ)を小さくすることが必要になるため、各回折素子の回折効率が低下してしまう可能性が生じる。
そこで、各回折素子の材料として屈折率の高いシリコン材料を用いることで、各回折素子のパワーを十分に大きくしつつ格子高さを低減させることができるため、回折効率の低下を抑制することが可能になる。上述した効果をより多く得るためには、全ての回折素子をシリコン材料で構成することがより好ましいが、必要に応じてシリコン材料とは異なる材料で構成される回折素子を採用してもよい。
以上、本実施形態に係る光学系20によれば、全系を小型化しつつ製造の容易化と良好な光学性能とを両立することができる。これにより、測距装置における照明装置に光学系20を適用した場合に、組立誤差などに起因する測距精度の低下を抑制することが可能になる。
[実施例1]
以下、本発明の実施例1に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施形態に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
以下、本発明の実施例1に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施形態に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
図4は、本実施例に係る光学系20の要部概略図であり、垂直断面(YZ断面)及び水平断面(ZX断面)の夫々を示している。本実施例に係る光学系20は、−Z側から順に配置された、正のパワーを有する第1の回折素子L1と負のパワーを有する第2の回折素子L2とで構成されている。第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2は、何れも垂直断面と水平断面とで互いに同じパワーを有している。
垂直断面及び水平断面の夫々において、瞳位置P1及びP2から出射した平行光は、第1の回折素子L1で集光された後、第2の回折素子L2で再び平行光に変換される。ただし、ここでの瞳位置とは、第1の回折素子L1の回折面に入射する各主光線を光源側に延長したときに、夫々が光軸上で交わる点の位置(入射瞳)のことである。すなわち、光源部10が走査部13を備える場合は、瞳位置は走査部13の出射面(偏向面)に相当する。このように、各回折素子により、光学系20に入射する光の角度が、それとは異なる角度に変換(変倍)されることになる。このように、本実施例に係る光学系20は、入射光の角度を変換するアフォーカル光学系としての機能を有している。なお、本実施例における瞳位置P1及びP2は、互いに一致している。
光源部10からの光の第1の回折素子L1に対する入射角の最大値は、垂直断面において±3°、水平断面において±10°となっている。そして、光学系20の垂直断面及び水平断面における角倍率は何れも3倍であるため、第2の回折素子L2から出射する光の出射角の最大値は、垂直断面において±9°、水平断面において±30°となる。このように、光学系20を拡大系とし、光学系20によって入射光の角度を拡大したい場合は、第1の回折素子L1のパワーの符号を正、第2の回折素子L2のパワーの符号を負とすることが望ましい。
本実施例に係る各回折素子はシリコン材料で構成されており、夫々の回折面は基準波長λ0を1550nmとして設計されている。なお、不図示の光源から出射するピーク強度を有する光の波長λsの値は、基準波長λ0と同様に1550nmである。また、光学系20の瞳の直径(瞳径)は、垂直断面及び水平断面において共に1mmである。
これらの構成により、光学系20から射出された平行光が、光学系20から200m離れた位置にある被照射面に到達したときのスポットサイズを、252mm以下と十分に小さくすることができる。また、仮に各回折素子が100μm程度偏心したとしても、スポットサイズを333mm以下に抑えることができる。さらに、組立誤差などにより、光学系20の光軸が光源部10の光軸に対して0.1度程度チルトしたとしても、スポットサイズを337mm以下に抑えることができる。
[実施例2]
以下、本発明の実施例2に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
以下、本発明の実施例2に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
図5は、本実施例に係る光学系20の要部概略図である。本実施例に係る光学系20は、実施例1に係る光学系20とは異なり、瞳位置P1及びP2が互いに一致しない構成を採っている。また、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2は、何れも垂直断面と水平断面とで互いに異なるパワーを有している。
光源部10からの光の第1の回折素子L1に対する入射角の最大値は、垂直断面において±2.5°、水平断面において±10°となっている。そして、光学系20の垂直断面における角倍率は4倍、水平断面における角倍率は2倍であるため、第2の回折素子L2から出射する光の出射角の最大値は、垂直断面において±10°、水平断面において±20°となる。
本実施例に係る各回折素子は、可視域で用いられる一般的な材料であるS−BAL42(株式会社オハラ)で構成されており、夫々の回折面は基準波長λ0を1550nmとして設計されている。波長λsの値は、基準波長λ0と同様に1550nmである。また、光学系20の瞳径は、垂直断面において1mm、水平断面において2.5mmである。
これらの構成により、光学系20から射出された平行光が、光学系20から200m離れた位置にある被照射面に到達したときのスポットサイズを、340mm以下と十分に小さくすることができる。また、仮に各回折素子が50μm程度偏心したとしても、スポットサイズを750mm以下に抑えることができる。さらに、光学系20の光軸が光源部10の光軸に対して0.1度程度チルトしたとしても、スポットサイズを774mm以下に抑えることができる。
[実施例3]
以下、本発明の実施例3に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
以下、本発明の実施例3に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
図6は、本実施例に係る光学系20の要部概略図である。本実施例に係る光学系20は、実施例1に係る光学系20とは異なり、瞳位置P1及びP2が互いに一致しない構成を採っている。また、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2は、何れも垂直断面と水平断面とで互いに異なるパワーを有している。
光源部10からの光の第1の回折素子L1に対する入射角の最大値は、垂直断面において±2.5°、水平断面において±10°となっている。そして、光学系20の垂直断面における角倍率は4倍、水平断面における角倍率は2倍であるため、第2の回折素子L2から出射する光の出射角の最大値は、垂直断面において±10°、水平断面において±20°となる。
本実施例に係る各回折素子は石英材料で構成されており、夫々の回折面は基準波長λ0を905nmとして設計されている。波長λsの値は、基準波長λ0と同様に905nmである。また、光学系20の瞳径は、垂直断面において1mm、水平断面において2.5mmである。
これらの構成により、光学系20から射出された平行光が、光学系20から200m離れた位置にある被照射面に到達したときのスポットサイズを、207mm以下と十分に小さくすることができる。また、仮に各回折素子が100μm程度偏心したとしても、スポットサイズを210mm以下に抑えることができる。さらに、光学系20の光軸が光源部10の光軸に対して0.1度程度チルトしたとしても、スポットサイズを214mm以下に抑えることができる。
[実施例4]
以下、本発明の実施例4に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
以下、本発明の実施例4に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
図7は、本実施例に係る光学系20の要部概略図である。本実施例に係る光学系20は、実施例1に係る光学系20とは異なり、−Z側から順に配置された、正のパワーを有する第1の回折素子L1と正のパワーを有する第2の回折素子L2とで構成されている。第1の回折素子L1は瞳位置P1及びP2からの平行光を集光して中間像を形成し、第2の回折素子L2は中間像からの光を再び平行光に変換している。また、第1の回折素子L1は垂直断面と水平断面とで互いに異なるパワーを有しているが、第2の回折素子L2は垂直断面と水平断面とで同じパワーを有している。
光源部10からの光の第1の回折素子L1に対する入射角の最大値は、垂直断面及び水平断面において共に±30°となっている。そして、光学系20の垂直断面における角倍率は0.28倍、水平断面における角倍率は0.32倍であるため、第2の回折素子L2から出射する光の出射角の最大値は、垂直断面において±8.5°、水平断面において±9.5°となる。このように、光学系20を縮小系とし、光学系20によって入射光の角度を縮小したい場合は、第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2のパワーの符号を共に正とすることが望ましい。
本実施例に係る各回折素子はシリコン材料で構成されており、夫々の回折面は基準波長λ0を1550nmとして設計されている。波長λsの値は、基準波長λ0と同様に1550nmである。また、光学系20の瞳径は、垂直断面及び水平断面において共に1mmである。
これらの構成により、光学系20から射出された平行光が、光学系20から200m離れた位置にある被照射面に到達したときのスポットサイズを、123mm以下と十分に小さくすることができる。また、仮に各回折素子が100μm程度偏心したとしても、スポットサイズを124mm以下に抑えることができる。さらに、光学系20の光軸が光源部10の光軸に対して0.1度程度チルトしたとしても、スポットサイズを126mm以下に抑えることができる。
[実施例5]
以下、本発明の実施例5に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
以下、本発明の実施例5に係る光学系20について説明する。本実施例に係る光学系20において、上述した実施例1に係る光学系20と同等の構成については説明を省略する。
図8は、本実施例に係る光学系20の要部概略図である。本実施例に係る光学系20は、実施例1に係る光学系20とは異なり、3枚の回折素子で構成されている。具体的に、本実施例に係る光学系20は、−Z側から順に配置された、正のパワーを有する第1の回折素子L1と、垂直断面において負のパワー、水平断面において正のパワーを有する第3の回折素子L3と、負のパワーを有する第2の回折素子L2とから成る。光学系20の光学素子の中で、最もパワーの大きい上位二つは第1の回折素子L1及び第2の回折素子L2である。各回折素子は、何れも垂直断面と水平断面とで互いに異なるパワーを有している。
光源部10からの光の第1の回折素子L1に対する入射角の最大値は、垂直断面において±3°、水平断面において±15°となっている。そして、光学系20の垂直断面における角倍率は5倍、水平断面における角倍率は3倍であるため、第2の回折素子L2から出射する光の出射角の最大値は、垂直断面において±15°、水平断面において±45°となる。本実施例に係る各回折素子はシリコン材料で構成されており、夫々の回折面は基準波長λ0を10000nmとして設計されている。波長λsの値は、基準波長λ0と同様に10000nmである。また、光学系20の瞳径は、垂直断面及び水平断面において共に1mmである。
これらの構成により、光学系20から射出された平行光が、光学系20から200m離れた位置にある被照射面に到達したときのスポットサイズを、48mm以下と十分に小さくすることができる。また、仮に各回折素子が100μm程度偏心したとしても、スポットサイズを83mm以下に抑えることができる。さらに、光学系20の光軸が光源部10の光軸に対して0.1度程度チルトしたとしても、スポットサイズを101mm以下に抑えることができる。
[数値実施例]
以下、上述した実施例1乃至5に対応する数値実施例1乃至5を示す。各数値実施例において、面番号は、瞳位置から数えたときの瞳面を含む各光学面の順番である。ただし、瞳位置P1及びP2が互いに異なる場合は、各瞳面を互いに異なる面番号として示している。r[mm]は第i番目の光学面の曲率半径を示し、d[mm]は第i番目の光学面と第(i+1)番目の光学面の間隔を示す。また、Nは、第i番目の光学面と第(i+1)番目の光学面の間の媒質(材料)の基準波長λ0に対する屈折率を示す。なお、回折面については、面番号の横に*(アスタリスク)を付している。
以下、上述した実施例1乃至5に対応する数値実施例1乃至5を示す。各数値実施例において、面番号は、瞳位置から数えたときの瞳面を含む各光学面の順番である。ただし、瞳位置P1及びP2が互いに異なる場合は、各瞳面を互いに異なる面番号として示している。r[mm]は第i番目の光学面の曲率半径を示し、d[mm]は第i番目の光学面と第(i+1)番目の光学面の間隔を示す。また、Nは、第i番目の光学面と第(i+1)番目の光学面の間の媒質(材料)の基準波長λ0に対する屈折率を示す。なお、回折面については、面番号の横に*(アスタリスク)を付している。
また、回折面の位相関数Φは、以下の式で表わされる。ただし、Cnは位相関数係数、xは光軸からの水平方向(X方向)における距離、yは光軸からの垂直方向(Y方向)における距離である。なお、各数値実施例の位相関数データにおける「E±X」は、「10±X」を意味する。
(数値実施例1)
面データ
面番号 r d N
1(P1,P2) ∞ 10
2 ∞ 0.73 3.479
3* ∞ 4.95
4* ∞ 0.73 3.479
5 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
3 -6.654E-02 -6.654E-02 0.000E+00
4 1.988E-01 1.988E-01 0.000E+00
面データ
面番号 r d N
1(P1,P2) ∞ 10
2 ∞ 0.73 3.479
3* ∞ 4.95
4* ∞ 0.73 3.479
5 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
3 -6.654E-02 -6.654E-02 0.000E+00
4 1.988E-01 1.988E-01 0.000E+00
(数値実施例2)
面データ
面番号 r d N
1(P2) ∞ 6
2(P1) ∞ 10
3 ∞ 1 1.565
4* ∞ 3
5* ∞ 1 1.565
6 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C10
4 -8.223E-02 -1.224E-01 2.838E-04
5 1.630E-01 4.621E-01 -1.512E-03
面番号 C12 C14 C3,C5,C10,C12,C14以外
4 6.146E-04 1.225E-03 0.000E+00
5 -4.879E-03 -3.635E-02 0.000E+00
面データ
面番号 r d N
1(P2) ∞ 6
2(P1) ∞ 10
3 ∞ 1 1.565
4* ∞ 3
5* ∞ 1 1.565
6 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C10
4 -8.223E-02 -1.224E-01 2.838E-04
5 1.630E-01 4.621E-01 -1.512E-03
面番号 C12 C14 C3,C5,C10,C12,C14以外
4 6.146E-04 1.225E-03 0.000E+00
5 -4.879E-03 -3.635E-02 0.000E+00
(数値実施例3)
面データ
面番号 r d N
1(P2) ∞ 6
2(P1) ∞ 15
3 ∞ 0.73 1.444
4* ∞ 24.45
5* ∞ 0.73 1.444
6 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
4 -1.000E-02 -1.549E-02 0.000E+00
5 1.971E-02 6.134E-02 0.000E+00
面データ
面番号 r d N
1(P2) ∞ 6
2(P1) ∞ 15
3 ∞ 0.73 1.444
4* ∞ 24.45
5* ∞ 0.73 1.444
6 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
4 -1.000E-02 -1.549E-02 0.000E+00
5 1.971E-02 6.134E-02 0.000E+00
(数値実施例4)
面データ
面番号 r d N
1(P1,P2) ∞ 6
2 ∞ 1 3.479
3* ∞ 32.82
4 ∞ 1 3.479
5* ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
4 -6.220E-02 -7.061E-02 0.000E+00
5 -1.989E-02 -1.989E-02 0.000E+00
面データ
面番号 r d N
1(P1,P2) ∞ 6
2 ∞ 1 3.479
3* ∞ 32.82
4 ∞ 1 3.479
5* ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
4 -6.220E-02 -7.061E-02 0.000E+00
5 -1.989E-02 -1.989E-02 0.000E+00
(数値実施例5)
面データ
面番号 r d N
1(P1,P2) ∞ 10
2 ∞ 0.73 3.416
3* ∞ 3.30
4* ∞ 0.73 3.416
5 ∞ 3.70
6* ∞ 0.73 3.416
7 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
3 -4.075E-02 -5.641E-02 0.000E+00
4 -8.026E-03 3.283E-03 0.000E+00
6 1.273E-01 2.687E-01 0.000E+00
面データ
面番号 r d N
1(P1,P2) ∞ 10
2 ∞ 0.73 3.416
3* ∞ 3.30
4* ∞ 0.73 3.416
5 ∞ 3.70
6* ∞ 0.73 3.416
7 ∞
位相関数データ
面番号 C3 C5 C3,C5以外
3 -4.075E-02 -5.641E-02 0.000E+00
4 -8.026E-03 3.283E-03 0.000E+00
6 1.273E-01 2.687E-01 0.000E+00
表1及び表2に、上述した各実施例に係る光学系20についての各条件式に関する数値を示す。表1は垂直断面における数値を示し、表2は水平断面における数値を示している。表1及び表2に示すように、何れの実施例に係る光学系20についても、各断面において全ての条件式を満足している。
[測距装置]
図9は、上述した実施形態に係る照明装置1を適用した測距装置100の光軸を含むZX断面における要部概略図(模式図)である。本実施形態に係る測距装置100は、対象物からの反射光を受光するまでの時間やその反射光の位相に基づいて対象物までの距離を算出する、LiDAR(Light Detection And Ranging)という技術を用いている。なお、対象物は測距装置100の+Z側に配置されているものとする。
図9は、上述した実施形態に係る照明装置1を適用した測距装置100の光軸を含むZX断面における要部概略図(模式図)である。本実施形態に係る測距装置100は、対象物からの反射光を受光するまでの時間やその反射光の位相に基づいて対象物までの距離を算出する、LiDAR(Light Detection And Ranging)という技術を用いている。なお、対象物は測距装置100の+Z側に配置されているものとする。
測距装置100は、照明装置1と、照明装置1により照明された対象物からの光(反射光又は散乱光)を受光する受光部2とを備える。受光部2は、対象物からの光を受光して信号を出力する受光素子21と、対象物からの光を受光素子21に導く光学系(受光光学系)22とを有する。受光素子21としては、例えばAPD(Avalanche Photodiode)アレイやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの光電変換素子(撮像素子)を採用することができる。受光光学系22としては、1枚以上のレンズなどの光学素子で構成され、対象物からの光を受光素子21の受光面に集光するものを採用することができる。
また、測距装置100は、照明装置1が射出する照明光を制御する第1制御部(照明制御部)31と、受光素子21の出力に基づいて対象物までの距離に関する情報(距離情報)を取得する第2制御部(距離算出部)32とを備えている。第1制御部31は、例えば光源を制御することで照明光をパルス光としたり、照明光の強度変調を行って信号光を生成したりすることができる。第2制御部32は、照明装置1の光源から照明光が出射した時刻から、受光素子21が対象物からの光を受光した時刻までの時間に基づいて、対象物の距離情報を取得することができる。
なお、対象物からの光を受光するまでの時間ではなく、対象物からの光の位相に基づいて距離情報を取得してもよい。具体的には、照明装置1における光源の信号の位相と受光素子21から出力される信号の位相との差分(位相差)を求め、その位相差に光速を乗じることで、対象物の距離情報を取得してもよい。また、必要に応じて第1制御部31及び第2制御部32を設けずに、測距装置100を撮像装置として構成してもよい。
このようなLiDARを用いた測距装置は、対象物としての車両や人、又は障害物等を識別し、その対象物の距離情報に応じて自車両を制御する車載システムに好適なものである。なお、LiDARを用いた測距装置としては、照明装置の光軸と受光部の光軸とが一致する同軸系か、あるいは照明装置の光軸と受光部の光軸とが一致しない非同軸系を採用することができる。本実施形態に係る照明装置1は、図9に示したような非同軸系に特に好適なものである。
[車載システム]
図10は、本実施形態に係る測距装置100及びそれを備える車載システム(運転支援装置)600の構成図である。車載システム600は、自動車(車両)等の移動可能な移動体(移動装置)により保持され、測距装置100により取得した車両の周囲の対象物(障害物)の距離情報に基づいて、車両の運転を支援するための装置である。図11は、車載システム600を含む車両700の模式図である。図7においては、測距装置100の測距範囲50を車両700の前方に設定した場合を示しているが、測距範囲50を車両700の後方や側方などに設定してもよい。
図10は、本実施形態に係る測距装置100及びそれを備える車載システム(運転支援装置)600の構成図である。車載システム600は、自動車(車両)等の移動可能な移動体(移動装置)により保持され、測距装置100により取得した車両の周囲の対象物(障害物)の距離情報に基づいて、車両の運転を支援するための装置である。図11は、車載システム600を含む車両700の模式図である。図7においては、測距装置100の測距範囲50を車両700の前方に設定した場合を示しているが、測距範囲50を車両700の後方や側方などに設定してもよい。
図10に示すように、車載システム600は、測距装置100と、車両情報取得装置200と、制御装置(ECU:エレクトロニックコントロールユニット)300と、警告装置400とを備える。測距装置100は、上述した照明装置1、受光部2、第1制御部31、及び第2制御部32を備えている。本実施形態に係る第2制御部32は、距離算出部及び衝突判定部としての機能を有する。
図12は、本実施形態に係る車載システム600の動作例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って、車載システム600の動作を説明する。
まず、ステップS1では、照明装置1により車両の周囲の対象物を照明し、対象物からの反射光を受光することで受光部2が出力する信号に基づいて、第2制御部32により対象物の距離情報を取得する。また、ステップS2では、車両情報取得装置200から車両の車速、ヨーレート、舵角などを含む車両情報の取得を行う。そして、ステップS3では、第2制御部32によって、ステップS2で取得された距離情報が予め設定された設定距離の範囲内に含まれるか否かの判定を行う。
これにより、車両の周囲の設定距離内に障害物が存在するか否かを判定し、車両と障害物との衝突可能性を判定することができる。なお、ステップS1及びS2は、上記の順番とは逆の順番で処理を行ってもよいし、互いに並列して処理を行ってもよい。第2制御部32は、設定距離内に障害物が存在する場合は「衝突可能性あり」と判定し(ステップS4)、設定距離内に障害物が存在しない場合は「衝突可能性なし」と判定する(ステップS5)。
次に、第2制御部32は、「衝突可能性あり」と判定した場合、その判定結果を制御装置300や警告装置400に対して通知する。このとき、制御装置300は、第2制御部32での判定結果に基づいて車両を制御し(ステップS6)、警告装置400は、第2制御部32での判定結果に基づいて運転者への警告を行う(ステップS7)。なお、判定結果の通知は、制御装置300及び警告装置400の少なくとも一方に行えばよい。
制御装置300は、車両に対して、例えばブレーキをかける、アクセルを戻す、各輪に制動力を発生させる制御信号を生成してエンジンやモータの出力を抑制する、などの制御を行う。また、警告装置400は、車両のユーザ(運転者)に対して、例えば警告音(警報)を発する、カーナビゲーションシステムなどの画面に警告情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどの警告を行う。
以上、本実施形態に係る車載システム600によれば、上記の処理により障害物の検知を行うことができ、車両と障害物との衝突を回避することが可能になる。特に、上述した各実施例に係る光学系を車載システム600に適用することで、高い測距精度を実現することができるため、障害物の検知及び衝突判定を高精度に行うことが可能になる。
なお、本実施形態では、車載システム600を運転支援(衝突被害軽減)に適用したが、これに限らず、車載システム600をクルーズコントロール(全車速追従機能付を含む)や自動運転などに適用してもよい。また、車載システム600は、自動車等の車両に限らず、例えば船舶や航空機、産業用ロボットなどの移動体に適用することができる。また、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)や監視システム等の物体認識を利用する種々の機器に適用することができる。
[変形例]
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。例えば、上述した各実施例では、第1及び第2の回折素子のパワーの符号が垂直断面と水平断面とで互いに等しくなっているが、必要に応じて各回折素子のパワーの符号を垂直断面と水平断面とで互い異ならせてもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。例えば、上述した各実施例では、第1及び第2の回折素子のパワーの符号が垂直断面と水平断面とで互いに等しくなっているが、必要に応じて各回折素子のパワーの符号を垂直断面と水平断面とで互い異ならせてもよい。
また、上述した実施形態においては、第2制御部が衝突判定部(判定部)としての機能を有する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、車載システムにおいて、第2制御部とは別体の衝突判定部を設けてもよい。すなわち、第2制御部は、少なくとも距離算出部(距離情報取得部)としての機能を有していればよい。また、必要に応じて第1及び第2の制御部を測距装置の外部(例えば車両の内部)に設けてもよい。
11 光源
20 光学系
L1 第1の回折素子
L2 第2の回折素子
20 光学系
L1 第1の回折素子
L2 第2の回折素子
Claims (27)
- 光源からの光を対象物に導く光学系であって、
前記光源の側から順に配置された第1及び第2の回折素子を備え、
該第1及び第2の回折素子の夫々は、回折面を含む平板で構成されており、
前記第1の回折素子の焦点距離をf1、前記光学系の焦点距離をfとするとき、光軸を含む第1の断面及び光軸を含み該第1の断面に垂直な第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(1)を満足することを特徴とする光学系。
−0.050≦f1/f≦0.050 (1) - 前記第1及び第2の断面の両方において前記条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
- 前記光学系を構成する光学素子の中で、前記第1及び第2の回折素子の何れか一方のパワーの絶対値が最も大きく、他方のパワーの絶対値が二番目に大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
- 前記第2の回折素子の焦点距離をf2とするとき、前記第1及び第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学系。
1.2≦|f1/f2|≦10.0 (2) - 前記第2の回折素子の焦点距離をf2とするとき、前記第1及び第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学系。
1.2≦|f2/f1|≦10.0 (3) - 前記第2の回折素子は、正のパワーを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学系。
- 光軸から前記第1及び第2の回折素子の第1輪帯の格子頂点までの距離を各々SL1[μm]及びSL2[μm]、前記第1及び第2の回折素子の回折面の間の距離をDd[mm]、前記光源から出射するピーク強度を有する光の波長をλs[nm]とするとき、前記第1及び第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項6に記載の光学系。
0.85≦(SL12+SL22)/(2λs×Dd)≦1.15 (4) - 前記第2の回折素子は、負のパワーを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学系。
- 光軸から前記第1及び第2の回折素子の第1輪帯の格子頂点までの距離を各々SL1[μm]及びSL2[μm]、前記第1及び第2の回折素子の回折面の間の距離をDd[mm]、前記光源から出射するピーク強度を有する光の波長をλs[nm]とするとき、前記第1及び第2の断面の少なくとも一方において以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項8に記載の光学系。
0.85≦(SL12−SL22)/(2λs×Dd)≦1.15 (4) - 前記第1及び第2の断面の両方において前記条件式(4)を満足することを特徴とする請求項7又は9に記載の光学系。
- 前記第1の回折素子は、正のパワーを有することを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の光学系。
- 前記第1及び第2の回折素子の夫々の回折面は、互いに対向していることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の光学系。
- 前記第1の回折素子は、シリコン材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の光学系。
- 前記第2の回折素子は、シリコン材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の光学系。
- 前記第1及び第2の回折素子の少なくとも一方は、前記第1の断面と前記第2の断面とで互いに異なるパワーを有することを特徴とする請求項1乃至14の何れか一項に記載の光学系。
- 前記第1及び第2の回折素子の夫々は、前記第1の断面と前記第2の断面とで互いに異なるパワーを有することを特徴とする請求項15に記載の光学系。
- 前記第1及び第2の回折素子から成ることを特徴とする請求項1乃至16の何れか一項に記載の光学系。
- 前記光源を有する光源部と、請求項1乃至17の何れか一項に記載の光学系とを有することを特徴とする照明装置。
- 前記光源から出射するピーク強度を有する光の波長をλs[nm]とするとき、以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項18に記載の照明装置。
850≦λs≦14000 (5) - 前記光源部は、前記光源からの光を偏向して前記対象物を走査する走査部を備えることを特徴とする請求項18又は19に記載の照明装置。
- 前記走査部は、電圧の印加により屈折率が変化する光学素子を含むことを特徴とする請求項20に記載の照明装置。
- 請求項17乃至21の何れか一項に記載の照明装置と、前記対象物からの光を受光する受光素子とを備えることを特徴とする測距装置。
- 前記受光素子の出力に基づいて前記対象物の距離情報を取得する制御部を備えることを特徴とする請求項22に記載の測距装置。
- 請求項22又は23に記載の測距装置と、該測距装置によって得られた前記対象物の距離情報に基づいて車両と前記対象物との衝突可能性を判定する判定部とを備えることを特徴とする車載システム。
- 前記車両と前記対象物との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両の各輪に制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置を備えることを特徴とする請求項24に記載の車載システム。
- 前記車両と前記対象物との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両の運転者に
対して警告を行う警告装置を備えることを特徴とする請求項24又は25に記載の車載システム。 - 請求項22又は23に記載の測距装置を備え、該測距装置を保持して移動可能であることを特徴とする移動装置。
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2018
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