JP2020051013A - 潜在捲縮性を有する複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維中に含まれる顔料と繊維に付与された油剤とによる凝集物の発生を抑制し、顔料や油剤に起因する機台汚れを低減させ、スパンレース製造工程において、繊維から脱落した油剤に起因するスカムの発生を改善し、操業性に優れ、かつ品位を有する不織布を得ることができる潜在捲縮性を有する複合繊維を提供する。【解決手段】潜在捲縮性を有する複合繊維であって、該複合繊維は粘度の異なる2種のポリエステルがサイドバイサイド型に接合して配されてなり、かつ該複合繊維は、スパンレース不織布を製造するための繊維であり、該複合繊維には、スパンレース不織布用繊維処理剤が付着してなり、該スパンレース不織布用繊維処理剤は、(1)ポリエステルとのせん断強さが6.0N未満、(2)脱落率が25%未満、(3)溶液通過量が80mL以上 の(1)〜(3)を全て満たすことを特徴とする潜在捲縮性を有する複合繊維。【選択図】 なし

Description

本発明は、スパンレース不織布を製造する際に用いる潜在捲縮性を有する複合繊維に関するものである。
従来から、ポリエステル繊維は、衣料用、産業資材用等種々の用途に使用されているが、中でも立体捲縮を有するポリエステル繊維は、その伸縮性を生かし、貼付剤やサポーター等の医療衛生材の基布に適した不織布の構成繊維として広く用いられている。このような伸縮性に富んだ立体捲縮を有するポリエステル繊維として、熱収縮特性の異なるポリマーをサイドバイサイドまたは偏芯芯鞘構造に複合した潜在捲縮性能を有する複合繊維が数多く提案されている。
例えば、特許文献1、2、3には、特定の共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートからのなるサイドバイサイド型潜在捲縮性複合繊維であって、ポリエステルに顔料を含有させた原着繊維およびこの繊維を用いた不織布が開示されている。しかし、これらいずれの繊維も繊維中に顔料が含まれており、また、繊維に付与する油剤についても特に鋭意検討されていないため、繊維の延伸工程および不織布の製造工程において、繊維表面が摩擦抵抗を受けた際に、油剤や繊維中に含まれる一部の顔料が脱落してしまい、機械設備の汚染が生じることや、機械設備に脱落し堆積した顔料が油剤のベタツキにより凝集物となり、原料繊維やこれを用いた不織布などの製品に混入してしまうなどの、品位面での問題があった。特に有色顔料を含有した原着繊維の場合、上記の問題が顕著となる。
潜在捲縮性を有する複合繊維はその特性を十分に発揮させるために、スパンレース不織布として用いられることが多い。スパンレース不織布用ポリエステル繊維やスパンレース用繊維処理剤(油剤)として、例えば、特許文献4、5、6があり、これらの発明にはスパンレース不織布工程における工程通過性(カード通過性)、低起泡性、スカム抑制を目的とした油剤が記載されているものの、油剤のベタツキによる設備汚染や、顔料と油剤による凝集物による設備汚染と不織布品位低下については記載がなく、優れた操業性、品位、潜在捲縮性、隠蔽性を全て満たした複合繊維は未だに提案されていない。
特開昭60−9914号公報 特許第2815410号公報 特許第5959906号公報 特開2007−31906号公報 特開2011−202301号公報 特許第6132966号
本発明は、繊維中に含まれる顔料と繊維に付与された油剤とによる凝集物の発生を抑制し、顔料や油剤に起因する機台汚れを低減させ、スパンレース製造工程において、繊維から脱落した油剤に起因するスカムの発生を改善し、操業性に優れ、かつ品位を有する不織布を得ることができる潜在捲縮性を有する複合繊維を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料を含む複合繊維であっても、特定の油剤を繊維に付与することで、機械設備や不織布の汚染の少ない優れた操業性、品位、伸縮性、隠蔽性を有する不織布を得ることが可能な複合繊維を得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、潜在捲縮性を有する複合繊維であって、該複合繊維は粘度の異なる2種のポリエステルがサイドバイサイド型に接合して配されてなり、かつ該複合繊維は、スパンレース不織布を製造するための繊維であり、
該複合繊維には、スパンレース不織布用繊維処理剤が付着してなり、該スパンレース不織布用繊維処理剤は、(1)せん断強さが6.0N未満、(2)脱落率が25%未満、(3)溶液通過量が80mL以上 の(1)〜(3)を全て満たすことを特徴とする潜在捲縮性を有する複合繊維を要旨とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の潜在捲縮性を有する複合繊維(以下、単に「本発明の複合繊維」ともいう。)は、粘度の異なる2種のポリエステルがサイドバイサイド型に接合して配されている。粘度の異なる2種のポリエステルは、その極限粘度差は、捲縮の発現性を考慮すると、少なくとも0.03以上がよい。また、極限粘度差の上限は、0.20がよい。極限粘度差が0.20を超えると、紡糸口金直下の糸条の曲がりが大きくなり、紡糸が不安定になるため好ましくない。
粘度の異なる2種のポリエステルとしては、具体的には、低粘度ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステル、高粘度ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、イソフタル酸とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(BAEO)を共重合された共重合ポリエステルの組合せが挙げられる。
低粘度ポリエステルは、ホモポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく用いられるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸成分、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール成分を共重合したものでもよい。また、安定剤、蛍光剤、強化剤、難燃剤、酸化防止剤、分散剤等の改質剤が添加されたものを用いてもよい。
高粘度ポリエステルとしての共重合ポリエステルは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、イソフタル酸とビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(BAEO)を共重合されたものが好ましく用いられ、イソフタル酸の共重合割合は0〜9mol%が好ましく、BAEOは5〜11mol%共重合することが好ましい。さらにイソフタル酸とBAEOの合計量が10〜18mol%とした共重合ポリエステルであることが好ましい。イソフタル酸の共重合割合が9mol%を超えるとポリマーの融点が低下し、複合繊維を得るのが困難となり、また得られる繊維の強度が低下する。BAEOの共重合割合が5mol%未満であると、得られる複合繊維は潜在捲縮性能が不十分となり、このような複合繊維を不織布とした場合、伸長率や伸長回復率が小さく、伸縮性能が劣るものとなる。一方、11mol%を超えるとポリマーの融点が低下し、複合繊維を得るのが困難となり、また得られる繊維の強度が低下する。BAEOはビスフェノールA1molに対して、エチレンオキシドを2〜10mol付加したものが好ましく、さらには2〜5mol付加したものが好ましい。
また、イソフタル酸とBAEOの合計量が10mol%未満であると、繊度が小さい複合繊維は潜在捲縮性能が不十分となり、この複合繊維を不織布とした場合、伸長率や伸長回復率が小さく、伸縮性能が劣るものとなる。一方、18mol%を超えるとポリマーの融点が低下し、複合繊維を得るのが困難となり、また得られる繊維の強度が低下する。
前記した低粘度ポリエステルと、前記した高粘度ポリエステル(共重合ポリエステル)における具体的な極限粘度としては、低粘度ポリエステルは0.52〜0.72、高粘度ポリエステルは0.60〜0.80の範囲とし、紡糸安定性に優れるためには、2種のポリマーの極限粘度差を0.20以下であるものを選択するとよい。
本発明の複合繊維の断面形状は、円形断面、偏平、六葉、三角断面等の異形あるいは中空断面等のものが挙げられる。
本発明の複合繊維は、単繊維繊度が2.6dtex以下であることが好ましい。2.6dtexを超えると、柔軟性に劣る不織布となるからである。一方、単繊維繊度の下限は、0.4dtex程度がよい。0.4dtexを下回ると紡糸操業性が悪化し、均質な繊維を得にくくなるためである。
本発明の複合繊維は白色顔料を含み、その含有量は、繊維中に0.1〜3質量%が好ましい。0.1質量%以上とすることにより、本発明の繊維を用いた製品の隠蔽性が良好となる、種々の用途へ適用可能となる。一方、3質量%以下とすることにより、紡糸や延伸工程での糸切れや毛羽、ローラー捲きが発生しにくく、操業性を良好に維持できる。
本発明で使用する白色顔料は、成形、焼成等の工程を経て得られる無機材料を微粒化したものを用いるとよく、酸化チタン、酸化珪素、酸化亜鉛等の無機酸化物微粒子が代表的であり、ポリエステルとの界面における表面張力が小さく、溶融時に凝集し難いものが操業上及び品位上から好ましい。なかでも酸化チタンを用いることが好ましい。
白色顔料は、平均粒径が0.2〜2μmの範囲にあるものを用いるとよい。なお、平均粒径とは、セラミック微粒子をエチレングリコール溶液に微分散させた後、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD―2000Jを用い、体積分布基準換算、屈折率1.70―0.20iの条件で測定するものである。平均粒径がこの範囲にある白色顔料が繊維表面に部分的に露出することにより、繊維表面の滑りがよくなる。平均粒径がこの範囲より小さいと繊維表面を改質する効果が乏しい。一方、この範囲より大きいと粒子が局部的に大きく露出してしまうため摩擦抵抗が大きくなり、さらには、粒子が局在するために、紡糸時に応力の偏りによる糸切れが発生したり、延伸時に毛羽が発生する等、操業的な問題が発生する場合がある。
白色顔料の密度は3.5g/cm以上のものを用いるとよい。密度が3.5g/cmより小さいと、繊維の密度を増す効果が乏しく、不織布としたときに良好なドレープ性や高級感を発現しにくい傾向となり、一方、密度を増すために多量に含有させ過ぎた場合は紡糸時に糸切れが発生したり、延伸、加工時に毛羽が発生する等、操業性に問題があり、好ましくない。白色顔料の密度の上限は特に限定されるものではないが、凝集によるトラブルや操業性を考慮すると、5g/cm程度がよい。
白色顔料は、ポリエステルの重合時あるいは紡糸時の溶融段階で添加することが可能であるが、凝集を防ぎ、より均一に分散させることを考慮すると、重合時に添加することが好ましい。
本発明の複合繊維は、所望の色を付与するために有色顔料を含有させてもよい。本発明において有色顔料とは、白色顔料以外の色を呈する顔料をいう。有色顔料は、2種のポリエステルのいずれか一方、もしくは両方に含有させてもよいが、低粘度ポリエステルのみに有色顔料を含有させることが好ましい。有色顔料を低粘度ポリエステルに添加すると、低粘度ポリエステルの見かけの溶融粘度が高くなって、低粘度ポリエステルと高粘度ポリエステルの見かけの溶融粘度差が小さくなることにより、紡糸性が向上するため好ましいのである。なお、潜在捲縮性を有する複合繊維の性質上、一方が有色顔料を含有するだけでも着色の効果が十分に得られるため、コスト等を考慮すると、一方のみに含有させることが好ましい。
有色顔料の含有量は、複合繊維全体に対して0.0010〜0.40質量%であることが好ましく、さらに0.0015〜0.30質量%であることが好ましい。含有量が0.0010質量%未満であると、所望する十分な発色が得られない。一方、含有量が0.40質量%を超えると、紡糸延伸性が悪くなり、操業性が悪化する。またコスト的にも不利になるため好ましくない。
有色顔料としては、酸化鉄、酸化鉄亜鉛、カーボンブラック、群青等の無機系顔料や、フタロシアニン系、ペリレン系、イソインドリノン系、アゾ系、アンスラキノン系等の有機系顔料が挙げられる。目的とする発色を得るために、これらの有色顔料を適宜選定し、ブレンドして使用すればよい。
有色顔料の添加方法については、ポリエステルの重合段階あるいは複合繊維の製糸段階のいずれかの過程で添加すればよく、特に限定はしないが、設備の汚染、制御等取扱性から製糸段階に添加するのが好ましい。添加方法としては、マスターバッチ方式、リキッドカラー方式等が挙げられるが、溶融紡糸時の安定性、有色顔料の取扱性等より、マスターバッチ方式が好ましい。なお、マスターバッチ方式を採用する場合、原料ペレットの段階で計量混合して溶融紡糸する方法、別々に溶融させたポリマーを計量混合して紡糸する方法等が挙げられるが、いずれの方法で行ってもよい。
本発明の複合繊維は、(1)せん断強さが6.0N未満、(2)脱落率が25%未満、(3)溶液通過量が80mL以上の全てを満たすスパンレース不織布用処理剤が付着している。
スパンレース不織布用処理剤(以下、「スパンレース用処理剤」ともいう。)は、せん断強さが6.0N未満であることにより、繊維に付着したスパンレース用処理剤が、不織布の製造工程において、摩擦等により脱落した場合であっても、粘着力が抑制されていることから、脱落した処理剤が塊状となりにくく、品位の良好な不織布を得ることができる。スパンレース用処理剤は、不織ウェブを作成するためのカード工程における工程通過性を良好とし、また、水流交絡時の交絡性を向上させるものである。しかしながら、カード工程において、スパンレース用処理剤がカード機との摩擦により繊維から脱落すると、繊維から脱落したスパンレース用処理剤がカード機に付着し、それが繰り返されると、カード機に付着したスパンレース用処理剤が塊状となり、そのスパンレース用処理剤の塊(凝集物)が不織ウェブ上に落下し、得られるスパンレース不織布の欠点となる恐れがある。スパンレース用処理剤が、ポリエステルとのせん断強さが6.0N未満であると、繊維に付着したスパンレース処理剤が、カード工程での摩擦によっても繊維から脱落しても、凝集物となりにくいので、上記したスパンレース不織布の欠点が生じにくいのである。
ここで、本発明において、スパンレース用処理剤のせん断強さは、以下の方法により測定するが、JIS L 3416 7.4接着強さ 7.4.1引張せん断強さに基づき測定する。
試料片として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅10cm×長さ17cm)を準備し、前記フィルムの幅方向全体かつ長手方向において端部から10cmの領域(10cm×10cm)上にスパンレース用処理剤を200μmの厚みとなるようにコートする。このとき、スパンレース用処理剤がエマルション等の形態であって希釈剤を含む場合は、コートした後、希釈剤である水等を完全に蒸発させる。次いで、ステンレス板(SUS430:幅10cm×長さ17cm×厚み0.1mm)を準備し、図1(JIS L 3416 7.4接着強さ 7.4.1引張せん断強さ)に示すごとく、長手方向の10cm間(スパンレース用処理剤がコートされている箇所)を長手方向と平行にフィルムとステンレス板との幅全体を重ね合わせた後、プレス機にて0.2MPaの圧力で圧着して、フィルムとステンレス板とを接合させる。次いで、接合した試験片を、引張試験機につかみ間隔13cmとなるようにつかみに装着し、温度25℃、湿度65%の環境下にて、引張速度100mm/分で操作し、分離に至るまでの間の最大引張せん断荷重を測定し、5個の試験片の平均値をせん断強さとした。
本発明におけるスパンレース用処理剤は、脱落率が25%未満である。脱落率が25%未満であることにより、繊維に付着したスパンレース用処理剤が、不織布の製造工程、特にカード工程において、カード針との摩擦によって、繊維に付着したスパンレース用処理剤が針へ付着しにくく、スパンレース用処理剤が繊維に良好に付着した状態を維持させて、次の工程であるスパンレース工程へウェブを搬送することができる。
脱落率は、以下の方法により測定する。
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、スパンレース用処理剤を長さ10cm、幅12cm、厚み200μmになるようにコートする。このとき、スパンレース用処理剤がエマルション等の形態であって希釈剤を含む場合は、コートした後、希釈剤である水等を完全に蒸発させる。スパンレース用処理剤がコートされてなる試料片を、温度25℃、湿度65%の環境下にて、線圧20kg/cm、処理速度4m/分の条件で、一対のカレンダーロールに通す。スパンレース用処理剤を付与する前のポリエチレンテレフタレートフィルムの質量、カレンダーロールに通す前後の試料片の質量を測定し、下式により、脱落率を算出する。なお、5個の試料片の平均値をスパンレース用処理剤の脱落率とした。
脱落率(%)=[(ロールに通す前の試料片の質量)−(ロールに通した後の試料片の質量)]×100/[(ロールに通す前の試料片の質量)−α]
なお、上式においてαは、スパンレース用処理剤を付与する前のポリエチレンテレフタレートフィルムの質量である。
本発明におけるスパンレース用処理剤は、溶液通過量が80mL以上である。スパンレース工程では、不織ウェブに高圧水流を衝突させて構成繊維同士を交絡させるが、高圧水流の衝撃によって、繊維に付着したスパンレース用処理剤が水中に溶出すると、スパンレース工程で用いる水の循環ライン中で空気を含んで泡立ちが生じ、生じた泡が乾いた際にスカムが形成され、そのスカムが循環水濾過フィルターの目詰まりの原因となる。本発明では、スパンレース用処理剤の溶液通過量が80mL以上であることにより、スパンレース工程において高圧水流中にスパンレース用処理剤が溶出し、循環水中にスパンレース用処理剤を含んでいても、スカム発生によるフィルター目詰まりが生じにくい。そして、目詰まりが生じにくいため、フィルターの交換を頻繁に行う必要がないため、生産性が向上する。より好ましくは、スパンレース用処理剤の溶液通過量が90mL以上である。
スパンレース用処理剤の溶液通過量は、以下の方法により測定する。
スパンレース用処理剤(希釈剤を含まない状態のもの)の濃度が10%となるように、イオン交換水で希釈し、得られた10%スパンレース用処理剤溶液を硬水(硬度300〜310mg/L)で希釈して、濃度が0.1%のスパンレース用処理剤溶液を作成し、作成したスパンレース用処理剤溶液を、孔径0.45μm、直径13mmの親水性PTFEマイクロシリンジフィルターにて濾過した際の、溶液通過量を測定する。より具体的には、シリンジは容量が5mlのものを使用し、シリンジに0.1%スパンレース用処理剤溶液を5ml投入し、前記した孔径0.45μm、直径13mmの親水性PTFEマイクロシリンジフィルターをシリンジの針部分に設置し、シリンジのピストン部分を押圧して、マイクロシリンジフィルターを通じて滴下した溶液量を溶液通過量として測定する。シリンジの容量が5mlであるので、シリンジ内の溶液が全て押し出された場合は、これを繰り返し、シリンジ内の溶液がまだ残存しているが、ピストン部分を押圧してもシリンジ内の溶液が押し出されなくなった時点で、フィルターに目詰まりが生じたと判断し、その時点での溶液通過合計量を測定し、これを溶液通過量とする。なお、繰り返し回数は20回(溶液通過量の上限は100ml)とし、100mlの溶液が通過した時点で、フィルター目詰まりは生じにくいものと判断した。
本発明の複合繊維は、良好なカード通過性やスパンレース工程での交絡性、また、不織ウェブ作成工程での脱落による凝集物の発生のしにくさや不織布の品質向上等を考慮すると、上記したスパンレース用処理剤が、繊維質量に対して0.06〜0.23質量%付着していることが好ましい。
また、本発明の複合繊維は、紡糸段階で紡糸油剤を付与するため、複合繊維に付着してなる油剤分(OPU:紡糸油剤とスパンレース用処理剤等の合計)は、0.10〜0.25質量%の範囲が好ましい。OPUが0.25質量%を超えると、不織ウェブ作製時の機台汚染やスパンレース工程における循環水のスカムの発生が生じやすい。一方、0.10質量%未満であると、油剤の機能を十分に発揮できず、静電気の発生などによりカード通過性が低下しやすい。
繊維に付着した全油剤成分のうち、ラウリルフォスフェートカリウム塩の割合が10〜35%の範囲であることが好ましい。ラウリルフォスフェートカリウム塩はスパンレース不織布作製工程で使用する循環水(硬水)によりスカムが発生しやすい性質があるため、ラウリルフォスフェートカリウム塩の付着量が35%を超えるとフィルター目詰まりが発生しやすくなる。一方、10%未満であると、延伸性が低下する。
本発明におけるスパンレース用処理剤は、上記した(1)〜(3)を全て満たすものであるが、具体的な構成としては、アニオン活性剤とノニオン活性剤とを1/1〜1/1.3の割合で混合してなる処理剤を用いる。また、少量であれば、他の成分が含まれてもよいが、起泡が発生しにくい成分を選択するものとし、他の成分として、室温での状態で液体のものは選択しないものとする。
次に、本発明の複合繊維の製造方法について説明する。まず、粘度の異なる2種のポリエステルを準備し、通常の複合紡糸装置により複合紡糸し、得られた未延伸糸に延伸、熱処理を施す。紡糸延伸工程で付与する油剤として、紡糸延伸性を考慮しラウリルフォスフェートカリウム塩を含む油剤を使用することが好ましいが、前述した通り、延伸後に付与するスパンレース用処理剤を含む、繊維に付着した全油剤成分のうち、ラウリルフォスフェートカリウム塩の付着量が10〜35%になるように紡糸延伸工程での油剤濃度を調整することが好ましい。本発明においては、未延伸糸の繊度は特に限定されるものではないが、不織布用の短繊維を得る場合には、50〜100万デニールの糸束に集束してから延伸を行うことが好ましい。このとき、熱処理時の条件としては、潜在捲縮を後工程の熱処理で顕在化させるため、高温で熱処理を行うことは好ましくなく、100〜160℃で熱処理することが好ましい。延伸、熱処理後、8〜18個/25mm程度の機械捲縮を付与し、スパンレース用処理剤を付与した後、糸条束を切断して短繊維とする。
本発明の複合繊維は、熱処理によって潜在捲縮性能を顕在化してスパイラル状の立体捲縮を発現する。潜在捲縮性能を良好に顕在化させるためには、弛緩状態で熱処理することが好ましい。熱処理条件としては、例えば、160〜190℃に設定した熱風乾燥機中にて30秒〜2分間程度処理することにより良好に立体捲縮を発現させることができる。
本発明の不織布は、上記した本発明の複合繊維により構成されるものであり、本発明の複合繊維が有する特徴が活かされ、伸縮性、品位により優れた不織布である。本発明の不織布は、本発明の複合繊維のみからなるものとすることが好ましいが、他の繊維を含有してもよく、この場合は、本発明の複合繊維の割合を70質量%以上とすることが好ましい。
本発明の不織布は、構成繊維同士が三次元的に交絡することにより不織布であって、多数の繊維が堆積してなる不織ウェブに高圧水流を噴射することによって構成繊維同士を三次元的に交絡させることにより得られる、いわゆるスパンレース不織布である。この構成繊維同士の三次元的な交絡により、形態保持性と実用上十分な強力そして柔軟性が不織布に具備される。不織布の目付は、用途に応じて適宜選択すればよいが、20〜200g/m程度がよい。
次に、本発明の不織布の製造方法の一例を挙げる。不織布の構成繊維となる繊維(本発明の複合繊維)を、カード機等を用いてカーディングしてカードウエブを作製し、得られたカードウエブにスパンレース加工を施して構成繊維同士を三次元的に交絡させて一体化し、不織布を得る。本発明の複合繊維の潜在捲縮性能を発現させるには、スパンレース加工後の乾燥工程において、乾燥熱処理を施し、水分除去と同時に潜在捲縮性能を発現させてスパイラル状の立体捲縮を顕在化させるとよい。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例における特性値等の測定法は次のとおりである。
(1)極限粘度〔η〕
フェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定。
(2)繊維繊度
JIS L−1015−7−5−1Aの方法により測定。
(3)白色顔料濃度
リガク社製蛍光X線分析装置によって繊維中におけるチタン元素のX線強度を測定し、酸化チタン含有量を算出。
(4)ポリエステルフィルムとのせん断強さ(N)
上述した方法により測定した。なお、ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製 商品名「エムレット:標準タイプ」 厚み38μm)を用いた。また、スパンレース用処理剤は、エマルション溶液を用いたことから、フィルムにコートした後、風乾により水分を蒸発させた。
(5)脱落率(%)
上述した方法により測定した。なお、また、スパンレース用処理剤は、エマルション溶液を用いたことから、フィルムにコートした後、風乾により水分を蒸発させた。
(6)溶液通過量(mL)
上述した方法により測定した。なお、濃度が0.1%のスパンレース用処理剤溶液を作成するに際しては、スパンレース処理用剤(希釈剤を含まない状態のもの)をイオン交換水で濃度10%に希釈し、その後、その10%スパンレース処理用剤溶液1.0mLを硬度304mg/Lの硬水99.0mLに滴下することで作液した。また、孔径0.45μm、直径13mmの親水性PTFEマイクロシリンジフィルタとしては、メルク社製「Milipore Millex−LH」を用いた。
(7)油剤付着率(OPU)
開繊した繊維2gを抽出用の筒に入れ、10mLのエタノールを滴下し抽出する。抽出溶液中のエタノールを蒸発させ、残った油脂分を計量し繊維に対する油剤分率を算出した。
(8)延伸性
繊維延伸工程における延伸ローラーへの繊維の捲き付き頻度が延伸量1トンあたり2回未満を合格(○)とし、2回以上を不合格(×)とした。
(9)カード通過性
得られた繊維1kgを用いて目付80g/m、の不織布を作製する際に、カード機のドッファーから出てきたウェブがフライコームへ捲き付き切断する頻度を計測し、切断頻度が2回/kg未満を合格(○)、2回/kg以上を不合格(×)とした。
(10)不織布品位
得られた繊維を用いて目付80g/m、幅2m、長さ3000mの不織布を作製し、1mm以上の、脱落した顔料と繊維に付与された油剤に起因する欠点を目視で確認した。欠点数が5ケ/100m以下を合格(○)、5ケ/100mを超えるものを不合格(×)とした。
(11)隠蔽性
得られた繊維を用いて目付80g/mの不織布を作製し、不織布の下に黒色の文字をプリントした紙を置き、見た目より10人のパネラーによる隠蔽性の官能評価を行った。10段階で評価(10を最も優れているもの、1を最も劣るものとする)し、10人の評価の平均値を求め、以下の4段階で評価した。◎と〇を合格とした。
◎ 隠蔽性が非常に良好:平均値が8点以上
○ 隠蔽性が良好:平均値が6点〜8点未満
△ 隠蔽性がやや劣る:平均値が5点〜6点未満
× 隠蔽性が劣る:平均値が5点未満
(12)フィルター詰まり
得られた繊維20トンをいて目付80g/mのスパンレース不織布を作製した際に、油剤スカムによるフィルター詰まりが発生した頻度が2回未満を合格(○)、2回以上を不合格(×)とした。
実施例1
白色顔料である密度3.9g/cm、平均粒径0.7μmの二酸化チタン微粒子を重合時に添加し、二酸化チタン微粒子の含有量が0.3質量%である〔η〕0.69のポリエチレンテレフタレートを準備した。一方、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、イソフタル酸4mol%、BAEO7mol%共重合した共重合ポリエステルであって、白色顔料である密度3.9g/cm、平均粒径0.7μmの二酸化チタン微粒子を2.0質量%含有する〔η〕0.78の共重合ポリエステルを準備した。
ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを、複合質量比を1:1として複合溶融紡糸装置を用いて、孔数1038孔の丸断面口金孔から、紡糸温度300℃、引取速度900m/分、吐出量386g/分でサイドバイサイド型複合繊維を紡糸した。得られた未延伸糸を、延伸温度73℃、延伸倍率3.60倍に延伸した。なお紡糸延伸工程では、繊維OPUの内、ラウリルフォスフェートカリウム塩の割合が30%になるように紡糸延伸用油剤を付与した。延伸後140℃で緊張熱処理を行い、スタッフィングボックスで機械捲縮(捲縮数12個/25mm)を付与した後、ポリエステルとのせん断強さが3.5N、脱落率が18%、溶液通過量が100mL以上であるスパンレース用処理剤(アニオン活性剤とノニオン活性剤とが1/1.3の割合で混合されてなるもの)を付与し、繊維長44mmに切断し、単糸繊度1.3dtexの複合繊維を得た。このとき複合繊維のOPUは0.15%であり、複合繊維中の白色顔料の含有量は1.15質量%であった。得られた複合繊維のみを用い、カード機にて開繊し、不織ウェブを作製した。この不織ウェブをネットコンベアー上に供給し、孔径0.12mm、孔間隔1.0mmの噴射孔を複数個有する噴射ノズルを3段階に設け、前段20kg/cm、中段40kg/cm、後段100kg/cmの水圧で不織ウェブに高圧液体流処理を施しウェブの交絡化を行った。次いで180℃×1分の乾熱処理を行って潜在捲縮性能を顕在化させ、スパイラル状の立体捲縮を発現させ、目付80g/mの不織布を得た。
実施例2
OPUが表1に示す値になるようにスパンレース用処理剤を付着させた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例3
複合繊維中の白色顔料濃度を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例4
複合繊維中の有色顔料濃度を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様に行った。

表1から明らかなように、実施例1〜4は延伸性良好に複合繊維を得ることができ、またカード通過性が良好であり、フィルター目詰まりもなく、欠点数の少ない品位に優れた不織布が得られた。さらに得られた不織布は隠蔽性に優れるものであった。

Claims (6)

  1. 潜在捲縮性を有する複合繊維であって、該複合繊維は粘度の異なる2種のポリエステルがサイドバイサイド型に接合して配されてなり、
    かつ該複合繊維は、スパンレース不織布を製造するための繊維であり、
    該複合繊維には、スパンレース不織布用繊維処理剤が付着してなり、該スパンレース不織布用繊維処理剤は、(1)せん断強さが6.0N未満、(2)脱落率が25%未満、(3)溶液通過量が80mL以上 の(1)〜(3)を全て満たすことを特徴とする潜在捲縮性を有する複合繊維。
  2. 複合繊維に対してスパンレース不織布用繊維処理剤が0.06〜0.23質量%付着していることを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性を有する複合繊維。
  3. 複合繊維は、紡糸油剤とスパンレース不織布用繊維処理剤とが付着してなり、複合繊維に付着してなる全油剤成分のうち、ラウリルフォスフェートカリウム塩の割合が10〜35%の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の潜在捲縮性を有する複合繊維。
  4. 複合繊維は、白色顔料と有色顔料とを含み、繊維中に含まれる白色顔料が0.1〜3.0質量%、有色顔料が0.0010〜0.40質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の在捲縮性を有する複合繊維。
  5. 複合繊維は、低粘度ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステル、高粘度ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてイソフタル酸およびビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を共重合されている共重合ポリエステルによって構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の潜在捲縮性を有する複合繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の潜在捲縮性を有する複合繊維を含むことを特徴とするスパンレース不織布。
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