JP2020050791A - 多環式高分子化合物及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

多環式高分子化合物及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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岡本 敏宏
Toshihiro Okamoto
敏宏 岡本
忠法 黒澤
Tadanori KUROSAWA
忠法 黒澤
純一 竹谷
Junichi Takeya
純一 竹谷
大次 池田
Daiji Ikeda
大次 池田
明人 山元
Akito Yamamoto
明人 山元
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Abstract

【課題】環骨格(例えば、縮合多環式骨格、環集合多環式骨格などの多環式骨格など)を有していても、溶解性に優れる新規な高分子化合物及びその製造方法並びにその用途を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される、周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子と、6つの炭素原子とで形成された7員環骨格を含み、この7員環骨格が3つの共役二重結合を有する構造の構成単位を含む、高分子化合物。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、1つの原子(例えば、ヘテロ原子など)と6つの炭素原子で形成された所定の7員環骨格(又はひずみ型骨格、例えば、チエピン環骨格など)を含む新規な高分子化合物及びその製造方法、並びにその用途(例えば、ベンゼン環骨格を含む高分子化合物の製造、有機半導体、熱センサーなど)に関する。
環式化合物は、通常、分子構造におけるひずみが小さく、平面性が高い5又は6員環(例えば、ベンゼン環、チオフェン環など)骨格を有することが多い。環式化合物のなかでも、縮合多環式芳香族化合物(例えば、ペンタセンなどのアセン系化合物など)は、縮合環上に広がる共役系によりπ電子が非局在化され、分子構造の高い平面性のため分子の配向性(又は結晶性)が高く、分子間における電子伝導性を向上し易いことから、良好な電気的特性(半導体特性)を示すことが知られている。そのため、有機半導体材料などとして利用されている。
例えば、特開平5−55568号公報(特許文献1)には、ドーピングが施された縮合ベンゼン環の数が4以上13以下である縮合多環芳香族化合物薄膜を用いた有機薄膜トランジスタが開示されている。この文献の実施例では、ペンタセンやジベンゾペンタセンを用いて真空蒸着法により薄膜を形成したことが記載されている。
しかし、ペンタセンなどのアセン系化合物は、前述した高い分子配向性(又は結晶性)などのため、半導体特性などに優れているものの、溶媒に対する溶解性が極端に低く(又は凝集し易く)取り扱い難い。そのため、塗布や印刷などのウェットプロセス(例えば、スピンコートなど)により有機半導体層を容易に又は効率よく形成するプリンテッドエレクトロニクスへの適用は困難である。このような縮合多環式芳香族化合物の溶解性を改善するために、通常、炭素数が大きな長鎖アルキル基などの置換基を導入することが多いが、長鎖アルキル基は絶縁性が高く、移動度(又は電気移動度)低下の原因となるため、高い溶解性と高い移動度とはトレードオフの関係にあり、これらの特性を両立するのは極めて困難である。
また、長鎖アルキル基などを導入して溶解性を向上しても、低分子化合物であるため、膜(又は膜状成形体)の成形性又は製膜性(例えば、インク粘度の調整容易性など)が低く、形成した膜の機械的特性(膜強度など)や耐熱性も十分ではない。これらの特性は、高分子化合物とすることで改善できるものの、分子量の増加により溶解性はさらに低下し易い傾向にある。
特開平5−55568号公報(特許請求の範囲、実施例)
従って、本発明の目的は、環骨格(例えば、縮合多環式骨格、環集合多環式骨格などの多環式骨格など)を有していても、溶解性に優れる新規な高分子化合物及びその製造方法並びにその用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、ベンゼン環骨格を含む高分子化合物を製造する新規な方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高分子化合物が、溶解性の低いベンゼン環骨格を含んでいても、膜状成形体などの成形体を容易に又は効率よく形成する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、5又は6員環などよりもやや歪んだ所定の7員環骨格(ひずみ型骨格)を有する新規な高分子化合物は、多環式骨格などを有していても有機溶媒などに対する溶解性に優れていることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の高分子化合物は、周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子と、6つの炭素原子とで形成された7員環骨格を含み、この7員環骨格が3つの共役二重結合を有している。
前記7員環骨格を含む高分子化合物は、下記式(1)で表される構成単位を含んでいてもよい。
(式中、Zは周期表第13〜16族元素から選択される原子;環A及びAはそれぞれ独立して、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を有する環;R1a、R1b及びRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基;Rは周期表第16族元素から選択される原子;R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基、又は周期表第16族元素から選択される原子;mは0〜4の整数;nは0〜2の整数;p1及びp2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し、
で表される結合は単結合又は二重結合を示す)。
前記式(1)で表される構成単位は、下記式(1A)及び(1B)から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
(式中、環Ar及びArはそれぞれ独立してアレーン環;R及びRはそれぞれ独立して置換基;q1及びq2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し;Z、R1a、R1b、R、R、m、nは前記式(1)に同じ)。
(式中、Z及びZはそれぞれ独立して周期表第13〜16族元素から選択される原子;R2a、R2b、R4a及びR4bはそれぞれ独立して水素原子又は置換基;R3a及びR3bはそれぞれ独立して周期表第16族元素から選択される原子;m1及びm2はそれぞれ独立して0〜4の整数;n1及びn2はそれぞれ独立して0〜2の整数を示し;Z、R1a、R1b、R、R、m、nは前記式(1)に同じ)。
前記式(1)で表される構成単位は、前記式(1B)で表される構成単位を少なくとも含んでいてもよく、前記式(1B)において、Z、Z及びZは周期表第16族元素から選択される原子、基R1a、R1b、R、R2a、R2b、R4a及びR4bは水素原子又は炭化水素基、R、R3a及びR3bは酸素原子であってもよい。
前記7員環骨格を含む高分子化合物は、ドナー性単位としての前記式(1)で表される構成単位と、アクセプター性単位とを含むドナー−アクセプター型高分子であってもよい。前記アクセプター性単位は、下記式(2)で表される構成単位を含んでいてもよい。
(式中、Zはそれぞれ独立して周期表第16族元素から選択される原子、R及びRはそれぞれ独立して置換基、r1はそれぞれ独立して0又は1、r2はそれぞれ独立して0〜3の整数を示す)。
前記7員環骨格を含む高分子化合物は、重量平均分子量が2000以上であってもよい。
本発明は、前記7員環骨格を含む高分子化合物と、溶媒とを含む液状組成物を包含する。また、前記7員環骨格と、カップリング反応可能な反応性基とを有する化合物を含むモノマー成分を、カップリング反応に供して前記7員環骨格を含む高分子化合物を製造する方法も包含する。
本発明は、さらに、ベンゼン環骨格を含む高分子化合物を製造する方法であって、前記7員環骨格を含む高分子化合物を加熱し、7員環骨格から原子Z、すなわち周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子を脱離させてベンゼン環骨格を形成する加熱工程を含む製造方法も包含する。前記加熱工程における加熱温度は例えば、190℃以上であってもよい。ベンゼン環骨格を含む高分子化合物を製造する方法は、前記液状組成物を基材に塗布し、塗膜を形成する塗布工程をさらに含んでいてもよい。
また、本発明は、下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物を包含する。
(式中、A、A、R1a、R1b、R、R、p1、p2及び
で表される結合は、それぞれ前記式(1)に同じ)。
前記式(I)で表される構成単位は、下記式(IB)で表される構成単位を含んでいてもよい。
(式中、R1a及びR1bは、それぞれ前記式(1)と同じであり;Z、Z、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、m1、m2、n1及びn2は、それぞれ前記式(1B)と同じである)。
また、本発明は、前記7員環骨格を含む高分子化合物、前記ベンゼン環骨格を含む高分子化合物から選択される少なくとも1種の高分子化合物を含む有機半導体;前記有機半導体を含む電子デバイスを包含する。
本発明の新規な高分子化合物は、5又は6員環よりも少し歪んだ所定の7員環骨格(ひずみ型骨格)を有しており、この7員環骨格により3次元ダイポール(双極子)モーメントが大きくなり、かつ分子間に隙間ができ溶媒が浸入しやすくなるためか、環骨格(例えば、縮合多環式骨格、環集合多環式骨格などの多環式骨格など)を有していても有機溶媒などに対する溶解性に優れている。また、前記新規な高分子化合物を用いることにより、ベンゼン環骨格を含む高分子化合物を製造する新規な方法を提供できる。さらに、前記高分子化合物を製造する方法により、高分子化合物が溶解性の低いベンゼン環骨格(特に、ベンゼン環骨格を含む多環式骨格)を含んでいても、膜状成形体を容易に又は効率よく製造できる。
図1は、実施例1で得られた高分子化合物(1-1)の薄膜X線解析における二次元回折像と、アニール温度との関係を示す図であり、(a)はアニール温度180℃、(b)はアニール温度210℃、(c)はアニール温度240℃、(d)はアニール温度270℃における二次元回折像である。 図2は、薄膜X線解析におけるピーク形状と分子の配向性との関係を示す概略図である。 図3は、実施例2で得られた高分子化合物(1-2)の各アニール温度における紫外−可視光吸収スペクトルである。 図4は、図3の紫外−可視光吸収スペクトルの部分拡大図である。 図5は、実施例2で得られた高分子化合物(1-2)の各アニール温度における紫外−可視光吸収スペクトル、及びサンプル調製2で得られた高分子化合物(I-2)の紫外−可視光吸収スペクトルである。 図6は、図5の紫外−可視光吸収スペクトルの部分拡大図である。 図7は、トランジスタ特性を測定するための素子の概略図である。
[7員環骨格を含む高分子化合物]
本発明の7員環骨格(又はひずみ型骨格)を含む高分子化合物において、前記7員環は、周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子と、6つの炭素原子とで形成され、かつ3つの共役二重結合(又は単結合を介して連なる3つの非隣接二重結合)を有する不飽和な7員環である。このような高分子化合物としては、前記7員環骨格を含む限り特に制限されず、面状(又は層状)や樹枝状などの分子構造を有する非線状高分子化合物であってもよいが、代表的には、下記式(1)で表される前記7員環骨格を有する構成単位(第1の構成単位ともいう)を含む高分子化合物(特に線状高分子化合物)などが挙げられる。
(式(1)で表される構成単位(第1の構成単位))
(式中、Zは周期表第13〜16族元素から選択される原子;環A及びAはそれぞれ独立して、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を有する環;R1a、R1b及びRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基;Rは周期表第16族元素から選択される原子;R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基、又は周期表第16族元素から選択される原子;mは0〜4の整数;nは0〜2の整数;p1及びp2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し、
で表される結合は単結合又は二重結合を示す)。
前記式(1)において、Zで表される原子は、周期表第13族(3B族)元素、第14族(4B族)元素、第15族(5B族)元素及び第16族(6B族)元素から選択される原子であり、周期表第13族(3B族)元素としては、例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)[好ましくはホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、さらに好ましくはホウ素、アルミニウム、ガリウム、特にホウ素など]などが挙げられる。
周期表第14族(4B族)元素としては、例えば、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)[好ましくは炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、さらに好ましくは炭素、ケイ素、ゲルマニウム、特にケイ素など]などが挙げられる。
周期表第15族(5B族)元素としては、例えば、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)[好ましくは窒素、リン、ヒ素、アンチモン、さらに好ましくは窒素、リン、ヒ素、特にリンなど]などが挙げられる。
周期表第16族(6B族)元素としては、例えば、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)[好ましくは酸素、硫黄、セレン、テルル、さらに好ましくは酸素、硫黄、セレン、特に硫黄など]などが挙げられる。
好ましいZで表される原子としては、周期表第14族元素、第15族元素、第16族元素からなる群より選択される原子(例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、硫黄、セレン及びテルルから選択される原子、好ましくはケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、ヒ素、酸素、硫黄及びセレンから選択される原子、さらに好ましくはケイ素、ゲルマニウム、リン、ヒ素、酸素、硫黄及びセレンから選択される原子など)であってもよい。また、Zで表される原子としては、周期表第13〜16族元素のうち、ホウ素、炭素及び窒素を除いた原子から選択される原子が好ましい。すなわち、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選択される原子が好ましく、なかでも、加熱により6員環に変換し易い点から、周期表第16族元素から選択される原子が好ましく、特に硫黄などであってもよい。
Zで表される原子の原子価(価数)vは2〜6価であり、v=m+2×n+2を満たしている。また、原子価vは、対応する原子Zの種類に応じて選択でき、例えば、ホウ素などの周期表第13族元素では3価である場合が多く、例えば、炭素、ケイ素などの周期表第14族元素では2価又は4価(特に4価)である場合が多く、例えば、窒素、リンなどの周期表第15族元素では3〜5価である場合が多く、例えば、酸素、硫黄、セレンなど周期表第16族元素では2〜6価である場合が多い。
及びAで表される環は、原子Zを含む7員環の2,3−位及び6,7−位の炭素原子(C=C結合)をそれぞれ共有して縮合環を形成する。そのため、環A及びAは、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合(C=C結合)を有する限り特に制限されず、ヘテロ原子(例えば、窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)など)を有する複素環(ヘテロ環)であってもよく、ヘテロ原子を有していない炭化水素環であってもよい。このような環としては、例えば、脂肪族環{例えば、脂肪族炭化水素環[例えば、シクロアルケン環(シクロペンテン環、シクロヘキセン環など)などの単環式脂肪族炭化水素環;橋架け環(ボルネン(ボルニレン)環、ノルボルネン環、ジシクロペンタジエン環など)などの多環式脂肪族炭化水素環など];脂肪族複素環[例えば、3−ピロリン、ジヒドロピランなどのヘテロ原子(窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)など)を有する脂肪族複素環など]など};芳香族環などが挙げられる。これらの環A及びAのうち、電気的特性(半導体特性)に優れる点から、通常、ヘテロ原子を有していてもよい芳香族環、すなわち、芳香族炭化水素環(アレーン環)、芳香族複素環(ヘテロアレーン環)などである場合が多い。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環;縮合多環式アレーン環[例えば、インデン環、インダン環、ナフタレン環、テトラリン環、アズレン環、インダセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオランテン環、アセアントリレン環、アセフェナントリレン環、ナフタセン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、ペンタセン環、ペンタフェン環、ピセン環、ペリレン環などのC9−30縮合多環式アレーン環、好ましくは縮合多環式C9−26アレーン環など]などが挙げられる。好ましい芳香族炭化水素環としては、C6−22アレーン環(例えば、C6−18アレーン環)、さらに好ましくはC6−14アレーン環、特にベンゼン環、ナフタレン環などのC6−10アレーン環であってもよい。
芳香族複素環としては、例えば、単環式ヘテロアレーン環[例えば、窒素(N)含有単環式ヘテロアレーン環(例えば、ピロール環、イミダゾ−ル環、ピラゾ−ル環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環など);酸素(O)含有単環式ヘテロアレーン環(例えば、フラン環、ピラン環など);硫黄(S)含有単環式ヘテロアレーン環(例えば、チオフェン環など);2種以上のヘテロ原子を含有する単環式ヘテロアレーン環(例えば、オキサゾ−ル環、イソオキサゾ−ル環、チアゾ−ル環、イソチアゾ−ル環、チアジン環、フラザン環、チアジアジン環など)などのC2−5ヘテロアレーン環、好ましくはC3−5ヘテロアレーン環など];多環式ヘテロアレーン環[例えば、窒素(N)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、インドリジン環、インドール環、3H−インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、4H−キノリジン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、カルバゾール環、4aH−カルバゾール環、β−カルボリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナジン環、フェナントロリン環、ペリミジン環など);酸素(O)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、クロメン環、クロマン環、イソクロマン環、キサンテン環など);硫黄(S)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、チアントレン環など);2種以上のヘテロ原子を含有する多環式ヘテロアレーン環(例えば、チエノフラン環、イミダゾチアゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェナルサジン環など)などのC6−20ヘテロアレーン環(好ましくはC6−16ヘテロアレーン環)など]などが挙げられる。好ましいヘテロアレーン環としては、C2−13ヘテロアレーン環(例えば、窒素(N)含有単環式又は多環式C2−13ヘテロアレーン環、硫黄(S)含有単環式又は多環式C2−13ヘテロアレーン環など)、さらに好ましくはC3−9ヘテロアレーン環、特にチオフェン環、ベンゾチオフェン環などの硫黄(S)含有単環式又は多環式C3−9ヘテロアレーン環などであってもよい。
これらの環A及びAのうち、C6−30アレーン環又はC2−20ヘテロアレーン環が好ましく、なかでも、C6−14アレーン環又はC2−13ヘテロアレーン環、特にC6−10アレーン環又はC4−8ヘテロアレーン環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、特に、チオフェン環)が好ましい。また、環A及びAの種類は、異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。なお、環A及びAにおいて、縮合位置(原子Zを含む7員環の2,3−位及び6,7−位の炭素原子(C=C結合)を共有する位置)は、特に制限されない。
1a及びR1bで表される置換基としては、例えば、炭化水素基{例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i-ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基(ラウリル基)などの直鎖状又は分岐鎖状C1−30アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基など);アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など);これらの基を2つ以上組み合わせた基[例えば、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−10アルキル基など);アルキルアリール基(例えば、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)などのモノ乃至ペンタ(C1−20アルキル)C6−12アリール基など)など]など};基−OR(式中、Rは上記例示の炭化水素基を示す。)[例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などの上記例示のアルキル基に対応するアルコキシ基など);シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基などの上記例示のシクロアルキル基に対応するシクロアルキルオキシ基など);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などの上記例示のアリール基に対応するアリールオキシ基など);アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などの上記例示のアラルキル基に対応するアリールアルキルオキシ基など);アルキルアリールオキシ基(例えば、トリルオキシ基などの上記例示のアルキルアリール基に対応するアルキルアリールオキシ基など)など];基−SR(式中、Rは上記例示の炭化水素基を示す。)[例えば、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基などの上記例示のアルキル基に対応するアルキルチオ基など);シクロアルキルチオ基(例えば、シクロヘキシルチオ基などの上記例示のシクロアルキル基に対応するシクロアルキルチオ基など);アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基などの上記例示のアリール基に対応するアリールチオ基など);アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などの上記例示のアラルキル基に対応するアリールアルキルチオ基など);アルキルアリールチオ基(例えば、トリルチオ基などの上記例示のアルキルアリール基に対応するアルキルアリールチオ基など)など];ヒドロキシル基;ホルミル基;アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基などのC1−10アシル基など);アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのC1−12アルコキシカルボニル基など);カルボキシル基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−6アルキルアミノ基など);ジアシルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−10アシルアミノ基など)など];チオール基;スルホン酸基(スルホ基);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)などが挙げられる。
基R1a及びR1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。好ましい基R1a及びR1bとしては、水素原子又は炭化水素基(例えば、アルキル基(例えば、C1−30アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基など)であり、さらに好ましくは水素原子、C1−25アルキル基、C5−10シクロアルキル基又はC6−12アリール基、特に水素原子、C4−22アルキル基又はC6−10アリール基(例えば、水素原子、C6−20アルキル基、特に水素原子)であってもよい。
で表される置換基としては、例えば、前記基R1a及びR1bと同様の置換基などが挙げられる。好ましい基Rとしては、水素原子又は炭化水素基(例えば、アルキル基(例えば、C1−30アルキル基、好ましくはC1−20アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基など)であり、さらに好ましくは水素原子、C1−16アルキル基、C5−10シクロアルキル基又はC6−12アリール基、特に水素原子、C1−10アルキル基又はC6−10アリール基(特に水素原子、メチル基などのC1−4アルキル基又はフェニル基などのC6−8アリール基)であってもよい。なお、置換数mが2以上である場合、2以上の基Rの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
基Rの置換数mは、例えば、0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数であってもよい。また、置換数mは、対応する基Rが結合する原子Zの原子価vに応じて選択してもよく、例えば、原子価vが2価の場合、mは0であり、3価の場合、mは1であり、4価の場合、mは0又は2であり、5価の場合、mは1又は3であり、6価の場合、mは0、2又は4(例えば、0又は2、特に0)であることが多い。
で表される周期表第16族(6B族)元素としては、例えば、前記Zに例示の第16族元素と同様である。好ましいRとしては、酸素、硫黄、セレン及びテルルから選択される原子であり、さらに好ましくは酸素、硫黄及びセレンから選択される原子(例えば、酸素原子[又はオキソ基(=O)]又は硫黄原子[又はチオキソ基(=S)])、特に酸素原子であってもよい。置換数nが2である場合、2つの原子Rの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
原子Rの置換数nは、対応する原子Rが結合する原子Zの原子価vに応じて選択してもよく、例えば、原子価vが2価又は3価の場合、nは0であり、4価又は5価の場合、nは0又は1であり、6価の場合、nは0〜2の整数(例えば、1又は2、特に2)であることが多い。
及びRにおいて、周期表第16族元素から選択される原子としては、前記R(又はZに例示の元素)と同様の原子が挙げられ、置換基としては、前記基R1a及びR1bと同様の置換基などが挙げられる。
及びRの置換数p1及びp2は、環A及びAの種類に応じて選択でき、例えば、0〜12(例えば、0〜8)程度の整数、好ましくは0〜6(例えば、0〜4)程度の整数、さらに好ましくは0〜3(例えば、0〜2)程度の整数、特に0又は1(特に0)であってもよい。置換数p1及びp2が2以上である場合、2以上のR及びRの種類は、それぞれ互いに異なっていてもよく、通常、同一である。なお、実線及び破線で表される結合は、R及びRが水素原子又は置換基(例えば、炭化水素基など)である場合は単結合であり、R及びRが第16族元素から選択される原子(例えば、酸素原子)である場合は二重結合を示す場合が多い。
前記式(1)で表される構成単位のうち、A及びA、R1a及びR1b、R及びR並びにp1及びp2が、それぞれ互いに同一(又は類似する構造)である構成単位、すなわち、紙面上においてZを通る縦線を軸とした線対称な構造を有する構成単位であると、分子同士が並び易い(又はスタッキングし易い)ためか、電気的特性(移動度など)が向上し易く好ましい。
前記式(1)で表される構成単位として代表的には、A及びAがともにアレーン環である下記式(1A)で表される構成単位、A及びAがともに所定の5員環である下記式(1B)で表される構成単位などが挙げられる。
(式(1A)で表される構成単位)
(式中、環Ar及びArはそれぞれ独立してアレーン環;R及びRはそれぞれ独立して置換基;q1及びq2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し;Z、R1a、R1b、R、R、m、nは好ましい態様も含めて前記式(1)に同じ)。
前記式(1A)において、Ar及びArで表されるアレーン環としては、前記式(1)の環A及びAの項で例示したアレーン環などが挙げられる。好ましいアレーン環としては、C6−22アレーン環(例えば、C6−18アレーン環)、さらに好ましくはC6−14アレーン環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−10アレーン環)であってもよい。また、環Ar及びArの種類は、互いに異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。なお、環Ar及びArにおいて、縮合位置(原子Zを含む7員環の2,3−位及び6,7−位の炭素原子(C=C結合)を共有する位置)は、特に制限されない。
また、Ar及びArにおいて、隣接する構成単位に向かって延びる単結合(又は未結合手)の結合位置は、Ar及びArの種類に応じて選択でき、特に制限されない。
及びRで表される置換基としては、前記式(1)のR及びRの項で例示した置換基(基R1a及びR1bの項で例示した置換基)などが挙げられる。基R及びRの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。好ましい基R及びRとしては、炭化水素基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基など)であり、さらに好ましくはアルキル基(例えば、C1−30アルキル基、好ましくはC1−20アルキル基など)又はアリール基(例えば、C6−12アリール基など)であってもよい。
基R及びRの置換数q1及びq2は0以上の整数を示し、環Ar及びArの種類に応じて、例えば、0〜14程度の範囲から選択してもよく、例えば、0〜12(例えば、0〜8)程度の整数、好ましくは0〜6(例えば、0〜4)程度の整数、さらに好ましくは0〜3(例えば、0〜2)程度の整数、特に0又は1(特に0)であってもよい。置換数q1及びq2が2以上である場合、2以上のR及びRの種類は、それぞれ互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
前記式(1A)で表される構成単位として、代表的には、例えば、環Ar及びArがC6−14アレーン環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−10アレーン環など)、基R1a及びR1bが水素原子又は炭化水素基(例えば、C1−30アルキル基、好ましくはC6−26アルキル基などのアルキル基など)である構成単位などが挙げられ、なかでも、左右対称な構造である構成単位が好ましく、具体的には下記表1に記載の構成単位などが挙げられる。
なお、表1に記載の構成単位におけるm、q1及びq2は0である。また、Ar及びArがナフタレン環である場合、ナフタレン環の2,3−位が、Zを含む7員環骨格の2,3−位及び6,7−位とそれぞれ縮合することを示す。
これらの前記式(1A)で表される構成単位は、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの前記式(1A)で表される構成単位のうち、加熱により6員環に変換し易い点から、Zが酸素原子、硫黄原子又はセレン原子(特に、硫黄原子)である構成単位が好ましく、なかでも、表1におけるNo.1〜4などのnが0である構成単位が好ましい。
(式(1B)で表される構成単位)
(式中、Z及びZはそれぞれ独立して周期表第13族〜16族元素から選択される原子;R2a、R2b、R4a及びR4bはそれぞれ独立して水素原子又は置換基;R3a及びR3bはそれぞれ独立して周期表第16族元素から選択される原子;m1及びm2はそれぞれ独立して0〜4の整数;n1及びn2はそれぞれ独立して0〜2の整数を示し;Z、R1a、R1b、R、R、m、nは好ましい態様も含めて前記式(1)に同じ)。
前記式(1B)において、Z及びZで表される原子としては、前記式(1)のZに例示した原子と同様の原子が挙げられる。これらのZ、Z及びZで表される原子の種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、Z及びZが少なくとも同一である場合が多い。好ましいZ及びZで表される原子としては、周期表第14族元素、第15族元素、第16族元素からなる群より選択される原子(例えば、炭素、窒素、リン、酸素、硫黄、セレン及びテルルから選択される原子など)であり、さらに好ましくは周期表第16族元素(例えば、酸素、硫黄及びセレンから選択される原子、特に硫黄など)などであってもよい。
Z、Z及びZで表される原子の各原子価(価数)v、v1及びv2はそれぞれ独立して2〜6価であり、それぞれ、v=m+2×n+2、v1=m1+2×n1+2及びv2=m2+2×n2+2を満たしている。また、各原子価v、v1及びv2は、それぞれ対応する原子の種類に応じて選択でき、例えば、例えば、ホウ素などの周期表第13族元素では3価である場合が多く、例えば、炭素、ケイ素などの周期表第14族元素では2価又は4価(特に4価)である場合が多く、例えば、窒素、リンなどの周期表第15族元素では3〜5価である場合が多く、例えば、酸素、硫黄、セレンなどの周期表第16族元素では2〜6価である場合が多い。
2a及びR2bで表される置換基としては、例えば、前記式(1)の基R(又は基R1a及びR1b)の項に例示した置換基と同様の置換基などが挙げられる。好ましい基R2a及びR2bとしては、前記式(1)の基Rと同様であってもよい。基R、R2a及びR2bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、基R2a及びR2bが少なくとも同一である場合が多い。なお、置換数m1及びm2が2以上である場合、2以上の基R2a及びR2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
基R、R2a及びR2bの各置換数m、m1及びm2はそれぞれ独立して、例えば、0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数であってもよい。また、置換数m、m1及びm2は、対応する基R、R2a及びR2bが結合するZ、Z及びZの各原子価v、v1及びv2に応じて選択してもよく、例えば、原子価が2価の場合、m、m1及びm2は0であり、3価の場合、m、m1及びm2は1であり、4価の場合、m、m1及びm2は0又は2であり、5価の場合、m、m1及びm2は1又は3であり、6価の場合、m、m1及びm2は0、2又は4(例えば、0又は2、特に0)であることが多い。なお、置換数m、m1及びm2は互いに異なっていてもよいが、通常、m1及びm2が少なくとも同一である場合が多く、例えば、m1及びm2が0であってもよい。
3a及びR3bで表される周期表第16族(6B族)元素としては、例えば、前記式(1)のR(又はZ)の項に例示した原子などが挙げられ、好ましい態様はRと同様である。R、R3a及びR3bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、R3a及びR3bが少なくとも同一である場合が多い。置換数n1及びn2が2である場合、2つの基R3a及びR3bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
原子R、R3a及びR3bの各置換数n、n1及びn2は、対応する原子R、R3a及びR3bが結合するZ、Z及びZの各原子価v、v1及びv2に応じて選択してもよく、例えば、原子価が2価又は3価の場合、n、n1及びn2は0であり、4価又は5価の場合、n、n1及びn2は0又は1であり、6価の場合、n、n1及びn2は0〜2の整数(例えば、1又は2、特に2)であることが多い。なお、置換数n、n1及びn2は互いに異なっていてもよいが、通常、n1及びn2が少なくとも同一である場合が多く、例えば、n1及びn2が0であってもよい。
4a及びR4bで表される置換基としては、例えば、前記式(1)の基R1a及びR1bの項に例示した置換基と同様の置換基などが挙げられる。基R4a及びR4bの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。好ましい基R4a及びR4bとしては、水素原子又は炭化水素基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基など)であり、さらに好ましくは水素原子、C1−30アルキル基、C5−10シクロアルキル基又はC6−12アリール基、特に水素原子、C6−26アルキル基又はC6−10アリール基(特に水素原子)であってもよい。
前記式(1B)で表される構成単位として代表的には、例えば、Z、Z及びZが周期表第16族元素から選択される原子、基R1a及びR1bが水素原子又は炭化水素基(例えば、C1−30アルキル基、好ましくはC6−26アルキル基などのアルキル基など)である構成単位などが挙げられ、なかでも、左右対称な構造である構成単位が好ましく、具体的には下記表2に記載の構成単位などが挙げられる。
なお、表2に記載の構成単位におけるm、m1及びm2並びにn1及びn2は0であり、基R4a及びR4bは水素原子である。
これらの前記式(1B)で表される構成単位は、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの前記式(1B)で表される構成単位のうち、加熱により6員環に変換し易い点から、Zが酸素原子、硫黄原子又はセレン原子(特に、硫黄原子)である構成単位が好ましく、なかでも、Z及びZが酸素原子、硫黄原子又はセレン原子(特に、硫黄原子)である構成単位が好ましく、特に、表2におけるNo.9及び10などのnが0である構成単位が好ましい。
これらの前記式(1)で表される構成単位(第1の構成単位)は、単独で又は2種以上組み合わせて高分子化合物中に含まれていてもよい。これらの第1の構成単位は、前記式(1B)で表される構成単位を少なくとも含むことが多い。
(第2の構成単位)
7員環骨格を有する高分子化合物は、第1の構成単位のみで形成されていてもよく、必要に応じて、第1の構成単位とは異なる第2の構成単位(又は第1の構成単位の範疇に属さない他の構成単位)を含んでいてもよい。第2の構成単位としては、特に制限されず、目的や用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、有機半導体などとして利用する場合、第2の構成単位としてのアクセプター性単位を含むことにより、第1の構成単位(又は第1の構成単位を加熱して得られるベンゼン環骨格を有する構成単位)をドナー性(電子供与性又は電子豊富性)単位として含むドナー−アクセプター型高分子(D−A型高分子)を形成してもよい。
アクセプター性単位としては、アクセプター性(電子受容性、電子不足性又は電子欠損性)を有する構造単位である限り特に制限されず、慣用のアクセプター性単位を含んでいればよい。代表的なアクセプター単位としては、例えば、下記式(2)〜(8)で表される単位などが挙げられる。
(式中、Z〜Zはそれぞれ独立して周期表第16族元素から選択される原子、R〜R11はそれぞれ独立して置換基、r1、r5及びr6はそれぞれ独立して0又は1、r2及びr7はそれぞれ独立して0〜3の整数、r3及びr4はそれぞれ独立して0以上の整数、環E及びEはそれぞれ独立して芳香族環を示す)。
前記式(2)において、Zで表される周期表第16族元素から選択される原子としては、前記式(1)におけるZとして例示した第16族元素などが挙げられる。好ましい原子Zとしては、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子が挙げられ、なかでも、酸素原子又は硫黄原子(特に、酸素原子)が特に好ましい。2つの原子Zの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
及びRで表される置換基としては、前記式(1)においてR1a及びR1bでとして例示した置換基と同様の置換基などが挙げられる。好ましいR及びRとしては、アルキル基(例えば、C1−50アルキル基など)などの炭化水素基が挙げられ、C10−44アルキル基がさらに好ましく、なかでも、C16−38アルキル基、特に、C20−35アルキル基が好ましい。
置換数r1は、1であるのが好ましい。2つのr1は互いに異なっていてもよいが、通常、同一である。2つのr1がともに1である場合、2つのRの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である。
置換数r2は、例えば、0〜2の整数、好ましくは0又は1、特に0であってもよい。2つのr2は互いに異なっていてもよいが、通常、同一である。r2が2以上である場合、同一のベンゼン環骨格に置換するRの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、2つの異なるベンゼン環骨格に置換するRの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(3)において、Zで表される周期表第16族元素から選択される原子としては、前記式(1)におけるZとして例示した第16族元素などが挙げられる。好ましい原子Zとしては、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子が挙げられ、なかでも、酸素原子又は硫黄原子(特に、硫黄原子)が特に好ましい。
で表される芳香族環は、原子Z及び2つの窒素原子を含む5員複素環と縮合可能な環、すなわち、互いに隣接する2つの炭素原子を有する環である限り特に制限されず、芳香族炭化水素環(アレーン環)であってもよく、芳香族複素環(ヘテロアレーン環)であってもよい。
アレーン環としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環;縮合多環式アレーン環[例えば、インデン環、インダン環、ナフタレン環、テトラリン環、アズレン環、インダセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオランテン環、アセアントリレン環、アセフェナントリレン環、ナフタセン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、ペンタセン環、ペンタフェン環、ピセン環、ペリレン環などのC9−30縮合多環式アレーン環など]などが挙げられる。好ましいアレーン環としては、C6−22アレーン環(例えば、C6−18アレーン環)が挙げられ、さらに好ましくはC6−14アレーン環(例えば、ベンゼン環又はナフタレン環などのC6−10アレーン環など)、特にベンゼン環であってもよい。
ヘテロアレーン環としては、例えば、単環式ヘテロアレーン環[例えば、窒素(N)含有単環式ヘテロアレーン環(例えば、ピロール環、イミダゾ−ル環、ピラゾ−ル環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環など);酸素(O)含有単環式ヘテロアレーン環(例えば、フラン環、ピラン環など);硫黄(S)含有単環式ヘテロアレーン環(例えば、チオフェン環など);2種以上のヘテロ原子を含有する単環式ヘテロアレーン環(例えば、オキサゾ−ル環、イソオキサゾ−ル環、チアゾ−ル環、イソチアゾ−ル環、チアジン環、チアジアジン環など)などのC2−5単環式ヘテロアレーン環など];多環式ヘテロアレーン環[例えば、窒素(N)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、インドリジン環、インドール環、3H−インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、4H−キノリジン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、カルバゾール環、4aH−カルバゾール環、β−カルボリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナジン環、フェナントロリン環、ペリミジン環など);酸素(O)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、クロメン環、クロマン環、イソクロマン環、キサンテン環など);硫黄(S)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、チアントレン環など);2種以上のヘテロ原子を含有する多環式ヘテロアレーン環(例えば、チエノフラン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェナルサジン環など)などのC6−20多環式ヘテロアレーン環など]などが挙げられる。好ましいヘテロアレーン環としては、C2−13ヘテロアレーン環(例えば、窒素(N)含有単環式又は多環式C2−13ヘテロアレーン環など)、さらに好ましくはC3−9ヘテロアレーン環(特に、ピリジン環、ピリダジン環、イソキノリン環、フタラジン環、キノキサリン環などの窒素(N)含有単環式又はニ環式C3−9ヘテロアレーン環など)であってもよい。
好ましい環Eとしては、C6−14アレーン環、窒素(N)含有C3−10ヘテロアレーン環などが挙げられ、なかでも、C6−10アレーン環、窒素(N)含有単環式又はニ環式C4−8ヘテロアレーン環(特に、ベンゼン環などのC6−10アレーン環)が好ましい。より具体的には、環Eは、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、イソキノリン環、フタラジン環、キノキサリン環から選択される芳香族環(特に、ベンゼン環)であるのが好ましい。
なお、Eで表される芳香族環と、原子Z及び2つの窒素原子を含む5員複素環との縮合位置は特に制限されない。
で表される置換基としては、例えば、前記式(1)におけるR1a及びR1bとして例示した置換基と同様の基などが挙げられる。好ましい基Rとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子などが挙げられ、なかでも、長鎖アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルキル基など)、長鎖アルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルコキシ基など)、ハロゲン原子が好ましく、特に、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
置換数r3は、環Eの種類に応じて適宜選択でき、例えば、0〜4の整数(例えば、0〜3の整数)、好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、さらに好ましくは0であってもよい。r3が2以上である場合、2以上の置換基Rの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
式(3)で表される単位として代表的には、例えば、下記式(3a)〜(3g)で表される単位などが挙げられる。
(式中、Z、R及びr3は、それぞれ好ましい態様を含めて前記に同じ)。
前記式(3)で表されるアクセプター性単位は、前記式(3a)〜(3g)で表される単位を単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。前記式(3a)〜(3g)で表される単位のうち、式(3a)、式(3b)[特に式(3a)]で表される単位が好ましい。
式(4)において、Zで表される周期表第16族元素から選択される原子は、前記式(3)のZと好ましい態様を含めて同様の原子が挙げられる。また、2つの原子Zは、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
で表される芳香族環は、原子Z及び2つの窒素原子を含む5員複素環と2か所で縮合可能な環、すなわち、互いに隣接する2つの炭素原子を2組以上有する環である限り特に制限されず、アレーン環であってもよく、ヘテロアレーン環であってもよい。
アレーン環としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環;縮合多環式アレーン環[例えば、インデン環、インダン環、ナフタレン環、テトラリン環、アズレン環、インダセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオランテン環、アセアントリレン環、アセフェナントリレン環、ナフタセン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、ペンタセン環、ペンタフェン環、ピセン環、ペリレン環などのC9−30縮合多環式アレーン環など]などが挙げられる。好ましいアレーン環としては、C6−22アレーン環(例えば、C6−18アレーン環)、さらに好ましくはC6−14アレーン環(例えば、ベンゼン環又はナフタレン環などのC6−10アレーン環など)、特にナフタレン環であってもよい。
ヘテロアレーン環としては、例えば、多環式ヘテロアレーン環[例えば、窒素(N)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、インドリジン環、インドール環、3H−インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、4H−キノリジン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、カルバゾール環、4aH−カルバゾール環、β−カルボリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナジン環、フェナントロリン環、ペリミジン環など);酸素(O)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、クロメン環、クロマン環、イソクロマン環、キサンテン環など);硫黄(S)含有多環式ヘテロアレーン環(例えば、ベンゾチオフェン環、チアントレン環など);2種以上のヘテロ原子を含有する多環式ヘテロアレーン環(例えば、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェナルサジン環など)などのC6−20多環式ヘテロアレーン環など]などが挙げられる。好ましいヘテロアレーン環としては、C6−13ヘテロアレーン環(例えば、窒素(N)含有単環式又は多環式C6−13ヘテロアレーン環など)であってもよい。
好ましい環Eとしては、C6−14アレーン環などが挙げられ、なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−10アレーン環(特にナフタレン環)が好ましい。
なお、Eで表される芳香族環と、原子Z及び2つの窒素原子を含む5員複素環との縮合位置は特に制限されない。
で表される置換基としては、例えば、前記式(1)においてR1a及びR1bとして例示した置換基と同様の基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子などが挙げられ、なかでも、長鎖アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルキル基など)、長鎖アルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルコキシ基など)、ハロゲン原子が好ましく、特に、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
置換数r4は、環Eの種類に応じて適宜選択でき、例えば、0〜4の整数(例えば、0〜3の整数)、好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、さらに好ましくは0であってもよい。r4が2以上である場合、2以上の置換基Rの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
式(4)で表される単位として代表的には、例えば、下記式(4a)で表される単位などが挙げられる。
(式中、r4aは0又は1を示し、Z及びRは、それぞれ好ましい態様を含めて前記に同じ)。
前記式(4a)において、r4aは0であるのが好ましい。また、2つのr4aは、互いに同一又は異なっていてもよい。
式(5)において、Zで表される周期表第16族元素から選択される原子としては、前記式(3)のZと好ましい態様を含めて同様の原子が挙げられる。
式(6)において、Zで表される周期表第16族元素から選択される原子としては、前記式(3)のZと好ましい態様を含めて同様の原子が挙げられる。また、2つの原子Zは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。
式(7)において、Zで表される周期表第16族元素から選択される原子としては、前記式(3)のZと好ましい態様を含めて同様の原子が挙げられる。また、2つの原子Zは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。
で表される置換基としては、例えば、前記式(1)においてR1a及びR1bとして例示した置換基と同様の基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子などが挙げられ、なかでも、長鎖アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルキル基など)、長鎖アルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルコキシ基など)が好ましい。
置換数r5は、好ましくは0であってもよい。2つのr5は互いに同一又は異なっていてもよい。2つのr5の双方が1である場合、2つの置換基Rの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
式(8)において、R10及びR11で表される置換基としては、例えば、前記式(1)においてR1a及びR1bとして例示した置換基と同様の基などが挙げられる。好ましい置換基R10及びR11としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子などが挙げられ、なかでも、長鎖アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルキル基など)、長鎖アルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C6−36アルコキシ基など)が好ましい。
置換数r6は、好ましくは0であってもよい。2つのr6は互いに同一又は異なっていてもよい。2つのr6の双方が1である場合、2つの置換基R10の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
置換数r7は、例えば、0〜2の整数、好ましくは0又は1、特に0であってもよい。2つのr7は互いに異なっていてもよいが、通常、同一である。r7が2以上である場合、同一のベンゼン環骨格に置換するR11の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、2つの異なるベンゼン環骨格に置換するR11の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
これらのアクセプター性単位は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのアクセプター性単位のうち、窒素原子及び周期表第16族(又は6B族)元素から選択される原子を含む芳香族複素環骨格を有する前記式(2)〜(7)で表される単位が好ましく、なかでも、前記式(2)で表される単位が好ましい。前記式(2)で表される構成単位のなかでも、Zが酸素原子又は硫黄原子(特に酸素原子)、r1が1、Rが炭化水素基(特にC20−35アルキル基などのアルキル基)、r2が0である構成単位が好ましい。
第2の構成単位としてアクセプター性単位を含む場合、前記式(2)で表される単位の割合は、アクセプター性単位全体に対して、例えば、10〜100モル%(例えば、30〜100モル%)程度の範囲から選択でき、例えば、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%(例えば、70〜99モル%)、さらに好ましくは80〜100モル%(例えば、85〜95モル%)、特に、90〜100モル%(例えば、95〜100モル%、好ましくは実質的に100モル%)程度であってもよい。
D−A型高分子を形成する場合、ドナー性単位として、前記式(1)で表される第1の構成単位を少なくとも含んでいればよいが、必要に応じて、第2の構成単位として他のドナー性単位、例えば、チオフェン単位、ジベンゾチオフェン単位、ベンゾジチオフェン単位などの置換基[例えば、前記式(1)において基R1a及びR1bとして例示した置換基と同様の基など]を有していてもよい慣用のドナー性単位を含んでいてもよい。これらの慣用のドナー性単位は、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。慣用のドナー性単位のうち、下記式(9)で表されるドナー性単位がよく利用される。
(式中、R12は置換基、sは0〜2の整数を示す)。
式(9)において、置換基R12は、前記式(1)における基R1a及びR1bと同様の置換基が例示でき、通常、アルキル基又はアルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状長鎖アルキル基、又は直鎖状又は分岐鎖状長鎖アルコキシ基)であることが多い。
置換数sは、通常、0又は1であることが多い。
D−A型高分子を形成する場合、前記式(1)で表される第1の構成単位の割合は、ドナー性単位全体に対して、例えば、10〜100モル%(例えば、30〜100モル%)程度の範囲から選択でき、例えば、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%(例えば、70〜99モル%)、さらに好ましくは80〜100モル%(例えば、85〜95モル%)、特に、90〜100モル%(例えば、95〜100モル%、好ましくは実質的に100モル%)程度であってもよい。
本発明の高分子化合物における第1の構成単位の割合は、構成単位全体に対して、例えば、10モル%以上(例えば、30〜100モル%)程度の範囲から選択でき、例えば、40モル%以上(例えば、50〜99モル%)程度であってもよく、より一層溶解性を向上できる点から、好ましくは60モル%以上(例えば、70〜97モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(例えば、90〜95モル%)、特に、実質的に100モル%(第1の構成単位のみ)であってもよい。第1の構成単位の割合が少なすぎると、十分に溶解性を向上できないおそれがある。
また、D−A型高分子を形成する場合、第1の構成単位の割合は、構成単位全体に対して、例えば、10〜90モル%(例えば、20〜80モル%)、好ましくは30〜70モル%(例えば、40〜60モル%)、さらに好ましくは45〜55モル%程度であってもよい。
本発明の高分子化合物の形態は、特に制限されず、単独重合体又は共重合体のいずれであってもよく、共重合体であることが多い。共重合体である場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体などであってもよい。D−A型高分子を形成する場合、交互共重合体又はブロック共重合体、なかでも、交互共重合体などであることが多い。
[7員環骨格を有する高分子化合物の製造方法]
本発明の高分子化合物の製造方法は特に制限されず、代表的には、前記式(1)で表される第1の構成単位を有するモノマー成分(又は重合成分)、及び、必要に応じて、第2の構成単位を有するモノマー成分をカップリング反応(又はクロスカップリング反応)に供して製造する方法などが挙げられる。
カップリング反応に供するモノマー成分は、第1及び/又は第2の構成単位と、カップリング可能な反応性基とを有していればよく、第1及び/又は第2の構成単位を複数有している多量体モノマーであってもよいが、通常、第1又は第2の構成単位を1つ有している単量体モノマーであることが多い。代表的なモノマー成分としては、例えば、下記式(10a)〜(10c)で表されるモノマー成分などが挙げられる。
(式中、Mは第1又は第2の構成単位(又はモノマー残基ともいう)、X及びXはカップリング可能な一対の反応性基を示す)。
一方の(又は第1の)反応性基X及び他方の(又は第2の)反応性基Xの組み合わせは、後述するカップリング反応の種類に応じて適宜選択できる。なお、式(10a)及び(10b)において、2つのX及びXの種類は、カップリング可能である限り、互いに同一又は異なっていてもよいが、通常、同一である。
このようなモノマー成分を用いる反応としては、例えば、(i)式(10a)で表される第1のモノマー成分と、式(10b)で表される第2のモノマー成分とのカップリング反応、(ii)式(10c)で表される第3のモノマー成分のみのカップリング反応、(iii)第1のモノマー成分及び/又は第2のモノマー成分と、第3のモノマー成分とのカップリング反応などが挙げられる。なお、これらの反応において、第1〜第3のモノマー成分は、それぞれ、単一又は複数のモノマーで構成されていてもよく、反応に供される少なくとも1つのモノマー成分が、第1の構成単位を有するモノマーを含んでいればよい。前記反応のうち、通常、(i)で表されるカップリング反応がよく利用される。
また、カップリング反応の種類は特に制限されず、慣用のカップリング反応、例えば、パラジウム触媒(例えば、パラジウム(0)触媒)を用いるカップリング反応(例えば、根岸カップリング反応、檜山カップリング反応、鈴木−宮浦カップリング反応(鈴木カップリング反応)、右田−小杉−スティレ(Stille)カップリング反応(スティレカップリング反応)など);ニッケル触媒(例えば、ニッケル(0)触媒)を用いるカップリング反応(例えば、熊田−玉尾−コリュー(Corriu)カップリング反応など);鉄触媒(例えば、鉄(III)触媒)を用いるカップリング反応(例えば、高知−フュルストナー(Furstner又はFuerstner)カップリング反応など);銅触媒(例えば、銅(I)触媒など)を用いるカップリング反応(例えば、ウルマン反応など);遷移金属触媒を用いないカップリング反応(例えば、有機触媒を用いるカップリング反応、1電子触媒を用いるカップリング反応、ラジカル種を用いるカップリング反応など)などが挙げられる。なお、鈴木−宮浦カップリング反応では、パラジウム触媒に代えて、ニッケル触媒を用いて反応させることもできる。
金属触媒を用いたカップリング反応により高分子を調製する場合、得られた高分子から金属触媒を完全に除去するのは困難であること、また、有機半導体において金属が残存すると、たとえ微量(例えば、ppm又はppbオーダー)であっても半導体特性が低下し易い。そのため、高分子化合物を有機半導体として利用する場合、金属触媒(例えば、遷移金属触媒)を用いないカップリング反応で調製するのが好ましい。また、生産性などの観点からは、パラジウム(0)触媒又はニッケル(0)触媒を用いるカップリング反応であることが多く、通常、右田−小杉−スティレカップリング反応などのパラジウム(0)触媒を用いるカップリング反応がよく利用される。
そのため、高分子化合物の調製方法として代表的には、前記(i)記載の第1のモノマー成分と、第2のモノマー成分とをスティレカップリング反応に供する方法などが挙げられる。スティレカップリング反応により合成する場合、第1の反応性基Xとしては、例えば、トリアルキルスタンニル基(例えば、トリメチルスタンニル基、トリn−ブチルスタンニル基などのトリC1−6アルキルスタンニル基、好ましくはトリn−ブチルスタンニル基などのトリC1−4アルキルスタンニル基)などが挙げられる。これらの第1の反応性基Xは単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
また、前記第1の反応性基とカップリング可能な第2の反応性基Xとしては、例えば、ハロゲン原子又はフッ化アルカンスルホニルオキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子(好ましくはヨウ素原子、臭素原子)などが挙げられる。フッ化アルカンスルホニルオキシ基としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(基[−OTf])などのフッ化C1−4アルカンスルホニルオキシ基などが挙げられる。これらの第2の反応性基Xは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第2の反応性基Xのうち、ハロゲン原子(例えば、ヨウ素原子、臭素原子)が好ましく、通常、臭素原子がよく利用される。
第1のモノマー成分と、第2のモノマー成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.8〜1/1.2(例えば、1/0.9〜1/1.1)程度であってもよく、通常、1/1(等モル)程度である。
スティレカップリング反応は、パラジウム触媒の存在下で行う。パラジウム触媒としては、慣用のカップリング触媒、例えば、パラジウム(0)触媒{例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[Pd(PPh]、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)[Pd(P(t−Bu)]などのパラジウム(0)−ホスフィン錯体など};パラジウム(II)触媒{例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[Pd(PPhCl]、ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[PdCl(P(o−tolyl)]、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド[PdCl(dppf)]、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド[PdCl(dppe)]、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)ジクロリド[PdCl(dppp)]などのパラジウム(II)−ホスフィン錯体など}などが挙げられる。なお、パラジウム(II)触媒を用いる場合、反応系内の還元性化合物(例えば、後述するホスフィン、アミン、有機金属試薬など)によって0価の錯体に還元されることにより反応が開始する。
これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの触媒のうち、通常、Pd(PPhなどのパラジウム(0)−ホスフィン錯体がよく利用される。触媒の割合は、第1のモノマー成分1モルに対して、パラジウム換算で、例えば、0.001〜0.1モル(例えば、0.01〜0.08モル)程度であってもよい。
また、前記パラジウム触媒は、パラジウム触媒前駆体と配位子とを添加した反応系内で調製してもよい。パラジウム触媒前駆体としては、例えば、パラジウム(0)触媒前駆体{例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体[Pd(dba)・CHCl]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)[Pd(dba)]などのパラジウム(0)−dba錯体など};パラジウム(II)触媒前駆体{例えば、酢酸パラジウム(II)[Pd(OAc)]、塩化パラジウム(II)[PdCl]、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド[PdCl(CHCN)]、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド[PdCl(PhCN)]、アリルパラジウム(II)クロリド2量体[(PdCl(allyl))]、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム[NaPdCl]など}などが挙げられる。これらのパラジウム触媒前駆体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。通常、Pd(dba)・CHClなどのパラジウム(0)−dba錯体がよく利用される。パラジウム触媒前駆体の割合は、前記パラジウム触媒の割合と同様である。
配位子としては、例えば、ホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィンなど);窒素含有複素環状カルベン類(例えば、1,3−ジイソプロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデンなどのイミダゾール系カルベン類など)などが挙げられる。これらの配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。通常、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィンなどのホスフィン類がよく利用される。配位子の割合は、目的とするパラジウム触媒の種類などに応じて適宜選択でき、パラジウム触媒前駆体1モルに対して、例えば、2〜10モル程度の範囲から選択でき、通常、3〜5モル(例えば、3.5〜4.5モル)程度であってもよい。
カップリング反応は、反応に不活性な溶媒の非存在下又は存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類[例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ドデカンなど)、脂環族炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)など]、ハロゲン化炭化水素類(例えば、クロロベンゼンなど)、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸エチルなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上の混合溶媒として用いてもよい。これらの溶媒のうち、通常、炭化水素類(例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素類など)、クロロベンゼンなどの塩化炭化水素類などがよく利用される。溶媒を用いる場合の使用割合は、反応系を均一化できる程度であってもよく、特に制限されない。
カップリング反応は、不活性ガス(例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、50〜220℃(例えば、80〜200℃)、好ましくは120〜190℃程度であってもよい。反応時間は特に制限されず、例えば、1分〜5日間(例えば、30分〜3日間)程度であってもよい。
また、カップリング反応は、通常、加熱下に行われ、マイクロウェーブの照射下で行ってもよい。マイクロウェーブ照射下で反応する場合、反応温度としては、前記範囲と同様であってもよい。また、照射時間(又は反応時間)としては、例えば、10分〜6時間(例えば、30分〜3時間)程度であってもよい。
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、濃縮、デカンテーション、再沈殿、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法など精製し、目的の高分子化合物を分離精製してもよい。また、必要であれば、高分子化合物は、クロマトグラフィー、抽出などの操作により、所定の分子量を有する1又は複数の成分に分画してもよい。
(第1の構成単位を有するモノマーの調製)
前記カップリング反応に供するモノマー成分は、第1の構成単位を有するモノマーを少なくとも1種含んでいればよく、このようなモノマーとして代表的には、前記式(10a)及び(10b)において、Mで表されるモノマー残基が前記式(1)に対応する化合物(例えば、下記式(11a)及び(11b)で表される化合物など)などが挙げられる。このような化合物の製造方法は特に制限されず、例えば、第1及び第2の反応性基X及びXを水素原子に置換した下記式(12)で表される化合物と、第1及び第2の反応性基X及びXに応じた試薬とを反応させることにより調製してもよい。例えば、モノマーを前述のようにスティレカップリング反応に供する場合、以下の方法により第1の反応性基Xとしてのトリアルキルスタンニル基、第2の反応性基Xとしてのハロゲン原子を導入してもよい。
(式中、Z、A、A、R1a、R1b、R、R、R、R、m、n、p1、p2、及び
で表される結合は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じであり、Xは前記カップリング反応の項に記載のトリアルキルスタンニル基と好ましい態様を含めて同じであり、Xは前記カップリング反応の項に記載のハロゲン原子と好ましい態様を含めて同じである)。
式(11a)で表される化合物の合成(リチオ化及びスタンニル化(スタニル化))
式(11a)で表される化合物は、式(12)で表される化合物の環A及びAの所定の部位をリチオ化剤(13)でリチオ化し、得られたリチオ化物のリチウムをスタンニル化剤(14)と反応させて、所定の部位にトリアルキルスタンニル基を導入している。なお、式(12)で表される化合物は、後述する方法などに準じて調製してもよい。
リチオ化剤(13)としては、慣用のリチオ化剤、例えば、アルキルリチウム(例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのC1−6アルキルリチウムなど)、アリールリチウム(フェニルリチウムなど)、リチウムアミド類(リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウム−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(LiTMP)、リチウム−ビス(トリメチルシリル)アミド(LHMDS)など)などが挙げられる。リチオ化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。通常、n−ブチルリチウムなどのアルキルリチウムなどがよく利用される。リチオ化剤の使用割合は、式(12)で表される化合物1モルに対して2〜5モル(例えば、2〜2.5モル)程度であってもよい。
リチオ化反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、脂肪族又は脂環族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサンなど)などが挙げられ、通常、THF、シクロヘキサン、これらの混合溶媒などがよく利用される。反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下、温度−100℃〜30℃(通常、−80℃〜0℃)程度で、反応時間1分〜12時間(通常、10分〜2時間)程度で行ってもよい。反応終了後、必要に応じて、慣用の分離精製手段により精製してもよいが、精製することなく、得られたリチオ化物を含む反応液を次のスタンニル化反応に供してもよい。
スタンニル化剤(14)としては、例えば、トリアルキルスズハライドなどが挙げられ、具体的には、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、n−ブチルスズクロリドなどのトリC1−6アルキルスズハライド、好ましくはトリC1−4アルキルスズハライドなどが挙げられる。これらのスタンニル化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのスタンニル化剤のうち、トリメチルスズクロリドなどのトリC1−4アルキルスズクロリドが用いられることが多い。スタンニル化剤の使用割合は、式(12)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜5モル、好ましくは2〜3モル程度であってもよい。
スタンニル化反応は、上記リチオ化反応と同様の溶媒中、不活性ガス雰囲気下、温度−100℃〜40℃(通常、−80℃〜30℃)程度で、反応時間10分〜6時間(通常、30分〜2時間)程度で行ってもよい。反応終了後、慣用の分離精製手段(濃縮、洗浄、ろ過、再結晶、これらを組み合わせた方法など)により精製してもよい。
式(11b)で表される化合物の合成(リチオ化及びハロゲン化)
式(11b)で表される化合物は、式(12)で表される化合物の環A及びAの所定の部位をリチオ化剤(13)でリチオ化し、このリチウムをハロゲン化剤(15)と反応させて、所定の部位にハロゲン原子を導入している。なお、式(12)で表される化合物は、後述する方法などに準じて調製してもよい。
リチオ化反応は、式(11a)で表される化合物を合成する場合と好ましい態様を含めて同様であってもよい。反応終了後、必要に応じて、慣用の分離精製手段により精製してもよいが、精製することなく、得られたリチオ化物を含む反応液を次のハロゲン化反応に供してもよい。
ハロゲン化剤(15)としては、例えば、慣用のハロゲン化合物、具体的には、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン化アルカン、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン単体などが挙げられる。通常、ハロゲン化アルカンなどがよく利用される。ハロゲン化剤の使用割合は、リチオ化剤(13)の使用割合と同程度である。ハロゲン化反応は、上記リチオ化反応と同様の反応に不活性な溶媒中で、不活性ガス雰囲気下、反応温度−50℃〜50℃(例えば、−30℃〜30℃)程度、反応時間10分〜48時間(通常、20分〜1時間)程度で行ってもよい。反応終了後、慣用の分離精製方法(抽出、乾燥、ろ過、濃縮、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法など)により精製してもよい。
(式(12)で表される化合物の調製)
前記式(12)で表される化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記反応式で表される方法A、後述する方法Bなどに従って調製できる。
(方法A)
[式中、X3a、X3b及びXはハロゲン原子、Phはフェニル基、Lはハロゲン原子又は基−SO13(R13は炭化水素基、フッ化炭化水素基又はニトロ化炭化水素基を示す)を示し、Z、A、A、R1a、R1b、R、R、R、R、m、n、p1、p2、及び
で表される結合は、それぞれ好ましい態様も含めて前記式(1)に同じ]。
式(18)で表される化合物の合成(還元反応)
式(18)で表されるヒドロキシ化合物は、式(16a)で表されるカルボニル化合物を還元剤(17)により還元することにより調製できる。
前記式(16a)において、X3aで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、臭素原子が好ましい。式(16a)で表されるカルボニル化合物としては、前記式(1)で表される構成単位に対応するカルボニル化合物であればよく、通常、R1aが水素原子である場合が多い。式(16a)で表されるカルボニル化合物として代表的には、アルデヒド類[例えば、o−ブロモ−ベンズアルデヒド、2−ブロモ−1−ナフトアルデヒド、3−ブロモ−2−ナフトアルデヒドなどのハロ−ホルミルアレーン;3−ブロモピロール−2−カルボキシアルデヒド、3−ブロモフラン−2−カルボキシアルデヒド、3−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド、3−ブロモセレノフェン−2−カルボキシアルデヒドなどの3−ハロ−ヘテロアレーン−2−カルボキシアルデヒドなど];ケトン類[例えば、o−ブロモ−ヘプタノイル−ベンゼン、2−ブロモ−1−ウンデカノイル−ナフタレン、3−ブロモ−2−ヘプタデカノイルナフタレンなどのハロ−C2−31アルカノイル−アレーン;3−ブロモ−2−ヘプタノイル−ピロール、3−ブロモ−2−ウンデカノイル−フラン、3−ブロモ−2−ヘプタデカノイル−チオフェン、3−ブロモ−2−ヘプタノイル−セレノフェンなどの3−ハロ−2−C2−31アルカノイル−ヘテロアレーンなど]などであってもよい。これらの式(16a)で表されるカルボニル化合物のうち、3−ハロ−ヘテロアレーン−2−カルボキシアルデヒドなどのアルデヒド類が好ましい。式(16a)で表されるカルボニル化合物は市場から調達してもよく、例えば、ジハロ−アレーンなどをホルミル化する方法などの慣用の方法や、後述する方法などにより調製してもよい。
還元剤(17)としては特に制限されず、慣用の還元剤、例えば、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)などが挙げられる。還元剤の使用割合は、式(16a)で表されるカルボニル化合物1モルに対して、例えば、0.1〜5モル、好ましくは1〜3モル、さらに好ましくは1.5〜2モル程度であってもよい。還元剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は特に制限されず、慣用の有機溶媒、例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなど)、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)などであってもよい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、エタノールなどのアルコール類が使用される場合が多い。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−20〜40℃、好ましくは−10〜30℃(通常、−5℃〜室温)程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜48時間、好ましくは12〜36時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
式(20)で表される化合物の合成(ホスホニウム塩の合成)
式(20)で表されるホスホニウム塩は、式(18)で表されるヒドロキシ化合物と、前記式(19)で表されるトリフェニルホスフィンハロゲン化水素塩とを反応させることにより調製できる。
式(19)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、臭素原子が好ましい。式(19)で表されるトリフェニルホスフィンハロゲン化水素塩としては、例えば、トリフェニルホスフィン塩化水素塩、トリフェニルホスフィン臭化水素塩、トリフェニルホスフィンヨウ化水素塩などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。前記式(19)で表されるトリフェニルホスフィンハロゲン化水素塩は、市販品を使用してもよく、その使用割合は、前記式(18)で表されるヒドロキシ化合物1モルに対して、例えば、1〜3モル、好ましくは1〜2モル程度、通常、1モル程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)であってもよい。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類が使用される場合が多い。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、40〜100℃、好ましくは50〜70℃程度であってもよく、反応は、還流条件下で行ってもよい。反応時間は、例えば、1〜40時間、好ましくは10〜30時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、抽出、乾燥、濃縮、再結晶、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
式(21)で表される化合物の合成(Wittig反応)
式(21)で表されるジハロ化合物は、式(20)で表されるホスホニウム塩と、式(16b)で表されるカルボニル化合物とを、塩基の存在下で反応させることにより調製できる。
式(16b)において、X3bで表されるハロゲン原子としては、前記式(16a)におけるX3aと好ましい態様も含めて同様の原子が例示できる。また、式(16b)で表される化合物としては、前記式(1)で表される構成単位に対応するカルボニル化合物であればよく、通常、R1bが水素原子である化合物がよく用いられる。式(16b)で表される化合物としては、前記式(16a)で例示した化合物と好ましい態様を含めて同様である。また、式(16a)及び(16b)で表される化合物は同一の化合物であることが多い。
式(20)で表されるホスホニウム塩の使用割合は、式(16b)で表されるカルボニル化合物1モルに対して、例えば、1〜1.5モル、好ましくは1.05〜1.2モル程度であってもよい。
反応は塩基の存在下で行われ、塩基としては、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩など)、金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属C1−6アルコキシドなど)などの無機塩基;アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミンなど)などの有機塩基などが挙げられる。塩基は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、通常、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシドが使用される場合が多い。塩基の使用割合は、前記式(20)で表されるホスホニウム塩1モルに対して、例えば、1〜5モル、好ましくは2〜4モル程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、前記式(18)で表される化合物の合成における還元反応に例示した溶媒などが挙げられ、通常、テトラヒドロフランなどのエーテル類が使用される場合が多い。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−20〜50℃、好ましくは−10〜30℃(通常、−5℃〜室温)程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜100時間、好ましくは24〜72時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
式(12)で表される化合物の合成(リチオ化、及び環化又は閉環反応)
式(12)で表される化合物は、式(21)で表されるジハロ化合物をリチオ化剤と反応させて生成したリチオ化物と、式(23)で表される化合物(閉環剤)とを反応させることにより調製できる。
リチオ化剤としては、特に制限されず、慣用のリチオ化剤、例えば、前記式(11a)で表される化合物の合成の項で例示したリチオ化剤(13)と好ましい態様を含めて同様である。これらのリチオ化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。リチオ化剤の使用割合は、前記式(21)で表されるジハロ化合物1モルに対して、例えば、2〜5モル、好ましくは2〜3モル程度であってもよく、通常、2モル程度であってもよい。
リチオ化反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、脂肪族又は脂環族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサンなど)などが挙げられ、通常、ジエチルエーテル、ヘキサン、これらの混合溶媒などが使用される場合が多い。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−100〜−50℃、好ましくは−80〜−70℃程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜120分、好ましくは30〜90分程度であってもよい。反応終了後、慣用の分離精製手段により精製することなく、必要に応じて、生成したリチオ化物を含む反応液を次の環化反応に供してもよい。
前記式(23)において、Lで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など(特に塩素原子)が挙げられる。
Lで表される基−SO13において、R13で表される炭化水素基としては、例えば、前記式(1)における基R1a及びR1bの項に例示の炭化水素基などが挙げられる。R13で表されるフッ化炭化水素基としては、前記炭化水素基における水素原子の一部又は全部をフッ素化した基、例えば、トリフルオロメチル基などのフッ化アルキル基、ペンタフルオロフェニル基などのフッ化アリール基などが挙げられる。R13で表されるニトロ化炭化水素基としては、前記炭化水素基における水素原子の一部又は全部をニトロ化した基、例えば、ニトロフェニル基などのニトロアリール基などが挙げられる。
Lで表される基−SO13として代表的には、アルキルスルホニル基(メチルスルホニル基(メシル基)などのC1−6アルキルスルホニル基など);アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基などのC6−10アリールスルホニル基など);アルキルアリールスルホニル基(p−トルエンスルホニル基(トシル基)などのC1−6アルキルC6−10アリールスルホニル基など);ニトロアリールスルホニル基(o−ニトロベンゼンスルホニル基などのニトロC6−10アリールスルホニル基など);フッ化アルキルスルホニル基(トリフルオロメタンスルホニル基などのフッ化C1−6アルキルスルホニル基など)などが挙げられる。
2つの基Lは互いに異なっていてもよいが、通常、同一であってもよい。これらの基Lのうち、ハロゲン原子(例えば、塩素原子など)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基など)などが利用される場合が多い。
前記式(23)で表される化合物(閉環剤)は、式(12)で表される化合物に対応して選択でき、代表的には、例えば、ベンゼンチオスルホン酸無水物((PhSOS)などのスルホン酸無水物;二塩化セレン(SeCl)、ジメチルジクロロシラン、フェニルジクロロホスフィンなどのジハロゲン化物などが挙げられる。これらの式(23)で表される化合物は、市販品などを使用してもよい。前記式(23)で表される化合物(閉環剤)の使用割合は、式(21)で表されるジハロ化合物1モルに対して、例えば、1〜1.5モル、好ましくは1.05〜1.2モル程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒としては、前記リチオ化反応において例示した溶媒と同様であってもよい。前記リチオ化反応の反応液を閉環反応に供した場合、この反応液にさらに溶媒を添加してもよく、通常、テトラヒドロフランなどが追加される場合が多い。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−100〜50℃、好ましくは−90〜30℃(通常、−78℃〜室温)程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜12時間、好ましくは6〜9時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
(方法B)
式(12)で表される化合物は、下記反応式(方法B)に従って調製することもできる。方法Bでは、前記方法Aよりも反応工程数が少ない点で有利である。また、基R1a及びR1bにアルキル基などの炭化水素基を導入する場合に有用である。
(式中、R14は、それぞれ独立してアルキル基を示し、Z、A、A、R1a、R1b、R、R、R、R、m、n、p1、p2及び
で表される結合は、それぞれ好ましい態様も含めて前記式(1)の記載に同じであり;X3a及びX3bは、それぞれ好ましい態様も含めて前記式(16a)及び(16b)の記載に同じである)。
式(25)で表される化合物の合成(スティレカップリング反応)
式(25)で表される化合物は、式(16a)及び(16b)で表される化合物と、式(24)で表される化合物とをスティレカップリング反応によりカップリングすることにより合成できる。
式(16a)及び(16b)において、A及びA、R1a及びR1b、R及びR、X3a及びX3b、並びにp1及びp2は、それぞれ、互いに同一又は異なっていてもよいが、通常、同一、すなわち、式(16a)及び(16b)は同一化合物である場合が多い。
式(16a)及び(16b)で表される化合物としては、例えば、前記式(16a)で表される化合物として例示した化合物と同様の化合物などが挙げられる。これらの式(16a)及び(16b)で表される化合物は、2種以上組み合わせて使用することもできるが、通常、単独で用いる場合が多い。また、方法Bでは、基R1a及びR1bに炭化水素基(例えば、アルキル基など)を容易に又は効率よく導入できる点から、これらの式(16a)及び(16b)で表される化合物のうち、ハロ−アルカノイル−アレーン;3−ハロ−2−アルカノイル−ヘテロアレーン(例えば、3−ブロモ−2−ヘプタノイル−チオフェンなど)などのケトン類が好ましい。
式(16a)及び(16b)で表される化合物は市場から調達してもよく、例えば、3−ハロ−ヘテロアレーンと、アルカン酸塩化物(又は酸無水物)とを、塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒の存在下で反応(フリーデルクラフツ アシル化反応)させる方法などの慣用の方法や、後述する方法などにより調製してもよい。なお、フリーデルクラフツ アシル化反応により調製する場合、式(16a)及び(16b)で表される化合物は、副生成物(例えば、X3a及びX3bに隣接する置換位置以外の位置にアルカノイル基が置換した化合物など)を完全に除去することなく式(24)で表される化合物との反応に供して、前記反応終了後に精製してもよい。
式(24)において、アルキル基R14としては、例えば、メチル基、n−ブチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはメチル基などのC1−4アルキル基などが挙げられる。6つのアルキル基R14の種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。式(24)で表される化合物として代表的には、ビス(トリアルキルスズ)スルフィド(又はビス(トリアルキルスタンニル)スルフィド)[例えば、ビス(トリメチルスズ)スルフィド、ビス(トリn−ブチルスズ)スルフィドなどのビス(トリC1−4アルキルスズ)スルフィドなど];ビス(トリアルキルスズ)オキシド(又はビス(トリアルキルスズ)エーテル)[例えば、ビス(トリn−ブチルスズ)オキシドなどのビス(トリC1−4アルキルスズ)オキシドなど];ビス(トリアルキルスズ)セレニド[例えば、ビス(トリn−ブチルスズ)セレニドなどのビス(トリC1−4アルキルスズ)セレニドなどが挙げられ、ビス(トリブチルスズ)スルフィドなどのビス(トリアルキルスズ)スルフィドがよく利用される。これらの式(24)で表される化合物は、市場から調達してもよい。
式(16a)及び式(16b)で表される化合物の総量の使用割合は、式(24)で表される化合物1モルに対して、例えば、2〜3モル、好ましくは2〜2.5モル(通常、2〜2.2モル)程度であってもよい。
スティレカップリング反応は、パラジウム触媒の存在下で行われ、パラジウム触媒としては、前記高分子化合物の製造方法の項において例示したパラジウム触媒、パラジウム触媒前駆体と配位子との組み合わせなどが挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもでき、Pd(PPhなどのパラジウム触媒などがよく利用される。触媒の使用割合は、式(24)で表される化合物1モルに対して、パラジウム換算で、例えば、0.01〜0.3モル、好ましくは0.03〜0.2モル(通常、0.05〜0.15モル)程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などであってもよい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、トルエンなどの芳香族炭化水素類などが使用される場合が多い。溶媒を用いる場合の使用割合は、反応系を均一化できる程度であってもよく、特に制限されない。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下(又は気流下)で行ってもよい。反応温度は、例えば、室温〜200℃、好ましくは80〜150℃(通常、90〜130℃)程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜48時間、好ましくは12〜24時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
式(12)で表される化合物の合成(マクマリーカップリング反応)
低原子価チタン(例えば、Ti(I)、Ti(0)など)の還元作用を利用して、式(25)で表される化合物を分子内カップリング(又は環化反応)することにより、式(12)で表される化合物を調製できる。
低原子価チタンは、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、チタン化合物(26)を還元剤(27)で還元することにより生成され、通常、式(25)で表される化合物を含む反応系内で生成される場合が多い。前記チタン化合物(26)としては、例えば、塩化チタン(III)(TiCl)、塩化チタン(IV)(TiCl)などのハロゲン化チタンなどが挙げられる。前記チタン化合物(26)は、配位子(ジメトキシエタンなど)とともに錯体を形成していてもよい。これらのチタン化合物(26)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもでき、通常、塩化チタン(IV)(TiCl)などのハロゲン化チタンなどがよく利用される。
前記還元剤(27)としては、リチウム(Li)、カリウム(K)などのアルカリ金属;水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)などの水素化アルミニウム化合物;亜鉛(Zn)又は亜鉛含有化合物(又は合金)[例えば、亜鉛(Zn)−銅(Cu)カップルなど]などが挙げられる。これらの還元剤(27)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することもでき、通常、亜鉛(Zn)又は亜鉛含有化合物(例えば、亜鉛(Zn))が利用されることが多い。
チタン化合物(26)の割合は、式(25)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜20モル(例えば、5〜10モル)、好ましくは7〜9モル(通常、7.5〜8.5モル)程度であってもよい。還元剤(27)の割合は、チタン化合物(26)1モルに対して、例えば、1〜5モル(例えば、1.8〜3モル)、好ましくは1.5〜2.5モル(通常、1.8〜2.2モル)程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限されず、慣用の有機溶媒、例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)などであってもよい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、トルエンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、これらの混合溶媒(特に、トルエン及びテトラヒドロフランの混合溶媒など)などが使用される場合が多い。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは40〜80℃(通常、50〜70℃)程度であってもよい。なお、式(25)で表される化合物、チタン化合物(26)及び還元剤(27)の混合(又は反応初期)は、低温環境下で行ってもよく、例えば、−30〜10℃、好ましくは−20〜0℃(通常、−15〜−5℃)程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜48時間、好ましくは12〜30時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
(式(16a)で表される化合物の調製)
前記式(16a)及び(16b)で表される化合物は、例えば、前述したフリーデルクラフツ アシル化反応などの慣用の方法で合成してもよいが、R1a及びR1bが1−位にメチレン基を含む置換基(例えば、アルキル基やアラルキル基などの炭化水素基など)である場合、位置異性体を形成し難く、容易に精製でき高い収率で合成できる点から、下記反応式に従って調製してもよい。なお、下記反応式では、式(16a)で表される化合物の調製について示すが、式(16b)で表される化合物も同様に調製できる。
(式中、Xは塩素原子又は臭素原子、R1aは基[−CH−R15]、R15は炭化水素基を示し、A、R、p1及び
で表される結合は、それぞれ好ましい態様も含めて前記式(1)の記載に同じであり;X3aは、それぞれ好ましい態様も含めて前記式(16a)の記載に同じである)。
式(31a)で表される化合物の合成(リチオ化、及びヨウ素化)
式(31a)で表される化合物は、式(28a)で表される化合物をリチオ化剤(29)と反応させてリチオ化し、得られたリチオ化物をヨウ素化剤(30)と反応させることにより合成できる。
式(28a)において、Xは、通常、臭素原子であることが多い。また、環Aがヘテロアレーン環である場合、Xが置換する炭素原子は、環Aを形成するヘテロ原子に隣接しているのが好ましい。例えば、環Aがチオフェン環である場合、Xが置換する炭素原子は、チオフェン環を形成する硫黄原子に隣接する、すなわち、Xがチオフェン環の2−位に置換するのが好ましい。式(28a)で表される化合物として代表的には、1,2−ジブロモベンゼンなどのジハロアレーン;2,3−ジブロモチオフェンなどのジハロヘテロアレーンなどが挙げられ、ジハロ−ヘテロアレーンがよく利用される。
リチオ化剤(29)としては、特に制限されず、慣用のリチオ化剤、例えば、前記式(11a)で表される化合物の合成の項で例示したリチオ化剤(13)と好ましい態様を含めて同様である。これらのリチオ化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。リチオ化剤の使用割合は、前記式(28a)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜3モル、好ましくは1〜2モル程度であってもよく、通常、1.05〜1.2モル程度であってもよい。
リチオ化反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、脂肪族又は脂環族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサンなど)などが挙げられ、通常、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、これらの混合溶媒などがよく利用される。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−100〜−50℃、好ましくは−80〜−70℃程度であってもよい。反応時間は、例えば、1分〜3時間、好ましくは30分〜2時間程度であってもよい。反応終了後、慣用の分離精製手段により精製することなく、必要に応じて、生成したリチオ化物を含む反応液を次の環化反応に供してもよい。
ヨウ素化剤(30)としては、慣用のヨウ素化剤、例えば、ヨウ素単体(I)などが挙げられる。
ヨウ素化反応は、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒としては、前記リチオ化反応において例示した溶媒と同様であってもよい。
ヨウ素化反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−100〜50℃、好ましくは−90〜30℃(通常、−78℃〜室温)程度であってもよい。反応時間は、例えば、30分〜3時間、好ましくは1〜2時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
式(33a)で表される化合物の合成(薗頭カップリング反応)
式(33a)で表される化合物は、式(31a)で表される化合物と、式(32)で表される化合物とを、触媒の存在下で薗頭カップリング反応させることにより合成できる。
式(32)において、R15で表される炭化水素基としては、前記式(1)におけるR1a及びR1bとして例示した炭化水素基と同様の基などが挙げられる。好ましいR15としては、アルキル基(例えば、C1−29アルキル基など)が挙げられ、さらに好ましくはC4−24アルキル基(例えば、C8−22アルキル基など)、特に、C10−20アルキル基(例えば、C12−18アルキル基など)であってもよい。式(32)で表される化合物として代表的には、炭素数3以上の1−アルキン化合物、例えば、1−ヘプタデシンなどのC3−32アルキンなどが挙げられる。式(32)で表される化合物の使用割合は、式(31a)で表される化合物1モルに対して、パラジウム換算で、例えば、1〜2モル、好ましくは1.1〜1.5モル(通常、1.15〜1.3モル)程度であってもよい。
薗頭カップリング反応は、パラジウム触媒の存在下で行われ、パラジウム触媒としては、前記高分子化合物の製造方法の項において例示したパラジウム触媒、パラジウム触媒前駆体と配位子との組み合わせなどが挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもでき、Pd(PPhClなどのパラジウム触媒などがよく利用される。パラジウム触媒の使用割合は、式(31a)で表される化合物1モルに対して、パラジウム換算で、例えば、0.01〜0.3モル、好ましくは0.01〜0.1モル(通常、0.03〜0.08モル)程度であってもよい。
反応は助触媒の存在下で行ってもよい。助触媒としては、例えば、ヨウ化銅(I)などのハロゲン化銅(I)などが挙げられる。助触媒の使用割合は、式(31a)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.15モル(通常、0.08〜0.12モル)程度であってもよい。
反応は塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては代表的にはアミン類、例えば、第2級アミン類、具体的には、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミンなどのジアルキルアミン;第3級アミン類、具体的には、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどが挙げられる。塩基の使用割合は、式(31a)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜10モル、好ましくは3〜5モル(通常、3.5〜4.5モル)程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、THFなどのエーテル類などが使用される場合が多い。溶媒を用いる場合の使用割合は、反応系を均一化できる程度であってもよく、特に制限されない。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下(又は気流下)で行ってもよい。反応温度は、例えば、室温〜150℃、好ましくは室温〜100℃(通常、室温)程度であってもよい。反応時間は、例えば、6〜24時間、好ましくは12〜18時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
式(16a)で表される化合物の合成(水和反応)
式(16a)で表される化合物は、式(33a)で表される化合物を水と水和反応させることにより合成できる。水の使用割合は、式(33a)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜20モル、好ましくは5〜15モル、通常、8〜10モル程度であってもよい。
反応は、通常、酸触媒の存在下で行ってもよい。酸触媒としては、慣用の酸触媒、例えば、有機酸(トリフルオロメタンスルホン酸などのフッ化アルキルスルホン酸など)、無機酸(硫酸など)、ルイス酸などが挙げられる。酸触媒の使用割合は、式(33a)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.1〜10モル、好ましくは1〜5モル、通常、1.5〜2モル程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、フッ化アルカノール類(2,2,2−トリフルオロエタノールなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、これらの混合溶媒などが使用される場合が多い。溶媒を用いる場合の使用割合は、反応系を均一化できる程度であってもよく、特に制限されない。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下(又は気流下)で行ってもよい。反応温度は、例えば、室温〜150℃、好ましくは50〜120℃(通常、80〜100℃)程度であってもよい。反応時間は、例えば、30分〜4時間、好ましくは1〜3時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、吸着、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
なお、高分子化合物の調製において、第2の構成単位を有するモノマー(例えば、前記式(10a)及び(10b)において、Mが前記式(2)で表される構成単位などの第2の構成単位であるモノマーなど)を用いる場合、市販品などを利用してもよく、必要に応じて、慣用の方法で調製してもよい。第2の構成単位を有するモノマーとして代表的には、前記式(10a)及び(10b)において、Mが前記式(2)で表される構成単位などであるモノマーなどが挙げられ、なかでも、前記式(2)において、r1が1、Rがアルキル基などの炭化水素基であるモノマーがよく利用される。このようなモノマーは、例えば、前記式(2)において、r1が0である単位に対応する化合物(又はモノマー)と、ハロゲン化アルカンなどのハロゲン化炭化水素とを、塩基の存在下で反応(又は求核置換反応)させることにより調製してもよい。
前記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、1−ブロモー5−デシルヘプタデカンなどのハロゲン化直鎖状又は分岐鎖状C1−50アルカンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素の使用割合は、前記式(2)においてr1が0である単位に対応する化合物1モルに対して、例えば、2〜5モル、好ましくは2〜3モル程度であってもよい。
反応は、通常、塩基の存在下で行われ、塩基としては、慣用の塩基、例えば、前記式(21)で表される化合物の合成(Wittig反応)の項において例示した塩基などが挙げられる。塩基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、通常、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩が使用される場合が多い。塩基の使用割合は、前記式(2)にお いてr1が0である単位に対応する化合物1モルに対して、例えば、2〜5モル、好ましくは2〜3モル程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)など)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、通常、THF、NMP、これらの混合溶媒などが使用される場合が多い。溶媒を用いる場合の使用割合は、反応系を均一化できる程度であってもよく、特に制限されない。
反応は、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下(又は気流下)で行ってもよい。反応温度は、例えば、室温〜150℃、好ましくは50〜120℃(通常、80〜100℃)程度であってもよい。反応時間は、例えば、1〜24時間、好ましくは6〜18時間程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、洗浄、抽出、乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどの慣用の分離精製手段により精製してもよい。
[7員環骨格を有する高分子化合物の特性及び用途]
本発明の高分子高分子の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば、2000程度以上の範囲から選択でき、例えば、3000〜1000000(例えば、5000〜500000)、好ましくは6000〜100000(例えば、7000〜50000)、さらに好ましくは8000〜35000(例えば、9000〜32000)程度であってもよい。重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば、2000以上(例えば、3000〜10000000程度)の範囲から選択でき、例えば、5000〜1000000(例えば、8000〜200000、好ましくは10000〜100000(例えば、15000〜80000)、さらに好ましくは20000〜65000(例えば、21000〜60000)程度であってもよい。分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1〜20程度の範囲から選択でき、例えば、1.1〜10(例えば、1.2〜5)、好ましくは1.4〜3(例えば、1.5〜2.8)、さらに好ましくは1.7〜2.5(例えば、1.8〜2.2)程度であってもよい。また、重合度DPnは、例えば、3〜100(例えば、5〜50)、好ましくは7〜40(例えば、8〜30)、さらに好ましくは10〜28(例えば、11〜26)程度であってもよい。
また、高分子化合物は、5又は6員環よりもひずみが大きな所定の7員環骨格を有しているため、この7員環骨格により3次元ダイポール(双極子)モーメントが大きくなるとともに、分子間に隙間ができ溶媒が浸入し易くなるためか、環骨格(例えば、縮合多環式骨格、環集合多環式骨格などの多環式骨格など)を有していても有機溶媒などに対する溶解性に優れている。そのため、本発明は、前記7員環骨格を有する高分子化合物と、溶媒とを含む液状組成物も包含する。このような液状組成物を用いると、塗布、印刷などの簡便なコーティング方法により、薄膜(又は膜状成形体)を容易に又は効率よく形成できる。しかも、このような膜状成形体を高分子化合物で形成できるため、低分子化合物の場合に比べて製膜性や膜強度なども高く、7員環骨格のひずみのためか、柔軟性にも優れている。
(有機半導体)
また、高分子化合物は、多環式骨格を有するにもかかわらず、絶縁性の高い長鎖アルキル基を側鎖に導入しなくても(又は炭素数の小さなアルキル基の導入であっても)、溶媒に対する溶解性が高いため、前記膜状成形体は、移動度(キャリア移動度)などの半導体特性を向上し易く、有機半導体として有効に利用することもできる。
本発明の高分子化合物を有機半導体として利用する場合、移動度を向上し易い点から、高分子化合物は、アクセプター性単位を含むD−A型高分子であるのが好ましい。
また、有機半導体は、前記7員環骨格を有する高分子化合物を少なくとも含んでいればよく、必要に応じて、慣用の半導体材料[例えば、アセン類(例えば、ペンタセン、ジベンゾペンタセンなど)などの有機低分子半導体材料;ポリアセチレン類(trans−ポリアセチレンなど)などの有機高分子半導体材料;炭素材[例えば、フラーレン類、グラフェン類、カーボンナノチューブ類などの無機半導体材料など];添加剤[例えば、レベリング剤、密着性向上剤(シランカップリング剤など)、ドーパントなど]などをキャリア輸送性を損なわない範囲で含んでいてもよい。これらの慣用の半導体材料及び添加剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
有機半導体において、前記高分子化合物の割合は、有機半導体全体に対して、例えば、10質量%以上(例えば、30〜100質量%)、好ましくは50質量%以上(例えば、70〜99.9質量%)、さらに好ましくは80質量%以上(例えば、90〜99質量%)程度であってもよく、実質的に100質量%(前記高分子化合物のみ)であってもよい。
有機半導体(有機半導体薄膜、有機半導体層又は膜状成形体)は、真空蒸着法、スパッタリング法などのドライプロセスにより形成してもよいが、前述したように前記高分子化合物が高い溶解性を示すことから、ウェットプロセス(コーティングなど)により形成してもよい。ウェットプロセスとしては、例えば、前記高分子化合物と溶媒とを含む液状組成物(又は溶液)を基材(又は基板)に塗布し、塗膜を形成する塗布工程と、必要に応じて、得られた塗膜を乾燥(又は溶媒を除去)する乾燥工程とを含んでいてもよい。
液状組成物は、基材(又は基板)の全部又は少なくとも一部の領域に塗布してもよく、例えば、基材(又は基板)が2次元形状(面状、フィルム状、シート状など)である場合、基材(又は基板)の少なくとも一方の面などに対して塗布してもよい。
前記基材(又は基板)の形態は特に制限されず、1次元形状(繊維状、糸状、棒状など)、2次元形状(面状、フィルム状、シート状など)、3次元形状などであってもよい。基材(又は基板)として代表的には、ガラス板、シリコンウエハー、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの透明樹脂フィルムなど)などであってもよい。これらの基材は、必要に応じて、表面に1又は複数の機能層(例えば、ITOなどの導電層、SiOなどの絶縁層、β−フェネチルトリメトキシシラン(β−PTS)などの自己組織化単分子膜(SAM)など)が形成されていてもよい。
前記液状組成物は、慣用の方法、例えば、高分子化合物と溶媒とを混合して高分子化合物を溶解し、必要により加熱又は濾過して調製してもよい。溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなど);ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロC1−6アルカン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレンなどのハロC6−10アレーンなど);アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのC1−6アルカンモノオール;エチレングリコールなどのC2−4アルカンジオールなど);エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など);グリコールエーテル類[例えば、セロソルブ類(メチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトールなど)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの(ポリ)C2−4アルキレングリコールモノC1−4アルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどの(ポリ)C2−4アルキレングリコールジC1−4アルキルエーテルなど];グリコールエーテルアセテート類[例えば、セロソルブアセテート類(例えば、メチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテートなど)、カルビトールアセテート類(例えば、メチルカルビトールアセテートなどのC1−4アルキルカルビトールアセテートなど)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)C2−4アルキレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど];ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン、シクロヘキサノンなどの環状ケトンなど);エステル類(酢酸エチルなどの酢酸エステル、乳酸メチルなどの乳酸エステルなど);カーボネート類(ジメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネートなど);ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど);アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなど);スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど);及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。通常、ハロゲン化炭化水素類(例えば、o−ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレンなど)などがよく利用される。
溶媒を加熱して液状組成物を調製する場合、加熱温度は、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜100℃程度であってもよい。前記液状組成物(又は溶液)において、高分子化合物の濃度(固形分濃度)は、塗布方法などに応じて選択してもよく、例えば、0.001〜20質量%(例えば、0.01〜10質量%)、好ましくは0.1〜5質量%(例えば、0.2〜3質量%)、特に0.5〜2質量%(例えば、0.7〜1.3質量%)程度であってもよい。
塗布方法は特に制限されず、慣用の塗布方法、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、バーコート法、ダイコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、キャスト法、エッジキャスト法、ドロップキャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、圧縮配向法などが採用できる。通常、スピンコート法、エッジキャスト法、ドロップキャスト法、インクジェット印刷法などがよく利用され、成膜容易性(又は生産性)の観点から、スピンコート法などが好ましい。
乾燥工程では、慣用の乾燥方法(例えば、自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥及び加熱乾燥の組み合わせなど)によって、塗膜から溶媒を除去することにより有機半導体(層)又は膜状成形体を形成できる。前記加熱乾燥における温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは40〜90℃程度であってもよい。
このようにして得られる有機半導体(層)又は膜状成形体の厚みは、用途に応じて、例えば、1〜5000nm、好ましくは30〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nm程度であってもよい。
有機半導体は、n型半導体、p型半導体又は真性半導体であってもよい。有機半導体は、電子及び/又はホール(正孔)の移動度(キャリア移動度又は電気移動度)が高いため、電子デバイス、例えば、スイッチング素子、整流素子(ダイオード)、トランジスタなどの半導体素子の材料、光電変換デバイス又は光電変換素子(太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子など)の材料として利用できる。
また、有機半導体は、有機薄膜トランジスタとして有効に利用できる。このような有機薄膜トランジスタは、ゲート電極層と、ゲート絶縁層と、ソース/ドレイン電極層と、有機半導体層とで構成されている。これらの層の積層構造によって、有機薄膜トランジスタは、トップゲート型、ボトムゲート型(トップコンタクト型、ボトムコンタクト型)に分類できる。例えば、ゲート電極(酸化膜が形成されたp型シリコンウエハーなど)に有機半導体膜を形成して、この有機半導体膜上にソース/ドレイン電極(金電極)を形成することにより、トップコンタクト型電界効果トランジスタを製造できる。また、前記ソース/ドレイン電極層と、前記有機半導体層との間に、キャリア注入層(ドーパント層)を形成してもよい。このようなキャリア注入層は、例えば、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4−TCNQ)などのTCNQ類、塩化鉄(III)などの金属ハロゲン化物、フラーレン類などで形成されていてもよい。
有機半導体は、前記高分子化合物を含むため、高い移動度と高い溶解性とを両立できる。そのため、有機半導体を用いて電界効果型トランジスタを作製した場合の移動度は、ドレイン電圧Vd=−150Vにおいて、例えば、1×10−8〜10×10−8cm/Vs(例えば、3×10−8〜6×10−8cm/Vs)、好ましくは3.5×10−8〜5.5×10−8cm/Vs(例えば、4×10−8〜5×10−8cm/Vs)程度であってもよい。
(ベンゼン環骨格を含む高分子化合物の製造)
前記7員環骨格を有する高分子化合物(第1の高分子化合物)は、所定の温度で加熱することにより、7員環骨格を形成する所定の原子(前記式(1)におけるZで表される原子)を脱離させてベンゼン環骨格を形成し、ベンゼン環骨格を有する高分子化合物(第2の高分子化合物)を調製できる。例えば、下記式に示すように、前記式(1)で表される構成単位を有する第1の高分子化合物を加熱することにより、下記式(I)で表される構成単位を有する第2の高分子化合物を形成できる。
(式中、Z、A、A、R1a、R1b、R、R、R、R、m、n、p1、p2及び
で表される結合は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
前記式(I)で表される構成単位において、A、A、R1a、R1b、R、R、p1及びp2などの例示や、これらの環、置換基及び置換数などを組み合わせた具体的な構成単位、並びにこれらの好ましい態様は、前記式(1)で表される構成単位に対応して同様である。そのため、前記式(I)で表される構成単位として代表的には、下記式(IA)及び(IB)(特に、式(IB))で表される構成単位などが挙げられる。
(式中、R1a及びR1bは、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)と同じであり;Ar、Ar、R、R、q1及びq2は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1A)と同じであり;Z、Z、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、m1、m2、n1及びn2は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1B)と同じである)。
前記式(IA)及び(IB)で表される構成単位においても、Ar、Ar、R1a、R1b、R、R、q1、q2、Z、Z、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、m1、m2、n1及びn2などの例示や、これらの環、置換基及び置換数などを組み合わせた具体的な構成単位、並びにこれらの好ましい態様は、前記式(1A)及び(1B)で表される構成単位に対応して同様である。そのため、第2の高分子化合物は、少なくとも式(IB)で表される構成単位を含むことが多い。
本発明は、前記第1の高分子化合物を加熱し、7員環骨格から所定の原子(周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子、好ましくは第16族元素から選択される原子、特に、硫黄原子)を脱離させて、ベンゼン環骨格を形成する加熱工程を含む第2の高分子化合物の製造方法も包含する。
加熱工程における熱処理温度(又はアニール温度)は、前記式(1)で表される構成単位の種類(例えば、脱離する原子Zの種類など)に応じて適宜選択すればよく、例えば、100℃以上(例えば、150〜400℃)程度の範囲から選択でき、例えば、160℃以上(例えば、170〜300℃)、好ましくは180℃以上(例えば、190〜250℃)、さらに好ましくは195℃以上(例えば、200〜240℃)、特に、205℃以上(例えば、210〜230℃)程度であってもよい。熱処理時間は特に制限されず、例えば、1分〜1日(例えば、5分〜18時間)、好ましくは10分〜12時間程度であってもよい。加熱工程は、不活性ガス(例えば、窒素;アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下で行ってもよく、また、常圧下、減圧下又は加圧下で行ってもよく、必要に応じて、溶媒中などで行ってもよい。
第2の高分子化合物は、平面性が高いベンゼン環骨格を含むため、高い結晶性(又は分子の配向性)を示す傾向にある。そのため、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性などの特性が高いだけでなく、移動度も向上し易く有機半導体などとして有効に利用できる。その反面、溶解性が極端に低いため、通常、ウェットプロセスなどには適用できない場合が多く、成形性(又は取り扱い性)は低い。しかし、本発明では、溶解性(又は成形性)が高い第1の高分子化合物を用いて、所定の形態又は形状に成形した後、成形した第1の高分子化合物を加熱処理に供して第2の高分子化合物に変換することにより、成形性が低い第2の高分子化合物であっても容易に又は効率よく所望の形態に成形できる。
例えば、第2の高分子化合物の製造において、加熱工程に加えて、前記有機半導体の項に記載の塗布工程(及び必要に応じて乾燥工程)をさらに組み合わせてもよい。予め塗布工程で形成された第1の高分子化合物を含む膜状成形体(第1の膜状成形体)を加熱工程に供することにより、第2の高分子化合物を含む膜状成形体(第2の膜状成形体)を容易に又は効率よく形成できる。
第2の高分子化合物を含む膜状成形体は、例えば、有機半導体として利用してもよい。この第2の膜状成形体を含む有機半導体を用いて電界効果型トランジスタを作製した場合の移動度は、ドレイン電圧Vd=−150Vにおいて、例えば、1×10−7〜10×10−7cm/Vs(例えば、2×10−7〜5×10−7cm/Vs)、好ましくは2.5×10−7〜4.5×10−7cm/Vs(例えば、3×10−7〜4×10−7cm/Vs)程度であってもよい。
なお、第2の高分子化合物(又は原子Zの脱離によるベンゼン環骨格)の形成は、慣用の分析方法、例えば、後述する実施例に記載のX線薄膜解析、紫外−可視光吸収スペクトルなどにより容易に確認できる。そのため、所定の熱履歴による第1の高分子化合物から第2の高分子化合物への変換を検出することにより、熱センサー(又は温度センサー)などとして利用することもできる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[合成例1]7員環骨格含有モノマーの合成
(1)3−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒドの還元
アルゴン雰囲気下、3−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(化合物(16-1)、10g、52.3mmol)/エタノール(EtOH、200mL)溶液を0℃で攪拌させながら、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、3.4g、90.1mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮することで得られた油状固体に塩化アンモニウム水溶液を加え、有機層を酢酸エチルで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過後、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=2/8)で精製することにより、目的化合物である3−ブロモチオフェン−2−メタノール(化合物(18-1)、収量9.3g、収率92%)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.27(d、1H、J=5.2Hz)、6.96(d、1H、J=5.2Hz),4.80(d、2H、J=6.0Hz)、1.94(s、br、1H)。
(2)ホスホニウム塩の合成
アルゴン雰囲気下、3−ブロモチオフェン−2−メタノール(化合物(18-1)、300mg、1.6mmol)/クロロホルム(CHCl、2mL)溶液を室温で攪拌させながら、トリフェニルホスフィン臭化水素酸塩(化合物(19-1)、533mg、1.6mmol)を加え、還流条件下20時間攪拌後、室温に戻し、減圧下で濃縮し粗生成物を得た。この粗生成物を再結晶(クロロホルム/ジエチルエーテル)で精製することにより、目的化合物トリフェニル−(3−ブロモ−2−チエニル)メチルホスホニウムブロミド(化合物(20-1)、収量9.3g、収率99%)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.76−7.88(m、9H)、7.63−7.73(m、6H)、7.24(td、1H、J=2.8、5.2Hz)、6.82(d、1H、J=5.2Hz)、5.87(d、2H、J=13.2Hz)。
(3)Wittig反応
アルゴン雰囲気下、トリフェニル−(3−ブロモ−2−チエニル)メチルホスホニウムブロミド(化合物(20-1)、64.0g、123.5mmol)/テトラヒドロフラン(THF、1L)溶液を0℃で攪拌させながら、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK、45.7g、407.6mmol)を加えて、0℃で1時間攪拌した。さらに、3−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(化合物(16-1)、21.2g、111.1mmol)を加えた。この黒色反応溶液を自然に室温まで上昇させながら、46時間攪拌した。反応溶液に水を加え、減圧下で濃縮して得られた懸濁液をクロロホルムで希釈し、ろ過した。ろ液の有機層をクロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮することで得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、目的化合物の黄色固体1,2−ビス(3−ブロモ−2−チエニル)エチレン(化合物(21-1)、収量17.6g、収率45%)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.27(d、2H、J=5.2Hz)、6.99(d、2H、J=5.2Hz)、6.71(s、2H)。
(4)環化反応によるチエピン環の形成
アルゴン雰囲気下、1,2−ビス(3−ブロモ−2−チエニル)エチレン(化合物(21-1)、5.7g、16.3mmol)/ジエチルエーテル(EtO、230mL)溶液を−78℃で攪拌させながら、n−ブチルリチウム(n−BuLi)/ヘキサン溶液(1.63M、20mL、32.6mmol)を滴下し、−78℃で1時間攪拌した。この緑色懸濁液に、ベンゼンチオスルホン酸無水物(化合物(23-1)、(PhSOS、5.6g、17.9mmol)/THF(190mL)溶液を−78℃で加え、自然に室温まで上昇させながら、7.5時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで希釈した後、有機層を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮することで得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、目的化合物の黄色固体ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(12-1)、収量1.3g、収率35%)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.27(d、2H、J=5.2Hz)、6.99(d、2H、J=5.2Hz)、6.71(s、2H)。
(5)スタンニル化(スタニル化)
アルゴン雰囲気下、ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(12-1)、678mg、3.1mmol)/THF(12mL)溶液を−78℃で攪拌させながら、リチオ化剤として1.55M n−ブチルリチウム(n−BuLi)シクロヘキサン溶液(4mL、6.2mmol)を滴下した。得られた茶色懸濁液をさらに−78℃で1時間攪拌後、トリメチルチンクロライド(化合物(14-1)、(CHSnCl、1.3g、6.7mmol)/THF(6mL)溶液を加え、室温まで上昇させ、さらに1時間攪拌させた。減圧留去、メタノールで洗浄後、ろ過することで得られた粗生成物を再結晶(アセトニトリル)で精製し、黄色固体の目的化合物2,6−ビス(トリメチルスタンニル)ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(11a-1)、1046mg、63%収率)として得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)6.75(s、2H)、6.73(s、2H)、0.33(s、18H)。
[合成例2]7員環骨格含有モノマーの合成
(1)ヨウ素化
アルゴン雰囲気下、2,3−ジブロモチオフェン(化合物(28-1)、20g、83.1mmol)/ジエチルエーテル(EtO、400mL)の白色懸濁液を−78℃で攪拌させながら、リチオ化剤として1.64M n−ブチルリチウム(n−BuLi)シクロヘキサン溶液(57mL、93.5mmol)を滴下した。得られた懸濁液をさらに−78℃で1.5時間攪拌後、ヨウ素(I)(23g、90.9mmol)を加えた後、室温で1.5時間攪拌させた。その懸濁液に亜硫酸ナトリウム水溶液(NaSOaq)を加え、有機層をノルマルヘキサンで抽出後、硫酸マグネシウムで乾燥した。抽出液を減圧下で濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、目的化合物3−ブロモ−2−ヨードチオフェン(化合物(31-1))を黄色の液体(21g、88%収率)として得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.41(d、1H、J=5.2Hz)、6.90(d、1H、J=5.2Hz)。
(2)薗頭カップリング
アルゴン雰囲気下、3−ブロモ−2−ヨードチオフェン(化合物(31-1)、5g、17.3mmol)/Pd(PPhCl(607mg、0.87mmol)/CuI(328mg、1.7mmol)/ジイソプロピルアミン(i−PrNH、6.9g、68.1mmol)/THF(120mL)の赤色溶液をアルゴンバブリングさせながら室温で1.5時間攪拌させた。別容器でアルゴン雰囲気下、1−ヘプタデシン(化合物(32-1)、5.0g、21.1mmol)/THF(30mL)の透明溶液をアルゴンバブリングさせながら室温で1時間攪拌させた。この溶液を前記化合物(31-1)を含む赤色の反応溶液に加えて得られた黒色懸濁液を室温で15時間攪拌させた。反応溶液に水を加えた後、有機層をクロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した後、減圧留去することで粗成生物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することで、赤色液体の目的化合物3−ブロモ−2−(1−ヘプタデシニル)チオフェン(化合物(33-1)、6.0g、87%収率)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.11(d、1H、J=5.6Hz)、6.92(d、1H、J=5.6Hz)、2.46(t、2H、J=7.2Hz)、1.62(quint、2H、J=7.2Hz)、1.42−1.52(m、2H)、1.20−1.38(m、22H)、0.88(t、3H、J=7.6Hz)。
(3)水和反応
アルゴン雰囲気下、3−ブロモ−2−(1−ヘプタデシニル)チオフェン(化合物(33-1)、5.8g、14.6mmol)/2,2,2−トリフルオロエタノール(100mL)/1,4−ジオキサン(200mL)溶液に水(2.3mL、128.4mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(2.3mL、26.3mmol)を室温で加え、90℃に昇温後、2時間攪拌させた。0℃で反応溶液に水を加えた後、有機層をクロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した後、有機溶媒を減圧留去することで粗成生物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→酢酸エチル/へキサン=1/99(体積比)→酢酸エチル/へキサン=3/97(体積比))で精製することで、黒色液体の化合物(5.8g)を得た。この化合物に酢酸エチル(200mL)、イソプロパノール(IPA、200mL)、活性炭(スパチュラ30杯分)を加え、室温で14時間攪拌後、セライトろ過した。ろ液を減圧留去し有機溶媒を除去することで、黄色固体の目的化合物3−ブロモ−2−ヘプタデカノイルチオフェン(化合物(16-2)、5.4g、90%収率)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.49(d、1H、J=4.8Hz)、7.10(d、1H、J=4.8Hz)、3.02(t、2H、J=7.2Hz)、1.74(quint、2H、J=7.2Hz)、1.20−1.45(m、26H)、0.88(t、3H、J=7.2Hz)。
(4)スティレカップリング
アルゴン雰囲気下、3−ブロモ−2−ヘプタデカノイルチオフェン(化合物(16-2)、5.3g、12.8mmol)/ビス(トリブチルスタンニル)スルフィド((BuSn)S、3.9g、6.4mmol)/テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh、740mg、0.64mmol)/トルエン(100mL)の黄色溶液をアルゴンバブリングさせながら室温で1時間攪拌させた。反応溶液を110℃に上昇させた後、さらに15時間攪拌させた。室温に戻した反応溶液をメタノール(500mL)に加え、−78℃で10分間攪拌させた後、ろ過することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=5/95→10/90(体積比))で精製することで、黄色固体の目的化合物ビス(2−ヘプタデカノイル−3−チエニル)スルフィド(化合物(25-1)、2.6g、57%収率)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.47(d、2H、J=5.2Hz)、6.79(d、2H、J=5.2Hz)、2.94(t、4H、J=7.2Hz)、1.70(quint、4H、J=7.2Hz)、1.19−1.37(m、52H)、0.88(t、6H、J=7.2Hz)。
(5)マクマリーカップリング
アルゴン雰囲気下、ビス(2−ヘプタデカノイル−3−チエニル)スルフィド(化合物(25-1)、2.5g、3.7mmol)/THF(200mL)溶液に−10℃で、1.0M TiCl/トルエン溶液(30mL、30mmol)、Zn(3.9g、60mmol)/THF(150mL)溶液を加えた後、自然に室温まで上昇させた。2時間後、反応溶液を60℃に上昇させ、さらに22時間攪拌させた。0℃で反応溶液に水を加えた後、有機層をヘキサンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、セライトろ過した後、有機溶媒を減圧留去することで粗成生物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することで、うす黄色固体の目的化合物8,9−ジヘキサデシル−ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(12-2)、648mg、26%収率)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)7.25(d、2H、J=5.2Hz)、6.74(d、2H、J=5.2Hz)、2.59−2.71(m、4H)、1.49−1.59(m、4H)、1.34−1.43(m、4H)、1.22−1.34(m、48H)、0.88(t、6H、J=6.8Hz)。
(6)ブロモ化
アルゴン雰囲気下、8,9−ジヘキサデシル−ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(12-2)、50mg、0.075mmol)/THF(2mL)溶液を0℃で攪拌させながら、リチオ化剤として1.55M n−ブチルリチウム(n−BuLi)シクロヘキサン溶液(0.1mL、0.16mmol)を滴下し、得られた緑色溶液をさらに0℃で30分攪拌した。その後、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタン(51mg、0.16mmol)/THF(1mL)溶液を加え、さらに0℃で30分攪拌させた。水を加え、有機層をクロロホルムで抽出後、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、減圧留去で得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、黄色固体の目的化合物2,6−ジブロモ−8,9−ジヘキサデシル−ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(11b-1)、45mg、73%収率)として得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)6.72(s、2H)、2.32−2.78(m、4H)、1.47−1.57(m、4H)、1.20−1.42(m、52H)、0.88(t、6H、J=6.8Hz)。
[合成例3]アクセプター単位を含むモノマーの合成
アルゴン雰囲気下、化合物(2-1)、778mg、1.85mmol、Aldrich製)/炭酸カリウム(668mg、4.83mmol)/THF(10mL)溶液を60℃で1時間攪拌した後、室温に冷却して、1−ブロモー5−デシルヘプタデカン(2.1g、4.6mmol)/NMP(5mL)を加え、90℃で12時間攪拌した。室温に冷却後、水を加え、有機層をノルマルヘキサンで抽出後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下で濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ヘキサン/CHCl(体積比)=9/1→7/3→1/1→1/1.5)で精製し、目的化合物(2-2)(1.8g、83%収率)として得た。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)9.11(d、2H、J=8.8Hz)、7.17(dd、2H、J=8.8、1.6Hz)、6.93(dd、2H、J=1.6Hz)、3.73(t、4H、J=7.6Hz)、1.60−1.74(m、4H)、1.16−1.44(m、90H)、0.89(t、12H、J=6.8Hz)。
[実施例1]
(式中、Meはメチル基、x1は繰り返し数を示す)。
アルゴン雰囲気下、2,6−ビス(トリメチルスタンニル)ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(11a-1)、55mg、0.1mmol)、2,6−ジブロモ−8,9−ジヘキサデシル−ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(11b-1)、83mg、0.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(Pd(dba)CHCl、2.2mg、0.002mmol)、P(o−tolyl)(2.4mg、0.008mmol)、トルエン(5mL)を加えた後、30分間アルゴンバブリングを行い、マイクロウェーブ照射装置(バイオタージジャパン(株)製「Initiator+」、条件130℃)を用いて、3時間加熱攪拌した。反応混合液をメタノール中に再沈殿し、得られた沈殿物に対して、ソックスレー抽出器を用いてメタノール、アセトンの順で不純物を抽出(又は洗浄)した。洗浄した沈殿物をヘキサンにより抽出したところ、残渣は生じなかった。得られたヘキサン溶液からヘキサンを除去することにより、目的化合物(1-1)を赤茶固体(79mg、89%収率)として得た。
得られた目的化合物(1-1)をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算で測定したところ、数平均分子量Mnは9959、重量平均分子量Mwは21443、分子量分布Mw/Mnは2.15、重合度DPnは11.2であった。
[実施例2]
(式中、Meはメチル基、x2は繰り返し数、R5aは5−デシル−ヘプタデシル基を示す)。
アルゴン雰囲気下、2,6−ビス(トリメチルスタンニル)ジチエノ[3,2−b:2,3−f]チエピン(化合物(11a-1)、55mg、0.1mmol)、化合物(2-2)(118mg、0.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(Pd(dba)CHCl、2.1mg、0.002mmol)、P(o−tolyl)(2.4mg、0.008mmol)、クロロベンゼン(2mL)を加えた後、30分間アルゴンバブリングを行い、マイクロウェーブ照射装置(バイオタージジャパン(株)製「Initiator+」、条件180℃)を用いて、40分加熱攪拌した。反応混合液をメタノール中に再沈殿し、得られた沈殿物に対して、ソックスレー抽出器を用いてメタノール、アセトン、ヘキサンの順で不純物を抽出(又は洗浄)した。洗浄した沈殿物をクロロホルムにより抽出したところ、残渣は生じなかった。得られたクロロホルム溶液からクロロホルムを除去することにより、目的化合物を暗赤色固体(108 mg、88%収率)として得た。得られた目的化合物(1-2)をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算で測定したところ、数平均分子量Mnは31600、重量平均分子量Mwは59400、分子量分布Mw/Mnは1.88、重合度DPnは26であった。
[薄膜X線解析]
(サンプル調製)
二酸化ケイ素(SiO)絶縁膜(膜厚500nm)付シリコン(Si)基板を、アセトン及び2−プロパノールで、それぞれ、3分間に亘り超音波洗浄し、120℃で、30分間乾燥した。続いて、UVオゾン処理を30分間行った。洗浄処理した基板表面に、β−フェネチルトリエトキシシラン(β−PTS)の自己組織化単分子膜(SAM)を蒸気法で製膜した。
実施例1で得られた高分子化合物(1-1)を用いて、この単分子膜表面に、80℃で溶解した1質量%濃度の高分子化合物(1-1)/オルトジクロロベンゼン(o−DCB)溶液を1滴滴下し、スピンコート法(回転数500rpm、回転時間5sの後、さらに、回転数2500rpm、回転時間45s)で製膜後、アルゴン雰囲気下で減圧しつつ80℃で12時間乾燥した。その後、アルゴン雰囲気下で、(a)180℃、(b)210℃、(c)240℃又は(d)270℃で12時間アニールし、塗膜を形成した。
(測定条件)
測定施設:SPring−8
波長:1.00Å
入射角:0.12°
露光時間:60秒
ダイレクトビーム:X=57、Y=587pixel
カメラ長:175.1mm
実施例1で得られた高分子化合物(1-1)の測定結果(二次元回折像)を図1に、薄膜X線解析におけるピーク形状と分子の配向性との関係を示す概略図を図2にそれぞれ示す。
図1及び2から明らかなように、アニール温度の上昇に伴って、分子の配向性(又は結晶性)が向上しているのが分かる。アニール温度(a)180℃と(b)210℃との測定結果を比較すると、(b)210℃ではQz軸上に2次反射に対応するピークが確認できる。このことから、アニール温度180〜210℃の範囲において、分子中の7員環骨格を形成するヘテロ原子が脱離して、ベンゼン環骨格を形成されていることが推測される。すなわち、ひずみが大きな7員環骨格から、平面性の高いベンゼン環骨格に変換されることにより、分子間におけるスタッキングなどの相互作用が起き易くなり、配向性(又は結晶性)が大きく向上したものと思われる。
[紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトル]
(サンプル調製1)
実施例2で得られた高分子化合物(1-2)を用いて、このガラス基板に、室温で溶解した0.27質量%濃度の高分子化合物(1-2)/クロロホルム溶液を用いて、基板を回転させながら5滴滴下し、スピンコート法(回転数3000rpm、回転時間90s)で製膜後、アルゴン雰囲気下で減圧しつつ80℃で12時間乾燥した。その後、アルゴン雰囲気下で、150℃、180℃、210℃、240℃又は270℃で10分アニールした塗膜、及び乾燥後にアニール処理を施さなかった塗膜(rt)を形成した。
(測定1)
紫外−可視光吸収スペクトル測定装置((株)リガク製「V−670」)を用いて、測光モード:%T、データ取込間隔:1nm、UV/Visバンド幅:2nm、NIRバンド幅:8nm、レスポンス:Medium、走査速度:400nm/minの条件下で、波長200〜1000nmの領域を測定した。測定結果を図3及び4に示す。
図3及び4から明らかなように、アニールなし(rt)及びアニール温度180℃以下のスペクトルと、アニール温度210℃以上のスペクトルとを比較すると、スペクトルの形状が変化していることが確認できる。そのため、アニール温度180〜210℃にかけて、7員環骨格からベンゼン環骨格への変換が起こっていると推測される。
(サンプル調製2)
実施例2で得られた高分子化合物(1-2)25mgを、1−クロロナフタレン(ChNaph)に溶解して、得られた溶液を220℃で30分加熱した後、室温に冷却し、メタノールで再沈殿、ろ過、減圧乾燥して、7員環骨格がベンゼン環骨格に変換された高分子化合物(I-2)20mgを得た。
(測定2)
ベンゼン環骨格に変換された高分子化合物(I-2)を用いて、ドロップキャスト法により、アニール処理を施さなかった塗膜を形成し、紫外−可視吸収スペクトルを測定した。結果を図5及び6に示す。なお、ベンゼン環骨格に変換された高分子化合物(I-2)のスペクトルは、縦軸を2倍にして表示する。
図5及び6から明らかなように、ベンゼン環骨格に変換された高分子化合物(I-2)のスペクトルは、溶液中における加熱のみでアニール処理を施していないにもかかわらず、実施例2で得られた高分子化合物(1-2)を温度240℃でアニールしたサンプルと同様の吸収スペクトルを示した。このことから、高分子化合物(1-2)のアニール処理による吸収スペクトルの変化は、単にアニール処理による高配向化の影響のみならず、7員環骨格がベンゼン環骨格に変換されたことで分子構造の平面性が向上したことを示している。
[トランジスタ特性]
(実施例2の高分子化合物を用いた素子の測定1)
二酸化ケイ素(SiO)絶縁膜3(膜厚500nm)付シリコン(Si)2基板を、アセトン、2−プロパノールの順序で、それぞれ3分間に亘り超音波洗浄し、その後120℃で30分間乾燥した。続いて、UVオゾン処理を30分間行った。UVオゾン処理した基板表面に、β−フェネチルトリクロロシラン(β−PTS)の自己組織化単分子膜(SAM)4を蒸気法で製膜した。
この単分子膜の表面に、80℃で溶解した1.0質量%濃度の実施例2で得られた高分子化合物(1-2)/オルトジクロロベンゼン(oDCB)溶液を1滴滴下し、スピンコート法(回転数:1500rpm、回転時間:30s)で製膜し有機半導体層5を形成した後、減圧下80℃で12時間乾燥した後、室温に戻し、さらにアルゴン雰囲気中、常圧下で80℃で1時間アニールした。乾燥させた膜表面に金属マスクを置き、キャリア注入層として、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)6(厚み約2nm)、ソース電極及びドレイン電極として、金7(厚み40nm)を真空蒸着させ、デバイス素子1(トップコンタクト−ボトムゲート型、チャネル長200μm、チャネル幅2mm)を作製した。素子の概略図を図7に示す。
作製したデバイス素子を、半導体パラメータアナライザー(型番「keithley 4200」、ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用いて、キャリア移動度μ及び閾値電圧Vthを測定したところ、ドレイン電圧Vd=−150Vにおいて、μ=4.3×10−8cm/Vs、Vth=380Vであった。
(実施例2の高分子化合物を用いた素子の測定2)
アニール温度を200℃とする以外は、上記実施例2の高分子化合物を用いた素子の測定1と同様にしてデバイス素子を作製した。
作製したデバイス素子を、半導体パラメータアナライザー(型番「keithley 4200」、ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用いて、キャリア移動度μ及び閾値電圧Vthを測定したところ、ドレイン電圧Vd=−150Vにおいて、μ=3.5×10−7cm/Vs、Vth=64Vであった。アニール温度を高めたことにより、平面性の高いベンゼン環骨格が形成されて配向性(又は結晶性)が向上したためか、前記測定1のアニール温度80℃の場合に比べて、移動度を向上できた。
本発明の7員環骨格を有する高分子化合物は、溶媒に対する溶解性に優れているため取り扱い易く、塗布や印刷などの簡便な方法によって容易に膜状成形体などを成形できる。また、加熱により容易にベンゼン環骨格を有する高分子化合物を形成できる。そのため、これらの特性を用いて種々の用途で利用することができ、代表的には、有機半導体、塗料、熱センサー(温度センサー)などとして有効に利用できる。
前記有機半導体として利用する場合、例えば、整流素子(ダイオード)、スイッチング素子又はトランジスタ(有機薄膜トランジスタ)[例えば、接合型トランジスタ(バイポーラトランジスタ)、電界効果型トランジスタ(ユニポーラトランジスタ)など]、光電変換素子(太陽電池素子、有機EL素子など)などの有機半導体デバイスとして有効に利用できる。
1…デバイス素子
2…シリコン(Si)
3…二酸化ケイ素(SiO)絶縁膜
4…自己組織化単分子膜(SAM)
5…有機半導体層
6…テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)
7…金(Au)

Claims (16)

  1. 周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子と、6つの炭素原子とで形成された7員環骨格を含み、この7員環骨格が3つの共役二重結合を有している高分子化合物。
  2. 下記式(1)で表される構成単位を含む請求項1記載の高分子化合物。
    (式中、Zは周期表第13〜16族元素から選択される原子;環A及びAはそれぞれ独立して、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を有する環;R1a、R1b及びRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基;Rは周期表第16族元素から選択される原子;R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基、又は周期表第16族元素から選択される原子;mは0〜4の整数;nは0〜2の整数;p1及びp2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し、
    で表される結合は単結合又は二重結合を示す。)
  3. 式(1)で表される構成単位が、下記式(1A)及び(1B)
    (式中、環Ar及びArはそれぞれ独立してアレーン環;R及びRはそれぞれ独立して置換基;q1及びq2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し;Z、R1a、R1b、R、R、m、nは式(1)に同じ。)
    (式中、Z及びZはそれぞれ独立して周期表第13〜16族元素から選択される原子;R2a、R2b、R4a及びR4bはそれぞれ独立して水素原子又は置換基;R3a及びR3bはそれぞれ独立して周期表第16族元素から選択される原子;m1及びm2はそれぞれ独立して0〜4の整数;n1及びn2はそれぞれ独立して0〜2の整数を示し;Z、R1a、R1b、R、R、m、nは式(1)に同じ。)
    から選択される少なくとも1種を含む請求項2記載の高分子化合物。
  4. 式(1)で表される構成単位が、式(1B)で表される構成単位を少なくとも含み、式(1B)において、Z、Z及びZが周期表第16族元素から選択される原子、基R1a、R1b、R、R2a、R2b、R4a及びR4bが水素原子又は炭化水素基、R、R3a及びR3bが酸素原子である請求項3記載の高分子化合物。
  5. ドナー性単位としての式(1)で表される構成単位と、アクセプター性単位とを含むドナー−アクセプター型高分子である請求項2〜4のいずれかに記載の高分子化合物。
  6. アクセプター性単位が、下記式(2)
    (式中、Zはそれぞれ独立して周期表第16族元素から選択される原子、R及びRはそれぞれ独立して置換基、r1はそれぞれ独立して0又は1、r2はそれぞれ独立して0〜3の整数を示す。)
    で表される構成単位を含む請求項5記載の高分子化合物。
  7. 重量平均分子量が2000以上である請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子化合物と、溶媒とを含む液状組成物。
  9. 請求項1記載の7員環骨格と、カップリング反応可能な反応性基とを有する化合物を含むモノマー成分を、カップリング反応に供して請求項1〜7のいずれかに記載の高分子化合物を製造する方法。
  10. ベンゼン環骨格を含む高分子化合物を製造する方法であって、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子化合物を加熱し、7員環骨格から前記周期表第13〜16族元素から選択される1つの原子を脱離させてベンゼン環骨格を形成する加熱工程を含む製造方法。
  11. 加熱工程における加熱温度が190℃以上である請求項10記載の製造方法。
  12. 請求項8記載の液状組成物を基材に塗布し、塗膜を形成する塗布工程をさらに含む請求項10又は11記載の製造方法。
  13. 下記式(I)
    (式中、A、A、R1a、R1b、R、R、p1、p2及び
    で表される結合は、それぞれ請求項1記載の式(1)に同じ。)
    で表される構成単位を含む高分子化合物。
  14. 前記式(I)が、下記式(IB)
    (式中、R1a及びR1bは、それぞれ請求項1記載の式(1)と同じであり;Z、Z、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、m1、m2、n1及びn2は、それぞれ請求項3記載の式(1B)と同じである。)
    で表される構成単位を含む請求項13記載の高分子化合物。
  15. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子化合物、請求項13又は14記載の高分子化合物から選択される少なくとも1種の高分子化合物を含む有機半導体。
  16. 請求項15記載の有機半導体を含む電子デバイス。
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