JP2020050657A - 腸溶性被覆粉体 - Google Patents

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Akifumi Kubota
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Abstract

【課題】有効成分を胃酸で分解・変質させないようにする;消化管内で効果的に吸収されるようにする等の目的で、胃で崩壊・溶解し難く、腸で崩壊・溶解し易い被覆粉体を提供すること。【解決手段】有効成分を含有する核12が可食性被覆材層13によって被覆されている腸溶性被覆粉体11であって、該可食性被覆材層13は、多糖を含有する固体分散媒14、及び、2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質15よりなり、該2価以上の陽イオンの塩が、中性水に不溶であり、酸性水に可溶であることを特徴とする腸溶性被覆粉体11、該腸溶性被覆粉体を含有することを特徴とする粉剤、顆粒剤若しくは錠剤、及び、該腸溶性被覆粉体を製造する製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、腸溶性被覆粉体に関するものであり、詳しくは、胃での崩壊若しくは溶解を抑制した腸溶性被覆粉体、それを含有する粉剤及び腸溶性被覆粉体の製造法に関するものである。
有効成分が徐々に放出されるように改良した剤や、有効成分が胃で放出されずに腸に至ってから初めて放出される所謂腸溶性を有するカプセル剤等が広く知られている。
すなわち、周囲を水難溶性の物質で覆って、有効成分に徐放性を与える技術や、「酸性では溶出しない物質」で被覆して、胃酸に溶解し難くし腸溶性にする技術が知られている。
特許文献1には、アルギン酸ナトリウムとカルシウム塩を混合し、製造工程で水を加えることでそれらを水に接触させて架橋させ、三次元マトリックスを作って活性薬剤に徐放性を与えた徐放性医薬組成物が記載されている。
また、特許文献2には、アルギン酸塩水溶液を多価陽イオン溶液に滴下して、アルギン酸を架橋させてビード形アルギン酸ゲル水処理剤とする技術が開示されている。
また、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオン溶液を混合する技術の中でも、剤型をカプセル状にしたり、有効成分の表面を被覆したりする技術としては、例えば、以下の技術が知られている。
特許文献3には、ゼラチン等に対し可塑剤とアルギン酸ナトリウムを配合して得られた皮膜により被覆した軟カプセルを、2価の陽イオン(特にカルシウムイオン)で架橋(処理)したアルギン酸配合剤皮軟カプセルが開示されている。
また、特許文献4には、ラクトフェリン粒子を主成分とする核の表面を脂質皮膜で覆い、更にその表面を親水性皮膜で覆う際に、該親水性皮膜をアルギン酸ナトリウムのような酸性高分子を噴霧した後、カルシウムイオンで該高分子を不溶化させる技術が開示されている。
また、特許文献5には、アルギン酸塩等の多糖類の水溶液を油性媒体中に分散させて油中水滴型(W/O)の分散液を得て、そこに2価以上の金属塩を加えてゲル化させた、平均粒子径が1μm〜1mmのマイクロカプセルが記載されている。
しかしながら、上記したような有効成分に徐放性を与える技術は、特に、胃酸のような酸性水溶液に溶解し難く、腸液のような中性水溶液に溶解し易いと言った溶解性に差異のあるものではなかった。すなわち、例えば上記技術における三次元マトリックスやアルギン酸ゲルは、徐放性にはするものの、上記したような差異(溶解性にメリハリ)を与えるものではなかった。
一方、胃酸(酸性水)に溶解し難く、腸液(中性水)に溶解し易いと言った「溶解性に差異のある所謂腸溶剤」が知られており、そのような物質で有効成分を覆う技術も開示されている。
例えば、特許文献6には、腸溶性の硬カプセルが記載されているが、そこで使用される上記性質を有する腸溶剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース・フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース・アセチルサクシネート、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸・メタクリル酸メチル・コポリマー等が挙げられている。
また、特許文献7には、有効成分であるニトロフラントイン塩等に、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルから合成された陰イオン重合体である「上記性質を有する腸溶剤」を付与した錠剤が開示されている。
特許文献8には、2種類の特定の粘度を有するアルギン酸塩で被覆層を形成し、胃では保護し腸まで到達させる被覆造粒物が記載されている。
しかしながら、前記したゲル等でも、上記した腸溶剤でも、被覆造粒物でも、胃で溶けずに腸に行って初めて溶けると言った性質が十分ではなかった。
そして、被覆液の段階で、胃において十分な不溶性を示すような皮膜(被覆)成分であると(にしておくと)、工程中に該成分を含有する皮膜形成液(被覆液)がゲル化してしまったり、極めて高粘度になったりするために、核(芯材、有効成分)に、好適に被覆(コート)し難くなると言った問題点もあった。
また、粉体を皮膜等で覆って(マスキングして)、粉体の段階で有効成分の味や臭いを封じ込めたり(外部に出なくしたり)、それによって同種の粉体同士又は異なる粉体同士の接触を回避したりする性質もなかった。
更に、かかるマスキング性を有しながら、腸に至ったら直ぐに有効成分が放出される性質を有することも十分ではなかった。すなわち、粉体(粒子)のマスキング性と速崩壊性(崩壊遅延抑制性)の両立も十分ではなく、更なる改善が必要とされていた。
特表平10−502390号公報 特表平11−070384号公報 特開平01−313421号公報 国際公開第2005/025609号 特開2015−057277号公報 特開昭61−221117号公報 特開昭58−083618号公報 特開2017−165701号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、有効成分を胃酸で分解・変質させないようにする;消化管内で効果的に吸収されるようにする等の目的で、胃で崩壊・溶解し難く、腸で崩壊・溶解し易い被覆粉体を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、例えば胃で崩壊又は溶解して欲しくない粉体等を、それ自体を核としてその表面を、特定の可食性被覆材層で覆うことによって、上記課題を達成できることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、有効成分を含有する核が可食性被覆材層によって被覆されている腸溶性被覆粉体であって、
該可食性被覆材層は、多糖を含有する固体分散媒、及び、2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質よりなり、
該2価以上の陽イオンの塩が、中性水に不溶であり、酸性水に可溶であることを特徴とする腸溶性被覆粉体を提供するものである。
また、本発明は、前記多糖が前記2価以上の陽イオンによって架橋してゲル化するようなものである上記の腸溶性被覆粉体を提供することである。
また、本発明は、経口摂取して胃に到達したときに、胃液の酸性によって、上記可食性被覆材層に分散されていた前記2価以上の陽イオンの塩が水溶性となり、溶出した2価以上の陽イオンが前記多糖を架橋させ該可食性被覆材層をゲル化させることによって、前記核が含有する前記有効成分を胃液から保護するようになっている上記の腸溶性被覆粉体を提供することである。
また、本発明は、有効成分を含有する核が可食性被覆材層によって被覆されている腸溶性被覆粉体であって、
該可食性被覆材層は、カルボキシル基を有する多糖、2価以上の陽イオンの塩、及び、水を含有する水系の被覆液を、前記核に付与することにより形成されるものであり、
該2価以上の陽イオンの塩は、該水系の被覆液には不溶であるために、形成された可食性被覆材層中では固体分散質となっており、
該多糖は、該水系の被覆液中では、該2価以上の陽イオンで実質的に架橋しておらず該水系の被覆液に可溶であり、形成された可食性被覆材層中では固体分散媒となっており、
該多糖は、「胃酸によって溶解した該2価以上の陽イオンの塩」から放出された2価以上の陽イオンによって胃の中で初めて架橋することによって、該可食性被覆材層が胃の中で初めて腸溶性となるような構成を有していることを特徴とする腸溶性被覆粉体を提供することである。
また、本発明は、前記核が、前記有効成分の実質的に1個の粉末よりなるものであって、被覆の単位である該1個の有効成分の粉末の表面が個々に前記可食性被覆材層で被覆されている上記の腸溶性被覆粉体を提供することである。
また、本発明は、上記可食性被覆材層の外側が、更に、「可食性酸を含有する水溶性被覆材」又は「難水溶性若しくは不水溶性被覆材」を含有する可食性被覆材外層によって被覆されている上記の腸溶性被覆粉体を提供することである。
また、本発明は、上記の腸溶性被覆粉体を含有することを特徴とする粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤若しくは固形剤を提供することである。
また、本発明は、上記の腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、
前記多糖を中性水に溶解させると共に、前記2価以上の陽イオンの塩を該中性水に分散させて被覆液を調製し、前記核に該被覆液を付与して、該核を前記可食性被覆材層によって被覆する工程を含むことを特徴とする腸溶性被覆粉体の製造方法を提供することである。
また、本発明は、上記の腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、
有効成分を含有する核を、可食性被覆材層によって被覆して該腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であり、
該可食性被覆材層は、カルボキシル基を有する多糖、2価以上の陽イオンの塩、及び、水を含有する水系の被覆液を該核に付与することにより形成し、
該2価以上の陽イオンの塩を、該水系の被覆液に不溶のものとすることで、該可食性被覆材層中では固体分散質となるようにし、
該多糖を、該水系の被覆液に可溶のものとすることで、該可食性被覆材層中では固体分散媒となるようにし、「胃酸によって溶解した該2価以上の陽イオンの塩」から放出された2価以上の陽イオンによって胃の中で初めて架橋することによって、該可食性被覆材層が胃の中で初めて腸溶性になるようにすることを特徴とする腸溶性被覆粉体の製造方法を提供することである。
本発明によれば、上記問題点と課題を解決し、胃で溶けずに腸に行って初めて溶けると言った性質が十分発揮される。
すなわち、食したときに若しくは経口摂取したときに、有効成分が胃で溶出し難く(短時間では溶出し難く)、又は、有効成分を含有する核が胃では崩壊し難く(短時間では崩壊し難く)、その後、腸に達してから溶出し(長時間では溶出し)、又は、有効成分を含有する核が腸で崩壊し易い(長時間経過後には崩壊する)腸溶性被覆粉体を提供することができる。
一般に腸溶性カプセルや腸溶性粉剤等に使用されている腸溶剤は、該腸溶剤そのものが最初から「pHが低い酸性の胃液」には溶け難く、ほぼ中性の腸液には溶け易い性質を持ったものであった。
しかし、本発明によれば、pHが低い酸性の胃液によって、核の周囲を覆っている可食性被覆材層がゲル化することで初めて、可食性被覆材層が最初(摂取する前)の状態より更に胃液に溶解し難い状態になる。言い換えれば、胃液を利用して腸溶性にしている。
すなわち、本発明によれば、胃酸に触れることで可食性被覆材層を胃液に溶解し難くするので、より効果的に有効成分を保護できる。
なお、食して胃に達する前の段階(被覆粉体の段階)で、上記のようなものを製造しようとしても、すなわち「最初からゲル化している可食性被覆材」で核を被覆しようとしても、皮膜形成液(被覆液)が全体としてゲル化したり、極めて高粘度になったりするために、例えばスプレーができない等、全く被覆液として機能しなかったり、核を均一に被覆できなかったりする。
本発明によれば、胃酸の酸性により、可食性被覆材層を初めて十分に胃液に溶解し難くするので、より効果的に、該核に含有される有効成分を保護できる。
その結果、本発明の腸溶性被覆粉体は、胃で崩壊若しくは溶解し難くなり、有効成分が腸まで分解又は変質せずに届き、効果的に腸で吸収される。また、有効成分が胃粘膜に障害を与えるようなものであるときは、胃への負担を軽減することができる。
通常、腸溶性は、カプセルや錠剤の外側を腸溶剤で覆うことによって達成される。本発明においては、粉体を、好ましくは個々の粉体自体を可食性被覆材層で被覆するので、より腸溶性を達成できるし、得られた腸溶性被覆粉体は粉体自身が腸溶性を示すので、それを種々の形態、剤型、食品形態等に加工する(応用する)ことが容易にでき、その用途が広がる。
(医療用)医薬品が有効成分の場合、薬剤の最終形態は該有効成分主体で決めることができるため、カプセル皮膜を腸溶性にしたり、錠剤の表面を腸溶性にしたりして対処できるが、健康食品の場合は、最終的剤型に多様性が求められる。本発明の腸溶性被覆粉体は、粉体自体を可食性被覆材層で被覆するので、その後の剤型多様性に優れ、特に健康食品に好適である。
また、本発明によれば、粉体を核としてそれを皮膜等で覆って(マスキングして)、粉体の段階で有効成分の味や臭いを封じ込めたり(外部に出なくしたり)、同種の粉体同士又は異なる粉体同士の接触を回避したりできる。
更に、かかるマスキング性を有しながら、腸に至ったら有効成分が放出される性質を有することもできる。すなわち、粉体(粒子)のマスキング性と腸溶性の両立が可能である。
上記のような機能(機序)を有する被覆材層を、可食性の物質だけで構成できたので、本発明の腸溶性被覆粉体は安全性が高い。
また、本発明の腸溶性被覆粉体を、上記可食性被覆材層の外側が特定の可食性被覆材外層によって被覆された構成にすることによって、胃酸でゲル化する前の腸溶性被覆粉体を、口腔内において中性の唾液から保護することができ、更に前記効果を発揮する。
本発明においては、更に、特定の方法を用いて、可食性被覆材を粉末単位(核単位)で被覆すると、該粉末の質量に対して可食性被覆材層の質量を低く抑えることが可能であり、また、該粉末一つ一つが均一に被覆されると共に、被覆時に凝集や造粒が起こらないので、無駄に使われる可食性被覆材が少なく済む。
また、粉末一つ一つの表面を可食性被覆材で被覆させることによって、保存中の衝撃や、腸溶性被覆粉体を打錠して錠剤にする際の衝撃に対して、被覆されていない新たな面が露出することがない。すなわち、有効成分を含有する核の表面が露出することがない。
本発明の腸溶性被覆粉体の特に可食性被覆材層の態様を示す概略拡大断面図である。 本発明の腸溶性被覆粉体の好ましい形態を示す概略拡大断面図である。 (a)核自体が一次粉末であって、該核の表面が被覆されている場合、(b)一旦被覆された核が凝集して凝集した腸溶性被覆粉体を形成している場合、(c)核自体が二次粉末であって、該核の表面が被覆されている場合 可食性被覆材層の被覆液によって核を被覆中に、凝集(すなわち凝集・造粒と共に被覆がなされる)等して、核の隙間に被覆液が入り込み顆粒状になった形態を示す概略拡大断面図である。 実施例11〜16で、核(有効成分)がピリドキシン塩酸塩のときの、溶出率(%)の溶出時間(h)変化を示すグラフである。 実施例17〜22で、核(有効成分)がリボフラビンのときの、溶出率(%)の溶出時間(h)変化を示すグラフである。 実施例23〜28で、核(有効成分)がアスコルビン酸のときの、溶出率(%)の溶出時間(h)変化を示すグラフである。 比較例11〜13で、核(有効成分)がピリドキシン塩酸塩のときの、溶出率(%)の溶出時間(h)変化を示すグラフである。 比較例14〜16で、核(有効成分)がリボフラビンのときの、溶出率(%)の溶出時間(h)変化を示すグラフである。 比較例17〜19で、核(有効成分)がアスコルビン酸のときの、溶出率(%)の溶出時間(h)変化を示すグラフである。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明の腸溶性被覆粉体は、「有効成分を含有する核」が可食性被覆材層によって被覆されているものであって、該可食性被覆材層は、多糖を含有する固体分散媒、及び、2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質よりなり、該2価以上の陽イオンの塩が、中性水に不溶であり、酸性水に可溶であることを特徴とする。
本発明において、「腸溶性」とは、可食性被覆材層の存在によって、可食性被覆材層が存在しないときに比べて、核が胃の中で溶け難くなっており、すなわち、実施例に示したように、日本薬局方の溶出試験第1液での2時間後の溶出率が小さくなっていることを言う。
好ましくは、可食性被覆材層が存在しないときに比べて、溶出率が50質量%以下になることである(例えば、実施例の「腸溶効果」が「◎」)。
また、好ましくは、「腸溶性」とは、酸性の胃の中では、ほぼ中性の腸の中に比べて相対的に溶け難くなっていることである。
本発明において、「腸溶性被覆粉体」とは、経口摂取前(最初)から腸溶性になっているものを排除するものではないが、胃の中で初めて、「胃液に溶解・崩壊し難くなる性質」、すなわち、腸溶性の程度が大きくなるものを言う。本発明では、胃液の酸性を利用して、可食性被覆材層の溶解性(核の溶出性)を抑制している。
<可食性被覆材層>
図1に、本発明の腸溶性被覆粉体11の概略断面図を記載したように、本発明における可食性被覆材層13は、多糖を含有する固体分散媒14、及び、2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質15よりなっている。すなわち、該可食性被覆材層13は、当然に全体として固体であるが、連続相である該固体分散媒14中に、該固体分散質15が、粒子としてすなわち不連続相として分散された形態を有している。
言い換えれば、本発明における上記可食性被覆材層13は、上記固体分散媒14となる多糖を(もし他成分があれば該他成分も)水に溶解させ、上記「2価以上の陽イオンの塩」を、実質的に固体のまま、該水に分散させて被覆液を調製し、核12に該被覆液を付与することによって得られるような形態をしている。
可食性被覆材層の被覆量は、本発明の前記効果を奏するならば特に限定はないが、[可食性被覆材層の質量]/[腸溶性被覆粉体の質量]として、3〜50質量%が好ましく、6〜40質量%がより好ましく、10〜35質量%が更に好ましく、20〜30質量%が特に好ましい。
被覆量が小さ過ぎる場合は、胃液に対する溶出速度が被覆していないときに比べて有意に低下しない場合があり、被覆量が小さ過ぎる場合は、胃液に対する溶出速度が、可食性被覆材層13を被覆していないときに比べれば勿論、「固体分散質15を含有させずに固体分散媒のみの可食性被覆材層」のときに比べて有意に低下しない場合がある。
一方、被覆量が大き過ぎる場合は、腸溶性被覆粉体11における「核中の有効成分」の量が相対的に減少する、コストアップになる、腸における有効成分の溶出が阻害される、等の場合がある。
<<固体分散媒>>
固体分散媒14は、少なくとも多糖を含有するが、該多糖は、2価以上の陽イオンによって架橋してゲル化するものであることが必須である。ポリマー又はオリゴマーである多糖は、架橋することによってゲル化して、胃液等の水に不溶若しくは難溶になる。或いは、ゲル化して、消化管内での時間経過によって初めて可溶若しくは易溶になる性質を有するようになる。
該固体分散媒14には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の、合成ポリマー、半合成ポリマー、それらの共重合体、誘導体等、を含有させることができる。
該多糖は、中性の水に対する溶解性が高いものが好ましく、水溶液として核12に付与して可食性被覆材層13としたときに、連続相である固体分散媒14(後述する固体分散質15の分散媒)を形成する(図1参照)。
該多糖としては、後述する「2価以上の陽イオン」によって水に不溶性又は難溶性になるものであればよいが、側鎖にカルボキシル基、フェノール基等の酸基を複数有していて、2価以上の陽イオンによって、該酸基と該陽イオンがイオン結合をして、該多糖同士が架橋されるようなものが好ましい。
該多糖としては、特に限定はないが、具体的には例えば、アルギン酸水溶性塩;ペクチン;セルロース誘導体;アミノ糖;ムコ多糖;増粘多糖類;等が好ましいものとして挙げられるが、本発明の前記効果を奏するようなものであれば、これらには限定されない。
<<<アルギン酸水溶性塩>>>
ここで、アルギン酸水溶性塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸の1価の陽イオン塩(「アルギン」と称されることもある)等が好ましいものとして挙げられる。
これらの塩は、何れも食品添加物として認可されている。また、後述する2価以上の陽イオンがカルシウムイオンの場合には、消化管内で架橋して得られるアルギン酸カルシウムも食品添加物として認可されているために好ましい。
中でもアルギン酸ナトリウムが、本発明の前記効果を好適に奏すると共に、中性の水に対する溶解性が高いこと、既存添加物であるので指定添加物に分類されていて安全性が極めて高いこと、2価以上の陽イオンによって架橋し易いこと、等の点から特に好ましい。
上記アルギン酸塩は、本発明の効果を損なわない範囲で、部分的にエステル化されたものも含まれる。
<<<ペクチン>>>
上記ペクチンは、複合多糖類であり、ガラクツロン酸(Galacturonic acid)が結合したポリガラクツロン酸を主成分とするものである。
本発明における「ペクチン」には、ガラクツロン酸のカルボキシル基がエステル化されていない所謂ペクチン酸(Pectic acid)も、ガラクツロン酸のカルボキシル基が(一部)、メチル基等のアルキル基でエステル化された狭義のペクチンも含まれる。また、ガラクツロン酸のアルキルエステル(部分)を脱アルキル化したり、ガラクツロン酸の水酸基をアセチル化したり、その他のガラクツロン酸の誘導体を含有するようなものも、本発明における「ペクチン」に含まれる。
ペクチンは、本発明の前記効果を好適に奏すると共に、食品添加物として認可されており、増粘安定剤(増粘多糖類)として食品に広く使用されていて安全性が高い点からも好ましい。
<<<セルロース誘導体>>>
上記セルロース誘導体としては、特に限定はないが、具体的には例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)等が好ましいものとして挙げられる。
<<<アミノ糖>>>
上記アミノ糖としては、アミノ基を有する単糖を単位として含む多糖類であれば特に限定はないが、具体的には例えば、キチン、キトサン等が、好ましいものとして挙げられる。これらは、ナノ粒子状のナノ化体であることも好ましい。
<<固体分散質>>
本発明における固体分散質15は、可食性被覆材層13中において、上記固体分散媒14に分散している(図1参照)。ここで、該固体分散質15は、「中性水に不溶であり酸性水に可溶である2価以上の陽イオンの塩」を含有することが必須である。
かかる塩を含有する粒子(固体分散質15)は、酸性の胃液に接触すると溶解し、2価以上の陽イオンを、水(胃液)を含んだ可食性被覆材層13(固体分散媒14)中に放出し、多糖を架橋する。
しかも、胃液に接触する前は、該固体分散質15は、(好ましくは、ほぼ中性の水系の)被覆液に溶解していないので(言い換えれば、連続相である固体分散媒14の系からは分離されているので)、被覆液中で連続相を形成し共存している多糖を架橋しておらず、被覆液がゲル化や高粘度化していないので、被覆液はさらさらで、核に対する被覆性が悪くなっていない。
本発明は、有効成分を含有する核が可食性被覆材層によって被覆されている腸溶性被覆粉体であって、該可食性被覆材層は、カルボキシル基を有する多糖、2価以上の陽イオンの塩、及び、水を含有する水系の被覆液を、前記核に付与することにより形成されるものであり、
本発明における「2価以上の陽イオンの塩」は、該水系の被覆液には不溶であるために、形成された可食性被覆材層中では固体分散質15となっており、
該多糖は、該水系の被覆液中では、該2価以上の陽イオンで実質的に架橋しておらず該水系の被覆液に可溶であり、形成された可食性被覆材層中では固体分散媒14となっており、
該多糖は、「胃酸によって溶解した該2価以上の陽イオンの塩」から放出された2価以上の陽イオンによって胃の中で初めて架橋することによって、該可食性被覆材層が胃の中で初めて腸溶性となるような構成を有していることを特徴とする腸溶性被覆粉体でもある。
本発明において、可食性被覆材層13中に固体分散質15が分散していると、固体分散質15が可食性被覆材層13中にないときに比べて、少なくとも胃酸に対する溶出速度が低下する。そのことによって、本発明の被覆粉体は腸溶性となる。
該2価以上の陽イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオン等が好ましいものとして挙げられる。
中でも、カルシウムイオンであることが、前記多糖を架橋したとき生成する「多糖のカルシウム塩」が、架橋性能が高い、すなわち多糖を架橋させてゲル化させ易い(酸性又は中性の水に対して、不溶若しくは難溶にさせ易い);安全性が高い;食品添加物として認可されている場合が多い;等の点から特に好ましい。
固体分散質15を構成する陰イオンとしては、リン酸イオン、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸イオン、塩化物イオン等が好ましいものとして挙げられる。
上記固体分散質15(2価以上の陽イオンの塩)としては、特に限定はないが、具体的には、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、リン酸銅、リン酸亜鉛等のリン酸塩;リン酸一水素カルシウム等のリン酸一水素塩;硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二銅、硫酸亜鉛等の硫酸塩;等が挙げられる。
<<<リン酸三カルシウム>>>
中でも、リン酸三カルシウム(Tricalcium phosphate)(Ca(PO)が、「中性水に溶解せずに酸性の水に溶解してカルシウムイオンを放出する性質」に優れている;安全性が高い;食品添加物として認可されている;等の点から特に好ましい。
本発明におけるリン酸三カルシウムは、幾つかの多形体を持つが、その何れでもよく、リン酸三カルシウムの結晶系は特に限定されない。ただ、単斜晶系のα−リン酸三カルシウム(α−TCP)と、六方晶系のα’−リン酸三カルシウム(α’−TCP)が、可溶性と生分解性が優れているために特に好ましい。
<<<固体分散質の粒径(分散径)>>>
2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質15の粒径は、可食性被覆材層13中で固体分散媒14に分散して、胃液(酸性水)の存在で容易に溶解して2価以上の陽イオンを放出する粒径であれば、特に限定はないが、体積平均粒径として、0.001μm以上100μm以下が好ましく、0.01μm以上10μm以下がより好ましく、0.1μm以上1μm以下が特に好ましい。
固体分散質15の上記粒径は、被覆直前の被覆液中、又は、可食性被覆材層13中での粒径である。上記粒径範囲に入るように、予め粉砕又は解砕してから用いてもよいし、ホモジナイザー等の分散機で固体分散質15を被覆液中に分散する際に、同時に上記粒径範囲に入るように粉砕又は解砕されてもよい。
上記下限以上であれば、粒径の制御がし易い;被覆時に使用する「多糖を含有する固体分散媒の被覆液」に容易に分散できる(可食性被覆材層(の被覆液)の調製が容易である);コスト的に無駄である(過度の)粉砕が不要である;等の効果が得られる。
一方、上記上限以下であれば、固体分散質15が可食性被覆材層13の厚さ以内に収まる;固体分散媒14中で均一な分散状態にできる;胃酸(酸性水)に触れると容易に溶解して2価以上の陽イオンを放出する;等の効果が得られる。
<<可食性被覆材層における他の成分>>
可食性被覆材外層23には、上記以外にも、安定剤、酸化防止剤、増粘剤、着色剤等、他の成分を含有させることができる。
<核の態様>
本発明において、核12が可食性被覆材層13によって被覆されている形態は、該核12が該可食性被覆材で前記効果を奏するように十分に被覆されていれば特に限定はない。すなわち、図2(a)(b)(c)のような形態でも、図3のような形態でも、本発明に含まれる。ただ、前記した本発明の効果をより発揮するためには、図3のような形態より図2(a)(b)(c)のような形態が好ましい。
すなわち、特に限定はされないが、本発明の腸溶性被覆粉体11は、該核12が「有効成分の実質的に1個の粉末」よりなるものであって、被覆の単位である該1個の有効成分の粉末の表面が個々に前記可食性被覆材層13で被覆されているものであることが特に好ましい。
本発明において、可食性被覆材層13によって被覆される対象である「核12」は、図2(a)に示したような、それ以上には解砕できない一次粉末でもよく、図2(c)に示したような、一次粉末12aが集まってなる二次粉末でもよい。すなわち、ここでの「核12」は、一次粉末12aが複数個で形成された二次粉末でもよい。
例えば、図2(c)に示したように、「核12」自体が二次粉末であって、被覆の単位である該核12の表面が個々に可食性被覆材で被覆されているような形態は、図3に示したように、「被覆中に造粒(凝集)が起こって、核12同士の隙間に可食性被覆材が完全に入り込む等して核12の表面が個々に該可食性被覆材で被覆されていないような形態」より好ましい。
核12には、厳密に「一次粉末」と言えるものはむしろ少ないことに鑑みて、上記のように定義したものであり、上記「解砕」とは、通常の転動流動層法で崩れる程度の現象を言う。通常の転動流動層法で崩すことのできないもので、一次粉末ではないものは、二次粉末であって、本発明における個々の「核12」である。
前記した「実質的に1個の粉末」とは、上記のように解釈・定義される。
ただし、図2(b)に示したように、核12を個々に被覆した後に、あらためて(好ましくは賦形剤等を加えて)顆粒状にしたような形態は、「本発明の腸溶性被覆粉体11」の寄り集まりに過ぎず、当然に前記した本発明の効果を奏するので本発明に含まれる。
後述するが、このように核12を個々に被覆することに適した装置としては、転動流動層型のコーティング装置、側方スプレー式流動層型のコーティング装置、解砕整粒機構付流動層型のコーティング装置、ワースター流動層法(の転動流動層型)のコーティング装置等が挙げられる。中でも、コーティング性、被覆性等の点から、転動流動層型のコーティング装置が特に好ましい。
実質的に1個の粉末よりなる核一つ一つが被覆されていると、腸溶性に優れるだけではなく、粉体の段階で有効成分の味や臭いを封じ込めたり、粉体同士の接触を回避したりできる。
更に、保存中(運搬やハンドリング等が含まれる)の衝撃、打錠する際の衝撃等によって、核12の新たな破断面が露出して、そこから、水(胃液等の消化液)が、直接、該核12に進入することを防止することができる。すなわち、可食性被覆材層13のゲル化による有効成分の流出阻止が確実にできるようになる。
<腸溶性被覆粉体の態様>
前記した通り、本発明の上記腸溶性被覆粉体11は、経口摂取して胃に到達したときに、胃液の酸性によって、上記可食性被覆材層13に分散されていた前記2価以上の陽イオンの塩が水溶性となり、溶出した2価以上の陽イオンが前記多糖を架橋させ該可食性被覆材層13をゲル化させることによって、前記核12が含有する前記有効成分を胃液から保護するようになっている。
<核>
核は有効成分を含有するが、該有効成分としては、胃酸で分解又は変質し易いもの;胃壁(胃粘膜)に損傷を与え易いもの;胃で吸収させたくないもの;腸で崩壊・溶解させた方がよいもの;既に腸溶剤を付与することが知られている有効成分等が挙げられる。
有効成分は、単量体・重合体の何れでもよく、単一物・混合物の何れでもよく、合成物・天然物・抽出物・半合成物の何れでもよく、化学物質・生菌・死菌・菌の産生物の何れでもよい。また、それらの混合物でもよい。
また、該有効成分としては、味、臭い等をマスキングしたいもの、核12(有効成分)同士の接触、特に異種の有効成分を含有する核12同士の接触を避けたいもの等も挙げられる。
該有効成分は、1種又は2種以上を併用することもできる。
核12には、上記有効成分以外にも、増量剤、賦形剤、安定剤、酸化防止剤等の他の成分を、本発明の効果を損なわなければ何れも含有させることができる。
<腸溶性被覆粉体の形態・態様(成分含有割合、大きさ、層構成等)>
本発明の腸溶性被覆粉体の大きさは、特に限定はないが、0.01μm以上5000μm以下が好ましく、0.1μm以上1000μm以下がより好ましく、1μm以上500μm以下が特に好ましい。
また、可食性被覆材層の平均厚さは、特に限定はないが、0.003μm以上300μm以下が好ましく、0.01μm以上100μm以下がより好ましく、0.1μm以上30μm以下が更に好ましく、1μm以上10μm以下が特に好ましい。
また、相対比は、平均として、核の半径を100としたときに、可食性被覆材層の厚さは、0.1以上50以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、3以上20以下が特に好ましい。
上記下限以上であれば、胃液に触れる(浸漬される)ことによって、2価以上の陽イオンが溶出して、可食性被覆材層13中の固体分散媒14である多糖を架橋させて、十分に腸溶性被覆粉体11の胃での崩壊を抑制する。
一方、上記上限以下であれば、厚過ぎる「架橋によってゲル化した層」ができず、腸に至って好適に腸内で崩壊し易い。
固体分散質15は、可食性被覆材層13全体に対して、0.1質量%以上80質量%以下で含有されていることが好ましく、1質量%以上30質量%以下で含有されていることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下で含有されていることが特に好ましい。
上記下限以上であれば、胃液に触れる(浸漬される)ことによって、2価以上の陽イオンが十分に溶出して、可食性被覆材層13中の固体分散媒14である多糖を架橋させて、腸溶性被覆粉体11の胃での崩壊を抑制する。
一方、上記上限以下であれば、過度の架橋が起らず、腸に至って好適に腸内で崩壊し易い。また、可食性被覆材層13を形成するための被覆液に対して、粒子である固体分散質15を好適に分散でき、必要以上の固体(粒子)を使用しないので不均一になり難く、可食性被覆材層13の形成が容易となる。
<腸溶性被覆粉体の製造方法>
本発明は、前記した腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、前記多糖を水に溶解させると共に、前記2価以上の陽イオンの塩を該水に分散させて被覆液を調製し、前記核12に該被覆液を付与することによって、該核12を前記可食性被覆材層によって被覆する工程を含むことを特徴とする製造方法でもある。
更に、本発明は、前記した腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、
有効成分を含有する核を、可食性被覆材層によって被覆して該腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であり、
該可食性被覆材層は、カルボキシル基を有する多糖、2価以上の陽イオンの塩、及び、水を含有する水系の被覆液を該核に付与することにより形成し、
該2価以上の陽イオンの塩を、該水系の被覆液に不溶のものとすることで、該可食性被覆材層中では固体分散質となるようにし、
該多糖を、該水系の被覆液に可溶のものとすることで、該可食性被覆材層中では固体分散媒となるようにし、「胃酸によって溶解した該2価以上の陽イオンの塩」から放出された2価以上の陽イオンによって胃の中で初めて架橋することによって、該可食性被覆材層が胃の中で初めて腸溶性になるようにすることを特徴とする腸溶性被覆粉体の製造方法でもある。
ここで、各成分の溶解や分散は、公知の方法で行える。
前記2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質15を水に分散させるには、予め乾式粉砕若しくは湿式粉砕しておいてから分散媒である水に投入してもよく、水に投入してから撹拌と共に湿式粉砕分散してもよい。湿式粉砕分散する装置としては、特に限定はないが、固体分散質15の粉砕・解砕ができるものが好ましく、ホモジナイザーが特に好ましい。
溶解・分散の順番等は、特に限定はなく、公知の方法で行うことができる。
ここで、「水」とは、主成分が水である水系溶媒のことを言い、少量(30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10%以下)の「水以外の水溶性溶媒」の配合を排除するものではない。「水以外の水溶性溶媒」としては、例えば、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
水は、蒸留水、脱塩水、純水、pH調整水等、何れでもよい。
核12に可食性被覆材層13を付与する方法は、本発明の効果を奏するようにできれば、特に限定はないが、好ましい方法として、転動流動層法、側方スプレー式流動層法、解砕整粒機構付流動層法、ワースター流動層法等が挙げられる。これらを用いることによって、被覆の単位である核12の表面を該可食性被覆材で個々に被覆することができる(又は個々に被覆し易い)。中でも、コーティング性、被覆性等の点から、転動流動層法が特に好ましい。実際に使用する装置の名称の如何に関わらず、転動流動層法を用いた付与方法・被覆方法が特に好ましい。
上記被覆方法に用いる装置としては特に限定はなく、市販のものも好適に用いられる。
転動流動層法に用いられる装置としては、以下に限定はされないが、(株)パウレック製のMP、フロイント産業(株)製のスパイラルフロー等が挙げられ、側方スプレー式流動層法に用いられる装置としては、フロイント産業(株)製のFL等が挙げられ、解砕整粒機構付流動層法に用いられる装置としては、(株)パウレック製のSFP等が挙げられ、ワースター流動層法に用いられる装置としては、(株)パウレック製のGPCG等が挙げられる。
腸溶性被覆粉体11は、図2(a)に示したように、それぞれが単独で存在していてもよく(存在している場合もあれば)、当然、図2(b)に示したように、該被覆粉末が複数個凝集して存在していてもよい(存在している場合もある)。
本発明の態様としては、図2(a)(b)のように核12が一次粉末であれ、図2(c)のように核12が二次粉末であれ、該核1個ずつを、それぞれ表面コートすることが好ましい。
本発明の腸溶性被覆粉体11は、可食性被覆材によって、2層以上で被覆されていてもよいが、本発明の上記効果を奏するために、1層で被覆されていることが好ましい。1層で被覆されていると、可食性被覆材層13の腸溶性被覆粉体11全体に占める割合が低くなり優れたものができる、製造中の切り替え洗浄がない、製造コスト的に有利である等の効果がある。
また、本発明は、前記した腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、前記多糖を水に溶解させると共に、前記2価以上の陽イオンの塩を該水に分散させて被覆液を調製し、前記核12に該被覆液を付与することによって、該核12を前記可食性被覆材層13によって被覆する工程の後に、更に、「可食性酸を含有する水溶性被覆材」又は「難水溶性若しくは不水溶性被覆材」を含有する可食性被覆材外層によって被覆する工程含むことを特徴とする腸溶性被覆粉体の製造方法でもある。
<腸溶性被覆粉体の利用、用途等>
本発明の腸溶性被覆粉体は、粉剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、固形剤等の用途に好適に使用できる。言い換えれば、本発明は、粉剤用腸溶性被覆粉体、錠剤用腸溶性被覆粉体、顆粒剤用腸溶性被覆粉体、カプセル剤用腸溶性被覆粉体、固形剤用腸溶性被覆粉体でもある。本発明は、前記腸溶性被覆粉体を含有することを特徴とする粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤若しくは固形剤でもある。
また、本発明の腸溶性被覆粉体の用途としては、健康食品、一般食品、動物の飼料・餌等が挙げられる。
<<粉剤、錠剤、顆粒剤等>>
本発明の腸溶性被覆粉体は、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤若しくは固形剤(以下、「粉剤等」と略記する場合がある)に好適に適用することができる。
上記「錠剤」には、「該腸溶性被覆粉体を含有する粉剤」又は「該腸溶性被覆粉体を含有する顆粒剤」を錠剤化してなる錠剤も含まれる。また、上記「固形剤」には、チュアブル剤、トローチ剤、ドロップ剤、丸剤、口腔内崩壊剤等の常温で固形状の剤が含まれる。
更に、本発明の腸溶性被覆粉体は、上記粉剤等を、チョコレート、羊羹、グミ、ゼリー等の菓子;パン、蒸しパン、麺等の主食;等に分散させた一般食品としても有用である。
上記粉剤等は、腸溶性被覆粉体に加えて、「その他の成分」を含有することができる。かかる粉剤等における、「その他の成分」としては、特に制限がなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬学的に許容され得る担体等が挙げられる。
かかる担体としては、特に制限がなく、例えば、剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記粉剤等中の前記「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記粉剤等は、腸溶性被覆粉体に、その他の成分として、着色剤、矯味・矯臭剤、安定剤、増量剤、防腐剤、酸化防止剤、香料等を含有させることができる。また、錠剤又は顆粒剤では、更に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を含有させることができる。
粉剤等は、本発明の腸溶性被覆粉体を用いて常法により製造することができる。
上記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
上記矯味・矯臭剤、増量剤、賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、橙皮、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、カオリン、(微)結晶セルロース、珪酸(塩)等が挙げられる。また、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、キシノース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、ラクトース等の二糖類;オリゴ糖等の少糖類;ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトール等の糖アルコール;セルロース、デンプン、加工でんぷん、グリコーゲン、デキストリン、難消化性デキストリン、シクロデキストリン、分岐型シクロデキストリン等の多糖類;又はこれらの分解物;等が挙げられる
上記結合剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
上記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
上記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
以下に、製造例及び評価例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの製造例及び評価例に限定されるものではない。
実施例中の「%」は、それが質量に関するものは「質量%」を意味する。
実施例1
有効成分としてピリドキシン塩酸塩500gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度80℃、給気量0.63m/minに設定し、水500mL中にアルギン酸ナトリウム45g、及び、リン酸三カルシウム5gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、体積平均粒径が50.6μmの腸溶性被覆粉体を510g得た。被覆前後で体積平均粒径は約1.1倍となった。
実施例2
実施例1において、被覆液を、水500mL中にアルギン酸ナトリウム90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒径が60.3μmの腸溶性被覆粉体を561g得た。被覆前後で体積平均粒径は約1.2倍となった。
実施例3
実施例1において、被覆液を、水500mL中にアルギン酸ナトリウム135g、及び、リン酸三カルシウム15gを含む被覆液とした以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒径が64.4μmの腸溶性被覆粉体を580g得た。被覆前後で体積平均粒径は約1.3倍となった。
実施例4
有効成分としてピリドキシン塩酸塩500gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度80℃、給気量0.6m/minに設定し、水500mL中にペクチン45g、及び、リン酸三カルシウム5gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、体積平均粒径が54.2μmの腸溶性被覆粉体を514g得た。被覆前後で体積平均粒径は約1.1倍となった。
実施例5
実施例4において、被覆液を、水500mL中にペクチン90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例4と同様にして、体積平均粒径が60.1μmの腸溶性被覆粉体を533g得た。被覆前後で体積平均粒径は約1.1倍となった。
実施例6
実施例4において、被覆液を、水500mL中にペクチン135g、及び、リン酸三カルシウム15gを含む被覆液とした以外は、実施例4と同様にして、体積平均粒径が66.9μmの腸溶性被覆粉体を541g得た。被覆前後で体積平均粒径は約1.3倍となった。
比較例1
実施例1〜6において、被覆(表面コート)を行わず(可食性被覆材層を形成させず)、ピリドキシン塩酸塩の粉体を準備した。
比較例2
実施例2、5において、「多糖(アルギン酸ナトリウム、ペクチン)90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液」に代えて、セラック100gを含む被覆液を用いた以外は、実施例2、5と同様にして、体積平均粒径が60.2μmの粉体を得た。
比較例3
実施例2、5において、「多糖(アルギン酸ナトリウム、ペクチン)90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液」に代えて、アルギン酸ナトリウム100gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例2、5と同様にして粉体を得た。
比較例4
実施例2、5において、「多糖(アルギン酸ナトリウム、ペクチン)90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液」に代えて、ペクチン100gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例2、5と同様にして粉体を得た。
評価例1
<溶出量(%)(溶出率(%))>
上記の実施例1〜6、比較例1〜4で得られた粉末を、日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法で溶出時間を測定した。
具体的には、粉末1gを溶出試験機(富山産業株式会社 Dissolution Tester)の回転式バスケット(200メッシュ)に入れ、ベッセル中の37℃の溶出試験第1液(pH1.2)900mLにバスケットを浸漬し、バスケットの回転数を100rpmとして、2時間の溶出試験を行い、「2時間後の溶出量(%)」とした。
なお、「溶出量(%)」の定義は、後記の「溶出率(%)」の定義と同一である。
溶出試験2時間後、ベッセル中からバスケットを取り出し、予め37℃に加温した溶出試験第2液(pH6.8)900mLに該バスケットを浸漬し、バスケットの回転数を100rpmとして、更に4時間の溶出試験を行った。
溶出試験第1液の溶出試験2時間と溶出試験第2液の溶出試験4時間を合わせて、「6時間後の溶出量(%)」とした。
「溶出量」を測定するために、30分おきにベッセル中の溶液を採取し、ピリドキン塩酸塩の分子吸光係数が高い375nmの紫外線吸収を測定し定量した。
結果を表1に示す。2時間後の溶出量が20%以下であり、6時間後の溶出量が80%以上の場合を合格とした。
表1中、「NT」は、2時間で溶出量が100%であったので、6時間では測定しなかったことを示す。
Figure 2020050657
表1から分かる通り、該可食性被覆材層として、多糖、及び、2価以上の陽イオンの塩(中性水に不溶であり、酸性水に可溶であるリン酸三カルシウム)の両方を含有する実施例では、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)中で、2時間でも20%未満の溶出量しかなかったが、経口摂取した場合には腸に行っていると思われる6時間後では、80%より多くが溶出した。
一方、比較例では、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)中で、2時間で全てが溶出した。このことは、胃中で溶解することを示している。従って、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、固形剤等にしたときでも、胃中で崩壊することを示している。
実施例11
有効成分(核)としてピリドキシン塩酸塩400gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度84℃、給気量0.65m/minに設定し、水400mL中にアルギン酸ナトリウム42.2g、及び、リン酸三カルシウム2.2gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、腸溶性被覆粉体を得た。
核と可食性被覆剤層との質量比・層厚比は、上記被覆液中の固体成分が全て核にコートされた。
実施例12
実施例11において、被覆液を、水1000mL中にアルギン酸ナトリウム90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例11と同様にして腸溶性被覆粉体を得た。
実施例13
実施例11において、被覆液を、水1543mL中にアルギン酸ナトリウム153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液とした以外は、実施例11と同様にして腸溶性被覆粉体を得た。
実施例14
有効成分(核)としてピリドキシン塩酸塩400gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度84℃、給気量0.65m/minに設定し、水400mL中にペクチン42.2g、及び、リン酸三カルシウム2.2gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例15
実施例14において、被覆液を、水1000mL中にペクチン90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例14と同様にして腸溶性被覆粉体を得た。
実施例16
実施例14において、被覆液を、水1543mL中にペクチン153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液とした以外は、実施例14と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例17
有効成分(核)としてリボフラビン400gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度84℃、給気量0.65m/minに設定し、水400mL中にアルギン酸ナトリウム42.2g、及び、リン酸三カルシウム2.2gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例18
実施例17において、被覆液を、水1000mL中にアルギン酸ナトリウム90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例17と同様にして腸溶性被覆粉体を得た。
実施例19
実施例17において、被覆液を、水1543mL中にアルギン酸ナトリウム153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液とした以外は、実施例17と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例20
有効成分(核)としてリボフラビン400gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度84℃、給気量0.65m/minに設定し、水400mL中にペクチン42.2g、及び、リン酸三カルシウム2.2gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例21
実施例20において、被覆液を、水1000mL中にペクチン90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例20と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例22
実施例20において、被覆液を、水1543mL中にペクチン153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液とした以外は、実施例20と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例23
有効成分(核)としてアスコルビン酸400gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度84℃、給気量0.65m/minに設定し、水400mL中にアルギン酸ナトリウム42.2g、及び、リン酸三カルシウム2.2gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例24
実施例23において、被覆液を、水1000mL中にアルギン酸ナトリウム90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例23と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例25
実施例23において、被覆液を、水1543mL中にアルギン酸ナトリウム153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液とした以外は、実施例23と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例26
有効成分(核)としてリボフラビン400gを、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、給気温度84℃、給気量0.65m/minに設定し、水400mL中にペクチン42.2g、及び、リン酸三カルシウム2.2gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行い、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例27
実施例26において、被覆液を、水1000mL中にペクチン90g、及び、リン酸三カルシウム10gを含む被覆液とした以外は、実施例26と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
実施例28
実施例26において、被覆液を、水1543mL中にペクチン153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液とした以外は、実施例26と同様にして、腸溶性被覆粉体を得た。
比較例11
実施例11〜16において、被覆(表面コート)を行わず(可食性被覆材層を形成させず)、ピリドキシン塩酸塩の粉体を準備した。
比較例12
実施例13において、「多糖(アルギン酸ナトリウム)153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液」に代えて、アルギン酸ナトリウム171gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例13と同様にして粉体を得た。
比較例13
実施例16において、「多糖(ペクチン)153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液」に代えて、ペクチン171gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例16と同様にして粉体を得た。
比較例14
実施例17〜22において、被覆(表面コート)を行わず(可食性被覆材層を形成させず)、リボフラビンの粉体を準備した。
比較例15
実施例19において、「多糖(アルギン酸ナトリウム)153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液」に代えて、アルギン酸ナトリウム171gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例19と同様にして粉体を得た。
比較例16
実施例22において、「多糖(ペクチン)153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液」に代えて、ペクチン171gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例22と同様にして粉体を得た。
比較例17
実施例23〜28において、被覆(表面コート)を行わず(可食性被覆材層を形成させず)、アスコルビン酸ナトリウムの粉体を準備した。
比較例18
実施例25において、「多糖(アルギン酸ナトリウム)153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液」に代えて、アルギン酸ナトリウム171gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例25と同様にして粉体を得た。
比較例19
実施例28において、「多糖(ペクチン)153.9g、及び、リン酸三カルシウム17.1gを含む被覆液」に代えて、ペクチン171gを含む被覆液(すなわちリン酸三カルシウム含有しない被覆液)を用いた以外は、実施例28と同様にして粉体を得た。
評価例2
<溶出率(%)>
上記の実施例11〜28、比較例11〜19で得られた食品粉体を、回転バスケット方式を用いて溶出試験を行った。
具体的には、食品粉体1gを溶出試験機(Agilent Technologies, Inc. 708DS型溶出試験装置)の回転式バスケットに入れ、ベッセル中の37℃の溶出試験第1液(pH1.2)900mLにバスケットを浸漬し、2時間の溶出試験を行い、「2時間後の溶出率(%)」を算出した。
溶出試験2時間後、ベッセル中からバスケットを取り出し、予め37℃に加温した溶出試験第2液(pH6.8)900mLに当該バスケットを浸漬し、更に、4時間の溶出試験を行った。
試験開始から6時間後、上記バスケット内に残渣があった場合は、該残渣に対して900mLの「残渣測定用イオン交換水」を加え、よく溶解させた後、吸光度を測定した。アスコルビン酸の場合は溶出量を測定した。
溶出試験第1液による溶出試験2時間後の溶出試験第1液の吸光度、その後の、溶出試験第2液による溶出試験2時間後から4時間後(最初からトータルでは6時間後)までの溶出試験第2液の吸光度、及び、残渣の吸光度を足し合わせて、全体で割って、「6時間後の溶出率(%)」とした。
ピリドキシン塩酸塩、リボフラビンの「溶出率」を算出するために、一定時間毎にベッセル中の溶液を採取し、フィルターろ過(0.45μm)し、ピリドキシン塩酸塩は375nm、リボフラビンは265nmにおける吸光度を測定した。「溶出率」の算出には下記の式を用い、時間t(h)における溶出率を算出した。
<「2時間後までの溶出率(%)」の定義>
溶出試験第1液による、0時間(試験開始)から2時間後までに溶出したものの吸光度を測定(溶出試験第1液の吸光度を測定)する。
[2時間後までの溶出率(%)]=100×At/(A2+A6+Ar)
<「6時間後までの溶出率(%)」の定義>
溶出試験第1液による上記吸光度と、溶出試験第2液による、試験開始2時間後から6時間後までに溶出したものの吸光度を測定(溶出試験第2液の吸光度を測定)し、それらの和をとる。
[2時間後から6時間後までの溶出率(%)]
=100×[A2/(A2+A6+Ar)+At/(A2+A6+Ar)]
At :時間tにおけるそのときの溶出試験液での吸光度
A2 :溶出開始2時間における溶出試験第1液の吸光度
A6 :溶出開始6時間における溶出試験第2液の吸光度
Ar :残渣の吸光度であり、「残渣測定用イオン交換水」の吸光度
アスコルビン酸の「溶出率」を算出するために、一定時間毎にベッセル中の溶液を採取し、フィルターろ過(0.45μm)し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、ホモシステイン法にてアスコルビン酸を定量した。「溶出率」の算出には下記の式を用い、時間t(h)における溶出率を算出した。
<「2時間後までの溶出率(%)」の定義>
溶出試験第1液による、0時間(試験開始)から2時間後までに溶出したアスコルビン酸の量を定量する。
[2時間後までの溶出率(%)]=100×Et/(E2+E6+Er)
<「6時間後までの溶出率(%)」の定義>
溶出試験第1液による上記アスコルビン酸量と、溶出試験第2液による、試験開始2時間後から6時間後までに溶出したアスコルビン酸量を測定(溶出試験第2液による溶出量を測定)し、それらの和をとる。
[2時間後から6時間後までの溶出率(%)]
=100×[E2/(E2+E6+Er)+Et/(E2+E6+Er)]
Et :時間tにおけるそのときの溶出試験液でのアスコルビン酸の溶出量
E2 :溶出開始2時間における溶出試験第1液へのアスコルビン酸の溶出量
E6 :溶出開始6時間における溶出試験第2液へのアスコルビン酸の溶出量
Er :残渣であり、「残渣測定用イオン交換水」へのアスコルビン酸の溶出量
Figure 2020050657
表2より、実施例は全て腸溶性を示した。
表2及び図4〜9に示したように、比較例12〜13、比較例15〜16、比較例18〜19は、比較例11、14、17と比較して、2時間、6時間で溶出を抑制したが、対応する「2価以上の陽イオンの塩(中性水に不溶であり、酸性水に可溶であるリン酸三カルシウム)を含む可食性被覆材層を有する実施例」の方が、対応する比較例に対して、より溶出を抑制した結果となった。
表2及び図4〜9に示したように、核をピリドキシン塩酸塩に、可食性被覆材層を形成する多糖をアルギン酸ナトリウムに統一した場合、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有する実施例13は、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有しない比較例12に比べ、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)による2時間後の溶出率が低下した。
また、核をピリドキシン塩酸塩に、可食性被覆材層を形成する多糖をペクチンに統一した場合、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有する実施例16は、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有しない比較例13に比べ、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)による2時間後の溶出率が低下した。
このことは、リン酸三カルシウムの含有によって、可食性被覆材層が、胃で溶解・崩壊し難くなっていることを示している。
表2及び図4〜9に示したように、核をリボフラビンに、可食性被覆材層を形成する多糖をアルギン酸ナトリウムに統一した場合、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有する実施例19は、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有しない比較例15に比べ、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)による2時間後の溶出率が低下した。
また、核をリボフラビンに、可食性被覆材層を形成する多糖をペクチンに統一した場合、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有する実施例22は、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有しない比較例16に比べ、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)による2時間後の溶出率が低下した。
このことは、リン酸三カルシウムの含有によって、可食性被覆材層が、胃で溶解・崩壊し難くなっていることを示している。
表2及び図4〜9に示したように、核をアスコルビン酸に、可食性被覆材層を形成する多糖をアルギン酸ナトリウムに統一した場合、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有する実施例25は、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有しない比較例18に比べ、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)による2時間後の溶出率が低下した。
また、核をアスコルビン酸に、可食性被覆材層を形成する多糖をペクチンに統一した場合、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有する実施例28は、可食性被覆材層にリン酸三カルシウムを含有しない比較例19に比べ、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)による2時間後の溶出率が低下した。
このことは、リン酸三カルシウムの含有によって、可食性被覆材層が、胃で溶解・崩壊し難くなっていることを示している。
<被覆材層なしと比較した腸溶効果(極めて優れた腸溶性)>
2時間後の溶出量が、実施例11〜16は比較例11と、実施例17〜22は比較例14と、実施例23〜28は比較例17と比較して、比較例の溶出率の65%以下であり、かつ、6時間後の溶出率が60%以上の場合は、腸溶性が極めて優れるので、「腸溶効果」を「◎」とした(表2の最右列)。
本発明の腸溶性被覆粉体、該腸溶性被覆粉体を含有する剤は、医療用医薬品分野、一般用医薬品分野、健康食品分野、一般食品分野等に広く利用されるものである。
11 腸溶性被覆粉体
12 核(一次、二次粉末を含む)
12a 一次粉末
13 可食性被覆材層
14 固体分散媒
15 固体分散質
23 可食性被覆材外層

Claims (10)

  1. 有効成分を含有する核が可食性被覆材層によって被覆されている腸溶性被覆粉体であって、
    該可食性被覆材層は、多糖を含有する固体分散媒、及び、2価以上の陽イオンの塩を含有する固体分散質よりなり、
    該2価以上の陽イオンの塩が、中性水に不溶であり、酸性水に可溶であることを特徴とする腸溶性被覆粉体。
  2. 前記多糖が前記2価以上の陽イオンによって架橋してゲル化するようなものである請求項1に記載の腸溶性被覆粉体。
  3. 経口摂取して胃に到達したときに、胃液の酸性によって、上記可食性被覆材層に分散されていた前記2価以上の陽イオンの塩が水溶性となり、溶出した2価以上の陽イオンが前記多糖を架橋させ該可食性被覆材層をゲル化させることによって、前記核が含有する前記有効成分を胃液から保護するようになっている請求項1又は請求項2に記載の腸溶性被覆粉体。
  4. 有効成分を含有する核が可食性被覆材層によって被覆されている腸溶性被覆粉体であって、
    該可食性被覆材層は、カルボキシル基を有する多糖、2価以上の陽イオンの塩、及び、水を含有する水系の被覆液を、前記核に付与することにより形成されるものであり、
    該2価以上の陽イオンの塩は、該水系の被覆液には不溶であるために、形成された可食性被覆材層中では固体分散質となっており、
    該多糖は、該水系の被覆液中では、該2価以上の陽イオンで実質的に架橋しておらず該水系の被覆液に可溶であり、形成された可食性被覆材層中では固体分散媒となっており、
    該多糖は、「胃酸によって溶解した該2価以上の陽イオンの塩」から放出された2価以上の陽イオンによって胃の中で初めて架橋することによって、該可食性被覆材層が胃の中で初めて腸溶性となるような構成を有していることを特徴とする腸溶性被覆粉体。
  5. 前記多糖がアルギン酸水溶性塩又はペクチンである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆粉体。
  6. 前記2価以上の陽イオンが、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、又は、銅イオンである請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆粉体。
  7. 前記核が、前記有効成分の実質的に1個の粉末よりなるものであって、被覆の単位である該1個の有効成分の粉末の表面が個々に前記可食性被覆材層で被覆されている請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆粉体。
  8. 請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆粉体を含有することを特徴とする粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤若しくは固形剤。
  9. 請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、
    前記多糖を水に溶解させると共に、前記2価以上の陽イオンの塩を該水に分散させて被覆液を調製し、前記核に該被覆液を付与することによって、該核を前記可食性被覆材層によって被覆する工程を含むことを特徴とする腸溶性被覆粉体の製造方法。
  10. 請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であって、
    有効成分を含有する核を、可食性被覆材層によって被覆して該腸溶性被覆粉体を製造する製造方法であり、
    該可食性被覆材層は、カルボキシル基を有する多糖、2価以上の陽イオンの塩、及び、水を含有する水系の被覆液を該核に付与することにより形成し、
    該2価以上の陽イオンの塩を、該水系の被覆液に不溶のものとすることで、該可食性被覆材層中では固体分散質となるようにし、
    該多糖を、該水系の被覆液に可溶のものとすることで、該可食性被覆材層中では固体分散媒となるようにし、「胃酸によって溶解した該2価以上の陽イオンの塩」から放出された2価以上の陽イオンによって胃の中で初めて架橋することによって、該可食性被覆材層が胃の中で初めて腸溶性になるようにすることを特徴とする腸溶性被覆粉体の製造方法。
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