JP2020050262A - サスペンションアーム及び車両の懸架装置 - Google Patents
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Abstract
Description
第一軸線と第二軸線との角度(以下、アーム角ということがある。)を鈍角とすることで、アンチダイブ特性に優れたサスペンションアームとすることができる。アーム角が鈍角であれば、第二取付部を第一取付部に対して車幅方向の内側に容易に配置することができるからである。制動時、第一取付部は、制動荷重により第三取付部に対して相対的に低くなり、かつ第二取付部に対しても相対的に低くなる。その際、第一取付部と第三取付部を結ぶ第二軸線を軸として回転するようにロアアームが挙動する。アーム角が鈍角であれば、上記のロアアームの挙動により、第二取付部が車幅方向の外側かつ上方に変位しようとすることが抑制され、制動時の車輪の安定性を確保することができる。
本発明の実施形態の詳細を図面を参照しつつ説明する。ここでは、実施形態に係る懸架装置としてストラット式の懸架装置を例とし、この懸架装置に実施形態に係るサスペンションアームを用いた場合を例として説明する。このサスペンションアームは、フロントサスペンションに用いられるロアアームである。図2において、車両前方をFR、車両後方をRR、車幅方向の外側をOUT、車幅方向の内側をINで示す。
図1に示すように、実施形態に係る懸架装置は、車体に対して車輪を揺動自在に支持する。車体は、車長方向に延びるサイドメンバ(図示略)と、サイドメンバに固定されるサブフレーム20とを備える。サブフレーム20には、ロアアーム10の第一取付部11と第二取付部12とが取り付けられる。一方、ロアアーム10の第三取付部13は、ボールジョイント13Bを介してステアリングナックル30の後方の下部に取り付けられる。ステアリングナックル30の中央部には、車輪40のホイール42に取り付けられると共に、ステアリングの操舵に伴って車幅方向にスライドするタイロッド50の端部が連結される。ステアリングナックル30の上部には、ショックアブソーバを備えるストラット60の下端が連結される。ストラット60の上端は、サスペンションタワー70に固定される。
ロアアーム10は、プレス成形した金属板からなるアーム本体10Sを備える。アーム本体10Sは、車両に組み付けた状態の平面視で、L型に屈曲されている。また、アーム本体10Sは、横断面形状も所定の形状に屈曲されているが、その点については後述する。
ロアアーム10の屈曲箇所の外周縁には、サブフレーム20に取り付けられる第一取付部11が設けられている。第一取付部11は、アーム本体10Sの屈曲箇所に溶接された筒状のカラー11Cを有する。カラー11Cの内部には、第一弾性体11rが配置される。第一弾性体11rは、第一支持軸11aの外周に設けられたゴムブッシュが利用できる。このゴムブッシュは、カラー11Cと第一支持軸11aが同軸となるようにカラー11C内に挿入される。第一支持軸11aの両端部は、第一支持軸11aの軸方向が実質的に車長方向に沿った方向となるようサブフレーム20に支持される。この第一弾性体11rの弾性変形の中心を第一弾性体11rの中心C1とする。上述したカラー11Cに対するアーム本体10Sとの溶接箇所は、第一弾性体11rの中心よりも下方にずれている。
ロアアーム10の一端には、第一取付部11よりも車両の後方にてサブフレーム20に取り付けられる第二取付部12を備える。第二取付部12は、アーム本体10Sの一端に形成された貫通孔12hを有する。この貫通孔12hには、図3に二点鎖線で示すように、薄い環状部材12cが圧入されている。つまり、貫通孔12hと環状部材12cの軸方向は、アーム本体10Sの厚み方向に沿った方向である。この環状部材12c内には第二弾性体12rが配置される。第二弾性体12rも第一弾性体11rと同様に、第二支持軸12aの外周に設けられたゴムブッシュが利用できる。このゴムブッシュは、環状部材12cと第二支持軸12aが同軸となるように環状部材12c内に挿入される。第二支持軸12aの両端部は、第二支持軸12aの軸方向が実質的に車両の高さ方向に沿った方向となるようサブフレーム20に支持される。この第二弾性体12rの弾性変形の中心を第二弾性体12rの中心C2とする。第二取付部12を構成するアーム本体10Sの横片(後述する)は、第二弾性体12rの中心C2よりも上方に位置するように環状部材12cに対して固定される。さらに、第一弾性体11rの中心C1と第二弾性体12rの中心C2とをつなぐ結ぶ線分を第一軸線a1とする。第一軸線a1は、図3に示すように、アーム本体10Sの上面の近傍に概ね沿った線分であり、第一取付部11から第二取付部12に向かうに従って、僅かに上方に傾斜している。
ロアアーム10の他端には、ボールジョイント13Bを介して車輪に固定される第三取付部13を備える。第三取付部13は、第一軸線a1を揺動軸として揺動される揺動端部である。第三取付部13は、アーム本体10Sの他端に形成された貫通孔13hを有する。この貫通孔13hには、ボールジョイント13Bのボールを収納するソケットが支持される。このボールの中心をボールジョイントの中心C3とする。第一弾性体11rの中心C1とボールジョイント13Bの中心C3とを結ぶ線分を第二軸線a2とする。
アーム本体10Sは、第一取付部11と第二取付部12とをつなぐ車体側アーム10Bと、第一取付部11と第三取付部13とをつなぐ車輪側アーム10Wとを備える。アーム本体10Sの屈曲の内側の縁部は、車体側アーム10Bから車輪側アーム10Wにかけて概ね円弧状の曲線である。車体側アーム10Bの外側の縁部は、一旦第一取付部11から車幅方向の外側に窪み、途中から車幅方向の内側に向かって膨らむS字状の曲線である。車輪側アーム10Wの外側の縁部は、概ね車両前方に向かって膨らむ円弧状の曲線である。車体側アーム10Bは第一取付部11側から第二取付部12側に向かうに従って、幅が大きくなっている。第二取付部12側ほど車体側アーム10Bの幅を大きくすることで、第二取付部12側のねじりに対する剛性を高めることができる。車体側アーム10Bには幅方向の中央部に窪みが設けられており、その窪みの幅も第二取付部12側ほど広くなるように成形されている。車体側アーム10Bを平面視した際、窪みの輪郭は、第二取付部12側が閉じて、第一取付部11側が開いた形状になっている。一方、車輪側アーム10Wは第一取付部11側から第二取付部12側に至るまでほぼ同じ幅である。車輪側アーム10Wにも幅方向の中央部に窪みが設けられているが、その窪みの幅も、第一取付部11側から第二取付部12側に至るまでほぼ同じ幅である。車輪側アーム10Wを平面視した際、窪みの輪郭は、第一取付部11側が閉じて、第三取付部13側が開いた形状になっている。
この車体側アーム10Bと車輪側アーム10Wとのアーム角θ1、即ち、第一軸線a1と第二軸線a2の角度は90°超である。このアーム角θ1を鈍角とすることで、第二取付部12を第一取付部11よりも車幅方向の内側に容易に配置することができる。アーム角の上限は135°程度である。より好ましいアーム角θ1の上限は、120°以下、特に100°以下である。本例では、アーム角θ1を95°以上100°以下としている。
上記のロアアーム10は、車体への組付け状態の平面視において、第二弾性体12rの中心C2が第一弾性体11rの中心C1よりも車幅方向の内側に位置する。図4に示すように、第一弾性体11rの中心C1を通る車長方向の線を軸線bとするとき、軸線bに対して第一軸線a1は変位角θ2の角度をなす。この変位角θ2は、0°超3.0°以下、さらに0.5°以上2.0°以下、特に0.8°以上1.2°以下が好ましい。変位角θ2を設定することで、アンチダイブ特性を向上させることができる。
上記のロアアーム10は、車体への組付け状態の平面視において、ボールジョイントの中心C3が第一弾性体11rの中心C1よりも車長方向の前方に位置する。図4に示すように、第一弾性体11rの中心C1を通る車幅方向の線を軸線cとするとき、軸線cに対して第二軸線a2は変位角θ3の角度をなす。この変位角θ3は、2.0°以上6.0°以下、さらに3.0°以上5.5°以下、特に4.0°以上5.0°以下が好ましい。変位角θ3の上限値を満たすことで、第二取付部12の第一軸線a1に対するねじれを抑制し易い。
ロアアーム10を平面視した際、第一弾性体11rの中心C1と第二弾性体12rの中心C2とボールジョイント13Bの中心C3とを結ぶ平面に対して、アーム本体10Sの大部分は上記平面よりも上方に位置する。特に、車体側アーム10Bは、後述する第一横片111や縦片120の下部を除いた箇所が上記平面よりも上方に位置している。つまり、後述する第二横片113は上記平面よりも上方に位置している。これらの位置関係によっても、第二取付部12の第一軸線a1に対するねじれを抑制し易い。
一方、車体側アーム10Bは、その横断面形状が次の特定の条件を満たす形状である。その条件とは、車体側アーム10Bの第一取付部11側の横断面における第一せん断中心と第一軸線a1との距離をL1とし、車体側アーム10Bの第二取付部12側の横断面における第二せん断中心と第一軸線a1との距離をL2とするとき、L1>L2を満たすことである。換言すれば、車体側アーム10Bの横断面において、第一取付部11側よりも第二取付部12側の方が断面係数が大きいともいえる。この距離L1と距離L2との関係は、第二取付部12側ほど距離L2が小さくなるようにすることが好ましい。但し、車体側アーム10Bの途中において、第二取付部12側ほど距離L2が小さくならない箇所があっても構わない。
上記の実施形態に係るサスペンションアーム及び懸架装置は、以下の効果を奏することができる。
実施形態に係るロアアームと比較例に係るロアアームの応力解析モデルを設定して、静止時のロアアームと振動疲労状態のロアアームに生じる応力分布と形状の変位をシミュレーションソフトを用いて解析した。試験例1は、実施形態1に係るロアアームのモデルである。このモデルは、上記第一軸線と第二軸線の角度(アーム角θ1)が約96°であり、図3、4に示す横断面形状を有して、上記距離L1>距離L2を満たす。試験例2は、アーム角θ1は試験例1のモデルと同じであるが、各部の横断面形状及び実質的に上記距離L1=距離L2を満たす点が試験例1と異なる。材質や各取付部間の寸法などの基本構成は、試験例1と共通である。試験例3は、アーム角θ1が約89°であり、実質的に上記距離L1=距離L2を満たす点で試験例1と異なる。材質や各取付部間の寸法などの基本構成は、試験例1と共通である。
10S アーム本体
10B 車体側アーム
10W 車輪側アーム
10h1 貫通孔
10h2 水抜き孔
11 第一取付部
11C カラー
11r 第一弾性体
11a 第一支持軸
12 第二取付部
12h 貫通孔
12c 環状部材
12r 第二弾性体
12a 第二支持軸
13 第三取付部
13B ボールジョイント
13h 貫通孔
20 サブフレーム
30 ステアリングナックル
40 車輪
42 ホイール
50 タイロッド
60 ストラット
70 サスペンションタワー
110 横片
111 第一横片
112 傾斜片
113 第二横片
120 縦片
121 内フランジ
a1 第一軸線
a2 第二軸線
b、c 軸線
θ1 アーム角
θ2、θ3 変位角
C1 第一弾性体の中心
C2 第二弾性体の中心
C3 ボールジョイントの中心
Claims (2)
- 第一弾性体を介して車体に対して取り付けられる第一取付部と、
前記第一取付部よりも車長方向の後方にて第二弾性体を介して前記車体に取り付けられる第二取付部と、
前記第一取付部よりも車幅方向の外側にてボールジョイントを介して車輪に取り付けられる第三取付部と、
前記第一取付部と前記第二取付部とをつなぐ車体側アームと、
前記第一取付部と前記第三取付部とをつなぐ車輪側アームとを備え、
前記第一弾性体の中心と前記第二弾性体の中心とを結ぶ第一軸線と、前記第一弾性体の中心と前記ボールジョイントの中心とを結ぶ第二軸線との角度が90°超であり、
前記車体側アームの前記第一取付部側の横断面における第一せん断中心と前記第一軸線との距離をL1とし、前記車体側アームの前記第二取付部側の横断面における第二せん断中心と前記第一軸線との距離をL2とするとき、L1>L2を満たすサスペンションアーム。 - 請求項1に記載のサスペンションアームを備え、
前記第二弾性体の中心は前記第一弾性体の中心よりも車幅方向の内側にて車体に取り付けられている車両の懸架装置。
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