JP2020048828A - 吸収性物品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】肌当接シートの吸液性能に優れる吸収性物品を提供すること。【解決手段】吸収性物品が備える肌当接シートが、複数の繊維層11,12の積層構造を有し且つそれらが互いに融着して一体化している融着部13を有する、積層不織布10を含む。積層不織布10の第1面10a及び第2面10bそれぞれに、融着部13と非融着部14とが存在する。第1面10aの非融着部14は、第2面10bの非融着部14に比して親水度が低い。第1面10aにおいて、非融着部14は融着部13に比して親水度が低い。融着部13を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域15を、第1面10aに仮想的に設けた場合、第1面10aに、表面親水度が相対的に高い単位領域である高親水度領域15Aと、表面親水度が相対的に低い単位領域である低親水度領域15Bとが存在する。【選択図】図6

Description

本発明は、体液の吸収に使用される吸収性物品に関する。
使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、典型的には、着用者の肌と接触可能に配された表面シートと、該表面シートよりも着用者の肌から遠い側に配された裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを含んで構成され、股間部から排泄された尿、便、経血などの体液を吸収体で吸収保持するようになされている。斯かる構成の吸収性物品において、表面シートは、着用時に着用者の肌と接触し得るため、吸液性能や使用者が排泄後に感じるドライ感に優れることなどが要求される。また、吸収性物品の着用時には、吸収体に一旦吸収された液が着用時の体圧等の影響で表面シート側に移行する、いわゆる液戻りが発生する場合があるところ、表面シートには、液戻りにより吸収体側から移行してきた液が着用者の肌側に透過するのを抑制することも要求される。
また、吸収性物品には通常、表面シート以外にも、着用時に着用者の肌と接触可能に配された部材(以下、「肌当接シート」ともいう。)が存在するところ、表面シート以外の他の肌当接シートも、着用者の汗などの液体に晒される。例えば、肌当接シートとして、吸汗シートを含んで構成された吸収性物品がある。吸汗シートには、着用時に着用者の肌と接触し得ることから、着用者の汗を吸収し、着用者の肌を常時乾燥した状態に保つことが要求されるとともに、一度吸収した汗を着用者の肌へ再付着させないことが要求される。斯かる構成の吸収性物品において、吸汗シートは、吸収体と重なる位置に配置されている表面シートとは異なり、吸収体と重ならない位置(例えば腰周り)に配置されている場合があるため、着用者の肌に付着している汗を吸汗シート自体が素早く吸収し、且つ吸収した汗を素早く蒸発させる機能が要求される。このように、吸汗シートでは、吸収した液がいつまでも残らずに速やかに蒸発することが要求され、すなわち液残りの少なさが要求される。一方、吸汗シートは、その配置位置等に起因して、表面シートと比較して吸収すべき体液の量が少なく、吸汗シートに一旦吸収された体液は、着用者の肌側に液戻りする前に蒸発する場合が多いので、液戻りの問題については、表面シートほどは顕在化しない場合が多い。
特許文献1には、表面シートなどに好適な積層不織布として、熱圧着により長繊維どうしが接合したエンボス部を有し、且つ該エンボス部の親水度が非エンボス部の親水度よりも低いものが記載されている。特許文献1記載の積層不織布は、特定の繊維処理剤が塗布された長繊維のウエブに熱エンボス加工を施して前記エンボス部を形成することにより製造されるところ、該繊維処理剤は、それが付着した繊維の表面の親水度が熱処理によって低下するという性質を有するため、該エンボス部は、熱エンボス加工が施されていない非エンボス部に比して、親水度が低下する。
特許文献2には、腰周り部の肌対向面が、2枚の繊維シート間に弾性部材が配置された構成の吸汗シートで形成された吸収性物品が記載されている。前記吸汗シートの一実施形態においては、着用者の身体から相対的に近い側に位置する繊維シートの方が、遠い側に位置する繊維シートに比して親水度が低い(特許文献2の請求項4等参照)。また、特許文献2の[0051]には、吸汗シートを構成する2枚の繊維シートのうち、着用者の身体から相対的に遠い側に位置する繊維シートについて、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布やスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布を用いることができる旨記載されている。
特許文献3には、液透過性の表面シートと吸収体とを備えた吸収性物品において、該表面シートに、該表面シートの表面側から表面エンボスを付与するとともに、該吸収体における該表面エンボスと重ならない領域に、該吸収体の表面側からコアエンボスを付与することが記載されている。特許文献3の[0033]には、表面シートとして、スパンボンド法、メルトブローン法などによって得られた積層不織布を用いることができる旨記載されている。特許文献3によれば、直接肌に触れる表面エンボスとコアエンボスとを組み合わせて構成することで、コアエンボスによって体液の横漏れ防止の効果を維持しつつ、エンボスが直接肌に触れる不都合が低減され、装着感が向上するとされている。特許文献3には、表面シートとして用いられる積層不織布の各層の親水度については記載されていない。
特開2015−132038号公報 特開2016−112167号公報 特開2013−248309号公報
前述のとおり、吸収性物品には、表面シートや吸汗シートなど、複数種の肌当接シートが使われており、また、それら複数種の肌当接シートは、吸液性能に優れる点で共通するものの、例えば、表面シートでは液戻りの抑制機能、吸汗シートでは液残りの抑制機能というように、当該肌当接シートの配置位置等によって表面ドライ感を高めるための機能が互いに異なる場合がある。したがって、吸液性能及び表面ドライ感に優れた高性能の吸収性物品を得るためには、吸収性物品に含まれる肌当接シートの種類や要求機能等を見極め、肌当接シートの性能向上を個別に図ることが重要である。
従来の吸収性物品は、表面シートや吸汗シートの如き、肌当接シートの性能の点で改善の余地がある。したがって本発明の課題は、肌当接シートの吸液性能に優れる吸収性物品を提供することに関する。
本発明は、着用時に着用者の肌と接触可能に配された肌当接シートを備え、該肌当接シートが、複数の繊維層の積層構造を有し且つ該複数の繊維層が互いに融着して一体化している融着部を有する、積層不織布を含む吸収性物品であって、前記積層不織布の一方の表面である第1面及び他方の表面である第2面それぞれに、前記融着部と、前記複数の繊維層が互いに融着していない非融着部とが存在し、前記第1面の前記非融着部は、前記第2面の前記非融着部に比して親水度が低く、前記第1面において、前記非融着部は前記融着部に比して親水度が低く、前記融着部を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域を、前記第1面に仮想的に設けた場合、該第1面に、表面親水度が相対的に高い単位領域である高親水度領域と、表面親水度が相対的に低い単位領域である低親水度領域とが存在する吸収性物品である。
また本発明は、着用時に着用者の肌と接触可能に配された肌当接シートを備え、該肌当接シートが、複数の繊維層の積層構造を有し且つ該複数の繊維層が一体的に融着された融着部を有する、積層不織布を含む、吸収性物品の製造方法であって、前記積層不織布の製造工程と、該製造工程によって製造された積層不織布を用いて吸収性物品を製造する工程とを有し、前記積層不織布の製造工程は、複数の繊維ウエブを積層して積層体を得、圧縮加工により該積層体を部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して、該積層体の被圧縮部に前記融着部を形成する融着部形成工程を有し、前記融着部形成工程において、前記積層体の平面視における一部の領域と他の一部の領域とで、被圧縮部にかかる圧力、被圧縮部の面積、単位面積当たりの被圧縮部の数のうちの少なくとも1つが異なるように、該積層体に前記圧縮加工を施す、吸収性物品の製造方法である。
本発明によれば、肌当接シートの吸液性能に優れる吸収性物品が提供される。
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを模式的に示す斜視図である。 図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側(内面側)を模式的に示す展開平面図である。 図3は、図2のI−I線断面(横方向に沿う断面)を模式的に示す横断面図である。 図4は、図2のII−II線断面(縦方向に沿う断面)を模式的に示す断面図であり、図1に示すおむつの縦方向の一端部(背側部側の縦方向端部)を拡大して模式的に示す縦断面図である。 図5は、図1に示すおむつが具備する肌当接シートを構成する積層不織布の一実施形態の第1面側(肌対向面側)の模式的な斜視図である。 図6は、図5に示す積層不織布の第1面(肌対向面)の一部の模式的な平面図である。 図7は、図6のIII−III線断面(積層不織布の厚み方向に沿う断面)の模式的な断面図である。 図8は、本発明に係る積層不織布の第1面における高親水度領域及び低親水度領域それぞれの一実施形態の模式的な平面図である。 図9は、本発明に係る積層不織布の第1面における高親水度領域及び低親水度領域それぞれの他の実施形態の模式的な平面図である。 図10は、積層不織布の製造工程の実施に使用可能な製造装置の一実施形態の概略構成図である。 図11は、積層不織布の製造工程の実施に使用可能な製造装置の他の実施形態の概略構成図である。 図12(a)〜図12(c)は、それぞれ、図10及び図11に示す製造装置が具備する圧縮手段の要部の断面図であり、該圧縮手段における凸部及びその周辺部の、該凸部の高さ方向に沿う断面を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の吸収性物品についてその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1〜図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1が示されている。おむつ1は、図1及び図2に示すように、着用者の前後方向、即ち腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、着用時に着用者の腹側に配される腹側部F及び背側に配される背側部Rと、腹側部Fと背側部Rとの間に位置する股下部Mとを備える。腹側部Fは、股下部Mよりも縦方向Xの前側、背側部Rは、股下部Mよりも縦方向Xの後側に位置し、それぞれ、おむつ1の着用時に着用者の胴周り(腰周り)に配される。股下部Mは、おむつ1の着用時に着用者の股間部に配され、着用者のペニスなどの排泄部に対向する排泄部対向部(図示せず)を含む。
おむつ1は、液保持性の吸収体23(吸収性コア24)を含む吸収性本体2を横方向Yの中央部に備えると共に、該吸収性本体2の非肌対向面側即ち該吸収性本体2よりも着用者の身体から遠い側に配された外装体3を備え、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおける外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部どうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されて、図1に示すように、一対のサイドシール部S,S、並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば後述する吸汗シート4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
吸収性本体2は、図2に示す如きおむつ1の展開且つ伸長状態において、平面視長方形形状をなし、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在しており、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置され、接着剤により外装体3に接合されている。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
吸収性本体2は、図3に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート21、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート22、及び両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。表面シート21及び裏面シート22としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート22としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
吸収体23は、吸収性材料を主体とする液保持性の吸収性コア24と、該吸収性コア24の外面即ち肌対向面及び非肌対向面を被覆するコアラップシート25とを含んで構成されている。吸収性コア24とコアラップシート25との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていてもよい。吸収性コア24は、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い長方形形状をなし、少なくとも股下部Mに配され、縦方向Xに延在している。本実施形態においては、吸収性コア24は、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在している。吸収性コア24の主体をなす吸収性材料としては、この種の吸収性物品において吸収体の材料として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、親水化処理された合成繊維、吸水性ポリマー等が挙げられる。吸収性コア24の典型的な形態として、木材パルプ等の親水性繊維の繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたものを例示できる。コアラップシート25としては、例えば、紙、各種不織布、開孔フィルム等の液透過性シートを用いることができる。
図2及び図3に示すように、吸収性本体2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、液抵抗性又は撥水性で且つ通気性の防漏カフ形成用シート27から構成された一対の防漏カフ26,26が設けられている。各防漏カフ26の自由端部の近傍には糸状の防漏カフ形成用弾性部材28が1本以上縦方向Xに伸長状態で配されている。防漏カフ26は、伸長状態で配された弾性部材28がおむつ1の着用時に収縮することによって少なくとも股下部Mで起立し、それによって尿等の排泄液の横方向Yの外方への流出を阻止する。
外装体3は、図2に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1の外形を形作っており、外装体3の周縁は、その状態のおむつ1の輪郭線、即ち腹側部F、股下部M及び背側部Rそれぞれの輪郭線を形成している。外装体3は、図2に示すように、腹側部F及び背側部Rにおいては、縦方向Xよりも横方向Yの長さが長い長方形形状をなし、腹側部Fと背側部Rとの間に位置する股下部Mにおいては、外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部即ち一対のレッグ縁部LS,LSが横方向Yの中央に向かって凸の円弧状に湾曲しており、図2に示す如き平面視において、縦方向Xの中央域が横方向Yの内方に向けて括れた砂時計状をなしている。
外装体3は、図3及び図4に示すように、着用状態においておむつ1の外面即ち非肌対向面を形成する外層シート31と、外層シート31の肌対向面に対向配置された内層シート32との積層体を含んで構成されている。おむつ1の着用状態において、外層シート31は着用者の身体から遠い側に位置して、おむつ1の非肌対向面(外面)を形成し、内層シート32は着用者の身体に近い側に位置して、おむつ1の肌対向面(内面)を形成する。外層シート31と内層シート32とは、所定の部位において接着剤等の接合手段を介して互いに接合されている。
本実施形態においては、外層シート31は、図2及び図4に示すように、腹側部F及び背側部Rに、内層シート32の縦方向端から延出し、内層シート32の肌対向面側に折り返される折り返し部31Eを有し、該折り返し部31Eは、吸収性本体2の縦方向Xの端部を被覆している。なお、図4では背側部Rの縦方向端部を拡大して示し、腹側部Fの拡大図は示していないが、腹側部Fも背側部Rと同様に構成されており、特に断らない限り、腹側部Fについては背側部Rについての説明が適宜適用される。
外装体3を構成するシート31,32は、互いに同種のシートでもよく、あるいは異種のシートでもよく、後者の例として、伸縮性が互いに異なる形態が挙げられる。具体的には例えば、外層シート31としては、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートを用い、内層シート32としては、伸縮性を有していない非伸縮シートを用いることができる。また例えば、外層シート31の伸縮性が部分的に異なっていてもよく、具体的には、外層シート31における腹側部F及び背側部Rに位置する部分が、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートからなり、外層シート31における股下部Mに位置する部分が、伸縮性を有していない非伸縮シートからなる形態が挙げられる。外装体3として使用可能な伸縮シートとしては、例えば、弾性繊維層の両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮シートが挙げられ、弾性繊維層と伸長可能な繊維層との一体化の方法としては、例えば、両者を積層して水流交絡する方法、エアスルー等により繊維を交絡させる方法、ヒートエンボス、接着剤、超音波等によって接合させる方法が挙げられる。また、外装体3として使用可能な非伸縮シートとしては、例えば、各種製法による不織布が挙げられ、具体的にはスパンボンド不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。
図1、図2及び図4に示すように、腹側部F及び背側部Rそれぞれには、糸状又は帯状の胴周り弾性部材33が横方向Yに伸長状態で複数本配され、それら複数本の胴周り弾性部材33は縦方向Xに所定間隔を置いて間欠配置されている。このように、胴周り弾性部材33がその弾性伸縮性が発現される状態で配されていることにより、ウエスト開口部WHの開口縁部には、その全周にわたって実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。また、一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部を形成するレッグ縁部LSには、糸状又は帯状の1本又は複数本のレッグギャザー形成用のレッグ弾性部材34が伸長状態で配されており、これによって一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部には、その全周にわたって実質的に連続した環状のレッグギャザーが形成される。これらの弾性部材33,34は、何れも外装体3を構成する外層シート31と内層シート32との間に接着剤等の接合手段により挟持固定されている。
おむつ1は、腹側部F及び背側部Rの少なくとも一方に、吸収性コア24の縦方向端24aよりも縦方向Xの外方に配されたウエストフラップWFを有している。本実施形態においては、図1及び図2に示すように、腹側部F及び背側部Rの双方にウエストフラップWFが配されている。ウエストフラップWFは、おむつ1において、吸収性コア24の縦方向端24aを通って横方向Yに平行に延びる仮想直線VLよりも縦方向Xの外方に位置する部分であり、おむつ1の縦方向Xの端部で且つ吸収性コア24(吸収性材料)が配されていない部分である。ウエストフラップWFは、おむつ1の着用時に着用者の腰周りに対応する。
ウエストフラップWFは、図4に示すように、外装体3(外層シート31、内層シート32)を主体として構成されている。ウエストフラップWFは、外層シート31の折り返し部31Eを有しているところ、この折り返し部31Eは、ウエストフラップWFの外装体3において、おむつ1の着用者の肌から最も近い部材である。折り返し部31Eは、図2に示すように、平面視において一方向に長い形状、具体的には長方形形状をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、腹側部F及び背側部Rそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されている。
腹側部FのウエストフラップWF及び背側部RのウエストフラップWFの少なくとも一方、好ましくは後者、より好ましくは双方には、吸汗機能が付与されている。より具体的には、図1、図2及び図4に示すように、ウエストフラップWFの肌対向面側の少なくとも一部が、吸汗機能を有する吸汗シート4から形成されている。吸汗シート4は、図2に示す如き平面視において一方向に長い形状、具体的には長方形形状をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、ウエストフラップWFの横方向Yの全長にわたって配されている。図示した例では、折り返し部31Eにおける外層シート31の肌対向面側であり、着用者の肌から最も近い面に、外層シート31とは別体の吸汗シート4が貼り合わされており、外層シート31(折り返し部31E)自体は吸汗機能を有していない。しかし、本発明の吸収性物品においては、折り返し部31Eにおける外層シート31自体が吸汗シート4から構成されていてもよい。
本実施形態においては、吸汗シート4は、ウエストフラップWFにおける外層シート31の折り返し部31Eの肌対向面に、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって接合されている。したがって、ウエストフラップWFは、おむつ1の着用者の肌から近い順に、吸汗シート4、折り返し部31E、内層シート32、外層シート31を有している。また、ウエストフラップWFは、外層シート31と内層シート32との間に横方向Yに伸長状態で固定された胴周り弾性部材33を有していることに起因して、横方向Yに伸縮性を有している。
なお、本実施形態において、吸汗シート4が固定されている外層シート31の折り返し部31Eは、少なくとも表面が疎水性であり、典型的には、疎水性繊維を含む不織布からなり疎水性である。折り返し部31Eを構成する不織布としては、この種の吸収性物品の構成部材として使用可能な各種製法による不織布を特に制限なく用いることができ、短繊維を主体とする不織布(短繊維不織布)でもよく、あるいは長繊維を主体とする不織布(長繊維不織布)でもよい。折り返し部31Eは、例えば、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布などの短繊維不織布でもよく、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの長繊維不織布でもよい。
おむつ1は、着用時に着用者の肌と接触可能に配された肌当接シートを備えている。前記肌当接シートは、おむつ1の肌対向面(内面)を形成するシートであり、図2に示す如きおむつ1の肌対向面側(内面側)の展開且つ伸長状態における平面視において、目視で視認可能なシートである。本実施形態において、前記肌当接シートは、吸汗シート4、表面シート21、防漏カフ形成用シート27、内層シート32である。
本発明の吸収性物品においては、前記肌当接シートが積層不織布を含んで構成されているところ、該積層不織布は、複数の繊維層の積層構造を有し且つ該複数の繊維層が互いに融着して一体化している融着部を有する。吸収性物品が前記肌当接シートを複数備える場合は、その複数の肌当接シートのうちの少なくとも1枚が前記積層不織布であればよく、吸収性物品が具備する複数の肌当接シートの全部が前記積層不織布であってもよい。また、前記肌当接シートは、前記積層不織布のみを含んで構成されていてもよく、更に他のシートを含んで構成されていてもよい。後者の場合、前記積層不織布の非肌対向面側に他のシートが配されている、すなわち前記積層不織布が当該肌当接シートの肌対向面を形成することが好ましい。
図5〜図7には、前記積層不織布の一実施形態である積層不織布10が示されている。おむつ1において、前記肌当接シートは吸汗シート4、表面シート21、防漏カフ形成用シート27及び内層シート32であるので、これらのシートのうちの少なくとも1枚が積層不織布10を含んで構成される。積層不織布10は、複数の繊維層11,12の積層構造を有し、一方の表面である第1面10aと他方の表面である第2面10bとを有する。本実施形態においては、積層不織布10は、繊維層11,12の二層構造であり、第1面10aは繊維層11から形成され、第2面10bは繊維層12から形成されている。図中、符号11Fは繊維層11の構成繊維、符号12Fは繊維層12の構成繊維を示す。複数の繊維層11,12は、融着部13にて一体的に融着されている。融着部13は、積層不織布10が有する積層構造を構成する複数の繊維層11,12が互いに融着して一体化している部分であり、図7に示すように、積層不織布10の第1面10aと第2面10bとにわたって積層不織布10の厚み方向Zに連続している。融着部13は、後述するように、複数の繊維層11,12の前駆体である繊維ウエブの積層体に、構成繊維(熱可塑性繊維)の溶融を促進させる溶融促進手段(例えば熱、超音波)を伴う圧縮加工を施し、該積層体を部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱することによって形成される。
積層不織布10の第1面10a及び第2面10bには、それぞれ図5〜図7に示すように、融着部13と非融着部14とが存在している。非融着部14は、積層不織布10が有する積層構造を構成する複数の繊維層11,12が互いに融着していない部分であり、第1面10a及び第2面10bそれぞれにおいて、融着部13以外の部分は非融着部14である。
本実施形態においては、図5及び図6に示すように、第1面10aにおいて複数の融着部13が間欠配置され、より具体的には、平面視円形状の複数の融着部13が千鳥状に配置されており、各融着部13は非融着部14に包囲されている。融着部13のパターン(平面視形状及び配置)は図示の形態に限定されない。例えば融着部13の平面視形状は、楕円形状、三角形形状、四角形形状以上の多角形形状、不定形状、線状、曲線状などであってもよい。また例えば、複数の連続直線状の融着部13が互いに交差するように配された格子状のパターンでもよい。なお、融着部13は、図7に示すように、積層不織布10の厚み方向Zに連続しているから、融着部13のパターンは通常、第1面10aと第2面10bとで実質的に同じである。したがって本実施形態においては、第2面10bにおいても、第1面10aと同様に、複数の融着部13が千鳥状に配置され、各融着部13は非融着部14に包囲されている。
積層不織布10においては、第1面10aの非融着部14は、第2面10bの非融着部14に比して親水度が低い。非融着部14は、積層不織布10における圧縮加工が施されていない未加工部分であり、積層不織布10を構成する複数の繊維層11,12が本来的に有する親水度が実質的に維持されている部分である。本発明では、親水度の指標として、「構成繊維の水との接触角」を採用しており、該接触角が小さいほど、当該構成繊維を含む積層不織布の面は親水度が高く(疎水度が低く)、また、該接触角が大きいほど、当該構成繊維を含む積層不織布の面は親水度が低い(疎水度が高い)と評価される。したがって、積層不織布10において前記のとおり、「第1面10aの非融着部14の親水度<第2面10bの非融着部14の親水度」という大小関係が成立するということは、「第1面10aの非融着部14の接触角>第2面10bの非融着部14の接触角」という大小関係が成立するということである。そして、本実施形態においては、第1面10aは繊維層11から形成され、第2面10bは繊維層12から形成されているので、「繊維層11(構成繊維11F)の親水度<繊維層12(構成繊維12F)の親水度」という大小関係が成立している。親水度は下記方法により測定される。
<親水度の測定方法>
測定対象である繊維層の表面(第1面10a、第2面10b)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。繊維を取り出す際はハサミとピンセットを用い、また、測定対象たる積層不織布における繊維の取り出し部位は、第1面10aの非融着部14、第2面10bの非融着部14それぞれの最表面(最外面)とする。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を15ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。斯かる接触角の値が小さいほど、親水性が高いことを意味する。
なお、吸収性物品から測定対象を含む構成部材(例えば肌当接シート)を採取する場合に、その採取目的物たる構成部材が接着剤、融着などの接合手段を介して他の構成部材に接合されている場合には、その接合手段による接合力を低下させてから採取目的物を採取する必要がある。その場合の接合力の低下方法としては、市販のコールドスプレーなどの冷却手段を用いて、接着剤などの接合手段を冷却する方法が挙げられる。接合手段を冷却して接合力を低下させた後に、採取目的物たる構成部材を他の構成部材から丁寧に剥がして採取する。斯かる吸収性物品からの測定対象の採取方法は、前述した接触角の測定をはじめ、各種の測定に適用され得る。接合手段の接合力の低下方法としては、前述した「接合手段の冷却」以外に、例えば、溶剤の塗布、ドライヤーによる熱風吹き付けなどの方法があるが、これらの方法は、接合手段を介して接合されている構成部材に親水化剤が付与されている場合に、該親水化剤の変質や消失を招くおそれがあるので、特に構成部材に親水化剤が付与されている場合には、親水化剤への影響を最小限に抑える観点から採用しないことが望ましい。
前記肌当接シート(例えば吸汗シート4)の肌対向面は、積層不織布10の第1面10aであってもよく、第2面10bであってもよいが、吸液後のドライ感の向上の観点から、相対的に非融着部14の親水度が低い、すなわち親水度が本来的に低い第1面10aを前記肌当接シートの肌対向面とすることが好ましい。
積層不織布10の第1面10aにおいて、非融着部14は融着部13に比して親水度が低い。すなわち、第1面10aにおいては、前記方法により測定される接触角について、「非融着部14の接触角>融着部13の接触角」という大小関係が成立する。
融着部13は、前述したとおり、積層不織布10が有する積層構造を構成する複数の繊維層11,12が互いに融着して一体化している部分であるところ、本発明者の知見によれば、融着部13の親水度(構成繊維の接触角)は、該融着部13にて一体化している複数の繊維層11,12それぞれの親水度(構成繊維11F,12Fの接触角)の平均値又はそれに近いものとなる。融着部13は構成繊維11F,12Fの繊維が互いに溶融した部分であり、Cassie-Baxterの式でいう不均一表面と考えることができる。不均一表面では各成分の中間的な濡れ性を示すことから(cosθ=f1cosθ1+f2cosθ2(f1+f2=1))、この考えに当てはめると融着部13の親水度は複数の繊維層11,12それぞれの繊維層の平均値又はそれに近いものとなる。そして、本実施形態においては前述したとおり、「繊維層11(構成繊維11F)の親水度<繊維層12(構成繊維12F)の親水度」という大小関係が成立するから、繊維層11からなる第1面10aにおいて、融着部13を形成するための熱エンボス加工等の圧縮加工が施されていない非融着部14では、繊維層11(構成繊維11F)が本来有する親水度が維持される。一方、融着部13では、相対的に親水度が低い繊維層11(構成繊維11F)と相対的に親水度が高い繊維層12(構成繊維12F)とが圧縮加工に伴う熱によって溶融されているため、圧縮加工前に比して親水度が向上する(前記方法により測定される接触角が減少する)。したがって、積層不織布10の第1面10aにおいては前記のとおり、「非融着部14の接触角>融着部13の接触角」という大小関係が成立する。
また、積層不織布10の第1面10aには、このように、親水度が互いに異なる融着部13と非融着部14とが存在することで親水度差が生じていることに加えて更に、第1面10aを融着部13よりも面積の大きな所定の領域単位でみた場合にその領域どうしにも親水度差が生じている。すなわち、図6に示すように、融着部13を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域15を、第1面10aに仮想的に設けた場合、第1面10aに、表面親水度が相対的に高い単位領域である高親水度領域15Aと、表面親水度が相対的に低い単位領域である低親水度領域15Bとが存在する。ここでいう「表面親水度」は、前記「親水度」とは異なり、「繊維の集合体である繊維層(不織布)の水との接触角」を指標とするもので、該接触角が小さいほど表面親水度が高く(表面疎水度が低く)、該接触角が大きいほど表面親水度が低い(表面疎水度が高い)と評価される。但し、表面親水度は、親水度よりも面積の大きい領域を対象とする関係上、親水度とは測定方法が異なる。表面親水度は下記方法により測定される。
<表面親水度の測定方法>
測定対象の繊維層(不織布)から、融着部13を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域15を切り出して測定サンプルとする。測定対象の繊維層(不織布)がおむつ等の吸収性物品に配されている場合は、おむつ等の吸収性物品にコールドスプレーを噴霧して、接着剤を固化させて測定対象の繊維層(不織布)を取り除き、取り除いた繊維層(不織布)から、融着部13を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域15を切り出して測定サンプルとする。測定サンプルには、当該繊維層の製造時の流れ方向(MD方向)と直交する方向(CD方向)と平行な端面が含まれるようにし、当該繊維層が吸収性物品に配されていたものである場合は、吸収性物品の横方向と平行な端面が含まれるようにする。測定サンプルにおける接触角の被測定面に、脱イオン水の液滴を付着させ、該液滴を録画して、その録画した画像に基づき接触角を測定する。より具体的には、測定装置として株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX−1000を用い、これに中倍率ズームレンズを90°に倒した状態で取り付ける。測定サンプルを、被測定面が上向きの状態となり且つ測定サンプルのCD方向から観察できるように、測定装置の測定ステージにセットする。そして、測定ステージにセットされた測定サンプルの被測定面に脱イオン水3μLの液滴を付着させ、その液滴の画像を録画して測定装置に取り込む。録画された複数の画像のうち、液滴におけるCD方向又は吸収性物品横方向の両端又は片端が鮮明な画像を10枚選択し、その10枚の画像それぞれについて液滴の接触角を小数点以下1桁まで計測し、それらの測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の集合体である繊維層(不織布)と水との接触角、すなわち、「表面親水度」と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。斯かる接触角の値が小さいほど、親水性が高いことを意味する。
前述した構成の積層不織布10は、吸液性能に優れ、液残りを効果的に抑制し得る。すなわち、積層不織布10においては、「第1面10aの非融着部14の親水度<第2面10bの非融着部14の親水度」なる大小関係が成立していて、第1面10a側は第2面10b側に比して本来的な親水度(融着部13を形成するための圧縮加工前の親水度)が低い。そのため、この相対的に親水度が低い第1面10aを、吸汗シート4や表面シート21などの肌当接シートの肌対向面とした場合、該肌当接シートには、肌対向面側(第1面10a側)から非肌対向面側(第2面10b側)に向かって親水度が向上する親水勾配が付与される。斯かる親水勾配を有する肌当接シートは、第1面10a側から第2面10b側への液の引き込み性に優れ、第1面10aに存在する尿、汗などの体液を内部に速やかに引き込むため、第1面10aに液残りを生じる不都合が効果的に抑制される。
また、積層不織布10の第1面10aは、第2面10bよりも本来的に親水度が低く、典型的には、第1面10aの非融着部14は本来的に疎水性(前記方法により測定される接触角が90度以上)であるため、第1面10aを前記肌当接シートの肌対向面とした場合には、該肌対向面が親水性(前記方法により測定される接触角が90度未満)である場合と比較して、吸液後のドライ感が向上し、そのため、体液の吸収後に肌がドライに保たれやすく、べたつきによる不快感や、湿疹、あせも、かぶれなどの肌トラブルが効果的に低減される。第1面10aには、本来的な疎水性が維持された非融着部14の他に、該非融着部14よりも疎水度が低下し親水度が向上した融着部13が存在しているので、前記肌当接シートの肌対向面を形成する積層不織布10の第1面10aが本来的に疎水性であっても、体液のような水性液が付着しやすく吸液性能の向上が実現できる。すなわち、第1面10aにおいては、融着部13とその周辺部の非融着部14とに親水度差が生じているため、着用者の肌に付着している体液は融着部13及びその周囲に優先的に付着し、融着部13の周縁部及びその近傍を介して、第2面10b側に吸収される。
また、積層不織布10の第1面10aは、相対的に親水度が高い融着部13と、相対的に親水度が低く典型的には疎水性である非融着部14とが存在しているため、第1面10aを前記肌当接シートの肌対向面とした場合において、仮に、おむつ1の着用時に液戻りが生じ、第2面10b側から第1面10a側に向かって液が移行した場合、少なくとも非融着部14では液の移行が阻害されるので、液戻りが抑制される。斯かる液戻りの抑制効果は、吸収体4と重なる位置に配された肌当接シートである表面シート21において特に顕著であり、表面シート21が一旦吸収した尿が着用者の肌側に逆戻りする不都合が効果的に抑制される。
特に、積層不織布10の第1面10aには、融着部13と非融着部14という、比較的面積の小さい領域どうしの親水度差(ミクロな親水度差)に加えて更に、10mm四方の平面視正方形形状の高親水度領域15Aと低親水度領域15Bという、比較的面積の大きい領域どうしの親水度差(マクロな親水度差)が存在し、第1面10a全体として親水度が明確に不均一となっているため、第1面10aを前記肌当接シートの肌対向面とした場合に奏される、前述した液残り及び液戻りの抑制効果並びに吸液後のドライ感といった効果は、従来技術では奏されない格別顕著な効果である。
このように、本発明の吸収性物品においては、肌当接シートとしての表面シートは液戻りを起こし難く、また、肌当接シートとしての吸汗シートは、汗を素早く吸収して着用者の肌から遠ざけるように拡散させ、且つ吸収した汗を素早く蒸発させることができる。したがって本発明の吸収性物品によれば、発汗後の汗疹など、ムレや濡れに起因する肌トラブルが効果的に防止され得る。なお、表面シートとしての吸液性能は液戻り量として、吸汗シートとしての吸液性能は液残り量として、それぞれ評価することができ。
前述した作用効果をより確実に発現させる観点から、積層不織布10の各部の親水度及び表面親水度の指標となる接触角は下記の特定範囲にあることが好ましい。
第1面10aの非融着部14の接触角は、第2面10bの非融着部14の接触角よりも大きい、すなわち「第1面10aの非融着部14の親水度<第2面10bの非融着部14の親水度」であることを前提として、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上、そして、好ましくは140度以下、より好ましくは135度以下である。
第2面10bの非融着部14の接触角は、第1面10aの非融着部14の接触角よりも小さい、すなわち「第2面10bの非融着部14の親水度>第1面10aの非融着部14の親水度」であることを前提として、好ましくは30度以上、より好ましくは40度以上、そして、好ましくは80度以下、より好ましくは70度以下である。
第1面10aの非融着部14の接触角と第2面10bの非融着部14の接触角との差は、前者>後者を前提として、前者−後者として、好ましくは3度以上、より好ましくは5度以上、そして、好ましくは70度以下、より好ましくは65度以下である。
第1面10aの融着部13の接触角は、第1面10aの非融着部14の接触角よりも小さい、すなわち「第1面10aの融着部13の親水度>第1面10aの非融着部14の親水度」であることを前提として、好ましくは55度以上、より好ましくは60度以上、そして、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下である。
第1面10aの非融着部14の接触角と第1面10aの融着部13の接触角との差は、前者>後者を前提として、前者−後者として、好ましくは3度以上、より好ましくは5度以上、そして、好ましくは45度以下、より好ましくは40度以下である。
高親水度領域15Aの前記方法により測定される接触角は、低親水度領域15Bのそれよりも小さい、すなわち「高親水度領域15Aの表面親水度>低親水度領域15Bの表面親水度」であることを前提として、好ましくは75度以上、より好ましくは80度以上、そして、好ましくは105度以下、より好ましくは100度以下である。
低親水度領域15Bの前記方法により測定される接触角は、高親水度領域15Aのそれよりも大きい、すなわち「低親水度領域15Bの表面親水度<高親水度領域15Aの表面親水度」であることを前提として、好ましくは65度以上、より好ましくは70度以上、そして、好ましくは115度以下、より好ましくは110度以下である。
低親水度領域15Bの接触角と高親水度領域15Aの接触角との差は、前者>後者を前提として、前者−後者として、好ましくは3度以上、より好ましくは5度以上、そして、好ましくは30度以下、より好ましくは25度以下である。
高親水度領域15A及び低親水度領域15Bは、何れも融着部13を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域15であることから、単位領域15の表面親水度に影響を及ぼす要素としては、融着部13自体の親水度のみならず、融着部13の面積、融着部13の密度(融着部13の単位面積当たりの数)などが挙げられる。つまり、積層不織布10の第1面10aにおける一の単位領域15と他の一の単位領域15とで、単位領域15の表面親水度に影響を及ぼすこれらの要素(1個の融着部13の親水度、1個の融着部13の面積、融着部13の数)の1つ以上を異ならせることで、第1面10aに高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとを存在させ、前記のマクロな親水度差を付与することが可能となる。
例えば、高親水度領域15Aに含まれる1個の融着部13の親水度が、低親水度領域15Bに含まれる1個の融着部13の親水度に比して高く、斯かる融着部13どうしの親水度の差(ミクロな親水度差)が、「高親水度領域15Aの表面親水度>低親水度領域15Bの表面親水度」というマクロな親水度差の発現に寄与している場合があり得る。なお、斯かる場合において、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとにおける融着部13どうしの親水度の差は、面積が同じ融着部13どうしの対比に基づくものであり、「融着部13の単位面積当たりの親水度の差」と言うこともできる。
融着部13の親水度は、融着部13にて一体的に融着されている複数の繊維層11,12の融着強度によって制御することが可能である。本発明者の知見によれば、融着部13を形成するための熱エンボス加工等の圧縮加工時の圧縮強度を強くすると、融着部13の親水度が向上(接触角が減少)し、該圧縮強度を弱くすると、融着部13の親水度が低下(接触角が増加)する傾向がある。これは、被加工物である複数の繊維層11,12どうしに本来的に親水度差が存在することを前提として、圧縮加工時の圧縮強度が強いと、その被圧縮部で複数の繊維層11,12の構成繊維11F,12Fが十分に溶融し、その結果、相対的に親水度が低い繊維層11からなる第1面10aにおいては、該被圧縮部である融着部13の親水度が、圧縮加工が施されておらず本来の親水度が維持されている非融着部14に比して向上することによるものと推察される。圧縮加工時の圧縮強度が弱いと、被圧縮部における構成繊維11F,12Fの溶融が不十分となるため、被圧縮部である融着部13の第1面10a側は、圧縮加工の前後で親水度がほとんど変化せず、結果として、第1面10aにおいて融着部13と非融着部14とで親水度がほぼ同等となる。
高親水度領域15Aに含まれる融着部13の前記<親水度の測定方法>により測定される接触角は、低親水度領域15Bに含まれる融着部13のそれよりも小さい、すなわち「高親水度領域15A中の融着部13の親水度>低親水度領域15B中の融着部13の親水度」であることを前提として、好ましくは55度以上、より好ましくは60度以上、そして、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下である。
低親水度領域15Bに含まれる融着部13の前記<親水度の測定方法>により測定される接触角は、高親水度領域15Aに含まれる融着部13のそれよりも大きい、すなわち「低親水度領域15B中の融着部13の親水度<高親水度領域15A中の融着部13の親水度」であることを前提として、好ましくは55度以上、より好ましくは60度以上、そして、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下である。
なお、高親水度領域15Aに含まれる融着部13と低親水度領域15Bに含まれる融着部13とで親水度(接触角)が等しい場合があり、その場合は、領域15Aと領域15Bとで融着部13の密度(融着部13の単位面積当たりの数)が異なり、融着部13の密度は、前者>後者である。
また例えば、図8に示すように、高親水度領域15Aに含まれる1個の融着部13の面積が、低親水度領域15Bに含まれる1個の融着部13の面積に比して大きく、斯かる融着部13どうしの面積の差が、「高親水度領域15Aの表面親水度>低親水度領域15Bの表面親水度」というマクロな親水度差の発現に寄与している場合があり得る。つまり、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとで、融着部13の数及び各融着部13の親水度(融着部13形成時の圧縮強度)が同じ場合でも、各融着部13の面積が異なれば、両領域15A,15Bにマクロな親水度差が発現し得る。
高親水度領域15Aに含まれる1個の融着部13の面積は、低親水度領域15Bに含まれる融着部13のそれよりも大きいことを前提として、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上、そして、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.4mm以下である。
低親水度領域15Bに含まれる1個の融着部13の面積は、高親水度領域15Aに含まれる融着部13のそれよりも小さいことを前提として、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは1.3mm以下、より好ましくは1.2mm以下である。
また例えば、図9に示すように、高親水度領域15Aに含まれる融着部13の数が、低親水度領域15Bに含まれる融着部13の数に比して多く)、斯かる単位面積(10mm×10mm)当たりの融着部13の数の差が、「高親水度領域15Aの表面親水度>低親水度領域15Bの表面親水度」というマクロな親水度差の発現に寄与している場合があり得る。図9では、高親水度領域15Aに含まれる融着部13の数は9個、低親水度領域15Bに含まれる融着部13の数は4個である。つまり、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとで、1個の融着部13の親水度(融着部13形成時の圧縮強度)及び面積が同じ場合でも、融着部13の単位面積当たりの数が異なれば、両領域15A,15Bにマクロな親水度差が発現し得る。
高親水度領域15Aに含まれる融着部13の数は、低親水度領域15Bに含まれる融着部13の数よりも多いことを前提として、好ましくは4個以上、より好ましくは6個以上、そして、好ましくは50個以下、より好ましくは40個以下である。
低親水度領域15Bに含まれる融着部13の数は、高親水度領域15Aに含まれる融着部13の数よりも少ないことを前提として、好ましくは4個以上、より好ましくは6個以上、そして、好ましくは50個以下、より好ましくは40個以下である。
なお、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとで融着部13の数が等しい場合があり、その場合は、領域15Aと領域15Bとで融着部13の親水度(接触角)や面積が異なり、例えば融着部13の親水度については、領域15A>領域15B(接触角については、領域15A<領域15B)である。
積層不織布10の第1面10aにおいて、高親水度領域15A及び低親水度領域15Bの分布パターンは特に限定されず、積層不織布10が適用される前記肌当接シートの種類や用途等に応じて適宜設定することができる。
例えば、前記肌当接シートである表面シート21が積層不織布10を含んで構成され、且つ表面シート21の肌対向面が積層不織布10の第1面10aからなり、表面シート21の肌対向面(第1面10a)において、高親水度領域15Aが縦方向Xに延在し、該高親水度領域15Aの横方向Yの両側に、該高親水度領域15Aに沿って低親水度領域15Bが縦方向Xに延在する形態があり得る。斯かる形態の具体例として、高親水度領域15Aが表面シート21の横方向Yの中央部に位置し、低親水度領域15Bが表面シート21の横方向Yの両側部に位置する形態が挙げられる。斯かる形態によれば、表面シート21の肌対向面の横方向Yの両端部が低親水度領域15Bであるため、横漏れが効果的に防止され得る。なお、おむつ1においては、図2及び図3に示すように、防漏カフ26が、表面シート21の肌対向面の横方向Yの端部を覆うように配されているところ、該端部に配される低親水度領域15Bの横方向Yの長さ(幅)を、表面シート21の肌対向面における防漏カフ26によって被覆される部分の同方向の長さ(幅)よりも長くすることで、低親水度領域15Bと防漏カフ26とが相俟って横漏れがより一層効果的に防止され得る。
また例えば、前記肌当接シートである表面シート21が積層不織布10を含んで構成され、且つ表面シート21の肌対向面が積層不織布10の第1面10aからなり、表面シート21の肌対向面(第1面10a)において、高親水度領域15Aが前記排泄部対向部に存在し、該高親水度領域15Aを包囲するように低親水度領域15Bが存在する形態があり得る。斯かる形態によれば、尿等の体液が最初に排泄される前記排泄部対向部に高親水度領域15Aが位置することで、排泄された体液を、高親水度領域15Aを介して積層不織布10の厚み方向内部に速やかに移行させつつ、該高親水度領域15Aを包囲する低親水度領域15Bの存在により、横漏れのみならず、縦方向Xの前後端部からの漏れも効果的に防止され得る。
また例えば、前記肌当接シートである吸汗シート4が積層不織布10を含んで構成され、且つ吸汗シート4の肌対向面が積層不織布10の第1面10aからなり、吸汗シート4の肌対向面(第1面10a)において、低親水度領域15Bが高親水度領域15Aよりも縦方向Xの外方に存在する形態があり得る。斯かる形態の具体例として、低親水度領域15Bが吸汗シート4の縦方向Xの端部において横方向Yに延在し、該低親水度領域15Bよりも縦方向Xの内方位置にて高親水度領域15Aが横方向Yに延在する形態が挙げられる。斯かる形態によれば、着用者の腰周りにおける汗などの体液が吸収されつつ、おむつ1の縦方向Xの端部からの漏れが効果的に防止され得る。
積層不織布10の第2面10bには、第1面10aと同様に、融着部13と非融着部14とが存在しているところ(図7参照)、第2面10bにおいては、非融着部14は融着部13に比して親水度が高い。これは、第1面10aにおいては前述したとおり、非融着部14が融着部13に比して親水度が低いのとは対照的である。このように、第2面10bにおける融着部13と非融着部14との親水度の大小関係が、第1面10aにおけるそれとは逆になる理由は、第2面10bの非融着部14の親水度が比較的高いためである。すなわち、繊維層12から形成された第2面10bにおいて、融着部13を形成するための熱エンボス加工等の圧縮加工が施されていない非融着部14では、繊維層12(構成繊維12F)が本来有する親水度が維持されるが、融着部13では、相対的に親水度が低い繊維層11(構成繊維11F)と相対的に親水度が高い繊維層12(構成繊維12F)とが圧縮加工によって溶融されているため、圧縮加工前に比して親水度が低下する(前記方法により測定される接触角が増加する)。したがって、積層不織布10の第2面10bにおいては前記のとおり、「非融着部14の親水度>融着部13の親水度」という大小関係が成立し、すなわち「非融着部14の接触角<融着部13の接触角」という大小関係が成立する。
このように、積層不織布10の第2面10bにも、第1面10aと同様に、融着部13と非融着部14の間に親水度差(ミクロな親水度差)が生じているため、第2面10bを前記肌当接シートの肌対向面とした場合でも、第1面10aを前記肌当接シートの肌対向面とした場合と同様の効果が奏される。但し、第2面10bにおけるミクロな親水度差は、第1面10aにおけるそれとは逆であり、第2面10bは本来的に親水度が高いものであるから、液残りや液戻りの防止、吸液後のドライ感の向上といった観点からは、第1面10aを前記肌当接シートの肌対向面とした方が好ましい。
積層不織布10においては、第1面10a及び第2面10bの一方又は両方の融着部13の親水度が、第1面10aの非融着部14の親水度に比して高く、且つ第2面10bの非融着部14の親水度に比して低い。つまり、積層不織布10においては親水度に関して、「第1面10aの非融着部14<第1面10aの融着部13、第2面10bの融着部13<第2面10bの非融着部14」という大小関係が成立し、すなわち接触角に関して、「第1面10aの非融着部14>第1面10aの融着部13、第2面10bの融着部13>第2面10bの非融着部14」という大小関係が成立している。斯かる親水度の大小関係が成立していることにより、積層不織布10に、第1面10a側から第2面10b側に向かって親水度が向上する親水勾配が確実に付与されるとともに、第1面10aに、融着部13と非融着部14との間の親水度差が確実に付与されるため、本発明の所定の効果がより一層確実に奏されるようになる。
第2面10bの融着部13の接触角は、第2面10bの非融着部14の接触角よりも大きいことを前提として、好ましくは55度以上、より好ましくは60度以上、そして、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下である。
第2面10bの融着部13の接触角と第2面10bの非融着部14の接触角との差は、前者>後者を前提として、前者−後者として、好ましくは3度以上、より好ましくは5度以上、そして、好ましくは30度以下、より好ましくは25度以下である。
第2面10bの非融着部14の接触角については前述したとおりである。
積層不織布10の第1面10aを構成する繊維層11の構成繊維11Fとしては、第2面10bを構成する繊維層12の構成繊維12Fよりも親水度が低いものが用いられ、典型的には疎水性繊維が用いられる。疎水性繊維としては、疎水性の合成繊維、特に疎水性の熱可塑性繊維を用いることができる。熱可塑性繊維の素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
繊維層11は、好ましくは疎水性繊維を主体として構成され、疎水性である。繊維層11の全構成繊維に占める疎水性繊維の割合は、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、100質量%でもよい。
積層不織布10の第2面10bを構成する繊維層12の構成繊維12Fとしては、第1面10aを構成する繊維層11の構成繊維11Fよりも親水度が高いものが用いられ、典型的には親水性繊維が用いられる。親水性繊維としては、親水性の合成繊維、特に親水性の熱可塑性繊維を用いることができ、例えば、ポリアクリロニトリル繊維等の、親水性の熱可塑性樹脂からなる本来的に親水性の熱可塑性繊維でもよく、あるいは、疎水性の熱可塑性樹脂からなる本来的に疎水性の熱可塑性繊維に親水化処理を施したものでもよく、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。後者の「親水化処理された熱可塑性繊維」としては、例えば、親水化剤が練り込まれた熱可塑性繊維、表面に親水化剤が付着した熱可塑性繊維、プラズマ処理が施された熱可塑性繊維等が挙げられる。親水化剤としては、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤(各種の界面活性剤など)を特に制限無く用いることができる。
繊維層12は、好ましくは親水性繊維を主体として構成され、親水性である。繊維層12の全構成繊維に占める親水性繊維の割合は、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、100質量%でもよい。
積層不織布10の構成繊維11F,12Fは、それぞれ、1種類の合成樹脂又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
積層不織布10の構成繊維11F,12Fは、それぞれ、短繊維(ステープル)でもよく、長繊維(フィラメント)でもよい。すなわち、繊維層11,12は、それぞれ、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布などの短繊維不織布でもよく、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの長繊維不織布でもよい。ここでいう「短繊維」とは、100mm以下、好ましくは15mm以上の繊維長を有する繊維であり、「長繊維」とは、30mm以上の繊維長を有する繊維である。特に、繊維長150mm以上のいわゆる連続長繊維であると破断強度が高い長繊維不織布が得られる点で好ましい。なお、前記「長繊維」における繊維長の上限は特に限定されるものではない。
繊維層11及び繊維層12の坪量(目付)は、それぞれ、実用上十分な強度、吸収容量を確保しつつ嵩張らないようにする観点から、好ましくは24g/m以上、より好ましくは28g/m以上、そして、好ましくは45g/m以下、より好ましくは40g/m以下である。
次に、本発明の吸収性物品の製造方法について、その好ましい一実施形態であるおむつ1の製造方法に基づいて説明する。おむつ1の製造方法は、おむつ1が具備する前記肌当接シート(吸汗シート4、表面シート21、防漏カフ形成用シート27、内層シート32)のうちの少なくとも1枚を構成する、積層不織布10の製造工程と、該製造工程によって製造された積層不織布10を用いておむつ1を製造する工程とを有する。積層不織布10を用いたおむつ1の製造工程は常法に従って実施することができる。
図10には、積層不織布10の製造装置の一実施形態である製造装置50Aが示されている。製造装置50Aは、短繊維不織布の製造装置であり、製造目的物である積層不織布10が短繊維不織布である場合、すなわち、積層不織布10が有する積層構造を構成する複数の繊維層11,12がそれぞれ短繊維不織布である場合に使用される。
製造装置50Aは、図10に示すように、積層不織布10の製造工程の上流側から下流側に向けて(機械方向MDに沿って)、ウエブ形成部51及び圧縮加工部52をこの順で具備する。圧縮加工部52を経て製造された長尺状の積層不織布10は、ロール状に巻き取られ、おむつ1の製造工程で使用される。
ウエブ形成部51は、製造目的物である積層不織布10の前駆体である繊維ウエブ11W,12Wの積層体10Wの製造装置であり、積層体10Wを構成する繊維ウエブの数と同数、本実施形態においては2台のウエブ形成装置510,511を具備する。本実施形態においては、2台のウエブ形成装置510,511はそれぞれカード機510,511である。カード機としては、不織布の製造において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。カード機に代えて、他のウエブ形成装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。
圧縮加工部52は、被加工物(積層体10W)に圧縮加工の一種である熱エンボス加工を施す装置であり、圧縮手段520と受け手段521とを具備する。本実施形態においては、圧縮手段520は、円筒状のロール本体の周面(被加工物との対向面)に複数の凸部5が間欠配置された彫刻ロール520であり、受け手段521は、周面に凹凸の無い円筒状の平滑ロール521であり、両ロール520,521は、被加工物の搬送路を挟んで対向配置されている。彫刻ロール520は、前記ロール本体の内部にヒーター等の加熱手段を備えており、該加熱手段によって凸部5を所定の温度に加熱可能になされている。
以上の構成を有する製造装置50Aを用いて実施される、積層不織布10の製造工程について説明する。斯かる製造工程は、複数の繊維ウエブ11W,12Wを積層して積層体10Wを得、圧縮加工により積層体10Wを部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して、積層体10Wの被圧縮部に融着部13を形成する融着部形成工程を有する。
先ず、図10に示すように、ウエブ形成部51にて、繊維ウエブ11W,12Wをそれぞれ形成し、それらの積層体10Wを形成する。具体的には、ウエブ形成装置510にて、前述した構成繊維11Fを原料として用いて長尺状の繊維ウエブ11Wを形成し、次いで、走行する該繊維ウエブ11W上に長尺状の繊維ウエブ12Wを直接積層して、長尺状の積層体10Wを得る。繊維ウエブ12Wは、ウエブ形成装置510よりも機械方向MDの下流側に位置するウエブ形成装置511にて、前述した構成繊維12Fを原料として用いて形成される。積層体10Wを構成する各繊維ウエブ11W,12Wは、何れも構成繊維11F,12Fどうしが緩く絡合した状態にあり、シート状の繊維層としての保形性を獲得するには至っていない。
次いで、図10に示すように、圧縮加工部52にて、積層体10Wに圧縮加工を施して融着部13を形成し、積層不織布10を製造する(融着部形成工程)。具体的には、彫刻ロール520と平滑ロール521との間に積層体10Wを供給し、所定温度に加熱された彫刻ロール520の凸部5を積層体10Wに接触させつつ、積層体10Wを平滑ロール521側に押圧することで、積層体10Wを部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱する。本実施形態においては、繊維層11の前駆体である繊維ウエブ11W側から凸部5によって積層体10Wを押圧する。このような、構成繊維11F,12Fの溶融を促進させる溶融促進手段(本実施形態では熱)を伴う圧縮加工を積層体10Wに施すことで、積層体10Wの被圧縮部(凸部5との接触部)では構成繊維11F,12Fが溶融・融着し、該被圧縮部が融着部13となる。融着部13が形成された積層体10Wは、シート状の不織布としての保形性を有する積層不織布10である。
前述した製造装置50Aを用いた積層不織布10の製造工程は、製造目的物である積層不織布10が短繊維不織布である場合に適用されるものである。製造目的物である積層不織布10が長繊維不織布である場合には、例えば、図11に示す製造装置50Bを用いることができる。製造装置50Bについては、製造装置50Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、製造装置50Aについての説明が適宜適用される。
製造装置50Bが具備するウエブ形成部51は、搬送コンベア512と、積層体10Wを構成する繊維ウエブの数と同数、本実施形態においては2台の紡糸装置513,514とを具備する。紡糸装置513,514は、搬送コンベア512の上方に配置されている。紡糸装置513,514は、それぞれ、下方の搬送コンベア512に向けて繊維11F,12Fを紡出する紡糸ヘッド513h,514hを具備する。紡糸装置513,514としては、不織布の製造において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。
製造装置50Bが具備するウエブ形成部51では、紡糸装置513の紡糸ヘッド513hから繊維11Fを紡出し、搬送コンベア512上に堆積させて繊維ウエブ11Wを形成し、次いで、走行する該繊維ウエブ11Wに向けて紡糸装置514の紡糸ヘッド514hから繊維12Fを紡出し、該繊維ウエブ11W上に該繊維12Fを直接堆積させて、長尺状の積層体10Wを得る。このように、製造装置50Bでは、繊維ウエブ11W上に繊維12Fを溶融紡糸法などにより直接紡糸する、直接紡糸法が採用されている。
製造装置50A又は50Bによって製造された積層不織布10の第1面10aには、前述したとおり図6に示すように、相対的に親水度が高い融着部13と相対的に親水度が低い非融着部14とが存在し、また、融着部13を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域15でみたときに、表面親水度が相対的に高い高親水度領域15Aと、表面親水度が相対的に低い低親水度領域15Bとが存在しており、積層不織布10の平面方向に、融着部13と非融着部14とによるミクロな親水度差と、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差とが設けられている。
従来、不織布の平面方向に親水度差を設ける場合には、該不織布の構成繊維の親水度を高める親水化剤などの繊維処理剤を、該不織布又はその前駆体である繊維ウエブの所定箇所に塗布する方法が採用されている。しかしながら、この方法は、「剤の部分的な塗布」という作業を実施することに起因して、剤の塗布ムラや裏抜け、塗布予定部の周辺部(親水化剤の塗布が予定されていない部分)への剤のしみ出し、剤の飛散や塗布後の乾燥不良による製造装置の汚染といった不都合が発生するという問題がある。
このような従来技術の問題に鑑み、本発明の製造方法では、「剤の部分的な塗布」を行わずに、積層不織布10に前記の親水度差を設けている。本発明者の知見によれば、融着部13を形成するための熱エンボス加工等の圧縮加工時の圧縮強度(被加工物の被圧縮部にかかる圧力)の強弱を調整することで、融着部13の親水度を調整することが可能であり、該圧縮強度を強くすることで、融着部13の親水度を向上(接触角が減少)させ、該圧縮強度を弱くすることで、融着部13の親水度を低下(接触角が増加)させることが可能である。斯かる知見に基づき、本発明の製造方法では、「剤の部分的な塗布」を行わずに、積層体10Wに圧縮加工を部分的に施して融着部13を部分的に形成することで、積層不織布10の平面方向に、融着部13と非融着部14とによるミクロな親水度差を設け、また、その圧縮加工時の圧縮強度を部分的に異ならせることで、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差を設ける。
積層不織布10の平面方向に、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差を設けることは、被加工物たる積層体10Wの平面視における一部の領域と他の一部の領域とで、「被圧縮部にかかる圧力」(圧縮強度)のみならず、「被圧縮部の面積」や「単位面積当たりの被圧縮部の数」を異ならせることによっても可能である。積層体10Wの圧縮加工において、「被圧縮部の面積」のみを部分的に異ならせた場合、そうして製造された積層不織布10の高親水度領域15A及び低親水度領域15Bは、例えば図8に示すようになり、高親水度領域15A中の融着部13の方が、低親水度領域15B中の融着部13よりも面積が大きい。また、積層体10Wの圧縮加工において、「単位面積当たりの被圧縮部の数」のみを部分的に異ならせた場合、そうして製造された積層不織布10の高親水度領域15A及び低親水度領域15Bは、例えば図9に示すようになり、高親水度領域15A中の方が低親水度領域15Bよりも融着部13の数が多い。
要するに、おむつ1の製造方法は、前記融着部形成工程において、被加工物である積層体10Wの平面視における一部の領域と他の一部の領域とで、「被圧縮部にかかる圧力」(圧縮強度)、「被圧縮部の面積」及び「単位面積当たりの被圧縮部の数」のうちの少なくとも1つが異なるように、積層体10Wに圧縮加工を施す点で特徴付けられる。そして、斯かる特徴により、従来行われている繊維処理剤の塗り分けによる親水度差の付与を利用せずに、単に圧縮加工をするだけで、積層不織布10の平面方向に、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差を設けることが可能となる。
本実施形態における積層体10Wの圧縮加工では、被加工物との対向面に複数の凸部5が間欠配置された圧縮手段である、彫刻ロール520を用い、凸部5で積層体10Wを押圧することで該積層体10Wを厚み方向に圧縮している。よって、この凸部5のパターン(形状及び配置)を適宜調整することで、前述した「被圧縮部にかかる圧力」、「被圧縮部の面積」、「単位面積当たりの被圧縮部の数」を部分的に異ならせることが可能である。
図12(a)〜図12(c)には、彫刻ロール520における凸部5のパターンA〜Cが例示されている。彫刻ロール520の被加工物(積層体10W)との対向面(周面)520aに対し、パターンA〜Cからなる群から選択される1つ以上のパターンを適用することで、積層不織布10の平面方向に、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差を設けることが可能となる。
図12(a)に示すパターンAは、対向面520aからの高さHが相対的に高い凸部5Aを有する領域P1と、高さHが相対的に低い凸部5Bを有する領域P2とが存在するパターンである。高さHが相対的に高い凸部5Aで押圧された被圧縮部の圧縮強度は、高さHが相対的に低い凸部5Bで押圧された被圧縮部の圧縮強度よりも強い。したがって、例えば、彫刻ロール520の領域P1で押圧されることで積層不織布10に形成された領域は高親水度領域15A、彫刻ロール520の領域P2で押圧されることで積層不織布10に形成された領域は低親水度領域15Bとなり、積層不織布10の平面方向に、高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差が付与される。なお、領域P1,P2は、それぞれ、複数個の凸部5が存在し得る面積を有し、典型的には、単位領域15(10mm四方の平面視正方形形状の領域)よりも大きく、例えば、対向面520aの面積の半分を占める場合があり得る。後述する領域P3〜P6についても同様である。
図12(b)に示すパターンBは、頂部の面積Sが相対的に大きい凸部5Aを有する領域P3と、面積Sが相対的に小さい凸部5Cを有する領域P4とが存在するパターンである。凸部5Aと凸部5Cとは高さHが等しいので、これらに圧縮されている被圧縮部にかかる圧縮強度は互いに同じであり、したがって、凸部5Aの被圧縮部に形成された1個の融着部13と凸部5Cの被圧縮部に形成された1個の融着部13とで親水度は互いに同じである。しかし、融着部13の総面積としては、積層不織布10の第1面10aにおいて、彫刻ロール520の領域P3に対応する領域の方が、彫刻ロール520の領域P4に対応する領域よりも大きく、そのため、前者の方が後者よりも表面親水度が高い。図8に示す高親水度領域15Aは前者(領域P3に対応する領域)の例、図8に示す低親水度領域15Bは後者(領域P4に対応する領域)の例である。このように、凸部5がパターンBで配された圧搾手段を用いて被加工物(積層体10W)を押圧することで、積層不織布10の平面方向に高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差を付与することができる。頂部の面積Sが相対的に大きい凸部5Aと、面積Sが相対的に小さい凸部5Cにおける、それぞれの頂部の面積Sの好ましい範囲は、前述した、高親水度領域15A又は低親水度領域15Bに含まれる1個の融着部13の面積と同じである。
図12(c)に示すパターンCは、隣り合う凸部5Aどうしの間隔Gが相対的に短い領域P5と、間隔Gが相対的に長い領域P6とが存在するパターンである。パターンCにおける複数の凸部5Aは互いに同一形状同一寸法であり、間隔Gが部分的に異なるだけである。間隔Gが短くなると、単位領域に含まれる融着部13の数(融着部13の密度)は増加し、間隔Gが長くなると、融着部13の密度は減少する。そして、融着部13の密度が大きいほど表面親水度は高くなるので、積層不織布10の第1面10aにおいて、彫刻ロール520の領域P5に対応する領域の方が、彫刻ロール520の領域P6に対応する領域よりも表面親水度が高い。図9に示す高親水度領域15Aは前者(領域P5に対応する領域)の例、図9に示す低親水度領域15Bは後者(領域P6に対応する領域)の例である。このように、凸部5がパターンCで配された圧搾手段を用いて被加工物(積層体10W)を押圧することで、積層不織布10の平面方向に高親水度領域15Aと低親水度領域15Bとによるマクロな親水度差を付与することができる。彫刻ロール520の表面の単位面積(10mm×10mm)当たり、隣り合う凸部5Aどうしの間隔Gが相対的に短い領域P5と、間隔Gが相対的に長い領域P6における、それぞれの凸部5Aの個数の好ましい範囲は、前述した、高親水度領域15A又は低親水度領域15Bに含まれる融着部13の数と同じである。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、おむつ1においては、図4に示すように、吸汗シート4は外層シート31の折り返し部31Eに接合されていたが、このような他の部材に接合されずに、吸汗シート4単独でウエストフラップWFを構成してもよい。
また、おむつ1においては、図2に示すように、外装体3が腹側部F、股下部M及び背側部Rにわたる連続した形状をなしているが、これに代えて、外装体3が腹側外装体、背側外装体及び股下外装体にそれぞれ別部材として区分された分割型の形状をなしていてもよい。
また、本発明の吸収性物品は、前述したおむつ1の如きパンツ型使い捨ておむつに限定されず、体液の吸収に用いられる物品全般に適用することができ、例えば、展開型使い捨ておむつ、生理用ナプキンに適用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜5及び比較例1,2〕
図10に示す製造装置を用い、前述した製造方法に準じて、繊維層11,12からなる二層構造の積層不織布10を製造した。繊維ウエブ11W,12Wの原料繊維として、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維を用いた。繊維ウエブ12Wの原料繊維には、該繊維の親水度を高める親水化剤を塗布した。繊維層11の坪量は8g/m、繊維層12の坪量は20g/mであった。前記融着部形成工程では、被加工物(積層体10W)の平面視における一部の領域(以下、「第1領域」ともいう。)とそれ以外の他の領域(以下、「第2領域」ともいう。)とで、被圧縮部にかかる圧力、被圧縮部の面積、単位面積当たりの被圧縮部の数のうちの何れか1つが異なるように、被加工物に圧縮加工を施した。
〔比較例3〕
積層不織布10の第1面10a及び第2面10bそれぞれの融着部13、非融着部14を含む全体にフッ素系耐水耐油剤(製品名 AG−E060 旭硝子株式会社製)を塗布した以外は、実施例1〜5及び比較例1,2と同様にして、積層不織布を製造した。
〔比較例4〕
積層不織布10の第1面10a及び第2面10bそれぞれの融着部13、非融着部14を含む全体にステアリルリン酸エステルカリウム塩(製品名 グリッパー4131の水酸化カリウム中和物 花王株式会社製)を塗布した以外は、実施例1〜5及び比較例1,2と同様にして、積層不織布を製造した。
〔評価〕
各実施例及び比較例の積層不織布について、液残り量、液保持量をそれぞれ下記方法により測定した。その結果を下記表1に示す。
<液残り量の測定方法>
縦10cm、横10cm、重さ36gの平面視正方形形状のアクリル板を2枚用意した。1枚のアクリル板を一面が水平になるように載置し、該一面の中央部の5cm四方の範囲に、1μLの試験液(脱イオン水)の液滴49個をピペットで間欠配置した。次いで、測定対象の積層不織布を、その第1面をアクリル板に対向させ、アクリル板上の全部の液滴を覆うように、アクリル板上に載せ、更に該積層不織布の上に、他の1枚のアクリル板を載せた。積層不織布の上にアクリル板を載せた時点から60秒経過後に、最上部にあるアクリル板とその下の積層不織布を取り除き、最下部にあるアクリル板上に残っている試験液を重量既知(W0)のろ紙(Toyo Roshi Kaisha, Ltd.製、No.2)1枚で吸水し、該吸水紙の重量(W1)を電子天秤で計量した。その計量値(W1)と吸水前の該ろ紙の重量(W0)との重量差(W1−W0)を算出して、当該積層不織布の液残り量(mg)とした。液残り量が少ないほど、当該積層不織布は吸水性能に優れるとして高評価となる。
<液戻り量の測定方法>
2018年3月に市販されていた花王株式会社製の使い捨ておむつであるメリーズ(登録商標)テープ(Sサイズ)にコールドスプレーを噴霧して、接着剤を固化させて表面シートを取り除いた。取り除いた表面シートに代えて、実施例及び比較例で得られた積層不織布を貼り直し、測定対象の吸収性物品を作製した。測定対象の吸収性物品を平面状に広げて肌対向面側(表面シート側)が上を向くように水平に載置した。この状態下に、無加圧条件下で30gの人工尿を流速5g/秒で3回注入した(合計90g注入)。人工尿の供給は、シリコンチューブで液の吐出口を吸収体の上に載せた積層不織布の10mm上側まで導き、液注入ポンプ(ISMATEC社製、MCP−J)を用いて行った。90gという供給量は、乳幼児の平均排尿量を想定したものである。また、5g/秒という供給速度は、乳幼児の排泄時の尿の排泄スピードを想定したものである。人工尿の組成は、尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.111質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.198質量%、赤色2号(染料)0.005質量%、水(96.882質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(0.007質量%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整した。1回目の注入後、10分経過後に2回目の注入を行った。人工尿の注入箇所は、吸収体の縦方向(長手方向)における腹側部側の端部から縦方向内方に130mm離間した位置の横方向中央部とした。吸収性物品に3回目の人工尿を注入した後これを10分間放置し、然る後、コラーゲンフィルム(Viscofan社製、CoffiJ)を7cm四方に切断して4枚重ねたものを、吸収性物品における人工尿の注入箇所に載せ、該コラーゲンフィルムの重量(WC1)を電子天秤で計量した。この重量(WC1)と吸収前の該コラーゲンフィルムの重量(WC0)との重量差を算出して(WC1−WC0)、当該積層不織布の液戻り量(mg)とした。
液戻り量が少ないほど、当該積層不織布は吸水性能に優れるとして高評価となる。
Figure 2020048828
表1に示すとおり、各実施例の積層不織布は、1)第1面の非融着部は、第2面の非融着部に比して親水度が低い、2)第1面において、非融着部は融着部に比して親水度が低い、及び3)第1面に、表面親水度が相対的に高い単位領域である高親水度領域と、表面親水度が相対的に低い単位領域である低親水度領域とが存在する、の全てを満たしているため、液戻り量及び液残り量が比較的少なく高評価であった。これに対し、比較例1〜4は何れも、第1領域の第1面と第2領域の第1面とで接触角が同じであって前記3)を満たしておらず、また、比較例3及び4については更に前記2)も満たしておらず、これに起因して実施例よりも評価に劣る結果となった。
1 吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつ)
F 腹側部
M 股下部
R 背側部
WF ウエストフラップ
2 吸収性本体
21 表面シート(肌当接シート)
22 裏面シート
23 吸収体
24 吸収性コア
25 コアラップシート
3 外装体
31 外層シート
32 内層シート(肌当接シート)
4 吸汗シート(肌当接シート)
10 積層不織布
10a 第1面
10b 第2面
11,12 繊維層
11F,12F 繊維層の構成繊維
13 融着部
14 非融着部
15 単位領域
15A 高親水度領域
15B 低親水度領域
X 縦方向
Y 横方向
50A,50B 積層不織布の製造装置
520 彫刻ロール(圧縮手段)
5,5A,5B,5C 凸部

Claims (10)

  1. 着用時に着用者の肌と接触可能に配された肌当接シートを備え、該肌当接シートが、複数の繊維層の積層構造を有し且つ該複数の繊維層が互いに融着して一体化している融着部を有する、積層不織布を含む吸収性物品であって、
    前記積層不織布の一方の表面である第1面及び他方の表面である第2面それぞれに、前記融着部と、前記複数の繊維層が互いに融着していない非融着部とが存在し、
    前記第1面の前記非融着部は、前記第2面の前記非融着部に比して親水度が低く、
    前記第1面において、前記非融着部は前記融着部に比して親水度が低く、
    前記融着部を含む10mm四方の平面視正方形形状の単位領域を、前記第1面に仮想的に設けた場合、該第1面に、表面親水度が相対的に高い単位領域である高親水度領域と、表面親水度が相対的に低い単位領域である低親水度領域とが存在する吸収性物品。
  2. 前記高親水度領域に含まれる1個の前記融着部の親水度が、前記低親水度領域に含まれる1個の前記融着部の親水度に比して高い請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記高親水度領域に含まれる1個の前記融着部の面積が、前記低親水度領域に含まれる1個の前記融着部の面積に比して大きい請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記高親水度領域に含まれる前記融着部の数が、前記低親水度領域に含まれる前記融着部の数に比して多い請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記第2面において、前記非融着部は前記融着部に比して親水度が高い請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記第1面及び前記第2面の一方又は両方の前記融着部の親水度が、該第1面の前記非融着部の親水度に比して高く、且つ該第2面の前記非融着部の親水度に比して低い請求項5に記載の吸収性物品。
  7. 前記肌当接シートの肌対向面が、前記積層不織布の第1面からなる請求項1〜6の何れか1項に記載の吸収性物品。
  8. 液保持性の吸収体と、該吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを備え、該表面シートが前記肌当接シートを含む請求項1〜7の何れか1項に記載の吸収性物品。
  9. 着用時に着用者の肌と接触可能に配された肌当接シートを備え、該肌当接シートが、複数の繊維層の積層構造を有し且つ該複数の繊維層が一体的に融着された融着部を有する、積層不織布を含む、吸収性物品の製造方法であって、
    前記積層不織布の製造工程と、該製造工程によって製造された積層不織布を用いて吸収性物品を製造する工程とを有し、
    前記積層不織布の製造工程は、複数の繊維ウエブを積層して積層体を得、圧縮加工により該積層体を部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して、該積層体の被圧縮部に前記融着部を形成する融着部形成工程を有し、
    前記融着部形成工程において、前記積層体の平面視における一部の領域と他の一部の領域とで、被圧縮部にかかる圧力、被圧縮部の面積、単位面積当たりの被圧縮部の数のうちの少なくとも1つが異なるように、該積層体に前記圧縮加工を施す、吸収性物品の製造方法。
  10. 前記圧縮加工では、被加工物との対向面に複数の凸部が間欠配置された圧縮手段を用い、該凸部で前記積層体を押圧することで該積層体を厚み方向に圧縮し、
    前記対向面に前記凸部が、下記パターンA〜Cからなる群から選択される1つ以上のパターンで配されている請求項9に記載の吸収性物品の製造方法。
    ・パターンA:前記対向面からの高さが相対的に高い凸部を有する領域と、該高さが相対的に低い凸部を有する領域とが存在するパターン
    ・パターンB:頂部の面積が相対的に大きい凸部を有する領域と、該面積が相対的に小さい凸部を有する領域とが存在するパターン
    ・パターンC:隣り合う凸部どうしの間隔が相対的に長い領域と、該間隔が相対的に短い領域とが存在するパターン
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