本発明は、複数の不織布が積層された積層構造を有する積層不織布を用いた吸収性物品に関する。
使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品においては従来、2層以上の積層構造を有する不織布、表面に凹凸を有する不織布などが構成部材として用いられている。例えば特許文献1には、使い捨ておむつにおける着用者の肌と接触する部位に、着用者の汗を吸収可能な吸汗シートを配置することが記載され、また、該吸汗シートとして、疎水性不織布と親水性不織布との積層構造を有し且つ両不織布が凹状に窪んだ多数の熱融着部にて互いに接合された積層不織布を用いることが記載され、さらに、該積層不織布は該疎水性不織布を着用者の肌側に向けて配置されることが記載されている。
特許文献2には、吸収性物品の構成部材に好適な積層不織布として、ある面方向からは液体透過性を有し、反対方向からは液体透過性を有しない一方向導水性不織布シートが記載されており、また、該一方向導水性不織布シートの実施形態として、少なくとも1層が親水化された不織布であり、残りが親水化されていない不織布であるものが記載されている。また特許文献2には、積層不織布の製造方法として、複数の不織布を重ね合わせて熱エンボスロールによる熱融着処理を行う方法が記載されており、さらに別の製造方法として、スパンボンド不織布の上に、所定の繊度にされた長繊維を直接堆積させ、次いで、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波シール等の手段による交絡処理を行うか、又は熱エンボスロールによる熱融着処理を行う方法が記載されている。
また特許文献3には、コーヒーや紅茶の抽出に使用される機能性フィルターとして、疎水性極細繊維不織布からなる内層と、親水剤が付着された合成繊維不織布からなる外層とが、接着剤又は熱エンボス加工により部分的に接合された積層不織布が記載されている。
特開2004−298467号公報
特開2006−51649号公報
特開2002−233720号公報
本発明は、熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有する積層不織布である。前記積層構造は、前記積層不織布の一方の表面である第1面と、他方の表面である第2面とを有し、該第1面が、疎水性の第1層からなり、該第1層の該第2面側に、親水性の第2層が配されている。前記積層構造は、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部を有している。前記第1層は、前記層間融着部に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部を有している。前記第1面及び前記第2面それぞれの面積に対する当該面の前記層間融着部と前記繊維間融着部との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、前記第1面は前記第2面に比して融着部面積率が大きい。
また本発明は、熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有し、該積層構造を構成する各層どうしが層間融着部にて互いに融着されている、積層不織布の製造方法である。本発明の積層不織布の製造方法は、周辺部よりも厚みが小さく且つ構成繊維どうしが互いに融着された繊維間融着部を有する、疎水性のベース不織布を搬送し、その搬送中のベース不織布上に、樹脂を紡糸して得た繊維を堆積させて積層体を得る工程と、前記積層体を部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して前記層間融着部を形成する層間融着工程とを有する。
また本発明は、熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有する積層不織布を具備する吸収性物品である。前記積層構造は、前記積層不織布の一方の表面である第1面と、他方の表面である第2面とを有し、該第1面が、疎水性の第1層からなり、該第1層の該第2面側に、親水性の第2層が配されている。前記積層構造は、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部を有している。前記第1層は、前記層間融着部に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部を有している。前記第1面及び前記第2面それぞれの面積に対する当該面の前記層間融着部と前記繊維間融着部との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、前記第1面は前記第2面に比して融着部面積率が大きい。前記積層不織布が、前記第1面を着用者の肌側に向けて配されている。
また本発明は、熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有し、第1面とこれとは反対側に位置する第2面とを有し、該第1面を着用者の肌側に向けて使用される吸汗シートである。前記第1面が、疎水性の第1層からなり、該第1層の前記第2面側に、親水性の第2層が配されている。前記積層構造は、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部を有している。前記第1層は、前記層間融着部に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部を有している。前記第1面及び前記第2面それぞれの面積に対する当該面の前記層間融着部と前記繊維間融着部との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、前記第1面は前記第2面に比して融着部面積率が大きい。
図1は、本発明の積層不織布の一実施形態の厚み方向に沿う断面を模式的に示す断面図である。
図2(a)〜図2(h)は、それぞれ、本発明に係る層間融着部のパターンを模式的に示す図である。
図3(a)〜図3(h)は、それぞれ、本発明に係る繊維間融着部のパターンを模式的に示す図である。
図4(a)〜図4(d)は、それぞれ、本発明の積層不織布の第1面における融着部(層間融着部及び繊維間融着部)のパターンを模式的に示す図である。
図5は、本発明の積層不織布の製造方法の一実施形態の概略図である。
図6は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの模式的な斜視図である。
図7は、図6に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌当接面側(内面側)を模式的に示す展開平面図である。
図8は、図7のI−I線断面を模式的に示す縦断面図である。
発明の詳細な説明
特許文献1〜3に記載されているように、複数の不織布を重ね合わせ熱エンボス加工で一体化させた積層不織布は、その積層構造を構成する各層の坪量の低減を図ることが難しく、特に疎水性の層の坪量の低減は困難である。そのため、斯かる積層不織布は、全体的に高坪量、高剛性となって、吸収性物品の構成部材として用いた場合に着用感の低下などを招くおそれがあり、また、疎水性の層が着用者の肌から最も近い位置に配されている場合には、汗や尿などの体液の吸収性に劣る。
また、積層不織布の製造方法としては、機械方向(MD)に間欠的に配置された複数の紡糸ヘッドから繊維を順次垂下・堆積させ、MDの最下流に位置する紡糸ヘッドよりも下流側にて、それら繊維の堆積物に熱エンボス加工を施して一体化する方法が知られている。このようないわゆる直接紡糸による積層不織布は、比較的低坪量、低剛性であるため、疎水性の層を着用者の肌から最も近い位置に配置した場合に、該疎水性の層におけるエンボス部の周囲から体液を吸収し得るが、該エンボス部の周囲には、該疎水性の層に隣接する親水性の層の構成繊維が密に存在し、且つ該疎水性の層の厚みが比較的薄いため、体液が該エンボス部の周囲に集まりやすく、液戻りを起こしやすい。
従って本発明の課題は、汗や尿などの体液の吸収性能に優れる積層不織布及びその製造方法並びに吸収性物品及び吸汗シートを提供することに関する。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の積層不織布の一実施形態である積層不織布10の厚み方向Zに沿う断面が模式的に示されている。積層不織布10は、熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造13を有し、該繊維層は、典型的には不織布、即ち単層の不織布(例えばスパンボンド不織布)又は積層不織布(例えばSMS不織布)を構成する各層である。積層構造13は、積層不織布10の一方の表面(外面)である第1面10aと、積層不織布10の他方の表面(外面)であり、該第1面10aとは反対側に位置する第2面10bとを有する。
積層不織布10の主たる特徴の1つとして、積層構造13が厚み方向Zに親水度勾配を有している点が挙げられる。即ち積層構造13においては、第1面10aが、疎水性繊維14を含む疎水性の第1層11からなり、また、第1層11の第2面10b側に、親水性繊維15を含む親水性の第2層12が配されており、斯かる構成により、積層構造13には、「第2面10b側が第1面10a側よりも相対的に親水度が高い」という親水度勾配が付与されている。
図1に示す積層不織布10においては、積層構造13は、疎水性の第1層11と親水性の第2層12との2層構造であり、第1面10aは、第1層11から形成されていて疎水性であり、第2面10bは、第2層12から形成されていて親水性である。尚、ここで、「積層構造13の層数が2層」というのはあくまで、形態あるいは機能が異なる2つの層(第1層11、第2層12)の合計の層数を意味し、厳密な意味での繊維層(不織布)の層数とは必ずしも一致しない。即ち、第1層11及び第2層12は、それぞれ後述するように、単層構造の不織布のみならず、2層以上の多層構造の不織布(例えばSMS不織布)であり得るところ、例えば第1層11がSMS不織布、第2層12が単層構造の不織布の場合、積層構造13としては第1層11及び第2層12からなる2層構造であっても、実際の不織布の層数としては、第1層11における3層と第2層12における1層との合計4層である。要は、第1層11及び第2層12は、それぞれ、2層以上であり得るということである。
本発明において、繊維の集合体である繊維層(不織布)の親水度は、下記方法で測定される水との接触角に基づき判断され、該接触角が90度未満であれば親水性、90度以上の場合であれば疎水性である。下記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。積層不織布10の積層構造13において、疎水性の第1層11は、下記方法で測定される接触角が90度以上であり、親水性の第2層12は、下記方法で測定される接触角が90度未満である。
<繊維層(不織布)の接触角の測定方法>
測定対象の繊維層(不織布)から、MD方向150mm、CD方向70mmの平面視四角形形状を切り出して測定サンプルとし、測定サンプルにおける接触角の被測定面に、イオン交換水の液滴を付着させ、該液滴を録画して、その録画した画像に基づき接触角を測定する。より具体的には、測定装置として株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX−1000を用い、これに中倍率ズームレンズを90°に倒した状態で取り付ける。測定サンプルを、被測定面が上向きの状態となり且つ測定サンプルのCD方向から観察できるように、測定装置の測定ステージにセットする。そして、測定ステージにセットされた測定サンプルの被測定面にイオン交換水3μLの液滴を付着させ、その液滴の画像を録画して測定装置に取り込む。録画され複数の画像のうち、液滴におけるCD方向の両端又は片端が鮮明な画像を10枚選択し、その10枚の画像それぞれについて液滴の接触角を計測し、それらの接触角の平均値を、測定対象の繊維層(不織布)の接触角とする。測定環境は、20℃/50%RHとする。
第1層11は、疎水性繊維14を主体として構成され、それ故に疎水性層となっている。また、第2層12は、親水性繊維15を主体として構成され、それ故に親水性層となっている。第1層11は、疎水性繊維14を少なくとも70質量%以上含有し、疎水性繊維14の含有量は第1層11の全質量に対して100質量%でも良い。また、第2層12は、親水性繊維15を少なくとも50質量%以上含有し、親水性繊維15の含有量は第2層12の全質量に対して100質量%でも良い。
本発明において、繊維の親水度は、下記方法で測定される水との接触角に基づき判断され、該接触角が90度未満であれば親水性、90度以上の場合であれば疎水性である。下記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。積層不織布10において、積層構造13の第1層11を構成する疎水性繊維14は、下記方法で測定される接触角が90度以上であり、第2層12を構成する親水性繊維15は、下記方法で測定される接触角が90度未満である。
<接触角の測定方法>
測定対象(積層不織布)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。繊維を取り出す際はハサミとピンセットを用い、また、測定対象たる積層不織布における繊維の取り出し部位は、第1面及び第2面それぞれの最表面(最外面)、並びに、積層不織布における第1面と第2面とに挟まれた領域とする。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を15ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象物から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。斯かる接触角の値が小さいほど、親水性が高いことを意味する。
尚、吸収性物品の構成部材(例えば表面シートや吸汗シート)に測定サンプル(例えば繊維)が含まれている場合において、測定サンプルを採取する方法としては、測定サンプルを含む構成部材が接着剤、融着などによって他の構成部材に固定されている場合は、その固定を解除して測定サンプルを含む構成部材を吸収性物品から取り出す方法を採る必要があるが、測定サンプルを含む構成部材が他の構成部材に固定されていない場合は、測定サンプルを吸収性物品から直接採取する方法を採ることができる。また、前記の構成部材の固定を解除する方法としては、吸収性物品において、測定対象の構成部材と他の構成部材との接合に用いられている接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱めた後に、測定対象の構成部材を丁寧に剥がして取り出す方法が好ましい。この取り出し方法は、後述する繊維間距離及び繊度の測定など、本発明の測定対象に係る測定において適用される。尚、構成部材に付与された親水化剤への影響を最小限に抑える観点から、固定部分の除去方法として、溶剤の塗布やドライヤーによる熱風吹き付けのような、油剤の変質、喪失を招くおそれのある方法は採用しないことが好ましい。
疎水性繊維14としては、疎水性の熱可塑性繊維(熱融着繊維)を用いることができる。疎水性繊維14の素材としては、疎水性の熱可塑性樹脂として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、親水性繊維15としては、親水性の熱可塑性繊維(熱融着繊維)を用いることができ、具体的には例えば、ポリアクリロニトリル繊維等の、本来的に親水性の熱可塑性繊維でもよく、あるいは疎水性繊維14として使用可能な疎水性の熱可塑性繊維に親水化処理を施したものでもよく、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。後者の「親水化処理された熱可塑性繊維」としては、例えば、親水化剤が練り込まれた熱可塑性繊維、表面に親水化剤が付着した熱可塑性繊維、プラズマ処理が施された熱可塑性繊維等が挙げられる。親水化剤は、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤であれば特に限定されない。
尚、後述する本発明の積層不織布の製造方法は、最終的に第1層11となる疎水性のベース不織布を搬送し、その搬送中のベース不織布上に、樹脂を紡糸して得た繊維(最終的に親水性繊維15となる繊維)を堆積させて積層体を得、該積層体に層間融着部16を形成する工程を有しているところ(図5参照)、親水性繊維15の例示の1つである前記「親水化剤が練り込まれた熱可塑性繊維」は、樹脂に親水化剤を加えたものを紡糸することで得られる親水性繊維であり、また、親水性繊維15の例示の他の1つである前記「表面に親水化剤が付着した熱可塑性繊維」及び「プラズマ処理が施された熱可塑性繊維」は、樹脂を紡糸しベース不織布上に堆積させた後(あるいは層間融着部16の形成後)、その堆積物(親水化処理されていない繊維集合体)に親水化剤の付着処理又はプラズマ処理を施して得られる親水性繊維である。
疎水性繊維14及び親水性繊維15は、それぞれ、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂(熱可塑性樹脂)を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
第1層11及び第2層12は、それぞれ、短繊維を主体とする不織布(短繊維不織布)でもよく、あるいは長繊維を主体とする不織布(長繊維不織布)でもよい。ここでいう「主体とする」とは、不織布の全質量に占める短繊維又は長繊維の割合が70質量%以上であることを意味し、該割合は通常100質量%である。
短繊維不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布が挙げられ、また、該不織布の主たる構成繊維(短繊維)の繊維長は、好ましくは15mm以上100mm以下である。
本発明において、「長繊維」とは、30mm以上の繊維長を有する繊維を意味する。特に、繊維長150mm以上のいわゆる連続長繊維であると破断強度が高い長繊維不織布が得られる点で好ましい。尚、前記「長繊維」における繊維長の上限は特に限定されるものではない。また、「長繊維不織布」とは、典型的には、長繊維を熱融着部により間欠的に固定した繊維集合体を具備する不織布のことをいう。このような長繊維不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの単層不織布、又は長繊維を主体とするスパンボンド層、メルトブローン層などを積層した積層不織布、カード法によるヒートロール不織布等が挙げられ、該積層不織布としては、例えば、スパンボンド−スパンボンド積層不織布(SS不織布)、スパンボンド−スパンボンド−スパンボンド積層不織布(SSS不織布)、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布(SMS不織布)、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS不織布)が挙げられる。
尚、後述する本発明の積層不織布の製造方法は、最終的に第1層11となる疎水性のベース不織布を搬送し、その搬送中のベース不織布上に、樹脂を紡糸して得た繊維(最終的に親水性繊維15となる繊維)を堆積させて積層体を得る工程を有しているところ、このような直接紡糸法を利用した製造方法によって製造された積層不織布10においては、第1層11は、短繊維不織布でも長繊維不織布でもよいが、直接紡糸された繊維(親水性繊維15)を含む第2層12は、長繊維不織布である。一般に、長繊維不織布は短繊維不織布に比して強度に優れている。
積層不織布10の主たる特徴の他の1つとして、周辺部よりも厚みが小さく且つ構成繊維どうしが互いに融着された「小厚み融着部」を2種類有している点が挙げられる。即ち積層構造13は、周辺部よりも厚みが小さく且つ積層構造13を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部16を有し、また、積層構造13を構成する第1層11は、層間融着部16に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層11の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部17を有している。層間融着部16では、積層構造13を構成する各層(図示の形態では第1層11、第2層12)の構成繊維どうしが互いに熱融着されていると共に、それら各層どうしが互いに融着により接合されている。このような構成の積層構造13においては、第1面10a及び第2面10bの双方に層間融着部16が同じパターンで形成され、また、第1面10aにはさらに、第1層11のみに形成された繊維間融着部17が所定のパターンで形成されている。また、小厚み融着部は周辺部よりも高密度になっている。
層間融着部16及び繊維間融着部17は、当該部分の構成繊維が厚み方向に圧密化された圧密部であるところ、この圧密化は、典型的には、熱、超音波などの、構成繊維たる熱可塑性繊維の溶融を促進させる溶融促進手段を伴うエンボス加工、具体的には例えばヒートシール加工、超音波シール等によって実施される。このように製造方法に着目すると、層間融着部16及び繊維間融着部17は、それぞれ、エンボス部あるいは圧搾部などと呼ぶこともできる。
積層不織布10においては、層間融着部16は、積層構造13の前駆体(ベース不織布たる第1層11と親水性繊維15の堆積物との積層体)を第2面10b側から第1面10a側に押圧することで形成されており、斯かる形成方法に起因して、層間融着部16は図1に示すように、第2面10b側から第1面10a側に凹状に窪んでいる。また、繊維間融着部17は、第1層11の前駆体(疎水性繊維14の堆積物たるウエブ)を第1面10a側から第2面10b側に押圧することで形成されており、斯かる形成方法に起因して、繊維間融着部17は図1に示すように、第1面10a側から第2面10b側に凹状に窪んでいる。積層不織布10においては、層間融着部16は、第1面10a及び第2面10bそれぞれにおいて複数散在しており、繊維間融着部17は、第1面10aにおいて複数散在している。積層不織布10において第1面10a及び第2面10bは、凹凸を実質的に有してない平坦面ではなく、凹凸を有する凹凸面である。
このように、積層不織布10の第1面10a及び第2面10bの一方又は両方が凹凸を有していると、例えば、積層不織布10を吸収性物品における着用者の肌と接触し得る構成部材(例えば表面シートや吸汗シート)に使用する場合に、その凹凸面が着用者の肌と接するように積層不織布10を配置することで、積層不織布10と着用者の肌との間に空間が形成され、排泄された汗や尿などの体液から生じる湿気が該空間を介して効果的に放散され得るため、積層不織布10の表面ドライ感が向上し、吸収性物品の着用感の向上に繋がり得る。
図2には、層間融着部16のパターン(平面視形状及び配置)が例示されている。尚、第1面10a又は第2面10bにおいて層間融着部16のパターンは図2に示すものに制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で所望のパターンを採用することができる。
図2(a)〜図2(e)は、それぞれ、平面視所定形状の層間融着部16が面方向(積層不織布10の厚み方向と直交する方向)に複数散在しているパターンである。層間融着部16の平面視形状は、図2(a)及び図2(b)では楕円形状、図2(c)では円形状、図2(d)では四角形状ないしひし形状、図2(e)では十字状である。図2(a)では、平面視楕円形状の複数の層間融着部16の長軸方向が互いに一致しているのに対し、図2(b)では、長軸方向の異なる複数種の平面視楕円形状の層間融着部16が散在している。また、図2(f)〜図2(h)は、それぞれ、平面視線状の層間融着部16が所定方向に延びるように配されているパターンである。図2(f)では、複数の連続直線状の層間融着部16が互いに交差するように配され、層間融着部16全体として格子状のパターンをなしている。図2(g)は、図2(f)の格子状パターンにおいて層間融着部16を連続直線状から不連続線状に変更したもの、即ち比較的短い線分の層間融着部16を所定の一方向に間欠配置してなる不連続線(断続線)を採用したパターンである。図2(h)は、図2(g)の不連続線状の層間融着部16によるパターンの他の例であり、該層間融着部16をハニカム状に配置したものである。
図3には、繊維間融着部17のパターンが例示されている。尚、第1面10aにおいて繊維間融着部17のパターンは図3に示すものに制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で所望のパターンを採用することができる。
図3(a)〜図3(e)は、それぞれ、平面視所定形状の繊維間融着部17が面方向に複数散在しているパターンである。繊維間融着部17の平面視形状は、図3(a)及び図3(d)では楕円形状(長楕円形状)、図3(b)では円形状、図3(c)では四角形状ないしひし形状、図3(e)では十字状である。図3(a)では、平面視楕円形状の複数の繊維間融着部17の長軸方向が互いに一致しているのに対し、図3(d)では、長軸方向の異なる複数種の平面視楕円形状の繊維間融着部17が散在している。図3(a)〜図3(e)に示す如き散点状のパターンにおいて、繊維間融着部17の平面視形状としては、図示の形状以外に例えば、三角形状、五角形以上の多角形形状、星形状が挙げられる。また、図3(f)〜図3(h)は、それぞれ、平面視線状の繊維間融着部17が所定方向に延びるように配されているパターンである。図3(f)では、複数の連続直線状の繊維間融着部17が互いに交差するように配され、繊維間融着部17全体として格子状のパターンをなしている。図3(g)は、図3(f)の格子状パターンにおいて繊維間融着部17を連続直線状から不連続線状に変更したもの、即ち比較的短い線分の繊維間融着部17を所定の一方向に間欠配置してなる不連続線(断続線)を採用したパターンである。図3(h)は、図3(g)の不連続線状の繊維間融着部17によるパターンの他の例であり、平面視六角形状の該繊維間融着部17を相互に一部重複するように配置したものである。
図4には、層間融着部16及び繊維間融着部17の双方が形成される面である、積層不織布10の第1面10aにおける両融着部16,17のパターンが例示されている。尚、第1面10aにおいて両融着部16,17のパターンは図4に示すものに制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で所望のパターンを採用することができる。
図4(a)は、図2(a)の層間融着部16の散点状のパターンと図3(a)の散点状の繊維間融着部17のパターンとの組み合わせであり、図4(b)は、図2(c)の散点状の層間融着部16のパターンと不連続線状の繊維間融着部17が複数ハニカム状に配置されたパターン(図示せず)との組み合わせであり、図4(c)は、図2(c)の散点状の層間融着部16のパターンと図3(f)の線状の繊維間融着部17のパターンとの組み合わせであり、図4(d)は、図2(d)の散点状の層間融着部16のパターンと図3(c)の散点状の繊維間融着部17のパターンとの組み合わせである。
積層不織布10は、前述した特徴部分を有することに加え、第1面10a及び第2面10bそれぞれの面積に対する当該面の層間融着部16と繊維間融着部17との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、即ち、第1面10aの面積に対する該第1面10aの層間融着部16と繊維間融着部17との合計面積の割合を、第1面10aの融着部面積率とし、また、第2面10bの面積に対する該第2面10bの層間融着部16と繊維間融着部17との合計面積の割合を、第2面10bの融着部面積率とした場合、第1面10aは第2面10bに比して融着部面積率が大きくなされている(第1面10aの融着部面積率>第2面10bの融着部面積率、という大小関係が成立している)点で特徴付けられる。
前記特徴を有する積層不織布10において、第1面10aは、これを形成する第1層11が疎水性繊維14を含む疎水性であるため、基本的には汗や尿などの体液(水性液)を吸収し難いものであるが、第1面10aにおける層間融着部16及び繊維間融着部17それぞれの周縁部及びその近傍は、第1面10aから液を吸収する場合の液の引き込み部となる重要な部位となっている。即ち、第1面10aにおける層間融着部16及びその周囲については、疎水性繊維14のみならず、第1層11に隣接し且つより親水度の高い層である第2層12の親水性繊維15が比較的密に存在しているため、第1面10aにおける他の部位に比して親水度が高く(前記方法で測定される接触角が小さく)、そのため、第1面10aにおいては、層間融着部16及びその周囲に体液が優先的に付着し得る。また前述したように、積層構造13は厚み方向Zに、「第2面10b側が第1面10a側よりも相対的に親水度が高い」という親水度勾配を有しているため、積層不織布10は第1面10aから厚み方向Zの内方への液吸収性に優れ強い毛管力を有する。そのため、第1面10aにおける層間融着部16及びその周囲に付着した体液は、主として層間融着部16の周縁部及びその近傍を介して、積層不織布10の内部に速やかに引き込まれ、積層不織布10の面方向(厚み方向Zと直交する方向)に拡散されつつ、厚み方向Zの内方で、親水性の第2層12に吸収保持される。第1面10aにおいて液の引き込み部となるのは主に「層間融着部16の周縁部及びその近傍」である。通常、層間融着部16は、その中心部の構成繊維の繊維形態が失われてフィルム化していたとしても、層間融着部16における該中心部以外の部分即ち層間融着部16の周縁部と、その近傍(層間融着部16の周囲)とは、フィルム化せずに繊維形態が維持されているため、層間融着部16の周縁部及びその近傍が第2面10bにおける液の引き込み部となる。
第1面10aにおいて繊維間融着部17の周縁部及びその近傍が液の引き込み部としてより確実に機能するようにする観点から、繊維間融着部17は、その厚みが、第1層11における融着部(層間融着部16、繊維間融着部17)を除く部分の厚みよりも小さいことが好ましい。本発明者らの知見によれば、このように第1層11において繊維間融着部17が他の部分に比して厚みが薄くなされていることにより、第1層11(第1面10a)が疎水性でありながらも、繊維間融着部17の周縁部及びその近傍が液の引き込み部として確実に機能し得るようになる。斯かる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、繊維間融着部17の厚みは、第1層11における融着部(層間融着部16、繊維間融着部17)を除く部分の厚みに対して、好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下、そして、好ましくは1/30以上、さらに好ましくは1/20以上である。
前記の親水度勾配による液吸収性のさらなる向上の観点から、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の接触角は、第2層12の構成繊維(親水性繊維15)に比して大きいことを前提として、好ましくは95度以上、さらに好ましくは100度以上、そして、好ましくは150度以下、さらに好ましくは130度以下である。また、第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の接触角は、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)に比して小さいことを前提として、好ましくは15度以上、さらに好ましくは20度以上、そして、好ましくは88度以下、さらに好ましくは85度以下である。構成繊維の親水度は、積層不織布10の主たる構成繊維である熱可塑性繊維の親水化処理の程度、例えば、親水化剤の種類や含有量などを適宜調整することで調整可能である。
また、前述したように、層間融着部16は疎水性の第1面10aから液を吸収する場合に周縁部及びその近傍が液の引き込み部となる重要な部位であるが、層間融着部16では疎水性の第1層11と親水性の第2層12とが接合されていることに起因して、積層不織布10が吸液後に厚み方向に圧縮された場合(例えば、積層不織布10が第1面10aを着用者の肌側に向けて吸収性物品の構成部材として使用された場合において、該積層不織布10に着用者の体圧がかかった場合)、第2層12に吸収保持されていた液が層間融着部16の周縁部及びその近傍を介して第1面10a側に戻る、いわゆる液戻りが懸念される。しかしながら第1層11には、層間融着部16とは別に、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)のみが互いに融着された繊維間融着部17が形成されており、これにより第1面10a側への液戻りが効果的に抑制される。即ち繊維間融着部17は、層間融着部16と異なり、疎水性の第1層11のみに形成され親水性の第2層12との融着部でないため、親水性の第2層12に一旦吸収された液は、繊維間融着部17の周縁部及びその近傍からは液戻りしにくく、繊維間融着部17が液戻りを防止する役割を果たし得る。
前述した作用効果(液吸収性と液戻り防止性との両立)をより確実に奏させるようにする観点から、第1面10aの融着部面積率(前者)と第2面10bの融着部面積率(後者)との比率(即ち、第2面10bの融着部面積率に対する第1面10aの融着部面積率の比率)は、前者/後者として、好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上、そして、好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。斯かる比率が小さすぎると、液戻り防止性が得られにくく、逆に大きすぎると、第1面10aの肌触りが悪化するおそれがある。
第1面10aには層間融着部16及び繊維間融着部17の双方が形成されているところ、両融着部16,17は互いにパターンが同じでもよいが、前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、両融着部16,17は互いにパターンが異なっていることが好ましい。より具体的には、層間融着部16と繊維間融着部17とは、配置パターン、融着部単体の平面視形状、融着部単体の面積、融着部間距離(融着部どうし間の最短距離)D16,D17(図1参照)、ピッチP16,P17(図1参照)のうちの少なくとも2つが異なることが好ましい。ここで、融着部間距離D16,D17は、積層不織布10の面方向において隣り合う2個の融着部(層間融着部16又は繊維間融着部17)どうしの間隔を意味し、ピッチP16,P17は、該2個の融着部それぞれの平面視における中心間の距離を意味する。
層間融着部16及び繊維間融着部17は共に、周辺部よりも高密度で且つ構成繊維どうしが互いに融着された高密度融着部であり、形成時の加圧加熱条件等によっては、構成繊維たる熱可塑性繊維の繊維形態が失われてフィルム化している可能性があるが、前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、少なくとも層間融着部16は、少なくとも一部がフィルム化していることが好ましい。これに対して繊維間融着部17はフィルム化していてもよく、フィルム化していなくてもよいが、前述したように、繊維間融着部17の厚みが第1層11の他の部分の厚みよりも小さい(好ましくは他の部分の厚みの1/3以下)であるためには、繊維間融着部17はフィルム化していることが好ましい。具体的には例えば、繊維間融着部17及び層間融着部16が共に、少なくとも一部がフィルム化していることが好ましい。層間融着部16がフィルム化していることで、第1面10aにおける他の部位に比してより親水度が高く(前記方法で測定される接触角が小さく)なり、層間融着部16及びその周囲に体液がより優先的に付着し得るという効果が奏される。また、繊維間融着部17がフィルム化していることで、第1面10aの一部をなす、そのフィルム化した繊維間融着部17の表面が平滑になり、疎水性繊維14の融着部でありながら液の付着性が高まるという効果が奏される。融着部16,17における構成繊維の繊維形態は、融着部16,17を形成する際のエンボス加工の条件に主に左右され、エンボス加工時の加熱加圧条件を比較的強くすると、フィルム化されやすくなる。
前述した通り、層間融着部16の周縁部及びその近傍と、繊維間融着部17の周縁部及びその近傍とは、共に第1面10aから液を吸収する場合に液の引き込み部となる部位であり、特に繊維間融着部17は前述した通り液戻りしにくいことから、積層不織布10のドライ性を向上させる観点からは、第1面10aは、繊維間融着部17が面方向に複数散在している繊維間融着部分散配置領域を有していることが好ましい。特に、積層不織布10が汗を吸収可能な吸汗シートとして第1面10a側を肌側として使用される場合は、第1面10aが前記繊維間融着部分散配置領域を有していると、汗の吸収性がよい上に肌に接する第1面10aのドライ性がより一層向上し得るため好ましい。第1面10aの全域が前記繊維間融着部分散配置領域であってもよく、第1面10aの一部のみが前記繊維間融着部分散配置領域であってもよい。第1面10aの全面積に占める前記繊維間融着部分散配置領域の面積の割合は、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。
また、前記繊維間融着部分散配置領域における繊維間融着部17の配置に関し、第1面10aの前記繊維間融着部分散配置領域の任意の位置に半径2mmの円を仮想的に設けた場合、その仮想円内に少なくとも1個の繊維間融着部17の一部又は全部が含まれることが好ましい。ここで「任意の位置に半径2mmの円を仮想的に設けた場合、その仮想円内に少なくとも1個の繊維間融着部17の一部又は全部が含まれる」の意味するところは、「第1面10aの前記繊維間融着部分散配置領域に前記仮想円を10個設けた場合に、その10個中の1個又は2個の前記仮想円において繊維間融着部17が全く含まれていなくてもよく、残りの8個の前記仮想円において、少なくとも1個の繊維間融着部17の一部又は全部が含まれていればよい」ということである。前記仮想円は、人体の皮膚表面に散在する汗分泌箇所(汗腺)を想定したものであり、積層不織布10は前記構成を具備することにより、汗をより効率よく吸収し得る。特に、前記仮想円の半径が1.5mmである場合に繊維間融着部17が前記を満たすように配されていると、より効果的である。
層間融着部16の周縁部及びその近傍と繊維間融着部17の周縁部及びその近傍とは、共に第1面10aにおける液の引き込み部であるから、実用上十分な液吸収性を確保するためには、両融着部16,17のいずれについてもある程度の数が必要であり、即ち周囲長がある程度以上の長さを有することが必要であるが、第1面10aにおいて層間融着部16自体の面積が大きすぎると、層間融着部16においては疎水性の第2層12のみならず親水性の第1層11も共に融着されているため、第1層11が吸収保持できる液量が減少するおそれがある。斯かる観点から、第1面10aの面積に対する層間融着部16の総面積(第1面10aに層間融着部16が複数形成されている場合はその複数の層間融着部16の面積の合計)の割合、即ち層間融着部16の面積率は、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下である。また、斯かる割合の下限については、好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上である。
尚、層間融着部16は、積層構造13(積層不織布10)の厚み方向Zの全体にわたって連続し、第1面10aと第2面10bとで層間融着部16のパターン(平面視形状及び配置)は実質的に同じであるから、本明細書における第1面10aについての層間融着部16のパターンに関する説明(前記層間融着部分散配置領域、層間融着部16の面積率など)は、特に断らない限り、第2面10bにも適用される。
繊維間融着部17は、層間融着部16に比して、ピッチが短いことが好ましい。即ち図1を参照して、「繊維間融着部17のピッチP17<層間融着部16のピッチP16」なる大小関係が成立することが好ましい。斯かる構成により、発汗しはじめで汗量が少ない時点から吸収でき、且つ第2層12の吸収容量が大きいため、前述した作用効果(液吸収性と液戻り防止性との両立)がより一層確実に奏されるようになる。
また同様の観点から、繊維間融着部17は、層間融着部16に比して、融着部間距離(融着部どうし間の最短距離)が短いことが好ましい。即ち図1を参照して、「繊維間融着部17の融着部間距離D17<層間融着部16の融着部間距離D16」なる大小関係が成立することが好ましい。尚、斯かる融着部間距離に関する構成は、層間融着部16及び繊維間融着部17がそれぞれ、平面視において複数が散点状に配置されたパターンである場合、例えば層間融着部16については図2(a)〜図2(e)に示すパターン、繊維間融着部17については図3(a)〜図3(e)に示すパターンである場合に特に有効である。
また同様に、液吸収性と液戻り防止性との両立の観点から、1個の繊維間融着部17の第1面10aにおける面積が0.3mm2以下であり、1個の層間融着部16の第2面10bにおける面積よりも小さいことが好ましい。繊維間融着部17の第1面10aにおける面積は、好ましくは0.25mm2以下であり、また下限に関しては、好ましくは0.1mm2以上、さらに好ましくは0.15mm2以上である。また、1個の繊維間融着部17の第1面10aにおける面積(前者)と1個の層間融着部16の第2面10bにおける面積(後者)との比率(即ち、1個の層間融着部16の第2面10bにおける面積に対する1個の繊維間融着部17の第1面10aにおける面積の比率)は、前者/後者として、好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.75以下である。尚、斯かる構成は、層間融着部16及び繊維間融着部17がそれぞれ、平面視において複数が散点状に配置されたパターンである場合、例えば層間融着部16については図2(a)〜図2(e)に示すパターン、繊維間融着部17については図3(a)〜図3(e)に示すパターンである場合に特に有効である。
第1層11及び第2層12の坪量は特に制限されず、積層不織布10の用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、積層不織布10が使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品の構成部材(表面シート、吸汗シートなど)として使用される場合は、実用上十分な強度を確保しつつ嵩張らないようにする観点から、第1層11及び第2層12を合わせた坪量は、好ましくは13g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上、そして、好ましくは38g/m2以下、さらに好ましくは35g/m2以下である。
特に、疎水性の第1層11は通常、積層不織布10を吸液用途に使用する場合において最初に液と接触する側となるものであるところ、斯かる使用形態においては、第1層11は比較的坪量が少なく厚みが薄い方が第1面10aにおける層間融着部16及びその周囲を介して液を吸収しやすい。一方で、第1層11の坪量が少なすぎると、強度低下や液戻りが懸念される。以上を考慮すると、第1層11の坪量は、好ましくは8g/m2以上、さらに好ましくは9g/m2以上、そして、好ましくは18g/m2以下、さらに好ましくは17g/m2以下である。
また、親水性の第2層12は、疎水性の第1層11(第1面10a)を吸収すべき液が最初に接触する側とした場合に、第1層11の第1面10aにおける層間融着部16及びその周囲による液の吸収力に関わるものであり、一般には、第2層12の坪量が多いほど該吸収力が高まり、また強度も向上する。一方で、第2層12の坪量が多すぎると、嵩張るようになりあるいは剛性が高まる結果、吸収性物品の構成部材として使用した場合には着用感の低下を招くおそれがある。以上を考慮すると、第2層12の坪量は、好ましくは5g/m2以上、さらに好ましくは7g/m2以上、そして、好ましくは20g/m2以下、さらに好ましくは18g/m2以下である。尚、第2層12が5g/m2程度の低坪量であると、第2層12の強度不足が深刻となって積層不織布10の製造が困難になることが懸念されるが、後述する本発明の積層不織布の製造方法によれば、第2層12はいわゆる直接紡糸法によって製造されるので、斯かる懸念は払拭される。
前述したように、第1層11及び第2層12としては各種の繊維層を用いることができるが、積層不織布10を吸収性物品の構成部材として使用する場合など、吸液用途に使用した場合に前述した作用効果がより確実に奏されるようにする観点から、親水性の第2層12としては、親水化剤が練り込まれたメルトブローン繊維層やスパンボンド繊維層、又は親水化剤が練り込まれた繊維を含むSMS積層繊維層(不織布)が特に好ましい。
一方、疎水性の第1層11としては、親水性の第2層12に一旦吸収された液と肌とを隔てる観点から、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、メルトブローン不織布又はこれらの積層不織布(例えばSMS不織布)が好ましい。
第2層12の主たる構成繊維である親水性繊維15は、典型的には、本来的に疎水性の熱可塑性繊維に親水化処理を施して得られる。即ち第2層12は、疎水性繊維(例えば第1層11の構成繊維として使用可能な熱可塑性繊維)の集合体に親水化処理を施したものということができる。この親水化処理としては、前述したように、繊維又は繊維集合体への親水化剤の塗工、繊維への親水化剤の練り込みの他、プラズマ処理なども使用できるが、後述する本発明の積層不織布の製造方法においては、繊維へ親水化剤を練り込み紡糸する方法が適している。
第2層12の一例として、親水化剤が練り込まれた繊維を含む親水性不織布が挙げられる。斯かる形態の第2層12において、親水化剤は、その主たる構成繊維である親水性繊維15の表面に付着しているのではなく、親水性繊維15中に含有されている。前述した、親水化剤が片面側から塗工された形態の第2層12は、厚み方向Zに親水度勾配を有するのに対し、親水化剤が構成繊維に練り込まれた形態の第2層12は、その構成繊維が第2層12全体に均一に分布していることを前提として、厚み方向Zに親水度勾配を有しておらず、親水度は均一である。
第2層12の他の一例として、第2面10b側に親水化剤が塗工されている形態が挙げられる。親水化剤の塗工方法は特に限定されず、親水化剤を含む塗工液を塗工可能な公知の方法を適宜利用できる。利用可能な塗工方法として、グラビアコート、キスコート、パターンコート、スプレーコート、リバースコート、ダイコートが好ましく、その中でも第2面10b側に塗工できるグラビアコート、フレキソコート、ダイコートが特に好ましい。また親水化剤としては、使い捨ておむつなどの吸収性物品において構成部材の親水化に使用されている各種の界面活性剤などを特に制限なく用いることができる。
また、積層不織布10の液吸収性は、厚み方向における繊維の疎密勾配に少なからず影響を受ける。疎水性の第1層11(第1面10a)を吸収すべき液と最初に接触する層(液を引き込む層)とした場合に、積層不織布10の液吸収性を向上させるためには、第1層11(第1面10a)の厚みが小さく且つ繊維密度が低い(繊維間距離が長い)ことが好ましい。つまり、第1層11は相対的に繊維密度が低く(繊維間距離が長く)、一方、これに隣接する層(図示の形態では第2層12)は毛管力が高いことで疎水性の層を介して吸水することができるため、繊維密度が高い(繊維間距離が短い)ことが好ましい。層間融着部16及びその周囲では、第1面10a側から見て、相対的に繊維密度が高い(繊維間距離が短い)第2層12の親水性繊維15が、相対的に繊維密度が低い(繊維間距離が長い)第1層11(第1面10a)の疎水性繊維14間に露出しやすく、そのため、第1面10aにおける層間融着部16の周縁部及びその近傍から液を速やかに内部へ引き込み、その引き込んだ液を親水性の第2層12に吸収保持することがより安定的になされるようになる。斯かる観点から、第2層12は、第1層11に比して繊維密度が高い、即ち構成繊維の繊維間距離が短いことが好ましい。繊維間距離は下記方法により測定される。
<繊維間距離の測定方法>
不織布、紙等の繊維集合体の繊維間距離は、Wrotnowskiの仮定に基づく下記式(1)により求められる。下記式(1)は一般に、繊維集合体の繊維間距離を求める際に用いられる。Wrotnowskiの仮定の下では、繊維は円柱状であり、それぞれの繊維は交わることなく規則正しく並んでいる。
測定対象のシート(第1層11、第2層12)が単層構造の場合、その単層構造のシートの繊維間距離は下記式(1)で求められる。
測定対象のシート(第1層11、第2層12)がSMS不織布の如き多層構造の場合、その多層構造のシートの繊維間距離は以下の手順に従って求められる。
まず、下記式(1)により、多層構造を構成する各繊維層の繊維間距離を算出する。その際、下記式(1)で用いる厚みt、坪量W、繊維の樹脂密度ρ及び繊維径Dは、それぞれ、測定対象の層についてのものを用いる。厚みt、坪量W及び繊維径Dは、それぞれ、複数の測定点における測定値の平均値である。
厚みt(mm)は以下の方法にて測定する。まず、測定対象のシートを長手方向50mm×幅方向50mmに切断し該シートの切断片を作製する。ただし、小さな吸収性物品からシートを採取する場合など、測定対象のシートとしてこの大きさの切断片を作製できない場合は、可能な限り大きな切断片を作製する。次に、この切断片を平板上に載せ、その上に平板上のガラス板を載せ、ガラス板を含めた荷重が49Paになるようにガラス板上に重りを均等に載せた上で、該切断片の厚みを測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%、測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−1000)を用いる。切断片の厚みの測定は、まず、該切断片の切断面の拡大写真を得る。この拡大写真には、既知の寸法のものを同時に写しこむ。次に、前記切断片の切断面の拡大写真にスケールを合わせ、該切断片の厚み即ち測定対象のシートの厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を、測定対象のシートの厚みtとする。尚、測定対象のシートが積層品の場合は、繊維径からその境界を判別し、厚みを算出する。
坪量W(g/m2)は、測定対象のシートを所定の大きさ(例えば12cm×6cmなど)にカットし、質量測定後に、その質量測定値を、該所定の大きさから求まる面積で除することで求められる(「坪量W(g/m2)=質量÷所定の大きさから求められる面積」)。4回測定し、その平均値を坪量とする。
繊維の樹脂密度ρ(g/cm3)は、密度勾配管を使用して、JIS L1015化学繊維ステープル試験方法に記載の密度勾配管法の測定方法に準じて測定する(URLはhttp://kikakurui.com/l/L1015−2010−01.html、書籍ならJISハンドブック繊維−2000、(日本規格協会)のP.764〜765に記載)。
繊維径D(μm)は、日立製作所株式会社製S−4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて、カットした繊維の繊維断面を10本測定し、その平均値を繊維径とする。繊維径Dの測定方法は後述する<繊維径の測定方法>に従う。
次に、各層の繊維間距離に、多層構造全体の厚みに占める該層の厚みの割合を乗じ、さらに、そうして得られた各層の数値を合計することで、目的とする多層構造のシートの構成繊維の繊維間距離が求められる。例えば、2層のS層と1層のM層とからなる3層構造のSMS不織布において、2層のS層をまとめて1つの層として扱い、3層構造全体の厚みtが0.11mm、S層の厚みtが0.1mm、S層の繊維間距離LSが47.8μm、M層の厚みtが0.01mm、M層の繊維間距離LSが3.2μmの場合、斯かるSMS不織布の構成繊維の繊維間距離は、43.8μm〔=(47.9×0.1+3.2×0.01)/0.11〕となる。
第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の繊維間距離(前者)と第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の繊維間距離(後者)との比率〔即ち、第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の繊維間距離に対する第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の繊維間距離の比率〕は、前述した通り、前者>後者であることを前提として、前者/後者として、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは10以上、そして、好ましくは70以下、さらに好ましくは50以下である。
第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の繊維間距離は、好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上、そして、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の繊維間距離は、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上、そして、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
また前述した、第1層11から第2層12(積層構造13の厚み方向Zの内方)に向かって繊維密度が高くなるような繊維の疎密勾配を積層不織布10に付与して液吸収性を向上させる観点から、第2層12の構成繊維(親水性繊維15)は、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)に比して、繊維径が小さいことが好ましい。繊維径は下記方法により測定される。
<繊維径の測定方法>
測定対象(繊維層、積層不織布)を剃刀(例えばフェザー安全剃刃株式会社製片刃)で切断し、平面視四角形形状(8mm×4mm)の測定片を得る。この測定対象の切断の際には、その切断によって形成される測定片の切断面の構造が、切断時の圧力などによって破壊されないように注意する。好ましい測定対象の切断方法として、測定対象の切断に先立って、測定対象を液体窒素中に入れて十分に凍結させ、しかる後切断する方法が挙げられる。紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW−15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E−1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は30秒とする。測定片の切断面を、日立製作所株式会社製S−4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。
尚、前記の繊維径の測定方法において、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)を測定する場合は、繊維間融着部17につながる繊維を選択し、第2層12の構成繊維(親水性繊維15)を測定する場合は、繊維間融着部17に重なる第2層12の構成繊維(親水性繊維15)を選択し、それぞれについて、繊維の長手方向に対する幅方向の長さを10本測定し、その平均値を繊維径とする。
また、測定対象が、SMS不織布、SMMS不織布のように、繊維径の異なる複数の繊維層からなる複合不織布である場合は、第1面10a側からの液吸収性は、第1層11の繊維が細く繊維密度の高いメルトブローン層の影響が大きく、また、第2層12での液吸収性は、繊維が細く繊維密度の高いメルトブローン層の影響が大きい。以上を考慮して、測定対象が、繊維径の異なる複数の繊維層からなり且つメルトブローン層を含む複合不織布である場合において、その繊維径を測定する場合には、該複合不織布におけるメルトブローン層の繊維径を測定することとする
第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の繊維径(前者)と第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の繊維径(後者)との比率〔即ち、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)に対する第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の繊維径の比率〕は、前述した通り、前者>後者であることを前提として、後者/前者として、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.06以上、そして、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。
第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の繊維径は、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、そして、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
第2層12の構成繊維(親水性繊維15)の繊維径は、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、そして、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
また、積層不織布10の液吸収性を高める観点から、第2層12の主たる構成繊維である親水性繊維15は、第1層11の主たる構成繊維である疎水性繊維14に比して、単位面積当たりの繊維量(繊維数)が多いことが好ましい。単位面積当たりの繊維量は下記方法により測定される
<単位面積当たりの繊維量の測定方法>
まず、測定対象の積層不織布10を、繊維間融着部17を通るように、前記<繊維径の測定方法>と同様に剃刀で切断して、測定片を得る。走査型電子顕微鏡を用いて測定片の切断面を拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)し、一定面積当たり(0.5mm2程度)の該切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。斯かる繊維の断面数のカウントにおいて、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)を測定する場合は、繊維間融着部17につながる繊維を選択する。第2層12の構成繊維(親水性繊維15)を測定する場合は、繊維間融着部17に重なる第2層12の構成繊維(親水性繊維15)を選択する。また、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)の測定において、繊維間融着部17につながる繊維を画定しにくい場合には、繊維間融着部17付近の厚み方向全体の一定面積の繊維の断面数から、繊維間融着部17に重なる第2層12の構成繊維(親水性繊維15)数を差し引いたものを、第1層11の構成繊維(疎水性繊維14)数とする。測定は3ヶ所行い、平均値を当該繊維量とする。
第1層11の疎水性繊維14の単位面積当たりの繊維量(前者)と第2層12の親水性繊維15の単位面積当たりの繊維量(後者)との比率(即ち、第1層11の疎水性繊維14の単位面積当たりの繊維量に対する第2層12の親水性繊維15の単位面積当たりの繊維量の比率)は、前述した通り、前者<後者であることを前提として、後者/前者として、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上、そして、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。
第1層11の疎水性繊維14の単位面積当たりの繊維量(繊維数)は、好ましくは9本/mm2以上、さらに好ましくは13本/mm2以上、そして、好ましくは250本/mm2以下、さらに好ましくは180本/mm2以下である。
第2層12の親水性繊維15の単位面積当たりの繊維量(繊維数)は、好ましくは10本/mm2以上、さらに好ましくは15本/mm2以上、そして、好ましくは300本/mm2以下、さらに好ましくは200本/mm2以下である。
本発明の積層不織布における積層構造は、前述した、疎水性繊維を含む疎水性の第1層及び親水性繊維を含む親水性の第2層以外に、他の層を有していてもよい。具体的には例えば、図1に示す積層不織布10において、第2層12の第2面10b側に、長繊維を含む長繊維層が配されていてもよい。つまり積層不織布10は、第1面10aを形成する第1層11と、第2面10bを形成する長繊維層(図示せず)と、これら両層間に介在された第2層12とを含む、3層以上の多層構造であってもよい。
第2層12は、前記長繊維層に比して親水度が高いことが好ましい。斯かる構成により、積層構造13における第1層11以外の部分は、第1層11から相対的に近い第2層12が相対的に親水度が高く、第1層11から相対的に遠い前記長繊維層(第2面10b側)が相対的に親水度が低い、という親水度勾配を有する。このため、積層構造13では、第1面10a側から吸収した液が親水性の第2層12で安定的に液が吸収保持され、第2面10b側(前記長繊維層)に液が移行しにくく、積層構造13の第2面b側に接する他の部材や衣服に液が染み出しにくいという効果が奏される。斯かる構成を得るため、前記長繊維層としては、スパンボンド繊維層を用いることが好ましい。前記長繊維層の坪量は特に制限されないが、好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは5g/m2以上、そして、好ましくは15g/m2以下、さらに好ましくは13g/m2以下である。
本発明の積層不織布における積層構造の他の実施形態として、図1に示す積層不織布10において、第1層11と第2層12との間に弾性部材(図示せず)が介在された形態が挙げられる。積層構造13が3層以上の多層構造の場合、弾性部材は第1層11と第2層12との間に限らず、任意の層間に介在させることができる。このように、積層構造の層間に弾性部材を介在させることで、積層不織布に弾性が付与され、積層不織布の用途の幅が一層広がり得る。
前記弾性部材は、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して1.3倍に伸ばした状態(元の長さの1.3倍の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの1.1倍以下の長さまで戻る性質(弾性)を有することが好ましい。尚、非弾性部材は、斯かる「弾性」を有しない部材であり、即ち、元の長さに対して1.3倍に伸ばした状態(元の長さの1.3倍の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの1.1倍以下の長さまでには戻らない性質を有する部材である。前記弾性部材の形態は特に制限されず、糸状、シート状、弾性繊維の集合体(弾性繊維層)など、任意の形態を選択し得る。例えば、図1に示す積層不織布10(積層構造13)において、第1層11と第2層12との間に複数の糸状(フィラメント状)の弾性部材が互いに同方向に延びるように介在配置された形態が挙げられ、この場合、積層不織布10(積層構造13)は、弾性部材の延びる方向に伸縮性を有する。
前記弾性部材の素材としては、天然ゴムや熱可塑性エラストマーの樹脂材料を用いることができ、熱可塑性エラストマーの樹脂材料としては、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα-オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーが挙げられる。
次に、本発明の積層不織布の製造方法について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図5には、本発明の積層不織布の製造方法の一実施形態として、前述した積層不織布10の製造方法の一例の概略が示されている。積層不織布10は、前述した通り、熱可塑性繊維(疎水性繊維14、親水性繊維15)を含む繊維層の積層構造13を有し、該積層構造13を構成する各層どうしが層間融着部16にて互いに融着されて構成されている。
積層不織布10の製造方法は、図5に示すように、疎水性のベース不織布11Pを搬送し、その搬送中のベース不織布11P上に、樹脂を紡糸して得た親水性繊維15を堆積させて積層体10Pを得る工程と、積層体10Pを部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して層間融着部16を形成する層間融着工程を有する。ベース不織布11Pは、周辺部よりも高密度で且つ構成繊維(疎水性繊維14)どうしが互いに融着された繊維間融着部17を有し、最終的には本製造方法の製造目的物たる積層不織布10における第1層11になる。
本製造方法では図5に示すように、先ず、ロール状に巻回されたベース不織布11Pを巻き出し、搬送コンベア50にて符号MDで示す一方向に搬送し、その搬送途中で、搬送コンベア50の上方に配置された紡糸ヘッド51の紡糸口金から親水性繊維15を紡出し、ベース不織布11P上に直接堆積させて、積層体10Pを得る。そして、引き続き積層体10Pを搬送して一対のエンボスロール52,53間に供給し、積層体10Pに熱エンボス加工を施して層間融着部16を形成する(層間融着工程)。エンボスロール52は、搬送中の積層体10Pの上方に配され、熱エンボス加工中は直接紡糸された親水性繊維15の堆積物(ウエブ)と接触し、エンボスロール53は、搬送中の積層体10Pの下方に配され、熱エンボス加工中はベース不織布11Pと接触する。被加工物たる積層体10Pと接触する両ロール52,53の外周面に関し、エンボスロール53の外周面は凹凸を有していないのに対し、エンボスロール52の外周面には、製造目的物たる積層不織布10における層間融着部16のパターンに対応したパターンで凸部(図示せず)が形成されている。このような構成の両ロール52,53間のニップ部にて、積層体10Pを、それに含まれる熱可塑性繊維(疎水性繊維14及び親水性繊維15)の融点以上の温度に加熱した状態で厚み方向に圧縮することにより、積層体10Pはエンボスロール52の前記凸部によって、親水性繊維15の堆積物側からベース不織布11P側に部分的に圧縮され、その被圧縮部に層間融着部16が形成される。斯かる層間融着工程により、親水性繊維15の堆積物は不織布となり、層間融着部16を介してベース不織布11Pと一体化される。以上により、ベース不織布11Pからなる第1層11と親水性繊維15の堆積物(ウエブ)からなる第2層12との積層構造13を有する、積層不織布10が得られる。こうして得られた積層不織布10においては、層間融着部16は、第2面10b側から第1面10a側に凹状に窪んでいる。
本製造方法の主たる特徴の1つとして、疎水性のベース不織布11Pの上に親水性繊維15を溶融紡糸法などにより直接紡糸してその堆積物たるウエブを形成する点が挙げられる。このようないわゆる直接紡糸法を利用する本製造方法では、溶融紡糸によって得られた長繊維をワインダで一旦巻き取った後に、延伸したり、切断したりして得られた繊維(親水性繊維15)を、ベース不織布11P上に堆積させることはしない。
積層不織布10の如き積層不織布を製造するに当たり、本製造方法のように直接紡糸法を利用することで、複数の不織布を重ね合わせ熱エンボス加工で一体化させる方法に比して、積層不織布の坪量の低減が図られ、特に、直接紡糸により形成される親水性の第2層12の薄型化が容易になる。親水性の第2層12が薄く低坪量であることは、吸水した液の面方向への拡散性が高く、蒸発性に優れた積層不織布となる。しかし、一般にメルトブローン層を単独の不織布として搬送に耐えうる強度とするためには、低坪量化が困難である。しかし、本製造方法のように直接紡糸法を利用することで、薄く低坪量なメルトブローン層を用いることができる。また、本製造方法によれば、紡糸された親水性繊維15を疎水性のベース不織布11P上に直接堆積させて積層体10Pを形成するので、ベース不織布11P内に親水性繊維15が入り込みやすく、第1層11と第2層12との密着性が高まるため、前述したように、第1面10aにおける層間融着部16及びその周囲を液の引き込み部とした場合に高い液吸収性を示し、さらには強度的にも強い、高品質の積層不織布10が得られる。
図5に示す製造方法では、紡糸ヘッド51の紡糸口金から親水性繊維15を紡出しており、即ち、熱可塑性樹脂の親水化処理を親水化剤の練り込みによって実施している。斯かる親水化剤の練り込みによる親水化処理は、具体的に例えば、親水化剤を所定濃度となるように熱可塑性樹脂に加え溶融混練して作製した親水化剤マスターバッチと、不織布(第2層12)の原料の熱可塑性樹脂とを所定割合で混合し、その混合物を押出機等で溶融し、紡糸ヘッド51の紡糸口金から吐出させて長繊維を紡出させ、ベース不織布11P上に堆積させればよい。
尚、本発明の積層不織布の製造方法においては、親水性繊維15の原料たる熱可塑性樹脂の親水化処理を、紡糸ヘッド51からの該熱可塑性樹脂の吐出後(熱可塑性繊維の紡出後)に実施することもできる。即ち、親水化剤を含まない熱可塑性樹脂を紡糸しベース不織布11P上に堆積させた後、その堆積物(親水化処理されていない熱可塑性繊維の集合体)に親水化剤の付着処理又はプラズマ処理を施してもよく、あるいは一対のエンボスロール52,53による層間融着部16の形成後に、親水化剤の付着処理又はプラズマ処理を施してもよい。
つまり、本発明の積層不織布の製造方法の一実施形態として、下記製造方法Aが挙げられる。図5に示す製造方法は、熱可塑性樹脂の親水化処理を親水化剤の練り込みによって実施し、その親水化処理された熱可塑性樹脂を紡糸ヘッド51から紡糸して得た親水性繊維15をベース不織布11P上に堆積させて積層体10Pを形成しており、下記製造方法Aにおいて、積層体形成工程に先立って樹脂親水化工程を実施する形態である。また前述した、親水化剤の付着処理又はプラズマ処理を利用する製造方法は、下記製造方法Aにおいて、積層体形成工程又は層間融着工程の後に樹脂親水化工程(即ち紡糸して得た繊維の堆積物の親水化)を実施する形態である。
(積層不織布の製造方法A)
熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有し、該積層構造を構成する各層どうしが層間融着部にて互いに融着されている、積層不織布の製造方法であって、
周辺部よりも厚みが小さく且つ構成繊維どうしが互いに融着された繊維間融着部を有する、疎水性のベース不織布を搬送し、その搬送中のベース不織布上に、樹脂を紡糸して得た繊維を堆積させて積層体を得る工程(積層体形成工程)と、
前記樹脂を親水化する工程(樹脂親水化工程)と、
前記積層体を部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して前記層間融着部を形成する層間融着工程とを有する、積層不織布の製造方法。
尚、本発明の積層不織布には、第2層12が複数積層され、積層構造13が3層以上を有する形態が包含されるところ、斯かる形態の積層不織布を製造する場合には、積層体10Pを得る工程において、ベース不織布11P上に複数回にわたって親水性繊維15を堆積させればよい。この場合、例えば図1に示す製造方法において、紡糸ヘッド51を搬送方向MDに複数間欠的に配置し、各紡糸ヘッド51から親水性繊維15を順次紡出し、ベース不織布11P上に直接堆積させればよい。
ベース不織布11Pは、該ベース不織布11Pの種類に応じて常法に従って製造することができる。ベース不織布11Pは、典型的には、樹脂を紡糸して得た繊維を堆積させてウエブを得る工程と、該ウエブを部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して繊維間融着部17を形成する繊維間融着工程を経て製造される。例えば、ベース不織布11P(第1層11)がスパンボンド不織布の場合、その製造は次のようになる。即ち、先ず、不織布の原料の樹脂組成物を、押出機等で溶融し、紡糸ヘッドの紡糸口金から吐出させて、長繊維を紡出させる。そして紡出された長繊維を、冷却流体により冷却し、さらに延伸エアによって長繊維に張力を加えて所定の繊度とし、そのまま捕集ベルト上に捕集して所定の厚さに堆積させる。次いで、熱エンボス加工による長繊維の融着処理を行い、繊維間融着部17を形成する。
前記繊維間融着工程においては通常、前記ウエブ(繊維間融着がなされていないシート状物。ベース不織布11Pの前駆体。)をその片面側から厚み方向に圧縮しつつ加熱して繊維間融着部17を形成する。このような、ウエブの片面側からの圧縮により形成された繊維間融着部17を有するベース不織布11Pを用いて、前記のようにいわゆる直接紡糸法を採用して積層不織布10を製造する場合、ベース不織布11Pの圧縮面(凹状に窪んだ繊維間融着部17の形成面)とは反対側の面上に親水性繊維15を堆積させる。こうして得られた積層不織布10においては、繊維間融着部17は、第1面10a側から第2面10b側に凹状に窪んでいる。
本製造方法においては、前記層間融着工程の直前又は直後に、より具体的には、一対のエンボスロール52,53を用いた熱エンボス加工の直前又は直後に、積層体10P(積層不織布10)にカレンダー処理を施してもよい。カレンダー処理は周知の通り、カレンダーロールで不織布などの繊維集合体に熱と圧力を加えて、繊維集合体を高密度化する処理である。前記層間融着工程の直前又は直後に積層体10Pにカレンダー処理を施すことにより、前述した直接紡糸法による利点である、「ベース不織布11P内への親水性繊維15の入り込み」がより一層促進されるため、積層不織布10の液吸収性、強度などの諸特性がより一層向上し得る。カレンダー処理に使用するカレンダーロールの本数や配置などは特に制限されず、例えば、3本のカレンダーロールから構成される直列型又は傾斜型、4本のカレンダーロールから構成される直列型、逆L型、Z型又は傾斜Z型、5本のカレンダーロールから構成されるZ型又はL型を用いることができる。また、カレンダー処理における温度は、被加工物たる積層体10P(積層不織布10)の構成繊維の軟化点以下が好ましい。斯かる軟化点以上でカレンダー処理をすると、不織布が硬くなり肌触りが悪化するおそれがある。
本製造方法においては、ベース不織布11P上に親水性繊維15を堆積させる前に、より具体的には、積層不織布10の製造ラインを搬送中のベース不織布11Pが紡糸ヘッド51を通過する前に、ベース不織布11Pにカレンダー処理を施してもよい。これにより、第1層11の表面が滑らかになり肌触りが良好になるという効果が奏される。要するに、本製造方法におけるカレンダー処理の実施タイミングは、前記層間融着工程の直前又は直後でもよく、ベース不織布11P上に親水性繊維15を堆積させる前でもよく、あるいは両方でもよい。
また、ベース不織布11Pの製造工程にカレンダー処理を採用してもよい。即ち、前記繊維間融着工程の直前又は直後に、前記ウエブ(繊維間融着がなされていないシート状物。ベース不織布11Pの前駆体。)にカレンダー処理を施してもよい。
前述したように、本発明の積層不織布には、第1層と第2層との間に、糸状、シート状、弾性繊維の集合体(弾性繊維層)などの形態を持つ弾性部材が介在された形態が包含される。このような、積層構造の層間に弾性部材が介在配置された構成の積層不織布を製造する場合には、ベース不織布11P上に親水性繊維15を堆積させる前に、ベース不織布11P上に弾性部材を配すればよい。斯かる弾性部材の配置方法は、弾性部材の形態などに応じて適宜選択すればよい。例えば弾性部材として、弾性繊維の集合体である弾性繊維層を配する場合は、親水性繊維15と同様に、ベース不織布11P上に該弾性繊維を直接紡糸することもできる。
以下、本発明の吸収性物品についてその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品は、前述した本発明の積層不織布を具備する点で特徴付けられる。詳細には、本発明の積層不織布は前述した通り、熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有するもので、該積層構造が、該積層不織布の一方の表面である第1面と、他方の表面である第2面とを有し、該第1面が、疎水性繊維を含む疎水性の第1層からなり、該第1層の該第2面側に、親水性繊維を含む親水性の第2層が配されている構成を有しているところ、本発明の吸収性物品において該積層不織布は、該第1面を着用者の肌側に向けて配されている。
図6〜図8には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1が示されている。尚、おむつ1については、前述した積層不織布の実施形態である積層不織布10と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、積層不織布10についての説明が適宜適用される。
おむつ1は、図6及び図7に示すように、縦方向Xに腹側領域A及び背側領域Bと、それらA,Bの間に位置する股下領域Cとを備え、腹側領域Aと背側領域Bとにわたって吸収体23を有し、吸収体23の縦方向Xの前後端部23A,23Bそれぞれから外方に位置して横方向Yに延びる腹側ウエストフラップFA及び背側ウエストフラップFBを有している。ここで、腹側領域Aとは使い捨ておむつ等の吸収性物品の着用時に着用者の腹側に配される領域であり、背側領域Bとは使い捨ておむつ等の吸収性物品の着用時に着用者の背側に配される領域である。腹側領域A及び背側領域Bは、おむつ1の着用時に着用者の腰周りに対応する腰周り部である。
図7に示すように、腹側ウエストフラップFAとは、吸収体23の縦方向Xの腹側領域A側の前端部23Aの端縁から縦方向X外方に位置して横方向Yに延びる領域と、吸収体23の縦方向Xの腹側領域A側の前端部23Aから横方向Yに延びる領域とを合わせた領域を意味する。また、背側ウエストフラップFBとは、吸収体23の縦方向Xの背側領域B側の後端部23Bの端縁から縦方向X外方に位置して横方向Yに延びる領域と、吸収体23の縦方向Xの背側領域B側の後端部23Bから横方向Yに延びる領域とを合わせた領域を意味する。
おむつ1は、図6及び図7に示すように、吸収性本体2と、吸収性本体2の非肌当接面側に配されて該吸収性本体2を固定する外装体3とを備え、外装体3は、吸収性本体2を構成する吸収体23の縦方向Xの前後端部23A,23Bから外方に位置して横方向Yに延びる腹側ウエストフラップFA及び背側ウエストフラップFBを有している。おむつ1では、伸縮領域(ウエスト伸縮部G1及び胴周り下部伸縮部G2)が、腹側ウエストフラップFA及び背側ウエストフラップFBに形成されている。
おむつ1は、図7に示すように、外装体3の腹側領域Aの左右両側縁部3a1,3a1と外装体3の背側領域Bの左右両側縁部3b1,3b1とが接合されて一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部WO及び一対のレッグ開口部LO,LOが形成されている所謂パンツ型使い捨ておむつである(図6参照)。好適に、おむつ1の外装体3は、図7に示す、展開させ且つ伸長させた状態を平面視して、着用時に着用者の腹側に配される腹側領域A、着用時に着用者の背側に配される背側領域B、及び腹側領域Aと背側領域Bとの間の股下領域Cに区分されている。ここでいう、おむつ1の展開且つ伸長状態とは、図7に示すように、サイドシール部Sを引き剥がして、おむつ1を展開状態とし、その展開状態のおむつ1を、各部の弾性部材を伸長させて、設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで広げた状態を意味する。
本明細書において、「肌当接面」とは、おむつ1又はその構成部材(例えば吸収性本体2)における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌当接面」とは、おむつ1又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、おむつ1において、縦方向Xとは、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する方向であり、おむつ1を平面に展開させ且つ伸長させた状態で、腹側領域Aから背側領域Bにわたる方向のことである。また、横方向Yとは、縦方向Xと直交する方向であり、平面に展開させ且つ伸長させた状態のおむつ1の幅方向のことである。また、おむつ1は、図7に示す、縦方向Xに延びる縦中心線CL1に対して左右対称形となっている。尚、図7中のCL2は、おむつ1を二分する横方向Yに延びる横中心線であり、縦中心線CL1に直交している。
おむつ1では、吸収性本体2は、図7に示すように、おむつ1の展開且つ伸長状態において、縦方向Xが相対的に長い縦長の形状を有している。吸収性本体2は、肌当接面を形成する液透過性の表面シート21と、非肌当接面を形成する液難透過性(撥水性も含む)の裏面シート22と、これら両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23とを具備する。また、吸収性本体2の縦方向X(長手方向)に沿う両側部には、図7に示すように、縦方向Xに伸長状態で配された弾性部材を有する防漏カフ24,24が設けられている。具体的には、防漏カフ24は、液難透過性又は撥水性で且つ通気性の素材から構成されており、各防漏カフ24の自由端部近傍には、防漏カフ形成用弾性部材25が縦方向Xに伸長した状態で配されている。おむつの着用時には、防漏カフ形成用弾性部材25の収縮により防漏カフ24の自由端部側が起立して、横方向Yへの体液の流出が阻止される。
以上のように構成された吸収性本体2は、図7に示すように、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の中央部に、本体固定用接着剤によって接合されている。このように、外装体3は、使い捨ておむつ1の厚み方向における、吸収性本体2を構成する裏面シート22の非肌当接面側に配されて接着固定されている。従って、おむつ1では、吸収性本体2を構成する吸収体23が、腹側領域Aと背側領域Bとに亘って配されている。
おむつ1においては図7に示すように、外装体3が、吸収体23の縦方向Xの前後端部23A,23Bそれぞれから外方に位置して横方向Yに延びる腹側ウエストフラップFA及び背側ウエストフラップFBを有している。そして外装体3は、図6〜図8に示すように、おむつ1の外面を形成する非肌当接面側の外層シート6、外層シート6の肌当接面側に配された内層シート3iを有し、外層シート6は、内層シート3iの縦方向Xの前後端部から延出する延出部分が内層シート3iの肌当接面側に折り返された折り返し部分6Rを備えている。外層シート6の折り返し部分6Rは、図7に示すように、横方向Yに長い矩形状に形成されている。吸収性本体2の前後端部23A,23Bは、それぞれ、折り返し部分6Rによって被覆されている。
前述した通り、おむつ1は着用時に着用者の腰周りに対応する腰周り部として、腹側領域A及び背側領域Bを有しているところ、両領域A,Bには図7に示すように、伸縮領域として、少なくともウエスト伸縮部G1及び胴周り下部伸縮部G2が形成され、さらにはレッグ伸縮部G3も形成され得る。即ち外装体3は、両領域A,Bにおいて、外装体3を構成する外層シート6と内層シート3iとの間に、横方向Yに伸長した状態で、縦方向Xに間欠的に配された複数の弾性部材71を具備しており、これにより両領域A,Bに、横方向Yに伸縮性を有する伸縮領域としてウエスト伸縮部G1及び胴周り下部伸縮部G2が形成されている。また外装体3は、両領域A,Bそれぞれから股下領域Cにわたって、外層シート6と内層シート3iとの間に、所定方向に伸長した状態で配された複数のレッグ弾性部材72を具備しており、これによりこれらの領域A,B,Cに、伸縮領域としてレッグ伸縮部G3が形成され得る。
おむつ1においては、ウエスト伸縮部G1は、図6及び図7に示すように、縦方向Xにおいて、吸収性本体2を構成する吸収体23の縦方向Xの前後端部23A,23Bの端縁よりも縦方向Xの外方(横中心線CL2側と反対側)に位置するエンドフラップに形成されている。また、おむつ1においては、胴周り下部伸縮部G2は、縦方向Xにおいて、ウエスト伸縮部G1の横中心線CL2側の下端とサイドシール部Sの下端との間に位置するサイドフラップに形成されている。前述した背側ウエストフラップFB及び腹側ウエストフラップFAは、前記エンドフラップ(ウエスト伸縮部G1)に、前記サイドフラップ(胴周り下部伸縮部G2)の一部を合わせた領域でもある。また、おむつ1においては、レッグ伸縮部G3は、図6及び図7に示すように、レッグ開口部LOの周縁部に形成されている。
おむつ1は、図6〜図8に示すように、汗を吸収可能な吸汗シート10(図1参照)を具備しているところ、この吸汗シート10は、前述した本発明の積層不織布の一実施形態である積層不織布10である。吸汗シート10は、第1面10a(疎水性の第1層11の外面)を着用者の肌側に向けて配されている。
おむつ1においては、吸汗シート10は主として着用者の腰周りの汗の吸収を目的とするもので、前述した腰周り部の伸縮領域に配されている。即ち吸汗シート10は、図7に示す如き平面視において一方向に長い形状、具体的には矩形状(帯状)をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、腰周り部たる腹側領域A及び背側領域Bそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されており、少なくともウエスト伸縮部G1及び胴周り下部伸縮部G2にわたって配されている。詳細には、吸汗シート10は、外層シート6の折り返し部分6Rの肌当接面に、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって接合されている。折り返し部分6Rは、おむつ1の着用時において吸収体23よりも着用者の肌に近い位置に配されており(図8参照)、従って、折り返し部分6Rの肌当接面に配された吸汗シート10は、おむつ1の着用時において吸収体23よりも着用者の肌に近い位置に配され、着用者の肌に接触し得る。
以上のような構成を有するおむつ1においては、吸汗機能を有する吸汗シート10(積層不織布10)が、腰周り部である腹側領域A及び背側領域Bそれぞれの肌当接面側において、おむつ1の着用者の肌の最も近くに配され、且つその吸汗シート10の配置領域が、ウエスト伸縮部G1及び胴周り下部伸縮部G2を含む、横方向Yに伸縮性を有する伸縮領域であるため、おむつ1の着用時には、該伸縮領域の収縮力に起因する締め付けによって、吸汗シート10の疎水性の第1面10a(図1参照)が着用者の肌にフィット性良く当接し、肌から発散した汗を素早く吸収・蒸散し得る。
おむつ1においては前述した通り、吸汗シート10(積層不織布10)は伸縮領域に配されているので、着用者の肌に対するフィット性の向上の観点からは、吸汗シート10も該伸縮領域と同方向即ち横方向Yに伸縮性を有することが好ましい。斯かる観点から、吸汗シート10における第1層11と第2層12との間に、横方向Yに伸縮性を有する弾性部材(伸縮性部材)が配されていることが好ましい。この弾性部材については前述した通りである。
おむつ1の各部の形成材料について説明すると、吸収性本体2を構成する表面シート21、裏面シート22、吸収体23及び防漏カフ24等としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート22としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。吸収体23としては、吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成された吸収コアをティッシュペーパーによって被覆されているものを用いることができる。また、防漏カフ24としては、撥水性の単層又は多層構造の不織布等を用いることができる。また、弾性部材(防漏カフ形成用弾性部材25、弾性部材71、レッグ弾性部材72等)としては、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。弾性部材の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、楕円形、若しくは多角形状等の糸状(糸ゴム等)、又は紐状(平ゴム等)のもの等を好ましく用いることができる。また、おむつ1の構成部材どうしを接合する接合手段としては、この種の吸収性物品に従来用いられているホットメルト接着剤等の各種接着剤を用いることができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えばおむつ1においては、本発明の積層不織布の一実施形態である積層不織布10が吸汗シート10として使用されているが、本発明の吸収性物品は、本発明の積層不織布を具備し、且つ該積層不織布がその第1面(層間融着部を有する疎水性の面)を着用者の肌側に向けて配されていればよく、本発明の積層不織布は、吸汗シート以外の他の構成部材として使用することができるし、また、吸汗シートとして使用する場合でも、その配置箇所はおむつ1における吸汗シート10の配置箇所に限定されない。
本発明の積層不織布の、吸収性物品の構成部材としての他の用途として、吸収体よりも着用者の肌に近い位置に配される表面シートが挙げられる。即ち例えばおむつ1において、表面シート21として積層不織布10を用いることができる。
また、おむつ1の外装体3では、図7に示すように、外層シート6と内層シート3iとの間に弾性部材71が配されているが、弾性部材71は配されていなくてもよい。弾性部材71を配しない形態で伸縮領域を形成する場合、外装体3の構成部材として、横方向Yに伸縮性を有する伸縮性不織布を用いればよい。
また、おむつ1においては、図7に示すように、外装体3が腹側領域A、股下領域C及び背側領域Bにわたる連続した形状をなしているが、これに代えて、外装体3が腹側外装体、背側外装体及び股下外装体にそれぞれ別部材として区分された分割型の形状をなしていてもよい。
また、本発明の吸収性物品は、前述したおむつ1の如きパンツ型使い捨ておむつに限定されず、体液の吸収に用いられる物品全般に適用することができ、例えば、展開型使い捨ておむつ、生理用ナプキンに適用することができる。
さらに、本発明の吸汗シートは、前述した吸収性物品への適用に限定されず、吸収性物品以外の物品にも適用することができる。例えば、使用者が汗を拭くために用いるシートそのものとして、本発明の吸汗シートを用いることができる。その他にも、靴底用中敷、脇汗パッド、アイマスク、フェイスマスク等に適用することができ、着用者の肌側に向けて本発明の吸汗シートを配することにより、足底や脇、顔から発散した汗を素早く吸収・蒸散し得る。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有する積層不織布であって、
前記積層構造は、前記積層不織布の一方の表面である第1面と、他方の表面である第2面とを有し、該第1面が、疎水性の第1層からなり、該第1層の該第2面側に、親水性の第2層が配されており、
前記積層構造は、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部を有し、
前記第1層は、前記層間融着部に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部を有し、
前記第1面及び前記第2面それぞれの面積に対する当該面の前記層間融着部と前記繊維間融着部との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、前記第1面は前記第2面に比して融着部面積率が大きい積層不織布。
<2>
前記第1層の前記繊維間融着部は、その厚みが、前記第1層における融着部を除く部分の厚みの1/3以下である前記<1>に記載の積層不織布。
<3>
前記第1面の融着部面積率と前記第2面の融着部面積率との比率が、前者/後者として、1.3〜3.0である前記<1>又は<2>に記載の積層不織布。
<4>
前記層間融着部と前記繊維間融着部とは、配置パターン、融着部単体の平面視形状、融着部単体の面積、融着部間距離、ピッチのうちの少なくとも2つが異なる前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<5>
前記層間融着部は、前記第2面側から前記第1面側に凹状に窪んでいる前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<6>
前記繊維間融着部は、前記第1面側から前記第2面側に凹状に窪んでいる前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<7>
前記第1面は、前記繊維間融着部が複数散在している繊維間融着部分散配置領域を有し、該繊維間融着部分散配置領域の任意の位置に半径2mmの円を仮想的に設けた場合、その仮想円内に少なくとも1個の前記繊維間融着部の一部又は全部が含まれる前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<8>
前記第1面又は前記第2面の面積に対する前記層間融着部の面積の割合が、15%以下である前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<9>
前記繊維間融着部は、前記層間融着部に比して、ピッチが短い前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<10>
1個の前記繊維間融着部の前記第1面における面積が0.3mm2以下であり、1個の前記層間融着部の前記第2面における面積よりも小さい前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<11>
1個の前記繊維間融着部の前記第1面における面積と1個の前記層間融着部の前記第2面における面積との比率は、前者/後者として、0.25以上0.8以下である前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<12>
前記第1層及び前記第2層を合わせた坪量が13g/m2以上38g/m2以下である前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<13>
前記第1層の坪量が8g/m2以上18g/m2以下である前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<14>
前記第2層の坪量が5g/m2以上20g/m2以下である前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<15>
前記第2層の前記第2面側に、長繊維を含む長繊維層が配されている前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<16>
前記第2層は、前記長繊維層に比して親水度が高い前記<15>に記載の積層不織布。
<17>
前記第2層は、親水化剤が練り込まれた繊維を含む親水性不織布である前記<1>〜<16>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<18>
前記第2層は、前記第1層に比して、構成繊維の繊維間距離が短い前記<1>〜<17>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<19>
前記第2層の構成繊維は、前記第1層の構成繊維に比して、単位面積当たりの繊維量が多い前記<1>〜<18>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<20>
前記第2層の構成繊維は、前記第1層の構成繊維に比して、繊維径が小さい前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<21>
前記第1層と前記第2層との間に弾性部材が介在されている前記<1>〜<20>のいずれか1項に記載の積層不織布。
<22>
熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有し、該積層構造を構成する各層どうしが層間融着部にて互いに融着されている、積層不織布の製造方法であって、
周辺部よりも厚みが小さく且つ構成繊維どうしが互いに融着された繊維間融着部を有する、疎水性のベース不織布を搬送し、その搬送中のベース不織布上に、樹脂を紡糸して得た繊維を堆積させて積層体を得る工程と、
前記積層体を部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して前記層間融着部を形成する層間融着工程とを有する、積層不織布の製造方法。
<23>
前記層間融着工程の直前又は直後に、前記積層体にカレンダー処理を施す前記<22>に記載の積層不織布の製造方法。
<24>
前記ベース不織布は、樹脂を紡糸して得た疎水性繊維を堆積させてウエブを得る工程と、該ウエブを部分的に厚み方向に圧縮しつつ加熱して前記繊維間融着部を形成する繊維間融着工程を経て製造され、
前記繊維間融着工程の直前又は直後に、前記ウエブにカレンダー処理を施す前記<22>又は<23>に記載の積層不織布の製造方法。
<25>
前記ベース不織布上に前記繊維を堆積させる前に、該ベース不織布にカレンダー処理を施す前記<22>〜<24>のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
<26>
前記ベース不織布上に堆積させる前記繊維が、親水化剤を練り込んだ樹脂を紡糸して得た親水性繊維である前記<22>〜<25>のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
<27>
前記ベース不織布の前記凹部は、片面側から厚み方向に圧縮されて形成されており、その圧縮面とは反対側の面上に前記繊維を堆積させる前記<22>〜<26>のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
<28>
前記積層体を得る工程において、前記ベース不織布上に複数回にわたって前記繊維を堆積させる前記<22>〜<27>のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
<29>
前記ベース不織布上に前記繊維を堆積させる前に、該ベース不織布上に弾性部材を配する前記<22>〜<28>のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
<30>
熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有する積層不織布を具備する吸収性物品であって、
前記積層構造は、前記積層不織布の一方の表面である第1面と、他方の表面である第2面とを有し、該第1面が、疎水性の第1層からなり、該第1層の該第2面側に、親水性の第2層が配されており、
前記積層構造は、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部を有し、
前記第1層は、前記層間融着部に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部を有し、
前記第1面及び前記第2面それぞれの面積に対する当該面の前記層間融着部と前記繊維間融着部との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、前記第1面は前記第2面に比して融着部面積率が大きく、
前記積層不織布が、前記第1面を着用者の肌側に向けて配されている吸収性物品。
<31>
液保持性の吸収体を具備し、該吸収体よりも着用者の肌に近い位置に前記積層不織布が配されている前記<30>に記載の吸収性物品。
<32>
前記吸収性物品が着用者の腰周りに対応する腰周り部を有し、該腰周り部に前記積層不織布が配されている前記<30>又は<31>に記載の吸収性物品。
<33>
前記腰周り部に伸縮領域を有し、該伸縮領域に前記積層不織布が配されている前記<32>に記載の吸収性物品。
<34>
前記積層不織布における前記第1層と前記第2層との間に弾性部材が介在されている前記<33>に記載の吸収性物品。
<35>
汗を吸収可能な吸汗シートを具備し、該吸汗シートが前記積層不織布である前記<30>に記載の吸収性物品。
<36>
熱可塑性繊維を含む繊維層の積層構造を有し、第1面とこれとは反対側に位置する第2面とを有し、該第1面を着用者の肌側に向けて使用される吸汗シートであって、
前記第1面が、疎水性の第1層からなり、該第1層の前記第2面側に、親親水性の第2層が配されており、
前記積層構造は、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部を有し、
前記第1層は、前記層間融着部に加えてさらに、周辺部よりも厚みが小さく且つ該第1層の構成繊維どうしが互いに融着された、繊維間融着部を有し、
前記第1面及び前記第2面それぞれの面積に対する当該面の前記層間融着部と前記繊維間融着部との合計面積の割合をそれぞれの面の融着部面積率とした場合、前記第1面は前記第2面に比して融着部面積率が大きい吸汗シート。
<37>
前記<1>〜<21>のいずれか1項に記載の積層不織布の汗を吸収するための使用。
<38>
前記<1>〜<21>のいずれか1項に記載の積層不織布を用いた汗を吸収する方法。
本発明によれば、汗や尿などの体液の吸収性能に優れる積層不織布及びその製造方法並びに吸収性物品及び吸汗シートが提供される。