[実施形態1]
ガス濃度測定装置1に係る実施形態について、図面を参照して説明する。図1〜図5に例示されるように、ガス濃度測定装置1は、測定ガスGm中の特定のガス成分の濃度を測定するために用いられる。測定ガスGmは、測定対象となるガスであり、例えばNO2を含む混合ガスである。具体的には、自動車などの内燃機関から排出される排ガスが例示される。
ガス濃度測定装置1は、NO2検出部2とO2検出部3とNO2濃度算出部41とを備える。NO2検出部2及びO2検出部3は、固体電解質体5と、この固体電解質体5に形成された電極21、22、31、32とから構成される。ガス濃度測定装置1は、ガスセンサとも呼ばれる。
ガス濃度測定装置1は、例えばガスセンサ素子11Eを備える。ガスセンサ素子11Eは、測定ガスGmに曝される測定ガス面5mと、基準ガスGbに曝される基準ガス面5bとを有する固体電解質体5を有する。測定ガス面5mを第1主面といい、基準ガス面5bを第2主面ということもできる。固体電解質体5の形状は、図示されるように平板状等の板状であるが、コップ形状等の有底筒状であってもよく、棒状、円盤状、球状、粒子状、ペレット状、不定形状など他の形状であってもよい。
固体電解質体5は、例えば酸素イオン伝導性の固体電解質を主成分とする。固体電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニアからなる。イットリア安定化ジルコニアのことを以下「YSZ」という。固体電解質は、酸素イオン伝導性を有して入れば、特に限定されず、他の材料からなっていてもよい。
ガスセンサ素子11E及びこれを備えるガス濃度測定装置1は、長手方向Yを有することが好ましい。この場合には、ガスセンサ素子11Eを備えるガス濃度測定装置1を、その長手方向Yと平行方向に、測定ガスGmが含まれる例えばガス管内に挿入することができる。ガスセンサ素子11Eの長手方向Yにおける両端のうち、ガス管内に挿入されて測定ガスに曝される側の端部を先端、その反対側の端部を基端という。長手方向Yは図1における左右方向であり、長手方向Yの左側がガスセンサ素子11Eの先端側であり、右側が基端側となる。また、ガスセンサ素子11Eの長手方向Yと直交方向であって固体電解質体5の表面に形成される電極と固体電解質体5とが積層される方向と平行方向を、厚み方向Xをという。長手方向Yと厚み方向Xとの双方に直交する方向が横方向Zという。なお、固体電解質体5の表面が曲面の場合には、その径方向、法線方向に、厚み方向X、横方向Zが含まれる。
固体電解質体5の表面には複数の電極が形成されており、各電極と固体電解質体5によって、NO2検出部2及びO2検出部3が形成される。具体的には、固体電解質体5の一部の領域(具体的には、第1領域51)と、NO2検知電極21と、基準電極100とからNO2検出部2が形成され、NO2検出部2の形成部位とは異なる固体電解質体5の別の領域(具体的には、第2領域52)と、O2検知電極31と基準電極100とからO2検出部3が形成される。NO2検出部2及びO2検出部3は、板状の1つの固体電解質体5を異なる領域で共有し、例えば長手方向Yに沿ってそれぞれ並んで配置される。本形態のガス濃度測定装置は、NO2及びO2ガスのように複数のガスの濃度を検出できるため、マルチセンサと呼ぶことができる。
NO2検知電極21及びO2検知電極31は、例えば、測定ガス面5mに形成され、基準電極100は、基準ガス面5bに形成される。NO2検知電極21と基準電極100、O2検知電極31と基準電極100は、それぞれ、固体電解質体5を介して相互に対向するように形成されている。具体的には、固体電解質体5の第1領域51においては、厚み方向Xに、基準電極100、第1領域51、及びNO2検知電極21が順次積層形成されている。固体電解質体5の第2領域52においては、厚み方向Xに、基準電極100、第2領域52、及びO2検知電極31が順次積層形成されている。
図1及び図5に例示されるように、基準電極100としては、例えば、第1基準電極22と、この第1基準電極22とは基準ガス面5bにおける異なる位置に形成された第2基準電極32とを形成することができる。第1基準電極22がNO2検出部2の基準電極を形成し、第2基準電極32がO2検出部3の基準電極を形成する。第1基準電極22、第2基準電極32は、例えば貴金属を含有し、貴金属は例えばPt、Au、Pd、Ag、Ruである。本実施形態では、第1基準電極22と第2基準電極32という2つの基準電極を形成しているが、第1基準電極22と第2基準電極32の役割を担う1つの基準電極を形成することも可能である。構成の図示を省略するが、長手方向Yに伸びる1つ基準電極を形成すればよい。
基準ガス面5bには、基準ガス室55bが形成されている。第1基準電極22及び第2基準電極32は、基準ガス室55b内に形成されている。基準ガス室55bは、内部に基準ガスGbが供給される空間と、空間内への基準ガスGbの入口とを有する。基準ガスGbの入口の位置は、特に限定されないが、例えばガスセンサ素子11Eの長手方向Yにおける中央位置よりも基端側であることが好ましく、基端であることがより好ましい。この場合には、基端側を基準ガスGbに曝すことにより、入口から基準ガス室55b内に基準ガスGbが容易に供給される。基準ガス室55bの入口の位置は、ガスセンサ素子11Eの長手方向Yにおける中央位置よりも先端側であってもよい。この場合には、基準ガス室55bに基準ガスGbが供給され、測定ガス室55mに測定ガスGmが供給されるように、例えば、ガスセンサ素子11Eの外部に設けられる図示しないカバー体により、各ガスの通り道を形成することができる。
測定ガス面5mの少なくとも一部は、ガスセンサ素子11Eの外部に露出している。測定ガス面5mは、例えば測定ガス室55mが形成された測定ガス室形成領域10Rと、測定ガス室55mが形成されていない測定ガス室非形成領域11Rとを有する。測定ガス室非形成領域11Rが、ガスセンサ素子11Eの外部に露出している。測定ガス室非形成領域11Rには、NO2検知電極21が形成されている。
NO2検知電極21の表面には図示しない保護層を配置して、保護層によりNO2検知電極21を被覆することができる。この場合には、測定ガスGm中の被毒物質や飛来物等からNO2検知電極21を保護することができる。保護層は、例えば、ガス透過性のセラミック多孔体にて構成することができる。測定ガスGmが速やかにNO2検知電極21に到達するように、セラミック多孔体の気孔率や気孔径を調整することが望ましい。
NO2検知電極21は、Fe及び/又はNiを含む酸化物を含有する。つまり、NO2検知電極21は、Fe及びNiの少なくとも一方を含む酸化物を含有する。この酸化物が測定ガスGm中のNO2と反応することによってNO2を検出することができる。Feを含む酸化物としては、Fe2O3の他、FeO、Fe3O4、FeTiO3、FeAl2O4などの少なくともFeを含有する酸化物が例示される。Niを含む酸化物としては、NiOの他、NiFe2O4、La2NiO4などの少なくともNiを含む複合酸化物が例示される。NO2検知電極21は、FeとNiとを少なくとも含有する複合酸化物を含有してもよい。好ましくは、Feを含む酸化物はFe2O3であり、Niを含む酸化物はNiOである。以下の説明において、Fe及びNiの少なくとも一方を含む酸化物のことを、適宜「NO2検出成分」という。
NO2検知電極21は、固体電解質を含有することができる。この場合には、NO2検知電極21と固体電解質体5との密着性が向上すると共に、例えば、気相(測定ガスGm)と、NO2検出成分と、固体電解質との三相界面が増える。三相界面の増大により、NO2検知電極21の反応性が向上する。なお、同様の観点から、O2検知電極31、基準電極100などの他の電極も、固体電解質を含有することができる。各電極中に含まれる固体電解質の具体例は、上述の固体電解質体5と同様であり、好ましくは固体電解質体5と同じ材料である。
測定ガス面5mには、測定ガス室形成領域10Rと、測定ガス室非形成領域11Rが存在する。測定ガス室形成領域10Rには測定ガス室55mが設けられており、測定ガス室55m内には測定ガスGmが供給される。測定ガス室55mは、例えば、測定ガスGmが供給される空間と、この空間内への測定ガスGmの入口と、拡散抵抗層551とを有する。拡散抵抗層551の形成位置は、例えば測定ガス室55mへの入口に形成される。測定ガスGmが拡散抵抗層551を通って測定ガス室55m内に供給されるように拡散抵抗層を形成することができる。拡散抵抗層551は、例えばAl2O3のような多孔質セラミックスからなるが、材質は特に限定されず、測定ガスGmとの反応性の低い材質が好適である。
測定ガス室55mは固体電解質体5の第2領域52の測定ガス面5mに面する。O2検知電極31は、測定ガス室55m内に形成される。測定ガス室55m内には拡散抵抗層551を通過した測定ガスGmが供給され、O2検知電極31に至る。O2検知電極31は、例えば貴金属を含有し、貴金属は例えばPt、Au、Pd、Ag、Ruである。
測定ガス室55m及び基準ガス室55bは、例えばアルミナのような絶縁性セラミックスからなる絶縁体181、182、18により形成される。具体的には、測定ガス室55m及び基準ガス室55bは、固体電解質体5との間に空間が形成されるように絶縁体181,182、18を配置することにより形成される。
NO2検出部2は、混成電位式であることが好ましい。この場合には、ガス濃度が低い時の感度が大きいという効果が得られる。ただし、混成電位式の場合には、O2濃度の影響を受けるため、O2濃度を別に測定して、このO2濃度によってNO2濃度を補正する必要がある。そのため、ガス濃度測定装置1にO2検出部3を設ける。O2検出部3は、限界電流式であることが好ましい。一般に使われるA/Fセンサと同様に、電位式においては、O2濃度が高いときの感度が小さいのに対して、限界電流式においては、O2濃度が高いときでも感度が大きく、高精度の測定が可能である。このように混成電位式のNO2検出部2と、限界電流式のO2検出部3とを組み合わせることにより、低濃度のNO2と高濃度のO2が混在する場合でも高い精度でNO2濃度の測定が可能である。
NO2検出部2及びO2検出部3の形成位置は、特に限定されないが、いずれも、ガスセンサ素子11Eの先端側に形成することが好ましい。この場合には、ガスセンサ素子11Eの先端側を測定ガスGmに曝すことにより、NO2検出部2及びO2検出部3がそれぞれ測定ガスGmに曝すことができるため、測定ガスGmのNO2濃度及びO2濃度を容易に測定することができる。
ガスセンサ素子11Eには、ヒータ部19を設けることができる。この場合には、ヒータ部19により、ガスセンサ素子11Eをガス濃度の測定に適した温度に加熱することができる。ヒータ部19は、例えば、基準ガス室55bを形成する絶縁体18に発熱体17が埋設されて、ガスセンサ素子11Eと一体的に形成される。ヒータ部19の形成位置は、適宜変更可能であるが、固体電解質体5の近くに形成することが好ましい。
発熱体17は、図示しない外部電源から電力供給されて通電により発熱する。絶縁体18は、アルミナ等の絶縁性セラミックスからなる。未焼成の複数のセラミックス板の間に、発熱体17を挟んで積層し、さらに固体電解質体5を積層して焼成することにより、ヒータ部19を内蔵するガスセンサ素子11Eを製造することができる。ガスセンサ素子11Eの温度は、図示しない通電制御部によってモニタされ、作動温度となるように制御される。
ガス濃度測定装置1は、例えば、図示しないハウジングによってガスセンサ素子11Eの外周を保持し、測定ガス雰囲気に曝される先端側を通気性のカバー体に収容した状態で、測定ガスGmの通路壁に取り付けられる。測定ガスGmの種類は特に限定されないが、例えば自動車の内燃機関からの排ガスが好適である。基準ガスGbの種類も特に限定されないが、例えば大気が好適である。
NO2検出部2は、測定ガスGm中のNO2濃度に応じた出力信号αを出力する。NO2検出部2は、具体的には出力信号αとして混成電位信号を出力する。ガス濃度測定装置1は、例えば出力信号αを出力する例えば混成電位式の出力回路を有する。
O2検出部3は、測定ガスGm中のO2濃度に応じた出力信号βを出力する。O2検出部3は、具体的には出力信号βとして限界電流信号を出力する。ガス濃度測定装置1は、例えば出力信号βを出力する例えば限界電流式の出力回路を有する。
出力信号αの出力回路及び出力信号βの出力回路は、ガスセンサ素子11Eに、図示しないハウジング、カバー体等を取り付けた一体品(具体的にはガスセンサ)に内蔵させることができる。各出力回路を一体品の外部に設けられた、例えば図示しないセンサコントロールユニット(SCU)、エンジンコントロールユニット(ECU)に設けてもよい。
図1に例示されるように、ガス濃度測定装置1は、NO2濃度算出部41を有する。NO2濃度算出部41は、出力信号βに基づいて算出される濃度Pβに基づき、出力信号αに基づいて算出される濃度Pαを補正するように構成される。このような構成のために、ガス濃度測定装置1には、例えば補正のための演算処理を行う回路を設けることができる。
出力信号は、ネルンストの式にしたがった応答性を示すと考えられる。NO2濃度算出部41における補正は、例えば重回帰分析に基づいて算出される、O2濃度の対数logPO2の項、NO2濃度の対数logPNO2の項、O2濃度の対数とNO2濃度の対数との積logPO2×logPNO2の項、及び定数項を有する回帰式に基づいて行うことができる。また、O2濃度の対数とNO2濃度の対数との積logPO2×logPNO2の項は、積だけに限定されず、O2濃度の対数とNO2濃度の対数との交互作用項であればよい。つまり、重回帰分析において、NO2濃度の項とO2濃度の項との線形結合だけでなく、NO2濃度の項とO2濃度との交互作用項を導入して、補正式を算出することができる。補正の具体例は、後述の実験例において説明する。
NO2検知電極21は、Fe及びNiの少なくとも一方を含む酸化物(つまり、NO2検出成分)を含有するため、NOとはほとんど反応することなく、NO2と反応する。その一方で、このような構成のNO2検知電極21はO2とも反応しうる。したがって、出力信号αは、例えばNO2濃度とO2濃度に応じた出力信号となり、濃度Pαは、具体的にはNO2濃度とO2濃度とを含みうる。O2検知電極31が出力する出力信号βは、O2濃度に応じた出力信号であり、濃度Pβは具体的にはO2濃度となる。したがって、NO2濃度算出部41において、上記の通り補正を行うことにより、濃度Pαから酸素濃度の影響を取り除くことが可能になる。
NO2濃度算出部41の形成位置は特に限定されず、上述のように、ガスセンサ素子11Eに、図示しないハウジング、カバー体等を取り付けた一体品に内蔵させることができる。この一体品とは別体のNO2濃度算出部41を形成してもよい。別体のNO2濃度算出部41を形成する場合には、例えば、ECUなどにNO2濃度算出部41を設けることができる。より具体的には、例えばSCUからの出力信号α及び出力信号βが例えばECUに設けられたNO2濃度算出部41に送られ、NO2濃度算出部41において補正が行われる。NO2濃度算出部41をSCUに形成することもできる。
本実施形態のガス濃度測定装置1は、NO2検出部2とO2検出部3とNO2濃度算出部41とを備える。そして、NO2検出部2が特定のNO2検出成分を含むNO2検知電極21を有している。このNO2検出成分は、NOとはほとんど反応性せず、NO2と反応する。したがって、NO2検出部2は、NOにほとんど影響を受けることなく、NO2を検出することができる。その結果、例えば自動車のエンジンから排出される排ガスのように、測定ガスGmがNOを含んでいても、NO2検出部2は、NO濃度の影響をほとんど受けることなく出力信号αを出力することができる。そして、この出力信号αなどの信号に基づいて、NO2濃度算出部41ではNO2濃度PNO2が算出される。
一方、測定ガスGmがNOを含まない場合には、NO2検出部2は、当然にNOの影響を受けることなく、出力信号αを出力する。つまり、この場合には、出力信号αはNO濃度による影響を全くうけることがない。
このように、ガス濃度測定装置1は、測定ガスGmがNOを含有するか否かに関わらず、NOの影響をほとんど受けることなく、NO2濃度を精度よく測定することができる。
また、測定ガスGmが酸素を含有する場合には、ガス濃度測定装置1におけるO2検出部3が、酸素を検出して酸素濃度に応じた出力信号βを出力する。そして、NO2濃度算出部41では、上記のとおり出力信号βに基づいた補正が行われる。
したがって、NO2検出部2の検知電極21がO2の影響を受けて出力信号αを出力しても、出力信号αに含まれる酸素の影響は、NO2濃度算出部41により補正される。したがって、測定ガスGmが酸素を含有する場合であっても、ガス濃度測定装置1は、測定ガスGm中のNO2濃度を精度よく測定することができる。
一方、測定ガスGmが酸素を含まない場合には、NO2検出部2は、当然に酸素の影響を受けることなく、出力信号αを出力する。つまり、この場合には、出力信号αは酸素濃度による影響を全くうけることがない。
このように、ガス濃度測定装置1は、測定ガスGmが酸素を含有するか否かに関わらず、NO2濃度を精度よく測定することができる。
以上のように、ガス濃度測定装置1は、NO2検出部2が特定の材料を含む検知電極21を有する。そして、ガス濃度測定装置1においては、NO2濃度算出部41が、O2検出部3からの出力信号βに基づいて算出される濃度Pβに基づき、NO2検出部2からの出力信号αに基づいて算出される濃度Pαが補正するように構成されている。したがって、一酸化窒素や酸素が共存するか否かに関わらず、様々な組成の測定ガスGm中のNO2濃度を精度よく測定することができる。なお、本形態のガス濃度測定装置1は、NO2濃度の測定に好適であるが、O2濃度の測定に用いることも可能である。
[変形例1]
本例は、NO2検出部として混成電位式のガスセンサ素子を有し、さらにガスセンサ素子とは別体のO2検出部とを有するガス濃度測定装置の例である。なお、変形例1以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
図6に例示されるように、本例のガス濃度測定装置は、ガスセンサ素子12Eと、O2検出部3とを有し、O2検出部3は、ガスセンサ素子12Eとは別体に設けられている。
ガスセンサ素子12Eは、固体電解質体5と、NO2検知電極21と、基準電極100とを有する。つまり、このガスセンサ素子12EがNO2検出部2を構成している。NO2検出部2は、実施形態1と同様の構成にすることができる。ガスセンサ素子12Eは、実施形態1と同様にヒータ部19を有する。
O2検出部3は、その構成の図示を省略するが、例えば酸素センサが用いられる。酸素センサは、実施形態1におけるO2検出部3のように、例えば、固体電解質体5と、その表面に形成されたO2検知電極31、基準電極100などから構成される。
本例のガス濃度測定装置1においては、ガスセンサ素子12Eと別体に設けられたO2検出部3からの出力信号βに基づいて、ガスセンサ素子12EのNO2検出部2からの出力信号αから算出される濃度PNO2を補正することにより、NO2濃度PNO2を算出することができる。よって、本例のガス濃度測定装置1は、測定ガス中のNO2濃度を精度よく測定することができる。その他の構成は、実施形態1と同様にすることができ、実施形態1と同様の効果を発揮することができる。
[変形例2]
本例は、固体電解質体を2つ有し、各固体電解質体にNO2検出部2及びO2検出部3が形成された例である。図7に例示されるように、本例のガス濃度測定装置1は、ガスセンサ素子13Eを有し、ガスセンサ素子13Eは、固体電解質体5として、第1固体電解質体53と第2固体電解質体54とを有する。
ガスセンサ素子13Eにおいては、厚み方向Xに、ヒータ部19、第2固体電解質体54、第1固体電解質体53が順次積層形成されている。ヒータ部19と第2固体電解質体54との間には、測定ガス室55mが形成されている。第2固体電解質体54の測定ガス面54mは、測定ガス室55mに面しており、測定ガス面54mには、O2検知電極31が形成されている。ガスセンサ素子13Eの長手方向Yの先端には、測定ガス室55m内への測定ガスの入口があり、この入口には拡散抵抗層551が形成されている。測定ガスは、拡散抵抗層551を通って測定ガス室55m内に供給される。
第1固体電解質体53は、測定ガス面53m及び基準ガス面53bを有し、第2固体電解質体54は、測定ガス面54m、基準ガス面54bを有する。第1固体電解質体53の測定ガス面53mにはNO2検知電極21が形成されており、基準ガス面53bには第1基準電極22が形成されている。第2固体電解質体54の測定ガス面54mにはO2検知電極31が形成されており、基準ガス面54bには第2基準電極32が形成されている。
第1固体電解質体53と第2固体電解質体54との間には基準ガス室55bが形成されている。第1固体電解質体53の基準ガス面53b及び第2固体電解質体54の基準ガス面54bは、基準ガス室55bに面している。第1固体電解質体53の基準ガス面53bには、第1基準電極22が形成されており、第2固体電解質体54の基準ガス面54bには、第2基準電極32が形成されている。
第1固体電解質体53の基準ガス面53bと反対側の面は、長手方向Yの先端側において少なくとも部分的にガスセンサ素子13Eの外部に露出し、測定ガス面53mを形成している。第1固体電解質体53の測定ガス面53mには,NO2検知電極21が形成されている。
第1基準電極22と第1固体電解質体53とNO2検知電極21とが順次積層されることにより、NO2検出部2が形成されている。第2基準電極32と第2固体電解質体54とO2検知電極31とが順次積層されることにより、O2検出部3が形成されている。NO2検出部2とO2検出部3とは、図7に例示されるように基準ガス室55bを介して相互に厚み方向Xと平行な方向に並べて配置されるが、長手方向Yに沿って相互にずらして配置してもよい。
図7においては、第1固体電解質体53及び第2固体電解質体54の、長手方向Yにおける基端側に絶縁体181、182が形成されているが、第1実施形態と同様に絶縁体を形成することなく、基端側まで伸びる第1固体電解質体53及び第2固体電解質体54を形成してもよい。その他の構成は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の効果を発揮できる。
[実施形態2]
次に、NOx検出部6を有するガス濃度測定装置1にかかる実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。ガス濃度測定装置1は、ガスセンサ素子14Eを有し、本形態のガスセンサ素子14Eは、NO2検出部2とO2検出部3とNOx検出部6とを有する。NOx検出部6は、測定ガス中のNOx濃度に応じた出力信号γを出力する。NOx濃度は、NO2とNOとの合計濃度であり、トータルNOx濃度ともいわれる。
ガスセンサ素子14Eは、固体電解質体5として、第1固体電解質体53と第2固体電解質体54とを有する。ガスセンサ素子14Eにおいては、厚み方向Xに、ヒータ部19と第2固体電解質体54と第1固体電解質体53とが順次積層されている。ヒータ部19と第2固体電解質体54との間には、測定ガス室55mが形成されている。第2固体電解質体54の測定ガス面54mは測定ガス室55mに面している。第2固体電解質体54の測定ガス面54mには、O2検知電極31及びNOx検知電極611が形成されている。O2検知電極31及びNOx検知電極611は測定ガス室55m内に形成されている。
第1固体電解質体53と第2固体電解質体54との間には、基準ガス室55bが形成されている。第1固体電解質体53及び第2固体電解質体54の基準ガス面53b、54bは、基準ガス室55bに面している。つまり、第1固体電解質体53の基準ガス面53bと第2固体電解質体54の基準ガス面54bとは対向しており、その間に基準ガス室55bが形成されている。第2固体電解質体54の基準ガス面54bには、O2検出部3を形成する基準電極100(具体的には、第2基準電極32)及びNOx検出部6を形成する基準電極100(具体的には、第3基準電極612)が形成されている。
O2検知電極31と第2固体電解質体54と第2基準電極32が順次積層されることにより、O2検出部3が形成されている。また、NOx検知電極611と第2固体電解質体54と第3基準電極612とが順次積層されることにより、NOx検出部6が形成されている。
NOx検知電極611は、例えばAuを含有する。NOx検知電極611の電極成分としては、Au以外にも、Pt、Pd、Ag、Ruなどが用いられる。さらに、NOx検知電極611は、NO2検知電極21などの他の電極と同様に、固体電解質を含有することができる。また、第3基準電極612としては、第1基準電極22、第2基準電極32と同様に、Ptなどの貴金属が用いられる。
第1固体電解質体53の測定ガス面53mにはNO2検知電極21が形成されており、第1固体電解質体53の基準ガス面53bには第1基準電極22が形成されている。第1固体電解質体53の測定ガス面53mは、ガスセンサ素子14Eの外部の露出しており、測定ガスの雰囲気に曝される。NO2検知電極21は、測定ガス面53mに形成されており、測定ガスGmに曝される。第1基準電極22と第1固体電解質体53とNO2検知電極21とが順次積層されることにより、NO2検出部2が形成されている。
測定ガス室55mは、例えばガスセンサ素子14Eの長手方向Yの先端に測定ガスの入口が設けられる。測定ガス室55mの入口には、拡散抵抗層551が形成されており、測定ガスは拡散抵抗層551を通過して測定ガス室55m内に供給される。
測定ガス室55m内では、O2検出部3のO2検知電極31が、NOx検知電極611よりも長手方向Yの先端側に形成されている。つまり、O2検知電極31は、NOx検知電極611よりも測定ガス室55mの入口側に形成されている。排ガスは、測定ガス室55mの入口から内部へ流れるため、O2検知電極31は、NOx検知電極611よりも測定ガス室55m内での排ガスの流れ方向の上流に形成されている。これにより、O2検出部3もNOx検出部6よりも排ガスの流れ方向の上流に形成されることとなる。
したがって、測定ガス室55m内の測定ガスGmは、O2検出部3のO2検知電極31と反応し、次いでNOx検出部6のNOx検知電極611と反応する。つまり、測定ガス室55m内では、O2検知電極31で反応した測定ガスがNOx検知電極611に到達することとなる。
O2検出部3では、測定ガス中の酸素濃度に応答して出力信号βが出力される。さらに、O2検出部3では、O2検知電極31と第2基準電極32との間に電圧が印加されると、測定ガス中の酸素が消費されて酸素濃度が低下する共に、NO2がNOに還元される。つまり、O2検出部がポンプ部3Pとして機能し、ポンプ部3Pは、NOx検出部6の周囲の測定ガスからO2を排出し、さらに測定ガスGm中のNO2をNOに還元する。これは、O2検知電極31が、ポンプ電極として機能し、このO2検知電極31が、測定ガス室55m内の測定ガス中の酸素及びNO2と反応し、生成される酸素イオンを例えば基準ガス室55bへ排出するためである。
その結果、O2検知電極31よりも排ガス流れの下流側に位置するNOx検知電極611には、酸素及びNO2をほとんど含有せずにNOを含有する測定ガスが到達する。そして、NOx検出部6では、NOx検知電極611に到達した測定ガス中のNO濃度に応じた出力信号γが出力される。NOx検出部6で検出されるNOには、測定ガス中にもともと含まれていたNOと、O2検知電極31で還元されたNO2に由来するNOとが含まれる。したがって、出力信号γは、NOとNO2との合計濃度に応答して出力された信号である。つまり、NOx検出部6では、測定ガス中のトータルNOx濃度が検出される。
NOx検出部6では、出力信号γとして例えば限界電流信号が出力される。ガス濃度測定装置1は、NOx濃度算出部42を有し、NOx濃度算出部42では、出力信号γに基づいてNOx濃度が算出される。NOx濃度算出部42は、NO2濃度算出部41と同様に、ガスセンサに内蔵することもできるが、SUC、ECUに設けることもできる。
一方、NO2検出部2は、実施形態1と同様に、酸化鉄などのNO2検出成分を含むNO2検知電極21を有している。NO2検出部2は、NOの影響をほとんど受けない出力信号αを出力する。O2検出部3は、酸素濃度に応じた出力信号βを出力する。そして、NO2濃度算出部41では、出力信号α及び出力信号βに基づいて、実施形態1と同様にNO2濃度PNO2が算出される。
このように、本形態のガス濃度測定装置1では、NO2濃度を精度よく測定することができる共に、NO2とNOとのトータルNOx濃度PNOXを測定することができる。トータルNOx濃度PNOXとNO2濃度PNO2とから、NO濃度の算出が可能であるため、本形態のガス濃度測定装置1は、測定ガス中のNO2濃度と、NO濃度とをそれぞれ測定することができる。さらに、O2検出部3を備えるため、酸素濃度も測定することができる。したがって、ガス濃度測定装置1は、NO2、NO、酸素などのガスを含む測定ガスから、NO2濃度と、NO濃度と、酸素濃度とをそれぞれ測定することができる。その他は、実施形態1と同様の構成にすることができ、実施形態1と同様の効果を発揮できる。
[変形例3]
本例は、固体電解質体を1つ有し、この固体電解質体にNO2検出部2、O2検出部3、及びNOx検出部6がそれぞれ形成されたガスセンサ素子の例である。図11に例示されるように、ガスセンサ素子15Eは、ヒータ部19、固体電解質体5、測定ガス室55m、基準ガス室55bなどを有する。ガスセンサ素子15Eにおいては、ヒータ部19と固体電解質体とが順次積層されている。ヒータ部19と固体電解質体5との間に基準ガス室55bが形成されている。
固体電解質体5は、測定ガス面5mと、基準ガス面5bとを有する。基準ガス面5bには、基準電極100が形成されている。本例では、基準電極100として第1基準電極22と第2基準電極32が形成されている。第1基準電極22がNO2検出部2の基準電極であり、第2基準電極32がO2検出部3とNOx検出部6の基準電極を兼ねている。
測定ガス面5mには、NO2検知電極21と、O2検知電極31、NOx検知電極611がそれぞれ形成されている。測定ガス面5mには、測定ガス室55mが形成されており、O2検知電極31及びNOx検知電極611は、測定ガス室55m内に形成されている。NO2検知電極21は、測定ガス室形成領域10Rよりも長手方向Yの先端側の測定ガス室非形成領域11Rに形成されている。
ガスセンサ素子15Eの長手方向Yの先端側から基端側に向けて、NO2検知電極21、O2検知電極31、及びNOx検知電極611が順次配置されている。NO2検知電極21と、第1基準電極22と、これらの電極に挟まれた固体電解質体5の第1領域51とによって、NO2検出部2が形成されている。O2検知電極31と、第2基準電極32と、これらの電極に挟まれた固体電解質体5の第2領域52とによってO2検出部3が形成されている。NOx検知電極611と、第2基準電極32と、これらの電極によって挟まれた固体電解質体5の第3領域56とによってNOx検出部6が形成されている。
図11に例示されるように、ガスセンサ素子15Eは、長手方向Yの先端側から基端側に向けて順次形成されたNO2検出部2と,O2検出部3と、NOx検出部6とを有し、各検出部2、3、6は1つの固体電解質体5を共有している。O2検出部3は、実施形態2と同様にポンプ部3Pを兼ねている。
本例では、ガスセンサ素子15Eが1つの固体電解質体5を有し、各電極21、22、31、32、611、612は、この1つの固体電解質体5に形成されている。したがって、例えば複数の固体電解質体5を厚み方向Xに平行に配置した、例えば実施形態2のガスセンサ素子14Eなどの素子に比べて、ガスセンサ素子15Eの厚みを小さくすることができる。これにより、ガス濃度測定装置1の小型化が可能になる。
また、本例のガスセンサ素子15Eにおいては、固体電解質体5が1つであるため、ヒータ部19と固体電解質体5との距離が近づくような内部構成にしやすい。したがって、例えば通電によりヒータ部19を発熱させることにより、固体電解質体5を所望の温度に速やかに加熱できる。つまり、ガスセンサ素子15Eの温度制御が容易になる。その他の構成は、例えば実施形態1、実施形態2と同様にすることができ、実施形態1、実施形態2と同様の効果を発揮することができる。
(実験例1)
本例では、NO2検知電極の電極成分を検討する例である。本例では、異なる材質からなるNO2検知電極を有する簡易型のガスセンサ素子を作製し、各ガスに対する応答性を比較評価する。
図12に示す構成の評価用の試験装置と、ガス濃度測定装置1のNO2検出部2に相当するテストピースP1を用いて、NO2の検出を行い、検出される混成電位のガス依存性を調べた。その結果を図13に示す。なお、図13における測定点は、表1における「測定ガスNo.」に相当する。
テストピースP1は、以下のようにして作製した。まず、厚さ0.5mmの円板状の酸素イオン導電性の固体電解質体5を用意した。固体電解質体5の第1主面(すなわち、図12の上端面)にNO2検知電極21を形成し、反対側の第2主面(すなわち、図12の下端面)に、基準電極100を形成した。
固体電解質体5はYSZからなり、NO2検知電極21はFe2O3からなり、基準電極100はPt−YSZからなる。基準電極100は、PtとYSZとを、体積比が3:1(ただし、Pt:YSZ)となるように混合し、その混合物を直径φ8mmとなるように固体電解質体5に印刷形成した後、大気雰囲気下、1400℃×9時間、焼成することにより形成した。NO2検知電極21は、Fe2O3を直径φ8mmとなるように固体電解質体5に印刷形成した後、大気雰囲気下、900℃×9時間、焼成することで形成した。このようにして、評価用のテストピースP1を得た。
また、Fe2O3の代わりにCo3O4を用いた以外はテストピースP1の作製と同様の方法により、テストピースP2を作製した。テストピースP2は、NO2検知電極21がCo3O4−YSZからなる点を除いて、テストピースP1と同様の構成を有する。
図12に示すように、評価用のテストピースP1、P2を、電気炉内に配置したアルミナ管に収容し、電気炉にて温度700℃に加熱した。テストピースP1、P2は、両端開放のアルミナ管内を区画するように配置され、基準電極100側は大気に開放されている。NO2検知電極21側には、測定ガスを供給した。測定ガスとしては、表1に示す組成の各ガスを用いた。表中の「%」、「ppm」それぞれ「質量%」、「質量ppm」である。
表1及び図13より知られるように、Fe2O3を含有する検知電極21を用いた場合には、NO2濃度の変化に対して混成電位が変化するが、NO濃度の変化に対しては混成電位の変化が抑制されている。つまり、Fe2O3を含有する検知電極21は、NOに対する電圧依存性が小さい。これに対し、Co3O4を含有する検知電極21を用いた場合には、NO2濃度及びNO濃度の両方の変化に対して混成電位が変化する。
したがって、ガス濃度測定装置1のNO2検出部2において、Fe2O3を含有する検知電極21を用いることにより、NO2検出部2は、NOの影響をうけることなくNO2濃度に応じた出力信号を出力することができる。なお、図13には示されていないが、Fe2O3を含有する検知電極21及びCo3O4を含有する検知電極21の双方は、酸素濃度に応じて混成電位が変化することを確認している。つまり、Fe2O3及びCo3O4の双方の混成電位は、NO2、O2に依存し、Co3O4の混成電位はさらにNOにも依存するが、Fe2O3の混成電位はNOに対する依存性が小さい。なお、Fe2O3の代わりにNiOを用いてもFe2O3と同様の結果が得られることを確認している。より高いNO2感度が得られ、かつ安価な材料という観点からは、好ましくはFe2O3がよい。
本例のように、NO2検知電極21にFe2O3、NiOなどのFe及びNiの少なくとも一方を含有する酸化物を用いることにより、上述の実施形態、変形例に示す構成が実現できる。すなわち、NO2検知電極21がNOとほとんど反応しないため、NO2検出部2は、NO濃度の影響をほとんどうけることなく、出力信号αを出力する。その結果、実施形態、変形例のように、NO2濃度算出部41において、例えばO2検出部3からの出力信号βによりNO2検出部2からの出力信号αに基づいて算出されるNO2濃度を補正することにより、NO、NO2、O2などを含む測定ガスのNO2濃度を精度よく測定することができる。
[実験例2]
本例は、NO2濃度算出部における補正式の導出の一例を示す例である。なお、実際の補正式は、ガス濃度測定装置1の構成により変わるが、本例と同様にして変数を決定することができる。
実験例1におけるFe2O3を含有するNO2検知電極21を用いたときの混成電位の結果から重回帰分析によって、NO2の濃度算出式、つまり補正式が算出される。本例では、説明変数として、酸素濃度の対数、NO2濃度の対数、及びこれらの交互作用項となる酸素濃度の対数とNO2濃度の対数との積を導入した。したがって、重回帰分析では、下記(式I)で表される回帰式Iが導出できる。さらに、式(I)を変形することにより、式(II)で表されるNO2濃度の式が算出され、重回帰分析の結果から、各係数A〜Dを決定することにより、式(III)の補正式が得られる。各式において、Emixは混成電位を示し、PO2は酸素濃度を示し、PNO2はNO2濃度を示す。
実験例1では、各ガス成分濃度が既知の測定ガスの測定を行っている。そこで、本例では、補正式により算出されるNO2濃度(つまり、計算値)と、実濃度とを比較した。その結果を図14に示す。また、計算値と実濃度との誤差を算出し、その結果を図15に示す。
図14及び図15より知られるように、式IIIで表される補正式によれば、計算値と実濃度との差が小さく、誤差の標準偏差も9.7%であり、ばらつきが小さい。したがって、式IIIのように、酸素濃度とNO2濃度との線形結合ではなく、これらの線形結合にさらに交互作用項を導入して重回帰分析を行うことにより、より正確なNO2濃度の算出が可能になる。つまり、酸素濃度と、NO2濃度と、これらの交互作用項とを説明変数に用いた重回帰分析により導出される補正式に基づいて補正を行うことにより、NO2濃度をさらに精度よく測定することができる。
一方、重回帰分析において交互作用項を用いなかった場合の結果を図16及び図17に示す。つまり、図16及び図17は、説明変数としてlogPO2とlogPNO2を用い、logPO2とlogPNO2との積のような交互作用項を用いずに重回帰分析を行って得られる補正式に基づいた結果を示すものである。つまり、説明変数logPO2とlogPNO2とを線形結合させて得られる補正式に基づいた結果である。
図16及び図17より知られるように、交互作用項を用いない場合には、交互作用項を用いた場合と比較して補正式による計算値と実濃度との差が大きい。さらに、誤差の標準偏差σも大きくなっていた。つまり、図14〜図17の結果からわかるように、酸素濃度とNO2濃度との交互作用項を用いた重回帰分析を用いて得られる補正式により、NO2濃度をより精度よく算出することができる。
また、実験例1におけるCo3O4を含有するNO2検知電極21を用いたときの結果を図18に示す。図18は、式IIIのように、説明変数としてlogPO2と、logPNO2と、logPO2とlogPNO2との積を用いて重回帰分析を用いて得られる補正式を用いた場合の計算値と実濃度との誤差を示す。図18より知られるように、Co3O4を含有するNO2検知電極21では、図15に示されるFe2O3を含有するNO2検知電極21の場合に比べて誤差が大きく、標準偏差σも大きい。
このように、重回帰分析における交互作用項の導入は、Fe2O3を含有するNO2検知電極21を有するガス濃度測定装置において、より正確なNO2濃度の測定を可能にする。
なお、本例では、重回帰分析の交互作用項として、酸素濃度の対数とNO2濃度の対数との積を用いているが、必ずしも積でなくてもよい。例えば、logPNO2/logPO2、log(PNO2+logPO2)等の交互作用項を用いることができる。
つまり、Fe2O3などのFe及びNiの少なくとも一方を含有する酸化物を含有するNO2検知電極21を備えるガス濃度測定装置1では、NO2濃度算出部41における補正は、式IIIのように、酸素濃度とNO2濃度との交互作用項を有する補正式に基づいて行われることが好ましい。酸素濃度と、NO2濃度と、これらの交互作用項とを説明変数に有する補正式に基づいて行うことがより好ましい。
本発明は上記各実施形態、変形例、実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。また、本明細書における各実施形態の構成、各変形例、各実験例の構成は相互に組み合わせることができる。