JP2020045547A - 電解槽の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、これら電解槽に使用される陽極、陰極は、それぞれ電解セルの陽極室、陰極室に溶接、折り込み等の方法により固定され、その後、保管、顧客先へ輸送される。一方、隔膜はそれ自体単独で塩化ビニル製のパイプ等に巻いた状態で保管、顧客先へ輸送される。顧客先では電解セルを電解槽のフレーム上に並べ、隔膜を電解セルの間に挟んで電解槽を組み立てる。このようにして電解セルの製造および顧客先での電解槽の組立が実施されている。このような電解槽に適用しうる構造物として、特許文献1、2には、隔膜と電極が一体となった構造物が開示されている。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、電解槽における電極更新の際の作業効率を向上させることができる、電解槽の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕
陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配され、かつ、電解用電極及び隔膜を含む既存積層体と、を備える既存電解槽に、新たな電解用電極及び新たな隔膜を含む新たな積層体を配することにより、新たな電解槽を製造するための方法であって、
前記既存電解槽から前記既存積層体を除去する工程と、
前記新たな積層体を前記陽極と前記陰極との間に配する工程と、
を有する、電解槽の製造方法。
〔2〕
前記既存積層体において、前記電解用電極が、陽極電解用電極(A1)と陰極電解用電極(B1)とを有する、〔1〕に記載の電解槽の製造方法。
〔3〕
前記新たな積層体において、前記新たな電解用電極が、陽極電解用電極(A2)と陰極電解用電極(B2)とを有する、〔1〕又は〔2〕に記載の電解槽の製造方法。
本実施形態に係る電解槽の製造方法は、陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配され、かつ、電解用電極及び隔膜を含む既存積層体と、を備える既存電解槽に、新たな電解用電極及び新たな隔膜を含む新たな積層体を配することにより、新たな電解槽を製造するための方法であって、前記既存電解槽から前記既存積層体を除去する工程(以下、単に「工程(A)」ともいう。)と、前記新たな積層体を前記陽極と前記陰極との間に配する工程(以下、単に「工程(B)」ともいう。)と、を有する。
上記のように、本実施形態に係る電解槽の製造方法によれば、既存電解槽が、交換可能な部材として、電解用電極及び隔膜を含む既存積層体を備えており、この積層体自体を交換することで電解槽における部材を更新できるため、電解セルの取出、搬出、古い電極の除去、新しい電極の設置・固定、電解槽への運搬・設置、といった煩雑な作業を伴うことなく、電解槽における部材の更新の際の作業効率を向上させることができる。
なお、本明細書において、特に断りがない限り、「本実施形態における電解槽」は、「本実施形態における既存電解槽」及び「本実施形態における新たな電解槽」の双方を包含するものとして説明する。
また、既存積層体における電解用電極と、新たな積層体における新たな電解用電極とは、それぞれ、形状・材質・物性において同様とすることができ、既存積層体における隔膜と、新たな積層体における新たな隔膜とは、それぞれ、形状・材質・物性において同様とすることができ、既存積層体と、新たな積層体とは、それぞれ、形状・材質・物性において同様とすることができる。したがって、本明細書においては、特に断りがない限り、「本実施形態における電解用電極」は、「本実施形態における新たな電解用電極」を包含するものとし、「本実施形態における隔膜」は、「本実施形態における新たな隔膜」を包含するものとし、「本実施形態における積層体」は、「本実施形態における既存積層体」及び「本実施形態における新たな積層体」を包含するものとして説明する。
まず、本実施形態における電解槽の構成単位として使用できる電解セルについて説明する。図1は、電解セル50の断面図である。
電解セル50は、陽極室60と、陰極室70と、陽極室60及び陰極室70の間に設置された隔壁80と、陽極室60に設置された陽極11と、陰極室70に設置された陰極21と、を備える。必要に応じて基材18aと当該基材18a上に形成された逆電流吸収層18bとを有し、陰極室内に設置された逆電流吸収体18と、を備えてもよい。1つの電解セル50に属する陽極11及び陰極21は互いに電気的に接続されている。換言すれば、電解セル50は次の陰極構造体を備える。陰極構造体90は、陰極室70と、陰極室70に設置された陰極21と、陰極室70内に設置された逆電流吸収体18と、を備え、逆電流吸収体18は、図5に示すように基材18aと当該基材18a上に形成された逆電流吸収層18bとを有し、陰極21と逆電流吸収層18bとが電気的に接続されている。陰極室70は、集電体23と、当該集電体を支持する支持体24と、金属弾性体22とを更に有する。金属弾性体22は、集電体23及び陰極21の間に設置されている。支持体24は、集電体23及び隔壁80の間に設置されている。集電体23は、金属弾性体22を介して、陰極21と電気的に接続されている。隔壁80は、支持体24を介して、集電体23と電気的に接続されている。したがって、隔壁80、支持体24、集電体23、金属弾性体22及び陰極21は電気的に接続されている。陰極21及び逆電流吸収層18bは電気的に接続されている。陰極21及び逆電流吸収層は、直接接続されていてもよく、集電体、支持体、金属弾性体又は隔壁等を介して間接的に接続されていてもよい。陰極21の表面全体は還元反応のための触媒層で被覆されていることが好ましい。また、電気的接続の形態は、隔壁80と支持体24、支持体24と集電体23、集電体23と金属弾性体22がそれぞれ直接取り付けられ、金属弾性体22上に陰極21が積層される形態であってもよい。これらの各構成部材を互いに直接取り付ける方法として、溶接等があげられる。また、逆電流吸収体18、陰極21、および集電体23を総称して陰極構造体90としてもよい。
陽極室60は、陽極11または陽極給電体11を有する。ここでいう給電体としては、劣化した電極(すなわち既存電極)や、触媒コーティングがされていない電極等を意味する。本実施形態における電解用電極を陽極側へ挿入した場合には、11は陽極給電体として機能する。本実施形態における電解用電極を陽極側へ挿入しない場合には、11は陽極として機能する。また、陽極室60は、陽極室60に電解液を供給する陽極側電解液供給部と、陽極側電解液供給部の上方に配置され、隔壁80と略平行または斜めになるように配置されたバッフル板と、バッフル板の上方に配置され、気体が混入した電解液から気体を分離する陽極側気液分離部とを有することが好ましい。
本実施形態における電解用電極を陽極側へ挿入しない場合には、陽極室60の枠(すなわち、陽極枠)内には、陽極11が設けられている。陽極11としては、いわゆるDSA(登録商標)等の金属電極を用いることができる。DSAとは、ルテニウム、イリジウム、チタンを成分とする酸化物によって表面を被覆されたチタン基材の電極である。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
本実施形態における電解用電極を陽極側へ挿入した場合には、陽極室60の枠内には、陽極給電体11が設けられている。陽極給電体11としては、いわゆるDSA(登録商標)等の金属電極を用いることもできるし、触媒コーティングがされていないチタンを用いることもできる。また、触媒コーティング厚みを薄くしたDSAを用いることもできる。さらに、使用済みの陽極を用いることもできる。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
陽極側電解液供給部は、陽極室60に電解液を供給するものであり、電解液供給管に接続される。陽極側電解液供給部は、陽極室60の下方に配置されることが好ましい。陽極側電解液供給部としては、例えば、表面に開口部が形成されたパイプ(分散パイプ)等を用いることができる。かかるパイプは、陽極11の表面に沿って、電解セルの底部19に対して平行に配置されていることがより好ましい。このパイプは、電解セル50内に電解液を供給する電解液供給管(液供給ノズル)に接続される。液供給ノズルから供給された電解液はパイプによって電解セル50内まで搬送され、パイプの表面に設けられた開口部から陽極室60の内部に供給される。パイプを、陽極11の表面に沿って、電解セルの底部19に平行に配置することで、陽極室60の内部に均一に電解液を供給することができるため好ましい。
陽極側気液分離部は、バッフル板の上方に配置されることが好ましい。電解中において、陽極側気液分離部は、塩素ガス等の生成ガスと電解液を分離する機能を有する。なお、特に断りがない限り、上方とは、図1の電解セル50における上方向を意味し、下方とは、図1の電解セル50における下方向を意味する。
バッフル板は、陽極側電解液供給部の上方に配置され、かつ、隔壁80と略平行または斜めに配置されることが好ましい。バッフル板は、陽極室60の電解液の流れを制御する仕切り板である。バッフル板を設けることで、陽極室60において電解液(塩水等)を内部循環させ、その濃度を均一にすることができる。内部循環を起こすために、バッフル板は、陽極11近傍の空間と隔壁80近傍の空間とを隔てるように配置することが好ましい。かかる観点から、バッフル板は、陽極11及び隔壁80の各表面に対向するように設けられていることが好ましい。バッフル板により仕切られた陽極近傍の空間では、電解が進行することにより電解液濃度(塩水濃度)が下がり、また、塩素ガス等の生成ガスが発生する。これにより、バッフル板により仕切られた陽極11近傍の空間と、隔壁80近傍の空間とで気液の比重差が生まれる。これを利用して、陽極室60における電解液の内部循環を促進させ、陽極室60の電解液の濃度分布をより均一にすることができる。
隔壁80は、陽極室60と陰極室70の間に配置されている。隔壁80は、セパレータと呼ばれることもあり、陽極室60と陰極室70とを区画するものである。隔壁80としては、電解用のセパレータとして公知のものを使用することができ、例えば、陰極側にニッケル、陽極側にチタンからなる板を溶接した隔壁等が挙げられる。
陰極室70は、本実施形態における電解用電極を陰極側へ挿入した場合には、21は陰極給電体として機能し、本実施形態における電解用電極を陰極側へ挿入しない場合には、21は陰極として機能する。逆電流吸収体を有する場合は、陰極あるいは陰極給電体21と逆電流吸収体は電気的に接続されている。また、陰極室70も陽極室60と同様に、陰極側電解液供給部、陰極側気液分離部を有していることが好ましい。なお、陰極室70を構成する各部位のうち、陽極室60を構成する各部位と同様のものについては説明を省略する。
本実施形態における電解用電極を陰極側へ挿入しない場合には、陰極室70の枠(すなわち、陰極枠)内には、陰極21が設けられている。陰極21は、ニッケル基材とニッケル基材を被覆する触媒層とを有することが好ましい。ニッケル基材上の触媒層の成分としては、Ru、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。触媒層の形成方法としては、メッキ、合金めっき、分散・複合めっき、CVD、PVD、熱分解及び溶射が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。触媒層は必要に応じて複数の層、複数の元素を有してもよい。また、必要に応じて陰極21に還元処理を施してもよい。なお、陰極21の基材としては、ニッケル、ニッケル合金、鉄あるいはステンレスにニッケルをメッキしたものを用いてもよい。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
本実施形態における電解用電極を陰極側へ挿入した場合には、陰極室70の枠内には、陰極給電体21が設けられている。陰極給電体21に触媒成分が被覆されていてもよい。その触媒成分は、もともと陰極として使用されて、残存したものでもよい。触媒層の成分としては、Ru、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。触媒層の形成方法としては、メッキ、合金めっき、分散・複合めっき、CVD、PVD、熱分解及び溶射が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。触媒層は必要に応じて複数の層、複数の元素を有してもよい。また、触媒コーティングがされてない、ニッケル、ニッケル合金、鉄あるいはステンレスに、ニッケルをメッキしたものを用いてもよい。なお、陰極給電体21の基材としては、ニッケル、ニッケル合金、鉄あるいはステンレスにニッケルをメッキしたものを用いてもよい。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
前述の陰極の触媒層用の元素の酸化還元電位よりも卑な酸化還元電位を持つ材料を逆電流吸収層の材料として選択することができる。例えば、ニッケルや鉄などが挙げられる。
陰極室70は集電体23を備えることが好ましい。これにより、集電効果が高まる。本実施形態では、集電体23は多孔板であり、陰極21の表面と略平行に配置されることが好ましい。
集電体23と陰極21との間に金属弾性体22が設置されることにより、直列に接続された複数の電解セル50の各陰極21が陽イオン交換膜51に押し付けられ、各陽極11と各陰極21との間の距離が短くなり、直列に接続された複数の電解セル50全体に掛かる電圧を下げることができる。電圧が下がることにより、消費電量を下げることができる。また、金属弾性体22が設置されることにより、本実施形態における電解用電極を含む積層体を電解セルに設置した際に、金属弾性体22による押し付け圧により、該電解用電極を安定して定位置に維持することができる。
陰極室70は、集電体23と隔壁80とを電気的に接続する支持体24を備えることが好ましい。これにより、効率よく電流を流すことができる。
陽極側ガスケット12は、陽極室60を構成する枠体表面に配置されることが好ましい。陰極側ガスケット13は、陰極室70を構成する枠体表面に配置されていることが好ましい。1つの電解セルが備える陽極側ガスケット12と、これに隣接する電解セルの陰極側ガスケット13とが、陽イオン交換膜51を挟持するように、電解セル同士が接続される(図2参照)。これらのガスケットにより、陽イオン交換膜51を介して複数の電解セル50を直列に接続する際に、接続箇所に気密性を付与することができる。
本実施形態における電解用電極は、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜との積層体として用いる。すなわち、本実施形態における積層体は、電解用電極と隔膜とを含むものである。なお、本実施形態における新たな積層体は、新たな電解用電極及び新たな隔膜を含むものであり、上述したように、既存電解槽における既存積層体とは別体であれば特に限定されず、当該積層体と同様の構成とすることもできる。電解用電極及び隔膜の具体例については、追って詳述する。
捲回体を用いる工程の具体例としては、以下に限定されないが、電解槽上に捲回体を配し、次いで電解槽上で捲回体の捲回状態を解除し、捲回状態から解除された新たな積層体を陽極と陰極との間に配することが好ましい。本実施形態においては、新たな積層体をそのまま捲回して捲回体としてもよく、新たな積層体をコアに捲き付けて捲回体としてもよい。ここで使用しうるコアとしては、特に限定されないが、例えば、略円柱形状を有し、新たな積層体に応じたサイズの部材を用いることができる。上述のように捲回体として用いられる新たな積層体(新たな電解用電極及び新たな隔膜)は、捲回可能なものであれば特に限定されず、その材質や形状等については、本実施形態における捲回体を用いる工程や電解槽の構成等を考慮し、捲回体とする上で適切なものを適宜選択することができる。具体的には、後述する好ましい態様の電解用電極及び隔膜を使用することができる。
本実施形態における工程(A)では、既存電解槽から既存積層体を除去する。除去の方法としては、特に限定されないが、例えば、まずは既存電解槽において、プレス器による隣接する電解セル及び既存積層体の固定状態を解除し、当該電解セルと既存積層体との間に空隙を形成し、次いで、更新対象となる既存積層体を既存電解槽から取り出すことにより、既存積層体を除去することができる。
工程(A)の温度条件としては、特に限定されないが、隔膜が溶融しない温度で実施することが好ましい。ここで、「隔膜が溶融しない温度」は、隔膜の軟化点として特定することができる。当該温度は、隔膜を構成する材料によって変動しうるが、0〜100℃であることが好ましく、5〜80℃であることがより好ましく、10〜50℃であることがさらに好ましい。
また、工程(A)の圧力条件としては、特に限定されないが、常圧下で行われることが好ましい。
本実施形態における工程(B)では、既存電解槽における陽極と陰極との間に新たな積層体を配する。工程(B)の温度条件としては、特に限定されないが、隔膜が溶融しない温度で実施することが好ましい。当該温度は、隔膜を構成する材料によって変動しうるが、0〜100℃であることが好ましく、5〜80℃であることがより好ましく、10〜50℃であることがさらに好ましい。
また、工程(B)の圧力条件としては、特に限定されないが、常圧下で行われることが好ましい。
本実施形態において、電解用電極は、上述のように隔膜と積層体を構成できるもの、すなわち、隔膜と一体化可能なものであれば特に限定されない。本実施形態における電解用電極は、捲回体として用いられるものであることが好ましい。電解用電極は、電解槽において陰極として機能するものであってもよく、陽極として機能するものであってもよい。また、電解用電極の材質・形状・物性等については、本実施形態における工程(A),(B)や電解槽の構成等を考慮し、適切なものを適宜選択することができる。以下、本実施形態における電解用電極の好ましい態様について説明するが、これらはあくまで工程(A),(B)を実施する上で好ましい態様の例示に過ぎず、後述する態様以外の電解用電極も適宜採用することができる。
電解性能をより向上させる観点から、好ましくは0.005N/(mg・cm2)超であり、より好ましくは0.08N/(mg・cm2)以上であり、さらに好ましくは0.1N/mg・cm2以上であり、よりさらに好ましくは0.14N/(mg・cm2)以上である。大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、0.2N/(mg・cm2)以上が更により好ましい。
上記かかる力は、例えば、後述する開孔率、電極の厚み、算術平均表面粗さ等を適宜調整することで上記範囲とすることができる。より具体的には、例えば、開孔率を大きくすると、かかる力は小さくなる傾向にあり、開孔率を小さくすると、かかる力は大きくなる傾向にある。
また、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極及び触媒コーティングがされていない給電体などと良好な接着力を有し、さらに、経済性の観点から、単位面積あたりの質量が、48mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは、30mg/cm2以下であり、さらに好ましくは、20mg/cm2以下であり、さらに、ハンドリング性、接着性及び経済性を合わせた総合的な観点から、15mg/cm2以下であることが好ましい。下限値は、特に限定されないが、例えば、1mg/cm2程度である。
上記単位面積あたりの質量は、例えば、後述する開孔率、電極の厚み等を適宜調整することで上記範囲とすることができる。より具体的には、例えば、同じ厚みであれば、開孔率を大きくすると、単位面積あたりの質量は小さくなる傾向にあり、開孔率を小さくすると、単位面積あたりの質量は大きくなる傾向にある。
粒番号320のアルミナでブラスト加工を施して得られるニッケル板(厚み1.2mm、200mm角)と、イオン交換基が導入されたパーフルオロカーボン重合体の膜の両面に無機物粒子と結合剤を塗布したイオン交換膜(170mm角、ここでいうイオン交換膜の詳細については、実施例に記載のとおりである)と電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させ、この積層体を純水にて十分に浸漬した後、積層体表面に付着した余分な水分を除去することで測定用サンプルを得る。なお、ブラスト処理後のニッケル板の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.5〜0.8μmである。算術平均表面粗さ(Ra)の具体的な算出方法は、実施例に記載のとおりである。
温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この測定用サンプル中の電極サンプルのみを引張圧縮試験機を用いて、垂直方向に10mm/分で上昇させて、電極サンプルが、垂直方向に10mm上昇したときの加重を測定する。この測定を3回実施して平均値を算出する。
この平均値を、電極サンプルとイオン交換膜の重なり部分の面積、およびイオン交換膜と重なっている部分の電極サンプルにおける質量で除して、単位質量・単位面積あたりのかかる力(1)(N/mg・cm2)を算出する。
粒番号320のアルミナでブラスト加工を施して得られるニッケル板(厚み1.2mm、200mm角、上記方法(i)と同様のニッケル板)と、電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させ、この積層体を純水にて十分に浸漬した後、積層体表面に付着した余分な水分を除去することで測定用サンプルを得る。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この測定用サンプル中の電極サンプルのみを、引張圧縮試験機を用いて、垂直方向に10mm/分で上昇させて、電極サンプルが、垂直方向に10mm上昇したときの加重を測定する。この測定を3回実施して平均値を算出する。
この平均値を、電極サンプルとニッケル板の重なり部分の面積、およびニッケル板と重なっている部分における電極サンプルの質量で除して、単位質量・単位面積あたりの接着力(2)(N/mg・cm2)を算出する。
ヘキサン(20.44mN/m)、アセトン(23.30mN/m)、メタノール(24.00mN/m)、エタノール(24.05mN/m)、エチレングリコール(50.21mN/m)水(72.76mN/m)
表面張力の大きな液体であれば、隔膜と電解用電極とが一体となり(積層体となり)やすく、電極更新がより容易となる傾向にある。隔膜と電解用電極との間の液体は表面張力によりお互いが張り付く程度の量でよく、その結果液体量が少ないため、該積層体の電解セルに設置した後に電解液に混ざっても、電解自体に影響を与えることはない。
実用状の観点からは、液体としてエタノール、エチレングリコール、水等の表面張力が24mN/mから80mN/mの液体を使用することが好ましい。特に水、または水に苛性ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を溶解させてアルカリ性にした水溶液が好ましい。また、これらの液体に界面活性剤を含ませ、表面張力を調整することもできる。界面活性剤を含むことで、隔膜と電解用電極との接着性が変化し、ハンドリング性を調整することができる。界面活性剤としては、特に限定されず、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。
イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させる。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この積層体中の電極サンプルが外側になるように、ポリエチレンのパイプ(外径280mm)の曲面上に積層体を置き、積層体とパイプを純水にて十分に浸漬させ、積層体表面及びパイプに付着した余分な水分を除去し、その1分後に、イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプルとが密着している部分の面積の割合(%)を測定する。
〔方法(3)〕
イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させる。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この積層体中の電極サンプルが外側になるように、ポリエチレンのパイプ(外径145mm)の曲面上に積層体を置き、積層体とパイプを純水にて十分に浸漬させ、積層体表面及びパイプに付着した余分な水分を除去し、その1分後に、イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプルとが密着している部分の面積の割合(%)を測定する。
なお、開孔率とは、単位体積あたりの開孔部の割合である。開孔部もサブミクロンオーダーまで勘案するのか、目に見える開口のみ勘案するのかによって、算出方法が様々である。本実施形態では、電極のゲージ厚み、幅、長さの値から体積Vを算出し、更に重量Wを実測することにより、開孔率Aを下記の式で算出できる。
A=(1−(W/(V×ρ))×100
ρは電極の材質の密度(g/cm3)である。例えばニッケルの場合は8.908g/cm3、チタンの場合は4.506g/cm3である。開孔率の調整は、パンチングメタルであれば単位面積あたりに金属を打ち抜く面積を変更する、エキスパンドメタルであればSW(短径)、LW(長径)、送りの値を変更する、メッシュであれば金属繊維の線径、メッシュ数を変更する、エレクトロフォーミングであれば使用するフォトレジストのパターンを変更する、不織布であれば金属繊維径および繊維密度を変更する、発泡金属であれは空隙を形成させるための鋳型を変更する等の方法により適宜調整することができる。
〔方法(A)〕
温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下、イオン交換膜と前記電解用電極とを積層した積層体のサンプルを、外径φ32mmの塩化ビニル製芯材の曲面上に巻きつけて固定し、6時間静置したのちに当該電解用電極を分離して水平な板に載置したとき、当該電解用電極の両端部における垂直方向の高さL1及びL2を測定し、これらの平均値を測定値とする。
これらの不具合を防止するべく、通気抵抗を24kPa・s/m以下とすることが好ましい。
上記同様の観点から、0.19kPa・s/m未満であることがより好ましく、0.15kPa・s/m以下であることがさらに好ましく、0.07kPa・s/m以下であることがさらにより好ましい。
なお、通気抵抗が一定以上大きいと、陰極の場合には電極で発生したNaOHが電解用電極と隔膜の界面に滞留し、高濃度になる傾向があり、陽極の場合には塩水供給性が低下し、塩水濃度が低濃度になる傾向があり、このような滞留に起因して生じ得る隔膜への損傷を未然に防止する上では、0.19kPa・s/m未満であることが好ましく、0.15kPa・s/m以下であることがより好ましく、0.07kPa・s/m以下であることが更に好ましい。
一方、通気抵抗が低い場合、電解用電極の面積が小さくなるため、電解面積が小さくなり電解性能(電圧等)が悪くなる傾向にある。通気抵抗がゼロの場合は、電解用電極が設置されていないため、給電体が電極として機能し、電解性能(電圧等)が著しく悪くなる傾向にある。かかる点から、通気抵抗1として特定される好ましい下限値は、特に限定されないが、0kPa・s/m超であることが好ましく、より好ましくは0.0001kPa・s/m以上であり、更に好ましくは0.001kPa・s/m以上である。
なお、通気抵抗1は、その測定法上、0.07kPa・s/m以下では十分な測定精度が得られない場合がある。かかる観点から、通気抵抗1が0.07kPa・s/m以下である電解用電極に対しては、次の測定方法(以下、「測定条件2」ともいう)による通気抵抗(以下、「通気抵抗2」ともいう。)による評価も可能である。すなわち、通気抵抗2は、電解用電極を50mm×50mmのサイズとし、温度24℃、相対湿度32%、ピストン速度2cm/s及び通気量4cc/cm2/sとした場合の通気抵抗である。
上記通気抵抗1及び2は、例えば、後述する開孔率、電極の厚み等を適宜調整することで上記範囲とすることができる。より具体的には、例えば、同じ厚みであれば、開孔率を大きくすると、通気抵抗1及び2は小さくなる傾向にあり、開孔率を小さくすると、通気抵抗1及び2は大きくなる傾向にある。
本実施形態における電解用電極は、電解用電極基材及び触媒層を含むことが好ましい。触媒層は以下の通り、複数の層で構成されてもよいし、単層構造でもよい。
図6に示すように、本実施形態に係る電解用電極101は、電解用電極基材10と、電解用電極基材10の両表面を被覆する一対の第一層20とを備える。第一層20は電解用電極基材10全体を被覆することが好ましい。これにより、電解用電極の触媒活性及び耐久性が向上し易くなる。なお、電解用電極基材10の一方の表面だけに第一層20が積層されていてもよい。
また、図6に示すように、第一層20の表面は、第二層30で被覆されていてもよい。第二層30は、第一層20全体を被覆することが好ましい。また、第二層30は、第一層20の一方の表面だけ積層されていてもよい。
電解用電極基材10としては、特に限定されるものではないが、例えばニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、またはチタンなどに代表されるバルブ金属を使用でき、ニッケル(Ni)及びチタン(Ti)から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
ステンレススチールを高濃度のアルカリ水溶液中で用いた場合、鉄及びクロムが溶出すること、及びステンレススチールの電気伝導性がニッケルの1/10程度であることを考慮すると、電解用電極基材としてはニッケル(Ni)を含む基材が好ましい。
また、電解用電極基材10は、飽和に近い高濃度の食塩水中で、塩素ガス発生雰囲気で用いた場合、材質は耐食性の高いチタンであることも好ましい。
電解用電極基材10の形状には特に限定はなく、目的によって適切な形状を選択することができる。形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。この中でも、パンチングメタルあるいはエキスパンドメタルが好ましい。なお、エレクトロフォーミングとは、写真製版と電気メッキ法を組み合わせて、精密なパターンの金属薄膜を製作する技術である。基板上にフォトレジストにてパターン形成し、レジストに保護されていない部分に電気メッキを施し、金属薄を得る方法である。
電解用電極基材の形状については、電解槽における陽極と陰極との距離によって好適な仕様がある。特に限定されるものではないが、陽極と陰極とが有限な距離を有する場合には、エキスパンドメタル、パンチングメタル形状を用いることができ、イオン交換膜と電極とが接するいわゆるゼロギャップ電解槽の場合には、細い線を編んだウーブンメッシュ、金網、発泡金属、金属不織布、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属多孔箔などを用いることができる。
電解用電極基材10としては、金属多孔箔、金網、金属不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタル又は発泡金属が挙げられる。
パンチングメタル、エキスパンドメタルに加工する前の板材としては、圧延成形した板材、電解箔などが好ましい。電解箔は、更に後処理として母材と同じ元素でメッキ処理を施して、片面あるいは両面に凹凸をつけることが好ましい。
また、電解用電極基材10の厚みは、前述の通り、300μm以下であることが好ましく、205μm以下であることがより好ましく、155μm以下であることが更に好ましく、135μm以下であることが更により好ましく、125μm以下であることがより更により好ましく、120μm以下であることが一層好ましく、100μm以下であることがより一層好ましく、ハンドリング性と経済性の観点から、50μm以下であることがより更に一層好ましい。下限値は、特に限定さないが、例えば、1μmであり、好ましく5μmであり、より好ましくは15μmである。
(第一層)
図6において、触媒層である第一層20は、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物のうち少なくとも1種類の酸化物を含む。ルテニウム酸化物としては、RuO2等が挙げられる。イリジウム酸化物としては、IrO2等が挙げられる。チタン酸化物としては、TiO2等が挙げられる。第一層20は、ルテニウム酸化物及びチタン酸化物の2種類の酸化物を含むか、又はルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物の3種類の酸化物を含むことが好ましい。それにより、第一層20がより安定な層になり、さらに、第二層30との密着性もより向上する。
第二層30は、ルテニウムとチタンを含むことが好ましい。これにより電解直後の塩素過電圧を更に低くすることができる。
(第一層)
触媒層である第一層20の成分としては、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金の少なくとも1種類を含んでもよいし、含まなくてもよい。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金の少なくとも1種類を含む場合、白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金が白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムのうち少なくとも1種類の白金族金属を含むことが好ましい。
白金族金属としては、白金を含むことが好ましい。
白金族金属酸化物としては、ルテニウム酸化物を含むことが好ましい。
白金族金属水酸化物としては、ルテニウム水酸化物を含むことが好ましい。
白金族金属合金としては、白金とニッケル、鉄、コバルトとの合金を含むことが好ましい。
更に必要に応じて第二成分として、ランタノイド系元素の酸化物あるいは水酸化物を含むことが好ましい。これにより、電解用電極101はすぐれた耐久性を示す。
ランタノイド系元素の酸化物あるいは水酸化物としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムから選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。
さらに必要に応じて、第三成分として遷移金属の酸化物あるいは水酸化物を含むことが好ましい。
第三成分を添加することにより、電解用電極101はよりすぐれた耐久性を示し、電解電圧を低減させることができる。
好ましい組み合わせの例としては、ルテニウムのみ、ルテニウム+ニッケル、ルテニウム+セリウム、ルテニウム+ランタン、ルテニウム+ランタン+白金、ルテニウム+ランタン+パラジウム、ルテニウム+プラセオジム、ルテニウム+プラセオジム+白金、ルテニウム+プラセオジム+白金+パラジウム、ルテニウム+ネオジム、ルテニウム+ネオジム+白金、ルテニウム+ネオジム+マンガン、ルテニウム+ネオジム+鉄、ルテニウム+ネオジム+コバルト、ルテニウム+ネオジム+亜鉛、ルテニウム+ネオジム+ガリウム、ルテニウム+ネオジム+硫黄、ルテニウム+ネオジム+鉛、ルテニウム+ネオジム+ニッケル、ルテニウム+ネオジム+銅、ルテニウム+サマリウム、ルテニウム+サマリウム+マンガン、ルテニウム+サマリウム+鉄、ルテニウム+サマリウム+コバルト、ルテニウム+サマリウム+亜鉛、ルテニウム+サマリウム+ガリウム、ルテニウム+サマリウム+硫黄、ルテニウム+サマリウム+鉛、ルテニウム+サマリウム+ニッケル、白金+セリウム、白金+パラジウム+セリウム、白金+パラジウム+ランタン+セリウム、白金+イリジウム、白金+パラジウム、白金+イリジウム+パラジウム、白金+ニッケル+パラジウム、白金+ニッケル+ルテニウム、白金とニッケルの合金、白金とコバルトの合金、白金と鉄の合金、などが挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金を含まない場合、触媒の主成分がニッケル元素であることが好ましい。
ニッケル金属、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。
第二成分として、遷移金属を添加してもよい。添加する第二成分としては、チタン、スズ、モリブデン、コバルト、マンガン、鉄、硫黄、亜鉛、銅、炭素のうち少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
好ましい組み合わせとして、ニッケル+スズ、ニッケル+チタン、ニッケル+モリブデン、ニッケル+コバルトなどが挙げられる。
必要に応じ、第1層20と電解用電極基材10の間に、中間層を設けることができる。中間層を設置することにより、電解用電極101の耐久性を向上させることができる。
中間層としては、第1層20と電解用電極基材10の両方に親和性があるものが好ましい。中間層としては、ニッケル酸化物、白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物が好ましい。中間層としては、中間層を形成する成分を含む溶液を塗布、焼成することで形成することもできるし、基材を空気雰囲気中で300〜600℃の温度で熱処理を実施して、表面酸化物層を形成させることもできる。その他、熱溶射法、イオンプレーティング法など既知の方法で形成させることができる。
触媒層である第一層30の成分としては、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金の少なくとも1種類を含んでもよいし、含まなくてもよい。第二層に含まれる元素の好ましい組み合わせの例としては、第一層で挙げた組み合わせなどがある。第一層と第二層の組み合わせは、同じ組成で組成比が異なる組み合わせでもよいし、異なる組成の組み合わせでもよい。
次に電解用電極101の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、酸素雰囲気下での塗膜の焼成(熱分解)、あるいはイオンプレーティング、メッキ、熱溶射等の方法によって、電解用電極基材上に第一層20、好ましくは第二層30を形成することにより、電解用電極101を製造できる。このような本実施形態の製造方法では、電解用電極101の高い生産性を実現できる。具体的には、触媒を含む塗布液を塗布する塗布工程、塗布液を乾燥する乾燥工程、熱分解を行う熱分解工程により、電解用電極基材上に触媒層が形成される。ここで熱分解とは、前駆体となる金属塩を加熱して、金属又は金属酸化物とガス状物質に分解することを意味する。用いる金属種、塩の種類、熱分解を行う雰囲気等により、分解生成物は異なるが、酸化性雰囲気では多くの金属は酸化物を形成しやすい傾向がある。電極の工業的な製造プロセスにおいて、熱分解は通常空気中で行われ、多くの場合、金属酸化物あるいは金属水酸化物が形成される。
(塗布工程)
第一層20は、ルテニウム、イリジウム及びチタンのうち少なくとも1種類の金属塩を溶解した溶液(第一塗布液)を電解用電極基材に塗布後、酸素の存在下で熱分解(焼成)して得られる。第一塗布液中のルテニウム、イリジウム及びチタンの含有率は、第一層20と概ね等しい。
電解用電極基材100に第一塗布液を塗布した後、10〜90℃の温度で乾燥し、350〜650℃に加熱した焼成炉で熱分解する。乾燥と熱分解の間に、必要に応じて100〜350℃で仮焼成を実施してもよい。乾燥、仮焼成及び熱分解温度は、第一塗布液の組成や溶媒種により、適宜選択することが出来る。一回当たりの熱分解の時間は長い方が好ましいが、電極の生産性の観点から3〜60分が好ましく、5〜20分がより好ましい。
第二層30は、必要に応じて形成され、例えば、パラジウム化合物及び白金化合物を含む溶液あるいはルテニウム化合物およびチタン化合物を含む溶液(第二塗布液)を第一層20の上に塗布した後、酸素の存在下で熱分解して得られる。
(塗布工程)
第一層20は、種々の組み合わせの金属塩を溶解した溶液(第一塗布液)を電解用電極基材に塗布後、酸素の存在下で熱分解(焼成)して得られる。第一塗布液中の金属の含有率は、第一層20と概ね等しい。
電解用電極基材10に第一塗布液を塗布した後、10〜90℃の温度で乾燥し、350〜650℃に加熱した焼成炉で熱分解する。乾燥と熱分解の間に、必要に応じて100〜350℃で仮焼成を実施してもよい。乾燥、仮焼成及び熱分解温度は、第一塗布液の組成や溶媒種により、適宜選択することが出来る。一回当たりの熱分解の時間は長い方が好ましいが、電極の生産性の観点から3〜60分が好ましく、5〜20分がより好ましい。
中間層は、必要に応じて形成され、例えば、パラジウム化合物あるいは白金化合物を含む溶液(第二塗布液)を基材の上に塗布した後、酸素の存在下で熱分解して得られる。あるいは、溶液を塗布することなく基材を加熱するだけで基材表面に酸化ニッケル中間層を形成させてもよい。
第一層20はイオンプレーティングで形成させることもできる。
一例として、基材をチャンバー内に固定し、金属ルテニウムターゲットに電子線を照射する方法が挙げられる。蒸発した金属ルテニウム粒子は、チャンバー内のプラズマ中でプラスに帯電され、マイナスに帯電させた基板上に堆積する。プラズマ雰囲気はアルゴン、酸素であり、ルテニウムはルテニウム酸化物として基材上に堆積する。
第一層20は、メッキ法でも形成させることもできる。
一例として、基材を陰極として使用し、ニッケルおよびスズを含む電解液中で電解メッキを実施すると、ニッケルとスズの合金メッキを形成させることができる。
第一層20は、熱溶射法でも形成させることができる。
一例として、酸化ニッケル粒子を基材上にプラズマ溶射することにより、金属ニッケルと酸化ニッケルが混合した触媒層を形成させることができる。
〔イオン交換膜〕
イオン交換膜としては、電解用電極と積層体とすることができれば、特に限定されず、種々のイオン交換膜を適用することができる。本実施形態においては、イオン交換基を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体を含む膜本体と、該膜本体の少なくとも一方面上に設けられたコーティング層とを有するイオン交換膜を用いることが好ましい。また、コーティング層は、無機物粒子と結合剤とを含み、コーティング層の比表面積は、0.1〜10m2/gであることが好ましい。かかる構造のイオン交換膜は、電解中に発生するガスによる電解性能への影響が少なく、安定した電解性能を発揮する傾向にある。
上記、イオン交換基が導入されたパーフルオロカーボン重合体の膜とは、スルホ基由来のイオン交換基(−SO3−で表される基、以下「スルホン酸基」ともいう。)を有するスルホン酸層と、カルボキシル基由来のイオン交換基(−CO2−で表される基、以下「カルボン酸基」ともいう。)を有するカルボン酸層のいずれか一方を備えるものである。強度及び寸法安定性の観点から、強化芯材をさらに有することが好ましい。
無機物粒子及び結合剤については、以下コーティング層の説明の欄に詳述する。
先ず、イオン交換膜1を構成する膜本体1aについて説明する。
膜本体10は、陽イオンを選択的に透過する機能を有し、イオン交換基を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体を含むものであればよく、その構成や材料は特に限定されず、適宜好適なものを選択することができる。
CF2=CFOCF2−CF(CF3)OCF2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2COOCH3、
CF2=CF[OCF2−CF(CF3)]2O(CF2)2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)3COOCH3、
CF2=CFO(CF2)2COOCH3、
CF2=CFO(CF2)3COOCH3。
CF2=CFOCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CF(CF2)2SO2F、
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F。
イオン交換膜は、膜本体の少なくとも一方面上にコーティング層を有することが好ましい。また、図7に示すとおり、イオン交換膜1においては、膜本体1aの両面上にそれぞれコーティング層11a及び11bが形成されている。
コーティング層は無機物粒子と結合剤とを含む。
イオン交換膜は、膜本体の内部に配置された強化芯材を有することが好ましい。
開口率=(B)/(A)=((A)−(C))/(A) …(I)
イオン交換膜は、膜本体の内部に連通孔を有することが好ましい。
イオン交換膜の好適な製造方法としては、以下の(1)工程〜(6)工程を有する方法が挙げられる。
(1)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を製造する工程。
(2)工程:必要に応じて、複数の強化芯材と、酸又はアルカリに溶解する性質を有し、連通孔を形成する犠牲糸と、を少なくとも織り込むことにより、隣接する強化芯材同士の間に犠牲糸が配置された補強材を得る工程。
(3)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する前記含フッ素系重合体をフィルム化する工程。
(4)工程:前記フィルムに必要に応じて前記補強材を埋め込んで、前記補強材が内部に配置された膜本体を得る工程。
(5)工程:(4)工程で得られた膜本体を加水分解する工程(加水分解工程)。
(6)工程:(5)工程で得られた膜本体に、コーティング層を設ける工程(コーティング工程)。
(1)工程では、上記第1群〜第3群に記載した原料の単量体を用いて含フッ素系重合体を製造する。含フッ素系重合体のイオン交換容量を制御するためには、各層を形成する含フッ素系重合体の製造において、原料の単量体の混合比を調整すればよい。
補強材とは、強化糸を織った織布等である。補強材が膜内に埋め込まれることで、強化芯材を形成する。連通孔を有するイオン交換膜とするときには、犠牲糸も一緒に補強材へ織り込む。この場合の犠牲糸の混織量は、好ましくは補強材全体の10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。犠牲糸を織り込むことにより、強化芯材の目ズレを防止することもできる。
(3)工程では、前記(1)工程で得られた含フッ素系重合体を、押出し機を用いてフィルム化する。フィルムは単層構造でもよいし、上述したように、スルホン酸層とカルボン酸層との2層構造でもよいし、3層以上の多層構造であってもよい。
カルボン酸基を有する含フッ素重合体、スルホン酸基を有する含フッ素重合体をそれぞれ別々にフィルム化する方法。
カルボン酸基を有する含フッ素重合体と、スルホン酸基を有する含フッ素重合体とを共押出しにより、複合フィルムとする方法。
(4)工程では、(2)工程で得た補強材を、(3)工程で得たフィルムの内部に埋め込むことで、補強材が内在する膜本体を得る。
(5)工程では、(4)工程で得られた膜本体を加水分解して、イオン交換基前駆体をイオン交換基に変換する工程(加水分解工程)を行う。
(6)工程では、原石粉砕または原石溶融により得られた無機物粒子と、結合剤とを含むコーティング液を調整し、コーティング液を(5)工程で得られたイオン交換膜の表面に塗布及び乾燥させることで、コーティング層を形成することができる。
本実施形態の微多孔膜としては、前述の通り、電解用電極と積層体とすることができれば、特に限定されず、種々の微多孔膜を適用することができる。
本実施形態の微多孔膜の気孔率は、特に限定されないが、例えば、20〜90とすることができ、好ましくは30〜85である。上記気孔率は、例えば、下記の式にて算出できる。
気孔率=(1−(乾燥状態の膜重量)/(膜の厚み、幅、長さから算出される体積と膜素材の密度から算出される重量))×100
本実施形態の微多孔膜の平均孔径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm〜10μとすることができ、好ましくは0.05μm〜5μmである。上記平均孔径は、例えば、膜を厚み方向に垂直に切断し、切断面をFE−SEMで観察する。観察される孔の直径を100点程度測定し、平均することで求めることができる。
本実施形態の微多孔膜の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm〜1000μmとすることができ、好ましくは50μm〜600μmである。上記厚みは、例えば、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)等を用いて測定することができる。
上述のような微多孔膜の具体例としては、Agfa社製のZirfon Perl UTP 500(本実施形態において、Zirfon膜とも称す)、国際公開第2013−183584号パンフレット、国際公開第2016−203701号パンフレットなどに記載のものが挙げられる。
本実施形態における電解槽であって、水電解を行う場合の電解槽は、上述した食塩電解を行う場合の電解槽におけるイオン交換膜を微多孔膜に変更した構成を有するものである。また、供給する原料が水である点において、上述した食塩電解を行う場合の電解槽とは相違するものである。その他の構成については、水電解を行う場合の電解槽も食塩電解を行う場合の電解槽と同様の構成を採用することができる。食塩電解の場合には、陽極室で塩素ガスが発生するため、陽極室の材質はチタンが用いられるが、水電解の場合には、陽極室で酸素ガスが発生するのみであるため、陰極室の材質と同じものを使用できる。例えば、ニッケル等が挙げられる。また、陽極コーティングは酸素発生用の触媒コーティングが適当である。触媒コーティングの例としては、白金族金属および遷移金族の金属、酸化物、水酸化物などが挙げられる。例えば、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、鉄等の元素を使用することができる。
積層体の製造に用いる隔膜としては、下記のとおりに製造されたイオン交換膜Aを使用した。
強化芯材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であり、90デニールのモノフィラメントを用いた(以下、PTFE糸という。)。犠牲糸として、35デニール、6フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた(以下、PET糸という。)。まず、TD及びMDの両方向のそれぞれにおいて、PTFE糸が24本/インチ、犠牲糸が隣接するPTFE糸間に2本配置するように平織りして、織布を得た。得られた織布を、ロールで圧着し、厚さ70μmの織布である補強材を得た。
次に、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3との共重合体でイオン交換容量が0.85mg当量/gである乾燥樹脂の樹脂A、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.03mg当量/gである乾燥樹脂の樹脂Bを準備した。
これらの樹脂A及び樹脂Bを使用し、共押出しTダイ法にて樹脂A層の厚みが15μm、樹脂B層の厚みが84μmである、2層フィルムXを得た。また、樹脂Bのみを使用し、Tダイ法にて厚みが20μmである単層フィルムYを得た。
続いて、内部に加熱源及び真空源を有し、その表面に微細孔を有するホットプレート上に、離型紙(高さ50μmの円錐形状のエンボス加工)、フィルムY、補強材及びフィルムXの順に積層し、ホットプレート表面温度223℃、減圧度0.067MPaの条件で2分間加熱減圧した後、離型紙を取り除くことで複合膜を得た。なお、フィルムXは樹脂Bが下面となるように積層した。
得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)30質量%、水酸化カリウム(KOH)15質量%を含む80℃の水溶液に20分浸漬することでケン化した。その後、水酸化ナトリウム(NaOH)0.5N含む50℃の水溶液に1時間浸漬して、イオン交換基の対イオンをNaに置換し、続いて水洗した。その後、研磨ロールと膜の相対速度が100m/分、研磨ロールのプレス量を2mmとして樹脂B側表面を研磨し、開孔部を形成した後に、60℃で乾燥した。
さらに、樹脂Bの酸型樹脂の5質量%エタノール溶液に、1次粒径1μmの酸化ジルコニウムを20質量%加え、分散させた懸濁液を調合し、懸濁液スプレー法で、上記の複合膜の両面に噴霧し、酸化ジルコニウムのコーティングを複合膜の表面に形成させ、隔膜としてのイオン交換膜Aを得た。
酸化ジルコニウムの塗布密度を蛍光X線測定で測定したところ0.5mg/cm2だった。ここで、平均粒径は、粒度分布計(島津製作所製「SALD(登録商標)2200」)によって測定した。
電解用電極としては、下記の陰極電解用電極及び陽極電解用電極を使用した。
陰極電解用電極の基材として、ゲージ厚みが22μm、縦95mm、横110mmのニッケル箔を準備した。
このニッケル箔の片面にニッケルメッキによる粗面化処理を施した。
粗面化した表面の算術平均粗さRaは0.95μmだった。
表面粗さ測定には、触針式の表面粗さ測定機SJ−310(株式会社ミツトヨ)を使用した。
地面と平行な定盤上に測定サンプルを設置し、下記の測定条件で算術平均粗さRaを測定した。測定は、6回実施時、その平均値を記載した。
<粗さ規格>JIS2001
<評価曲線>R
<フィルタ>GAUSS
<カットオフ値 λc>0.8mm
<カットオフ値 λs>2.5μm
<区間数>5
<前走、後走>有
(開孔率の測定)
電解用電極をデジマチックシックスネスゲージ(株式会社ミツトヨ製、最少表示0.001mm)用いて面内を均一に10点測定した平均値を算出した。これを電極の厚み(ゲージ厚み)をとして、体積を算出した。その後、電子天秤で質量を測定し、金属の比重(ニッケルの比重=8.908g/cm3、チタンの比重=4.506g/cm3)から、開孔率あるいは空隙率を算出した。
開孔率(空隙率)(%)=(1−(電極質量)/(電極体積×金属の比重))×100
ルテニウム濃度が100g/Lの硝酸ルテニウム溶液(株式会社フルヤ金属)、硝酸セリウム(キシダ化学株式会社)を、ルテニウム元素とセリウム元素のモル比が1:0.25となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陰極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E-4088、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置し、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電解用電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。その後、50℃で10分間の乾燥、150℃で3分間の仮焼成を行い、350℃で10分間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を所定のコーティング量になるまで繰り返した。このようにして得られた陰極電解用電極(縦95mm、横110mm)の厚みは、28μmだった。触媒層の厚み(酸化ルテニウムと酸化セリウムの合計厚み)は、電極厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて6μmだった。なお、触媒層は粗面化されていない面にも形成されていた。
電極触媒を形成するためのコーティング液を以下の手順で調製した。ルテニウム濃度が100g/Lの塩化ルテニウム溶液(田中貴金属工業株式会社)、イリジウム濃度が100g/Lの塩化イリジウム(田中貴金属工業株式会社)、四塩化チタン(和光純薬工業株式会社)を、ルテニウム元素とイリジウム元素とチタン元素のモル比が0.25:0.25:0.5となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陽極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E−4088、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。チタン多孔箔に、上記コーティング液を塗布した後、60℃で10分間の乾燥、475℃で10分間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を繰り返し実施した後、520℃で1時間の焼成を行った。得られた陽極電解用電極(縦95mm、横110mm)の厚みは114μmであった。
(陰極電解用電極−隔膜積層体を用いた例)
次のようにして、予め更新用の積層体(新たな積層体)を作製した。まず、前記記載の方法で、縦1.5m、横2.5mのイオン交換膜Aを準備した。また、前記記載の方法で、縦0.3m、横2.4mの陰極電解用電極を4枚準備した。
イオン交換膜Aを2%の重曹溶液に一昼夜浸漬した後、カルボン酸層側に陰極を隙間なく並べ、陰極電解用電極とイオン交換膜Aの積層体を作製した。陰極電解用電極をイオン交換膜Aの上に置くと、重曹水溶液との接触で界面張力が働き、吸い付くように陰極電解用電極とイオン交換膜Aが一体となった。このように一体化させるに際して圧力はかけなかった。また、一体化の際の温度は23℃だった。
次いで、既存の大型電解槽(図3,4に示すものと同様の構造を有する電解槽)であって、その部材として既に既存積層体(上述した陰極電解用電極−イオン交換膜Aの積層体と同じ構成の積層体)を含む既存電解槽において、プレス器による隣接する電解セルの固定状態を解除し、既存積層体と隣接する電解セルとの間に空隙がある状態にした。既存積層体を取り出し、上記の更新用の積層体(新たな積層体)を、大型電解槽上に運搬した。大型電解槽上で、新たな積層体を電解セル間に挿入した後、プレス器からの押圧により各電解セルを移動させて、新たな積層体を隣接する電解セル同士で挟み込んだ。
従来に比較して容易に電極及び隔膜を交換することができた。積層体を電解運転中にあらかじめ準備しておけば、電極更新および隔膜の交換を1セルあたり数十分程度で完了することができるものと評価された。
(陽極電解用電極−隔膜積層体を用いた例)
次のようにして、予め更新用の積層体(新たな積層体)を作製した。まず、前記記載の方法で、縦1.5m、横2.5mのイオン交換膜Aを準備した。また、前記記載の方法で、縦0.3m、横2.4mの陽極電解用電極を4枚準備した。
イオン交換膜Aを2%の重曹溶液に一昼夜浸漬した後、スルホン酸層側に陽極を隙間なく並べ、陽極電解用電極とイオン交換膜Aの積層体を作製した。陽極電解用電極をイオン交換膜Aの上に置くと、重曹水溶液との接触で界面張力が働き、吸い付くように陽極電解用電極とイオン交換膜Aが一体となった。このように一体化させるに際して圧力はかけなかった。また、一体化の際の温度は23℃だった。
次いで、既存の大型電解槽(実施例1と同様の構造を有する既存電解槽)において、プレス器による隣接する電解セルの固定状態を解除し、既存積層体と隣接する電解セルとの間に空隙がある状態にした。既存積層体を取り出し、上記の更新用の積層体(新たな積層体)を、大型電解槽上に運搬した。大型電解槽上で、新たな積層体を電解セル間に挿入した後、プレス器からの押圧により各電解セルを移動させて、新たな積層体を隣接する電解セル同士で挟み込んだ。
従来に比較して容易に電極、隔膜を交換することができた。積層体の捲回体を電解運転中にあらかじめ準備しておけば、電極更新および隔膜の交換を1セルあたり数十分程度で完了することができるものと評価された。
(陽極電解用電極−隔膜−陰極電解用電極積層体を用いた例)
次のようにして、予め更新用の積層体(新たな積層体)を作製した。まず、前記記載の方法で、縦1.5m、横2.5mのイオン交換膜Aを準備した。また、前記記載の方法で、縦0.3m、横2.4mの陽極電解用電極及び陰極電解用電極を各4枚準備した。
イオン交換膜Aを2%の重曹溶液に一昼夜浸漬した後、カルボン酸層側に陰極電解用電極を、スルホン酸層側に陽極電解用電極を隙間なく並べ、陽極電解用電極とイオン交換膜Aと陰極電解用電極との積層体を作製した。陽極電解用電極及び陰極電解用電極をイオン交換膜Aの上に置くと、重曹水溶液との接触で界面張力が働き、吸い付くように陽極電解用電極及び陰極電解用電極とイオン交換膜Aが一体となった。このように一体化させるに際して圧力はかけなかった。また、一体化の際の温度は23℃だった。
次いで、既存の大型電解槽(図3,4に示すものと同様の構造を有する電解槽)であって、その部材として既に既存積層体(上述した陰極電解用電極−イオン交換膜A−陽極電解用電極の積層体と同じ構成の積層体)を含む既存電解槽において、プレス器による隣接する電解セルの固定状態を解除し、既存積層体と隣接する電解セルとの間に空隙がある状態にした。既存積層体を取り出し、上記の更新用の積層体(新たな積層体)を、大型電解槽上に運搬した。大型電解槽上で、新たな積層体を電解セル間に挿入した後、プレス器からの押圧により各電解セルを移動させて、新たな積層体を隣接する電解セル同士で挟み込んだ。
従来に比較して容易に電極、隔膜を交換することができた。積層体の捲回体を電解運転中にあらかじめ準備しておけば、電極更新および隔膜の交換を1セルあたり数十分程度で完了することができるものと評価された。
(従来の電極更新)
既存の大型電解槽(図3,4に示すものと同様の電解槽)であって、既存積層体を備えない既存電解槽において、プレス器による隣接する電解セル及びイオン交換膜Aの固定状態を解除し、既存のイオン交換膜Aを取り出して電解セル間に空隙がある状態にした。その後、大型電解槽から、電解セルをホイストで吊りだした。取り出した電解セルを、溶接施工が可能な工場まで運搬した。
溶接で電解セルのリブに固定されている陽極をはぎ取った後、グラインダー等を用いてはぎ取った部分のバリ等を削り、平滑にした。陰極は、集電体に織り込んで固定された部分を外して陰極を剥がした。
その後、陽極室のリブ上に新しい陽極(既存電解槽の陽極と同じ構成の陽極)を設置し、スポット溶接で新しい陽極を電解セルに固定した。陰極も同様に新しい陰極(既存電解槽の陰極と同じ構成の陰極)を陰極側に設置し、集電体に折り込んで固定した。
更新が終了した電解セルを大型電解槽の場所まで運搬し、ホイストを用いて電解セルを電解槽へ戻した。
電解セル及びイオン交換膜Aの固定状態を解除してから再度電解セルを固定するまでに要した時間は1日以上であった。
4…電解槽、5…プレス器、6…陰極端子、7…陽極端子、
11…陽極、12…陽極ガスケット、13…陰極ガスケット、
18…逆電流吸収体、18a…基材、18b…逆電流吸収層、19…陽極室の底部、
21…陰極、22…金属弾性体、23…集電体、24…支持体、
50…電解セル、60…陽極室、51…イオン交換膜(隔膜)、70…陰極室、
80…隔壁、90…電解用陰極構造体
10…電解用電極基材、20…基材を被覆する第一層、30…第二層、101…電解用電極
1…イオン交換膜、1a…膜本体、2…カルボン酸層、3…スルホン酸層、4…強化芯材、11a,11b…コーティング層
21a,21b…強化芯材
52…強化糸、504…連通孔、504a…犠牲糸
Claims (3)
- 陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配され、かつ、電解用電極及び隔膜を含む既存積層体と、を備える既存電解槽に、新たな電解用電極及び新たな隔膜を含む新たな積層体を配することにより、新たな電解槽を製造するための方法であって、
前記既存電解槽から前記既存積層体を除去する工程と、
前記新たな積層体を前記陽極と前記陰極との間に配する工程と、
を有する、電解槽の製造方法。 - 前記既存積層体において、前記電解用電極が、陽極電解用電極(A1)と陰極電解用電極(B1)とを有する、請求項1に記載の電解槽の製造方法。
- 前記新たな積層体において、前記新たな電解用電極が、陽極電解用電極(A2)と陰極電解用電極(B2)とを有する、請求項1又は2に記載の電解槽の製造方法。
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