JP7075792B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体に関する。
食塩水等のアルカリ金属塩化物水溶液の電気分解、水の電気分解(以下、「電解」という。)では、隔膜、より具体的にはイオン交換膜や微多孔膜を備えた電解槽を用いた方法が利用されている。この電解槽は、多くの場合その内部に多数直列に接続された電解セルを備える。各電解セルの間に隔膜を介在させて電解が行われる。電解セルでは、陰極を有する陰極室と、陽極を有する陽極室とが、隔壁(背面板)を介して、あるいはプレス圧力、ボルト締め等による押し付けを介して、背中合わせに配置されている。
現在これら電解槽に使用される陽極、陰極は、電解セルのそれぞれ陽極室、陰極室に溶接、折り込み等の方法により固定され、その後、保管、顧客先へ輸送される。一方、隔膜はそれ自体単独で塩化ビニル(塩ビ)製のパイプ等に巻いた状態で保管、顧客先へ輸送される。顧客先では電解セルを電解槽のフレーム上に並べ、隔膜を電解セルの間に挟んで電解槽を組み立てる。このようにして電解セルの製造および顧客先での電解槽の組立が実施されている。このような電解槽に適用しうる構造物として、特許文献1、2には、隔膜と電極が一体となった構造物が開示されている。
特開昭58-048686 特開昭55-148775
電解運転をスタートし、継続していくと様々な要因で各部品は劣化、電解性能が低下し、ある時点で各部品を交換することになる。隔膜は電解セルの間から抜き出し、新しい隔膜を挿入することで簡単に更新することができる。一方、陽極や陰極は電解セルに固定されているため、電極更新時には電解槽から電解セルを取り出し、専用の更新工場まで搬出、溶接等の固定を外して古い電極を剥ぎ取った後、新しい電極を設置し、溶接等の方法で固定、電解工場に運搬、電解槽に戻す、という非常に煩雑な作業が発生するという課題がある。ここで、特許文献1、2に記載の隔膜と電極とを熱圧着にて一体とした構造物を上記の更新に利用することが考えられるが、当該構造物は、実験室レベルでは比較的容易に製造可能であっても、実際の商業サイズの電解セル(例えば、縦1.5m、横3m)に合わせて製造することは容易ではない。また、電解性能(電解電圧、電流効率、苛性ソーダ中食塩濃度等)、耐久性が著しく悪く、隔膜と界面の電極上で塩素ガスや水素ガスが発生するため、長期間電解に使用すると完全に剥離してしまい、実用上使用できるものではない。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、電解槽における電極更新の際の作業効率を向上させることができ、さらに、更新後も優れた電解性能を発現することができる積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、イオン交換膜及び微多孔膜などの隔膜や劣化した既存電極などの給電体と弱い力で接着する電極とを備える積層体により、輸送、ハンドリングが容易となり、新品の電解槽をスタートさせる時や、劣化した部品を更新する時の作業が大幅に簡素化でき、さらに、電解性能も維持または向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕
電解用電極と、
前記電解用電極に接する、隔膜又は給電体と、
を備え、
前記隔膜又は給電体に対する、前記電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、1.5N/mg・cm2未満である、積層体。
〔2〕
前記隔膜又は給電体に対する、前記電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、0.005N/mg・cm2超である〔1〕に記載の積層体。
〔3〕
前記給電体が、金網、金属不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタル、又は発泡金属である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕
前記隔膜の少なくとも1つの表面層として、親水性酸化物粒子とイオン交換基が導入されたポリマーの混合物を含む層を有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層体。
〔5〕
前記電解用電極と前記隔膜又は給電体との間に液体が介在する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層体。
本発明の積層体によれば、電解槽における電極更新の際の作業効率を向上させることができ、さらに、更新後も優れた電解性能を発現することができる。
本発明の一実施形態における電解用電極の模式的断面図である。 イオン交換膜の一実施形態を示す断面模式図である。 イオン交換膜を構成する強化芯材の開口率を説明するための概略図である。 イオン交換膜の連通孔を形成する方法を説明するための模式図である。 電解セルの模式的断面図である。 2つの電解セルが直列に接続された状態を示す模式的断面図である。 電解槽の模式図である。 電解槽を組み立てる工程を示す模式的斜視図である。 電解セルが備える逆電流吸収体の模式的断面図である。 実施例に記載の単位質量・単位面積当たりにかかる力(1)の評価方法の模式図である。 実施例に記載の直径280mm円柱巻き付け評価方法(1)の模式図である。 実施例に記載の直径280mm円柱巻き付け評価方法(2)の模式図である。 実施例に記載の直径145mm円柱巻き付け評価方法(3)の模式図である。 実施例に記載の電極の弾性変形試験の模式図である。 塑性変形後のやわらかさの評価方法の模式図である。 実施例34にて作製した電極の模式図である。 実施例34にて作製した電極をニッケルメッシュ給電体上に設置するために用いた構造体の模式図である。 実施例35にて作製した電極の模式図である。 実施例35にて作製した電極をニッケルメッシュ給電体上に設置するために用いた構造体の模式図である。 実施例36にて作製した電極の模式図である。 実施例36にて作製した電極をニッケルメッシュ給電体上に設置するために用いた構造体の模式図である。
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態ともいう)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の内容に限定されない。また、添付図面は実施形態の一例を示したものであり、形態はこれに限定して解釈されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面中上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づく。図面の寸法及び比率は図示されたものに限られるものではない。
〔積層体〕
本実施形態の積層体は、電解用電極と、前記電解用電極に接する、隔膜又は給電体と、を備え、前記隔膜又は給電体に対する、前記電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、1.5N/mg・cm2未満である。このように構成されているため、本実施形態の積層体は、電解槽における電極更新の際の作業効率を向上させることができ、さらに、更新後も優れた電解性能を発現することができる。
すなわち、本実施形態の積層体により、電極を更新する際、電解セルに固定された既存電極を剥がすなど煩雑な作業を伴うことなく、隔膜の更新と同じような簡単な作業で電極を更新することができるため、作業効率が大幅に向上する。
更に、本発明の積層体によれば、電解性能を新品時の性能を維持または向上させることができる。そのため、従来の新品の電解セルに固定され陽極、陰極として機能している電極は、給電体として機能するだけでよく、触媒コーティングを大幅に削減あるいはゼロにすることが可能になる。
本実施形態の積層体は、たとえば、塩ビ製のパイプ等に巻いた状態(ロール状など)で保管、顧客先へ輸送などをすることが可能となり、ハンドリングが大幅に容易となる。
なお、本実施形態における給電体としては、劣化した電極(すなわち既存電極)や、触媒コーティングがされていない電極等、後述する種々の基材を適用できる。
また、本実施形態の積層体は、上記した構成を有する限り、一部に固定部を有しているものであってもよい。すなわち、本実施形態の積層体が固定部を有している場合は、当該固定を有しない部分を測定に供し、得られる電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、1.5N/mg・cm2未満であればよい。
〔電解用電極〕
本実施形態の電解用電極は、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、給電体(劣化した電極及び触媒コーティングがされていない電極)などと良好な接着力を有する観点から、単位質量・単位面積あたりのかかる力が、1.5N/mg・cm2未満であり、好ましくは1.2N/mg・cm2以下であり、より好ましくは1.20N/mg・cm2以下である。更に好ましくは1.1N/mg・cm2以下であり、更に好ましくは1.10N/mg・cm2以下であり、一層好ましくは1.0N/mg・cm2以下であり、より一層好ましくは1.00N/mg・cm2以下である。
電解性能をより向上させる観点から、好ましくは0.005N/(mg・cm2)超であり、より好ましくは0.08N/(mg・cm2)以上であり、さらに好ましくは0.1N/mg・cm2以上であり、よりさらに好ましくは0.14N/(mg・cm2)以上である。大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、0.2N/(mg・cm2)以上が更により好ましい。
上記かかる力は、例えば、後述する開孔率、電極の厚み、算術平均表面粗さ等を適宜調整することで上記範囲とすることができる。より具体的には、例えば、開孔率を大きくすると、かかる力は小さくなる傾向にあり、開孔率を小さくすると、かかる力は大きくなる傾向にある。
また、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極及び触媒コーティングがされていない給電体などと良好な接着力を有し、さらに、経済性の観点から、単位面積あたりの質量が、48mg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは、30mg/cm2以下であり、さらに好ましくは、20mg/cm2以下であり、さらに、ハンドリング性、接着性及び経済性を合わせた総合的な観点から、15mg/cm2以下であることが好ましい。下限値は、特に限定されないが、例えば、1mg/cm2程度である。
上記単位面積あたりの質量は、例えば、後述する開孔率、電極の厚み等を適宜調整することで上記範囲とすることができる。より具体的には、例えば、同じ厚みであれば、開孔率を大きくすると、単位面積あたりの質量は小さくなる傾向にあり、開孔率を小さくすると、単位面積あたりの質量は大きくなる傾向にある。
かかる力は、以下の方法(i)または(ii)により測定でき、詳細には、実施例に記載のとおりである。かかる力は、方法(i)の測
定により得られた値(「かかる力(1)」とも称す)と、方法(ii)の測定により得られた値(「かかる力(2)」とも称す)とが、同一であってもよく、異なっていてもよいが、いずれの値であっても1.5N/mg・cm2未満となる。
〔方法(i)〕
粒番号320のアルミナでブラスト加工を施して得られるニッケル板(厚み1.2mm、200mm角)と、イオン交換基が導入されたパーフルオロカーボン重合体の膜の両面に無機物粒子と結合剤を塗布したイオン交換膜(170mm角、ここでいうイオン交換膜の詳細については、実施例に記載のとおりである)と電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させ、この積層体を純水にて十分に浸漬した後、積層体表面に付着した余分な水分を除去することで測定用サンプルを得る。なお、ブラスト処理後のニッケル板の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.5~0.8μmである。算術平均表面粗さ(Ra)の具体的な算出方法は、実施例に記載のとおりである。
温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この測定用サンプル中の電極サンプルのみを引張圧縮試験機を用いて、垂直方向に10mm/分で上昇させて、電極サンプルが、垂直方向に10mm上昇したときの加重を測定する。この測定を3回実施して平均値を算出する。
この平均値を、電極サンプルとイオン交換膜の重なり部分の面積、およびイオン交換膜と重なっている部分の電極サンプルにおける質量で除して、単位質量・単位面積あたりのかかる力(1)(N/mg・cm2)を算出する。
方法(i)により得られる、単位質量・単位面積あたりのかかる力(1)は、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極及び触媒コーティングがされていない給電体と良好な接着力を有するとの観点から、1.5N/mg・cm2未満であり、1.2N/mg・cm2以下あることが好ましく、より好ましくは1.20N/mg・cm2以下であり、さらに好ましくは1.1N/mg・cm2以下であり、さらにより好ましくは1.10N/mg・cm2以下であり、一層好ましくは1.0N/mg・cm2以下であり、より一層好ましくは1.00N/mg・cm2以下である。また、電解性能をより向上させる観点から、好ましくは0.005N/(mg・cm2)超であり、より好ましくは0.08N/(mg・cm2)以上であり、さらに好ましくは、0.1N/(mg・cm2)以上であり、さらに、大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、よりさらに好ましくは、0.14N/(mg・cm2)であり、0.2N/(mg・cm2)以上であることが一層好ましい。
本実施形態の電解用電極が、かかる力(1)を満たすと、例えば、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜あるいは給電体と一体化して(すなわち積層体として)用いることができるため、電極を更新する際、溶接等の方法で電解セルに固定されている陰極及び陽極の張り替え作業が不要となり、作業効率が大幅に向上する。また、本実施形態の電解用電極を、イオン交換膜や微多孔膜あるいは給電体と一体化した積層体として用いることで、電解性能を新品時の性能と同等または向上させることができる。
新品の電解セルを出荷する際には、従来は電解セルに固定された電極に触媒コーティングが施されていたが、触媒コーティングをしていない電極に本実施形態の電解用電極を組み合わせるのみで、電極として用いることができるため、触媒コーティングをするための製造工程や触媒の量を大幅に削減あるいはゼロにすることができる。触媒コーティングが大幅に削減あるいはゼロになった従来の電極は、本実施形態の電解用電極と電気的に接続し、電流を流すための給電体として機能させることができる。
〔方法(ii)〕
粒番号320のアルミナでブラスト加工を施して得られるニッケル板(厚み1.2mm、200mm角、上記方法(i)と同様のニッケル板)と、電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させ、この積層体を純水にて十分に浸漬した後、積層体表面に付着した余分な水分を除去することで測定用サンプルを得る。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この測定用サンプル中の電極サンプルのみを、引張圧縮試験機を用いて、垂直方向に10mm/分で上昇させて、電極サンプルが、垂直方向に10mm上昇したときの加重を測定する。この測定を3回実施して平均値を算出する。
この平均値を、電極サンプルとニッケル板の重なり部分の面積、およびニッケル板と重なっている部分における電極サンプルの質量で除して、単位質量・単位面積あたりの接着力(2)(N/mg・cm2)を算出する。
方法(ii)により得られる、単位質量・単位面積あたりのかかる力(2)は、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極及び触媒コーティングがされていない給電体と良好な接着力を有するとの観点から、1.5N/mg・cm2未満であり、1.2N/mg・cm2以下あることが好ましく、より好ましくは1.20N/mg・cm2以下であり、さらに好ましくは1.1N/mg・cm2以下であり、さらにより好ましくは1.10N/mg・cm2以下であり、一層好ましくは1.0N/mg・cm2以下であり、より一層好ましくは1.00N/mg・cm2以下である。電解性能をより向上させる観点から、好ましくは0.005N/(mg・cm2)超であり、より好ましくは0.08N/(mg・cm2)以上であり、さらに好ましくは、0.1N/(mg・cm2)以上であり、よりさらに好ましくは、さらに、大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、よりさらに好ましくは0.14N/(mg・cm2)以上である。
本実施形態の電解用電極が、かかる力(2)を満たすと、たとえば、塩ビ製のパイプ等に巻いた状態(ロール状など)で保管、顧客先へ輸送などをすることが可能となり、ハンドリングが大幅に容易となる。また、劣化した既存電極に、本実施形態の電解用電極を張り付けて積層体とすることで、電解性能を新品時の性能と同等または向上させることができる。
本実施形態の電解用電極は、弾性変形領域が広い電極であると、より良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極及び触媒コーティングがされていない給電体などとより良好な接着力を有する観点から、電解用電極の厚みは、315μm以下が好ましく、220μm以下がより好ましく、170μm以下が更に好ましく、150μm以下が更により好ましく、145μm以下が特に好ましく、140μm以下が一層好ましく、138μm以下がより一層好ましく、135μm以下が更に一層好ましい。135μm以下であれば、良好なハンドリング性が得られる。さらに、上記と同様の観点から、130μm以下が好ましく、130μm未満がより好ましく、115μm以下が更に好ましく、65μm以下がより更に好ましい。下限値は、特に限定されないが、1μm以上が好ましく、実用上から5μm以上がより好ましく、20μm以上であることがより好ましい。なお、本実施形態において、「弾性変形領域が広い」とは、電解用電極を捲回して捲回体とし、捲回状態を解除した後、捲回に由来する反りが生じ難いことを意味する。また、電解用電極の厚みとは、後述の触媒層を含む場合、電解用電極基材と触媒層を合わせた厚みを言う。
本実施形態の電解用電極は、電解用電極基材及び触媒層を含むことが好ましい。該電解用電極基材の厚み(ゲージ厚み)は、特に限定されないが、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極(給電体)及び触媒コーティングがされていない電極(給電体)と良好な接着力を有し、好適にロール状に巻け、良好に折り曲げることができ、大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、300μm以下が好ましく、205μm以下がより好ましく、155μm以下が更に好ましく、135μm以下が更により好ましく、125μm以下がより更により好ましく、120μm以下が一層好ましく、100μm以下がより一層好ましく、ハンドリング性と経済性の観点から、50μm以下が更に一層好ましい。下限値は、特に限定さないが、例えば、1μmであり、好ましく5μmであり、より好ましくは15μmである。
本実施形態において、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜と電極、あるいは劣化した既存電極や触媒コーティングがされていない電極などの金属多孔板又は金属板(すなわち給電体)と電解用電極の間に液体が介在することが好ましい。当該液体は、水、有機溶媒など表面張力を発生させるものであればどのような液体でも使用することができる。液体の表面張力が大きいほど、隔膜と電解用電極、あるいは金属多孔板又は金属板と電解用電極の間にかかる力は大きくなるため、表面張力の大きな液体が好ましい。液体としては、次のものが挙げられる(カッコ内の数値は、その液体の20℃における表面張力である)。
ヘキサン(20.44mN/m)、アセトン(23.30mN/m)、メタノール(24.00mN/m)、エタノール(24.05mN/m)、エチレングリコール(50.21mN/m)水(72.76mN/m)
表面張力の大きな液体であれば、隔膜と電解用電極、あるいは金属多孔板又は金属板(給電体)と電解用電極とが一体となり(積層体となり)、電極更新が容易となる。隔膜と電解用電極、あるいは金属多孔板又は金属板(給電体)と電解用電極の間の液体は表面張力によりお互いが張り付く程度の量でよく、その結果液体量が少ないため、該積層体の電解セルに設置した後に電解液に混ざっても、電解自体に影響を与えることはない。
実用状の観点からは、液体としてエタノール、エチレングリコール、水等の表面張力が24mN/mから80mN/mの液体を使用することが好ましい。特に水、または水に苛性ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を溶解させてアルカリ性にした水溶液が好ましい。また、これらの液体に界面活性剤を含ませ、表面張力を調製することもできる。界面活性剤を含むことで、隔膜と電解用電極、あるいは金属多孔板又は金属板(給電体)と電解用電極の接着性が変化し、ハンドリング性を調整することができる。界面活性剤としては、特に制限はなく、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。
本実施形態の電解用電極は、特に限定されないが、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極(給電体)及び触媒コーティングがされていない電極(給電体)と良好な接着力を有するとの観点から、以下の方法(2)により測定した割合が、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、さらに、大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、95%以上であることがさらに好ましい。上限値は、100%である。
〔方法(2)〕
イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させる。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この積層体中の電極サンプルが外側になるように、ポリエチレンのパイプ(外径280mm)の曲面上に積層体を置き、積層体とパイプを純水にて十分に浸漬させ、積層体表面及びパイプに付着した余分な水分を除去し、その1分後に、イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプルとが密着している部分の面積の割合(%)を測定する。
本実施形態の電解用電極は、特に限定されないが、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極(給電体)及び触媒コーティングがされていない電極(給電体)と良好な接着力を有し、好適にロール状に巻け、良好に折り曲げることができるとの観点から、以下の方法(3)により測定した割合が、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、さらに、大型サイズ(例えば、サイズ1.5m×2.5m)での取り扱いが容易になるとの観点から、90%以上であることがさらに好ましい。上限値は、100%である。
〔方法(3)〕
イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させる。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この積層体中の電極サンプルが外側になるように、ポリエチレンのパイプ(外径145mm)の曲面上に積層体を置き、積層体とパイプを純水にて十分に浸漬させ、積層体表面及びパイプに付着した余分な水分を除去し、その1分後に、イオン交換膜(170mm角)と、電極サンプルとが密着している部分の面積の割合(%)を測定する。
本実施形態の電解用電極は、特に限定されないが、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜、劣化した電極(給電体)及び触媒コーティングがされていない電極(給電体と良好な接着力を有し、電解中に発生するガスの滞留防止の観点から、多孔構造であり、その開孔率または空隙率が5~90%以下であることが好ましい。開孔率は、より好ましくは10~80%以下であり、さらに好ましくは、20~75%である。
なお、開孔率とは、単位体積あたりの開孔部の割合である。開孔部もサブミクロンオーダーまで勘案するのか、目に見える開口のみ勘案するのかによって、算出方法が様々である。本実施形態では、電極のゲージ厚み、幅、長さの値から体積Vを算出し、更に重量Wを実測することにより、開孔率Aを下記の式で算出した。
A=(1-(W/(V×ρ))×100
ρは電極の材質の密度(g/cm3)である。例えばニッケルの場合は8.908g/cm3、チタンの場合は4.506g/cm3である。開孔率の調整は、パンチングメタルであれば単位面積あたりに金属を打ち抜く面積を変更する、エキスパンドメタルであればSW(短径)、LW(長径)、送りの値を変更する、メッシュであれが金属繊維の線径、メッシュ数を変更する、エレクトロフォーミングであれば使用するフォトレジストのパターンを変更する、不織布であれば金属繊維径および繊維密度を変更する、発泡金属であれは空隙を形成させるための鋳型を変更する等の方法により適宜調整する。
本実施形態における電解用電極は、ハンドリング性の観点から、以下の方法(A)により測定した値が、40mm以下であることが好ましく、より好ましくは29mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下であり、更により好ましくは6.5mm以下である。なお、具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
〔方法(A)〕
温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下、イオン交換膜と前記電解用電極とを積層したサンプルを、外径φ32mmの塩化ビニル製芯材の曲面上に巻きつけて固定し、6時間静置したのちに当該電解用電極を分離して水平な板に載置したとき、当該電解用電極の両端部における垂直方向の高さL1及びL2を測定し、これらの平均値を測定値とする。
本実施形態における電解用電極は、当該電解用電極を50mm×50mmのサイズとし、温度24℃、相対湿度32%、ピストン速度0.2cm/s及び通気量0.4cc/cm2/sとした場合(以下、「測定条件1」ともいう)の通気抵抗(以下、「通気抵抗1」ともいう。)が、24kPa・s/m以下であることが好ましい。通気抵抗が大きいことは、空気が流れづらいことを意味しており、密度が高い状態を指す。この状態では、電解による生成物が電極中にとどまり、反応基質が電極内部に拡散しにくくなるため、電解性能(電圧等)が悪くなる傾向にある。また、膜表面の濃度が上がる傾向にある。具体的には、陰極面では苛性濃度が上がり、陽極面では塩水の供給性が下がる傾向にある。その結果、隔膜と電極が接している界面に生成物が高濃度で滞留するため、隔膜の損傷につながり、陰極面上の電圧上昇及び膜損傷、陽極面上の膜損傷にもつながる傾向にある。本実施形態では、これらの不具合を防止するべく、通気抵抗を24kPa・s/m以下とすることが好ましい。上記同様の観点から、0.19kPa・s/m未満であることがより好ましく、0.15kPa・s/m以下であることが更に好ましく、0.07kPa・s/m以下であることが更により好ましい。
なお、本実施形態において、通気抵抗が一定以上大きいと、陰極の場合には電極で発生したNaOHが電極と隔膜の界面に滞留し、高濃度になる傾向があり、陽極の場合には塩水供給性が低下し、塩水濃度が低濃度になる傾向があり、このような滞留に起因して生じ得る隔膜への損傷を未然に防止する上では、0.19kPa・s/m未満であることが好ましく、0.15kPa・s/m以下であることがより好ましく、0.07kPa・s/m以下であることが更に好ましい。
一方、通気抵抗が低い場合、電極の面積が小さくなるため、電解面積が小さくなり電解性能(電圧等)が悪くなる傾向にある。通気抵抗がゼロの場合は、電解用電極が設置されていないため、給電体が電極として機能し、電解性能(電圧等)が著しく悪くなる傾向にある。かかる点から、通気抵抗1として特定される好ましい下限値は、特に限定されないが、0kPa・s/m超であることが好ましく、より好ましくは0.0001kPa・s/m以上であり、更に好ましくは0.001kPa・s/m以上である。
なお、通気抵抗1は、その測定法上、0.07kPa・s/m以下では十分な測定精度が得られない場合がある。係る観点から、通気抵抗1が0.07kPa・s/m以下である電解用電極に対しては、次の測定方法(以下、「測定条件2」ともいう)による通気抵抗(以下、「通気抵抗2」ともいう。)による評価も可能である。すなわち、通気抵抗2は、電解用電極を50mm×50mmのサイズとし、温度24℃、相対湿度32%、ピストン速度2cm/s及び通気量4cc/cm2/sとした場合の通気抵抗である。
具体的な通気抵抗1及び2の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
上記通気抵抗1及び2は、例えば、後述する開孔率、電極の厚み等を適宜調整することで上記範囲とすることができる。より具体的には、例えば、同じ厚みであれば、開孔率を大きくすると、通気抵抗1及び2は小さくなる傾向にあり、開孔率を小さくすると、通気抵抗1及び2は大きくなる傾向にある。
本実施形態の電解用電極は、上述したように、隔膜又は給電体に対する、前記電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、1.5N/mg・cm2未満である。このように、本実施形態の電解用電極は、隔膜又は給電体(例えば、電解槽における既存の陽極又は陰極など)と適度な接着力で接することにより、隔膜又は給電体との積層体を構成することができる。すなわち、隔膜又は給電体と電解用電極とを熱圧着等の煩雑な方法により強固に接着する必要がなく、例えば、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜に含まれうる水分に由来する表面張力のような比較的弱い力のみでも接着して積層体となるため、どのようなスケールであっても容易に積層体を構成することができる。さらに、このような積層体は、優れた電解性能を発現するため、本実施形態の積層体は電解用途に適しており、例えば、電解槽の部材や当該部材の更新に係る用途に特に好ましく用いることができる。
以下、本実施形態の電解用電極の一形態について、説明する。
本実施形態に係る電解用電極は、電解用電極基材及び触媒層を含むことが好ましい。触媒層は以下の通り、複数の層で構成されてもよいし、単層構造でもよい。
図1に示すように、本実施形態に係る電解用電極100は、電解用電極基材10と、電解用電極基材10の両表面を被覆する一対の第一層20とを備える。第一層20は電解用電極基材10全体を被覆することが好ましい。これにより、電解用電極の触媒活性及び耐久性が向上し易くなる。なお、電解用電極基材10の一方の表面だけに第一層20が積層されていてもよい。
また、図1に示すように、第一層20の表面は、第二層30で被覆されていてもよい。第二層30は、第一層20全体を被覆することが好ましい。また、第二層30は、第一層20の一方の表面だけ積層されていてもよい。
(電解用電極基材)
電解用電極基材10としては、特に限定されるものではないが、例えばニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、またはチタンなどに代表されるバルブ金属を使用でき、ニッケル(Ni)及びチタン(Ti)から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
ステンレススチールを高濃度のアルカリ水溶液中で用いた場合、鉄及びクロムが溶出すること、及びステンレススチールの電気伝導性がニッケルの1/10程度であることを考慮すると、電解用電極基材としてはニッケル(Ni)を含む基材が好ましい。
また、電解用電極基材10は、飽和に近い高濃度の食塩水中で、塩素ガス発生雰囲気で用いた場合、材質は耐食性の高いチタンであることも好ましい。
電解用電極基材10の形状には特に限定はなく、目的によって適切な形状を選択することができる。形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。この中でも、パンチングメタルあるいはエキスパンドメタルが好ましい。なお、エレクトロフォーミングとは、写真製版と電気メッキ法を組み合わせて、精密なパターンの金属薄膜を製作する技術である。基板上にフォトレジストにてパターン形成し、レジストに保護されていない部分に電気メッキを施し、金属薄を得る方法である。
電解用電極基材の形状については、電解槽における陽極と陰極との距離によって好適な仕様がある。特に限定されるものではないが、陽極と陰極とが有限な距離を有する場合には、エキスパンドメタル、パンチングメタル形状を用いることができ、イオン交換膜と電極とが接するいわゆるゼロギャップ電解槽の場合には、細い線を編んだウーブンメッシュ、金網、発泡金属、金属不織布、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属多孔箔などを用いることができる。
電解用電極基材10としては、金属多孔箔、金網、金属不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタル又は発泡金属が挙げられる。
パンチングメタル、エキスパンドメタルに加工する前の板材としては、圧延成形した板材、電解箔などが好ましい。電解箔は、更に後処理として母材と同じ元素でメッキ処理を施して、片面あるいは両面に凹凸をつけることが好ましい。
また、電解用電極基材10の厚みは、前述の通り、300μm以下であることが好ましく、205μm以下であることがより好ましく、155μm以下であることが更に好ましく、135μm以下であることが更により好ましく、125μm以下であることがより更により好ましく、120μm以下であることが一層好ましく、100μm以下であることがより一層好ましく、ハンドリング性と経済性の観点から、50μm以下であることがより更に一層好ましい。下限値は、特に限定さないが、例えば、1μmであり、好ましく5μmであり、より好ましくは15μmである。
電解用電極基材においては、電解用電極基材を酸化雰囲気中で焼鈍することによって加工時の残留応力を緩和することが好ましい。また、電解用電極基材の表面には、前記表面に被覆される触媒層との密着性を向上させるために、スチールグリッド、アルミナ粉などを用いて凹凸を形成し、その後酸処理により表面積を増加させることが好ましい。または、基材と同じ元素でメッキ処理を施し、表面積を増加させることが好ましい。
電解用電極基材10には、第一層20と電解用電極基材10の表面とを密着させるために、表面積を増大させる処理を行うことが好ましい。表面積を増大させる処理としては、カットワイヤ、スチールグリッド、アルミナグリッド等を用いたブラスト処理、硫酸又は塩酸を用いた酸処理、基材と同元素でのメッキ処理等が挙げられる。基材表面の算術平均表面粗さ(Ra)は、特に限定されないが、0.05μm~50μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.1~8μmがさらに好ましい。
次に、本実施形態の電解用電極を食塩電解用陽極として使用する場合について説明する。
(第一層)
図1において、触媒層である第一層20は、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物のうち少なくとも1種類の酸化物を含む。ルテニウム酸化物としては、RuO2等が挙げられる。イリジウム酸化物としては、IrO2等が挙げられる。チタン酸化物としては、TiO2等が挙げられる。第一層20は、ルテニウム酸化物及びチタン酸化物の2種類の酸化物を含むか、又はルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物の3種類の酸化物を含むことが好ましい。それにより、第一層20がより安定な層になり、さらに、第二層30との密着性もより向上する。
第一層20が、ルテニウム酸化物及びチタン酸化物の2種類の酸化物を含む場合には、第一層20に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して、第一層20に含まれるチタン酸化物は1~9モルであることが好ましく、1~4モルであることがより好ましい。2種類の酸化物の組成比をこの範囲とすることによって、電解用電極100は優れた耐久性を示す。
第一層20が、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物の3種類の酸化物を含む場合、第一層20に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して、第一層20に含まれるイリジウム酸化物は0.2~3モルであることが好ましく、0.3~2.5モルであることがより好ましい。また、第一層20に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して、第一層20に含まれるチタン酸化物は0.3~8モルであることが好ましく、1~7モルであることがより好ましい。3種類の酸化物の組成比をこの範囲とすることによって、電解用電極100は優れた耐久性を示す。
第一層20が、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物の中から選ばれる少なくとも2種類の酸化物を含む場合、これらの酸化物は、固溶体を形成していることが好ましい。酸化物固溶体を形成することにより、電解用電極100はすぐれた耐久性を示す。
上記の組成の他にも、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物のうち少なくとも1種類の酸化物を含んでいる限り、種々の組成のものを用いることができる。例えば、DSA(登録商標)と呼ばれる、ルテニウム、イリジウム、タンタル、ニオブ、チタン、スズ、コバルト、マンガン、白金等を含む酸化物コーティングを第一層20として用いることも可能である。
第一層20は、単層である必要はなく、複数の層を含んでいてもよい。例えば、第一層20が3種類の酸化物を含む層と2種類の酸化物を含む層とを含んでいてもよい。第一層20の厚みは0.05~10μmが好ましく、0.1~8μmがより好ましい。
(第二層)
第二層30は、ルテニウムとチタンを含むことが好ましい。これにより電解直後の塩素過電圧を更に低くすることができる。
第二層30が酸化パラジウム、酸化パラジウムと白金の固溶体あるいはパラジウムと白金の合金を含むことが好ましい。これにより電解直後の塩素過電圧を更に低くすることができる。
第二層30は、厚い方が電解性能を維持できる期間が長くなるが、経済性の観点から0.05~3μmの厚みであることが好ましい。
次に、本実施形態の電解用電極を食塩電解用陰極として使用する場合について説明する。
(第一層)
触媒層である第一層20の成分としては、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金の少なくとも1種類を含んでもよいし、含まなくてもよい。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金の少なくとも1種類を含む場合、白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金が白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムのうち少なくとも1種類の白金族金属を含むことが好ましい。
白金族金属としては、白金を含むことが好ましい。
白金族金属酸化物としては、ルテニウム酸化物を含むことが好ましい。
白金族金属水酸化物としては、ルテニウム水酸化物を含むことが好ましい。
白金族金属合金としては、白金とニッケル、鉄、コバルトとの合金を含むことが好ましい。
更に必要に応じて第二成分として、ランタノイド系元素の酸化物あるいは水酸化物を含むことが好ましい。これにより、電解用電極100はすぐれた耐久性を示す。
ランタノイド系元素の酸化物あるいは水酸化物としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムから選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。
さらに必要に応じて、第三成分として遷移金属の酸化物あるいは水酸化物を含むことが好ましい。
第三成分を添加することにより、電解用電極100はよりすぐれた耐久性を示し、電解電圧を低減させることができる。
好ましい組み合わせの例としては、ルテニウムのみ、ルテニウム+ニッケル、ルテニウム+セリウム、ルテニウム+ランタン、ルテニウム+ランタン+白金、ルテニウム+ランタン+パラジウム、ルテニウム+プラセオジム、ルテニウム+プラセオジム+白金、ルテニウム+プラセオジム+白金+パラジウム、ルテニウム+ネオジム、ルテニウム+ネオジム+白金、ルテニウム+ネオジム+マンガン、ルテニウム+ネオジム+鉄、ルテニウム+ネオジム+コバルト、ルテニウム+ネオジム+亜鉛、ルテニウム+ネオジム+ガリウム、ルテニウム+ネオジム+硫黄、ルテニウム+ネオジム+鉛、ルテニウム+ネオジム+ニッケル、ルテニウム+ネオジム+銅、ルテニウム+サマリウム、ルテニウム+サマリウム+マンガン、ルテニウム+サマリウム+鉄、ルテニウム+サマリウム+コバルト、ルテニウム+サマリウム+亜鉛、ルテニウム+サマリウム+ガリウム、ルテニウム+サマリウム+硫黄、ルテニウム+サマリウム+鉛、ルテニウム+サマリウム+ニッケル、白金+セリウム、白金+パラジウム+セリウム、白金+パラジウム+ランタン+セリウム、白金+イリジウム、白金+パラジウム、白金+イリジウム+パラジウム、白金+ニッケル+パラジウム、白金+ニッケル+ルテニウム、白金とニッケルの合金、白金とコバルトの合金、白金と鉄の合金、などが挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金を含まない場合、触媒の主成分がニッケル元素であることが好ましい。
ニッケル金属、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。
第二成分として、遷移金属を添加してもよい。添加する第二成分としては、チタン、スズ、モリブデン、コバルト、マンガン、鉄、硫黄、亜鉛、銅、炭素のうち少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
好ましい組み合わせとして、ニッケル+スズ、ニッケル+チタン、ニッケル+モリブデン、ニッケル+コバルトなどが挙げられる。
必要に応じ、第1層20と電解用電極基材10の間に、中間層を設けることができる。中間層を設置することにより、電解用電極100の耐久性を向上させることができる。
中間層としては、第1層20と電解用電極基材10の両方に親和性があるものが好ましい。中間層としては、ニッケル酸化物、白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物が好ましい。中間層としては、中間層を形成する成分を含む溶液を塗布、焼成することで形成することもできるし、基材を空気雰囲気中で300~600℃の温度で熱処理を実施して、表面酸化物層を形成させることもできる。その他、熱溶射法、イオンプレーティング法など既知の方法で形成させることができる。
(第二層)
触媒層である第一層30の成分としては、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金の少なくとも1種類を含んでもよいし、含まなくてもよい。第二層に含まれる元素の好ましい組み合わせの例としては、第一層で挙げた組み合わせなどがある。第一層と第二層の組み合わせは、同じ組成で組成比が異なる組み合わせでもよいし、異なる組成の組み合わせでもよい。
触媒層の厚みとしては、形成させた触媒層および中間層の合算した厚みが0.01μm~20μmが好ましい。0.01μm以上であれば、触媒として十分機能を発揮できる。20μm以下であれば、基材からの脱落が少なく強固な触媒層を形成することができる。0.05μm~15μmがより好ましい。より好ましくは、0.1μm~10μmである。更に好ましくは、0.2μm~8μmである。
電極用電極の厚み、すなわち、電解用電極基材と触媒層の合計の厚みとしては、電解用電極のハンドリング性の点から、315μm以下が好ましく、220μm以下がより好ましく、170μm以下が更に好ましく、150μm以下が更により好ましく、145μm以下が特に好ましく、140μm以下が一層好ましく、138μm以下がより一層好ましく、135μm以下が更に一層好ましい。135μm以下であれば、良好なハンドリング性が得られる。さらに、上記と同様の観点から、130μm以下であることが好ましく、より好ましくは、130μm未満であり、更に好ましくは、115μm以下であり、より更に好ましくは、65μm以下である。下限値は、特に限定されないが、1μm以上が好ましく、実用上から5μm以上がより好ましく、20μm以上であることがより好ましい。なお、電極の厚みは、デジマチックシックスネスゲージ(株式会社ミツトヨ、最少表示0.001mm)で測定することで求めることができる。電極用電極基材の厚みは、電極用電極の厚みと同様に測定することができる。触媒層の厚みは、電極用電極の厚みから電解用電極基材の厚みを引くことで求めることができる。
(電解用電極の製造方法)
次に電解用電極100の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、酸素雰囲気下での塗膜の焼成(熱分解)、あるいはイオンプレーティング、メッキ、熱溶射等の方法によって、電解用電極基材上に第一層20、好ましくは第二層30を形成することにより、電解用電極100を製造できる。このような本実施形態の製造方法では、電解用電極100の高い生産性を実現できる。具体的には、触媒を含む塗布液を塗布する塗布工程、塗布液を乾燥する乾燥工程、熱分解を行う熱分解工程により、電解用電極基材上に触媒層が形成される。ここで熱分解とは、前駆体となる金属塩を加熱して、金属又は金属酸化物とガス状物質に分解することを意味する。用いる金属種、塩の種類、熱分解を行う雰囲気等により、分解生成物は異なるが、酸化性雰囲気では多くの金属は酸化物を形成しやすい傾向がある。電極の工業的な製造プロセスにおいて、熱分解は通常空気中で行われ、多くの場合、金属酸化物あるいは金属水酸化物が形成される。
(陽極の第一層の形成)
(塗布工程)
第一層20は、ルテニウム、イリジウム及びチタンのうち少なくとも1種類の金属塩を溶解した溶液(第一塗布液)を電解用電極基材に塗布後、酸素の存在下で熱分解(焼成)して得られる。第一塗布液中のルテニウム、イリジウム及びチタンの含有率は、第一層20と概ね等しい。
金属塩としては、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、金属アルコキシド、その他のいずれの形態でもよい。第一塗布液の溶媒は、金属塩の種類に応じて選択できるが、水及びブタノール等のアルコール類等を用いることができる。溶媒としては、水または水とアルコール類の混合溶媒が好ましい。金属塩を溶解させた第一塗布液中の総金属濃度は特に限定されないが、1回の塗布で形成される塗膜の厚みとの兼ね合いから10~150g/Lの範囲が好ましい。
第一塗布液を電解用電極基材10上に塗布する方法としては、電解用電極基材10を第一塗布液に浸漬するディップ法、第一塗布液を刷毛で塗る方法、第一塗布液を含浸させたスポンジ状のロールを用いるロール法、電解用電極基材10と第一塗布液とを反対荷電に帯電させてスプレー噴霧を行う静電塗布法等が用いられる。この中でも工業的な生産性に優れた、ロール法又は静電塗布法が好ましい。
(乾燥工程、熱分解工程)
電解用電極基材100に第一塗布液を塗布した後、10~90℃の温度で乾燥し、350~650℃に加熱した焼成炉で熱分解する。乾燥と熱分解の間に、必要に応じて100~350℃で仮焼成を実施してもよい。乾燥、仮焼成及び熱分解温度は、第一塗布液の組成や溶媒種により、適宜選択することが出来る。一回当たりの熱分解の時間は長い方が好ましいが、電極の生産性の観点から3~60分が好ましく、5~20分がより好ましい。
上記の塗布、乾燥及び熱分解のサイクルを繰り返して、被覆(第一層20)を所定の厚みに形成する。第一層20を形成した後に、必要に応じて更に長時間焼成する後加熱を行うと、第一層20の安定性を更に高めることができる。
(第二層の形成)
第二層30は、必要に応じて形成され、例えば、パラジウム化合物及び白金化合物を含む溶液あるいはルテニウム化合物およびチタン化合物を含む溶液(第二塗布液)を第一層20の上に塗布した後、酸素の存在下で熱分解して得られる。
(熱分解法での陰極の第一層の形成)
(塗布工程)
第一層20は、種々の組み合わせの金属塩を溶解した溶液(第一塗布液)を電解用電極基材に塗布後、酸素の存在下で熱分解(焼成)して得られる。第一塗布液中の金属の含有率は、第一層20と概ね等しい。
金属塩としては、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、金属アルコキシド、その他のいずれの形態でもよい。第一塗布液の溶媒は、金属塩の種類に応じて選択できるが、水及びブタノール等のアルコール類等を用いることができる。溶媒としては、水または水とアルコール類の混合溶媒が好ましい。金属塩を溶解させた第一塗布液中の総金属濃度は特に限定されないが、1回の塗布で形成される塗膜の厚みとの兼ね合いから10~150g/Lの範囲が好ましい。
第一塗布液を電解用電極基材10上に塗布する方法としては、電解用電極基材10を第一塗布液に浸漬するディップ法、第一塗布液を刷毛で塗る方法、第一塗布液を含浸させたスポンジ状のロールを用いるロール法、電解用電極基材10と第一塗布液とを反対荷電に帯電させてスプレー噴霧を行う静電塗布法等が用いられる。この中でも工業的な生産性に優れた、ロール法又は静電塗布法が好ましい。
(乾燥工程、熱分解工程)
電解用電極基材10に第一塗布液を塗布した後、10~90℃の温度で乾燥し、350~650℃に加熱した焼成炉で熱分解する。乾燥と熱分解の間に、必要に応じて100~350℃で仮焼成を実施してもよい。乾燥、仮焼成及び熱分解温度は、第一塗布液の組成や溶媒種により、適宜選択することが出来る。一回当たりの熱分解の時間は長い方が好ましいが、電極の生産性の観点から3~60分が好ましく、5~20分がより好ましい。
上記の塗布、乾燥及び熱分解のサイクルを繰り返して、被覆(第一層20)を所定の厚みに形成する。第一層20を形成した後に、必要に応じて更に長時間焼成する後加熱を行うと、第一層20の安定性を更に高めることができる。
(中間層の形成)
中間層は、必要に応じて形成され、例えば、パラジウム化合物あるいは白金化合物を含む溶液(第二塗布液)を基材の上に塗布した後、酸素の存在下で熱分解して得られる。あるいは、溶液を塗布することなく基材を加熱するだけで基材表面に酸化ニッケル中間層を形成させてもよい。
(イオンプレーティングでの陰極の第一層の形成)
第一層20はイオンプレーティングで形成させることもできる。
一例として、基材をチャンバー内に固定し、金属ルテニウムターゲットに電子線を照射する方法が挙げられる。蒸発した金属ルテニウム粒子は、チャンバー内のプラズマ中でプラスに帯電され、マイナスに帯電させた基板上に堆積する。プラズマ雰囲気はアルゴン、酸素であり、ルテニウムはルテニウム酸化物として基材上に堆積する。
(メッキでの陰極の第一層の形成)
第一層20は、メッキ法でも形成させることもできる。
一例として、基材を陰極として使用し、ニッケルおよびスズを含む電解液中で電解メッキを実施すると、ニッケルとスズの合金メッキを形成させることができる。
(熱溶射での陰極の第一層の形成)
第一層20は、熱溶射法でも形成させることができる。
一例として、酸化ニッケル粒子を基材上にプラズマ溶射することにより、金属ニッケルと酸化ニッケルが混合した触媒層を形成させることができる。
本実施形態の電解用電極は、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜と一体化して用いることができる。そのため、膜一体電極として用いることができ、電極を更新する際の陰極及び陽極の張り替え作業が不要となり、作業効率が大幅に向上する。
また、イオン交換膜や微多孔膜などの隔膜との一体電極によれば、電解性能を新品時の性能と同等または向上させることができる。
以下、イオン交換膜について詳述する。
〔イオン交換膜〕
イオン交換膜は、イオン交換基を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体を含む膜本体と、該膜本体の少なくとも一方面上に設けられたコーティング層とを有する。また、コーティング層は、無機物粒子と結合剤とを含み、コーティング層の比表面積は、0.1~10m2/gである。かかる構造のイオン交換膜は、電解中に発生するガスによる電解性能への影響が少なく、安定した電解性能を発揮することができる。
上記、イオン交換基が導入されたパーフルオロカーボン重合体の膜とは、スルホ基由来のイオン交換基(-SO3-で表される基、以下「スルホン酸基」ともいう。)を有するスルホン酸層と、カルボキシル基由来のイオン交換基(-CO2-で表される基、以下「カルボン酸基」ともいう。)を有するカルボン酸層のいずれか一方を備えるものである。強度及び寸法安定性の観点から、強化芯材をさらに有することが好ましい。
無機物粒子及び結合剤については、以下コーティング層の説明の欄に詳述する。
図2は、イオン交換膜の一実施形態を示す断面模式図である。イオン交換膜1は、イオン交換基を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体を含む膜本体10と、膜本体10の両面に形成されたコーティング層11a及び11bを有する。
イオン交換膜1において、膜本体10は、スルホ基由来のイオン交換基(-SO3 -で表される基、以下「スルホン酸基」ともいう。)を有するスルホン酸層3と、カルボキシル基由来のイオン交換基(-CO2 -で表される基、以下「カルボン酸基」ともいう。)を有するカルボン酸層2とを備え、強化芯材4により強度及び寸法安定性が強化されている。イオン交換膜1は、スルホン酸層3とカルボン酸層2とを備えるため、陽イオン交換膜として好適に用いられる。
なお、イオン交換膜は、スルホン酸層及びカルボン酸層のいずれか一方のみを有するものであってもよい。また、イオン交換膜は、必ずしも強化芯材により強化されている必要はなく、強化芯材の配置状態も図2の例に限定されるものではない。
(膜本体)
先ず、イオン交換膜1を構成する膜本体10について説明する。
膜本体10は、陽イオンを選択的に透過する機能を有し、イオン交換基を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体を含むものであればよく、その構成や材料は特に限定されず、適宜好適なものを選択することができる。
膜本体10におけるイオン交換基を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体は、例えば、加水分解等によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する炭化水素系重合体あるいは含フッ素系重合体から得ることができる。具体的には、例えば、主鎖がフッ素化炭化水素からなり、加水分解等によりイオン交換基に変換可能な基(イオン交換基前駆体)をペンダント側鎖として有し、且つ溶融加工が可能な重合体(以下、場合により「含フッ素系重合体(a)」という。)を用いて膜本体10の前駆体を作製した後、イオン交換基前駆体をイオン交換基に変換することにより、膜本体10を得ることができる。
含フッ素系重合体(a)は、例えば、下記第1群より選ばれる少なくとも一種の単量体と、下記第2群及び/又は下記第3群より選ばれる少なくとも一種の単量体と、を共重合することにより製造することができる。また、下記第1群、下記第2群、及び下記第3群のいずれかより選ばれる1種の単量体の単独重合により製造することもできる。
第1群の単量体としては、例えば、フッ化ビニル化合物が挙げられる。フッ化ビニル化合物としては、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。特に、イオン交換膜をアルカリ電解用膜として用いる場合、フッ化ビニル化合物は、パーフルオロ単量体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれるパーフルオロ単量体が好ましい。
第2群の単量体としては、例えば、カルボン酸型イオン交換基(カルボン酸基)に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。カルボン酸基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、例えば、CF2=CF(OCF2CYF)s-O(CZF)t-COORで表される単量体等が挙げられる(ここで、sは0~2の整数を表し、tは1~12の整数を表し、Y及びZは、各々独立して、F又はCF3を表し、Rは低級アルキル基を表す。低級アルキル基は、例えば炭素数1~3のアルキル基である。)。
これらの中でも、CF2=CF(OCF2CYF)n-O(CF2m-COORで表される化合物が好ましい。ここで、nは0~2の整数を表し、mは1~4の整数を表し、YはF又はCF3を表し、RはCH3、C25、又はC37を表す。
なお、イオン交換膜をアルカリ電解用陽イオン交換膜として用いる場合、単量体としてパーフルオロ化合物を少なくとも用いることが好ましいが、エステル基のアルキル基(上記R参照)は加水分解される時点で重合体から失われるため、アルキル基(R)は全ての水素原子がフッ素原子に置換されているパーフルオロアルキル基でなくてもよい。
第2群の単量体としては、上記の中でも下記に表す単量体がより好ましい。
CF2=CFOCF2-CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22COOCH3
CF2=CF[OCF2-CF(CF3)]2O(CF22COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23COOCH3
CF2=CFO(CF22COOCH3
CF2=CFO(CF23COOCH3
第3群の単量体としては、例えば、スルホン型イオン交換基(スルホン酸基)に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。スルホン酸基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、例えば、CF2=CFO-X-CF2-SO2Fで表される単量体が好ましい(ここで、Xはパーフルオロアルキレン基を表す。)。これらの具体例としては、下記に表す単量体等が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CF(CF22SO2F、
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F。
これらの中でも、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fがより好ましい。
これら単量体から得られる共重合体は、フッ化エチレンの単独重合及び共重合に対して開発された重合法、特にテトラフルオロエチレンに対して用いられる一般的な重合方法によって製造することができる。例えば、非水性法においては、パーフルオロ炭化水素、クロロフルオロカーボン等の不活性溶媒を用い、パーフルオロカーボンパーオキサイドやアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、温度0~200℃、圧力0.1~20MPaの条件下で、重合反応を行うことができる。
上記共重合において、上記単量体の組み合わせの種類及びその割合は、特に限定されず、得られる含フッ素系重合体に付与したい官能基の種類及び量によって選択決定される。例えば、カルボン酸基のみを含有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群及び第2群から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。また、スルホン酸基のみを含有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群及び第3群の単量体から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。さらに、カルボン酸基及びスルホン酸基を有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群、第2群及び第3群の単量体から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。この場合、上記第1群及び第2群よりなる共重合体と、上記第1群及び第3群よりなる共重合体とを、別々に重合し、後に混合することによっても目的の含フッ素系重合体を得ることができる。また、各単量体の混合割合は、特に限定されないが、単位重合体当たりの官能基の量を増やす場合、上記第2群及び第3群より選ばれる単量体の割合を増加させればよい。
含フッ素系共重合体の総イオン交換容量は特に限定されないが、0.5~2.0mg当量/gであることが好ましく、0.6~1.5mg当量/gであることがより好ましい。ここで、総イオン交換容量とは、乾燥樹脂の単位重量あたりの交換基の当量のことをいい、中和滴定等によって測定することができる。
イオン交換膜1の膜本体10においては、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含むスルホン酸層3と、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を含むカルボン酸層2とが積層されている。このような層構造の膜本体10とすることで、ナトリウムイオン等の陽イオンの選択的透過性を一層向上させることができる。
イオン交換膜1を電解槽に配置する場合、通常、スルホン酸層3が電解槽の陽極側に、カルボン酸層2が電解槽の陰極側に、それぞれ位置するように配置する。
スルホン酸層3は、電気抵抗が低い材料から構成されていることが好ましく、膜強度の観点から、膜厚がカルボン酸層2より厚いことが好ましい。スルホン酸層3の膜厚は、好ましくはカルボン酸層2の2~25倍であり、より好ましくは3~15倍である。
カルボン酸層2は、膜厚が薄くても高いアニオン排除性を有するものであることが好ましい。ここでいうアニオン排除性とは、イオン交換膜1へのアニオンの侵入や透過を妨げようとする性質をいう。アニオン排除性を高くするためには、スルホン酸層に対し、イオン交換容量の小さいカルボン酸層を配すること等が有効である。
スルホン酸層3に用いる含フッ素系重合体としては、例えば、第3群の単量体としてCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fを用いて得られた重合体が好適である。
カルボン酸層2に用いる含フッ素系重合体としては、例えば、第2群の単量体としてCF2=CFOCF2CF(CF2)O(CF22COOCH3を用いて得られた重合体が好適である。
(コーティング層)
イオン交換膜は、膜本体の少なくとも一方面上にコーティング層を有する。また、図2に示すとおり、イオン交換膜1においては、膜本体10の両面上にそれぞれコーティング層11a及び11bが形成されている。
コーティング層は無機物粒子と結合剤とを含む。
無機物粒子の平均粒径は、0.90μm以上であることがより好ましい。無機物粒子の平均粒径が0.90μm以上であると、ガス付着だけでなく不純物への耐久性が極めて向上する。すなわち、無機物粒子の平均粒径を大きくしつつ、且つ上述の比表面積の値を満たすようにすることで、特に顕著な効果が得られるようになる。このような平均粒径と比表面積を満たすため、不規則状の無機物粒子が好ましい。溶融により得られる無機物粒子、原石粉砕により得られる無機物粒子を用いることができる。好ましくは原石粉砕により得られる無機物粒子を好適に用いることができる。
また、無機物粒子の平均粒径は、2μm以下とすることができる。無機物粒子の平均粒径が2μm以下であれば、無機物粒子によって膜が損傷することを防止できる。無機物粒子の平均粒径は、より好ましくは、0.90~1.2μmである。
ここで、平均粒径は、粒度分布計(「SALD2200」島津製作所)によって測定することができる。
無機物粒子の形状は、不規則形状であることが好ましい。不純物への耐性がより向上する。また、無機物粒子の粒度分布は 、ブロードであることが好ましい。
無機物粒子は、周期律表第IV族元素の酸化物、周期律表第IV族元素の窒化物、及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物を含むことが好ましい。より好ましくは、耐久性の観点から、酸化ジルコニウムの粒子である。
この無機物粒子は、無機物粒子の原石を粉砕されることにより製造された無機物粒子であるか、または、無機物粒子の原石を溶融して精製することによって、粒子の径が揃った球状の粒子を無機物粒子であることが好ましい。
原石粉砕方法としては、特に限定されないが、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、VSIミル、ウィリーミル、ローラーミル、ジェットミルなどが挙げられる。また、粉砕後、洗浄されることが好ましく、そのとき洗浄方法としては、酸処理されることが好ましい。それによって、無機物粒子の表面に付着した鉄等の不純物を削減することができる。
コーティング層は結合剤を含むことが好ましい。結合剤は、無機物粒子をイオン交換膜の表面に保持して、コーティング層を成す成分である。結合剤は、電解液や電解による生成物への耐性の観点から、含フッ素系重合体を含むことが好ましい。
結合剤としては、電解液や電解による生成物への耐性、及び、イオン交換膜の表面への接着性の観点から、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する含フッ素系重合体であることがより好ましい。スルホン酸基を有する含フッ素重合体を含む層(スルホン酸層)上にコーティング層を設ける場合、当該コーティング層の結合剤としては、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を用いることがさらに好ましい。また、カルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層(カルボン酸層)上にコーティング層を設ける場合、当該コーティング層の結合剤としては、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を用いることがさらに好ましい。
コーティング層中、無機物粒子の含有量は40~90質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。また、結合剤の含有量は、10~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
イオン交換膜におけるコーティング層の分布密度は、1cm2当り0.05~2mgであることが好ましい。また、イオン交換膜が表面に凹凸形状を有する場合には、コーティング層の分布密度は、1cm2当り0.5~2mgであることが好ましい。
コーティング層を形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることがきる。例えば、無機物粒子を結合剤を含む溶液に分散したコーティング液を、スプレー等により塗布する方法が挙げられる。
(強化芯材)
イオン交換膜は、膜本体の内部に配置された強化芯材を有することが好ましい。
強化芯材は、イオン交換膜の強度や寸法安定性を強化する部材である。強化芯材を膜本体の内部に配置させることで、特に、イオン交換膜の伸縮を所望の範囲に制御することができる。かかるイオン交換膜は、電解時等において、必要以上に伸縮せず、長期に優れた寸法安定性を維持することができる。
強化芯材の構成は、特に限定されず、例えば、強化糸と呼ばれる糸を紡糸して形成させてもよい。ここでいう強化糸とは、強化芯材を構成する部材であって、イオン交換膜に所望の寸法安定性及び機械的強度を付与できるものであり、かつ、イオン交換膜中で安定に存在できる糸のことをいう。かかる強化糸を紡糸した強化芯材を用いることにより、一層優れた寸法安定性及び機械的強度をイオン交換膜に付与することができる。
強化芯材及びこれに用いる強化糸の材料は、特に限定されないが、酸やアルカリ等に耐性を有する材料であることが好ましく、長期にわたる耐熱性、耐薬品性が必要であることから、含フッ素系重合体から成る繊維が好ましい。
強化芯材に用いられる含フッ素系重合体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、トリフルオロクロルエチレン-エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン重合体(PVDF)等が挙げられる。これらのうち、特に耐熱性及び耐薬品性の観点からは、ポリテトラフルオロエチレンからなる繊維を用いることが好ましい。
強化芯材に用いられる強化糸の糸径は、特に限定されないが、好ましくは20~300デニール、より好ましくは50~250デニールである。織り密度(単位長さあたりの打ち込み本数)は、好ましくは5~50本/インチである。強化芯材の形態としては、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編布等が用いられるが、織布の形態であることが好ましい。また、織布の厚みは、好ましくは30~250μm、より好ましくは30~150μmのものが使用される。
織布又は編布は、モノフィラメント、マルチフィラメント又はこれらのヤーン、スリットヤーン等が使用でき、織り方は平織り、絡み織り、編織り、コード織り、シャーサッカ等の種々の織り方が使用できる。
膜本体における強化芯材の織り方及び配置は、特に限定されず、イオン交換膜の大きさや形状、イオン交換膜に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。
例えば、膜本体の所定の一方向に沿って強化芯材を配置してもよいが、寸法安定性の観点から、所定の第一の方向に沿って強化芯材を配置し、かつ第一の方向に対して略垂直である第二の方向に沿って別の強化芯材を配置することが好ましい。膜本体の縦方向膜本体の内部において、略直行するように複数の強化芯材を配置することで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。例えば、膜本体の表面において縦方向に沿って配置された強化芯材(縦糸)と横方向に沿って配置された強化芯材(横糸)を織り込む配置が好ましい。縦糸と横糸を交互に浮き沈みさせて打ち込んで織った平織りや、2本の経糸を捩りながら横糸と織り込んだ絡み織り、2本又は数本ずつ引き揃えて配置した縦糸に同数の横糸を打ち込んで織った斜子織り(ななこおり)等とすることが、寸法安定性、機械的強度及び製造容易性の観点からより好ましい。
特に、イオン交換膜のMD方向(Machine Direction方向)及びTD方向(Transverse Direction方向)の両方向に沿って強化芯材が配置されていることが好ましい。すなわち、MD方向とTD方向に平織りされていることが好ましい。ここで、MD方向とは、後述するイオン交換膜の製造工程において、膜本体や各種芯材(例えば、強化芯材、強化糸、後述する犠牲糸等)が搬送される方向(流れ方向)をいい、TD方向とは、MD方向と略垂直の方向をいう。そして、MD方向に沿って織られた糸をMD糸といい、TD方向に沿って織られた糸をTD糸という。通常、電解に用いるイオン交換膜は、矩形状であり、長手方向がMD方向となり、幅方向がTD方向となることが多い。MD糸である強化芯材とTD糸である強化芯材を織り込むことで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。
強化芯材の配置間隔は、特に限定されず、イオン交換膜に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。
強化芯材の開口率は、特に限定されず、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上90%以下である。開口率は、イオン交換膜の電気化学的性質の観点からは30%以上が好ましく、イオン交換膜の機械的強度の観点からは90%以下が好ましい。
強化芯材の開口率とは、膜本体のいずれか一方の表面の面積(A)におけるイオン等の物質(電解液及びそれに含有される陽イオン(例えば、ナトリウムイオン))が通過できる表面の総面積(B)の割合(B/A)をいう。イオン等の物質が通過できる表面の総面積(B)とは、イオン交換膜において、陽イオンや電解液等が、イオン交換膜に含まれる強化芯材等によって遮断されない領域の総面積ということができる。
図3は、イオン交換膜を構成する強化芯材の開口率を説明するための概略図である。図3はイオン交換膜の一部を拡大し、その領域内における強化芯材21及び22の配置のみを図示しているものであり、他の部材については図示を省略している。
縦方向に沿って配置された強化芯材21と横方向に配置された強化芯材22によって囲まれた領域であって、強化芯材の面積も含めた領域の面積(A)から強化芯材の総面積(C)を減じることにより、上述した領域の面積(A)におけるイオン等の物質が通過できる領域の総面積(B)を求めることができる。すなわち、開口率は、下記式(I)により求めることができる。
開口率=(B)/(A)=((A)-(C))/(A) …(I)
強化芯材の中でも、特に好ましい形態は、耐薬品性及び耐熱性の観点から、PTFEを含むテープヤーン又は高配向モノフィラメントである。具体的には、PTFEからなる高強度多孔質シートをテープ状にスリットしたテープヤーン、又はPTFEからなる高度に配向したモノフィラメントの50~300デニールを使用し、かつ、織り密度が10~50本/インチである平織りであり、その厚みが50~100μmの範囲である強化芯材であることがより好ましい。かかる強化芯材を含むイオン交換膜の開口率は60%以上であることが更に好ましい。
強化糸の形状としては、丸糸、テープ状糸等が挙げられる。
(連通孔)
イオン交換膜は、膜本体の内部に連通孔を有することが好ましい。
連通孔とは、電解の際に発生するイオンや電解液の流路となり得る孔をいう。また、連通孔とは、膜本体内部に形成されている管状の孔であり、後述する犠牲芯材(又は犠牲糸)が溶出することで形成される。連通孔の形状や径等は、犠牲芯材(犠牲糸)の形状や径を選択することによって制御することができる。
イオン交換膜に連通孔を形成することで、電解の際に電解液の移動性を確保できる。連通孔の形状は特に限定されないが、後述する製法によれば、連通孔の形成に用いられる犠牲芯材の形状とすることができる。
連通孔は、強化芯材の陽極側(スルホン酸層側)と陰極側(カルボン酸層側)を交互に通過するように形成されることが好ましい。かかる構造とすることで、強化芯材の陰極側に連通孔が形成されている部分では、連通孔に満たされている電解液を通して輸送されたイオン(例えば、ナトリウムイオン)が、強化芯材の陰極側にも流れることができる。その結果、陽イオンの流れが遮蔽されることがないため、イオン交換膜の電気抵抗を更に低くすることができる。
連通孔は、イオン交換膜を構成する膜本体の所定の一方向のみに沿って形成されていてもよいが、より安定した電解性能を発揮するという観点から、膜本体の縦方向と横方向との両方向に形成されていることが好ましい。
〔製造方法〕
イオン交換膜の好適な製造方法としては、以下の(1)工程~(6)工程を有する方法が挙げられる。
(1)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を製造する工程。
(2)工程:必要に応じて、複数の強化芯材と、酸又はアルカリに溶解する性質を有し、連通孔を形成する犠牲糸と、を少なくとも織り込むことにより、隣接する強化芯材同士の間に犠牲糸が配置された補強材を得る工程。
(3)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する前記含フッ素系重合体をフィルム化する工程。
(4)工程:前記フィルムに必要に応じて前記補強材を埋め込んで、前記補強材が内部に配置された膜本体を得る工程。
(5)工程:(4)工程で得られた膜本体を加水分解する工程(加水分解工程)。
(6)工程:(5)工程で得られた膜本体に、コーティング層を設ける工程(コーティング工程)。
以下、各工程について詳述する。
(1)工程:含フッ素系重合体を製造する工程
(1)工程では、上記第1群~第3群に記載した原料の単量体を用いて含フッ素系重合体を製造する。含フッ素系重合体のイオン交換容量を制御するためには、各層を形成する含フッ素系重合体の製造において、原料の単量体の混合比を調整すればよい。
(2)工程:補強材の製造工程
補強材とは、強化糸を織った織布等である。補強材が膜内に埋め込まれることで、強化芯材を形成する。連通孔を有するイオン交換膜とするときには、犠牲糸も一緒に補強材へ織り込む。この場合の犠牲糸の混織量は、好ましくは補強材全体の10~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。犠牲糸を織り込むことにより、強化芯材の目ズレを防止することもできる。
犠牲糸は、膜の製造工程もしくは電解環境下において溶解性を有するものであり、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース及びポリアミド等が用いられる。また、20~50デニールの太さを有し、モノフィラメント又はマルチフィラメントからなるポリビニルアルコール等も好ましい。
なお、(2)工程において、強化芯材や犠牲糸の配置を調整することにより、開口率や連通孔の配置等を制御することができる。
(3)工程:フィルム化工程
(3)工程では、前記(1)工程で得られた含フッ素系重合体を、押出し機を用いてフィルム化する。フィルムは単層構造でもよいし、上述したように、スルホン酸層とカルボン酸層との2層構造でもよいし、3層以上の多層構造であってもよい。
フィルム化する方法としては例えば、以下のものが挙げられる。
カルボン酸基を有する含フッ素重合体、スルホン酸基を有する含フッ素重合体をそれぞれ別々にフィルム化する方法。
カルボン酸基を有する含フッ素重合体と、スルホン酸基を有する含フッ素重合体とを共押出しにより、複合フィルムとする方法。
なお、フィルムはそれぞれ複数枚であってもよい。また、異種のフィルムを共押出しすることは、界面の接着強度を高めることに寄与するため、好ましい。
(4)工程:膜本体を得る工程
(4)工程では、(2)工程で得た補強材を、(3)工程で得たフィルムの内部に埋め込むことで、補強材が内在する膜本体を得る。
膜本体の好ましい形成方法としては、(i)陰極側に位置するカルボン酸基前駆体(例えば、カルボン酸エステル官能基)を有する含フッ素系重合体(以下、これからなる層を第一層という)と、スルホン酸基前駆体(例えば、スルホニルフルオライド官能基)を有する含フッ素系重合体(以下、これからなる層を第二層という)を共押出し法によってフィルム化し、必要に応じて加熱源及び真空源を用いて、表面上に多数の細孔を有する平板またはドラム上に、透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、補強材、第二層/第一層複合フィルムの順に積層して、各重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら一体化する方法;(ii)第二層/第一層複合フィルムとは別に、スルホン酸基前駆体を有する含フッ素系重合体(第三層)を予め単独でフィルム化し、必要に応じて加熱源及び真空源を用いて、表面上に多数の細孔を有する平板又はドラム上に透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、第三層フィルム、強化芯材、第二層/第一層からなる複合フィルムの順に積層して、各重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら一体化する方法が挙げられる。
ここで、第一層と第二層とを共押出しすることは、界面の接着強度を高めることに寄与している。
また、減圧下で一体化する方法は、加圧プレス法に比べて、補強材上の第三層の厚みが大きくなる特徴を有している。更に、補強材が膜本体の内面に固定されているため、イオン交換膜の機械的強度が十分に保持できる性能を有している。
なお、ここで説明した積層のバリエーションは一例であり、所望する膜本体の層構成や物性等を考慮して、適宜好適な積層パターン(例えば、各層の組合せ等)を選択した上で、共押出しすることができる。
なお、イオン交換膜の電気的性能をさらに高める目的で、第一層と第二層との間に、カルボン酸基前駆体とスルホン酸基前駆体の両方を有する含フッ素系重合体からなる第四層をさらに介在させることや、第二層の代わりにカルボン酸基前駆体とスルホン酸基前駆体の両方を有する含フッ素系重合体からなる第四層を用いることも可能である。
第四層の形成方法は、カルボン酸基前駆体を有する含フッ素系重合体と、スルホン酸基前駆体を有する含フッ素系重合体と、を別々に製造した後に混合する方法でもよく、カルボン酸基前駆体を有する単量体とスルホン酸基前駆体を有する単量体とを共重合したものを使用する方法でもよい。
第四層をイオン交換膜の構成とする場合には、第一層と第四層との共押出しフィルムを成形し、第三層と第二層はこれとは別に単独でフィルム化し、前述の方法で積層してもよいし、第一層/第四層/第二層の3層を一度に共押し出しでフィルム化してもよい。
この場合、押出しされたフィルムが流れていく方向が、MD方向である。このようにして、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体を、補強材上に形成することができる。
また、イオン交換膜は、スルホン酸層からなる表面側に、スルホン酸基を有する含フッ素重合体からなる突出した部分、すなわち凸部を有することが好ましい。このような凸部を形成する方法としては、特に限定されず、樹脂表面に凸部を形成する公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、膜本体の表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。例えば、前記した複合フィルムと補強材等とを一体化する際に、予めエンボス加工された離型紙を用いることによって、上記の凸部を形成させることができる。エンボス加工により凸部を形成する場合、凸部の高さや配置密度の制御は、転写するエンボス形状(離型紙の形状)を制御することで行うことができる。
(5)加水分解工程
(5)工程では、(4)工程で得られた膜本体を加水分解して、イオン交換基前駆体をイオン交換基に変換する工程(加水分解工程)を行う。
また、(5)工程では、膜本体に含まれている犠牲糸を酸又はアルカリで溶解除去することで、膜本体に溶出孔を形成させることができる。なお、犠牲糸は、完全に溶解除去されずに、連通孔に残っていてもよい。また、連通孔に残っていた犠牲糸は、イオン交換膜が電解に供された際、電解液により溶解除去されてもよい。
犠牲糸は、イオン交換膜の製造工程や電解環境下において、酸又はアルカリに対して溶解性を有するものであり、犠牲糸が溶出することで当該部位に連通孔が形成される。
(5)工程は、酸又はアルカリを含む加水分解溶液に(4)工程で得られた膜本体を浸漬して行うことができる。該加水分解溶液としては、例えば、KOHとDMSO(Dimethyl sulfoxide)とを含む混合溶液を用いることができる。
該混合溶液は、KOHを2.5~4.0N含み、DMSOを25~35質量%含むことが好ましい。
加水分解の温度としては、70~100℃であることが好ましい。温度が高いほど、見かけ厚みをより厚くすることができる。より好ましくは、75~100℃である。
加水分解の時間としては、10~120分であることが好ましい。時間が長いほど、見かけ厚みをより厚くすることができる。より好ましくは、20~120分である。
ここで、犠牲糸を溶出させることで連通孔形成する工程についてより詳細に説明する。図4(a)、(b)は、イオン交換膜の連通孔を形成する方法を説明するための模式図である。
図4(a)、(b)では、強化糸52と犠牲糸504aと犠牲糸504aにより形成される連通孔504のみを図示しており、膜本体等の他の部材については、図示を省略している。
まず、イオン交換膜中で強化芯材を構成することとなる強化糸52と、イオン交換膜中で連通孔504を形成するための犠牲糸504aとを、編み込み補強材とする。そして、(5)工程において犠牲糸504aが溶出することで連通孔504が形成される。
上記方法によれば、イオン交換膜の膜本体内において強化芯材、連通孔を如何なる配置とするのかに応じて、強化糸52と犠牲糸504aの編み込み方を調整すればよいため簡便である。
図4(a)では、紙面において縦方向と横方向の両方向に沿って強化糸52と犠牲糸504aを織り込んだ平織りの補強材を例示しているが、必要に応じて補強材における強化糸52と犠牲糸504aの配置を変更することができる。
(6)コーティング工程
(6)工程では、原石粉砕または原石溶融により得られた無機物粒子と、結合剤とを含むコーティング液を調整し、コーティング液を(5)工程で得られたイオン交換膜の表面に塗布及び乾燥させることで、コーティング層を形成することができる。
結合剤としては、イオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び水酸化カリウム(KOH)を含む水溶液で加水分解した後、塩酸に浸漬してイオン交換基の対イオンをH+に置換した結合剤(例えば、カルボキシル基又はスルホ基を有する含フッ素系重合体)が好ましい。それによって、後述する水やエタノールに溶解しやすくなるため、好ましい。
この結合剤を、水とエタノールを混合した溶液に溶解する。なお、水とエタノールの好ましい体積比10:1~1:10であり、より好ましくは、5:1~1:5であり、さらに好ましくは、2:1~1:2である。このようにして得た溶解液中に、無機物粒子をボールミルで分散させてコーティング液を得る。このとき、分散する際の、時間、回転速度を調整することで、粒子の平均粒径等を調整することもできる。なお、無機物粒子と結合剤の好ましい配合量は、前述の通りである。
コーティング液中の無機物粒子及び結合剤の濃度については、特に限定されないが、薄いコーティング液とする方が好ましい。それによって、イオン交換膜の表面に均一に塗布することが可能となる。
また、無機物粒子を分散させる際に、界面活性剤を分散液に添加してもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤界面活性剤が好ましく、例えば、日油株式会社性HS-210、NS-210、P-210、E-212等が挙げられる。
得られたコーティング液を、スプレー塗布やロール塗工でイオン交換膜表面に塗布することでイオン交換膜が得られる。
〔微多孔膜〕
本実施形態の微多孔膜としては、前述の通り、電解用電極と積層体とすることができれば、特に限定されず、種々の微多孔膜を適用することができる。
本実施形態の微多孔膜の気孔率は、特に限定されないが、例えば、20~90とすることができ、好ましくは30~85である。上記気孔率は、例えば、下記の式にて算出できる。
気孔率=(1-(乾燥状態の膜重量)/(膜の厚み、幅、長さから算出される体積と膜素材の密度から算出される重量))×100
本実施形態の微多孔膜の平均孔径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm~10μとすることができ、好ましくは0.05μm~5μmである。上記平均孔径は、例えば、膜を厚み方向に垂直に切断し、切断面をFE-SEMで観察する。観察される孔の直径を100点程度測定し、平均することで求めることができる。
本実施形態の微多孔膜の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm~1000μmとすることができ、好ましくは50μm~600μmである。上記厚みは、例えば、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)等を用いて測定することができる。
上述のような微多孔膜の具体例としては、Agfa社製のZirfon Perl UTP 500(本実施形態において、Zirfon膜とも称す)、国際公開第2013-183584号パンフレット、国際公開第2016-203701号パンフレットなどに記載のものが挙げられる。
本実施形態の、隔膜との積層体が優れた電解性能を発現する理由は以下のように推定している。従来技術である隔膜と電極とを熱圧着等の方法により強固に接着している場合、電極が隔膜へめり込む状態となって物理的に接着されている。この接着部分が、ナトリウムイオンの膜内の移動を妨げることとなり、電圧が大きく上昇する。一方、本実施形態のように電解用電極を隔膜または給電体を適度な接着力で接することにより、従来技術で問題であったナトリウムイオンの膜内移動を妨げることがなくなる。これにより、隔膜または給電体と電解用電極とが適度な接着力で接している場合、隔膜または給電体と電解用電極との一体物でありながら、優れた電解性能を発現することができる。
〔捲回体〕
本実施形態の捲回体は、本実施形態の積層体を含む。すなわち、本実施形態の捲回体は、本実施形態の積層体を捲回してなるものである。本実施形態の捲回体のように、本実施形態の積層体を捲回してサイズダウンさせることにより、よりハンドリング性を向上させることができる。
〔電解槽〕
本実施形態の電解槽は、本実施形態の積層体を含む。以下、隔膜としてイオン交換膜を用い、食塩電解を行う場合を例として、電解槽の一実施形態を詳述する。
〔電解セル〕
図5は、電解セル1の断面図である。
電解セル1は、陽極室10と、陰極室20と、陽極室10及び陰極室20の間に設置された隔壁30と、陽極室10に設置された陽極11と、陰極室20に設置された陰極21と、を備える。必要に応じて基材18aと当該基材18a上に形成された逆電流吸収層18bとを有し、陰極室内に設置された逆電流吸収体18と、を備えてもよい。1つの電解セル1に属する陽極11及び陰極21は互いに電気的に接続されている。換言すれば、電解セル1は次の陰極構造体を備える。陰極構造体40は、陰極室20と、陰極室20に設置された陰極21と、陰極室20内に設置された逆電流吸収体18と、を備え、逆電流吸収体18は、図9に示すように基材18aと当該基材18a上に形成された逆電流吸収層18bとを有し、陰極21と逆電流吸収層18bとが電気的に接続されている。陰極室20は、集電体23と、当該集電体を支持する支持体24と、金属弾性体22とを更に有する。金属弾性体22は、集電体23及び陰極21の間に設置されている。支持体24は、集電体23及び隔壁30の間に設置されている。集電体23は、金属弾性体22を介して、陰極21と電気的に接続されている。隔壁30は、支持体24を介して、集電体23と電気的に接続されている。したがって、隔壁30、支持体24、集電体23、金属弾性体22及び陰極21は電気的に接続されている。陰極21及び逆電流吸収層18bは電気的に接続されている。陰極21及び逆電流吸収層は、直接接続されていてもよく、集電体、支持体、金属弾性体又は隔壁等を介して間接的に接続されていてもよい。陰極21の表面全体は還元反応のための触媒層で被覆されていることが好ましい。また、電気的接続の形態は、隔壁30と支持体24、支持体24と集電体23、集電体23と金属弾性体22がそれぞれ直接取り付けられ、金属弾性体22上に陰極21が積層される形態であってもよい。これらの各構成部材を互いに直接取り付ける方法として、溶接等があげられる。また、逆電流吸収体18、陰極21、および集電体23を総称して陰極構造体40としてもよい。
図6は、電解槽4内において隣接する2つの電解セル1の断面図である。図7は、電解槽4を示す。図8は、電解槽4を組み立てる工程を示す。図6に示すように、電解セル1、陽イオン交換膜2、電解セル1がこの順序で直列に並べられている。電解槽内において隣接する2つの電解セルのうち一方の電解セル1の陽極室と他方の電解セル1の陰極室との間にイオン交換膜2が配置されている。つまり、電解セル1の陽極室10と、これに隣接する電解セル1の陰極室20とは、陽イオン交換膜2で隔てられる。図7に示すように、電解槽4は、イオン交換膜2を介して直列に接続された複数の電解セル1から構成される。つまり、電解槽4は、直列に配置された複数の電解セル1と、隣接する電解セル1の間に配置されたイオン交換膜2と、を備える複極式電解槽である。図8に示すように、電解槽4は、イオン交換膜2を介して複数の電解セル1を直列に配置して、プレス器5により連結されることにより組み立てられる。
電解槽4は、電源に接続される陽極端子7と陰極端子6とを有する。電解槽4内で直列に連結された複数の電解セル1のうち最も端に位置する電解セル1の陽極11は、陽極端子7に電気的に接続される。電解槽4内で直列に連結された複数の電解セル2のうち陽極端子7の反対側の端に位置する電解セルの陰極21は、陰極端子6に電気的に接続される。電解時の電流は、陽極端子7側から、各電解セル1の陽極及び陰極を経由して、陰極端子6へ向かって流れる。なお、連結した電解セル1の両端には、陽極室のみを有する電解セル(陽極ターミナルセル)と、陰極室のみを有する電解セル(陰極ターミナルセル)を配置してもよい。この場合、その一端に配置された陽極ターミナルセルに陽極端子7が接続され、他の端に配置された陰極ターミナルセルに陰極端子6が接続される。
塩水の電解を行なう場合、各陽極室10には塩水が供給され、陰極室20には純水又は低濃度の水酸化ナトリウム水溶液が供給される。各液体は、電解液供給管(図中省略)から、電解液供給ホース(図中省略)を経由して、各電解セル1に供給される。また、電解液及び電解による生成物は、電解液回収管(図中省略)より、回収される。電解において、塩水中のナトリウムイオンは、一方の電解セル1の陽極室10から、イオン交換膜2を通過して、隣の電解セル1の陰極室20へ移動する。よって、電解中の電流は、電解セル1が直列に連結された方向に沿って、流れることになる。つまり、電流は、陽イオン交換膜2を介して陽極室10から陰極室20に向かって流れる。塩水の電解に伴い、陽極11側で塩素ガスが生成し、陰極21側で水酸化ナトリウム(溶質)と水素ガスが生成する。
(陽極室)
陽極室10は、陽極11または陽極給電体11を有する。本実施形態の電解用電極を陽極側へ挿入した場合には、11は陽極給電体として機能する。本実施形態の電解用電極を陽極側へ挿入しない場合には、11は陽極として機能する。また、陽極室10は、陽極室10に電解液を供給する陽極側電解液供給部と、陽極側電解液供給部の上方に配置され、隔壁30と略平行または斜めになるように配置されたバッフル板と、バッフル板の上方に配置され、気体が混入した電解液から気体を分離する陽極側気液分離部とを有することが好ましい。
(陽極)
本実施形態の電解用電極を陽極側へ挿入しない場合には、陽極室10の枠内には、陽極11が設けられている。陽極11としては、いわゆるDSA(登録商標)等の金属電極を用いることができる。DSAとは、ルテニウム、イリジウム、チタンを成分とする酸化物によって表面を被覆されたチタン基材の電極である。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
(陽極給電体)
本実施形態の電解用電極を陽極側へ挿入した場合には、陽極室10の枠内には、陽極給電体11が設けられている。陽極給電体11としては、いわゆるDSA(登録商標)等の金属電極を用いることもできるし、触媒コーティングがされていないチタンを用いることもできる。また、触媒コーティング厚みを薄くしたDSAを用いることもできる。さらに、使用済みの陽極を用いることもできる。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
(陽極側電解液供給部)
陽極側電解液供給部は、陽極室10に電解液を供給するものであり、電解液供給管に接続される。陽極側電解液供給部は、陽極室10の下方に配置されることが好ましい。陽極側電解液供給部としては、例えば、表面に開口部が形成されたパイプ(分散パイプ)等を用いることができる。かかるパイプは、陽極11の表面に沿って、電解セルの底部19に対して平行に配置されていることがより好ましい。このパイプは、電解セル1内に電解液を供給する電解液供給管(液供給ノズル)に接続される。液供給ノズルから供給された電解液はパイプによって電解セル1内まで搬送され、パイプの表面に設けられた開口部から陽極室10の内部に供給される。パイプを、陽極11の表面に沿って、電解セルの底部19に平行に配置することで、陽極室10の内部に均一に電解液を供給することができるため好ましい。
(陽極側気液分離部)
陽極側気液分離部は、バッフル板の上方に配置されることが好ましい。電解中において、陽極側気液分離部は、塩素ガス等の生成ガスと電解液を分離する機能を有する。なお、特に断りがない限り、上方とは、図5の電解セル1における上方向を意味し、下方とは、図5の電解セル1における下方向を意味する。
電解時、電解セル1で発生した生成ガスと電解液が混相(気液混相)となり系外に排出されると、電解セル1内部の圧力変動によって振動が発生し、イオン交換膜の物理的な破損を引き起こす場合がある。これを抑制するために、本実施形態の電解セル1には、気体と液体を分離するための陽極側気液分離部が設けられていることが好ましい。陽極側気液分離部には、気泡を消去するための消泡板が設置されることが好ましい。気液混相流が消泡板を通過するときに気泡がはじけることにより、電解液とガスに分離することができる。その結果、電解時の振動を防止することができる。
(バッフル板)
バッフル板は、陽極側電解液供給部の上方に配置され、かつ、隔壁30と略平行または斜めに配置されることが好ましい。バッフル板は、陽極室10の電解液の流れを制御する仕切り板である。バッフル板を設けることで、陽極室10において電解液(塩水等)を内部循環させ、その濃度を均一にすることができる。内部循環を起こすために、バッフル板は、陽極11近傍の空間と隔壁30近傍の空間とを隔てるように配置することが好ましい。かかる観点から、バッフル板は、陽極11及び隔壁30の各表面に対向するように設けられていることが好ましい。バッフル板により仕切られた陽極近傍の空間では、電解が進行することにより電解液濃度(塩水濃度)が下がり、また、塩素ガス等の生成ガスが発生する。これにより、バッフル板により仕切られた陽極11近傍の空間と、隔壁30近傍の空間とで気液の比重差が生まれる。これを利用して、陽極室10における電解液の内部循環を促進させ、陽極室10の電解液の濃度分布をより均一にすることができる。
なお、図5に示していないが、陽極室10の内部に集電体を別途設けてもよい。かかる集電体としては、後述する陰極室の集電体と同様の材料や構成とすることもできる。また、陽極室10においては、陽極11自体を集電体として機能させることもできる。
(隔壁)
隔壁30は、陽極室10と陰極室20の間に配置されている。隔壁30は、セパレータと呼ばれることもあり、陽極室10と陰極室20とを区画するものである。隔壁30としては、電解用のセパレータとして公知のものを使用することができ、例えば、陰極側にニッケル、陽極側にチタンからなる板を溶接した隔壁等が挙げられる。
(陰極室)
陰極室20は、本実施形態の電解用電極を陰極側へ挿入した場合には、21は陰極給電体として機能し、本実施形態の電解用電極を陰極側へ挿入しない場合には、21は陰極として機能する。逆電流吸収体を有する場合は、陰極あるいは陰極給電体21と逆電流吸収体は電気的に接続されている。また、陰極室20も陽極室10と同様に、陰極側電解液供給部、陰極側気液分離部を有していることが好ましい。なお、陰極室20を構成する各部位のうち、陽極室10を構成する各部位と同様のものについては説明を省略する。
(陰極)
本実施形態の電解用電極を陰極側へ挿入しない場合には、陰極室20の枠内には、陰極21が設けられている。陰極21は、ニッケル基材とニッケル基材を被覆する触媒層とを有することが好ましい。ニッケル基材上の触媒層の成分としては、Ru、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。触媒層の形成方法としては、メッキ、合金めっき、分散・複合めっき、CVD、PVD、熱分解及び溶射が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。触媒層は必要に応じて複数の層、複数の元素を有してもよい。また、必要に応じて陰極21に還元処理を施してもよい。なお、陰極21の基材としては、ニッケル、ニッケル合金、鉄あるいはステンレスにニッケルをメッキしたものを用いてもよい。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
(陰極給電体)
本実施形態の電解用電極を陰極側へ挿入した場合には、陰極室20の枠内には、陰極給電体21が設けられている。陰極給電体21に触媒成分が被覆されていてもよい。その触媒成分は、もともと陰極として使用されて、残存したものでもよい。触媒層の成分としては、Ru、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。触媒層の形成方法としては、メッキ、合金めっき、分散・複合めっき、CVD、PVD、熱分解及び溶射が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。触媒層は必要に応じて複数の層、複数の元素を有してもよい。また、触媒コーティングがされてない、ニッケル、ニッケル合金、鉄あるいはステンレスに、ニッケルをメッキしたものを用いてもよい。なお、陰極給電体21の基材としては、ニッケル、ニッケル合金、鉄あるいはステンレスにニッケルをメッキしたものを用いてもよい。
形状としては、パンチングメタル、不織布、発泡金属、エキスパンドメタル、エレクトロフォーミングにより形成した金属多孔箔、金属線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュ等いずれのものも使用できる。
(逆電流吸収層)
前述の陰極の触媒層用の元素の酸化還元電位よりも卑な酸化還元電位を持つ材料を逆電流吸収層の材料として選択することができる。例えば、ニッケルや鉄などが挙げられる。
(集電体)
陰極室20は集電体23を備えることが好ましい。これにより、集電効果が高まる。本実施形態では、集電体23は多孔板であり、陰極21の表面と略平行に配置されることが好ましい。
集電体23としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、銀、チタンなどの電気伝導性のある金属からなることが好ましい。集電体23は、これらの金属の混合物、合金又は複合酸化物でもよい。なお、集電体23の形状は、集電体として機能する形状であればどのような形状でもよく、板状、網状であってもよい。
(金属弾性体)
集電体23と陰極21との間に金属弾性体22が設置されることにより、直列に接続された複数の電解セル1の各陰極21がイオン交換膜2に押し付けられ、各陽極11と各陰極21との間の距離が短くなり、直列に接続された複数の電解セル1全体に掛かる電圧を下げることができる。電圧が下がることにより、消費電量を下げることができる。また、金属弾性体22が設置されることにより、本実施形態に係る電解用電極を含む積層体を電解セルに設置した際に、金属弾性体22による押し付け圧により、該電解用電極を安定して定位置に維持することができる。
金属弾性体22としては、渦巻きばね、コイル等のばね部材、クッション性のマット等を用いることができる。金属弾性体22としては、イオン交換膜を押し付ける応力等を考慮して適宜好適なものを採用できる。金属弾性体22を陰極室20側の集電体23の表面上に設けてもよいし、陽極室10側の隔壁の表面上に設けてもよい。通常、陰極室20が陽極室10よりも小さくなるよう両室が区画されているので、枠体の強度等の観点から、金属弾性体22を陰極室20の集電体23と陰極21の間に設けることが好ましい。また、金属弾性体23は、ニッケル、鉄、銅、銀、チタンなどの電気伝導性を有する金属からなることが好ましい。
(支持体)
陰極室20は、集電体23と隔壁30とを電気的に接続する支持体24を備えることが好ましい。これにより、効率よく電流を流すことができる。
支持体24は、ニッケル、鉄、銅、銀、チタンなど電気伝導性を有する金属からなることが好ましい。また、支持体24の形状としては、集電体23を支えることができる形状であればどのような形状でもよく、棒状、板状又は網状であってよい。支持体24は、例えば、板状である。複数の支持体24は、隔壁30と集電体23との間に配置される。複数の支持体24は、それぞれの面が互いに平行になるように並んでいる。支持体24は、隔壁30及び集電体23に対して略垂直に配置されている。
(陽極側ガスケット、陰極側ガスケット)
陽極側ガスケットは、陽極室10を構成する枠体表面に配置されることが好ましい。陰極側ガスケットは、陰極室20を構成する枠体表面に配置されていることが好ましい。1つの電解セルが備える陽極側ガスケットと、これに隣接する電解セルの陰極側ガスケットとが、イオン交換膜2を挟持するように、電解セル同士が接続される(図5、6参照)。これらのガスケットにより、イオン交換膜2を介して複数の電解セル1を直列に接続する際に、接続箇所に気密性を付与することができる。
ガスケットとは、イオン交換膜と電解セルとの間をシールするものである。ガスケットの具体例としては、中央に開口部が形成された額縁状のゴム製シート等が挙げられる。ガスケットには、腐食性の電解液や生成するガス等に対して耐性を有し、長期間使用できることが求められる。そこで、耐薬品性や硬度の点から、通常、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDMゴム)、エチレン・プロピレンゴム(EPMゴム)の加硫品や過酸化物架橋品等がガスケットとして用いられる。また、必要に応じて液体に接する領域(接液部)をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素系樹脂で被覆したガスケットを用いることもできる。これらガスケットは、電解液の流れを妨げないように、それぞれ開口部を有していればよく、その形状は特に限定されない。例えば、陽極室10を構成する陽極室枠又は陰極室20を構成する陰極室枠の各開口部の周縁に沿って、額縁状のガスケットが接着剤等で貼り付けられる。そして、例えばイオン交換膜2を介して2体の電解セル1を接続する場合(図6参照)、イオン交換膜2を介してガスケットを貼り付けた各電解セル1を締め付ければよい。これにより、電解液、電解により生成するアルカリ金属水酸化物、塩素ガス、水素ガス等が電解セル1の外部に漏れることを抑制することができる。
(イオン交換膜)
イオン交換膜2としては、上記、イオン交換膜の項に記載のとおりである。
(水電解)
本実施形態の電解槽であって、水電解を行う場合の電解槽は、上述した食塩電解を行う場合の電解槽におけるイオン交換膜を微多孔膜に変更した構成を有するものである。また、供給する原料が水である点において、上述した食塩電解を行う場合の電解槽とは相違するものである。その他の構成については、水電解を行う場合の電解槽も食塩電解を行う場合の電解槽と同様の構成を採用することができる。食塩電解の場合には、陽極室で塩素ガスが発生するため、陽極室の材質はチタンが用いられるが、水電解の場合には、陽極室で酸素ガスが発生するのみであるため、陰極室の材質と同じものを使用できる。例えば、ニッケル等が挙げられる。また、陽極コーティングは酸素発生用の触媒コーティングが適当である。触媒コーティングの例としては、白金族金属および遷移金族の金属、酸化物、水酸化物などが挙げられる。例えば、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、鉄等の元素を使用することができる。
(積層体の用途)
本実施形態の積層体は、前述のとおり、電解槽における電極更新の際の作業効率を向上させることができ、さらに、更新後も優れた電解性能を発現することができる。換言すると、本実施形態の積層体は、電解槽の部材交換用の積層体として好適に用いることができる。なお、かかる用途に適用する際の積層体は、特に「膜電極接合体」と称される。
(包装体)
本実施形態の積層体は、包装材に封入した状態で運搬等を行うことが好ましい。すなわち、本実施形態の包装体は、本実施形態の積層体と、前記積層体を包装する包装材と、を備える。本実施形態の包装体は、上記のように構成されているため、本実施形態の積層体を運搬等する際に生じ得る汚れの付着や破損を防止することができる。電解槽の部材交換用とする場合、本実施形態の包装体として運搬等を行うことが特に好ましい。本実施形態における包装材としては、特に限定されず、種々公知の包装材を適用することができる。また、本実施形態の包装体は、以下に限定されないが、例えば、清浄な状態の包装材で本実施形態の積層体を包装し、次いで封入する等の方法により、製造することができる。
以下の実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔評価方法〕
(1)開孔率
電極を130mm×100mmのサイズに切り出した。デジマチックシックスネスゲージ(株式会社ミツトヨ製、最少表示0.001mm)用いて面内を均一に10点測定した平均値を算出した。これを電極の厚み(ゲージ厚み)をとして、体積を算出した。その後、電子天秤で質量を測定し、金属の比重(ニッケルの比重=8.908g/cm3、チタンの比重=4.506g/cm3)から、開孔率あるいは空隙率を算出した。
開孔率(空隙率)(%)=(1-(電極質量)/(電極体積×金属の比重))×100
(2)単位面積当たりの質量(mg/cm2
電極を130mm×100mmのサイズに切り出し、電子天秤で質量を測定した。その値を面積(130mm×100mm)で除して単位面積当たりの質量を算出した。
(3)単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)(接着力)(N/mg・cm2))
〔方法(i)〕
測定には引張圧縮試験機を使用した(株式会社今田製作所、試験機本体:SDT-52NA型 引張圧縮試験機、加重計:SL-6001型加重計)。
厚み1.2mm、200mm角のニッケル板に粒番号320のアルミナでブラスト加工を実施した。ブラスト処理後のニッケル板の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.7μmであった。ここで、表面粗さ測定には、触針式の表面粗さ測定機SJ-310(株式会社ミツトヨ)を使用した。地面と平行な定盤上に測定サンプルを設置し、下記の測定条件で算術平均粗さRaを測定した。測定は、6回実施時、その平均値を記載した。
<触針の形状>円すいテーパ角度=60°、先端半径=2μm、静的測定力=0.75mN
<粗さ規格>JIS2001
<評価曲線>R
<フィルタ>GAUSS
<カットオフ値 λc>0.8mm
<カットオフ値 λs>2.5μm
<区間数>5
<前走、後走>有
このニッケル板を鉛直になるように引張圧縮試験機の下側のチャックに固定した。
隔膜としては、下記のイオン交換膜Aを使用した。
強化芯材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であり、90デニールのモノフィラメントを用いた(以下、PTFE糸という。)。犠牲糸として、35デニール、6フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた(以下、PET糸という。)。まず、TD及びMDの両方向のそれぞれにおいて、PTFE糸が24本/インチ、犠牲糸が隣接するPTFE糸間に2本配置するように平織りして、織布を得た。得られた織布を、ロールで圧着し、厚さ70μmの織布を得た。
次に、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3との共重合体でイオン交換容量が0.85mg当量/gである乾燥樹脂の樹脂A、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.03mg当量/gである乾燥樹脂の樹脂Bを準備した。
これらの樹脂A及びBを使用し、共押出しTダイ法にて樹脂A層の厚みが15μm、樹脂B層の厚みが104μmである、2層フィルムXを得た。
続いて、内部に加熱源及び真空源を有し、その表面に微細孔を有するホットプレート上に、離型紙(高さ50μmの円錐形状のエンボス加工)、補強材及びフィルムXの順に積層し、ホットプレート表面温度223℃、減圧度0.067MPaの条件で2分間加熱減圧した後、離型紙を取り除くことで複合膜を得た。
得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)30質量%、水酸化カリウム(KOH)15質量%を含む80℃の水溶液に20分浸漬することでケン化した。その後、水酸化ナトリウム(NaOH)0.5N含む50℃の水溶液に1時間浸漬して、イオン交換基の対イオンをNaに置換し、続いて水洗した。さらに60℃で乾燥した。
さらに、樹脂Bの酸型樹脂の5質量%エタノール溶液に、1次粒径1μmの酸化ジルコニウムを20質量%加え、分散させた懸濁液を調合し、懸濁液スプレー法で、上記の複合膜の両面に噴霧し、酸化ジルコニウムのコーティングを複合膜の表面に形成させ、イオン交換膜Aを得た。酸化ジルコニウムの塗布密度を蛍光X線測定で測定したところ0.5mg/cm2だった。なお、平均粒径は、粒度分布計(島津製作所製「SALD(登録商標)2200」)によって測定した。
上記で得られたイオン交換膜(隔膜)を純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。純水で十分濡らした上記ニッケル板に接触させ、水の張力で接着した。このとき、ニッケル板とイオン交換膜の上端の位置が合うように設置した。
測定に使用する電解用電極サンプル(電極)は、130mm角に切り出した。イオン交換膜Aは、170mm角に切り出した。2枚のステンレス板(厚さ1mm、縦9mm、横170mm)で電極の一辺を挟み、ステンレス板、電極の中心が合うように位置合わせをした後、4個のクリップで均等に固定した。引張圧縮試験機の上側のチャックに、ステンレス板の中心を挟み、電極を吊り下げた。この時、試験機にかかる荷重を0Nとした。一旦、引張圧縮試験機から、ステンレス板、電極、クリップ一体物をはずし、電極を純水で充分濡らすために、純水の入ったバットに浸漬した。その後、再び引張圧縮試験機の上側のチャックに、ステンレス板の中心を挟み、電極を吊り下げた。
引張圧縮試験機の上側チャックを下降させ、電解用電極サンプルをイオン交換膜表面に純水の表面張力で接着させた。このときの接着面は、横130mm、縦110mmであった。洗瓶に入れた純水を電極及びイオン交換膜全体に吹きかけ、隔膜、電極が再度充分に濡れた状態にした。その後、塩ビ管(外径38mm)に厚み5mmの独立発泡タイプのEPDMスポンジゴムを巻きつけたローラーを電極の上から軽く押さえながら、上から下に向かって転がし、余分な純水を除去した。ローラーは1回だけかけた。
10mm/分の速度で電極を上昇させて加重測定を開始し、電極と隔膜の重なり部分が横130mm、縦100mmになった時の加重を記録した。この測定を3回実施して平均値を算出した。
この平均値を電極とイオン交換膜の重なり部分の面積、及びイオン交換膜と重なっている部分の電極質量で除して、単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)を算出した。イオン交換膜と重なっている部分の電極質量は、上記(2)の単位面積当たりの質量(mg/cm2)で得られた値から、比例計算で求めた。
測定室の環境は温度23±2℃、相対湿度30±5%であった。
なお、実施例、比較例で使用した電極は、鉛直に固定したニッケル板に表面張力で接着したイオン交換膜に接着させたとき、ずり下がる、あるいは剥がれることなく自立して接着できていた。
なお、図10に、かかる力(1)の評価方法の模式図を示した。
なお、引張試験機の測定下限は、0.01(N)であった。
(4)単位質量・単位面積当たりのかかる力(2)(接着力)(N/mg・cm2))
〔方法(ii)〕
測定には引張圧縮試験機を使用した(株式会社今田製作所、試験機本体:SDT-52NA型 引張圧縮試験機、加重計:SL-6001型加重計)。
方法(i)と同じニッケル板を鉛直になるように引張圧縮試験機の下側のチャックに固定した。
測定に使用する電解用電極サンプル(電極)は130mm角に切り出した。イオン交換膜Aは、170mm角に切り出した。2枚のステンレス板(厚さ1mm、縦9mm、横170mm)で電極の一辺を挟み、ステンレス板、電極の中心が合うように位置合わせをした後、4個のクリップで均等に固定した。引張圧縮試験機の上側のチャックに、ステンレス板の中心を挟み、電極を吊り下げた。この時、試験機にかかる荷重を0Nとした。一旦、引張圧縮試験機から、ステンレス板、電極、クリップ一体物をはずし、電極を純水で充分濡らすために、純水の入ったバットに浸漬した。その後、再び引張圧縮試験機の上側のチャックに、ステンレス板の中心を挟み、電極を吊り下げた。
引張圧縮試験機の上側チャックを下降させ、電解用電極サンプルをニッケル板表面に溶液の表面張力で接着させた。このときの接着面は、横130mm、縦110mmであった。洗瓶に入れた純水を電極及びニッケル板全体に吹きかけ、ニッケル板、電極が再度充分に濡れた状態にした。その後、塩ビ管(外径38mm)に厚み5mmの独立発泡タイプのEPDMスポンジゴムを巻きつけたローラーを電極の上から軽く押さえながら、上から下に向かって転がし、余分な溶液を除去した。ローラーは1回だけかけた。
10mm/分の速度で電極を上昇させて加重測定を開始し、電極とニッケル板の縦方向の重なり部分が100mmになった時の加重を記録した。この測定を3回実施して平均値を算出した。
この平均値を電極とニッケル板の重なり部分の面積、及びニッケル板と重なっている部分の電極質量で除して、単位質量・単位面積当たりのかかる力(2)を算出した。隔膜と重なっている部分の電極質量は、上記(2)の単位面積当たりの質量(mg/cm2)で得られた値から、比例計算で求めた。
また、測定室の環境は温度23±2℃、相対湿度30±5%であった。
なお、実施例、比較例で使用した電極は、鉛直に固定したニッケル板に表面張力で接着させたとき、ずり下がる、あるいは剥がれることなく自立して接着できた。
なお、引張試験機の測定下限は、0.01(N)であった。
(5)直径280mm円柱巻き付け評価方法(1)(%)
(膜と円柱)
評価方法(1)を以下の手順で実施した。
〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(隔膜)を170mm角のサイズにカットした。イオン交換膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。比較例1及び2は、電極がイオン交換膜に熱プレスにより一体となっているので、イオン交換膜と電極の一体物を準備した(電極は130mm角)。イオン交換膜を純水に充分浸漬した後、外径280mmのプラスチック(ポリエチレン)製のパイプの曲面上に置いた。その後、塩ビ管(外径38mm)に厚み5mmの独立発泡タイプのEPDMスポンジゴムを巻きつけたローラーで余分な溶液を除去した。ローラーは図11に示した模式図の左から右に向かってイオン交換膜上を転がした。ローラーは1回だけかけた。1分後に、イオン交換膜と外径280mmのプラスチック製のパイプ電極が密着した部分の割合を測定した。
(6)直径280mm円柱巻き付け評価方法(2)(%)
(膜と電極)
評価方法(2)を以下の手順で実施した。
〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(隔膜)を170mm角のサイズに、電極を130mm角にカットした。イオン交換膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。イオン交換膜と電極を純水に充分浸漬した後、積層させた。この積層体を電極が外側になるように、外径280mmのプラスチック(ポリエチレン)製のパイプの曲面上に置いた。その後、塩ビ管(外径38mm)に厚み5mmの独立発泡タイプのEPDMスポンジゴムを巻きつけたローラーを電極の上から軽く押さえながら、図12に示した模式図の左から右に向かって転がし、余分な溶液を除去した。ローラーは1回だけかけた。1分後に、イオン交換膜と電極が密着した部分の割合を測定した。
(7)直径145mm円柱巻き付け評価方法(3)(%)
(膜と電極)
評価方法(3)を以下の手順で実施した。
〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(隔膜)を170mm角のサイズに、電極を130mm角にカットした。イオン交換膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。イオン交換膜と電極を純水に充分浸漬した後、積層させた。この積層体を電極が外側になるように、外径145mmのプラスチック(ポリエチレン)製のパイプの曲面上に置いた。その後、塩ビ管(外径38mm)に厚み5mmの独立発泡タイプのEPDMスポンジゴムを巻きつけたローラーを電極の上から軽く押さえながら、図13に示した模式図の左から右に向かって転がし、余分な溶液を除去した。ローラーは1回だけかけた。1分後に、イオン交換膜と電極が密着した部分の割合を測定した。
(8)ハンドリング性(感応評価)
(A)〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(隔膜)を170mm角のサイズに、電極を95×110mmにカットした。イオン交換膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。各実施例でイオン交換膜と電極を重曹水溶液、0.1NのNaOH水溶液、純水の3種類の溶液に充分浸漬した後、積層させ、テフロン(登録商標)板の上に静地した。電解評価で使用した陽極セルと陰極セルの間隔を約3cmにして、静地した積層体を持ち上げ、その間に挿入、挟む操作を実施した。この操作を実施するときに電極がずれないか、落ちないかを操作しながら確認した。
(B)〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(隔膜)を170mm角のサイズに、電極を95×110mmにカットした。イオン交換膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。各実施例でイオン交換膜と電極を重曹水溶液、0.1NのNaOH水溶液、純水の3種類の溶液に充分浸漬した後、積層させ、テフロン(登録商標)板の上に静地した。積層体の膜部分の隣り合う2か所の角を手で持ち、積層体が鉛直なるように持ち上げた。この状態から、手で持った2か所の角を近づけるように動かし、膜が凸状、凹状になるようにした。これをもう1回繰り返して、電極の膜への追従性を確認した。その結果を以下の指標に基づいて1~4の4段階で評価した。
1:ハンドリング良好
2:ハンドリング可能
3:ハンドリング困難
4:ハンドリングほぼ不可能
ここで、比較例5のサンプルについては、電極を1.3m×2.5m、イオン交換膜を1.5m×2.8mのサイズの大型電解セルと同じサイズでハンドリングを実施した。比較例5の評価結果(後述するとおり「3」)は、上記(A)、(B)の評価と大型サイズにしたときの違いを評価する指標とした。すなわち、小型の積層体を評価した結果が「1」、「2」である場合は大型サイズにした場合であってもハンドリング性に問題がないものと評価した。
(9)電解評価(電圧(V)、電流効率(%)、苛性ソーダ中食塩濃度(ppm、50%換算))
下記電解実験によって、電解性能を評価した。
陽極が設置された陽極室を有するチタン製の陽極セル(陽極ターミナルセル)と、陰極が設置されたニッケル製の陰極室(陰極ターミナルセル)を有する陰極セルとを向い合せた。セル間に一対のガスケットを配置し、一対のガスケット間に積層体(イオン交換膜Aと電解用電極との積層体)を挟んだ。そして、陽極セル、ガスケット、積層体、ガスケット及び陰極を密着させて、電解セルを得、これを含む電解槽を準備した。
陽極としては、前処理としてブラスト及び酸エッチング処理をしたチタン基材上に、塩化ルテニウム、塩化イリジウム及び四塩化チタンの混合溶液を塗布、乾燥、焼成することで作製した。陽極は、溶接により陽極室に固定した。陰極としては、各実施例、比較例に記載のものを使用した。陰極室の集電体としては、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。集電体のサイズは縦95mm×横110mmであった。金属弾性体としては、ニッケル細線で編んだマットレスを使用した。金属弾性体であるマットレスを集電体の上に置いた。その上に直径150μmのニッケル線を40メッシュの目開きで平織したニッケルメッシュを被せ、Niメッシュの四隅を、テフロン(登録商標)で作製した紐で集電体に固定した。このNiメッシュを給電体とした。この電解セルにおいては、金属弾性体であるマットレスの反発力を利用して、ゼロギャップ構造になっている。ガスケットとしては、EPDM(エチレンプロピレンジエン)製のゴムガスケットを使用した。隔膜としては〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(160mm角)を使用した。
上記電解セルを用いて食塩の電解を行った。陽極室の塩水濃度(塩化ナトリウム濃度)は205g/Lに調整した。陰極室の水酸化ナトリウム濃度は32質量%に調整した。各電解セル内の温度が90℃になるように、陽極室及び陰極室の各温度を調節した。電流密度6kA/m2で食塩電解を実施し、電圧、電流効率、苛性ソーダ中食塩濃度を測定した。ここで、電流効率とは、流した電流に対する、生成された苛性ソーダの量の割合であり、流した電流により、ナトリウムイオンではなく、不純物イオンや水酸化物イオンがイオン交換膜を移動すると、電流効率が低下する。電流効率は、一定時間に生成された苛性ソーダのモル数を、その間に流れた電流の電子のモル数で除することで求めた。苛性ソーダのモル数は、電解により生成した苛性ソーダをポリタンクに回収して、その質量を測定することにより、求めた。苛性ソーダ中食塩濃度は苛性ソーダ濃度を50%に換算した値を示した。
なお、表1に、実施例、比較例で使用した電極及び給電体の仕様を示した。
(11)触媒層の厚み、電解用電極基材、電極の厚み測定
電解用電極基材の厚みは、デジマチックシックスネスゲージ(株式会社ミツトヨ製、最少表示0.001mm)を用いて面内を均一に10点測定した平均値を算出した。これを電解用電極基材の厚み(ゲージ厚み)とした。電極の厚みは、電極基材と同様にデジマチックシックスネスゲージで面内を均一に10点測定した平均値を算出した。これを電極の厚み(ゲージ厚み)とした。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引くことで求めた。
(12)電極の弾性変形試験
〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(隔膜)及び電極を110mm角のサイズにカットした。イオン交換膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、イオン交換膜と電極を重ねて積層体を作製した後、図14に示すように外径φ32mm、長さ20cmのPVC製パイプに隙間ができないように巻きつけた。巻きつけた積層体がPVC製パイプから剥がれたり、緩んだりしないよう、ポリエチレン製の結束バンドを用いて固定した。この状態で6時間保持した。その後、結束バンドを外し、積層体をPVC製パイプから巻き戻した。電極のみを定盤の上に置き、定盤から浮き上がった部分の高さL1、L2を測定し、平均値を求めた。この値を電極変形の指標とした。すなわち、値が小さい方が、変形しにくいことを意味する。
なお、エキスパンドメタルを使用する場合は、巻きつける際にSW方向、LW方向の二通りがある。本試験ではSW方向に巻きつけた。
また、変形が生じた電極(元のフラットな状態に戻らなかった電極)に対しては、図15に示すような方法にて、塑性変形後のやわらかさについて評価を行った。すなわち、変形が生じた電極を純水に十分に浸漬させた隔膜の上に置き、一端を固定し、浮き上がっている反対の端部を隔膜に押し付けて、力を開放し、変形が生じた電極が、隔膜へ追従するか否かを評価した。
(13)膜損傷評価
隔膜としては、下記のイオン交換膜Bを使用した。
強化芯材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、100デニールのテープヤーンに900回/mの撚りを掛けて糸状にしたものを用いた(以下、PTFE糸という。)。経糸の犠牲糸として、35デニール、8フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた(以下、PET糸という)。また緯糸の犠牲糸として、35デニール、8フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた。まず、PTFE糸が24本/インチ、犠牲糸が隣接するPTFE糸間に2本配置するように平織りして、厚さ100μmの織布を得た。
次に、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3との共重合体でイオン交換容量が0.92mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(A1)、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.10mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(B1)を準備した。これらのポリマー(A1)及び(B1)を使用し、共押出しTダイ法にて、ポリマー(A1)層の厚みが25μm、ポリマー(B1)層の厚みが89μmである、2層フィルムXを得た。なお、各ポリマーのイオン交換容量は、各ポリマーのイオン交換基前駆体を加水分解してイオン交換基に変換した際のイオン交換容量を示した。
また別途、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.10mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(B2)を準備した。このポリマーを単層押出して20μmのフィルムYを得た。
続いて、内部に加熱源及び真空源を有し、その表面に微細孔を有するホットプレート上に、離型紙、フィルムY、補強材及びフィルムXの順に積層し、ホットプレート温度225℃、減圧度0.022MPaの条件で2分間加熱減圧した後、離型紙を取り除くことで複合膜を得た。得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)と水酸化カリウム(KOH)を含む水溶液に1時間浸漬することでケン化した後に、0.5NのNaOHに1時間浸漬して、イオン交換基についたイオンをNaに置換し、続いて水洗した。更に60℃で乾燥した。
また、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.05mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(B3)を加水分解した後、塩酸で酸型にした。この酸型のポリマー(B3’)を、水及びエタノールの50/50(質量比)混合液に5質量%の割合で溶解させた溶液に、一次粒子の平均粒径径が0.02μmの酸化ジルコニウム粒子を、ポリマー(B3’)と酸化ジルコニウム粒子との質量比が20/80となるように加えた。その後、ボールミルで酸化ジルコニウム粒子の懸濁液中で分散させて懸濁液を得た。
この懸濁液をスプレー法でイオン交換膜の両表面に塗布し、乾燥することにより、ポリマー(B3’)と酸化ジルコニウム粒子を含むコーティング層を有するイオン交換膜Bを得た。酸化ジルコニウムの塗布密度を蛍光X線測定で測定したところ、0.35mg/cm2だった。
陽極は、(9)電解評価と同じものを使用した。
陰極は、各実施例、比較例に記載のものを使用した。陰極室の集電体、マットレスおよび給電体は(9)電解評価と同じものを使用した。すなわち、Niメッシュを給電体として、金属弾性体であるマットレスの反発力を利用して、ゼロギャップ構造になっていた。ガスケットも(9)電解評価と同じものを使用した。隔膜としては前記方法で作成したイオン交換膜Bを使用した。すなわち、イオン交換膜Bと電解用電極との積層体を一対のガスケット間に挟持したことを除き、(9)と同様の電解槽を準備した。
上記電解セルを用いて食塩の電解を行った。陽極室の塩水濃度(塩化ナトリウム濃度)は205g/Lに調整した。陰極室の水酸化ナトリウム濃度は32質量%に調整した。各電解セル内の温度が70℃になるように、陽極室及び陰極室の各温度を調節した。電流密度8kA/m2で食塩電解を実施した。電解開始から12時間後に電解を停止し、イオン交換膜Bを取り出して損傷状態を観察した。
「0」は損傷がなかったことを意味している。「1から3」は損傷があったことを意味しており、数字が大きい程、損傷の程度が大きいことを意味している。
(14)電極の通気抵抗
電極の通気抵抗を通気性試験機KES-F8(商品名、カトーテック株式会社)を用いて測定した。通気抵抗値の単位は、kPa・s/mである。測定は5回実施しその平均値を表2に記載した。測定は以下の二つの条件で実施した。なお、測定室の温度は24℃、相対湿度は32%とした。
・測定条件1(通気抵抗1)
ピストン速度:0.2cm/s
通気量:0.4cc/cm2/s
測定レンジ:SENSE L(低)
サンプルサイズ:50mm×50mm
・測定条件2(通気抵抗2)
ピストン速度:2cm/s
通気量:4cc/cm2/s
測定レンジ:SENSE M(中)又はH(高)
サンプルサイズ:50mm×50mm
[実施例1]
陰極電解用電極基材として、ゲージ厚みが16μmの電解ニッケル箔を準備した。このニッケル箔の片面に電解ニッケルメッキによる粗面化処理を施した。粗面化した表面の算術平均粗さRaは0.71μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。
このニッケル箔にパンチング加工により円形の孔をあけ多孔箔とした。開孔率は49%であった。
電極触媒を形成するためのコーティング液を以下の手順で調製した。ルテニウム濃度が100g/Lの硝酸ルテニウム溶液(株式会社フルヤ金属)、硝酸セリウム(キシダ化学株式会社)を、ルテニウム元素とセリウム元素のモル比が1:0.25となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陰極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E-4088、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。その後、50℃で10分間の乾燥、150℃で3分間の仮焼成、350℃で10分間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を所定のコーティング量になるまで繰り返した。実施例1で作製した電極の厚みは、24μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。コーティングは粗面化されていない面にも形成された。また、酸化ルテニウムと酸化セリウムの合計厚みである。
上記方法で作製した電極の接着力の測定結果を表2に示した。充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0028(kPa・s/m)であった。
上記方法で作製した電極を、電解評価用に縦95mm、横110mmのサイズに切り出した。0.1N NaOH水溶液で平衡した〔方法(i)〕で作製したイオン交換膜A(サイズは160mm×160mm)のカルボン酸層側のほぼ中央の位置に、電極の粗面化した面を対向させ、水溶液の表面張力で密着させた。
膜と電極が一体となった膜一体電極の膜部分の四隅をつまみ、電極を地面側になるようにして膜一体電極を地面と平行になるよう吊るしても、電極が剥がれ落ちたり、ずれたりすることはなかった。また、1辺の両端をつまみ、膜一体電極を地面と垂直になるように吊るしても、電極が剥がれ落ちたり、ずれたりすることはなかった。
上記の膜一体電極を電極が付着している面を陰極室側になるように陽極セルと陰極セルの間に挟んだ。断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、ニッケルメッシュ給電体、電極、膜、陽極の順番に並んでゼロギャップ構造を形成している。
得られた電極について、電解評価を行った。その結果を表2に示した。
低い電圧、高い電流効率及び低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
また、電解後のコーティング量をXRF(蛍光X線分析)で測定すると、粗面化した面はほぼ100%コーティングが残存し、粗面化していない面はコーティングが減少していた。これは膜に対向した面(粗面化した面)が電解に寄与しており、膜と対向していない反対面はコーティングが少ない、あるいは存在しなくても良好な電解性能を発揮できることを示している。
[実施例2]
実施例2は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが22μmの電解ニッケル箔を使用した。このニッケル箔の片面に電解ニッケルメッキによる粗面化処理を施した。粗面化した表面の算術平均粗さRaは0.96μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。開孔率は44%であった。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは29μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて7μmだった。コーティングは粗面化されていない面にも形成された。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0033(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
また、電解後のコーティング量をXRFで測定すると、粗面化した面はほぼ100%コーティングが残存し、粗面化していない面はコーティングが減少していた。これは膜に対向した面(粗面化した面)が電解に寄与しており、膜と対向していない反対面はコーティングが少ない、あるいは存在しなくても良好な電解性能を発揮できることを示している。
[実施例3]
実施例3は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが30μmの電解ニッケル箔を使用した。このニッケル箔の片面に電解ニッケルメッキによる粗面化処理を施した。粗面化した表面の算術平均粗さRaは1.38μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。開孔率は44%であった。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは38μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。コーティングは粗面化されていない面にも形成された。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0027(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
また、電解後のコーティング量をXRFで測定すると、粗面化した面はほぼ100%コーティングが残存し、粗面化していない面はコーティングが減少していた。これは膜に対向した面(粗面化した面)が電解に寄与しており、膜と対向していない反対面はコーティングが少ない、あるいは存在しなくても良好な電解性能を発揮できることを示している。
[実施例4]
実施例4は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが16μmの電解ニッケル箔を使用した。このニッケル箔の片面は電解ニッケルメッキによる粗面化処理を施した。粗面化した表面の算術平均粗さRaは0.71μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。開孔率は75%であった。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは24μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0023(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
また、電解後のコーティング量をXRFで測定すると、粗面化した面はほぼ100%コーティングが残存し、粗面化していない面はコーティングが減少していた。これは膜に対向した面(粗面化した面)が電解に寄与しており、膜と対向していない反対面はコーティングが少ない、あるいは存在しなくても良好な電解性能を発揮できることを示している。
[実施例5]
実施例5は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが20μmの電解ニッケル箔を準備した。このニッケル箔の両面に電解ニッケルメッキによる粗面化処理を施した。粗面化した表面の算術平均粗さRaは0.96μmだった。両面とも同じ粗さだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。開孔率は49%であった。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは30μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。コーティングは粗面化されていない面にも形成された。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0023(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
また、電解後のコーティング量をXRFで測定すると、両面ともほぼ100%コーティングが残存していた。実施例1~4と比べて考えると、膜と対向していない反対面はコーティングが少ない、あるいは存在しなくても良好な電解性能を発揮できることを示している。
[実施例6]
実施例6は、陰極電解用電極基材へのコーティングをイオンプレーティングで実施したこと以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。なお、イオンプレーティングは、加熱温度200℃、Ru金属ターゲットを使用し、アルゴン/酸素雰囲気下、成膜圧力7×10-2Paで製膜した。形成されたコーティングは、酸化ルテニウムであった。
電極の厚みは26μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0028(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例7]
実施例7は、陰極電解用電極基材をエレクトロフォーミング法により作成した。フォトマスクの形状は、0.485mm×0.485mmの正方形を0.15mm間隔で縦、横に並べた形状とした。露光、現像、電気メッキを順番に実施することにより、ゲージ厚みが20μm、開孔率56%のニッケル多孔箔を得た。表面の算術平均粗さRaは0.71μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは37μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて17μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0032(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例8]
実施例8は、陰極電解用電極基材としてエレクトロフォーミング法により作成し、ゲージ厚みが50μm、開孔率56%だった。表面の算術平均粗さRaは0.73μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは60μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0032(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例9]
実施例9は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが150μm、空隙率が76%のニッケル不織布(株式会社日工テクノ製)を使用した。不織布のニッケル繊維径は約40μm、目付量は300g/m2であった。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは165μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて15μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は29mmであり、元のフラットな状態までは戻らなかった。そこで、塑性変形後のやわらかさについて評価を行ったところ、電極は、表面張力により隔膜へ追従した。このことから、塑性変形したとしても小さい力で隔膜に接触させることができ、この電極はハンドリング性が良好であることが確認された。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0612(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性は「2」であり、大型積層体としてハンドリング可能であると判断できた。膜損傷評価は「0」と良好だった。
[実施例10]
実施例10は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが200μm、空隙率が72%のニッケル不織布(株式会社日工テクノ製)を使用した。不織布のニッケル繊維径は約40μm、目付量は500g/m2であった。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは215μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて15μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は40mmであり、元のフラットな状態までは戻らなかった。そこで、塑性変形後のやわらかさについて評価を行ったところ、電極は、表面張力により隔膜へ追従した。このことから、塑性変形したとしても小さい力で隔膜に接触させることができ、この電極はハンドリング性が良好であることが確認された。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0164(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性は「2」であり、大型積層体としてハンドリング可能であると判断できる。膜損傷評価は「0」と良好だった。
[実施例11]
実施例11は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが200μm、空隙率が72%の発泡ニッケル(三菱マテリアル株式会社製)を使用した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
また、電極の厚みは210μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は17mmであり、元のフラットな状態までは戻らなかった。そこで、塑性変形後のやわらかさについて評価を行ったところ、電極は、表面張力により隔膜へ追従した。このことから、塑性変形したとしても小さい力で隔膜に接触させることができ、この電極はハンドリング性が良好であることが確認された。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0402(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性は「2」であり、大型積層体としてハンドリング可能であると判断できる。膜損傷評価は「0」と良好だった。
[実施例12]
実施例12は、陰極電解用電極基材として線径50μm、200メッシュ、ゲージ厚みが100μm、開孔率が37%のニッケルメッシュを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理を実施しても開孔率は変わらなかった。金網表面の粗さを測定することは困難であるため、実施例12ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。金網1本の算術平均粗さRaは0.64μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは110μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0.5mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0154(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例13]
実施例13は、陰極電解用電極基材として線径65μm、150メッシュ、ゲージ厚みが130μm、開孔率が38%のニッケルメッシュを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理を実施しても開孔率は変わらなかった。金網表面の粗さを測定することは困難であるため、実施例13ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.66μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に、上記評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは133μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて3μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は6.5mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0124(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性は「2」であり、大型積層体としてハンドリング可能であると判断できる。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例14]
実施例14は、陰極電解用電極基材として実施例3と同じ基材(ゲージ厚み30μm、開孔率44%)を使用した。ニッケルメッシュ給電体を設置していないこと以外、実施例1と同じ構成で電解評価を実施した。すなわち、セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、膜一体電極、陽極の順番に並んでゼロギャップ構造を形成しており、マットレスが給電体として機能している。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0027(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例15]
実施例15は、陰極電解用電極基材として実施例3と同じ基材(ゲージ厚み30μm、開孔率44%)を使用した。ニッケルメッシュ給電体の代わりに、参考例1で使用した劣化して電解電圧が高くなった陰極を設置した。それ以外は実施例1と同じ構成で電解評価を実施した。すなわち、セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、劣化して電解電圧が高くなった陰極(給電体として機能する)、電解用電極(陰極)、隔膜、陽極の順番に並んでゼロギャップ構造を形成しており、劣化して電解電圧が高くなった陰極が給電体として機能している。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0027(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例16]
陽極電解用電極基材として、ゲージ厚みが20μmのチタン箔を準備した。チタン箔の両面に粗面化処理を施した。このチタン箔にパンチング加工を実施し、円形の孔をあけ多孔箔とした。孔の直径は1mm、開孔率は14%であった。表面の算術平均粗さRaは0.37μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。
電極触媒を形成するためのコーティング液を以下の手順で調製した。ルテニウム濃度が100g/Lの塩化ルテニウム溶液(田中貴金属工業株式会社)、イリジウム濃度が100g/Lの塩化イリジウム(田中貴金属工業株式会社)、四塩化チタン(和光純薬工業株式会社)を、ルテニウム元素とイリジウム元素とチタン元素のモル比が0.25:0.25:0.5となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陽極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E-4088、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。チタン多孔箔に、上記コーティング液を塗布した後、60℃で10分間の乾燥、475℃で10分間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を繰り返し実施した後、520℃で1時間の焼成を行った。
上記方法で作製した電極を、電解評価用に縦95mm、横110mmのサイズに切り出した。0.1N NaOH水溶液で平衡した〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A(サイズは160mm×160mm)のスルホン酸層側のほぼ中央の位置に、水溶液の表面張力で密着させた。
陰極は以下の手順で調製した。まず、基材として線径150μm、40メッシュのニッケル製金網を準備した。前処理としてアルミナでブラスト処理を実施した後、6Nの塩酸に5分間浸漬し純水で充分洗浄、乾燥させた。
次に、ルテニウム濃度が100g/Lの塩化ルテニウム溶液(田中貴金属工業株式会社)、塩化セリウム(キシダ化学株式会社)を、ルテニウム元素とセリウム元素のモル比が1:0.25となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陰極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E-4088、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。その後、50℃で10分間の乾燥、300℃で3分間の仮焼成、550℃で10分間の焼成を実施した。その後、550℃で1時間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を繰り返した。
陰極室の集電体としては、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。集電体のサイズは縦95mm×横110mmであった。金属弾性体としては、ニッケル細線で編んだマットレスを使用した。金属弾性体であるマットレスを集電体の上に置いた。その上に上記方法で作成した陰極をかぶせ、メッシュの四隅をテフロン(登録商標)で作製した紐で集電体に固定した。
膜と陽極が一体となった膜一体電極の膜部分の四隅をつまみ、電極を地面側になるようにして膜一体電極を地面と平行になるよう吊るしても、電極が剥がれ落ちたり、ずれたりすることはなかった。また、1辺の両端をつまみ、膜一体電極を地面と垂直になるように吊るしても、電極が剥がれ落ちたり、ずれたりすることはなかった。
陽極セルには、参考例3で使用した劣化して電解電圧が高くなった陽極を溶接で固定し、上記の膜一体電極を電極が付着している面を陽極室側になるように陽極セルと陰極セルの間に挟んだ。すなわち、セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、陰極、隔膜、電解用電極(チタン多孔箔陽極)、劣化して電解電圧が高くなった陽極の順番に並び、ゼロギャップ構造を形成させた。劣化して電解電圧が高くなった陽極は、給電体として機能していた。なお、チタン多孔箔陽極と劣化して電解電圧が高くなった陽極との間は、物理的に接触しているのみで、溶接での固定をしなかった。
この構成で、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは26μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて6μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は4mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0060(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例17]
実施例17は、陽極電解用電極基材としてゲージ厚み20μm、開孔率30%のチタン箔を使用した。表面の算術平均粗さRaは0.37μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは30μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は5mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0030(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例18]
実施例18は、陽極電解用電極基材としてゲージ厚み20μm、開孔率42%のチタン箔を使用した。表面の算術平均粗さRaは0.38μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは32μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて12μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は2.5mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0022(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例19]
実施例19は、陽極電解用電極基材としてゲージ厚み50μm、開孔率47%のチタン箔を使用した。表面の算術平均粗さRaは0.40μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは69μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて19μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は8mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0024(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例20]
実施例20は、陽極電解用電極基材としてゲージ厚み100μm、チタン繊維径が約20μm、目付量が100g/m2、開孔率78%のチタン不織布を使用した。それ以外は、実施例16と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは114μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて14μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は2mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0228(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例21]
実施例21は、陽極電解用電極基材としてゲージ厚み120μm、チタン繊維径が約60μm、150メッシュのチタン金網を使用した。開孔率は42%であった。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。金網表面の粗さを測定することは困難であるため、実施例21ではブラスト時に厚み1mmのチタン板を同時にブラスト処理し、そのチタン板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.60μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは140μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて20μmだった。
充分な接着力が観測された。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は10mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0132(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。膜損傷評価も「0」と良好だった。
[実施例22]
実施例22は、陽極給電体として実施例16と同様に、劣化して電解電圧が高くなった陽極を使用し、陽極として実施例20と同じチタン不織布を使用した。陰極給電体として実施例15と同様に、劣化して電解電圧が高くなった陰極を使用し、陰極として実施例3と同じニッケル箔電極を使用した。セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、劣化して電圧が高くなった陰極、ニッケル多孔箔陰極、隔膜、チタン不織布陽極、劣化して電解電圧が高くなった陽極の順番に並んでゼロギャップ構造を形成しており、劣化して電解電圧が高くなった陰極及び陽極が給電体として機能している。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極(陽極)の厚みは114μmであり、触媒層の厚みは、電極(陽極)の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて14μmだった。また、電極(陰極)の厚みは38μmであり、触媒層の厚みは、電極(陰極)の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。
陽極及び陰極共に充分な接着力が観測された。
電極(陽極)の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は2mmだった。電極(陰極)の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。
電極(陽極)の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0228(kPa・s/m)であった。電極(陰極)の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0027(kPa・s/m)であった。
また、低い電圧、高い電流効率、低い苛性中食塩濃度を示した。ハンドリング性も「1」と良好だった。陽極及び陰極共に膜損傷評価も「0」と良好だった。なお、実施例22では、隔膜の片面に陰極を、反対の面に陽極を張り付けて、陰極及び陽極を組み合わせて膜損傷評価を行った。
[実施例23]
実施例23では、Agfa社製の微多孔膜「Zirfon Perl UTP 500」を使用した。
Zirfon膜は純水に12時間以上浸漬させた後、試験に使用した。それ以外は実施例3と同様に上記評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。弾性変形領域が広い電極であることがわかった。
イオン交換膜を隔膜として使用した時と同様に、十分な接着力が観測され、表面張力で微多孔膜と電極が密着し、ハンドリング性は「1」と良好だった。
[実施例24]
陰極電解用電極基材として、ゲージ厚みが566μmの炭素繊維を織ったカーボンクロスを準備した。このカーボンクロスに電極触媒を形成するためのコーティング液を以下の手順で調製した。ルテニウム濃度が100g/Lの硝酸ルテニウム溶液(株式会社フルヤ金属)、硝酸セリウム(キシダ化学株式会社)を、ルテニウム元素とセリウム元素のモル比が1:0.25となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陰極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E-4088(商品名)、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと、上記塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置し、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。その後、50℃で10分間の乾燥、150℃で3分間の仮焼成、350℃で10分間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を所定のコーティング量になるまで繰り返した。作製した電極の厚みは、570μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて4μmだった。触媒層の厚みは、酸化ルテニウムと酸化セリウムの合計厚みであった。
得られた電極について、電解評価を行った。その結果を表2に示した。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は0mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.19(kPa・s/m)であり、測定条件2では0.176(kPa・s/m)であった。
また、ハンドリング性は「2」であり、大型積層体としてハンドリング可能であると判断できた。
電圧が高く、膜損傷評価は「1」であり、膜損傷が確認された。これは、実施例24の電極の通気抵抗が大きいため、電極で発生したNaOHが電極と隔膜の界面に滞留し、高濃度になったことが原因であると考えられた。
[参考例1]
参考例1では、陰極として8年間大型電解槽で使用し、劣化して電解電圧が高くなった陰極を使用した。陰極室のマットレスの上にニッケルメッシュ給電体の代わりに上記陰極を設置し、〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜Aを挟んで電解評価を実施した。参考例1では膜一体電極は使用しておらず、セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、劣化して電解電圧が高くなった陰極、イオン交換膜A、陽極の順番に並び、ゼロギャップ構造を形成させた。
この構成で電解評価を実施した結果、電圧は3.04V、電流効率は97.0%、苛性ソーダ中食塩濃度(50%換算値)は20ppmだった。陰極が劣化しているため、電圧が高い結果だった
[参考例2]
参考例2では、ニッケルメッシュ給電体を陰極として使用した。すなわち、触媒コーティングをしていないニッケルメッシュで電解を実施した。
陰極室のマットレス上にニッケルメッシュ陰極を設置し、〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜Aを挟んで電解評価を実施した。参考例2の電気セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、ニッケルメッシュ、イオン交換膜A、陽極の順番に並び、ゼロギャップ構造を形成させた。
この構成で電解評価を実施した結果、電圧は3.38V、電流効率は97.7%、苛性ソーダ中食塩濃度(50%換算値)は24ppmだった。陰極触媒がコーティングされていないため、電圧が高い結果だった。
[参考例3]
参考例3では、陽極として約8年間大型電解槽で使用し、劣化して電解電圧が高くなった陽極を使用した。
参考例3の電解セルの断面構造は、陰極室側から、集電体、マットレス、陰極、〔方法(i)〕で作成したイオン交換膜A、劣化して電解電圧が高くなった陽極の順番に並び、ゼロギャップ構造を形成させた。
この構成で電解評価を実施した結果、電圧は3.18V、電流効率は97.0%、苛性ソーダ中食塩濃度(50%換算値)は22ppmだった。陽極が劣化しているため、電圧が高い結果だった。
[実施例25]
実施例25では、陰極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚み100μm、開孔率33%のニッケルエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例25ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.68μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは114μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて14μmだった。
単位面積当たりの質量は67.5(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は、0.05(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は64%、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は22%であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等の問題があった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は13mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0168(kPa・s/m)であった。
[実施例26]
実施例26では、陰極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚み100μm、開孔率16%のニッケルエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例26ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.64μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは107μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて7μmだった。
単位面積当たりの質量は78.1(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は、0.04(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は37%、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は25%であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等の問題があった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は18.5mmだった。 電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0176(kPa・s/m)であった。
[実施例27]
実施例27は、陰極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚みが100μm、開孔率が40%のニッケルエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例27ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.70μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。電解用電極基材へのコーティングは実施例6と同様のイオンプレーティングで実施した。それ以外は、実施例1と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは110μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は、0.07(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は80%、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は32%であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等の問題があった。ハンドリング性も「3」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は11mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0030(kPa・s/m)であった。
[実施例28]
実施例28は、陰極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚みが100μm、開孔率が58%のニッケルエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例28ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.64μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは109μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて9μmだった。
単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は、0.06(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は69%、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は39%であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等の問題があった。ハンドリング性も「3」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は11.5mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0028(kPa・s/m)であった。
[実施例29]
実施例29は、陰極電解用電極基材としてゲージ厚みが300μm、開孔率が56%のニッケル金網を使用した。金網の表面粗さを測定することは困難であるため、実施例29ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。算術平均粗さRaは0.64μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様、評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは308μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。
単位面積当たりの質量は49.2(mg/cm2)だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は88%、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は42%であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等があり、ハンドリング性は「3」と問題があった。実際に大型サイズで操作して、「3」と評価できた。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は23mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0034(kPa・s/m)であった。
[実施例30]
実施例30では、陰極電解用電極基材としてゲージ厚み200μm、開孔率37%のニッケル金網を使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。金網の表面粗さを測定することは困難であるため、実施例30ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.65μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例1と同様に電極電解評価、接着力の測定結果、密着性を実施した。結果を表2に示した。
電極の厚みは210μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて10μmだった。
単位面積当たりの質量は56.4mg/cm2だった。このため、直径145mm円柱巻きつけ評価方法(3)の結果は63%と電極と隔膜の密着性が悪かった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等があり、ハンドリング性は「3」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は19mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0096(kPa・s/m)であった。
[実施例31]
実施例31では、陽極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚み500μm、開孔率17%のチタンエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例31ではブラスト時に厚み1mmのチタン板を同時にブラスト処理し、そのチタン板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.60μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、評価を実施し、結果を表2に示した。
また、電極の厚みは508μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。
単位面積当たりの質量は152.5(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は0.01(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は5%未満、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は5%未満であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等があった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、電極がPVC製パイプの形状に丸まったまま戻らず、L1、L2の値を測定できなかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0072(kPa・s/m)であった。
[実施例32]
実施例32では、陽極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚み800μm、開孔率8%のチタンエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例32ではブラスト時に厚み1mmのチタン板を同時にブラスト処理し、そのチタン板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.61μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、上記評価を実施し、結果を表2に示した。
電極の厚みは808μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。
単位面積当たりの質量は251.3(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は0.01(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は5%未満、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は5%未満であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等があった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、電極がPVC製パイプの形状に丸まったまま戻らず、L1、L2の値を測定できなかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0172(kPa・s/m)であった。
[実施例33]
実施例33では、陽極電解用電極基材としてフルロール加工後のゲージ厚み1000μm、開孔率46%のチタンエキスパンドメタルを使用した。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。ブラスト処理後も開孔率は変わらなかった。エキスパンドメタルの表面粗さを測定することは困難であるため、実施例33ではブラスト時に厚み1mmのチタン板を同時にブラスト処理し、そのチタン板の表面粗さを金網の表面粗さとした。算術平均粗さRaは0.59μmだった。表面粗さの測定は、ブラスト処理を実施したニッケル板の表面粗さ測定と同条件で実施した。それ以外は、実施例16と同様に、上記評価を実施し、結果を表2に示した。
また、電極の厚みは1011μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて11μmだった。
単位面積当たりの質量は245.5(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は0.01(N/mg・cm2)と小さな値だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(2)の結果は5%未満、直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果は5%未満であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。これは膜一体電極を取り扱う際に、電極が剥がれてしまいやすくハンドリング中に電極が膜から剥がれて落下する等があった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、電極がPVC製パイプの形状に丸まったまま戻らず、L1、L2の値を測定できなかった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0027(kPa・s/m)であった。
[実施例34]
陰極電解用電極基材として、ゲージ厚みが150μmのニッケル線を準備した。このニッケル線による粗面化処理を施した。ニッケル線の表面粗さを測定することは困難であるため、実施例34ではブラスト時に厚み1mmのニッケル板を同時にブラスト処理し、そのニッケル板の表面粗さをニッケル線の表面粗さとした。粒番号320のアルミナでブラスト処理を実施した。算術平均粗さRaは0.64μmだった。
電極触媒を形成するためのコーティング液を以下の手順で調製した。ルテニウム濃度が100g/Lの硝酸ルテニウム溶液(株式会社フルヤ金属)、硝酸セリウム(キシダ化学株式会社)を、ルテニウム元素とセリウム元素のモル比が1:0.25となるように混合した。この混合液を充分に撹拌し、これを陰極コーティング液とした。
ロール塗布装置の最下部に上記塗布液を入れたバットを設置した。PVC(ポリ塩化ビニル)製の筒に独立気泡タイプの発泡EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製のゴム(イノアックコーポレイション、E-4088(商品名)、厚み10mm)を巻きつけた塗布ロールと、上記塗布液が常に接するように設置した。その上部に同じEPDMを巻きつけた塗布ロールを設置し、更にその上にPVC製のローラーを設置した。電極基材を2番目の塗布ロールと最上部のPVC製のローラーの間を通して塗布液を塗布した(ロール塗布法)。その後、50℃で10分間の乾燥、150℃で3分間の仮焼成、350℃で10分間の焼成を実施した。これら塗布、乾燥、仮焼成、焼成の一連の操作を所定のコーティング量になるまで繰り返した。実施例34で作製したニッケル線1本の厚みは、158μmだった。
上記方法で作製したニッケル線を110mm及び95mmの長さに切り出した。図16に示すように、110mmのニッケル線と95mmのニッケル線が、それぞれのニッケル線の中心において垂直に重なるように置き、交点部分を瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標)、東亜合成株式会社)で接着して電極を作製した。電極について評価を実施し、その結果を表2に示した。
電極はニッケル線が重なった部分が最も厚く、電極の厚みは306μmだった。触媒層の厚みは、6μmだった。開孔率は99.7%であった。
電極の単位面積当たりの質量は0.5(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)及び(2)は、いずれも引張試験機の測定下限以下だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(1)の結果は5%未満であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は15mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件2では0.001(kPa・s/m)以下であった。測定条件2にて、通気抵抗測定装置のSENSE(測定レンジ)をH(高)にして測定したところ、通気抵抗値は0.0002(kPa・s/m)であった。
また、電極を図17に示す構造体を用いて、Niメッシュ給電体の上に電極(陰極)を設置して、(9)電解評価に記載の方法で電解評価を実施した。その結果、電圧が3.16Vと高かった。
[実施例35]
実施例35では、実施例34で作製した電極を用いて、図18に示すように、110mmのニッケル線と95mmのニッケル線が、それぞれのニッケル線の中心において垂直に重なるように置き、交点部分を瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標)、東亜合成株式会社)で接着して電極を作製した。電極について評価を実施し、その結果を表2に示した。
電極はニッケル線が重なった部分が最も厚く、電極の厚みは306μmだった。触媒層の厚みは、6μmだった。開孔率は99.4%であった。
電極の単位面積当たりの質量は0.9(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)及び(2)は、いずれも引張試験機の測定下限以下だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(1)の結果は5%未満であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は16mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件2では0.001(kPa・s/m)以下であった。測定条件2にて、通気抵抗測定装置のSENSE(測定レンジ)をH(高)にして測定したところ、通気抵抗は0.0004(kPa・s/m)であった。
また、電極を図19に示す構造体を用いて、Niメッシュ給電体の上に電極(陰極)を設置して、(9)電解評価に記載の方法で電解評価を実施した。その結果、電圧が3.18Vと高かった。
[実施例36]
実施例36では、実施例34で作製した電極を用いて、図20に示すように、110mmのニッケル線と95mmのニッケル線が、それぞれのニッケル線の中心において垂直に重なるように置き、交点部分を瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標)、東亜合成株式会社)で接着して電極を作製した。電極について評価を実施し、その結果を表2に示した。
電極はニッケル線が重なった部分が最も厚く、電極の厚みは306μmだった。触媒層の厚みは、6μmだった。開孔率は98.8%であった。
電極の単位面積当たりの質量は1.9(mg/cm2)だった。単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)及び(2)は、いずれも引張試験機の測定下限以下だった。このため、直径280mm円柱巻き付け評価(1)の結果は5%未満であり、電極と隔膜が剥がれてしまう部分が多くなった。ハンドリング性も「4」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は14mmだった。
また、電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件2では0.001(kPa・s/m)以下であった。測定条件2にて、通気抵抗測定装置のSENSE(測定レンジ)をH(高)にして測定したところ、通気抵抗は0.0005(kPa・s/m)であった。
また、電極を図21に示す構造体を用いて、Niメッシュ給電体の上に電極(陰極)を設置して、(9)電解評価に記載の方法で電解評価を実施した。その結果、電圧が3.18Vと高かった。
[比較例1]
比較例1では先行文献(特開昭58-48686の実施例)を参考に電極を隔膜に熱圧着した熱圧着接合体を作製した。
陰極電解用電極基材としてゲージ厚み100μm、開孔率33%のニッケルエキスパンドメタルを使用し、実施例1と同様に電極コーティングを実施した。その後、電極の片面に、不活性化処理を下記の手順で実施した。ポリイミド粘着テープ(中興化成株式会社)を電極の片面に貼り付け、反対面にPTFEディスパージョン(三井デュポンフロロケミカル株式会社、31-JR(商品名))を塗布、120℃のマッフル炉で10分間乾燥させた。ポリイミドテープを剥がし、380℃に設定したマッフル炉で10分間焼結処理を実施した。この操作を2回繰り返し、電極の片面を不活性化処理した。
末端官能基が「-COOCH3」であるパーフルオロカーボンポリマー(Cポリマー)と、末端基が「-SO2F」であるパーフルオロカーボンポリマー(Sポリマー)の2層で形成される膜を製作した。Cポリマー層の厚みが3ミル(mil)、Sポリマー層の厚みは4ミル(mil)であった。この2層膜にケン化処理を実施し、ポリマーの末端を加水分解によりイオン交換基を導入した。Cポリマー末端はカルボン酸基に、Sポリマー末端はスルホ基に加水分解された。スルホン酸基としてのイオン交換容量は1.0meq/g、カルボン酸基としてのイオン交換容量が0.9meq/gであった。
イオン交換基としてカルボン酸基を有する面に、不活性化した電極面を対向させて熱プレスを実施し、イオン交換膜と電極を一体化させた。熱圧着後も、電極の片面は露出している状態であり、電極が膜を貫通している部分はなかった。
その後、電解中に発生する気泡の膜への付着を抑制するために、酸化ジルコニウムとスルホ基が導入されたパーフルオロカーボンポリマー混合物を両面に塗布した。このようにして、比較例1の熱圧着接合体を製作した。
この熱圧着接合体を用いて、単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)を測定したところ、熱圧着により強力に電極と膜が接合しているため、電極が上方へ動かなかった。そこで、イオン交換膜とニッケル板を動かないように固定し、電極を更に強い力で上方へ引っ張ったところ、1.50(N/mg・cm2)の力がかかった時に、膜の一部が破れた。比較例1の熱圧着接合体の単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は、少なくとも1.50(N/mg・cm2)であり、強く接合されていた。
直径280mm円柱巻き付け評価(1)を実施したところ、プラスチック製パイプにとの接触面積は5%未満だった。一方、直径280mm円柱巻き付け評価(2)を実施したところ、電極と膜は100%接合しているが、そもそも隔膜が円柱に巻きつかなった。直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果も同じだった。この結果は、一体化させた電極により膜のハンドリング性が損なわれ、ロール状に巻いたり、折り曲げたりすることが困難になると意味した。ハンドリング性は「3」と問題があった。膜損傷評価は「0」であった。また、電解評価を実施したところ、電圧は高く、電流効率は低く、苛性ソーダ中の食塩濃度(50%換算値)は高くなり、電解性能は悪化した。
また、電極の厚みは114μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて14μmだった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は13mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0168(kPa・s/m)であった。
[比較例2]
比較例2は、陰極電解用電極基材として線径150μm、40メッシュ、ゲージ厚み300μm、開孔率58%のニッケルメッシュを使用した。それ以外は、比較例1と同様に熱圧着接合体を作製した。
この熱圧着接合体を用いて、単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)を測定したところ、熱圧着により強力に電極と膜が接合しているため、電極が上方へ動かなかった。そこで、イオン交換膜とニッケル板を動かないように固定し、電極を更に強い力で上方へ引っ張ったところ1.60(N/mg・cm2)の力がかかった時に、膜の一部が破れた。比較例2の熱圧着接合体の単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)は、少なくとも1.60(N/mg・cm2)であり、強く接合されていた。
この熱圧着接合体を用いて直径280mm円柱巻き付け評価(1)を実施したところ、プラスチック製パイプにとの接触面積は5%未満だった。一方、直径280mm円柱巻き付け評価(2)を実施したところ、電極と膜は100%接合しているが、そもそも隔膜が円柱に巻きつかなった。直径145mm円柱巻き付け評価(3)の結果も同じだった。この結果は、一体化させた電極により膜のハンドリング性が損なわれ、ロール状に巻いたり、折り曲げたりすることが困難になると意味した。ハンドリング性は「3」と問題があった。また、電解評価を実施したところ、電圧は高く、電流効率は低く、苛性ソーダ中の食塩濃度は高くなり、電解性能は悪化した。
また、電極の厚みは308μmだった。触媒層の厚みは、電極の厚みから電解用電極基材の厚みを差し引いて8μmだった。
電極の変形試験を実施したところ、L1、L2の平均値は23mmだった。
電極の通気抵抗を測定したところ、測定条件1では0.07(kPa・s/m)以下であり、測定条件2では0.0034(kPa・s/m)であった。
Figure 0007075792000001
Figure 0007075792000002
表2において、全てのサンプルで、「単位質量・単位面積当たりのかかる力(1)」及び「単位質量・単位面積当たりのかかる力(2)」の測定前は表面張力で自立できていた(すなわち、ずり下がることはなかった)。
図1に対する符号の説明
10…電解用電極基材、20…第一層、30…第二層、100…電解用電極。
図2~4に対する符号の説明
1…イオン交換膜、2…カルボン酸層、3…スルホン酸層、4…強化芯材、10…膜本体、11a,11b…コーティング層、21,22…強化芯材、100…電解槽、200…陽極、300…陰極、52…強化糸、504a…犠牲糸、504…連通孔504。
図5~9に対する符号の説明
1・・・電解セル、2・・・イオン交換膜、4・・・電解槽、5・・・プレス器、6・・・陰極端子、7・・・陽極端子、10・・・陽極室、11・・・陽極、12・・・陽極ガスケット、13・・・陰極ガスケット、18・・・逆電流吸収体、18a・・・基材、18b・・・逆電流吸収層、19・・・陽極室の底部、20・・・陰極室、21・・・陰極、22・・・金属弾性体、23・・・集電体、24・・・支持体、30・・・隔壁、40・・・電解用陰極構造体。
図10に対する符号の説明
1・・・はさみ治具(SUS)、2・・・電極、3・・・隔膜、4・・・ニッケル板(粒番号320のアルミナブラスト済み)、100・・・正面、200・・・側面。
図11~13に対する符号の説明
1・・・隔膜、2a・・・外径280mmのポリエチレン製パイプ、2b・・・外径145mmのポリエチレン製パイプ、3・・・剥離部、4・・・密着部、5・・・電極。
図14に対する符号の説明
1・・・PVC(ポリ塩化ビニル)製パイプ、2・・・イオン交換膜、3・・・電極、4・・・定盤
図15に対する符号の説明
1・・・定盤、2・・・変形が生じた電極、10・・・電極を固定する治具、20・・・力を加える方向
図16~21に対する符号の説明
1・・・110mmのニッケル線、2・・・950mmのニッケル線、3・・・フレーム

Claims (5)

  1. 電解用電極と、
    前記電解用電極に接する、隔膜又は給電体と、
    を備え、
    前記隔膜又は給電体に対して以下の方法(i)又は方法(ii)で測定される、前記電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、前記方法(i)及び前記方法(ii)のいずれで測定されても、1.5N/mg・cm2未満である、積層体。
    〔方法(i)〕
    粒番号320のアルミナでブラスト加工を施して得られる、算術平均表面粗さ(Ra)が0.7μmであるニッケル板(厚み1.2mm、200mm角)と、イオン交換基が導入されたパーフルオロカーボン重合体の膜の両面に無機物粒子と結合剤を塗布したイオン交換膜(170mm角)と電解用電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させ、この積層体を純水にて十分に浸漬した後、積層体表面に付着した余分な水分を除去することで測定用サンプルを得る。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この測定用サンプル中の電解用電極サンプルのみを引張圧縮試験機を用いて、垂直方向に10mm/分で上昇させて、電解用電極サンプルが、垂直方向に10mm上昇したときの加重を測定する。この測定を3回実施して平均値を算出し、この平均値を、電解用電極サンプルとイオン交換膜の重なり部分の面積、及びイオン交換膜と重なっている部分の電解用電極サンプルにおける質量で除して、単位質量・単位面積当たりのかかる力を算出する。
    〔方法(ii)〕
    粒番号320のアルミナでブラスト加工を施して得られる、算術平均表面粗さ(Ra)が0.7μmであるニッケル板(厚み1.2mm、200mm角)と、電解用電極サンプル(130mm角)とをこの順で積層させ、この積層体を純水にて十分に浸漬した後、積層体表面に付着した余分な水分を除去することで測定用サンプルを得る。温度23±2℃、相対湿度30±5%の条件下で、この測定用サンプル中の電解用電極サンプルのみを、引張圧縮試験機を用いて、垂直方向に10mm/分で上昇させて、電解用電極サンプルが、垂直方向に10mm上昇したときの加重を測定する。この測定を3回実施して平均値を算出し、この平均値を、電解用電極サンプルとニッケル板の重なり部分の面積、及びニッケル板と重なっている部分における電解用電極サンプルの質量で除して、単位質量・単位面積当たりの接着力を算出する。
  2. 前記隔膜又は給電体に対する、前記電解用電極の単位質量・単位面積あたりのかかる力が、0.005N/mg・cm2超である請求項1に記載の積層体。
  3. 前記給電体が、金網、金属不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタル、又は発泡金属である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記隔膜の少なくとも1つの表面層として、親水性酸化物粒子とイオン交換基が導入されたポリマーの混合物を含む層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記電解用電極と前記隔膜又は給電体との間に液体が介在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
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