JP2020044554A - 蛇行制御システム、蛇行制御方法、およびプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
図1(a)および図1(b)において、レベリング操作量Srは、ys・fy+e・fe+d・fdで表される。ここで、ysは、蛇行計による蛇行量の測定値であり、fyは、蛇行計による蛇行量の測定値ysに対するフィードバックゲインである。eは、圧延機位置における板圧延材の蛇行量の時間微分値であり、feは、圧延機位置における板圧延材の蛇行量の時間微分値eに対するフィードバックゲインである。dは、圧延機の入側において板圧延材(の板面内)に生じる回転角速度に対する外乱であり、fdは、圧延機の入側において板圧延材(の板面内)に生じる回転角速度に対する外乱dに対するフィードフォワードゲインfdである。また、「・」は積を表し、「+」は和を表す。以下では、「ys・fy+e・fe」をフィードバック制御量と称し、「d・fd」をフィードフォワード制御量と称する。
具体的に前提技術では、以下のようにしてレベリング操作量Srを計算する。
まず、通板方向(X軸方向)において相互に隣り合う2つの圧延機のうち下流側にある圧延機の圧延機位置を位置xの座標原点(x=0)にとり、板圧延材の圧延方向(下流方向)を正方向と定義する(これらのことは前提技術以外の説明においても同じであるとする)。当該2つの圧延機の間を速度vで走行する板圧延材の、当該下流側にある圧延機の入側において板圧延材(の板面内)に生じる、時刻tでの回転角速度をω(t)とする。以下の説明では、通板方向(X軸方向)において相互に隣り合う2つの圧延機のうち、相対的に下流側にある圧延機を、必要に応じて下流側圧延機と称し、相対的に上流側にある圧延機を、必要に応じて上流側圧延機と称する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
前述したように前提技術では、(11)式の右辺第1,第2項のフィードバック制御と、右辺第3項のフィードフォワード制御との両方を実施する場合には、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dとの推定値が必要であり、それらを推定する2次元オブザーバを用いる必要がある。このように、フィードバック制御とフィードフォワード制御との両方を実施する場合、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dとを推定する2次元オブザーバを用いる必要がある。
一般に、推定しようとする変数の次元が高くなるほど変数間の干渉が生じやすくなるので、オブザーバの応答を速めることは困難である。したがって、前提技術では、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dの推定値が整定するまでに時間を要する。以上のことから、前提技術では、蛇行制御の応答を速めることが容易ではなく、例えば、板圧延材に急激な蛇行が生じた場合には、蛇行制御が間に合わなくなる虞がある。
図2は、本実施形態の蛇行制御システムの構成の一例を示す図である。
蛇行制御システムは、N(Nは2以上の整数)台の圧延機を有する。N台の圧延機の適用例としては、熱間圧延工程におけるタンデム仕上圧延機が挙げられる。熱間圧延工程におけるタンデム仕上圧延機は、例えば、7台の圧延機を有する。図2では、表記の都合上、N台の圧延機のうち、板圧延材5の通板方向(図1のX軸方向)において相互に隣り合う位置に配置される2台の圧延機(上流側圧延機1、下流側圧延機2)のみを示す。板圧延材5は、上流側圧延機1、下流側圧延機2によって、図1のX軸の正の方向に圧延される。本実施形態では、上流側圧延機1と下流側圧延機2との間における板圧延材5の蛇行を制御する場合を例に挙げて説明する。
上流側圧延機1には、荷重計3aが設けられる。荷重計3aは、上流側圧延機1(の圧延ロール)にかかる荷重を測定する。荷重計3aにより測定された荷重Pは、レベリング操作量演算器200に出力される。
荷重計3bは、下流側圧延機2(の圧延ロール)にかかる荷重Pを測定する。荷重計3bにより測定される荷重Pは、レベリング装置4が、下流側圧延機2の圧延機位置における板圧延材5の蛇行量の制御の終了を判定するために用いられる。尚、この判定は、レベリング操作量演算器200で行われるようにしてもよい。
レベリング装置4は、下流側圧延機2のレベリング量が、レベリング操作量演算器200から出力されたレベリング操作量Srに一致するように、下流側圧延機2のレベリング量を調整することにより、下流側圧延機2の圧延機位置における板圧延材5の蛇行量を制御する。レベリング装置4で調整された下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)Sは、レベリング操作量演算器200に出力される。
<セットアップ計算機100>
セットアップ計算機100は、レベリング操作量演算器200におけるレベリング操作量Srの計算に必要なパラメータを計算してレベリング操作量演算器200に出力する。尚、セットアップ計算機100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。
第1のゲイン導出部101は、板圧延材5の圧延が開始される前に、(4)式に示したゲインp、qを導出する。前述したようにゲインpは、下流側圧延機2のレベリング量Sから、板材入側回転角速度ωへのゲインである。ゲインqは、圧延機位置蛇行量yc(下流側圧延機2の圧延機位置(x=0)における板圧延材5の蛇行量)から板材入側回転角速度ωへのゲインである。第1のゲイン導出部101は、公知の分割モデルを用いてゲインp、qを計算してもよいし、圧延条件で層別されてゲインp、qが登録されているテーブルから、該当する圧延条件に相当するゲインp、qを検索してもよい。
ロール速度導出部102は、上流側圧延機1において板圧延材5の圧延が終了する時点(板圧延材5の後端が上流側圧延機1を抜ける時点)における下流側圧延機2のワークロールの回転速度(ロール速度)vRを計算する。ロール速度導出部102は、上流側圧延機1において板圧延材5の圧延が終了する時点における下流側圧延機2のワークロールの回転速度(ロール速度)vRと、下流側圧延機2の後進率bとに基づいて、上流側圧延機1と下流側圧延機2との間を走行する板圧延材5の速度vを、以下の(29)式により計算する。
第2のゲイン導出部103は、蛇行量測定値ysに対するフィードバックゲインfyと、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eに対するフィードバックゲインfeと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dに対するフィードフォワードゲインfdとを、(8)式、(12)式により計算する。以下の説明では、蛇行量測定値ysに対するフィードバックゲイン、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eに対するフィードバックゲインを、必要に応じてフィードバックゲインと略称し、板材入側回転角速度ωに対する外乱dに対するフィードフォワードゲインを、必要に応じて、フィードフォワードゲインと略称する。
係数導出部104は、(27)式における係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを、(26)式、(28)式により計算する。尚、A−od、K−od、B−od、C−o、D−oは、それぞれ、(27)式等において、Aod、Kod、Bod、Co、DoのA、K、B、C、Dの上に−が付されているものに対応する。
出力部105は、ロール速度導出部102により計算された板材速度vと、第2のゲイン導出部103により計算されたフィードバックゲインfy、feおよびフィードフォワードゲインfdと、係数導出部104により計算された係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを、レベリング操作量演算器200に出力する。セットアップ計算機100とレベリング操作量演算器200との通信の形態は、有線通信であっても無線通信であってもよい。
レベリング操作量演算器200は、レベリング装置4から出力される下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)Sと、蛇行計20から出力される蛇行量測定値ysとに基づいて、下流側圧延機2のレベリング操作量Srを計算してレベリング装置4に出力する。尚、レベリング操作量演算器200のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。
入力部201は、セットアップ計算機100(出力部105)から出力された係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを入力し、外乱推定部203((27)式)に対して設定する。また、入力部201は、セットアップ計算機100(出力部105)から出力されたフィードバックゲインfy、feおよびフィードフォワードゲインfdを入力し、レベリング操作量導出部204((11)式)に対して設定する。また、入力部201は、セットアップ計算機100(出力部105)から出力された板材速度vを入力し、擬似微分部202((21)式)に対して設定する。
レベリング操作量演算器200は、荷重計3aで測定された上流側圧延機1(の圧延ロール)にかかる荷重Pに基づいて、上流側圧延機1において板圧延材5の圧延が終了した(板圧延材5の後端が上流側圧延機1を抜けた)か否かを判定する。本実施形態では、レベリング操作量演算器200は、荷重計3aで測定される上流側圧延機1(の圧延ロール)にかかる荷重Pが0または0と見なせる値になったときに、上流側圧延機1において板圧延材5の圧延が終了した(板圧延材5の後端が上流側圧延機1を抜けた)と判定する。
擬似微分部202は、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を、(21)式により計算する。
[外乱推定部203(1次元オブザーバ)]
外乱推定部203は、擬似微分部202により計算された圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とに基づいて、(27)式により、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]を計算(推定)する。
レベリング操作量導出部204は、擬似微分部202により導出された圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、蛇行量測定値ys[k]と、外乱推定部203により計算された板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]とに基づいて、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を、(11)式により計算する。
また、蛇行量測定値ys[k]を擬似微分したものである圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]とフィードバックゲインfeとの積がレベリング装置4で調整されるレベリング量に反映される。したがって、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]もフィードバックされる。
以上のフィードバック制御量SrFBとフィードフォワード制御量SrFFとの和が、下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]としてレベリング装置4に出力される。
出力部205は、レベリング操作量導出部204により計算された下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]をレベリング装置4に出力する。前述したようにレベリング装置4は、下流側圧延機2のレベリング量が、出力部205により出力された下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]に一致するように、下流側圧延機2のレベリング量を調整する。
次に、図4のフローチャートを参照しながら、本実施形態の蛇行制御システムにおける処理の一例を説明する。
まず、ステップS401において、第1のゲイン導出部101は、(4)式に示したゲインp、qを導出する。
次に、ステップS402において、ロール速度導出部102は、上流側圧延機1と下流側圧延機2との間を走行する板圧延材5の速度vを、(29)式により計算する。
次に、ステップS404において、係数導出部104は、(27)式における係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを、(26)式、(28)式により計算する。
次に、ステップS405において、出力部105は、ステップS403で計算されたフィードバックゲインfy、feおよびフィードフォワードゲインfdと、ステップS404で計算された係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oと、ステップS402で計算された板材速度vを、レベリング操作量演算器200に出力する。そして、入力部201は、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを入力し、外乱推定部203((27)式)に対して設定する。また、入力部201は、フィードフォワードゲインfdを入力し、レベリング操作量導出部204((11)式((30)式))に対して設定する。また、入力部201は、板材速度vを入力し、擬似微分部202((21)式)に対して設定する。ステップS405の処理が終了した後に、板圧延材5の圧延が開始される。
次に、ステップS407において、レベリング操作量演算器200は、上流側圧延機1において板圧延材5の圧延が終了するまで待機する。上流側圧延機1において板圧延材5の圧延が終了すると(ステップS407でYESと判定されると)、処理はステップS408に進む。処理がステップS408に進むと、レベリング操作量演算器200は、制御タイミング特定変数kに1を加算して、制御タイミング特定変数kを更新する。制御タイミング特定変数kが0から1に変更されると、制御タイミング特定変数k(=1)に対応する時刻tを現在時刻とする。
ステップS409において、擬似微分部202は、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)において、蛇行量測定値ys[k]が得られたか否かを判定する。この判定の結果、蛇行量測定値ys[k]が得られなかった場合(ステップS409でNO)の場合、処理は、後述するステップS413に進む。
次に、ステップS411において、外乱推定部203は、ステップS410で計算された圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、ステップS409で取得された蛇行量測定値ys[k]と、レベリング装置4から出力される下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とに基づいて、(27)式により、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]を計算(推定)する。
次に、ステップS414において、出力部205は、レベリング操作量導出部204により計算された下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]をレベリング装置4に出力する。
一方、下流側圧延機2において板圧延材5の圧延が終了していない場合(ステップS415でNOの場合)、処理は、ステップS416に進む。処理がステップS416に進むと、レベリング装置4は、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻(=kT)において、ステップS414で出力された下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]に一致するように、下流側圧延機2のレベリング量を調整する。そして、処理は、ステップS408に戻り、制御タイミング特定変数kが更新され、更新後の制御タイミング特定変数kに対応する時刻(=kT)において、ステップS409〜S416の処理が実行される。
以上のように本実施形態では、レベリング操作量演算器200は、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を導出し、導出した圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とを、1次元オブザーバに与え、当該1次元オブザーバにより、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]を推定する。したがって、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を、オブザーバを用いて推定することなく、(21)式で計算することにより、下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を導出することができる。このとき、オブザーバで推定するのは、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]のみとなる。よって、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]の推定値が整定するのに要する時間を短縮することができる。これにより、(11)式の右辺第3項の板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]のフィードフォワード制御量SrFFの効果が早く現れる。また、レベリング操作量演算器200は、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]のフィードフォワード制御量SrFFと、蛇行量測定値ys[k]および圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]のフィードバック制御量SrFBとの加算値を下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]として導出することにより、(11)式の右辺第3項のフィードフォワード制御の効果に、右辺第1,第2項のフィードバック制御の効果も加算される。このうち、右辺第2項に用いる圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eはオブザーバを用いずに(21)式で計算されるので、右辺第2項のフィードバック制御の効果も早く現れる。以上のように本実施形態では、蛇行制御の応答を速めることができる。
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、蛇行量測定値ysおよび圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eをフィードバックすることと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dをフィードフォワードすることとの双方を行う場合について説明した。ここで、(11)式の右辺第3項のフィードフォワード制御のみを実施する場合には、実際に必要な推定値は板材入側回転角速度ωに対する外乱dのみであるが、前提技術では、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dとを推定する2次元オブザーバを用いる必要がある。このように、前提技術では、フィードフォワード制御のみを実施する場合にも、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dとを推定する2次元オブザーバを用いる必要がある。
[第2のゲイン導出部503]
第1の実施形態の第2のゲイン導出部103では、フィードバックゲインfy、feと、フィードフォワードゲインfdとを、(8)式、(12)式により計算する。これに対し、本実施形態の第2のゲイン導出部503は、フィードバックゲインfy、feを0として、板材入側回転角速度ωに対する外乱dに対するフィードフォワードゲインfdを、(8)式、(12)式により計算する。
第1の実施形態の出力部105では、板材速度vと、フィードバックゲインfy、feおよびフィードフォワードゲインfdと、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを、レベリング操作量演算器200に出力する。これに対し、本実施形態の出力部505は、板材速度vと、フィードフォワードゲインfdと、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを、レベリング操作量演算器200に出力する。
[入力部501]
第1の実施形態の入力部201は、板材速度vと、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oと、フィードバックゲインfy、feとフィードフォワードゲインfdを入力する。これに対し、本実施形態の入力部501は、板材速度vと、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oと、フィードフォワードゲインfdを入力する。
具体的に入力部501は、セットアップ計算機100(出力部505)から出力された係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを入力し、外乱推定部203((27)式)に対して設定する。また、入力部501は、セットアップ計算機100(出力部505)から出力されたフィードフォワードゲインfdを入力し、レベリング操作量導出部504((11)式)に対して設定する。尚、本実施形態では、フィードバックゲインfy、feを0とするので、(11)式の右辺第1項(fyys[k])および右辺第2項(fee[k])は0になる。また、入力部501は、セットアップ計算機100(出力部505)から出力された板材速度vを入力し、擬似微分部202((21)式)に対して設定する。
第1の実施形態のレベリング操作量導出部204は、フィードバックゲインfy、feを0とせずに、擬似微分部202により導出された圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、蛇行量測定値ys[k]と、外乱推定部203により導出された板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]とに基づいて、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を、(11)式により計算する。これに対し、本実施形態のレベリング操作量導出部504は、(11)式において、フィードバックゲインfy、feを0とした以下の(30)式により、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を計算する。
本実施形態の蛇行制御システムにおける処理は、図4のフローチャートにより実現することができる。
ただし、ステップS403において、第2のゲイン導出部503は、フィードバックゲインfy、feを0とし、フィードフォワードゲインfdを、(8)式、(12)式により計算する。
また、ステップS412において、レベリング操作量導出部504は、ステップS411で計算された板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]に基づいて、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を、(30)式により計算する。
以上のように本実施形態では、レベリング操作量演算器200は、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を導出し、導出した圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とを、1次元オブザーバに与え、当該1次元オブザーバにより、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]を推定し、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]のフィードフォワード制御量SrFFを下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]として導出することにより、(11)式の右辺第3項のフィードフォワード制御の効果が早く現れ、蛇行制御の応答を速めることができる。
本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
次に、第3の実施形態を説明する。第1の実施形態では、蛇行量測定値ysおよび圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eをフィードバックすることと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dをフィードフォワードすることとの双方を行う場合について説明した。ここで、(11)式の右辺第1,第2項のフィードバック制御のみを実施する場合には、実際に必要な推定値は圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eのみであるが、前提技術では、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dとを推定する2次元オブザーバとする必要がある。このように、前提技術では、フィードバック制御のみを実施する場合にも、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eと、板材入側回転角速度ωに対する外乱dとを推定する2次元オブザーバを用いる必要がある。
[第2のゲイン導出部603]
第1の実施形態の第2のゲイン導出部103では、フィードバックゲインfy、feと、フィードフォワードゲインfdとを、(8)式、(12)式により計算する。これに対し、本実施形態の第2のゲイン導出部603は、フィードフォワードゲインfdを0として、蛇行量測定値ysに対するフィードバックゲインfyと、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eに対するフィードバックゲインfeを(8)式、(12)式により計算する。
第1の実施形態の出力部105では、板材速度vと、フィードバックゲインfy、feおよびフィードフォワードゲインfdと、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを、レベリング操作量演算器200に出力する。これに対し、本実施形態の出力部605は、板材速度vと、フィードバックゲインfy、feを、レベリング操作量演算器200に出力する。尚、本実施形態では、オブザーバを用いないので、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oを導出する係数導出部104は不要になる。
[入力部601]
第1の実施形態の入力部201は、板材速度vと、係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oと、フィードバックゲインfy、feとフィードフォワードゲインfdを入力する。これに対し、本実施形態の入力部601は、板材速度vと、フィードバックゲインfy、feを入力する。
具体的に入力部601は、セットアップ計算機100(出力部505)から出力されたフィードバックゲインfy、feを入力し、レベリング操作量導出部604((11)式)に対して設定する。尚、本実施形態では、フィードフォワードゲインfdを0とするので、(11)式の右辺第3項(fdd[k])は0になる。また、入力部601は、セットアップ計算機100(出力部605)から出力された板材速度vを入力し、擬似微分部202((21)式)に対して設定する。
第1の実施形態のレベリング操作量導出部204は、フィードフォワードゲインfdを0とせずに、擬似微分部202により導出された圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、蛇行量測定値ys[k]と、外乱推定部203により導出された板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]とに基づいて、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を、(11)式により計算する。これに対し、本実施形態のレベリング操作量導出部604は、(11)式において、フィードフォワードゲインfdを0とした以下の(31)式により、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を計算する。尚、前述したように本実施形態では、外乱推定部203を用いない。
本実施形態の蛇行制御システムにおける処理は、図4のフローチャートにより実現することができる。
ただし、ステップS403において、第2のゲイン導出部603は、フィードフォワードゲインfdを0とし、フィードバックゲインfy、feを、(8)式、(12)式により計算する。また、ステップS404の処理(係数A−od、K−od、B−od、C−o、D−oの計算)は行われない。
また、ステップS411の処理(板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]の計算)は行われない。そして、ステップS412において、レベリング操作量導出部604は、ステップS409で取得された蛇行量測定値ys[k]と、ステップS410で計算された圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]とに基づいて、制御タイミング特定変数kの現在値に対応する時刻t(=kT)での下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を、(31)式により計算する。
以上のように本実施形態では、レベリング操作量演算器200は、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を導出し、導出した圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]のフィードバック制御量fee[k]と、蛇行量測定値ys[k]のフィードバック制御量fyys[k]との加算値(フィードバック制御量SrFB)を下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]として導出することにより、オブザーバを用いて圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を求める前提技術を適用した場合よりも、(11)式の右辺第2項のフィードバック制御の効果が早く現れ、蛇行制御の応答を速めることができる。
本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
次に、本実施形態の蛇行制御システムをコンピュータシミュレーションした結果を説明する。
ここでは、7台の圧延機からなるタンデム圧延機で、板厚25mm、板幅1000mmの板圧延材を、板厚1.6mmに圧延するシミュレーションを行う場合を例に挙げて説明する。第5圧延機を上流側圧延機1とし、第6圧延機を下流側圧延機2として、下流側圧延機2の圧延機位置における板圧延材5の蛇行を制御するシミュレーションを実施した。上流側圧延機1と下流側圧延機2との、板圧延材5の通板方向(X軸方向)の間の距離は5.5mである。蛇行計20による板圧延材5の測定位置から、下流側圧延機2の圧延機位置までの通板方向(X軸方向)の距離Lは2.75mである。板材速度(下流側圧延機2と蛇行計20との間を走行する板圧延材5の速度)vは9.49m/sである。制御周期Tは0.01sである。また、板材入側回転角速度ωに対する外乱dを5×10-6rad/sとした。
まず、第2の実施形態に対する計算例について説明する。
ここでは、下流側圧延機2のレベリング操作量Srを計算する際に、(11)式の右辺第3項である板材入側回転角速度ωに対する外乱dのフィードフォワード制御のみを適用する場合(fy=fe=0)のシミュレーションを行った。
比較例1では、特許文献1に記載された方法で、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とから、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]とを、(16)式を制御周期Tで離散化して表した2次元オブザーバで推定する。そして、2次元オブザーバで推定した板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]の推定値を(30)式に代入して、下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を計算する。そして、下流側圧延機2のレベリング操作量が下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]になるようにレベリング装置4を動作させるシミュレーションを実施する。比較例1では、これらを制御周期Tが経過するたびに繰り返し行う。
発明例1では、第2の実施形態と同様に、蛇行量測定値ys[k]から(21)式を用いて、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を計算する。そして、このようにして計算した圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]の計算値と、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とから、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]を、(27)式の1次元オブザーバで推定する。そして、1次元オブザーバで推定した板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]の推定値を(30)式に代入して、下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を計算する。そして、下流側圧延機2のレベリング操作量が下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]になるようにレベリング装置4を動作させるシミュレーションを実施する。比較例1では、これらを制御周期Tが経過するたびに繰り返し行う。
以上の点以外は、発明例1と比較例1とで同じ条件でシミュレーションを行った、
図7(a)、図8(a)は、板圧延材5の蛇行量と、上流側圧延機1の圧延終了時からの経過時間との関係を示す。図7(a)、図8(a)の実線は、圧延機位置蛇行量ycを示し、破線は、蛇行量測定値ysを示す。
図7(b)、図8(b)は、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)Sと、上流側圧延機1の圧延終了時からの経過時間との関係を示す。
図7(d)、図8(d)は、板材入側回転角速度ωに対する外乱dと、上流側圧延機1の圧延終了時からの経過時間との関係を示す。図7(d)、図8(d)の破線は真値を示し、実線は推定値を示す。
次に、第1の実施形態に対する計算例について説明する。
ここでは、下流側圧延機2のレベリング操作量Srを導出する際に、(11)式の右辺第3項である板材入側回転角速度ωに対する外乱dのフィードフォワードに加えて、右辺第1項である蛇行量測定値ysのフィードバック制御と、右辺第2項である圧延機位置蛇行量ycの時間微分値eのフィードバック制御も併用した場合のシミュレーションを行った。
比較例2では、特許文献1に記載された方法で、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とから、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]と、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]とを、(16)式を制御周期Tで離散化して表した2次元オブザーバで推定する。そして、蛇行量測定値ys[k]を(11)式の右辺第1項に、2次元オブザーバで推定した圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]の推定値を右辺第2項に、2次元オブザーバで推定した板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]の推定値を右辺第3項にそれぞれ代入して、下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を計算する。そして、下流側圧延機2のレベリング操作量が下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]になるようにレベリング装置4を動作させるシミュレーションを実施する。比較例2では、これらを制御周期Tが経過するたびに繰り返し行う。
発明例2では、第1の実施形態と同様に、蛇行量測定値ys[k]から(21)式を用いて、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]を計算する。そして、このようにして計算した圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]の計算値と、蛇行量測定値ys[k]と、下流側圧延機2のレベリング量(の実績値)S[k]とから、板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]を、(27)式の1次元オブザーバで推定する。そして、蛇行量測定値ys[k]を(11)式の右辺第1項に、圧延機位置蛇行量ycの時間微分値e[k]の計算値を右辺第2項に、1次元オブザーバで推定した板材入側回転角速度ωに対する外乱d[k]の推定値を右辺第3項にそれぞれ代入して、下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]を計算する。そして、下流側圧延機2のレベリング操作量が下流側圧延機2のレベリング操作量Sr[k]になるようにレベリング装置4を動作させるシミュレーションを実施する。発明例2では、これらを制御周期Tが経過するたびに繰り返し行う。
以上の点以外は、発明例2と比較例2とで同じ条件でシミュレーションを行った、
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (6)
- 圧延機と、
前記圧延機の上流側の位置に設置され、通板中の板圧延材の蛇行量を測定する蛇行計と、
を有し、圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量を制御する蛇行制御システムであって、
前記蛇行計により測定された前記板圧延材の蛇行量の測定値を擬似微分した値を、前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値として導出する擬似微分手段と、
前記擬似微分手段により導出された前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値を用いて、前記圧延機のレベリング操作量を導出する導出手段と、を有する、ことを特徴とする蛇行制御システム。 - 1次元オブザーバを用いて、前記擬似微分手段により導出された前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値と、前記蛇行計により測定された前記板圧延材の蛇行量の測定値と、前記圧延機のレベリング量の実績値とから、前記圧延機の入側において前記板圧延材に生じる回転角速度に対する外乱の推定値を導出する推定手段を更に有し、
前記導出手段は、前記推定手段により推定された前記外乱の推定値をフィードフォワードすることにより、当該外乱の推定値に基づいて前記圧延機のレベリング操作量を導出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の蛇行制御システム。 - 1次元オブザーバを用いて、前記擬似微分手段により導出された前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値と、前記蛇行計により測定された前記板圧延材の蛇行量の測定値と、前記圧延機のレベリング量の実績値とから、前記圧延機の入側において前記板圧延材に生じる回転角速度に対する外乱の推定値を導出する推定手段を更に有し、
前記導出手段は、前記推定手段により推定された前記外乱の推定値をフィードフォワードすると共に、前記蛇行計により測定された前記板圧延材の蛇行量の測定値と、前記擬似微分手段により導出された前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値とをフィードバックすることにより、当該外乱の推定値と、当該板圧延材の蛇行量の測定値と、当該圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値とに基づいて前記圧延機のレベリング操作量を導出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の蛇行制御システム。 - 圧延機と、
前記圧延機の上流側の位置に設置され、通板中の板圧延材の蛇行量を測定する蛇行計と、
を用いて、圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量を制御する蛇行制御方法であって、
前記蛇行計により測定された前記板圧延材の蛇行量の測定値を擬似微分した値を、前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値として導出する擬似微分工程と、
前記擬似微分工程により導出された前記圧延機位置における前記板圧延材の蛇行量の時間微分値の計算値を用いて、前記圧延機のレベリング操作量を導出する導出工程と、を有する、ことを特徴とする蛇行制御方法。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の蛇行制御システムの各手段としてコンピュータを機能させる、ことを特徴とするプログラム。
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