JP2020042084A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
Description
カタログや広告などのフルカラーのプリント物をトナーで作成するにあたり、使用されるトナーにはオリジナルに忠実な画像が得られるように色再現性が求められる。すなわち、フルカラーの画像形成では、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー画像を重ね合わせて目標の色調画像が再現され、忠実な色再現を実現する上でベースとなるこれらカラートナーが良好な色再現性を有することが求められていた。
そのため、カラートナーの色再現性向上を目的として、トナーに使用する種々の着色剤の検討がこれまでもなされてきた。
一般に、シアントナーに用いられる着色剤としては、銅フタロシアニン系の顔料が用いられているが、この銅フタロシアニン系の顔料は低明度のシアン領域の発色には優れているものの、高明度のシアン領域の発色が十分ではなかった。
高明度領域のシアンの発色性を改善する目的で様々な技術が開示されている。例えば、中心金属に置換基を有するフタロシアニン化合物を含有するシアン着色剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、シアン着色剤として亜鉛フタロシアニン化合物を使用した場合、亜鉛フタロシアニンはGreenの色相を持っており彩度が低く、多色印刷においては色域を満足するものではなかった(例えば、特許文献2参照。)。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
前記銅フタロシアニン化合物の1次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、
CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°における半値幅が、0.400〜0.550°の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
前記銅フタロシアニン化合物の1次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、
CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°におけるピーク強度比が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
A/(A+B)≧0.600 ・・・式(1)
[式中、Aは、2θ=7.0±0.1°のピーク強度を表す。Bは、2θ=9.1±0.2°のピーク強度を表す。]
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明では、銅フタロシアニン化合物の1次粒子の平均アスペクト比(Db/Da)が2.0以上であることにより、分散時間が長時間に及ぶことがなく、また、色相と着色力の両立を図ることができる。また、平均アスペクト比が6.0以下であることにより、分散の精度が落ちることがなく、色相角が過度にブルー側になることを抑制でき、所望の色相と着色力を得ることができる。
また、X線回折においてブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°における半値幅を0.400〜0.550°の範囲内とすることにより、結晶子サイズの大きい顔料の一部に結晶子サイズの小さい顔料が混在すると推定され、顔料の少ない含有量で高い彩度を得ることができ、前記銅フタロシアニン化合物はもともと結晶子サイズの大きい顔料であることから、十分な着色力を発揮することができるトナーとなる。
以上より、銅フタロシアニン化合物の一部の結晶子サイズが小さくなることで、安価な顔料を用いても高い彩度を持ち、色再現性に優れるトナーを提供することができる。また、もともとアスペクト比が大きな銅フタロシアニン化合物が十分な着色を発現し、色再現性と彩度向上が発現すると推察される。
また、本発明のトナーでは、前記平均アスペクト比が、2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°におけるピーク強度比が、前記式(1)の関係を満たすことを特徴とし、このようにピーク強度比が上記式(1)の関係を満たすことによっても、結晶子サイズの大きい顔料の一部に結晶子サイズの小さい顔料が混在すると推定され、顔料の少ない含有量で高い彩度を得ることができ、前記銅フタロシアニン化合物はもともと結晶子サイズの大きい顔料であることから、十分な着色力を発揮することができるトナーとなる。
なお、本発明において、「着色力」とは、一定量のトナーを記録媒体上に定着させた際に得られる画像の濃度の高さをいう。濃度が高いほど着色力が大きい。
A/(A+B)≧0.600 ・・・式(1)
[式中、Aは、2θ=7.0±0.1°のピーク強度を表す。Bは、2θ=9.1±0.2°のピーク強度を表す。]
これらの特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と銅フタロシアニン化合物を含有する着色剤とを含む静電荷像現像用トナーであって、前記銅フタロシアニン化合物の1次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、2.0〜6.0の範囲内であることを特徴とする。
前記個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)(以下、平均アスペクト比ともいう。)は、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遠心分離と上澄みの除去とを繰り返すことによりTHF可溶分を除去した後、不溶分をTHFに分散し、超音波分散させてから、電子顕微鏡で観察することで、平均アスペクト比を算出する。なお、トナーの結着樹脂のTHFの溶解性が悪く顕微鏡での観察が困難である場合や、銅フタロシアニン化合物がTHFに溶解し上澄みが着色してしまう場合には、他の溶媒を用いることもできる。
具体的には、電子顕微鏡の画像を画像解析装置(ルーゼックス(登録商標)、株式会社ニレコ製)にて解析し、シアン着色剤(銅フタロシアニン化合物)の1次粒子を取り囲む長方形のうち面積が最小となるもの(外接矩形)の長辺と短辺の長さの比の値から算出する。また、長辺の長さを1次粒子の長径(長軸の長さ)とし、短辺の長さを1次粒子の短径とする。5つ以上の視野について無作為に抽出した合計500個以上の長短比の値(アスペクト比)の平均値を算出し、これを個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)(平均アスペクト比)とする。
トナーの着色力を向上させる観点から、前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での1次粒子の平均アスペクト比は、3.0〜5.0の範囲内であることが好ましく、3.5〜4.5の範囲内であることがさらに好ましい。
(銅フタロシアニン化合物(シアン顔料)の抽出方法)
トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遠心分離と上澄みの除去を繰り返すことによりTHF可溶分を除去した後、不溶分を水分散系に転相し、超音波分散した後、X線回折スペクトルを測定し、ピークの解析を行う。
なお、前記水分散系としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウムを分散剤として、銅フタロシアニン化合物1に対して0.35の質量比(銅フタロシアニン化合物:分散剤=1:0.35)で添加した水系分散液を用いた。当該水系分散液の全質量に対して、銅フタロシアニン化合物が12.5質量%となるように調製した。
また、トナーの結着樹脂のTHFの溶解性が悪くX線回折パターンを測定が困難である場合や、銅フタロシアニン化合物がTHFに溶解し上澄みが着色してしまう場合には他の溶媒を用いることもできる。
・XRD測定
装置:理学電機製RINT−TTR2
X線:Cu−Kα 50kV−300mA(15kW)
光学系:平行ビーム法(透過法)
アタッチメント:キャピラリ回転試料台
スリット条件:発散スリット0.80mm、散乱スリット開放、受光スリット1.0mm
走査範囲:2〜45°(ステップ幅:0.02°)
試料調製:試料を内径1mmφのガラスキャピラリに充填
ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°における半値幅が前記範囲内であれば、結晶子サイズの大きい顔料の一部に結晶子サイズの小さい顔料が混在した状態と推定され、色域を確保しつつ高い着色力を得ることができる。あまり結晶子サイズが小さくなると色域の確保が困難となることから、好ましくは0.400〜0.500°の範囲内である。
A/(A+B)≧0.600 ・・・式(1)
[式中、Aは、2θ=7.0±0.1°のピーク強度を表す。Bは、2θ=9.1±0.2°のピーク強度を表す。]
また、前記ピーク強度比が前記式(1)の関係を満たすための手段としては、組成的に2種類の銅フタロシアニン化合物を用いるのではなく、1種類の銅フタロシアニン化合物を用いて、当該銅フタロシアニン化合物をビーズミルの充填率が高いもので分散すること、等が挙げられる。
また、本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂及び前記銅フタロシアニン化合物を含有する着色剤を含み、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)及び荷電制御剤などの他の構成成分を含んでもよい。
以下、本発明のトナーを構成する各成分について説明する。
本発明に係るトナーを構成する結着樹脂は、非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)及び/又はヒドロキシカルボン酸と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な融解ピークを有する樹脂をいう。明確な融解ピークとは、具体的には、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
また、結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2の範囲内である。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070−1992の記載に従う。
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
式(1) A=〔(C−B)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
すなわち、装置「HLC−8320」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ−L」及び「TSKgel SuperHZM−M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流す。測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得る。この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。
検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、5〜20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%の範囲内である。結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が5質量%以上であることにより、十分な低温定着性を確実に得ることができる。また、結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が20質量%以下であることにより、トナーの製造においてトナーに結晶性ポリエステル樹脂を確実に導入することができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に制限されない。当該重合セグメントの形成に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類ならびにこれらの単量体の重縮合条件は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など;
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル(n−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など;
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸双方を包含する。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど;
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど;
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど;
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど;
(7)その他の単量体
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂100質量%に対して、60〜99質量%の範囲内であることが好ましく、70〜98質量%の範囲内であることがより好ましい。
両反応性単量体の使用量は、低温定着性を向上させる観点から、スチレン・アクリル重合セグメントを構成する単量体の総量を100質量%として1〜20質量%の範囲内が好ましい。
(B)スチレン・アクリル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン・アクリル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法;
(C)結晶性ポリエステル重合セグメント及びスチレン・アクリル重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
上記(A)〜(C)の形成方法の中でも、(A)の方法は、生産工程を簡素化できる等の観点から好ましい。
本発明において、非晶性樹脂としては非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂を用いることができる。
非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められないものをいう。つまり、通常は融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピーク)を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。より具体的には、非晶性樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、35〜70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50〜65℃の範囲内である。非晶性樹脂のTgが35℃以上であることにより、トナーに十分な熱的強度を与えることができ、十分な耐熱保管性が得られる。また、非晶性樹脂のTgが70℃以下であることにより、十分な低温定着性が確実に得られる。
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5〜45mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30mgKOH/gの範囲内である。酸価が45mgKOH/g以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行い易い点で好ましい。なお、酸価は、結晶性ポリエステル樹脂の説明にて記載の方法と同様にして求めることができる。
非晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂を使用することができる。非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸や1,2,5−ベンゼントリカルボン酸等のトリメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリト酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられるが、トリメリット酸、その塩、低級アルキルエステル又は酸無水物が特に好適である。
また、多価カルボン酸成分としては、前述の化合物の他に、スルホン酸基を有するジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。このような範囲であると得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
非晶性ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の非晶性ビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・アクリル樹脂」とも称する)が好ましい。したがって、以下では、非晶性ビニル樹脂としてのスチレン・アクリル樹脂について説明する。
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
さらに、スチレン・アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が付加重合されてもよい。
非晶性ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の40〜95質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60〜90質量%の範囲内である。このような範囲であると得られるトナーが樹脂設計の自由度が高く、帯電制御が容易である。
本発明に係る着色剤は、銅フタロシアニン化合物を含有する。そして、前記したように、銅フタロシアニン化合物のトナー中での1次粒子の平均アスペクト比の値が2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°における半値幅が、0.400〜0.550°の範囲内である。又は、前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での1次粒子の平均アスペクト比の値が2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°におけるピーク強度比が、下記式(1)の関係を満たす。
A/(A+B)≧0.600 ・・・式(1)
[式中、Aは、2θ=7.0±0.1°のピーク強度を表す。Bは、2θ=9.1±0.2°のピーク強度を表す。]
また、銅フタロシアニン化合物は、無置換の銅フタロシアニン化合物のみを含有してもよいし、置換の銅フタロシアニン化合物のみを含有してもよいし、無置換の銅フタロシアニン化合物及び置換の銅フタロシアニン化合物の両方を含有してもよい。
銅フタロシアニン化合物が無置換の銅フタロシアニン化合物及び置換の銅フタロシアニン化合物を同時に含む場合、置換の銅フタロシアニン化合物が銅フタロシアニン化合物の結晶構造を乱す部分となり、後述するソルベントソルトミリングなどによる着色剤(銅フタロシアニン化合物)の1次粒子の作製時に1次粒径を小さくすることや粒径分布の制御が容易になるため、着色力及び色再現性等の制御がより容易に行えるため好ましい。
また、置換の銅フタロシアニン化合物を含有することで、置換の銅フタロシアニン化合物の置換基(官能基)により結着樹脂側との相溶性が良くなり、結着樹脂中に取り込まれやすくなる(シアン顔料(着色剤)のトナー全体への分散性が良くなる)点でも優れている。
P−(Y)m ・・(I)
P−(A−Z)n ・・・(II)
[式中、Pは銅フタロシアニン環のn個の水素を除いた残基を表す。Yは第1〜3級アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基又はそれと塩基若しくは金属との塩を表す。Aは2価の連結基を表す。Zは第1〜2級アミノ基の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、又は窒素を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基を表す。mは1〜4の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。]
前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での1次粒子の個数平均長径が70nm以上であることにより、トナー作製時に着色剤粒子が凝集することをより確実に抑制でき、着色力も強くなり、耐光性も向上するため好ましい。また、前記平均長径が220nm以下であることにより、色相角が過度にブルー側になることを抑制でき、かつ着色剤粒子と結着樹脂との接触面積も大きくなることで、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合、結晶性ポリエステル樹脂のドメイン構造の変化によると考えられる帯電性の制御も確実に行われるため好ましい。
銅フタロシアニン化合物のトナー中での含有量が、1.0〜4.0質量%の範囲内であることにより、含有量を低減しつつ、少ない量でも着色力が損なわれることがない。また、上記のような少ない量とすることでトナー中の樹脂本来の特性を活かすことができ、同じ樹脂構成とした場合でも、銅フタロシアニン化合物を用いることで低温定着を実現することができる。
(銅フタロシアニン化合物の製造方法)
銅フタロシアニン化合物の製造方法としては、例えばワイラー法と呼ばれる無水フタル酸と尿素と金属塩とを反応させ金属フタロシアニンを合成する方法や、フタロニトリル法と呼ばれるフタロニトリルと金属塩とを反応させ金属フタロシアニンを合成する方法を用いることができる。
また、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、イミド、エステルの如き誘導体の存在下で、無水フタル酸と尿素と金属塩とを反応させ金属フタロシアニンを合成する方法(特開昭61−203175号公報参照)や、パラフィン系炭化水素溶媒とナフテン系炭化水素溶媒とを併用して金属フタロシアニンを合成する方法(特開平8−27388号公報参照)を用いることもできる。
無機塩の使用量は、粗顔料1質量部に対して6〜20質量部の範囲内とするのが好ましく、8〜15質量部の範囲内とするのがより好ましい。
当該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜15質量部が好ましい。
無置換の銅フタロシアニン化合物の粗顔料と置換の銅フタロシアニン化合物とを併用してソルベントソルトミリングして得た銅フタロシアニン化合物は、無置換の銅フタロシアニン化合物と置換の銅フタロシアニン化合物とを含む銅フタロシアニン化合物となる。そして無置換の銅フタロシアニン化合物と置換の銅フタロシアニン化合物とを含む全体として前記平均アスペクト比の範囲内となっている。
ソルベントソルトミリング時の混練時間以外の条件を一定とした場合においては、前記混練時間を調整することにより、アスペクト比及び軸長を制御することができる。具体的には、混練時間が長くなるほど、長軸の長さが短くなり、平均アスペクト比が小さくなる。
また、本発明に係るトナーは、特に、彩度や色相角を所望の範囲に制御することが求められるシアントナーとして好ましく用いられる。
本発明のトナーは、離型剤を含有し得る。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が60〜100℃の範囲内のものを用いることが好ましい。また、離型剤としては、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂の融点Mp1に対して、(Mp1−10)℃〜(Mp1+20)℃程度の融点を有するものを用いることが好ましい。
離型剤のトナーへの導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる粒子を非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点より高い温度に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させる。この溶液を、界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂粒子の分散液を調製することができる。
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー中に0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%の範囲内である。
トナー母体粒子の表面には、流動性や帯電性を制御する目的で、外添剤を付着させる。
外添剤としては、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、及び酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でも又は2種以上を併用してもよい。
ゾル・ゲル法により形成されたシリカ粒子の個数平均1次粒径は、70〜150nmの範囲内であることが好ましい。個数平均1次粒径がこのような範囲内にあるシリカ粒子は、他の外添剤に比べて粒径が大きいのでスペーサーとしての役割を有し、その他の粒径の小さい外添剤が現像機中で撹拌混合されることによって、トナー母体粒子中に埋め込まれるのを防止する効果を有し、また、トナー母体粒子同士が融着するのを防止する効果を有している。
外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
これら外添剤の添加量の総量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1〜10質量%の範囲内が好ましく、1〜5質量%の範囲内がより好ましい。
コア・シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて、トナーの断面の構造を観察することによって確認することができる。
本発明のトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3〜8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜8μmの範囲内である。
この平均粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径とされる。
本発明のトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
具体的には、試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−3000」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
トナーの軟化点は、当該トナーに低温定着性を得る観点から、80〜120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは90〜110℃の範囲内である。
トナーの軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
本発明に係るトナーは、以下の手順を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここでは一例を開示することに過ぎず、本発明は、以下の製造方法の例に制限されることがない。
本発明のトナーは、水系媒体中で作製される湿式法によって製造されることが好ましく、例えば乳化凝集法などによって製造することができる。
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂粒子の水性分散液を必要に応じてその他のトナー構成成分の粒子の水性分散液と混合し、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
以下では、トナーの製造方法の一例として、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を用いた場合について説明する。
このようなトナーの製造方法の具体的な一例としては、
(1)着色剤を水系媒体中に分散させ、着色剤粒子分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程;
(2)結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させ、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製する結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程;
(3)必要に応じて離型剤及び荷電制御剤などのトナー構成成分が含有された非晶性樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂)を水系媒体中に分散させ、非晶性樹脂粒子分散液(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性ビニル樹脂粒子分散液)を調製する非晶性樹脂粒子分散液調製工程;
(4)上記(1)〜(3)で得られた各分散液を用いて、非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集、融着させて凝集粒子を形成する凝集、融着工程;
(5)凝集粒子を熱エネルギーにより熟成して形状調整を行い、トナー母体粒子分散液を作製する熟成工程;
(6)トナー母体粒子分散液を冷却する冷却工程;
(7)冷却したトナー母体粒子分散液より当該トナー母体粒子を固液分離し、トナー母体粒子表面より界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程;
(8)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程;
(9)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添処理工程;
から構成される。
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
着色剤は、後述の非晶性樹脂粒子分散液調製工程においてミニエマルション法を用いてあらかじめ非晶性樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー中に導入してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を界面活性剤が添加された水系媒体中に超音波分散法やビーズミル分散法などにより分散させる水系直接分散法、結晶性ポリエステル樹脂を溶剤中に溶解させ、これを水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、溶剤を除去する溶解乳化脱溶法、転相乳化法などが挙げられる。
この結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程において得られる結晶性ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA−EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
非晶性樹脂が非晶性ポリエステル樹脂である場合は、合成した非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させることによって、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製することができる。非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法と同様の方法を用いることができる。
非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体を加え、撹拌を行いつつ所望の重合温度で水溶性重合開始剤を加え、重合を行うことにより、非晶性ビニル樹脂粒子分散液を調製することができる。
また、同様に非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体に対して、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することもできる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して乳化(液滴の形成)する処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において形成させる非晶性樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合、第3段重合)する方法を採用することができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。
また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
非晶性樹脂(特には非晶性ビニル樹脂)粒子分散液調製工程においては、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA−EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
この工程は、上記の工程で形成した分散液に含まれる着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中に非晶性樹脂粒子分散液、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの粒子を凝集、融着させる。
着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂の融解ピーク温度以上の温度に加熱することによって、着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子などの粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、少量で凝集を進めることが可能であり、凝集性の制御も容易であることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
この工程は、具体的には、凝集粒子を含む系を加熱撹拌することにより、凝集粒子の形状が所望の平均円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間を制御して、トナー母体粒子を形成する工程である。この工程においては、熱エネルギー(加熱)によりトナー母体粒子の形状制御を行うことが好ましい。
冷却工程、濾過、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に、外添剤を添加、混合する工程である。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15〜100μmの範囲内のものが好ましく、25〜80μmの範囲内のものがより好ましい。
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができ、このような画像形成方法が行われる画像形成装置としては、例えば静電荷像担持体である感光体と、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体の表面に一様な電位を与える帯電手段と、一様に帯電された感光体の表面上に画像データに基づいて像露光を行うことにより静電荷像を形成させる露光手段と、トナーを感光体の表面に搬送して前記静電荷像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を必要に応じて中間転写体を介して転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を加熱定着させる定着手段を有するものを用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着温度(定着部材の表面温度)が130〜200℃とされる比較的低温の画像形成装置において好適に用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着速度(通紙速度)が50〜700mm/sec、好ましくは300〜700mm/secとされる速度範囲の画像形成装置において好適に用いることができる。
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下の実施例で使用する化合物を下記に示す。
・銅フタロシアニン化合物P1:C.I.Pigment Blue15:4
・銅フタロシアニン化合物P2〜P5:アスペクト比の異なるC.I.Pigment Blue15:3
<シアン着色剤粒子分散液D1の調製>
n−ドデシル硫酸ナトリウム13質量部をイオン交換水77質量部に投入し、溶解・撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、シアントナーの着色剤として銅フタロシアニン化合物P1 10質量部を徐々に添加した。添加完了後、予備分散としてジルコニアビーズ(φ0.8mm)を充填率75%に設定した「SCミル」(日本コークス工業株式会社製)により分散処理を行い、さらに本分散としてジルコニアビーズ(φ0.3mm)を充填率75%に設定した「SCミル」により分散処理を行って、シアン着色剤粒子の水系分散液D1を調製した。
得られたシアン着色剤粒子分散液D1中の着色剤粒子のメジアン径D50を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−EX150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、140nmであった。また、シアン着色剤粒子分散液D1のpH(25℃)は9.12であった。
前記シアン着色剤粒子分散液D1の調製において、銅フタロシアニン化合物P1をP2に代えた以外は同様にして、シアン着色剤粒子分散液D2を調製した。また、得られたシアン着色剤粒子分散液D2のメジアン径D50を測定し、結果を表Iに示す。
n−ドデシル硫酸ナトリウム13質量部をイオン交換水77質量部に投入し、溶解・撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、シアントナーの着色剤として銅フタロシアニン化合物P4 10質量部を徐々に添加した。添加完了後、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)を充填率75%に設定した「SCミル」(日本コークス工業株式会社製)により分散処理を行って、シアン着色剤粒子の水系分散液D4を調製した。得られたシアン着色剤粒子分散液D4中の着色剤粒子のメジアン径D50を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−EX150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、156nmであった。また、シアン着色剤粒子分散液D4のpH(25℃)は7.55であった。
前記シアン着色剤粒子分散液D1の調製において、銅フタロシアニン化合物P1をそれぞれP3及びP5に代え、さらに、予備分散として、ジルコニアビーズの代わりに超音波を用いた以外は同様にして、シアン着色剤粒子分散液D3及びD5を調製した。また、得られたシアン着色剤粒子分散液D3及びD5中の着色剤粒子のメジアン径D50を測定し、結果を表Iに示す。
<非晶性ビニル樹脂v1の合成>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた後、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とした。
得られた溶液に下記の成分を下記の量で混合してなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、その後、80℃で2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子x1が分散されてなる樹脂微粒子分散液X1を調製した。
スチレン 480g
n−ブチルアクリレート 250g
メタクリル酸 68g
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7gをイオン交換水1460mLに溶解させた溶液を仕込み、88℃に加熱した。
得られた溶液に、樹脂微粒子分散液X1を樹脂微粒子x1で80gとなる量で添加し、また、下記成分を下記の量で含有する80℃の単量体溶液を上記溶液に添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社製、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により1時間混合分散させて、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
スチレン 245g
n−ブチルアクリレート 95g
メタクリル酸 35g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 4.0g
次いで、得られた分散液に、過硫酸カリウム6gをイオン交換水200mLに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃で1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子x2が分散されてなる樹脂微粒子分散液X2を調製した。
上記樹脂微粒子分散液X2に、過硫酸カリウム11gをイオン交換水400mLに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記成分を下記の量で含有する単量体組成物を上記溶液に1時間かけて滴下し、滴下後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った。その後、得られた分散液を28℃まで冷却した。こうして、非晶性ビニル系樹脂である非晶性ビニル樹脂v1を調製した。
スチレン 405g
n−ブチルアクリレート 160g
メタクリル酸 33g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 10g
また、上記非晶性ビニル樹脂v1の分散液を非晶性ビニル樹脂v1が30質量%となるようにイオン交換水で希釈した水系分散液をV1とした。水系分散液V1中の非晶性樹脂v1粒子の体積基準のメジアン径D50を測定したところ、215nmであった。また、非晶性ビニル樹脂v1の重量平均分子量Mwを測定したところ、30800であった。
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた反応容器に、下記の成分を下記の量で仕込んだ。「BPA−PO」は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物を表し、「BPO−EO」は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物を表す。また、フマル酸及びテレフタル酸は、多価カルボン酸に該当し、BPA−PO及びBPO−EOは、多価アルコールに該当する。
フマル酸(FA) 1.8質量部
テレフタル酸(TA) 29.2質量部
BPA−PO 58.2質量部
BPO−EO 6.7質量部
得られた混合物の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、当該混合物が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒として、多価カルボン酸全量に対して0.006質量%となる量のジブチルスズオキシドを投入し、さらに、生成する水を留去しながら上記混合物の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、240℃に到達した時点で上記混合物にトリメリット酸1.6質量部を添加した。その後、さらに240℃に維持した状態で生成物の酸価が21mgKOH/gとなるまで脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、非晶性ポリエステルである非晶性ポリエステル樹脂a1を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂a1の数平均分子量(Mn)は3600であり、ガラス転移点(Tg)は62℃であった。非晶性ポリエステル樹脂a1の酸価、Mn及びTgは、前述のとおりに測定した。
撹拌動力を与えるアンカー翼を備える反応容器に、メチルエチルケトン240質量部及びイソプロピルアルコール(IPA)60質量部を添加し、窒素を反応容器内に送って反応容器内の空気を窒素に置換した。
次いで、反応容器内の混合液をオイルバス装置により60℃に加熱しながら、300質量部の非晶性ポリエステル樹脂a1を当該混合液にゆっくりと添加し、撹拌しながら溶解させた。
次いで、得られた混合液に20質量部の10%アンモニア水を添加したのち、得られた混合液に撹拌しながら定量ポンプを用いて脱イオン水1500質量部を投入した。得られた混合液が乳白色を呈し、かつ、撹拌粘度が低下することにより、乳化が行われたことを確認した。
その後、得られた乳化液を、遠心力に基づく差圧によって汲み上げ、反応槽内の壁面上に濡れ壁を形成する撹拌翼、還流装置及び真空ポンプによる減圧装置が備えられたセパラブルフラスコへ移送し、反応槽内の壁温度を58℃とし、かつ減圧下の条件で撹拌を継続しながら乳化液中の溶媒及び分散媒を留去した。得られた分散液が1000質量部に達した時点を当該留去の終点とし、反応槽内圧を常圧にして、撹拌しながら分散液を常温まで冷却し、固形分率30質量%の非晶性ポリエステル樹脂a1粒子の水系分散液A1を得た。水系分散液A1中に分散する樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)は162nmであった。
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた反応容器に、下記成分を下記の量で仕込んだ。セバシン酸は、多価カルボン酸に該当する。
セバシン酸(SA) 205質量部
エチレングリコール 61質量部
上記の混合物の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、当該混合物が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒として、多価カルボン酸全量に対して0.006質量%となる量のTi(OBu)4を上記反応容器に投入した。さらに、生成する水を留去しながら上記混合物の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、さらに240℃に維持した状態で生成物の酸価が20mgKOH/gとなるまで脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂b1を得た。
撹拌動力を与えるアンカー翼を備える反応容器に、メチルエチルケトン300質量部を添加し、窒素を反応容器内に送って反応容器内の空気を窒素に置換した。
次いで、反応容器内のメチルエチルケトンをオイルバス装置により70℃に加熱しながら、300質量部の非晶性ポリエステル樹脂b1を当該混合液にゆっくりと添加し、撹拌しながら溶解させた。
次いで、得られた混合液に20質量部の10%アンモニア水を添加したのち、得られた混合液に撹拌しながら定量ポンプを用いて脱イオン水1500質量部を投入した。得られた混合液が乳白色を呈し、かつ、撹拌粘度が低下することにより、乳化が行われたことを確認した。
その後、得られた乳化液を、遠心力に基づく差圧によって汲み上げ、反応槽内の壁面上に濡れ壁を形成する撹拌翼、還流装置及び真空ポンプによる減圧装置が備えられたセパラブルフラスコへ移送し、反応槽内の壁温度を58℃とし、かつ減圧下の条件で撹拌を継続しながら乳化液中の溶媒及び分散媒を留去し、得られた分散液が1000質量部に達した時点を当該留去の終点とし、反応槽内圧を常圧にして、撹拌しながら分散液を常温まで冷却し、固形分率30質量%の非晶性ポリエステル樹脂b1粒子の水系分散液B1を得た。
「ニッサンエレクトールWEP−3」(日油株式会社製、融点(Tm):73℃、「ニッサンエレクトール」及び「WEP」はいずれも同社の登録商標)50質量部、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム5質量部及びイオン交換水195質量部を混合し、90℃に加熱して、ホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理を行うことにより、離型剤粒子の水系分散液W1を調製した。水系分散液W1中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径D50は170nmであった。「ニッサンエレクトールWEP−3」はベヘン酸ベヘニル(BB)を主成分とする精製品である。
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を備えた反応容器に、2333質量部の非晶性ビニル樹脂粒子の水系分散液V1(固形分で700質量部)、トナー中に占める量が3.3質量%になるようなシアン着色剤粒子分散液D1、375質量部の離型剤粒子の水系分散液W1(固形分で75質量部)及び942質量部のイオン交換水を投入し、撹拌しながら、得られた混合液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して当該混合液のpHを10(20℃)に調整した。
次いで、上記混合液に、塩化マグネシウム160質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を10質量部/分の速度で添加した。5分間放置した後に得られた混合液の昇温を開始し、60分間かけて80℃まで昇温した。昇温完了後5分間放置した混合液に267質量部の結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液B1(固形分で80質量部)を25質量部/分の速度で添加した。15分間放置した後に、凝集反応を開始した。この凝集反応の開始後、定期的にサンプリングを行い、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて、生成する凝集粒子の体積基準のメジアン径D50を測定し、必要に応じて撹拌速度を低下させながら、D50が6.3μmになるまで撹拌を継続し、凝集反応を継続した。
そして、D50が6.3μmになった時点で、撹拌速度を再び上げ、333質量部の非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液A1(固形分で100質量部)を25質量部/分の速度で添加した。
定期的にサンプリングを行い、遠心分離の上澄みが透明になったことを確認した後、塩化ナトリウム300質量部をイオン交換水1200質量部に溶解させた水溶液を上記混合液に添加し、当該混合液の温度を85℃として撹拌を継続し、当該混合液中の粒子の平均円形度が、フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」(シスメックス株式会社製、「FPIA」は同社の登録商標)による測定で0.952に達した時点で、6℃/分の条件で30℃にまで上記混合液を冷却して凝集反応を停止させ、トナー母体粒子の分散液を得た。冷却後のトナー母体粒子の粒径(D50)は6.3μmであり、平均円形度は0.952であった。
得られたトナー母体粒子の分散液をバスケット型遠心分離機「MARK III 型式番号60×40」(株式会社松本機械製作所製)を用いて固液分離し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が15μS/cmになるまで洗浄と固液分離を繰り返し、洗浄後のケーキを、「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に少しずつ供給し、温度40℃、湿度20%RHの気流を吹き付けることによって水分量が2.0質量%程度となるまで乾燥処理し、24℃に冷却した。その後、上記ケーキを「振動流動層装置」(中央化工機株式会社製)に移し、当該ケーキの温度が40℃となる温度で2時間当該ケーキを乾燥させることによって、水分量が0.5%以下であるトナー母体粒子1Xを得た。
得られたトナー母体粒子1Xに、疎水性シリカ1質量%及び疎水性酸化チタン1.2質量%を添加し、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業株式会社製)により回転翼の周速を24mm/秒で20分間混合し、その後、400メッシュの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー粒子を製造した。
また、トナー粒子に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合した。こうして、二成分現像剤であるトナーT1を製造した。
前記トナーT1の製造において、シアン着色剤粒子分散液D1の種類及び添加量(トナー中の顔料添加量)を下記表IIに示すとおりに変更した以外は、前記トナーT1の製造と同様にしてトナーT2〜T5を製造した。
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定法>
上記各樹脂のMw及びMnは、以下の方法によって求められる。
装置「HLC−8320GPC」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ−L」及び「TSKgel SuperHZM−M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流し、測定試料(例えば、非晶性ビニル樹脂a1)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにTHFに溶解させる。
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。測定試料の有する分子量分布は、単分散のポリスチレン標準粒子を10点用いて測定した検量線を用いて算出される。
上記各樹脂のガラス転移点Tgは、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定される。すなわち、測定試料(非晶性樹脂)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度−10〜120℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、昇温−降温−昇温の温度制御を行い、その2回目の昇温におけるデータを基に解析を行う。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移温度とする。
酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070−1992に準じて下記手順により測定される。
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070−1992の記載にしたがう。
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
式(1) A=〔(B−C)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いてDSCによって測定することができる。
具体的には、試料をアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/分の昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
上記で得られた各トナーをTHFに溶解し、遠心分離と上澄みの除去とを繰り返すことによりTHF可溶分を除去した後、不溶分をTHFに分散し、超音波分散させてから、電子顕微鏡で観察することで、平均アスペクト比を算出した。なお、トナーの結着樹脂のTHFの溶解性が悪く顕微鏡での観察が困難である場合や、銅フタロシアニン化合物がTHFに溶解し上澄みが着色してしまう場合には、他の溶媒を用いることもできる。
具体的には、電子顕微鏡の画像を画像解析装置(ルーゼックス(登録商標)、株式会社ニレコ製)にて解析し、シアン着色剤(銅フタロシアニン化合物)の1次粒子を取り囲む長方形のうち面積が最小となるもの(外接矩形)の長辺と短辺の長さの比の値から算出した。また、長辺の長さを1次粒子の長径(長軸の長さ)とし、短辺の長さを1次粒子の短径とする。5つ以上の視野について無作為に抽出した合計500個以上の長短比の値(アスペクト比)の平均値を算出し、個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)とした。
(銅フタロシアニン化合物(シアン顔料)の抽出方法)
上記で得られた各トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遠心分離と上澄みの除去を繰り返すことによりTHF可溶分を除去した後、不溶分をTHFに分散し、超音波分散(調査し出力を記載する)させてから、X線回折スペクトルを測定し、ピークの解析を行う。なお、トナーの結着樹脂のTHFの溶解性が悪くX線回折パターンを測定が困難である場合や、銅フタロシアニン化合物がTHFに溶解し上澄みが着色してしまう場合には他の溶媒を用いることもできる。
トナーのX線回折スペクトルは、X線としてCuKα線であって、下記条件で測定し、ブラッグ各2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ2θ=9.1±0.2°における半値幅を算出した。さらに、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°におけるピーク強度比を算出した。
・XRD測定
装置:理学電機製RINT−TTR2
X線:Cu−Kα 50kV−300mA(15kW)
光学系:平行ビーム法(透過法)
アタッチメント:キャピラリ回転試料台
スリット条件:発散スリット0.80mm、散乱スリット開放、受光スリット1.0mm
走査範囲:2〜45°(ステップ幅:0.02°)
試料調製:試料を内径1mmφのガラスキャピラリに充填
<色相角及び彩度>
市販のフルカラー高速複合機「bizhub PRO(登録商標) C8000(コニカミノルタ社製)」を、620mm/sec(約130枚/分)に設定できるように改造した装置を用い、温度20℃、相対湿度50%RHの環境下において、紙上のトナーの付着量を、シアントナー4.0gになった時の画像(縦2cm×横2cmのサイズのベタ画像パッチ)を定着し色域を評価した。
なお、評価に用いた転写紙は「PODグロスコート紙128g/m2(王子製紙株式会社製)」を用いた。また、定着温度は下記低温定着性での評価結果で出た最低温度から+10℃での温度で定着した。
色相角(色相角度)と彩度を算出するにあたり、「L*a*b*表色系」という有用な手段を用いた。L*軸方向が明度を示し、a*軸方向が赤−緑方向の色相を表し、b*軸方向が黄−青方向の色相を示すものである。a*及びb*は、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD50光源、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、UV−cutフィルターを使用し、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定するものとする。
なお、色相角h及び彩度C*は、次式にしたがって算出し評価した。
h=tan−1(b*/a*)
C*=[(a*)2+(b*)2]1/2
その後、上記で得られた定着画像のソリッド部の画像濃度(ID)を反射濃度計(商品名:「X−Rite model 404」、X−Rite社製)により測定し、以下の3段階のランク評価を行った。
(ランク評価)
◎:画像濃度1.25以上
○:画像濃度1.20以上1.25未満
×:画像濃度1.20未満
画像濃度の数値が高いものほど、着色力(画像濃度)が高いことを示す。
低温定着性の評価は、前記色相角及び彩度の評価に用いた装置を、通紙時の定着ニップ直後の加熱ベルトの温度を測定可能とし、かつ用紙の坪量に関わらず定着の線速を調整可能となるようにさらに改造した改造機を用いて行った。常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下において、通紙速度620mm/secの速度で「PODグロスコート紙128g/m2(王子製紙株式会社製)」を縦送りで搬送し、当該紙上に搬送方向に対して垂直方向に10mm幅のベタ帯状画像を有するA4画像を100枚連続プリントして定着させる定着実験を、定着温度を100℃、105℃・・・と5℃刻みで210℃まで増加させるよう設定して行った。
各定着温度での定着実験において、スタート時の温度低下が起こった際の定着温度の最低温度で印刷された画像で定着性の評価を行い、当該最低温度をその設定温度での定着温度とした。定着オフセットによる画像汚れが目視で確認されない上記画像のうち、最低の定着温度の画像の定着温度を最低定着温度とした。このとき紙上のトナーの付着量は、シアントナー10.0gになった時の画像を定着した。
最低定着温度が130℃未満であれば低温定着性に優れる優良なトナーであり、130℃以上140℃未満であれば定着プロセスの制御により使用可能となるため許容可能であるが、140℃以上では、目標とする通紙速度では十分に定着しておらず、実用上問題があるレベルとなる。
(ランク評価)
◎:最低定着温度130℃未満
○:最低定着温度130℃以上140℃未満
×:最低定着温度140℃以上
前記トナーの製造時に添加する、トナー中の銅フタロシアニン化合物の添加量について、以下のとおり評価した。
銅フタロシアニン化合物の添加量が、3.5質量%未満であれば低コスト性に優れかつ低温定着性にも良好なトナーであり、3.5質量%以上4.0質量%未満であれば、低コスト性に寄与でき、4.0質量%以上では、低コストと低温定着性にほとんど寄与できないレベルとなる。
(ランク評価)
◎:トナー中の銅フタロシアニン化合物の添加量が3.5質量%未満
○:トナー中の銅フタロシアニン化合物の添加量が3.5質量%以上4.0質量%未満
×:トナー中の銅フタロシアニン化合物の添加量が4.0質量%以上
Claims (3)
- 少なくとも結着樹脂と銅フタロシアニン化合物を含有する着色剤とを含む静電荷像現像用トナーであって、
前記銅フタロシアニン化合物の1次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、
CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°における半値幅が、0.400〜0.550°の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 少なくとも結着樹脂と銅フタロシアニン化合物を含有する着色剤とを含む静電荷像現像用トナーであって、
前記銅フタロシアニン化合物の1次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、2.0〜6.0の範囲内であり、かつ、
CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角2θ=7.0±0.1°と、ブラッグ角2θ=9.1±0.2°におけるピーク強度比が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
A/(A+B)≧0.600 ・・・式(1)
[式中、Aは、2θ=7.0±0.1°のピーク強度を表す。Bは、2θ=9.1±0.2°のピーク強度を表す。] - 前記銅フタロシアニン化合物が、無置換の銅フタロシアニン化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
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