JP2020041258A - 繊維製品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量性に優れるだけでなく、優れた品質を備えた繊維製品の製造方法を提供する。【解決手段】水に不溶でアルカリ溶液に可溶な第一糸と、水及びアルカリ溶液の両方に不溶で、撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数が3以上である第二糸とを含み、前記第一糸と前記第二糸とを撚り合わせた糸である複合撚糸を形成する。経糸、緯糸、及びパイル糸を含むパイル地であり、少なくとも前記パイル糸が前記複合撚糸である生地を形成する。前記生地中の前記第一糸をアルカリ溶液で完全に溶解することによって、前記生地から前記第一糸を除去する。前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で溶解した後において、前記生地中の前記パイル糸に撚りがかかっている。【選択図】図1

Description

本発明は、繊維製品の製造方法に関し、詳しくは、第一糸と、第一糸とは異なる第二糸とを含む複合撚糸から生地を形成し、この生地から第一糸を溶解させる繊維製品の製造方法に関する。
従来、第一糸と、第一糸とは異なる第二糸を含む複合撚糸から生地を形成し、この第一糸を溶解させて除去することにより、軽量性に優れた繊維製品を製造することが行われている。
例えば、特許文献1では、水に可溶な水溶性糸と紡績糸との複合撚糸から生地を形成した後、水溶性糸を水で溶解して除去する繊維製品の製造方法が提案されている。
特開2007−332506号公報
染色前の生地には不純物が付着しているが、第一糸として水溶性糸を使用すると、製織時に付着した糊を取除く糊抜工程等において、不純物を除去する前に水溶性糸が溶解してしまう。この場合、第二糸の形状、性質が安定しない。このため、繊維製品の風合、吸水性等の品質を十分に確保することができない。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、軽量性に優れるだけでなく、優れた品質を備えた繊維製品の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る繊維製品の製造方法では、水に不溶でアルカリ溶液に可溶な第一糸と、水及びアルカリ溶液の両方に不溶で、撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数が3以上である第二糸とを含み、前記第一糸と前記第二糸とを撚り合わせた糸である複合撚糸を形成し、経糸、緯糸、及びパイル糸を含むパイル地であり、少なくとも前記パイル糸が前記複合撚糸である生地を形成し、前記生地をアルカリ溶液に浸漬し、前記生地中の前記第一糸をアルカリ溶液で完全に溶解することによって前記生地から前記第一糸を除去し、前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で溶解した後において、前記生地中の前記パイル糸に撚りがかかっている。
本発明の繊維製品の製造方法では、軽量性に優れるだけでなく、優れた品質を備えた繊維製品を製造することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維製品の生地の一部を示す概略の断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る捺染機の一例を示す概略図である。 図3Aは、同上の捺染機の他の例を示す平面視の概略図である。図3Bは、同上の形態の捺染機の他の例を示す側面視の概略図である。 図4Aは、アルカリ易溶性繊維を含む複合撚糸の断面のスチームセット工程後の拡大写真である。図4Bは、水溶性繊維を含む複合撚糸の断面のスチームセット工程後の拡大写真である。 図5Aは、アルカリ易溶性繊維を含む複合撚糸の断面のアルカリ処理工程前の拡大写真である。図5Bは、図5Aに示す複合繊維のX−X線の断面の拡大写真である。図5Cは、図5Aに示す複合撚糸の断面のアルカリ処理工程後の拡大写真である。図5Dは、図5Cに示す複合繊維のY−Y線の断面の拡写真である。 図6Aは、本発明の一実施形態に係る繊維製品のパイルの拡大写真である。図6Bは、比較例の繊維製品のパイルの拡大写真である。 図7は、本発明の一実施形態に係る繊維製品と、比較例の繊維製品との速乾率を比較したグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本実施の形態の繊維製品は、タオル、手ぬぐい、ハンカチなどが例示されるが、これに限定されず、衣服やカーテンなどの繊維を素材とするものであればよい。本実施の形態では、繊維製品がタオルであることが好ましい。繊維製品がタオルである場合、後述のアルカリ溶液による処理によって、パイルの保持性を向上させることができる。
本実施の形態の繊維製品は、第一糸と第二糸とを含む複合撚糸を用いて製造される。第一糸は水に不溶でアルカリ溶液に可溶な繊維である。第二糸は水及びアルカリ溶液の両方に不溶な繊維である。
(第一糸)
第一糸は、90℃以上の水に30分間浸漬されると、浸漬前の第一糸の95質量%以上が残存することが好ましい。
第一糸は、NaOHの濃度が3〜15g/L、温度が90℃以上のアルカリ溶液に20分間以上浸漬されると、浸漬前の第一糸の85質量%以上が溶解することが好ましく、95質量%以上が溶解することがより好ましい。
これらの条件を満たす繊維として、例えば、共重合ポリエステル糸及びポリ乳酸糸が挙げられる。
共重合ポリエステル糸として、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接反応させ、エステル化率が80〜95%のオリゴマーとなった時点で、金属スルホネート基含有イソフタル酸のメチルエステルを、オリゴマー中の酸成分に対して2〜3モル%量を添加した後、ポリアルキレングリコールをポリマーに対して10〜13重量%で、両者の積が26〜30の範囲になるように量を添加し、減圧下で重合反応させることにより製造される糸が例示される。このような共重合ポリエステル糸として具体的には、KBセーレン(株)製の商品名「ベルピュア(登録商標)」が例示される。
また、ポリ乳酸糸として具体的には、ユニチカ(株)製の商品名「テラマック(登録商標)」、クラレ(株)製の商品名「プラスターチ(登録商標)」、東レ(株)製の商品名「エコディア(登録商標)」等が挙げられる。
第一糸をアルカリ溶液で溶解する際、アルカリ溶液の濃度が高すぎると、繊維製品にアルカリ斑が発生してしまうおそれがある。このため第一糸は、低濃度のアルカリ溶液で溶解可能であることが好ましい。このため第一糸は、低濃度のアルカリ溶液で溶解可能な共重合ポリエステル糸であることが好ましい。
第一糸は、紡績糸であってもよく、フィラメント糸(長繊維)であってもよい。第一糸がフィラメント糸である場合、第一糸は、モノフィラメント糸であってもよく、マルチフィラメント糸であってもよい。第一糸がマルチフィラメント糸である場合、複数種のフィラメント糸を組み合わせた混合フィラメント糸であってもよく、同一のフィラメント糸で構成されたマルチフィラメント糸であってもよい。第一糸がマルチフィラメント糸である場合、マルチフィラメント糸の本数は、12〜24本の範囲内であることが好ましい。第一糸の太さは、33〜84dtexの範囲内であることが好ましい。この場合、繊維製品に適度な空隙を形成することができ、繊維製品の風合を向上できる。
(第二糸)
第二糸は、水及びアルカリ溶液の両方に不溶な繊維であれば、特に限定されない。第二糸として、例えば、綿、麻などの天然繊維が挙げられる。本実施の形態では、第二糸が綿製であることが好ましく、第二糸が綿番手で10〜100番手の綿糸であることがより好ましく、20〜80番手の綿糸であることが特に好ましい。
第二糸は、単糸であってもよく、複数の単糸を引き揃えた糸であってもよく、複数の糸を撚った合撚糸であってもよい。第二糸が単糸または複数の単糸を引き揃えた糸である場合、第二糸の撚数とは、第二糸を製造するにあたって紡績でかけられた撚数を意味する。また、第二糸が複数の糸を撚った合撚糸である場合、第二糸の撚数とは、第二糸を製造するにあたって複数の糸を撚りあわせた撚数を意味する。撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数Kは、2.8〜5であることが好ましい。撚係数Kが2.8程度であることにより、繊維製品の風合をソフトにすることができる。脱毛率を向上させるためには、撚係数Kは3以上であることが好ましい。第二糸の太さは、33〜84dtexの範囲内であることが好ましい。
(複合撚糸)
本実施の形態では、複合撚糸は、第一糸と第二糸とを撚り合わせた糸である。この複合撚糸に対する第一糸の割合は、5〜59質量%の範囲内であることが好ましく、10〜36質量%の範囲内であることがより好ましい。この場合、複合糸の撚りによって、第一糸の撚りを戻すことができる。また、反対撚りした上で追い撚りする等の方法により、繊維製品の風合を十分に確保することができる。
複合撚糸は、第一糸と第二糸とを撚り合わせることで製造される。第一糸と第二糸とは、例えば、撚糸機で撚り合わせることができる。撚糸機として、例えば、ダブルツイスター、リングツイスター、アップツイスター等の汎用の撚糸機を使用することができる。
本実施の形態では、複合撚糸(上撚)の撚り方向は、第二糸(下撚)の撚り方向と同じ方向であることが好ましい。複合撚糸の撚り方向とは、第一糸と第二糸との撚り合わせにおける撚り方向を意味する。すなわち、上撚の撚り方向と下撚の撚り方向とが同じであることが好ましい。この場合、複合撚糸から製造される繊維製品の耐久性を向上させることができる。
本実施の形態では、第一糸と第二糸とを、第一糸の撚数の0.3〜2.2倍の範囲内の撚数で撚ることが好ましい。この場合、複合撚糸から繊維製品を製造しやすくなると共に、この繊維製品の耐久性を向上させることができる。
(繊維製品の製造方法)
本実施の形態において、繊維製品は以下のようにして製造される。
まず、スチームセット工程が行われる。この工程では、複合撚糸を蒸気に晒し、複合撚糸の撚り止めを行う。スチームセット工程は、例えば、92℃で、30分間行う。本実施の形態では、第一糸が水に不溶でアルカリ溶液に可溶であるため、スチームセット工程において第一糸は溶解しない。このため、スチームセット工程において、複合撚糸の形態を安定に維持することができる。これに対して、第一糸が水溶性繊維である場合には、スチームセット工程において第一糸が溶融してしまう。このため、第一糸が水溶性繊維である場合には、スチームセット工程において複合撚糸の品質安定性が損なわれるおそれがある。
次に、複合撚糸に予め色をつける場合には、複合撚糸に染色を行う(先染工程)。この工程では、複合撚糸の全部または一部を染色する。第一糸が水溶性繊維である場合には、先染工程中に第一糸が溶解するため、所望の染色を行うことができない。このため、第一糸が水溶性糸である場合に複合撚糸に色を付けるためには、染色済みの第二糸を使用する必要がある。これに対して、本実施の形態では、第一糸が水に不溶でアルカリ溶液に可溶であるため、複合撚糸の先染めが可能である。このため、染色済みの第二糸を使用することなく、複合撚糸に色を付けることができる。すなわち、最終製品の色に合わせて、予め複合撚糸を染色することができる。また、繊維製品に多様なデザインバリエーションを付与できる。
先染工程で使用する染液には、例えば、スレン染料が含まれる。スレン染料は、水に不溶性の染料であり、繊維に対する親和性は低いが、アルカリ性還元浴で還元して得られる水溶性ロイコ化合物が繊維に対して親和性を有するため、ロイコ化合物の形で繊維に吸着させた後、酸化より繊維上で元の水溶性染料に戻して染色を行うことができる。スレン染料はセルロース繊維に対して良好な着色性を有するため、複合繊維中の第二糸を良好に染色できる。スレン染料としては、例えば、ダイスター社製の商品名Indanthren Yellow 5GF Col、Indanthren Yellow F3GC Col、Indanthren Yellow T-F3GC Col.Liq、Indanthren Gold. Yellow RK Col、Indanthren Orange3G Col、Indanthren Br. Orange GR Col、Indanthren Br. Orange RRTS Gran、Indanthren Scarlet GG Col、Indanthren Br. Red LGG Col、Indanthren Red FGL Col、Indanthren Red FBB Col、Indanthren Red T-FBB Col.Liq、Indanthren Br. Pink R Col、Indanthren Red Violet RRN Col.01、Indanthren Bordeaux ARR Col、Indanthren VioletB Col、IndanthrenBr.Violet 3B Col、Indanthren Br. Blue RCL Col、Indanthren Blue RS Col、Indanthren Blue BC Col、Indanthren Blue CLF Col、Indanthren Br. Green FFB Col.BB、Indanthren Olive Green B Col、Indanthren Olive MW Col、Indanthren Olive TCol、Indanthren Brown BR Col、Indanthren Brown LBG Col、Indanthren Dark Blue DB Col、Indanthren Navy Blue G Col、Indanthren Navy Blue SR-N Col、Indanthren Navy Blue T-RR Col.Liq、Indanthren Grey 5607 Col、Indanthren Grey NC Col、Indanthren Di Black RB Col、Indanthren Black BB Col、Mikethren Yellow GCN S/F U/C、Mikethren Yellow 3GL S/F 02、Mikethren Gold.Orange G S/F、Mikethren Violet FFBN S/F 01、Mikethren Blue BC S/F 01、Mikethren Blue BCS/F H/C 01、Mikethren Br. Green FFB S/F、Mikethren Olive T S/F 01、Mikethren Olive TS/F H/C 01、Mikethren Brown GS S/F E/C 01、Mikethren Brown G S/F 01、Mikethren Brown BRS/F 01、Mikethren Grey CL. BR S/F #400 01、Mikethren Grey HRB S/F 01、Mikethren GreyMS/F 01、Mikethren Grey HRB S/F U/C 01、Mikethren Di Black RB S/F E/C 01などが挙げられる。
先染工程では、例えば、次のようにして、複合撚糸を染色する。まず、水中に分散したスレン染料を還元することにより、ロイコ染料を作製する。次に、ロイコ染料を複合撚糸に吸着させ、酸化することにより、水不溶性染料に戻す。次に、複合撚糸を、加温状態の石鹸等によりソーピングを行う。
朧染めを行う場合には、染色工程の後に、複合撚糸に下漬剤を付着させる(下漬工程)。下漬剤は、全ての複合撚糸に付着させてもよく、一部の複合撚糸に付着させてもよい。この工程では、下漬剤を含有する染液に複合撚糸が浸漬されたり(浸染)、複合撚糸に刷毛で塗ったり(引染)する。本実施の形態では、第一糸が水に不溶でアルカリ溶液に可溶であるため、複合撚糸の下漬加工が可能である。これに対して、第一糸が水溶性繊維である場合には、下漬工程において第一糸が溶解するため、複合撚糸の下漬加工が困難である。
下漬剤を含有する染液は、下漬剤、ロート油、苛性ソーダ(NaOH)及び水(60〜70℃の熱湯)などを含有して調製されている。染液中の各成分の濃度は特に限定はないが、例えば、下漬剤(ナフトールAS類)10〜15g/L、ロート油15〜20mL/L、苛性ソーダ15〜23mL/Lなどが挙げられる。複合撚糸への下漬剤の付着量は特に限定されないが、例えば、1〜10%owf、好ましくは4〜5%owfである。また複合撚糸への苛性ソーダの付着量は特に限定されないが、例えば、1〜10%owf、好ましくは4〜5%owfである。尚、付着量の単位「owf」は、下漬剤(又は苛性ソーダ)が付着される複合撚糸の単位質量に対する下漬剤の付着質量(又は苛性ソーダ)の割合を示す。例えば、下漬剤の付着量が5%owfの場合、複合撚糸100gに対して下漬剤が5g付着することになる。
次に、整経工程が行われる。この工程では、整経機を使用して、経糸、緯糸、パイル糸等の必要な本数、長さ、張力を揃える。本実施の形態の生地は複合撚糸を含む。本実施の形態では、少なくともパイル糸が複合撚糸であることが好ましく、経糸、緯糸、パイル糸の全てが複合撚糸であることが好ましい。これにより、繊維製品の吸水性、風合、嵩高性等を向上させることができる。
次に、織り工程が行われる。この工程では、経糸、緯糸、及びパイル糸を織って生地を作製する。繊維製品がタオルである場合には、経糸、緯糸及びパイル糸を織って生地が作製される。この場合の生地は、経糸、緯糸、及びパイル糸を含むパイル地である。図1に生地の一例を示す。図1の生地は、複数の経糸101と、複数の緯糸102と、複数の第一パイル糸103と、複数の第二パイル糸104とを備える。すなわち、生地に含まれるパイル糸は、第一パイル糸103と第二パイル糸104とを備える。複合繊維を使用して生地を作製した段階では、生地中に複数種の不純物が含まれる。不純物として、例えば、経糸又は緯糸に付着した糊、ペクチン、繊維由来のワックス、灰分等の天然不純物、製織性改善用ワックス、色素等が例示される。
次に、朧染工程が行われる。この工程では色糊が生地に印捺される。生地への印捺はロール捺染機やスクリーン捺染機などで行われる。ロール捺染機は転写方式で印捺するものである。図2にはロール捺染機1の一例が示されている。このロール捺染機1には複数のガイドロール2が設けられている。またロール捺染機1には転写ロール4が設けられている。転写ロール4の外面には転写版5が設けられている。転写版5は、例えば、ゴム製の凸版で形成されている。転写ロール4の下方には浸漬ロール6が設けられている。浸漬ロール6はその下部が色糊7に浸漬して配置されている。このようなロール捺染機1では、長尺の生地3がガイドロール2にガイドされながら一方向に連続的に進行して搬送される。生地3は搬送されながら転写ロール4と浸漬ロール6との間を通過する。このとき、生地3における繊維製品の端末となる部分を感知し、このタイミングに合わせて転写ロール4が回転する。転写ロール4の回転により転写版5で生地3が上から押圧され、生地3が浸漬ロール6に接触する。これにより、浸漬ロール6の表面に付着している色糊7が生地3に付着し、色糊7が生地3に染み込んでいく。このようにしてロール捺染機1で生地3に印捺される。
一方、スクリーン捺染機10は謄写版方式で印捺するものである。図3にはスクリーン捺染機10の一例が示されている。このスクリーン捺染機10にはコンベアベルト11が設けられている。コンベアベルト11の上方には複数の型(スクリーン型)12が配置されている。複数のプリント型12はコンベアベルト11の進行方向に並べて設けられている。プリント型12は額縁状の枠体15にスクリーン(紗)16を貼り付けて形成されている。またスクリーン16にはメッシュ部13が設けられている。メッシュ部13は所望の形状(柄)に形成されている。各プリント型12の上方にはゴム製等のスケージ14が配置されている。スケージ14はコンベアベルト11の進行方向と直交する方向で往復移動自在に形成されている。このようなスクリーン捺染機10では、長尺の生地3がコンベアベルト11の上に載せられて一方向に連続的に進行して搬送される。生地3は搬送されながらプリント型12の下方を通過する。このとき、生地3における繊維製品の端末となる部分を感知し、このタイミングに合わせてスケージ14が移動する。スケージ14の移動によりプリント型12のスクリーン16上に供給した色糊7がメッシュ部13上を通過し、色糊7の一部がメッシュ部13を通過する。そして、メッシュ部13を通過した色糊7が生地3に付着し、色糊7が生地3に染み込んでいく。このようにしてスクリーン捺染機10で生地3に印捺される。
朧染工程で使用する色糊にはナフトール染料が含まれる。ナフトール染料(上漬剤又は顕色剤)は、下漬剤と反応して複合撚糸上で水に不溶性の色素を形成して染色する。ナフトール染料としては、ベース類とソルト類のいずれでも使用可能であるが、安定性等を考慮してソルト類が用いられる。ソルト類はベース類をジアゾ化した化合物である。ナフトール染料としては、C.I.A.D.C.20(商品名(色相分類)は、ブルーBBソルト)、C.I.A.D.C.13(商品名(色相分類)は、スカーレットRソルト)、C.I.A.D.C.44(商品名(色相分類)は、イエローGCソルト)、C.I.A.D.C.1(商品名(色相分類)は、ボルドーGPソルト)、C.I.A.D.C.2(商品名(色相分類)は、オレンジGCソルト)、C.I.A.D.C.9(商品名(色相分類)は、レッド3GLソルト)、C.I.A.D.C.38(商品名(色相分類)は、ブラックKソルト)、C.I.A.D.C.3(商品名(色相分類)は、スカーレットGGソルト)、C.I.A.D.C.118(商品名(色相分類)は、グリーンBBソルト)、C.I.A.D.C.48(商品名(色相分類)は、ブルーB)、C.I.A.D.C.35(商品名(色相分類)は、バリアンミンブルーB)、C.I.A.D.C.41(商品名(色相分類)は、バイオレットB)、ダークブルーLR(商品名(色相分類))、ブラウンRR(商品名(色相分類))、レッドB(商品名(色相分類))などが挙げられるが、これらに限定されない。尚、上記「C.I.A.D.C.」とは、カラーインデックスアゾイックジアゾコンポーネント(ColourIndexAzoicDiaz
o Component)の略称である。色糊中のナフトール染料の濃度は、ナフトール
染料の種類、色の濃淡、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、1〜30g/Lであることが好ましく、1〜25g/Lであることがより好ましく、1〜10g/Lであることが更に好ましい。色糊には、更に水、糊剤、pH調整剤、及び劣化防止剤を含有してもよい。
次に、糊抜工程が行われる。この工程では、糊抜剤で、生地に含まれる糊を分解して低分子化することにより、糊を取除く。第一糸として水溶性糸を使用すると、糊抜工程において第一糸が溶解してしまうが、本実施の形態では第一糸が水に不溶でアルカリ溶液に可溶であるため、糊抜工程で第一糸は溶解しない。糊抜剤として、例えば、糊抜酵素、酸化糊抜剤等が挙げられる。糊抜酵素として、例えば、洛東化成工業(株)製の商品名「ラクトーゼSTコンク」(耐熱酵素)等を使用することができる。特に糊抜酵素が耐熱酵素である場合には、80℃以上の温度で使用することができる。このため、糊抜剤が耐熱酵素を含むことが好ましい。糊抜酵素を使用する場合、処理浴中の糊抜酵素の濃度は0.8〜1.2g/Lの範囲内であることが好ましい。糊抜工程における処理浴には、界面活性剤が含まれていてもよく、例えば日華化学(株)製の商品名「サンモールBHコンク」が含まれていてもよい。処理浴中の界面活性剤の濃度は、0.3〜0.7g/Lの範囲内であることが好ましい。糊抜き時の処理浴の温度は、80〜100℃の範囲内であることが好ましい。糊抜き時の処理時間は30〜60分間であることが好ましい。
次に、精錬工程が行われる。この工程では、精錬剤によって、生地に付着した天然不純物(夾雑物)を加水分解又は鹸化して水溶化することにより天然不純物を取除く。第二糸が綿糸である場合の天然不純物として、例えば、ペクチン、油脂、ワックス、タンパク質等が挙げられる。精錬剤として、例えば、苛性ソーダ等を使用することができる。精錬剤と共に、精錬助剤(界面活性剤)を併用してもよい。精錬助剤(界面活性剤)として、例えば、日華化学(株)製のサンモールBHコンク等を使用することができる。精錬工程における処理浴は、第一糸が溶解しない程度にアルカリ性であることが好ましい。例えば、処理浴に苛性ソーダが1.5〜2.5g/Lの範囲内の濃度で含まれることが好ましい。また処理浴には0.5〜1.5g/Lの範囲内の濃度で精錬助剤が含まれることが好ましい。精錬時の処理浴の温度は60〜100℃の範囲内であることが好ましい。この場合、アルカリ高温下における染色された第二糸からの染料の流出を抑制することができる。精錬工程の処理時間は80〜100分の範囲内であることが好ましい。また精錬剤として、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、エキソ型セルラーゼ等の酵素を使用してもよい。
次に、縁縫い工程が行われる。この工程では、上記熱処理工程で得られた生地の縁縫いがオーバーミシン等で行われる。
次に、塩素晒工程が行われる。この工程では、例えば、次亜塩素酸ソーダ12g/Lの処理浴が用いられる。塩素晒時の処理浴の温度は、常温であることが好ましい。塩素晒時の処理時間は、100〜200分の範囲内であることが好ましい。
次に、化粧晒工程が行われる。この工程では、漂白剤によって、原材料に含まれる色素を取除く。漂白剤として、過酸化水素、亜塩素酸ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、漂白酵素等が挙げられる。漂白剤として過酸化水素を使用する場合、過酸化水素と共に、安定剤、pH調整剤、蛍光染料(例えば、昭和化学工業(株)製のハッコール(商品名))等を併用してもよい。漂白剤として過酸化水素を使用する場合、処理浴には過酸化水素が6.0〜10.0g/Lの濃度で含まれ得る。尚、処理浴には、過酸化水素が含まれ、安定剤、pH調整剤、蛍光染料等が含まれていなくてもよい。化粧晒時の処理浴の温度は60〜100℃の範囲内であることが好ましい。化粧晒時の処理時間は80〜100分の範囲内であることが好ましい。
尚、塩素晒工程・化粧晒工程の代わりに、オスボンコールド晒工程を適用してもよい。この場合の処理浴には、例えば、大同化成工業(株)製のDSCフィクサーHリキッドが1.5g/L、DSCオスボンUコンク25が1.5g/L、DSCオスボンカタリストMH25が4g/L、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が13.5g/L、過酸化水素が2g/Lである処理浴が挙げられる。この大同化成工業(株)製の「DSCオスボンUコンク25」は主成分が乳酸である。処理浴の温度は10〜30℃の範囲内であることが好ましい。すなわち、晒工程は、高温晒ではなく常温晒(コールド晒)であることが好ましい。晒工程における晒時間は、例えば、5〜60時間の範囲内であることが好ましいが、最後の30分間は昇温させることが好ましく、昇温時の処理浴の温度は60℃であることが好ましい。オスボンコールド晒の場合、処理浴の温度を低温にすることができるため、染色された第二糸からの染料の流出を更に抑制することができる。
本実施の形態では、化粧晒工程の後に、アルカリ溶液で第一糸を溶解させることが特に好ましい。この場合、生地に含まれる糊、天然不純物、及び色素を取除いた状態で第一糸を溶解させるため、生地に対する物理的又は化学的な影響を特に抑制することができ、第二糸の形状、性質を特に安定化させることができる。このため、繊維製品のバルキー性の低下を特に抑制することができる。このアルカリ溶液で第一糸を溶解させる工程(アルカリ処理工程)で使用する処理浴には、アルカリ性剤が含まれる。このアルカリ性剤として、例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸カリ、ソーダ灰等が挙げられる。アルカリ処理の容易さ、コスト等の観点からアルカリ性剤は苛性ソーダであることが好ましい。処理浴中のアルカリ性剤の濃度は、3〜15g/Lの範囲内であることが好ましく、8〜12g/Lの範囲内であることがより好ましい。この場合、先染または朧染が施された第二糸の褪色を抑止しながら、第一糸を効率良く溶解させることができる。特にアルカリ性剤の濃度が、3〜5g/Lの範囲内では第二糸の褪色が生じにくく、5〜10g/Lの範囲内では第二糸の褪色が少なく、10〜15g/Lの範囲内では第二糸の褪色を許容することができる。またアルカリ性剤の濃度が、3g/L未満の場合では第一糸を十分に溶解除去することができず、15g/Lより大きい場合では第二糸の褪色を許容することができない。また、本実施の形態では、第一糸の溶解にアルカリ溶液を使用することによる第二糸の収縮作用によって、繊維製品のパイルの保持性及び速乾性を向上させることができる。また処理浴中のアルカリ性剤が低濃度である場合、特にアルカリ性剤の濃度が8g/L以下である場合には、処理浴に減量促進剤を添加することが好ましい。この場合、第一糸を十分に溶解させることができるとともに、アルカリ性剤の使用量を削減することができ、染料の脱落を抑制することができる。この減量促進剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩系のアルカリ減量促進剤であるライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名DYK−1125、明成化学工業株式会社製の製品名マーセリン等を使用することができる。処理浴中の減量促進剤の濃度は、1〜5g/Lの範囲内であることが好ましい。
また、第一糸が共重合ポリエステル製の繊維である場合、アルカリ溶液で第一糸を溶解しても、ポリビニルアルコール(PVA)が発生しない。このPVAの処理は、多大な手間及びコストが掛かる。これに対して、本実施の形態では、第一糸の溶解により、ポリビニルアルコールよりも低分子の物質が発生するため、第一糸の溶解後の排水処理が容易である。
また上記アルカリ処理工程において第一糸が溶解除去されることにより、複合撚糸に掛かった初期の撚数と、第一糸の溶解除去後の撚数との間に変化が生じる。例えば、第二糸をZ撚り、複合撚糸をZ撚りとした場合には、第一糸溶解除去後の撚数は、第二糸の撚数と複合撚糸の撚数とを加算した値となる。このため、第二糸及び複合撚糸の撚数によっては、第一糸溶解除去後に強撚糸となり、楊柳(シボ立ちした)等の生地を形成することができる。
次に、ウィンス洗浄工程が行われる。この工程では、例えば、連続ウインスが用いられ、洗い温度約70℃で時間20〜30分間の条件で行われる。
次に、染色工程が行われる。この工程では、生地の全体または生地の一部が染色される。生地の全体が染色される場合、例えば、染料が入った処理浴に生地を浸す。この場合の処理浴には、例えば、反応性染料、10〜100g/Lの芒硝、5〜60g/Lのソーダ灰が含まれ得る。反応性染料の濃度は、反応性染料の種類、色の濃淡に併せて適宜設定される。この場合の処理浴の温度は、60〜70℃の範囲内であることが好ましい。また、昇温及び薬剤の投入に30分間、染色を固着するのに30分間かけることが好ましい。
染色工程で使用する処理浴に反応性染料が含まれる場合、反応性染料として、例えば、反応性染料として、例えば、ダイスター(株)製のProcion Black PX―N Liq.40%(Reactive Black8)、Procion Blue PX―5R Liq.33%(Reactive Blue13)、Procion Brilliant Blue PX―3R Liq.40%(Reactive Blue49)、Procion Brilliant Brown PX―2KR Liq.25%、Procion Navy PX―2R Liq.33%(Reactive Blue10)、Procion Navy PX―G Liq.33%(Reactive Black39)、Procion Orange PX―RN Liq.40%、Procion Red PX―4B Liq.33%(Reactive Red3:1)、Procion Red PX―6B Liq.33%(Reactive Red218)、Procion Yellow PX―6GN Liq.(Reactive Yellow95)、Procion Yellow PX―R Liq.33%、Kayacion Black P―GS Liq.40%、Kayacion Black P―NBR Liq.40%、Kayacion Blue P―3R Liq.40%(Reactive Blue49)、Kayacion Blue P―GR Liq.40%(Reactive Blue5)、Kayacion Blue P―NFB Liq.50%、Kayacion Brown P―BDN Liq.33%(Reactive Brown8)、Kayacion Brown P―N4R Liq.33%、Kayacion Navy P―N2R Liq.30%、Kayacion Orange P―G Liq.20%(Reactive Orange5)、Kayacion Red P―4BN Liq.25%(Reactive Red3:1)、Kayacion Red P―BN Liq.33%(Reactive Red24)、Kayacion Scarlet P―NA Liq.33%、Kayacion Turquoise P―3GF Liq.33%、Kayacion Violet P―3R Liq.33%(Reactive Violet1)、Kayacion YelloW P―5G Liq.33%(Reactive Yellow2)、Kayacion YelloW P―N3R Liq.33%(Reactive Orange99)、ハンツマン(株)製のNovacron Black P―GR Liq.40%、Novacron Black P―SG Liq.40%、Novacron Black P―SGN Liq.40%、Novacron Blue P―3R Liq.40%(Reactive Blue49)、Novacron Brown P―6R Liq.(Reactive Brown11)、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%(Reactive Orange12)、Novacron Navy P―2R Liq.(Reactive Blue10)、Novacron Orange P―2R Liq.40%(Reactive Orange13)、Novacron Orange P―4R Liq.40%(Reactive Orange35)、Novacron Red P―4B Liq.33%(Reactive Red3:1)、Novacron Red P―6B Liq.33%(Reactive Red218)、Novacron Red P―BN Liq.33%(Reactive Red24)、Novacron Turquoise P―GR Liq.50%(Reactive Blue72)、Novacron YelloW P―6GS Liq.33%(Reactive Yellow95)、住化テックス(株)製のSumifix Supra Brill. Yellow 3GF 150% gran.、Sumifix Supra Yellow 3RF 150% gran.(Reactive Yellow145)、Sumifix Supra Yellow E―XF 150% gran.Sumifix Supra Brill. Red BSF 150% gran.、Sumifix Supra Brill. Red 3BF 150% gran.(Reactive Red195)、Sumifix Supra Red E―XF gran.、Sumifix Supra Red 4BNF 150% gran.、Sumifix Supra Rubine E―XF gran.、Sumifix Supra Blue BRF 150% gran.(Reactive Blue221)、Sumifix Supra Blue E―XF gran.、Sumifix Supra Navy Blue BF gran.(Reactive Blue222)、Sumifix Supra Navy Blue 3GF 150% gran.、Sumifix Supra Navy Blue GNF gran.、市販のレマゾール染料であるRemazol Red Run、Remazol Yellow Run、Remazol Blue Run等が挙げられる。
次に、洗浄工程が行われる。この工程では、例えば、水洗と湯洗とを複数回行う。例えば、常温で10分間の水洗を二回行った後、90℃で20分間の湯洗を二回行い、更に常温で10分間の水洗を二回行う。
次に、柔軟工程が行われる。この工程では、例えば、連続ウインスが用いられ、また必要に応じて柔軟剤が1g/Lの処理浴が用いられ、洗い温度約70℃で時間20〜30分間の条件で行われる。この柔軟剤として、例えば、一方社油脂工業(株)製の商品名「ロイヤルソフト」を使用することができる。
次に、脱水工程が行われる。この工程では、遠心脱水機などが用いられる。
次に、乾燥工程が行われる。この工程では、タンブラー乾燥機などが用いられ、例えば、温度80〜100℃で時間約25分間の条件で行われる。
この後、ヘムミシン工程や検査工程を経て、タオルなどの繊維製品が製造される。
本実施の形態の繊維製品では、例えば、複合撚糸の段階で染められた部分と、朧染が施された部分と、染色が施された部分とを含む。
上記の繊維製品の製造方法では、スチームセット工程、先染工程、下漬工程、整経工程、織り工程、朧染工程、糊抜工程、精錬工程、縁縫い工程、塩素晒工程、化粧晒工程、アルカリ処理工程、ウィンス洗浄工程、染色工程、洗浄工程、柔軟工程、ヘムミシン工程、検査工程の順でおこなわれるが、これに限られない。
例えば、糊抜工程が終了した後に上記のアルカリ処理工程を行ってもよい。すなわち、糊抜工程が終了した後に、アルカリ溶液で第一糸を溶解させてもよい。この場合、生地に付着した糊を取除いた状態で第一糸が溶解されるため、生地に対する物理的又は化学的な影響を抑制することができ、第二糸の形状、性質を安定化させることができるため、繊維製品のバルキー性の低下を抑制することができる。
例えば、精錬工程の後に上記のアルカリ処理工程を行ってもよい。すなわち、精錬工程の後に、第一糸をアルカリ溶液で溶解させてもよい。この場合、生地に付着した糊、及び天然不純物を取除いた状態で第一糸が溶解されるため、生地に対する物理的又は化学的な影響を抑制することができ、第二糸の形状、性質を安定化させることができるため、繊維製品のバルキー性の低下を抑制することができる。
例えば、先染工程を行わなくてもよい。すなわち、複合撚糸を予め染めなくてもよい。この場合の繊維製品は、複合撚糸の段階で染められた部分を含まなくてよい。
例えば、下漬工程及び朧染工程を行わなくてもよい。すなわち、朧染を施さなくてもよい。この場合の繊維製品は、朧染めが施された部分を含まなくてよい。
例えば、染色工程を行わなくてもよい。すなわち、染色を施さなくてもよい。この場合の繊維製品は、染色が施された部分を含まなくてよい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1〜4)
まず、第一糸と第二糸とを撚り合わせることにより複合撚糸を作製した。第一糸として、KBセーレン(株)製の商品名ベルピュア(登録商標)を使用した。第一糸はマルチフィラメント糸であり、フィラメントの本数は12本である。第二糸は、撚係数Kが4.0である20番手の綿糸を使用した。複合撚糸に対する第一糸の割合は10%であった。第二糸はZ撚りであり、複合撚糸はS撚りであった。第一糸と第二糸との撚り数は17.9回/吋であった。
次に、上記と同様のスチームセット工程が行われた。スチームセットの条件は、92℃で、30分間であった。スチームセット工程前後の複合撚糸の断面の拡大写真を図4Aに示す。図4Aにおける(1)は第一糸を示し、(2)は第二糸を示す。図4Aに示すように、実施例1の複合撚糸では、スチームセット工程後の第一糸に大きな変化は見られなかった。
次に、複合撚糸の一部に先染を行った。先染で使用した染液には、浴比1:20でスレン染料であるMikethen Blue BC s/fが2.5%owf、苛性ソーダが5g/L、ハイドロサルファイトが6g/L、グルコースが2g/L、Uniperol Level Pが0.1g/L含まれていた。この先染工程では、60℃の染液に複合撚糸を30分間浸漬して、複合撚糸を青色に染色した。
次に、上記と同様の下漬工程を行った。この工程では、複合撚糸を下漬剤を含む処理浴に浸漬した。この処理浴には、下漬剤としてナフトールAS−OLが4〜5%owfで含まれ、苛性ソーダが4〜5%owfで含まれていた。ここで「owf」とは、複合撚糸100gに対する薬剤の割合を意味する。
次に、上記と同様の整経工程及び織り工程が行われた。織り工程では、複合撚糸からなる経糸、緯糸、及びパイル糸を織ることにより、パイル地の生地を形成した。未処理の生地の強度は経糸2.5N、緯糸3.5Nであった。複合撚糸としては、上記の先染工程で染色した複合撚糸と、未染色の複合撚糸とを使用した。このため生地には、先染が施された部分と、未染色の部分とが含まれていた。
次に、上記と同様の朧染工程を行った。この工程で使用した色糊には、ナフトール染料としてブルーBBソルトが5g/Lの濃度で含まれ、スカーレットRソルトが15g/Lの濃度で含まれ、ボルドーGPソルト13g/Lの濃度で含まれていた。色糊は、生地の未染色の部分の一部に付着させた。このため、生地には、先染めが施された部分と、朧染めが施された部分と、未染色の部分とが含まれていた。
次に、上記と同様の糊抜工程を行った。この工程における処理浴には、耐熱酵素として洛東化成工業(株)製の商品名「ラクトーゼSTコンク」が1.0g/Lの濃度で含まれ、界面活性剤として日華化学(株)製の商品名「サンモールBHコンク」が0.5g/Lの濃度で含まれていた。処理浴の温度は90℃であり、処理時間は45分間であった。
次に、上記と同様の精錬工程を行った。この工程における処理浴には、アルカリ性剤として苛性ソーダが2.0g/Lの濃度で含まれ、精錬助剤(界面活性剤)として日華化学(株)製のサンモールBHコンクが1.0g/Lの濃度で含まれていた。処理浴の温度は90℃であり、処理時間は90分であった。
次に、上記と同様の縁縫い工程が順に行われた。
次に、上記と同様の塩素晒工程を行った。この工程における処理浴には、次亜塩素酸は12.0g/Lの濃度で含まれていた。処理浴の温度は常温であり、処理時間は150分であった。
次に、上記と同様の化粧晒工程を行った。この工程における処理浴には、漂白剤として過酸化水素が8.0g/Lの濃度で含まれ、安定剤が0.4g/Lの濃度で含まれ、苛性ソーダが0.2g/Lの濃度で含まれていた。処理浴の温度は90℃であり、処理時間は90分であった。
次に、上記と同様のアルカリ処理工程を行った。この工程において、生地に含まれる第一糸が溶解した。図5A、図5Bにアルカリ処理前の複合撚糸を示し、図5C、図5Dにアルカリ処理後の複合撚糸を示す。図5A〜図5Dにおける(1)は第一糸を示し、(2)は第二糸を示す。図5A、Bに示すように、溶解前の複合繊維には第一糸(1)と第二糸(2)が含まれている。これに対して、図5C、図5Dに示すように、溶解後の複合撚糸には第二糸(2)は含まれているが、第一糸(1)は含まれていない。これは、複合繊維にアルカリ処理を行ったことにより、第一糸が溶解し、第二糸が残存したからである。この工程における処理浴には、苛性ソーダが10.0g/Lの濃度で含まれ、処理浴の温度が95℃であり、処理時間は30分であった。
次に、上記と同様のウィンス洗浄工程を行った。
次に、上記と同様の染色工程を行った。この工程における処理浴には、反応性染料として、Remazol Red Runが0.05g/Lの濃度で含まれ、Remazol Yellow Runが0.12g/Lの濃度で含まれ、芒硝が10〜100g/Lの濃度で含まれ、ソーダ灰が5〜60g/Lの濃度で含まれていた。処理浴の温度は60〜70℃であった。染色工程では、昇温及び薬剤の投入に30分間、染料の固着に30分間かかった。染色工程では、生地の未染色の部分に染色を行った。このため、生地には、先染めが施された部分と、朧染めが施された部分と、染色が施された部分と、未染色の部分とが含まれていた。
次に、上記と同様の洗浄工程、柔軟工程、脱水工程、乾燥工程、ヘムミシン工程、検査工程の順で行った。これにより、繊維製品(タオル)が製造された。この繊維製品は、未染色の部分と、先染めが施された部分と、朧染めが施された部分と、染色が施された部分とが含まれていた。この未染色の部分を実施例1、先染めされた部分を実施例2、朧染めされた部分を実施例3、染色された部分を実施例4とした。
(比較例1)
まず、第一糸として水溶性糸であるクラレトレーディング(株)の商品名「ミントバール」を使用したこと以外は実施例1〜4と同様にして、複合撚糸を作製した。
次に、上記と同様のスチームセット工程が行われた。スチームセット工程前後の複合撚糸の断面の拡大写真を図4Bに示す。図4Bに示す中心部の繊維が第一糸であり、周囲の繊維が第二糸である。図4Bに示すように、比較例1の複合撚糸では、スチームセット工程後の第一糸の一部が溶解していた。
比較例1において複合撚糸を先染すると、第一糸が溶解し、複合撚糸を所望の色に染色することができなかった。このため、比較例1では先染工程を行わなかった。
比較例1において複合撚糸に下漬剤を添加すると、第一糸が溶解して、複合撚糸に所望量の下漬剤を付着させることができなかった。このため、比較例1では下漬工程を行わなかった。
次に、実施例1〜4と同様の整経工程及び織り工程を行った。
上記の通り下漬工程を行わなかったため、比較例1では朧染工程を行わなかった。
次に、実施例1〜4と同様の糊抜工程を行った。比較例1では、糊抜工程中に、第一糸が溶解した。
次に、実施例1〜4と同様の精錬工程、縁縫い工程、塩素晒工程、化粧晒工程、ウィンス洗浄工程、洗浄工程、柔軟工程、脱水工程、乾燥工程、ヘムミシン工程、検査工程の順で行った。
これにより、繊維製品(タオル)が製造された。
(実施例5)
アルカリ処理工程において、苛性ソーダが4g/L、減量促進剤(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名DYK−1125)が3g/L含まれ、処理浴の浴比が1:20、処理浴の温度が95〜97℃であり、処理浴に生地を浸漬する時間が30分であったこと以外は、実施例2と同様にして、繊維製品を作製した。
(比較例2)
アルカリ処理工程において、苛性ソーダが2g/L、減量促進剤(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名DYK−1125)が3g/L含まれ、処理浴の浴比が1:20、処理浴の温度が95〜97℃であり、処理浴に生地を浸漬する時間が30分であったこと以外は、実施例2と同様にして、繊維製品を作製した。
(実施例6)
アルカリ処理工程において、苛性ソーダが20g/L、減量促進剤(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名DYK−1125)が3g/L含まれ、処理浴の浴比が1:20、処理浴の温度が95〜97℃であり、処理浴に生地を浸漬する時間が30分であったこと以外は、実施例2と同様にして、繊維製品を作製した。
(実施例7)
複合撚糸に含まれる第二糸として、撚係数Kが4.2である40番手の綿糸を使用し、複合撚糸に対する第一糸の割合が18%であり、複合撚糸の撚り方向と第一糸の撚り方向とは同じであり、第一糸と第二糸との撚り数が26.5回/吋である複合撚糸を使用した
こと以外は、実施例1と同様にして、繊維製品を作製した。
(実施例8)
複合撚糸に含まれる第二糸として、撚係数Kが3.6である80番手の綿糸を使用し、複合撚糸に対する第一糸の割合が31%であり、複合撚糸の撚り方向と第一糸の撚り方向とは同じであり、第一糸と第二糸との撚り数が32回/吋である複合撚糸を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維製品を作製した。
(実施例9)
複合撚糸に含まれる第二糸として、撚係数Kが4.4である10番手の綿糸を使用し、複合撚糸に対する第一糸の割合が5%であり、複合撚糸の撚り方向と第一糸の撚り方向とは同じであり、第一糸と第二糸との撚り数が14回/吋である複合撚糸を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維製品を作製した。
(実施例10)
複合撚糸に含まれる第二糸として、撚係数Kが3.6である100番手の綿糸を使用し、複合撚糸に対する第一糸の割合が36%であり、複合撚糸の撚り方向と第一糸の撚り方向とは同じであり、第一糸と第二糸との撚り数が36回/吋である複合撚糸を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維製品を作製した。
上記の実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、パイル形状、表面粗さ、感覚評価、比容積、圧縮率、回復率,吸水性、残脂率について、以下の方法及び基準で評価した。その結果を下記の表1及び表2に示す。
<パイル形状>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、電子顕微鏡を用いて、パイルの形状を確認し、以下の基準で評価した。また、実施例1及び比較例1のパイルの拡大写真を図6A、Bに示す。
A:パイルにねじれがなく、均一である。
B:パイルにねじれが生じ、不均一である。
<表面粗さ>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、カトーテック(株)製の自動化表面試験機KES FB−4−AUTO−Aを用いて、縦の表面粗さ(KES FB−4 SMD)を測定した。
<感覚評価>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品を21人(男7人、女14人)触わった際の触り心地について、次のA〜Cの基準で評価を行い、その人数を評価した。
A:すべすべした手触りで心地が良い。
B:触り心地が柔らかい。
C:差を感じない、又はごわごわしている。
<比容積>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、JIS L 1097を準用する比容積を測定した。
<圧縮率>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、JIS L 1097を準用する圧縮弾性を測定するために用いる圧縮率を測定した。
<回復率>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、JIS L 1097を準用する圧縮弾性を測定するために用いる回復率を測定した。
<吸水性>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、JIS L 1907(沈降法)に基づき、吸水性を評価した。
<残脂率>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、105℃のオーブンで15分間加熱した後、約5gの資料を秤量し、ソックスレー抽出器を用いて、2時間溶剤(ジエチルエーテル)抽出を行い、残脂率を測定した。
<速乾性>
実施例1〜10及び比較例1の繊維製品について、拡散性残留水分率を測定した。また実施例1と比較例1について、速乾率を比較したグラフを図7に示す。
<染料の脱落>
アルカリ処理工程より前に染色を行っている実施例2、3、5、及び6の繊維製品について、染料の脱落の有無を確認した。
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜10の繊維製品は、比較例1よりもパイル形状が均一であった。このことは、図6Aに示す実施例1のパイルの拡大写真においてパイル糸(3)はよじれておらず、均一な形状を有しているのに対して、図6Bに示す比較例1のパイルの拡大写真においてパイル糸(4)はよじれ、不均一な形状を有していることから、明らかである。これは、実施例1〜10の繊維製品では、生地に含まれる不純物を除去した後に第一糸を溶解させたことにより、第二糸の形状が安定すると共に、アルカリ溶液による収縮作用で、第一糸のパイルの保持性が向上したことが原因と考えられる。
また、表1及び表2から明らかなように、実施例1〜10の繊維製品は、比較例1よりも表面粗さが小さくなっている。
また、実施例1〜10の繊維製品のパイル形状が優れ、且つ表面粗さが小さいため、実施例1〜4の繊維製品の感覚評価は、比較例1よりも優れている。
また、実施例1〜10の繊維製品の比容積及び圧縮率は比較例1以上であり、且つ比較例1と同等の回復率を備えている。このため、実施例1〜10の繊維製品は、比較例1と同等またはそれ以上の嵩高性を備えている。
また、実施例1〜7、9の繊維製品は、比較例1と同等の吸水性を備え、比較例1よりも残脂率が少なく、比較例1よりも速乾性が速い。このため、実施例1〜10の繊維製品は、比較例1よりも優れた吸水速乾性を備えている。
またアルカリ処理工程におけるアルカリ溶液に含まれるアルカリ性剤の濃度が3〜15g/Lの範囲内である実施例2、3、5、6は、第一糸が溶解除去され、先染め染料の脱落が確認されない、或いは若干の脱落が確認されたが、製品上問題がない程度であった。これに対して、アルカリ性剤の濃度が3g/Lの未満である比較例2は、第一糸が溶解除去されず、残存した。

Claims (9)

  1. 水に不溶でアルカリ溶液に可溶な第一糸と、水及びアルカリ溶液の両方に不溶で、撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数が3以上である第二糸とを含み、前記第一糸と前記第二糸とを撚り合わせた糸である複合撚糸を形成し、
    経糸、緯糸、及びパイル糸を含むパイル地であり、少なくとも前記パイル糸が前記複合撚糸である生地を形成し、
    前記生地をアルカリ溶液に浸漬し、前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で完全に溶解することによって前記生地から前記第一糸を除去し、
    前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で溶解した後において、前記生地中の前記パイル糸に撚りがかかっている、
    繊維製品の製造方法。
  2. 前記アルカリ溶液は、濃度が3〜15g/Lの範囲内であるアルカリ性剤を含む、
    請求項1に記載の繊維製品の製造方法。
  3. 前記アルカリ溶液が、更に減量促進剤を含む、
    請求項2に記載の繊維製品の製造方法。
  4. 前記複合撚糸における前記第一糸の割合が、10〜36質量%の範囲内である、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の繊維製品の製造方法。
  5. 前記第一糸は共重合ポリエステル糸又はポリ乳酸糸を含み、
    前記第二糸は綿糸である、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の繊維製品の製造方法。
  6. 前記複合撚糸を染色した後、前記複合撚糸から生地を形成する、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載の繊維製品の製造方法。
  7. 前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で溶解する前に、朧染を行う、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載の繊維製品の製造方法。
  8. 前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で溶解した後に、前記生地中の前記第二糸に染着する染料で染色を行う、
    請求項1乃至7のいずれか一項に記載の繊維製品の製造方法。
  9. 前記生地に含まれる不純物を取り除く晒工程を含み、
    前記晒工程の後に、前記生地中の前記第一糸を前記アルカリ溶液で溶解する、
    請求項1乃至8のいずれか一項に記載の繊維製品の製造方法。
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