JP2020040855A - 水素ガスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より安全性の高い方法で水素ガスを生成するにあたり、低コストで、簡単に水素ガスを生成することができる水素ガスの製造方法、及びそのような水素ガスの生成を行う水素ガス製造システムを提供する。【解決手段】本実施形態に係る水素ガスの製造方法は、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、物質の安全性に関する法規制で、対象となる有害な物質を排除する安全に係る選定条件を満たす被反応金属Mと、水と共に、被反応金属Mと可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液CAと、を反応させ、被反応金属Mのキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させる。【選択図】 図1

Description

本発明は、金属と水溶液との化学反応を利用して生成する水素ガスの製造方法、及びこの製造方法により、水素ガスを生成させる装置を構成した水素ガス製造システムに関する。
供給されるエネルギの大部分は長年、これまで化石燃料に依存し続けてきたが、環境保全・資源保護等の観点より、近年では、例えば、燃料電池、燃料電池自動車等に挙げられるように、水素が、クリーンなエネルギ源として、新たに利用されてきている。一般的に水素は、周知技術による工業的な製造方法で生成されている一方で、更なる技術進歩を伴った水素の製造方法も開発されており、その一例として、水または水蒸気と、水素化処理された水素発生物質とを化学反応させて水素を発生させる方法が、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1は、マグネシウム(Mg)等の金属単体に水蒸気を接触させることで、酸化反応を生じさせて酸化マグネシウム(MgO)と水素(H)を生成し、このときの反応熱による高温の下、水素化マグネシウム(MgH)等の金属水素化合物にさらに水蒸気を接触させて、酸化マグネシウムと水素を生成し、発生した水素を回収する水素ガス発生方法である。特許文献1によれば、水素以外に生じた酸化マグネシウム等の反応生成物は、電気プラズマ、水素プラズマ、太陽光励起レーザ等の高価な専用設備により、還元してリサイクルでき、水素ガスを発生させるのに用いたマグネシウム等の金属単体として、再び利用することができるとされている。
特許文献2は、水と反応して水素を発生する水素発生物質と、水とを、秤量した上で高圧容器内に充填し、この容器内が密閉状態の下で、水素発生物質と水とを反応させて発生した高圧の水素を、容器内に充填する技術である。この水素発生物質は、粒状のマグネシウム(Mg)と、そのマグネシウムの表面及び内部に存在する複数の触媒金属微粒子であるNi微粒子等とからなるMg合金粒子の集合体に、水素化処理を施した水素化マグネシウム(MgH)等の物質である。特許文献2は、水素以外に、高圧容器内に残留する水酸化マグネシウム(Mg(OH))等の反応生成物を高圧容器から排出して、Mg等の回収を行うとされているが、その回収方法については、全く言及されていない。
特許文献3は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはマグネシウムのいずれかの金属と、水とを、タンク内で反応させて生成した水素を水素吸蔵合金に取り込むにあたり、金属と水との反応により、タンク内で占めていた水の容積分、水に代えて、タンク内で発生した水素ガスを高い圧力で蓄えて、タンク内に設けた水素吸蔵合金に高圧の水素ガスを吸蔵させる技術である。
特開2012−206932号公報 特開2003−314792号公報 特開2009−215148号公報
特許文献1は、金属単体(マグネシウム等)と水蒸気との酸化反応で生じた反応熱も利用して、金属水素化合物(水素化マグネシウム等)と水蒸気を酸化反応させることにより、水素ガスを効率良く発生させているが、双方の酸化反応によって生じた酸化マグネシウム等の反応生成物は、反応後に残留してしまい、この反応生成物の回収・処分に手間が掛かる。特に、特許文献1では、回収した反応生成物は、電気プラズマ等の専用設備による還元処理により、次の水素ガスの生成工程で利用できるとされているが、リサイクルを行うために、大掛かりな専用設備と、その運転に多大なエネルギの投入が必要になり、問題となる。加えて、水素化マグネシウムは、高価であるため、特許文献1の技術は、コスト高である。
また、特許文献2は、水素を発生させる反応で、水素化マグネシウムを用いているが、水素化マグネシウムは、マグネシウムと水素とがイオン結合により化学的に安定した状態で結合された物性であるため、係る反応が進行する上で、マグネシウムと水素との結合を、不安定にさせて解除するための触媒が必要になる。特許文献2は、このような触媒をニッケル(Ni)としており、高価な触媒を必要とする点で、コスト高の一因になっている。
また、特許文献3の技術では、金属がアルカリ金属の場合、金属と水との接触により、急激に熱を発して激しく反応が進行するため、水素ガスを、より安全に生成することができない。また、金属がアルカリ土類金属の場合には、金属と冷水との反応で、水素ガスは生成できるが、マグネシウムの場合には、水が熱水になっていないと、金属と水は反応せず、水素ガスは生成できない。そのため、特許文献3の技術は、実用上、設備に、防爆対策等の安全策を施す必要があるために複雑化する上、金属と反応させる水の温度を制御しなければならず、水素ガスをより簡単に生成することができない。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、より安全性の高い方法で水素ガスを生成するにあたり、低コストで、簡単に水素ガスを生成することができる水素ガスの製造方法、及びそのような水素ガスの生成を行う水素ガス製造システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様における水素ガスの製造方法は、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、安全に係る選定条件を満たす被反応金属と、水と共に、前記被反応金属と可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液と、を反応させ、前記被反応金属のキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させること、を特徴とする。
この態様によれば、人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼす虞がなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる方法で、かつ簡単な方法で、水素ガスを、より安全に発生させることができる。しかも、水素を発生させる過程で、特許文献2のような、高価なニッケル等の触媒を使用せず、被反応金属を、単にキレート剤水溶液と反応させるだけで、水素ガスが生成できるため、水素ガスの生成コストが安価である。
なお、本発明に係る水素ガスの製造方法で、使用する被反応金属に対する金属元素の安全に係る選定条件とは、例えば、毒物及び劇物取締法、消防法の危険物、鉛中毒予防規則等、物質の危険性に関する法規制に基づき、このような法規制に該当する有害な金属元素を避けて、排除するための条件と定義している。すなわち、安全に係る選定条件はいわば、人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼす虞がなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる金属元素に限定して選択するために適用する条件である。
上記の態様においては、前記被反応金属は、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉄、またはスズのうち、いずれか1種以上に該当する金属であること、が好ましい。
この態様によれば、このような種の被反応金属は、市場で広範囲に流通して比較的安価である上、取扱いが容易で、より身近な場所で水素ガスを製造する場合でも、原料となる被反応金属は、入手し易い。
上記の態様においては、前記被反応金属は、マグネシウムであること、が好ましい。
この態様によれば、マグネシウムは、キレート剤水溶液と比較的容易に反応して、キレート錯体が生成し易く、キレート錯体の生成に伴って、水素ガスを、より確かに発生させることができる。しかも、マグネシウムは、市場で入手し易く、比較的安価である。
上記の態様においては、前記溶解キレート剤は、安全に係る選定条件を満たす有機酸であること、が好ましい。
この態様によれば、溶解キレート剤は、水素ガスを発生させるまでの反応の過程で、被反応金属の表面に不動態被膜の形成を阻止することや、被反応金属の表面に形成されてしまった不動態被膜を破壊することに、寄与することができる。
なお、本発明に係る水素ガスの製造方法で、使用するキレート剤に対する有機酸の安全に係る選定条件とは、例えば、毒物及び劇物取締法等による危険物関連の法規制のほか、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)や、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)、化学物質管理促進(PRTR:Pollutant Release and Transfer Register)制度で対象となる化学物質(第一種指定化学物質)等、物質の危険性を示唆する法規制に基づき、このような法規制に該当する有害な有機酸を避けて、排除するための条件と定義している。すなわち、安全に係る選定条件はいわば、人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼす虞がなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる有機酸に限定して選択するために適用する条件である。
上記の態様においては、前記溶解キレート剤は、チオール基、ホスフィノ基、イミノ基、リン酸基、グルコン酸基、カルボキシル基、スルフィド基、アミノ基、または酢酸基のうち、いずれかの官能基を有する有機化合物であること、あるいは、N保護アミノ酸、C保護アミノ酸、またはピリジン化合物のうち、いずれかに該当する有機化合物であること、が好ましい。
この態様によれば、特にこの種の有機化合物を溶解キレート剤に用いると、溶解キレート剤は、水素ガスを発生させるまでの反応の過程で、被反応金属の表面に不動態被膜の形成を阻止することや、被反応金属の表面に形成されてしまった不動態被膜を破壊することを、より効果的に行うことができる。
上記の態様においては、前記溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、ε−ACE、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA:Iminodiacetic acid)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する物質であること、が好ましい。
この態様によれば、被反応金属と反応水溶液との反応後に、水素ガスの生成を、より確実に行うことができる。
上記の態様においては、生成した前記被反応金属の前記キレート錯体を含有する反応水溶液と、炭酸ガスとを反応させることにより、炭酸塩を析出させる一方で、前記キレート剤水溶液の溶質として、前記溶解キレート剤を再生させると共に、水素ガスを発生させること、が好ましい。
この態様によれば、先に、被反応金属とキレート剤水溶液とを反応させ、被反応金属のキレート錯体を生成して水素ガスを発生させた後、次に行う被反応金属とキレート剤水溶液との反応で、水素ガスを発生させるときでも、再生した溶解キレート剤を含むキレート剤水溶液を、再度使用することができる。そのため、キレート剤水溶液の繰返し使用ができることから、コストが抑制でき、水素ガスの発生後に生じる廃棄物も低減することができる。
上記の態様においては、前記溶解キレート剤は、アミノ酸に属する有機化合物であること、が好ましい。
この態様によれば、アミノ酸に属する有機化合物とした溶解キレート剤を含むキレート剤水溶液を、例えば、マグネシウム等の被反応金属と反応させて、被反応金属のキレート錯体を生成した場合、被反応金属のキレート錯体を含む反応水溶液に、炭酸ガスを含む気体を接触させると、例えば、炭酸マグネシウム等の炭酸塩を、より確実に析出させることができる。
上記の態様においては、前記反応水溶液では、等電点がpH4〜pH8の範囲内であること、が好ましい。
この態様によれば、参照する電離式(5)〜(7)に示す反応の過程で、被反応金属Mのキレート錯体の生成に向け、炭酸ガスが、炭酸水素イオンと水素イオンに電離する反応と、被反応金属のキレート錯体の金属イオンと、この炭酸ガスに由来して電離した炭酸水素イオンとの結合で炭酸塩を生成する反応との平衡が、バランス良く維持できる。
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様における水素ガス製造システムは、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、安全に係る選定条件を満たす被反応金属と、水と共に、前記被反応金属と可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液とを、槽内で反応させ、前記被反応金属のキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させる反応器部と、前記反応器部への供給にあたり、前記キレート剤水溶液を貯留可能な反応前水溶液貯留部と、多孔質からなる分離材により、生成した前記被反応金属の前記キレート錯体を含有する反応水溶液と、水素ガスとを、コアレッシング作用に基づいて、気液混合した状態から分離させる気液分離部と、前記気液分離部を通じて、気液分離した後の水素ガスを貯留する水素ガス貯留部と、を備えていること、を特徴とする。
この態様によれば、高価なニッケル等の触媒を使用せず、反応器部の槽内で、被反応金属を、単にキレート剤水溶液と反応させるだけで、水素ガスが、より安全で簡単に生成できる。しかも、本発明の水素ガス製造システムは、人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼすことなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる方法で、水素ガスを生成するシステムであるため、実用上、水素ガスの生成に伴う反応に対し、防爆対策等の安全策の設置は不要であり、被反応金属と反応させるキレート剤水溶液の供給量を調整するだけで、キレート剤水溶液の温度制御を容易に行うことができる。そのため、本発明の水素ガス製造システムは、より簡単に構成できているため、システムの製造コストも安価である。加えて、水素ガス貯留部に貯められる水素ガスは、気液分離部で精製した純度の高い水素ガスであるから、例えば、燃料電池部のほか、水素ガスを消費する水素ガスの需要先にそのまま提供することができる。
上記の態様においては、前記反応水溶液を貯留する反応水溶液貯留槽と、前記反応水溶液貯留槽に貯めた前記反応水溶液に、炭酸ガスを供給可能な炭酸ガス供給部と、を有するキレート剤水溶液再生処理ユニットを備えていること、が好ましい。
この態様によれば、参照する電離式(5)〜(7)に示す反応の過程で、例えば、炭酸マグネシウム等の炭酸塩は、反応水溶液貯留槽内で析出され、主に工業用向けの原料として利用することができる。そのため、水素の発生に伴って生じた物質は、ほとんど廃棄することなく、有効に活用することができ、キレート剤水溶液再生処理ユニットを備えた本発明の水素ガス製造システムは、省エネルギ化に貢献し、環境保全・資源保護等の見地でも、優れたシステムとなっている。
上記の態様においては、前記気液分離部を通じて、気液分離した後の水素ガスの圧力を増大させる水素ガス増圧部を備えていること、が好ましい。
この態様によれば、気液分離部から送出される水素ガスを、水素ガス増圧部に設定された圧縮比に基づいて、必要とされる所望の圧力まで増圧することができ、低圧の水素ガスと共に、高圧の水素ガスを提供することができる。
上記の態様においては、気液分離した後の水素ガスを一時的に蓄える水素ガスバッファ部を備えていること、が好ましい。
この態様によれば、水素ガス増圧部に対し、気液分離部と水素ガスバッファ部が非増圧側に接続され、水素ガス貯留部が増圧側に接続されて、水素ガス増圧部と連通する管に弁が配管されている場合、水素ガス増圧部による昇圧工程で、この弁の開閉動作を制御して、生成された水素ガスの流通を制御するだけで、水素ガス増圧部を作動させることが可能になる。
上記の態様においては、前記水素ガス貯留部から供給される水素ガスを、酸素と化学反応させて発電を行う燃料電池部を備えていること、が好ましい。
この態様によれば、水素ガスに有するエネルギから変換された電気エネルギは、例えば、工場内の電気設備、家電製品等、商用や家庭用の一般電源として、様々な電気機器や、モータ等の駆動源に適用することが可能になる。
上記の態様においては、前記燃料電池部で発電した電気を蓄える二次電池部を備えていること、が好ましい。
この態様によれば、本発明の水素ガス製造システムで必要とされる電源は、全て二次電池部から供給できるほか、二次電池部の電力を、本発明の水素ガス製造システム以外の需要先にも、供給することができる。そのため、本発明の水素ガス製造システムの作動にあたり、外部電源が不要となることから、本発明の水素ガス製造システムは、省エネルギ化に適すシステムになり得る。
上記の態様においては、前記反応器部と連通する管と前記反応前水溶液貯留部との接続部位には、弁が設けられ、前記弁は、フロートを有し、前記反応前水溶液貯留部に貯留した前記キレート剤水溶液による浮力で、前記フロートが上下動することにより、前記キレート剤水溶液の前記管への流通を制御すること、が好ましい。
この態様によれば、反応前水溶液貯留部の液貯留槽に貯留されていたキレート剤水溶液が、管に全て流れ込み、液貯留槽内が空になると、管におけるキレート剤水溶液の流路を、フロートにより閉路することができる。これにより、反応器部へのキレート剤水溶液の供給が終了した以降、空気が、管を通じて、反応器部に流入することがないため、反応器部の槽内で生成される水素ガスは、外部からの空気と接触せず、より高い純度のガスに保つことができている。
本発明に係る水素ガスの製造方法、及び水素ガス製造システムによれば、より安全性の高い方法で水素ガスを生成するにあたり、低コストで、簡単に水素ガスを生成することができる。
実施形態に係る水素ガス製造システムの概要を示す説明図である。 図1に示す水素ガス製造システムで、反応前水溶液貯留部の弁の機能を説明する図であり、フロートの上昇で、第2配管の流路が開路された状態を示す図である。 図2に続き、フロートの下降で、第2配管の流路が閉路された状態を示す図である。 図1に示す水素ガス製造システムのキレート剤水溶液再生処理ユニットを示す説明図である。 図1に示す水素ガス製造システムの電気制御部を示すブロック図であり、主要な電装部品と電気関連部だけを電気制御部に接続した状態を示す図である。 図1に示す水素ガス製造システムにおいて、水素ガス増圧部でのピストンの動きと、第3〜第13電磁弁の開閉動作との関係について、説明する図である。 本実施形態に係る水素ガス製造方法に関する検証実験で、実施例1〜30及びその比較例に係る実験条件と共に、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量に関する実験結果をまとめて掲載した表である。 図7に示す実験結果のグラフである。 実施形態の変形形態1に係る水素ガス製造システムを示す説明図である。 図9に続き、変形形態2に係る水素ガス製造システムを示す説明図である。
以下、本発明に係る水素ガスの製造方法、及び水素ガス製造システムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る水素ガスの製造方法について、説明した後、本実施形態に係る水素ガス製造システムについて、説明する。
<水素ガスの製造方法>
本実施形態に係る水素ガスの製造方法は、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、安全に係る選定条件を満たす被反応金属Mと、水と共に、被反応金属Mと可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液CAと、を反応させ、被反応金属Mのキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させる。被反応金属Mは、例えば、数〜十数mm程度の大きさに形成された一片状、または粒状である。キレート剤水溶液CAの溶質となる溶解キレート剤は、安全に係る選定条件を満たす有機酸である。
ここで、「安全に係る選定条件」の定義について、説明する。まず、被反応金属Mの場合、本実施形態に係る水素ガスの製造方法で、使用する被反応金属Mに対する金属元素の安全に係る選定条件とは、例えば、毒物及び劇物取締法、消防法の危険物、鉛中毒予防規則等、物質の危険性に関して規定された法規制に基づき、このような法規制に該当する有害な金属元素を、使用の対象から避けて排除するための条件と定義している。すなわち、安全に係る選定条件は、いわば人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼす虞がなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる金属元素に限定して選択するために適用する条件である。
また、溶解キレート剤の場合には、使用する溶解キレート剤に対する有機酸の安全に係る選定条件とは、例えば、毒物及び劇物取締法等による危険物関連の法規制のほか、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)や、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)、化学物質管理促進(PRTR:Pollutant Release and Transfer Register)制度で対象となる化学物質(第一種指定化学物質)等、物質の危険性を示唆する法規制に基づき、このような法規制に該当する有害な有機酸を、使用の対象から避けて排除するための条件と定義している。すなわち、安全に係る選定条件は、いわば人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼす虞がなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる有機酸に限定して選択するために適用する条件である。
<被反応金属M>
具体的に説明する。被反応金属Mは、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉄、またはスズのうち、いずれか1種以上に該当する金属であり、本実施形態では、被反応金属Mは、マグネシウムである。マグネシウムは、比重1.74、融点650℃、周期表第2族に属する卑金属元素の一種で、結晶構造を六方最密充填構造とし、常温では、比較的柔らかい固体の金属である。また、マグネシウムは、酸化数2価で酸素と結合し易く、強い還元作用を有するほか、二酸化炭素、水、亜硫酸等との反応で、不動態被膜を形成する物性を有するため、腐食は進行しない。加えて、マグネシウムは、人や動物、植物を含んだ生態系への生命活動を支える上で、必須となるミネラル元素の一つであり、とりわけ植物の光合成に必要なクロロフィルで、配位結合の中心に不可欠な元素であることから、安全性の高い金属元素である。
<溶解キレート剤>
キレート剤水溶液CAの溶質に用いる溶解キレート剤は、チオール基、ホスフィノ基、イミノ基、リン酸基、グルコン酸基、カルボキシル基、スルフィド基、アミノ基、または酢酸基のうち、いずれかの官能基を有する有機化合物であること、あるいは、N保護アミノ酸、C保護アミノ酸、またはピリジン化合物のうち、いずれかに該当する有機化合物である。具体的には、本実施形態では、溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、ε−ACE、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA:Iminodiacetic acid)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する有機酸である。本実施形態で用いるキレート剤水溶液CAは、安全に係る選定条件を満たすこれらの有機酸を、溶解キレート剤として、水と共に含む水溶液である。
次に、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応により、水素ガスが発生するまでの一連の過程について、説明する。本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、前述したように、被反応金属Mが、マグネシウムであり、キレート剤水溶液CAは、前述した被反応金属Mと可溶な溶解キレート剤を溶質として、水に溶解した水溶液である。そのため、被反応金属Mが、キレート剤水溶液CA中に浸漬された状態になると、被反応金属M(マグネシウム)は、キレート剤水溶液CA中の水に溶解し、被反応金属Mの陽イオンと、水の水酸化物イオン(陰イオン)とにより、水酸化化合物(水酸化マグネシウム)が生成される。
そして、キレート剤水溶液CA中では、水酸化化合物の金属イオン(マグネシウムイオン)と、キレート剤水溶液CA中の溶質、すなわち溶解キレート剤とが反応して、被反応金属Mのキレート錯体が生成される。その一方で、被反応金属Mのキレート錯体の生成が進行している間、水酸化化合物において、金属イオンと結合していた水酸化物イオンは、金属イオンと解離することにより、水が生成すると共に、水素ガスが発生する。また、水酸化物イオンが金属イオンから解離することで、生成した被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RAのpHは、よりアルカリ側にシフトした液性になる。
具体的に説明する。マグネシウムは、水との反応で、水酸化マグネシウムを生成するとき、はじめに僅かな量の水素ガスが発生するものの、水との反応時に、不動態被膜を形成する物性を有するため、水との接触で不動態被膜がマグネシウム表面に形成されてしまうと、それ以降、マグネシウムと水との反応が進行せず、水素ガスは発生しなくなる。そこで、本実施形態に係る水素ガスの製造方法は、水素ガスを発生させるにあたり、このような不動態被膜が被反応金属Mに形成しないよう、あるいは形成してしまった被反応金属Mの不動態被膜を除去できるよう、水に代えて、キレート剤水溶液CAを、被反応金属Mに接触させて、被反応金属Mと反応させている。
すなわち、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、被反応金属Mであるマグネシウムが、キレート剤水溶液CA中に浸漬された状態になると、被反応金属Mのキレート錯体の生成工程で、以下の反応が生じると考えられる。
Mg+2HO → Mg(OH)+H …化学反応式(1)
2HL+Mg(OH) → Mg(HL) 2++2OH …電離式(2)
2HL+Mg(OH) → MgL+2HO …化学反応式(3)
但し、L:キレート錯体の配位子
マグネシウムが、キレート剤水溶液CA中の水に接触すると、化学反応式(1)に示すように、水素ガスが発生すると共に、水酸化マグネシウム(Mg(OH))が生成される。すると、キレート剤水溶液CAに溶けている溶解キレート剤(HL)が、生成した水酸化マグネシウムの電離を促す。これにより、電離式(2)及び化学反応式(3)に示すように、水酸化マグネシウムの電離によりイオン化したマグネシウムイオン(Mg2+)と、溶解キレート剤の官能基とが、キレート反応を起こして、キレート錯体(Mg(HL) 2+、MgL)が生成される。
本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、マグネシウムが、キレート剤水溶液CA中に浸漬されると、化学反応式(1),(3)及び電離式(2)に示すように、反応が進行して、水素ガスが発生するほか、水と水酸化物イオンと共に、キレート錯体が生じる。生成した被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RAのうち、水酸化物イオンは、生じた水素イオンと結合して水になり、水は、化学反応式(1)に示すように、反応水溶液RA中に残る未反応分のマグネシウム片と反応する。化学反応式(1),(3)及び電離式(2)による一連の反応が、はじめにキレート剤水溶液CAに投入した全てのマグネシウム片が完全に溶けるまで持続しながら、水素ガスを発生させる。
なお、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、被反応金属Mと水との反応を進行させて、水素ガスを発生する上で、安全に係る選定条件を満たした有機酸の溶解キレート剤を含むキレート剤水溶液CAを使用しているが、キレート剤水溶液CA以外にも、係る反応を妨げる被反応金属Mの不動態被膜を破壊することはできる。例えば、本実施形態の安全に係る選定条件から外れ、取扱いに注意が必要となり、本発明に係る水素ガスの製造方法に基づく使用には好ましくないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等、強酸とされる無機塩酸等でも、被反応金属Mに形成された不動態被膜を破壊することはできる。また、安全に係る選定条件を満たした溶解キレート剤を使用しても、不動態被膜の破壊が十分でないとされる場合には、被反応金属Mと水との接触で不動態被膜が形成され始めた初期段階だけ、このような無機塩酸等を使用して、はじめに不動態被膜に一撃を加えておいても良い。
ところで、電離式(2)及び化学反応式(3)に示すように、双方の反応が進行すると、キレート錯体(Mg(HL) 2+、MgL)が生成され、この被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RA内に残留する。本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、キレート剤水溶液CAに浸漬した全てのマグネシウム片が完全に溶けた後、残留した被反応金属Mのキレート錯体を含む反応水溶液RAと、炭酸ガスとをさらに反応させ、炭酸塩(炭酸マグネシウム)を析出させる一方で、キレート剤水溶液CAの溶質である溶解キレート剤を再生させると共に、水素ガスを発生させる。
接触させる炭酸ガスは、純度の高い炭酸ガスに限らず、大気中に含まれる二酸化炭素のほか、例えば、炭化水素系の液体燃料や、石炭や樹木等の固体燃料を燃焼させた時に発生する燃焼排ガス、生石灰生成時に出る炭酸カルシウム燃焼排ガス、バイオガス等による種々の排ガスを用いることができる。但し、このような排ガスを用いる場合、反応水溶液RAとの接触前に、吸着フィルタ等を通じて、排ガスに混在する塵埃等の異物を除去しておくことが好ましい。後に記載する電離式(6),(7)に示す過程を、より確実に行うためである。また、排ガスに含まれる炭酸ガスの濃度が、特に10wt%以下になっていると、電離式(6),(7)に示す過程で、マグネシウムキレートのキレート錯体から炭酸マグネシウムが生成される効率が、著しく低下するため、炭酸ガスの濃度が、10wt%を超えていることが好ましい。
キレート剤水溶液CAの溶質である溶解キレート剤が特に、例えば、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、アラニン、グリシン、システイン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、イソロイシン、フェニルアラニン、トレオニン等、アミノ酸に属する有機化合物(以下、「アミノ酸系物質」と称する。)である場合、アミノ酸の反応水溶液RAと、炭酸ガスとを反応させると、炭酸マグネシウムの析出と共に、キレート剤水溶液CAを再生することができる。そのため、再び電離式(2)及び化学反応式(3)に示す段階で、キレート剤水溶液CAを繰り返し使用することができる。
具体的に説明する。本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、キレート剤水溶液CAに浸漬した全てのマグネシウム片が、完全に溶けたら、被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RAに、炭酸ガスを接触させると、炭酸マグネシウムの析出工程では、以下の反応が生じるものと考えられる。
炭酸マグネシウムの析出工程では、
CO+HO → HCO …化学反応式(4)
CO→ HCO +H …電離式(5)
Mg(HL) 2++HCO → MgCO+2HL+H …電離式(6)
MgL+HCO →MgCO+HL+L …電離式(7)
本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、炭酸ガスが、被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RA中に晒されると、化学反応式(4)に示すように、炭酸ガスが反応水溶液RA中の水に溶解して炭酸を生じるが、炭酸は、反応水溶液RA中で、電離式(5)に示すように、炭酸水素イオン(HCO )と水素イオン(H)とに電離する。また、反応水溶液RA中では、電離式(2)及び化学反応式(3)の段階で、反応水溶液RA内に残留した被反応金属Mのキレート錯体(Mg(HL) 2+、MgL)のマグネシウムイオン(Mg2+)が、新たに接触させた炭酸ガスに由来するこの炭酸水素イオン(HCO )と結合して、電離式(6),(7)に示すように、炭酸マグネシウム(MgCO)が生成し、析出する。なお、析出した炭酸マグネシウムを別の用途で使用するにあたり、高純度な炭酸マグネシウムが必要とされる場合、この炭酸マグネシウムには、アミノ酸系物質が多量に含まれているため、析出した炭酸マグネシウムを一旦、濾過した後に水洗いし、再び濾過を行ってから乾燥させて使用すると良い。
さらに、反応水溶液RAでは、炭酸水素イオン(HCO )は、キレート錯体(Mg(HL) 2+、MgL)の官能基と反応して、キレート錯体からキレート剤が電離して分離する。電離したキレート剤は、キレート剤水溶液CAの溶質として含有した前述の溶解キレート剤として、再生されたものである。特に、キレート剤水溶液CAの溶質である溶解キレート剤が、アミノ酸系物質であると、このような炭酸マグネシウムの析出工程で、アミノ酸系物質を有する反応水溶液RA中に、キレート錯体から分離して生成されたキレート剤は、キレート剤水溶液CAの溶質の態様に戻され易くなる。
換言すれば、キレート剤水溶液CAの溶質である溶解キレート剤が、アミノ酸系物質のみからなると、電離式(2)及び化学反応式(3)に示す反応時に、水酸化化合物を電離してマグネシウムイオン(Mg2+)のイオン化を促し、電離式(6),(7)に示す反応時に、キレート錯体から炭酸塩(炭酸マグネシウム)を生成するまでの過程において、この溶解キレート剤は、いわば触媒として作用する。そのため、キレート剤水溶液CAの溶質である溶解キレート剤は、次の被反応金属Mのキレート錯体の生成工程でも、再使用が可能になり、繰返し使用できるので有益である。
また、炭酸マグネシウムの析出工程を行う上で、反応水溶液RAでは、等電点がpH4〜8の範囲内であることが好ましい。その理由として、炭酸ガスの第一酸解離定数(pKa1)に対し、±1.5の範囲内であれば、炭酸ガスは、所望の緩衝能を発揮できる。炭酸ガスの第一酸解離定数とは、電離式(5)による反応が進行するときの炭酸ガスのpHであり、pKa1=6.35である。アミノ酸を有する反応水溶液RAが、炭酸ガスの第一酸解離定数に対し±1.5の範囲内で、この反応水溶液RAの等電点が、4.85〜7.85(=6.35±1.5)の範囲内にあれば、参照する電離式(6),(7)の左辺で、炭酸ガスの緩衝能範囲と重なることで、マグネシウムのキレート錯体(Mg(HL) 2+、MgL)の生成に向け、炭酸ガスが、炭酸水素イオン(HCO )と水素イオン(H)に電離する反応と、マグネシウムのキレート錯体のマグネシウムイオン(Mg2+)と、この炭酸ガスに由来して電離した炭酸水素イオン(HCO )との結合で炭酸マグネシウム(MgCO)を生成する反応との平衡が、バランス良く維持できて促進される。従って、アミノ酸の緩衝能範囲が等電点から±1.5であれば、アミノ酸はある程度の緩衝能を発揮するので、炭酸ガスとアミノ酸との緩衝能範囲が重なるように、アミノ酸を有する反応水溶液RAの等電点は、pH4〜8の範囲であれば良い。
析出工程において、電離式(6),(7)に示す反応により、析出した炭酸マグネシウムは、その後の回収工程で、濾過などの公知の方法により回収される。回収された炭酸マグネシウムの用途は、例えば、天然ゴムや合成ゴムの増強剤、耐火断熱材料、肥料原料、インク・塗料の添加物、ガラス添加剤、製紙、化粧品添加物、食品添加物等、主に工業用向けの原料として利用することができる。
<水素ガス製造システム>
次に、本実施形態に係る水素ガス製造システムについて、説明する。図1は、実施形態に係る水素ガス製造システムの概要を示す説明図である。なお、図1には、水素ガス製造システムを構成する主要な部分だけが図示されている。水素ガス製造システム1は、前述した本実施形態に係る水素ガスの製造方法に基づき、原料となる被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとを反応させて、水素ガスの生成を行うと共に、その生成過程で生じた被反応金属Mのキレート錯体と炭酸ガスとの反応処理で、炭酸マグネシウムの析出と溶解キレート剤の再生を行う装置である。本実施形態では、図1に示すように、水素ガス製造システム1は、大別して、反応器部2と、反応前水溶液貯留部3と、気液分離部4と、水素ガス貯留部5と、廃液貯留部6と、キレート剤水溶液再生処理ユニット7と、水素ガス増圧部8と、水素ガスバッファ部9と、燃料電池部10と、インバータ11と、二次電池部12と、電気制御部13等を具備している。
<反応器部2>
反応器部2は、液密かつ気密に構成された反応槽21(槽)を有し、反応槽21内で、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応を行い、被反応金属Mのキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させるユニットである。被反応金属Mは、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、前述した特定条件を満たす金属である。キレート剤水溶液CAは、水と共に、被反応金属Mと可溶で、かつ前述した安全に係る選定条件を満たす溶解キレート剤を、溶質として含有した水溶液である。反応槽21には、第1圧力計171と第1安全弁141が配設されている。第1圧力計171は、反応槽21内の圧力を計測する。第1安全弁141は、予め設定した閾値を超える圧力が反応槽21内に作用したときに、反応槽21内を、許容範囲内の圧力に調整する。
<反応前水溶液貯留部3>
反応前水溶液貯留部3は、キレート剤水溶液CAを反応器部2に供給するにあたり、キレート剤水溶液CAを貯留可能な液貯留槽31を有したユニットである。液貯留槽31には、第1配管101と第2配管102(反応器部と連通する管)が接続されている。第1配管101は、液貯留槽31にキレート剤水溶液CAを補給するのに用いる管であり、第1配管101には、ノーマルクローズ仕様の第1電磁弁121が配管されている。第2配管102は、反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31内と反応器部2の反応槽21内とを連通して接続された管であり、第2配管102には、ノーマルクローズ仕様の第2電磁弁122が配管されている。
図2は、図1に示す水素ガス製造システムで、反応前水溶液貯留部の弁の機能を説明する図であり、フロートの上昇で、第2配管の流路が開路された状態を示す図である。図3は、図2に続き、フロートの下降で、第2配管の流路が閉路された状態を示す図である。図2及び図3に示すように、反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31と、第2配管102との接続部位32では、キレート剤水溶液CAの流路における断面積が液貯留槽31側から第2配管102側に向けて小さくなるよう、キレート剤水溶液CAの流路内壁が、下向き(図2及び図3中、下方)に窄むテーパ形状に形成されている。この接続部位32には、弁35が設けられている。
弁35は、キレート剤水溶液CA(比重は概ね1.0)に比べ、比重が小さい球体形状のフロート36と、規制部材37を有し、接続部位32の一部である弁座に対し、弁体であるフロート36が当接または離間可能となっている。フロート36は、接続部位32のテーパ面のうち、液貯留槽31側の端部と第2配管102側の端部との間で、外周面を接触できる大きさである。液貯留槽31には、多孔開き板(パンチプレート)により形成されたキャップ状の規制部材37が、接続部位32を跨いで塞ぐ態様に設置されており、フロート36は、液貯留槽31に装着した規制部材37と、接続部位32のテーパ面との間に配置されている。
フロート36は、反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31に貯留したキレート剤水溶液CAによる浮力で、上下動することにより、キレート剤水溶液CAの第2配管102への流通を制御する。すなわち、キレート剤水溶液CAが、図2に示すように、規制部材37を超えて十分に液貯留槽31に貯められている状態では、フロート36がキレート剤水溶液CA中に浮き、フロート36と接続部位32のテーパ面との間で、キレート剤水溶液CAの流路が開路できるため、キレート剤水溶液CAを、反応器部2の反応槽21に供給することができる。その反対に、キレート剤水溶液CAの貯留量が、規制部材37より低い位置まで下がった後、図3に示すように、キレート剤水溶液CAが液貯留槽31に全く貯留されていない状態になると、フロート36が接続部位32のテーパ面に当接する。これにより、第2配管102内のキレート剤水溶液CAの流路が閉路され、反応器部2の反応槽21へのキレート剤水溶液CAの供給が遮断される。
<気液分離部4>
気液分離部4は、生成した被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RAと、水素ガスとを、気液混合した状態から分離させるユニットであり、内部に気液分離材42(分離材)を充填した気液分離槽41を具備している。気液分離材42は、例えば、ゼオライト等、多孔質を有する材料や、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの発熱反応で、高温化している気液混合状態の水素から気液分離槽41を保護するためのグラスウール、活性炭等からなり、ミスト状や水滴状の反応水溶液RAによる水分や、反応水溶液RAの臭いを吸着する。気液分離槽41に設けた第2安全弁142は、予め設定した閾値を超える圧力が気液分離槽41内に作用したときに、気液分離槽41内を、許容範囲内の圧力に調整する。気液分離部4の気液分離槽41と反応器部2の反応槽21とが、第3配管103により連通して接続されている。
反応器部2では、ミスト状の反応水溶液RAと混合した気液混合状態の水素が生成されるため、気液混合状態の水素が、気液分離材42を貫通した第3配管103内を通じて、気液分離槽41底部に位置する第3配管103の先端開口から、気液分離槽41内の流入側43に送出される。流入側43に送出された気液混合状態の水素は、気液分離材42を通過すると、気液分離材42によるコアレッシング(凝集)作用に基づいて、ミスト状の反応水溶液RAが、その臭いと共に、気液分離材42に吸着されて除去される。そのため、気液分離材42の通過後、気液混合状態から分離した後の水素ガスは、反応水溶液RAをほとんど含まない高純度の水素ガスに精製される。高純度の水素ガスは、気液分離槽41内の流出側44に送出され、第4配管104を通じて水素ガス貯留部5、または水素ガス増圧部8に向けて供給される。
<水素ガス貯留部5>
水素ガス貯留部5は、気液分離部4を通じて、気液分離した後の水素ガスを、ガス貯留槽51内で気密に貯留するユニットであり、多孔質吸着剤52を充填した内部に、水素ガスを貯留するガス貯留槽51を具備している。多孔質吸着剤52は、例えば、ゼオライト等、多孔質を有する材料や、活性炭等からなり、露点を超えて生成した反応水溶液RAの水分や、反応水溶液RAの臭いを吸着する。ガス貯留槽51に設けた第3安全弁143は、予め設定した閾値を超える圧力がガス貯留槽51内に作用したときに、ガス貯留槽51内を、許容範囲内の圧力に調整する。水素ガス貯留部5のガス貯留槽51と気液分離部4の気液分離槽41とが、第4配管104により連通して接続されており、気液分離部4や水素ガス増圧部8から送出される水素ガスが、ガス貯留槽51に供給される。第4配管104には、気液分離部4側から順に、第1逆止弁151と、ノーマルオープン仕様の第10電磁弁130が配管されている。気液分離部4を通じた後の水素ガスは、多孔質吸着剤52を充填したガス貯留槽51内の下、高圧下の状態で貯留され、この水素ガスに残っている微量のミスト状の反応水溶液RAとその臭いは、多孔質吸着剤52でのコアレッシング作用に基づいて、多孔質吸着剤52に吸着されて、回収される。
水素ガス貯留部5に貯留された高圧の水素ガスは、ガス貯留槽51に接続する第10配管110を通じて、水素ガスの提供先に供給される。第10配管110には、水素ガス貯留部5側から順に、当該第10配管110の第3分岐点S3で並列に接続する第2圧力計172と、ノーマルクローズ仕様の第7電磁弁127と、第3減圧弁163が配管されている。第2圧力計172は、ガス貯留槽51内の圧力を計測する。
<廃液貯留部6>
反応器部2の反応槽21と連通する第13配管113、気液分離部4の気液分離槽41と連通する第14配管114、及び水素ガス貯留部5のガス貯留槽51と連通する第15配管115はそれぞれ、廃液貯留部6の廃液貯留槽61に接続されている。廃液貯留部6は、反応器部2、気液分離部4、及び水素ガス貯留部5から排出された反応水溶液RAや、ミスト状の反応水溶液RAを廃液貯留槽61内に貯めて回収するユニットである。廃液貯留槽61は、反応器部2の反応槽21に供給するキレート剤水溶液CAに対し、1バッチ処理分の必要量を超える十分な量を貯留できる容積を有している。第13配管113には、ノーマルクローズ仕様の第3電磁弁123が配管され、第14配管114には、ノーマルクローズ仕様の第4電磁弁124が配管され、第15配管115には、ノーマルクローズ仕様の第6電磁弁126が配管されている。なお、何らかの理由により、万が一、反応水溶液RAや、ミスト状の反応水溶液RAが、水素ガス貯留部5のガス貯留槽51に溜まった場合に備え、第15配管115は、反応水溶液RA等を廃液貯留槽61に排出するためのドレン管として設けている。
<キレート剤水溶液再生処理ユニット7>
図4は、図1に示す水素ガス製造システムのキレート剤水溶液再生処理ユニットを示す説明図である。なお、図4をはじめ、図1、図9、及び図10には、反応水溶液RA中に配置したノズルを通じて、気体を反応水溶液RAに吹き込む態様の装置が、図示されているが、この装置は、バブリング方式に特定した構造のみを例示しているのではなく、バブリング方式以外に、エジェクタ方式やインジェクタ方式等も包含した気体接触のイメージ図として、あくまでも図示されたものである。図1及び図4に示すように、キレート剤水溶液再生処理ユニット7は、反応水溶液RAを貯留する反応水溶液貯留槽71と、反応水溶液貯留槽71内に貯めた反応水溶液RAに、炭酸ガスを供給可能な炭酸ガス供給部72と、を有する。反応水溶液RAは、1バッチ処理毎に、廃液貯留部6の廃液貯留槽61から運び出されて、反応水溶液貯留槽71内に貯められる。炭酸ガス供給部72は、ファンの回転により、二酸化炭素を含んだ空気等の気体を送風して、ガス送出管73を通じて、この気体を、エジェクタ方式やインジェクタ方式により、反応水溶液貯留槽71内の反応水溶液RA中に吹き込む。
反応水溶液RA中への気体の吹き込みを、エジェクタ方式やインジェクタ方式で行うと、電離式(5)〜(7)に示す反応の段階で、バブリング方式に比べ、炭酸ガスから炭酸マグネシウムまでの生成過程が、より効率的に進行するようになる。具体的には、被反応金属Mのキレート錯体(マグネシウムのキレート錯体)から炭酸マグネシウムが生成されるまでの所要時間が、バブリング方式との対比で、約50%短縮される。
<水素ガス増圧部8>
水素ガス増圧部8は、気液分離部4を通じて、気液分離した後の水素ガスの圧力を増大させるユニットである。水素ガス増圧部8は、2つの室内が互いに異なる径で形成されたシリンダ81と、このシリンダ81の2つの室内を同時に摺動するピストン82と、を有する。シリンダ81の径大側室内84は、第4配管104と、この第4配管104の第1分岐点S1で並列接続された第5配管105とにより、気液分離部4の気液分離槽41と連通して接続されている。第5配管105には、径大側室内84側から順に、ノーマルオープン仕様の第13電磁弁133と、第3逆止弁153と、ノーマルクローズ仕様の第5電磁弁125と、真空排気装置190が配管されている。
真空排気装置190は、キレート剤水溶液再生処理ユニット7を除いた水素ガス製造システム1内において、反応器部2の反応槽21や気液分離部4の気液分離槽41、水素ガス増圧部8のシリンダ81に対し、径大側室内84と径小側室内83のほか、第3配管103、第4配管104、第5配管105、第7配管107等の水素系配管回路に残留する空気等を、外部に排気する装置である。すなわち、水素ガス製造システム1の製造後、初めてこの水素ガス製造システム1を運転して使用するにあたり、それより以前の製造段階から水素系配管回路内に存在していた空気等が、製造後も残留したままであり、この空気等を脱気するのに、真空排気装置190が使用される。真空排気装置190により、残留する不要な空気等が、水素系配管回路から排気されるため、水素ガス製造システム1で生成される水素ガスは、空気含有量の少ない高純度な水素ガスとすることができる。
また、シリンダ81の径大側室内84は、第8配管108により、水素ガスバッファ部9の吸着剤収納容器91と連通して接続されている。第8配管108には、ノーマルクローズ仕様の第8電磁弁128が配管されている一方で、この第8配管108の第7分岐点S7で並列接続された第1圧力センサ181が配管されている。第1圧力センサ181は、径大側室内84の圧力を計測する。
シリンダ81の径小側室内83は、第4配管104と、この第4配管104の第2分岐点S2で並列接続された第12配管112により、気液分離部4の気液分離槽41と連通して接続されている。第12配管112には、径小側室内83から順に、ノーマルオープン仕様の第12電磁弁132と、第2逆止弁152が配管されている。第7配管107は、第5配管105の第5分岐点S5で並列接続されていると共に、第12配管112の第6分岐点S6で並列接続されている。第7配管107には、ノーマルオープン仕様の第11電磁弁131と、径小側室内83の圧力を計測する第2圧力センサ182が配管されている。呼吸口室内85に接続する第6配管106は、呼吸口室内85に、空気を吸入、または吸入した空気を排出するために設けられている。
<水素ガスバッファ部9>
水素ガスバッファ部9は、燃料電池部10で消費する水素ガスを、燃料電池部10に供給するにあたり、シリンダ81の径大側室内84から送出される気液分離後の水素ガスを、燃料電池部10に供給する前に、吸着剤収納容器91に一時的に蓄えておくユニットである。水素ガスバッファ部9は、多孔質吸着剤92を充填した内部に、水素ガスを貯留する吸着剤収納容器91を具備している。多孔質吸着剤92は、例えば、ゼオライト等、多孔質を有する材料や、活性炭等からなり、燃料電池部10に、水分の含有を極力排除した純度の高い水素ガスを供給するにあたり、微量ながらも僅かに残留する反応水溶液RAの水分や、反応水溶液RAの臭いを吸着する。吸着剤収納容器91に設けた第4安全弁144は、予め設定した閾値を超える圧力が吸着剤収納容器91内に作用したときに、吸着剤収納容器91内を、許容範囲内の圧力に調整する。
<燃料電池部10>
燃料電池部10は、水素ガス貯留部5と水素ガスバッファ部9から供給される水素ガスを、酸素と化学反応させて発電を行う装置であり、水素ガスに有するエネルギを電気エネルギに変換するユニットである。燃料電池部10で発電した直流電力は、インバータ11と二次電池部12に送電される。燃料電池部10と水素ガス貯留部5とは、第10配管110と、この第10配管110の第4分岐点S4で並列接続された第11配管111により、燃料電池部10と接続されている。第11配管111には、第2減圧弁162が配管されている。また、燃料電池部10と水素ガスバッファ部9とは、第9配管109により、接続されている。第9配管109には、燃料電池部10側から順に、第1減圧弁161、ノーマルクローズ仕様の第9電磁弁129と、この第9配管109の第8分岐点S8で並列接続された第3圧力計173が、配管されている。第3圧力計173は、水素ガスバッファ部9の吸着剤収納容器91内の圧力を計測する。
<インバータ11>
インバータ11は、第1配線118により、燃料電池部10と電気的に接続されており、燃料電池部10から供給された電力を、直流から交流に変換する。インバータ11により変換された交流電源は、電気制御部13により、系統電源として使用できる出力電圧や周波数帯に制御され、例えば、工場内の電気設備、家電製品等、商用や家庭用の一般電源として、様々な電気機器に適用することができる。
<二次電池部12>
二次電池部12は、燃料電池部10で発電した電気を蓄える蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ナトリウムイオン電池等である。二次電池部12は、第2配線119により、燃料電池部10と電気的に接続されている。二次電池部12は、水素ガス製造システム1に装着された第1電磁弁121等の電磁弁や、第1圧力センサ181等の圧力センサ、図示しない電装部品のほか、電気制御部13に供給するための電源となっている。その他、水素ガス製造システム1では、必要とされる電源は、全て二次電池部12から供給されている。なお、二次電池部12は、その機能を満たすものであれば、種類や容量、数量は特に限定されるものではない。
<電気制御部13>
図5は、図1に示す水素ガス製造システムの電気制御部について、主要な電装部品と電気関連部だけを示したブロック図である。電気制御部13は、マイクロプロセッサ、DSP(digital signal processor)、及びシーケンサなどを備えている。電気制御部13は、第1電磁弁121〜第13電磁弁133に対し、通電のON/OFF制御や、第1圧力センサ181と第2圧力センサ182の監視制御、燃料電池部10とインバータ11と二次電池部12とに対し、電気信号の入出力制御を行う。
具体的には、図5に示すように、例えば、第1圧力センサ181(増圧器大径側圧力センサ)、第2圧力センサ182(増圧器小径側圧力センサ)、燃料電池部10、インバータ11、及び二次電池部12のほか、各機器に装着された図示せぬ温度センサ、圧力センサ、電流電圧センサ、ガス漏れ検知センサ等に対し、各々の出力信号が、電気制御部13に入力される。また、第3電磁弁123(反応容器ドレン用電磁弁)、第2電磁弁122(新液供給電磁弁)、第1電磁弁121(新液補給電磁弁)、第10電磁弁130(水素貯留器入口電磁弁)、第5電磁弁125(ガス置換用電磁弁)、真空排気装置190(ガス置換用真空排気装置)、第4電磁弁124(気液分離器ドレン用電磁弁)、第13電磁弁133(増圧器入口電磁弁)、第8電磁弁128(増圧器大径側出口電磁弁)、第12電磁弁132(増圧器小径側出口電磁弁)、第11電磁弁131(増圧器切替電磁弁)、第9電磁弁129(バッファタンク出口電磁弁)、第7電磁弁127(水素貯留器出口電磁弁)、第6電磁弁126(水素貯留器ドレン用電磁弁)、燃料電池部10、二次電池部12、及びインバータ11等に対し、各々の制御信号が、電気制御部13から出力される。
また、電気制御部13は、水素ガス製造システム1内の各ユニットにおいて、ユニット毎に温度値や圧力値を管理する制御を行うほか、水素ガス製造システム1内で水素ガスが漏洩した場合に備え、水素ガスの漏れを検知して警報を出す回路を有し、ガス漏れの検出と報知を行うために装着された各種機器類の電気制御を行う。また、電気制御部13は、二次電池部12で行う充電または放電に対し、燃料電池部10からの電力の過不足を回避する制御回路を備えている。さらに、電気制御部13は、ユニットで、温度や圧力に異常が生じた場合や、異常な過負荷が印加された場合に備え、ユニットを事前に保護する回路を備えている。
次に、水素ガス製造システム1で水素ガスを製造するにあたり、水素ガス製造システム1の運転方法について、説明する。水素ガス製造システム1の運転にあたり、図2に示すように、反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31には、1バッチ処理分に必要な量のキレート剤水溶液CAが、液貯留槽31に貯められており、弁35のフロート36は、液貯留槽31に貯留したキレート剤水溶液CAに基づく浮力により、キレート剤水溶液CA中に浮上して規制部材37と接触した状態になっている。この状態では、フロート36が浮上しているため、フロート36と接続部位32のテーパ面との間で、キレート剤水溶液CAの流路が開路できており、キレート剤水溶液CAが、第2配管102に向けて供給可能となっている。また、生成させる水素ガスの発生量に応じた必要量だけ、一片状または粒状の被反応金属Mを反応器部2の反応槽21に投入し、反応槽21は閉塞されて、密閉状態になっている。
はじめに、電気制御部13は、通電により第5電磁弁125を開路した後、真空排気装置190を作動させ、水素ガス製造システム1内のうち、主に気液分離部4、水素ガス貯留部5、及び水素ガス増圧部8や、これらに接続する第4配管104等の配管内の空気を、真空排気装置190により、水素ガス製造システム1の外部に排気させる。このとき、第2電磁弁122〜第4電磁弁124、第6電磁弁126、第7電磁弁127、及び第9電磁弁129は閉路したままで、外気の流入を遮断しておく。第1電磁弁121、第5電磁弁125、第8電磁弁128、及び第10電磁弁130〜第13電磁弁133は、開路しておく。真空排気装置190による空気の排気が終了したら、電気制御部13は、第5電磁弁125を閉路して、真空排気装置190の作動を停止する。
次に、電気制御部13が、通電により第1電磁弁121と第2電磁弁122を開路すると、キレート剤水溶液CAが、反応器部2の反応槽21に供給される。キレート剤水溶液CAの供給量は、被反応金属Mの投入量に応じた必要量であり、電気制御部13による第2電磁弁122の弁開閉制御に基づいて、設定される。反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31に貯留されていたキレート剤水溶液CAが、全て第2配管102に流れ込み、液貯留槽31内が空になれば、電気制御部13は、第1電磁弁121と第2電磁弁122を閉路する。なお、第1電磁弁121を開路したまま、第2電磁弁122だけを閉路して、次のバッチ処理分に必要なキレート剤水溶液CAを、予め反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31に貯めて置いても良い。
次に、反応器部2の反応槽21では、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応により、ミスト状の反応水溶液RAと混合した気液混合状態の水素が生成され、第3配管103を通じて、気液分離部4の気液分離槽41内の流入側43に送出される。次に、この気液混合状態の水素が、気液分離材42を通過すると、気液分離材42によるコアレッシング(凝集)作用に基づき、ミスト状の反応水溶液RAだけが、水素ガスと分離して、気液分離槽41の底部に落下し、第14配管114を通じて、廃液貯留部6の廃液貯留槽61に回収される。他方、気液混合状態から分離した水素ガスは、一例として、12.8MPa程度の圧力で、気液分離槽41内の流出側44に送出され、第4配管104を通じて水素ガス貯留部5や、水素ガス増圧部8に向けて送出される。
次に、気液分離部4の気液分離槽41から水素ガス貯留部5に送出された水素ガスは、水素ガス貯留部5のガス貯留槽51に一旦貯留され、ガス貯留槽51に貯留された高圧の水素ガスは、時間差を有した利用で必要とされるときに、第10配管110を通じて、水素ガスの提供先に供給される。あるいは、ガス貯留槽51に貯留した高圧の水素ガスは、第2減圧弁162により、燃料電池部10の発電過程で必要とされる水素ガスの圧力値まで調整した上で、燃料電池部10に供給される。
また、気液分離部4の気液分離槽41から水素ガス増圧部8に送出される水素ガスが、水素ガス増圧部8を流通すると、水素ガス増圧部8の流通後の状態にある水素ガスは、水素ガス増圧部8の流通前の状態に比べ、増圧される。水素ガス増圧部8のシリンダ81では、シリンダ径が、径小側室内83と径大側室内84で異なるため、径大側室内84の断面と径小側室内83の断面との面積比(圧縮比)に基づいて、水素ガスを、先に例示した圧力12.8MPaよりも大きい所望の圧力まで簡単に昇圧することができる。本実施形態では、水素ガス製造システム1は、径大側室内84と径小側室内83との面積比を、2:1に設定しているため、径小側室内83の圧力は、径大側室内84側の2倍となっており、実際に第2圧力センサ182による測定値は、第1圧力センサ181による測定値の2倍になっている。なお、水素ガス増圧部8のシリンダ81における圧縮比は、2:1に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
水素ガス増圧部8の動作について、具体的に説明する。図6は、水素ガス増圧部でのピストンの動きと、第3〜第13電磁弁の開閉動作との関係について、説明する図である。水素ガス増圧部8で、流入した水素ガスを昇圧して送出するまでの昇圧工程は、図6に示すように、第1工程と第2工程を経る。まず、第1工程では、電気制御部13は、第3電磁弁123〜第13電磁弁133のうち、第8電磁弁128、第9電磁弁129、及び第11電磁弁131を開路すると共に、その残りである第3電磁弁123〜第7電磁弁127、第10電磁弁130、第12電磁弁132、及び第13電磁弁133を閉路させる。気液分離部4の気液分離槽41から送出される水素ガスが、第4配管104を経て、第1分岐点S1で分岐した第12配管112を通じて、シリンダ81の径小側室内83に送出されると、径小側室内83の上昇端に位置していたピストン82は、径大側室内84の下降端の位置まで移動し、この下降端の位置で停止する。第1工程は、上昇端に位置するピストン82が下降端の位置で停止するまでの工程である。
第1工程の実施により、径大側室内84に存在している水素ガスは、第8配管108を通じて、水素ガスバッファ部9の吸着剤収納容器91に向けて送出され、吸着剤収納容器91を通過して燃料電池部10に供給される。このとき、吸着剤収納容器91内に流入した水素ガスの圧力は、第1工程の開始直後、一時的に上昇するが、水素ガスバッファ部9から供給された水素ガスが、燃料電池部10で発電処理を進行していく上で、逐次消費されていくと、吸着剤収納容器91内では水素ガスの圧力は、低圧になった状態で安定する。ピストン82が、径大側室内84の下降端の位置に到達して停止状態になると、径大側室内84の圧力変動がなくなるため、第1圧力センサ181が、径大側室内84で略一定となった圧力を検出した時点で、電気制御部13は、第1工程を終了する。
次に、第1工程の終了後、第1工程に続く第2工程では、電気制御部13は、第3電磁弁123〜第13電磁弁133のうち、第9電磁弁129、第12電磁弁132、及び第13電磁弁133を開路すると共に、その残りである第3電磁弁123〜第8電磁弁128、第10電磁弁130、及び第11電磁弁131を閉路させる。第1工程以降、継続的に気液分離部4の気液分離槽41から送出される水素ガスは、第4配管104を経て、第1分岐点S1で分岐した第12配管112、第6分岐点S6で分岐した第7配管107、及び第5分岐点S5で分岐した第5配管105、及び第13電磁弁133を通じて、シリンダ81の径大側室内84に送出される。これにより、径大側室内84の下降端に位置していたピストン82は、呼吸口室内85の空気を、第6配管106を通じて排気しながら、径小側室内83の上昇端の位置まで移動し、この上昇端の位置で停止する。
第2工程は、下降端に位置するピストン82が上昇端の位置で停止するまでの工程である。ピストン82が、径小側室内83の上昇端の位置に到達して停止状態になると、径小側室内83の圧力変動がなくなるため、第2圧力センサ182が、径小側室内83で略一定となった圧力を検出した時点で、電気制御部13は、第2工程を終了する。
第2工程の実施により、径小側室内83に存在している水素ガスは、第12電磁弁132を通過し、第12配管112を通じて、水素ガス貯留部5に向けて送出され、ガス貯留槽51に貯えられる。水素ガス貯留部5に供給された水素ガスは、ガス貯留槽51内に貯留されるが、次第に水素ガスの圧力は、ガス貯留槽51内で徐々に高まるため、ガス貯留槽51内の水素ガスが所定の圧力値になった時点で、ガス貯留槽51内から水素ガスを流出させる必要がある。この場合、電気制御部13は、第7電磁弁127を開路させて、ガス貯留槽51内の水素ガスを、第10配管110を通じて、水素ガスの提供先、または燃料電池部10に供給する。
水素ガス貯留部5から供給された水素ガスが、燃料電池部10で発電処理を進行していく上で、逐次消費されていくと、ガス貯留槽51内では水素ガスの圧力は、低圧の状態のまま安定する。但し、水素ガス貯留部5では、水素ガスは、エネルギ密度をより高くした状態で蓄えられるため、たとえ燃料電池部10で消費されたとしても、水素ガスバッファ部9の吸着剤収納容器91内で貯留される水素ガスの圧力に比べ、水素ガス貯留部5における水素ガスの圧力は、高圧の状態で維持されることもある。
かくして、水素ガス増圧部8では、このような第1工程と第2工程とが、交互に複数回にわたり連続して繰り返されると、発生した水素ガスは、低圧側にある水素ガス増圧部8の径大側室内84から送出され、水素ガスバッファ部9を通じて燃料電池部10に供給され続けると共に、径大側室内84より高圧側にある水素ガス増圧部8の径小側室内83から送出され、水素ガス貯留部5を通じて燃料電池部10に供給され続ける。
なお、水素ガスバッファ部9から供給された水素ガスが、燃料電池部10の発電処理過程で、より多く消費されると、水素ガスバッファ部9の吸着剤収納容器91内を、より低圧に維持することができるため、水素ガス増圧部8において、第1工程と第2工程とによる繰返し動作が、連続して持続的に実施することができる。
次に、本実施形態に係る水素ガスの製造方法の効果を確認する目的で、水素ガス製造システム1を用いて、実験1〜実験31の検証実験を行った。検証実験は、被反応金属Mを数mm程度のマグネシウム片とした上で、被反応金属Mと反応させる水溶液の溶質を、実験毎に変えて被反応金属Mと反応させ、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量との関係を、実験毎に調査した。
実験1は、溶質を含有しない水だけを、被反応金属Mと反応させた比較例に係る実験で、投入した物質として、溶質0g、水300g、マグネシウム8.0gの条件で行った実験である。実験2〜実験31のうち、実験2〜実験21と実験28で用いた水は、各300gであり、実験22〜実験25と実験27と実験29〜実験31で用いた水は、各100gであり、実験26で用いた水は、75gである。実験2〜実験31は、溶質として、種々の溶解キレート剤を、マグネシウムと反応させた実施例1〜実施例30に係る実験である。なお、実施例1〜実施例30において、溶解キレート剤の添加量は、水が約10℃であるときの飽和量である。マグネシウムの投入量は、溶解キレート剤の添加量で、マグネシウムをイオン化できる量として、添加量に相当する溶解キレート剤のモル濃度に対応させた量である。
具体的には、実験2は、溶解キレート剤をトレオニンとした実施例1に係る実験で、トレオニンを27.0g、マグネシウムを0.1054gの条件で行った実験である。実験3は、溶解キレート剤をフェニルアラニンとした実施例2に係る実験で、フェニルアラニンを8.2g、マグネシウムを0.1081gの条件で行った実験である。実験4は、溶解キレート剤をε−ACEとした実施例3に係る実験で、ε−ACEを24.9g、マグネシウムを0.1052gの条件で行った実験である。実験5は、溶解キレート剤をイソロイシンとした実施例4に係る実験で、イソロイシンを12.1g、マグネシウムを0.1077gの条件で行った実験である。
実験6は、溶解キレート剤をGABAとした実施例5に係る実験で、GABAを390.0g、マグネシウムを0.1085gの条件で行った実験である。実験7は、溶解キレート剤をグルタミンとした実施例6に係る実験で、グルタミンを11.2g、マグネシウムを0.1063gの条件で行った実験である。実験8は、溶解キレート剤をバリンとした実施例7に係る実験で、バリンを17.3g、マグネシウムを0.1071gの条件で行った実験である。実験9は、溶解キレート剤をメチオニンとした実施例8に係る実験で、メチオニンを14.4g、マグネシウムを0.1068gの条件で行った実験である。実験10は、溶解キレート剤をβ−アラニンとした実施例9に係る実験で、β−アラニンを120.0g、マグネシウムを0.1050gの条件で行った実験である。
実験11は、溶解キレート剤をロイシンとした実施例10に係る実験で、ロイシンを7.1g、マグネシウムを0.1075gの条件で行った実験である。実験12は、溶解キレート剤をセリンとした実施例11に係る実験で、セリンを114.0g、マグネシウムを0.1149gの条件で行った実験である。実験13は、溶解キレート剤をアスパラギン一水和物とした実施例12に係る実験で、アスパラギン一水和物を7.1g、マグネシウムを0.1073gの条件で行った実験である。実験14は、溶解キレート剤をヒスチジンとした実施例13に係る実験で、ヒスチジンを11.5g、マグネシウムを0.1052gの条件で行った実験である。実験15は、溶解キレート剤をアルギニン塩酸塩とした実施例14に係る実験で、アルギニン塩酸塩を219.0g、マグネシウムを0.1061gの条件で行った実験である。
実験16は、溶解キレート剤をグルタミン酸とした実施例15に係る実験で、グルタミン酸を2.2g、マグネシウムを0.1055gの条件で行った実験である。実験17は、溶解キレート剤をシトルリンとした実施例16に係る実験で、シトルリンを60.0g、マグネシウムを0.1060gの条件で行った実験である。実験18は、溶解キレート剤をアラニンとした実施例17に係る実験で、アラニンを47.4g、マグネシウムを0.1106gの条件で行った実験である。実験19は、溶解キレート剤をリジン塩酸塩とした実施例18に係る実験で、リジン塩酸塩を198.0g、マグネシウムを0.1088gの条件で行った実験である。実験20は、溶解キレート剤をシステインとした実施例19に係る実験で、システインを48.0g、マグネシウムを0.1170gの条件で行った実験である。
実験21は、溶解キレート剤をシステイン塩酸塩一水和物とした実施例20に係る実験で、システイン塩酸塩一水和物を331.2g、マグネシウムを0.1069gの条件で行った実験である。実験22は、溶解キレート剤をグリシンとした実施例21に係る実験で、グリシンを22.5g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験23は、溶解キレート剤をピコリン酸とした実施例22に係る実験で、ピコリン酸を5.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験24は、溶解キレート剤をフジグルコンとした実施例23に係る実験で、フジグルコンを83.2g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験25は、溶解キレート剤をイミノジ酢酸とした実施例24に係る実験で、イミノジ酢酸を42.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。
実験26は、溶解キレート剤を酢酸とした実施例25に係る実験で、酢酸を25.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験27は、溶解キレート剤をリンゴ酸とした実施例26に係る実験で、リンゴ酸を55.8g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験28は、溶解キレート剤をクエン酸とした実施例27に係る実験で、クエン酸を73.0g、マグネシウムを8.1gの条件で行った実験である。実験29は、溶解キレート剤を混合物とした実施例28に係る実験で、混合物を44.3g、マグネシウムを8.1gの条件で行った実験である。この混合物は、クエン酸を18.8g、ヒスチジン塩酸塩一水和物を3.0g、フジグルコンを7.5g、オルニチン塩酸塩を3.1g、グリシンを2.0g、リンゴ酸を9.9gによる計6種類の有機酸を混合した溶解キレート剤である。実験30は、溶解キレート剤をヒスチジン塩酸塩一水和物とした実施例29に係る実験で、ヒスチジン塩酸塩一水和物を16.8g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験31は、溶解キレート剤をオルニチン塩酸塩とした実施例30に係る実験で、オルニチン塩酸塩を54.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。
<実験方法>
被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応は、水素ガス製造システム1の反応器部2の反応槽21内で、大気圧の下、常温で行われた。実験で生じた水素ガスは、水素ガス貯留部5や水素ガスバッファ部9から容量目盛り付きの集気瓶に採取され、水素ガスの発生量は、集気瓶に採取した水素ガスの容量を周知の方法で測定して算出されたものである。マグネシウムの溶解量は、実験前後で測定したマグネシウムの重量差に基づいて、算出されたものである。
<実験結果>
図7は、本実施形態に係る水素ガス製造方法に関する検証実験で、実施例1〜30及びその比較例に係る実験条件と共に、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量に関する実験結果をまとめて掲載した表であり、図7に示す実験結果のグラフを、図8に示す。実験結果は、溶解したマグネシウム1gに対して、発生した水素ガスの容量(ml)を示す水素ガスの発生量(ml/g)と、投入したマグネシウムを溶解させた反応時間(min)を基に、その単位時間あたりに発生した水素ガスの容量(ml)を示す水素ガスの発生量(ml/min)を示している。また、実験結果は、投入したマグネシウムを溶解させた反応時間(min)に、溶解したマグネシウムの量(g)と、単位時間に溶解したマグネシウムの溶解量(g/min)を示している。
実験1〜実験31の実験結果を、図7と図8に示す。比較例に係る実験1では、マグネシウムと水とを15分間、反応させたが、水素ガスは発生量0(ml/min)で、マグネシウムは溶解量0(g/min)であった。また、実施例1〜19に係る実験2〜実験20では、それぞれの溶解キレート剤をマグネシウムと、比較例と概ね同じ反応時間、反応させたら、実施例毎にバラツキはあるものの、水素ガスの発生量は、25(ml/min)以内に推移し、マグネシウムの溶解量は、0.02(g)を上回った。また、実施例20に係る実験21では、溶解キレート剤をマグネシウムと反応させたら、水素ガスの発生量は、100(ml/min)を超え、マグネシウムの溶解量は、0.1(g)を上回った。また、実施例21〜30に係る実験22〜実験31では、それぞれの溶解キレート剤をマグネシウムと反応させたら、溶解キレート剤の種別によって反応時間にバラツキはあるものの、水素ガスの発生量は、300(ml/min)を大幅に超え、マグネシウムの溶解量は、0.1(g)を上回った。
<考察>
マグネシウムは、酸化数2価で酸素と結合し易く、強い還元作用を有するほか、水との反応で、不動態被膜を形成する物性を有する。比較例に係る実験1では、マグネシウムが、水中に浸漬されると、水との反応で、マグネシウムに不動態被膜が形成されてしまったために、前述した化学反応式(1)で、マグネシウムが水に溶解せず、水素ガスを発生させるための反応が進行できなかったことから、水素ガスが発生しなかったものと推察される。
これに対し、実施例1〜19に係る実験2〜実験20では、溶解キレート剤の種類の違いにより、水素ガスの発生量やマグネシウムの溶解量に対する各数値に、実験毎に差異が生じているものの、マグネシウムを溶解する反応が生じたことにより、水素ガスの発生は確認できている。また、実施例20〜30に係る実験21〜実験31では、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量はいずれも、実施例1〜19の場合に比べ、顕著に多くなっている。
このような事象が発現した理由として、マグネシウムが、キレート剤水溶液CAに浸漬された状態になると、たとえマグネシウムがキレート剤水溶液CA中の水に接触しても、キレート剤水溶液CA中の溶解キレート剤が、マグネシウム片の表面に不動態被膜の形成を阻止することや、マグネシウム片の表面に多少なりとも形成された不動態被膜を破壊することに貢献しているからだと推察される。すなわち、水素ガスを発生させるにあたり、マグネシウム(被反応金属M)とキレート剤水溶液CAとを反応させると、キレート剤水溶液CAに含有する溶解キレート剤が、阻害要因となっている被反応金属Mの不動態被膜を排除する。そのため、化学反応式(1),(3)及び電離式(2)に示すように、水素ガスの生成に向けた反応が、持続的に進行しているためだと考えられる。
但し、実施例1〜19の場合に比べ、実施例20〜30に係る実験21〜実験31で、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量が増大化するが、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応時のメカニズムについては、現段階では解明できていない。また、例えば、実施例21に係る実験22で、溶解キレート剤として用いたグリシンと、実施例29に係る実験30で、溶解キレート剤として用いたヒスチジン塩酸塩一水和物とは、いずれもアミノ酸系物質であるが、同じアミノ酸類の有機化合物であっても、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量は、実施例21と実施例29で大きな差を有している。すなわち、発生した水素ガスについて、実施例29での発生量1103.0ml/gは、実施例21での発生量332.0ml/gとの対比で、約3.3倍であり、溶解したマグネシウムについて、実施例29での溶解量1.0gは、実施例21での溶解量0.2gとの対比で、5倍であるが、このような事象が生じることの理由についても、現段階では解明できていない。
次に、本実施形態の水素ガスの製造方法、及び水素ガス製造システム1の作用・効果について説明する。
本実施形態の水素ガスの製造方法は、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、前述した安全に係る選定条件を満たす被反応金属Mと、水と共に、被反応金属と可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液CAと、を反応させ、被反応金属Mのキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させること、を特徴とする。
この特徴により、人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼす虞がなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる方法で、かつ簡単な方法で、水素ガスを、より安全に発生させることができる。しかも、水素を発生させる過程で、特許文献2のような、高価なニッケル等の触媒を使用せず、被反応金属Mを、単にキレート剤水溶液CAと反応させるだけで、水素ガスが生成できるため、水素ガスの生成コストが安価である。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、被反応金属Mは、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉄、またはスズのうち、いずれか1種以上に該当する金属であること、を特徴とする。
この特徴により、このような種の被反応金属Mは、市場で広範囲に流通して比較的安価である上、取扱いが容易で、より身近な場所で水素ガスを製造する場合でも、原料となる被反応金属Mは、入手し易い。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、被反応金属Mは、マグネシウムであること、を特徴とする。
この特徴により、マグネシウムは、キレート剤水溶液CAと比較的容易に反応して、キレート錯体が生成し易く、キレート錯体の生成に伴って、水素ガスを、より確かに発生させることができる。しかも、マグネシウムは、市場で入手し易く、比較的安価である。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、溶解キレート剤は、前述した安全に係る選定条件を満たす有機酸であること、を特徴とする。
この特徴により、溶解キレート剤は、水素ガスを発生させるまでの反応の過程で、被反応金属Mの表面に不動態被膜の形成を阻止することや、被反応金属Mの表面に形成されてしまった不動態被膜を破壊することに、寄与することができる。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、溶解キレート剤は、チオール基、ホスフィノ基、イミノ基、リン酸基、グルコン酸基、カルボキシル基、スルフィド基、アミノ基、または酢酸基のうち、いずれかの官能基を有する有機化合物であること、あるいは、N保護アミノ酸、C保護アミノ酸、またはピリジン化合物のうち、いずれかに該当する有機化合物であること、を特徴とする。
この特徴により、特にこの種の有機化合物を溶解キレート剤に用いると、溶解キレート剤は、水素ガスを発生させるまでの反応の過程で、被反応金属Mの表面に不動態被膜の形成を阻止することや、被反応金属Mの表面に形成されてしまった不動態被膜を破壊することを、より効果的に行うことができる。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、ε−ACE、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する物質であること、を特徴とする。
この特徴により、被反応金属Mと反応水溶液RAとの反応後に、水素ガスの生成を、より確実に行うことができる。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、生成した被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RAと、炭酸ガスとを反応させることにより、炭酸塩(炭酸マグネシウム)を析出させる一方で、キレート剤水溶液CAの溶質として、溶解キレート剤を再生させると共に、水素ガスを発生させること、を特徴とする。
この特徴により、先に、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとを反応させ、被反応金属Mのキレート錯体を生成して水素ガスを発生させた後、次に行う被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応で、水素ガスを発生させるときでも、再生した溶解キレート剤を含むキレート剤水溶液CAを、再度使用することができる。そのため、キレート剤水溶液CAの繰返し使用ができることから、コストが抑制でき、水素ガスの発生後に生じる廃棄物も低減することができる。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、溶解キレート剤は、アミノ酸に属する有機化合物であること、を特徴とする。
この特徴により、アミノ酸系物質の溶解キレート剤を含むキレート剤水溶液CAを、マグネシウム(被反応金属M)と反応させて、マグネシウム(被反応金属M)のキレート錯体を生成した場合、マグネシウムのキレート錯体を含む反応水溶液RAに、炭酸ガスを含む気体を接触させると、炭酸マグネシウムを、より確実に析出させることができる。また、この反応水溶液RAは、マグネシウム成分を含有しているため、環境に優しい植物用マグネシウム含有液体肥料として、利用することができる。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、反応水溶液RAでは、等電点がpH4〜pH8の範囲内であること、を特徴とする。
この特徴により、電離式(5)〜(7)に示す反応の過程で、被反応金属Mのキレート錯体(マグネシウムのキレート錯体)(Mg(HL) 2+、MgL)の生成に向け、炭酸ガスが、炭酸水素イオン(HCO )と水素イオン(H)に電離する反応と、マグネシウムのキレート錯体のマグネシウムイオン(Mg2+)と、この炭酸ガスに由来して電離した炭酸水素イオン(HCO )との結合で炭酸マグネシウム(MgCO)を生成する反応との平衡が、バランス良く維持できる。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、前述した安全に係る選定条件を満たす被反応金属Mと、水と共に、被反応金属Mと可溶なキレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液CAとを、反応槽21で反応させ、被反応金属Mのキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させる反応器部2と、反応器部2への供給にあたり、キレート剤水溶液CAを貯留可能な反応前水溶液貯留部3と、多孔質からなる気液分離材42により、生成した被反応金属Mのキレート錯体を含有する反応水溶液RAと、水素ガスとを、コアレッシング作用に基づいて、気液混合した状態から分離させる気液分離部4と、気液分離部4を通じて、気液分離した後の水素ガスを貯留する水素ガス貯留部5と、を備えていること、を特徴とする。
この特徴により、高価なニッケル等の触媒を使用せず、反応器部2の反応槽21内で、被反応金属Mを、単にキレート剤水溶液CAと反応させるだけで、水素ガスが、より安全で簡単に生成できる。しかも、水素ガス製造システム1は、人の健康及び生態系への悪影響や、環境汚染を及ぼすことなく、人や生態系に対しも、安全性が高いとされる方法で、水素ガスを生成するシステムであるため、実用上、水素ガスの生成に伴う反応に対し、防爆対策等の安全策の設置は不要であり、被反応金属Mと反応させるキレート剤水溶液CAの供給量を調整するだけで、キレート剤水溶液CAの温度制御を容易に行うことができる。そのため、水素ガス製造システム1は、より簡単に構成できているため、システムの製造コストも安価である。加えて、水素ガス貯留部5に貯められる水素ガスは、気液分離部4で精製した純度の高い水素ガスであるから、例えば、燃料電池部10のほか、水素ガスを消費する水素ガスの需要先にそのまま提供することができている。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、反応水溶液RAを貯留する反応水溶液貯留槽71と、反応水溶液貯留槽71に貯めた反応水溶液RAに、炭酸ガスを供給可能な炭酸ガス供給部72と、を有するキレート剤水溶液再生処理ユニット7を備えていること、を特徴とする。
この特徴により、図4に示すように、電離式(5)〜(7)に示す反応の過程で、炭酸マグネシウム(炭酸塩)MCは、反応水溶液貯留槽71内で析出され、主に工業用向けの原料として利用することができる。そのため、水素の発生に伴って生じた物質は、ほとんど廃棄することなく、有効に活用することができ、キレート剤水溶液再生処理ユニット7を備えた水素ガス製造システム1は、省エネルギ化に貢献し、環境保全・資源保護等の見地でも、優れたシステムとなっている。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、気液分離部4を通じて、気液分離した後の水素ガスの圧力を増大させる水素ガス増圧部8を備えていること、を特徴とする。
この特徴により、気液分離部4から送出される水素ガスを、水素ガス増圧部8に設定された圧縮比に基づいて、必要とされる所望の圧力まで増圧することができ、低圧の水素ガスと共に、高圧の水素ガスを提供することができる。しかも、水素ガス増圧部8が昇圧工程を行うとき、水素ガス増圧部8を作動させる駆動源として、空圧駆動源や油圧駆動源、電動モータ等の外部駆動源が不要であり、電気制御部13により、第3電磁弁123〜第13電磁弁133の弁開閉動作を制御するだけで、水素ガス増圧部8を作動させることができる。水素ガス製造システム1は、省エネルギ性に優れている。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、気液分離した後の水素ガスを一時的に蓄える水素ガスバッファ部9を備えていること、を特徴とする。
この特徴により、図1に示すように、気液分離部4と水素ガスバッファ部9が水素ガス増圧部8の径小側室内83に連結され、水素ガス貯留部5が水素ガス増圧部8の径大側室内84と連結されていると、昇圧工程で、電気制御部13により、第3電磁弁123〜第13電磁弁133の弁開閉動作を制御して、生成された水素ガスの流通を制御するだけで、水素ガス増圧部8を連続運転で作動させることができる。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、水素ガス貯留部5から供給される水素ガスを、酸素と化学反応させて発電を行う燃料電池部10を備えていること、を特徴とする。
この特徴により、水素ガスに有するエネルギから変換された電気エネルギは、例えば、工場内の電気設備、家電製品等、商用や家庭用の一般電源として、様々な電気機器や、モータ等の駆動源に適用することが可能になる。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、燃料電池部10で発電した電気を蓄える二次電池部12を備えていること、を特徴とする。
この特徴により、水素ガス製造システム1で必要とされる電源は、全て二次電池部12から供給できるほか、二次電池部12の電力を、水素ガス製造システム1以外の需要先にも、供給することができる。そのため、水素ガス製造システム1の作動にあたり、外部電源が不要となることから、水素ガス製造システム1は、省エネルギ化に適すシステムになり得る。
また、本実施形態に係る水素ガス製造システム1では、反応器部2と連通する第2配管102と反応前水溶液貯留部3との接続部位32には、弁35が設けられ、弁35は、フロート36を有し、反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31に貯留したキレート剤水溶液CAによる浮力で、フロート36が上下動することにより、キレート剤水溶液CAの第2配管102への流通を制御すること、を特徴とする。
この特徴により、反応前水溶液貯留部3の液貯留槽31に貯留されていたキレート剤水溶液CAが、第2配管102に全て流れ込み、液貯留槽31内が空になると、フロート36が、接続部位32のテーパ面に当接して、第2配管102において、キレート剤水溶液CAの流路を閉路する。これにより、反応器部2の反応槽21へのキレート剤水溶液CAの供給が終了した以降、空気が、第2配管102を通じて、反応器部2の反応槽21内に流入することがないため、反応槽21内で生成される水素ガスは、外部からの空気と接触せず、より高い純度のガスに保つことができている。
以上において、本発明の水素ガス製造システムを、実施形態に即して説明し、本発明の水素ガスの製造方法を、実施形態に係る実施例1〜30に即して説明したが、本発明の水素ガス製造システムは、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。また、本発明の水素ガスの製造方法を、実施形態に係る実施例1〜30に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態では、燃料電池部10にインバータ11を接続した水素ガス製造システム1を挙げたが、本発明に係る水素ガス製造システムは、図9に示すように、インバータを具備していない水素ガス製造システム1Aであっても良い。図9は、実施形態の変形形態1に係る水素ガス製造システムを示す説明図である。
燃料電池部10で生じる電力を、直流から交流に変換する必要がない場合、水素ガス製造システム1Aは、実施形態に係る水素ガス製造システム1に比べ、小形化できる上、電気制御部13の構成や制御方法も、簡素化できてよりシンプルになるため、コストを抑制することができる。
(2)また、本発明に係る水素ガス製造システムは、図10に示すように、インバータ11以外に、さらに水素ガス増圧部8と水素ガスバッファ部9とを具備していない水素ガス製造システム1Bであっても良い。図10は、変形形態2に係る水素ガス製造システムを示す説明図である。
実施形態の水素ガス製造システム1や、変形形態1の水素ガス製造システム1Aでは、反応器部2で生成され、気液分離部4を通じて気液分離後の水素ガスは、圧力12.8MPaにも及んでいる。しかしながら、水素ガスの供給先側で、このような圧力12.8MPaを超える水素ガスの需要はなく、燃料電池部10で生じる電力を、直流から交流への変換が不要な場合もある。水素ガス製造システム1Bは、このような場合の用途に適しており、水素ガス製造システム1,1Aに比べ、コンパクト化できて省スペースで設置できる上、電気制御部13の構成や制御方法も、簡素化できてよりシンプルになるため、コストを抑制することができる。
本発明に係る水素ガスの製造方法により生成される水素は、例えば、燃料電池、内燃機関、燃焼機器、医薬品、化学工業等の産業分野で、エネルギ源や原材料として、有効に利
用することができる。
1,1A,1B 水素ガス製造システム
2 反応器部
3 反応前水溶液貯留部
4 気液分離部
5 水素ガス貯留部
7 キレート剤水溶液再生処理ユニット
8 水素ガス増圧部
9 水素ガスバッファ部
10 燃料電池部
12 二次電池部
21 反応槽(反応器部の槽)
32 接続部位
35 弁
36 フロート
42 気液分離材(分離材)
71 反応水溶液貯留槽
72 炭酸ガス供給部
102 第2配管(管)
M 被反応金属
CA キレート剤水溶液
RA 反応水溶液
上記の態様においては、前記溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、6−アミノヘキサン酸、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA:Iminodiacetic acid)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する物質であること、が好ましい。
参考形態に係る水素ガス製造システムの概要を示す説明図である。 図1に示す水素ガス製造システムで、反応前水溶液貯留部の弁の機能を説明する図であり、フロートの上昇で、第2配管の流路が開路された状態を示す図である。 図2に続き、フロートの下降で、第2配管の流路が閉路された状態を示す図である。 図1に示す水素ガス製造システムのキレート剤水溶液再生処理ユニットを示す説明図である。 図1に示す水素ガス製造システムの電気制御部を示すブロック図であり、主要な電装部品と電気関連部だけを電気制御部に接続した状態を示す図である。 図1に示す水素ガス製造システムにおいて、水素ガス増圧部でのピストンの動きと、第3〜第13電磁弁の開閉動作との関係について、説明する図である。 本実施形態に係る水素ガス製造方法に関する検証実験で、参考例1〜21、実施例2228、参考例29,30及びその比較例に係る実験条件と共に、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量に関する実験結果をまとめて掲載した表である。 図7に示す実験結果のグラフである。 形形態1に係る水素ガス製造システムを示す説明図である。 図9に続き、変形形態2に係る水素ガス製造システムを示す説明図である。
<溶解キレート剤>
キレート剤水溶液CAの溶質に用いる溶解キレート剤は、チオール基、ホスフィノ基、イミノ基、リン酸基、グルコン酸基、カルボキシル基、スルフィド基、アミノ基、または酢酸基のうち、いずれかの官能基を有する有機化合物であること、あるいは、N保護アミノ酸、C保護アミノ酸、またはピリジン化合物のうち、いずれかに該当する有機化合物である。具体的には、本実施形態では、溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、6−アミノヘキサン酸、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA:Iminodiacetic acid)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する有機酸である。本実施形態で用いるキレート剤水溶液CAは、安全に係る選定条件を満たすこれらの有機酸を、溶解キレート剤として、水と共に含む水溶液である。
実験1は、溶質を含有しない水だけを、被反応金属Mと反応させた比較例に係る実験で、投入した物質として、溶質0g、水300g、マグネシウム8.0gの条件で行った実験である。実験2〜実験31のうち、実験2〜実験21と実験28で用いた水は、各300gであり、実験22〜実験25と実験27と実験29〜実験31で用いた水は、各100gであり、実験26で用いた水は、75gである。実験2〜実験31は、溶質として、種々の溶解キレート剤を、マグネシウムと反応させた参考例1〜21、実施例22〜28、及び参考例29,30に係る実験である。なお、参考例1〜21、実施例22〜28、及び参考例29,30において、溶解キレート剤の添加量は、水が約10℃であるときの飽和量である。マグネシウムの投入量は、溶解キレート剤の添加量で、マグネシウムをイオン化できる量として、添加量に相当する溶解キレート剤のモル濃度に対応させた量である。
具体的には、実験2は、溶解キレート剤をトレオニンとした参考例1に係る実験で、トレオニンを27.0g、マグネシウムを0.1054gの条件で行った実験である。実験3は、溶解キレート剤をフェニルアラニンとした参考例2に係る実験で、フェニルアラニンを8.2g、マグネシウムを0.1081gの条件で行った実験である。実験4は、溶解キレート剤を6−アミノヘキサン酸とした参考例3に係る実験で、6−アミノヘキサン酸を24.9g、マグネシウムを0.1052gの条件で行った実験である。実験5は、溶解キレート剤をイソロイシンとした参考例4に係る実験で、イソロイシンを12.1g、マグネシウムを0.1077gの条件で行った実験である。
実験6は、溶解キレート剤をGABAとした参考例5に係る実験で、GABAを390.0g、マグネシウムを0.1085gの条件で行った実験である。実験7は、溶解キレート剤をグルタミンとした参考例6に係る実験で、グルタミンを11.2g、マグネシウムを0.1063gの条件で行った実験である。実験8は、溶解キレート剤をバリンとした参考例7に係る実験で、バリンを17.3g、マグネシウムを0.1071gの条件で行った実験である。実験9は、溶解キレート剤をメチオニンとした参考例8に係る実験で、メチオニンを14.4g、マグネシウムを0.1068gの条件で行った実験である。実験10は、溶解キレート剤をβ−アラニンとした参考例9に係る実験で、β−アラニンを120.0g、マグネシウムを0.1050gの条件で行った実験である。
実験11は、溶解キレート剤をロイシンとした参考例10に係る実験で、ロイシンを7.1g、マグネシウムを0.1075gの条件で行った実験である。実験12は、溶解キレート剤をセリンとした参考例11に係る実験で、セリンを114.0g、マグネシウムを0.1149gの条件で行った実験である。実験13は、溶解キレート剤をアスパラギン一水和物とした参考例12に係る実験で、アスパラギン一水和物を7.1g、マグネシウムを0.1073gの条件で行った実験である。実験14は、溶解キレート剤をヒスチジンとした参考例13に係る実験で、ヒスチジンを11.5g、マグネシウムを0.1052gの条件で行った実験である。実験15は、溶解キレート剤をアルギニン塩酸塩とした参考例14に係る実験で、アルギニン塩酸塩を219.0g、マグネシウムを0.1061gの条件で行った実験である。
実験16は、溶解キレート剤をグルタミン酸とした参考例15に係る実験で、グルタミン酸を2.2g、マグネシウムを0.1055gの条件で行った実験である。実験17は、溶解キレート剤をシトルリンとした参考例16に係る実験で、シトルリンを60.0g、マグネシウムを0.1060gの条件で行った実験である。実験18は、溶解キレート剤をアラニンとした参考例17に係る実験で、アラニンを47.4g、マグネシウムを0.1106gの条件で行った実験である。実験19は、溶解キレート剤をリジン塩酸塩とした参考例18に係る実験で、リジン塩酸塩を198.0g、マグネシウムを0.1088gの条件で行った実験である。実験20は、溶解キレート剤をシステインとした参考例19に係る実験で、システインを48.0g、マグネシウムを0.1170gの条件で行った実験である。
実験21は、溶解キレート剤をシステイン塩酸塩一水和物とした参考例20に係る実験で、システイン塩酸塩一水和物を331.2g、マグネシウムを0.1069gの条件で行った実験である。実験22は、溶解キレート剤をグリシンとした参考例21に係る実験で、グリシンを22.5g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験23は、溶解キレート剤をピコリン酸とした実施例22に係る実験で、ピコリン酸を5.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験24は、溶解キレート剤をフジグルコンとした実施例23に係る実験で、フジグルコンを83.2g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験25は、溶解キレート剤をイミノジ酢酸とした実施例24に係る実験で、イミノジ酢酸を42.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。
実験26は、溶解キレート剤を酢酸とした実施例25に係る実験で、酢酸を25.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験27は、溶解キレート剤をリンゴ酸とした実施例26に係る実験で、リンゴ酸を55.8g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験28は、溶解キレート剤をクエン酸とした実施例27に係る実験で、クエン酸を73.0g、マグネシウムを8.1gの条件で行った実験である。実験29は、溶解キレート剤を混合物とした実施例28に係る実験で、混合物を44.3g、マグネシウムを8.1gの条件で行った実験である。この混合物は、クエン酸を18.8g、ヒスチジン塩酸塩一水和物を3.0g、フジグルコンを7.5g、オルニチン塩酸塩を3.1g、グリシンを2.0g、リンゴ酸を9.9gによる計6種類の有機酸を混合した溶解キレート剤である。実験30は、溶解キレート剤をヒスチジン塩酸塩一水和物とした参考例29に係る実験で、ヒスチジン塩酸塩一水和物を16.8g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。実験31は、溶解キレート剤をオルニチン塩酸塩とした参考例30に係る実験で、オルニチン塩酸塩を54.0g、マグネシウムを8.0gの条件で行った実験である。
<実験結果>
図7は、本実施形態に係る水素ガス製造方法に関する検証実験で、参考例1〜21、実施例2228、参考例29,30及びその比較例に係る実験条件と共に、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量に関する実験結果をまとめて掲載した表であり、図7に示す実験結果のグラフを、図8に示す。実験結果は、溶解したマグネシウム1gに対して、発生した水素ガスの容量(ml)を示す水素ガスの発生量(ml/g)と、投入したマグネシウムを溶解させた反応時間(min)を基に、その単位時間あたりに発生した水素ガスの容量(ml)を示す水素ガスの発生量(ml/min)を示している。また、実験結果は、投入したマグネシウムを溶解させた反応時間(min)に、溶解したマグネシウムの量(g)と、単位時間に溶解したマグネシウムの溶解量(g/min)を示している。
実験1〜実験31の実験結果を、図7と図8に示す。比較例に係る実験1では、マグネシウムと水とを15分間、反応させたが、水素ガスは発生量0(ml/min)で、マグネシウムは溶解量0(g/min)であった。また、参考例1〜19に係る実験2〜実験20では、それぞれの溶解キレート剤をマグネシウムと、比較例と概ね同じ反応時間、反応させたら、参考例毎にバラツキはあるものの、水素ガスの発生量は、25(ml/min)以内に推移し、マグネシウムの溶解量は、0.02(g)を上回った。また、参考例20に係る実験21では、溶解キレート剤をマグネシウムと反応させたら、水素ガスの発生量は、100(ml/min)を超え、マグネシウムの溶解量は、0.1(g)を上回った。また、参考例21、実施例2228、参考例29,30に係る実験22〜実験31では、それぞれの溶解キレート剤をマグネシウムと反応させたら、溶解キレート剤の種別によって反応時間にバラツキはあるものの、水素ガスの発生量は、300(ml/min)を大幅に超え、マグネシウムの溶解量は、0.1(g)を上回った。
これに対し、参考例1〜19に係る実験2〜実験20では、溶解キレート剤の種類の違いにより、水素ガスの発生量やマグネシウムの溶解量に対する各数値に、実験毎に差異が生じているものの、マグネシウムを溶解する反応が生じたことにより、水素ガスの発生は確認できている。また、参考例20,21、実施例2228、参考例29,30に係る実験21〜実験31では、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量はいずれも、参考例1〜19の場合に比べ、顕著に多くなっている。
但し、参考例1〜19の場合に比べ、参考例20,21、実施例2228、参考例29,30に係る実験21〜実験31で、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量が増大化するが、被反応金属Mとキレート剤水溶液CAとの反応時のメカニズムについては、現段階では解明できていない。また、例えば、参考例21に係る実験22で、溶解キレート剤として用いたグリシンと、参考例29に係る実験30で、溶解キレート剤として用いたヒスチジン塩酸塩一水和物とは、いずれもアミノ酸系物質であるが、同じアミノ酸類の有機化合物であっても、水素ガスの発生量とマグネシウムの溶解量は、参考例21と参考例29で大きな差を有している。すなわち、発生した水素ガスについて、参考例29での発生量1103.0ml/gは、参考例21での発生量332.0ml/gとの対比で、約3.3倍であり、溶解したマグネシウムについて、参考例29での溶解量1.0gは、参考例21での溶解量0.2gとの対比で、5倍であるが、このような事象が生じることの理由についても、現段階では解明できていない。
また、本実施形態に係る水素ガスの製造方法では、溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、6−アミノヘキサン酸、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する物質であること、を特徴とする。
以上において、本発明の水素ガス製造システムを、実施形態に即して説明し、本発明の水素ガスの製造方法を、実施形態に係る参考例1〜21、実施例22〜28、及び参考例29,30に即して説明したが、本発明の水素ガス製造システムは、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。また、本発明の水素ガスの製造方法を、実施形態に係る参考例1〜21、実施例22〜28、及び参考例29,30に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。

Claims (16)

  1. 卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、安全に係る選定条件を満たす被反応金属と、
    水と共に、前記被反応金属と可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液と、を反応させ、
    前記被反応金属のキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  2. 請求項1に記載する水素ガスの製造方法において、
    前記被反応金属は、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉄、またはスズのうち、いずれか1種以上に該当する金属であること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  3. 請求項2に記載する水素ガスの製造方法において、
    前記被反応金属は、マグネシウムであること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する水素ガスの製造方法において、
    前記溶解キレート剤は、安全に係る選定条件を満たす有機酸であること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  5. 請求項4に記載する水素ガスの製造方法において、
    前記溶解キレート剤は、チオール基、ホスフィノ基、イミノ基、リン酸基、グルコン酸基、カルボキシル基、スルフィド基、アミノ基、または酢酸基のうち、いずれかの官能基を有する有機化合物であること、あるいは、
    N保護アミノ酸、C保護アミノ酸、またはピリジン化合物のうち、いずれかに該当する有機化合物であること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  6. 請求項5に記載する水素ガスの製造方法において、
    前記溶解キレート剤は、システイン塩酸塩一水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、オルニチン塩酸塩、アラニン、グリシン、システイン、リジン塩酸塩、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン、アスパラギン一水和物、セリン、ロイシン、β−アラニン、バリン、メチオニン、グルタミン、GABA、イソロイシン、フェニルアラニン、ε−ACE、トレオニン、イミノジ酢酸(IDA:Iminodiacetic acid)、ピコリン酸、イソニアジド、酢酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸、フジグルコン、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid)、またはフィチン酸のうち、いずれか1種以上に該当する物質であること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載する水素ガスの製造方法において、
    生成した前記被反応金属の前記キレート錯体を含有する反応水溶液と、炭酸ガスとを反応させることにより、炭酸塩を析出させる一方で、前記キレート剤水溶液の溶質として、前記溶解キレート剤を再生させると共に、水素ガスを発生させること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  8. 請求項7に記載する水素ガスの製造方法において、
    前記溶解キレート剤は、アミノ酸に属する有機化合物であること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  9. 請求項8に記載する水素ガスの製造方法において、
    前記反応水溶液では、等電点がpH4〜pH8の範囲内であること、
    を特徴とする水素ガスの製造方法。
  10. 卑金属元素または遷移金属元素の群に該当する金属元素のうち、安全に係る選定条件を満たす被反応金属と、水と共に、前記被反応金属と可溶な溶解キレート剤を、溶質として含有したキレート剤水溶液とを、槽内で反応させ、前記被反応金属のキレート錯体を生成することにより、水素ガスを発生させる反応器部と、
    前記反応器部への供給にあたり、前記キレート剤水溶液を貯留可能な反応前水溶液貯留部と、
    多孔質からなる分離材により、生成した前記被反応金属の前記キレート錯体を含有する反応水溶液と、水素ガスとを、コアレッシング作用に基づいて、気液混合した状態から分離させる気液分離部と、
    前記気液分離部を通じて、気液分離した後の水素ガスを貯留する水素ガス貯留部と、
    を備えていること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
  11. 請求項10に記載する水素ガス製造システムにおいて、
    前記反応水溶液を貯留する反応水溶液貯留槽と、
    前記反応水溶液貯留槽に貯めた前記反応水溶液に、炭酸ガスを供給可能な炭酸ガス供給部と、を有するキレート剤水溶液再生処理ユニットを備えていること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
  12. 請求項10または請求項11に記載する水素ガス製造システムにおいて、
    前記気液分離部を通じて、気液分離した後の水素ガスの圧力を増大させる水素ガス増圧部を備えていること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
  13. 請求項12に記載する水素ガス製造システムにおいて、
    気液分離した後の水素ガスを一時的に蓄える水素ガスバッファ部を備えていること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
  14. 請求項10乃至請求項13のいずれか1つに記載する水素ガス製造システムにおいて、
    前記水素ガス貯留部から供給される水素ガスを、酸素と化学反応させて発電を行う燃料電池部を備えていること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
  15. 請求項14に記載する水素ガス製造システムにおいて、
    前記燃料電池部で発電した電気を蓄える二次電池部を備えていること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
  16. 請求項10乃至請求項15のいずれか1つに記載する水素ガス製造システムにおいて、
    前記反応器部と連通する管と前記反応前水溶液貯留部との接続部位には、弁が設けられ、
    前記弁は、フロートを有し、前記反応前水溶液貯留部に貯留した前記キレート剤水溶液による浮力で、前記フロートが上下動することにより、前記キレート剤水溶液の前記管への流通を制御すること、
    を特徴とする水素ガス製造システム。
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