JP2020038811A - 発光分散液の製造方法および発光分散液から得られる薄層を含む電界発光素子 - Google Patents

発光分散液の製造方法および発光分散液から得られる薄層を含む電界発光素子 Download PDF

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橘  浩昭
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玲子 阿澄
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淳 安藤
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Abstract

【課題】発光材料となる層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液、およびその製造方法を提供する。また、この分散液を基板と接触させて、基板上に薄膜を形成する方法を提供し、得られた薄膜を含む電界発光素子または薄膜トランジスタを提供することを課題とする。【解決手段】層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波処理することにより、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を安定的に分散する分散液が得られる。この分散液を基板と接触させることにより、基板上の全面、および任意の位置に任意の形状に層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜を容易に形成することができ、この薄膜を含む電界発光素子または薄膜トランジスタを製造することができる。【選択図】図4

Description

本発明は、ウエットプロセス(湿式法)による電子素子の製造技術に関し、ウエットプロセスにより基板上に薄膜を形成することのできる分散液、その分散液の製造方法、およびその薄膜を用いて形成する電界発光素子に関する。
エレクトロニクス・フォトニクスの技術分野では、一層のデバイス微細化の要求に伴い、ゲルマニウム(Ge)やスズ(Sn)をはじめとする半導体を極限の2次元単原子層膜まで薄膜化する技術が求められている。本発明での「単原子層膜」、「単原子層薄膜」および「2次元単原子層膜」とは、原子1層の厚さの膜状の物体、あるいは、異種の原子同士が2次元シート状に結合した構造をとる化合物においては、その繰り返し単位が1単位分の厚さの膜状の物体をさす。また、本発明での「単原子層積層物」および「単原子層膜の積層膜」とは、単原子層膜が積み重なった構造の物体をさし、グラファイトや遷移金属ジカルコゲン物質などのいわゆる層状物質の結晶・粉体や、これらを数原子層の厚さまで薄くした物体、あるいは、層状物質を一旦単原子層膜や数原子層の厚さまで薄くしたのちに再度人為的に積み重ねることで作製した積層膜などをさす。
物質を単原子層に近い厚さまで薄層化することにより、2次元的な量子効果が発生したり、表面、界面特有の現象が顕著に現れたりするなど、同じ組成のバルクの材料ともナノ粒子(量子ドット)材料とも異なる材料となることが知られている。このように、バルク材料とは異なる物性・電気/光特性が期待されている2次元単原子層膜ではあるが、その作製法は確立されていないものも多く、また、単原子層膜は扱いにくいという欠点もある。
下記の模式図で示すように、層状のZintl相のCaGe2結晶は、低温での濃塩酸溶液中でインターカレーションされて、末端が水素に置換されたGe−Hに変換され、Ge原子同士が2次元的なネットワークを形成した単原子層が水素原子を挟んで積層した構造の結晶が得られることが報告されている(非特許文献1)。また、層状のZintl相のCaGe2結晶を、ヨー化メチル溶液中室温で反応させることにより、末端がメチル基に置換されたGe−CH3の単原子層積層物の結晶が、1段階反応で得られることが報告されている(非特許文献2)。
[模式図]
Figure 2020038811
しかしながら、これらGe−HやGe−CH3は溶媒に溶解しないため、Ge−HやGe−CH3の層状化合物を、2次元単原子層膜にする方法は未だ開発されていない。またCaGe2結晶と同様に、Zintl相のBaSn2結晶からも、デインターカレーションにより層状化合物を作成することはできるものの、これを2次元単原子層膜にする方法も開発されていない。
一方、グラファイト等の層状材料を剥離するために、層状材料を界面活性剤の溶液中で超音波処理する方法が報告されている(特許文献1)が、剥離が進むにつれて割合が漸増する剥離材料を含有する懸濁液を安定化するためには、超音波処理前から処理中まで界面活性剤を常に十分に供給しなければならなかった。
特表2014−529319号公報
ACS Nano.(2013)Vol.7,No.5、pp.4414-4421 Nature Communications(2014)Vol.5、pp.3389(p.1-6)
本発明は、インターカレーションという化学的手法により作成した層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物または層状ゲルマニウム−スズ混合物(層状ゲルマニウム化合物のゲルマニウム原子が、一部スズ原子に置換された化合物)を、有機溶媒中で分散させる方法、および有機溶媒中で分散させた層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を基板と接触させて、基板上に2次元単原子層膜の薄膜、または2次元単原子層膜の積層薄膜を形成する方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物または層状ゲルマニウム−スズ混合物の有機溶媒分散液、および、層状ゲルマニウム化合物または層状スズ化合物の有機溶媒分散液を、基板表面に接触させて得られる、基板表面に形成される層状ゲルマニウム化合物の薄膜、層状スズ化合物の薄膜、または層状ゲルマニウム−スズ化合物の薄膜、および該層状ゲルマニウム化合物の薄膜、層状スズ化合物の薄膜、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜を含む電界発光素子または薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタ構造で発光する発光トランジスタを含む)を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、化学的手法により作成した層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波処理することにより、それら化合物を安定的に分散できる分散液が得られること、そして、この分散液を基板と接触させることにより、基板上に単原子層膜の薄膜、または単原子層膜が積層した薄膜を容易に形成できることを見出し、さらにこの薄膜を用いた薄膜デバイスを作成し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を製造する方法、または薄膜を形成する方法に関する。
(1)層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波処理することを含む、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を製造する方法。
(2)前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、上記(1)に記載の分散液を製造する方法。
Figure 2020038811
(式中、Rは、水素、アルキル基、芳香族環基、またはこれらの置換基の組み合わせであり、Mは、ゲルマニウム、スズ、またはゲルマニウムとスズとの組み合わせである。)
(3)前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖アルキル基、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、上記(2)に記載の分散液を製造する方法。
(4)前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリルから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の分散液を製造する方法。
(5)前記ハロゲン系溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、上記(4)に記載の分散液を製造する方法。
(6)層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波処理して製造した層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を、基板と接触させて、基板上の全面、または一部の任意の位置に層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜を形成する方法。
(7)前記薄膜が、単原子層薄膜、または、単原子層薄膜の積層した薄膜である、上記(6)に記載の薄膜を形成する方法。
(8)前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、上記(6)または(7)に記載の薄膜を製造する方法。
(9)前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖アルキル基、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、上記(8)に記載の薄膜を製造する方法。
(10)前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリルから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の薄膜を製造する方法。
(11)前記ハロゲン系溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、上記(10)に記載の薄膜を製造する方法。
また、本発明は、以下の(12)〜(21)の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜、または薄膜を含む電界発光素子または薄膜トランジスタに関する。
(12)有機溶媒中に分散した状態の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を含む分散液。
(13)前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、前記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、上記(12)に記載の分散液。
(14)前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、上記(13)に記載の分散液。
(15)前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液中の濃度が0.1mg/ml以上である、上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の分散液。
(16)前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリルから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、上記(12)ないし(15)のいずれかに記載の分散液。
(17)前記ハロゲン系溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、上記(16)に記載の分散液。
(18)層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、前記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、基板の表面、全面、あるいは一部の任意の位置に形成された、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜。
(19)前記薄膜が単原子層薄膜、または単原子層薄膜の積層した薄膜である、上記(18)に記載の薄膜。
(20)前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖アルキル基、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、上記(18)または(19)に記載の薄膜。
(21)上記(18)ないし(20)のいずれかに記載の薄膜を含む電界発光素子または薄膜トランジスタ。
本発明の薄膜の形成方法によれば、化学的手法により製造した層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物をベースとした2次元単原子層膜の薄膜を、種々の材質からなる基板上の全面、または任意の位置に任意の形状で、ウエットプロセスにより容易に作成することができる。層状化合物を粘着テープなどではがしとるなどのメカニカルな剥離法で剥離し基板上に転写して薄膜を作成する方法では、基板の全面への成膜はできず、また任意の位置に任意の形状の薄膜を形成することもできないため、本発明の方法は産業応用上非常に有用である。
また、本発明の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の有機溶媒分散液は、塗布製膜・印刷法によるフレキシブルエレクトロニクスに適用可能であるから、Ge、Sn系分散インク材料として、均質なかつ大量供給可能なものとなる。
特に、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物は直接遷移半導体であるため、メチル基等でインターカレートした層状ゲルマニウム化合物の分散液および単原子層薄膜は室温で赤色発光を示す。分散液中、または製膜後も単原子層膜の性質を維持しつつ、塗布製膜可能な新たな赤色発光材料として使用できる。さらに、超音波処理の出力を高くすることにより、高濃度なゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液が得られるので、より濃いインク材料となり、2次元単原子層膜を積層して多層とすることにより、必要な膜厚の薄膜を作製することも可能であるから、薄膜の色や厚さを容易に調整することが可能である。また、インターカレートする材料を変更することで層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の層間距離を制御することにより、分散液および薄膜の発光波長を制御することも可能である。
さらに、基板として、ホール輸送層であるポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)を塗布した酸化インジウム錫陽極を表面に設けた基板を用い、この基板上に薄膜を形成して、その上に陰極となるアルミニウム等を蒸着することにより、電界発光素子を得ることができる。
超音波処理後の有機溶媒中でのGe−CH3分散液の写真。有機溶媒:(a)アセトニトリル、(b)イソプロピルアルコール、(c)N−メチルピロリドン、(d)クロロベンゼン 超音波照射出力を変えて得られるジクロロベンゼン中でのGe−CH3の分散液の写真。 実施例3で得られたGe−CH3薄膜のX線回折パターン。 実施例3で得られたGe−CH3薄膜の走査型電子顕微鏡写真。 実施例4で得られたGe−CH3薄膜の紫外−可視吸収スペクトル。(実線)1回浸漬、(点線)2回浸漬、(一点鎖線)3回浸漬 製造したGe−R粉末のX線回折パターン。R:(実線)エチル基、(点線)オクチル基、(一点鎖線)イソプロピル基、(二点鎖線)イソペンチル基、(鎖線)フェニル基 ジクロロベンゼン中でのGe−R分散液の写真。R:(a)水素、(b)エチル基、(c)オクチル基、(d)イソプロピル基、(e)イソペンチル基、(f)フェニル基 実施例6で得られたGe−CH3、ならびにGe−Et電界発光素子の構造。 実施例6で得られたGe−CH3素子の8V印加時の電界発光スペクトル(実線)、および実施例6で得られたGe−Et素子の15V印加時の電界発光スペクトル(点線)と吸収スペクトル(一点鎖線)。 実施例6で得られたGe−Et素子の20℃での電界発光特性。 実施例7で得られたGe−CH3薄膜トランジスタの構造。 超音波処理後のジクロロベンゼン中でのGe0.9Sn0.1−R分散液の写真。R:(a)水素、(b)メチル基
本発明の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を製造する方法は、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波照射することを特徴とする。
層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物であるM−R(Rは、水素、アルキル基、芳香族環基、またはこれらの組み合わせ、Mは、ゲルマニウムスズ、またはゲルマニウムとスズの組み合わせ)については、非特許文献2に記載の層状Zintl相のCaGe2結晶から1段階反応でGe−CH3を製造する方法に基づいて、CaGe2結晶にヨー化メチル(CH3I)を反応させるか、あるいは、ヨー化メチルのメチル基を、Rである水素、他のアルキル基または芳香族基等に置換したヨー化R(RI)を反応させることにより、所望のM−R化合物の粉末を得ることができる。
また、M−Hは、非特許文献1に記載の層状のZintl相CaGe2結晶からGe−Hを製造する方法によって製造することもできる。
得られた層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の粉末に、有機溶媒を加える。有機溶媒としては、たとえば、ハロゲン系溶媒(クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなど)、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等の汎用溶媒が好適に用いられるが、これらを主成分としていれば、他の溶媒を含む混合溶媒でもよい。層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物は有機溶媒に溶解はしないが、超音波処理により有機溶媒中で安定的に分散され、その分散液は室温で数週間以上安定である。
層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物は、グラフェンやMoS2に対する分散性がよいといわれているN−メチルピロリドン等よりも、有機半導体材料をよく溶解するクロロホルム、クロロベンゼン(Cl−Ph)やジクロロベンゼン(DCl−Ph)、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒に、より分散しやすいので、有機溶媒としてハロゲン系溶媒を用いると、より高濃度の分散液を得ることができる。
層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の粉末に有機溶媒を加えてから、必要に応じて溶媒を撹拌(振盪、掻き混ぜ、旋回等)して、溶媒中に積層物が懸濁した懸濁液としてもよい。次いで、この溶媒に音波を照射する。音波の種類は特に限定されないが、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるため、超音波を用いることが好ましい。
超音波を用いる場合には、任意の超音波分散機を使用できる。懸濁液等に挿入することができる先端部を有するホーンタイプの超音波分散機が、好適な装置として用いられ、超音波分散機を溶媒中に入れて、一定時間、一定のパルス幅、一定の出力で分散させる。超音波の周波数、振幅及び照射時間等の条件は、特に限定されないが、たとえば、周波数は10kHz〜1MHz、振幅は1μm〜100μm(ゼロツーピーク値)であると共に、照射時間は1分間以上、好ましくは1分間〜6時間であり、出力は10〜500Wが好ましい。このような方法により、層状積層物の層間での剥離が促進され、ついには単原子層膜や数層程度の膜厚の極薄の積層物となるに至り、溶媒中に安定に分散することができる。
また、超音波照射の出力を高くすることにより、分散液の濃度を高くすることができる。たとえば、Ge−CH3積層物の粉末をジクロロベンゼン中で1時間超音波照射した分散液の濃度は、出力が40W、80W、120W、160Wと高くなるにつれ、その濃度が高くなることが目視で認められるほど、分散液の濃度は出力依存性がある。このように、高い出力ほど短時間で高濃度の分散液が得られることから、超音波照射の出力を変えて分散液の濃度を容易に変更でき、分散液が高濃度になるにつれ、分散液を基板に接触させて形成する単原子層薄膜の膜厚を厚くすることができる。
超音波照射した分散液中に、分散されなかった積層物粉末の沈殿が残る場合には、これを濾過やデカントにより除去する。このようにして製造した本発明の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液は、保存安定性に優れ、室温(15〜30℃)で数週間以上安定であり、これを用いて良好な薄膜を形成することができる。バルクのゲルマニウムは間接遷移半導体であり、室温ではほとんど発光が観測されないため、発光素子として利用することができないが、ゲルマニウム原子が2次元状に連結した層状ゲルマニウム化合物は直接遷移半導体であるため、この分散液も、また分散液を使用して基板上に作成した薄膜も室温で発光し、層状ゲルマニウム化合物の層間距離の違いにより、可視から近赤外まで発光領域を制御できる。
本発明の超音波分散液を基板表面に接触させることにより、基板表面に薄膜を形成することができる。基板表面に接触させる方法は特に制限されず、通常の方法を用いることができ、たとえば、高速で回転させながら塗布するスピンコート法やゆっくりと乾かすキャスト法などの方法、ならびに分散液に浸漬した基板を引き上げて成膜するディップ方法等により、基板上に塗布する。成膜は、目的に応じて、基板の全面に施してもよく、また、基板の一部分にのみ成膜してもよい。たとえば、各種の印刷法を用いるなどして基板の一部の任意の位置に任意の形状・パターンで成膜することができる。このとき、材料の電気・光的な特性を阻害しない程度の分量であれば、成膜性を改善するために界面活性剤や高分子などの添加物を分散液に混合して成膜してもよい。膜厚に関しては、目的に応じて、数オングストロームから数ミクロン程度まで調整できる。たとえば、直流の電界発光素子(LED)や薄膜トランジスタとして用いる場合には、数十nmから300nm程度の膜厚の薄膜が好適に用いられる。
基板上に分散液を接触、塗布した後、有機溶媒を揮発させ、基板表面上に形成させる膜を速く安定化するために、基板を加熱するのが好ましい。加熱する温度は、基板の種類によって適宜選択し、基板上に安定した単原子層膜の薄膜または単原子層膜の積層した薄膜を形成する。
本発明に用いる基板としては、加熱処理の温度において耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものでなく、当該分野で一般的に用いられているものを使用することができる。たとえば、石英ガラス等の透明基板以外にも、酸化シリコン等の絶縁体基板、酸化インジウム−酸化錫(ITO)付き基板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
本発明の薄膜を形成する方法は、単原子層薄膜の製造に用いることができるだけでなく、単原子層薄膜の積層した多層薄膜の製造に用いることができる。
基板上に形成した単原子層薄膜の上に、さらに分散液を塗布して単原子層薄膜を形成することにより、単原子層薄膜を積層させた薄膜を作成する。たとえば、分散液に浸漬した基板を引き上げて成膜するディップ方法により単原子層薄膜を製造する場合、ディップする回数を複数にして、複数の薄膜を積層させると、薄膜の膜厚を厚くして発色を濃くすることができる。さらに、ディップに用いる分散液に、異なる材料であるGe系化合物とSn系化合物の分散液を用いて、交互にディップして分散液を吸着させる交互積層法などによって、異種の材料を積層させた薄膜を作成することもできる。
上述のように、本発明にかかる分散液では、塗り重ねることにより膜厚を厚くすることが可能であるが、通常、塗布法による製膜によって発光素子や薄膜トランジスタを作成する際には数十から数百ナノメートルの膜厚の半導体層を設けることから、必要な膜厚の半導体薄膜を現実的なスピードで効率的に作成するためには、原料となる分散液の濃度は0.1mg/ml以上であることが必要であり、望ましくは0.5mg/ml以上であるとよい。このような濃度の分散液を得るためには、ハロゲン系の溶剤を用いて、超音波の出力を高くすることが望ましい。
本発明者らは、非特許文献2に記載の、層状Zintl相のCaGe2結晶から1段階反応でGe−CH3を製造するという反応により、メチル基より嵩高い置換基を、層状CaGe2にインターカレートできるかどうか確かめてみた。反応に用いるヨー化メチルのメチル基に代えて、エチル基、オクチル基などのアルキル基、イソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基、またはフェニル基などの芳香族環を用いたヨー化アルキルまたはヨー化アリールを反応に用いたところ、今まで製造したことが報告されていない化合物を含むGe−Rを製造することができた。Rとして用いる有機置換基に特に制限はないが、上記置換基と同様に、比較的小さな置換基である、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などの直鎖アルキル基、炭素数8までの分岐アルキル基、ナフチル基、アントラセン基などが好適に用いられる。
これらの新規な層状ゲルマニウム化合物の粉末を、X線回折法で分析したところ、末端基のサイズに応じて層間距離が増大することがわかった。さらに、これらの新規な層状ゲルマニウム化合物をジクロロベンゼン中で超音波処理したところ、高濃度な分散液が得られた。また、Rがメチル基より小さな水素であるGe−Hについても、ジクロロベンゼン中で超音波処理して同様に高濃度な分散液が得られたことから、本発明の方法により、Ge−Rの末端基Rに関係なくGe−Rの分散液が製造できることが確認された。さらに、層状ゲルマニウム−スズ混合物をジクロロベンゼン中で超音波処理したところ、高濃度な分散液が得られたことから、本発明の方法により、M−Rの元素Mに関係なくM−Rの分散液が製造できることが確認された。
また、本発明の薄膜を含む電界発光素子は、ガラス基板上/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極から構成することができるが、構造はこれらに限定されない。陽極は厚さ50nmのITO(インジウム錫酸化物)からなる透明電極などを用いることができるが、これに限定されない。正孔輸送層の材料には、導電性インクであるポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)[以下、PEDOT:PSSと記す]の水分散液などを用いることができるが、これに限定されない。PEDOT:PSSの水溶液をスピンコートによって塗布し、加熱して乾燥することにより正孔輸送層を50nmの厚さに形成した。発光層には、層状ゲルマニウム化合物(Ge−R)を用い、電子輸送層、ならびに電子注入層には、それぞれトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、ならびにLiFなどを使用することができるが、これらに限定されない。陰極として厚さが100〜150nmのAlなどを用いることができるが、これに限定されない。
発光層としてGe−CH3を用いて作製したガラス基板/PEDOT:PSS/Ge−CH3/Alの電界発光素子に8Vを印加した電界発光スペクトルは、710nm付近で強度が最大となり赤色発光を示した。発光層としてGe−Et用いて作製したガラス基板/PEDOT:PSS/Ge−Et/Alの電界発光素子に20℃で電圧を印加した。電圧の増加とともに電流密度が増加し、ある一定の電流密度を超えると発光が開始され、発光効率が単調に上昇する挙動が認められた。電界発光スペクトルは、吸収端から立ち上がり、830nm付近で強度が最大になり赤紫色発光を示す結果が得られ、層状ゲルマニウム化合物の層間が広がることにより、発光波長が長波長に移動することが確認された。
また、本発明の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)は、基板、ゲート電極、絶縁層、ソース/ドレイン電極、チャネル層から構成され、基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/層状ゲルマニウム化合物/ソース−ドレイン電極が順次形成されたトップコンタクト構造で製作することができ、基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/ソース−ドレイン電極/層状ゲルマニウム化合物が順次形成されたボトムコンタクト構造で製作することもできるが、これらに限定されるものではない。チャネル層として層状ゲルマニウム化合物を用いた。トランジスタ素子のゲート電極、ならびにソース−ドレイン電極には、通常用いられる金属が使用でき、具体的には金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)およびインジウムスズ酸化物(ITO)などを使用することができるが、これらに限定されない。また、基板の材料としてはシリコン(Si)ウエハが用いられることが多い。この場合、Si自体をゲート電極兼基板として用いることができる。また、Siの表面を酸化し、SiO2を形成して絶縁層として活用することも可能である。
チャネル層としてGe−CH3の分散液のキャスト膜を用いて作製したトップコンタクト構造TFT(チャネル長20μm、チャネル幅2mm)のソース−ドレイン間に±50Vの電圧を印加して、ゲート電圧を印加してソース−ドレイン間の電流を測定したところ、正孔、ならびに電子がGe−CH3層のチャネル領域(ソース−ドレイン間)に誘起され、p型(正孔伝導)、およびn型(電子伝導)として動作する両極性トランジスタであることが確認された。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
有機溶媒40mlに、層状ゲルマニウム化合物(メチル基をインターカレートした層状ゲルマニウム化合物:Ge−CH3)粉末40mgを混合して撹拌した。続いて、超音波ホモジナイザー装置(BRANSON社製Sonifier450)を用いて混合液に超音波を照射した。出力130Wで24時間超音波照射した後、分散しなかった沈殿を除去して、Ge−CH3の分散液が得られた。有機溶媒として、(a)アセトニトリル、(b)イソプロピルアルコール、(c)N−メチルピロリドン、(d)クロロベンゼンを用いて、それぞれのGe−CH3分散液を製造した。
図1に、得られたそれぞれのGe−CH3分散液の写真を示す。超音波分散機による分散能は、有機溶媒の種類に依存しており、特に、ハロゲン系溶媒である(d)クロロベンゼンの分散能が高かった。これらのGe−CH3液分散液に365nmの紫外光を照射すると、赤色発光を示した。どの分散液も数週間以上安定であった。また、Ge−CH3分散液から1mlを分取し、減圧下で溶媒を蒸発させることにより、残渣の重量を測定したところ0.9mg/ml以上であった。このことにより、上記分散条件で作成した分散液の濃度は0.9mg/ml以上であることが確認された。
1,2−ジクロロベンゼン40mlに、Ge−CH3粉末40mg混合して撹拌し、超音波ホモジナイザー装置(BRANSON社製Sonifier450)を用いて混合液に超音波の出力を変えながら超音波を照射した。出力は、40W、80W、120W、160Wという40〜160Wの範囲で変え、照射時間は1時間とした。分散しなかった沈殿を除去して、Ge−CH3分散液が得られた。図2に、左から、出力を40W、80W、100W、130Wと大きくした場合の、それぞれのGe−CH3分散液の写真を示す。超音波分散機によるハロゲン系溶媒中における分散能は、超音波の照射出力に依存し、高出力の超音波照射での分散能が高かった。
実施例1で製造したクロロベンゼンに分散させたGe−CH3分散液を、ガラス基板上に数滴滴下後、溶媒を揮発させて薄膜を形成させて、この薄膜のX線回折分析を行った。図3にGe−CH3薄膜のX線回折パターンを示す。このX線パターンでは、d値で9.83オングストローム(角度2θで9°)付近に主ピークが認められ、層構造であることが確認できた。このピークの層間距離は層状ゲルマニウム化合物にメチル基がインターカレートした構造と推定された。
このGe−CH3薄膜をラマン分光分析した結果、層状ゲルマニウムの面内骨格の振動に起因する300cm-1付近にピークが得られた。さらに、このGe−CH3薄膜の膜構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。この電子顕微鏡写真を図4に示す。直径1μm以下のプレートが観察された。これらの結果から、このGe−CH3薄膜は単原子層から数原子層薄膜であることがわかった。また同時に、この実験結果から、この薄膜の原料である分散液中にも、単原子層から数原子層の厚さの極薄膜の状態のGe−CH3が多く含まれていることが示唆された。
また、このGe−CH3薄膜の紫外−可視吸収スペクトルからのTaucプロット(直接遷移型)から求めたバンド間遷移の立ち上がりエネルギーは、1.9eVであり、Ge−CH3薄膜に365nmの紫外光を照射すると赤色発光を示した。
層状ゲルマニウム化合物は直接遷移半導体であるため、その分散液および単原子層薄膜や積層薄膜は同じ赤色発光を示し、分散液中でも製膜後でも単原子層膜から数原子層膜の性質を維持していた。
実施例1で製造したクロロベンゼンに分散させたGe−CH3分散液に対して、上下速度1mm/sという一定速度で、ガラス基板を1回〜複数回上下動させて、分散液中に1回〜複数回浸漬させることにより、ガラス基板表面に薄膜を形成させた。図5に、浸漬1回による薄膜(実線)、浸漬2回による薄膜(点線)、浸漬3回による薄膜(一点鎖線)のそれぞれの薄膜の紫外−可視吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルの結果から、分散液への浸漬回数が増えると吸収が増えることが確認でき、浸漬回数により薄膜の膜厚を変化させることができることがわかった。
Ge−Rの粉末を製造するために、CaGe2、ヨウ化物(R−I)、H2Oを1:30:10(モル比)で丸底フラスコに加えて、そこにアセトニトリルを加えた。Rはそれぞれ、エチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソペンチル基、フェニル基を用いた。反応液を不活性雰囲気下、室温で1週間以上撹拌した後、減圧濾過で溶媒などを取り除き、純水、イソプロピルアルコールで洗浄した後、減圧乾燥してGe−Rの粉末を単離した。
5種類のGe−R粉末について、X線回折分析を行った。図6にそれらのX線回折パターンを示す。Rが、エチル基(実線)、オクチル基(点線)、イソプロピル基(一点鎖線)、イソペンチル基(二点鎖線)、フェニル基(鎖線)のそれぞれの粉末のX線回折パターンには、それぞれ主ピークが認められた。この結果、層状ゲルマニウム化合物の層間に有機基がインターカレートされている層構造であることが確認でき、有機基の大きさに応じて層間距離が変化すると推定された。
製造した水素、エチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソペンチル基、フェニル基がインターカレートした層状ゲルマニウム化合物(Ge−R)粉末各40mgと、新たに製造したRがエチル基またはイソプロピル基である層状ゲルマニウム化合物(Ge−R)粉末各40mgを、それぞれジクロロベンゼン40mlに混合させた。超音波ホモジナイザー装置(BRANSON社製Sonifier450)を用いて、混合液に超音波を出力130W、照射時間1時間で照射した。これにより6種類のGe−R分散液が得られ、図7に、得られた分散液の写真を示す。Rは、(a)水素、(b)エチル基、(c)オクチル基、(d)イソプロピル基、(e)イソペンチル基、(f)フェニル基である。Ge−Rの有機基Rに依存せず、超音波分散機により分散できるという結果が得られた。また、それぞれの分散液から1mlを分取し、減圧下で溶媒を蒸発させることにより、残渣の重量を測定したところ、いずれの分散液からの残渣も0.9mg/ml以上であった。このことにより、上記分散条件で作成した分散液の濃度は0.9mg/ml以上であることが確認された。
メチル基がインターカレートした層状ゲルマニウム化合物(Ge−CH3)を超音波処理によりクロロベンゼンに分散させた分散液を製造した。また、実施例5で製造したエチル基がインターカレートした層状ゲルマニウム化合物(Ge−Et)を超音波処理によりクロロベンゼンに分散させた分散液を製造した。それぞれのGe−CH3、あるいはGe−Et分散液を、ホール輸送層であるポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)を塗布した酸化インジウム錫陽極を有するガラス基板上に数滴滴下後、溶媒を揮発させて薄膜を形成させた。この薄膜上に真空蒸着装置により、アルミニウムを電極層として厚みが100nmとなるように蒸着し、電界発光素子を作製した。図8にその構造を示す。
発光層としてGe−CH3を用いて作製した電界発光素子に20℃で8V印加した時の電界発光スペクトルを図9に示す。710nm付近で強度が最大となり、赤色発光を示す結果が得られた。また、発光層としてGe―Etを用いて作製した電界発光素子に20℃で電圧を印加すると、電圧の増加とともに電流密度が増加し、ある一定の電流密度を超えると発光が開始され、発光効率が単調に上昇する挙動が認められた(図10)。20℃で15V印加した時の電界発光スペクトルを図9に示す。電界発光スペクトルは、吸収端から立ち上がり、830nm付近で強度が最大になり、赤紫色発光を示す結果が得られた。
超音波処理により製造したクロロベンゼンに分散させたGe−CH3分散液をヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面処理された熱酸化膜つきシリコン基板上(P型、比抵抗0.02Ωcm、ゲート電極兼用)に数滴滴下後、溶媒を揮発させて薄膜を形成させた。この薄膜上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmの金属マスクを置き、真空蒸着装置により、ソース−ドレイン電極層として金を厚みが30nmとなるように蒸着し、トップコンタクト型の薄膜トランジスタを作製した。図11にその構造を示す。
チャネル層としてGe−CH3を用いて作製した薄膜トランジスタのソース−ドレイン間に±50Vの電圧を印加して、ゲート電圧を印加してソース−ドレイン間の電流を測定したところ、正孔、ならびに電子がGe−CH3層のチャネル領域(ソース−ドレイン間)に誘起され、p型(正孔伝導)、およびn型(電子伝導)として動作する両極性トランジスタであることが確認された。
製造した水素、メチル基がインターカレートした層状ゲルマニウム−スズ混合物(Ge0.9Sn0.1−R、Rは、水素またはメチル基)粉末各40mgを、それぞれジクロロベンゼン40mlに混合させた。超音波ホモジナイザー装置(BRANSON社製Sonifier450)を用いて、混合液に超音波を出力130W、照射時間1時間で照射した。図12に、得られた分散液の写真を示す。Rは、(a)水素、(b)メチル基である。M−Rの元素Mに依存せず、超音波分散機により分散できるという結果が得られた。また、それぞれの分散液から1mlを分取し、減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣の重量を測定したところ、いずれの分散液からの残渣も0.9mg/ml以上であった。このことより、上記分散条件で作成した分散液の濃度は0.9mg/ml以上であることが確認された。
本発明の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を用いれば、2次元単原子層膜の薄膜を、種々の材質からなる基板上の全面、ないし一部の任意の位置に湿式法で簡単に作成できる。
また、本発明の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液は、塗布製膜・印刷法によるフレキシブルエレクトロニクスに適用可能であるから、Ge、Sn系分散インク材料として、均質なかつ大量供給可能なものとなる。
ハロゲン系溶剤などの適切な分散媒を選択し、分散液製造のための超音波処理の出力を高くすることにより、高濃度なゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液が得られるので、より濃いインク材料となり、また、2次元単原子層膜を積層して多層とすることにより、必要な膜厚の薄膜を作製することも可能であるから、薄膜の色や厚さを容易に調整することが可能である。層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物は直接遷移半導体であるため、分散液および単原子層薄膜は層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の層間距離の違いにより可視領域から近赤外領域まで発光を示し、塗布製膜可能な新たな発光材料や波長変換素子として活用が期待される。
また、基板として、ホール輸送層であるポリ(4−スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)を塗布した酸化インジウム錫陽極を有する基板を用い、この基板上に薄膜を形成して、その上に陰極となるアルミウム等を蒸着することにより、電界発光素子を得ることができる。
また、基板として、熱酸化シリコンを形成したシリコン基板を用い、この基板上に層状ゲルマニウム薄膜を形成して、その上にソース−ドレイン電極となる金等を蒸着することにより、薄膜トランジスタ(薄膜発光トランジスタを含む)を得ることができる。

Claims (21)

  1. 層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波処理することを含む、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を製造する方法。
  2. 前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、請求項1に記載の分散液を製造する方法。
    Figure 2020038811
    (式中、Rは、水素、アルキル基、芳香族環基、またはこれらの置換基の組み合わせであり、Mは、ゲルマニウム、スズ、またはゲルマニウムとスズとの組み合わせである。)
  3. 前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖アルキル基、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、請求項2に記載の分散液を製造する方法。
  4. 前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリルから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の分散液を製造する方法。
  5. 前記ハロゲン系溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、請求項4に記載の分散液を製造する方法。
  6. 層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を、有機溶媒中で超音波処理して製造した層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液を、基板と接触させて、基板上の全面、または一部の任意の位置に層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜を形成する方法。
  7. 前記薄膜が、単原子層薄膜、または単原子層薄膜の積層した薄膜である、請求項6に記載の薄膜を形成する方法。
  8. 前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、請求項6または7に記載の薄膜を製造する方法。
  9. 前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖アルキル基、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、請求項8に記載の薄膜を製造する方法。
  10. 前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリルから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、請求項6ないし9のいずれかに記載の薄膜を製造する方法。
  11. 前記ハロゲン系溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、請求項10に記載の薄膜を製造する方法。
  12. 有機溶媒中に分散した状態の層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物を含む分散液。
  13. 前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、前記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、請求項12に記載の分散液。
  14. 前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、請求項13に記載の分散液。
  15. 前記層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の分散液中の濃度が0.1mg/ml以上である、請求項12ないし14のいずれかに記載の分散液。
  16. 前記有機溶媒が、ハロゲン系溶媒、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、アセトニトリルから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、請求項12ないし15のいずれかに記載の分散液。
  17. 前記ハロゲン系溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンから選ばれる少なくも1つを主成分として含む、請求項16に記載の分散液。
  18. 層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物が、前記式(I)で表される化合物の少なくとも一種である、基板の表面、全面、あるいは一部の任意の位置に形成された、層状ゲルマニウム化合物、層状スズ化合物、または層状ゲルマニウム−スズ混合物の薄膜。
  19. 前記薄膜が単原子層薄膜、または単原子層薄膜の積層した薄膜である、請求項18に記載の薄膜。
  20. 前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖アルキル基、あるいはイソプロピル基、イソペンチル基などの分岐アルキル基からから選ばれる少なくも1つであり、前記芳香族環基がフェニル基、ナフチル基、アントラセン基などの芳香族誘導体から選ばれる少なくも1つである、請求項18または19に記載の薄膜。
  21. 請求項18ないし20のいずれかに記載の薄膜を含む電界発光素子または薄膜トランジスタ。

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