JP2020037718A - めっき被膜の表面改質方法及び装置 - Google Patents

めっき被膜の表面改質方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、めっき被膜の表面硬化を高めるとともに素材表面の硬度の低下を抑止することができるめっき被膜の表面改質方法及び装置を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係るめっき被膜の表面改質方法は、素材表面に形成されためっき被膜に対してパルス幅が1μ秒〜500μ秒のパルスレーザーを照射してめっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持する。【選択図】図2

Description

本発明は、レーザー光の照射によりめっき被膜を改質する表面改質方法及び装置に関する。
従来より金属材料等の素材表面の耐久性を向上させるためにめっき処理によりめっき被膜を形成することが行われている。無電解めっき処理によるめっき被膜は、電解めっき処理と異なり、めっき浴に浸漬するだけで均一なめっき被膜が形成できることから、様々な素材に適用されてきている。無電解めっき被膜としては、リン(P)を含有するニッケル(Ni)めっき被膜(以下「Ni−Pめっき被膜」という)が代表的なものとして挙げられるが、こうしためっき被膜では、リンの含有量を低下させることで結晶化が進み、めっき被膜の硬度を高めて耐摩耗性等の耐久性を向上させることが知られている。
また、めっき被膜に対して熱処理等の表面処理を施すことでも、めっき被膜の硬度を向上させることが知られており、例えば、特許文献1及び2では、Ni−Pめっき被膜に対して、バレル研磨処理、ショットブラスト処理、レーザビーム処理や高周波誘導加熱処理といった表面処理を行って表面硬化処理を行う点が記載されている。また、特許文献3では、めっき被膜表面にレーザー光を照射して局部的に加熱処理することで、素材に対する加熱の影響を抑えてめっき被膜の硬度を向上させる表面改質方法が記載されている。
特許第3066798号公報 再表98/31849号公報 特開2017−222922号公報
Ni−Pめっき被膜では、めっき被膜のリンの含有量を低下させることで、めっき被膜の硬度を向上させることができるが、得られる硬度はビッカース硬度で700HV程度までとなっており、十分な硬度を得ることが難しい。
熱処理等の表面処理を行う場合には、加熱温度400℃で1時間程度加熱処理することで、ビッカース硬度で900HV程度の十分な硬度を得ることができるが、加熱温度が高いことから、めっき被膜が形成された素材によっては、加熱されることで、焼鈍しの効果として歪が発生し、素材自体の硬度の低下に伴う引張強度の低下といった悪影響を及ぼすようになる。
また、特許文献3では、レーザー光の照射によりめっき被膜の表面から加熱を行うことでめっき被膜の硬度を上昇させつつ素材への熱影響を抑制している。しかしながら、素材表面層での硬度が10%程度低下しており、レーザー光の照射による素材への熱影響が及んでいる点が課題となっている。
そこで、本発明は、めっき被膜の表面硬化を高めるとともに素材表面の硬度の低下を抑止することができるめっき被膜の表面改質方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明に係るめっき被膜の表面改質方法は、素材表面に形成されためっき被膜に対してパルス幅が1μ秒〜500μ秒のパルスレーザーを照射してめっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持する。さらに、前記めっき被膜は、1μm〜30μmの膜厚に形成されており、前記パルスレーザーの照射量は、フルーエンスが0.01J/cm2〜2.0J/cm2になるように設定する。さらに、前記素材は、浸炭処理又は焼き入れ処理により表面硬化処理がされており、前記めっき被膜は、無電解めっき処理により形成されている。
本発明に係る摺動部材は、上記のめっき被膜の表面改質方法により表面を処理された摺動部材であって、表面硬度が700Hv以上の本体と、本体表面に形成された表面硬度が900Hv以上のめっき被膜とを備えている。
本発明に係るめっき被膜の表面改質装置は、素材表面に形成されためっき被膜に対してレーザー光を照射して改質するめっき被膜の表面改質装置であって、パルス幅が1μ秒〜500μ秒のパルスレーザーを出射する光源部と、前記光源部から出射されたレーザー光を所定の照射領域に対してフルーエンスが0.01J/cm2〜2.0J/cm2となる照射量で照射してめっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持するように制御する照射制御部とを備えている。さらに、前記照射制御部は、前記素材表面を前記照射領域に対して相対的に移動させて照射制御する。
本発明は、上記の構成を備えることで、パルス状のレーザー光を照射してめっき被膜を局部的に加熱処理することができ、素材に対する加熱の影響を抑えてめっき被膜の硬度を向上させることが可能となる。
レーザー光の照射による加熱処理について有限要素法を用いて解析した結果を示す説明図である。 レーザー光の照射による加熱処理について有限要素法を用いて解析した結果を示す説明図である。 レーザー光の照射による加熱処理について有限要素法を用いて解析した結果を示す説明図である。 レーザー光を素材表面に対して走査して照射する装置を用いる例である。 素材を回転しながらレーザー光を照射する装置を用いる例である。 素材を回転しながらレーザー光を走査して照射する装置を用いる例である。
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
素材としては、めっき処理が可能な金属材料であればよく特に限定されないが、機械部品、工具等の高硬度に仕上げる必要がある材料に好適である。例えば、クロムモリブデン鋼等の機械構造用鋼材、炭素工具鋼等の工具鋼材、高炭素クロム軸受鋼等の特殊用途鋼材、ねずみ鋳鉄品等の鋳鉄材といった素材が挙げられる。こうした素材では、浸炭処理や焼き入れ処理といった表面の硬化処理が行われているが、表面処理後の更なる加熱処理は、強度低下や素材の変形といった影響を受けやすくなるため、できるだけ避けることが望ましい。また、アルミニウム等融点が低く歪などの変形を起こしやすい素材に対しても有効である。
素材表面に形成するめっき被膜としては、金属材料の表面にめっき処理により形成することができるものであればよく特に限定されないが、幅広い素材に対応可能で熱処理により硬度が向上する無電解めっき被膜が好適である。特に、Niを主成分とするNi−Pめっき被膜については、レーザー光により硬度を高めることができることから好ましい。そして、めっき被膜の膜厚は1μm〜30μmに形成することが好ましい。
また、めっき被膜には、炭素材料を複合させることで、めっき被膜の硬度を高めることができる。炭素材料としては、例えば、ナノダイヤモンド等の炭素微粒子、カーボンナノチューブ、フラーレンといったものが挙げられる。こうした炭素材料は、予めめっき液に投入しておき、めっき処理によりめっき被膜に含有させることができる。また、炭素材料を含むコーティング液を調製し、形成されためっき被膜にコーティング処理することで、炭素材料を複合させることができる。このような炭素材料を複合させためっき被膜についてもレーザー光照射によって更なる硬度の向上を図ることができる。
めっき被膜に照射するレーザー光については、ファイバーレーザー、YAGレーザー、CO2レーザー、高出力半導体レーザーといった公知のパルス状のレーザー光を発振可能なレーザー照射装置を用いて照射することができるが、めっき被膜に対して熱影響の及ぶ深さ範囲を限定して基材表面に対して熱影響が及ばないようにパルス幅を適切な値に設定する必要がある。膜厚が1μm〜30μmのめっき被膜に対しては、パルス幅が1μ秒〜500μ秒のレーザー光を照射することで、素材に対する熱影響を抑止しながらめっき被膜を満遍なく加熱して硬化させることができる。具体的には、めっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持することで、めっき被膜を加熱により硬化させるとともに素材への熱による影響を抑止することが可能となる。
図1から図3は、レーザー光の照射による加熱処理について有限要素法を用いて解析した結果を示す説明図である。有限要素法に用いたモデル計算には、公知のソフトウェア(計測エンジニアリング株式会社製COMSOL)を用いた。モデルに関する条件設定として、ビーム中心軸周りに回転対称な直径10mm、厚さ1mmの円盤モデルの中央にレーザーパルスが入射し、めっき膜表面の最高到達温度がめっき膜の融点800℃程度になるようにレーザー出力を設定して解析処理した。
図1は、パルス幅0.5ミリ秒のレーザー光による照射例であり、レーザーの平均出力150W、繰り返し周波数200Hzに設定した。図1(a)は、1パルスが入射した直後の深さ方向の温度分布を示しており、図1(b)は、照射直後の表面及び深さ方向の温度分布を示している。また、図1(c)は、照射領域の中心における深さ方向の温度変化を示すグラフであり、照射開始からの経過時間(ミリ秒)による温度変化の推移を示している。
パルス幅0.5ミリ秒のレーザー光による照射では、レーザー光の照射中に表面が急激に加熱され、レーザー光の照射終了後に熱が内部に移動しつつ冷却されていくことがわかる。照射直後に400℃以上に加熱される領域は表面から33μmの深さまで及んでおり、膜厚が4μmのめっき被膜より深く素材にまで熱影響が及んでいることがわかる。めっき被膜と素材との境界面における最高温度は510℃に達しており、素材への熱影響が大きくなっている。
図2は、パルス幅1マイクロ秒のレーザー光による照射例であり、平均出力400W、繰り返し周波数100kHzに設定した。図2(a)は、1パルスが入射した直後の深さ方向の温度分布を示しており、照射面付近の一部拡大図を併せて示している。図2(b)は、照射直後の表面及び深さ方向の温度分布を示している。また、図2(c)は、照射領域の中心における深さ方向の温度変化を示すグラフであり、照射開始からの経過時間(マイクロ秒)による温度変化の推移を示している。
パルス幅10マイクロ秒のレーザー光による照射では、パルス幅0.5ミリ秒のレーザー光の場合と同様に、照射中の加熱及び照射終了後の冷却が確認できるが、400℃以上に加熱される領域は表面から1μm以内の深さの領域となり、パルス幅0.5ミリ秒のレーザー光を照射した場合と比較して大幅に浅くなることが示されている。この場合、めっき被膜及び素材の境界面である深さ4μmでの最高到達温度は80℃となり、素材への熱影響が大幅に低減されることを示している。また、めっき被膜に対しては、十分な加熱処理を行うことができ、めっき被膜表面の硬度を高めることができる。
図3は、パルス幅40ナノ秒のレーザー光による照射例であり、平均出力400W、繰り返し周波数100kHzに設定した。図3(a)は、1パルスが入射した直後の深さ方向の温度分布を示しており、照射面付近の一部拡大図を併せて示している。図3(b)は、照射直後の表面及び深さ方向の温度分布を示している。また、図3(c)は、照射領域の中心における深さ方向の温度変化を示すグラフであり、照射開始からの経過時間(ナノ秒)による温度変化の推移を示している。
パルス幅が40ナノ秒のレーザー光による照射では、400℃以上に加熱される領域は表面から0.2μm以内の深さの領域となり、めっき被膜及び素材の境界面である深さ4μmでの最高到達温度は20℃となっている。したがって、素材に対する熱影響はほとんどないもののめっき被膜に対する加熱が不十分となって硬度を十分高めることが難しい。
レーザー光の照射量は、めっき被膜を加熱して硬度を高めるとともに素材の加熱による影響を抑えることが望ましく、レーザーの出力に応じて最適な値に設定する必要がある。具体的には、膜厚が1μm〜30μmのめっき被膜に対して、照射量はフルーエンスが0.01J/cm2〜2.0J/cm2になるように設定することで、めっき被膜表面にアブレーション等の現象が生じることなく加熱させ、素材に対して熱的影響を及ぼすことなくめっき被膜を満遍なく加熱して硬化させることができる。
こうした照射制御を行うめっき被膜の表面改質装置は、パルス幅が1μ秒〜500μ秒のパルスレーザーを出射する光源部と、前記光源部から出射されたレーザー光を所定の照射領域に対してフルーエンスが0.01J/cm2〜2.0J/cm2となる照射量で照射してめっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持するように制御する照射制御部とを備えている。照射制御部は、素材表面を照射領域に対して相対的に移動させて照射制御することで、移動に伴う平均的な照射量(照射密度)によりめっき被膜の蓄熱状態を調整することが可能となり、めっき被膜の放熱状態に対応して表面改質処理をきめ細かく制御することができる。
図4から図6は、めっき被膜の表面改質装置に関する概略構成図である。図4は、レーザー光を素材表面に対して走査して照射する装置を用いる例である。光源部として、公知のレーザー照射装置10を用い、照射制御部として、ガルバノスキャナ11及び光学調整部12を備えており、レーザー照射装置10から照射されたレーザー光Lを集光又は拡散等の光学的な調整を行う光学調整部12を通過して移動部となるガルバノスキャナ11により素材Sのめっき被膜表面に対して走査させる。レーザー光を走査しながら照射することで単位面積当たりの照射量を制御することができ、レーザー光の走査速度を調整することで照射領域のめっき被膜を均一に改質処理することが可能となる。
図5は、素材を回転しながらレーザー光を照射する装置を用いる例である。光源部として、公知のレーザー照射装置20を用い、照射制御部として、回転装置(図示せず)及び光学調整部21を備えており、レーザー照射装置20から照射されたレーザー光Lを集光又は拡散等の光学的な調整を行う光学調整部21を通過して円柱状の素材Tのめっき被膜表面に向かって照射する。素材Tは、移動部となる回転装置を用いて中心軸を中心に回転するようになっており、素材表面を所定の回転速度で回転させながらレーザー光を照射する。そして、素材の回転速度を調整することで照射領域のめっき被膜を均一に改質処理することが可能となる。
図6は、素材を回転しながらレーザー光を走査して照射する装置を用いる例である。光源部として、公知のレーザー照射装置30を用い、照射制御部として、ガルバノスキャナ31、回転装置(図示せず)及び光学調整部32を備えており、レーザー照射装置30から照射されたレーザー光Lを集光又は拡散等の光学的な調整を行う光学調整部32を通過して移動部となるガルバノスキャナ31により円柱状の素材Uのめっき被膜表面に対して走査させる。そして、走査ラインを素材Uの中心軸方向に沿って設定して照射する。素材Uは、両端部を支持部材33で把持して移動部となる回転装置(図示せず)を用いて中心軸を中心に回転するようになっている。素材表面を中心軸を中心に回転させながらレーザー光を中心軸方向に走査して照射することで、照射領域に対して照射制御を行うことができる。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
[実施例1]
素材となる金属材料として、浸炭処理を施したクロム鋼からなる円柱状の棒状体(直径4mm、長さ20mm)を準備した。棒状体に対して、無電解ニッケルめっき液(日本カニゼン株式会社製;シューマーSEK−670)を用いて、表面全体に膜厚20μmの無電解Ni−Pめっき被膜(P含有量;7重量%)を常法により形成した。形成されためっき被膜の硬度をビッカース硬度計(株式会社アカシ製;AVK−C2V3)により測定したところ、769HVであった。棒状体を軸方向に直交する方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、743HVであった。
レーザー光源として高出力レーザーダイオード(コヒーレント―ディラス社製;M10Y−808.3−150Q)を用い、高出力パルス電源(ユニタック社製;PLSS17B)で駆動してパルス状のレーザー光を出射し、出射されたレーザー光をシリンドリカルレンズによりライン状に集光してレーザー光を照射するように構成した。
図5に示すように、めっき処理した棒状体の一方の端部を回転装置(オリエンタルモーター株式会社製;型番US2-26JA-5-1)の治具に固定して中心軸を中心に回転速度100rpmで回転させながら、めっき被膜の表面にレーザー光をパルス幅10マイクロ秒で繰り返し周波数5kHzに調整して照射し、平均出力6.3Wで10分間連続して照射を実施した。単位面積当たりの照射量(フルーエンス)は0.04J/cm2であった。
照射後のめっき被膜表面の硬度を測定したところ、923HVであった。また、照射後の棒状体を軸方向に直交する方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、718HVであり、素材側の硬度低下は3%であった。
[比較例1]
実施例1と同様に、めっき処理した棒状体を回転させながら、ファイバーレーザー発振器(IPG社製)を用いてレーザー光を照射した。照射するレーザー光は、パルス幅0.3ミリ秒で繰り返し周波数600Hzとし、平均出力135Wで7.6秒間連続して照射を実施した。実施例1と同様に、照射後のめっき被膜表面の硬度を測定したところ、1165HVであった。照射後の棒状体を軸方向に直交する方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、671HVであり、素材側の硬度は10%低下した。素材に対する熱影響が大きくなっていることがわかる。
[比較例2]
実施例1と同様に、めっき処理した棒状体を回転させながら、全固体レーザー発振器(スペクトラフィジックス社製)を用いてレーザー光を照射した。照射するレーザー光は、パルス幅40ナノ秒で繰り返し周波数10kHzとし、平均出力10.6Wで1分間連続して照射を実施した。実施例1と同様に、照射後のめっき被膜表面の硬度を測定したところ、696HVであった。照射後の棒状体を軸方向に直交する方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、722HVであり、素材側の硬度低下は3%であった。レーザー光の照射によりめっき被膜の硬度を高められなかった。
[比較例3]
実施例1と同様に、めっき処理した棒状体に対して、加熱装置(株式会社デンケン製;KDF−S80)を用いて大気中において400℃で1時間加熱処理した。加熱処理後、実施例1と同様に、めっき被膜表面の硬度を測定したところ、1381HVであった。加熱後の棒状体を軸方向に直交する方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、565HVであり、素材表面の硬度は24%低下した。めっき被膜の硬度は高められているものの、素材側の硬度が低下しており、熱影響が大きくなっていることがわかる。
[実施例2]
素材となる金属材料として、クロムモリブデン鋼からなる板状体(縦15mm、横50mm、厚さ2mm)を準備した。板状体に対して、実施例1と同様に、表面全体に膜厚20μmの無電解Ni−Pめっき被膜(P含有量;7重量%)を形成した。形成されためっき被膜の硬度をビッカース硬度計(株式会社アカシ製;AVK−C2V3)により測定したところ、492HVであった。板状体を厚さ方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、741HVであった。
レーザー光源としてファイバーレーザー装置(IPGフォトニクス社製;YLR−150/1500−QCW)を用い、パルス幅0.2ミリ秒で繰り返し周波数600Hzに調整してピーク出力1125Wでレーザー光を出射するように設定した。図4に示すように、出射されたレーザー光は、ガルバノスキャナ装置(SUNNY TECHNOLOGY社製)を用いて所定の走査方向に沿うように偏向制御され、偏向制御されたレーザー光をシリンドリカルレンズに入射して所定の走査ラインに沿うように集光してレーザー光を走査制御するように構成した。
ガルバノスキャナ装置のガルバノ移動速度を100mm/秒に設定して照射回数100回でレーザー光を素材表面に照射した。単位面積当たりの照射量(フルーエンス)は1.2J/cm2であった。
照射後のめっき被膜表面の硬度を測定したところ、916HVであった。また、照射後の板状体を厚さ方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、705HVであり、素材側の硬度低下は5%であった。
[比較例4]
実施例2と同様に、めっき処理した板状体に対して、加熱装置(株式会社デンケン製;KDF−S80)を用いて大気中において400℃で1時間加熱処理した。加熱処理後、実施例2と同様に、めっき被膜表面の硬度を測定したところ、942HVであった。加熱後の板状体を厚さ方向に切断して、素材表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、565HVであり、素材表面の硬度は24%低下した。めっき被膜の硬度は高められているものの、素材側の硬度が低下しており、熱影響が大きくなっていることがわかる。
[実施例3]
実施例1と同様に無電解ニッケルめっきを施した円柱状の棒状体を準備し、図6に示すように、棒状体の両端部を回転装置にセットした。回転装置を中心軸を中心に回転速度250rpmで回転させながら、実施例2と同様のレーザー光源を用いて、めっき被膜の表面にレーザー光をパルス幅200μ秒、及び、繰り返し周波数600Hzに調整し、ピーク出力1500Wで照射した。出射されたレーザー光は、実施例2と同様の走査装置を用いてレーザー光を走査制御するように構成し、ガルバノ移動速度を100mm/秒に設定して照射回数100回でレーザー光を棒状体の中心軸方向に沿って設定された走査ライン状を照射した。そのため、棒状体の回転動作及びレーザー光の走査制御により棒状体の外周面全体にレーザー光が照射されて加熱処理されるようになる。単位面積当たりの照射量(フルーエンス)は1.5J/cm2であった。
照射後の棒状体を軸方向に直交する方向に切断して、めっき被膜の硬度を測定したところ916HVであった。また、棒状体表面から0.1mmの深さで硬度を測定したところ、705HVであり、素材側の硬度低下は5%であった。
また、円柱状の棒状体を軸方向に沿って切断し、その断面からめっき被膜の硬度分布を測定したところ、硬度がほぼ均一に高められていることが確認された。こうした硬度分布が得られたのは、棒状体の回転動作及びレーザー光の走査制御によるレーザー光の照射制御を行うことで、棒状体の外周面がほぼ均一に加熱処理されたことを示している。
以上説明したように、素材表面に形成されためっき被膜に対してパルス幅が1μ秒〜500μ秒のレーザー光を照射することで、めっき被膜を局部的に加熱処理することができ、素材に対する加熱の影響を抑えながらめっき被膜の硬度を向上させることが可能となる。
めっき被膜が形成された摺動部材を上述した表面改質方法で処理することで、表面硬度が700Hv以上の本体と、本体表面に形成された表面硬度が900Hv以上のめっき被膜とを備えている摺動部材を得ることができる。例えば、本体が炭素鋼、浸炭処理されたクロム鋼等の金属材料からなる自動車部品、チェーンピン等の摺動部材の摺動面に対して、Ni−P、Ni−B等のめっき被膜を公知の無電解めっき処理により形成し、形成されためっき被膜にパルスレーザーを照射することで、本体表面の硬度を700Hv以上に維持してめっき被膜の表面硬度を900Hv以上に硬化させることができる。そのため、摺動面の摺動特性及び耐久性を向上させて高品質の摺動部材を得ることが可能となる。
10・・・レーザー照射装置、11・・・ガルバノスキャナ、12・・・光学調整部、20・・・レーザー照射装置、21・・・光学調整部、30・・・レーザー照射装置、31・・・ガルバノスキャナ、32・・・光学調整部、33・・・支持部材、S、T、U・・・素材

Claims (6)

  1. 素材表面に形成されためっき被膜に対してパルス幅が1μ秒〜500μ秒のパルスレーザーを照射してめっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持するめっき被膜の表面改質方法。
  2. 前記めっき被膜は、1μm〜30μmの膜厚に形成されており、前記パルスレーザーの照射量は、フルーエンスが0.01J/cm2〜2.0J/cm2になるように設定する請求項1に記載のめっき被膜の表面改質方法。
  3. 前記素材は、浸炭処理又は焼き入れ処理により表面硬化処理がされており、前記めっき被膜は、無電解めっき処理により形成されている請求項1又は2に記載のめっき被膜の表面改質方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のめっき被膜の表面改質方法により表面を処理された摺動部材であって、表面硬度が700Hv以上の本体と、本体表面に形成された表面硬度が900Hv以上のめっき被膜とを備えている摺動部材。
  5. 素材表面に形成されためっき被膜に対してレーザー光を照射して改質するめっき被膜の表面改質装置であって、パルス幅が1μ秒〜500μ秒のパルスレーザーを出射する光源部と、前記光源部から出射されたレーザー光を所定の照射領域に対してフルーエンスが0.01J/cm2〜2.0J/cm2となる照射量で照射してめっき被膜表面の硬度を900Hv以上に硬化させるとともに素材表面の硬度を700Hv以上に維持するように制御する照射制御部とを備えているめっき被膜の表面改質装置。
  6. 、前記照射制御部は、前記素材表面を前記照射領域に対して相対的に移動させて照射制御する請求項5に記載のめっき被膜の表面改質装置。
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