JP2016016432A - 表面改質方法及び表面改質金属部材 - Google Patents

表面改質方法及び表面改質金属部材 Download PDF

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研二 結城
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研二 結城
岳史 横山
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Abstract

【課題】パルスレーザの集光径の大きさによらず、表面に微細な凹凸形状を形成することが可能な表面改質方法及び表面改質金属部材を提供する。【解決手段】先ず、鋳造用金型10の溶湯接触面に窒化処理を施して窒化層12を形成する窒化処理工程を行う。次に、窒化処理後の溶湯接触面に、パルス幅が10psec以下のパルスレーザを、1パルスあたりのフルーエンスが0.2J/cm2〜10J/cm2となり、パルス同士のラップ率が95%以下となるように照射する照射工程を行う。これによって、窒化層12の深さの範囲内に改質領域を形成して表面改質金属部材を得る。【選択図】図2

Description

本発明は、金属表面に改質領域を形成する表面改質方法及び該改質領域が設けられた表面改質金属部材に関する。
例えば、鋳造用金型の方案部等を構成する金属部材では、鋳造の高効率化や高精度化等を図るべく、溶湯接触面となる表面の溶湯流動性を向上させることが求められる。表面の溶湯流動性を向上させるためには、溶湯と表面との間の断熱性を高めて、溶湯の熱が金属部材に奪われることを抑制する必要がある。従って、表面と溶湯との接触面積を低減させるべく、表面に対して、凹凸形状を形成する改質処理を行うことが考えられる。この場合、凹凸形状は、凹凸同士の間に溶湯が進入することを抑制して十分なエアギャップが形成されるように、微細な大きさに設けられる必要がある。換言すると、溶湯の濡れ角を増大させて表面を低濡れ性化することができるよう、十分に微細化された凹凸形状を表面に設ける必要がある。
そこで、例えば、特許文献1には、金属部材の表面に改質処理としてパルスレーザを照射することで、該パルスレーザの集光径に応じた大きさ(直径数十μm程度)の凹凸形状を複数形成する表面改質方法が提案されている。
特開2009−226479号公報
ところで、上記の表面改質方法において、溶湯流動性を一層良好に向上させるべく、さらに微細な凹凸形状を形成するためには、パルスレーザの集光径を小さくすることが考えられる。集光径を小さくする方法としては、エキスパンダ等を用いて、集光レンズに対するパルスレーザの入射光径を拡大することが挙げられる。しかしながら、上記の微細な凹凸形状を形成可能な集光径となるまで、エキスパンダによって入射光径を拡大することは容易ではなく、改質処理を行うための装置や設定が複雑化してしまう懸念がある。
また、パルスレーザの集光径を小さくした場合、表面の単位面積当たりにパルスレーザを照射する回数が増大するため、改質処理の効率が低下してしまう懸念がある。これを回避すべく、パルスレーザの出力を増大させると、該パルスレーザの熱影響等によって表面が溶融してしまい、金属部材を劣化させる変質層が形成され易くなってしまう。
さらに、一般的に、パルスレーザの集光径を小さくすると、焦点距離も小さくなるため、例えば、表面に集光レンズを接近させ難い形状の金属部材には、改質処理を行うことが困難になる。このため、上記の表面改質方法を適用可能な金属部材の形状の自由度が低下してしまう懸念がある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、パルスレーザの集光径の大きさによらず、表面に微細な凹凸形状を形成することが可能な表面改質方法及び表面改質金属部材を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、金属部材の表面に改質領域を形成して表面改質金属部材とする表面改質方法であって、前記表面に窒化処理を施して窒化層を形成する窒化処理工程と、前記窒化処理後の前記表面に、パルス幅が10psec以下のパルスレーザを、1パルスあたりのフルーエンスが0.2J/cm2〜10J/cm2となり、パルス同士のラップ率が95%以下となるように照射して、前記窒化層の深さの範囲内に前記改質領域を形成する照射工程と、を有することを特徴とする。
この表面改質方法では、先ず、窒化処理工程において金属部材の表面に窒化層を形成する。この窒化層では、例えば、窒素が金属部材中のCrやMo等と優先的に窒化物を形成しており、窒素の分布率がμmオーダーの範囲で不均一になっている。
次に、照射工程において窒化層に上記の条件に設定されたパルスレーザを照射する。パルスレーザのパルス幅は、金属部材及び窒化層の構成物質の衝突緩和時間よりも短い。このため、照射工程では、表面をレーザアブレーション加工(非加熱加工)することができる。また、パルスレーザの1パルスあたりのフルーエンス(パルスフルーエンス)及びパルス同士のラップ率(パルスラップ率)が上記の範囲内に設定されているため、該パルスレーザを照射した表面が溶融することを抑制できる。これらによって、表面に変質層が生じることを効果的に抑制しつつ、上記の構成物質を表面から放出させて除去することができる。
ここで、上記の通り、窒化層内に不均一に分布している窒化物は、金属部材を構成する金属元素よりもレーザ吸収率が高い傾向にある。すなわち、窒化層内では、レーザ吸収率が不均一になっているため、レーザアブレーション加工によって表面から放出除去される構成物質に優先度が生じる。要するに、窒化物が優先的に除去される。従って、表面に窒化処理を施した後にパルスレーザを照射することで、表面から構成物質が不均一に放出除去された放出痕として、例えば、数μm〜10μm程度の微細な凹凸形状が形成された改質領域を得ることができる。
以上から、この表面改質方法では、パルスレーザの集光径を小さくすることなく、微細な凹凸形状からなる改質領域を表面に形成すること、換言すると、パルスレーザの集光径よりも小さい凹凸形状を表面に形成することができる。すなわち、十分に微細化された凹凸形状を得るべく、エキスパンダ等を用いて集光レンズに対するパルスレーザの入射光径を拡大することや、単位面積あたりのパルスレーザの照射回数を増大させる必要がない。
このため、例えば、窒化処理が施されていない表面にパルスレーザを照射する場合等に比べて、一層効果的に微細化された凹凸形状を容易に得ることができる。その結果、所望の特性を効果的に向上させた表面改質金属部材を効率的且つ高品質に得ることができる。また、焦点距離が小さくなることを回避できるため、改質領域を形成可能な金属部材の形状の自由度を向上させることができる。
上記の表面改質方法において、前記窒化処理工程では、0.1mm以下の深さの前記窒化層を形成することが好ましい。この場合、表面の最表層に、例えば、窒素と金属部材中のFeからε相と呼ばれる脆弱な相が形成されることを抑制でき、表面改質金属部材の品質が低下することを回避できる。
上記の表面改質方法において、前記照射工程の後、前記表面に対して、さらに前記パルスレーザを照射することで、前記窒化層に比して深さが大きい溝を前記表面に形成する溝形成工程を有することが好ましい。
すなわち、上記の通り、パルス幅、パルスフルーエンス、パルスラップ率をそれぞれ設定したパルスレーザを窒化層の範囲内に照射すると、微細な凹凸形状からなる改質領域を表面に形成することができる。さらに、改質領域が形成された後も、このパルスレーザを照射すると、窒化層の構成物質が全て放出除去されて、窒化層の下部の母材(未窒化層)に該パルスレーザを照射することができる。この未窒化層では、レーザアブレーション加工の優先度の差異が窒化層よりも小さいため、パルスレーザを照射すると、パルスレーザの集光径に応じた大きさの微細な溝を形成することができる。
従って、この表面改質方法では、パルスレーザの上記の条件や集光径を変更することなく、表面に対して改質領域と、窒化層に比して深さが大きい溝との両方を容易に形成できる。すなわち、集光レンズの交換や、パルスレーザの入射光径及び出力の調整等の煩雑な工程を経ずに、表面に種々の形状を容易に形成することができる。これによって、表面が所望の特性を示すように、一層高精度に改質処理を行って表面改質金属部材を得ることが可能になる。
上記の表面改質方法において、前記表面が、鋳造用金型の方案部の溶湯接触面であることが好ましい。この場合、溶湯接触面を良好に低濡れ性化することができる。すなわち、改質領域と溶湯との接触面積を効果的に低減させることができるため、改質領域と溶湯との間の断熱性を高めて、溶湯の熱が鋳造用金型の方案部に奪われることを抑制できる。その結果、溶湯接触面の溶湯流動性を容易且つ効果的に向上させることができ、ひいては、鋳造の高効率化や高精度化等を図ることが可能になる。
また、上記の通り、パルスレーザの条件が設定されているため、溶湯接触面にパルスレーザを照射して改質領域を形成しても、溶湯接触面が溶融して変質層が形成されることが抑制されている。これによって、鋳造用金型の品質が低下することを回避できる。さらに、溶湯接触面に窒化層を形成することで、鋳造用金型の耐摩耗性、耐焼き付き性、耐疲労性等を向上させることが可能になる。
また、本発明は、金属部材の表面に改質領域が設けられた表面改質金属部材であって、前記改質領域は、窒化層内の窒化物が優先的に放出除去されることで形成された凹凸形状からなることを特徴とする。
金属部材の表面には、例えば、CrやMo等の窒化物を含む窒化層が形成されており、該窒化層内の窒素の分布率がμmオーダーの範囲で不均一になっている。改質領域では、上記の窒化層内の窒化物が、金属部材の他の構成元素よりも優先的に放出除去された放出痕として、例えば、数μm〜10μm程度の微細な凹凸形状が形成されている。なお、この放出除去は、窒化層に対して、パルスレーザを照射してレーザアブレーション加工を施すこと等によって生じさせることができる。すなわち、この表面改質金属部材では、表面に上記のような微細な凹凸形状からなる改質領域が設けられることで、該表面の低濡れ性等の特性を効果的且つ高精度に向上させることができる。
上記の表面改質金属部材において、前記窒化層の深さが0.1mm以下であることが好ましい。この場合、表面の最表層に、例えば、窒素と金属部材中のFeから形成されるε相と呼ばれる脆弱な相が含まれることを抑制でき、表面改質金属部材の品質が低下することを回避できる。
上記の表面改質金属部材において、前記表面には、前記窒化層に比して深さが大きい溝がさらに設けられていることが好ましい。この場合、表面が所望の特性となるように一層高精度に改質された表面改質金属部材を得ることができる。
上記の表面改質金属部材において、前記表面が、鋳造用金型の方案部の溶湯接触面を構成することが好ましい。この場合、溶湯接触面を良好に低濡れ性化すること、改質領域と溶湯の接触面積を効果的に低減させること、溶湯接触面と溶湯との間の断熱性を高めることができる。
すなわち、溶湯の熱が鋳造用金型に奪われることを効果的に抑制できるため、溶湯接触面の溶湯流動性を容易且つ効果的に向上させることができる。ひいては、鋳造の高効率化や高精度化等を図ることが可能になる。また、この溶湯接触面では、上記の通り窒化物が優先的に放出除去されて改質領域が形成されているため、溶融によって変質層が生じることが抑制されている。つまり、鋳造用金型の品質が低下することが回避されている。さらに、溶湯接触面に窒化層が形成されているため、鋳造用金型の耐摩耗性、耐焼き付き性、耐疲労性等を向上させることが可能になる。
本発明では、表面に窒化処理を施した後に上記の条件に設定されたパルスレーザを照射する。これによって、パルスレーザの集光径によらずに微細化された凹凸形状からなる改質領域を表面に形成でき、且つ該表面に変質層が生じることを抑制できる。その結果、所望の特性を効果的に向上させた表面改質金属部材を効率的且つ高品質に得ることができる。また、焦点距離が小さくなることを回避できるため、改質領域を形成可能な金属部材の形状の自由度を向上させることができる。
そして、金属部材を鋳造用金型の方案部とし、その溶湯接触面を表面として上記の改質領域を形成することで、溶湯接触面を良好に低濡れ性化することができる。これにより、改質領域と溶湯の接触面積を効果的に低減させることができる。さらに、溶湯接触面と溶湯との間の断熱性を高めて、溶湯の熱が鋳造用金型の方案部に奪われることを効果的に抑制できる。すなわち、溶湯接触面の溶湯流動性を容易且つ効果的に向上させることができ、ひいては、鋳造の高効率化や高精度化等を図ることが可能になる。
本発明の実施形態に係る表面改質方法の窒化処理工程によって、窒化層を形成した金属部材の要部概略断面図である。 図1の金属部材に照射工程によって改質領域を形成することで得られた表面改質金属部材の要部概略断面図である。 図2の表面改質金属部材に溝形成工程によって溝を形成した状態を示す要部概略断面図である。 実施例に係る表面改質金属部材の改質領域の電子顕微鏡写真である。 比較例に係る表面改質金属部材のパルスレーザ照射面の電子顕微鏡写真である。
以下、本発明に係る表面改質方法及び表面改質金属部材につき、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る表面改質方法は、金属部材の表面に改質領域を形成して表面改質金属部材とすることで該表面の所望の特性を向上させることができ、特に、鋳造用金型の方案部の溶湯接触面に改質領域を形成する場合に好適に適用できる。従って、本実施形態では、金属部材が鋳造用金型であり、該鋳造用金型のキャビティと連続する方案部の溶湯接触面に対して、その溶湯流動性を向上させるべく改質領域を設ける場合について説明する。なお、鋳造用金型の材質としては、例えば、合金工具鋼材(JIS規格:SKD11、SKD61等)等が挙げられる。
しかしながら、金属部材は鋳造用金型に限定されず、その材質も限定されない。また、本発明に係る表面改質方法では、溶湯流動性のみならず、撥水性、耐食性、表面粗さ等、改質処理を施す金属部材の用途に応じた所望の特性の向上を図ることが可能である。
本実施形態に係る表面改質方法では、先ず、図1に示すように、鋳造用金型(金属部材)10の方案部の溶湯接触面(表面)に、窒化処理を施して窒化層12を形成する窒化処理工程を行う。なお、窒化処理は、ガス窒化、イオン窒化、塩浴窒化、プラズマ窒化等の公知の手法によって行うことができる。この窒化層12内では、例えば、窒素が鋳造用金型10中のCrやMo等と優先的に窒化物を形成しており、窒素の分布率がμmオーダーの範囲で不均一になっている。また、窒化層12は、表面からの深さd1が0.1mm以下であることが好ましい。この場合、窒化層12の最表層に、例えば、窒素と鋳造用金型10中のFeからε相と呼ばれる脆弱な相が形成されることを抑制できる。すなわち、鋳造用金型10の品質が低下することを回避できる。
次に、図2に示すように、上記の窒化処理工程で形成した窒化層12に対して、パルス幅が10psec以下のパルスレーザを照射して、窒化層12の深さd1の範囲内に改質領域を形成する照射工程を行う。このパルスレーザは、1パルスあたりのフルーエンス(パルスフルーエンス)が0.2J/cm2〜10J/cm2となり、パルス同士のラップ率(パルスラップ率)が95%以下となるように調整されている。
すなわち、パルスレーザのパルス幅は、鋳造用金型10及び窒化層12の構成物質の衝突緩和時間よりも短く設定されている。このため、照射工程では、溶湯接触面のうち、パルスレーザを照射した部位及びその近傍に対して、レーザアブレーション加工(非加熱加工)を行うことができる。この際、パルスレーザのパルスフルーエンス及びパルスラップ率が上記の範囲内に設定されていることで、溶湯接触面が熱影響によって溶融することを抑制できる。従って、溶湯接触面に変質層が生じることを効果的に抑制することができる。
なお、パルスフルーエンス及びパルスラップ率のそれぞれの一層好ましい範囲としては、0.2J/cm2〜5.0J/cm2、70〜80%である。この場合、上記の熱影響を一層効果的に抑制しつつ、効率的にレーザアブレーション加工を行うことが可能になる。
ここで、上記の通り、窒化層12内に不均一に分布している窒化物は、鋳造用金型10を構成するFe等の金属元素よりもレーザ吸収率が高い傾向にある。すなわち、窒化層12内では、レーザ吸収率が不均一になっているため、レーザアブレーション加工によって表面から放出除去される構成物質には、その成分によって優先度に差異が生じる。
照射工程では、上記の通り、レーザアブレーション加工の優先度が比較的大きい窒化層12の範囲内に改質領域を形成する。従って、この改質領域は、溶湯接触面からその構成物質が不均一に放出除去された放出痕として、例えば、数μm〜10μm程度の微細な凹凸形状14となる。
このような微細な凹凸形状14からなる改質領域を溶湯接触面に設けることで、該溶湯接触面を良好に低濡れ性化した表面改質金属部材を得ることができる。すなわち、この表面改質金属部材では、改質領域と溶湯との接触面積を効果的に低減させることができる。このため、改質領域と溶湯との間の断熱性を高めて、溶湯の熱が鋳造用金型10の方案部に奪われることを効果的に抑制できる。その結果、溶湯接触面の溶湯流動性を容易且つ良好に向上させることができ、ひいては、鋳造の高効率化や高精度化等を図ることが可能になる。
また、上記の通り、溶湯接触面にパルスレーザを照射して改質領域を設けても、溶湯接触面に変質層が生じることが抑制されている。これによって、鋳造用金型10の品質が低下することを回避できる。さらに、溶湯接触面に窒化層12を形成することで、鋳造用金型10の耐摩耗性、耐焼き付き性、耐疲労性等を向上させることが可能になる。
以上から、この表面改質方法では、パルスレーザの集光径を小さくすることなく、微細な凹凸形状14からなる改質領域を溶湯接触面に形成して、表面改質金属部材を得ることができる。換言すると、パルスレーザの集光径よりも小さい凹凸形状14を溶湯接触面に形成することができる。すなわち、十分に微細化された凹凸形状14を得るべく、エキスパンダ等を用いて集光レンズに対するパルスレーザの入射光径を拡大することや、単位面積あたりのパルスレーザの照射回数を増大させる必要がない。このため、例えば、窒化処理が施されていない表面にパルスレーザを照射する場合等に比べて、一層効果的に微細化された凹凸形状14を容易に得ることができる。その結果、改質領域が設けられ溶湯流動性を効果的に向上させた鋳造用金型10である表面改質金属部材を効率的且つ高品質に得ることができる。
また、上記の通りパルスレーザの集光径を小さくする必要がないため、焦点距離が小さくなることを回避でき、改質領域を形成可能な鋳造用金型10の形状の自由度を向上させることができる。
上記のようにして改質領域を設けた溶湯接触面の溶湯流動性をさらに調整したい場合、上記の照射工程の後に溝形成工程を行うことが好ましい。溝形成工程では、図3に示すように、改質領域が形成された鋳造用金型10の表面に対して、さらに上記のパルスレーザを照射することで、窒化層12の深さd1より大きい深さd2の溝16を形成する。
上記の通り、パルス幅、パルスフルーエンス、パルスラップ率をそれぞれ設定したパルスレーザを窒化層12の範囲内に照射すると、微細な凹凸形状14からなる改質領域を表面に形成することができる。さらに、この改質領域が形成された後もパルスレーザを照射すると、窒化層12の構成物質が全て放出除去されて、該窒化層12が形成されていない未窒化層18に該パルスレーザが照射される。この未窒化層18では、レーザアブレーション加工の優先度の差異が窒化層12よりも小さいため、パルスレーザを照射すると、パルスレーザの集光径に応じた大きさの微細な溝16が形成される。
従って、この表面改質方法では、パルスレーザの上記の条件や集光径を変更することなく、鋳造用金型10の表面に対して凹凸形状14からなる改質領域と、溝16との両方を容易に形成できる。すなわち、パルスレーザを集光する集光レンズ(不図示)の交換や、パルスレーザの入射光径及び出力の調整等の煩雑な工程を経ずに、鋳造用金型10の表面に種々の形状を容易に形成することができる。これによって、表面が所望の特性を示すように、一層高精度に改質処理を行って表面改質金属部材を得ることが可能になる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
上記の実施形態では、鋳造用金型10の方案部を構成する溶湯接触面に対して改質領域を設けることとしたが、例えば、製品部等の方案部以外を構成する溶湯接触面に改質領域を設けてもよい。
本実施例では、先ず、SKD61からなる試料片の表面に、窒化処理により表面硬度約700Hv以上、深さ約50〜100μmの窒化層を形成した。次に、この窒化層にパルスレーザを照射して改質領域を形成することで表面改質金属部材を得た。具体的には、レーザ発振器として、トルンプ社製のTruMicro5250(製品名)を用い、以下の条件でパルスレーザの照射を行った。パルス幅;10ps以下、パルスフルーエンス;1.56J/cm2・pulse、パルスラップ率;85.87%、波長;515nm(グリーン)、スキャナー;ガルバノミラー方式、集光レンズ;fθレンズ(焦点距離f;100mm)、集光径;18.7μm。
また、実施例に係る表面改質金属部材では、試料片の窒化処理表面に対して、パルスレーザの照射軸を格子状に走査させた。上記の格子状の行及び列のそれぞれについては、照射軸を2回ずつ走査させて構成した、1回目の走査時の照射域と、2回目の走査時の照射域とが重複する割合(軸ラップ率)を20%未満とした。このようにして得られた改質領域の電子顕微鏡写真を図4に示す。
なお、比較のため、SKD61からなる試料片の表面に対して、窒化処理を行わなかったことを除いて、上記の実施例と同様にパルスレーザを照射して比較例に係る表面改質金属部材を作製した。この比較例に係る表面改質金属部材のパルスレーザ照射面の電子顕微鏡写真を図5に示す。
図4から、実施例に係る表面改質金属部材の改質領域では、略5〜10μmの微細の凹凸形状が複数形成されていることがわかる。すなわち、金属部材の表面に、パルスレーザの集光径よりも小さい凹凸形状からなる改質領域が形成されている。
なお、レーザ照射条件を、パルスフルーエンス;2.54J/cm2・pulse、パルスラップ率;86.49%、波長;515nm(グリーン)、スキャナー;ガルバノミラー方式、集光レンズ;fθレンズ(焦点距離f;163mm)、集光径;23.5μmとしたときや、パルスフルーエンス;5.38J/cm2・pulse、パルスラップ率;80.38%、波長;515nm(グリーン)、スキャナー;ガルバノミラー方式、集光レンズ;fθレンズ(焦点距離f;56mm)、集光径;8.1μmとしたときにも、同様の結果が得られた。
これに対して、図5から、比較例の表面改質金属部材のパルスレーザ照射面では、パルスレーザの集光径に応じた大きさの溝が格子状に形成されていることがわかる。
以上から、本発明に係る表面改質方法では、窒化処理が施されていない表面にパルスレーザを照射する場合に比べて、一層効果的に微細化された凹凸形状を容易に得ることができる。従って、所望の特性を効果的に向上させた表面改質金属部材を効率的且つ高品質に得ることが可能である。
10…鋳造用金型 12…窒化層
14…凹凸形状 16…溝
18…未窒化層

Claims (8)

  1. 金属部材の表面に改質領域を形成して表面改質金属部材とする表面改質方法であって、
    前記表面に窒化処理を施して窒化層を形成する窒化処理工程と、
    前記窒化処理後の前記表面に、パルス幅が10psec以下のパルスレーザを、1パルスあたりのフルーエンスが0.2J/cm2〜10J/cm2となり、パルス同士のラップ率が95%以下となるように照射して、前記窒化層の深さの範囲内に前記改質領域を形成する照射工程と、
    を有することを特徴とする表面改質方法。
  2. 請求項1記載の表面改質方法において、
    前記窒化処理工程では、深さが0.1mm以下の前記窒化層を形成することを特徴とする表面改質方法。
  3. 請求項1又は2記載の表面改質方法において、
    前記照射工程の後、前記表面に対して、さらに前記パルスレーザを照射することで、前記窒化層に比して深さが大きい溝を前記表面に形成する溝形成工程を有することを特徴とする表面改質方法。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の表面改質方法において、
    前記表面が、鋳造用金型の方案部の溶湯接触面であることを特徴とする表面改質方法。
  5. 金属部材の表面に改質領域が設けられた表面改質金属部材であって、
    前記改質領域は、窒化層内の窒化物が優先的に放出除去されることで形成された凹凸形状からなることを特徴とする表面改質金属部材。
  6. 請求項5記載の表面改質金属部材において、
    前記窒化層の深さが0.1mm以下であることを特徴とする表面改質金属部材。
  7. 請求項5又は6記載の表面改質金属部材において、
    前記表面には、前記窒化層に比して深さが大きい溝がさらに設けられていることを特徴とする表面改質金属部材。
  8. 請求項5〜7の何れか1項に記載の表面改質金属部材において、
    前記表面が、鋳造用金型の方案部の溶湯接触面を構成することを特徴とする表面改質金属部材。
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JP2016144823A (ja) * 2015-02-09 2016-08-12 オムロン株式会社 接合構造体の製造方法および接合構造体
JP2018001495A (ja) * 2016-06-29 2018-01-11 学校法人 芝浦工業大学 撥水性表面形状の形成方法
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