JP2020035720A - 燃料電池用酸化触媒及びその製造方法並びに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
直接メタノール型燃料電池は、液体の燃料を使用するため理論的なエネルギー密度が大きく、小型化が容易になると考えられ、広く研究されている。
また、例えば、固体高分子電解質膜と、電極と、前記固体高分子電解質と電極間に設けられた触媒層を有する固体高分子型燃料電池の触媒層であって、樹枝状構造の触媒を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池の触媒層とこの触媒層を有する固体高分子型燃料電池が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
<1> X線回折法により求められる111面の面間隔が0.3129nm〜0.3160nmである酸化セリウム、及び、X線回折法により求められる110面の面間隔が0.3195nm〜0.3244nmである酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む担体と、
前記担体に担持された触媒金属と、
を有する、燃料電池用酸化触媒。
<2> 前記担体は、カーボン材料を更に含む、<1>に記載の燃料電池用酸化触媒。
<3> 前記酸化セリウムは、粒子状の前記酸化セリウムを含み、前記粒子状の酸化セリウムの結晶子径は1nm〜1μmである、上記<1>又は<2>に記載の燃料電池用酸化触媒。
<4> 前記酸化チタンは、粒子状の酸化チタンを含み、前記粒子状の酸化チタンの結晶子径が、1nm〜1μmである、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の燃料電池用酸化触媒。
<5> 直接メタノール型燃料電池の燃料としてアルコール又はエーテルを用いた燃料電池に用いられる、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の燃料電池用酸化触媒。
<6> 高分子電解質膜と、
電極と、
前記高分子電解質膜と前記電極との間に設けられた、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の燃料電池用酸化触媒を有する触媒層と、
を備える、燃料電池。
<7> 遷移金属酸化物を含む担体に、イオンビームを1.0×1010ions/cm2〜8.0×1012ions/cm2の照射量で照射する照射工程と、
上記照射工程で得られた前記遷移金属酸化物を含む担体に触媒金属を担持する工程と、
を有する、燃料電池用酸化触媒の製造方法。
<8> 前記担体は、カーボン材料を更に含む、<7>に記載の燃料電池用酸化触媒の製造方法。
<9> 前記遷移金属酸化物は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化マンガン、酸化スズ及び酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、上記<7>又は<8>に記載の燃料電池用酸化触媒の製造方法。
<10> 前記照射工程で得られた前記遷移金属酸化物は、面間隔の変化率の絶対値が、0.15%〜0.65%である、<7>〜<9>のいずれか1つに記載の燃料電池用酸化触媒の製造方法。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示に係る燃料電池用酸化触媒は、面間隔(即ち、結晶の格子間隔)が調整された遷移金属酸化物の微粒子を含む担体と、前記担体に担持された触媒金属と、を有する。本開示の一実施形態としては、X線回折法により求められる111面の面間隔が0.3129nm〜0.3160nmである酸化セリウム、及び、X線回折法により求められる110面の面間隔が0.3195nm〜0.3244nmである酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む担体と、上記担体に担持された触媒金属と、を有する。
なお、遷移金属酸化物としては、後述の燃料電池用酸化触媒の製造方法に用いられる遷移金属酸化物と同義であり、好ましい態様も同様である。
X線回折法により求められる111面の面間隔が0.3129nm〜0.3160nmである酸化セリウムを含む担体に担持された触媒金属、及び、X線回折法により求められる110面の面間隔が0.3195nm〜0.3244nmである酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1つの酸化物を含む担体に担持された触媒金属を有する燃料電池用酸化触媒では、燃料に対する酸化活性に優れ、また、面間隔が調整された遷移金属酸化物(具体的には、酸化セリウム及び/又は酸化チタン)を含む担体では、触媒金属の量を低減することができる。
このような効果が得られる作用は明らかではないが、以下のように推測される。
Anode reaction : CH3OH + H2O → CO2 + 6H++ 6e− (1.1)
Cathode reaction : O2 + 4H+ + 4e− → 2H2O (1.2)
Total reaction : CH3OH + 3/2 O2 → CO2 + 2H2O (1.3)
メタノールが完全酸化された場合、アノード層に供給されたメタノールと水が式(1.1)のように反応する。カソードでは供給された酸素と、アノード層で生成した電子とプロトンが式(1.2)のように反応する。この時、固体高分子電解質膜の性質により電子は膜を通らず外部回路を通ってカソードに移動し、この仕組みによって発電されるようになっている。また、全体の反応式は式(1.3)のようになっている。
このように酸化セリウム又は酸化チタンにイオンビームの照射がされると、照射前の酸化セリウム又は酸化チタンの面間隔に比べて、面間隔が拡張又は減少すると推察される。すなわち、特定の面間隔値を示す酸化セリウム又は酸化チタンでは、酸素原子空孔が形成されていると推察されるため、この酸化セリウムを含む担体又は酸化チタンを含む担体を有する燃料電池用酸化触媒では、酸化セリウム又は酸化チタンから触媒金属表面への酸素種供給(以下、「OH基供給能」とも称する場合がある。)が促進されるので、触媒金属の表面でのメタノール等の燃料の酸化反応が活性化されると共に、酸化セリウム又は酸化チタンの導電性が向上すると推察される。
このことから、本開示に係る燃料電池用酸化触媒では、触媒金属の使用量を低減しても燃料に対して高い酸化活性が得られやすい。
以下、燃料電池用酸化触媒を構成する各成分の詳細について説明する。
本開示に係る燃料電池用酸化触媒が有する担体は、X線回折法により求められる111面の面間隔が0.3129nm〜0.3160nmである酸化セリウム(以下、「特定酸化セリウム」ともいう。)及びX線回折法により求められる110面の面間隔が0.3195nm〜0.3244nmである酸化チタン(以下、「特定酸化チタン」ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1つの酸化物を含む。
特定酸化セリウム及び特定酸化チタンは、酸素原子空孔が比較的多く形成されているため、これらの特定の酸化物を含む担体を有する燃料電池用触媒では、OH基供給能が向上され、導電性が向上して、燃料に対する酸化活性を向上させることができ、また、後述する触媒金属量を低減させることが可能となる。
また、酸化チタンの場合、同様に110面のピーク位置のずれによって、酸素原子空孔の生成度合いを確認することができる。
特定酸化セリウムは、X線回折法により求められる111面の面間隔は0.3129nm〜0.3160nmであり、燃料に対する酸化活性に優れる観点から、X線回折法により求められる酸化セリウムの111面の面間隔としては、0.3130nm〜0.3150nmがより好ましく、0.3140nm〜0.3145nmであることが更に好ましい。
CuKαを用いた粉末X線回折装置(製品名;Rint2100、(株)リガク製)を用いて、V=32kV、I=20mAの条件で、燃料電池用触媒担体に照射し、このときの回折線をゴニオメーター(製品名;Rinto2000縦型ゴニオメーター、(株)リガク製)を用いて、スキャン速度1.0°/分で2θ=5°〜90°付近に現れる回折ピーク位置(即ち、面間隔値)を測定する。このピーク位置の回折角2θ[Degree]から特定酸化セリウムの111面の面間隔の値d[nm]を下記の式より求めることができる。
d[nm]=λ/(2・sinθ)
上記式中、λ(=0.154056nm)はX線波長を示す。
上記観点から、粒子状の酸化セリウムの結晶子径としては、1nm〜1μmであることが好ましく、より好ましくは5nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜100nmであり、特に好ましくは10nm〜20nmである。
本明細書において結晶子径とは、結晶を構成する最小結晶単位の大きさ(最大径)であり、一般に、X線回折(XRD)装置を用いて測定することができる。
先ず、CuKαを用いた粉末X線回折を用いて、サンプルを測定し、2θ=5°〜90°付近の範囲において、最大強度を示すピーク、又は、近接するピークと分離可能な大きな強度を示すピークの半値幅を測定し、下記のシェラー(Scherrer)の式を用いて結晶子径を求める。
D=K・λ/(β・cosθ)
D;結晶子径[nm]
K;Scherrer定数
λ;測定X線波長[nm]
θ;回折線のブラッグ角(回折角2θの半分)[rad(ラジアン)]
β;結晶格子の回折線の半値幅[rad(ラジアン)]
例えば、イオン種としてAr+又はH+を用いる場合には静電加速器を、Ar9+及びKr20+を用いる場合には、サイクロトン加速器を用いて、照射することが好ましい。
特定酸化チタンは、X線回折法により求められる110面の面間隔が0.3190nm〜0.3250nmであり、燃料に対する酸化活性に優れる観点から、X線回折法により求められる酸化チタンの110面の面間隔としては、0.3195nm〜0.3244nmであることが好ましい。
特定酸化チタンの110面の面間隔の求め方は、既述の酸化セリウムと同様の方法で求めることができる。
担体中にルチル型の特定酸化チタンが含まれていることは、粉末X線回折装置を用いる方法で確認することができる。
なお、特定酸化チタンの粒子径は、既述の特定酸化セリウムと同様の方法により求めることができる。
イオンビームの照射に用いる酸化チタンは、特に制限はなく、市販品でもあってもよく、チタンを熱処理(酸化処理)した化合物であってもよい。
また、酸化チタンに照射するイオンビームのイオン種、イオン種を加速する加速器は、既述の酸化セリウムに用いるイオンビームのイオン種、加速器と同様である。
担体は、カーボン材料を更に含むことが好ましい。担体がカーボン材料を含むことで、導電性を更に向上することができる。
カーボン材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(CNF)、フラーレン等が挙げられる。
なお、カーボン材料とは、例えば、炭素元素をカーボン材料に含まれる全元素に対して90個数%以上を含むものを指す。
カーボン材料がカーボンブラックである場合、カーボンブラックの平均一次粒子径としては、例えば1nm〜100nmが挙げられ、20nm〜80nmの範囲であることが好ましい。
原料となる高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリイミド(PI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ピッチ、フェノール樹脂等が挙げられる。高分子化合物の溶液に用いる溶媒は、原料となる高分子化合物を溶解させるものであれば特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、塩化亜鉛水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液等が挙げられ、溶解性および粘度、導電性などの静電紡糸特性の観点からN,N−ジメチルホルムアミドを用いることが好ましい。
燃料電池用酸化触媒が有する担体がカーボン材料を含有する場合、燃料に対する酸化活性を向上させる観点から、カーボン材料と酸化セリウムとの含有比(カーボン材料:酸化セリウム)としては、体積基準で、10:1〜1:1が好ましく、5:1〜1:1であることが好ましい。
本開示に係る燃料電池用触媒は、担体に担持された触媒金属を有する。
触媒金属としては、特に制限はなく、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、又は銅(Cu)が好適に挙げられ、触媒金属はこれら金属を含む複合体であってもよい。
上記複合体としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル及び銅からなる金属群より選ばれる少なくとも一つと、前記金属群の金属と異なる他の金属と、からなる複合体が挙げられる。他の金属としては、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)等が含まれ、好ましくは、亜鉛もしくはマンガン、又は亜鉛及びマンガンを含む。
複合体としては、電子的相互作用を期待できる点で、固溶体が好ましく、少なくとも、白金、ルテニウム及びニッケルの少なくとも一つを含む固溶体であることが好ましい。
このような範囲の粒子径を有する触媒金属は、例えば、マイクロ波ポリオール法により作製して用いてもよい。
また、触媒金属が白金を含む場合、触媒金属の担持量としては、高い酸化活性を維持する観点から0.1mg/cm2〜50mg/cm2であることが好ましく、0.5mg/cm2〜10mg/cm2であることがより好ましい。
燃料に対する酸化活性に優れる観点から、燃料電池用酸化触媒は、直接メタノール型燃料電池の燃料としてアルコールを用いる直接メタノール型燃料電池に用いられることがより好ましい。
本開示に係る燃料電池用酸化触媒の製造方法は、遷移金属酸化物を含む担体に、イオンビームを1.0×1010ions/cm2〜8.0×1012の照射量で照射する照射工程と、
前記照射工程で得られた前記遷移金属酸化物含む担体に触媒金属を担持する工程(以下、「担持工程」ともいう。)と、
を有する。
本開示の製造方法は、上記工程を有するので、本開示に係る製造方法により得られた燃料電池用酸化触媒では、燃料に対する酸化活性に優れる。
以下、本開示に係る燃料電池用酸化触媒の製造方法の各工程について説明するが、既述の燃料電池用酸化触媒に含まれる成分と同様の成分については詳細な説明を省略する。
照射工程は、遷移金属酸化物を含む担体にイオンビームを1.0×1010ions/cm2〜8.0×1012ions/cm2の照射量で照射する工程であり、好ましくは1.0×1011ions/cm2〜5.0×1012ons/cm2であり、より好ましくは1.0×1011ions/cm2〜4.0×1012ons/cm2の照射量で照射する工程を含む。
照射工程では、イオンビームの照射により面間隔が調整された遷移金属酸化物を含む担体が得られる。図1に示すように、例えば、面間隔が調整された酸化セリウム又は酸化チタンにおいて、これらの中に酸素原子空孔が比較的多く形成されていると考えられ、燃料電池用酸化触媒におけるOH基供給能を向上し、かつ、導電性も向上させることができる。
また、イオンビームを照射する条件及びイオンビームの照射に用いる加速器等の説明は、既述の説明と同様の内容であるので省略する。
面間隔の変化率の絶対値が上記範囲内に調整されていると、酸素原子空孔が多く形成されて、OH基供給能が向上し、燃料に対する酸化活性が優れる。
より好ましい。
面間隔の変化率(%)=((イオンビーム照射後の酸化物の面間隔−イオンビーム照射前の酸化物の面間隔)/イオンビーム照射前の酸化物の面間隔)×100(%)
なお、遷移金属酸化物は、1種であってもよく、2種以上を併用してもよい。
遷移金属酸化物が、粒子状の遷移金属酸化物を含む場合、白金等の触媒金属と遷移金属酸化物との間の強い相互作用が得られやすい観点から、粒子状の遷移金属酸化物の結晶子径は1nm〜1μmであることが好ましい。
なお、粒子状の遷移金属酸化物の結晶子径は、既述の結晶子径の測定方法と同様の方法で求められる。
担持工程は、前記照射工程で得られた前記遷移金属酸化物を含む担体に触媒金属を担持する工程である。
担体に触媒金属を担持する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。
触媒金属を担持する方法としては、例えば、マイクロ波ポリオール法による触媒金属を担持してもよい。
本開示に係る燃料電池用酸化触媒は、OH基供給能、すなわち、燃料に対する酸化活性に優れるので、カソードの触媒層、特に直接メタノール型燃料電池が備えるカソードの触媒層に用いることが好ましい。
本開示に係る燃料電池は、高分子電解質膜10と、電極20と、前記高分子電解質と前記電極との間に設けられた、上記燃料電池用酸化触媒を有する触媒層31と、を備える。
燃料電池は、触媒層として、既述の燃料電池用酸化触媒を有するので、燃料に対する酸化活性に優れ、また、導電性にも優れる。
以下、燃料電池の各構成について、図5を参照しながら説明するが、燃料電池用酸化触媒についての説明は省略する。
触媒層31は、高分子電解質膜10と前記電極20との間に設けられている。通常、例えば、直接メタノール型燃料電池では、燃料極(アノード)及び空気極(酸化剤極:カソード)が高分子電解質膜を両側から挟みこむ構造を有する。
触媒層31は、既述の燃料電池用酸化触媒及び導電性材料に加えて、通常の燃料電池に用いられる任意成分を含んでいてもよい。
燃料極(アノード)は、触媒層31に加えてガス拡散層32を有していてもよい。ガス拡散層としては、例えば、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどの導電性材料が挙げられる。
高分子電解質膜10としては、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜であることが好ましく、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸膜、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜などのフッ素系固体高分子電解質膜が挙げられる。
[CeO2/CNF担体の作製]
溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)(Wako Pure Chemicals Ind. Ltd.)9gと酸化セリウム(CeO2)ナノ粒子 (製品名;Nano Tek(登録商標)、シーアイ化成社製、平均一次粒子径14nm)0.3gと、を混合し、30分間超音波処理した。
次いで、ジメチルホルムアミド(DMF)と酸化セリウムとの混合溶液に、炭素源として高分子化合物であるポリアクリロニトリル(PAN)(Sigma-Aldrich, Co. Ltd社製)を1g加え80℃で一晩撹拌し、原料溶液を調製した。
集電板上のカーボンナノファイバー(CNF)を、大気雰囲気下、250℃、10時間の条件で安定化処理を行い、更に、窒素雰囲気下で900度、1時間の条件下で炭化処理を施し、酸化セリウムを埋め込んだカーボンナノファイバー(CECNF)のシートを得た。
AVF(azimuthal varying field)サイクロン加速器を用いて、下記の表1に記載の照射条件で、得られたCECNFにイオンビームを照射して担体1、担体2−1、担体2−2、担体3−1、担体3−2、担体4−1及び担体4−2を作製した。
[TiO2/CNF担体の作製]
製造例1において、酸化セリウム(CeO2)に代えて酸化チタン(TiO2)ナノ粒子(P25、日本アエロジル社製)を用いた以外は、同様の手順で原料溶液を調製した。 酸化チタンを含んだカーボンナノファイバーは、電気炉で窒素ガス中で850℃に加熱した後、70℃の水蒸気圧を含む窒素の気流下に1時間さらし、水蒸気賦活処理を行って作製した。下記の表1に記載の照射条件で、得られた酸化チタンを含んだカーボンナノファイバーにイオンビームを照射して、担体5−1及び担体5−2を作製した。
−マイクロ波ポリオール法による触媒金属の担持−
エチレングリコールに担体2−1を加え、超音波処理を30分間行い、混合液を調製した。次いで、PtとRuとの原子比(Pt:Ru)が1:1になるように、Pt及びRuの前駆体化合物を混合液に加えて、3時間攪拌した。その後、電子レンジ(600W)で5分間、加熱し1晩攪拌した。この溶液を濾過し、メタノール及び蒸留水を用いて洗浄を行った。得られた沈殿物を真空乾燥器で70℃、24時間乾燥させて、CNFにPtRuナノ粒子を担持(PtRu/CECNF)した燃料電池用触媒1を得た。
CuKαを用いた粉末X線回折装置(製品名;Rint2100、(株)リガク製)を用いて、V=32kV、I=20mAの条件で、燃料電池用触媒1に照射した。このときの回折線をゴニオメーター(製品名;Rinto2000縦型ゴニオメーター、(株)リガク製)を用いて、スキャン速度1.0°/分で2θ=5°〜90°付近に現れる回折ピークを調査した。その結果を表2並びに図2に示す。
触媒のメタノール酸化活性の評価試験として回転ディスク電極(RDE;Rotating Disk Electrode、AFMSRCE)による質量活性評価を行った。
作用極(Working Electrode:WE)には、下記の方法により作製したガラス状炭素電極(GCE;Glassy Carbon Electrode、内径;5.0mm、BAS Inc.社製)を用いた。対極(Counter Electrode:CE)には白金メッシュ、参照極(Reference Electrode:RE)にはAg・AgCl電極(BAS Inc社製.)を用いた。
触媒担持量が1.0mg/cm2なるように、燃料電池用触媒1と、水と、エタノールと、5質量%のフッ素樹脂共重合体溶液(Nafion(登録商標)、Sigma-Aldrich, Co. Ltd社製)と、ガラス状炭素電極の表面に塗布後、乾燥し、作用極を作製した。
0.5モル/LのH2SO4と0.5モル/Lのメタノールとの混合溶液を直接メタノール型燃料電池の燃料溶液として使用した。
燃料溶液はN2を100ml/分、30分間パージしたのち、50ml/分でN2を流入、作用極を1600rpm(revolutions per minute)で回転させながら、スキャン速度は0.02V/s、走査範囲は、0V〜1.2 V vs 標準水素電極(RHE; reversible hydrogen electrode)の電極電位の範囲で測定を行い、酸化ピークが低下し始めるまで測定を続けた。
なお、酸化活性は、質量活性(作用極上のPtRu1mg当たりの電流値;mA/mg− PtRu)に統一して評価した。
測定したサイクリックボルタモグラムから燃料電池用触媒1のメタノール溶液に対する質量活性の結果を表3並びに図3及び図4に示した。
質量活性が高いほど、燃料に対する酸化活性に優れる。
上記式中、λはX線波長を示す。酸化セリウムの111面の面間隔値d[nm]は、λの値として0.154056[nm]を用いて求めた。
D[nm]=K・λ/(β・cosθ)
上記式中、βは該当成分のXRDのピークの半値幅[rad(ラジアン)]を示す。
D;結晶子径
K;Scherrer定数 0.9
λ;X線波長、0.154056nm
θ;回折線のブラッグ角(回折角2θの半分)[rad(ラジアン)]
β;結晶格子の回折X線の半値幅[rad(ラジアン)]
実施例1における担体2−1を表2に記載の担体に変更した以外は、実施例1と同様にして、マイクロ波ポリオール法を使用して燃料電池用触媒2〜9をそれぞれ作製した。得られた燃料電池用触媒2〜9を用いて、各評価を行った。その結果を表2〜表4及び図2〜図4に示す。
一方、酸化セリウムの111面の面間隔d値が0.3129nm〜0.3160nmの範囲外である比較例1及び比較例2では、実施例と比較して、質量活性の値が小さく、燃料に対する質量活性すなわち燃料に対する酸化活性に劣っていることが分かる。
20 電極
31 触媒層
32 ガス拡散層
Claims (10)
- X線回折法により求められる111面の面間隔が0.3129nm〜0.3160nmである酸化セリウム、及び、X線回折法により求められる110面の面間隔が0.3195nm〜0.3244nmである酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む担体と、
前記担体に担持された触媒金属と、
を有する、燃料電池用酸化触媒。 - 前記担体は、カーボン材料を更に含む、請求項1に記載の燃料電池用酸化触媒。
- 前記酸化セリウムは、粒子状の前記酸化セリウムを含み、前記粒子状の酸化セリウムの結晶子径は1nm〜1μmである、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用酸化触媒。
- 前記酸化チタンは、粒子状の酸化チタンを含み、前記粒子状の酸化チタンの結晶子径が、1nm〜1μmである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池用酸化触媒。
- 直接メタノール型燃料電池の燃料としてアルコール又はエーテルを用いた燃料電池に用いられる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池用酸化触媒。
- 高分子電解質膜と、
電極と、
前記高分子電解質膜と前記電極との間に設けられた、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池用酸化触媒を有する触媒層と、
を備える、燃料電池。 - 遷移金属酸化物を含む担体に、イオンビームを1.0×1010ions/cm2〜8.0×1012ions/cm2の照射量で照射する照射工程と、
前記照射工程で得られた前記遷移金属酸化物を含む担体に触媒金属を担持する工程と、
を有する、燃料電池用酸化触媒の製造方法。 - 前記担体は、カーボン材料を更に含む、請求項7に記載の燃料電池用酸化触媒の製造方法。
- 前記遷移金属酸化物は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化マンガン、酸化スズ及び酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項7又は請求項8に記載の燃料電池用酸化触媒の製造方法。
- 前記照射工程で得られた前記遷移金属酸化物は、面間隔の変化率の絶対値が、0.15%〜0.65%である、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の燃料電池用酸化触媒の製造方法。
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