JP5626968B2 - 燃料電池用電極触媒およびその製造方法、ならびに固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 - Google Patents
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Description
(i)触媒粒子がカーボン担体の表面で凝集しやすい。触媒粒子が凝集すると、触媒粒子の反応面積が減少し、電極触媒の活性が低下する。
(ii)カーボン担体が酸化劣化しやすい。カーボン担体が酸化劣化すると、触媒粒子がカーボン担体から遊離または凝集して電極触媒の活性が低下する。
(1)触媒粒子が担持された金属酸化物粒子(シリカ粒子等。)を、カーボン担体に担持した燃料電池用電極触媒(特許文献1)。
(2)カーボンブラックまたは活性炭を加熱処理することで黒鉛化度を高めた燃料電池用電極触媒(特許文献2)。
また、(2)の燃料電池用電極触媒は、1000℃以上の高温下でカーボン粉末を熱処理することにより黒鉛化度を向上させて耐食性を高めている。しかし、熱処理によりカーボン粉末の比表面積が低下するため、担持させる白金の分散性が低下して活性が低下する。
前記触媒粒子は、白金を含むことが好ましい。
前記金属酸化物粒子の質量Maと前記カーボン担体の質量Mbとの質量比Ma/Mbは0.1〜10であることが好ましい。
前記金属酸化物粒子の比表面積は5m2/g以上であることが好ましい。
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、高い発電効率および出力を安定して維持できる信頼性に優れた燃料電池が得られる、高活性で優れた安定性を有する燃料電池用電極触媒を製造できる。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体によれば、高い発電効率および出力を安定して維持できる信頼性に優れた燃料電池が得られる。
本発明の燃料電池用電極触媒(以下、「本電極触媒」という。)は、金属酸化物粒子とカーボン担体との混合物を窒化処理して得られる触媒担体に、貴金属を含む触媒粒子が担持された電極触媒である。
金属酸化物粒子の比表面積は、窒素吸着法により測定される。
カーボン担体は、アモルファス性の高いカーボン担体であってもよく、黒鉛化度の高いカーボン担体であってもよい。
カーボン担体の具体例としては、たとえば、活性炭、カーボンブラックが挙げられる。
カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置を用いた、カーボン担体の表面への窒素吸着により測定される。
触媒粒子は、貴金属を含む粒子である。
触媒粒子としては、貴金属の粒子、または貴金属合金の粒子が好ましい。
貴金属としては、白金が好ましい。
貴金属合金としては、白金合金が好ましい。白金合金としては、たとえば、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、コバルト、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、バナジウム、チタン、銅、銀および金からなる群から選ばれる1種以上の元素と、白金との白金合金が挙げられる。なかでも、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、鉄、クロム、金および銀からなる群から選ばれる1種以上の元素と白金との白金合金が好ましい。
触媒粒子の平均粒子径は、X線回折(XRD)法により測定される。
触媒粒子の金属比表面積は、一酸化炭素(CO)吸着法により測定される。
触媒粒子の担持率は、本電極触媒を酸で溶解し、溶出イオンの濃度を測定することにより求められる。
本電極触媒の製造方法は、前記金属酸化物粒子とカーボン担体の混合物を窒化処理して触媒担体を得る工程と、該触媒担体に前記触媒粒子を担持する工程とを含む方法である。
前記混合物の窒化処理は、種々の処理が適用できるが、比較的低温で窒化が行え、触媒担体への適用に好適である点から、該混合物にアンモニアガスを接触させる処理であることが好ましい。
アンモニアガスを接触させて処理する場合、処理温度は500〜1000℃が好ましい。
溶媒に溶解した触媒粒子前駆体と触媒担体とを混合して攪拌し、そこから沈殿物を回収した後、沈殿物を乾燥して本電極触媒の前駆体を得る。その後、得られた本電極触媒の前駆体における触媒粒子前駆体を還元して本電極触媒を得る。
触媒粒子前駆体の具体例としては、たとえば、ジニトロジアミン白金硝酸、ジニトロジアミン白金、塩化白金酸、塩化白金酸塩が挙げられる。
触媒粒子前駆体を溶解する溶媒としては、たとえば、水、アルコールが挙げられる。
触媒粒子前駆体を還元する方法としては、たとえば、ギ酸、エタノール、メタノール、アミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、水素等を用いた還元が挙げられる。
具体的には、たとえば、ヒドラジン等の水溶液を用いる場合、濃度が0.001〜40質量%の水溶液とし、本電極触媒の前駆体を水等に分散させた溶液中に添加する方法が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム等の固体を用いる場合は本電極触媒の前駆体を水等に分散させた溶液中にそのまま添加でき、水素等の常温で気体のものはバブリングにより供給できる。
図1に、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、「本膜電極接合体」という。)の実施形態の一例を示す。
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体10(以下、「膜電極接合体10」という。)は、図1に示すように、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に触媒層11に接した状態で配置される電解質膜15とを具備している。
触媒層11は、電極触媒およびイオン交換樹脂を含む層である。
触媒層11の電極触媒は、アノード13とカソード14の少なくとも一方の触媒層11の電極触媒が前述の本電極触媒である。なかでも、カソード14の触媒層11の電極触媒が本電極触媒であることが好ましく、アノード13とカソード14の両方の触媒層11の電極触媒が本電極触媒であることがより好ましい。
イオン性基を有する含フッ素重合体としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)が好ましく、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という。)に基づく繰り返し単位と、スルホン酸基を有する繰り返し単位とを有する共重合体(以下、「共重合体H」という。)がより好ましい。
スルホン酸基を有する繰り返し単位としては、下式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
CF2=CF(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO2F (2)
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
CF2=CFO(CF2)qSO2F (2−1)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)rSO2F (2−2)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)sSO2F (2−3)
ただし、q、r、sは1〜8の整数であり、tは1〜3の整数である。
ガス拡散層12としては、たとえば、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルトが挙げられる。
ガス拡散層12は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)等により撥水処理が行われていることが好ましい。
電解質膜15としては、イオン交換樹脂の膜が挙げられる。イオン交換樹脂としては、触媒層11で挙げたものと同じものが挙げられる。
電解質膜15は、補強材を含んでいてもよい。補強材としては、たとえば、多孔体、繊維、織布、不織布が挙げられる。補強材の材料としては、たとえば、PTFE、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
以上説明した本膜電極接合体によれば、本電極触媒を用いていることで、発電効率および出力が高く信頼性に優れた固体高分子形燃料電池が得られる。また、本膜電極接合体は、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも適用できる。
カーボン層は、カーボンと非イオン性含フッ素重合体とを含む層である。
カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1〜1000μmのカーボンナノファイバーが好ましい。
非イオン性含フッ素重合体としては、たとえば、PTFEが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより発電が行われる。
以下に示す例1〜3は実施例であり、例4は比較例である。
本実施例における各種測定方法、評価方法を以下に示す。
(触媒粒子の平均粒子径)
触媒粒子の平均粒子径は、XRD法により測定した。具体的には、XRD装置(リガク(株)製、RINT−2100)を用いた。X線の回折線幅の解析にはXRDデータ解析ソフトのJADEを用い、得られる主ピークと隣接するピークとが形成する基底ラインをベースラインとして半価幅を求めた。回折角2θは、白金に対しては34〜46°の範囲で走査した。
触媒粒子の比表面積として、CO吸着法にて金属比表面積を測定した。具体的には、パルス吸着装置(日本ベル(株)製、BEL−CAT)を用い、30mgの触媒粒子に対してヘリウム、酸素、ヘリウム、水素、ヘリウムの順に流通ガスで前処理を施した後、ヘリウムをキャリアガスとしてCOをパルス状に供給し、排出ガス中のCO量が一定になるまでのパルス数から吸着水素量を算出し、触媒粒子の金属比表面積を測定した。
得られた電極触媒における触媒粒子の担持率は、該電極触媒に酸を作用させて溶解して得た金属塩の溶液をICP発光分析法で定量することにより測定した。
得られた電極触媒の活性は、以下のようにして求めた。該電極触媒をフッ素系溶剤(旭硝子(株)製、AE−3000)とHPLC用THF(テトラヒドロフラン)の混合溶液(混合比50:50)中に分散させた分散液を、回転電極のGC(グラッシーカーボン)ディスク上に担持し、酸素ガスを吹き込んだ0.5M硫酸水溶液中で、回転数1000rpm、電位0.8V(vs. RHE)の条件下にて電流値を測定し、単位貴金属量当たりの電流値を電極触媒の活性(酸素還元活性)とした。該電流値が高ければ電極触媒の活性が高く、燃料電池の発電効率および出力(出力電流×出力電位)が高いといえる。
窒素ガスを吹き込んだ60℃の0.5M硫酸水溶液中で、前記電極触媒を担持した回転電極の電位を0.05〜1.2V(vs. RHE)の間で300回繰り返して掃引した。その後、酸素ガスを吹き込んだ0.5M硫酸水溶液中で、回転数1000rpm、電位0.8V(vs. RHE)の条件下にて電流値を測定し、単位貴金属量当たりの電流値を電極触媒の酸素還元活性とした。該電流値が高ければ、電極触媒の安定性が優れており、燃料電池の信頼性が優れているといえる。
酸化チタン(触媒学会参照触媒:JRC−TIO−1、石原産業(株)製、比表面積73m2/g)とカーボンブラック(三菱化学(株)製、ケッチェンブラックEC−600JC、BET比表面積1367m2/g)とを質量比Ma/Mb=1で混合し、その後、700℃で3時間アンモニア気流中に置いて窒化処理して触媒担体Aを得た。次いで、100mLのエタノールに触媒担体Aを0.8g投入し、超音波照射下で30分間攪拌した。その後、白金量として0.2gに相当する量のジニトロジアミン白金硝酸水溶液(石福金属工業(株)製)を加え、超音波を30分間照射した後、60℃に設定したホットスターラーでゆっくりと乾燥して電極触媒の前駆体Aを得た。次いで、得られた前駆体Aを電気炉に入れ、アルゴン雰囲気にて120分間かけて加熱して200℃まで昇温した。そして、水素ガスを供給して2時間水素雰囲気で保持した後、加熱を停止し、70℃まで温度が下がってから窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、充分に時間が経過した後に電気炉から取り出して電極触媒Aを得た。
得られた電極触媒Aは、白金粒子(触媒粒子)の平均粒子径が2nmであり、白金粒子の比表面積が80m2/gであり、白金粒子の担持率が20質量%であった。
酸化チタン(触媒学会参照触媒:JRC−TIO−1、石原産業(株)製、比表面積73m2/g)とカーボンブラック(三菱化学(株)製、ケッチェンブラックEC、BET比表面積800m2/g)の質量比Ma/Mb=1の混合物を用いて例1と同様に窒化処理して触媒担体Bを得た。次いで、50mLのエタノールに触媒担体Bを0.5g投入し、超音波照射下で30分間攪拌した。その後、白金量として0.5gに相当する量の例1と同じジニトロジアミン白金硝酸水溶液を加え、超音波を30分間照射した後、60℃に設定したホットスターラーでゆっくりと乾燥して電極触媒の前駆体Bを得た。次いで、例1と同様の条件で前駆体Bを還元して電極触媒Bを得た。
得られた電極触媒Bは、白金粒子(触媒粒子)の平均粒子径が2.5nmであり、白金粒子の比表面積が82m2/gであり、白金粒子の担持率が47質量%であった。
触媒原料として、白金量として0.13gに相当する量のジニトロジアンミン白金硝酸水溶液と、パラジウム量として0.07gジニトロジアンミンパラジウム硝酸水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして前駆体Cを得た。得られた前駆体Cをアルゴン雰囲気中、400℃で1時間熱処理して電極触媒Cを得た。
得られた電極触媒Cは、平均粒子径が3nmであり、比表面積は72m2/gであり、貴金属の担持率は20質量%であった。
カーボンブラック(三菱化学(株)製、ケッチェンブラックEC、BET比表面積800m2/g)の0.4gを50mLのエタノールに分散し、白金量として0.37gに相当する量の例1と同じジニトロジアミン白金硝酸水溶液を加え、超音波照射下で30分間攪拌した。その後、60℃に設定したホットスターラーでゆっくりと乾燥して電極触媒の前駆体Dを得た。次いで、得られた前駆体Dを電気炉に入れ、水素を10%含む窒素気流中で徐々に温度を上げ、200℃で2時間保持した。その後、加熱を停止し、70℃まで温度が下がってから窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、充分に時間が経過した後に電気炉から取り出して電極触媒Dを得た。
得られた電極触媒Dは、白金粒子(触媒粒子)の平均粒子径が3nmであり、白金粒子の比表面積が86m2/gであり、白金粒子の担持率が48質量%であった。
例1〜3で得られた電極触媒A〜Dの活性および安定性を評価した結果を表1に示す。
一方、金属酸化物粒子を含まず窒化処理も行っていない例4の電極触媒Dは、活性および安定性のいずれの測定においても例1〜3に比べて電流値が劣っており、活性および安定性が劣っていた。
Claims (6)
- チタン元素を含む金属酸化物粒子と比表面積800〜2500m2/gのカーボン担体との混合物に、アンモニアガスを接触させる窒化処理を行って得られる触媒担体に、貴金属を含む触媒粒子が担持された燃料電池用電極触媒。
- 前記触媒粒子が白金を含む請求項1に記載の燃料電池用電極触媒。
- 前記金属酸化物粒子の質量(Ma)と前記カーボン担体の質量(Mb)との質量比(Ma/Mb)が0.1〜10である請求項1または2に記載の燃料電池用電極触媒。
- 前記金属酸化物粒子の比表面積が5m2/g以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用電極触媒。
- チタン元素を含む金属酸化物粒子と比表面積800〜2500m2/gのカーボン担体との混合物に、アンモニアガスを接触させる窒化処理を行って触媒担体を得る工程と、該触媒担体に貴金属を含む触媒粒子を担持する工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法。
- 触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層を有するカソードと、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層を有するアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される電解質膜とを具備し、
前記カソードと前記アノードの少なくとも一方の触媒層が請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用電極触媒を含む固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
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