JP2020033715A - 滑り免震支承構造 - Google Patents

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【課題】施工手間が低減され、可及的にシンプルな構成の滑り免震支承構造を提供すること。【解決手段】建物の下部構造体20及び上部構造体30と、それらの間に介在する滑り免震装置10と、により構成される滑り免震支承構造100であって、滑り免震装置10は、曲率を有する摺動面を備えている上沓1及び下沓2と、上沓1と下沓2の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダー3と、を有し、下部構造体20に対して下沓2がボルト固定されずに載置されているのみであり、上沓1に対して上部構造体30がボルト固定されずに載置されているのみである。【選択図】図1

Description

本発明は、滑り免震支承構造に関する。
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅、物流倉庫といった様々な構造物に対して、免震支承構造が適用されている。この免震支承構造は、下部構造体の一部である基礎と、柱−梁フレーム架構や、壁、床、天井といった上部構造体との間に免震装置を介在させることにより形成される。免震支承構造を形成する免震装置により基礎の振動が上部構造物へ伝達されることを低減し、上部構造物の振動を低減することによりその構造安定性を保証するものである。尚、この免震装置は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造物への影響低減にも効果を発揮する。
免震装置には、鉛プラグ入り積層ゴム支承装置や高減衰積層ゴム支承装置、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた装置、滑り免震装置など、様々な形態の装置が存在している。その中で滑り免震装置を取り上げてその構成の一例を説明すると、曲率を有する摺動面を備えた上沓及び下沓(沓はコンケイブと称される)と、上沓と下沓の間に配設されてそれぞれの沓の摺動面と接し、曲率のある上面及び下面を備えたスライダーと、を有する。この種の滑り免震装置は、球面滑り免震装置や球面滑り支承などと称されることもある。上沓は、上部構造体を形成する柱下の上部ベースプレートとボルト固定され、下沓は、下部構造体を形成する基礎上の下部ベースプレートとボルト固定されることにより、滑り免震装置が上部構造体と下部構造体に固定され、滑り免震支承構造を形成する。
例えば、特許文献1には、上皿と下皿の間に球体が介在する転がり免震装置(上記する滑り免震装置に相当)が開示されている。基礎にナットを埋め込んでおき、このナットと下皿の通孔を同心状態にして下皿の上方からボルトを通し、ボルトの先端をナットと螺合させて締付けることにより、下皿と基礎の一体化が図られる。一方、上皿の上面に上部構造体を形成する架台の底板部を載置し、上皿と底板部の双方の通孔に上皿の上方からボルトを挿通し、ナット締めすることにより、上皿と架台の一体化が図られる。このようにして、下部構造体を形成する基礎と、上部構造体を形成する架台との双方に対して、転がり免震装置がボルト固定される。
特開2003−247353号公報
特許文献1に記載の転がり免震装置をはじめとして、従来の滑り免震装置においては、当該滑り免震装置が介在する下部構造体と上部構造体の双方に対するボルト固定が必須となっている。そのため、下部構造体と上部構造体への滑り免震装置の取り付けに手間がかかり、さらには、下部構造体及び上部構造体と、滑り免震装置とにより形成される滑り免震支承構造が、上下の複数のボルトにより煩雑になっている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、施工手間が低減され、可及的にシンプルな構成の滑り免震支承構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による滑り免震支承構造の一態様は、
建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
前記滑り免震装置は、曲率を有する摺動面を備えている上沓及び下沓と、該上沓と該下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダーと、を有し、
前記下部構造体に対して、前記下沓がボルト固定されずに載置されているのみであり、
前記上沓に対して、前記上部構造体がボルト固定されずに載置されているのみであることを特徴とする。
本態様によれば、下部構造体に対して下沓がボルト固定されずに載置されているのみであり、かつ、上沓に対して上部構造体がボルト固定されずに載置されているのみであることにより、下部構造体及び上部構造体に対する滑り免震装置の取り付けの際の施工手間を低減することができ、さらには、固定用のボルトを削減することによって構造上の煩雑さが解消され、可及的にシンプルな構成の滑り免震支承構造が形成される。滑り免震支承構造を形成する滑り免震装置は、上部構造体を直接支持する上沓から鋼製のスライダーに対して上部構造体に作用するせん断力を伝達することにより、スライダーが振り子のように摺動する過程でせん断力を低減する作用を有している。従って、上沓と上部構造体がボルト固定されず、上沓に対して上部構造体が単に載置されているのみであり、かつ、下沓と下部構造体もボルト固定されず、下部構造体に対して下沓が単に載置されているのみの構成が採用できる前提として、上部構造体に作用するせん断力よりも、上部構造体と上沓の間の摩擦力(静止摩擦力)及び下部構造体と下沓の間の摩擦力が大きいことを要する。すなわち、この条件を満足することにより、上沓と上部構造体の相対移動、及び下沓と下部構造体の相対移動を生じさせることなく、上部構造体に作用するせん断力を滑り免震装置に伝達することができる。このような新規な着想の下で、従来の滑り免震支承構造において必須と考えられていた、上部構造体と上沓のボルト固定、及び下部構造体と下沓のボルト固定を解消し、下部構造体に対して下沓を載置するのみとし、かつ上沓に対して上部構造体を載置するのみとする本態様の構成が適用されている。
本態様による滑り免震支承構造を形成する滑り免震装置は、60MPa程度の高面圧下における適用を可能とするが、本発明者等は、10MPa乃至60MPaの面圧下において、滑り免震支承構造を加振する実験を行い、その際に上沓と上部構造体の相対移動、及び下沓と下部構造体の相対移動がないことを実証している。具体的には、下沓に対する上沓の水平変位が±600mm程度(水平変位量として想定される最大値)の際のせん断力を割出し、このせん断力よりも上沓と上部構造体の間の摩擦力、及び下部構造体と下沓の間の摩擦力が大きいことを実証している。
また、本発明による滑り免震支承構造の他の態様は、前記下部構造体を構成する鉄筋コンクリート製の立ち上り部に鋼製の下部ベースプレートが固定され、該下部ベースプレートに前記下沓がボルト固定されずに載置されており、
鋼製の上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに接続される鉄骨柱と、該鉄骨柱に接続される鉄骨床梁と、を少なくとも備える前記上部構造体における該上部ベースプレートが前記上沓にボルト固定されずに載置されており、
前記上沓にボルト孔が開設され、前記上部ベースプレートに該ボルト孔よりも大径のルーズ孔が開設され、該ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが前記上沓の前記ボルト孔と前記ルーズ孔に挿通され、該フェイルセーフ用ボルトの上部には、前記上沓と前記上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられており、
前記フェイルセーフ用ボルトは、前記ルーズ孔によって前記上部構造体から作用するせん断力を負担せず、前記上部構造体から作用する引張力を負担することを特徴とする。
本態様によれば、下沓と下部構造体、上沓と上部構造体がいずれもボルト固定されていない態様において、上部ベースプレートに開設されているルーズ孔と上沓に開設されているボルト孔に対してフェイルセーフ用ボルトが挿通され、上沓と上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられていることにより、想定しない引張力が上部ベースプレートに作用した場合でもこの引張力に抵抗することができる。フェイルセーフ用ボルトは、文字通り、安全を見込んだボルトであり、従来の滑り免震支承構造に適用されているように、上部構造体からのせん断力を上沓に伝達する(せん断力を負担する)ためのボルトではない。例えば巨大地震により上部構造体の架構を構成するブレース等から上部ベースプレートに対して引張力が作用した場合、本態様の滑り免震支承構造では上沓と上部構造体がボルト固定されていないことから、この想定外の引張力に対抗することができず、上沓に対して上部ベースプレートが脱落する恐れがある。そこで、本態様では、上部ベースプレートにルーズ孔を開設しておき、このルーズ孔内でフェイルセーフ用ボルトをスライド自在に挿通しておく。ここで、「ルーズ孔」とは、フェイルセーフ用ボルトよりも大径の孔を意味しており、フェイルセーフ用ボルトが移動自在に挿通される孔を意味する。フェイルセーフ用ボルトがルーズ孔内に挿通されていることにより、上部構造体から作用するせん断力をフェイルセーフ用ボルトが負担しない構成を形成できる。また、フェイルセーフ用ボルトの上部において、上沓と上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられていることによっても、上部構造体から作用するせん断力をフェイルセーフ用ボルトが負担しない構成を形成できる。一方、想定外の引張力が上部ベースプレートに作用した場合は、フェイルセーフ用ボルトの上部において、上沓と上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられていることにより、上部ベースプレートが一定量持ち上がった際に上部ベースプレートがナットに係止される。このことにより、上部ベースプレートの過度な持ち上がりに対して上沓が抵抗することができ、例えば上沓からの上部ベースプレートの脱落等を防止することができる。
また、本発明による滑り免震支承構造の他の態様は、
建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
前記滑り免震装置は、曲率を有する摺動面を備えている上沓及び下沓と、該上沓と該下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダーと、を有し、
前記下部構造体に対して、前記下沓がボルト固定されており、
前記上沓に対して、前記上部構造体がボルト固定されずに載置されているのみであることを特徴とする。
本態様によれば、下沓と下部構造体がボルト固定されていることにより、下部構造体に対して滑り免震装置を据え付ける際の位置決めとずれ防止を図ることができる。尚、ここで言う「ボルト固定」は、せん断力を伝達する態様でボルトにて固定することを意味している。
また、本発明による滑り免震支承構造の他の態様は、前記下部構造体を構成する鉄筋コンクリート製の立ち上り部に鋼製の下部ベースプレートが固定され、該下部ベースプレートに前記下沓がボルト固定されており、
鋼製の上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに接続される鉄骨柱と、該鉄骨柱に接続される鉄骨床梁と、を少なくとも備える前記上部構造体における該上部ベースプレートが前記上沓にボルト固定されずに載置されており、
前記上沓にボルト孔が開設され、前記上部ベースプレートに該ボルト孔よりも大径のルーズ孔が開設され、該ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが前記上沓の前記ボルト孔と前記ルーズ孔に挿通され、該フェイルセーフ用ボルトの上部には、前記上沓と前記上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられており、
前記フェイルセーフ用ボルトは、前記ルーズ孔によって前記上部構造体から作用するせん断力を負担せず、前記上部構造体から作用する引張力を負担することを特徴とする。
本態様によれば、下沓と下部構造体がボルト固定され、上沓と上部構造体がボルト固定されていない態様において、上部ベースプレートに開設されているルーズ孔と上沓に開設されているボルト孔に対してフェイルセーフ用ボルトが挿通され、上沓と上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられていることにより、想定しない引張力が上部ベースプレートに作用した場合でもこの引張力に抵抗することができる。
また、本発明による滑り免震支承構造の他の態様は、
建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
前記滑り免震装置は、曲率を有する摺動面を備えている上沓及び下沓と、該上沓と該下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダーと、を有し、
前記上沓に対して、前記上部構造体がボルト固定されており、
前記下部構造体に対して、前記下沓がボルト固定されずに載置されているのみであることを特徴とする。
本態様によれば、上沓と上部構造体がボルト固定されていることにより、上沓に対して上部構造体を据え付ける際の位置決めとずれ防止を図ることができる。尚、ここで言う「ボルト固定」は、せん断力を伝達する態様でボルトにて固定することを意味している。
また、本発明による滑り免震支承構造の他の態様は、
建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
鋼製の上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに接続される鉄骨柱と、該鉄骨柱に接続される鉄骨床梁と、を少なくとも備える前記上部構造体における該上部ベースプレートが前記上沓にボルト固定されずに載置されており、
前記下沓にボルト孔が開設され、前記下部ベースプレートに該ボルト孔よりも大径のルーズ孔が開設され、該ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが前記下沓の前記ボルト孔と前記ルーズ孔に挿通され、該フェイルセーフ用ボルトの上部には、前記下沓と前記下部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明による滑り免震支承構造の他の態様は、前記上部ベースプレートと前記上沓の上面との間の肌すき、及び、前記下部ベースプレートと前記下沓の下面との間の肌すきが、いずれも3mmまで許容されていることを特徴とする。
本態様によれば、ボルト固定されない上沓と上部構造体や、下沓と下部構造体の間に肌すきが3mmある場合においても、上部構造体からせん断力が作用した際に、上沓と上部構造体の相対変位や、下沓と下部構造体の相対変位が生じないことが実証されている。
以上の説明から理解できるように、本発明の滑り免震支承構造によれば、施工手間が低減され、可及的にシンプルな構成の滑り免震支承構造を提供することができる。
第1実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。 滑り免震装置の一例の分解斜視図である。 第2実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。 第3実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。 第4実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。 振動実験の実験機概要を説明する図である。 滑り免震装置(の上沓及び下沓)と鋼製の上部ベースプレート及び下部ベースプレート(治具プレート)との間の摩擦係数に関する実験結果を示す図である。 面圧60MPa下において、速度10mm/秒で±200mmの振動載荷時(ケース1)における、水平変位と(水平荷重)/(鉛直荷重)の関係を示す図である。 面圧10MPa下において、速度10mm/秒で±200mmの振動載荷時(ケース2)における、水平変位と(水平荷重)/(鉛直荷重)の関係を示す図である。 面圧60MPa下において、速度400mm/秒で±200mmの振動載荷時(ケース3)における、水平変位と(水平荷重)/(鉛直荷重)の関係を示す図である。
以下、各実施形態に係る滑り免震支承構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[第1実施形態に係る滑り免震支承構造]
はじめに、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る滑り免震支承構造の一例を説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図であり、図2は、滑り免震装置の一例の分解斜視図である。
図1に示すように、滑り免震支承構造100は、建物の下部構造体20と上部構造体30と、それらの間に介在する滑り免震装置10と、により構成されている。滑り免震装置10は、上沓1及び下沓2と、上沓1と下沓2の間に配設されている鋼製のスライダー3と、を有する。尚、滑り免震支承構造100が適用される建物には、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅、物流倉庫といった様々な建物が含まれる。
図2に示すように、上沓1と下沓2はいずれも、平面視正方形の板材であり、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成されている。上沓1と下沓2はいずれも、スライダー3側の側面に曲率を有する摺動面1a、2aを有しており、この摺動面1a、2aには、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。また、上沓1と下沓2には、滑り板の外周において、スライダー3の脱落を防止するためのストッパーリング(図示せず)が固定されている。
一方、スライダー3は、曲率を有する上面3aと下面3bを備え、略円柱状を呈している。また、スライダー3は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成され、面圧60N/mm(60MPa)程度の耐荷強度を有している。
スライダー3の上面3aと下面3bには、二重織物からなる滑り材(図示せず)が装着されている。二重織物からなる滑り材は、PTFE繊維(polytetrafluoroethylene、ポリテトラフルオロエチレン)と、PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維とからなる二重織物層である。上沓1と下沓2の間にスライダー3が配設された際に、PTFE繊維が上沓1及び下沓2の摺動面1a,2a側に配設されるようにして、スライダー3の上面3aと下面3bに滑り材が固定される。ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミドなどの繊維を挙げることができる。また、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維を挙げることができる。また、さらに、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維を適用してもよい。その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が望ましい。
二重織物の構成は、スライダー3側にPPS繊維の緯糸が配設され、これを巻き込むようにしてPPS繊維の経糸が編み込まれる。また、これらの上方(各沓側の位置)にはPTFE繊維の緯糸が配され、PTFE繊維の経糸がPTFE繊維の緯糸を巻き込むようにして編み込まれるとともに、PTFE繊維の経糸はさらに下方のPPS繊維の緯糸も巻き込むようにして編み込まれている。そして、PTFE繊維が上沓1及び下沓2の摺動面側に配設されるようにして、二重織物からなる滑り材がスライダー3の上面3aと下面3bに対して、エポキシ樹脂系接着剤等により固定される。
図1に戻り、下部構造体20は、鉄筋コンクリート製の立ち上り部22と、立ち上り部22に対してアンカーボルト(図示せず)にて固定されている鋼製の下部ベースプレート21とを有する。
一方、上部構造体30は、鋼製の上部ベースプレート31と、上部ベースプレート31に対してボルト固定されるとともに上下に通しダイアフラム36、37が溶接にて接合されているコラムコア32(パネルゾーン)と、通しダイアフラム37に対して溶接にて接合されている鉄骨柱33と、鉄骨梁34と、コンクリート床版35とを有する。
コラムコア32と鉄骨柱33は角形鋼管にて形成され、例えば、JIS G 3466(一般構造用角形鋼管)に基づくJIS製品である、STKR400やSTKR490が適用できる。また、その他、建築構造用冷間成形角形鋼管である、BCP(Box Column Press建築構造用冷間プレス成形角形鋼管、登録商標)やBCR(Box Column Roll 建築構造用冷間ロール成形角形鋼管、登録商標)が適用できる。一方、鉄骨梁34はH形鋼にて形成され、例えば、JIS製品である、SN材(建築構造用圧延鋼材 JIS G 3136)、SS材(一般構造用圧延鋼材 JIS G 3101)、SM材(溶接構造用圧延鋼材 JIS G 3106)等が適用できる。上方のフランジ34bの端部には開先(図示せず)が設けられ、下方に裏当金(図示せず)が配設された状態で、上方の通しダイアフラム37の端部と突合せ溶接される。同様に、下方のフランジ34cの端部にも開先が設けられ、上方に裏当金(図示せず)が配設された状態で、下方の通しダイアフラム36の端部と突合せ溶接される。一方、鉄骨梁34のウエブ34aは、コラムコア32の側面に対して隅肉溶接により接合される。尚、各溶接部は、突合せ溶接、隅肉溶接のいずれかの溶接により形成されるが、具体的な溶接方法は、アークスポット、アークスタッド、ガスシールドアーク等のアーク溶接の他、プラズマ溶接、エレクトロスラグ溶接、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接など、多様な溶接法が適用できる。
建物を平面的に見た際に鉄骨柱32が例えば格子の格点に配設され、各格点を繋ぐようにして複数の鉄骨梁34が組み付けられ、鉄骨梁34に支持されるようにしてコンクリート床版35が形成される。より具体的には、鉄骨梁34の上にデッキプレート38が敷設され、スタットボルト(図示せず)がデッキプレート38を介して鉄骨梁34の天端に打ち込まれることにより、双方が固定される。デッキプレート38の上方には床版用の鉄筋(図示せず)が配筋され、鉄筋を埋設するようにしてデッキプレート38上に所定高さを有するコンクリート床版35が形成される。
滑り免震支承構造100では、下部構造体20を形成する下部ベースプレート21に対して、滑り免震装置10の下沓2はボルト固定されずに載置されているのみである。さらに、滑り免震装置10の上沓1に対して、上部構造体30を形成する上部ベースプレート31もボルト固定されずに載置されているのみである。すなわち、下部ベースプレート21と下沓2、上部ベースプレート31と上沓1はいずれもボルト固定されない。
このような構造は、所定の面圧下(例えば10MPa乃至60MPaの面圧下)において、上部構造体30に作用するせん断力Qよりも、上部ベースプレート31と上沓1の間の摩擦力F(静止摩擦力)及び下部ベースプレート21と下沓2の間の摩擦力Fが大きいことにより実現される。すなわち、このように地震時等におけるせん断力Qよりも大きな接合界面における摩擦力Fが保証されていることにより、上沓1と上部構造体30の相対移動、及び下沓2と下部構造体20の相対移動を生じさせることなく、上部構造体30に作用する地震時等におけるせん断力Qを滑り免震装置10に伝達することが可能になる。尚、このせん断力と摩擦力に関する検証実験については以下で詳説する。
また、上沓1の上面1bである摩擦面と上部ベースプレート31の下面31aである摩擦面の間には、肌すきが3mmまで許容されている。すなわち、これらの摩擦面1b、31aの間に肌すきが3mm存在している場合であっても、上記する地震時等に作用するせん断力Qよりも大きな摩擦力Fが得られることが実証されている。
一方、下沓2の下面2bである摩擦面と下部ベースプレート21の上面21aである摩擦面の間においても、肌すきが3mmまで許容されている。すなわち、これらの摩擦面2b、21aの間に肌すきが3mm存在している場合であっても、上記する地震時等に作用するせん断力Qよりも大きな摩擦力Fが得られることが実証されている。尚、このように接合界面での肌すきが3mmの場合における、せん断力と摩擦力に関する検証実験についても以下で詳説する。
滑り免震支承構造100によれば、下部構造体20に対して下沓2がボルト固定されずに載置されているのみであり、かつ、上沓1に対して上部構造体30がボルト固定されずに載置されているのみであることにより、固定用ボルトの適用が完全に省略される。そのため、下部構造体20及び上部構造体30に対する滑り免震装置10の取り付けの際の施工手間を、大幅に低減することができる。さらに、固定用のボルトを削減することによって構造上の煩雑さが解消され、可及的にシンプルな構成の滑り免震支承構造100が形成される。
[第2実施形態に係る滑り免震支承構造]
次に、図3を参照して、第2実施形態に係る滑り免震支承構造の一例を説明する。ここで、図3は、第2実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。図3に示す滑り免震支承構造100Aにおいて、上沓1にはボルト孔1cが開設され、上部ベースプレート31にボルト孔1cよりも大径のルーズ孔31bが開設されている。ルーズ孔31bとボルト孔1cが位置決めされ、双方にフェイルセーフ用ボルト40が挿通されている。フェイルセーフ用ボルト40はボルト孔1cに螺合されるが、ルーズ孔31b内ではスライド自在となっている。
このように、上沓1のボルト孔1cと上部ベースプレート31のルーズ孔31bにフェイルセーフ用ボルト40が挿通された状態において、フェイルセーフ用ボルト40の上部には、上沓1と上部ベースプレート31を締付け固定しない状態でナット41が取り付けられている。尚、ルーズ孔31bの上面には、ルーズ孔31bよりも平面寸法の大きな座金42が配設され、この座金42と離間する位置に(座金42を締め付けないように)ナット41が取り付けられている。
上部ベースプレート31に開設されているルーズ孔31bと上沓1に開設されているボルト孔1cに対してフェイルセーフ用ボルト40が挿通され、上沓1と上部ベースプレート31を締付け固定しない状態でナット41が取り付けられていることにより、想定しない引張力Pが上部ベースプレート31に作用した場合でも、この引張力Pに対してフェイルセーフ用ボルト40が抵抗することができる。フェイルセーフ用ボルト40は、このように想定外の引張力P等に対して安全を見込んだボルトであり、従来の滑り免震支承構造に適用されているように、上部構造体からのせん断力を上沓に伝達する(せん断力を負担する)ためのボルトではない。例えば巨大地震により上部構造体30の架構を構成するブレース(図示せず)等から上部ベースプレート31に対して引張力Pが作用した場合であっても、フェイルセーフ用ボルト40がこの引張力Pに対抗することにより、例えば上沓1に対して上部ベースプレート31が脱落する等の問題は生じない。
また、滑り免震支承構造100と同様に、滑り免震支承構造100Aにおいても、地震時等におけるせん断力Qよりも大きな接合界面における摩擦力Fが保証されていることにより、上沓1と上部構造体30の相対移動、及び下沓2と下部構造体20の相対移動を生じさせることなく、上部構造体30に作用する地震時等におけるせん断力Qを滑り免震装置10に伝達することができる。
[第3実施形態に係る滑り免震支承構造]
次に、図4を参照して、第3実施形態に係る滑り免震支承構造の一例を説明する。ここで、図4は、第3実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。図4に示す滑り免震支承構造100Bは、上沓1に対して上部ベースプレート31がボルト固定されずに載置されているのみである構成は滑り免震支承構造100,100Aと同様であるが、下部構造体20を形成する下部ベースプレート21に対して下沓2がボルト固定されている。尚、ここで言う「ボルト固定」は、上記するフェイルセーフ用ボルト40と異なり、せん断力を伝達する態様でボルトにて固定することを意味する。
このように下沓2と下部構造体20がボルト固定されることにより、下部構造体20に対して滑り免震装置10を据え付ける際の位置決めとずれ防止を図ることができる。例えば滑り免震支承構造100と比べて、滑り免震支承構造100Bでは下沓2と下部構造体20とを固定するためのボルトが必要になるものの、上沓1と上部ベースプレート31はボルト固定されないことから、従来の滑り免震支承構造に比べて固定用ボルトの本数を低減することができ、可及的にシンプルな滑り免震支承構造が形成される効果を有している。滑り免震支承構造100,100Aと同様に、滑り免震支承構造100Bにおいても、上沓1と上部ベースプレート31との間においては、地震時等におけるせん断力Qよりも大きな接合界面における摩擦力Fが保証されていることにより、上沓1と上部構造体30の相対移動を生じさせることなく、上部構造体30に作用する地震時等におけるせん断力Qを滑り免震装置10に伝達することができる。尚、滑り免震支承構造100Bにおいても、滑り免震支承構造100Aと同様に、上部ベースプレート31がルーズ孔31bを有し、ルーズ孔31bにフェイルセーフ用ボルト40が挿通されている構成を適用することができる。
[第4実施形態に係る滑り免震支承構造]
次に、図5を参照して、第4実施形態に係る滑り免震支承構造の一例を説明する。ここで、図5は、第4実施形態に係る滑り免震支承構造の一例の縦断面図である。図5に示す滑り免震支承構造100Cは、下部ベースプレート21に対して下沓2がボルト固定されずに載置されているのみである構成は滑り免震支承構造100,100Aと同様であるが、上部構造体30を形成する上部ベースプレート31に対して上沓1がボルト固定されている。尚、ここで言う「ボルト固定」は、上記するフェイルセーフ用ボルト40と異なり、せん断力を伝達する態様でボルトにて固定することを意味する。
このように上沓1と上部構造体30がボルト固定されることにより、上沓1に対して上部構造体30を据え付ける際の位置決めとずれ防止を図ることができる。例えば滑り免震支承構造100と比べて、滑り免震支承構造100Cでは上沓1と上部構造体30とを固定するためのボルトが必要になるものの、下沓2と下部ベースプレート21はボルト固定されないことから、従来の滑り免震支承構造に比べて固定用ボルトの本数を低減することができ、可及的にシンプルな滑り免震支承構造が形成される効果を有している。滑り免震支承構造100,100Aと同様に、滑り免震支承構造100Cにおいても、下沓2と下部ベースプレート21との間においては、地震時等におけるせん断力Qよりも大きな接合界面における摩擦力Fが保証されていることにより、下沓2と下部構造体20の相対移動を生じさせることなく、上部構造体30に作用する地震時等におけるせん断力Qを滑り免震装置10に伝達することができる。
[第5実施形態に係る滑り免震支承構造]
次に、第5実施形態に係る滑り免震支承構造の一例を説明する。第5実施形態に係る滑り免震支承構造は、上沓に対して上部ベースプレートがボルト固定されずに載置されているのみである。また、下部ベースプレートにルーズ孔が開設され、ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが下沓のボルト孔とルーズ孔に挿通され、フェイルセーフ用ボルトの上部において、下沓と下部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられている。
[振動実験とその結果]
次に、本発明者等により行われた振動実験について説明する。この振動実験は、所定の面圧下において、滑り免震装置の上沓及び下沓と上部構造体及び下部構造体との間の界面の摩擦力が、加振時に作用するせん断力(水平力)よりも大きくなることを検証するものである。また、同時に、摩擦面に肌すきが3mm存在している場合においても、摩擦力が加振時のせん断力よりも大きくなることを検証するものである。
<実験概要>
図6を参照して、振動実験の実験機概要を説明する。実験機は、鉄骨等により実験架台を組み付け、振動台を動的アクチュエータや静的ジャッキにて所定の振動速度にて振動自在に配設し、実験架台と振動台に対して鉄骨治具を固定することにより形成した。上下の鉄骨治具の上下面に鋼製の治具プレートをボルト固定した。上下の治具プレートは、図1等における上部ベースプレート31と下部ベースプレート21を模擬したものであり、肌すき3mm加工を施している。肌すきが3mmとなるように加工(フェイシング)することにより、平面視矩形の治具プレートに対して、面圧0MPa(セット時)における治具プレートにおける12箇所の肌すきは、1.7mm乃至3.5mmの範囲にあり、平均しておよそ3mm程度となっている。
上下の鉄骨治具の内側に滑り免震装置を収容し、上沓と上方の治具プレート、下沓と下方の治具プレートの双方をいずれもボルト固定せずにセットした。実験架台は昇降自在に構成されており、実験架台を降下させることにより、所望の面圧を滑り免震装置に付与できるようになっている。尚、摩擦面の肌すきに関し、セット時に平均して3mm程度の肌すきが存在していたが、60MPaの面圧を載荷した状態で肌すきを測定すると、1.7mm乃至2.5mmの範囲となり、60MPaの面圧を導入することにより肌すきが0.1mm乃至1mm程度低減することが分かっている。
試験機の動的アクチュエータは、試験力200kN、ストローク±250mm、最大速度400mm/秒の性能を有する。一方、試験機の静的ジャッキは、試験力1000kN、ストローク±120mm、最大速度20mm/秒の性能を有する。静的ジャッキは、治具プレートと滑り免震装置の間の界面の摩擦力(もしくは摩擦係数)を測定する際に適用し、動的アクチュエータは、振動実験において、所定面圧下における滑り免震装置の動作により、水平変位と(水平荷重)/(鉛直荷重)の関係を求める際に適用した。
治具プレートと滑り免震装置の間の摩擦係数を測定する際の試験条件は以下の通りである。すなわち、面圧は60MPa(1884kN)、静的ジャッキの速度は1mm/秒、振幅100mm、正弦波制御、温度は20℃±2℃、サイクル数は片押しとした。
一方、所定面圧下における滑り免震装置の動作を確認する際の試験条件は以下の通りである。3種の試験を行い、ケース1では、面圧60MPa下において、速度10mm/秒で±200mmの振動載荷を実施した。一方、ケース2では、面圧10MPa下において、速度10mm/秒で±200mmの振動載荷を実施した。さらに、ケース3では、面圧60MPa下において、速度400mm/秒で±200mmの振動載荷を実施した。いずれのケースとも、振幅±200mm、正弦波制御、温度は20℃±2℃、サイクル数は4サイクルとした。このように、想定される面圧の範囲を10MPa乃至60MPaとしている。
<実験結果>
治具プレートと滑り免震装置の間の摩擦係数を測定する実験結果を図7に示す。また、ケース1乃至ケース3の滑り免震装置の動作確認実験の結果を、それぞれ図8乃至図10に示す。
まず、図7を参照すると、治具プレートと滑り免震装置の間の摩擦係数(水平荷重/鉛直荷重)は0.3乃至0.35の範囲にあり、従って、摩擦界面における摩擦係数μとして0.3(30%)が保証されることが実証されている。摩擦係数μとして0.3が保証されていることから、摩擦界面での摩擦力は、この摩擦係数:0.3に面圧(上部構造体による軸力)が乗じられた値となる。すなわち、この摩擦力が、例えば地震時において上部構造体に作用するせん断力よりも大きいことが実証されることにより、滑り免震装置と上部構造体及び下部構造体とをボルト固定することなく、接合界面の摩擦力のみによってせん断力を滑り免震装置に伝達できることが説明される。
そこで、まず、図8を参照して、ケース1の結果について検証する。ケース1において変位ゼロの際の縦軸の値が本ケースにおける摩擦係数となり、μ=0.053(5.3%)となっている。水平変位200mmにおいて見込みの摩擦係数は0.08程度である。想定される最大水平変位は600mm程度であることから、仮に最大水平変位の際の見込みの摩擦係数を試算すると、0.053+(0.08−0.053)×600/200≒0.13(13%)である。せん断力は、この見込みの摩擦係数に面圧(上部構造体による軸力)を乗じた値となることより、ケース1においては、接合界面の摩擦力である0.3×面圧の値よりも小さくなることが実証されている。
次に、図9を参照して、ケース2の結果について検証する。ケース2において変位ゼロの際の縦軸の値が本ケースにおける摩擦係数となり、μ=0.084(8.4%)となっている。水平変位200mmにおいて見込みの摩擦係数は0.13程度である。想定される最大水平変位は600mm程度であることから、仮に最大水平変位の際の見込みの摩擦係数を試算すると、0.084+(0.13−0.084)×600/200≒0.22(22%)である。せん断力は、この見込みの摩擦係数に面圧(上部構造体による軸力)を乗じた値となることより、ケース2においても、接合界面の摩擦力である0.3×面圧の値よりも小さくなることが実証されている。
次に、図10を参照して、ケース3の結果について検証する。ケース3において変位ゼロの際の縦軸の値が本ケースにおける摩擦係数となり、μ=0.045(4.5%)となっている。水平変位200mmにおいて見込みの摩擦係数は0.07程度である。想定される最大水平変位は600mm程度であることから、仮に最大水平変位の際の見込みの摩擦係数を試算すると、0.045+(0.07−0.045)×600/200≒0.12(12%)である。せん断力は、この見込みの摩擦係数に面圧(上部構造体による軸力)を乗じた値となることより、ケース3においても、接合界面の摩擦力である0.3×面圧の値よりも小さくなることが実証されている。
本実験により、想定される面圧10乃至60MPaの範囲においては、滑り免震装置と上部構造体及び下部構造体との接合界面における摩擦力が、上部構造体に作用するせん断力よりも大きくなることが実証されている。従って、滑り免震装置と上部構造体及び下部構造体とをボルト固定せずとも、接合界面の摩擦力により、せん断力を滑り免震装置に伝達可能であることが実証されており、本実施形態における滑り免震支承構造を適用できることが確認されている。
また、接合界面における肌すきが3mmの条件下において上記結果が得られていることから、接合界面(摩擦面)において肌すき3mmまでを許容できることも同時に実証されている。
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
1 :上沓
1a :摺動面
1b :摩擦面(上面)
1c :ボルト孔
2 :下沓
2a :摺動面
2b :摩擦面(下面)
3 :スライダー
10 :滑り免震装置
20 :下部構造体
21 :下部ベースプレート
21a :摩擦面(上面)
22 :基礎(立ち上り部)
30 :上部構造体
31 :上部ベースプレート
31a :摩擦面(下面)
31b :ルーズ孔
31c :ボルト孔
32 :コラムコア(鉄骨柱)
33 :鉄骨柱
34 :鉄骨梁
35 :コンクリート床版
40 :フェイルセーフ用ボルト
41 :ナット
42 :座金
50 :固定用ボルト
60 :固定用ボルト
100、100A :滑り免震支承構造
100B、100C :滑り免震支承構造
Q :せん断力
F :摩擦力

Claims (7)

  1. 建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
    前記滑り免震装置は、曲率を有する摺動面を備えている上沓及び下沓と、該上沓と該下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダーと、を有し、
    前記下部構造体に対して、前記下沓がボルト固定されずに載置されているのみであり、
    前記上沓に対して、前記上部構造体がボルト固定されずに載置されているのみであることを特徴とする、滑り免震支承構造。
  2. 前記下部構造体を構成する鉄筋コンクリート製の立ち上り部に鋼製の下部ベースプレートが固定され、該下部ベースプレートに前記下沓がボルト固定されずに載置されており、
    鋼製の上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに接続される鉄骨柱と、該鉄骨柱に接続される鉄骨床梁と、を少なくとも備える前記上部構造体における該上部ベースプレートが前記上沓にボルト固定されずに載置されており、
    前記上沓にボルト孔が開設され、前記上部ベースプレートに該ボルト孔よりも大径のルーズ孔が開設され、該ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが前記上沓の前記ボルト孔と前記ルーズ孔に挿通され、該フェイルセーフ用ボルトの上部には、前記上沓と前記上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられており、
    前記フェイルセーフ用ボルトは、前記ルーズ孔によって前記上部構造体から作用するせん断力を負担せず、前記上部構造体から作用する引張力を負担することを特徴とする、請求項1に記載の滑り免震支承構造。
  3. 建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
    前記滑り免震装置は、曲率を有する摺動面を備えている上沓及び下沓と、該上沓と該下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダーと、を有し、
    前記下部構造体に対して、前記下沓がボルト固定されており、
    前記上沓に対して、前記上部構造体がボルト固定されずに載置されているのみであることを特徴とする、滑り免震支承構造。
  4. 前記下部構造体を構成する鉄筋コンクリート製の立ち上り部に鋼製の下部ベースプレートが固定され、該下部ベースプレートに前記下沓がボルト固定されており、
    鋼製の上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに接続される鉄骨柱と、該鉄骨柱に接続される鉄骨床梁と、を少なくとも備える前記上部構造体における該上部ベースプレートが前記上沓にボルト固定されずに載置されており、
    前記上沓にボルト孔が開設され、前記上部ベースプレートに該ボルト孔よりも大径のルーズ孔が開設され、該ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが前記上沓の前記ボルト孔と前記ルーズ孔に挿通され、該フェイルセーフ用ボルトの上部には、前記上沓と前記上部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられており、
    前記フェイルセーフ用ボルトは、前記ルーズ孔によって前記上部構造体から作用するせん断力を負担せず、前記上部構造体から作用する引張力を負担することを特徴とする、請求項3に記載の滑り免震支承構造。
  5. 建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
    前記滑り免震装置は、曲率を有する摺動面を備えている上沓及び下沓と、該上沓と該下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている鋼製のスライダーと、を有し、
    前記上沓に対して、前記上部構造体がボルト固定されており、
    前記下部構造体に対して、前記下沓がボルト固定されずに載置されているのみであることを特徴とする、滑り免震支承構造。
  6. 建物の下部構造体及び上部構造体と、それらの間に介在する滑り免震装置と、により構成される滑り免震支承構造であって、
    鋼製の上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに接続される鉄骨柱と、該鉄骨柱に接続される鉄骨床梁と、を少なくとも備える前記上部構造体における該上部ベースプレートが前記上沓にボルト固定されずに載置されており、
    前記下沓にボルト孔が開設され、前記下部ベースプレートに該ボルト孔よりも大径のルーズ孔が開設され、該ルーズ孔内でスライド自在なフェイルセーフ用ボルトが前記下沓の前記ボルト孔と前記ルーズ孔に挿通され、該フェイルセーフ用ボルトの上部には、前記下沓と前記下部ベースプレートを締付け固定しない状態でナットが取り付けられていることを特徴とする、滑り免震支承構造。
  7. 前記上部ベースプレートと前記上沓の上面との間の肌すき、及び、前記下部ベースプレートと前記下沓の下面との間の肌すきが、いずれも3mmまで許容されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の滑り免震支承構造。
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