JP7162457B2 - あと付けブレースの接合構造 - Google Patents

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Description

本発明は、既存の工場施設や体育館などの大空間の屋根面を対象として、あと付けで簡単に水平ブレースを設置するための構造に関する。
例えば、工場施設や体育館などの大空間施設では、大きな地震による揺れで天井の落下、間仕切り壁の倒壊、吊り設備機器の破壊などが生じ、機能不全に陥るケースがある。このような被害を低減させる対策として、一般に、天井・間仕切り壁・吊り設備自体の固定度を高めるなどの対策が講じられている。
ここで、建物全体で見た場合、被害の根本的な原因として屋根面の面内剛性の不足がある。屋根面剛性の不足は、鉛直構面(柱や壁)間で過大な水平変位の差を生じさせたり、柱スパン間の屋根面自体の過大な変形を生じさせ、屋根面に固定した天井・間仕切り壁・吊り設備に想定外の変形を与えて破壊に至らしめる要因となる。
このため、大空間施設では屋根面剛性の向上が本質的な耐震補強対策になる。特に1981年以前の「旧耐震」で設計された工場施設や体育館では既存屋根面ブレースの耐力や剛性が不足していることが多く、これらの既存屋根構造に対し、あと付け水平ブレースを設置して所望の耐震性能を確保することが提案、実用化されている。
あと付け水平ブレースを設置する対策は、供用中の建物の屋根面架構に鉄骨の水平ブレースを多数設置することになるため、簡単に水平ブレースを屋根面架構に接合可能な工法が求められる。また、工場施設では床面に生産設備機器や資材が置かれていることから、屋根面工事における溶接作業などの火気や孔開け加工作業に伴う鋼材の切りくずの落下を避けることも必要になる。また一方で、水平ブレースの端部を接合固定する対象施設の鉄骨が古く溶接に適さない鋼材である場合もある。
これに対し、特許文献1には、大スパンの工場施設の屋根架構として多い「既設トラス架構」を対象とし、既存部材の外周を2分割された一対のクランプ部材で挟み、クランプ部材同士をボルトで締め込むことにより、一対のクランプ部材と既存部材の間の摩擦力で既存部材とあと付けの水平ブレースを接合設置する手法が開示されている。
特許文献2には、特許文献1における既存部材とクランプ部材の間に接着剤を介装して既存部材とあと付けの水平ブレースを接合設置する手法が開示されている。
特許文献3には、既存工場施設の屋根面架構の構成部材のH形鋼や山形鋼のフランジの外側を添板で挟み、これらを高力ボルトで締め込むことによって既存部材のフランジと添板間に摩擦力を発生させて固定するあと付け部材の摩擦接合構造が開示されている。
特開2007-303066号公報 特開2009-102877号公報 特開2008-2268号公報
しかしながら、特許文献1の手法においては、既存部材の材軸直交方向に機械的な固定が可能であるが、材軸方向には摩擦力を発生させるための締付け軸力の管理や摩擦面処理作業が必要となる。この締付け軸力の管理手法を考えた場合、従来、高力ボルト周辺での摩擦力の確保が既製工法として確立されているが、高力ボルトから離れた箇所に関しては摩擦面外の軸力の保証が無く、ボルトから離れるほど軸力が低下し摩擦力が働かなくなる。さらに、摩擦面処理作業は、既存部材の表面にサンダー掛けやブラスト処理の作業を行うことであり、作業手間となるばかりでなく、床面や施設内に粉塵が飛散する。
特許文献2の手法は、特許文献1の摩擦接合に伴う問題点を、既存部材とクランプ部材の間に接着剤を使用することで解消したものであるが、水平ブレースを多数設置する工場施設等においては、接着剤を用いることで材料コストが嵩み、さらに接着剤の塗布作業で発生する作業時間の累積が大きなコスト増を招く。
特許文献3の手法は、高力ボルトによる摩擦接合であるため、高力ボルト張力の効きがボルトの中心から概ね半径50~60mm程度までとなる。このため、本手法でもボルトから離れた箇所の摩擦面の効きが悪くなる。特にフランジ上面に配置される添板は、ボルト締結部から先が片持ち梁形式となるため、先端ほど面外変形が生じ、摩擦力が効かなくなる。
また、「既存フランジの板厚よりも0.2~0.8mmだけ薄いスペーサ」をボルト貫通部に挟む必要があり、既存フランジの板厚に対するスペーサの板厚の精度管理にも労力を要し、コスト高になる。さらに、特許文献1と同様、特許文献3の手法は摩擦面処理に伴うコスト増が常に発生することになる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、あと付けで簡単に水平ブレースを設置することを可能にするあと付けブレースの接合構造を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明のあと付けブレースの接合構造は、フランジを有する鉄骨で構成された通し梁と、該通し梁に対して水平方向に略直交する方向に連設された直交梁と、の接合部に、水平ブレースをあと付けするための構造であって、前記通し梁のフランジの下面に対向配置され、前記水平ブレースが接続される板状の固定板と、前記固定板とともに前記フランジを挟み込むように該フランジの上面に配設された水平板部と、該水平板部に直交する方向に延設され前記通し梁のウェブに連結される鉛直板部と、を備えたアングル部材と、前記フランジの側端面に並設配置され、前記固定板と、前記水平板部と、の間に介装される介装板と、を備え、前記鉛直板部と前記ウェブとがボルト接合され、前記固定板、前記介装板、および前記水平板部がボルト接合されており、前記アングル部材は、前記ウェブを挟んだ両側に設けられるとともに、前記接合部を挟んだ両側に設けられていることを特徴とする。
また、本発明のあと付けブレースの接合構造は、フランジを有する鉄骨で構成された通し梁と、該通し梁に対して水平方向に略直交する方向に連設された直交梁と、の接合部に、水平ブレースをあと付けするための構造であって、前記通し梁のフランジの下面に対向配置され、前記水平ブレースが接続される板状の固定板と、前記固定板とともに前記フランジを挟み込むように該フランジの上面に配設された水平板部と、該水平板部に直交する方向に延設され前記通し梁のウェブに連結される鉛直板部と、を備えたアングル部材と、前記フランジの側端面に並設配置され、前記固定板と、前記水平板部と、の間に介装される介装板と、を備え、前記鉛直板部と前記ウェブとがボルト接合され、前記固定板、前記介装板、および前記水平板部がボルト接合されており、前記固定板の対角線上の4隅に前記水平ブレースが接合され、前記通し梁と前記直交梁との交点と、前記水平ブレースどうしの交点とが一致していることを特徴とする。
このように構成することで、水平ブレースを既存部材(鉄骨)に固定する部品が一般に使用される鋼板(固定板、アングル部材)とボルトのみから構成されるため、材料が少なく、入手しやすく、加工コストを小さく抑えることができる。このため、施工箇所数が無数に存在する工場施設においては、経済的な効果が非常に大きい。また、現場での溶接や、現場での摩擦面処理作業が不要であり、施工が簡単である。また、固定板をフランジの外側に固定するため、既存部材を避けた配置が可能となり、この点からも簡単に施工できる。さらに、水平ブレースの軸線が通っているため、偏心曲げなどの2次応力が発生しない。また、固定部の応力の流れが明快であり、構造設計がしやすい。さらに、介装板は、既存弦材(通し梁)のフランジからの支圧力を受ける働きと、既存フランジの上側へ水平板部(アングル部材)を配置する目的で設置されるため、介装板の板厚の高精度の管理を行うことが不要である。
また、本発明のあと付けブレースの接合構造においては、前記鉛直板部と前記ウェブとの間に、スペーサが介装されていてもよい。
このようにスペーサを介装させることで、アングル部材を通し梁に取り付ける際に、鉄骨のフランジとウェブとが直交する境界部に存在するフィレットや溶接ビードと、アングル部材の角部と、の干渉を避けることができ、結果として、鉛直板部(アングル部材)をウェブ(鉄骨)に確実、かつ、強固に取り付けることができる。
本発明のあと付けブレースの接合構造においては、既存部材(鉄骨)にあと付けで簡単に水平ブレースを設置することができる。
本発明の実施形態に係るあと付けブレースの接合構造を示す正面図である。 本発明の実施形態に係るあと付けブレースの接合構造を示す平面図である。 本発明の実施形態に係るあと付けブレースの接合構造を示す拡大平面図(ブレース省略)である。 図3のX-X線断面図である。 図3のY-Y線断面図である。 図3のZ-Z線断面図である。 本実施形態に係るあと付けブレースの接合構造の実験例を示す平面図である。 実験例において水平ブレースに発生した荷重履歴を示すグラフである。 実験例において固定板の通し梁のフランジに対する梁の材軸方向のずれ変形を計測した結果を示すグラフ(2箇所)である。
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るあと付けブレースの接合構造について説明する。
ここで、本実施形態は、既存の工場施設や体育館などの大空間の屋根面にあと付けで簡単に水平ブレースを設置するための構造に関するものである。また、本実施形態では、あと付けの水平ブレースを設置して耐震性能の向上を図る対象が、既存の工場施設や体育館などの大空間/大スパンの屋根面を有する建物であるものとして説明を行う。さらに、本実施形態では、建物の屋根面がトラス形式の大梁を備えて構成され、この大梁に水平ブレースを追加設置して耐震性能の向上を図るものとして説明を行う。
具体的に、図1に示すように、本実施形態の建物の屋根面架構(大梁)1は、上側の水平梁である上弦材2と、下側の水平梁である下弦材3と、上弦材2と下弦材3を連結するように上弦材2と下弦材3の間に配設された束材(鉛直材)4及びラチス材(斜材)5と、を備えてトラス形式で形成されている。
上弦材2及び下弦材3は、H形鋼や山形鋼のウェブとフランジを備えた鉄骨(弦材)を用いて構成されている。また、本実施形態の上弦材2と下弦材3はそれぞれ、複数の鉄骨を直交させて組み付け、略格子状に形成されている。
下弦材3は、一方向に延設された通し梁7と、該通し梁7に対して水平方向に直交する方向に連設された直交梁8と、を備えている。通し梁7と、直交梁8とは、連結部材15によって連結されている。具体的には、通し梁7のフランジ7aとウェブ7bとで囲まれた部分に板状のリブ16が形成されており、該リブ16と直交梁8のウェブ8bとの間を、板状の連結部材15を用いて互いにボルト接合して連結されている。
図1から図6に示すように、本実施形態のあと付けブレースの接合構造Aは、あと付けの水平ブレース6の端部6aをボルト接合する平板状の固定板10と、固定板10とともに通し梁7の下側のフランジ7aを挟み込むように配設される水平板部9aおよび該水平板部9aに直交する方向に延設され通し梁7のウェブ7bに連結される鉛直板部9bを備えたアングル部材9と、を備えている。
また、固定板10とアングル部材9の水平板部9aとの間で、下側のフランジ7aの側端面に並設するように板状の介装板12(図5参照)が配設されている。固定板10、介装板12、およびアングル部材9の水平板部9aは、ボルト接合されている。なお、水平板部9aは、通し梁7にアングル部材9を配置したときに、水平板部9aの先端がフランジ7aの先端よりも延出した状態になるように構成されている。
さらに、アングル部材9の鉛直板部9bと通し梁7のウェブ7bとの間には、板状のスペーサ13(図5参照)が配設されている。鉛直板部9b、スペーサ13、および通し梁7のウェブ7bは、ボルト接合されている。
図2~図4に示すように、本実施形態の固定板10は、平面視で正方形の4つの隅部を対角線の延長線に沿って外側に張り出すようにして略十字状に形成され、中央の正方形部分が応力伝達部10aとされ、4つの張り出した隅部がそれぞれ水平ブレースの端部をボルト接合する接合部10bとされている。
固定板10は、下弦材3の十字状に直交する鉄骨(弦材)の交点O1にその中心O2を合わせ、且つ対角線(接合部10bが形成されている部分)が下弦材3の直交する鉄骨の延設方向に対して略45°の角度をなすように、また、下弦材3の通し梁7のフランジ7aおよび直交梁8のフランジ8aの外面に面接触させて配設される。
図3、図5、図6に示すように、アングル部材9は、矩形板状に形成され、一面から他面に貫通する複数(本実施形態では3箇所)のボルト挿通孔が一側部に沿って所定の間隔をあけて穿設された水平板部9aと、該水平板部9aに直交する方向に延設され、一面から他面に貫通する複数(本実施形態では3箇所)のボルト挿通孔が一側部に沿って所定の間隔をあけて穿設された矩形板状の鉛直板部9bと、を備えている。つまり、アングル部材9は、側面視略L字状に形成された部材である。
そして、このアングル部材9は、下弦材3の通し梁7のフランジ7aの内面(上面)に水平板部9aの他側部側を面接触させつつ、固定板10に穿設されたボルト挿通孔と、一側部側のボルト挿通孔を連通させるように配設される。そして、アングル部材9と固定板10との隙間に介装板12を配設した後に、互いに連通したボルト挿通孔にボルトを挿通し、ナットを緊締することにより、固定板10と水平板部9aの他側部側とで通し梁7のフランジ7aを挟み込み、固定板10とアングル部材9(通し梁7)を接合することができるように構成されている。
また、このアングル部材9は、下弦材3の通し梁7のウェブ7bの両面に鉛直板部9bを対向配置させつつ、ウェブ7bに穿設されたボルト挿通孔と、鉛直板部9bのボルト挿通孔を連通させるように配設される。このときウェブ7bを挟んで両側にアングル部材9が配設されている。そして、アングル部材9と通し梁7のウェブ7bとの隙間にスペーサ13を配設した後に、互いに連通したボルト挿通孔にボルトを挿通し、ナットを緊締することにより、通し梁7のウェブ7bの両側に配設されたアングル部材9の鉛直板部9bで通し梁7のウェブ7bを挟み込み、通し梁7とアングル部材9とを接合することができるように構成されている。
また、本実施形態では、下弦材3の直交する鉄骨の交点O1、ひいては固定板10の中心O2を挟んで、通し梁7のウェブ7bを挟んで両側のフランジ7aを挟み込むようにそれぞれアングル部材9が配設されている。すなわち、本実施形態では、交点O1の周りに4つのアングル部材9が設けられ、通し梁7のフランジ7aを固定板10と各アングル部材9で挟み込んで、固定板10が下弦材3の所定位置に接合配置されている。また、アングル部材9と通し梁7は、アングル部材9の鉛直板部9bと通し梁7のウェブ7bとをボルト接合することにより連結されている。このように構成することで、アングル部材9を介して固定板10と通し梁7とが連結されることになり、固定板10の自重を支え、落下することがない。
そして、上記構成からなる本実施形態のあと付けブレースの接合構造Aにおいては、新たに追加する水平ブレース6が固定板10の対角線上の4隅の接合部10bにそれぞれボルト接合して配設される。
これにより、屋根面で発生する水平方向の地震力は、直交する上弦材や下弦材の鉄骨に集まるが、直交する下弦材3と対角線上に配置された水平ブレース6の交点中心O1、O2が一致しているため、偏心による2次応力が発生せず、力学的に明快な補強を行うことができる。
本実施形態のあと付けブレースの接合構造Aにおいては、固定板10が通し梁7にのみ直接接合されている。通し梁7のウェブ7bには、ボルトを挿通させるため現場孔開け加工を行い、ウェブ7bの両側にスペーサ13を挟んでアングル部材9がボルト接合されている。アングル部材9の水平板部9aは、フランジ7aの上面に接して配置される。
このように構成することで、通し梁7に直交する応力は、水平ブレース6→介装板12→通し梁7のフランジ7aの側端面を通して伝達される。介装板12と通し梁7のフランジ7aの側端面との力のやり取りは支圧力である。
また、通し梁7の材軸方向の力は、水平ブレース6→アングル部材9→ボルト(アングル部材9とウェブ7bとを連結するボルト)の軸)→ウェブ7bのボルト孔を通して伝達される。ボルトの軸とウェブ7bのボルト孔との力のやり取りは支圧力である。
本実施形態のあと付けブレースの接合構造Aによれば、既存部材への孔開け加工は、通し梁7のウェブ7bにのみ行われる。したがって、既存梁のフランジおよびウェブの両方に孔開け加工していた在来工法と比較して、孔開けの数を少なくすることができる。また、ウェブ7bの孔開け加工作業はフランジに比べて板厚が薄いため施工が容易である。さらに、切削屑もフランジに落下するため、床面に落下することが無く、特に生産機械などが床面に配置されている工場などにおいて好適に採用することができる。
また、上記したように、通し梁7のフランジ7aに孔開け加工が不要であるため、梁の断面欠損による性能劣化が無くなる。
また、水平ブレース6からの応力が通し梁7に流れるため、水平ブレース6の性能が直交梁8との接合強度に依存せず、水平ブレース6の性能が安定して発揮される。また、通し梁7に直交梁8が接合されている場合であっても、水平ブレース6からの応力が一旦通し梁7に流れてから直交梁8に流れるため、力の流れが明快になり、補強設計がしやすくなる。
また、水平ブレース6を既存部材(通し梁7)に固定する部品が一般に使用される鋼板とボルトのみから構成されるため、材料が少なく、入手しやすく、加工コストを小さく抑えることができる。このため、施工箇所数が無数に存在する工場施設などにおいては、経済的な効果が非常に大きい。また、現場での溶接や摩擦面処理作業が不要であり、施工が簡単である。
また、固定板10をフランジ7aの外側に固定するため、既存部材を避けた配置が可能となり、この点からも簡単に施工できる。
さらに、ブレース6の軸線が通っているため、偏心曲げなどの2次応力が発生せず、固定部10の応力の流れが明快であり、構造設計がしやすい。
そして、本実施形態に係る介装材12は、既存弦材(通し梁7)のフランジ7aからの支圧力を受ける働きと、既存フランジ7aの上側へアングル部材9を配置する目的で設置されるため、特許文献3のようなスペーサ板厚の高精度の管理を行うことが不要である。
(実験例)
本実施形態のあと付けブレースの接合構造Aについての実験例について以下に示す。
図7に示すように、水平ブレース6として2L-65×65×6を使用して、一直線上にある左右の水平ブレース6に交互に漸増引張荷重を付加し、接合部の耐力確認および固定板10の通し梁7に対するずれ変形を計測したものである。
上記水平ブレース6の場合、短期軸力が354kNであり、その1.2倍の425kNの耐力が確認されれば、建築構造における「保有耐力接合」が実証されたことになる。
図8に示すように、水平ブレース6に発生した荷重履歴では、加力ステップ7において430kNを計測し、保留耐力接合の目標荷重をクリアした。
図9では固定板10の通し梁(フランジ)7に対する材軸方向のずれ変形を材軸方向の2箇所で計測した結果を示している。具体的には、図7に示すように、通し梁7のフランジ7aの下面と固定板10の下面に互いの距離を計測するセンサS1~S4を取り付けて計測した。図9(a)では、センサS1とS2との間のずれ変形を計測した結果Gnwを示しており、図9(b)では、センサS3とS4との間のずれ変形を計測した結果Gseを示している。図9に示すように、計測結果はいずれも0.5mm未満であり、実際の水平ブレース6が5m以上になることを考慮しなくとも十分に無視できる値であることが分かる。
以上、本発明に係るあと付けブレースの接合構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では大空間/大スパンの屋根面を構成する大梁を上弦材2と下弦材3を持つトラス形式とした場合であったが、大梁をH形鋼とした場合でも、H形鋼がウェブとフランジを有する鉄骨からなる水平の既存部材であることに変わりがなく、本発明が適用できることは言うまでもない。
また、本実施形態では、あと付けブレースの接合構造Aを下弦材3側に取り付けるものとして説明を行ったが、本発明に係るあと付けブレースの接合構造Aは、上弦材2側にも下弦材3側にも施工することができ、上弦材2側、下弦材3側のどちらであっても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、本実施形態では、あと付けブレースの接合構造Aを下弦材3(通し梁7)の下側のフランジ7aに設けた場合の説明をしたが、設置箇所が許容されるのであれば、上側のフランジに設けてもよい。
さらに、本実施形態では、通し梁7と直交梁8との接合部に水平ブレース6を取り付ける場合の説明をしたが、本発明に係るあと付けブレースの接合構造Aは、フランジ7aを有する通し梁7(鉄骨)に直接取り付けられるものであるから、通し梁7と直交梁8との接合部以外の場面でも実現可能である。例えば、通し梁7と直交する方向以外の方向に連設される梁との接合部に水平ブレース6を取り付けてもよいし、通し梁7に連設される梁が無い箇所に水平ブレース6を取り付けてもよい。
1 屋根面架構(大梁)
2 上弦材(既存部材)
3 下弦材(既存部材)
4 束材
5 ラチス材
6 水平ブレース(あと付けブレース)
7 通し梁
7a フランジ
7b ウェブ
8 直交梁
8a フランジ
8b ウェブ
9 アングル部材
9a 水平板部
9b 鉛直板部
10 固定板
10a 応力伝達部
10b 接合部
12 介装板
13 スペーサ
A あと付けブレースの接合構造

Claims (3)

  1. フランジを有する鉄骨で構成された通し梁と、該通し梁に対して水平方向に略直交する方向に連設された直交梁と、の接合部に、水平ブレースをあと付けするための構造であって、
    前記通し梁のフランジの下面に対向配置され、前記水平ブレースが接続される板状の固定板と、
    前記固定板とともに前記フランジを挟み込むように該フランジの上面に配設された水平板部と、該水平板部に直交する方向に延設され前記通し梁のウェブに連結される鉛直板部と、を備えたアングル部材と、
    前記フランジの側端面に並設配置され、前記固定板と、前記水平板部と、の間に介装される介装板と、を備え、
    前記鉛直板部と前記ウェブとがボルト接合され、
    前記固定板、前記介装板、および前記水平板部がボルト接合されており、
    前記アングル部材は、前記ウェブを挟んだ両側に設けられるとともに、前記接合部を挟んだ両側に設けられていることを特徴とするあと付けブレースの接合構造。
  2. フランジを有する鉄骨で構成された通し梁と、該通し梁に対して水平方向に略直交する方向に連設された直交梁と、の接合部に、水平ブレースをあと付けするための構造であって、
    前記通し梁のフランジの下面に対向配置され、前記水平ブレースが接続される板状の固定板と、
    前記固定板とともに前記フランジを挟み込むように該フランジの上面に配設された水平板部と、該水平板部に直交する方向に延設され前記通し梁のウェブに連結される鉛直板部と、を備えたアングル部材と、
    前記フランジの側端面に並設配置され、前記固定板と、前記水平板部と、の間に介装される介装板と、を備え、
    前記鉛直板部と前記ウェブとがボルト接合され、
    前記固定板、前記介装板、および前記水平板部がボルト接合されており、
    前記固定板の対角線上の4隅に前記水平ブレースが接合され、
    前記通し梁と前記直交梁との交点と、前記水平ブレースどうしの交点とが一致していることを特徴とするあと付けブレースの接合構造。
  3. 前記鉛直板部と前記ウェブとの間に、スペーサが介装されていることを特徴とする請求項1または2に記載のあと付けブレースの接合構造。
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