次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、図1に示す方向を前後左右方向とする。また、前後左右方向と直交する方向を、重力が作用する上下方向とする。
(フィラメントワインディング装置)
まず、フィラメントワインディング装置1の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、巻付装置2の後部の左右両側に配置された一対のクリールスタンド3と、を備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。なお、図1では、図が煩雑になることを避けるため、巻付装置2のうち左右一対のクリールスタンド3に挟まれる部分の図示を省略している。
巻付装置2は、概ね円筒状のライナーLに繊維束(図1では図示省略)を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば炭素繊維等の繊維材料に、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。例えば、巻付装置2で圧力タンク等の圧力容器を製造する場合は、ライナーLとして、図1に示すような、円筒状の大径部の両側にドーム状の小径部を有する形状のものが用いられる。ライナーLは、例えば、高強度アルミニウム、金属、樹脂等によって作製されている。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成等の熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力容器等の最終製品を生産することができる。
クリールスタンド3は、巻付装置2の側方に配置された支持フレーム11によって、繊維束が巻かれた複数のボビン12が回転可能に支持された構成を有する。クリールスタンド3の各ボビン12から供給される繊維束は、後述のヘリカル巻きユニット50によってヘリカル巻きを行う際に使用される。
(巻付装置)
次に、巻付装置2の構成について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、巻付装置2の斜視図である。図3は、巻付装置2の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻きユニット40と、ヘリカル巻きユニット50と、を備える。
基台20は、支持ユニット30、フープ巻きユニット40、及び、ヘリカル巻きユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が配設されている。支持ユニット30及びフープ巻きユニット40は、レール21上に配置され、レール21上を前後方向に往復移動可能である。一方、ヘリカル巻きユニット50は、基台20に固設されている。第1支持ユニット31、フープ巻きユニット40、ヘリカル巻きユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
支持ユニット30は、フープ巻きユニット40よりも前側に配置される第1支持ユニット31と、ヘリカル巻きユニット50よりも後側に配置される第2支持ユニット32と、を有する。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(図3参照)。移動用モータ34は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35は、制御装置10(図3参照)によって駆動制御される。
フープ巻きユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻きユニット40は、本体部41と、回転部材42と、複数のボビン43と、を有する。本体部41は、レール21上に配置されており、円盤状の回転部材42をライナーLの軸周りに回転可能に支持する。回転部材42の中央部には、ライナーLが通過可能な円形の通過穴44が形成されている。回転部材42は、通過穴44の周りに周方向に等間隔で配置された複数のボビン43を回転可能に支持する。各ボビン43には、繊維束が巻かれている。
フープ巻きユニット40は、移動用モータ45及び回転用モータ46を有する(図3参照)。移動用モータ45は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ46は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ45及び回転用モータ46は、制御装置10(図3参照)によって駆動制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置10は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビン43から繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に一斉にフープ巻きされる。
ヘリカル巻きユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻きユニット50は、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、基台20に固設されている。フレーム部材52は、本体部51に取り付けられた円盤状の部材である。フレーム部材52の中央部には、ライナーLが前後方向に通過可能な円形の通過穴54が形成されている。言い換えると、通過穴54は水平方向と平行な前後方向を軸方向とし、ライナーLを水平方向に通過させることが可能となっている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心とする周方向に等角度間隔で(本実施形態では、40度間隔で)並べられており、全体として放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に固定されている。
図4は、ヘリカル巻きユニット50の正面図である。図4に示すように、ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体65(本発明のノズル部材)を有する。ガイド体65は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ55が配置されている。クリールスタンド3(図1参照)の各ボビン12から引き出された繊維束Fは、ガイドローラ55を経由してガイド体65を通り、ライナーLに至る。
ヘリカル巻きユニット50は、ガイド移動用モータ56(本発明の第1駆動源)及びガイド回転用モータ57(本発明の第2駆動源)を有する(図3参照)。ガイド移動用モータ56は、複数のノズルユニット53のガイド体65を一斉に径方向に移動させる(詳細は後述)。ガイド回転用モータ57は、複数のノズルユニット53のガイド体65をそれぞれの回転軸周りに一斉に回転させる(詳細は後述)。ガイド移動用モータ56及びガイド回転用モータ57は、制御装置10(図3参照)によって駆動制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置10は、支持ユニット30を駆動制御することにより、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。同時に、制御装置10は、各ノズルユニット53のガイド体65を、適宜径方向に移動させる(伸縮動作を行わせる)とともに回転軸周りに回転させる(回転動作を行わせる)。これによって、各ノズルユニット53のガイド体65から繊維束Fが引き出され、複数の繊維束FがライナーLの周面に一斉にヘリカル巻きされる。
ガイド体65の径方向の移動制御は、ライナーLの周面の近傍にガイド体65の先端部を位置させるべく行われる。図4(a)は、ライナーLの大径部に繊維束Fを巻き付けるときを図示したものである。図4(b)は、ライナーLの小径部に繊維束Fを巻き付けるときを図示したものである。このように、ライナーLの小径部に繊維束Fを巻き付けるときは、大径部に繊維束Fを巻き付けるときよりもガイド体65を径方向内側に移動させる。また、ガイド体65の回転軸周りの回転制御は、ライナーLに対する繊維束Fの巻付方向が変わったとき等に、繊維束Fを適切な態様で引き出すべく行われる。
(ノズルユニット)
ノズルユニット53の詳細について説明する。図5は、ノズルユニット53を図4(a)のV方向から見た側面図である。図6は、ノズルユニット53を図4(a)のVI方向から見た側面図である。図5及び図6では、ガイド体65が最も径方向外側に位置している状態を図示している。
図5及び図6に示すように、ノズルユニット53は、フレーム部材52の前面にボルト201によって固定されており、フレーム部材52に対して着脱可能に構成されている。ノズルユニット53は、フレーム部材52に固定される支持体60と、支持体60によって径方向に移動可能に支持される移動体61と、を有して構成される。
支持体60は、固定部62及び支持部63を有する。固定部62は、フレーム部材52に固定される部位である。固定部62は、フレーム部材52に形成されているボルト201用のネジ穴52aの位置に合わせて配置され、フレーム部材52の前面にボルト201でネジ止めされている。支持部63は径方向に延びている。支持部63には、同じく径方向に延びる不図示のレールが設けられている。このレールに移動体61が係合されており、これによって、支持部63は移動体61を径方向に移動可能に支持している。支持部63は、前後方向において、後述する移動用リングギア72の端面の外側、且つ、回転用リングギア82の端面の外側に配置されている。
移動体61は、本体64及びガイド体65を有する。本体64は、筒部66と被支持部67とが一体的に形成された構成を有する。筒部66は、径方向に延びる円筒状に構成されている。被支持部67は、筒部66から径方向外側に突出するように径方向に延びており、支持部63に設けられたレールに係合している。
ガイド体65は、径方向に延びており、複数の繊維束FをライナーLに案内することができる。繊維束Fの走行方向(以下、単に走行方向と言う)におけるガイド体65の上流側の部分は、筒部66の内部に設けられた不図示のベアリングを介して回転可能に支持されている。これによって、ガイド体65は、径方向に延びる回転軸A周りに回転可能となっている。走行方向におけるガイド体65の上流側の端部には、複数の繊維束Fをガイド体65に導入するための繊維束導入ガイド68が設けられている。繊維束導入ガイド68を介してガイド体65に導入された複数の繊維束Fは、走行方向におけるガイド体65の下流側の端部(先端部)から引き出され、ライナーLの周面に巻き付けられる。
(移動機構)
次に、移動体61を径方向に移動させるための移動機構70(図5参照)、及び、ガイド体65を回転軸A周りに回転させるための回転機構80(図6参照)について説明する。
まず、移動機構70について、図5を用いて説明する。移動機構70は、ガイド移動用モータ56の動力を複数の移動体61に伝達して、各移動体61を一斉に径方向に移動させる機構である。図5に示すように、移動機構70は、ガイド移動用モータ56の動力伝達方向において、上流側から順番に、駆動ギア71、移動用リングギア72、従動ギア73、駆動シャフト74、ピニオンギア75、及び、ラックギア76を有する。従動ギア73からラックギア76までは、ノズルユニット53に含まれている。従動ギア73、駆動シャフト74及びピニオンギア75は、支持体60に取り付けられている。一方、ラックギア76は、移動体61に取り付けられている。
駆動ギア71(本発明の伝達部材)は、例えば、ガイド移動用モータ56の回転軸に連結されている。駆動ギア71は、ガイド移動用モータ56の動力伝達方向においてガイド移動用モータ56と移動用リングギア72の間に配置され、且つ、移動用リングギア72の径方向外側に配置されている。駆動ギア71は、移動用リングギア72の外周面72aに形成された歯と噛み合っている。
移動用リングギア72(本発明の第1回転筒)は、筒状の部材である。移動用リングギア72の外周面72a及び内周面72bには、それぞれ複数の歯が形成されている。移動用リングギア72は、例えばポリアセタール(POM)で形成された摺動部材58を介して、フレーム部材52の後側(本発明の軸方向における一方側)の部分に回転可能に内嵌されている。移動用リングギア72は、ライナーLを挿通可能に設けられている。より具体的には、移動用リングギア72は通過穴54と同軸に設けられており、移動用リングギア72の径方向内側の空間をライナーLが通過可能となっている。移動用リングギア72の外周面72aに形成された歯には駆動ギア71が噛み合っている。また、内周面72bに形成された歯には従動ギア73が噛み合っている。
従動ギア73(本発明の第1従動部材)は、駆動シャフト74の後端部に固定されており、移動用リングギア72の内周面72bに形成された歯と噛み合っている。ピニオンギア75は、駆動シャフト74の前端部に固定されており、ラックギア76と噛み合っている。これによって、従動ギア73とピニオンギア75とが一体回転する。ラックギア76は、移動体61の被支持部67に固定されており、径方向に延びている。
ガイド移動用モータ56によって移動用リングギア72を回転させると、図5において矢印で示すように、従動ギア73が回転することでピニオンギア75が回転する。そして、ピニオンギア75とラックギア76とからなるラックアンドピニオン機構によって、ピニオンギア75の回転動作が、移動体61の径方向への移動動作(伸縮動作)に変換される。こうして、移動機構70によって、各ノズルユニット53の移動体61を一斉に径方向に移動させることができる。本実施形態では、伸縮動作が、本発明の「伸縮動作及び回転動作のうち一方」に相当する。
なお、フレーム部材52の周縁部には、ライナーLの軸方向に貫通する貫通穴52bが複数形成されている。よって、ノズルユニット53を取りつける際は、従動ギア73を貫通穴52bの前側から後側に通過させることで、従動ギア73を移動用リングギア72に噛み合わせることが可能となっている。
ここで、複数のノズルユニット53にそれぞれ含まれている複数の従動ギア73のうちいくつかの従動ギア73は、移動用リングギア72の内周面に下方から接触しており、移動用リングギア72の上側部分を下方から支持している。このような従動ギア73は、移動用リングギア72の重量を受け止めることによって、移動用リングギア72の自重によるたわみを抑制することができる。
(回転機構)
次に、回転機構80について、図6を用いて説明する。回転機構80は、ガイド回転用モータ57の動力を複数のガイド体65に伝達して、各ガイド体65をそれぞれの回転軸(図6の回転軸A参照)周りに一斉に回転させる機構である。図6に示すように、回転機構80は、ガイド回転用モータ57の動力伝達方向において、上流側から順番に、駆動ギア81、回転用リングギア82、従動ギア83、駆動シャフト84、第1ベベルギア85、第2ベベルギア86、ガイド軸87、中間ギア88、及び、回転用ギア89を有する。従動ギア83、駆動シャフト84、第1ベベルギア85及び第2ベベルギア86は支持体60に取り付けられている。一方、ガイド軸87、中間ギア88、及び、回転用ギア89は移動体61に取り付けられている。
駆動ギア81は、例えば、ガイド回転用モータ57の回転軸に連結されている。駆動ギア81は、ガイド回転用モータ57の動力伝達方向においてガイド回転用モータ57と回転用リングギア82の間に配置され、且つ、回転用リングギア82の径方向外側に配置されている。駆動ギア81は、回転用リングギア82の外周面82aに形成された歯と噛み合っている。
回転用リングギア82(本発明の第2回転筒)は、移動用リングギア72と同様の筒状の部材である。回転用リングギア82の外周面82a及び内周面82bには、それぞれ複数の歯が形成されている。回転用リングギア82は、ライナーLを挿通可能に設けられている。つまり、回転用リングギア82も通過穴54と同軸に設けられており、回転用リングギア82の径方向内側の空間をライナーLが通過可能となっている。回転用リングギア82は、例えばPOMで形成された摺動部材59を介して、フレーム部材52の前側(本発明の軸方向における他方側)の部分に回転可能に内嵌されている。回転用リングギア82の外周面82aに形成された歯には駆動ギア81が噛み合っている。また、内周面82bに形成された歯には従動ギア83が噛み合っている。
従動ギア83(本発明の第2従動部材)は、駆動シャフト84の後端部に固定されており、回転用リングギア82の内周面82bに形成された歯と噛み合っている。なお、従動ギア83は、ライナーLの周方向において、上述した従動ギア73とは異なる位置に配置されている。第1ベベルギア85は、駆動シャフト84の前端部に固定されており、第2ベベルギア86と噛み合っている。これによって、従動ギア83と第1ベベルギア85とが一体回転する。ガイド軸87は、径方向に延びるスプライン軸或いは角柱によって構成されており、トルクを伝達可能である。ガイド軸87は、移動体61の被支持部67に軸周りに回転可能に取り付けられている。ガイド軸87は、第2ベベルギア86の中央部に形成された貫通穴に挿通されている。この貫通穴に挿通されたガイド軸87は、第2ベベルギア86と一体回転するが、第2ベベルギア86に対して径方向に相対移動可能である。ガイド軸87の径方向内側の端部には、中間ギア88が固定されている。中間ギア88には、ガイド体65に固定された回転用ギア89が噛み合っている。回転用ギア89は、ガイド体65の回転軸Aと同軸のギアである。
ガイド回転用モータ57によって回転用リングギア82を回転させると、図6において矢印で示すように、従動ギア83が回転することで第1ベベルギア85が回転し、さらに第2ベベルギア86が回転する。そして、第2ベベルギア86の回転動作がガイド軸87を介して中間ギア88に伝達され、さらに回転用ギア89が回転軸A周りに回転する。これにより、ガイド体65が回転軸A周りに回転する。このようにして、回転機構80によって、各ノズルユニット53のガイド体65を一斉に回転させることができる(回転動作)。なお、移動体61が径方向に移動する際には、ガイド軸87が第2ベベルギア86の貫通穴を移動するので、移動体61の移動が妨げられることはない。本実施形態では、回転動作が、本発明の「伸縮動作及び回転動作のうち他方」に相当する。
ここで、複数のノズルユニット53にそれぞれ含まれている複数の従動ギア83のうちいくつかの従動ギア83は、回転用リングギア82の内周面に下方から接触しており、回転用リングギア82の上側部分を下方から支持している。このような従動ギア83は、回転用リングギア82の重量を受け止めることによって、回転用リングギア82の自重によるたわみを抑制することができる。
上述したように、一部の従動ギア73によって移動用リングギア72の重量が受け止められ、一部の従動ギア83によって回転用リングギア82の重量が受け止められる。ここで、一度にヘリカル巻きされる繊維束の最適な本数はライナーLの径等に応じて変わりうるので、例えば、フレーム部材52に取り付けられているノズルユニット53の数が減らされることもありうる。或いは、各ノズルユニット53が案内できる繊維束Fの本数が多くなると、フレーム部材52に取り付けられるノズルユニット53の数が減ることもありうる。このような場合、ノズルユニット53の数が減ると従動ギア73及び従動ギア83の数も減るため、移動用リングギア72及び回転用リングギア82の重量をそれぞれ受け止める部材の数が少なくなり、移動用リングギア72及び回転用リングギア82の上側部分が自重でたわみやすくなるおそれがある。そこで、ヘリカル巻きユニット50は、移動用リングギア72及び回転用リングギア82の自重によるたわみを抑制するため、以下の構成を有する。
(リングギアのたわみ抑制用の構成)
移動用リングギア72及び回転用リングギア82のたわみを抑制するための構成について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、ヘリカル巻きユニット50の上側部分の正面図である。図8は、図7のVIII−VIII断面図である。
図7に示すように、ヘリカル巻きユニット50は、ノズルユニット53とは別に(すなわち、従動ギア73及び従動ギア83とは別に)設けられた複数の支持部90を有する。支持部90は、移動用リングギア72及び回転用リングギア82を回転可能に支持する。図8に示すように、支持部90は、回転軸部材91と、支持部材92と、支持部材93とを有する。支持部90は、回転軸部材91の後端部に回転可能に取り付けられた支持部材92によって移動用リングギア72の重量を受け止め、回転軸部材91の前端部に回転可能に取り付けられた支持部材93によって回転用リングギア82の重量を受け止める。
回転軸部材91(本発明の共通支持部材)は、フレーム部材52に形成された被取付部94に着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、被取付部94とは、フレーム部材52のうち、前後方向に貫通する貫通穴94a及び回転軸部材91をネジ止めするためのネジ穴94bが形成されている部分をいうが、これに限られるものではない。被取付部94は、通過穴54の周方向(すなわち、移動用リングギア72及び回転用リングギア82の周方向)において複数並べて配置されている。回転軸部材91は、貫通穴94aに挿通されており、ボルト202によってネジ止めされている。貫通穴94aの径は、ノズルユニット53の従動ギア73を挿通させるための貫通穴52b(図5参照)の径と略等しい。また、フレーム部材52には、貫通穴52bの近傍部分にもネジ穴94bが形成されている(図5参照)。言い換えると、フレーム部材52のノズルユニット53が取り付けられる部分にも、被取付部94が形成されている(図5参照)。
支持部材92(本発明の第1支持部材)は、例えば、従動ギア73と相似形状を有するギア部材である。図8に示すように、支持部材92は、上述した回転軸部材91の後端部(本発明の軸方向における一端部)に取り付けられ、軸受95を介して回転可能に支持されている。支持部材92は、移動用リングギア72の内周面に下方から接触して、移動用リングギア72を回転可能に支持している。支持部材92は、移動用リングギア72の回転に伴って従動回転する。支持部材92は、移動用リングギア72の周方向において、フレーム部材52の上側部分に取り付けられた複数のノズルユニット53の間に配置されている(図7参照)。言い換えると、支持部材92は、移動用リングギア72の周方向において、複数の従動ギア73のうち移動用リングギア72の内周面に下方から接触している複数の従動ギア73の間に配置されている。本実施形態では、2つの支持部材92が設けられている。以上のような支持部材92によって、移動用リングギア72の重量が受け止められる。
支持部材93(本発明の第2支持部材)は、従動ギア83と相似形状を有するギア部材である。支持部材93は、回転軸部材91の前端部(本発明の軸方向における他端部)に取り付けられ、軸受96を介して回転可能に支持されている(図8参照)。支持部材93は、回転用リングギア82の内周面に下方から接触して、回転用リングギア82を回転可能に支持している。支持部材93は、回転用リングギア82の回転に伴って従動回転する。支持部材93は、回転用リングギア82の周方向において、複数の従動ギア83のうち回転用リングギア82の内周面に下方から接触している複数の従動ギア83の間に配置されている。本実施形態では、2つの支持部材93が設けられている。以上のような支持部材93によって、回転用リングギア82の重量が受け止められる。
支持部材92、93は、回転軸部材91に取り付けられて同軸上に配置されている。上述したように、支持部材92は回転軸部材91の後端部に取り付けられ、支持部材93は回転軸部材91の前端部に取り付けられている。つまり、支持部材92と支持部材93は、回転軸部材91の軸方向において、フレーム部材52を挟んで互いに反対側に配置されている。これにより、移動用リングギア72及び回転用リングギア82の荷重は、回転軸部材91の軸方向における両側部分にバランス良く加えられる。
(ノズルユニットの取外し及び支持部の取付)
ノズルユニット53の取外し作業及び支持部90の取付作業の例について、図9を用いて説明する。図9(a)は、複数のノズルユニット53のうち1つが取り外された後のヘリカル巻きユニット50の状態を示す図である。図9(b)は、図9(a)に示すヘリカル巻きユニット50に対し、支持部90がフレーム部材52に追加で取り付けられた状態を示す図である。
まず、作業者は、ノズルユニット53をフレーム部材52に固定しているボルト201(図5参照)を取り外し、ノズルユニット53を前方に移動させて取り外す。なお、本実施形態では、図9(a)の紙面右側部分に記載のノズルユニット53が取り外されている。ノズルユニット53には従動ギア73及び従動ギア83が含まれているので、1つのノズルユニット53が取り外されたとき、従動ギア73及び従動ギア83も1つずつ取り外された状態になっている。また、ノズルユニット53が取り外された後の貫通穴52bには、何も挿通されていない状態になっている(図9(a)の紙面右側部分参照)。このような状態においても、支持部材92が移動用リングギア72の内周面に下方から接触し、支持部材93が回転用リングギア82の内周面に下方から接触している。これにより、支持部材92によって移動用リングギア72の重量が受け止められ、回転用リングギア82の重量は支持部材93によって受け止められている。
次に、作業者は、何も挿通されていない状態の貫通穴52bに回転軸部材91(図8参照)を挿通し、ボルト202(図8参照)でネジ止めする。さらに、作業者は、回転軸部材91の後端部に支持部材92を装着し、前端部に支持部材93を装着する。これにより、ノズルユニット53の代わりに取り付けられた支持部材92、93によって、移動用リングギア72、回転用リングギア82をそれぞれ支持することができる(図9(b)の紙面右側部分参照)。
ここで、上述したように、駆動ギア71は移動用リングギア72の径方向外側に配置されており、駆動ギア81は回転用リングギア82の径方向外側に配置されている(図5、図6参照)。このため、駆動ギア71、81がそれぞれ移動用リングギア72、回転用リングギア82の径方向内側に配置されている場合と比べて、駆動ギア71、81によってノズルユニット53の取外し作業等が妨げられることが抑制される。
以上のように、従動ギア73とは別の支持部材92によっても、移動用リングギア72を支持することができる。これにより、移動用リングギア72を支持する従動ギア73の数が少ない場合でも、移動用リングギア72の重量を受け止めることができる。したがって、移動用リングギア72の自重によるたわみを抑制することができる。
また、従動ギア73及び支持部材92の両方が回転する部材であるため、同じ種類の部材を従動ギア73及び支持部材92に適用することができる。したがって、装置の構成を単純化できる。
また、支持部材92は軸受95を介して回転可能に支持されている。したがって、軸受を介さずに支持部材93が支持されている構成と比べて、摩擦による動力損失や発熱等を抑制できる。
また、駆動ギア71が移動用リングギア72の径方向外側に配置されている。したがって、駆動ギア71によってノズルユニット53の取外し作業等が妨げられることを回避できる。
また、従動ギア73がノズルユニット53に含まれている。このような構成では、ノズルユニット53がフレーム部材52から取り外されたときに、従動ギア73の数が減る。このような構成であっても、本発明では、支持部材92によって移動用リングギア72の重量を受け止めることができるので、移動用リングギア72の自重によるたわみを抑制できる。
また、移動用リングギア72を支持する複数の従動ギア73の間を埋めるように、支持部材92が配置されている。これにより、支持部材92と従動ギア73とをバランス良く配置することができる。したがって、移動用リングギア72を安定的に支えることができる。
また、フレーム部材52が、複数の被取付部94を有する。これにより、フレーム部材52に取り付けられる支持部材92の数を調整することができる。したがって、必要に応じて支持部材92の数を増やすことで、移動用リングギア72の重量をより確実に受け止めることができる。
また、ヘリカル巻きユニット50は、回転用リングギア82と、回転用リングギア82の内周面に下方から接触する支持部材93とをさらに備える。これにより、移動用リングギア72及び回転用リングギア82の自重によるたわみを抑制しつつ、ガイド体65の伸縮動作及び回転動作の両方を行うことができる。
また、回転軸部材91の後端部に支持部材92が支持され、回転軸部材91の前端部に支持部材93が支持されている。これにより、回転軸部材91の後端部には支持部材92を介して移動用リングギア72の荷重が加わり、前端部には支持部材93を介して回転用リングギア82の荷重が加わる。つまり、回転軸部材91の軸方向における両側に荷重をバランス良く加えることができる。したがって、回転軸部材91が傾くことを抑制できる。
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
(1)前記実施形態において、フレーム部材52に9個のノズルユニット53が取り付けられているものとしたが、これには限られない。例えば、図10(a)に示すように、3個のノズルユニット53がライナーLの周方向において等角度間隔で配置されていても良い。このような構成において、移動用リングギア72の上側部分及び回転用リングギア82の上側部分は、図10(a)に示すように、それぞれ各4個の支持部材92、93で回転可能に支持されていても良い。なお、支持部材92、93の数はこれに限定されない。また、前記実施形態においては、ライナーLの周方向において9個のノズルユニット53が40度間隔で配置されているものとしたが、これには限られない。例えば、図10(b)に示すように、ライナーLの周方向において8個のノズルユニット53が45度間隔で配置されても良い。つまり、ライナーLの周方向において、ネジ穴52a及び貫通穴52bが、それぞれ45度間隔でフレーム部材52にさらに形成されていても良い(図10(a)参照)。なお、ノズルユニット53は、必ずしも全周に亘って配置されていなくても良く、また、必ずしも等角度間隔で配置されていなくても良い。
(2)前記までの実施形態において、支持部材92、93の両方が回転軸部材91に回転可能に支持されているものとしたが、これには限られない。つまり、2つの回転軸部材に支持部材が1つずつ取り付けられていても良い。例えば、図11に示すように、ヘリカル巻きユニット50aにおいて、回転軸部材91の代わりに筒状の固定部材101がフレーム部材52に固定されていても良い。そして、固定部材101の後側部分に回転軸部材102が、前側部分に回転軸部材103がそれぞれ回転可能に取り付けられていても良い。この変形例では、回転軸部材102は、軸受104を介して固定部材101に回転可能に支持されている。回転軸部材103は、軸受105を介して固定部材101に回転可能に支持されている。また、回転軸部材102に支持部材106が取り付けられ、回転軸部材103に支持部材107が取り付けられている。
(3)前記までの実施形態において、支持部材92、93は同軸上に配置されているものとしたが、これには限られない。例えば、ライナーLの周方向において、支持部材92の配置位置と支持部材93の配置位置は、互いに異なっていても良い。言い換えると、支持部材92及び支持部材93は、それぞれ別々の回転軸部材に回転可能に取り付けられていても良い。
(4)前記までの実施形態において、移動用リングギア72と噛み合う従動ギア73、及び、回転用リングギア82と噛み合う従動ギア83は、ノズルユニット53に含まれているものとしたが、これには限られない。すなわち、従動ギア73、83は、フレーム部材52に取り付けられていても良い。例えば、図12(a)に示すように、ヘリカル巻きユニット50bの移動機構70bにおいて、フレーム部材52に従動ギア73が取り付けられており、従動ギア73に駆動シャフト111が固定されていても良い。ノズルユニット53bにおいて、トルク伝達用の伝達シャフト112がピニオンギア75に固定されていても良い。駆動シャフト111と伝達シャフト112とが、カップリング113によって一体回転可能に連結されていても良い。また、図12(b)に示すように、回転機構80bにおいて、フレーム部材52に従動ギア83が取り付けられており、従動ギア83に駆動シャフト121が固定されていても良い。ノズルユニット53bにおいて、トルク伝達用の伝達シャフト122が第1ベベルギア85に固定されていても良い。駆動シャフト121と伝達シャフト122とが、カップリング123によって一体回転可能に連結されていても良い。このような構成では、ノズルユニット53bがフレーム部材52から取り外されても、従動ギア73、83の数は減らない。したがって、移動用リングギア72及び回転用リングギア82のたわみを効果的に抑制できる。
(5)前記(4)の変形例において、図12(b)に示すように、ライナーLの周方向において、従動ギア73の配置位置と従動ギア83の配置位置が異なるものとなっているが、これには限られない。すなわち、従動ギア73と従動ギア83が同軸上に配置されるように構成されていても良い。以下、図13を用いて説明する。例えば、ヘリカル巻きユニット50cにおいて、フレーム部材131に貫通穴132が形成されている。貫通穴132には回転軸部材133が挿通されており、フレーム部材131に固定されている。回転軸部材133の後端部には、移動機構70cの従動ギア73が回転可能に取り付けられている。回転軸部材133の前端部には、回転機構80cの従動ギア83が回転可能に取り付けられている。また、フレーム部材131には、例えば貫通穴132よりも径方向内側に別の貫通穴134が形成されている。貫通穴134には、ノズルユニット53cの駆動シャフト74が挿通されている。駆動シャフト74の後端部には、中間ギア135が固定されている。中間ギア135は、従動ギア73と噛み合っている。これにより、移動用リングギア72の回転に伴い従動ギア73が回転すると、ガイド移動用モータ56(図3参照)の動力が中間ギア135を介して駆動シャフト74に伝達される。同様に、駆動シャフト84の後端部には、中間ギア136が固定されている。中間ギア136は、従動ギア83と噛み合っている。これにより、回転用リングギア82の回転に伴い従動ギア83が回転すると、ガイド回転用モータ57(図3参照)の動力が中間ギア136を介して駆動シャフト84に伝達される。
(6)前記(5)の変形例のさらなる変形例として、図14に示すように、ヘリカル巻きユニット50c1が以下の構成を備えていても良い。すなわち、ノズルユニット53c1は、中間ギア136及び駆動シャフト84の代わりに、上記(4)の変形例で説明した伝達シャフト122を有していても良い。つまり、回転機構80c1において、伝達シャフト122が用いられても良い。また、回転機構80c1において、回転軸部材141の前面に駆動シャフト142が固定されていても良い。駆動シャフト142と伝達シャフト122は、カップリング123を介して一体回転可能に連結されていても良い。
(7)前記までの実施形態において、移動用リングギア72の内周面に複数の歯が形成され、支持部材92が移動用リングギア72の複数の歯と噛み合うものとしたが、これには限られない。例えば、移動用リングギア72の代わりに、内周面に歯が形成されていない移動用リング部材が設けられていても良い。支持部材92の代わりに、ローラ状の支持部材(不図示)が設けられていても良い。同様に、従動ギア73の代わりに従動ローラ(不図示)が設けられていても良い。回転用リングギア82、支持部材93、従動ギア83についても同様である。
(8)前記までの実施形態において、支持部材92、93は回転部材であるものとしたが、これには限られない。例えば、図15に示すように、ヘリカル巻きユニット50dにおいて、支持部材151、152が、フレーム部材52に固定されており且つ移動用リングギア153、回転用リングギア154に対してそれぞれ摺動可能であっても良い。以下、具体的に説明する。移動用リングギア153の内周面153aは、複数の歯が形成された後側部分153bと、歯が形成されていない前側部分153cとを有する。従動ギア73(図15においては不図示)は、後側部分153bに噛み合うように配置されている。支持部材151は、移動用リングギア153に対して摺動可能な摺動部材である。支持部材151は、フレーム部材52に固定された固定部材155の後端部に回転不能に取り付けられ、移動用リングギア153の内周面153aの前側部分153cに下方から接触している。これにより、移動用リングギア153の回転によって従動ギア73を従動回転させることができるとともに、支持部材151によって移動用リングギア153の重量を受け止めることができる。同様に、回転用リングギア154の内周面154aは、複数の歯が形成された前側部分154bと、歯が形成されていない後側部分154cとを有する。支持部材152は、固定部材155の前端部に回転不能に取り付けられ、回転用リングギア154の内周面154aの後側部分154cに下方から接触している。
(9)前記までの実施形態において、ノズルユニット53はフレーム部材52に対して着脱可能であるものとしたが、これには限られない。ノズルユニットは、必ずしも着脱可能に構成されていなくても良い。
(10)前記までの実施形態において、支持部材92、93は、フレーム部材52の被取付部94に着脱可能に取り付けられているものとしたが、これには限られない。すなわち、支持部材92、93は、必ずしも着脱可能でなくてもよい。
(11)前記までの実施形態において、通過穴44はライナーLを水平方向に通過させることが可能に形成されているものとしたが、これには限られない。すなわち、通過穴44の軸方向は、水平方向に対して傾きを有していても良い。
(12)前記までの実施形態において、ノズルユニット53は移動機構70及び回転機構80の両方を有するものとしたが、これには限られない。すなわち、ノズルユニットは、移動機構70及び回転機構80のうち一方のみを有していても良い。なお、ノズルユニットが回転機構80のみを有している場合、回転用リングギア82が本発明の第1回転筒に相当する。ガイド回転用モータ57が本発明の第1駆動源に相当する。従動ギア83が本発明の第1従動部材に相当する。支持部材93が本発明の第1支持部材に相当する。駆動ギア81が本発明の伝達部材に相当する。回転動作が、本発明の「伸縮動作及び回転動作のうち一方」に相当する。