本発明は一般には、ジペプチドリピート(DPR)タンパク質の存在に伴う、特にその凝集型形態の存在に伴う疾患及び状態を検出するための免疫療法方法及び非侵襲的方法に関連する。より具体的には、本発明は、選択されたヒトドナー集団から得られる配列情報に基づいて作製された組換えヒト由来モノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントで、そのようなDPR(具体的にはポリ−グリシン−アラニン(Gly−Ala;GA)−DPR、ポリ−グリシン−プロリン(Gly−Pro;GP)−DPR、ポリ−グリシン−アルギニン(Gly−Arg;GR)−DPR、ポリ−プロリン−アルギニン(Pro−Arg;PR)−DPR及び/又はポリ−プロリン−アラニン(Pro−Ala;PA)−DPR)及びそれらの抗原に結合することができる組換えヒト由来モノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントに関連する。本発明の組換えヒト由来モノクローナル抗体、並びに、その合成誘導体及び生物工学誘導体は好都合には、C9ORF72−ジペプチドリピート(DPR)を形成する、伸長したヘキサヌクレオチドリピートを有する変化したC9ORF72に特異的に結合することによって特徴づけられる。実施例において示されるように、本発明の組換え抗体は、DPR及び/又は病理学的C9ORF72を、偽陽性を与えることなく検出するための診断試薬として非常に特異的であり、また、可変領域及びCDRを少なくともコードする配列がそれぞれヒト起源であることのために、そして、ヒト身体における元の抗体の成熟のために、治療剤として有効かつ安全であると予想され得ることは無理のないことである。
加えて、本発明は、患者の処置において単独で、或いは、DPRに伴う疾患、障害及び/又は症状のために利用される他の薬剤との組合せでのどちらでも使用されるための本明細書中に記載されるようなヒト由来モノクローナル抗体(そのどのような生物工学誘導体であっても含む)に関連し、好ましくは、本発明の抗体は、さらなる副作用を抑制する薬剤と同時に投与されるために、或いは、副作用を抑制する薬剤の投与前又は投与後において連続して投与されるために設計される。これに関連して、本発明の抗DPR抗体は好ましくは、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。本発明の1つの実施形態において、本発明のヒト由来モノクローナル抗体と、DPRに伴う疾患、障害及び/又は症状のために利用される1つ又は複数の薬物との両方を含む医薬組成物が提供される。
I.定義
別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂及び2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。
用語「a」又は「an」を伴う実体はそのような実体の1つ又は複数を示すことに留意しなければならない;例えば、「an antibody」(抗体)は1つ又は複数の抗体を表すことが理解される。そのようなものとして、用語「a」(又は「an」)、 「one or more」(1つ又は複数)及び 「at least one」(少なくとも1つ)は、本明細書中では交換可能に使用され得る。
具体的に別途示されないならば、用語「DPR」、すなわち、「ジペプチドリピート」タンパク質は、2アミノ酸の繰り返し単位、具体的には、遺伝子における伸長したヘキサヌクレオチドリピートに起因する2アミノ酸の繰り返し単位を特に示すために本明細書中では使用される。用語「DPR」及び「DPRs」はまた、DPRのすべてのタイプ及び形態、例えば、GA、GR、GP、PA、PRなどを総称的に示すために使用される。下記では、本発明は主に、FLTD又はALSに罹患する患者の脳組織に見出されるC9ORF72−DPRタンパク質において一般に認められるGA、好ましくは15回のリピートを有するGA(GA15)、GP、好ましくは15回のリピートを有するGP(GP15)、GR、好ましくは15回のリピートを有するGR(GR15)、又は、PR、好ましくは15回のリピートを有するPR(PR15)、又は、PA、好ましくは15回のリピートを有するPA(PA15)のいずれかを含むDPR、或いは、それらのいずれかからなるDPRを特異的に認識する抗体に関して記載される。しかしながら、抗C9ORF72−DPR抗体により、好ましい実施形態が表されるにもかかわらず、本発明は一般に、抗DPRタンパク質抗体及び対応する実施形態を提供する。したがって、原理的には、本明細書中に開示され、また、実施例及び図において例示される実施形態及び対応する特徴はどれも、抗C9ORF72−DPRのみに対して明確に適用可能でない場合を除き、一般にはどのような抗DPRタンパク質抗体にも当てはまることもまた意味されることが強調される。
DPR関連疾患についての別の一例が脊髄小脳失調症36型であり、これは、成人発症の歩行運動失調及び四肢運動失調、下肢痙縮、構音障害、筋攣縮、舌萎縮並びに反射亢進によって特徴づけられる緩徐進行性の神経変性障害で、常染色体優性小脳失調症1型(ADCA1型)のサブタイプの1つである。一部の罹患者はまた、難聴を発症することがあり得る;例えば、Garcia−Murias他、Brain 135(2012)、1423〜1435を参照のこと。脊髄小脳失調症36型は、染色体20p13上のNOP56遺伝子におけるイントロンのGGCCTGヘキサヌクレオチドリピートのヘテロ接合性伸長によって引き起こされることが示された;例えば、下記を参照のこと:Garcia−Murias他、Brain 135(2012)、1423〜1435;Ikeda他、Neurology 79(2012)、333〜341;Kobayashi他、Am.J.Hum.Gene.89(2011)、121〜130。
用語「C9ORF72」は、具体的に別途示さないならば、第9染色体のオープンリーディングフレーム72(C9ORF72)の変化した様々な形態を示す。用語「C9ORF72」はまた、C9ORF72−ジペプチドリピート(DPR)をもたらすC9ORF72ヘキサヌクレオチド伸長を一般に特定するために使用される。したがって、この用語はまた、C9ORF72−DPRを示すために使用される。用語「C9ORF72」はまた、C9ORF72のすべてのタイプ及び形態(例えば、変異したC9ORF72など)を総称的に示すために使用される。用語C9ORF72の前における加えられた文字は、その特定のオルソログが由来する生物を示すために使用され、例えば、hC9ORF72がヒトC9ORF72について使用され、又は、mC9ORF72がマウス起源について使用される。
本明細書中に開示される抗DPR抗体は好ましくは、C9ORF72−ジペプチドリピート(DPR)及びそのエピトープと結合する。例えば、本明細書中には、病理学的に変化したC9ORF72種又はそのフラグメント、すなわち、イントロンの伸長したC9ORF72ヘキサヌクレオチドリピートのC9ORF72転写物から非通常的に翻訳されるジペプチドリピート、並びに、C9ORF72−DPR又はそのフラグメントの凝集型形態と特異的に結合する抗体が開示される。C9ORF72−DPRの(病理学的に)凝集した/凝集物という用語は、上述の形態を特に示すために本明細書中では使用される。(病理学的な)「凝集型形態」又は「凝集物」という用語は、本明細書中で使用される場合、イントロンの伸長したC9ORF72ヘキサヌクレオチドリピートのC9ORF72転写物から生じるC9ORF72の誤った翻訳/病理学的な翻訳に起因する蓄積又はクラスター形成の産物を記述する。これらの凝集物、蓄積物又はクラスター形態は、C9ORF72−DPRタンパク質及び/又はそのフラグメントの両方である場合があり、C9ORF72−DPRタンパク質及び/又はそのフラグメントの両方から実質的になる場合があり、或いは、C9ORF72−DPRタンパク質及び/又はそのフラグメントの両方からなる場合がある。本明細書中で使用される場合、C9ORF72−DPRと「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、又は「優先的に結合する」抗体に対する言及は、他の無関係なタンパク質とは結合しない抗体を示す;例えば、図4を参照のこと。図4及び実施例5において示されるように、本発明の抗体は、対らせん状細線維(PHF)−タウ、TAU、トランス活性応答DNA結合タンパク質43(TDP−43)、トランスチレチン(TTR)、全長アミロイド前駆体タンパク質(flAPP)及び/又はハンチンチン(HTT)からなる群から選択される無関係なアミロイド形成タンパク質を実質的に認識しない。
一例において、本明細書中に開示されるC9ORF72抗体はDPR及び/又はC9ORF72−DPR或いはそれらのエピトープと結合することができ、かつ、他のタンパク質についてはバックグランドの約2倍を超える結合を示さない。DPR及び/又はC9ORF72−DPRタンパク質変異体と「特異的に結合する」、又は「選択的に結合する」抗体は、C9ORF72−DPRタンパク質のすべての変異体とは結合しない抗体、すなわち、少なくとも1つの他のC9ORF72配座異性体とは結合しない抗体を示す。例えば、本明細書中には、DPRを形成する伸長したヘキサヌクレオチドリピートを示すC9ORF72の様々な形態にインビトロにおいて、また、C9ORF72に伴う疾患を有する患者、又は、C9ORF72に伴う疾患を発症する危険性がある患者から得られる組織において両方で優先的に結合することができる抗体が開示される;例えば、実施例8及び図7を参照のこと。
本発明の抗DPR抗体はヒト対象から単離されているので、本発明のDPR抗体はまた、そのような抗体が実際にヒト対象によって最初に発現されたものであり、例えば、ヒト免疫グロブリンを発現するファージライブラリーによって生じる合成構築物でないこと、また、ヒト免疫グロブリンレパートリーの一部を発現する遺伝子導入動物において生じる異種抗体でないことを強調するために(なお、それらはこれまで、ヒト様抗体を提供するために試みるための1つの一般的な方法を表していた)、「ヒト自己抗体」又は「ヒト由来抗体」と呼ばれる場合がある。他方で、本発明のヒト由来抗体は、プロテインAカラム又は親和性カラムによって精製されることがあるヒト血清抗体そのものから区別するために、合成(的)、組換え(型)及び/又は生物工学(的)であると示される場合がある。
本発明の治療的取り組みの具体的な利点の1つが、本発明の抗体は、DPRタンパク質及びその凝集型形態の出現を示す疾患、又は、DPRタンパク質及びその凝集型形態に関連づけられる疾患の徴候を何ら有しない健康なヒト対象から得られるB細胞又はBメモリー細胞に由来し、したがって、ある程度の確率で、凝集型のDPRタンパク質(例えば、C9ORF72−DPRなど)に関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することができる、或いは、そのような臨床的に明白な疾患の出現の危険性を減らすことができる、或いは、そのような臨床的に明白な疾患の発症又は進行を遅らせることができるという事実にある。
典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞変異、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による標的DPR分子に対する高親和性結合における選択性及び有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。そのような細胞は生体内において、例えば、ヒト体内において、自己免疫学的反応又はアレルギー反応の意味で、関連した又は他の生理学的なタンパク質又は細胞構造によって活性化されていないという認識はまた、臨床試験段階を首尾よく生き残るという相当に増大した可能性がこれにより意味されるので、非常に医学的に重要である。いわば、効率、許容性及び耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防用抗体又は治療用抗体の前臨床開発及び臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト由来の抗DPR抗体は、治療剤としてのその標的構造特異的な効率と、副作用のその低下した可能性との両方により、成功のその臨床的可能性を著しく増大させることが予想され得る。
対照的に、cDNAライブラリー又はファージディスプレーに由来する抗体は、人為的な分子であり、例えば、依然としてマウス起源であり、したがって、ヒト身体に対しては外来であるヒト化抗体などである。したがって、治療用抗体の臨床上の有用性及び効力が、抗体の効力及び薬物動態学に影響を及ぼし得る、また、ときには重大な副作用を引き起こし得る抗薬物抗体(ADA)の産生によって制限される可能性がある;例えば、Igawa他、MAbs.3(2011)、243〜252を参照のこと。具体的には、ヒト化抗体、すなわち、近年のヒト抗体作製技術により作製される抗体は、ヒト由来抗体(例えば、本発明のヒト由来抗体など)とは対照的に、抗体応答を誘発しやすく、これらの抗体は、例えば、ファージディスプレーに由来するこれらのヒト様抗体、例えば、アダリムマブなどは、ADA産生を誘発することが報告されている;例えば、Mansour、Br.J.Ophthalmol 91(2007)、274〜276、及び、Igawa他、MAbs.3(2011)、243〜252を参照のこと。したがって、望まれない免疫応答を生じさせる傾向がないヒト由来抗体は、患者のためには、ライブラリー又はディスプレイに由来する人為的な分子よりも有益である。
用語「ペプチド」は、その意味の範囲内において、(時には本明細書中では交換可能に使用されることがある)用語「ポリペプチド」及び用語「タンパク質」を包含することが理解される。同様に、タンパク質及びポリペプチドのフラグメントもまた包含され、タンパク質及びポリペプチドのフラグメントは本明細書中では「ペプチド」と称される場合がある。それにもかかわらず、用語「ペプチド」は好ましくは、少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、より好ましくは少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、さらにより好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、特に好ましくは少なくとも25個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。加えて、本発明によるペプチドは典型的には、最大でも100個の連続するアミノ酸、好ましくは80個未満の連続するアミノ酸、より好ましくは50個未満の連続するアミノ酸を有する。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1つだけの「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に連結されるモノマー(アミノ酸)から構成される分子を示す。用語「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(1つ又は複数)を示し、生成物の特定の長さを示さない。したがって、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は、2個以上のアミノ酸の鎖(1つ又は複数)を示すために使用される任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義の範囲に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、又は、これらの用語のどれとも交換可能に使用される場合がある。
用語「ポリペプチド」はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、及び、知られている保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断による誘導体化、又は、天然に存在しないアミノ酸による修飾を含めて、当該ポリペプチドの発現後修飾の産物を示すことが意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源に由来してもよく、又は、組換え技術によって産生されてもよいが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成による様式を含めて、どのような様式において作製されてもよい。
本発明のポリペプチドは、約3個以上のアミノ酸のサイズ、5個以上のアミノ酸のサイズ、10個以上のアミノ酸のサイズ、20個以上のアミノ酸のサイズ、25個以上のアミノ酸のサイズ、50個以上のアミノ酸のサイズ、75個以上のアミノ酸のサイズ、100個以上のアミノ酸のサイズ、200個以上のアミノ酸のサイズ、500個以上のアミノ酸のサイズ、1,000個以上のアミノ酸、又は、2,000個以上のアミノ酸のサイズである場合がある。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有する場合があるが、ポリペプチドはそのような構造を必ずしも有さない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれたとして示される。規定された三次元構造を有するのではなく、むしろ、非常に多数の異なる立体配座を取ることができるポリペプチドは、折り畳まれていないとして示される。本明細書中で使用される場合、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基又はアスパラギン残基)の酸素含有側鎖又は窒素含有側鎖を介して当該タンパク質に結合する少なくとも1つの炭水化物成分に連結されるタンパク質を示す。
「単離された」ポリペプチドあるいはそのフラグメント、変異体又は誘導体によって、その天然の環境に存在していないポリペプチドが意図される。特定の精製レベルは何ら要求されない。例えば、単離されたポリペプチドはそのネイティブ環境又は天然の環境から取り出され得る。宿主細胞において発現される組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質は、任意の好適な技術によって分離されているか、分画されているか、あるいは、部分的又は実質的に精製されているネイティブポリペプチド又は組換えポリペプチドのように、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。
「組換え(の)ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質」は、組換えDNA技術によって産生される、すなわち、所望されるペプチドを含む融合タンパク質をコードする外因性の組換えDNA発現構築物によって形質転換される細胞(微生物細胞又は哺乳動物細胞)から産生される、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を示す。ほとんどの細菌培養物において発現されるタンパク質又はペプチドは典型的にはグリカンを含まないであろう。酵母において発現されるタンパク質又はペプチドは、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるグリコシル化パターンを有する場合がある。
本発明のポリペプチドとして、前記ポリペプチドのフラグメント、誘導体、アナログ又は変異体、及びそれらの合成または生物学的変異体、並びに、それらの任意の組合せも含まれる。用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」及び「アナログ」には、天然ペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するアミノ酸配列を有するペプチド及びポリペプチドが含まれる。用語「十分に類似する」は、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメイン及び/又は共通の機能的活性を有するように、第2のアミノ酸配列に対する十分な数又は最小数の同一アミノ酸残基又は等価なアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味する。例えば、共通の構造的ドメインを含むアミノ酸配列で、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は少なくとも約100%が同一であるアミノ酸配列は、十分に類似するとして本明細書中では定義される。好ましくは、変異体は、本発明の好ましいペプチドのアミノ酸配列に、特に、変化したC9ORF72タンパク質(病理学的C9ORF72−DPRsやDPR単独など)、あるいは、それらのどちらかの変異体、誘導体又はアナログのアミノ酸配列に十分に類似しているであろう。そのような変異体は一般に、本発明のペプチドの機能的活性を保持する。変異体には、1つ又は複数のアミノ酸欠失、アミノ酸付加及び/又はアミノ酸置換によって生来型ペプチド及びwt型ペプチドとはアミノ酸配列においてそれぞれ異なるペプチドが含まれる。これらは、天然に存在する変異体、ならびに、人為的に設計された変異体である場合がある。
さらに、用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」及び「アナログ」は、本発明の抗体又は抗体ポリペプチドに言及するときには、対応する生来型の結合性分子、抗体又はポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持するどのようなポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメントには、本明細書中の他のところで議論される具体的な抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解的フラグメント、ならびに、欠失フラグメントが含まれる。本発明の抗体及び抗体ポリペプチドの変異体には、上記で記載されるようなフラグメント、及び、アミノ酸の置換、欠失又は挿入に起因する変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。変異体は天然に存在している場合があり、又は、天然に存在していない場合がある。天然に存在していない変異体は、この技術分野において知られている変異誘発技術を使用して作製される場合がある。変異体ポリペプチドは、保存的又は非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失又はアミノ酸付加を含む場合がある。DPRタンパク質特異的な結合性分子の誘導体、例えば、本発明の抗体及び抗体ポリペプチドの誘導体は、生来型ポリペプチドに対して見出されないさらなる特徴を示すように変化させられているポリペプチドである。例には、融合タンパク質が挙げられる。変異体ポリペプチドは、本明細書中では「ポリペプチドアナログ」として示される場合もある。本明細書中で使用される場合、結合性分子もしくはそのフラグメント、抗体又は抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化される1つ又は複数の残基を有する当該ポリペプチドを示す。また、「誘導体」として、20個の標準的アミノ酸の1つ又は複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するそのようなペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシproリンがproリンの代わりに使用されてもよい;5−ヒドロキシリシンがリシンの代わりに使用されてもよい;3−メチルヒスチジンがヒスチジンの代わりに使用されてもよい;ホモセリンがセリンの代わりに使用されてもよい;また、オルニチンがリシンの代わりに使用されてもよい。
分子の類似性及び/又は同一性の決定:
2つのペプチドの間における「類似性」が、一方のペプチドのアミノ酸配列を第2のペプチドの配列に対して比較することによって求められる。一方のペプチドのアミノ酸が同一であるか、又は、保存的なアミノ酸置換であるならば、一方のペプチドのアミノ酸は第2のペプチドの対応するアミノ酸と類似している。保存的な置換には、Dayhoff,M.O.編、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5(National Biomedical Research Foundation、Washington,D.C.(1978))に記載される置換、及び、Argos、EMBO J.8(1989)、779〜785に記載される置換が含まれる。例えば、下記の群の1つに属するアミノ酸は、保存的な変化又は置換を表す:−Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;−Cys、Ser、Tyr、Thr;−Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;−Lys、Arg、His;−Phe、Tyr、Trp、His;及び、−Asp、Glu。
2つのポリヌクレオチドの間における「類似性」が、一方のポリヌクレオチドの核酸配列を所与のポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。一方の核酸が同一であるならば、又は、核酸がコード配列の一部である場合、当該核酸を含むそれぞれのトリプレットが、同じアミノ酸又は保存的なアミノ酸置換をコードするならば、一方のポリヌクレオチドの核酸は第2のポリヌクレオチドの対応する核酸と類似している。
2つの配列の間におけるパーセント同一性又はパーセント類似性の決定が好ましくは、Karlin及びAltschul(1993)(Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〜5877)の数学的アルゴリズムを使用して達成される。そのようなアルゴリズムが、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)において利用可能なAltschul他(1990)(J.Mol.Biol.215:403〜410)のBLASTnプログラム及びBLASTpプログラムに組み込まれる。
パーセント同一性又はパーセント類似性の決定が、NCBIのウエブページで推奨されるような、また、特定の長さ及び組成の配列に関しての「BLAST Program Selection Guide」に記載されるような、BLASTヌクレオチド検索についてはBLASTnプログラムの標準的なパラメーター、BLASTタンパク質検索についてはBLASTpプログラムの標準的なパラメーターを用いて行われる。
BLASTポリヌクレオチド検索が、BLASTnプログラムを用いて行われる。
一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが1000に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが7に設定される場合があり、これらはNCBIのウエブページにおいて短い配列(20塩基未満)について推奨される通りである。より長い配列については、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが11に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Match/mismatch Scores」が、1、−2に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが直線に設定される場合がある。フィルター及びマスキングパラメーターについては、「Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Species−specific repeats」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「DUST Filter Settings」にチェックが入れられる場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。一般に、「Search for short nearly exact matches」がこの点に関して使用される場合があり、これにより、上記で示された設定のほとんどが提供される。この点に関してのさらなる情報は、NCBIのウエブページで公開される「BLAST Program Selection Guide」に見出される場合がある。
BLASTタンパク質検索は、BLASTpプログラムを用いて行われる。一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが「3」に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Matrix」ボックスが「BLOSUM62」に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが「Existence:11 Extension:1」に設定される場合があり、「Compositional adjustments”ボックスが“Conditional compositional score matrix adjustment”に設定される場合がある。フィルター及びマスキングパラメーターについては、“Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。
両方のプログラムの改変、例えば、検索された配列の長さに関しての改変は、NCBIのウエブページにおいてHTML版及びPDF版で公開される「BLAST Program Selection Guide」における推奨に従って行われる。
ポリヌクレオチド:
用語「ポリヌクレオチド」は、1つだけの核酸ならびに複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子又は核酸構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)又はプラスミドDNA(pDNA)を示す。ポリヌクレオチドは、従来型のホスホジエステル結合又は非従来型の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるアミド結合など)を含む場合がある。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在するいずれかの1つ又は複数の核酸セグメント(例えば、DNAフラグメント又はRNAフラグメント)を示す。「単離された」核酸又はポリヌクレオチドによって、そのネイティブ環境から取り出されている核酸分子(DNA又はRNA)が意図される。例えば、ベクターに含有される、抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、又は、溶液における(部分的又は実質的に)精製されたポリペプチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のポリヌクレオチドのインビボRNA転写物又はインビトロRNA転写物が含まれる。本発明による単離されたポリヌクレオチド又は核酸にはさらに、合成的に作製されるそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位又は転写ターミネーターなどである場合があり、あるいは、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位又は転写ターミネーターなどを包含する場合がある。
本明細書中で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGA又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないにもかかわらず、コード領域の一部であると見なされる場合があるが、近接配列はどれも、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコード領域を、1つのポリヌクレオチド構築物において、例えば、1つのベクターに存在させることができ、又は、別個のポリヌクレオチド構築物において、例えば、別個の(異なる)ベクターに存在させることができる。さらには、ベクターはどれも、1つだけのコード領域を含有する場合があり、又は、2つ以上のコード領域を含む場合があり、例えば、1つのベクターが免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードする場合がある。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、結合性分子、抗体、あるいは、そのフラグメント、変異体又は誘導体をコードする核酸に融合されて、又は融合されずに、異種のコード領域をコードする場合がある。異種のコード領域には、限定されないが、特殊化されたエレメント又はモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチド又は異種の機能的ドメインなどが含まれる。
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは通常、1つ又は複数のコード領域と操作可能に連係させられるプロモーターならびに/あるいは他の転写制御エレメント又は翻訳制御エレメントを含む場合がある。操作可能連係は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)のためのコード領域が、当該遺伝子産物の発現を当該調節配列の影響下又は制御下に置くような様式で1つ又は複数の調節配列と連係させられるときにおいてである。2つのDNAフラグメント(例えば、ポリペプチドコード領域及びそれと連係させられるプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導により、所望される遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じるならば、また、これら2つのDNAフラグメントの間における連結の性質が、遺伝子産物の発現を導く発現調節配列の能力を妨げないか、又は、転写されるDNAテンプレートの能力を妨げないならば、「操作可能に連係させられる」又は「操作可能に連結される」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を達成することができたならば、ポリペプチドをコードする核酸と操作可能に連係させられているであろう。プロモーターは、DNAの実質的な転写を所定の細胞においてのみ導く細胞特異的なプロモーターである場合がある。プロモーターのほかに、他の転写制御エレメントを、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルを、細胞特異的な転写を導くためにポリヌクレオチドと操作可能に連係させることができる。好適なプロモーター及び他の転写制御領域が本明細書中に開示される。
様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメント(前初期プロモーター、イントロンAとの併用で)、シミアンウイルス40由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメント(初期プロモーター)、ならびに、レトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメントなど(これらに限定されない)が含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物の遺伝子(例えば、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ−グロビンなど)に由来する転写制御領域ならびに遺伝子発現を真核生物細胞において制御することができる他の配列が含まれる。さらなる好適な転写制御領域には、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、ならびに、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロン又はインターロイキンによって誘導可能であるプロモーター)が含まれる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン及び翻訳終結コドン、ならびに、ピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、すなわち、IRES、これはまたCITE配列とも称する)が含まれるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌ペプチド又はシグナルペプチドをコードし、これにより、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を導くさらなるコード領域と連係させられる場合がある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を横断する成長途中のタンパク質鎖の移行が開始されると、成熟型タンパク質から切断されるシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドは一般に、当該ポリペプチドのN末端に融合されるシグナルペプチドで、当該ポリペプチドの分泌型形態又は「成熟型」形態をもたらすために、完全なポリペプチド又は「全長」のポリペプチドから切断されるシグナルペプチドを有することを承知している。特定の実施形態において、生来型のシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖又は免疫グロブリン軽鎖のシグナルペプチドが使用されるか、又は、操作可能に連係させられるポリペプチドの分泌を導く能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。代替では、異種の哺乳動物シグナルペプチド又はその機能的誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型のリーダー配列がヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列により置き換えられる場合がある。
「結合性分子」は、本発明に関連して使用される場合、主として抗体及びそのフラグメントに関し、しかし、ジペプチドリピート(DPR)タンパク質(好ましくは、変化したC9ORF72、特に好ましくは(病理学的に変化したC9ORF72−DPRs)に結合する他の非抗体分子を示す場合もあり、これらには、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合複合体(MHC)分子、シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質(HSP)など)、ならびに、細胞・細胞接着分子(例えば、カドヘリンスーパーファミリー、インテグリンスーパーファミリー、C型レクチンスーパーファミリー及び免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーなど)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、明瞭性だけのために、また、本発明の範囲を限定することなく、下記の実施形態のほとんどが、治療剤及び診断剤を開発するための好ましい結合性分子を代表する抗体及び抗体様分子に関して議論される。
抗体:
用語「抗体」及び用語「免疫グロブリン」は本明細書中では交換可能に使用される。抗体又は免疫グロブリンは、重鎖の可変ドメインを少なくとも含み、かつ、通常の場合には重鎖及び軽鎖の可変ドメインを少なくとも含む結合性分子である。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)を参照のこと)。
より詳しく下記で議論されるように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することができる様々な幅広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を伴って分類されることを理解するであろう。抗体の「クラス」を、IgG、IgM、IgA、IgG又はIgEとしてそれぞれ決定するのが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などが十分に特徴づけられており、また、機能的な特殊化を与えることが知られている。これらのクラス及びアイソタイプのそれぞれの改変された型が、本開示を考慮して当業者には容易に認識可能であり、従って、本発明の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本発明の範囲内であり、下記の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量がおよそ23,000ダルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量が53,000〜70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。これら4つの鎖は典型的には、軽鎖が、「Y」字型の口部から始まり、可変領域の終わりまで続く腕木として重鎖を支える「Y」字型の立体配置でジスルフィド結合によって結合される。
軽鎖はカッパ又はラムダ(κ、λ)のどちらかとして分類される。それぞれの重鎖クラスがカッパ軽鎖又はラムダ軽鎖のどちらかと結合し得る。一般には、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、又は、遺伝子操作された宿主細胞のどれかによって生じるとき、軽鎖及び重鎖は互いに共有結合により結合し、2つの重鎖の「テール」部分が共有結合性のジスルフィド連結又は非共有結合性の連結によって互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列が、Y字型の立体配置の二叉末端におけるN末端から、それぞれの鎖の底部におけるC末端にまで延びる。
軽鎖及び重鎖はともに、構造的及び機能的に相同的である領域に分けられる。用語「定常」及び「可変」が機能的に使用される。これに関連して、軽鎖部分及び重鎖部分の両方の可変ドメイン(VL及びVH)により、抗原認識及び特異性が決定されることが理解されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)により、様々な重要な生物学的性質、例えば、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合及び補体結合などが与えられる。慣例によって、定常領域ドメインの番号づけは、これらのドメインが抗体の抗原結合部位又はアミノ末端からより遠位になるにつれて大きくなる。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメイン及びCLドメインが実際に、重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
上記で示されるように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ、このエピトープと特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメイン及びVHドメイン、又は、抗体の相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この四元抗体構造が、Y字型のそれぞれのアームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位がVH鎖及びVL鎖のそれぞれにおける3つのCDRによって規定される。DPRsに特異的に結合するための十分な構造を含有する抗体又は免疫グロブリンフラグメントはどれも、本明細書中では交換可能に、「結合フラグメント」又は「免疫特異性フラグメント」として示される。
実施例11において記載されるように、また、図13に示されるように、本発明の抗体は、IgG(好ましくはIgG1)として哺乳動物細胞(特にCHO−S細胞)で発現させられたとき、大きい完全性を軽鎖(VL)部分及び重鎖(VH)部分の両方に関して明らかにし、これに対して、有意な混入物又はタンパク質分解産物が何ら検出され得なかった。
天然に存在する抗体において、抗体は、抗体がその三次元立体配置を水性環境において取るような抗原結合ドメインを形成するために特異的に配置されるアミノ酸の短い不連続な配列である6つの超可変領域(これらは時には、それぞれの抗原結合ドメインに存在する「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる)を含む。「CDR」には、分子間の変動性をそれほど示さない4つの比較的保存された「フレームワーク」領域又は「FR」が近接する。これらのフレームワーク領域は主としてβ−シートの立体配座を取り、CDRにより、このβ−シート構造をつなぐ、また、時にはこのβ−シート構造の一部を形成するループが形成される。したがって、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有結合性の相互作用によって正しい配向で配置することを提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインにより、免疫反応性抗原におけるエピトープに対して相補的な表面が規定される。この相補的な表面は、抗体がその同種エピトープに非共有結合的に結合することを促進させる。CDR及びフレームワーク領域を構成するアミノ酸が、それらは正確に規定されているので、当業者によっていずれかの所与の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域についてそれぞれ容易に特定され得る;「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat,E.他編、U.S.Department of Health and Human Services(1983)、及び、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917を参照のこと。これらの全体が参照によって本願明細書に組み込まれる。
この技術分野において使用される、及び/又は受け入れられる用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書中で使用されるような当該用語の定義は、反するようなことが明示的に言及される場合を除き、すべてのそのような意味を包含することが意図される。具体的な一例が、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域の中に見出される不連続な抗原結合部位を記述するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域が、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって、また、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917によって記載されており(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)、この場合、それらの定義は、互いに比較されたときにはアミノ酸残基の重複又はサブセットを包含する。それにもかかわらず、抗体又はその変異体のCDRを示すためのどちらかの定義の適用は、本明細書中で定義され、かつ使用されるようなこの用語の範囲内であることが意図される。上記で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として下記において表Iに示される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列及びサイズに依存して変わる。当業者は、どの残基が、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられる抗体のヒトIgGサブタイプの特定の超可変領域又はCDRを含むかを常法により決定することができる。
表I:CDRの定義
1
1表IにおけるすべてのCDR定義の番号表記は、Kabat他によって示される番号表記慣例に従う(下記を参照のこと)。
Kabat他はまた、どのような抗体に対しても適用可能である可変ドメイン配列のための番号表記システムを定義した。当業者は、「Kabat番号表記」のこのシステムを、配列そのものを超える実験的データに何ら頼ることなく、どのような可変ドメイン配列に対してでも一義的に割り当てることができる。本明細書中で使用される場合、「Kabat番号表記」は、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号表記システムを示す。別途指定される場合を除き、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体における具体的なアミノ酸残基位置の番号表記に対する言及は、Kabat番号表記システムに従っており、しかしながら、Kabat番号表記システムは理論的であり、本発明のどの抗体にも等しく適用されない場合がある。例えば、最初のCDRの位置に依存して、その後のCDRはどちらかの方向でずれる場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体又は誘導体には、ポリクローナル性、モノクローナル性、多特異性、ヒト型、ヒト化型、霊長類化型、マウス化型又はキメラ型の抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメイン又はVHドメインのどちらかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、ならびに、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。scFV分子がこの技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリン分子又は抗体分子は、免疫グロブリン分子のどのようなタイプのものも(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、どのようなクラスのものも(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はどのようなサブクラスのものも可能である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、五価構造を有するIgM又はその誘導体ではない。特に、本発明の具体的な適用において、とりわけ治療的使用において、IgMはIgG及び他の二価抗体又は対応する結合性分子よりも有用でない。これは、IgMは、その五価構造のために、また、親和性成熟化の欠如のために、非特異的な交差反応性及び非常に低い親和性を示すことが多いからである。特に好ましい実施形態において、本発明の抗体はポリクローナル抗体でない。すなわち、本発明の抗体は、血漿の免疫グロブリンサンプルから得られる混合物ではなく、むしろ、1つの特定の抗体種から実質的になる。
単鎖抗体を含めて、抗体フラグメントは、可変領域(1つ又は複数)を単独で、あるいは、下記の全体又は一部分との組合せで含む場合がある:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメイン。また、本発明には、可変領域(1つ又は複数)と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインとのどのような組合せをも含むDPR結合フラグメントが含まれる。本発明の抗体又はその免疫特異性フラグメントは、鳥類及び哺乳動物を含めて、どのような動物起源に由来してもよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ又はニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域が起源において(例えば、サメからの)コンドリクトイド(condricthoid)である場合がある。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、ヒトから単離されるヒトモノクローナル抗体である。場合により、ヒト抗体のフレームワーク領域がデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列に従ってアライメントされ、それらと一致させられる;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(Cambridge、英国)によって提供されるVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を参照のこと。例えば、真の生殖系列配列から潜在的に逸脱すると見なされるアミノ酸は、クローニング過程の期間中に組み込まれるPCRプライマー配列に起因し得ると思われる。人為的に作製されたヒト様抗体、例えば、ファージディスプレーされた抗体ライブラリー又は異種マウスに由来する単鎖抗体フラグメント(scFV)などと比較した場合、本発明のヒトモノクローナル抗体は、(i)代理動物の免疫応答ではなく、ヒトの免疫応答を使用して得られること、すなわち、抗体が、ヒト体内におけるその関連する立体配座における天然のDPRs及びDPRタンパク質(好ましくはC9ORF72−DPRs)に対する応答で作製されていること、(ii)個体を保護しているか、あるいは、DPRs(好ましくはC9ORF72−DPRs)の存在について少なくとも有意であること、そして、(iii)抗体がヒト起源であるので、自己抗原に対する交差反応性の危険性が最小限に抑えられることによって特徴づけられる。したがって、本発明によれば、用語「ヒトモノクローナル抗体」、「ヒトモノクローナル自己抗体」及び「ヒト抗体」などは、ヒト起源である、すなわち、ヒト細胞(例えば、B細胞又はそのハイブリドーマなど)から単離されているか、あるいは、cDNAがヒト細胞(例えば、ヒトメモリーB細胞)のmRNAから直接クローン化されているDPR結合性分子を示すために使用される。ヒト抗体は、アミノ酸置換が、例えば、結合特性を改善するために、当該抗体においてたとえ行われるにしても、依然として「ヒト」である。この点において、ヒト化抗体あるいはヒト様抗体と異なり(上記の説明も参照のこと)、本発明のヒト由来抗体はヒト体内でみられるCDR(s)を含むことによって特徴付けられ、それ故に免疫原性であるリスクを実質的に有しない。従って、本発明の抗体は、可変軽鎖及び重鎖の片方又は両方の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくは3つ全てのCDRが、ここで説明されるヒト抗体由来であれば、依然としてヒト由来であるとされる。
1つの実施形態において、本発明のヒト由来抗体は、天然の存在する抗体と比較して異種の領域を含み、例えば、フレームワーク領域におけるアミノ酸置換、可変領域に外因的に融合される定常領域、及び、C末端又はN末端における異なるアミノ酸などを含む。
ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体、あるいは、1つ又は複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子組換えであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物に由来する抗体(下記において、また、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapati他)に記載されるような抗体)は、本発明の真のヒト抗体から区別するためにヒト様抗体として示される。例えば、ヒト様抗体の重鎖及び軽鎖の対形成、例えば、ファージディスプレーから典型的には単離される合成抗体及び半合成抗体などは、その対形成が元々のヒトB細胞において生じていたような元の対形成を必ずしも反映していない。したがって、先行技術において一般に使用されるような組換え発現ライブラリーから得られるFabフラグメント及びscFvフラグメントは、免疫原性及び安定性に対するすべての可能な関連した影響に関して人為的であると見なされる。対照的には、本発明は、その治療的有用性及びヒトにおけるその寛容性によって特徴づけられる、選択されたヒト対象から得られる単離された親和性成熟している抗体を提供する。
本明細書中で使用される場合、用語「齧歯類化(された)抗体」又は「齧歯類化(された)免疫グロブリン」は、本発明のヒト抗体に由来する1つ又は複数のCDRと、齧歯類抗体配列に基づくアミノ酸の置換及び/又は欠失及び/又は挿入を含有するヒトフレームワーク領域とを含む抗体を示す。齧歯類を示すとき、好ましくは、マウス及びラットに起源を有する配列が使用され、この場合、そのような配列を含む抗体は、「マウス化された」又は「ラット化された」としてそれぞれ示される。CDRを提供するヒト免疫グロブリンは「親」又は「アクセプター」と呼ばれ、フレームワークの変化を提供する齧歯類抗体は「ドナー」と呼ばれる。定常領域は存在している必要はないが、定常領域が存在するならば、定常領域は通常、齧歯類抗体の定常領域と実質的に同一であり、すなわち、少なくとも約85%〜90%が同一であり、好ましくは約95%以上が同一である。したがって、いくつかの実施形態において、全長のマウス化されたヒト重鎖免疫グロブリン又は軽鎖免疫グロブリンは、マウスの定常領域、ヒトのCDR、及び、いくつかの「マウス化する」アミノ酸置換を有する実質的にはヒトのフレームワークを含有する。典型的には、「マウス化抗体」は、マウス化された可変軽鎖及び/又はマウス化された可変重鎖を含む抗体である。例えば、マウス化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非マウス性であるので、典型的なキメラ抗体を包含しないであろう。「マウス化」のプロセスによって「マウス化」されている改変された抗体は、CDRを提供する親抗体と同じ抗原に結合し、かつ、通常の場合、マウスにおける免疫原性が、親抗体と比較してより低い。「マウス化」抗体に関しての上記説明は、他の「齧歯類化」抗体について、例えば、ラットの配列がマウスの代わりに使用される「ラット化抗体」などについて同様に当てはまる。
本明細書中で使用される場合、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央及び/又は下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインあるいはそれらの変異体又はフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、及び、CH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、及び、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖;又は、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む場合がある。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインのすべて又は一部)を欠く場合がある。上記で示されるように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において異なるように改変され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
本明細書中に開示されるある特定の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体において、マルチマーの1つのポリペプチド鎖の重鎖部分が、当該マルチマーの第2のポリペプチド鎖における重鎖部分と同一である。代替では、本発明の重鎖部分を含有するモノマーは同一でない。例えば、それぞれのモノマーが、異なる標的結合部位を含む場合があり、これにより、例えば、二重特異性抗体又はディアボディを形成する。
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、ただ1つのポリペプチド鎖から構成され(例えば、scFv)、潜在的なインビボ治療適用及び診断適用のために細胞内で発現させられることになる(細胞内抗体)。
本明細書中に開示される診断方法及び処置方法において使用されるための結合性ポリペプチドの重鎖部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分が、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含む場合がある。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG4分子に由来するキメラなヒンジを含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、軽鎖部分はVLドメイン又はCLドメインの少なくとも一方を含む。
抗体のためのペプチドエピトープ又はポリペプチドエピトープの最小サイズは約4個〜5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチドエピトープ又はポリペプチドエピトープは好ましくは、少なくとも7個のアミノ酸を含有し、より好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を含有し、最も好ましくは少なくとも約15個〜約30個の間のアミノ酸を含有する。CDRは抗原性のペプチド又はポリペプチドをその三次形態で認識することができるので、エピトープを含むアミノ酸は連続している必要はなく、場合により、同じペプチド鎖に存在していないことさえある。本発明において、本発明の抗体によって認識されるペプチドエピトープ又はポリペプチドエピトープは、DPR(例えば、C9ORF72−DPRに見出されるようなGA15など)の少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、又は、約15個〜約30個の間の連続するアミノ酸又は非連続なアミノ酸の配列を含有する。言い換えれば、本発明の抗体又はその生物工学誘導体は好ましくは、2つの異なるアミノ酸(X及びX’)からなるジペプチド(XXX及びXXX’;XaaXaa’)のリピート数が、例えば、3〜50であるDPRを、好ましくは10〜40であるDPRを、より好ましくは15〜30であるDPRを、最も好ましくは15であるDPRを認識する。したがって、本発明の抗体又はその生物工学誘導体によって認識されるエピトープ又は抗原は、リピート数が15であるDPRからなるならば、一般には(XX’)15と称される場合がある。
「特異的に結合する」又は「特異的に認識する」によって、これらは本明細書中では交換可能に使用されており、結合性分子、例えば、抗体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及び、この結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間における何らかの相補性を伴うことが一般に意味される。この定義によれば、抗体は、抗体がランダムな無関係なエピトープに結合するであろうよりも容易にその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的な親和性を限定するために本明細書中では使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープについて、抗体「B」よりも大きい親和性を有すると見なされる場合があり、又は、抗体「A」は、関連したエピトープ「D」について有するよりも大きい特異性によりエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
存在する場合、抗原との抗体の用語「免疫学的結合特性」又は他の結合特性はその文法的形態のすべてで、抗体の特異性、親和性、交差反応性及び他の結合特性を示す。
「優先的に結合する」によって、結合性分子、例えば、抗体が、関連したエピトープ、類似したエピトープ、相同的なエピトープ又は類似的なエピトープに結合するであろうよりも容易にエピトープに特異的に結合することが意味される。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連のエピトープと交差反応することがあるとしても、関連のエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が大きいであろう。
非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも小さい解離定数(KD)により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1の抗原と優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
別の非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも小さいオフ速度(k(off))により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、5×10−2sec−1以下、10−2sec−1以下、5×10−3sec−1以下又は10−3sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりDPRsあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、5×10−4sec−1以下、10−4sec−1以下、5×10−5sec−1以下又は10−5sec−1以下、5×10−6sec−1以下、10−6sec−1以下、5×10−7sec−1以下又は10−7sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりDPRタンパク質あるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。特に好ましい態様では、DPRは、C9ORF72(即ち、C9ORF72−DPR)に関連したDPRである。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、103M−1sec−1以上、5×103M−1sec−1以上、104M−1sec−1以上又は5×104M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりDPRあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、105M−1sec−1以上、5×105M−1sec−1以上、106M−1sec−1以上又は5x106M−1sec−1以上又は107M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりDPRあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。1つの実施形態において、結合性分子は、103M−1sec−1以上、5×103M−1sec−1以上、104M−1sec−1以上又は5×104M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりC9ORF72−DPRあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、105M−1sec−1以上、5×105M−1sec−1以上、106M−1sec−1以上又は5x106M−1sec−1以上又は107M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりC9ORF72−DPRあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合をある程度阻止する程度にそのエピトープに優先的に結合するならば、そのエピトープに対する参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害が、この技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、競合的ELISAアッセイによって求められてもよい。抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%競合的に阻害すると言われる場合がある。
本明細書中で使用される場合、用語「親和性」は、結合性分子(例えば、免疫グロブリン分子)のCDRとの個々のエピトープの結合の強さの尺度を示す(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988)、27頁〜28頁を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「アビディティー」は、免疫グロブリンの集合と抗原との複合体の全般的な安定性、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的結合強度を示す(例えば、Harlow、29頁〜34頁を参照のこと)。アビディティーは、特異的なエピトープとの集団内の個々の免疫グロブリン分子の親和性に、及びまた、免疫グロブリン及び抗原の結合価の両方に関連づけられる。例えば、二価のモノクローナル抗体と、高度に反復するエピトープ構造を有する抗原(例えば、ポリマーなど)との間における相互作用が、高いアビディティーの1つであろう。抗原についての抗体の親和性又はアビディティーを、いずれかの好適な方法(例えば、Berzofsky他、「Antibody−Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press New York、NY(1984);Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company、New York、NY(1992)を参照のこと)及び本明細書中に記載される方法を使用して実験的に求めることができる。抗原についての抗体の親和性を測定するための一般的な技術には、ELISA、RIA及び表面プラズモン共鳴が含まれる。特定の抗体−抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)のもとで測定されるならば異なる可能性がある。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメーター(例えば、KD、IC50)の測定は好ましくは、抗体及び抗原の標準化された溶液ならびに標準化された緩衝液を用いて行われる。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体はまた、それらの交差反応性に関して記載又は指定される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「交差反応性」は、抗体(これは1つの抗原について特異的である)が第2の抗原と反応する能力、すなわち、2つの異なる抗原性物質の間における関連度の度合いを示す。したがって、抗体は、その形成を誘導したエピトープとは異なるエピトープに結合するならば、交差反応性である。交差反応性エピトープは一般に、誘導用エピトープと同じ相補的な構造的特徴の多くを含有しており、また、場合により、実際には元のエピトープよりも良好にはまる場合がある。
例えば、ある種の抗体は、関連しているが、同一でないエピトープと結合するという点で、例えば、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法及び本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%及び少なくとも50%の同一性を有するエピトープと結合するという点で、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法及び本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満及び50%未満の同一性を有するエピトープと結合しないならば、交差反応性をほとんど有していないか、又は全く有していないと言われる場合がある。抗体は、ある特定のエピトープのどのような他のアナログ、オルソログ又はホモログとも結合しないならば、そのエピトープについて「非常に特異的」であると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体はまた、DPR及び/又は、変異したC9ORF72種(C9ORF72−DPRsを示す)及び/又はそのフラグメントに対するそれらの結合親和性に関して記載又は指定される場合がある。好ましい結合親和性には、解離定数つまりKdが5×10−2M未満、10−2M未満、5×10−3M未満、10−3M未満、5×10−4M未満、10−4M未満、5×10−5M未満、10−5M未満、5×10−6M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満、10−11M未満、5×10−12M未満、10−12M未満、5×10−13M未満、10−13M未満、5×10−14M未満、10−14M未満、5×10−15M未満又は10−15M未満である結合親和性が含まれる。
上記で示されたように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造及び三次元立体配置が広く知られている。本明細書中で使用される場合、用語「VHドメイン」には、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインが含まれ、用語「CH1ドメイン」には、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインが含まれる。CH1ドメインはVHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側である。
本明細書中で使用される場合、用語「CH2ドメイン」には、従来の番号表記スキームを使用して、例えば、抗体のおよそ残基244から残基360にまで広がる重鎖分子の一部分が含まれる(残基244〜残基360、Kabat番号表記システム;残基231〜残基340、EU番号表記システム;Kabat EA他(前掲書中)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対形成しないという点で独特である。むしろ、2つのN−連結している分岐した炭水化物鎖が、無傷の生来型IgG分子の2つのCH2ドメインの間に置かれる。CH3ドメインがIgG分子のCH2ドメインからC末端にまで広がり、およそ108残基を含むこともまた広く記録されている。
本明細書中で使用される場合、用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH2ドメインにつなぐ重鎖分子の一部分が含まれる。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、かつ、柔軟であり、したがって、2つのN末端の抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの異なったドメイン(上部、中央及び下部のヒンジドメイン)に細分化することができる(Roux他、J.Immunol.161(1998)、4083〜4090を参照のこと)。
本明細書中で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」には、2つのイオウ原子の間に形成される共有結合性の結合が含まれる。アミノ酸のシステインは、ジスルフィド結合を形成することができるか、又は、第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1領域及びCL領域がジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖が、Kabat番号表記システムを使用して239位及び242位(226位又は229位、EU番号表記システム)に対応する位置での2つのスルフィド結合によって連結される。
本明細書中で使用される場合、用語「連結される」、「融合される」又は「融合」は交換可能に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲート化又は組換え手段を含むどのような手段によってでも、2つ以上の要素又は成分を一緒につなぐことを示す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチド・オープンリーディングフレーム(ORF)を、これらの元々のORFの正しい翻訳読み枠を維持する様式で、連続したより長いORFを形成するためにつなぐことを示す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である(そのようなセグメントは通常、自然界ではそのようにつながれない)。したがって、読み枠が、融合されたセグメントの全体にわたって連続にされるにもかかわらず、これらのセグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的又は空間的に隔てられる場合がある。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドが、インフレーム融合される場合があり、しかし、「融合された」CDRが、連続したポリペプチドの一部として共翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域又はさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって隔てられる場合がある。
用語「発現」は、本明細書中で使用される場合、遺伝子が生化学物質(例えば、RNA又はポリペプチド)をもたらすプロセスを示す。このプロセスには、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現及び安定的発現の両方を含めて、細胞内における遺伝子の機能的な存在のどのような顕在化も含まれる。このプロセスには、限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小さいヘアピンRNA(shRNA)、小さい干渉性RNA(siRNA)又は何らかの他のRNA産物への遺伝子の転写、及び、ポリペプチドへのmRNAの翻訳が含まれる。最終的な所望される産物が生化学物質であるならば、発現には、そのような生化学物質及び何らかの前駆体を生じさせることが含まれる。遺伝子の発現により、「遺伝子産物」がもたらされる。本明細書中で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、又は、転写物から翻訳されるポリペプチドのどちらもが可能である。本明細書中に記載される遺伝子産物にはさらに、転写後修飾(例えば、ポリアデニル化)を伴う核酸、又は、翻訳後修飾(例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、及び、タンパク質分解的切断など)を伴うポリペプチドが含まれる。
本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、対象又は患者から得られる任意の生物学的材料を示す。1つの態様において、サンプルは、血液、腹腔液、CSF、唾液又は尿を含むことができる。別の態様において、サンプルは、全血、血漿、血清、血液サンプルから富化されるB細胞、及び、培養された細胞(例えば、対象からのB細胞)を含むことができる。サンプルにはまた、神経組織を含む生検サンプル又は組織サンプルが含まれ得る。さらに他の態様において、サンプルは、細胞全体及び/又は細胞の溶解物を含むことができる。血液サンプルをこの技術分野において知られている方法によって集めることができる。
疾患:
別途言及される場合を除き、用語「障害」及び「疾患」は本明細書中では交換可能に使用され、対象、動物、単離された器官、組織又は細胞/細胞培養物における望まれない任意の生理学的変化を含む。
前頭側頭葉変性症(FTLD)は、脳の前頭葉及び側頭葉における萎縮に伴う病理発生である。加えて、FTLD患者の50%がまた、陽性の家族歴を有することが示され、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と比較された。既に上記で記載されたように、病理発生の共通した根本的な原因は、FTLD患者及びALS患者のC9ORF72に位置するヘテロ接合性の伸長したヘキサヌクレオチドリピートであるようである。具体的には、2アミノ酸の生じる繰り返し単位(ジペプチドリピート、DPR)が示された。
しかしながら、2アミノ酸の繰り返し(DPR)を生じさせる伸長したヘキサヌクレオチドリピートがまた、いくつかの他の疾患及び/又は障害でも報告されている。これらの疾患には、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、FTLD−ALS及び/又は脊髄小脳失調症36型、並びに、それらにおいて伴う症状が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の抗体はDPRに結合することができること、具体的には、FTLD患者の組織切片におけるC9ORF72−DPRに結合することができることが示されているので(例えば、実施例12及び図14を参照のこと)、ヒト由来抗体及びその生物工学誘導体は、FTLD、また、DPRに伴う他の疾患及び/又は障害、並びに、それらの症状の処置及び診断の両方において有用である。具体的には、疾患の進行を調節することにおける本発明の抗体のインビトロ及びインビボでの治療可能性が、細胞に基づくモデルにおいて、又は、選択されたC9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長マウスモデルにおいてそのどちらでもそれぞれ評価される;例えば、実施例14及び実施例15を参照のこと。
したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明の様々な抗体、これらの抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、DPRに伴う疾患の予防的処置及び/又は治療的処置のための医薬組成物又は診断組成物を調製することのために、疾患進行及び/又は処置応答をモニターすることのために、また、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、FTLD−ALS及び/又は脊髄小脳失調症36型を含む、DPRアミロイドーシスに伴う疾患を診断することのために使用される。
実施例12及び実施例13、並びに、図14及び図15において示されるように、本発明の抗体はFTLD患者における病原性のC9ORF72−ジペプチドリピートタンパク質凝集物に結合する。したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明の様々な抗体、これらの抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、C9ORF72−DPRに伴う疾患の予防的処置及び/又は治療的処置のための医薬組成物又は診断組成物を調製することのために、疾患進行及び/又は処置応答をモニターすることのために、また、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はFTLD−ALS、並びにそれらに伴う症状を含む、C9ORF72−DPR凝集物に伴う疾患を診断することのために使用される。
処置:
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」又は「処置」は治療的処置及び予防的又は防止的な対策の両方を示し、この場合、その目的が、望まれない生理学的変化又は障害(例えば、糖尿病の発症など)を防止すること又は抑制すること(緩和すること)である。有益な臨床結果又は所望される臨床結果には、検出可能であるか、又は検出不能であるかにかかわりなく、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩速化、疾患状態の改善又は緩和、及び、寛解(部分的又は全体的を問わず)が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の予想された生存と比較して、生存を延ばすことを意味することができる。処置を必要としている人々には、状態又は障害を既に有する人々ならびに状態又は障害を有する傾向がある人々、あるいは、状態又は障害の発現が防止されなければならない人々が含まれる。
別途言及される場合を除き、用語「薬物」、「医薬」又は「医薬品」は本明細書中では交換可能に使用され、下記のすべてを包含するものとするが、それに限定されない:(A)体内使用又は体外使用のための物品、医薬及び調製物、ならびに、ヒト又は他の動物のどちらかの疾患の診断、治療、緩和、処置又は防止のために使用されることが意図されるあらゆる物質又は物質の混合物;ならびに、(B)ヒト又は他の動物の身体の構造又はどのような機能に対してでも影響を及ぼすことが意図される(食物以外)の物品、医薬及び調製物;ならびに(C)条項(A)及び条項(B)において指定されるあらゆる物品の成分としての使用のために意図される物品。用語「薬物」、「医薬」又は「医薬品」は、1つ又は複数の「薬剤」、「化合物」、「物質」又は「(化学的)組成物」をフィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして、また、何らかの他の関連では、他の医薬的に不活性な賦形剤もまた、フィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして含有するか、あるいは、「薬物」、「医薬」又は「医薬品」の容易な輸送、崩壊、解離、溶解及び生物学的利用性を、ヒト又は他の動物の体内の意図された標的場所(例えば、皮膚、胃内又は腸内)において保証する、ヒト又は他の動物のどちらかでの使用のために意図される調製物の完全な処方を包含するものとする。用語「薬剤」、「化合物」又は「物質」は本明細書中では交換可能に使用され、より具体的な関連では、すべての薬理学的に活性な薬剤、すなわち、本発明の方法によって所望の生物学的又は薬理学的な効果を誘発するか、あるいは、そのような可能な薬理学的効果を誘発することができることについて研究又は試験される薬剤を包含するものとするが、これらに限定されない。
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」によって、診断、予後、防止又は治療が望まれるあらゆる対象、特に哺乳動物対象、例えば、ヒト患者が意味される。
医薬用キャリア:
医薬的に許容されるキャリア及び投与経路を、当業者に知られている対応する文献から選ぶことができる。本発明の医薬組成物は、この技術分野において広く知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472);Vaccine Protocols、第2版(Robinson他、Humana Press、Totowa、New Jersey、米国、2003);Banga、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems、第2版(Taylor and Francis(2006)、ISBN:0−8493−1630−8)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野では広く知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、広く知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与を種々の方式によって行うことができる。例には、医薬的に許容されるキャリアを含有する組成物を、経口方法、鼻腔内方法、直腸方法、局所的方法、腹腔内方法、静脈内方法、筋肉内方法、皮下方法、真皮下方法、経皮的方法、クモ膜下腔内方法及び頭蓋内方法を介して投与することが含まれる。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤及び等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液又は他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpH及び等張性状態に調節される。経口投与用の医薬組成物、例えば、単一ドメイン抗体分子(例えば、「ナノボディー(商標)」)などもまた、本発明において想定される。そのような経口配合物は、錠剤、カプセル、粉末、液体又は半固体の形態である場合がある。錠剤は、固体のキャリア、例えば、ゼラチン又はアジュバントなどを含む場合がある。直腸投与又は膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある(O’Hagan他、Nature Reviews,Drug Discovery 2(9)(2003)、727〜735もまた参照のこと)。様々なタイプの投与のために好適である配合物に関するさらなる指針を、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985)及び対応する更新版)において見出すことができる。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer、Science 249(1990)、1527〜1533を参照のこと。
II.本発明の抗体
本発明は一般には、ヒト由来抗DPR抗体(好ましくは抗C9ORF72−DPR抗体)及び抗原結合フラグメント、並びに生物工学的誘導体に関連し、この場合、これらは好ましくは、実施例において例示される抗体について概略されるような免疫学的結合特性及び/又は生物学的性質を明らかにする。本発明によれば、DPRについて特異的であるヒトモノクローナル抗体が、健康なヒト対象のプールからクローン化された。しかしながら、本発明の別の態様では、ヒト抗DPRモノクローナル抗体はDPR凝集に伴う疾患及び/又は障害の症状を示す患者からもクローン化され得る。
本発明に従って行われた実験の過程において、DPR結合に対して当初スクリーニングされた培養ヒトメモリーB細胞の馴化培地に存在する組換えIgG抗体が、DPRsに対する、また、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む、他のタンパク質に対するそれらの結合能について評価された。実施例3〜7及び図2〜6を参照のこと。このスクリーニングにおいてDPRタンパク質に結合することができ、しかし、他のタンパク質のどれにも結合することができないB細胞上清のみが、抗体クラス及び軽鎖サブクラスの決定を含めて、さらなる分析のために選択された。選択されたB細胞はその後、抗体クローニングのために処理された。実施例1及び12並びに図14を参照のこと。
簡単に記載すると、クローニング方法は、選択されたB細胞からのメッセンジャーRNAの抽出、RT−PCRによる逆転写、PCRによる抗体コード領域の増幅、プラスミドベクターへのクローニング及び配列決定を行うことにある。選択されたヒト抗体がその後、HEK293細胞又はCHO細胞における組換え発現及び精製によって産生され、続いて、ヒトDPRタンパク質と結合するそれらの能力について特徴づけられた。様々な試験の組合せにより、例えば、HEK293細胞又はCHO細胞における抗体の組換え発現、そして、ヒトDPRタンパク質に対するそれらの結合特異性の引き続いた特徴づけ、ならびに、その病理学的に変異した形態、及び/又は凝集した形態に対するそれらの弁別的な結合により、DPRについて非常に特異的であり、かつ、DPRタンパク質、例えばC9ORF72−DPRsの病理学的に凝集した形態を弁別的に認識し、それらと選択的に結合するヒト抗体が今回初めてクローン化されたことが確認された。場合により、マウスキメラ抗体もまた、本発明のヒト抗体の可変ドメインに基づいて作製された。
したがって、本発明は一般には、組換えのヒト由来モノクローナル抗DPR抗体ならびにDPR結合フラグメント、合成及び生物工学的誘導体及び変異体に関連する。本発明の1つの実施形態において、抗体はヒトC9ORF72−DPRsと結合することができる。
本発明の1つの実施形態において、抗体は、C9ORF72のGAリピート、GPリピート、GRリピート、PRリピート及びPAリピートについては実施例において使用されるようなDPRタンパク質又はDPRペプチド(リピート数が約10〜20であり、好ましくは15である)と結合する;例えば、実施例8及び実施例9、並びに、図7及び図8を参照のこと。DPRタンパク質はDPRのみから本質的になる場合があり、或いは、DPRをより大きいポリペプチドの内部に、例えば、C9ORF72での第1エクソンにおけるGAリピート又はGPリピートのようにN末端、C末端又は間に含む場合がある。
さらには、実施例12及び実施例13において明らかにされるように、また、図14及び図15に示されるように、本発明のヒト由来のモノクローナルNI−308.18F7抗DPR抗体、NI−308.15O7抗DPR抗体、NI−308.5G2抗DPR抗体及びNI−308.4M1抗DPR抗体は好ましくは、病理学的な変異型及び/又は凝集型のC9ORF72−DPRに特異的に結合し、かつ、生理学的形態でのC9ORF72−DPRを実質的に認識しないことにおいて特徴づけられる;例えば、図14及び図15を参照のこと。したがって、本発明は、診断目的及び治療目的のために特に有用である結合特性を有する一連のヒト抗DPR抗体を提供する。したがって、1つの実施形態において、本発明は、DPRタンパク質(例えば、C9ORF72−DRP)の病理学的な凝集型形態と特異的に結合することができる抗体を提供する。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、実施例において記載されるような例示的なNI−308.18F7抗体、NI−308.15O7抗体、NI−308.28G1抗体、NI−308.45C2抗体、NI−308.24E11抗体、NI−308.5G2抗体、NI−308.46E9抗体、NI−308.6B11抗体、NI−308.46F8抗体、NI−308.4M1抗体、NI−308.12A3抗体及びNI−308.16C10抗体のいずれか1つの結合特性を示す。本発明の抗DPR抗体は、生理学的なC9ORF72ではなく、むしろ、病理学的に変化したC9ORF72(例えば、C9ORF72−DPR種及びそのフラグメントなど)を優先的に認識する。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、生理学的なC9ORF72種を実質的に認識しない。
用語「実質的に認識しない」は、抗体、そのフラグメント、あるいは、特定の標的分子、特定の抗原、ならびに/又は、前記標的分子及び/もしくは抗原の特定の立体配座についての結合性分子を含む一群の分子の結合親和性を記述するために本出願において使用されるときには、前述の群の分子が、別の分子、抗原及び/又は立体配座と結合することについての前述の群の分子の結合親和性の2分の1未満である、3分の1未満である、4分の1未満である、5分の1未満である、6分の1未満である、7分の1未満である、8分の1未満である、又は9分の1未満である結合親和性により、前記の分子、抗原及び/又は立体配座と結合することを意味する。非常に多くの場合、解離定数(KD)が、結合親和性の尺度として使用される。ときには、結合親和性の尺度として使用されるのが、例えば、ELISAアッセイのような特異的アッセイでのEC50である。好ましくは、用語「実質的に認識しない」は、本出願において使用されるときには、前述の群の分子が、別の分子、抗原及び/又は立体配座に対する結合についての前述の群の前記分子の結合親和性の10分の1未満である、20分の1未満である、50分の1未満である、100分の1未満である、1000分の1未満である、又は10000分の1未満である結合親和性により、前記の分子、抗原及び/又は立体配座と結合することを意味する。
上記で記載されるように、FTLD及びALSにおけるC9ORF72の凝集の最も一般的な原因が、C9ORF72遺伝子の非コードエクソン1aと非コードエクソン1bとの間に位置するヘテロ接合性の伸長したヘキサヌクレオチドリピート(GGGGCC)に起因することが示された。具体的には、3つの代替的な読み枠でのセンス転写物の非通常的な非ATG翻訳、すなわち、伸長したヘキサヌクレオチドリピートの3つの代替的な読み枠でのセンス転写物の非通常的な非ATG翻訳により、2アミノ酸の繰り返し単位(ジペプチドリピート、DPR)をそれぞれが含む異なるポリペプチド、すなわち、ポリ(Gly−Ala;GA)、ポリ(Gly−Pro;GP)及び/又はポリ(Gly−Arg;GR)の産生、生成及び凝集が生じることが示された。したがって、本発明の1つの実施形態において、DPRは、ポリ−グリシン−アラニン(Gly−Ala;GA)リピート、ポリ−グリシン−プロリン(Gly−Pro;GP)リピート又はポリ−グリシン−アルギニン(Gly−Arg;GR)リピートを含む。好ましい実施形態において、DPRは、ポリ−グリシン−アラニン(Gly−Ala;GA)リピート又はポリ−グリシン−プロリン(Gly−Pro;GP)リピートからなる。
伸長したヘキサヌクレオチドリピートがC9ORF72の非コードエクソン1aと非コードエクソン1bとの間に位置するという事実、及び、変異したC9ORF72は開始コドンを欠いているという事実にもかかわらず、すべての読み枠が、ジペプチドリピート(DPR)タンパク質に、すなわち、ポリ(Gly−Ala;GA)、ポリ(Gly−Pro;GP)及び/又はポリ(Gly−Arg;GR)に翻訳される。予備的研究ではまた、様々な抗体が、本発明に従って行われた実験において特定され、クローン化され、これらの抗体は、ニューロン細胞質封入体、ニューロン核内封入体及び異栄養性神経突起を、実施例12及び実施例13並びに図14及び図15に示されるように、GA、GP又はGPタイプのC9ORF72−DPRに伴う、すなわち、センス鎖方向で翻訳されるC9ORF72−DPRに伴う小脳の顆粒細胞層において染色するだけでなく、両方向で翻訳されたDPR、すなわち、そのアンチセンス方向で翻訳されるジペプチドリピートタンパク質、すなわち、ポリ(Pro−Arg;PR)及び/又はポリ(Pro−Ala;PA)を認識することができる抗体もまた、それらを染色することが示される。したがって、両方の鎖に由来するC9ORF72タンパク質産物、すなわち、C9ORF72のエクソン1aとエクソン1bとの間の非コード領域の伸長したヘキサヌクレオチドリピートからセンス方向及びアンチセンス方向で翻訳されて生じるDPRの凝集を特定することができ、かつ、これと結合することができる抗体が提供される。したがって、1つの実施形態において、抗DPR抗体、そのDPR結合分子若しくはフラグメント、合成変異体又は生物工学変異体は、C9ORF72遺伝子からそのセンス方向及び/又はアンチセンス方向で翻訳されるようなDPRを認識する。好ましい実施形態において、DPR抗体は、ポリ(Gly−Ala;GA)タイプ、ポリ(Gly−Pro;GP)タイプ、ポリ(Gly−Arg;GR)タイプ、ポリ(Pro−Arg;PR)タイプ及び/又はポリ(Pro−Ala;PA)タイプのDPRを認識する。
加えて、予備実験では、DPRの異なる配列体、すなわち、DPRタンパク質の異なるアミノ酸組成体に結合することができるDPR抗体が特定された。具体的には、(PA)n及び(GA)nの両方、(GP)n及び(GA)nの両方、(PR)n及び(GA)nの両方、又は、(GR)n及び(GA)n及び(PR)nからなるDPRタンパク質を認識するDPR抗体が認められた。したがって、本発明の1つの実施形態において、DPR抗体は、異なるアミノ酸組成を示すDPRタンパク質の組合せからなるDPRタンパク質を認識することができる。したがって、実施例において明らかにされるように、また、図2A〜図2M及び図7A〜図7Pに示されるように、2つ又はそれどころか3つの異なるジペプチドリピートを同じ程度の大きさでの特異性で認識するヒト由来抗体が得られる。好ましい実施形態において、抗DPR抗体は、(PA)n又は(GA)n、(GP)n又は(GA)n、(PR)n又は(GA)n、或いは、(GR)n又は(GA)n又は(PR)nであるDPRタンパク質の組合せからなるDPRタンパク質を認識することができる。すなわち、本発明の抗DPR抗体はDPRのどのような組合せでも認識する場合があり、好ましくは、抗体NI−308.5G2について示されるように(GP)n及び(GA)nを認識する場合があり(図2A及び図2G並びに図7A、図7B、図7J及び図7Kを参照のこと)、又は、抗体NI−308.6B11について示されるように、(GR)n、(GA)n及び(PR)nを認識する場合があり(図2A及び図2I並びに図7A、図7C、図7L及び図7Mを参照のこと)、又は、抗体NI−308.4M1について示されるように、(PA)n及び(GA)nを認識する場合があり(図2A及び図2K並びに図7E及び図7Pを参照のこと)、又は、抗体NI−308.16C10について示されるように、(PR)n及び(GA)nを認識する場合がある(図2A及び図2Mを参照のこと)。
代替において、又は加えて、本発明の抗体は、少なくとも第1及び第2の抗原結合部位、すなわち、異なったエピトープを有する本発明の2つの異なる抗体に由来する可変ドメインを含むように操作される場合があり、好ましくは、この場合、一方又は両方の可変領域が、添付された実施例及び図において例示される主題抗体のいずれか1つに由来し、さらには本明細書中に記載される通りである。例えば、抗体NI−308.6B11及び抗体NI−308.4M1の可変領域を組み合わせれば、(GA)n、(GR)n、(PR)n及び(PA)nからなるDPRの組合せと結合することができる抗体が生じるであろう。したがって、主題抗体により、DPRのどのような組合せでも認識することができる抗体を提供することが可能となる。二重特異性抗体及び多重特異性抗体をこの技術分野ではよく知られている方法によって作製することができ、例えば、モノクローナルな免疫グロブリンG1フラグメントの化学的組換えを、例えば、Brennan他(Science 229(1985)、81〜83)によって記載されるように行うことによって、又は、適切な重鎖及び軽鎖を組換えにより同時共発現し、対応する対を形成させることによって作製することができる;例えば、Lewis他、Nature Biotechnology 32(2014)、191〜198を参照のこと;総説については、例えば、Kontermann、mAbs.4(2012)、182〜197を、そして、Kontermann及びBrinkmann、Drug Discovery Today 20(2015)、838〜847を参照のこと。
いくつかの研究では、患者におけるDPRの凝集が、より多数のジペプチドリピートを有する患者において主に生じることが明らかにされている。したがって、本発明の1つの実施形態において、DPR結合性分子は、より多数の数のリピートを含有するDPRタンパク質、すなわち、(GA)n、(GP)n、(GR)n、(PR)n又は(PA)nからなるDPRに結合する。この場合、nはリピートの数を示し、例えば、15回のリピートを有するDPRタンパク質が(XX)15として示されることになり、これはまた、例えば、ヘキサヌクレオチド伸長G4C2が15回繰り返されることを意味する。好ましい実施形態において、リピート数は10〜30であり、すなわち、(XX’)10〜30である。特に好ましい実施形態において、リピート数は(XX’)15である。
しかしながら、理論にとらわれることはないが、より小さいリピートサイズ(すなわち、15回未満のリピート、好ましくは10回未満のリピート、より好ましくは5回未満のリピート)が、表面における高密度コーティングのときにはより大きいペプチドを模倣する場合がある。したがって、本発明の1つの実施形態において、DPR抗体は、(GA)n、(GP)n、(GR)n、(PR)n又は(PA)nからなるDPRに結合する(この場合、リピートの数(n)は15回未満のリピートである)。好ましい実施形態において、DPR抗体は、(GA)n、(GP)n、(GR)n、(PR)n又は(PA)nからなるDPRに結合する(この場合、リピートの数(n)は10回未満のリピートである)。特に好ましい実施形態において、DPR抗体は、(GA)n、(GP)n、(GR)n、(PR)n又は(PA)nからなるDPRに結合する(この場合、リピートの数(n)は5回未満のリピートである)。予備実験では、本発明のDPR抗体の結合がまた、ちょうど3回〜4回のリピートを示すDPRタンパク質において可能であることが示される;例えば、図7を参照のこと。したがって、本発明の1つの実施形態において、3回〜4回のリピートが、DPR抗体の結合のためには十分である。1つの実施形態において、本発明の抗体は、上記で記載されたジペプチドリピートのいずれかの1つの3回未満(n<3)を有するエピトープには実質的に結合しないか、又は、有意により小さい程度にしか結合しない;例えば、実施例8及び実施例9、同様にまた、図7及び図8を参照のこと。
実施例において、具体的には実施例3及び実施例4において示されるように、より多数のジペプチドリピートを示す種々のDPR構築物が設計された。具体的には、15回のリピート、すなわち、(GA)15、(GP)15、(GR)15、(PA)15及び(PR)15を示すDPR構築物が構築された。これらの構築物を利用して、本発明に従って特定された抗体の特徴づけ研究が行われた;例えば、実施例3及び実施例4を参照のこと。結果から、抗体NI−308.18F7、抗体NI−308.15O7、抗体NI−308.28G1及び抗体NI−308.45C2は、C9ORF72−DPRの(GA)15に大きい親和性で特異的に結合し、しかし、(GP)15、(GR)15、(PA)15又は(PR)15からなるDPRには結合しないことが明らかにされた;例えば、図2A、図2B、図2C、図2D及び図2E、並びに、図3A、図3B、図3C、図3D及び図3Eを参照のこと。対照的に、抗体NI−308.5G2、抗体NI−308.12A3及び抗体NI−308.46E9は、C9ORF72−DPRの(GA)15及び(GP)15を大きい親和性で特異的に認識し、しかし、(GR)15、(PA)15又は(PR)15からなるDPRを認識しない;例えば、図2A、図2G、図2H及び図2L、並びに、図3A、図3G、図3H及び図3Lを参照のこと。抗体NI−308.24E11はC9ORF72−DPRの(PR)15のみを認識し、しかし、(GP)15、(GR)15、(PA)15又は(PR)15からなるDPRを認識しない;例えば、図2A及び図2F、同様にまた、図3A及び図3Fを参照のこと。対照的に、抗体NI−308.16C10はC9ORF72−DPRの(PR)15を優先的に認識し、(GA)15にもまた結合し、しかし、(GP)15、(GR)15又は(PR)15からなるDPRを認識しなかった;例えば、図2A及び図2M、並びに、図3A及び図3Mを参照のこと。驚くべきことに、抗体NI−308.6B11及び抗体NI−308.46F8は大きい親和性を、(GR)15、(GA)15及び(PR)15に対して示し、しかし、(GP)15又は(PA)15からなるDPRには示さなかった;例えば、図2A、図2I及び図2J、並びに、図3A、図3I及び図3Jを参照のこと。抗体NI−308.4M1はC9ORF72−DPRの(PA)15及び(GA)15を認識し、しかし、(GP)15、(GR)15又は(PR)15からなるDPRを認識しない;例えば、図2A及び図2K、並びに、図3A及び図3Kを参照のこと。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は好ましくは、(GA)15からなるDPRタンパク質を認識する。別の実施形態において、(GA)15からなるDPRタンパク質を認識する本発明の抗体は、(GP)15又は(GR)15又は(PA)15又は(PR)15からなるDPRタンパク質を実質的に認識しない。さらなる実施形態において、本発明の抗体は好ましくは、(GP)15又は(GA)15からなるDPRタンパク質を認識し、好ましくは、(GP)15又は(GA)15からなるDPRタンパク質を認識する抗体は、(GR)15又は(PR)15又は(PA)15からなるDPRタンパク質を実質的に認識しない。さらなる実施形態において、(PR)15からなるDPRタンパク質を認識する本発明の抗体は、(GA)15、(GP)15又は(GR)15又は(PA)15からなるDPRタンパク質を実質的に認識しない。なおさらなる実施形態において、(GA)15、(GR)15又は(PR)15からなるDPRタンパク質を認識する本発明の抗体は、(GP)15又は(PA)15からなるDPRタンパク質を実質的に認識しない。さらなる実施形態において、本発明の抗体は好ましくは、(PA)15又は(GA)15からなるDPRタンパク質を認識し、好ましくは、(PA)15又は(GA)15からなるDPRタンパク質を認識する抗体は、(GP)15又は(GR)15又は(PR)15からなるDPRタンパク質を実質的に認識しない。さらにさらなる実施形態において、本発明の抗体は好ましくは、(PR)15又は(GA)15からなるDPRタンパク質を認識し、好ましくは、(GA)15又は(PR)15からなるDPRタンパク質を認識する抗体は、(GP)15又は(GR)15又は(RA)15からなるDPRタンパク質を実質的に認識しない。別の言い方をすれば、それらの実施形態における抗体は、ただ1つのDPRタンパク質又は少なくとも2つの異なるDPRタンパク質のどちらとでも結合することができる;例えば、実施例3及び実施例4、並びに、図2及び図3において例示されるような例示的抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11、NI−308.46F8、NI−308.4M1、NI−308.12A3及びNI−308.16C10を参照のこと。
実施例において記載されるような構築物を利用すれば、本発明の抗DPR抗体がヒトC9ORF72−DPRの(GA)15若しくは(GP)15又は(GR)15又は(PR)15又は(PA)15に結合することが示され得るかもしれない。これに関連して、本発明の抗DPR抗体のいずれか1つ又はその生物工学誘導体の結合親和性が、図2における例示的なNI−308.15O7抗体、NI−308.28G1抗体、NI−308.45C2抗体、NI−308.18F7抗体、NI−308.24E11抗体、NI−308.5G2抗体、NI−308.46E9抗体、NI−308.6B11抗体、NI−308.46F8抗体、NI−308.4M1抗体、NI−308.12A3抗体及びNI−308.16C10抗体について示されるような範囲にある場合があり、すなわち、最大半量有効濃度(EC50)が約0.1nM〜約200nMであり、好ましくは1pM〜100nMであり、より好ましくは、EC50が約50pM〜50nMであり、最も好ましくは、EC50が、BSA−(GA)15構築物、BSA−(GP)15構築物又はBSA−(PA)15構築物については約0.1nM〜0.5nMであり、最も好ましくは、EC50が、BSA−(PR)15構築物については約10nM〜200nMである;例えば、図3A〜図3Mを参照のこと。
好ましくは、抗DPR抗体、そのDPR結合フラグメント又は生物工学誘導体は、200nM超、好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM以下、一層より好ましくは10nM以下、最も好ましくは0.5nM以下であるEC50(最大半量有効濃度)値に対応する結合親和性を、DPRタンパク質の(GA)15、(GR)15又は(PR)15と結合することについて有し、又は、10nM以下、好ましくは2nM以下、一層より好ましくは1nM以下、最も好ましくは0.5nM以下であるEC50(最大半量有効濃度)値に対応する結合親和性を、DPRタンパク質の(GP)15又は(PA)15と結合することについて有する;例えば、図2A〜図2Mを参照のこと。
いくつかの抗体は広範囲の数々の生体分子(例えば、タンパク質)に結合することができる。当業者は理解するであろうように、特異的(な)という用語は、DPRでない他の生体分子が抗原結合性分子(例えば、本発明の抗体の1つ)に有意に結合しないことを示すために本明細書中では使用される。好ましくは、DPR以外の生体分子に対する結合のレベルにより、DPRに対する親和性の最大でもほんの20%以下、10%以下、ほんの5%以下、ほんの2%以下、又はほんの1%以下(すなわち、少なくとも5分の1未満、10分の1未満、20分の1未満、50分の1未満又は100分の1未満、或いはそれよりも小さいどのような程度でも)である結合親和性がそれぞれもたらされる;例えば、実施例3〜実施例5、並びに、図2〜図4を参照のこと。
1つの実施形態において、本発明の抗DPR抗体は、DPR(例えば、C9ORF72−DPR)並びに/或いはそのフラグメント、誘導体、原線維及び/又はオリゴマーの凝集型形態に優先的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗DPR抗体は、疾患及び/又は障害に関連しないC9ORF72−DPRと、C9ORF72−DPRの病理学的な凝集型形態との両方に優先的に結合する;例えば、実施例10並びに、図9〜図12を参照のこと。なお別の実施形態において、本発明の抗DPR抗体は、DPR(例えば、C9ORF72−DPR)並びに/或いはそのフラグメント、誘導体、原線維及び/又はオリゴマーの様々な形態に溶液中で結合することができる;実施例7、並びに、図6を参照のこと。これに関連して、本発明の抗DPR抗体のいずれか1つ又はその生物工学誘導体は、例示的抗体のNI−308.15O7、NI−308.18F7、NI−308.45C2及びNI−308.28G1について示されるように、ポリGA DPRタンパク質ペプチドを溶液中で捕捉することができる場合があり、或いは、本発明の抗DPR抗体のいずれか1つ又はその生物工学誘導体は、例示的抗体のNI−308.24E11及びNI−308.6B11について示されるように、ポリPR及びポリGRを沈殿させることができる場合がある;例えば、図6(A)〜図6(C)を参照のこと。
図14及び図15、並びに、実施例12及び実施例13において、本発明の抗体は、DPRの凝集物、具体的にはC9ORF72−DPRタンパク質の凝集物に伴うFTLD患者における小脳の顆粒細胞層での病理学的なニューロン細胞質封入体、ニューロン核内封入体及び異栄養性神経突起を染色することができることが示された。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体はヒト組織における凝集型C9ORF72と結合することができる。特に好ましい実施形態において、抗体はヒトFTLD組織における凝集型C9ORF72と結合することができる。述べられたように、凝集型C9ORF72は、上記で記載されるように、伸長したヘキサヌクレオチドリピートをその非コード領域において示す変異したC9ORF72を意味する。このリピートにより、ATG開始側(start side)の喪失と、上記で記載されるようなDPRへのリピート部の翻訳とが引き起こされる。
前述の通り、脳の前頭葉及び側頭葉におけるDPRタンパク質凝集物の蓄積が神経変性障害FTLDの顕著な特徴である。ニューロン細胞質封入体、ニューロン核内封入体及び異栄養性神経突起におけるDPR凝集物を、本発明の図14及び図15、並びに、実施例12及び実施例13に示されるように小脳の顆粒細胞層に有する患者は多くの場合、変化した認知機能を示す。具体的には、FTLDの患者は、上記で記載されるように、前頭皮質及び側頭皮質の変性に起因する認知症、人格並びに行動の変化、言語機能障害及び/又は精神病を示す。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、DPRに伴う疾患及び/又は障害を処置するために有用である。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、FTLD及びその症状の処置において有用である。
本発明はまた、NI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11、NI−308.46F8、NI−308.4M1、NI−308.12A3及びNI−308.16C10からなる群から選択される抗体の抗原結合ドメインと、或いは、DPRと結合することについて、例えば、(GA)15又は(GP)15又は(GR)15又は(PR)15又は(PA)15と結合することについていずれかの抗体又はすべての抗体と競合することができる抗体の抗原結合ドメインと同一の抗原結合ドメインを含む抗体、その抗原結合フラグメント、生物工学変異体及び生物工学誘導体に向けられる。
本発明ではさらに、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1A〜図1Lのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域及び/又はVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、DPRを認識するいくつかの結合性分子(例えば、抗体及びその結合性フラグメント)が例示される。
上記の可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が下記の表IIに示される。VH領域及び/又はVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1A〜図1Lのいずれか1つに示される。しかしながら、下記で議論されるように、当業者は、加えて、又は代替において、様々なCDRが使用されることがあり、ただし、この場合、これらのCDRが、それらのアミノ酸配列において、図1A〜図1Lのいずれか1つに示されるアミノ酸配列から、CDR2及びCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、又はそれどころかそれ以上のアミノ酸によって異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1A〜図1Lのいずれか1つに示されるような少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、並びに/或いは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含むその1つ又は複数のCDRをその可変領域に含む本発明の抗体、その生物工学誘導体又はDPR結合フラグメンが提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、図1A−Lのいずれかに示される又はそのVH領域及び/又はVL領域、あるいは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含むそのVH領域及び/又はVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞に存在したような重鎖及び軽鎖の同族性の対形成の保存によって特徴づけられる。
本発明のさらなる実施形態において、抗DPR抗体、DPR結合フラグメント、それらの合成変異体又は生物工学変異体は、標的に対する適切な結合親和性、及び、適切な薬物動態学的特性を有するように最適化することができる。したがって、グリコシル化、酸化、脱アミノ化、ペプチド結合切断、イソアスパラギン酸形成及び/又は不対システインからなる群から選択される修飾を受けやすいCDR領域内又は可変領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、そのような変化を欠く変異アミノ酸によって置換され、あるいは、少なくとも1つの炭水化物成分が化学的又は酵素的に除かれ、又は抗体に付加される。例えば、Liu他、J.Pharm.Sci.97(7)(2008),2426−2447、Beck他Nat.Rev.Immunol.10(2010),345−352、Haberger他MAbs.6(2014),327−339.を参照のこと。
代替では、本発明の抗体は、DPRsに対する結合について、図1A−Lのいずれか1つに示されるようなVH領域及び/又はVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合フラグメント、生物工学的誘導体又は変異体である。
図4及び実施例5において提供される実験結果からは、本発明の抗DPR抗体のいくつかが、疾患を引き起こす凝集型形態のDPR(例えば、C9ORF72−DPRなど)に他のアミロイド形成タンパク質よりも優先的に結合することが示唆される。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体はC9ORF72−DPRをアミロイド形成タンパク質よりも優先的に認識する。
本発明の1つの実施形態において、抗DPR抗体、そのDPR結合フラグメント、合成誘導体又は生物工学誘導体は本当に、C9ORF72−DPRの変異型形態及び/又は凝集型形態を生理学的なC9ORF72よりも優先的に認識する。
本発明の抗体は、治療適用のためには特に、ヒト由来の抗体である場合がある。代替では、本発明の抗体は、動物における診断方法及び研究のために特に有用である齧歯類抗体、齧歯類化抗体又は齧歯類−ヒトのキメラ抗体、好ましくは、マウス抗体、マウス化抗体又はマウス−ヒトのキメラ抗体、あるいは、ラット抗体、ラット化抗体又はラット−ヒトのキメラ抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体は齧歯類−ヒトのキメラ抗体又は齧歯類化抗体である。
さらには、1つの実施形態において、本発明のキメラ抗体、すなわち、ヒト抗体の可変ドメインと、マウスの一般的な軽鎖定常ドメイン及び重鎖定常ドメインとを含むキメラ抗体はヒトDPRsに大きい親和性で結合する。好ましくは、キメラ抗体の結合親和性はそれらのヒト対応物と類似している。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、培養される単一のB細胞又はオリゴクローナルなB細胞の培養物、及び、前記B細胞によって産生される抗体を含有する培養物の上清によって提供され、それらにおける抗DPR抗体の存在及び親和性についてスクリーニングされる。スクリーニングプロセスは、合成された全長型hDPRペプチドに由来する、或いは例えばヒト血漿又は組換え発現から精製されたhDPRのオリゴマーのような生来型モノマー凝集物、原線維性凝集物又は非原線維性凝集物に対する結合についてのスクリーニングを含む。各hDPRペプチドは、そのままの形態で、或いは代替として、BSAなどの適当な担体に連結又は結合した状態で使用され得る。
好ましい実施形態において、本発明はまた一般には、変異型C9ORF72−DPR種及び/又は凝集型C9ORF72−DPR種或いはそれらのフラグメントに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗DPR抗体及びDPR結合性分子にまで及ぶ。
抗体間の競合が、試験下にある免疫グロブリンが共通の抗原(DPRsなど)に対する参照抗体の特異的な結合を阻害するアッセイによって求められる。数多くのタイプの競合的結合アッセイが知られている:例えば、固相での直接的又は間接的な放射免疫アッセイ(RIA)、固相での直接的又は間接的な酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli他、Methods in Enzymology 9(1983)、242〜253を参照のこと)、固相での直接的なビオチン−アビジンEIA(Kirkland他、J.Immunol.137(1986)、3614〜3619、及び、Cheung他、Virology 176(1990)、546〜552を参照のこと)、固相での直接的な標識化アッセイ、固相での直接的な標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)を参照のこと)、I125標識を使用する固相での直接的な標識RIA(Morel他、Molec.Immunol.25(1988)、7〜15、及び、Moldenhauer他、Scand.J.Immunol.32(1990)、77〜82を参照のこと)。典型的には、そのようなアッセイは、精製されたDPR又は変異した及び/又は凝集したC9ORF72−DPRs(例えば、固体表面、又は、これらのどちらかを有する細胞に結合させたオリゴマー及び/又はその原線維など)と、標識されていない試験用免疫グロブリン及び標識された参照用免疫グロブリン(すなわち、本発明のヒトモノクローナル抗体)とを使用することを伴う。競合的阻害が、試験用免疫グロブリンの存在下において固体表面又は細胞に結合する標識の量を求めることによって測定される。通常、試験用免疫グロブリンは過剰に存在する。好ましくは、競合的結合アッセイが、添付された実施例においてELISAアッセイについて記載されるような条件のもとで行われる。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び、立体的障害が生じるために、参照抗体が結合するエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。通常の場合、競合抗体が過剰に存在するときには、競合抗体により、共通の抗原に対する参照抗体の特異的な結合が少なくとも50%又は75%阻害されるであろう。したがって、本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI−308.15O7, NI−308.28G1, NI−308.45C2, NI−308.18F7, NI−308.24E11, NI−308.5G2, NI−308.46E9, NI−308.6B11, NI−308.46F8, NI−308.4M1, NI−308.12A3及びNI−308.16C10からなる群から選択される参照抗体がDPRsに結合することを競合的に阻害する。
本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI−308.15O7, NI−308.28G1, NI−308.45C2, NI−308.18F7, NI−308.24E11, NI−308.5G2, NI−308.46E9, NI−308.6B11, NI−308.46F8, NI−308.4M1, NI−308.12A3及びNI−308.16C10からなる群から選択される参照抗体が、変異した、及び/又は凝集したC9ORF72−DPR種又はそのフラグメントに結合することを競合的に阻害する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも1つ、又は、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1A−Lのいずれか1つにそれぞれ示される群に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列及びVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1A−Lは、Kabatシステムによって定義されるVH−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVH−CDRもまた本発明に含まれ、これらは、図1A−Lに示されるデータを使用して当業者によって容易に特定され得る。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域が、図1A−Lのいずれか1つにそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群及びVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域が、いずれか1つのVH−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸置換を除いて、図1A−Lのいずれか1つにそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群及びVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、又は、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域及びVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1(A)〜1(J)のいずれか1つにそれぞれ示されるポリペプチドに関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列及びVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1(A)〜1(L)は、Kabatシステムによって定義されるVL−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVL−CDRもまた本発明に含まれる。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域及びVL−CDR3領域が、図1(A)〜1(L)にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群及びVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域及びVL−CDR3領域が、いずれか1つのVL−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸置換を除いて、図1(A)〜1(L)にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群及びVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
免疫グロブリン又はそのコードcDNAがさらに改変される場合がある。したがって、さらなる実施形態において、本発明の方法は、キメラ抗体、マウス化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、二重特異性抗体、融合抗体、標識化抗体、又は、それらのいずれか1つのアナログを製造する工程のいずれか1つを含む。対応する様々な方法が当業者には知られており、例えば、Harlow and Lane、「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor(1988)に記載される。前記抗体の誘導体がファージディスプレー技術によって得られるとき、BIAcoreシステムにおいて用いられるような表面プラズモン共鳴を、本明細書中に記載される抗体のいずれか1つのエピトープと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるために使用することができる(Schier、Human Antibodies Hybridomas 7(1996)、97〜105;Malmborg、J.Immunol.Methods 183(1995)、7〜13)。キメラ抗体の製造が、例えば、国際特許出願公開WO89/09622に記載される。ヒト化抗体を製造するための方法が、例えば、欧州特許出願EP−A10239400及び国際特許出願公開WO90/07861に記載される。本発明に従って利用されるための抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。異種抗体(例えば、ヒト様抗体)をマウスにおいて製造するための一般的原理が、例えば、国際特許出願公開WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096及びWO96/33735に記載される。上記で議論されたように、本発明の抗体は、例えば、Fv、Fab及びF(ab)2を含めて、完全な抗体のほかに様々な形態で、ならびに、単鎖で存在する場合がある(例えば、国際特許出願公開WO88/09344を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント及びF(ab’)2フラグメントからなる群から選択される本発明の抗体が提供される。
本発明の様々な抗体又はそれらの対応する免疫グロブリン鎖はさらに、この技術分野において知られている従来からの技術を使用して、例えば、この技術分野において知られているアミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、アミノ酸付加及び/又は組換えならびに/あるいはいずれかの他の改変を単独又は組合せでのどちらかで使用することによって改変することができる。そのような改変を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列に導入するための方法が、当業者には広く知られている;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、N.Y.、及び、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)を参照のこと。本発明の抗体の修飾には、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、及び、炭水化物成分又は脂質成分及び補因子などの連結を含む側鎖修飾、骨格修飾、ならびに、N末端修飾及びC末端修飾を含めて、1つ又は複数の構成アミノ酸における化学的及び/又は酵素的な誘導体化が含まれる。同様に、本発明は、記載された抗体又はその何らかのフラグメントを異種分子(例えば、カルボキシル末端での免疫刺激リガンドなど)に融合されてアミノ末端において含むキメラなタンパク質の製造を包含する;対応する技術的詳細については、例えば、国際特許出願公開WO00/30680を参照のこと。
本発明の抗体はまた、その治療的可能性を最適化するさらなる改変を含む場合がある。これらの改変には、抗体(例えば、可変領域)のアミノ酸配列に対する改変、及び、翻訳後修飾が含まれるが、これらに限定されない。翻訳後修飾(PTM)は、これにより、活性、局在化、及び、他の細胞分子(例えば、タンパク質、核酸、脂質及び補因子など)との相互作用が調節されるので、重要な役割を機能的プロテオミクスにおいて果たす化学的修飾である。したがって、抗体を最適化することにより、いくつかの利点がもたらされる場合があり、例えば、Igawa他、MAbs 3(2011)、243〜52に示されるように、例えば、貯蔵期間中の改善された安定性、並びに、薬物動態学及び/又は薬力学での改善されたプロファイル、例えば、抗体のインビボ又はインビトロでの循環時間、増大した溶解性、安定性、標的に対する増大した親和性、低下したオフ速度、抗体の定常領域(Fc領域)の改善されたエフェクター機能及び改善された安全性プロファイル(例えば、低下した免疫原性など)など、或いは、翻訳後修飾に対する低下した感受性がもたらされる場合がある。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗DPR抗体、そのDPR結合フラグメント、合成変異体又は生物工学変異体を最適化することができ、ただし、この場合、CDR領域又は可変領域におけるアミノ酸で、下記の修飾に限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、脱アミノ化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、異性化、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、加水分解、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)及びユビキチン化を含む様々な修飾を受けやすい少なくとも1つのアミノ酸(例えば、Creighton、“Proteins:Structures and Molecular Properties”、第2版、Freeman and Co.、N.Y.、1992;“Postranslational Covalent Modification of Proteins”、Johnson編、Academic Press、New York、1983;Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626〜646;Rattan他、Ann.NY.Acad.Sei.663(1992)、48〜62を参照のこと)が、そのような変化を欠く変異型アミノ酸によって置換され、或いは、少なくとも1つの炭水化物成分が化学的若しくは酵素的に欠失され、又は、抗体に化学的若しくは酵素的に付加される。好ましい実施形態において、修飾が、グリコシル化、酸化、脱アミノ化、ペプチド結合切断、イソアスパラギン酸塩形成及び/又は不対システインからなる群から選択される。治療剤としての抗DPR抗体又は同等な結合性分子の有用性を最適化するさらなる改変がこの技術分野では広く知られており、例えば、Igawa他、MAbs 3(2011)、243〜52に記載される(その開示内容は本明細書中に組み込まれる)。炭水化物成分を付加する手段又は欠失する手段を化学的又は酵素的に達成することができ、これらの手段が、例えば、下記において詳しく記載される:Berg他、“Biochemistry”、第5版、W H Freeman、New York 2002;国際公開WO87/05330;Aplin他、CRC Crit.Rev.Biochem.22(1981)、259〜306;Hakimuddin他、Arch.Biochem.Biophys.259(1987)、10〜52;Edge他、Anal.Biochem.118(1981)、131;Thotakura他、Meth.Enzymol.138(1987)、350。
加えて、重鎖CDR3(HCDR3)は、より大きい度合いの可変性と、抗原−抗体相互作用における支配的な関与とを有する領域であることがしばしば認められているので、本発明は、上記で記載されるような結合性分子を含有するペプチド、例えば、述べられた抗体のいずれか1つの可変領域のCDR3領域(特に、重鎖のCDR3)を含有するペプチドを含むペプチドを包含する。そのようなペプチドが、本発明に従って有用である結合剤を製造するために容易に合成される場合があり、又は、組換え手段によって製造される場合がある。そのような方法は当業者にはよく知られている。ペプチドを、例えば、市販されている自動化されたペプチド合成機を使用して合成することができる。ペプチドはまた、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込むこと、及び、細胞を、ペプチドを産生させるために発現ベクターにより形質転換することによる組換え技術によって製造することができる。
したがって、本発明は、本発明の抗DPR抗体に向けられ、かつ、他の場合には正常なタンパク質に存在するかもしれない凝集型DPR(例えば、C9ORF72−DPR種及び/又はそのフラグメント)と結合することができるどのような結合性分子(例えば、抗体又はその結合フラグメント)にも関連する。そのような抗体及び結合性分子は、本明細書中に記載されるようなELISA、SDS−PAGE及び免疫組織化学によってそれらの結合特異性及び結合親和性について試験することができる(例えば、実施例3〜実施例13を参照のこと)。抗体及び結合性分子のこれらの特徴をウエスタンブロットによって同様に試験することができる;特に実施例6及び図5を参照のこと。
免疫グロブリンをB細胞又はBメモリー細胞の培養から直接に得ることの代替として、これらの細胞を、その後の発現及び/又は遺伝子操作のための、再編成された重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座の供給源として使用することができる。再編成された抗体遺伝子を、cDNAを作製するために、適切なmRNAから逆転写することができる。所望されるならば、重鎖定常領域を異なるアイソタイプの重鎖定常領域に交換することができ、又は、完全に除くことができる。可変領域を、単鎖のFv領域をコードするために連結することができる。多数のFv領域を、2つ以上の標的に対する結合能を与えるために連結することができ、又は、重鎖及び軽鎖のキメラな組合せを用いることができる。遺伝物質が入手可能であると、所望の標的と結合するそれらの能力をともに保持する上記で記載されるようなアナログの設計は簡単である。抗体可変領域のクローニング及び組換え抗体の作製のための方法が当業者には知られており、例えば、Gilliland他、Tissue Antigens 47(1996)、1〜20;Doenecke他、Leukemia 11(1997)、1787〜1792に記載される。
適切な遺伝物質が得られ、かつ、所望されるならば、アナログをコードするために改変されると、コード配列(これは、最低でも重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする配列を含む)を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされ得るベクターにおいて含有される発現系に挿入することができる。様々なそのような宿主細胞が使用してよい;しかしながら、効率的なプロセシングのためには、哺乳動物細胞が好ましい。この目的のために有用である典型的な哺乳動物細胞株には、CHO細胞、HEK293細胞又はNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。
抗体又はアナログの製造はその後、改変された組換え宿主を、宿主細胞の成長及びコード配列の発現のために適切である培養条件のもとで培養することによって着手される。その後、抗体が、抗体を培養物から単離することによって回収される。発現系は好ましくは、シグナルペプチドを含み、その結果、生じた抗体が培地中に分泌されるように設計される。しかしながら、細胞内産生もまた可能である。
上記によれば、本発明はまた、本発明の抗体又は同等な結合性分子をコードするポリヌクレオチドに関連し、抗体の場合には、好ましくは、上で記載される抗体の免疫グロブリン鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。典型的には、ポリヌクレオチドによってコードされる前記可変領域は、前記抗体の可変領域のVH及び/又はVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
当業者は、上記の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインが、所望される特異性及び生物学的機能の他のポリペプチド又は抗体を構築するために使用され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はまた、上で記載された可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、かつ、添付された実施例において記載される抗体と実質的に同じ又は類似する結合性質を好都合には有するポリペプチド及び抗体を包含する。当業者は、結合親和性が、アミノ酸置換をCDR内において、又は、Kabatによって定義されるようなCDRと部分的に重なる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917)の内部において行うことによって強化され得ることを理解している(例えば、Riechmann他、Nature 332(1988)、323〜327を参照のこと)。したがって、本発明はまた、述べられたCDRの1つ又は複数が1つ又は複数の、好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体に関連する。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方又は両方において、図1(A)〜1(L)のいずれか1つに示されるような可変領域の2つのCDR又は3つすべてのCDRを含む。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、当業者によって知られているように、1つ又は複数のエフェクター機能を媒介する定常領域を含むことができる。例えば、補体のC1成分が抗体の定常領域に結合することにより、補体系が活性化される場合がある。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化及び溶解において重要である。補体の活性化は炎症応答をも刺激し、自己免疫の過敏性に関与することもある。さらに、抗体は、Fc領域を介して、すなわち、抗体のFc領域におけるFc受容体結合部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合することにより様々な細胞における受容体に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)及びIgM(ミュー受容体)を含めて、異なるクラスの抗体について特異的であるいくつかのFc受容体が存在する。抗体が細胞表面のFc受容体に結合することにより、抗体被覆粒子の貪食及び破壊、免疫複合体の排除、キラー細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解(これは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害又はADCCと呼ばれる)、炎症性媒介因子の放出、胎盤移行及び免疫グロブリン産生の制御を含む多数の重要かつ多様な生物学的応答が誘発される。
したがって、本発明の特定の実施形態には、少なくとも定常領域ドメインの1つ又は複数の一部が欠失されているか、さもなければ変化させられており、その結果、所望される生化学的特性を提供するように、例えば、およそ同じ免疫原性の完全な未変化抗体と比較したとき、低下したエフェクター機能、ダイマーを非共有結合により形成することができること、DPRタンパク質の凝集及び沈着の部位に局在化する増大した能力、低下した血清中半減期、あるいは、増大した血清中半減期などを提供するようにされている抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体が含まれる。例えば、本明細書中に記載される診断方法及び処置方法において使用されるためのある種の抗体は、免疫グロブリン重鎖に類似するポリペプチド鎖を含むが、1つ又は複数の重鎖ドメインの少なくとも一部を欠くドメイン欠失抗体である。例えば、ある種の抗体では、改変された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失されるであろう。例えば、CH2ドメインのすべて又は一部が欠失されるであろう。他の実施形態において、本明細書中に記載される診断方法及び処置方法において使用されるためのある種の抗体は、グリコシル化を排除するために変化させられる定常領域(例えば、IgG重鎖定常領域)を有しており、これは、本明細書中の他のところでは、非グルコシル化抗体又は「agly」抗体として示される。そのような「agly」抗体は、酵素学的に、ならびに、定常領域におけるコンセンサスなグリコシル化部位を操作することによって調製されてもよい。理論によって拘束されることはないが、「agly」抗体は生体内での安全性及び安定性の改善されたproフィルを有する場合があると考えられる。所望されるエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を製造する方法が、例えば、国際特許出願公開WO2005/018572に見出される(その全体が参照によって組み込まれる)。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体において、Fc部分が、この技術分野において知られている技術を使用して、エフェクター機能を低下させるために変異させられる場合がある。例えば、定常領域ドメインの(点変異又は他の手段による)欠失又は不活性化は、循環する改変された抗体のFc受容体結合を低下させ、それにより、DPRタンパク質の局在化を増大させる場合がある。他の場合には、本発明と一致する定常領域改変が補体結合を和らげ、したがって、抱合された細胞毒素の血清半減期及び非特異的会合を低下させることがあるかもしれない。定常領域のさらに他の改変が、増大した抗原特異性又は抗体柔軟性に起因する高まった局在化を可能にするジスルフィド連結又はオリゴ糖成分を改変するために使用される場合がある。そのような改変の得られた生理学的プロファイル、生物学的利用能及び他の生化学的影響、例えば、DPRタンパク質の局在化、生体分布及び血清半減期などが、過度な実験を行うことなく、広く知られている免疫学的技術を使用して容易に測定及び定量化され得る。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体において、Fc部分が、例として、Fcγ受容体、LRP又はThy1受容体を介する抗体の受容体媒介性エンドサイトーシスを高めることによって、あるいは、「SuperAntibody Technology」(これは、抗体が、生細胞を傷つけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる)(Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241)によって抗体の細胞取り込みを増大させるために変異させられる場合があり、又は、代わりのタンパク質配列に交換される場合がある。例えば、抗体結合領域と、細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドとの融合タンパク質、あるいは、DPRsならびに細胞表面受容体に結合する特異的な配列を有する二重特異性抗体又は多特異性抗体の作製が、この技術分野において知られている技術を使用して設計される場合がある。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体において、Fc部分が、その血液脳関門透過を増大させるために変異させられる場合があり、又は、代わりのタンパク質配列に交換される場合があり、あるいは、抗体が化学的に改変される場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体の改変された形態を、この技術分野において知られている技術を使用して完全な前駆体又は親抗体から作製することができる。例示的な技術が本明細書中により詳しく議論される。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、この技術分野において知られている技術を使用して作製又は製造することができる。特定の実施形態において、抗体分子又はそのフラグメントが「組換え製造され」、すなわち、組換えDNA技術を使用して製造される。抗体分子又はそのフラグメントを作製するための例示的な技術が本明細書中の他のところでより詳しく議論される。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、生物工学的変異体又は誘導体にはまた、例えば、共有結合による結合により、抗体がその同族エピトープに特異的に結合することが妨げられないように、どのようなタイプの分子でも抗体に共有結合により結合させることによって改変される誘導体が含まれる。例えば、しかし、限定としてではなく、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって改変されている抗体が含まれる。数多くの化学的修飾のどれもが、知られている技術によって行われる場合があり、これらには、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない。加えて、誘導体は1つ又は複数の非古典的アミノ酸を含有する場合がある。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、有害な免疫応答を処置されるべき動物において、例えば、ヒトにおいて誘発しないであろう。特定の実施形態において、結合性分子、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは患者、例えば、ヒト患者に由来し、続いて、抗体又はその抗原結合フラグメントが由来する同じ種、例えば、ヒトにおいて使用され、これにより、有害な免疫応答の出現を緩和するか、又は最小限に抑える。
脱免疫化もまた、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化を包含する(例えば、国際特許出願公開WO98/52976及び同WO00/34317を参照のこと)。例えば、出発抗体からのVH配列及びVL配列が分析され、そして、相補性決定領域(CDR)との関連でのエピトープの所在位置、及び、配列内の他の重要な残基を示すそれぞれのV領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」が分析される。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープが、最終的な抗体の活性を変化させる危険性が低い代わりのアミノ酸置換を特定するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代替的なVH配列及びVL配列が設計され、これらの配列が続いて、本明細書中に開示される診断方法及び処置方法における使用のために様々な結合性ポリペプチド(例えば、DPR特異的抗体又はその免疫特異性フラグメント)に組み込まれ、その後、これらは機能について試験される。典型的には、12個〜24個の間の変化型抗体が作製され、試験される。改変されたV領域及びヒトC領域を含む完全な重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子がその後、発現ベクターにクローン化され、それに続くプラスミドが、完全な抗体の産生のために細胞株に導入される。その後、抗体が、適切な生化学的アッセイ及び生物学的アッセイにおいて比較され、最適な変異体が特定される。
モノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術、組換え技術及びファージディスプレー技術又はそれらの組合せの使用を含むこの技術分野において知られている広範囲の様々な技術を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体を、この技術分野において知られているハイブリドーマ技術、及び、例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988);Hammerling他、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、Elsevier、N.Y.、563〜681(1981)に教示されるハイブリドーマ技術を含む様々なハイブリドーマ技術を使用して製造することができる(前記参考文献はそれらの全体が参照によって組み込まれる)。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物クローン、原核生物クローン又はファージクローンのどのようなものも含めて、ただ1つのクローンに由来する抗体を示し、モノクローナル抗体が製造される方法に由来する抗体を示さない。したがって、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。特定の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中に記載されるように、エプスタイン・バールウイルスによる形質転換により抗体産生が誘導されているヒトB細胞に由来する。
広く知られているハイブリドーマプロセス(Kohler他、Nature 256(1975)、495)では、哺乳動物から得られる比較的短命の、すなわち、いつかは死滅するリンパ球、例えば、本明細書中に記載されるようなヒト対象に由来するB細胞が、不死性の腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合され、このようにして、不死性であり、かつ、B細胞の遺伝子コードされた抗体を産生することができるハイブリッド細胞、すなわち、「ハイブリドーマ」がもたらされる。得られたハイブリッドは、選抜、希釈及び再成長によって単一の遺伝的形質に分離され、それぞれの個々の株が単一抗体の形成のための特定の遺伝子を含む。それらにより、所望の抗原に対して均質であり、そして、それらの純粋な遺伝的起源に関連して、「モノクローナル」と呼ばれる抗体が産生される。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない元の骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する1つ又は複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において播種され、成長させられる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選抜及び成長のための試薬、細胞株及び培地がいくつかの供給源から市販されており、また、標準化されたプロトコルが十分に確立されていることを理解するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地が、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、インビトロアッセイによって、例えば、本明細書中に記載されるような免疫沈殿、放射免疫アッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって求められる。所望される特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、当該クローンは限界希釈手法によってサブクローン化され、標準的な方法によって成長させられる場合がある(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59頁〜103頁(1986)を参照のこと)。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体が、従来からの精製手段によって、例えば、プロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水又は血清から分離され得ることがさらに理解されるであろう。
別の実施形態において、リンパ球を顕微操作によって選択することができ、可変性遺伝子を単離することができる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫化された哺乳動物又は生まれつき免疫性の哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、約7日間にわたってインビトロ培養することができる。培養物を、スクリーニング基準を満たす特異的なIgGについてスクリーニングすることができる。陽性のウェルからの細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞を、FACSによって、又は、Ig産生B細胞を補体媒介溶血プラークアッセイで特定することによって単離することができる。Ig産生B細胞をチューブの中に顕微操作することができ、VH遺伝子及びVL遺伝子を、例えば、RT−PCRを使用して増幅することができる。VH遺伝子及びVL遺伝子を抗体発現ベクターにクローン化し、発現のための細胞(例えば、真核生物細胞又は原核生物細胞)にトランスフェクションすることができる。
代替では、抗体産生の細胞株が、当業者に広く知られている技術を使用して選択及び培養される場合がある。そのような技術が様々な実験室マニュアル及び一次刊行物に記載されている。これに関連して、下で記載されるような本発明における使用のために好適である技術が、Current Protocols in Immunology、Coligan他編、Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991)に記載される(これは、増刊を含めて、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントが、知られている技術によって作製され得る。例えば、Fabフラグメント及びF(ab’)2フラグメントが、組換えによって、あるいは、例えば、パパイン(Fabフラグメントを製造するために)又はペプシン(F(ab’)2フラグメントを製造するために)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって製造され得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインを含有する。そのようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異性部分を検出用試薬(例えば、放射性同位体など)に連結することを伴う免疫診断手順における使用のために十分である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は抗体分子の少なくとも1つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。主題となるこれらの抗体に含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的な抗体分子が本明細書中に記載される。
本発明の抗体は、抗体を合成するためにこの技術分野において知られているいずれかの方法によって、特に、化学合成によって、又は、好ましくは、本明細書中に記載されるような組換え発現技術によって製造することができる。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、1つ又は複数のドメインが部分的又は完全に欠失される合成された定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特定の実施形態において、適合し得る改変された抗体は、CH2ドメイン全体が除かれているドメイン欠失の構築物又は変異体(ΔCH2構築物)を含むであろう。他の実施形態については、短い連結ペプチドが、動きの柔軟性及び自由を可変領域に与えるために欠失ドメインの代わりに使用される場合がある。当業者は、そのような構築物が抗体の異化速度に対するCH2ドメインの調節的特性のために特に好ましいことを理解するであろう。ドメイン欠失された構築物を、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して得ることができる(例えば、国際特許出願公開WO02/060955及び同WO02/096948A2を参照のこと)。このベクターは、CH2ドメインを欠失し、かつ、ドメイン欠失されたIgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するために操作される。
特定の実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体はミニボディ(minibody)である。ミニボディを、この技術分野において記載される方法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第5,837,821号又は国際特許出願公開WO94/09817を参照のこと)。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、モノマーサブユニット間の会合を可能にする限り、数個のアミノ酸の欠失もしくは置換、又は、1個だけのアミノ酸の欠失もしくは置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された領域における1個だけのアミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低下させるために、そして、それにより、DPRタンパク質の局在化を増大させるために十分である場合がある。同様に、調節されるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つ又は複数の定常領域ドメインのその部分を単に欠失することが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清半減期)を改善し、一方で、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を損なわないままにし得る。そのうえ、上記において暗に示されるように、開示された抗体の定常領域は、生じた構築物のプロファイルを高める1つ又は複数のアミノ酸の変異又は置換により合成物である場合がある。これに関連して、改変された抗体の立体配置及び免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存されている結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を妨げることが可能である場合がある。さらに他の実施形態は、1つ又は複数のアミノ酸を、望ましい特性(例えば、エフェクター機能など)を高めるために、あるいは、細胞毒素又は炭水化物のより多くの結合を提供するために定常領域に付加することを含む。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的な配列を挿入すること、又は複製することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含む抗体、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)の変異体(誘導体を含む)から本質的になる抗体、あるいは、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)の変異体(誘導体を含む)からなる抗体を提供し、そのような抗体又はそのフラグメントはDPRsに免疫特異的に結合する。当業者に知られている様々な標準的技術を、抗体をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するために使用することができ、そのような技術には、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、基準となるVH領域、VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL領域、VL−CDR1、VL−CDR2又はVL−CDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換又は2未満のアミノ酸置換をコードする。「保存的(な)アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがこの技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。代替において、変異を、例えば、飽和変異誘発などによってコード配列の全体又は一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を、活性(例えば、DPRs、及び/又は、変異した及び/又は凝集したC9ORF72−DPR種及び/又はそのフラグメントと結合する能力)を保持する変異体を特定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
例えば、変異を抗体分子のフレームワーク領域においてのみに、又は、抗体分子のCDR領域においてのみに導入することが可能である。導入された変異はサイレント変異又は中立のミスセンス変異である場合があり、例えば、抗体の抗原結合能に対する影響を全く有しないか、又はほとんど有しない場合があり、実際、いくつかのそのような変異はアミノ酸配列を全く変化させない。これらのタイプの変異は、コドン使用を最適化するために、又は、ハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用である場合がある。本発明の抗体をコードするコドン最適化コード領域が本明細書中の他のところで開示される。代替において、非中立的なミスセンス変異により、抗体の抗原結合能が変化する場合がある。ほとんどのサイレント変異及び中立的ミスセンス変異の位置はフレームワーク領域内である可能性が高く、一方、ほとんどの非中立的ミスセンス変異の位置はCDR内である可能性が高く、だが、このことは絶対的要件でない。当業者であれば、所望される性質、例えば、抗原結合活性における変化がないこと又は結合活性における変化(例えば、抗原結合活性における改善又は抗体特異性における変化)などを有する変異体分子を設計し、試験することができるであろう。変異誘発後、コードされたタンパク質が常法により発現させられる場合があり、そして、コードされたタンパク質の機能的活性及び/又は生物学的活性(例えば、DPRs、及び/又は、変異した及び/又は凝集したC9ORF72−DPR種及び/又はそのフラグメントと免疫特異的に結合する能力)を、本明細書中に記載される技術を使用して、又は、この技術分野において知られている技術を常法により改変することによって求めることができる。
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドは、どのようなポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチド(これらは非修飾のRNA又はDNAあるいは修飾されたRNA又はDNAである場合がある)からでも構成され得る。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA、ならびに、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖である場合がある、あるいは、より典型的には、二本鎖である場合があるか、又は、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物である場合があるDNA及びRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。加えて、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNA又はDNA、あるいは、RNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性又は他の理由のために改変される1つ又は複数の修飾された塩基あるいはDNA骨格又はRNA骨格を含有してもよい。「修飾(改変)(された)」塩基には、例えば、トリチル化塩基及び非通常的塩基(例えば、イノシンなど)が含まれる。様々な修飾をDNA及びRNAに対して行うことができる;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的又は代謝的に改変された形態を包含する。
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンの重鎖部分又は軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然型変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドを、1つ又は複数のアミノ酸置換、アミノ酸付加又はアミノ酸欠失が、コードされたタンパク質に導入されるように、1つ又は複数のヌクレオチド置換、ヌクレオチド付加又はヌクレオチド欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作出することができる。変異は、標準的な技術によって、例えば、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などによって導入される場合がある。好ましくは、保存的なアミノ酸置換が1つ又は複数の非必須アミノ酸残基において行われる。
よく知られているように、RNAが、標準的な技術、例えば、イソチオシアン酸グアニジウム抽出及び沈殿化、その後、遠心分離又はクロマトグラフィーなどによって、元のB細胞、ハイブリドーマ細胞又は他の形質転換細胞から単離される場合がある。望ましい場合、mRNAが、標準的な技術、例えば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーなどによって総RNAから単離される場合がある。好適な技術がこの技術分野では熟知されている。1つの実施形態において、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAが、逆転写酵素及びDNAポリメラーゼをよく知られている方法に従って使用して、同時又は別個に作製される場合がある。PCRが、コンセンサスな定常領域プライマーによって、又は、公開された重鎖及び軽鎖のDNA配列及びアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始される場合がある。上記で議論されるように、PCRはまた、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用される場合がある。この場合、ライブラリーが、コンセンサスなプライマー又はより大きい相同的プローブ(例えば、ヒト定常領域プローブなど)によってスクリーニングされる場合がある。
DNA、典型的にはプラスミドDNAが、この技術分野において知られている技術を使用して細胞から単離され、そして、例えば、組換えDNA技術に関連する前記の参考文献に詳しく示される標準的なよく知られている技術に従って制限酵素マッピング及び配列決定に供される場合がある。当然のことながら、DNAは、単離プロセス又はその後の分析の期間中のどの時点であっても、本発明に従う合成物である場合がある
この関連において、本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。1つの実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、又は、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、重鎖可変領域のCDRの少なくとも1つ、又は、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域又はVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列又はVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、又は、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、又は、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域又はVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1A−Lのいずれか1つに示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列又はVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、又は、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域が、図1A−Lのいずれか1つに示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群及びVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。
この技術分野において知られているように、2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチドの間における「配列同一性」が、一方のポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸配列又は核酸配列を第2のポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。本明細書中で議論されるとき、任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%同一であるかどうかを、この技術分野において知られている方法及びコンピュータープログラム/ソフトウエア(例えば、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI、53711)(これに限定されない)など)を使用して決定することができる。BESTFITでは、Smith and Waterman(Advances in Applied Mathematics 2(1981)、482〜489)の局所的相同性アルゴリズムを、2つの配列の間における相同性の最も良いセグメントを見出すために使用する。BESTFIT又はいずれかの他の配列アライメントプログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明による参照配列と95%同一であるかどうかを決定するときには、当然のことながら、同一性の百分率が参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算され、かつ、参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、パラメーターが設定される。
本発明の好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、表IIに示されるような、抗DPR抗体のV
H領域又はV
L領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。これに関連して、当業者は、軽鎖及び/又は重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドが両方の免疫グロブリン鎖又は一方の免疫グロブリン鎖のみの可変ドメインをコードし得ることを容易に理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表IIに示されるような、抗DPR抗体及び/又はそのフラグメントのV
H領域及びV
L領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。
表II:DPRs、好ましくはC9ORF72−DPRsを認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
本発明にはまた、他のところで記載されるように、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントが含まれる。加えて、本明細書中に記載されるように、融合ポリヌクレオチド、Fabフラグメント及び他の生物光学的誘導体をコードするポリヌクレオチドも本発明によって包含される。
ポリヌクレオチドは、この技術分野において知られているいずれかの方法によって作製又は製造される場合がある。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られているならば、当該抗体をコードするポリヌクレオチドが、例えば、Kutmeier他、BioTechniques 17(1994)、242に記載されるように、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられる場合があり、これには、簡単に記載すると、抗体をコードする配列の一部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、ならびに、連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
代替において、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドが、好適な供給源から得られる核酸から作製される場合がある。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが入手できず、しかし、抗体分子の配列が知られているならば、当該抗体をコードする核酸が化学合成される場合があるか、あるいは、好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、あるいは、DPR特異的抗体を発現するいずれかの組織もしくは細胞(例えば、抗体を発現させるために選択されるハイブリドーマ細胞など)から作製されるcDNAライブラリー、又は、そのようなものから単離される核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’末端及び5’末端にハイブリダイゼーション可能である合成プライマーを使用するPCR増幅によって得られる場合があり、又は、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを特定するために特定の遺伝子配列について特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得られる場合がある。PCRによって生じる増幅された核酸がその後、この技術分野において広く知られているいずれかの方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローン化される場合がある。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列が、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製するために、例えば、アミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入をもたらすために、ヌクレオチド配列の操作についてこの技術分野においてよく知られている方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどを使用して操作される場合がある(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)、及び、Ausubel他編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1998)に記載される技術を参照のこと。これらはともに、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
IV.抗体ポリペプチドの発現
単離された遺伝物質が、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体を提供するために操作された後、抗体をコードするポリヌクレオチドは典型的には、所望される量の抗体を産生させるために使用されることがある宿主細胞への導入のために発現ベクターに挿入される。抗体あるいはそのフラグメント、誘導体又はアナログ(例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖又は軽鎖)の組換え発現が本明細書中に記載される。本発明の抗体分子又は抗体の重鎖もしくは軽鎖あるいはその一部分(好ましくは重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含有するその一部分)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を産生させるためのベクターが、この技術分野においてよく知られている技術を使用する組換えDNA技術によって作製される場合がある。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法が本明細書中に記載される。当業者によく知られている方法を、抗体コード配列ならびに適切な転写制御シグナル及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、本発明の抗体分子あるいはその重鎖又は軽鎖あるいは重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列をproモーターに機能的に連結されて含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む場合があり(例えば、国際特許出願公開WO86/05807及びWO89/01036、ならびに、米国特許第5,122,464号を参照のこと)、また、抗体の可変ドメインが、重鎖全体又は軽鎖全体を発現させるためにそのようなベクターにクローン化される場合がある。
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、所望される遺伝子を宿主細胞に導入し、その遺伝子をその宿主細胞において発現させるためのビヒクルとして本発明に従って使用されるベクターを意味するために本明細書中では使用される。当業者には知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス及びレトロウイルスからなる群から容易に選択される場合がある。一般に、本発明と適合し得るベクターは、選択マーカー、所望される遺伝子のクローニングを容易にするための適切な制限部位、ならびに、真核生物細胞又は原核生物細胞における進入能及び/又は複製能を含む。本発明の目的のために、数多くの発現ベクター系が用いられる場合がある。例えば、1つのクラスのベクターでは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV又はMOMLV)又はSV40ウイルスなどに由来するDNAエレメントが利用される。他では、内部リボソーム結合部位を伴う多シストロン系の使用を伴う。加えて、DNAをその染色体に組み込んでいる細胞が、トランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする1つ又は複数のマーカーを導入することによって選択される場合がある。マーカーにより、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)、又は、重金属(例えば、銅など)に対する抵抗性が与えられる場合がある。選択マーカー遺伝子は、発現させられるDNA配列に直接に連結することができるか、又は、共形質転換によって同じ細胞に導入することができる。さらなるエレメントがまた、mRNAの最適な合成のために必要となる場合がある。これらのエレメントには、シグナル配列、スプライス信号ならびに転写プロモーター、エンハンサー及び終結シグナルが含まれる場合がある。
特に好ましい実施形態において、クローン化された可変領域遺伝子が、上記で議論されるような重鎖定常領域遺伝子及び軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒトの遺伝子)と一緒に発現ベクターに挿入される。1つの実施形態では、これは、Biogen IDEC社所有の発現ベクターNEOSPLA(米国特許No.6,159,730に開示される)によって達成される。このベクターは、サイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、マウスのベータグロビン主要プロモーター、SV40の複製起点、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエクソン1及びエクソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼの遺伝子及びリーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子及び定常領域遺伝子の取り込み、CHO細胞におけるトランスフェクション、それに続く、G418含有培地における選択、及び、メトトレキサート増幅を行ったとき、抗体の非常に高いレベルの発現をもたらすことが見出されている。当然のことながら、発現を真核生物細胞において誘発することができる発現ベクターはどれも、本発明において使用される場合がある。好適なベクターの例には、プラスミドのpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1及びpZeoSV2(これらはInvitrogen(San Diego、CA)から入手可能である)、ならびに、プラスミドのpCI(これはPromega(Madison、WI)から入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。一般に、非常に多数の形質転換細胞を、好適に高レベルの免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖を発現する形質転換細胞についてスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって行うことができる日常的な実験である。ベクター系はまた、米国特許第5,736,137号及び第5,658,570号に教示される(これらのそれぞれがその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。この系は、例えば、30pg/細胞/日を超える高い発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系が、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
他の好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体が、多シストロン構築物、例えば、米国特許出願公開第2003−0157641号A1(その全体が本明細書中に組み込まれる)に開示される多シストロン構築物などを使用して発現させられる場合がある。これらの発現系において、目的とする多数の遺伝子産物(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖など)がただ1つの多シストロン構築物からもたらされる場合がある。これらの系では、配列内リボソーム進入部位(IRES)が、比較的高いレベルの抗体を提供するために都合よく使用される。適合し得るIRES配列が米国特許第6,193,980号(これもまた本明細書中に組み込まれる)に開示される。当業者は、そのような発現系が、本出願において開示される抗体の完全な範囲を効果的に産生するために使用されることがあることを理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、本発明は、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含むベクターを提供する。
より一般的には、抗体のモノマーサブユニットをコードするベクター又はDNA配列が調製されると、発現ベクターが、適切な宿主細胞に導入される場合がある。宿主細胞へのプラスミドの導入を、当業者にはよく知られている様々な技術によって達成することができる。これらには、例えば、Fugene(登録商標)又はリポフェクタミンを使用するリポトランスフェクションを含むトランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、包まれたDNAを用いた細胞融合、顕微注入、及び、無傷のウイルスによる感染が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、宿主へのプラスミド導入が、標準的なリン酸カルシウム共沈殿法により行われる。発現構築物を有する宿主細胞が、軽鎖及び重鎖を産生させるために適切である条件のもとで成長させられ、重鎖及び/又は軽鎖のタンパク質合成についてアッセイされる。例示的なアッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)又は蛍光活性化細胞分取器分析(FACS)及び免疫組織化学などが含まれる。
発現ベクターが従来からの技術によって宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞がその後、抗体を本明細書中に記載される方法における使用のために産生させるため従来からの技術によって培養される。したがって、本発明には、好ましくは異種プロモーターに機能的に連結される、本発明の抗体又はその重鎖もしくは軽鎖、あるいは、少なくともその免疫グロブリンの結合ドメイン又は可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が含まれる。加えて、又は、代替において、本発明にはまた、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む本明細書中上記で定義されるようなベクターを含む宿主細胞が含まれる。二重鎖抗体を発現させるための好ましい実施形態において、重鎖及び軽鎖の両方をコードする単一のベクター又は複数のベクターが、下記で詳述されるように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において共発現させられる場合がある。
宿主細胞が本発明の2つの発現ベクターにより共トランスフェクションされる場合があり、この場合、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする。これら2つのベクターは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有する場合がある。代替では、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードするただ1つのベクターが使用される場合がある。そのような状況では、軽鎖が好都合には、毒性のない重鎖の過剰を避けるために重鎖の前に置かれる(Proudfoot、Nature 322(1986)、52;Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、2197を参照のこと)。重鎖及び軽鎖のためのコード配列がcDNA又はゲノムDNAを含む場合がある。
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を示す。抗体を組換え宿主から単離するためのプロセスの記載において、用語「細胞」及び「細胞培養(物)」が、別途明確に指定される場合を除き、抗体の供給源を示すために交換可能に使用される。別の言い方をすれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心分離された細胞全体から、又は、培地及び懸濁された細胞の両方を含有する細胞培養物からのどちらをも意味する場合がある。
様々な宿主−発現ベクター系が、本明細書中に記載される方法において使用されるための抗体分子を発現させるために利用される場合がある。そのような宿主−発現系は、目的とするコード配列が産生され、続いて精製されることがあるビヒクルを表し、しかし、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換又はトランスフェクションされたとき、本発明の抗体分子をその場で発現する細胞もまた表す。これらには、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクター又はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染させられる昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)が感染させられるか、又は、抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換される植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、NSO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、完全な組換え抗体分子の発現のためにはとりわけ、細菌細胞(例えば、大腸菌など)、より好ましくは真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントなど)と併せての哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などが、抗体のための効果的な発現系である(例えば、Foecking他、Gene 45(1986)、101;Cockett他、Bio/Technology 8(1990)、2を参照のこと)。
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は多くの場合、哺乳動物起源である;当業者には、宿主細胞株において発現させられる所望の遺伝子産物のために最もよく適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力があると思われる。例示的な宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFR欠損)、HELA(ヒト子宮頸ガン)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40のT抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)及び293(ヒト腎臓)が含まれるが、これらに限定されない。CHO細胞及び293細胞が特に好ましい。宿主細胞株は典型的には、商用サービスから、すなわち、American Tissue Culture Collectionから入手可能であり、又は、発表された文献から入手可能である。
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、あるいは、遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾し、また、プロセシングする宿主細胞系統が選ばれる場合がある。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)が当該タンパク質の機能のために重要である場合がある。種々の宿主細胞が、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後のプロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株又は宿主系を、発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを保証するために選ぶことができる。この目的を達成するために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用される場合がある。
組換えタンパク質の長期間にわたる高収量の産生のためには、安定的発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が操作される場合がある。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、むしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択マーカーによって制御されるDNAにより形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞は富化培地において1日間〜2日間にわたって成長させられる場合があり、その後、選択培地に切り換えられる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは選択に対する抵抗性を与え、また、細胞がプラスミドをその染色体に安定的に組み込み、成長して、結果としてクローン化され、かつ、細胞株に拡大することができる増殖巣を形成することを可能にする。この方法は、抗体分子を安定的に発現する細胞株を操作するために都合よく使用される場合がある。
数多くの選択システムが使用される場合があり、これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler他、Cell 11(1977)、223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska&Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1992)、202)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy他、Cell 22(1980)、817)をtk−細胞、hgprt−細胞又はaprt−細胞においてそれぞれ用いることができる。また、代謝拮抗物質抵抗性を下記の遺伝子のための選択の基礎として使用することができる:dhfr、これはメトトレキサートに対する抵抗性を与える(Wigler他、Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、357;O’Hare他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する抵抗性を与える(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する抵抗性を与える(Goldspiel他、Clinical Pharmacy 12(1993)、488〜505;Wu and Wu、Biotherapy 3(1991)、87〜95;Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32(1993)、573〜596;Mulligan、Science 260(1993)、926〜932;ならびに、Morgan and Anderson、Ann.Rev.Biochem.62(1993)、191〜217;TIB TECH 11(1993)、155〜215);及び、hygro、これはヒグロマイシンに対する抵抗性を与える(Santerre他、Gene 30(1984)、147)。使用することができる、組換えDNA技術の技術分野において一般に知られている様々な方法が、Ausubel他(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載さされ、また、第12章及び第13章、Dracopoli他(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley&Sons、NY(1994);Colberre−Garapin他、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載される(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
抗体分子の発現レベルをベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、Academic Press、New York、第3巻(1987)を参照のこと)。抗体を発現させるベクター系におけるマーカーが増幅可能であるときには、宿主細胞の培養において存在する阻害剤のレベルにおける増大はマーカー遺伝子のコピー数を増大させるであろう。増幅された領域は抗体遺伝子に付随するので、抗体の産生もまた増大するであろう(Crouse他、Mol.Cell.Biol.3(1983)、257を参照のこと)。
インビトロ産生では、スケールアップにより、多量の所望されるポリペプチドを与えることが可能である。組織培養条件のもとでの哺乳動物細胞培養のための様々な技術がこの技術分野において知られており、これらには、均一懸濁培養、例えば、エアーリフト型リアクター又は連続撹拌槽リアクターにおける培養、あるいは、固定化細胞又は包括化細胞の培養、例えば、中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ又はセラミックカートリッジにおける培養が含まれる。必要及び/又は所望されるならば、ポリペプチドの溶液を、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後で、あるいは、本明細書中に記載されるHICクロマトグラフィー工程の前又は後で、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えば、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー、又は、(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体をコードする遺伝子はまた、哺乳動物以外の細胞、例えば、細菌細胞又は昆虫細胞又は酵母細胞又は植物細胞において発現させることができる。核酸を容易に取り込む細菌には、腸内細菌科のメンバー、例えば、大腸菌又はサルモネラ属の菌株など;バチルス科、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など;肺炎球菌(Pneumococcus);連鎖球菌属(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が含まれる。細菌において発現させられるとき、異種ポリペプチドは典型的には封入体の一部となることがさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは単離され、精製され、その後、機能的な分子に組み立てられなければならない。四価形態の抗体が所望される場合、そのサブユニットは四価抗体に自己集合するであろう(例えば、国際特許出願公開WO02/096948を参照のこと)。
細菌系において、多数の発現ベクターが、抗体分子が発現されるための意図される使用に依存して、都合よく選択される場合がある。例えば、多量のそのようなタンパク質が抗体分子の医薬組成物の作製のために産生させられることになるときには、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターには、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther他、EMBO J.2(1983)、1791)(この場合、抗体コード配列がlacZコード領域とインフレームでベクターに個々に連結され、その結果、融合タンパク質が産生されるようにされる場合がある);pINベクター(Inouye&Inouye、Nucleic Acids Res.13(1985)、3101〜3109;Van Heeke&Schuster、J.Biol.Chem.24(1989)、5503〜5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターもまた、外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために使用される場合がある。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズのマトリックスへの吸着及び結合、その後の遊離したグルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビン又は第Xa因子のプロテアーゼ切断部位を含み、その結果、クローン化された標的遺伝子産物がGST成分から放出され得るように設計される。
原核生物に加えて、真核生物の微生物もまた使用される場合がある。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち、普通のパン酵母が、真核生物の微生物の中で最も一般に使用されるが、多くの他の菌株が一般に利用可能である(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))。サッカロミセス属における発現のために、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb他、Nature 282(1979)、39;Kingsman他、Gene 7(1979)、141;Tschemper他、Gene 10(1980)、157)が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株(例えば、ATCC第44076号又はPEP4−1(Jones、Genetics 85(1977)、12))のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。その場合、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在により、形質転換をトリプトファンの不在下での成長によって検出するための効果的な環境が提供される。
昆虫系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が典型的には、外来タンパク質を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列がウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)の中に個々にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれる場合がある。
本発明の抗体分子が組換え発現させられると、本発明の完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖及び重鎖又は他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインAの後での特異的抗原についてのアフィニティー、及び、サイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈澱)、又は、タンパク質の精製のためのいずれかの他の標準的な技術によることを含めて、この技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(例えば、Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982)を参照のこと)。代替では、本発明の抗体の親和性を増大させるための好ましい方法が米国特許出願公開第2002−0123057号A1に開示される。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、抗DPR抗体、又は変異した、及び/又は凝集したC9ORF72−DPR種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体、或いはその免疫グロブリン鎖を調製するための方法であって、
(a)本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド又はベクターを含む本明細書中上記で定義されるような宿主細胞を培養すること、及び
(b)前記抗体又はその免疫グロブリン鎖を培養物から単離すること
を含む方法を提供する。
さらには、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドによってコードされる抗体又はその免疫グロブリン鎖、あるいは、抗DPR抗体、又は変異した及び/又は凝集したC9ORF72−DPR種及び/又はそのフラグメント又はその免疫グロブリン鎖を調製するための前記方法によって得ることができる抗体又はその免疫グロブリン鎖に関連する。
V.融合タンパク質及びコンジュゲート
特定の実施形態において、抗体ポリペプチドは、通常の場合には抗体に付随しないアミノ酸配列あるいは1つ又は複数の成分を含む。例示的な改変が下記においてより詳細に記載される。例えば、本発明の単鎖Fv抗体フラグメントは柔軟なリンカー配列を含む場合があり、又は、機能的成分(例えば、PEG、薬物、毒素又は標識(例えば、蛍光性、放射性、酵素、核磁気性及び重金属など))を付加するために改変される場合がある。
本発明の抗体ポリペプチドは融合タンパク質を含む場合があり、融合タンパク質から本質的になる場合があり、又は、融合タンパク質からなる場合がある。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位を伴う免疫グロブリンのDPR結合ドメインと、少なくとも1つの異種部分、すなわち、自然界では生来的に連結されない部分とを含むキメラ分子である。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされる別個のタンパク質において正常に存在する場合があり、又は、同じタンパク質において正常に存在する場合があるが、融合ポリペプチドにおいては新しい配置で置かれる。融合タンパク質が、例えば、化学合成によって、又は、ペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出される場合がある。
用語「異種(の)」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドに適用される場合、当該ポリヌクレオチド又はポリペプチドが、比較されている実体の残部のものとは異なる実体に由来することを意味する。例えば、本明細書中で使用されるように、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又はアナログに融合されるための“異種ポリペプチド”は、同じ種の非免疫グロブリンポリペプチド、あるいは、異なる種の免疫グロブリンポリペプチド又は非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。
本明細書中の他のところでより詳細に議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体はさらに、N末端又はC末端において異種ポリペプチドに組換え融合される場合があり、あるいは、ポリペプチド又は他の組成物に化学的にコンジュゲート化される場合がある(共有結合によるコンジュゲート化及び非共有結合によるコンジュゲート化を含む)。例えば、抗体が、検出アッセイにおいて標識として有用である分子に、また、エフェクター分子(例えば、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種又は毒素など)に組換え融合されるか、又はコンジュゲート化される場合がある(例えば、国際特許出願公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号及び欧州特許出願EP0396387を参照のこと)。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、ペプチド結合又は修飾型ペプチド結合(すなわち、ペプチドアイソスター)によって互いにつながれるアミノ酸から構成されることが可能であり、また、遺伝子によりコードされる20個のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含有する場合がある。抗体は、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシングなど)によって、又は、この技術分野ではよく知られている化学的修飾技術によって改変される場合がある。そのような修飾が、基礎的な教本において、また、より詳しいモノグラフにおいて、ならびに、膨大な数の研究文献において十分に記載されている。修飾を、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシル末端を含めて、抗体においてどこにでも、あるいは、炭水化物などの成分に対して行うことができる。同じタイプの修飾が、所与の抗体において、いくつかの部位において同じ程度又は種々の程度で存在する場合があることが理解されるであろう。また、所与の抗体が多くのタイプの修飾を含有する場合がある。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、また、分岐を伴って、又は伴うことなく、環状である場合がある。環状の抗体、分岐した抗体、及び、分岐した環状の抗体が、翻訳後の天然のプロセスから生じる場合があり、又は、合成的方法によって作製される場合がある。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合連結、ヘム成分の共有結合連結、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合連結、脂質又は脂質誘導体の共有結合連結、ホスファチジルイノシトールの共有結合連結、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)、及び、ユビキチン化が含まれる(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York、第2版(1993);Posttranslational Covalent Modification Of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1頁〜12頁(1983);Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626〜646;Rattan他、Ann.NY Acad.Sci.663(1992)、48〜62を参照のこと)。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体と、異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体のVH領域のいずれか1つ又は複数のアミノ酸配列、あるいは、本発明の抗体のVL領域又はそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ又は複数のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法及び処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVH−CDR又はそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列、あるいは、抗体のVL−CDR又はそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。1つの実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体のVH−CDR3又はそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含み、そのような融合タンパク質はDPRタンパク質又はペプチドに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列と、本発明の抗体の少なくとも1つのVL領域又はそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVH領域及びVL領域は、DPRsと特異的に結合する単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメント又はFabフラグメント)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法及び処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVHCDRのいずれか1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸配列と、抗体のVLCDR又はそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ、2つ、3つまたそれ以上のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、VH−CDR又はVL−CDRの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上が、本発明の単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメント又はFabフラグメント)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた本発明によって包含される。
文献に報告される例示的な融合タンパク質には、下記の融合物が含まれる:T細胞受容体(Gascoigne他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(1987)、2936〜2940);CD4(Capon他、Nature 337(1989)、525〜531;Traunecker他、Nature 339(1989)、68〜70;Zettmeissl他、DNA Cell Biol.USA 9(1990)、347〜353;及びByrn他、Nature 344(1990)、667〜670);L−セレクチン(ホーミング受容体)(Watson他、J.Cell.Biol.110(1990)、2221〜2229;及びWatson他、Nature 349(1991)、164〜167);CD44(Aruffo他、Cell 61(1990)、1303〜1313);CD28及びB7(Linsley他、J.Exp.Med.173(1991)、721〜730);CTLA−4(Lisley他、J.Exp.Med.174(1991)、561〜569);CD22(Stamenkovic他、Cell 66(1991)、1133〜1144);TNF受容体(Ashkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)、10535〜10539;Lesslauer他、Eur.J.Immunol.27(1991)、2883〜2886;及びPeppel他、J.Exp.Med.174(1991)、1483〜1489(1991));ならびにIgE受容体a(Ridgway and Gorman、J.Cell.Biol.115(1991)、アブストラクト番号:1448)。
本明細書中の他のところで議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、ポリペプチドのインビボ半減期を増大させるために、又は、この技術分野において知られている方法を使用する免疫アッセイにおける使用のために異種ポリペプチドに融合される場合がある。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の抗体に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる(例えば、Leong他、Cytokine、16(2001)、106〜119;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;又はWeir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512を参照のこと)。
そのうえ、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、合成変異体又は生物工学的誘導体は、マーカー配列(例えば、それらの精製又は検出を容易にするためのペプチドなど)に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーのアミノ酸配列は、多くのものが市販されているが、とりわけ、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(HIS)であり、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)において提供されるタグなどである。例えば、Gentz他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)、821〜824に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製のために有用である他のペプチドタグには、「HA」タグ(これは、インフルエンザの赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する)(Wilson他、Cell 37(1984)、767)、GST、c−myc及び「flag」タグが含まれるが、これらに限定されない(例えば、エピトープタグ化技術の総説については、Bill Brizzard、BioTechniques 44(2008)、693〜695を、また本発明において使用可能である最も一般的なエピトープタグを列挙するその694頁における表1を参照のこと。これらの主題は、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる)。
融合タンパク質を、この技術分野においてよく知られている方法を使用して調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号及び第5,225,538号を参照のこと)。融合が行われるまさにその部位が、融合タンパク質の分泌又は結合特性を最適化するために経験的に選択される場合がある。融合タンパク質をコードするDNAがその後、本明細書中上で記載されるように行われる発現のために宿主細胞にトランスフェクションされる。
本発明の抗体は非コンンジュゲート化形態で使用される場合があり、あるいは、例えば、分子の治療的性質を改善するために、標的検出を容易にするために、又は、患者の画像化もしくは治療のために様々な分子の少なくとも1つにコンジュゲート化される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、精製が行われるときには精製前又は精製後のどちらでも標識化又はコンジュゲート化することができる。特に、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬剤又はPEGにコンジュゲート化される場合がある。
従来の抗体を含む免疫毒素であるコンジュゲートがこの技術分野において幅広く記載されている。毒素が従来からのカップリング技術によって抗体にカップリングされる場合があり、又は、タンパク質毒素部分を含有する免疫毒素を融合タンパク質として作製することができる。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素を例示するものが、Byers、Seminars Cell.Biol.2(1991)、59〜70、及び、Fanger、Immunol.Today 12(1991)、51〜54によって記載される免疫毒素である。
当業者は、コンジュゲートがまた、コンジュゲート化されるための選択された薬剤に依存して様々な技術を使用して組み立てられ得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンとのコンジュゲートが、例えば、DPR結合ポリペプチドをビオチンの活性化エステル(例えば、ビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)と反応することによって調製される。同様に、蛍光性マーカーとのコンジュゲートがカップリング剤(例えば、本明細書中に列挙されるカップリング剤)の存在下で調製される場合があり、又は、イソチオシアン酸塩との反応によって、好ましくはイソチオシアン酸フルオレセインとの反応によって調製される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体のコンジュゲートが同様な様式で調製される。
本発明はさらに、診断剤又は治療剤にコンジュゲート化される本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体を包含する。抗体を、例えば、DPRsの存在を明らかにして、DPRs(好ましくは、DPRs形成変異C9ORF72、即ちC9ORF72−DPRs)に関連付づけられる疾患に罹る危険性を示すために、そのような疾患(すなわち、凝集したDPRsの出現を示す、あるいは、それらに関連づけられる疾患)の発症又は進行をモニターして、又は臨床検査手順の一部として、例えば、所与の処置療法及び/又は防止療法の効力を明らかにするために、診断的に使用することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能に標識される抗体に関連する。さらには、1つの実施形態において、本発明は、薬物に結合させられる抗体に関連する。検出を、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体を検出可能な物質にカップリングすることによって容易にすることができる。検出可能な物質又は標識は一般に、酵素、重金属(好ましくは金)、色素(好ましくは蛍光性色素又は発光性色素)又は放射性標識である場合がある。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光性物質、発光性物質、生物発光性物質、放射性物質、様々な陽電子放出断層撮影法を使用する陽電子放出金属、及び、非放射性常磁性金属イオンが含まれる(本発明に従って診断剤として使用されるために抗体にコンジュゲート化することができる金属イオンについては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照のこと)。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられる;好適な蛍光性物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンが挙げられる;発光性物質の一例として、ルミノールが挙げられる;生物発光性物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられる;好適な放射性物質の例として、125I、131I、111In又は99Tcが挙げられる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団及び重金属からなる群から選択される検出可能に標識された抗体を提供する。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体はまた、化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。化学発光標識された抗体の存在がその後、化学反応の経過の期間中に生じる発光の存在を検出することによって求められる。特に有用な化学発光性の標識用化合物の例が、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルである。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体が検出可能に標識され得る方法の1つは、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体を酵素に連結し、連結された生成物を酵素免疫アッセイ(EIA)において使用することによってである(Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.、Diagnostic Horizons 2(1978)、1〜7);Voller他、J.Clin.Pathol.31(1978)、507〜520;Butler、Meth.Enzymol.73(1981)、482〜523;Maggio,E.(編)、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1980);Ishikawa,E.他(編)、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo(1981))。酵素は、抗体に結合しているので、例えば、分光光度法的手段、蛍光定量法的手段又は目視的手段によって検出することができる化学的成分を生成するような様式で、適切な基質(好ましくは発色性基質)と反応するであろう。抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。加えて、検出を、酵素のための発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出はまた、類似して調製された標準物との比較における基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成される場合がある。
検出はまた、様々な他の免疫アッセイのいずれかを使用して達成される場合がある。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体を放射能標識することによって、抗体を放射免疫アッセイ(RIA)の使用により検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.、Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society(March、1986)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。放射性同位体を、ガンマカウンター、シンチレーションカウンター又はオートラジオグラフィー(これらに限定されない)を含む手段によって検出することができる。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体はまた、蛍光放射金属(例えば、ランタニド系列の152Euなど)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化基を使用して抗体に結合させることができる。
様々な成分を抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体にコンジュゲート化するための技術がよく知られている;例えば、Arnon他、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld他(編)、243頁〜56頁、Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom他、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson他(編)、Marcel Dekker,Inc.、623頁〜53頁(1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications、Pinchera他(編)、475頁〜506頁(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin他(編)、Academic Press、303頁〜16頁(1985)、及び、Thorpe他、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62(1982)、119〜158を参照のこと。
述べられたように、特定の実施形態において、結合性分子、例えば、結合性ポリペプチド、例えば、抗体又はその免疫特異性フラグメントの安定性又は効力を高める成分をコンジュゲート化することができる。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の結合性分子に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる。Leong他、Cytokine、16(2001)、106;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;又は、Weir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512。
VI.組成物及び使用方法
本発明は、本明細書中前記で定義されるように、上記で述べられた本発明のDPR結合性分子(例えば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント、それらの変異体又は生物工学的誘導体)、あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、又は細胞を含む組成物に関連する。1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、かつ、医薬的に許容される担体をさらに含む。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、インターロイキン又はインターフェロンなど)を含む場合がある。変異した及び/又は凝集したDPRs、特にC9ORF72−DPRsの出現を示すか、あるいは、関連づけられる疾患又は障害(例えば、FTLDなど)を処置することにおける使用のために、さらなる薬剤が、小さい有機分子、抗DPR抗体及びそれらの組合せからなる群から選択される場合がある。したがって、特定の好ましい実施形態において、本発明は、DPRタンパク質に伴う疾患又は障害の予防的処置及び治療的処置、DPRタンパク質及び/又は凝集C9ORF72に伴う疾患又は障害の進行又はDPRの処置に対する応答を対象においてモニターすること、あるいは、DPRタンパク質及び/又は凝集C9ORF72−DPRsに伴う疾患又は障害を発症することについての対象の危険性を明らかにすることのための医薬組成物又は診断組成物を調製するための、DPR結合性分子の使用、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント、あるいは、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞の使用に関連する。
したがって、1つの実施形態において、本発明は、DPRs、及びDPRタンパク質(例えばC9ORF72−DPRsに起因する凝集C9ORF72)の、罹患した系及び器官における異常な蓄積及び/又は沈着によって特徴づけられる疾患又は障害を処置する方法であって、その必要性のある対象に、本発明の上記で記載されたDPR結合性分子、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞のいずれか1つの治療有効量を投与することを含む方法に関連する。
本発明の治療的取り組みの特定の利点が、本発明の組換え抗体は、例えば、無症候性の変異を有する、凝集したDPRsの出現を示す、又は、凝集したDPRsに関連づけられる疾患の徴候又は症状を何ら有しない健康なヒト対象から得られるB細胞又はメモリーB細胞に由来しており、したがって、DPRs、例えば、伸長したヘキサヌクレオチドリピートを有する変異C9ORF72(C9ORF72にジペプチドリピートを形成し、C9ORF72−DPRsに起因する凝集C9ORF72をもたらすことになる)に関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することが、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患又は障害の出現の危険性を減らすことが、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患又は障害の発症又は進行を遅らせることが、ある程度の確率で可能であるという事実にある。典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞変異、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による標的DPR分子に対する高親和性結合における選択性及び有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。
そのような細胞は生体内において、例えば、ヒト体内において、自己免疫学的反応又はアレルギー反応の意味で、関連した、又は他の生理学的なタンパク質又は細胞構造によって活性化されていないという認識はまた、臨床試験段階を首尾よく生き残るという相当に増大した可能性がこれにより意味されるので、非常に医学的に重要である。いわば、効率、許容性及び耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防的抗体又は治療的抗体の前臨床開発及び臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト由来抗DPR抗体は、治療剤としてのその標的構造特異的効率と、副作用のその低下した可能性との両方により、成功のその臨床的可能性を著しく増大させることが予想され得る。
本発明はまた、上記で記載された成分(例えば、本発明の抗DPR抗体、その結合フラグメント、生物工学的誘導体もしくは変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、又は細胞)の1つ又は複数により満たされる1つ又は複数の容器を含む医薬用及び診断用のパック又はキットをそれぞれ提供する。そのような容器には、医薬品又は生物学的製造物の製造、使用又は販売を規制する政府当局によって定められる形式での通知が伴い得る(ただし、そのような通知は、製造、使用又は販売の当局によるヒト投与のための承認を反映する)。加えて、又は、代替において、キットは、適切な診断アッセイにおいて使用されるための試薬及び/又は説明書を含む。本発明の組成物、例えば、キットは、当然のことながら、DPRの存在が付随する疾患又は障害のリスク評価、診断、防止及び処置のために特に適しており、具体的には、DPRsの存在によって一般には特徴づけられる障害を処置するために適用可能である。特に、前記組成物は、DPRの凝集(例えば、伸長したヘキサヌクレオチドリピートを有する変異C9ORF72(C9ORF72−DPRsに起因する凝集C9ORF72をもたらすことになる)に関連した疾患の処置に有用である。DPRsに伴う疾患及び/又は障害には、これらに限定されるわけではないが、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び/又は脊髄小脳失調症36型が含まれる。
本発明の医薬組成物はこの技術分野においてよく知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野ではよく知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、よく知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与が、種々の方法によって、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、局所的投与又は皮内投与あるいは脊髄送達又は脳送達によって行われる場合がある。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤及び等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液又は他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpH及び等張性状態に調節される。直腸投与又は膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある。
投薬計画が主治医及び臨床上の要因によって決定されるであろう。医療技術分野ではよく知られているように、どのような患者であれ、患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき具体的な化合物、性別、投与時間及び投与経路、全身の健康状態、ならびに、同時に投与されている他の薬物を含めて、多くの要因に依存する。典型的な用量が、例えば、0.001μg〜1000μgの範囲(あるいは、この範囲における発現又は発現阻害のための核酸の範囲)であり得る;しかしながら、この例示的な範囲よりも少ない用量又は大きい用量が、とりわけ上述の要因を考慮して想定される。一般に、投薬量は、例えば、宿主体重の約0.0001〜100mg/kgの範囲が可能であり、より通常的には0.01〜5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)が可能である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重又は10mg/kg体重、あるいは、1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲において中間的である用量もまた、本発明の範囲内で意図される。対象には、そのような用量を毎日、1日おきに、毎週、又は、経験的分析によって決定されるいずれかの他のスケジュールに従って投与することができる。例示的な処置は、例えば、少なくとも6ヶ月の長期間にわたる多数回の投薬での投与を伴う。さらなる例示的な処置計画は、2週間毎に1回、又は、1ヶ月に1回、又は、3ヶ月毎〜6ヶ月毎に1回での投与を伴う。例示的な投薬スケジュールには、連続した毎日での1〜10mg/kg又は15mg/kg、1日おきでの30mg/kg、あるいは、毎週での60mg/kgが含まれる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれの抗体の投薬量が、示される範囲内である。進行を定期的な評価によってモニターすることができる。非経口投与のための調製物には、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁物及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、及び、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)が挙げられる。水性キャリアには、生理的食塩水及び緩衝媒体を含めて、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルション又は懸濁物が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル又は固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、流体及び栄養補充液及び電解質補充液(例えば、リンゲルブドウ糖に基づくものなど)などが含まれる。保存剤及び他の添加剤もまた存在する場合がある(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤及び不活性ガスなど)。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、ドーパミン又は精神薬理学的薬物など)を含む場合がある。
さらには、本発明の好ましい実施形態において、例えば、本発明の医薬組成物が抗DPR抗体あるいはDPR結合フラグメント、又はそれらの合成若しくは生物工学的変異体又は誘導体を受動免疫化のために含むならば、医薬組成物はワクチンとして配合される場合がある。背景の節で述べられたように、凝集したDPR種がFLTDやALSなどの疾患及び/又は障害の主要な誘因である。したがって、本発明のヒト抗DPR抗体及び同等なDPR結合性分子による受動免疫化は、能動免疫化療法概念のいくつかの有害な影響を回避すること、そして、DPRsの軽減された凝集をもたらすことを助けるであろうと予想することは賢明なことである。したがって、本発明の抗DPR抗体及びその同等物は、凝集したDPRs、特にC9ORF72−DPRsの存在を示すか、又は、凝集したDPRs、特にC9ORF72−DPRsによって引き起こされる疾患又は障害、例えばFTLDの防止又は緩和のためのワクチンとして特に有用であろう。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えFabフラグメント(rFab)及び単鎖フラグメント(scFv)を使用することが有益である場合がある。これは、それらがより容易に細胞膜に浸透するかもしれないからである。例えば、Robert他、Protein Eng.Des.Sel.(2008)(Oct 16);S1741−0134(これはオンライで事前に発表された)は、AβのN末端領域におけるエピトープを認識するモノクローナル抗体WO−2のキメラな組換えFabフラグメント(rFab)及び単鎖フラグメント(scFv)の使用を記載する。操作されたフラグメントは、(i)アミロイド原線維化を防止することができ、(ii)事前に形成されたAβ1−42原線維を解凝集することができ、かつ、(iii)Aβ1−42オリゴマー媒介の神経毒性を完全なIgG分子と同じくらい効率的にインビトロで阻害することができた。エフェクター機能を欠く小さいFab及びscFvの操作された抗体様式を使用することの認識された利点には、血液脳関門をより効率的に通過すること、及び、炎症性の副反応を誘発する危険性を最小限に抑えることが含まれる。さらには、scFV及び単鎖ドメイン抗体は全長抗体の結合特異性を保持することのほかに、それらは単一遺伝子として発現させることができ、また、折り畳み、相互作用、修飾、又は、それらの標的の細胞内局在化の変化についての潜在的可能性が伴うが、細胞内抗体として哺乳動物細胞において細胞内に発現させることができる(総説については、例えば、Miller and Messer、Molecular Therapy、12(2005)、394〜401を参照のこと)。
異なる取り組みにおいて、Muller他、Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241は、抗体が、生細胞を傷づけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる技術基盤(いわゆる「SuperAntibody Technology」)を記載する。そのような細胞浸透抗体により、新しい診断範囲及び治療範囲が開拓される。用語「TransMabs」がこれらの抗体のために案出されている。
さらなる実施形態において、DPRs、特に、凝集したDPRs(C9ORF72−DPRsなど)の出現に関連づけられる疾患、障害又は症状を処置するために有用である他の抗体の共投与又は逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる抗体が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる抗体の例には、CD33、SGLT2、IL−6及びIL−1を標的化する抗体が含まれるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、DPRに関連づけられる、具体的には凝集型DPR(例えば、変異型C9ORF72など)、すなわち、C9ORF72−DPRに関連づけられる疾患、障害又は症状を処置するために有用である他の薬剤の共投与又は逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる薬剤が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる薬剤の例には、下記の薬剤が含まれるが、それらに限定されない:不随意筋運動を標的とするVMAT2阻害剤、例えば、抗炎症剤など、例えば、ジフルシナール(diflusinal)、コルチコステロイド類、2−(2,6−ジクロルアニリノ)フェニル酢酸(ジクロフェナク)、イソ−ブチルプロパノイックフェノール酸(iso−butyl−propanoic−phenolic acid)(イブプロフェン)など;利尿剤、没食子酸エピガロカテキン、メルファラン塩酸塩、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、ボルテゾミブ−メルファラン、ボルテゾミブ−デキサメタゾン、メルファラン−デキサメタゾン、ボルテゾミブ−メルファラン−デキサメタゾン;抗うつ剤、抗精神病薬、神経遮断剤、抗痴呆剤(例えば、NMDA受容体アンタゴニストのメマンチン)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルHCl、リバスチグミン、ガランタミン)、グルタミン酸アンタゴニスト及び他の向知性剤血圧薬剤(例えば、ジヒドララジン、メチルドパ)、細胞増殖抑制剤、グルココルチコイド類、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;抗炎症剤、又は、どのような組合せであれ、それらの組合せ。
治療効果的な用量又は量は、症状又は状態を改善するために十分である有効成分のそのような量を示す。そのような化合物の治療効力及び毒性を、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学手順によって、例えば、ED50(集団の50%において治療効果的な用量)及びLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって求めることができる。治療効果と毒性影響との間における用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表すことができる。
前記から、本発明は、上記抗体の少なくとも1つのCDRを含むDPR結合性分子のどのような使用をも包含し、具体的には、上記で述べられるような、DPRs、特に、凝集したDPRs(C9ORF72−DPRsなど)に関連づけられる疾患又は障害(例えばFTLDなど)の診断及び/又は処置のためのそのような分子のどのような使用をも包含することが明らかである。好ましくは、前記結合性分子は本発明の抗体又は生物学的誘導体である。加えて、本発明は、本明細書中前記で記載される述べられた抗体のいずれかの1つの様々な抗イディオタイプ抗体に関連する。これらは、抗原結合部位の近くにおいて抗体の可変領域に位置する特有の抗原性ペプチド配列に結合する抗体又は他の結合性分子であり、例えば、対象から得られるサンプルにおける抗DPR抗体を検出するために有用である。1つの実施形態において、本発明は、DPRsに関連づけられる疾患又は障害の予防的処置、治療的処置、ならびに/あるいは、DPRsに関連づけられる疾患又は障害の進行又は処置に対する応答をモニターすることにおいて使用されるための、本明細書中上記において、また下記で定義されるような抗体、又は、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPR結合性分子、本明細書中で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクター又は細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物又は診断組成物を提供する。好ましい実施形態では、疾患及び/又は障害は、凝集したDPRsを伴う。特に好ましい実施形態では、疾患及び/又は障害は、C9ORF72−DPRsを伴う(例えばFTLDやALSなど)。
別の実施形態において、本発明は、本発明の上記で記載されたDPR結合性分子、抗体、抗原結合フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つと、場合により、検出のための好適な手段(例えば、免疫又は核酸に基づく診断方法において従来から使用される試薬など)とを含む診断組成物に関連する。本発明の抗体は、例えば、抗体を液相において利用することができるか、又は、固相キャリアに結合させることができる免疫アッセイにおける使用のために適している。本発明の抗体を利用することができる免疫アッセイの例が、直接的様式又は間接的様式でのどちらであれ、競合的免疫アッセイ及び非競合的免疫アッセイである。そのような免疫アッセイの例が、放射免疫アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリーアッセイ及びウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原及び抗体は多くの異なるキャリアに結合させることができ、また、それらに特異的に結合する細胞を単離するために使用することができる。よく知られているキャリアの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然セルロース及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース及びマグネタイトが含まれる。キャリアの性質は本発明の目的のために可溶性又は不溶性のどちらでも可能である。多くの異なる標識及び標識化方法が当業者には知られている。本発明において使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光性化合物、化学発光化合物及び生物発光化合物が含まれる(本明細書中上記で議論された実施形態もまた参照のこと)。
さらなる実施形態によって、DPR結合性分子はまた、特に、本発明の抗体はまた、血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、リンパサンプル又はいずれかの他の体液サンプル(例えば、唾液サンプル又は尿サンプルなど)である場合がある体液サンプルを検査された個体から得ること、及び、体液サンプルを、抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件のもとで本発明の抗体と接触させることによって、障害を個体において診断するための方法において使用される場合がある。そのような複合体のレベルがその後、この技術分野において知られている方法によって求められ、コントロールサンプルにおいて形成されるレベルよりも有意に大きいレベルにより、疾患が、検査された個体において示される。同じ様式で、本発明の抗体が結合する特異的抗原もまた使用される場合がある。したがって、本発明は、結合性分子、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを含むインビトロ免疫アッセイに関連する。
本発明のさらなる実施形態において、本発明のDPR結合性分子(具体的には抗体)はまた、個体における疾患又は障害の診断を、生検物を試験された個体から得ることによって行うための方法において使用される場合がある。
この関連において、本発明はまた、この目的のために具体的に設計される手段に関連する。例えば、抗体に基づくアレイが使用される場合があり、アレイには、例えば、DPRを特異的に認識する本発明の抗体又はその同等な抗原結合性分子が負荷される。マイクロアレイでの免疫アッセイの設計が、Kusnezow他、Mol.Cell Proteomics 5(2006)、1681〜1696において要約される。したがって、本発明はまた、本発明に従って特定されるDPR結合性分子が負荷されるマイクロアレイに関連する。
1つの実施形態において、本発明は、DPRs、特に、凝集したDPRs(C9ORF72−DPRsなど)に関連づけられる疾患又は障害を対象において診断する方法であって、診断される対象から得られるサンプルにおけるDPRs及び凝集したDPRsの各々の存在を、本発明の少なくとも1つの抗体、DPR結合フラグメント、又は、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPR結合性分子を用いて明らかにすることを含み、この場合、病理学的に凝集したDPRs(好ましくはC9ORF72−DPRs)の存在が、FTLD及び/又はALSについて示すものであり、また、生理学的C9ORF72(即ち、DPRタンパク質内にリピート領域が翻訳されない)のレベルとの比較において、病理学的に凝集したDPRs、特にC9ORF72−DPRsのレベルの増大が、前記対象のFTLD及び/又はALSの進行について示すものである方法に関連する。
診断されるべき対象は疾患について無症候性又は病状発現前である場合がある。好ましくは、コントロール対象は、上記で記載されるように、DPR、凝集型DPR及び/好ましくはC9ORF72−DPRに伴う疾患、例えば、FTLD、ALS及びFTLD−ALSなどを有しており、ただし、この場合、DPRのレベル、例えば、凝集型C9ORF72−DPRのレベルと、参照標準との間における類似性により、診断されるべき対象が、FTLD、ALS及び/又はFTLD−ALSを有すること、或いは、DPR凝集に伴う疾患及び/又は障害を発症する危険性があることが示される。代替において、又は加えて、第2のコントロールとして、コントロール対象はDPR凝集を有しておらず、ただし、この場合、変異型C9ORF72遺伝子のようにその遺伝子における変異のために挿入されるDPRを有しやすい生理学的C9ORF72若しくは他のタンパク質、及び/又は凝集型C9ORF72−DPRのレベルと、参照標準との間における違いにより、診断されるべき対象が、DPRに伴う疾患及び/又は障害(例えば、FTLD、ALS及び/又はFTLD−ALSなど)を有すること、或いは、DPRに伴う疾患及び/又は障害を発症する危険性があることが示される。好ましくは、診断されるべき対象と、コントロール対象とは、年齢が一致している。分析されるべきサンプルは、病理学的にDPRタンパク質を含有することが疑われる、例えば、凝集型C9ORF72−DPRなどを含有することが疑われるどのような体液であってもよく、例えば、血液、血漿、血清、尿、腹腔液、唾液又は脳脊髄液(CSF)である場合がある。
生理学的C9ORF72又は同様なタンパク質並びに/或いは凝集型DPR(例えば、C9ORF72−DPRなど)のレベルが、例えば、DPR及び/又はDPRを取り込むタンパク質(例えば、C9ORF72など)を、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、二次元ゲル電気泳動、質量分析法(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型MS(MALDI−TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化−飛行時間(SELDIーTOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)それに続くタンデム質量分析(MS/MS)、及び、レーザーデンシトメトリーから選ばれる1つ又は複数の技術によって分析することを含む、この技術分野で知られている好適な方法のどれによって評価されてもよい。好ましくは、DPRの前記インビボ画像化は、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法又は磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体又は前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPR結合性分子、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクター又は細胞、或いは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物又は診断組成物が、凝集型DPRタンパク質に関連づけられる疾患又は障害の予防的処置、治療的処置、並びに/或いは、そのような疾患又は障害の進行又は処置に対する応答をモニターすることにおける使用のために提供される。したがって、本発明はまた、対象におけるDPRタンパク質に関連づけられる疾患又は障害(例えば、FTLD及びALSなど)を診断する、又はその進行をモニターする方法であって、診断される対象からのサンプルにおけるDPRタンパク質の存在を、本発明の少なくとも1つの抗体又はそれらの抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPR結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、変異型C9ORF72種及び凝集型C9ORF72−DPR種などにおけるDPRの存在が前記疾患又は障害についての暗示である方法に関連する。1つの実施形態において、対象におけるDPR関連の疾患及び/又は障害を診断する、或いはその進行をモニターする前記方法であって、診断される対象からのサンプルにおける変異型C9ORF72及びその凝集型形態などにおけるDPRの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体又はそれらの抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPR結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、DPR(例えば、変異型C9ORF72及び/又は凝集型C9ORF72−DPRなど)の存在が、前駆症状的、前駆的又は臨床的なDPR関連の疾患及び/障害についての暗示であり、また、DPRを有しない生理学的C9ORF72のレベルと比較した場合、或いは、健康なコントロール対象に由来する参照サンプル、又は、同じ対象からのコントロールサンプルと比較した場合、DPR凝集物(具体的にはC9ORF72−DPR)のレベルの増大が、症状発現前、前駆的又は立証されたDPR関連の疾患及び/又は障害(例えば、FTLD及びALSなど)の進行についての暗示である方法が提供される。1つの実施形態において、前記方法は、本明細書中上記で定義されるように、DPR及びDPRを含有するタンパク質にそれぞれ関連づけられる障害の一群からのいずれか他の疾患又は障害を診断するために、或いはその進行をモニターするために同様に使用されることが、当業者によって理解されるであろう。
上記で示されるように、本発明の抗体、及び、本発明の抗体と同じ結合特異性の分子は、インビトロだけでなく、インビボにおいても同様に使用される場合があり、ただし、この場合、診断的適用のほかに、治療的適用が同様に実行される場合がある。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、ヒト又は動物の身体におけるDPR(好ましくはC9ORF72−DPR)のインビボ検出のための組成物、或いは、治療剤及び/又は診断剤をヒト又は動物の身体においてDPR(好ましくはC9ORF72−DPR)に対して標的化するための組成物を調製するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むDPR結合性分子に関連する。潜在的可能性のある治療剤及び/又は診断剤が、本明細書中上記で示されるような、DPRに伴う疾患及び/又は障害の処置において有用である治療剤、並びに、潜在的可能性のある標識の非網羅的な列挙から選ばれる場合がある。インビボ画像化に関して、1つの好ましい実施形態において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記DPR結合性分子を提供し、ただし、この場合、前記インビボ画像化が、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法又は磁気共鳴画像法(MRI)を含む。さらなる実施形態において、本発明はまた、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記DPR結合性分子、又は、上記で指定されるインビボ画像化方法のための組成物を調製するための前記分子を、本明細書中上記で定義されるような、対象におけるDPRタンパク質に関連づけられる疾患又は障害を診断する、或いはその進行をモニターする方法における使用のために提供する。
この関連において、本発明はまた、DPR及びDPR含有タンパク質に伴う疾患及び/又は障害を診断すること、或いはその進行をモニターすることにおいて有用なキットであって、本発明の少なくとも1つの抗体、又はそれらの抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPR結合性分子、本明細書中上記でそれぞれ定義されるようなポリヌクレオチド、ベクター又は細胞及び/又はペプチドを、必要な場合には使用のための試薬及び/又は説明書と一緒に含むキットに関連する。
上記開示は本発明を概して記載する。別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂及び2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用される。完全な書誌的引用が請求項の直前において明細書の最後に見出される場合がある。すべての引用された参考文献(本出願明細書を通して引用されるような文献参照物、発行された特許、公開された特許出願、及び、製造者の仕様書、説明書などを含む)の内容が、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる;しかしながら、どのような文書であれ、引用される文書は実際に本発明に関して先行技術であることを何ら認めるものではない。
より完全な理解を、例示のみの目的のために本明細書中に提供され、かつ、本発明の範囲を限定するために意図されない下記の具体的な実施例を参照することによって得ることができる。
実施例1:抗ジペプチドリピート(DPR)タンパク質抗体の単離及び特定
ジペプチドリピート(DPR)タンパク質、そのフラグメント、C9ORF72−DPR及び/又はそのフラグメントを標的とする様々なヒト由来抗体を、国際特許出願公開WO2008/081008(その開示内容は参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される方法を改変とともに利用して特定した。具体的には、様々なジペプチドリピートタンパク質がSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:GA15:H−CHHHHHH(GA)15−OH;GP15:H−C(GP)15−OH;GR15:H−C(GR)15−OH;(PA)15:H−(C(PA)15−OH;(PR)15:H−C(PR)15−OH。その後、ジペプチドリピートタンパク質を、二官能性リンカー(SMCC)を介してウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化した。続いて、直接的ELISAを、非コンジュゲート化ジペプチドリピートタンパク質又はBSAコンジュゲート化ジペプチドリピートタンパク質のどちらかにより、或いはBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において5μg/mlの濃度で被覆される96ウエルマイクロプレート(Corning)を使用して行った。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。B細胞馴化培地をメモリーB細胞培養プレートからELISAプレートに移し、RTで1時間インキュベーションし、その後、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)、及び、HRPとコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgA特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)とインキュベーションした。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。培地に含有される抗体の結合が、BSAに対してではなく、DPRに対して示されたB細胞培養物のみを、抗体クローニングに供した。
実施例2:抗体配列の決定
上記で特定された抗DPR抗体の可変領域のアミノ酸配列をそれらのmRNA配列に基づいて決定した(図1A〜図1Jを参照のこと)。簡単に記載すると、選択された非不死化メモリーB細胞培養物の生存B細胞を集めた。続いて、選択された抗DPR抗体を産生する細胞からのmRNAを抽出し、cDNAに転換し、抗体の可変領域をコードする配列をPCRによって増幅し、プラスミドベクターにクローン化し、配列決定した。簡単に記載すると、ヒト免疫グロブリン生殖系列レパートリーのすべての配列ファミリーを表すプライマーの組合せを、リーダーペプチド、Vセグメント及びJセグメントの増幅のために使用した。1回目の増幅を、5’末端におけるリーダーペプチド特異的プライマーと、3’末端における定常領域特異的プライマーとを使用して行った(Smith他、Nat Protoc.4(2009)、372〜384)。重鎖及びカッパ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるJセグメント特異的プライマーとを使用して行った。ラムダ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるC領域特異的プライマーとを使用して行った(Marks他、Mol.Biol.222(1991)、581〜597;de Haard他、J.Biol.Chem.26(1999)、18218〜18230)。
所望の特異性を有する抗体クローンの特定を、完全な抗体を組換え発現させたときにELISAでの再スクリーニングによって行った。完全なヒトIgG1抗体の組換え発現が、可変重鎖配列及び可変軽鎖配列を、可変領域配列を5’末端において、リーダーペプチドをコードする配列により補い、かつ、3’末端において、適切な定常ドメインをコードする配列により補う発現ベクターに「正しい読み枠で」挿入したときに達成された。その目的を達成するために、プライマーは、抗体発現ベクターへの可変重鎖配列及び可変軽鎖配列のクローニングを容易にするために設計される制限部位を含有した。重鎖免疫グロブリンを、免疫グロブリン重鎖のRT−PCR産物を、シグナルペプチドとヒト又はマウスの免疫グロブリンガンマ1の定常ドメインとを有する重鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。カッパ軽鎖免疫グロブリンを、カッパ軽鎖のRT−PCR産物を、シグナルペプチドとヒトカッパ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供する軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。ラムダ軽鎖免疫グロブリンを、ラムダ軽鎖のRT−PCR産物を、シグナルペプチドとヒト又はマウスのラムダ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供するラムダ軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。
機能的な組換えモノクローナル抗体を、Ig重鎖発現ベクターと、カッパIg軽鎖発現ベクター又はラムダIg軽鎖発現ベクターとをHEK293細胞又はCHO細胞(或いは、どのようなレシピエント細胞株であれ、ヒト起源又はマウス起源の他の適切なレシピエント細胞株)に共トランスフェクションしたときに得た。組換えヒトモノクローナル抗体を続いて、標準的なプロテインAカラム精製を使用して馴化培地から精製した。組換えヒトモノクローナル抗体を、一過性トランスフェクション細胞又は安定的トランスフェクション細胞のどちらかを使用して無限の量で製造することができる。組換えヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を、Ig発現ベクターをそのまま使用することによって、又は、Ig可変領域を異なる発現ベクターに再クローニングすることによってそのどちらでも樹立することができる。誘導体、例えば、F(ab)、F(ab)2およびscFvなどもまた、これらのIg可変領域から作製することができる。
フレームワーク領域及び相補性決定領域をデータベース(例えば、Abysis(http://www.bioinf.org.uk/abysis/)など)において利用可能な参照抗体配列との比較によって決定し、これらの領域に、Kabat番号表記スキーム(http://www.bioinf.org.uk/abs/)を使用して注釈を付けた。
実施例3:C9orf72ジペプチドリピートタンパク質のELISAでのEC50分析
組換えヒト由来C9orf72抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11、NI−308.46F8、NI−308.4M1、NI−308.12A3及びNI−308.16C10の、C9orf72ジペプチドリピートタンパク質についての結合特異性及び最大半量有効濃度(EC50)を求めるために、ELISAでのEC50分析を行った。簡単に記載すると、様々なジペプチドリピートタンパク質がSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:(GA)15:H−CHHHHHH(GA)15−OH;(GP)15:H−C(GP)15−OH;(GR)15:H−C(GR)15−OH;(PA)15:H−C(PA)15−OH;(PR)15:H−C(PR)15−OH。96ウエルマイクロプレート(Corning Incorporated、Corning、米国)をジペプチドリピートタンパク質ペプチドにより被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において5μg/ml又は20μg/mlのどちらかの濃度で被覆した。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。一次抗体を示された濃度に希釈し、室温で1時間インキュベーションし、その後、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)とインキュベーションした。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。C9orf72ジペプチドリピートタンパク質ペプチドの(GA)15、(GP)15、(GR)15、(PA)15及び(PR)15についてのヒト由来抗体の結合特異性及びEC50を間接的ELISAによって求めた。抗体NI−308.15O7、抗体NI−308.28G1、抗体NI−308.45C2及び抗体NI−308.18F7は、ポリGA DPRタンパク質をもっぱら認識し、結合親和性がサブナノモル濃度又は低ナノモル濃度の範囲であった(図2A〜図2E)。抗体NI−308.24E11は、ポリPR DPRタンパク質に、低ナノモル濃度のEC50により特異的に結合し(図2A及び図2F)、これに対して、抗体NI−308.16C10は、DPRタンパク質のポリPRを低ナノモル濃度のEC50により優先的に認識し、この抗体はまた、より低い親和性により、ポリGA DPRタンパク質にも結合した(図2A及び図2M)。抗体NI−308.5G2、抗体NI−308.12A3及び抗体NI−308.46E9は、DPRタンパク質のポリGPを、サブナノモル濃度及び低ナノモル濃度のEC50によりそれぞれ優先的に認識し、これらの抗体はまた、より低い親和性により、ポリGA DPRに結合した(図2A、図2G、図2L及び図2H)。抗体NI−308.6B11は多数のDPRタンパク質に対する結合を示し、ポリGR、ポリGA及びポリPRを標的とし、最も大きい親和性が、ポリGR DPRタンパク質についてであった(図2A及び図2I)。類似する結合パターンが、より低い親和性ではあるが、NI−308.46F8について認められた(図2A及び図2J)。抗体NI−308.4M1はDPRタンパク質のポリPAをサブナノモル濃度のEC50により優先的に認識し、この抗体はまた、より低い親和性により、ポリGA DPRタンパク質に結合した(図2A及び図2K)。結論として、RTM(商標)スクリーニングによる健康な高齢ヒトドナー集団のハイスループット免疫レパートリー分析により、C9orf72ヘキサヌクレオチド伸長に伴うDPRを大きい親和性で標的とするヒトモノクローナル抗体の成功したクローニング及び組換え産生がもたらされる。これらの組換えヒト抗体は、ただ1つのDPRについて選択的であるか、又は、多数のDPR種を標的とするかのどちらかであり、これはもしかすると、リピート部における普通の共通したアミノ酸のためであるかもしれない。
実施例4:BSAとカップリングされたDPRペプチドに対する結合親和性
組換えヒト由来C9orf72抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11、NI−308.46F8、NI−308.4M1、NI−308.12A3及びNI−308.16C10の、ウシ血清アルブミン(BSA)にカップリングされたC9orf72ジペプチドリピートタンパク質についての結合特異性及び最大半量有効濃度(EC50)を求めるために、ELISAでのEC50分析を行った。簡単に記載すると、様々なジペプチドリピートタンパク質がSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:(GA)15:H−CHHHHHH(GA)15−OH;(GP)15:H−C(GP)15−OH;(GR)15:H−C(GR)15−OH;(PA)15:H−C(PA)15−OH;(PR)15:H−C(PR)15−OH。その後、DPRタンパク質ペプチドを、二官能性リンカー(SMCC)を介してウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化した。96ウエルマイクロプレート(Corning Incorporated、Corning、米国)をBSAカップリング型又はBSA非カップリング型のジペプチドリピートタンパク質ペプチドにより被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において5μg/ml又は20μg/mlのどちらかの濃度で被覆した。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。一次抗体を示された濃度に希釈し、室温で1時間インキュベーションし、その後、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)とインキュベーションした。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。同程度の結合親和性が、NI−308.18F7、NI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.4M1及びNI−308.12A3の各抗体についてはBSAカップリング型DPR及び非カップリング型DPRについて明らかにされた(図3A〜図3D、図3G、図3H、図3K、図3L)。抗体NI−308.45C2、抗体NI−308.24E11及び抗体NI−308.16C10は、低下した親和性をそれぞれのBSAカップリング型DPRペプチドについて示し(図3A、図3E、図3F及び図3M)、一方で、抗体NI−308.6B11及び抗体NI−308.46F8はこれらの実験条件のもとではBSAカップリング型DPRには結合しなかった(図3A、図3I及び図3J)。結論として、上記ヒトDPR抗体のほとんどが、BSAキャリアタンパク質にカップリングされたDPRペプチドを、疎水性被覆されたペプチドに対する同程度の親和性で認識することができる。個々の候補物について認められる結合親和性がより低いことは、BSAに対する個々のDPRペプチドの不良なカップリング効率、BSAとカップリングしたときの異なる立体配座、又は、キャリアに対する部位特異的な化学的カップリングの後ではエピトープが立体的に接近できないことのためであり得るかもしれない。
実施例5:無関係なアミロイド原性タンパク質に対する結合特異性分析
NI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11及びNI−308.46F8の各組換え抗体の標的特異性を明らかにするために、間接的ELISAを下記のように行った。96ウエルマイクロプレート(Corning)を異なる標的タンパク質により被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において1μg/ml〜10μg/mlの濃度で被覆した。非特異的結合部位をRTで1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。NI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11及びNI−308.46F8の各抗体を20nMの濃度で希釈し、RTで1時間インキュベーションした。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)を使用して明らかにし、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。標的タンパク質についてのシグナルを、メジアンを超える増加倍数で計算した。NI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11及びNI−308.46F8の各ヒト由来抗体の標的特異性を間接的ELISAによって明らかにすることにより、C9orf72ジペプチドリピートタンパク質及び6つの無関係なアミロイド形成タンパク質(PHFタウ、タウ、TDP−43、TTR、flAPP及びHTT)に対する抗体結合を評価した。図4に示されるように、ヒト由来抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.6B11及びNI−308.46F8により、DPRペプチドに対するそれらの大きい結合特異性が、無関係なアミロイド原性タンパク質に対する交差反応性をほとんどの候補体については伴うことなく、又は最小限に伴って明らかにされた(図4A〜図4F、図4H及び図4I)。抗体NI−308.46E9については、上昇した標的外シグナルがいくつかの分析物について検出された(図4G)。
実施例6:C9orf72ジペプチドリピートタンパク質のウエスタンブロット分析
組換えヒト由来C9orf72抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11、NI−308.46F8、NI−308.4M1、NI−308.12A3及びNI−308.16C10の、C9orf72ジペプチドリピートタンパク質についての結合特異性を明らかにするために、免疫ブロット分析を行った。様々なジペプチドリピートタンパク質ペプチドがSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:(GA)15:H−CHHHHHH(GA)15−OH;(GP)15:H−C(GP)15−OH;(GR)15:H−C(GR)15−OH;(PA)15:H−C(PA)15−OH;(PR)15:H−C(PR)15−OH。その後、DPRタンパク質ペプチドを、二官能性リンカー(SMCC)を介してウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲート化した。簡単に記載すると、BSAとコンジュゲート化されたジペプチドリピートタンパク質ペプチド(0.5μg)を、酸化防止剤が補われるNovex(登録商標)NuPAGE(登録商標)MES SDS泳動緩衝液(Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)を使用するグラジエントSDS−PAGE(Novex(登録商標)Bis−Tris NuPAGE(登録商標)4−12%;Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)によって分離した。その後、分離されたタンパク質をNovex(登録商標)NuPAGE(登録商標)転写緩衝液2x(Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)の使用によってメタノール活性化PVDFメンブラン(Immobilon(登録商標)−P転写メンブラン、Merck&Cie、Schaffhausen、スイス)にエレクトロブロットした(Novex(登録商標)セミドライブロッター、1h、25V)。非特異的結合部位を4℃で一晩(又は代替において室温で1時間)、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(PBST)(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。NI−308抗体を10nM又は100nMのどちらかの濃度で希釈し、室温で1時間(又は代替において4℃で1晩)インキュベーションした。メンブランをPBSTにおいて3回、RTで15分間洗浄し、その後、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(1:20000又は1:10000の希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)と室温で1時間インキュベーションした。抗体結合を、ECL及びImageQuant350検出(GE Healthcare、Otelfingen、スイス)を使用してメンブラン発色によって明らかにした。
BSAとカップリングされたC9orf72ジペプチドリピートタンパク質((GA)15、(GP)15、(GR)15、(PA)15及び(PR)15)に対するヒト由来抗体の結合特異性をウエスタンブロット分析によって明らかにした。抗体NI−308.15O7、抗体NI−308.18F7、抗体NI−308.28G1及び抗体NI−308.45C2はDPRタンパク質のポリGAをもっぱら認識した(図5A〜図5D)。抗体NI−308.24E11及び抗体NI−308.16C10は、ただ1つのDPRタンパク質のポリPRに特異的に結合し(図5E及び図5J)、抗体NI−308.16C10はさらに、ポリGA DPRを認識した(図5J)。抗体NI−308.5G2、抗体NI−308.12A3及び抗体NI−308.46E9は、ポリGPを特異的に標的とし(図5F、図5G及び図5I)、抗体NI−308.5G2はさらに、ポリGA DPRを認識した(図5F)。抗体NI−308.4M1はDPRタンパク質のポリPAをもっぱら認識した(図5H)。抗体NI−308.6B11及び抗体NI−308.46F8については、結合が、選択された実験条件のもとではウエスタンブロットによってBSAカップリング型DPRに対して検出されなかった(データは示されず)。結論として、ほとんどのヒト由来C9orf72 DPR抗体が、BSAとカップリングされたDPRペプチドを、SDS PAGE及びウエスタンブロッティングの後で認識することができる。認められた結合パターンは、ELISA分析によって得られる結果と一致している。
実施例7:免疫沈降によるC9orf72 DPRの溶液中での結合分析
組換えヒト由来C9orf72 DPR抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11及びNI−308.6B11の溶液中での結合を免疫沈降によって評価すること。簡単に記載すると、様々なジペプチドリピートタンパク質がSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:(GA)15:H−CHHHHHH(GA)15−OH;(GP)15:H−C(GP)15−OH;(GR)15:H−C(GR)15−OH;(PA)15:H−C(PA)15−OH;(PR)15:H−C(PR)15−OH。5マイクログラムのBSA非カップリング型ジペプチドリピートタンパク質ペプチドを500μlのPBS(pH7.4;Gibco(登録商標)、Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)において10μg/mlの最終濃度に希釈した。DPRタンパク質ペプチドのサンプルを、回転プラットフォームでの4℃における30分間のインキュベーションによって25μlのDynabeads(登録商標)プロテインA(Novex(登録商標);Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)による事前の吸着に供した。1μg又は10μgの選択された抗体を事前吸着サンプルに加え、回転プラットフォームにおいて4℃で一晩インキュベーションした。免疫複合体を、25μlのプロテインA−Dynabeadsの添加及び回転プラットフォームでの4℃における2時間のインキュベーションによって捕獲した。ビーズを製造者の説明書に従って洗浄し、サンプル緩衝液に懸濁し、95℃で3分間加熱した。ウエスタンブロット分析のために、免疫複合体及び非カップリング型DPRタンパク質ペプチド(500ng)を、Novex(登録商標)NuPAGE(登録商標)MES SDS泳動緩衝液(Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)を使用するSDS−PAGE(Novex(登録商標)Bis−Tris NuPAGE(登録商標)12%;Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)によって非還元条件下で分離した。分離されたタンパク質を、Novex(登録商標)NuPAGE(登録商標)転写緩衝液(Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)においてメタノール活性化PVDFメンブラン(Immobilon(登録商標)−P転写メンブラン、Merck&Cie、Schaffhausen、スイス)にエレクトロブロットした(Novex(登録商標)セミドライブロッター、1h、25V)。非特異的結合部位を4℃で一晩、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(PBST)(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。DPRタンパク質が下記の検出抗体との室温での1時間のインキュベーションによって明らかにされた:(GA)15:NI−308.28G1、10nM;(PR)15:NI−308.24E11、100nM;(GR)15:抗C9ORF72/C9RANTクローン5A5、1:5000の希釈(MABN778、Merck&Cie、Schaffhausen、スイス)。メンブランをPBSTで3回、RTで15分間洗浄し、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(1:10000の希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)、又は、HRPとコンジュゲート化されたマウス抗ラットカッパ抗体(1:10000の希釈、SouthernBiotech、Birmingham、米国)のどちらかと室温で1時間インキュベーションした。メンブランを、ECL及びImageQuant350検出(GE Healthcare、Otelfingen、スイス)を使用して発色させた。抗体NI−308.15O7、抗体NI−308.18F7、抗体NI−308.45C2及び抗体NI−308.28G1により、ポリGA DPRタンパク質ペプチドが溶液中で捕獲され(図6A)、これに対して、抗体NI−308.24E11及び抗体NI−308.6B11により、ポリPR及びポリGRがそれぞれ沈殿させられた(図6B及び図6C)。NI−43A11アイソタイプコントロール抗体は、試験されたDPRタンパク質ペプチドのどれも沈殿させなかった(図6A〜図6C)。結論として、上記ヒト由来C9orf72抗体は溶液中においてDPRタンパク質ペプチドと結合し、これらを沈殿させることができる。
実施例8:リピート長さ依存的な結合の間接的ELISAによる特徴づけ
組換えヒト由来抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.45C2、NI−308.18F7、NI−308.24E11、NI−308.5G2、NI−308.46E9、NI−308.6B11及びNI−302.4M1の、異なるリピートサイズのC9orf72 DRPに対する結合親和性を明らかにするために、ELISAでのEC50分析を行った。簡単に記載すると、様々なジペプチドリピートタンパク質がSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:GA20:H−(GA)20HHHHHH−NH2;GA10:H−(GA)10HHHHHH−NH2;GA6:H−(GA)6HHHHHH−NH2;GA5:H−(GA)5HHHHHH−NH2;GA4:H−(GA)4HHHHHH−NH2;GA3:H−(GA)3HHHHHH−NH2;GA2:H−(GA)2HHHHHH−NH2;GP20:H−(GP)20HHHHHH−NH2;GP10:H−(GP)10HHHHHH−NH2;GP6:H−(GP)6HHHHHH−NH2;GP5:H−(GP)5HHHHHH−NH2;GP4:H−(GP)4HHHHHH−NH2;GP3:H−(GP)3HHHHHH−NH2;GP2:H−(GP)2HHHHHH−NH2。GR20:H−(GR)20HHHHHH−NH2;GR10:H−(GR)10HHHHHH−NH2;GR6:H−(GR)6HHHHHH−NH2;GR5:H−(GR)5HHHHHH−NH2;GR4:H−(GR)4HHHHHH−NH2;GR3:H−(GR)3HHHHHH−NH2;GR2:H−(GR)2HHHHHH−NH2;PA20:H−(PA)20HHHHHH−NH2;PA10:H−(PA)10HHHHHH−NH2;PA6:H−(PA)6HHHHHH−NH2;PA5:H−(PA)5HHHHHH−NH2;PA4:H−(PA)4HHHHHH−NH2;PA3:H−(PA)3HHHHHH−NH2;PA2:H−(PA)2HHHHHH−NH2;PR20:H−(PR)20HHHHHH−NH2;PR10:H−(PR)10HHHHHH−NH2;PR6:H−(PR)6HHHHHH−NH2;PR5:H−(PR)5HHHHHH−NH2;PR4:H−(PR)4HHHHHH−NH2;PR3:H−(PR)3HHHHHH−NH2;PR2:H−(PR)2HHHHHH−NH2。96ウエルマイクロプレート(Corning Incorporated、Corning、米国)をジペプチドリピートタンパク質ペプチドにより被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において50μg/mlの濃度で被覆した。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。一次抗体を示された濃度に希釈し、室温で1時間インキュベーションし、その後、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)とインキュベーションした。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。
リピート長さが異なるC9orf72 DPRタンパク質についての選択されたNI−308抗体の結合親和性を、疎水性ペプチド被覆の後、間接的ELISAによって明らかにした。抗体NI−308.15O7及び抗体NI−308.28G1は、100nM超のEC50での最初の検出可能な低親和性結合のためには最低でも5回のGAジペプチドリピートを必要とし、これに対して、抗体NI−308.18F7及び抗体NI−308.45C2は、少なくとも6回のGAリピートを必要とした(図7A、図7F〜図7I)。高親和性結合が、10回又は20回の(GA)リピートを有するポリGA DPRについて検出され、このことがサブナノモル濃度又は低ナノモル濃度の範囲でのEC50において反映された(図7A、図7C〜図7I)。抗体NI−308.5G2及び抗体NI−308.46E9は、最低でも5回及び10回のGPリピートをそれぞれ必要とした(図7B、図7J及び図7N)。後者の2つの抗体についての高親和性結合が、10回及び20回のリピートを有するポリGP DPRタンパク質ペプチドについては伸長したリピート長さにおいてのみ検出された。さらには、抗体NI−308.5G2は、100nM超のEC50での最初の検出可能な低親和性結合のためには最低でも6回のGAジペプチドリピートを必要とした(図7A及び図7K)。高親和性結合が、10回又は20回の(GA)リピートを有するポリGA DPRについて検出され、このことが低ナノモル濃度の範囲でのEC50において反映された(図7A及び図7K)。抗体NI−308.6B11は、最低でも3回のGRリピートを必要とした(図7C及び図7L)。この抗体についての高親和性結合が、少なくとも5回のGRジペプチドリピートを有するポリGR DPRタンパク質ペプチドについて検出された(図7C及び図7L)。加えて、抗体NI−308.6B11は、100nM超のEC50での最初の検出可能な低親和性結合のためには最低でも6回のGAジペプチドリピートを必要とした(図7A及び図7M)。高親和性結合が、10回又は20回の(GA)リピートを有するポリGA DPRについて検出され、このことが低ナノモル濃度の範囲でのEC50において反映された(図7A及び図7M)。抗体NI−308.24E11は、100nM超のEC50での最初の検出可能な低親和性結合のためには、又は、2桁のナノモル濃度での結合親和性においてそれぞれ、最低でも6回のPRジペプチドリピートを必要とし(図7D及び図7O)、これに対して、抗体NI−308.4M1は、少なくとも5回のPAリピートを必要とした(図7E及び図7P)。後者の2つの抗体についての高親和性結合が、10回又は20回のリピートを有するポリPR DPR及びポリPA DPRについては伸長したリピート長さについてのみそれぞれ検出され、このことが低ナノモル濃度又はサブナノモル濃度の範囲でのEC50において反映された(図7D、図7E、図7O及び図7P)。結論として、ヒト由来C9orf72 DPR抗体は、短いリピートサイズに対する結合を伴うことなく、かつ、伸長したジペプチドリピートに対する優先的な高親和性結合を伴って、DPRに対するリピート長さ依存的な結合を示す。
実施例9:リピート長さ依存的な結合のサンドイッチELISAによる特徴づけ
組換えヒト由来抗体のNI−308.15O7、NI−308.28G1、NI−308.18F7及びNI−308.5G2の、異なるリピートサイズのC9orf72ジペプチドリピートタンパク質に対する結合親和性を明らかにすること。簡単に記載すると、様々なHisタグ型ジペプチドリピートタンパク質ペプチドがSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された:GA20:H−(GA)20HHHHHH−NH2;GA10:H−(GA)10HHHHHH−NH2;GA6:H−(GA)6HHHHHH−NH2;GA5:H−(GA)5HHHHHH−NH2;GA4:H−(GA)4HHHHHH−NH2;GA3:H−(GA)3HHHHHH−NH2;GA2:H−(GA)2HHHHHH−NH2;GP20:H−(GP)20HHHHHH−NH2;GP10:H−(GP)10HHHHHH−NH2;GP6:H−(GP)6HHHHHH−NH2;GP5:H−(GP)5HHHHHH−NH2;GP4:H−(GP)4HHHHHH−NH2;GP3:H−(GP)3HHHHHH−NH2;GP2:H−(GP)2HHHHHH−NH2。96ウエルマイクロプレート(Corning Incorporated、Corning、米国)を、モノクローナルマウス抗Hisタグ抗体(Takara Bio Europe/Clontech、Saint−Germain−en−Laye、フランス)により被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において10μg/mlの濃度で、4℃で一晩被覆した。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。洗浄工程の後、PBS(pH7.4)における1μM又は5μMのどちらかの等しい濃度でのHisタグ化C9orf72 DPRタンパク質ペプチドを、室温での1時間にわたる抗Hisタグ抗体による標的捕獲のために加えた。さらなる洗浄工程の後、NI−308抗体を示された濃度に、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)において希釈し、室温で1時間インキュベーションした。DPRタンパク質ペプチドに対する抗体結合を、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(1:5000の希釈;Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)によってRTで1時間、検出した。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。リピート長さが異なるC9orf72 DPRタンパク質についての選択されたNI−308抗体の結合親和性を、DPRタンパク質のHisタグ捕捉の後、サンドイッチELISAによって明らかにした。抗体NI−308.1507、抗体NI−308.18F7、抗体NI−308.28G1は、ポリGA DPRタンパク質ペプチドに対する溶液中での結合のためには最低でも10回のGAリピートを必要とした(図8A、図8C〜図8E)。抗体NI−308.18F7及び抗体NI−308.28G1についての結合親和性がサブナノモル濃度の範囲であり、(GA)10DPRタンパク質ペプチド及び(GA)20DPRタンパク質ペプチドの両方については同等であった(図8A、図8D及び図8E)。抗体NI−308.15O7は、伸長した(GA)20DPRタンパク質ペプチドについてのみ高親和性結合を示した(図8A及び図8C)。抗体NI−308.5G2は、類似する結合依存性を、伸長したポリGP DPRリピート長さに対して示し、有意な結合が20回のGPリピートからでのみ始まった(図8B及び図8F)。結論として、ヒト由来C9orf72 DPR抗体は、短いリピートに対する結合を伴うことなく、かつ、伸長したジペプチドリピートに対する優先的な高親和性結合を伴って、DPRに対する顕著なリピート長さ依存的な結合を示す。伸長したDPRについての認められた選択性が、疎水性被覆されたペプチド(実施例9)と比較して、抗原捕獲の後では一層より顕著であった。
実施例10:モノマー型及び凝集型のC9orf72 DPRに対する結合分析
組換えヒト由来のNI−308.18F7抗体及びNI−308.15O7抗体の、モノマー型及び凝集型のGA C9orf72ジペプチドリピートタンパク質に対する結合特異性及び最大半量有効濃度(EC50)を明らかにすること。
方法
C9orf72ジペプチドリピートタンパク質ペプチド
ジペプチドリピートタンパク質(GA)20(H−(GA)20HHHHHH−NH2)がSchafer−N(Copenhagen、デンマーク)によって合成され、精製された。凍結乾燥ペプチドをDMSO(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)に10mg/mlの濃度で溶解した。
(GA)20DPRタンパク質ペプチドのモノマー型調製物及び原線維性凝集型調製物の作製
モノマー型DPRタンパク質調製物を得るために、(GA)20ペプチドを炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)に200μg/mlの濃度で溶解し、直ちに−80℃で凍結した。DPR凝集物を得るために、(GA)20ペプチドを酢酸ナトリウム緩衝液(50mM C2H3O2Na、100mM KCl及び1mM EDTA、pH3.0)に200μg/mlの濃度で溶解し、振とう(600rpm)を行いながら室温で72時間インキュベーションした。ペプチド調製物を、使用されるまで−80℃で貯蔵した。
走査型電子顕微鏡法
サンプルをグロー放電により炭素被覆された銅グリッドに吸着させた。過剰なサンプルをろ紙でのブロッティングによって除いた。グリッドを2%(w/v)酢酸ウラニルにより1分間染色し、過剰な酢酸ウラニルを蒸留脱イオン水により洗浄した。グリッドを風乾し、100kVの加速電圧を用いるPhilips社のCM100透過型電子顕微鏡を使用して画像化した。
間接的ELISA
96ウエルマイクロプレート(Corning Incorporated、Corning、米国)をモノマー型及び凝集型の(GA)20DPRタンパク質ペプチド調製物により被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において5μg/mlの濃度で被覆した。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。一次抗体を示された濃度に希釈し、室温で1時間インキュベーションし、その後、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)とインキュベーションした。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。
サンドイッチELISA
96ウエルマイクロプレート(Corning Incorporated、Corning、米国)を、モノクローナルマウス抗Hisタグ抗体(Takara Bio Europe/Clontech、Saint−Germain−en−Laye、フランス)により被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において10μg/mlの濃度で、4℃で一晩被覆した。非特異的結合部位を室温で1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。洗浄工程の後、PBS(pH7.4)における5μMの等しい濃度でのhisタグ化(GA)20DPRタンパク質ペプチド調製物を、室温での1時間にわたる抗Hisタグ抗体による標的捕獲のために加えた。さらなる洗浄工程の後、NI−308抗体を示された濃度に、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)において希釈し、RTで1時間インキュベーションした。DPRタンパク質ペプチドに対する抗体結合を、HRPとコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体(1:5000の希釈;Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)によってRTで1時間、検出した。結合を標準的な比色アッセイでのHRP活性の測定によって求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。
結果として、C9orf72(GA)20ジペプチドリピートタンパク質は、透過電子顕微鏡法分析によって明らかにされるように、酸性条件下で放置したとき、アミロイド原線維に似る構造に容易に凝集した(図10B)。対照的に、塩基性条件下では、(GA)20DPRタンパク質ペプチドは原線維凝集物を形成せず、おそらくはモノマー状態で留まっていた(図10A)。ヒト由来抗体のNI−308.18F7及びNI−308.15O7の、モノマー型及び凝集型のC9orf72(GA)20DPRタンパク質ペプチド調製物についての結合特異性及び結合親和性(EC50)を、間接的ELISA結合アッセイ及びサンドイッチELISA結合アッセイによって求めた。両方の抗体が、同程度の結合親和性により、凝集型と同様にモノマー型の(GA)20DPRタンパク質ペプチド調製物を認識した(図9、図11及び図12)。ポリGAジペプチドリピートタンパク質は、C9orf72−FTLDにおける最も優勢なペプチド種であることが報告された(Mori他、Acta Neuropathol.2013)。(GA)20ジペプチドリピートタンパク質は、塩基性条件下ではなく、酸性条件下で放置したとき、アミロイド様の原線維構造に容易に凝集した。ヒト由来抗体のNI−308.18F7及びNI−308.15O7は、2つの独立した結合アッセイにおいて、同程度の結合親和性により、凝集型と同様にモノマー型のGA)20−DPR調製物を認識した。したがって、これらの抗体は、病理学的なGA DPRタンパク質を不溶性の立体配座と同様に可溶性の立体配座において標的化するための好適な候補物である。
実施例11:SDS PAGEによる抗体完全性分析
組換えヒトNI−308抗体の純度及び完全性を評価すること。簡単に記載すると、ヒトNI−308抗体をCHO−S細胞の一過性トランスフェクションによって発現させ、FPLCシステム(AKTApurifier;GE Healthcare Life Sciences)でのプロテインA親和性精製によって精製した。PD−10カラム(GE Healthcare Life Sciences)での脱塩の後、抗体をPBSにおいて配合した。5μgの精製された組換えヒトNI−308抗体を、酸化防止剤が補われるNovex(登録商標)NuPAGE(登録商標)MES SDS泳動緩衝液(Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)を使用するグラジエントSDS−PAGE(Novex(登録商標)Bis−Tris NuPAGE(登録商標)4−12%;Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)によって還元条件下で分離し、その後、クーマシーブルー染色(Novex(登録商標)SimplyBlue(商標) SafeStain、Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)を行った。結果として、組換えヒトNI−308抗体の還元条件下でのSDS−PAGE分析により、抗体の重鎖及び軽鎖に対応する2つの主要なバンドが、予想されたサイズにおいて明らかにされた。有意な混入物又はタンパク質分解生成物は検出できなかった(図13)。
実施例12:死後のヒトC9orf72−FTLD脳組織及び非神経学的コントロール脳組織におけるDPR凝集物病理に対する結合分析
ヒトC9orf72−FTLD患者及び非神経学的コントールに由来する死後小脳組織におけるC9orf72ジペプチドリピートタンパク質に対する、抗体NI−308.18F7、抗体NI−308.15O7、抗体NI−308.5G2及び抗体NI−308.4M1の結合を評価すること。簡単に記載すると、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長を有する3名のFTLD患者と、1名の非神経学的コントロール対象とから得られる小脳のホルマリン固定されたパラフィン包埋の5μm切片(BiOBANC HCB−IDIBAPS、Barcelona、スペイン)を、1mMのEDTA緩衝液(pH8.3)における加熱処理及び12分間のマイクロ波照射(600W)によって抗原回復のために前処理した。内因性ペルオキシダーゼ活性の消去をメタノールにおける3%H2O2によるRTでの10分間の処理によって達成した。非特異的結合部位を、PBS/5%血清(ウマ/ヤギ)/4%BSAを用いてRTで1時間ブロッキング処理した。ブロッキング処理工程の後、切片を、5nMの濃度でのヒト由来のNI−308.18F7抗体、NI−308.15O7抗体、NI−308.5G2抗体及びNI−308.4M1抗体と、又は、1:5000希釈でのC9RNATコントロール抗体(Novus Biologicals、Littleton、米国)と4℃で一晩インキュベーションした。検出を、ビオチン化ロバ抗ヒトIgG(H+L)(1:350の希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、West Grove、米国)又は抗ウサギ二次抗体(1:250の希釈、Vector Laboratories;Burlingame、米国)を用いて行い、抗体シグナルを、Vectastain Elite ABCキット(Vector Laboratories、Burlingame、米国)により増幅し、ジアミノベンジジン(DAB、Thermo Scientific、Rockford、米国)により検出した。スライドを、Eukitt(登録商標)封入剤(O.Kindler GmbH;Freiburg、ドイツ)を使用して封入した。明視野画像化を、Dotslide VS120スライドスキャナー(Olympus Schweiz AG、スイス)を使用して行った。NI−308.18F7、NI−308.15O7、NI−308.5G2及びNI−308.4M1の病理学的なC9orf72ジペプチドリピートタンパク質に対する結合を、FTLD患者及び非神経学的コントロール対象から得られる小脳切片の免疫組織化学的分析によって評価した。図14A及び図14Bに示されるように、ヒト由来のNI−308.18F7抗体、NI−308.15O7抗体及びNI−308.5G2抗体により、ニューロン細胞質封入体、ニューロン核内封入体及び異栄養性神経突起が、試験された3名すべてのC9orf72−FTLD症例の小脳の顆粒細胞層において明らかにされた。対照的に、非神経学的なコントロール小脳は、試験されたすべての抗体について陰性であった(図14A)。図14Cに示されるように、抗体NI−308.4M1により、ニューロン細胞質封入体及びニューロン核内封入体が、非神経学的コントロール症例ではなく、C9orf72−FTLD症例の小脳の顆粒細胞層において明らかにされた。結論として、ヒト由来抗体のNI−308.18F7、NI−308.15O7、NI−308.5G2及びNI−308.4M1により、C9orf72ジペプチドリピートタンパク質凝集物がC9orf72−FTLD症例の小脳の顆粒細胞層において特異的に検出され、その一方で、染色がコントロール小脳では認められず、このことはこれらの抗体の大きい標的特異性を明らかにする。
実施例13:FTLDにおける共凝集型DPR種に対するヒト抗体結合
C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長を有するヒトFTLD患者から得られる死後小脳組織におけるC9orf72 DPRタンパク質の異なった種の局在化を評価すること。簡単に記載すると、抗体NI−308.18F7を、Atto488タンパク質標識キット(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)を製造者の説明書に従って使用することによって蛍光色素Atto488に直接にコンジュゲート化した。抗体NI−308.5G2を、Atto550タンパク質標識キット(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)を製造者の説明書に従って使用することによってAtto550に直接にコンジュゲート化した。免疫蛍光組織化学実験のために、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長を有するFTLD患者から得られる小脳のホルマリン固定されたパラフィン包埋の5μm切片(BiOBANC HCB−IDIBAPS、Barcelona、スペイン)を、1mMのEDTA緩衝液(pH8.3)における加熱処理及び12分間のマイクロ波照射(600W)によって抗原回復のために前処理した。非特異的結合部位を、PBS/5%血清(ウマ/ヤギ)/4%BSAを用いて室温で1時間ブロッキング処理した。ブロッキング処理工程の後、切片をヒト抗体NI−308.18F7−Atto488及びヒト抗体NI−308.5G2−Atto550と5nMで、室温で2時間インキュベーションした。免疫染色の後、組織切片を、組織の自己蛍光を低下させるために0.1%ズダンブラックB溶液と室温で10分間インキュベーションした。核の対比染色をDAPI核酸染料(5mg/mlストック溶液の1:1000希釈物、Molecular Probes(登録商標)、Life Technologies Europe B.V.、Zug、スイス)の使用によって行った。スライドを、Hydromount(National Diagnostics、Atlanta、米国)封入剤を使用して封入した。蛍光画像化を、Dotslide VS120スライドスキャナー(Olympus Schweiz AG、スイス)を使用して行った。
C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長を有するヒトFTLD患者の小脳の顆粒層における、C9orf72ポリGA DPRタンパク質及びC9orf72ポリGP DPRタンパク質の局在化を、蛍光顕微鏡法によって評価した。図15に示されるように、抗体NI−308.18F7により、広範囲に及ぶニューロンの細胞質及び核内のC9orf72ポリGA封入体が認識された(左側パネル、緑色染色シグナル)。実験条件下において、選ばれたNI−308.5G2により、細胞質及び核内のポリGP封入体のよりまばらな病理が検出された(中央パネル、赤色染色シグナル)。ポリGP DPRタンパク質凝集物の相当な割合が、ポリGA DPRタンパク質凝集物と共局在化していた(左側パネル、黄色染色シグナル)。このことから、両方のDPRタンパク質が病理学的な封入体で共凝集し得ることが示唆される。
実施例14:C9orf72 DPRタンパク質の病原性機構を研究するための細胞型モデル
次々と現れる細胞培養モデル及び動物モデルでの近年の報告により、異常なC9orf72 DPRタンパク質の毒性についての証拠が提供された。例えば、ハエ及びいくつかの細胞培養モデルにおいて、特にアルギニンに富むDPRタンパク質(ポリGR及びポリPR)が、核封入体及び核小体ストレスを誘導することによって、毒性であることが見出され(Kwon他、Science 345(2014)、1139〜1145;Mizielinska他、Science 345(2014)、1192〜1194;Tao他、Hum.Mol.Genet.24(2015)、2426〜2441;Wen他、Neuron 84(2014)、1213〜1225;Yang他、Acta Neuropathol.130(2015)、525〜535)、一方で、他のモデルにより、毒性が細胞培養系における細胞質ポリGA凝集物について報告された(May他、Acta Neuropathol.128(2014)、485〜503;Zang他、Acta Neuropathol.128(2014)、505〜524)。
タウ(Yanamandra他、Ann.Clin.Transl.Neurol.2(2013)、278〜288)及びα−シヌクレイン(Tran他、Cell Rep.7(2014)、2054〜2065)について示されるように、DPR病理の拡大が本発明の抗体による処置によって防止され得るかを明らかにするために、インビトロC9orf72 DPR毒性アッセイが、本質的には同様に使用される。具体的には、合成DNA配列を、150回のジペプチドリピートを有する個々のDPRタンパク質のATG依存的翻訳での発現を生じさせるために作製した。ランダム化コドン戦略を用いて、選択された個々のDPRタンパク質配列のみの発現を確実にした。ニューロン細胞(例えば、SH−SY5Y、NSC−34、Neuro−2a、iPSC由来ニューロン及び初代ニューロンなど)におけるDPRタンパク質の発現を生じさせるために、合成DNA配列を、ニューロン特異的なThy1.2プロモーターによって調節される発現ベクターにクローン化した。広範囲の真核生物細胞(例えば、HEK293T細胞、U−2OS細胞、HeLa細胞及びCos細胞など)における高レベル発現のために、合成DNA配列を、CMVプロモーターによって調節される発現ベクターにクローン化した。ヒトiPSC由来ニューロンと、C9orf72患者の線維芽細胞に由来する分化転換させたニューロン(iニューロン)とは、さらなるC9orf72 DPRタンパク質細胞培養モデルを表す。
これらの細胞モデルは、本発明の抗体の治療有用性を調べるために使用することができる。本発明の抗体の治療効果の評価及び確認を、細胞生存性をミトコンドリア活性アッセイ及び/又はカスパーゼ活性アッセイによりモニターすることによって、細胞毒性を細胞溶解アッセイ及び/又は膜漏出アッセイによりモニターすることによって、また、細胞DPRタンパク質拡大の阻害を免疫組織化学的アッセイによりモニターすることによって行うことができる。
実施例15:C9orf72 DPRタンパク質の病原性機構を研究するための遺伝子組換えマウスモデル
凝集しやすいタンパク質及び/又は誤って折り畳まれたタンパク質に対して開発された免疫療法取り組みは、有望な結果をいくつかの神経変性疾患の前臨床研究及び臨床研究においてもたらしている。C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長により媒介されるALS/FTLDの病理学的特徴を再現する遺伝子組換えマウスモデルが近年、開発されている(Chew他、Science、348(2015)、1151〜1154;及び国際特許出願公開WO2014/159247(A1))。これらのマウスモデルの作製のために、全長型又は短縮型のどちらかのヘキサヌクレオチドリピートが伸長したC9orf72遺伝子(約450回〜500回の間のヘキサヌクレオチドリピート)を有する細菌人工染色体構築物、又は、66回のC9orf72ヘキサヌクレオチドリピートの配列を有するアデノ関連ウイルスベクターが使用された。これらのマウスモデルにおいて、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長により媒介される核RNA巣及びDPRタンパク質の蓄積が中枢神経系において検出されている。さらには、C9orf72疾患の顕著な病理学的特徴(例えば、ニューロン喪失、行動異常、運動障害及び生存低下など)が、異なる遺伝子組換えマウスモデルにおいて認められている。これらのマウスモデルは、本発明の抗体の治療有用性を調べるために使用することができる。具体的には、スクリーニングされる抗体が、多様な可能な経路(例えば、腹腔内の抗体注射、頭蓋内注射、脳室内脳注入など)で動物に適用され、治療効果について調べられる場合がある。
ヒト免疫系における進化的最適化及び親和性成熟のために、本発明の抗体は、健康なヒト対象から単離されたことに起因する有益な治療ツールを、優れた安全性プロファイル及び免疫原性の喪失のための大きい可能性を伴って提供する。これらの予想された治療効果の確認が、マウス抗体の代わりにヒト抗体を用いて、上述の刊行物に記載されるような試験方法によってもたらされ得る。
本発明の特定の実施形態においては、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
第9染色体のオープンリーディングフレーム72(C9orf72)遺伝子からそのアンチセンス方向で翻訳されるような少なくとも1つのDPR(ポリ(Pro−Arg;PR)、ポリ(Pro−Ala;PA)、ポリ(Gly−Pro;GP))、及び/又は、C9orf72遺伝子からそのセンス方向で翻訳されるような少なくとも1つのDPR(ポリ(Gly−Arg;GR)、ポリ(Gly−Ala;GA)、ポリ(Gly−Pro;GP))を認識するヒト由来のモノクローナル抗ジペプチド(XX’)リピート(DPR)抗体(好ましくは、リピート数は(XX’) 15 である)或いはそのDPR結合フラグメント、合成変異体又は生物工学誘導体。
(項目2)
C9orf72遺伝子からそのアンチセンス方向で翻訳されるような少なくとも1つのDPRと、C9orf72遺伝子からそのセンス方向で翻訳されるような少なくとも1つのDPRとを認識する、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記DPRがタンパク質に含有され、又はタンパク質にコンジュゲート化され(DPR−タンパク質)、好ましくは、前記タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)であり、前記DPRにコンジュゲート化される、項目1又は2に記載の抗体。
(項目4)
DPRタンパク質の組合せを認識し、好ましくは、ポリ(GR)、ポリ(PR)及び場合によりポリ(GA)を認識し、又は、ポリ(GA)及びポリ(GP)を認識し、又は、ポリ(GA)及びポリ(GR)を認識し、又は、ポリ(GR)及びポリ(PR)を認識し、又は、ポリ(GA)、ポリ(GR)及び場合によりポリ(PR)を認識し、又は、ポリ(PA)、ポリ(PR)及び場合によりポリ(GR)を認識し、又は、ポリ(PA)及びポリ(GA)を認識する、項目1〜3のいずれか一項に記載の抗体。
(項目5)
(XX’) 15 からなるDPRペプチドと結合することができ、場合により、BSAにカップリングされる前記ペプチドには結合しない、又は少なくともより小さい大きさで結合する、項目1〜4のいずれか一項に記載の抗体。
(項目6)
前記DPR及びDPRタンパク質の凝集型形態とそれぞれ結合することができる、項目1〜5のいずれか一項に記載の抗体。
(項目7)
前記DPR−タンパク質がC9ORF72−DPRである、項目1〜6のいずれか一項に記載の抗体。
(項目8)
GAリピートを含むDPRを認識し、下記のものをその可変領域において含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体:
(a)抗体NI−308.18F7、抗体NI−308.15O7、抗体NI−308.28G1及び抗体NI−308.45C2のいずれか1つのV H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、ただし、前記V H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列は図1A〜図1Dのいずれか1つに示され、かつ、下記の(i)V H 配列及び(ii)V L 配列においてそれぞれ示される:
(i)V H 配列(配列番号2、配列番号8、配列番号22、配列番号26、配列番号30、配列番号34)、及び
(ii)V L 配列(配列番号4、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号36);
(b)図1A〜図1Dのいずれか1つに示されるようなV H 領域及び/又はV L 領域のアミノ酸配列;
(c)(a)の前記アミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列からなる少なくとも1つのCDR;
(d)(b)の前記アミノ酸配列の部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、並びに/或いは
(e)前記V H 領域及び/又はV L 領域或いは前記少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を場合によりさらに含む前記抗体又はその抗原結合フラグメントであって、好ましくは、ポリペプチド配列がヒト定常ドメインを含み、好ましくはIgGタイプのヒト定常ドメインを含み、最も好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプのヒト定常ドメインを含む、前記抗体又はその抗原結合フラグメント。
(項目9)
GPリピートを含むDPRを認識し、下記のものをその可変領域において含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体:
(a)抗体NI−308.5G2、抗体NI−308.46E9及び抗体NI−308.12A3のいずれか1つのV H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、ただし、前記V H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列は、図1F、図1G及び図1Lに示され、かつ、下記の(i)V H 配列及び(ii)V L 配列においてそれぞれ示される:
(i)V H 配列(配列番号14、配列番号18、配列番号44、配列番号48、配列番号72、配列番号76)、及び
(ii)V L 配列(配列番号16、配列番号20、配列番号46、配列番号50、配列番号74、配列番号78);
(b)図1F、図1G又は図1Lに示されるようなV H 領域及び/又はV L 領域のアミノ酸配列;
(c)(a)の前記アミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列からなる少なくとも1つのCDR;
(d)(b)の前記アミノ酸配列の部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、並びに/或いは
(e)前記V H 領域及び/又はV L 領域或いは前記少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を場合によりさらに含む前記抗体又はその抗原結合フラグメントであって、好ましくは、ポリペプチド配列がヒト定常ドメインを含み、好ましくはIgGタイプのヒト定常ドメインを含み、最も好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプのヒト定常ドメインを含む、前記抗体又はその抗原結合フラグメント。
(項目10)
GRリピートを含むDPRを認識し、下記のものをその可変領域において含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体:
(a)抗体NI−308.6B11又は抗体NI−308.46F8のV H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、ただし、前記V H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列は図1H及び図1Iに示され、かつ、下記の(i)V H 配列及び(ii)V L 配列においてそれぞれ示される:
(i)V H 配列(配列番号52、配列番号56、配列番号58、配列番号62)、及び
(ii)V L 配列(配列番号54、配列番号60);
(b)図1H又は図1Iに示されるようなV H 領域及び/又はV L 領域のアミノ酸配列;
(c)(a)の前記アミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列からなる少なくとも1つのCDR;
(d)(b)の前記アミノ酸配列の部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、並びに/或いは
(e)前記V H 領域及び/又はV L 領域或いは前記少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を場合によりさらに含む前記抗体又はその抗原結合フラグメントであって、好ましくは、ポリペプチド配列がヒト定常ドメインを含み、好ましくはIgGタイプのヒト定常ドメインを含み、最も好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプのヒト定常ドメインを含む、前記抗体又はその抗原結合フラグメント。
(項目11)
PRリピートを含むDPRを認識し、下記のものをその可変領域において含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体:
(a)抗体NI−308.24E11のV H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、ただし、前記V H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列は図1Eに示され、かつ、下記の
(i)V H 配列及び(ii)V L 配列においてそれぞれ示される:
(i)V H 配列(配列番号38)、及び
(ii)V L 配列(配列番号40、配列番号42);
(b)図1Eに示されるようなVH領域及び/又はV L 領域のアミノ酸配列;
(c)(a)の前記アミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列
からなる少なくとも1つのCDR;
(d)(b)の前記アミノ酸配列の部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、並びに/或いは
(e)前記V H 領域及び/又はV L 領域或いは前記少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を場合によりさらに含む前記抗体又はその抗原結合フラグメントであって、好ましくは、ポリペプチド配列がヒト定常ドメインを含み、好ましくはIgGタイプのヒト定常ドメインを含み、最も好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプのヒト定常ドメインを含む、前記抗体又はその抗原結合フラグメント。
(項目12)
PAリピートを含むDPRを認識し、下記のものをその可変領域において含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体:
(a)抗体NI−308.4M1のV H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、ただし、前記V H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列は図1Jに示され、かつ、下記の(i)V H 配列及び(ii)V L 配列においてそれぞれ示される:
(i)V H 配列(配列番号64、配列番号68)、及び
(ii)V L 配列(配列番号66、配列番号70);
(b)図1Jに示されるようなV H 領域及び/又はV L 領域のアミノ酸配列;
(c)(a)の前記アミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列からなる少なくとも1つのCDR;
(d)(b)の前記アミノ酸配列の部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、並びに/或いは
(e)前記V H 領域及び/又はV L 領域或いは前記少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を場合によりさらに含む前記抗体又はその抗原結合フラグメントであって、好ましくは、ポリペプチド配列がヒト定常ドメインを含み、好ましくはIgGタイプのヒト定常ドメインを含み、最も好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプのヒト定常ドメインを含む、前記抗体又はその抗原結合フラグメント。
(項目13)
PRリピートを含むDPRを認識し、下記のものをその可変領域において含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体:
(a)抗体NI−308.16C10のV H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、ただし、前記V H 可変領域アミノ酸配列及び/又はV L 可変領域アミノ酸配列は図1Mに示され、かつ、下記の
(i)V H 配列及び(ii)V L 配列においてそれぞれ示される:
(i)V H 配列(配列番号80、配列番号84)、及び
(ii)V L 配列(配列番号82、配列番号86);
(b)図1Mに示されるようなV H 領域及び/又はV L 領域のアミノ酸配列;
(c)(a)の前記アミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列からなる少なくとも1つのCDR;
(d)(b)の前記アミノ酸配列の部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、並びに/或いは
(e)前記V H 領域及び/又はV L 領域或いは前記少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を場合によりさらに含む前記抗体又はその抗原結合フラグメントであって、好ましくは、ポリペプチド配列がヒト定常ドメインを含み、好ましくはIgGタイプのヒト定常ドメインを含み、最も好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプのヒト定常ドメインを含む、前記抗体又はその抗原結合フラグメント。
(項目14)
ポリGAリピートともまた結合することができ、好ましくは、抗体NI−308.5G2である、又は抗体NI−308.5G2に由来する、項目9に記載の抗体。
(項目15)
ポリGAリピートともまた結合することができ、好ましくは、抗体NI−308.6B11である、又は抗体NI−308.6B11に由来する、項目10に記載の抗体。
(項目16)
ポリPRリピートともまた結合することができ、好ましくは、抗体NI−308.6B11である、又は抗体NI−308.6B11に由来する、項目10又は14に記載の抗体。
(項目17)
ポリGAリピートともまた結合することができ、好ましくは、抗体NI−308.4M1である、又は抗体NI−308.4M1に由来する、項目12に記載の抗体。
(項目18)
ポリGAリピートともまた結合することができ、好ましくは、抗体NI−308.16C10である、又は抗体NI−308.16C10に由来する、項目13に記載の抗体。
(項目19)
非カップリング型のDPRペプチドと選択的又は優先的に結合する、項目1〜16のいずれか一項に記載の抗体。
(項目20)
リピート数nが6以上(好ましくは10以上、より好ましくは15以上)である場合においてのみ前記DPRに結合する、項目1〜19のいずれか一項に記載の抗体。
(項目21)
非カップリング型のDPR及びBSAカップリング型のDPRと、実質的に等しい親和性で、又は、ほぼ同じ程度の大きさで結合することができ、好ましくは、前記非カップリング型DPR及び前記BSAカップリング型DPRと結合することについてのEC 50 (最大半量有効濃度)が、間接的ELISAによって求められる場合(リピート数nは15である)、最大でも20倍以下(好ましくは最大でも15倍以下、より好ましくは最大でも10倍以下、一層より好ましくは最大でも5倍以下、最も好ましくは最大でも約2倍以下又は3倍)異なる、項目1〜20のいずれか一項に記載の抗体。
(項目22)
2つ以上の異なるDPRと、実質的に等しい親和性で、又は、ほぼ同じ程度の大きさで結合することができ、好ましくは、前記DPRのいずれか1つと結合することについてのEC 50 が、間接的ELISAによって求められる場合、DPRn又はDPRnタンパク質(リピート数nは15である)と結合することについては少なくとも200nM以下であり、好ましくは150nM以下であり、より好ましくは100nM以下であり、一層より好ましくは50nM以下であり、最も好ましくは25nM以下である、項目1〜21のいずれか一項に記載の抗体。例えば、抗体NI−308.5G2は(GA) 15 とは約15.3のEC 50 で、(GP) 15 とは約0.88のEC 50 で結合し、抗体NI−308.6B11は(GA) 15 とは約38.4のEC 50 で、(GR) 15 とは約0.94のEC 50 で、(PR) 15 とは約119のEC 50 で結合する;実施例3及び図2を参照のこと。
(項目23)
間接的ELISAによって求められる場合、25nM以下の、好ましくは2nM以下の、より好ましくは1nM以下の、最も好ましくは0.5nM以下のEC 50 (最大半量有効濃度)値に対応する、少なくとも1つのDPR n 又はDPR n タンパク質(リピート数nは15である)に対する結合親和性を有する、項目1〜22のいずれか一項に記載の抗体。
(項目24)
キメラなマウス−ヒト抗体又はマウス化抗体である、項目1〜23のいずれか一項に記載の抗体。
(項目25)
項目1〜24のいずれか一項で定義されるようDPR又はDPR−タンパク質に対する特異的な結合について、項目1〜24のいずれか一項に記載される抗体と競合する抗体又は抗原結合分子。
(項目26)
単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント及びF(ab’) 2 フラグメントからなる群から選択される、項目1〜25のいずれか一項に記載の抗体。
(項目27)
項目1〜26のいずれか一項に記載される抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドであって、好ましくはcDNAであるポリヌクレオチド。
(項目28)
項目27に記載される前記ポリヌクレオチドを、必要な場合には前記結合性分子の他方の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードする項目27に記載されるポリヌクレオチドとの組合せで含むベクター。
(項目29)
項目27に記載されるポリヌクレオチド又は項目28に記載されるベクターを含む宿主細胞。
(項目30)
抗DPR抗体を製造するための、項目27に記載されるcDNA、項目28に記載されるベクター、又は項目30に記載される宿主細胞の使用。
(項目31)
抗DPR抗体或いはその生物工学誘導体又は免疫グロブリン鎖を調製するための方法であって、
(a)項目29に記載される細胞を培養すること、及び
(b)前記抗体又はその免疫グロブリン鎖を前記培養物から単離すること
を含む方法。
(項目32)
項目27に記載されるポリヌクレオチドによってコードされる、又は、項目31に記載される方法によって得ることができる抗体又はその免疫グロブリン鎖。
(項目33)
検出可能に標識される、項目1〜26又は32のいずれか一項に記載の抗体。
(項目34)
前記検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団及び重金属からなる群から選択される、項目34に記載の抗体。
(項目35)
薬物に結合させられる、項目1〜26又は32のいずれか一項に記載の抗体。
(項目36)
項目1〜26又は32〜35のいずれか一項に記載される抗体、項目27に記載されるポリヌクレオチド、項目28に記載されるベクター、或いは項目29に記載される細胞を含む組成物。
(項目37)
医薬組成物であり、かつ、医薬的に許容され得る担体をさらに含む、項目36に記載の組成物。
(項目38)
ワクチンである、項目37に記載の組成物。
(項目39)
DPR凝集物及びDPR−タンパク質凝集物に伴う、又は、DPR凝集物及びDPR−タンパク質凝集物によって引き起こされる障害の処置において使用されるための医薬組成物を調製する方法であって、
(a)項目29に記載される細胞を培養すること;
(b)前記抗体、その生物工学誘導体又は免疫グロブリン鎖を前記培養物から医薬品グレードにまで精製すること;及び
(c)前記抗体又はその生物工学誘導体を医薬的に許容され得る担体と混合すること
を含む方法。
(項目40)
凝集型DPRタンパク質(例えば、C9ORF72−DPR)に伴う疾患及び/又は症状を処置するために有用であるさらなる薬剤をさらに含む、項目36又は37に記載の医薬組成物。
(項目41)
診断組成物である、項目40に記載の組成物。
(項目42)
免疫又は核酸に基づく診断方法において従来から使用される試薬を含む、項目41に記載の診断組成物。
(項目43)
DPRタンパク質及びその凝集型形態に伴う疾患の予防的処置及び治療的処置のための医薬組成物又は診断組成物を調製することにおいて使用されるための、項目1〜26若しくは32〜35のいずれか一項に記載の抗体、又は、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPRタンパク質結合分子、項目27に記載のポリヌクレオチド、項目28に記載のベクター、或いは、項目29に記載の細胞。
(項目44)
前記疾患が、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及びFTLD−ALSからなる群から選択される、予防的処置及び治療的処置のための医薬組成物又は診断組成物を調製することにおいて使用されるための項目43に記載の抗体。
(項目45)
ヒト又は動物の身体における凝集物のインビボ検出において、或いは、治療剤及び/又は診断剤をヒト又は動物の身体における凝集物に対して標的化することにおいて使用されるための、項目1〜26又は32〜35のいずれか一項に記載される抗体の少なくとも1つのCDRを含むDPRタンパク質結合分子。
(項目46)
前記インビボ画像化が、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法又は磁気共鳴画像法(MRI)を含む、項目45に記載のDPRタンパク質結合分子。
(項目47)
DPRタンパク質に伴う障害を診断するための方法であって、項目1〜26又は32〜35のいずれか一項に記載される抗体の存在を前記対象の生物学的サンプルにおいて明らかにする工程を含む方法。
(項目48)
DPRタンパク質に伴う障害の診断又はモニタリングにおいて有用なキットであって、項目1〜26若しくは32〜35のいずれか一項に記載される少なくとも1つの抗体、又は、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するDPRタンパク質結合分子、項目27に記載されるポリヌクレオチド、項目28に記載されるベクター、或いは、項目29に記載される細胞を、必要な場合には使用のための試薬及び/又は説明書と一緒に含むキット。