2型糖尿病(T2D)において、遺伝的決定因子および環境的要因により、インスリン抵抗性の発現が引き起こされ、続いて、ベータ細胞量ならびにインスリン分泌およびアミリン(hIAPP)分泌の代償的な増大が、正常な血中グルコースレベルを維持するために引き起こされる。その結果生じる高濃度のアミリンが、毒性のヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)オリゴマーの形成、および、2型糖尿病患者の90%超に見出されるhIAPP原線維の沈着に有利に働いている。hIAPPの沈着はインスリン産生ベータ細胞の減少と相関しており、また、1型糖尿病の個体に移植された膵島におけるβ細胞の喪失についての役割を果たすこともまた提案されている。健康なドナーのプール、または、2型糖尿病についての危険性が高いが、疾患を有していない肥満ドナーのプールから得られるいくつかのヒト由来抗体が、国際特許出願公開WO2008/081008に詳しく記載されるようにインビトロで特定および特徴づけされ、クローン化され、そして、Neurimmune’s RTM(商標)技術によって組換え製造されており、また、本明細書中に提供される。様々なリード候補物が、hIAPPを発現し、かつ、高脂肪食にさらされる遺伝子組換えマウスにおいて有効性確認される。治療効力が、膵臓におけるベータ細胞量およびhIAPPアミロイド負荷量ならびにhIAPPの血漿中レベルを求めることによって、また、グルコース代謝およびインスリン分泌の機能的試験によって評価される。
2型糖尿病は糖尿病の最も一般的な形態であり、全症例の約90%を占める。この疾患には、世界中で2億人を超える人々が冒されており、その結果、糖尿病による100万人を超える死者が毎年生じている。300、000人を超える患者がスイスでは罹患している。糖尿病の有病率が、人口増加、加齢、都市化、ならびに、肥満および運動不足の増大する蔓延のために先進国および開発途上国の両方で劇的に増大し続けている。250億USドルという世界的な2型糖尿病市場が、2009年から2016年までの間に6.4%の年複利成長率により2016年までに350億USドルに達すると予測されている。現在の処置には、食事管理、および、インスリン感受性を改善することによる、または、膵臓を刺激してインスリンを放出させることによる、血中グルコースレベルを低下させるための種々の経路に作用する薬理学的介入が含まれる。しかしながら、これらの利用可能な処置のどれもがhIAPPの凝集および膵臓ベータ細胞の喪失を阻止することができない。2型糖尿病のための新しい処置戦略は、グルカゴン−ペプチド1(GLP−1)のアナログ、および、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)(すなわち、内因性GLP−1を不活性化する酵素)の阻害剤を伴う。これらの戦略は、GLP−1の強力なインスリン分泌効果、および、ベータ細胞の増殖を高めるその効果に基づいている。重要なことに、増大したインスリン放出はまた、増大したアミリン放出に連動する。実験的には、刺激されたインスリン分泌が膵島アミロイドーシスの発現を動物モデルにおいて促進させることが示されており、類似する影響がヒトにおいて予想され得る。したがって、本発明のIAPP結合性分子の特定の使用のほかに、さらなる提案された治療的取り組みは、これらの分子と上記で示された新規な処置との魅力的な併用療法であり得る。
I.定義
別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。
用語「a」または「an」を伴う実体はそのような実体の1つまたは複数を示すことに留意しなければならない;例えば、「an antibody」(抗体)は1つまたは複数の抗体を表すことが理解される。そのようなものとして、用語「a」(または「an」)、 「one or more」(1つまたは複数)および 「at least one」(少なくとも1つ)は、本明細書中では交換可能に使用され得る。
別途具体的に示されない場合、用語「IAPP」は、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)の生来的なモノマー形態、オリゴマー形態、非原線維性形態および原線維性形態を具体的に示すために交換可能に使用される。用語「IAPP」はまた、IAPPの他の配座異性体、例えば、IAPPのオリゴマーおよび/または凝集物(例えば、IAPP原線維など)を一般的に特定するために使用される。
用語「IAPP」はまた、IAPPのすべてのタイプおよび形態を総称的に示すために使用される。proIAPPの用語は、膵島アミロイドポリペプチドの前駆体ペプチド(proIAPP)の生来的なモノマー形態、オリゴマー形態、原線維性形態および/または凝集型形態を具体的に示すために交換可能に使用される。IAPPまたはproIAPPの用語の前における追加の文字は、その具体的なオルソログが由来する生物を示すために使用され、例えば、hIAPPはヒトIAPPのために使用され、または、mIAPPはマウス起源のために使用される。
ヒトIAPPについての37aaのアミノ酸配列は、2位および7位のシステイン残基の間におけるジスルフィド架橋と、アミド化されたC末端とを有するKCNTATCATQRLANFLVHSSNNFGAILSSTNVGSNTY(配列番号1)である。
IAPPは、プレプロホルモンのpreproIAPP、すなわち、膵臓のβ細胞において産生される89アミノ酸前駆体からプロセシングされる。ヒトpreproIAPPについてのタンパク質配列が、MGILKLQVFLIVLSVALNHLKATPIESHQVEKRKCNTATCATQRLANFLVHSSNNFGAILSSTNVGSNTYGKRNAVEVLKREPLNYLPL(配列番号2)であり、そのような配列が、関連のあるデータベースにおいて、例えば、UniProtデータベースにおいても見出される場合がある(UniProtID:P10997(IAPP_HUMAN))。
preproIAPPはプロ膵島アミロイドポリペプチドに翻訳後速やかに切断される。ヒトproIAPPについてのタンパク質配列が、TPIESHQVEKRKCNTATCATQRLANFLVHSSNNFGAILSSTNVGSNTYGKRNAVEVLKREPLNYLPL(配列番号3)であり、これは、さらなるタンパク質分解および翻訳後修飾を受けて、hIAPPをもたらす。
「野生型」または組換えのヒトIAPP、ヒトproIAPPおよびヒトpreproIAPPのアミノ酸配列が、配列番号1〜配列番号3による上述の配列によって表される。
本明細書中に開示されるヒト抗IAPP抗体およびヒト抗proIAPP抗体は、IAPPおよび/またはproIAPPならびにそれらのエピトープと特異的に結合し、また、IAPPおよび/またはproIAPPならびにそれらのエピトープの様々な立体配座に特異的に結合する。例えば、本明細書中には、病理学的に凝集したIAPP形態および/またはproIAPP形態、例えば、非原線維性オリゴマーおよび/または原線維性オリゴマー/原線維、ならびに/あるいは、それらの混合形態からなる凝集物などと特異的に結合する抗体が開示される。IAPPおよび/またはproIAPPの(病理学的に)凝集した/凝集物の用語は、上述の形態を具体的に示すために交換可能に使用される。(病理学的に)「凝集した形態(凝集型形態)」または「凝集物」の用語は、本明細書中で使用される場合、IAPPおよび/またはproIAPPの相互の誤った/病理学的な相互作用に起因する蓄積またはクラスター形成の産物を記述する。これらの凝集物、蓄積物またはクラスター形態は、IAPPおよび/またはproIAPPの両方、非原線維性オリゴマーおよび/または原線維性オリゴマーならびにそれらの原線維である場合があり、あるいは、そのようなものから実質的になる場合があり、あるいは、そのようなものからなる場合がある。本明細書中で使用される場合、IAPPおよび/またはproIAPPと「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、または、「優先的に結合する」抗体に対する言及は、関係のない他のタンパク質と結合しない抗体を示す。一例において、本明細書中に開示されるIAPP抗体および/またはproIAPP抗体は、IAPPおよび/またはproIAPPあるいはそのエピトープと結合することができ、かつ、他のタンパク質についてはバックグラウンドの約2倍を超える結合を示さない。所与のIAPP配座異性体および/またはproIAPP配座異性体と「特異的に結合する」または「選択的に結合する」抗体は、IAPPおよび/またはproIAPPのすべての立体配座と結合するわけではない抗体、すなわち、少なくとも1つの他のIAPP配座異性体および/またはproIAPP配座異性体と結合しない抗体を示す。例えば、本明細書中には、インビトロにおいて、また、明白なT2Dを有する患者、または、T2Dを発症する危険性がある患者から得られる組織においてそれらの両方で凝集型形態のIAPPおよび/またはproIAPPに優先的に結合することができる抗体が開示される。本発明のヒトIAPP抗体および/またはproIAPP抗体は、健康なヒト対象のプールから、あるいは、T2Dを発症する高まった危険性を有するが、抗体単離時にはT2Dの徴候を何ら示さなかった、IAPPおよび/またはproIAPPに特異的な免疫応答を示す肥満患者群および他の患者群のプールから単離されているので、本発明のIAPP抗体および/またはproIAPP抗体はまた、そのような抗体が、実際に対象によって発現されたものであり、かつ、例えば、ヒト免疫グロブリン発現ファージライブラリー(これまでは、ヒト様抗体を提供しようとするための1つの一般的な方法を表していた)からは単離されていないことを強調するために「ヒト自己抗体」と呼ばれることもある。
用語「ペプチド」は、その意味の範囲内において、(時には本明細書中では交換可能に使用されることがある)用語「ポリペプチド」および用語「タンパク質」を包含することが理解される。同様に、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントもまた包含され、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントは本明細書中では「ペプチド」と称される場合がある。それにもかかわらず、用語「ペプチド」は好ましくは、少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、より好ましくは少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、さらにより好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、特に好ましくは少なくとも25個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。加えて、本発明によるペプチドは典型的には、最大でも100個の連続するアミノ酸を有し、好ましくは80個未満の連続するアミノ酸を有し、より好ましくは50個未満の連続するアミノ酸を有する。
ポリペプチド:
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1つだけの「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に連結されるモノマー(アミノ酸)から構成される分子を示す。用語「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(1つまたは複数)を示し、生成物の特定の長さを示さない。したがって、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または、2個以上のアミノ酸の鎖(1つまたは複数)を示すために使用される任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義の範囲に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、または、これらの用語のどれとも交換可能に使用される場合がある。
用語「ポリペプチド」はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、および、知られている保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断による誘導体化、または、天然に存在しないアミノ酸による修飾を含めて、当該ポリペプチドの発現後修飾の産物を示すことが意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源に由来してもよく、または、組換え技術によって産生されてもよいが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成による様式を含めて、どのような様式において作製されてもよい。
本発明のポリペプチドは、約3個以上のアミノ酸のサイズ、5個以上のアミノ酸のサイズ、10個以上のアミノ酸のサイズ、20個以上のアミノ酸のサイズ、25個以上のアミノ酸のサイズ、50個以上のアミノ酸のサイズ、75個以上のアミノ酸のサイズ、100個以上のアミノ酸のサイズ、200個以上のアミノ酸のサイズ、500個以上のアミノ酸のサイズ、1,000個以上のアミノ酸、または、2,000個以上のアミノ酸のサイズである場合がある。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有する場合があるが、ポリペプチドはそのような構造を必ずしも有さない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれたとして示される。規定された三次元構造を有するのではなく、むしろ、非常に多数の異なる立体配座を取ることができるポリペプチドは、折り畳まれていないとして示される。本明細書中で使用される場合、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基またはアスパラギン残基)の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介して当該タンパク質に結合する少なくとも1つの炭水化物成分に連結されるタンパク質を示す。
「単離された」ポリペプチドあるいはそのフラグメント、変異体または誘導体によって、その天然の環境に存在していないポリペプチドが意図される。特定の精製レベルは何ら要求されない。例えば、単離されたポリペプチドはその生来的な環境または天然の環境から取り出され得る。宿主細胞において発現される組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の好適な技術によって分離されているか、分画されているか、あるいは、部分的または実質的に精製されている生来的ポリペプチドまたは組換えポリペプチドのように、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。
「組換え(の)ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質」は、組換えDNA技術によって産生される、すなわち、所望されるペプチドを含む融合タンパク質をコードする外因性の組換えDNA発現構築物によって形質転換される細胞(微生物細胞または哺乳動物細胞)から産生される、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を示す。ほとんどの細菌培養物において発現されるタンパク質またはペプチドは典型的にはグリカンを含まないであろう。酵母において発現されるタンパク質またはペプチドは、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるグリコシル化パターンを有する場合がある。
本発明のポリペプチドとして、前記ポリペプチドのフラグメント、誘導体、アナログまたは変異体、および、それらの任意の組合せも含まれる。用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「アナログ」には、天然ペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するアミノ酸配列を有するペプチドおよびポリペプチドが含まれる。用語「十分に類似する」は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメインおよび/または共通の機能的活性を有するように、第2のアミノ酸配列に対する十分な数または最小数の同一アミノ酸残基または等価なアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味する。例えば、共通の構造的ドメインを含むアミノ酸配列で、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約100%が同一であるアミノ酸配列は、十分に類似するとして本明細書中では定義される。好ましくは、変異体は、本発明の好ましいペプチドのアミノ酸配列に、特に、IAPPおよび/またはproIAPP、あるいは、それらのどちらかのフラグメント、変異体、誘導体またはアナログのアミノ酸配列に十分に類似しているであろう。そのような変異体は一般に、本発明のペプチドの機能的活性を保持する。変異体には、1つまたは複数のアミノ酸欠失、アミノ酸付加および/またはアミノ酸置換によって生来型ペプチドおよびwt型ペプチドとはアミノ酸配列においてそれぞれ異なるペプチドが含まれる。これらは、天然に存在する変異体、ならびに、人為的に設計された変異体である場合がある。
さらに、用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「アナログ」は、本発明の抗体または抗体ポリペプチドに言及するときには、対応する生来型の結合性分子、抗体またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持するどのようなポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメントには、本明細書中の他のところで議論される具体的な抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解的フラグメント、ならびに、欠失フラグメントが含まれる。本発明の抗体および抗体ポリペプチドの変異体には、上記で記載されるようなフラグメント、および、アミノ酸の置換、欠失または挿入に起因する変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。変異体は天然に存在している場合があり、または、天然に存在していない場合がある。天然に存在していない変異体は、この技術分野において知られている変異誘発技術を使用して作製される場合がある。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失またはアミノ酸付加を含む場合がある。IAPP特異的および/またはproIAPP特異的な結合性分子の誘導体、例えば、本発明の抗体および抗体ポリペプチドの誘導体は、生来型ポリペプチドに対して見出されないさらなる特徴を示すように変化させられているポリペプチドである。例には、融合タンパク質が挙げられる。変異体ポリペプチドは、本明細書中では「ポリペプチドアナログ」として示される場合もある。本明細書中で使用される場合、結合性分子もしくはそのフラグメント、抗体または抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化される1つまたは複数の残基を有する当該ポリペプチドを示す。また、「誘導体」として、20個の標準的アミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するそのようなペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシproリンがproリンの代わりに使用されてもよい;5−ヒドロキシリシンがリシンの代わりに使用されてもよい;3−メチルヒスチジンがヒスチジンの代わりに使用されてもよい;ホモセリンがセリンの代わりに使用されてもよい;また、オルニチンがリシンの代わりに使用されてもよい。
分子の類似性および/または同一性の決定:
2つのペプチドの間における「類似性」が、一方のペプチドのアミノ酸配列を第2のペプチドの配列に対して比較することによって求められる。一方のペプチドのアミノ酸が同一であるか、または、保存的なアミノ酸置換であるならば、一方のペプチドのアミノ酸は第2のペプチドの対応するアミノ酸と類似している。保存的な置換には、Dayhoff,M.O.編、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5(National Biomedical Research Foundation、Washington,D.C.(1978))に記載される置換、および、Argos、EMBO J.8(1989)、779〜785に記載される置換が含まれる。例えば、下記の群の1つに属するアミノ酸は、保存的な変化または置換を表す:−Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;−Cys、Ser、Tyr、Thr;−Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;−Lys、Arg、His;−Phe、Tyr、Trp、His;および、−Asp、Glu。
2つのポリヌクレオチドの間における「類似性」が、一方のポリヌクレオチドの核酸配列を所与のポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。一方の核酸が同一であるならば、または、核酸がコード配列の一部である場合、当該核酸を含むそれぞれのトリプレットが、同じアミノ酸または保存的なアミノ酸置換をコードするならば、一方のポリヌクレオチドの核酸は第2のポリヌクレオチドの対応する核酸と類似している。
2つの配列の間におけるパーセント同一性またはパーセント類似性の決定が好ましくは、KarlinおよびAltschul(1993)(Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〜5877)の数学的アルゴリズムを使用して達成される。そのようなアルゴリズムが、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cge)において利用可能なAltschul他(1990)(J.Mol.Biol.215:403〜410)のBLASTnプログラムおよびBLASTpプログラムに組み込まれる。
パーセント同一性またはパーセント類似性の決定が、NCBIのウエブページで推奨されるような、また、特定の長さおよび組成の配列に関しての「BLAST Program Selection Guide」に記載されるようなBLASTnプログラムおよびBLASTpプログラムの標準的なパラメーターを用いて行われる。
BLASTポリヌクレオチド検索が、BLASTnプログラムを用いて行われる。
一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが1000に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが7に設定される場合があり、これらはNCBIのウエブページにおいて短い配列(20塩基未満)について推奨される通りである。より長い配列については、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが11に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Match/mismatch Scores」が、1、−2に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが直線に設定される場合がある。フィルターおよびマスキングパラメーターについては、「Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Species−specific repeats」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「DUST Filter Settings」にチェックが入れられる場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。一般に、「Search for short nearly exact matches」がこの点に関して使用される場合があり、これにより、上記で示された設定のほとんどが提供される。この点に関してのさらなる情報は、NCBIのウエブページで公開される「BLAST Program Selection Guide」に見出される場合がある。
BLASTタンパク質検索は、BLASTpプログラムを用いて行われる。一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが「3」に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Matrix」ボックスが「BLOSUM62」に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが「Existence:11 Extension:1」に設定される場合があり、「Compositional adjustments”ボックスが“Conditional compositional score matrix adjustment”に設定される場合がある。フィルターおよびマスキングパラメーターについては、“Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。
両方のプログラムの改変、例えば、検索された配列の長さに関しての改変は、NCBIのウエブページにおいてHTML版およびPDF版で公開される「BLAST Program Selection Guide」における推奨に従って行われる。
ポリヌクレオチド:
用語「ポリヌクレオチド」は、1つだけの核酸ならびに複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子または核酸構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を示す。ポリヌクレオチドは、従来型のホスホジエステル結合または非従来型の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるアミド結合など)を含む場合がある。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在するいずれかの1つまたは複数の核酸セグメント(例えば、DNAフラグメントまたはRNAフラグメント)を示す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドによって、その生来的環境から取り出されている核酸分子(DNAまたはRNA)が意図される。例えば、ベクターに含有される、抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、または、溶液における(部分的または実質的に)精製されたポリペプチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のポリヌクレオチドのインビボRNA転写物またはインビトロRNA転写物が含まれる。本発明による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸にはさらに、合成的に作製されるそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどである場合があり、あるいは、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどを包含する場合がある。
本明細書中で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)はアミノ酸に翻訳されないにもかかわらず、コード領域の一部であると見なされる場合があるが、近接配列はどれも、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコード領域を、1つのポリヌクレオチド構築物において、例えば、1つのベクターに存在させることができ、または、別個のポリヌクレオチド構築物において、例えば、別個の(異なる)ベクターに存在させることができる。さらには、ベクターはどれも、1つだけのコード領域を含有する場合があり、または、2つ以上のコード領域を含む場合があり、例えば、1つのベクターが免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードする場合がある。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、結合性分子、抗体、あるいは、そのフラグメント、変異体または誘導体をコードする核酸に融合されて、または融合されずに、異種のコード領域をコードする場合がある。異種のコード領域には、限定されないが、特殊化されたエレメントまたはモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチドまたは異種の機能的ドメインなどが含まれる。
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは通常、1つまたは複数のコード領域と操作可能に連係させられるプロモーターならびに/あるいは他の転写制御エレメントまたは翻訳制御エレメントを含む場合がある。操作可能連係は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)のためのコード領域が、当該遺伝子産物の発現を当該調節配列の影響下または制御下に置くような様式で1つまたは複数の調節配列と連係させられるときにおいてである。2つのDNAフラグメント(例えば、ポリペプチドコード領域およびそれと連係させられるプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導により、所望される遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じるならば、また、これら2つのDNAフラグメントの間における連結の性質が、遺伝子産物の発現を導く発現調節配列の能力を妨げないか、または、転写されるDNAテンプレートの能力を妨げないならば、「操作可能に連係させられる」または「操作可能に連結される」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を達成することができたならば、ポリペプチドをコードする核酸と操作可能に連係させられているであろう。プロモーターは、DNAの実質的な転写を所定の細胞においてのみ導く細胞特異的なプロモーターである場合がある。プロモーターのほかに、他の転写制御エレメントを、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルを、細胞特異的な転写を導くためにポリヌクレオチドと操作可能に連係させることができる。好適なプロモーターおよび他の転写制御領域が本明細書中に開示される。
様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメント(前初期プロモーター、イントロンAとの併用で)、シミアンウイルス40由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメント(初期プロモーター)、ならびに、レトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメントなど(これらに限定されない)が含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物の遺伝子(例えば、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ−グロビンなど)に由来する転写制御領域ならびに遺伝子発現を真核生物細胞において制御することができる他の配列が含まれる。さらなる好適な転写制御領域には、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能であるプロモーター)が含まれる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび翻訳終結コドン、ならびに、ピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、すなわち、IRES、これはまたCITE配列とも称する)が含まれるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードし、これにより、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を導くさらなるコード領域と連係させられる場合がある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を横断する成長途中のタンパク質鎖の移行が開始されると、成熟型タンパク質から切断されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドは一般に、当該ポリペプチドのN末端に融合されるシグナルペプチドで、当該ポリペプチドの分泌型形態または「成熟型」形態をもたらすために、完全なポリペプチドまたは「全長」のポリペプチドから切断されるシグナルペプチドを有することを承知している。特定の実施形態において、生来型のシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または免疫グロブリン軽鎖のシグナルペプチドが使用されるか、または、操作可能に連係させられるポリペプチドの分泌を導く能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。代替では、異種の哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能的誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型のリーダー配列がヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列により置き換えられる場合がある。
「結合性分子」は、本発明に関連して使用される場合、主として抗体およびそのフラグメントに関し、しかし、IAPPおよび/またはproIAPPに結合する他の非抗体分子を示す場合もあり、これらには、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合複合体(MHC)分子、シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質(HSP)など)、ならびに、細胞・細胞接着分子(例えば、カドヘリンスーパーファミリー、インテグリンスーパーファミリー、C型レクチンスーパーファミリーおよび免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーなど)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、明瞭性だけのために、また、本発明の範囲を限定することなく、下記の実施形態のほとんどが、治療剤および診断剤を開発するための好ましい結合性分子を代表する抗体および抗体様分子に関して議論される。
抗体:
用語「抗体」および用語「免疫グロブリン」は本明細書中では交換可能に使用される。抗体または免疫グロブリンは、重鎖の可変ドメインを少なくとも含み、かつ、通常の場合には重鎖および軽鎖の可変ドメインを少なくとも含むIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子である。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)を参照のこと)。
より詳しく下記で議論されるように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することができる様々な幅広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を伴って分類されることを理解するであろう。抗体の「クラス」を、IgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEとしてそれぞれ決定するのが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などが十分に特徴づけられており、また、機能的な特殊化を与えることが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変された型が、本開示を考慮して当業者には容易に認識可能であり、従って、本発明の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本発明の範囲内であり、下記の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量がおよそ23,000ダルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量が53,000〜70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。これら4つの鎖は典型的には、軽鎖が、「Y」字型の口部から始まり、可変領域の終わりまで続く腕木として重鎖を支える「Y」字型の立体配置でジスルフィド結合によって結合される。
軽鎖はカッパまたはラムダ(κ、λ)のどちらかとして分類される。それぞれの重鎖クラスがカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のどちらかと結合し得る。一般には、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、または、遺伝子操作された宿主細胞のどれかによって生じるとき、軽鎖および重鎖は互いに共有結合により結合し、2つの重鎖の「テール」部分が共有結合性のジスルフィド連結または非共有結合性の連結によって互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列が、Y字型の立体配置の二叉末端におけるN末端から、それぞれの鎖の底部におけるC末端にまで延びる。
軽鎖および重鎖はともに、構造的および機能的に相同的である領域に分けられる。用語「定常」および「可変」が機能的に使用される。これに関連して、軽鎖部分および重鎖部分の両方の可変ドメイン(VLおよびVH)により、抗原認識および特異性が決定されることが理解されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)により、様々な重要な生物学的性質、例えば、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合および補体結合などが与えられる。慣例によって、定常領域ドメインの番号づけは、これらのドメインが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて大きくなる。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメインおよびCLドメインが実際に、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
上記で示されるように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ、このエピトープと特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または、抗体の相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この四元抗体構造が、Y字型のそれぞれのアームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位がVH鎖およびVL鎖のそれぞれにおける3つのCDRによって規定される。IAPPおよび/またはproIAPPに特異的に結合するための十分な構造を含有する抗体または免疫グロブリンフラグメントはどれも、本明細書中では交換可能に、「結合フラグメント」または「免疫特異性フラグメント」として示される。
天然に存在する抗体において、抗体は、抗体がその三次元立体配置を水性環境において取るような抗原結合ドメインを形成するために特異的に配置されるアミノ酸の短い不連続な配列である6つの超可変領域(これらは時には、それぞれの抗原結合ドメインに存在する「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる)を含む。「CDR」には、分子間の変動性をそれほど示さない4つの比較的保存された「フレームワーク」領域または「FR」が近接する。これらのフレームワーク領域は主としてβ−シートの立体配座を取り、CDRにより、このβ−シート構造をつなぐ、また、時にはこのβ−シート構造の一部を形成するループが形成される。したがって、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有結合性の相互作用によって正しい配向で配置することを提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインにより、免疫反応性抗原におけるエピトープに対して相補的な表面が規定される。この相補的な表面は、抗体がその同種エピトープに非共有結合的に結合することを促進させる。CDRおよびフレームワーク領域を構成するアミノ酸が、それらは正確に規定されているので、当業者によっていずれかの所与の重鎖可変領域または軽鎖可変領域についてそれぞれ容易に特定され得る;「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat,E.他編、U.S.Department of Health and Human Services(1983)、および、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917を参照のこと(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
この技術分野において使用される、および/または受け入れられる用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書中で使用されるような当該用語の定義は、反するようなことが明示的に言及される場合を除き、すべてのそのような意味を包含することが意図される。具体的な一例が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域の中に見出される不連続な抗原結合部位を記述するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域が、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって、また、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917によって記載されており(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)、この場合、それらの定義は、互いに比較されたときにはアミノ酸残基の重複またはサブセットを包含する。それにもかかわらず、抗体またはその変異体のCDRを示すためのどちらかの定義の適用は、本明細書中で定義され、かつ使用されるようなこの用語の範囲内であることが意図される。上記で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として下記において表1に示される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列およびサイズに依存して変わる。当業者は、どの残基が、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられる抗体のヒトIgGサブタイプの特定の超可変領域またはCDRを含むかを常法により決定することができる。
表1:CDRの定義
1
1表1におけるすべてのCDR定義の番号表記は、Kabat他によって示される番号表記慣例に従う(下記を参照のこと)。
Kabat他はまた、どのような抗体に対しても適用可能である可変ドメイン配列のための番号表記システムを定義した。当業者は、「Kabat番号表記」のこのシステムを、配列そのものを超える実験的データに何ら頼ることなく、どのような可変ドメイン配列に対してでも一義的に割り当てることができる。本明細書中で使用される場合、「Kabat番号表記」は、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号表記システムを示す。別途指定される場合を除き、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体における具体的なアミノ酸残基位置の番号表記に対する言及は、Kabat番号表記システムに従っており、しかしながら、Kabat番号表記システムは理論的であり、本発明のどの抗体にも等しく適用されない場合がある。例えば、最初のCDRの位置に依存して、その後のCDRはどちらかの方向でずれる場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体または誘導体には、ポリクローナル性、モノクローナル性、多特異性、ヒト型、ヒト化型、霊長類化型、マウス化型またはキメラ型の抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのどちらかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、ならびに、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。scFV分子がこの技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリン分子または抗体分子は、免疫グロブリン分子のどのようなタイプのものも(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、どのようなクラスのものも(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはどのようなサブクラスのものも可能である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、五価構造を有するIgMまたはその誘導体ではない。特に、本発明の具体的な適用において、とりわけ治療的使用において、IgMはIgGおよび他の二価抗体または対応する結合性分子よりも有用でない。これは、IgMは、その五価構造のために、また、親和性成熟化の欠如のために、非特異的な交差反応性および非常に低い親和性を示すことが多いからである。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体はポリクローナル抗体でない。すなわち、本発明の抗体は、血漿の免疫グロブリンサンプルから得られる混合物ではなく、むしろ、1つの特定の抗体種から実質的になる。
単鎖抗体を含めて、抗体フラグメントは、可変領域(1つまたは複数)を単独で、あるいは、下記の全体または一部分との組合せで含む場合がある:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン。また、本発明には、可変領域(1つまたは複数)と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインとのどのような組合せをも含むIAPP結合フラグメントおよび/またはproIAPP結合フラグメントが含まれる。本発明の抗体またはその免疫特異性フラグメントは、鳥類および哺乳動物を含めて、どのような動物起源に由来してもよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマまたはニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域が起源において(例えば、サメからの)コンドリクトイド(condricthoid)である場合がある。
1つの態様において、本発明の抗体は、ヒトから単離されるヒトモノクローナル抗体である。場合により、ヒト抗体のフレームワーク領域がデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列に従ってアライメントされ、それらと一致させられる;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(Cambridge、英国)によって提供されるVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を参照のこと。例えば、真の生殖系列配列から潜在的に逸脱すると見なされるアミノ酸は、クローニング過程の期間中に組み込まれるPCRプライマー配列に起因し得ると思われる。人為的に作製されたヒト様抗体、例えば、ファージディスプレーされた抗体ライブラリーまたは異種マウスに由来する単鎖抗体フラグメント(scFV)などと比較した場合、本発明のヒトモノクローナル抗体は、(i)代理動物の免疫応答ではなく、ヒトの免疫応答を使用して得られること、すなわち、抗体が、ヒト体内におけるその関連する立体配座における天然のIAPPまたはproIAPPに対する応答で作製されていること、(ii)個体を保護しているか、あるいは、IAPPおよび/またはproIAPPの存在について少なくとも有意であること、そして、(iii)抗体がヒト起源であるので、自己抗原に対する交差反応性の危険性が最小限に抑えられることによって特徴づけられる。したがって、本発明によれば、用語「ヒトモノクローナル抗体」、「ヒトモノクローナル自己抗体」および「ヒト抗体」などは、ヒト起源である、すなわち、ヒト細胞(例えば、B細胞またはそのハイブリドーマなど)から単離されているか、あるいは、cDNAがヒト細胞(例えば、ヒトメモリーB細胞)のmRNAから直接クローン化されているIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子を示すために使用される。ヒト抗体は、アミノ酸置換が、例えば、結合特性を改善するために、当該抗体においてたとえ行われるにしても、依然として「ヒト」である。
ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体、あるいは、1つまたは複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子組換えであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物に由来する抗体(下記において、また、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapati他)に記載されるような抗体)は、本発明の真のヒト抗体から区別するためにヒト様抗体として示される。
例えば、ヒト様抗体の重鎖および軽鎖の対形成、例えば、ファージディスプレーから典型的には単離される合成抗体および半合成抗体などは、その対形成が元々のヒトB細胞において生じていたような元の対形成を必ずしも反映していない。したがって、先行技術において一般に使用されるような組換え発現ライブラリーから得られるFabフラグメントおよびscFvフラグメントは、免疫原性および安定性に対するすべての可能な関連した影響に関して人為的であると見なされる。
対照的には、本発明は、その治療的有用性およびヒトにおけるその寛容性によって特徴づけられる、選択されたヒト対象から得られる単離された親和性成熟している抗体を提供する。
本明細書中で使用される場合、用語「齧歯類化(された)抗体」または「齧歯類化(された)免疫グロブリン」は、本発明のヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRと、齧歯類抗体配列に基づくアミノ酸の置換および/または欠失および/または挿入を含有するヒトフレームワーク領域とを含む抗体を示す。齧歯類を示すとき、好ましくは、マウスおよびラットに起源を有する配列が使用され、この場合、そのような配列を含む抗体は、「マウス化された」または「ラット化された」としてそれぞれ示される。CDRを提供するヒト免疫グロブリンは「親」または「アクセプター」と呼ばれ、フレームワークの変化を提供する齧歯類抗体は「ドナー」と呼ばれる。定常領域は存在している必要はないが、定常領域が存在するならば、定常領域は通常、齧歯類抗体の定常領域と実質的に同一であり、すなわち、少なくとも約85%〜90%が同一であり、好ましくは約95%以上が同一である。したがって、いくつかの実施形態において、全長のマウス化されたヒト重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンは、マウスの定常領域、ヒトのCDR、および、いくつかの「マウス化する」アミノ酸置換を有する実質的にはヒトのフレームワークを含有する。典型的には、「マウス化抗体」は、マウス化された可変軽鎖および/またはマウス化された可変重鎖を含む抗体である。例えば、マウス化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非マウス性であるので、典型的なキメラ抗体を包含しないであろう。「マウス化」のプロセスによって「マウス化」されている改変された抗体は、CDRを提供する親抗体と同じ抗原に結合し、かつ、通常の場合、マウスにおける免疫原性が、親抗体と比較してより低い。「マウス化」抗体に関しての上記説明は、他の「齧歯類化」抗体について、例えば、ラットの配列がマウスの代わりに使用される「ラット化抗体」などについて同様に当てはまる。
本明細書中で使用される場合、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインあるいはそれらの変異体またはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、および、CH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、および、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖;または、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む場合がある。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)を欠く場合がある。上記で示されるように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において異なるように改変され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
本明細書中に開示されるある特定の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、マルチマーの1つのポリペプチド鎖の重鎖部分が、当該マルチマーの第2のポリペプチド鎖における重鎖部分と同一である。代替では、本発明の重鎖部分を含有するモノマーは同一でない。例えば、それぞれのモノマーが、異なる標的結合部位を含む場合があり、これにより、例えば、二重特異性抗体またはディアボディを形成する。
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ただ1つのポリペプチド鎖から構成され(例えば、scFv)、潜在的なインビボ治療適用および診断適用のために細胞内で発現させられることになる(細胞内抗体)。
本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための結合性ポリペプチドの重鎖部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分が、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含む場合がある。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG4分子に由来するキメラなヒンジを含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、軽鎖部分はVLドメインまたはCLドメインの少なくとも一方を含む。
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドのエピトープの最小サイズは約4個〜5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチドまたはポリペプチドのエピトープは好ましくは、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも9個、最も好ましくは少なくとも約15個〜約30個のアミノ酸を含有する。CDRが抗原性のペプチドまたはポリペプチドをその三次形態で認識できるので、エピトープを構成するアミノ酸は連続している必要はなく、場合によっては、同じペプチド鎖に存在していなくてもよい。本発明において、本発明の抗体によって認識されるペプチドまたはポリペプチドのエピトープは、IAPPまたはproIAPPの少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または、約15個〜約30個の連続するアミノ酸または非連続なアミノ酸の配列を含有する。
「特異的に結合する」または「特異的に認識する」によって、これらは本明細書中では交換可能に使用されており、結合性分子、例えば、抗体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および、この結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間における何らかの相補性を伴うことが一般に意味される。この定義によれば、抗体は、抗体がランダムな無関係なエピトープに結合するであろうよりも容易にその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的な親和性を限定するために本明細書中では使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープについて、抗体「B」よりも大きい親和性を有すると見なされる場合があり、または、抗体「A」は、関連したエピトープ「D」について有するよりも大きい特異性によりエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
存在する場合、抗原との抗体の用語「免疫学的結合特性」または他の結合特性はその文法的形態のすべてで、抗体の特異性、親和性、交差反応性および他の結合特性を示す。
「優先的に結合する」によって、結合性分子、例えば、抗体が、関連したエピトープ、類似したエピトープ、相同的なエピトープまたは類似的なエピトープに結合するであろうよりも容易にエピトープに特異的に結合することが意味される。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連のエピトープと交差反応することがあるとしても、関連のエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が大きいであろう。
非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも小さい解離定数(KD)により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1の抗原と優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
別の非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも小さいオフ速度(k(off))により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、5×10−2sec−1以下、10−2sec−1以下、5×10−3sec−1以下または10−3sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりIAPPおよび/またはproIAPPあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、5×10−4sec−1以下、10−4sec−1以下、5×10−5sec−1以下または10−5sec−1以下、5×10−6sec−1以下、10−6sec−1以下、5×10−7sec−1以下または10−7sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりIAPPおよび/またはproIAPPあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、103M−1sec−1以上、5×103M−1sec−1以上、104M−1sec−1以上または5×104M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりIAPPおよび/またはproIAPPあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、105M−1sec−1以上、5×105M−1sec−1以上、106M−1sec−1以上または5x106M−1sec−1以上または107M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりIAPPおよび/またはproIAPPあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合をある程度阻止する程度にそのエピトープに優先的に結合するならば、そのエピトープに対する参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害が、この技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、競合的ELISAアッセイによって求められてもよい。抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%競合的に阻害すると言われる場合がある。
本明細書中で使用される場合、用語「親和性」は、結合性分子(例えば、免疫グロブリン分子)のCDRとの個々のエピトープの結合の強さの尺度を示す(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988)、27頁〜28頁を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「アビディティー」は、免疫グロブリンの集合と抗原との複合体の全般的な安定性、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的結合強度を示す(例えば、Harlow、29頁〜34頁を参照のこと)。アビディティーは、特異的なエピトープとの集団内の個々の免疫グロブリン分子の親和性に、およびまた、免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方に関連づけられる。例えば、二価のモノクローナル抗体と、高度に反復するエピトープ構造を有する抗原(例えば、ポリマーなど)との間における相互作用が、高いアビディティーの1つであろう。抗原についての抗体の親和性またはアビディティーを、いずれかの好適な方法(例えば、Berzofsky他、「Antibody−Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press New York、NY(1984);Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company、New York、NY(1992)を参照のこと)および本明細書中に記載される方法を使用して実験的に求めることができる。抗原についての抗体の親和性を測定するための一般的な技術には、ELISA、RIAおよび表面プラズモン共鳴が含まれる。特定の抗体−抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)のもとで測定されるならば異なる可能性がある。したがって、親和性および他の抗原結合パラメーター(例えば、KD、IC50)の測定は好ましくは、抗体および抗原の標準化された溶液ならびに標準化された緩衝液を用いて行われる。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、それらの交差反応性に関して記載または指定される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「交差反応性」は、抗体(これは1つの抗原について特異的である)が第2の抗原と反応する能力、すなわち、2つの異なる抗原性物質の間における関連度の度合いを示す。したがって、抗体は、その形成を誘導したエピトープとは異なるエピトープに結合するならば、交差反応性である。交差反応性エピトープは一般に、誘導用エピトープと同じ相補的な構造的特徴の多くを含有しており、また、場合により、実際には元のエピトープよりも良好にはまる場合がある。
例えば、ある種の抗体は、関連しているが、同一でないエピトープと結合するという点で、例えば、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法および本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%および少なくとも50%の同一性を有するエピトープと結合するという点で、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法および本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満および50%未満の同一性を有するエピトープと結合しないならば、交差反応性をほとんど有していないか、または全く有していないと言われる場合がある。抗体は、ある特定のエピトープのどのような他のアナログ、オルソログまたはホモログとも結合しないならば、そのエピトープについて「非常に特異的」であると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、IAPPおよび/またはproIAPPに対するそれらの結合親和性に関して記載または指定される場合がある。好ましい結合親和性には、解離定数つまりKdが5×10−2M未満、10−2M未満、5×10−3M未満、10−3M未満、5×10−4M未満、10−4M未満、5×10−5M未満、10−5M未満、5×10−6M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満、10−11M未満、5×10−12M未満、10−12M未満、5×10−13M未満、10−13M未満、5×10−14M未満、10−14M未満、5×10−15M未満または10−15M未満である結合親和性が含まれる。
上記で示されたように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元立体配置が広く知られている。本明細書中で使用される場合、用語「VHドメイン」には、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインが含まれ、用語「CH1ドメイン」には、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインが含まれる。CH1ドメインはVHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側である。
本明細書中で使用される場合、用語「CH2ドメイン」には、従来の番号表記スキームを使用して、例えば、抗体のおよそ残基244から残基360にまで広がる重鎖分子の一部分が含まれる(残基244〜残基360、Kabat番号表記システム;残基231〜残基340、EU番号表記システム;Kabat EA他(前掲書中)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対形成しないという点で独特である。むしろ、2つのN−連結している分岐した炭水化物鎖が、無傷の生来型IgG分子の2つのCH2ドメインの間に置かれる。CH3ドメインがIgG分子のCH2ドメインからC末端にまで広がり、およそ108残基を含むこともまた広く記録されている。
本明細書中で使用される場合、用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH2ドメインにつなぐ重鎖分子の一部分が含まれる。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、かつ、柔軟であり、したがって、2つのN末端の抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの異なったドメイン(上部、中央および下部のヒンジドメイン)に細分化することができる(Roux他、J.Immunol.161(1998)、4083〜4090を参照のこと)。
本明細書中で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」には、2つのイオウ原子の間に形成される共有結合性の結合が含まれる。アミノ酸のシステインは、ジスルフィド結合を形成することができるか、または、第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1領域およびCL領域がジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖が、Kabat番号表記システムを使用して239位および242位(226位または229位、EU番号表記システム)に対応する位置での2つのスルフィド結合によって連結される。
本明細書中で使用される場合、用語「連結される」、「融合される」または「融合」は交換可能に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲート化または組換え手段を含むどのような手段によってでも、2つ以上の要素または成分を一緒につなぐことを示す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチド・オープンリーディングフレーム(ORF)を、これらの元々のORFの正しい翻訳読み枠を維持する様式で、連続したより長いORFを形成するためにつなぐことを示す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である(そのようなセグメントは通常、自然界ではそのようにつながれない)。したがって、読み枠が、融合されたセグメントの全体にわたって連続にされるにもかかわらず、これらのセグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的または空間的に隔てられる場合がある。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドが、インフレーム融合される場合があり、しかし、「融合された」CDRが、連続したポリペプチドの一部として共翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域またはさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって隔てられる場合がある。
用語「発現」は、本明細書中で使用される場合、遺伝子が生化学物質(例えば、RNAまたはポリペプチド)をもたらすプロセスを示す。このプロセスには、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現および安定的発現の両方を含めて、細胞内における遺伝子の機能的な存在のどのような顕在化も含まれる。このプロセスには、限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小さいヘアピンRNA(shRNA)、小さい干渉性RNA(siRNA)または何らかの他のRNA産物への遺伝子の転写、および、ポリペプチドへのmRNAの翻訳が含まれる。最終的な所望される産物が生化学物質であるならば、発現には、そのような生化学物質および何らかの前駆体を生じさせることが含まれる。遺伝子の発現により、「遺伝子産物」がもたらされる。本明細書中で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または、転写物から翻訳されるポリペプチドのどちらもが可能である。本明細書中に記載される遺伝子産物にはさらに、転写後修飾(例えば、ポリアデニル化)を伴う核酸、または、翻訳後修飾(例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、および、タンパク質分解的切断など)を伴うポリペプチドが含まれる。
本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、対象または患者から得られる任意の生物学的材料を示す。1つの態様において、サンプルは、血液、腹腔液、CSF、唾液または尿を含むことができる。別の態様において、サンプルは、全血、血漿、血清、血液サンプルから富化されるB細胞、および、培養された細胞(例えば、対象からのB細胞)を含むことができる。サンプルにはまた、神経組織を含む生検サンプルまたは組織サンプルが含まれ得る。さらに他の態様において、サンプルは、細胞全体および/または細胞の溶解物を含むことができる。血液サンプルをこの技術分野において知られている方法によって集めることができる。1つの態様において、ペレットを、200μlの緩衝液(20mMのTris(pH.7.5)、0.5%のNonidet、1mMのEDTA、1mMのPMSF、0.1MのNaCl、IXのSigmaプロテアーゼ阻害剤、ならびに、IXのSigmaホスファターゼ阻害剤1および2)において4℃でボルテックス処理することによって再懸濁することができる。懸濁物は、断続的なボルテックス処理を行いながら20分間、氷上に保つことができる。15,000×gにおいて5分間、約4℃で遠心分離した後、上清のアリコートを約−70℃で貯蔵することができる。
疾患:
別途言及される場合を除き、用語「障害」および「疾患」は本明細書中では交換可能に使用され、対象、動物、単離された器官、組織または細胞/細胞培養物における望まれない任意の生理学的変化を含む。
T2Dにおいて、遺伝的決定因子および環境的要因により、インスリン抵抗性の発現が引き起こされ、続いて、ベータ細胞量ならびにインスリン分泌およびアミリン(hIAPP)分泌の代償的な増大が、正常な血中グルコースレベルを維持するために引き起こされる。その結果生じる高濃度のアミリンが、毒性のhIAPPオリゴマーの形成、および、T2D患者の90%超に見出されるhIAPP原線維の沈着に有利に働いている。hIAPPの沈着はインスリン産生ベータ細胞の減少と相関しており、また、T1Dの個体に移植された膵島におけるβ細胞の喪失についての役割を果たすこともまた提案されている。本出願は、健康者ドナーのプール、または、T2Dについての大きい危険性を有するが、疾患を有していない肥満ドナーのプールからのいくつかのヒト由来抗体(これらは、より詳しくは本明細書中以下で記載されるようにクローン化および組換え産生された)を提供する。
しかしながら、本発明の1つの実施形態において、本発明の抗体、そのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、1型糖尿病(T1D)、妊娠糖尿病、糖尿病前症、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA;1.5型糖尿病)および/または2型糖尿病(T2D)を含む糖尿病疾患の群からの疾患の予防的処置および治療的処置、そのような疾患の進行またはそのような疾患の処置に対する応答をモニターすること、ならびに/あるいは、そのような疾患の診断のための医薬組成物または診断組成物を調製するために使用される。
好ましい実施形態において、本発明の抗体、そのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵臓ガンを含む、糖尿病に至り得るかもしれない疾患を含む、T2Dに先行する、T2Dを引き起こす、および/または、T2Dと関係づけられる/T2Dに伴う、もしくは、T2Dに関連づけられる、代謝変化などの症状によって一般に特徴づけられる群の障害の予防的処置および治療的処置、そのような群の障害の進行またはそのような群の障害の処置に対する応答をモニターすること、ならびに/あるいは、そのような群の障害の診断のための医薬組成物または診断組成物を調製するために使用され、また、アルツハイマー病、ハンチントン病を含む、T2Dの危険性を増大させる疾患において使用され、ならびに/あるいは、肥満およびT2Dと関連づけられるか、または、関連づけられない心臓血管疾患において使用される。1つの好ましい実施形態において、上記で述べられた疾患を一般に特徴とする症状は、対象における乱れたインスリン感受性ならびにインスリンおよび/またはhIAPPの増大した分泌を含む。
1つの実施形態において、上記で述べられた具体的な症状に関連する群の障害には、妊娠糖尿病、糖尿病前症(高血糖がT2D閾値またはインスリン抵抗性に達する途中でないとき);一般には、糖尿病を発症することについての危険性因子としての、または、糖尿病前に存在し得るかもしれない状態としての代謝症候群;一般には、糖尿病を発症することについての危険性因子としての、または、糖尿病前に存在し得るかもしれない状態としての膵島アミロイドーシス;一般には、糖尿病を発症することについての危険性因子としての、あるいは、糖尿病、および/または、臨床での膵島移植の後におけるベータ細胞不全の前に存在し得るかもしれない状態としての肥満が含まれる。
さらには、本発明の抗体、そのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、T2Dの形態との比較における1型糖尿病、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA、1.5型糖尿病)の鑑別診断において、健康な対象におけるアミリン分泌と比較して、変化した、すなわち、増大したまたは低下した、アミリン分泌を検出するための組成物を調製するために使用され、あるいは、明白なT2D(例えば、妊娠糖尿病または糖尿病前症など)に先行する障害において使用され、膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、糖尿病に至り得るかもしれない疾患、例えば、慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵臓ガンなどにおいて使用され、T2Dの危険性を増大させる疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病などにおいて使用され、ならびに/あるいは、肥満およびT2Dと関連づけられるか、または、関連づけられない心臓血管疾患において使用される。
肥満およびインスリン抵抗性/高インスリン血症などの障害が、T2Dの明白な形態に既に先立つ上昇した循環レベルの膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)を引き起こし得るT2Dの素因として、および/または、T2Dの症状としてしばしば認められる。アミリン(hIAPP)のオリゴマー、原線維およびプラークが、肥満およびインスリン抵抗性を有する患者において、膵臓内および腎臓内だけでなく、心臓内にも同様に蓄積することが見出されている。この蓄積が、結果としてそのような患者における心臓の機能不全の一因になるかもしれない変化した細胞Ca2+恒常性の関連で認められている。
したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体、そのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、T2Dに続くか、あるいは、T2Dに先行するおよび/またはT2Dを引き起こす代謝変化から生じる、すなわち、前糖尿病性状態において生じる代謝変化から生じる一群の障害の予防的処置および治療的処置、改善、そのような一群の障害の進行またはそのような一群の障害の処置に対する応答をモニターすること、ならびに/あるいは、そのような一群の障害の診断のための医薬組成物または診断組成物を調製するために使用され、この場合、前記一群の障害は、心臓疾患、卒中、糖尿病性網膜症、腎不全、腎不全、ケトアシドーシスおよび非ケトン性高浸透圧性昏睡を含む。
20を超える神経変性障害(例えば、M.Ristow、J.Mol.Med、82(2004)、510〜529における511頁の表1を参照のこと)が、糖尿病、増大したインスリン感受性および肥満、乱れたインスリン感受性、ならびに、過度な、または損なわれたインスリン分泌と関連することが知られている。したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明の抗体、そのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、アルツハイマー病(AD)、毛細血管拡張性失調症(AT)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、ハンチントン病、筋強直性ジストロフィー、ナルコレプシー、パーキンソン病、プラダー・ウィリー症候群およびウェルナー症候群を含む神経変性障害の予防的処置および治療的処置、そのような神経変性障害の進行またはそのような神経変性障害の処置に対する応答をモニターすること、ならびに/あるいは、そのような神経変性障害の診断のための医薬組成物または診断組成物を調製するために使用される。
耐糖能障害は、糖尿病について特徴的である合併症をほとんど誘導しないが、正常型よりも大きい糖尿病発症の危険度を有しており、このことが大血管性疾患の原因となる場合がある。
「インスリン抵抗性」は、インスリンに対する低下した感受性の状態を意味する。インスリンは、より幅広い範囲の影響を示すことが知られており、例えば、グルコース代謝に対する影響に加えて、脂質代謝に対する影響、または、血管および腎臓に対する影響を示すことが知られている。インスリンに対する感受性が低下すると、グルコースの代謝異常だけなく、脂質の代謝異常、例えば、血管または腎臓に対するインスリン影響の異常としての高トリグリセリド血症、低下したHDL血漿中レベルまたは高血圧などが誘発される場合がある。
本明細書中で使用される場合、ヒトにおける用語「糖尿病性(の)」は一般に、また、現在は、200mg/dL以上(11.1mmol/L以上)の無作為の血漿中グルコース濃度または血中グルコース濃度、あるいは、126mg/dL以上(7.0mmol/L以上)の空腹時血漿中グルコース、あるいは、経口ブドウ糖負荷試験時における200mg/dL以上(11.1mmol/L以上)の負荷後2時間のグルコースを意味する。加えて、または、代替において、用語「糖尿病性(の)」は、増大した口渇(多飲症)、頻繁な排尿(多尿症)、極端な空腹、不明な体重減少、疲労およびかすみ目、回復が遅いただれおよび頻繁な感染を受けやすいこと(膀胱、膣および歯肉ならびに/あるいは黒ずんだ皮膚(黒色表皮肥厚症)の領域の場合を含む)を含めて、糖尿病の臨床症状の1つまたは複数を示す対象のために使用される。
本明細書中で使用される場合、ヒトにおける用語「非糖尿病性(の)」は一般に、また、現在は、100mg/dL(5.6mmol/dL)未満の空腹時血漿中グルコースレベル、または、経口ブドウ糖負荷試験時における140mg/dL未満(7.8mmol/dL未満)の負荷後2時間のグルコースを意味する。
本明細書中で使用される場合、ヒトにおける用語「前糖尿病性(の)」は一般に、また、現在は、100〜125mg/dL(5.6〜6.9mmol/dL)の空腹時血漿中グルコースレベル、または、経口ブドウ糖負荷試験時における140〜199mg/dL(7.8〜11.1mmol/dL)の負荷後2時間のグルコースを意味する。別途言及される場合を除き、用語「前糖尿病性(の)」、「前駆(の)」および「前駆症状性(の)」は本明細書中では交換可能に使用され、T2Dの前臨床段階を記述する。
加えて、または、代替において、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)のレベルが、糖尿病を対象において診断する際に使用される場合がある。6.5%の閾値またはそれを超える上昇したHbA1cレベルにおいて、糖尿病の診断が行われる。すなわち、用語「糖尿病性(の)」は一般に、また、現在は、ヒトにおいて使用され、一方で、5.7%〜6.4%のレベルは、糖尿病および心臓血管疾患の両方を発症することについての大きい危険性を示しており、ヒトにおける「糖尿病前症」または「前糖尿病性/前駆症状性」状態のマーカーである。ヒトにおける用語「非糖尿病性(の)」は一般に、また、現在は、5.7%の閾値を下回るHbA1cレベルを意味する。
薬物発見におけるII型糖尿病の齧歯類モデル
II型糖尿病を自然発症する従来から報告されているモデル動物の例には、KK−Ayマウス(Nishimura M.、Exp.Anim.18、147〜157、1969)、NSYマウス(Ueda H.他、Diabetologia 38、503〜508、1995)、db/dbマウス(Hummel K.P.他、Science 153、1127〜1128、1966)、ob/obマウス(Herberg L.&Kley H K、Horm.Metab.Res.7、410〜5、1975)およびAKITAマウス(Yoshioka M.他、Diabetes 46、887〜894、1997)が含まれる。
これらの動物の中で、KK−AyマウスおよびNSYマウスが、肥満を伴うモデルであり、db/dbマウスおよびob/obマウスが、レプチン受容体またはレプチン産生における異常に起因する肥満を伴うモデルである。他方で、AKITAマウスは、膵臓のβ細胞における異常によって引き起こされる糖尿病についてのモデルである。
非肥満性のII型糖尿病モデル動物として、例えば、モデルマウスがこれまでのところ、特開第2004−65181号公報に報告される。このマウスは、正常でないインスリン分泌を示す。
しかしながら、本発明の抗体は好ましくは、遺伝子組換え動物において、例えば、hIAPPを発現する齧歯類、例えば、Butler他、Diabetes 53(2004)、1509〜1516において、また、Matveyenko and Butler、Diabetes 55(2006)、2106〜2114において記載されるように膵臓β細胞においてヒトアミリンについて遺伝子組換えであるラット(HIPラット)などにおいて試験され、特徴づけられる。より好ましくは、ヒトIAPPを過剰発現する2型糖尿病マウスモデルが、Matveyenko and Butler(2006)、ILAR J.47(3):225〜233に記載されるように使用され、その228頁の表2に要約される。hIAPP過剰発現のために、そのようなモデル動物は、T2D症状(例えば、高血糖性状態など)を正当に呈示する。一般に、用語「高血糖症」または「高血糖性状態」は、異なる時間間隔で行われる2回の連続した測定での、また、遺伝子組換えでないコントロール同腹子に対して比較されたときの有意に増大した空腹時血漿中グルコースレベルを示す。高血糖性動物において測定される絶対値は、使用される特定の動物モデルに依存しているかもしれず、例えば、h−IAPP(ヘミ接合性)/ob/+マウスでは約15〜20mM以上のグルコースであり、h−IAPP(ホモ接合性)/FVB/Nマウスでは約11mM以上のグルコースである。
糖尿病を研究するための方法は、健康な非糖尿病性動物との比較における糖尿病性動物の生理学的変化の測定および血液または血漿の分析を含む。これらの測定には、成長動力学、ボディーマス指数(BMI)、除脂肪マス指数(LMI)、食物摂取量および水分摂取量、性差、空腹時血中グルコースおよび無作為血中グルコース、トリグリセリド(TG)、リポタンパク質、コレステロール、肝臓重量および肝臓脂質、腎臓の大きさおよび機能、ブドウ糖負荷試験(GTT)、インスリン耐性試験(ITT)、血中インスリン濃度、膵島細胞形態学、高脂肪食ならびにカロリー制限が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用される場合、用語「無作為(の)」および用語「非絶食時」は一般に、最後の食事からの時間に関係なく、日中または夜間の任意の時間においてであることを意味する。
本明細書中で使用される場合、用語「空腹(絶食)時」は一般に、カロリー摂取が少なくとも12時間にわたってないことを意味する。
これらの定義は、医師が一般には米国糖尿病協会(ADA)およびドイツ糖尿病協会(GDA)に従う現時点で受け入れられている指針であることが理解される。指針は時代とともに変化することがあり、また、地域または国によって変わることがあり、かつ、当業者に知られている指針を提供する団体または機関(例えば、ADA、世界保健機関、NIDDK/NIH、CDC、GDAなど)に依存することがある。医師はまた、診断および処置を決定するときには、臨床経験、患者の過去の病歴、および/または、他の情報を使用する場合がある。したがって、これらの定義は、科学および医学における進歩に従って時代とともに変化する場合がある。
処置:
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は治療的処置および予防的または防止的な対策の両方を示し、この場合、その目的が、望まれない生理学的変化または障害(例えば、糖尿病の発症など)を防止することまたは抑制すること(緩和すること)である。有益な臨床結果または所望される臨床結果には、検出可能であるか、または検出不能であるかにかかわりなく、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または緩速化、疾患状態の改善または緩和、および、寛解(部分的または全体的を問わず)が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の予想された生存と比較して、生存を延ばすことを意味することができる。処置を必要としている人々には、状態または障害を既に有する人々ならびに状態または障害を有する傾向がある人々、あるいは、状態または障害の発現が防止されなければならない人々が含まれる。
別途言及される場合を除き、用語「薬物」、「医薬」または「医薬品」は本明細書中では交換可能に使用され、下記のすべてを包含するものとするが、それに限定されない:(A)体内使用または体外使用のための物品、医薬および調製物、ならびに、ヒトまたは他の動物のどちらかの疾患の診断、治療、緩和、処置または防止のために使用されることが意図されるあらゆる物質または物質の混合物;ならびに、(B)ヒトまたは他の動物の身体の構造またはどのような機能に対してでも影響を及ぼすことが意図される(食物以外)の物品、医薬および調製物;ならびに(C)条項(A)および条項(B)において指定されるあらゆる物品の成分としての使用のために意図される物品。用語「薬物」、「医薬」または「医薬品」は、1つまたは複数の「薬剤」、「化合物」、「物質」または「(化学的)組成物」をフィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして、また、何らかの他の関連では、他の医薬的に不活性な賦形剤もまた、フィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして含有するか、あるいは、「薬物」、「医薬」または「医薬品」の容易な輸送、崩壊、解離、溶解および生物学的利用性を、ヒトまたは他の動物の体内の意図された標的場所(例えば、皮膚、胃内または腸内)において保証する、ヒトまたは他の動物のどちらかでの使用のために意図される調製物の完全な処方を包含するものとする。用語「薬剤」、「化合物」または「物質」は本明細書中では交換可能に使用され、より具体的な関連では、すべての薬理学的に活性な薬剤、すなわち、本発明の方法によって所望の生物学的または薬理学的な効果を誘発するか、あるいは、そのような可能な薬理学的効果を誘発することができることについて研究または試験される薬剤を包含するものとするが、これらに限定されない。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によって、診断、予後、防止または治療が望まれるあらゆる対象、特に哺乳動物対象、例えば、ヒト患者が意味される。
医薬用キャリア:
医薬的に許容されるキャリアおよび投与経路を、当業者に知られている対応する文献から選ぶことができる。本発明の医薬組成物は、この技術分野において広く知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472);Vaccine Protocols、第2版(Robinson他、Humana Press、Totowa、New Jersey、米国、2003);Banga、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems、第2版(Taylor and Francis(2006)、ISBN:0−8493−1630−8)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野では広く知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、広く知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与を種々の方式によって行うことができる。例には、医薬的に許容されるキャリアを含有する組成物を、経口方法、鼻腔内方法、直腸方法、局所的方法、腹腔内方法、静脈内方法、筋肉内方法、皮下方法、真皮下方法、経皮的方法、クモ膜下腔内方法および頭蓋内方法を介して投与することが含まれる。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤および等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液または他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpHおよび等張性状態に調節される。経口投与用の医薬組成物、例えば、単一ドメイン抗体分子(例えば、「ナノボディー(商標)」)などもまた、本発明において想定される。そのような経口配合物は、錠剤、カプセル、粉末、液体または半固体の形態である場合がある。錠剤は、固体のキャリア、例えば、ゼラチンまたはアジュバントなどを含む場合がある。直腸投与または膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある(O’Hagan他、Nature Reviews,Drug Discovery 2(9)(2003)、727〜735もまた参照のこと)。様々なタイプの投与のために好適である配合物に関するさらなる指針を、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985)および対応する更新版)において見出すことができる。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer、Science 249(1990)、1527〜1533を参照のこと。
II.本発明の抗体
本発明は一般には、ヒト抗IAPP抗体およびその抗原結合フラグメントに関連し、この場合、これらは好ましくは、実施例において例示される抗体について概略されるような免疫学的結合特性および/または生物学的性質を明らかにする。本発明によれば、IAPPおよび/またはproIAPPについて特異的であるヒトモノクローナル抗体が、健康なヒト対象のプールからクローン化された。
本発明に従って行われた実験の過程において、ヒトメモリーB細胞培養物の馴化培地における抗体を、凝集したオリゴマー状、原線維性および/または非原線維性のIAPPタンパク質および/またはproIAPPタンパク質に対する結合、ならびに、ウシ血清アルブミン(BSA)に対する結合について並行してスクリーニングした。凝集したIAPPタンパク質および/またはproIAPPタンパク質について陽性であり、しかし、BSAについては陽性でないB細胞培養物のみを抗体クローニングに供した。
この手段に起因して、いくつかの抗体を単離することができた。選択された抗体をさらに、クラス決定および軽鎖サブクラス決定のために分析した。メモリーB細胞の培養物から得られる選択された関連する抗体メッセージがその後、RT−PCRによって転写され、クローン化され、組換え産生のための発現ベクターの中に結合される(添付された実施例を参照のこと)。HEK293細胞またはCHO細胞におけるヒト抗体の組換え発現、そして、ヒトIAPPタンパク質および/またはproIAPPタンパク質に対するそれらの結合特異性の引き続いた特徴づけ(図3および図4;実施例1)、ならびに、その病理学的に凝集した形態に対するそれらの特徴的な結合(図5;実施例2)により、IAPPタンパク質および/またはproIAPPタンパク質について非常に特異的であり、かつ、病理学的に凝集した形態のIAPPタンパク質および/またはproIAPPタンパク質(例えば、IAPP原線維など)を特徴的に認識するヒト抗体が今回初めてクローン化されたことが確認された。2回目の実験により、図7〜図9および実施例4に示されるような上記の知見が確認された。さらには、本発明に従って作製され、かつ、本発明のヒト抗体のCDRドメインを含むマウスキメラ抗体は、図11および図12ならびに実施例6に示されるように、ヒト抗体と等しい、ヒトIAPPに対する結合親和性を示している。
したがって、本発明は概して、単離された自然界に存在するヒトモノクローナル抗膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)抗体ならびにその結合フラグメント、誘導体および変異体に関連する。本発明の1つの実施形態において、抗体はヒトIAPPおよび/またはヒトproIAPPと結合することができる。
1つの実施形態において、本発明は、抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体あるいはそれらの抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.11B12、NI−203.205F8、NI−203.9B3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7からなる群から選択される参照抗体と同じIAPPのエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングにより、aa19−SSNNFGA−25(配列番号4)を含むヒトIAPP内の配列が、本発明の抗体NI−203.19H8によって認識される独特な直鎖状エピトープとして特定され、aa2−CNTATCA−8(配列番号5)を含むヒトIAPP内の配列が、本発明の抗体NI−203.26C11によって認識される独特な直鎖状エピトープとして特定され、そして、aa10−QRLANFLVHS−19(配列番号71)を含むヒトIAPP内の配列が、本発明の抗体NI−203.15C7によって認識される独特な直鎖状エピトープとして特定された(図5Aおよび図5Bならびに実施例3を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、SSNNFGA(配列番号4)、CNTATCA(配列番号5)またはQRLANFLVHS(配列番号71)のアミノ酸配列を含むIAPPエピトープと特異的に結合する本発明の抗体が提供される。実施例3において詳しく記載されるように、組換えIAPP抗体であるNI−203.9A2抗体、NI−203.8E3抗体およびNI−203.19F2抗体のエピトープは今までのところ特定することができなかった。このことは、これらの抗体はおそらくは非直鎖状のエピトープと結合することを示している。
さらには、1つの実施形態において、本発明は、抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体あるいはそれらの抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI−203.1D10、NI−203.2A11、NI−203.10C4、NI−203.20H9、NI−203.26D2、NI−203.60H3およびNI−203.26C11の抗体からなる群から選択される参照抗体と同じproIAPPのエピトープに特異的に結合する。
さらには、実施例4において記載され、図7に示されるような初期の実験的観察によって拘束されることは意図されないが、本発明のヒトモノクローナル抗IAPP抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3は好ましくは、膵臓において、病理学的なIAPP凝集物(この実施例では原線維)に特異的に結合し、生理学的形態でのIAPPを実質的に認識しないことにおいて特徴づけられる。同じことが、ヒトモノクローナル抗IAPP抗体のNI−203.19F2およびNI−203.15C7に当てはまることが予想される。したがって、本発明は、結合特異性を有し、したがって、診断目的および治療目的のために特に有用である一組のヒト抗IAPP抗体および/またはヒト抗proIAPP抗体を提供する。したがって、1つの実施形態において、本発明は、病理学的に凝集した形態のIAPPおよび/またはproIAPPと特異的に結合することができる抗体を提供する(図5および図7〜図9ならびに実施例2および実施例4を参照のこと)。本発明の結合特異性に関してのさらなる詳細および要約する概略については、図7および図8ならびに以下の記載もまた参照のこと。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、実施例において記載されるような例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の結合性質を示す。加えて、または、代替において、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体は、実施例2〜実施例4に従って分析されるときには特に、生理学的なIAPPモノマーおよび/またはproIAPPモノマーではなく、むしろ、病理学的に凝集した抗IAPPおよび/または抗proIAPP(例えば、IAPP原線維など)を優先的に認識する。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、生理学的なIAPPを実質的に認識しない。用語「実質的に認識しない」は、特異的な標的分子、特異的な抗原、ならびに/あるいは、標的分子および/または抗原の特異的な立体配座についての抗体、そのフラグメントまたは結合性分子を含む群の分子の結合親和性を記述するために本出願において使用されるときには、上述の群の分子が、別の分子、抗原および/または立体配座と結合することについて、上述の群の分子の解離定数(KD)の少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1または9分の1である結合親和性により、前記の分子、抗原および/または立体配座と結合することを意味する。好ましくは、用語「実質的に認識しない」は、本出願において使用されるときには、上述の群の分子が、別の分子、抗原および/または立体配座と結合することについて、上述の群の前記分子の解離定数(KD)の少なくとも10分の1、20分の1、50分の1、100分の1、1000分の1または10000分の1である結合親和性により、前記の分子、抗原および/または立体配座と結合することを意味する。加えて、または、代替において、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体は、凝集型形態のヒト抗IAPPおよび/またはヒト抗proIAPPを引き起こす疾患、特に実施例4において記載されるそのような疾患に結合する。この関連において、結合特異性が、図4、それぞれの図5において例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3について示されるような範囲である場合があり、すなわち、約1pM〜500nMの50%最大有効濃度(EC50)、好ましくは約10pM〜100nMのEC50、最も好ましくは約100pM〜50nMのEC50を、NI−203.19H8について示されるようにヒトIAPPについて有し、または、約100pM〜10nMのEC50を、NI−203.9A2、NI−203.26C11およびNI−203.8E3について示されるようにヒトIAPPについて有する。この関連において、実施例4において提供され、図4、それぞれの図5に示されるような実験結果もまた、加えて、または、代替において、本発明の抗IAPP抗体の一部が、例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.8E3について示されるようにproIAPPを実質的に認識しないことを示している。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体はproIAPPを実質的に認識しない。
加えて、または、代替において、本発明の抗IAPP抗体は、特に実施例1において記載されるように、成熟型IAPPのほかに、前駆体形態のIAPP、すなわち、proIAPPにも同様に特異的に結合する。この関連において、結合特異性が、図3、それぞれの図4において例示的抗体のNI−203.26C11について示されるような範囲である場合があり、すなわち、約1pM〜500nMの50%最大有効濃度(EC50)、好ましくは約10pM〜400nMのEC50、より好ましくは約100pM〜400nMのEC50または約100pM〜300nMのEC50、最も好ましくは約1nM〜300nMのEC50を、NI−203.26C11について示されるように凝集型proIAPPについて有する。
加えて、または、代替において、本発明の抗IAPP抗体は、特に実施例1において記載されるように、成熟型IAPPに特異的に結合し、前駆体形態のIAPP、すなわち、proIAPPには結合しないか、または実質的に結合しない。この関連において、結合特異性が、図4、それぞれの図5において例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.8E3について示されるような、また、上記で示されるような範囲である場合がある。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、例示的抗体であるNI−203.1D10、NI−203.2A11、NI−203.10C4、NI−203.20H9、NI−203.26D2およびNI−203.60H3の結合性質を示し、好ましくは、proIAPPを超えてproIAPPと結合する。しかしながら、アミロイド形成および細胞死における、全長のproIAPPペプチドではなく、むしろ、N末端がプロセシングされていないproIAPPの役割についての何らかの証拠が存在するように、proIAPP抗体は、IAPPには存在しないproIAPPのN末端近接領域に特異的に結合する抗体についてのスクリーニングによって得られている。その結果、1つの実施形態において、本発明の抗proIAPP抗体、例えば、例示的抗体のNI−203.1D10、NI−203.2A11、NI−203.10C4、NI−203.20H9、NI−203.26D2およびNI−203.60H3などはIAPPと実質的に結合しないか、または、IAPPと結合しない。
いくつかの精製された抗体が多様な生体分子(例えば、タンパク質)に結合する。当業者が理解するであろうように、特異的(な)の用語は、IAPPタンパク質および/またはproIAPPタンパク質あるいはそのフラグメントでない他の生体分子が、抗原結合性分子に、例えば、本発明の抗体の1つに有意に結合しないことを示すために本明細書中では使用される。好ましくは、IAPPおよび/またはproIAPPとは異なる生体分子に対する結合のレベルにより、IAPPおよび/またはproIAPPに対する親和性の最大でもわずか20%以下、10%以下、わずか5%以下、わずか2%以下、または、わずか1%以下(すなわち、少なくとも5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、または、100分の1)である結合親和性がそれぞれもたらされる(例えば、実施例1および図3を参照のこと)。さらには、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体はIAPP凝集物および/またはproIAPP凝集物に特異的に結合し、これは、本発明の抗体が、アルツハイマー病と診断される患者のパラフィン包埋された脳切片に対して例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11により示されるように、また、直接的ELISA実験によって示されるように、アルツハイマー病のヒト脳における病理学的なAβアミロイドを認識せず、かつ、誤った折り畳み/凝集の傾向を有するいくつかのタンパク質候補物に対するほんの最小限の交差反応的結合特性を有することを示す実験によって確認される通りである(実施例5および図10を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、アミロイド−βペプチド(Aβ1−42)を実質的に認識しない本発明の抗体が提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体は好ましくは、凝集型形態のIAPPおよび/またはproIAPP、IAPPおよび/またはproIAPPの原線維および/またはオリゴマーに優先的に結合する;実施例2における直接的ELISAによる実験結果、ならびに、実施例4において記載され、図7および図9にそれぞれ示される免疫組織化学的染色による、T2Dと診断される患者の膵臓における実験結果、および、糖尿病ネコの膵臓に対する実験結果を参照のこと。1つの実施形態において、本発明の抗体は、凝集物がIAPPの原線維形態および/または原線維オリゴマーを含むか、あるいは、IAPPの原線維形態および/または原線維オリゴマーから本質的になるか、あるいは、IAPPの原線維形態および/または原線維オリゴマーからなる、凝集型形態のIAPPおよび/またはproIAPPに優先的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗体は、凝集物がIAPPの非原線維形態および/または非原線維オリゴマーを含むか、あるいは、IAPPの非原線維形態および/または非原線維オリゴマーから本質的になるか、あるいは、IAPPの非原線維形態および/または非原線維オリゴマーからなる凝集型形態のIAPPおよび/またはproIAPPに優先的に結合する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体は、凝集物がIAPPおよび/またはproIAPPの原線維形態および非原線維形態ならびに/あるいはIAPPおよび/またはproIAPPの原線維オリゴマーおよび非原線維オリゴマーのどちらかを含むか、あるいは、IAPPおよび/またはproIAPPの原線維形態および非原線維形態ならびに/あるいはIAPPおよび/またはproIAPPの原線維オリゴマーおよび非原線維オリゴマーのどちらかから本質的になるか、あるいは、IAPPおよび/またはproIAPPの原線維形態および非原線維形態ならびに/あるいはIAPPおよび/またはproIAPPの原線維オリゴマーおよび非原線維オリゴマーのどちらかからなる凝集型形態のIAPPおよび/またはproIAPPに優先的に結合する。なおさらに別の実施形態において、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体は、生来型のIAPPおよび/またはproIAPPならびに病理学的凝集型形態のIAPPおよび/またはproIAPPの両方に優先的に結合する;直接的ELISAによって実施例2および実施例3において例示されるような実験結果を参照のこと。
前記で述べられるように、IAPPおよび/またはproIAPPを含む凝集物はまた、T2D患者の膵島におけるアミロイド沈着物に伴うことが見出され得る。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体はT2Dの処置において有用である場合がある。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.11B12、NI−203.205F8、NI−203.9B3、NI−203.19F2、NI−203.15C7、NI−203.1D10、NI−203.2A11、NI−203.10C4、NI−203.20H9、NI−203.26D2およびNI−203.60H3からなる群から選択される抗体の抗原結合ドメインと同一の抗原結合ドメインを含む。
本発明ではさらに、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1または図2に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域および/またはVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、いくつかのそのような結合性分子、例えば、抗体およびその結合フラグメントが例示される。上記の可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が、下記において表2、表3にそれぞれ示される。VH領域および/またはVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1および図2に示される。しかしながら、下記において議論されるように、当業者は、加えて、または、代替において、様々なCDRが使用されてもよく、この場合、これらのCDRは、それらのアミノ酸配列において、図1、図2にそれぞれ示されるアミノ酸配列から、CDR2およびCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、または、それ以上のアミノ酸が異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1に示される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、および/または、図1に示されるCDRに1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでなるCDRの1つまたは複数をその可変領域に含む本発明の抗体あるいはそのIAPP結合フラグメントおよび/またはproIAPP結合フラグメントが提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、図1に示されるVH領域および/またはVL領域、あるいは、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むそのVH領域および/またはVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞に存在したような重鎖および軽鎖の同族性の対形成の保存によって特徴づけられる。
代替では、本発明の抗体は、IAPPおよび/またはproIAPPに対する結合について、図1に示されるようなVH領域および/またはVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合フラグメント、誘導体または変異体である。
実施例4において提供される実験結果から、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体のいくつかは、凝集型形態のヒト抗IAPPおよび/またはヒト抗proIAPPを引き起こす疾患に、生理学的形態の当該タンパク質よりも優先的に結合することが示唆される。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、IAPP凝集物および/またはproIAPP凝集物を生理学的なIAPPおよび/またはproIAPPよりも優先的に認識する。さらには、1つの実施形態において、本発明の抗体は、IAPPのオリゴマーおよび/または原線維を含むIAPP凝集物を生理学的IAPPよりも優先的に認識する。別の実施形態において、本発明の抗体は、非原線維性IAPPおよび/または非原線維性IAPPオリゴマーを含むIAPP凝集物を生理学的IAPPよりも優先的に認識する。
前記で既に示されたように、本発明の抗体のいくつかは、IAPPおよびその前駆体形態のproIAPPの両方と結合することができることが示されている。さらには、本発明の抗体のいくつかが、proIAPPと結合することができるその能力のためにヒト患者から単離されている。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体はproIAPPと結合することができる。
したがって、代替において、または、上記に加えて、1つの実施形態において、図2に示される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、および/または、図2に示されるCDRに1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでなるCDRの1つまたは複数をその可変領域に含む本発明の抗体あるいはそのIAPP結合フラグメントおよび/またはproIAPP結合フラグメントが提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、図2に示されるVH領域および/またはVL領域、あるいは、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むそのVH領域および/またはVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞に存在したような重鎖および軽鎖の同族性の対形成の保存によって特徴づけられる。
代替では、本発明の抗体は、IAPPおよび/またはproIAPPに対する結合について、図2に示されるようなVH領域および/またはVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合フラグメント、誘導体または変異体である。
本発明の抗体は、治療適用のためには特に、ヒトの抗体である場合がある。代替では、本発明の抗体は、動物における診断方法および研究のために特に有用である齧歯類抗体、齧歯類化抗体または齧歯類−ヒトのキメラ抗体、好ましくは、マウス抗体、マウス化抗体またはマウス−ヒトのキメラ抗体、あるいは、ラット抗体、ラット化抗体またはラット−ヒトのキメラ抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体は齧歯類−ヒトのキメラ抗体または齧歯類化抗体である。
さらには、1つの実施形態において、本発明のキメラ抗体は、実施例において記載されるような例示的なマウスキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の結合性質を示す。さらに、本発明のマウスキメラ抗体は、実施例6において記載されるようなヒトIAPP原線維に高い親和性で結合する。好ましくは、キメラ抗体の結合親和性はそれらのヒト対応物と類似している。この関連において、結合特異性が、例示的なマウスキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11について示されるような範囲である場合があり、EC50が、実施例6において記載され、その図11および表Cに示されるように、それぞれ、18.6nM、23.9nMおよび11.5nMである。結合がBSAに対しては何ら認められなかった。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、培養される単一のB細胞またはオリゴクローナルなB細胞の培養物、および、前記B細胞によって産生される抗体を含有する培養物の上清によって提供され、それらにおける抗IAPP抗体および/またはproIAPP抗体の存在および親和性についてスクリーニングされる。スクリーニングプロセスは、配列番号1によって表されるアミノ酸配列の合成された全長型hIAPPペプチドに由来するhIAPPのオリゴマーのような生来型モノマー凝集物、原線維性凝集物または非原線維性凝集物に対する結合についてのスクリーニング、ならびに/あるいは、配列番号7によって表されるアミノ酸配列TPIESHQVEKRKCNTATCATQRのヒトproIAPPに由来する合成ペプチド(N末端フラグメント)に対する結合についての別個で、かつ、独立したスクリーニングを含む。
加えて、または、代替において、抗IAPP抗体および/またはproIAPP抗体の存在および親和性についてのスクリーニングプロセスは、ここでは膵島上のアミロイド沈着物について同様に行われる高感度な組織アミロイド斑免疫反応性(TAPIR)アッセイ(例えば、国際特許出願公開WO2004/095031(その開示内容が参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載されるアッセイなど)の工程を含む場合がある。さらには、または、代替において、抗IAPPおよび/またはproIAPPに対する結合についての膵臓切片に対するスクリーニング、例えば、脳切片および脊髄切片について国際特許出願公開WO2008/081008に同様に記載されるスクリーニングなどが行われる場合がある。
上記で述べられるように、ヒト免疫応答でのその生成のために、本発明のヒトモノクローナル抗体は、特定の病理学的関連性を有し、かつ、例えば、マウスモノクローナル抗体の作製のための免疫化プロセス、および、ファージディスプレーライブラリーのインビトロスクリーニングの場合には接近可能でないかもしれないか、またはより低い免疫原性であるかもしれないエピトープをそれぞれ認識するであろう。したがって、本発明のヒト抗IAPP抗体および/またはヒトproIAPP抗体のエピトープは独特であること、および、本発明のヒトモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに結合することができる他の抗体が存在しないこと(図5Aもまた参照のこと)を明記することは賢明であり、これらにより、本発明の抗体NI−203.19H8および抗体NI−203.26C11のそれぞれの独特のエピトープが示される。本発明の抗体の独特さについてさらに示すものが、実施例3において示されるように、本発明の抗体NI−203.9A2および抗体NI−203.8E3はIAPP凝集物の想定され得る立体配座エピトープ(これは上記で示されるように、特定の病理学的関連性を有し、かつ、抗体作製のための通常的なプロセス(例えば、免疫化またはインビトロライブラリースクリーニングなど)によって同様に得ることができないかもしれない)と結合するという事実である。
したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、概して、IAPPに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗IAPP抗体およびIAPP結合性分子にまで及ぶ。本発明は、より具体的には、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7からなる群から選択される参照抗体と同じIAPPのエピトープに特異的に結合する。
さらには、1つの実施形態において、本発明はまた、概して、proIAPPに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体ならびにIAPP結合性分子および/または抗proIAPP結合性分子にまで及ぶ。したがって、本発明は、より具体的にはまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI−203.1D10、NI−203.2A11、NI−203.10C4、NI−203.20H9、NI−203.26D2、NI−203.60H3およびNI−203.26C11からなる群から選択される参照抗体と同じproIAPPのエピトープに特異的に結合する。
加えて、または、代替において、本発明はまた、概して、IAPPおよびproIAPPの両方に対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する二重特異性の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体ならびにIAPP結合性分子および/または抗proIAPP結合性分子にまで及ぶ。したがって、本発明は、より具体的にはまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、例示的抗体のNI−203.26C11と同じIAPPおよびproIAPPのエピトープに特異的に結合する。したがって、上記を考慮して、1つの実施形態において、本発明はまた、IAPPおよび/またはproIAPPに対する特異的な結合について本発明の抗体と競合する抗体または抗原結合性分子に関する。
抗体間の競合が、試験下にある免疫グロブリンが共通の抗原(例えば、IAPPおよび/またはproIAPPなど)に対する参照抗体の特異的な結合を阻害するアッセイによって求められる。数多くのタイプの競合的結合アッセイが知られている:例えば、固相での直接的または間接的な放射免疫アッセイ(RIA)、固相での直接的または間接的な酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli他、Methods in Enzymology 9(1983)、242〜253を参照のこと)、固相での直接的なビオチン−アビジンEIA(Kirkland他、J.Immunol.137(1986)、3614〜3619、および、Cheung他、Virology 176(1990)、546〜552を参照のこと)、固相での直接的な標識化アッセイ、固相での直接的な標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)を参照のこと)、I125標識を使用する固相での直接的な標識RIA(Morel他、Molec.Immunol.25(1988)、7〜15、および、Moldenhauer他、Scand.J.Immunol.32(1990)、77〜82を参照のこと)。典型的には、そのようなアッセイは、精製されたIAPPおよび/またはproIAPPまたは凝集物(例えば、固体表面、または、これらのどちらかを有する細胞に結合させたオリゴマーおよび/またはその原線維など)と、標識されていない試験用免疫グロブリンおよび標識された参照用免疫グロブリン(すなわち、本発明のヒトモノクローナル抗体)とを使用することを伴う。競合的阻害が、試験用免疫グロブリンの存在下において固体表面または細胞に結合する標識の量を求めることによって測定される。通常、試験用免疫グロブリンは過剰に存在する。好ましくは、競合的結合アッセイが、添付された実施例においてELISAアッセイについて記載されるような条件のもとで行われる。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および、立体的障害が生じるために、参照抗体が結合するエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。通常の場合、競合抗体が過剰に存在するときには、競合抗体により、共通の抗原に対する参照抗体の特異的な結合が少なくとも50%または75%阻害されるであろう。したがって、本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7からなる群から選択される参照抗体がIAPPに結合することを競合的に阻害する。
加えて、本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI−203.1D10、NI−203.2A11、NI−203.10C4、NI−203.20H9、NI−203.26D2、NI−203.60H3およびNI−203.26C11からなる群から選択される参照抗体がproIAPPに結合することを競合的に阻害する。
さらに、加えて、または、代替において、本発明はさらに、二重特異性抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、参照抗体(例えば、例示的抗体のNI−203.26C11など)がIAPPおよびproIAPのどちかに結合することを競合的に阻害する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも1つ、または、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1または図2にそれぞれ示される群に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列およびVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1および図2は、Kabatシステムによって定義されるVH−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVH−CDRもまた本発明に含まれ、これらは、図1および図2に示されるデータを使用して当業者によって容易に特定され得る。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域が、図1または図2にそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域が、いずれか1つのVH−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を除いて、図1または図2にそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、または、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域およびVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1または図2にそれぞれ示されるポリペプチドに関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列およびVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1および図2は、Kabatシステムによって定義されるVL−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVL−CDRもまた本発明に含まれる。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域およびVL−CDR3領域が、図1または図2にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群およびVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域およびVL−CDR3領域が、いずれか1つのVL−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を除いて、図1または図2にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群およびVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
免疫グロブリンまたはそのコードcDNAがさらに改変される場合がある。したがって、さらなる実施形態において、本発明の方法は、キメラ抗体、マウス化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、二重特異性抗体、融合抗体、標識化抗体、または、それらのいずれか1つのアナログを製造する工程のいずれか1つを含む。対応する様々な方法が当業者には知られており、例えば、Harlow and Lane、「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor(1988)に記載される。前記抗体の誘導体がファージディスプレー技術によって得られるとき、BIAcoreシステムにおいて用いられるような表面プラズモン共鳴を、本明細書中に記載される抗体のいずれか1つのエピトープと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるために使用することができる(Schier、Human Antibodies Hybridomas 7(1996)、97〜105;Malmborg、J.Immunol.Methods 183(1995)、7〜13)。キメラ抗体の製造が、例えば、国際特許出願公開WO89/09622に記載される。ヒト化抗体を製造するための方法が、例えば、欧州特許出願EP−A10239400および国際特許出願公開WO90/07861に記載される。本発明に従って利用されるための抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。異種抗体(例えば、ヒト様抗体)をマウスにおいて製造するための一般的原理が、例えば、国際特許出願公開WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096およびWO96/33735に記載される。上記で議論されたように、本発明の抗体は、例えば、Fv、FabおよびF(ab)2を含めて、完全な抗体のほかに様々な形態で、ならびに、単鎖で存在する場合がある(例えば、国際特許出願公開WO88/09344を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントからなる群から選択される本発明の抗体が提供される。
本発明の様々な抗体またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖はさらに、この技術分野において知られている従来からの技術を使用して、例えば、この技術分野において知られているアミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、アミノ酸付加および/または組換えならびに/あるいはいずれかの他の改変を単独または組合せでのどちらかで使用することによって改変することができる。そのような改変を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列に導入するための方法が、当業者には広く知られている;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、N.Y.、および、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)を参照のこと。本発明の抗体の修飾には、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、および、炭水化物成分または脂質成分および補因子などの連結を含む側鎖修飾、骨格修飾、ならびに、N末端修飾およびC末端修飾を含めて、1つまたは複数の構成アミノ酸における化学的および/または酵素的な誘導体化が含まれる。同様に、本発明は、記載された抗体またはその何らかのフラグメントを異種分子(例えば、カルボキシル末端での免疫刺激リガンドなど)に融合されてアミノ末端において含むキメラなタンパク質の製造を包含する;対応する技術的詳細については、例えば、国際特許出願公開WO00/30680を参照のこと。
加えて、重鎖CDR3(HCDR3)は、より大きい度合いの可変性と、抗原−抗体相互作用における支配的な関与とを有する領域であることがしばしば認められているので、本発明は、上記で記載されるような結合性分子を含有するペプチド、例えば、述べられた抗体のいずれか1つの可変領域のCDR3領域(特に、重鎖のCDR3)を含有するペプチドを含むペプチドを包含する。そのようなペプチドが、本発明に従って有用である結合剤を製造するために容易に合成される場合があり、または、組換え手段によって製造される場合がある。そのような方法は当業者にはよく知られている。ペプチドを、例えば、市販されている自動化されたペプチド合成機を使用して合成することができる。ペプチドはまた、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込むこと、および、細胞を、ペプチドを産生させるために発現ベクターにより形質転換することによる組換え技術によって製造することができる。
したがって、本発明は、本発明のヒト抗IAPP抗体および/またはヒト抗proIAPP抗体に向けられ、かつ、述べられた性質を呈示する、すなわち、IAPPおよび/またはproIAPPを特異的に認識するどのような結合性分子(例えば、抗体またはその結合フラグメント)にも関連する。そのような抗体および結合性分子は、本明細書中に記載されるようなELISAおよび免疫組織化学によってそれらの結合特異性および結合親和性について試験することができる(例えば、実施例を参照のこと)。抗体および結合性分子のこれらの特性はウエスタンブロットによって同様に試験することができる。本発明に従って行われたその後の実験の暫定的な結果から、本発明のヒト抗IAPP抗体および/またはヒト抗proIAPP抗体、特に、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3の抗体はELISA試験においてIAPP原線維に示差的に結合することができたことが明らかにされた。さらには、本発明の抗体の203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11は、ThioS染色およびコンゴーレッド染色によって可視化されるように、ヒトにおいて病変部に、例えば、病理学的なIAPP原線維に対応する膵島における大きいアミロイド沈着物などに優先的に結合することが示されている(図7Aを参照のこと)。同じ性質が、抗体NI−203.19F2および抗体NI−203.15C7に当てはまることが予想される。
ヒト抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11はアミロイド陽性切片に対する際立った膵島染色を示したが、アミロイド沈着物を欠くT2D患者、および、T2Dと診断されないコントロール患者からの膵島に対しては染色を何ら示さなかった(実施例4および図7を参照のこと)。本発明の抗体はまた、膵島のアミロイド沈着物を示す糖尿病性ネコの膵臓に対する陽性の結果を与えた(図9を参照のこと)。ヒトおよび動物の組織における病理学的形態のIAPPおよび/またはproIAPPに対するこの結合特異性は、本明細書で示される生化学的実験(実施例2および図5)のほかに、膵臓における凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの出現に伴う疾患の処置および診断における本発明の抗体の有用性を強調している。
免疫グロブリンをB細胞またはBメモリー細胞の培養から直接に得ることの代替として、これらの細胞を、その後の発現および/または遺伝子操作のための、再編成された重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の供給源として使用することができる。再編成された抗体遺伝子を、cDNAを作製するために、適切なmRNAから逆転写することができる。所望されるならば、重鎖定常領域を異なるアイソタイプの重鎖定常領域に交換することができ、または、完全に除くことができる。可変領域を、単鎖のFv領域をコードするために連結することができる。多数のFv領域を、2つ以上の標的に対する結合能を与えるために連結することができ、または、重鎖および軽鎖のキメラな組合せを用いることができる。遺伝物質が入手可能であると、所望の標的と結合するそれらの能力をともに保持する上記で記載されるようなアナログの設計は簡単である。抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の作製のための方法が当業者には知られており、例えば、Gilliland他、Tissue Antigens 47(1996)、1〜20;Doenecke他、Leukemia 11(1997)、1787〜1792に記載される。
適切な遺伝物質が得られ、かつ、所望されるならば、アナログをコードするために改変されると、コード配列(これは、最低でも重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列を含む)を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされ得るベクターにおいて含有される発現系に挿入することができる。様々なそのような宿主細胞が使用してよい;しかしながら、効率的なプロセシングのためには、哺乳動物細胞が好ましい。この目的のために有用である典型的な哺乳動物細胞株には、CHO細胞、HEK293細胞またはNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。
抗体またはアナログの製造はその後、改変された組換え宿主を、宿主細胞の成長およびコード配列の発現のために適切である培養条件のもとで培養することによって着手される。その後、抗体が、抗体を培養物から単離することによって回収される。発現系は好ましくは、シグナルペプチドを含み、その結果、生じた抗体が培地中に分泌されるように設計される。しかしながら、細胞内産生もまた可能である。
上記によれば、本発明はまた、本発明の抗体または同等な結合性分子をコードするポリヌクレオチドに関連し、抗体の場合には、好ましくは、上で記載される抗体の免疫グロブリン鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。典型的には、ポリヌクレオチドによってコードされる前記可変領域は、前記抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
当業者は、上記の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインが、所望される特異性および生物学的機能の他のポリペプチドまたは抗体を構築するために使用され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はまた、上で記載された可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、かつ、添付された実施例において記載される抗体と実質的に同じまたは類似する結合性質を好都合には有するポリペプチドおよび抗体を包含する。当業者は、結合親和性が、アミノ酸置換をCDR内において、または、Kabatによって定義されるようなCDRと部分的に重なる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917)の内部において行うことによって強化され得ることを理解している(例えば、Riechmann他、Nature 332(1988)、323〜327を参照のこと)。したがって、本発明はまた、述べられたCDRの1つまたは複数が1つまたは複数の、好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体に関連する。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方または両方において、図1に示されるような、または、図2にそれぞれ示されるような可変領域の2つのCDRまたは3つすべてのCDRを含む。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、当業者によって知られているように、1つまたは複数のエフェクター機能を媒介する定常領域を含むことができる。例えば、補体のC1成分が抗体の定常領域に結合することにより、補体系が活性化される場合がある。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化は炎症応答をも刺激し、自己免疫の過敏性に関与することもある。さらに、抗体は、Fc領域を介して、すなわち、抗体のFc領域におけるFc受容体結合部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合することにより様々な細胞における受容体に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)およびIgM(ミュー受容体)を含めて、異なるクラスの抗体について特異的であるいくつかのFc受容体が存在する。抗体が細胞表面のFc受容体に結合することにより、抗体被覆粒子の貪食および破壊、免疫複合体の排除、キラー細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解(これは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害またはADCCと呼ばれる)、炎症性媒介因子の放出、胎盤移行および免疫グロブリン産生の制御を含む多数の重要かつ多様な生物学的応答が誘発される。
したがって、本発明の特定の実施形態には、少なくとも定常領域ドメインの1つまたは複数の一部が欠失されているか、さもなければ変化させられており、その結果、所望される生化学的特性を提供するように、例えば、およそ同じ免疫原性の完全な未変化抗体と比較したとき、低下したエフェクター機能、ダイマーを非共有結合により形成することができること、IAPPおよび/またはproIAPPの凝集および沈着の部位に局在化する増大した能力、低下した血清中半減期、あるいは、増大した血清中半減期などを提供するようにされている抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が含まれる。例えば、本明細書中に記載される診断方法および処置方法において使用されるためのある種の抗体は、免疫グロブリン重鎖に類似するポリペプチド鎖を含むが、1つまたは複数の重鎖ドメインの少なくとも一部を欠くドメイン欠失抗体である。例えば、ある種の抗体では、改変された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失されるであろう。例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部が欠失されるであろう。他の実施形態において、本明細書中に記載される診断方法および処置方法において使用されるためのある種の抗体は、グリコシル化を排除するために変化させられる定常領域(例えば、IgG重鎖定常領域)を有しており、これは、本明細書中の他のところでは、非グルコシル化抗体または「agly」抗体として示される。そのような「agly」抗体は、酵素学的に、ならびに、定常領域におけるコンセンサスなグリコシル化部位を操作することによって調製されてもよい。理論によって拘束されることはないが、「agly」抗体は生体内での安全性および安定性の改善されたproフィルを有する場合があると考えられる。所望されるエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を製造する方法が、例えば、国際特許出願公開WO2005/018572に見出される(その全体が参照によって組み込まれる)。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、この技術分野において知られている技術を使用して、エフェクター機能を低下させるために変異させられる場合がある。例えば、定常領域ドメインの(点変異または他の手段による)欠失または不活性化は、循環する改変された抗体のFc受容体結合を低下させ、それにより、IAPPおよび/またはproIAPPの局在化を増大させる場合がある。他の場合には、本発明と一致する定常領域改変が補体結合を和らげ、したがって、抱合された細胞毒素の血清半減期および非特異的会合を低下させることがあるかもしれない。定常領域のさらに他の改変が、増大した抗原特異性または抗体柔軟性に起因する高まった局在化を可能にするジスルフィド連結またはオリゴ糖成分を改変するために使用される場合がある。そのような改変の得られた生理学的プロフィール、生物学的利用能および他の生化学的影響、例えば、IAPPおよび/またはproIAPPの局在化、生体分布および血清半減期などが、過度な実験を行うことなく、広く知られている免疫学的技術を使用して容易に測定および定量化され得る。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、例として、Fcγ受容体、LRPまたはThy1受容体を介する抗体の受容体媒介性エンドサイトーシスを高めることによって、あるいは、「SuperAntibody Technology」(これは、抗体が、生細胞を傷つけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる)(Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241)によって抗体の細胞取り込みを増大させるために変異させられる場合があり、または、代わりのタンパク質配列に交換される場合がある。例えば、抗体結合領域と、細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドとの融合タンパク質、あるいは、IAPPおよび/またはproIAPPならびに細胞表面受容体に結合する特異的な配列を有する二重特異性抗体または多特異性抗体の作製が、この技術分野において知られている技術を使用して設計される場合がある。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、その血液脳関門透過を増大させるために変異させられる場合があり、または、代わりのタンパク質配列に交換される場合があり、あるいは、抗体が化学的に改変される場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体の改変された形態を、この技術分野において知られている技術を使用して完全な前駆体または親抗体から作製することができる。例示的な技術が本明細書中により詳しく議論される。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、この技術分野において知られている技術を使用して作製または製造することができる。特定の実施形態において、抗体分子またはそのフラグメントが「組換え製造され」、すなわち、組換えDNA技術を使用して製造される。抗体分子またはそのフラグメントを作製するための例示的な技術が本明細書中の他のところでより詳しく議論される。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体にはまた、例えば、共有結合による結合により、抗体がその同族エピトープに特異的に結合することが妨げられないように、どのようなタイプの分子でも抗体に共有結合により結合させることによって改変される誘導体が含まれる。例えば、しかし、限定としてではなく、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変されている抗体が含まれる。数多くの化学的修飾のどれもが、知られている技術によって行われる場合があり、これらには、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない。加えて、誘導体は1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有する場合がある。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、有害な免疫応答を処置されるべき動物において、例えば、ヒトにおいて誘発しないであろう。特定の実施形態において、結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは患者、例えば、ヒト患者に由来し、続いて、抗体またはその抗原結合フラグメントが由来する同じ種、例えば、ヒトにおいて使用され、これにより、有害な免疫応答の出現を緩和するか、または最小限に抑える。
脱免疫化もまた、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化を包含する(例えば、国際特許出願公開WO98/52976および同WO00/34317を参照のこと)。例えば、出発抗体からのVH配列およびVL配列が分析され、そして、相補性決定領域(CDR)との関連でのエピトープの所在位置、および、配列内の他の重要な残基を示すそれぞれのV領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」が分析される。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープが、最終的な抗体の活性を変化させる危険性が低い代わりのアミノ酸置換を特定するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代替的なVH配列およびVL配列が設計され、これらの配列が続いて、本明細書中に開示される診断方法および処置方法における使用のために様々な結合性ポリペプチド(例えば、IAPP特異的抗体および/またはproIAPP特異的抗体あるいはそれらの免疫特異性フラグメント)に組み込まれ、その後、これらは機能について試験される。典型的には、12個〜24個の間の変化型抗体が作製され、試験される。改変されたV領域およびヒトC領域を含む完全な重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子がその後、発現ベクターにクローン化され、それに続くプラスミドが、完全な抗体の産生のために細胞株に導入される。その後、抗体が、適切な生化学的アッセイおよび生物学的アッセイにおいて比較され、最適な変異体が特定される。
モノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術、組換え技術およびファージディスプレー技術またはそれらの組合せの使用を含むこの技術分野において知られている広範囲の様々な技術を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体を、この技術分野において知られているハイブリドーマ技術、および、例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988);Hammerling他、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、Elsevier、N.Y.、563〜681(1981)に教示されるハイブリドーマ技術を含む様々なハイブリドーマ技術を使用して製造することができる(前記参考文献はそれらの全体が参照によって組み込まれる)。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンのどのようなものも含めて、ただ1つのクローンに由来する抗体を示し、モノクローナル抗体が製造される方法に由来する抗体を示さない。したがって、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。特定の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中に記載されるように、エプスタイン・バールウイルスによる形質転換により不死化されているヒトB細胞に由来する。
広く知られているハイブリドーマプロセス(Kohler他、Nature 256(1975)、495)では、哺乳動物から得られる比較的短命の、すなわち、いつかは死滅するリンパ球、例えば、本明細書中に記載されるようなヒト対象に由来するB細胞が、不死性の腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合され、このようにして、不死性であり、かつ、B細胞の遺伝子コードされた抗体を産生することができるハイブリッド細胞、すなわち、「ハイブリドーマ」がもたらされる。得られたハイブリッドは、選抜、希釈および再成長によって単一の遺伝的形質に分離され、それぞれの個々の株が単一抗体の形成のための特定の遺伝子を含む。それらにより、所望の抗原に対して均質であり、そして、それらの純粋な遺伝的起源に関連して、「モノクローナル」と呼ばれる抗体が産生される。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない元の骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において播種され、成長させられる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選抜および成長のための試薬、細胞株および培地がいくつかの供給源から市販されており、また、標準化されたプロトコルが十分に確立されていることを理解するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地が、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、インビトロアッセイによって、例えば、本明細書中に記載されるような免疫沈殿、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって求められる。所望される特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、当該クローンは限界希釈手法によってサブクローン化され、標準的な方法によって成長させられる場合がある(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59頁〜103頁(1986)を参照のこと)。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体が、従来からの精製手段によって、例えば、プロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水または血清から分離され得ることがさらに理解されるであろう。
別の実施形態において、リンパ球を顕微操作によって選択することができ、可変性遺伝子を単離することができる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫化された哺乳動物または生まれつき免疫性の哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、約7日間にわたってインビトロ培養することができる。培養物を、スクリーニング基準を満たす特異的なIgGについてスクリーニングすることができる。陽性のウェルからの細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞を、FACSによって、または、Ig産生B細胞を補体媒介溶血プラークアッセイで特定することによって単離することができる。Ig産生B細胞をチューブの中に顕微操作することができ、VH遺伝子およびVL遺伝子を、例えば、RT−PCRを使用して増幅することができる。VH遺伝子およびVL遺伝子を抗体発現ベクターにクローン化し、発現のための細胞(例えば、真核生物細胞または原核生物細胞)にトランスフェクションすることができる。
代替では、抗体産生の細胞株が、当業者に広く知られている技術を使用して選択および培養される場合がある。そのような技術が様々な実験室マニュアルおよび一次刊行物に記載されている。これに関連して、下で記載されるような本発明における使用のために好適である技術が、Current Protocols in Immunology、Coligan他編、Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991)に記載される(これは、増刊を含めて、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントが、知られている技術によって作製され得る。例えば、FabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントが、組換えによって、あるいは、例えば、パパイン(Fabフラグメントを製造するために)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを製造するために)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって製造され得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。そのようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異性部分を検出用試薬(例えば、放射性同位体など)に連結することを伴う免疫診断手順における使用のために十分である。
本明細書中に記載されるようなヒト抗体は、ヒト患者における治療的使用のために特に望ましい。本発明のヒト抗体が、例えば、太りすぎまたは肥満のために、代謝障害(例えば、T2D)を発症する危険性があると疑われることがある健康なヒト対象から、あるいは、障害を有するが、当該疾患の通常的でない安定した疾患経過または通常的でない軽症型を有する患者から単離される。しかしながら、抗体(例えば、本明細書中に記載される抗体など)が単離されることがある、代謝障害(例えば、T2D)を発症する危険性があると疑われる健康なヒト対象が、代謝障害(例えば、T2D)を発症する人の可能性を高めることが知られている他の危険性の存在に基づいて同様に選択されてもよい。前記の危険性が、代謝障害(例えば、T2D)の発症に関連する下記の危険因子についての人の検査から推定される場合がある:例えば、45歳以上の年齢;太りすぎまたは肥満;糖尿病を有する近親者;家族背景が、アフリカ系アメリカ人、アラスカ先住民、アメリカ先住民、アジア系アメリカ人、ヒスパニック系/ラテン系、太平洋諸島系アメリカ人、アジア系またはアラブ系であること;妊娠糖尿病の病歴;体重が4.5kgを超える少なくとも1名の新生児の出産;140/90またはそれ以上の血圧;正常よりも高いコレステロールレベルで、例えば、40mg/dL未満(1mmol/L未満に相当)の高密度リポタンパク質(HDL)レベル、または、200〜499mg/mLを超えるトリグリセリドレベル(2.3〜5.6mmol/Lを超えるレベルに相当)を伴う場合;ほとんど体を動かさない生活様式;多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断;事前検査での糖尿病前症の診断−5.7パーセント〜6.4パーセントのA1C(これはまた、HbA1Cまたはグリコヘモグロビンとも呼ばれる)レベル、空腹時血中ブドウ糖不良(IFG)または耐糖能障害(IGT);インスリン抵抗性に関連する他の臨床状態の診断、例えば、黒色表皮肥厚症など;心臓血管疾患の病歴など。
人間の肥満または太りすぎが、代謝障害(例えば、T2D)を発症する人間の指標として使用される場合、肥満体の健康な対象および症状がない対象はそれぞれ、例えば、肥満としては分類されないが太りすぎとして、または、正常な体重の人間として分類されるので、危険性がそれほどでないと診断される対象よりも頻繁に保護的な抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体を発現させているであろうと予想することが賢明であるにもかかわらず、後者の2つの分類に属する対象が、本発明のヒト抗体を同様に得るための供給源として同様に使用されてもよい。
対象が、対象の身長および体重の測定、および、対象のボディーマス指数を下記の計算に従って計算することに基づいて、正常な体重を有する、太りすぎである、または肥満であると分類されてもよい:BMI=体重[kg]/(身長[m])2。結果に基づいて、対象は、現行の世界保健機関基準に基づいて、正常な体重(BMI、18.5〜24.9kg/m2)、太りすぎ(25.0〜29.9kg/m2)または肥満(≧30kg/m2)として分類される(世界保健機関(2000)、「肥満:世界的蔓延の防止および管理.WHO専門家会議報告書」、World Health Organ Tech Rep Ser 894:1.253)。代替において、または、加えて、対象の腹囲(WC)が測定されてもよく、そして、InterAct Consortium、Langenberg他、PLoS Med.2012(Jun)、9(6):e1001230に記載されるように、WCを正常(男性では94cm未満[34.6インチ未満]および女性では80cm未満[31.5インチ未満])、適度に増大した(男性では94〜102cm[34.6〜40インチ]および女性では80〜88cm[31.5〜35インチ])または大きい(男性では102cm以上[40インチ以上]および女性では88cm以上[35インチ以上])として定義するための性別特異的なカットオフに基づいて使用される場合があり、この場合、大きい腹囲(大きいWC)を有する健康な対象は、肥満、すなわち、T2Dを発症する最大の危険性としての分類と同程度の保護的な抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体をより頻繁に発現させているであろうし、また、これらの抗体を単離するために好ましく使用される場合があり、しかし、適度に増大したWCまたは正常なWCを有する人間が、抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体を単離するために同様に使用される場合がある。
1つの実施形態において、本発明の抗体は抗体分子の少なくとも1つの重鎖CDRまたは軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。主題となるこれらの抗体に含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的な抗体分子が本明細書中に記載される。
本発明の抗体は、抗体を合成するためにこの技術分野において知られているいずれかの方法によって、特に、化学合成によって、または、好ましくは、本明細書中に記載されるような組換え発現技術によって製造することができる。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、1つまたは複数のドメインが部分的または完全に欠失される合成された定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特定の実施形態において、適合し得る改変された抗体は、CH2ドメイン全体が除かれているドメイン欠失の構築物または変異体(ΔCH2構築物)を含むであろう。他の実施形態については、短い連結ペプチドが、動きの柔軟性および自由を可変領域に与えるために欠失ドメインの代わりに使用される場合がある。当業者は、そのような構築物が抗体の異化速度に対するCH2ドメインの調節的特性のために特に好ましいことを理解するであろう。ドメイン欠失された構築物を、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して得ることができる(例えば、国際特許出願公開WO02/060955および同WO02/096948A2を参照のこと)。このベクターは、CH2ドメインを欠失し、かつ、ドメイン欠失されたIgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するために操作される。
特定の実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はミニボディ(minibody)である。ミニボディを、この技術分野において記載される方法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第5,837,821号または国際特許出願公開WO94/09817を参照のこと)。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、モノマーサブユニット間の会合を可能にする限り、数個のアミノ酸の欠失もしくは置換、または、1個だけのアミノ酸の欠失もしくは置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された領域における1個だけのアミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低下させるために、そして、それにより、IAPPおよび/またはproIAPPの局在化を増大させるために十分である場合がある。同様に、調節されるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つまたは複数の定常領域ドメインのその部分を単に欠失することが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清半減期)を改善し、一方で、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を損なわないままにし得る。そのうえ、上記において暗に示されるように、開示された抗体の定常領域は、生じた構築物のプロフィールを高める1つまたは複数のアミノ酸の変異または置換により合成物である場合がある。これに関連して、改変された抗体の立体配置および免疫原性プロフィールを実質的に維持しながら、保存されている結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を妨げることが可能である場合がある。さらに他の実施形態は、1つまたは複数のアミノ酸を、望ましい特性(例えば、エフェクター機能など)を高めるために、あるいは、細胞毒素または炭水化物のより多くの結合を提供するために定常領域に付加することを含む。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的な配列を挿入すること、または複製することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含む抗体、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)から本質的になる抗体、あるいは、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)からなる抗体を提供し、そのような抗体またはそのフラグメントはIAPPおよび/またはproIAPPに免疫特異的に結合する。当業者に知られている様々な標準的技術を、抗体をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するために使用することができ、そのような技術には、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、基準となるVH領域、VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL領域、VL−CDR1、VL−CDR2またはVL−CDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換または2未満のアミノ酸置換をコードする。「保存的(な)アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがこの技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。代替において、変異を、例えば、飽和変異誘発などによってコード配列の全体または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を、活性(例えば、IAPPおよび/またはproIAPPと結合する能力)を保持する変異体を特定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
例えば、変異を抗体分子のフレームワーク領域においてのみに、または、抗体分子のCDR領域においてのみに導入することが可能である。導入された変異はサイレント変異または中立のミスセンス変異である場合があり、例えば、抗体の抗原結合能に対する影響を全く有しないか、またはほとんど有しない場合があり、実際、いくつかのそのような変異はアミノ酸配列を全く変化させない。これらのタイプの変異は、コドン使用を最適化するために、または、ハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用である場合がある。本発明の抗体をコードするコドン最適化コード領域が本明細書中の他のところで開示される。代替において、非中立的なミスセンス変異により、抗体の抗原結合能が変化する場合がある。ほとんどのサイレント変異および中立的ミスセンス変異の位置はフレームワーク領域内である可能性が高く、一方、ほとんどの非中立的ミスセンス変異の位置はCDR内である可能性が高く、だが、このことは絶対的要件でない。当業者であれば、所望される性質、例えば、抗原結合活性における変化がないことまたは結合活性における変化(例えば、抗原結合活性における改善または抗体特異性における変化)などを有する変異体分子を設計し、試験することができるであろう。変異誘発後、コードされたタンパク質が常法により発現させられる場合があり、そして、コードされたタンパク質の機能的活性および/または生物学的活性(例えば、IAPPおよび/またはproIAPPの少なくとも1つのエピトープと免疫特異的に結合する能力)を、本明細書中に記載される技術を使用して、または、この技術分野において知られている技術を常法により改変することによって求めることができる。
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、どのようなポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチド(これらは非修飾のRNAまたはDNAあるいは修飾されたRNAまたはDNAである場合がある)からでも構成され得る。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖である場合がある、あるいは、より典型的には、二本鎖である場合があるか、または、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物である場合があるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。加えて、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA、あるいは、RNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性または他の理由のために改変される1つまたは複数の修飾された塩基あるいはDNA骨格またはRNA骨格を含有してもよい。「修飾(改変)(された)」塩基には、例えば、トリチル化塩基および非通常的塩基(例えば、イノシンなど)が含まれる。様々な修飾をDNAおよびRNAに対して行うことができる;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に改変された形態を包含する。
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンの重鎖部分または軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然型変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドを、1つまたは複数のアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失が、コードされたタンパク質に導入されるように、1つまたは複数のヌクレオチド置換、ヌクレオチド付加またはヌクレオチド欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作出することができる。変異は、標準的な技術によって、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などによって導入される場合がある。好ましくは、保存的なアミノ酸置換が1つまたは複数の非必須アミノ酸残基において行われる。
よく知られているように、RNAが、標準的な技術、例えば、イソチオシアン酸グアニジウム抽出および沈殿化、その後、遠心分離またはクロマトグラフィーなどによって、元のB細胞、ハイブリドーマ細胞または他の形質転換細胞から単離される場合がある。望ましい場合、mRNAが、標準的な技術、例えば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーなどによって総RNAから単離される場合がある。好適な技術がこの技術分野では熟知されている。1つの実施形態において、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAが、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼをよく知られている方法に従って使用して、同時または別個に作製される場合がある。PCRが、コンセンサスな定常領域プライマーによって、または、公開された重鎖および軽鎖のDNA配列およびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始される場合がある。上記で議論されるように、PCRはまた、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用される場合がある。この場合、ライブラリーが、コンセンサスなプライマーまたはより大きい相同的プローブ(例えば、ヒト定常領域プローブなど)によってスクリーニングされる場合がある。
DNA、典型的にはプラスミドDNAが、この技術分野において知られている技術を使用して細胞から単離され、そして、例えば、組換えDNA技術に関連する前記の参考文献に詳しく示される標準的なよく知られている技術に従って制限酵素マッピングおよび配列決定に供される場合がある。当然のことながら、DNAは、単離プロセスまたはその後の分析の期間中のどの時点であっても、本発明に従う合成物である場合がある。
この関連において、本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。1つの実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、重鎖可変領域のCDRの少なくとも1つ、または、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域またはVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列またはVH−CDR3ポリペプチド配列を有し、あるいは、それぞれ、図2に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列またはVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、または、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域またはVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列またはVL−CDR3ポリペプチド配列を有し、あるいは、それぞれ、図2に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列またはVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域が、図1に示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるか、または、それぞれ、図2に示されるようなVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。
この技術分野において知られているように、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチドの間における「配列同一性」が、一方のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアミノ酸配列または核酸配列を第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。本明細書中で議論されるとき、任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるかどうかを、この技術分野において知られている方法およびコンピュータープログラム/ソフトウエア(例えば、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI、53711)(これに限定されない)など)を使用して決定することができる。BESTFITでは、Smith and Waterman(Advances in Applied Mathematics 2(1981)、482〜489)の局所的相同性アルゴリズムを、2つの配列の間における相同性の最も良いセグメントを見出すために使用する。BESTFITまたはいずれかの他の配列アライメントプログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明による参照配列と95%同一であるかどうかを決定するときには、当然のことながら、同一性の百分率が参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算され、かつ、参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、パラメーターが設定される。
本発明の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、表2または表3に示されるような抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体のVH領域またはVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。これに関連して、当業者は、軽鎖および/または重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドが両方の免疫グロブリン鎖または一方の免疫グロブリン鎖のみの可変ドメインをコードし得ることを容易に理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表2に示されるような抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体のVH領域およびVL領域のポリヌクレオチド配列、あるいは、表3に示されるような抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体のVH領域およびVL領域の配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。
表2:IAPP抗体のV
H領域およびV
L領域のヌクレオチド配列
表3:プロIAPP抗体のVH領域およびVL領域のヌクレオチド配列
本発明にはまた、他のところで記載されるように、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントが含まれる。加えて、本明細書中に記載されるように、融合ポリヌクレオチド、Fabフラグメントおよび他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも本発明によって包含される。
ポリヌクレオチドは、この技術分野において知られているいずれかの方法によって作製または製造される場合がある。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られているならば、当該抗体をコードするポリヌクレオチドが、例えば、Kutmeier他、BioTechniques 17(1994)、242に記載されるように、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられる場合があり、これには、簡単に記載すると、抗体をコードする配列の一部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびに、連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
代替において、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドが、好適な供給源から得られる核酸から作製される場合がある。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが入手できず、しかし、抗体分子の配列が知られているならば、当該抗体をコードする核酸が化学合成される場合があるか、あるいは、好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、あるいは、IAPP特異的抗体および/またはproIAPP特異的抗体を発現するいずれかの組織もしくは細胞(例えば、抗体を発現させるために選択されるハイブリドーマ細胞など)から作製されるcDNAライブラリー、または、そのようなものから単離される核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’末端および5’末端にハイブリダイゼーション可能である合成プライマーを使用するPCR増幅によって得られる場合があり、または、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを特定するために特定の遺伝子配列について特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得られる場合がある。PCRによって生じる増幅された核酸がその後、この技術分野において広く知られているいずれかの方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローン化される場合がある。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列が、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製するために、例えば、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入をもたらすために、ヌクレオチド配列の操作についてこの技術分野においてよく知られている方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどを使用して操作される場合がある(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)、および、Ausubel他編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1998)に記載される技術を参照のこと。これらはともに、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
IV.抗体ポリペプチドの発現
単離された遺伝物質が、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を提供するために操作された後、抗体をコードするポリヌクレオチドは典型的には、所望される量の抗体を産生させるために使用されることがある宿主細胞への導入のために発現ベクターに挿入される。抗体あるいはそのフラグメント、誘導体またはアナログ(例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖または軽鎖)の組換え発現が本明細書中に記載される。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖あるいはその一部分(好ましくは重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインを含有するその一部分)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を産生させるためのベクターが、この技術分野においてよく知られている技術を使用する組換えDNA技術によって作製される場合がある。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法が本明細書中に記載される。当業者によく知られている方法を、抗体コード配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、本発明の抗体分子あるいはその重鎖または軽鎖あるいは重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列をproモーターに機能的に連結されて含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む場合があり(例えば、国際特許出願公開WO86/05807およびWO89/01036、ならびに、米国特許第5,122,464号を参照のこと)、また、抗体の可変ドメインが、重鎖全体または軽鎖全体を発現させるためにそのようなベクターにクローン化される場合がある。
用語「ベクター」または「発現ベクター」は、所望される遺伝子を宿主細胞に導入し、その遺伝子をその宿主細胞において発現させるためのビヒクルとして本発明に従って使用されるベクターを意味するために本明細書中では使用される。当業者には知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルスからなる群から容易に選択される場合がある。一般に、本発明と適合し得るベクターは、選択マーカー、所望される遺伝子のクローニングを容易にするための適切な制限部位、ならびに、真核生物細胞または原核生物細胞における進入能および/または複製能を含む。本発明の目的のために、数多くの発現ベクター系が用いられる場合がある。例えば、1つのクラスのベクターでは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスなどに由来するDNAエレメントが利用される。他では、内部リボソーム結合部位を伴う多シストロン系の使用を伴う。加えて、DNAをその染色体に組み込んでいる細胞が、トランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーを導入することによって選択される場合がある。マーカーにより、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)、または、重金属(例えば、銅など)に対する抵抗性が与えられる場合がある。選択マーカー遺伝子は、発現させられるDNA配列に直接に連結することができるか、または、共形質転換によって同じ細胞に導入することができる。さらなるエレメントがまた、mRNAの最適な合成のために必要となる場合がある。これらのエレメントには、シグナル配列、スプライス信号ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナルが含まれる場合がある。
特に好ましい実施形態において、クローン化された可変領域遺伝子が、上記で議論されるような重鎖定常領域遺伝子および軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒトの遺伝子)と一緒に発現ベクターに挿入される。1つの実施形態において、このことが、Biogen IDEC,Inc.の独自開発による発現ベクター(これはNEOSPLAと称し、米国特許第6,159,730号に開示される)を使用して達成される。このベクターは、サイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、マウスのベータグロビン主要プロモーター、SV40の複製起点、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエキソン1およびエキソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼの遺伝子およびリーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子および定常領域遺伝子の取り込み、CHO細胞におけるトランスフェクション、それに続く、G418含有培地における選択、および、メトトレキサート増幅を行ったとき、抗体の非常に高いレベルの発現をもたらすことが見出されている。当然のことながら、発現を真核生物細胞において誘発することができる発現ベクターはどれも、本発明において使用される場合がある。好適なベクターの例には、プラスミドのpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1およびpZeoSV2(これらはInvitrogen(San Diego、CA)から入手可能である)、ならびに、プラスミドのpCI(これはPromega(Madison、WI)から入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。一般に、非常に多数の形質転換細胞を、好適に高レベルの免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を発現する形質転換細胞についてスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって行うことができる日常的な実験である。ベクター系はまた、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号に教示される(これらのそれぞれがその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。この系は、例えば、30pg/細胞/日を超える高い発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系が、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
他の好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が、多シストロン構築物、例えば、米国特許出願公開第2003−0157641号A1(その全体が本明細書中に組み込まれる)に開示される多シストロン構築物などを使用して発現させられる場合がある。これらの発現系において、目的とする多数の遺伝子産物(例えば、抗体の重鎖および軽鎖など)がただ1つの多シストロン構築物からもたらされる場合がある。これらの系では、配列内リボソーム進入部位(IRES)が、比較的高いレベルの抗体を提供するために都合よく使用される。適合し得るIRES配列が米国特許第6,193,980号(これもまた本明細書中に組み込まれる)に開示される。当業者は、そのような発現系が、本出願において開示される抗体の完全な範囲を効果的に産生するために使用されることがあることを理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、本発明は、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含むベクターを提供する。
より一般的には、抗体のモノマーサブユニットをコードするベクターまたはDNA配列が調製されると、発現ベクターが、適切な宿主細胞に導入される場合がある。宿主細胞へのプラスミドの導入を、当業者にはよく知られている様々な技術によって達成することができる。これらには、例えば、Fugene(登録商標)またはリポフェクタミンを使用するリポトランスフェクションを含むトランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、包まれたDNAを用いた細胞融合、顕微注入、および、無傷のウイルスによる感染が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、宿主へのプラスミド導入が、標準的なリン酸カルシウム共沈殿法により行われる。発現構築物を有する宿主細胞が、軽鎖および重鎖を産生させるために適切である条件のもとで成長させられ、重鎖および/または軽鎖のタンパク質合成についてアッセイされる。例示的なアッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)または蛍光活性化細胞分取器分析(FACS)および免疫組織化学などが含まれる。
発現ベクターが従来からの技術によって宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞がその後、抗体を本明細書中に記載される方法における使用のために産生させるため従来からの技術によって培養される。したがって、本発明には、好ましくは異種プロモーターに機能的に連結される、本発明の抗体またはその重鎖もしくは軽鎖、あるいは、少なくともその免疫グロブリンの結合ドメインまたは可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が含まれる。加えて、または、代替において、本発明にはまた、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む本明細書中上記で定義されるようなベクターを含む宿主細胞が含まれる。二重鎖抗体を発現させるための好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一のベクターまたは複数のベクターが、下記で詳述されるように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において共発現させられる場合がある。
宿主細胞が本発明の2つの発現ベクターにより共トランスフェクションされる場合があり、この場合、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする。これら2つのベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有する場合がある。代替では、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードするただ1つのベクターが使用される場合がある。そのような状況では、軽鎖が好都合には、毒性のない重鎖の過剰を避けるために重鎖の前に置かれる(Proudfoot、Nature 322(1986)、52;Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、2197を参照のこと)。重鎖および軽鎖のためのコード配列がcDNAまたはゲノムDNAを含む場合がある。
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を示す。抗体を組換え宿主から単離するためのプロセスの記載において、用語「細胞」および「細胞培養(物)」が、別途明確に指定される場合を除き、抗体の供給源を示すために交換可能に使用される。別の言い方をすれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心分離された細胞全体から、または、培地および懸濁された細胞の両方を含有する細胞培養物からのどちらをも意味する場合がある。
様々な宿主−発現ベクター系が、本明細書中に記載される方法において使用されるための抗体分子を発現させるために利用される場合がある。そのような宿主−発現系は、目的とするコード配列が産生され、続いて精製されることがあるビヒクルを表し、しかし、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換またはトランスフェクションされたとき、本発明の抗体分子をその場で発現する細胞もまた表す。これらには、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染させられる昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)が感染させられるか、または、抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換される植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、NSO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、完全な組換え抗体分子の発現のためにはとりわけ、細菌細胞(例えば、大腸菌など)、より好ましくは真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントなど)と併せての哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などが、抗体のための効果的な発現系である(例えば、Foecking他、Gene 45(1986)、101;Cockett他、Bio/Technology 8(1990)、2を参照のこと)。
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は多くの場合、哺乳動物起源である;当業者には、宿主細胞株において発現させられる所望の遺伝子産物のために最もよく適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力があると思われる。例示的な宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFR欠損)、HELA(ヒト子宮頸ガン)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40のT抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)が含まれるが、これらに限定されない。CHO細胞および293細胞が特に好ましい。宿主細胞株は典型的には、商用サービスから、すなわち、American Tissue Culture Collectionから入手可能であり、または、発表された文献から入手可能である。
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、あるいは、遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾し、また、プロセシングする宿主細胞系統が選ばれる場合がある。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)が当該タンパク質の機能のために重要である場合がある。種々の宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後のプロセシングおよび修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株または宿主系を、発現される外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを保証するために選ぶことができる。この目的を達成するために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用される場合がある。
組換えタンパク質の長期間にわたる高収量の産生のためには、安定的発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が操作される場合がある。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、むしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーによって制御されるDNAにより形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞は富化培地において1日間〜2日間にわたって成長させられる場合があり、その後、選択培地に切り換えられる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは選択に対する抵抗性を与え、また、細胞がプラスミドをその染色体に安定的に組み込み、成長して、結果としてクローン化され、かつ、細胞株に拡大することができる増殖巣を形成することを可能にする。この方法は、抗体分子を安定的に発現する細胞株を操作するために都合よく使用される場合がある。
数多くの選択システムが使用される場合があり、これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler他、Cell 11(1977)、223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska&Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1992)、202)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy他、Cell 22(1980)、817)をtk−細胞、hgprt−細胞またはaprt−細胞においてそれぞれ用いることができる。また、代謝拮抗物質抵抗性を下記の遺伝子のための選択の基礎として使用することができる:dhfr、これはメトトレキサートに対する抵抗性を与える(Wigler他、Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、357;O’Hare他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する抵抗性を与える(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する抵抗性を与える(Goldspiel他、Clinical Pharmacy 12(1993)、488〜505;Wu and Wu、Biotherapy 3(1991)、87〜95;Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32(1993)、573〜596;Mulligan、Science 260(1993)、926〜932;ならびに、Morgan and Anderson、Ann.Rev.Biochem.62(1993)、191〜217;TIB TECH 11(1993)、155〜215);および、hygro、これはヒグロマイシンに対する抵抗性を与える(Santerre他、Gene 30(1984)、147)。使用することができる、組換えDNA技術の技術分野において一般に知られている様々な方法が、Ausubel他(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載さされ、また、第12章および第13章、Dracopoli他(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley&Sons、NY(1994);Colberre−Garapin他、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載される(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
抗体分子の発現レベルをベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、Academic Press、New York、第3巻(1987)を参照のこと)。抗体を発現させるベクター系におけるマーカーが増幅可能であるときには、宿主細胞の培養において存在する阻害剤のレベルにおける増大はマーカー遺伝子のコピー数を増大させるであろう。増幅された領域は抗体遺伝子に付随するので、抗体の産生もまた増大するであろう(Crouse他、Mol.Cell.Biol.3(1983)、257を参照のこと)。インビトロ産生では、スケールアップにより、多量の所望されるポリペプチドを与えることが可能である。組織培養条件のもとでの哺乳動物細胞培養のための様々な技術がこの技術分野において知られており、これらには、均一懸濁培養、例えば、エアーリフト型リアクターまたは連続撹拌槽リアクターにおける培養、あるいは、固定化細胞または包括化細胞の培養、例えば、中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジにおける培養が含まれる。必要および/または所望されるならば、ポリペプチドの溶液を、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後で、あるいは、本明細書中に記載されるHICクロマトグラフィー工程の前または後で、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えば、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー、または、(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードする遺伝子はまた、哺乳動物以外の細胞、例えば、細菌細胞または昆虫細胞または酵母細胞または植物細胞において発現させることができる。核酸を容易に取り込む細菌には、腸内細菌科のメンバー、例えば、大腸菌またはサルモネラ属の菌株など;バチルス科、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など;肺炎球菌(Pneumococcus);連鎖球菌属(Streptococcus)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が含まれる。細菌において発現させられるとき、異種ポリペプチドは典型的には封入体の一部となることがさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは単離され、精製され、その後、機能的な分子に組み立てられなければならない。四価形態の抗体が所望される場合、そのサブユニットは四価抗体に自己集合するであろう(例えば、国際特許出願公開WO02/096948を参照のこと)。
細菌系において、多数の発現ベクターが、抗体分子が発現されるための意図される使用に依存して、都合よく選択される場合がある。例えば、多量のそのようなタンパク質が抗体分子の医薬組成物の作製のために産生させられることになるときには、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターには、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther他、EMBO J.2(1983)、1791)(この場合、抗体コード配列がlacZコード領域とインフレームでベクターに個々に連結され、その結果、融合タンパク質が産生されるようにされる場合がある);pINベクター(Inouye&Inouye、Nucleic Acids Res.13(1985)、3101〜3109;Van Heeke&Schuster、J.Biol.Chem.24(1989)、5503〜5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターもまた、外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために使用される場合がある。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズのマトリックスへの吸着および結合、その後の遊離したグルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子のプロテアーゼ切断部位を含み、その結果、クローン化された標的遺伝子産物がGST成分から放出され得るように設計される。
原核生物に加えて、真核生物の微生物もまた使用される場合がある。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち、普通のパン酵母が、真核生物の微生物の中で最も一般に使用されるが、多くの他の菌株が一般に利用可能である(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))。サッカロミセス属における発現のために、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb他、Nature 282(1979)、39;Kingsman他、Gene 7(1979)、141;Tschemper他、Gene 10(1980)、157)が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株(例えば、ATCC第44076号またはPEP4−1(Jones、Genetics 85(1977)、12))のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。その場合、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在により、形質転換をトリプトファンの不在下での成長によって検出するための効果的な環境が提供される。
昆虫系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が典型的には、外来タンパク質を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列がウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)の中に個々にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれる場合がある。
本発明の抗体分子が組換え発現させられると、本発明の完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖または他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインAの後での特異的抗原についてのアフィニティー、および、サイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈澱)、または、タンパク質の精製のためのいずれかの他の標準的な技術によることを含めて、この技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(例えば、Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982)を参照のこと)。代替では、本発明の抗体の親和性を増大させるための好ましい方法が米国特許出願公開第2002−0123057号A1に開示される。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、抗IAPP抗体または抗proIAPP抗体あるいはその免疫グロブリン鎖を調製するための方法であって、
(a)本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドまたはベクターを含む本明細書中上記で定義されるような宿主細胞を培養すること、および
(b)前記抗体またはその免疫グロブリン鎖を培養物から単離すること
を含む方法を提供する。
さらには、1つの実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドによってコードされる抗体またはその免疫グロブリン鎖、あるいは、抗IAPP抗体もしくは抗proIAPP抗体またはその免疫グロブリン鎖を調製するための前記方法によって得ることができる抗体またはその免疫グロブリン鎖に関連する。
V.融合タンパク質およびコンジュゲート
特定の実施形態において、抗体ポリペプチドは、通常の場合には抗体に付随しないアミノ酸配列あるいは1つまたは複数の成分を含む。例示的な改変が下記においてより詳細に記載される。例えば、本発明の単鎖Fv抗体フラグメントは柔軟なリンカー配列を含む場合があり、または、機能的成分(例えば、PEG、薬物、毒素または標識(例えば、蛍光性、放射性、酵素、核磁気性および重金属など))を付加するために改変される場合がある。
本発明の抗体ポリペプチドは融合タンパク質を含む場合があり、融合タンパク質から本質的になる場合があり、または、融合タンパク質からなる場合がある。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位を伴う免疫グロブリンのIAPP結合ドメインおよび/またはproIAPP結合ドメインと、少なくとも1つの異種部分、すなわち、自然界では生来的に連結されない部分とを含むキメラ分子である。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされる別個のタンパク質において正常に存在する場合があり、または、同じタンパク質において正常に存在する場合があるが、融合ポリペプチドにおいては新しい配置で置かれる。融合タンパク質が、例えば、化学合成によって、または、ペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出される場合がある。
用語「異種(の)」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに適用される場合、当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較されている実体の残部のものとは異なる実体に由来することを意味する。例えば、本明細書中で使用されるように、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体またはアナログに融合されるための“異種ポリペプチド”は、同じ種の非免疫グロブリンポリペプチド、あるいは、異なる種の免疫グロブリンポリペプチドまたは非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。
本明細書中の他のところでより詳細に議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はさらに、N末端またはC末端において異種ポリペプチドに組換え融合される場合があり、あるいは、ポリペプチドまたは他の組成物に化学的にコンジュゲート化される場合がある(共有結合によるコンジュゲート化および非共有結合によるコンジュゲート化を含む)。例えば、抗体が、検出アッセイにおいて標識として有用である分子に、また、エフェクター分子(例えば、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種または毒素など)に組換え融合されるか、またはコンジュゲート化される場合がある(例えば、国際特許出願公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号および欧州特許出願EP0396387を参照のこと)。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ペプチド結合または修飾型ペプチド結合(すなわち、ペプチドアイソスター)によって互いにつながれるアミノ酸から構成されることが可能であり、また、遺伝子によりコードされる20個のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含有する場合がある。抗体は、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシングなど)によって、または、この技術分野ではよく知られている化学的修飾技術によって改変される場合がある。そのような修飾が、基礎的な教本において、また、より詳しいモノグラフにおいて、ならびに、膨大な数の研究文献において十分に記載されている。修飾を、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含めて、抗体においてどこにでも、あるいは、炭水化物などの成分に対して行うことができる。同じタイプの修飾が、所与の抗体において、いくつかの部位において同じ程度または種々の程度で存在する場合があることが理解されるであろう。また、所与の抗体が多くのタイプの修飾を含有する場合がある。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、また、分岐を伴って、または伴うことなく、環状である場合がある。環状の抗体、分岐した抗体、および、分岐した環状の抗体が、翻訳後の天然のプロセスから生じる場合があり、または、合成的方法によって作製される場合がある。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合連結、ヘム成分の共有結合連結、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合連結、脂質または脂質誘導体の共有結合連結、ホスファチジルイノシトールの共有結合連結、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)、および、ユビキチン化が含まれる(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York、第2版(1993);Posttranslational Covalent Modification Of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1頁〜12頁(1983);Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626〜646;Rattan他、Ann.NY Acad.Sci.663(1992)、48〜62を参照のこと)。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体と、異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体のVH領域のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列、あるいは、本発明の抗体のVL領域またはそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVH−CDRまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列、あるいは、抗体のVL−CDRまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。1つの実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体のVH−CDR3またはそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含み、そのような融合タンパク質はIAPPおよび/またはproIAPPに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列と、本発明の抗体の少なくとも1つのVL領域またはそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVH領域およびVL領域は、IAPPおよび/またはproIAPPと特異的に結合する単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメントまたはFabフラグメント)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVHCDRのいずれか1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸配列と、抗体のVLCDRまたはそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ、2つ、3つまたそれ以上のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、VH−CDRまたはVL−CDRの2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上が、本発明の単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメントまたはFabフラグメント)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた本発明によって包含される。
文献に報告される例示的な融合タンパク質には、下記の融合物が含まれる:T細胞受容体(Gascoigne他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(1987)、2936〜2940);CD4(Capon他、Nature 337(1989)、525〜531;Traunecker他、Nature 339(1989)、68〜70;Zettmeissl他、DNA Cell Biol.USA 9(1990)、347〜353;およびByrn他、Nature 344(1990)、667〜670);L−セレクチン(ホーミング受容体)(Watson他、J.Cell.Biol.110(1990)、2221〜2229;およびWatson他、Nature 349(1991)、164〜167);CD44(Aruffo他、Cell 61(1990)、1303〜1313);CD28およびB7(Linsley他、J.Exp.Med.173(1991)、721〜730);CTLA−4(Lisley他、J.Exp.Med.174(1991)、561〜569);CD22(Stamenkovic他、Cell 66(1991)、1133〜1144);TNF受容体(Ashkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)、10535〜10539;Lesslauer他、Eur.J.Immunol.27(1991)、2883〜2886;およびPeppel他、J.Exp.Med.174(1991)、1483〜1489(1991));ならびにIgE受容体a(Ridgway and Gorman、J.Cell.Biol.115(1991)、アブストラクト番号:1448)。
本明細書中の他のところで議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ポリペプチドのインビボ半減期を増大させるために、または、この技術分野において知られている方法を使用する免疫アッセイにおける使用のために異種ポリペプチドに融合される場合がある。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の抗体に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる(例えば、Leong他、Cytokine、16(2001)、106〜119;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;またはWeir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512を参照のこと)。
そのうえ、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、マーカー配列(例えば、それらの精製または検出を容易にするためのペプチドなど)に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーのアミノ酸配列は、多くのものが市販されているが、とりわけ、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(HIS)であり、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)において提供されるタグなどである。例えば、Gentz他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)、821〜824に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製のために有用である他のペプチドタグには、「HA」タグ(これは、インフルエンザの赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する)(Wilson他、Cell 37(1984)、767)、GST、c−mycおよび「flag」タグが含まれるが、これらに限定されない(例えば、エピトープタグ化技術の総説については、Bill Brizzard、BioTechniques 44(2008)、693〜695を、また本発明において使用可能である最も一般的なエピトープタグを列挙するその694頁における表1を参照のこと。これらの主題は、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる)。
融合タンパク質を、この技術分野においてよく知られている方法を使用して調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号および第5,225,538号を参照のこと)。融合が行われるまさにその部位が、融合タンパク質の分泌または結合特性を最適化するために経験的に選択される場合がある。融合タンパク質をコードするDNAがその後、本明細書中上で記載されるように行われる発現のために宿主細胞にトランスフェクションされる。
本発明の抗体は非コンンジュゲート化形態で使用される場合があり、あるいは、例えば、分子の治療的性質を改善するために、標的検出を容易にするために、または、患者の画像化もしくは治療のために様々な分子の少なくとも1つにコンジュゲート化される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、精製が行われるときには精製前または精製後のどちらでも標識化またはコンジュゲート化することができる。特に、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬剤またはPEGにコンジュゲート化される場合がある。
従来の抗体を含む免疫毒素であるコンジュゲートがこの技術分野において幅広く記載されている。毒素が従来からのカップリング技術によって抗体にカップリングされる場合があり、または、タンパク質毒素部分を含有する免疫毒素を融合タンパク質として作製することができる。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素を例示するものが、Byers、Seminars Cell.Biol.2(1991)、59〜70、および、Fanger、Immunol.Today 12(1991)、51〜54によって記載される免疫毒素である。
当業者は、コンジュゲートがまた、コンジュゲート化されるための選択された薬剤に依存して様々な技術を使用して組み立てられ得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンとのコンジュゲートが、例えば、IAPP結合ペプチドおよび/またはproIAPP結合ペプチドをビオチンの活性化エステル(例えば、ビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)と反応することによって調製される。同様に、蛍光性マーカーとのコンジュゲートがカップリング剤(例えば、本明細書中に列挙されるカップリング剤)の存在下で調製される場合があり、または、イソチオシアン酸塩との反応によって、好ましくはイソチオシアン酸フルオレセインとの反応によって調製される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体のコンジュゲートが同様な様式で調製される。
本発明はさらに、診断剤または治療剤にコンジュゲート化される本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を包含する。抗体を、例えば、代謝疾患(例えば、T2D)の存在を明らかにして代謝疾患に罹る危険性を示すために、代謝疾患(すなわち、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの出現を示す疾患、あるいは、臨床検査手順の一部としての凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患)の発症または進行をモニターして、例えば、所与の処置療法および/または防止療法の効力を明らかにするために、診断的に使用することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能に標識される抗体に関連する。さらには、1つの実施形態において、本発明は、薬物に結合させられる抗体に関連する。検出を、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を検出可能な物質にカップリングすることによって容易にすることができる。検出可能な物質または標識は一般に、酵素、重金属(好ましくは金)、色素(好ましくは蛍光性色素または発光性色素)または放射性標識である場合がある。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光性物質、発光性物質、生物発光性物質、放射性物質、様々な陽電子放出断層撮影法を使用する陽電子放出金属、および、非放射性常磁性金属イオンが含まれる(本発明に従って診断剤として使用されるために抗体にコンジュゲート化することができる金属イオンについては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照のこと)。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;好適な蛍光性物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる;発光性物質の一例として、ルミノールが挙げられる;生物発光性物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる;好適な放射性物質の例として、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団および重金属からなる群から選択される検出可能に標識された抗体を提供する。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。化学発光標識された抗体の存在がその後、化学反応の経過の期間中に生じる発光の存在を検出することによって求められる。特に有用な化学発光性の標識用化合物の例が、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が検出可能に標識され得る方法の1つは、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を酵素に連結し、連結された生成物を酵素免疫アッセイ(EIA)において使用することによってである(Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.、Diagnostic Horizons 2(1978)、1〜7);Voller他、J.Clin.Pathol.31(1978)、507〜520;Butler、Meth.Enzymol.73(1981)、482〜523;Maggio,E.(編)、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1980);Ishikawa,E.他(編)、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo(1981))。酵素は、抗体に結合しているので、例えば、分光光度法的手段、蛍光定量法的手段または目視的手段によって検出することができる化学的成分を生成するような様式で、適切な基質(好ましくは発色性基質)と反応するであろう。抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。加えて、検出を、酵素のための発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出はまた、類似して調製された標準物との比較における基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成される場合がある。
検出はまた、様々な他の免疫アッセイのいずれかを使用して達成される場合がある。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を放射能標識することによって、抗体を放射免疫アッセイ(RIA)の使用により検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.、Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society(March、1986)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。放射性同位体を、ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィー(これらに限定されない)を含む手段によって検出することができる。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、蛍光放射金属(例えば、ランタニド系列の152Euなど)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化基を使用して抗体に結合させることができる。
様々な成分を抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体にコンジュゲート化するための技術がよく知られている;例えば、Arnon他、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld他(編)、243頁〜56頁、Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom他、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson他(編)、Marcel Dekker,Inc.、623頁〜53頁(1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications、Pinchera他(編)、475頁〜506頁(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin他(編)、Academic Press、303頁〜16頁(1985)、および、Thorpe他、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62(1982)、119〜158を参照のこと。
述べられたように、特定の実施形態において、結合性分子、例えば、結合性ポリペプチド、例えば、抗体またはその免疫特異性フラグメントの安定性または効力を高める成分をコンジュゲート化することができる。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の結合性分子に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる。Leong他、Cytokine、16(2001)、106;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;または、Weir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512。
VI.有用な組成物および方法
本発明は、本明細書中先に定義されるように、上記のIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子(例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメントまたは誘導体または変異体)、あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含む組成物に関連する。1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、かつ、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、インターロイキンまたはインターフェロンなど)を含む場合がある。凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの出現を示すか、あるいは、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる代謝疾患(例えば、T2D)の処置における使用のために、さらなる薬剤が、小さい有機分子、抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体、ならびに、それらの組合せからなる群から選択される場合がある。したがって、特定の好ましい実施形態において、本発明は、代謝疾患の予防的処置および治療的処置、代謝疾患の進行または代謝疾患の処置に対する応答を対象においてモニターすること、あるいは、代謝疾患を発症することについての対象の危険性を明らかにすることのための医薬組成物または診断組成物を調製するための、IAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたは前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の使用に関連する。
したがって、1つの実施形態において、本発明は、ランゲルハンス島におけるIAPPおよび/またはproIAPPの異常な蓄積および/または沈着によって特徴づけられる代謝疾患を処置する方法であって、その必要性のある対象に、本発明の上記のIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子、抗体、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つの治療有効量を投与することを含む方法に関連する。用語「代謝疾患」には、慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵臓ガンを含む、膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、糖尿病に至り得るかもしれない疾患を含む、T2Dに先行する代謝変化、T2Dを引き起こす代謝変化、および/または、T2Dと関連がある/T2Dに付随する代謝変化、あるいは、T2Dに結びつけられる代謝変化などの症状によって一般には特徴づけられる一群の障害;アルツハイマー病、ハンチントン病を含む、T2Dの危険性を増大させる疾患;肥満およびT2Dに結びつけられるか、または結びつけられない心臓血管疾患;ならびに/あるいは、T2Dそのものが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の治療的取り組みの特定の利点は、本発明の抗体が、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの出現を示すか、あるいは、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患(例えば、T2Dなど)の徴候を何ら有しない健康なヒト対象から得られるB細胞またはBメモリー細胞に由来し、したがって、ある程度の確率で、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することができる、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患の出現の危険性を減らすことができる、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患の発症または進行を遅らせることができるという事実にある。典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞変異、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による、標的のIAPP分子および/またはproIAPP分子に対する高親和性結合における選択性および有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。
そのような細胞は生体内において、例えば、ヒト体内において、自己免疫学的反応またはアレルギー反応の意味で、関連した、または他の生理学的なタンパク質または細胞構造によって、活性化されていないという認識はまた、臨床試験段階を首尾よく生き残る可能性が相当に増大したことがこれにより意味されるので、非常に医学的に重要である。いわば、効率、許容性および耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防的抗体または治療的抗体の前臨床開発または臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト抗IAPP抗体および/またはヒト抗proIAPP抗体は、治療剤としてのその標的特異的効率と、副作用のその低下した可能性との両方により、その臨床的な成功の可能性を著しく増大させることが予想され得る。
本発明はまた、上で記載された成分(例えば、本発明の抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体、その結合フラグメント、誘導体もしくは変異体、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞)の1つまたは複数により満たされる1つまたは複数の容器を含む医薬用および診断用のパックまたはキットをそれぞれ提供する。そのような容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められる形式での通知が伴い得る(そのような通知は、製造、使用または販売の当局によるヒト投与のための承認を反映する)。加えて、または、代替において、キットは、適切な診断アッセイにおいて使用されるための試薬および/または説明書を含む。本発明の組成物、例えば、キットは、当然のことながら、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの存在を伴う障害のリスク管理、診断、防止および処置のために特に好適であり、また、例えば、慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵臓ガンを含む、膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、糖尿病に至り得るかもしれない疾患を含む、T2Dに先行する代謝変化、T2Dを引き起こす代謝変化、および/または、T2Dと関連がある/T2Dに付随する代謝変化、あるいは、T2Dに結びつけられる代謝変化などの症状によって一般には特徴づけられる障害を処置するために;アルツハイマー病、ハンチントン病を含む、T2Dの危険性を増大させる疾患において;肥満およびT2Dに結びつけられるか、または結びつけられない心臓血管疾患において、ならびに/あるいは、T2Dそのものに対して特に適用可能である。
本発明の医薬組成物はこの技術分野においてよく知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野ではよく知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、よく知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与が、種々の方法によって、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、局所的投与または皮内投与あるいは脊髄送達または脳送達によって行われる場合がある。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤および等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液または他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpHおよび等張性状態に調節される。直腸投与または膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある。
投薬計画が主治医および臨床上の要因によって決定されるであろう。医療技術分野ではよく知られているように、どのような患者であれ、患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき具体的な化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、ならびに、同時に投与されている他の薬物を含めて、多くの要因に依存する。典型的な用量が、例えば、0.001μg〜1000μgの範囲(あるいは、この範囲における発現または発現阻害のための核酸の範囲)であり得る;しかしながら、この例示的な範囲よりも少ない用量または大きい用量が、とりわけ上述の要因を考慮して想定される。一般に、投薬量は、例えば、宿主体重の約0.0001〜100mg/kgの範囲が可能であり、より通常的には0.01〜5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)が可能である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重、あるいは、1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲において中間的である用量もまた、本発明の範囲内で意図される。対象には、そのような用量を毎日、1日おきに、毎週、または、経験的分析によって決定されるいずれかの他のスケジュールに従って投与することができる。例示的な処置は、例えば、少なくとも6ヶ月の長期間にわたる多数回の投薬での投与を伴う。さらなる例示的な処置計画は、2週間毎に1回、または、1ヶ月に1回、または、3ヶ月毎〜6ヶ月毎に1回での投与を伴う。例示的な投薬スケジュールには、連続した毎日での1〜10mg/kgまたは15mg/kg、1日おきでの30mg/kg、あるいは、毎週での60mg/kgが含まれる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれの抗体の投薬量が、示される範囲内である。進行を定期的な評価によってモニターすることができる。非経口投与のための調製物には、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁物およびエマルションが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、および、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)が挙げられる。水性キャリアには、生理的食塩水および緩衝媒体を含めて、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルションまたは懸濁物が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、流体および栄養補充液および電解質補充液(例えば、リンゲルブドウ糖に基づくものなど)などが含まれる。保存剤および他の添加剤もまた存在する場合がある(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスなど)。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、ドーパミンまたは精神薬理学的薬物など)を含む場合がある。
さらには、本発明の好ましい実施形態において、例えば、本発明の医薬組成物が抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体あるいはその結合フラグメント、誘導体または変異体を受動免疫化のために含むならば、医薬組成物はワクチンとして配合される場合がある。背景の節で述べられたように、いくつかの証拠が示しているが、凝集したIAPP種および/またはproIAPP種がT2Dの病理発生のための主要な誘因であることが示されており(Zraika他(2010)、Diabetologia 53(6):1046〜1056;Westermark他(2011)、Physiol.Rev.91(3):795〜826;Jurgens他(2011)、Am.J.Pathol.178(6):2632〜2640;Hoppener他(2008)、Exp.Diabetes Res.697035)、また、hIAPPの凝集を妨げる処置が糖尿病性の表現型を改善し、かつ、動物の寿命を増大させたことが示されている(Aitken他(2009)、Diabetes 59(1):161〜171)。したがって、本発明のヒト抗IAPP抗体および/またはヒト抗proIAPP抗体ならびに同等なIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子による受動免疫化は、背景の節で既に議論されたような能動免疫化療法概念のいくつかの有害な影響を回避することを助けるであろうと予想することは賢明である。したがって、本発明のこの抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体ならびにそれらの同等物は、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの存在を示すか、あるいは、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPによって引き起こされる疾患、例えば、慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵臓ガンを含む、膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、糖尿病に至り得るかもしれない疾患を含む、T2Dに先行する代謝変化、T2Dを引き起こす代謝変化、および/または、T2Dと関連がある/T2Dに付随する代謝変化、あるいは、T2Dに結びつけられる代謝変化などの防止または改善のためのワクチンとして;アルツハイマー病、ハンチントン病を含む、T2Dの危険性を増大させる疾患において;肥満およびT2Dに結びつけられるか、または結びつけられない心臓血管疾患において、ならびに/あるいは、T2Dそのものに対して特に有用であろう。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えの二重特異性構築物または多特異性構築物を使用することが有益である場合がある。参考については、Fischer and Leger、Pathobiology、74(2007)、3〜14を参照のこと。そのような二重特異性分子が、(例示的抗体のNI−203.26C11について上記で示されるようにIAPPおよびproIAPPに対して二重特異性である本発明の抗体とはほかに)、IAPPを一方の結合アームにより標的化し、かつ、糖尿病の病理発生において知られている別の実体(例えば、proIAPP)を第2のアームにより標的化するために設計されるかもしれない。あるいは、そのような二重特異性分子が、糖尿病の病理発生において知られている他の実体(例えば、IL−1βおよびIL−6など)を第2の結合アームと結合させるために、あるいは、ナトリウム−グルコース共輸送体−2(SGLT2)またはCD33を阻止することにより設計されるかもしれず、そのような介入は、適応可能な調節性T細胞の誘導によって糖尿病をNODマウスにおいて反転させると考えられる(Ablamunits他、Diabetes 61(2012)、145〜154;Belghith他、Nat Med 9(2003)、1202〜1208)。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えFabフラグメント(rFab)および単鎖フラグメント(scFv)を使用することが有益である場合がある。これは、それらがより容易に細胞膜に浸透するかもしれないからである。例えば、Robert他、Protein Eng.Des.Sel.(2008)(Oct 16);S1741−0134(これはオンライで事前に発表された)は、AβのN末端領域におけるエピトープを認識するモノクローナル抗体WO−2のキメラな組換えFabフラグメント(rFab)および単鎖フラグメント(scFv)の使用を記載する。操作されたフラグメントは、(i)アミロイド原線維化を防止することができ、(ii)事前に形成されたAβ1−42原線維を解凝集することができ、かつ、(iii)Aβ1−42オリゴマー媒介の神経毒性を完全なIgG分子と同じくらい効率的にインビトロで阻害することができた。エフェクター機能を欠く小さいFabおよびscFvの操作された抗体様式を使用することの認識された利点には、血液脳関門をより効率的に通過すること、および、炎症性の副反応を誘発する危険性を最小限に抑えることが含まれる。さらには、scFVおよび単鎖ドメイン抗体は全長抗体の結合特異性を保持することのほかに、それらは単一遺伝子として発現させることができ、また、折り畳み、相互作用、修飾、または、それらの標的の細胞内局在化の変化についての潜在的可能性が伴うが、細胞内抗体として哺乳動物細胞において細胞内に発現させることができる(総説については、例えば、Miller and Messer、Molecular Therapy、12(2005)、394〜401を参照のこと)。
異なる取り組みにおいて、Muller他、Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241は、抗体が、生細胞を傷づけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる技術基盤(いわゆる「SuperAntibody Technology」)を記載する。そのような細胞浸透抗体により、新しい診断範囲および治療範囲が開拓される。用語「TransMabs」がこれらの抗体のために案出されている。
さらなる実施形態において、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの出現に関連づけられる疾患を処置するために有用である他の抗体の共投与または逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる抗体が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる抗体の例には、CD33、SGLT2、IL−6およびIL−1を標的化する抗体が含まれるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる、ならびに/あるいは、糖尿病に関連づけられる疾患を処置するために有用である他の薬剤の共投与または逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのさらなる薬剤が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる薬剤の例には、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:インスリンおよびインスリンアナログ;インスリンシグナル伝達経路調節因子、例えば、プロテインチロシンホスファターゼ(PTPase)の阻害剤、非小分子模倣化合物、および、グルタミン・フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)の阻害剤、DPP−IV阻害剤、脱調節された肝臓グルコース産生に影響を及ぼす薬剤、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)の阻害剤のような薬剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)の阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)の阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニスト、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)の阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性エンハンサー、インスリン分泌エンハンサー、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃排出の阻害剤;グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体アゴニスト;スルホニルウレア剤;ビグアニド剤、例えば、メトホルミン;アルファ−グルコシダーゼ阻害剤;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)アゴニスト;メグリチニド剤;ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)IV阻害剤;PDE1、PDE5、PDE9、PDE10またはPDE11(PDE=ホスホジエステラーゼ)の阻害剤;アミリンアゴニスト(例えば、プラムリンチドおよび他のアミリンアナログ);シナモン;グルカゴン受容体アンタゴニスト;グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤;フルクトース−1,6−ビスホスファート阻害剤;カンナビノイド(CB1)受容体アンタゴニスト;抗肥満薬物、例えば、食欲抑制剤、満腹増大物質およびエネルギー消費増大薬物;抗炎症剤、または、それらの任意の組合せ。臨床での膵島移植の後における膵島拒絶を処置または防止するために使用されることがある薬剤の例には、シロリムス(ラパマイシン)、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムス)、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、FTY720、シクロスポリン、コルチコステロイド類および抗IL2受容体モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体アゴニスト(例えば、Noguchi他、Acta Med.Okayama、60(2006)、および、国際特許出願公開WO2012088157を参照のこと)を含む群の薬剤が含まれるが、これらに限定されない。したがって、1つの実施形態において、2型糖尿病(T2D)を処置するために、および/または、臨床での膵島移植の後における膵島拒絶を処置するか、もしくは防止することにおいて有用であるさらなる薬剤をさらに含む組成物が提供される。本発明の医薬組成物と同時に使用されることがある他の薬剤の例がこの技術分野において記載されている(例えば、国際特許出願公開WO2009005672、WO2010128092、WO2012088157または欧州特許出願EP11158212.8を参照のこと)。
治療効果的な用量または量は、症状または状態を改善するために十分である有効成分のそのような量を示す。そのような化合物の治療効力および毒性を、細胞培養または実験動物における標準的な薬学手順によって、例えば、ED50(集団の50%において治療効果的な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって求めることができる。治療効果と毒性影響との間における用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表すことができる。好ましくは、組成物における治療剤は、代謝障害(例えば、T2Dなど)の場合には正常な血糖制御および/またはインスリン応答を回復するか、または保つために十分である量で存在する。
前記から、本発明は、上記抗体の少なくとも1つのCDRを含むIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子のどのような使用をも包含し、特に、上で述べられるような凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患(例えば、T2D)の診断および/または処置のためのそのような分子の使用を包含することが明らかである。好ましくは、前記結合性分子は本発明の抗体またはその免疫グロブリン鎖である。加えて、本発明は、本明細書中先に記載されている述べられた抗体のいずれかの抗イディオタイプ抗体に関連する。これらは、抗原結合部位の近くにおいて抗体の可変領域に位置する独特の抗原性ペプチド配列に結合する抗体または他の結合性分子であり、例えば、対象から得られるサンプルにおける抗IAPP抗体および/または抗proIAPP抗体の検出のために有用である。したがって、1つの実施形態において、本発明は、本明細書中上記および下記で定義されるような抗体または前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するIAPP結合性分子および/もしくはproIAPP結合性分子、本明細書中で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物または診断組成物で、IAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害の予防的処置、治療的処置、および/または、そのような障害の進行もしくは処置に対する応答をモニターことにおいて使用されるための医薬組成物または診断組成物を提供し、この場合、好ましくは、障害が、下記のものを含む群から選択される:糖尿病のすべてのタイプ、例えば、1型糖尿病、妊娠糖尿病、糖尿病前症(高い血中糖血症がT2D閾値またはインスリン抵抗性に達する途中でないとき)、および、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)など;膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、糖尿病に至り得るかもしれないあらゆる疾患、例えば、慢性膵炎、嚢胞性線維症および膵臓ガンなど;T2Dの危険性を増大させるあらゆる疾患、例えば、糖尿病に伴うとして本明細書中で規定されているアルツハイマー病およびハンチントン病または他の神経変性疾患など;一般には、糖尿病を発症する危険因子としての、または、糖尿病の前に存在し得るかもしれない状態としての代謝症候群;一般には、糖尿病を発症する危険因子としての、または、糖尿病の前に存在し得るかもしれない状態としての膵島アミロイドーシス;一般には、糖尿病を発症する危険因子としての、または、糖尿病の前に存在し得るかもしれない状態としての肥満;肥満およびT2Dに結びつけられる、または結びつけられないあらゆる心臓血管疾患;糖尿病を発症する危険性もまた増大させることがあるT2Dの結果のすべて、例えば、心臓疾患、卒中、糖尿病性網膜症、腎不全、腎不全、ケトアシドーシスおよび非ケトン性高浸透圧性昏睡など。上記の障害群は、IAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害の群として示されるであろう。
別の実施形態において、本発明は、本発明の上記で記載されたIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子、抗体、抗原結合フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つと、場合により、検出のための好適な手段(例えば、免疫または核酸に基づく診断方法において従来から使用される試薬など)とを含む診断組成物に関連する。本発明の抗体は、例えば、抗体を液相において利用することができるか、または、固相キャリアに結合させることができる免疫アッセイにおける使用のために適している。本発明の抗体を利用することができる免疫アッセイの例が、直接的様式または間接的様式でのどちらであれ、競合的免疫アッセイおよび非競合的免疫アッセイである。そのような免疫アッセイの例が、放射免疫アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリーアッセイおよびウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原および抗体は多くの異なるキャリアに結合させることができ、また、それらに特異的に結合する細胞を単離するために使用することができる。よく知られているキャリアの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。キャリアの性質は本発明の目的のために可溶性または不溶性のどちらでも可能である。多くの異なる標識および標識化方法が当業者には知られている。本発明において使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光性化合物、化学発光化合物および生物発光化合物が含まれる(本明細書中上記で議論された実施形態もまた参照のこと)。
さらなる実施形態によって、IAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子はまた、特に、本発明の抗体はまた、血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、リンパサンプルまたはいずれかの他の体液サンプル(例えば、唾液サンプルまたは尿サンプルなど)である場合がある体液サンプルを検査された個体から得ること、および、体液サンプルを、抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件のもとで本発明の抗体と接触させることによって、障害を個体において診断するための方法において使用される場合がある。そのような複合体のレベルがその後、この技術分野において知られている方法によって求められ、コントロールサンプルにおいて形成されるレベルよりも有意に大きいレベルにより、疾患が、検査された個体において示される。同じ様式で、本発明の抗体が結合する特異的抗原もまた使用される場合がある。したがって、本発明は、結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むインビトロ免疫アッセイに関連する。
この関連において、本発明はまた、この目的のために具体的に設計される手段に関連する。例えば、抗体に基づくアレイが使用される場合があり、アレイには、例えば、IAPPおよび/またはproIAPPを特異的に認識する本発明の抗体またはその同等な抗原結合性分子が負荷される。マイクロアレイでの免疫アッセイの設計が、Kusnezow他、Mol.Cell Proteomics 5(2006)、1681〜1696において要約される。したがって、本発明はまた、本発明に従って特定されるIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子が負荷されるマイクロアレイに関連する。
1つの実施形態において、本発明は、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患を対象において診断する方法であって、IAPPおよび/またはproIAPPならびに/あるいは凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体、そのIAPP結合フラグメントおよび/またはproIAPP結合フラグメント、あるいは、その抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子を用いて、診断されるべき対象からのサンプルにおいて明らかにすることを含み、病理学的に凝集したIAPPおよび/またはproIAPPの存在により、前記対象における代謝障害(例えば、T2Dなど)が暗示され、また、生理学的なIAPPおよび/またはproIAPPのモノマー形態のレベルとの比較において、病理学的に凝集したIAPPおよび/またはproIAPPのレベルの増大により、前記対象における代謝障害の進行について暗示される方法に関連する。
診断されるべき対象は疾患について無症候性または病状発現前である場合がある。好ましくは、コントロール対象は、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患、例えば、慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵臓ガンを含む、膵臓に対する損傷を引き起こし、したがって、糖尿病に至り得るかもしれない疾患を含む、T2Dに先行する代謝変化、T2Dを引き起こす代謝変化、および/または、T2Dと関連がある/T2Dに付随する代謝変化、あるいは、T2Dに結びつけられる代謝変化;アルツハイマー病、ハンチントン病を含む、T2Dの危険性を増大させる疾患;肥満およびT2Dに結びつけられるか、または結びつけられない心臓血管疾患;ならびに/あるいは、T2Dそのものに関連づけられる疾患を有し、病理学的に凝集したIAPPおよび/またはproIAPPのレベルと、参照標準物との間における類似性により、診断されるべき対象は代謝障害を有するか、または、代謝障害を発症する危険性があることが示される。代替において、または、加えて、第2のコントロールとして、コントロール対象は代謝障害を有しておらず、生理学的なIAPPモノマーおよび/またはproIAPPモノマーならびに/あるいは凝集したIAPPおよび/またはproIAPPのレベルと、参照標準物との間における違いにより、診断されるべき対象は代謝障害を有するか、または、代謝障害を発症する危険性があることが示される。好ましくは、診断されるべき対象と、コントロール対象とは、年齢が一致している。分析されるべきサンプルは、病理学的に凝集したIAPPおよび/またはproIAPPを含有することが疑われる任意の体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、腹腔液、唾液または脳脊髄液(CSF)である場合がある。
生理学的なIAPPモノマーおよび/またはproIAPPモノマーならびに/あるいは生理学的に凝集したIAPPおよび/またはproIAPPのレベルが、例えば、IAPPおよび/またはproIAPPを、ウエスタンブロット、免疫沈殿、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、二次元ゲル電気泳動、質量分析法(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型MS(MALDI−TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化−飛行時間(SELDIーTOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)それに続くタンデム質量分析(MS/MS)、および、レーザーデンシトメトリーから選ばれる1つまたは複数の技術によって分析することを含む、この技術分野において知られているいずれかの好適な方法によって評価される場合がある。好ましくは、IAPPおよび/またはproIAPPの前記インビボ画像化は、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
IAPPおよび/またはproIAPPを検出するための抗体に基づく方法、ならびに、凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患(例えば、T2D)を診断するか、またはその進行をモニターするための方法、ならびに、本発明に従って適合化されることがある抗体および関連した手段を使用するそのような疾患の処置をモニターするための方法がまた、国際特許出願公開WO2003092619に記載される(その開示内容は参照によって本明細書中に組み込まれる)。それらの方法が、記載されるように適用される場合があるが、この場合には、本発明のIAPP特異的および/またはproIAPP特異的な抗体、結合フラグメント、誘導体または変異体が用いられる。
したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体またはその記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するIAPP結合性分子および/もしくはproIAPP結合性分子、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物または診断組成物が、IAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害の予防的処置、治療的処置、および/または、そのような障害の進行もしくは処置に対する応答をモニターすることにおける使用のために提供される。したがって、概して、本発明はまた、対象におけるIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害(例えば、膵島アミロイドーシス、および、通常の場合には膵島アミロイドーシスが先立つT2Dなど)を診断するか、またはその進行をモニターする方法であって、本発明の少なくとも1つの抗体あるいはその抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子を用いて、診断されるべき前記対象からのサンプルにおけるIAPPおよび/またはproIAPPのオリゴマー、凝集物または原線維の存在を明らかにすることを含み、IAPPおよび/またはproIAPPのオリゴマー、凝集物または原線維の存在により、その障害が暗示される方法に関連する。1つの実施形態において、対象における膵島アミロイドーシスを診断するか、またはその進行をモニターする前記方法であって、本発明の少なくとも1つの抗体あるいはその抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子を用いて、診断されるべき前記対象からのサンプルにおけるIAPPおよび/またはproIAPPのオリゴマー、凝集物または原線維の存在を明らかにすることを含み、IAPPおよび/またはproIAPPのオリゴマー、凝集物または原線維の存在により、前記対象における前駆症状性、前駆または臨床上の2型糖尿病(T2D)、および/あるいは、臨床での膵島移植の後におけるベータ細胞不全が暗示され、また、生理学的なIAPPのレベルに対する比較、または、健康なコントロール対象に由来する参照サンプル、もしくは、同じ対象に由来するコントロールサンプルに対する比較において、IAPPおよび/またはproIAPPのオリゴマー、凝集物または原線維のレベルの増大により、前記対象における前駆症状性、前駆または定着した2型糖尿病(T2D)、および/あるいは、臨床での膵島移植の後における膵島不全の進行について暗示される方法が提供される。1つの実施形態において、前記方法は、本明細書中上記で定義されるようなIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害の群からのいずれか他の障害を診断するか、またはその進行をモニターするために同様に使用されることが、当業者によって理解されるであろう。
上記で示されるように、本発明の抗体、そのフラグメント、および、本発明の抗体およびそのフラグメントと同じ結合特異性の分子は、インビトロだけでなく、インビボにおいても同様に使用される場合があり、診断的適用のほかに、治療的適用が同様に実行される場合がある。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、ヒトまたは動物の身体におけるIAPPおよび/またはproIAPPのインビボ検出のための組成物、あるいは、治療剤および/または診断剤をヒトまたは動物の身体においてIAPPおよび/またはproIAPPに対して標的化するための組成物を調製するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むIAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子に関連する。潜在的可能性のある治療剤および/または診断剤が、本明細書中上記で示されるような、代謝障害(例えば、T2D)の処置において有用である治療剤、および、潜在的可能性のある標識の非網羅的な列挙から選ばれる場合がある。インビボ画像化に関して、1つの好ましい実施形態において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記IAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子を提供し、前記インビボ画像化が、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。さらなる実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるように、対象におけるIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害を診断するか、またはその進行をモニターする方法において使用するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記IAPP結合性分子および/またはproIAPP結合性分子、あるいは、上記で指定されるインビボ画像化方法のための組成物を調製するための前記分子を提供する。
VII.凝集特異的なIAPPエピトープを有するペプチド
さらなる態様において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるIAPPおよび/またはproIAPPのエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、抗体、あるいは、1つまたは複数のアミノ酸が置換され、欠失され、および/または付加されるその改変された配列によって認識される独特な直鎖状エピトープとして、配列番号4、配列番号5または配列番号71に示されるようなアミノ酸配列を含むか、または、そのようなアミノ酸配列からなり、ペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは、抗体NI−203.19H8、抗体NI−203.26C11または抗体NI−203.15C7によってそれぞれ認識される。
本発明の1つの実施形態において、そのようなペプチドは、対象における凝集したIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる疾患(例えば、T2D)を診断するために、またはモニターするために使用される場合があり、前記対象の生物学的サンプルにおけるペプチドに結合する抗体の存在を明らかにする工程と、本発明の上記ペプチドを認識する抗体のレベルを測定すること、および、測定結果を、比較可能な年齢および性別の健康な対象において見出されるレベルに対して比較することによって前記対象におけるそのような疾患の診断のために使用される工程とを含む。したがって、1つの実施形態において、本発明は、前駆症状性もしくは臨床上の2型糖尿病(T2D)、および/または、臨床での膵島移植の後におけるベータ細胞不全が対象において暗示される膵島アミロイドーシスを診断するための方法であって、上記で定義されるようなペプチドに結合する抗体の存在を前記対象の生物学的サンプルにおいて明らかにする工程を含む方法に関連する。この方法によれば、本発明の前記ペプチドについて特異的である測定された抗体の上昇したレベルが、前駆症状性もしく臨床上の2型糖尿病(T2D)、および/または、臨床での膵島移植の後におけるベータ細胞不全を前記対象において診断するために示され、あるいは、本明細書中上記で定義されるようなIAPPおよび/またはproIAPPに関連づけられる障害の群からのいずれかの他の疾患を前記対象において診断するために示される。本発明のペプチドは、本明細書中先に記載されるように、アレイ、キットおよび組成物においてそれぞれ配合される場合がある。この関連において、本発明はまた、膵島アミロイドーシスを診断するか、またはその進行をモニターすることにおいて有用なキットであって、本発明の少なくとも1つの抗体またはその抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するIAPP結合性分子および/もしくはproIAPP結合性分子、本明細書中上記でそれぞれ定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞および/またはペプチドを、必要な場合には使用のための試薬および/または説明書と一緒に含むキットに関連する。
これらの実施形態および他の実施形態が本発明の記載および実施例によって開示され、また、包含される。本発明に従って用いられるための材料、方法、使用法および化合物のいずれか1つに関するさらなる文献が、例えば、電子デバイスを使用して、公開されている図書館およびデータベースから検索され得る。例えば、公開されているデータベースの「Medline」が利用され得る(このデータベースは国立バイオテクノロジー情報センターおよび/または国立衛生研究所の国立医学図書館によって提供される)。さらなるデータベースおよびウェブアドレスが、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)(これは欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である)のデータベースなどが当業者には知られており、これらもまた、インターネット検索エンジンを使用して得ることができる。バイオテクノロジーにおける特許情報、ならびに、遡及的検索および現在の認識のために有用な特許情報の関連原典の調査の概略が、Berks、TIBTECH 12(1994)、352〜364に示される。
上記開示は本発明を概して記載する。別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用される。完全な書誌的引用が請求項の直前において明細書の最後に見出される場合がある。すべての引用された参考文献(本出願明細書を通して引用されるような文献参照物、発行された特許、公開された特許出願、および、製造者の仕様書、説明書などを含む)の内容が、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる;しかしながら、どのような文書であれ、引用される文書は実際に本発明に関して先行技術であることを何ら認めるものではない。
より完全な理解を、例示のみの目的のために本明細書中に提供され、かつ、本発明の範囲を限定するために意図されない下記の具体的な実施例を参照することによって得ることができる。
実施例1:ヒトIAPP抗体の標的および結合特異性の確認
IAPPを単離された抗体の認識された標的として確認するために、直接的ELISAアッセイを行った。例示的な組換えヒト抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3について、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を炭酸塩のELISA被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)で10μg/mlの濃度に希釈されるヒトIAPP溶液またはBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆し、抗体の結合効率を試験した。重要なことに、ELISAアッセイのために使用されるヒトIAPP溶液は、電子顕微鏡法によって示されるようにIAPP原線維を含有していた(図3Aを参照のこと)。例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3はELISAによってヒトIAPP原線維に特異的に結合する。結合がBSAに対しては何ら認められない(図3Bを参照のこと)。同じ特徴がNI−203.19F2およびNI−203.15C7の各抗体に当てはまるようである。
例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3の50%最大有効濃度(EC50)を求めるために、様々な抗体濃度によるさらなる直接的ELISA実験を行った。96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を炭酸塩のELISA被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)で10μg/mlの濃度に希釈されるヒトIAPP溶液およびヒトproIAPP溶液により被覆し、抗体の結合効率を試験した。ELISAアッセイのために使用されるヒトIAPP溶液はIAPP原線維を含有するが、ヒトproIAPPは、電子顕微鏡法によって明らかにされるように、大きい凝集物を溶液中で形成した(図4Aを参照のこと)。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgGγ抗体(Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)を使用して求め、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。
EC50値を、GraphPad Prism(San Diego、米国)ソフトウエアを使用する非線形回帰によって推定した。組換えヒト由来抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3はヒトIAPP原線維に対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、9nM、22nM、6nMおよび4nMである。加えて、NI−203.26C11はまた、凝集したヒトproIAPPに結合し、EC50がナノモル濃度の範囲(260nM)である(図4Bを参照のこと)。
実施例2:非原線維性ヒトIAPPに対してではなく、したがって、立体配座エピトープに好ましくは結合する、ヒトIAPP原線維に対する抗体特異性
例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3の、立体配座エピトープに対する結合能を明らかにするために、直接的ELISA実験を、炭酸塩のELISA被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)で10μg/mlの濃度に希釈されるヒトIAPP溶液およびヒト非原線維性IAPP溶液を用いて行い、抗体の結合能を試験した。ELISAアッセイのために使用されるヒトIAPP溶液はIAPP原線維を含有するが、ヒト非原線維性IAPP溶液は、電子顕微鏡法によって明らかにされるように、IAPP原線維を欠いており、小さい無定形の凝集物を示しただけであった(図5Aを参照のこと)。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgGγ抗体(Jackson immunoResearch、Newmarket、英国)を使用して求め、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。
組換え抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3は、IAPP原線維に対する高い親和性結合を、IAPP溶液による被覆を行ったときに示し(図5B)、これは以前に認められた通りであった(図4)。親和性の喪失が、IAPP原線維と比較したとき、非原線維性IAPPに対して認められ(図5B)、したがって、このことから、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.8E3の各抗体のIAPP原線維に対する優先的な結合が明らかにされた。予備的な結果は、抗体NI−203.19F2および抗体NI−203.15C7について、上で記載されるのと同じ影響を示す。
これらの発見は、生理学的なヒトIAPPタンパク質立体配座に存在する直鎖状エピトープとは対照的に、大部分が露出しており、かつ、IAPP原線維形成のときには接近可能である、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の抗体結合エピトープを強く示している。病理学的なIAPP原線維がT2D患者の膵島において認められる。NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の抗体は、治療的に関連がある病理学的なヒトIAPP原線維に対する際立った結合を示すので、これらのヒト由来抗体はT2Dにおいて治療的可能性を有する。
実施例3:NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の各抗体の結合エピトープの評価
例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.8E3、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の結合エピトープを明らかにするために、ペプスキャン(pepscan)およびアラニンスキャン分析を、ヒトIAPPアミノ酸配列の全体にわたって位置する重複するペプチド、および、proIAPPの最初の22アミノ酸におけるアラニン置換を用いて行った。抗体の結合能を、ニトロセルロースメンブラン(JPT Peptide Technologies、Berlin、ドイツ)にスポットされるこれらのペプチドに対して、HRPコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgGγ二次抗体(Jackson immunoResearch、Newmarket、英国)を使用して試験し、その後、HRP活性を検出した(図6A)。
組換え抗体のNI−203.19H8、NI−203.26C11およびNI−203.15C7(1μg/ml)は、ヒトIAPPにおける配列19−SSNNFGA−25(配列番号4)、2−CNTATCA−8(配列番号5)および10−QRLANFLVHS−19(配列番号71)に対する結合を示した(図6Aおよび図6B)。したがって、これらの配列はこれらの抗体の推定される結合エピトープ配列に対応する。組換え抗体のNI−203.9A2、NI−203.8E3およびNI−203.19F2(1μg/mlおよび10μg/ml)のエピトープは特定されていない。
実施例4:コントロール患者においてではなく、2型糖尿病と診断される患者の膵臓における病理学的なIAPP原線維に対する、NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の各抗体の結合
2型糖尿病(T2D)と診断される2名の患者のパラフィン包埋された膵臓切片を、ThioS染色およびコンゴーレッド染色のときに認められる膵島におけるアミロイド負荷に基づいて選択し、続いて、NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の例示的抗体の結合特徴づけのために使用した。2型糖尿病と診断されない患者のパラフィン包埋された膵臓切片をコントロールとして使用した。ギ酸前処理の後、切片をヒト抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11(5nMおよび50nM)またはマウスモノクローナル抗IAPP抗体(1:100;Abcam、Cambridge、英国)とインキュベーションし、その後、ビオチン化されたロバ抗ヒト二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)またはビオチン化されたヤギ抗マウス二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)とインキュベーションした。抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、ジアミノベンジジン基質(Thermo Fisher Scientific、米国)により検出した。アビジン/ビオチンブロッキング(Avidin/Biotinブロッキングキット、Vector Laboratories、米国)のとき、膵島β細胞を、ビオチン化されたロバ抗モルモット二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch Laboratories、米国)にカップリングされるポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:5;Dako、米国)を使用して可視化し、抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、アルカリホスファターゼ基質(Vector Laboratories、米国)により検出した。
第1のT2D患者は、ThioS染色およびコンゴーレッド染色によって可視化されるように、病理学的なIAPP原線維に対応する膵島における大きいアミロイド沈着物を示した(図7A)。NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11のヒト抗体は、これらのアミロイド陽性切片に対する際立った膵島染色を示した(図7B)。抗体染色が5nMにおいて認められ、50nMにおいて増大し、二次抗体のみを用いた場合には染色は何ら認められず、このことから、これらのヒトIAPP抗体の特異的な結合が示唆された。これらの発見が、アミロイド沈着物を膵島において示す第2のT2D患者で確認された(データは示されず)。対照的に、NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11のヒト抗体は、染色を、アミロイド沈着物を欠く第3のT2D患者からの膵島において何ら示しておらず(図7Cおよび図7D)、また、T2Dと診断されないコントロール患者からの膵島において何ら示していなかった(図8)。市販されているマウスモノクローナル抗IAPP抗体は、非糖尿病性コントロール患者からの膵島における生理学的なIAPPを染色した(図8を参照のこと)。本発明の抗体はまた、膵島のアミロイド沈着物を示す糖尿病性ネコの膵臓において陽性の結果を与えた(図9を参照のこと)。同じ結合性質が、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の各抗体に当てはまるようである。
これらのデータは、NI−203.9A2、NI−203.19H8、NI−203.26C11、NI−203.19F2およびNI−203.15C7の各抗体が、病理学的なIAPP原線維を特異的に認識し、かつ、これらの抗体の生化学的な結合性質と一致しており、これらの抗体はインビトロにおけるIAPP原線維に対する強い結合特異性を示すこと(図5)を明らかにする。
実施例5:NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の抗体は、アルツハイマー病と診断される患者の脳における病理学的なAβアミロイドに交差反応しない
アルツハイマー病と診断される患者のパラフィン包埋された脳切片を使用して、例示的抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の交差反応性を評価した。ギ酸前処理の後、切片をヒト抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11(50nM)またはマウスモノクローナル抗βアミロイド抗体6E10(1:2000;Covance、Allschwill、スイス)とインキュベーションし、その後、ビオチン化されたロバ抗ヒト二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)またはビオチン化されたヤギ抗マウス二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)とインキュベーションした。抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、ジアミノベンジジン基質(Thermo Fisher Scientific、米国)により検出した。
NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の抗体は、抗βアミロイド特異的抗体6E10とは対照的に、アルツハイマー病のヒト脳における病理学的なAβアミロイドを認識しなかった(図10)。同じことがNI−203.19F2およびNI−203.15C7の各抗体に当てはまるようである。
これらのデータは、NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の抗体が病理学的なAβアミロイドに対して交差反応性でないことを明らかにする。よって、最も顕著なアミロイド形成タンパク質(アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、タウおよびTAR結合タンパク質43(TDP−43)を含むが、これらに限定されない)を含めて、誤った折り畳み/凝集傾向を有するいくつかのタンパク質候補物に対する、直接的ELISAによる、NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の各抗体の最小限の交差反応的結合も明らかにされている。
実施例6:マウスキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11の品質管理
例示的なマウスキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11を確認するために、直接的ELISAアッセイを上記のように行った。キメラ抗体を対応するヒト抗体と比較した。例示的な組換えキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11ならびにそれらの対応するヒト抗体について、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を炭酸塩のELISA被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)で10μg/mlの濃度に希釈されたヒトIAPP溶液またはBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆し、キメラ抗体およびヒト抗体の結合効率を試験した。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgGγ抗体(Jackson immunoResearch、Newmarket、英国)を使用して求め、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。重要なことに、ELISAアッセイのために使用されるヒトIAPP溶液は、電子顕微鏡法によって示されるようにIAPP原線維を含有していた(図3Aを参照のこと)。EC50値を、GraphPad Prism(San Diego、米国)ソフトウエアを使用する非線形回帰によって推定した。
NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11のマウスキメラ抗体はヒトIAPP原線維に対して高い親和性で結合し、EC50がそれぞれ、18.6nM、23.9nMおよび11.5nMである。結合はBSAに対しては何ら認められなかった。キメラ抗体の結合親和性はそれらのヒト対応物と類似しており、EC50が、NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11のヒト抗体についてはそれぞれ、9.4nM、22.9nMおよび6.8nMであった(図11を参照のこと)。
例示的なマウスキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11をさらに、2型糖尿病(T2D)と診断され、かつ、膵島のアミロイド沈着物を示す2名の選択された患者のパラフィン包埋された膵臓切片に対して確認した。ギ酸前処理の後、切片をキメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11(50nM)とインキュベーションし、その後、ビオチン化されたロバ抗ヒト二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)とインキュベーションした。抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、ジアミノベンジジン基質(Thermo Fisher Scientific、米国)により検出した。アビジン/ビオチンブロッキング(Avidin/Biotinブロッキングキット、Vector Laboratories、米国)のとき、膵島β細胞を、ビオチン化されたロバ抗モルモット二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)にカップリングされるポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:5;Dako、米国)を使用して可視化し、抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、アルカリホスファターゼ基質(Vector Laboratories、米国)により検出した。
NI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11のキメラ抗体は、2名のT2D患者からのアミロイド陽性切片における際立った膵島染色を示した(図12)。
これらのデータは、キメラ抗体のNI−203.9A2、NI−203.19H8およびNI−203.26C11が、それらのヒト対応物と同程度の効率で、病理学的なIAPP原線維を特異的に認識することを明らかにする(図12)。
実施例7:T2D動物モデルにおけるIAPP抗体および/またはproIAPP抗体の治療効果のインビボ確認
リード抗体候補物が、hIAPPを発現する2つの遺伝子組換えマウスモデルおよびラットモデルにおいて確認される:1)高脂肪食にさらされるh−IAPP(ヘミ接合性)/C57BL/6/DBAマウス(Hull他(2003)、Diabetes 52:372〜379);2)標準食にさらされるh−IAPP(ヘミ接合性)/Avy/Aマウス(Butler他(2003)、Diabetes 52:2304〜2314);3)標準食にさらされるh−IAPP(ホモ接合性)/CDラット(Butler他(2004)、Diabetes 53:1509〜1516)。治療効力が、膵臓におけるベータ細胞量およびhIAPPアミロイド負荷量ならびにhIAPPの血漿中レベルを求めることによって、また、グルコース代謝およびインスリン分泌の機能的試験によって評価される。
1)生理学的特徴づけ
II型糖尿病動物モデルの下記の生理学的特徴(i)〜(vii)が、本特許出願の抗体の適用が防止効果および/または治療効果を示すかどうかを調べるために試験される。
(i)血中グルコース:
T2D動物モデルの血中グルコースレベルが試験され、非処置の動物および(T2Dモデルでない)正常な系統の動物に対して比較される。
本明細書における「正常な系統のマウス」は特に限定されず、血中グルコースレベル、ウレア糖(urea sugar)およびインスリン分泌などにおいて何ら異常を示さない限り、どのようなマウスも可能である。「正常な系統のマウス」の好ましい例には、KORマウス、NCマウス、および、コンジェニックマウスを作製する際の反復親として使用される実験室マウス(例えば、C3H/Heマウス、BALB/cマウスおよびC57BL/6マウス)が含まれる。
本明細書における「正常な系統のラット」は特に限定されず、血中グルコースレベル、ウレア糖およびインスリン分泌などにおいて何ら異常を示さない限り、どのようなラットも可能である。
これらのマウスモデルおよびラットモデルにおける糖尿病は好ましくは、hIAPPの遺伝子組換え発現によって誘導されるので、好ましくは、遺伝子組換え動物の作製のために最初に使用された系統と同じ系統がコントロールとして使用される。
表現「正常な系統のマウス/ラットと比較して、より高い血中グルコースレベルを有する」は、空腹(絶食)時における血中グルコースレベル(血液におけるグルコース濃度)が空腹(絶食)時における正常な系統のマウス/ラットの血中グルコースレベルよりも高いことを意味する。130mg/dl以上、より好ましくは140mg/dl以上、さらに好ましくは200mg/dl以上、さらにより好ましくは300mg/dl以上の糖尿病性動物の血中グルコースレベルが、より高い血中グルコースとして分類される。さらに、用語「空腹(絶食)」は、本明細書中で使用される場合、マウス/ラットの絶食開始後約12時間での状態を意味する。
本発明において、「血中グルコースレベル」は、当業者に知られている従来からの方法によって、例えば、市販の測定装置(例えば、メディセーフリーダー;テルモ株式会社)を本明細書中下記の実施例に記載される方法に従って使用することによって測定することができる。
血中グルコースレベルの例示的な測定方法
対象動物の血中グルコースレベル(血中グルコース濃度)が、市販の測定装置(例えば、メディセーフリーダー;テルモ株式会社)を使用して測定される。この装置の測定原理は下記のように説明される。測定は比色分析に基づく。測定用チップが準備され、チップ上に、グルコースオキシダーゼおよびペルオキシダーゼが触媒として、また、4−アミノアンチピリンおよびN−エチル−N(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンが発色剤として置かれる。毛管現象により吸収される血液サンプルがこのチップに置かれると、血液中のグルコースがグルコースオキシダーゼによって酸化される。その後、チップ上の発色剤が、この時に生じる過酸化水素と、ペルオキシダーゼとによって酸化され、これにより、赤紫色が生じる。血液中のグルコースの量が、この色の濃淡の程度を測定することによって計算される。
ここでは、4μlの全血が血液サンプルとして対象動物から得られ、18秒の測定時間を使用して測定される。
(ii)グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)濃度:
II型糖尿病動物モデルが、増大した血中グリコシル化ヘモグロビン濃度について試験され、非処置のT2Dモデル動物および正常な非T2Dモデル動物に対して比較される。2.5%以上、2.6%以上、さらには2.8%以上、さらには3.0%以上の濃度が、増大した(増大している)として分類される。
「グリコシル化ヘモグロビン濃度」は、本明細書中で使用される場合、赤血球における、グルコースが結合しているヘモグロビン分子の割合を意味する。グリコシル化ヘモグロビン濃度は、糖尿病患者についての治療的管理の妥当性を判断するための指標として使用することができ、現時点での血糖レベルよりも、1ヶ月前〜2ヶ月前の血糖レベルとより良く相関することが知られている。
「グリコシル化ヘモグロビン濃度」は、当業者に知られている従来からの方法によって、例えば、市販の測定装置(例えば、DCA 2000 System;Bayer Medical Ltd.)を本明細書中下記の実施例に記載される方法に従って使用することによって測定することができる。より具体的には、例えば、上述のDCA 2000 Systemが測定装置として使用されるとき、総ヘモグロビンの量がチオシアン−メトヘモグロビン法によって測定され、グリコシル化ヘモグロビンの量がラテックス凝固阻害反応によって測定される。
(iii)尿糖:
コントロール動物およびT2Dモデル動物の尿糖がここでは試験される。
用語「尿糖のための試験において陽性」は、本明細書中で使用される場合、動物によって排泄される尿におけるグルコース濃度が100mg/dl以上であることを意味する。尿中グルコース濃度は、従来からの方法によって、例えば、市販のキット(例えば、プレテスト;和光純薬工業株式会社)を使用して、本明細書中下記の実施例に記載される方法によって測定することができる。具体的には、例えば、プレテストが測定用キットとして使用されるとき、動物の尿サンプルが最初にプレテストの試験紙に載せられ、30秒後に、−から+4にまで及ぶ5段階に分類するためのこのキットにおける指定されたカラーチャート表に従って判定が行われる。判定の結果から推定される尿中グルコース濃度は、+1については100〜250mg/dlであり、+2については250〜500mg/dlであり、+3については500〜2000mg/dlであり、+4については2000mg/dl以上である。+1およびそれ以上の判定結果が、「尿糖のための試験において陽性」であると評価される。
尿糖の例示的な測定方法
対象動物の尿中グルコース(尿糖)が、当業者に知られている方法によって、例えば、市販のキット(プレテスト;和光純薬工業株式会社)を使用することによって測定される。最初に、動物の尿サンプルが上述のプレテストの試験紙にブロットされ、30秒後に、−から+4にまで及ぶ5段階に分類するために指定される色彩表に従って判定が行われる。判定の結果から推定される尿中グルコース濃度は、+1については100〜250mg/dlであり、+2については250〜500mg/dlであり、+3については500〜2000mg/dlであり、+4については2000mg/dl以上である。+1およびそれ以上の判定結果が、「尿糖のための試験において陽性」であると評価される。
(iv)血中インスリン濃度:
II型糖尿病動物モデルの血中インスリン濃度が、非処置動物および非糖尿病性コントロール動物(正常な系統の動物)におけるレベルと比較され、非処置動物の血中インスリン濃度および非糖尿病性コントロール動物(正常な系統の動物)の血中インスリン濃度と同等であるか、または、それよりも高いかどうかが試験される。
血中インスリン濃度が「正常な系統の動物の血中インスリン濃度と同等であるか、または、それよりも高い」という表現は、空腹(絶食)時における血中インスリン濃度が、空腹(絶食)時における正常な系統の動物の血中インスリン濃度と同等であるか、または、それよりも高いこと、例えば、90pg/ml以上または110pg/ml以上であることを意味する。
本発明において、「血中インスリン濃度」は、従来からの方法によって、例えば、レビスインスリンアッセイキットUタイプ(株式会社シバヤギ)を本明細書中下記の実施例に記載される方法に従って使用することによって測定することができる。より具体的には、例えば、抗インスリンモノクローナル抗体(マウス)がプレートに固定化され、サンプル中のインスリンがプレートに結合させられ、その後、インスリンの別の部位を認識するビオチン標識された抗インスリンモノクローナル抗体がプレートと反応させられ、ペルオキシダーゼ−アビジンのコンジュゲートがさらに、ビオチンに結合させるためにプレートに加えられ、最後に、発色基質が、インスリンを発色によって測定するために加えられる。
血中インスリン濃度の例示的な測定方法
対象マウスの血中インスリン濃度が、当業者に知られている方法を使用して、例えば、市販のキット(レビスインスリンアッセイキットUタイプ;株式会社シバヤギ)に組み込まれる方法を使用して測定される。インスリン濃度が下記の様式で測定される。抗インスリンモノクローナル抗体がプレートに固定化され、サンプル中のインスリンがプレートに結合させられ、その後、ビオチン標識された抗インスリンモノクローナル抗体(これはインスリンの別の部分を認識する)が反応させられ、ペルオキシダーゼ−アビジンのコンジュゲートがさらに、ビオチンに結合させるためにプレートに加えられ、最後に、発色基質が、インスリンを発色によって測定するために加えられる。測定範囲が一般に、正常な動物(マウス)については39pg/ml〜2,500pg/mlである。
(v)耐糖能:
処置および非処置のT2Dモデル動物および正常な動物が、異常な耐糖能について試験される。
動物の耐糖能が正常または異常であるかどうかを、ブドウ糖負荷試験によって確認することができる。ブドウ糖負荷試験を、当業者に知られている従来からの手順に従って、例えば、グルコースを体重1グラムにつき2mgで絶食(少なくとも12時間)動物に腹腔内投与し、動物の血中グルコースレベルをブドウ糖負荷試験期間中の特定の時間で(例えば、240分にわたって15分毎に)測定することによって実施することができる。結果から、血中グルコースレベルが、正常なマウスについての血中グルコースレベルと比較して、経時的に低下する傾向を何ら示さないことが示されるとき、耐糖能は異常であると評価される。処置された動物における結果が、非処置動物についての結果と比較して、経時的に低下する傾向を示すとき、本発明の抗体による処置は有効であると分類される。
耐糖能の例示的な評価方法
対象動物の耐糖能がブドウ糖負荷試験によって評価される。
ブドウ糖負荷試験が、最初にグルコースを体重1グラムにつき2mgで12時間絶食動物に腹腔内投与し、その後、動物の血液(末梢血)におけるグルコースレベルを240分にわたって15分毎に測定することによって実施される。血中グルコースレベルが上述の方法によって測定される。結果から、血中グルコースレベルが、正常なマウスについての血中グルコースレベルと比較して、経時的に低下する傾向を何ら示さないことが示されるとき、耐糖能は異常であると評価される。非処置のT2Dモデル動物と比較して、処置されたT2Dモデル動物における経時的なより速い低下が、本発明の処置の効率を示すものとして評価される。
(vi)インスリン感受性:
処置動物および非処置のT2Dモデル動物および正常な動物が、異常なインスリン感受性について試験される。
動物のインスリン感受性が正常または異常であるかどうかを、インスリン感受性試験によって確認することができる。インスリン感受性試験を、当業者に知られている従来からの手順に従って、例えば、インスリンを体重1kgにつき0.5U〜0.85Uで絶食動物に腹腔内投与し、動物の血中グルコースレベルをインスリン感受性試験期間中の特定の時間で(例えば、240分にわたって15分毎に)測定することによって実施することができる。結果から、血中グルコースレベルが、正常なマウスについての血中グルコースレベルと比較して、経時的に低下する傾向を何ら示さないことが示されるとき、インスリン感受性は異常であると評価される。処置された動物における結果が、非処置動物についての結果と比較して、経時的に低下する傾向を示すとき、本発明の抗体による処置は有効であると分類される。
インスリン感受性の例示的な評価方法
対象動物のインスリン感受性がインスリン感受性試験によって評価される。
インスリン感受性試験は、最初にインスリンを体重1kgにつき0.5U〜0.85Uで12時間絶食動物に腹腔内投与し、その後、動物の血液(末梢血)におけるグルコースレベルを240分にわたって15分毎に測定することによって実施される。血中グルコースレベルが上述の方法によって測定される。結果から、血中グルコースレベルが、正常な動物についての血中グルコースレベルと比較して、経時的に低下する傾向を何ら示さないことが示されるとき、インスリン感受性は異常であると評価される。非処置のT2Dモデル動物と比較して、処置されたT2Dモデル動物における経時的なより速い低下が、本発明の処置の効率を示すものとして評価される。
(vii)その他:
多飲症および多尿症の評価
II型糖尿病モデル動物が、糖尿病発症後および本発明の抗体の処置の期間中、増大した水飲みおよび増大した排尿の傾向を示すことについて試験される。増大した水飲みの傾向を、例えば、飼育ケージに置かれる水差しにおける水量の減少速度を注意深くモニターし、正常な系統の動物についての減少速度、および、非処置動物のその減少速度と比較することによって確認することができる。さらに、増大した排尿の傾向を、例えば、飼育ケージにおける床シートの濡れの程度を観察し、前記で示されるように比較することによって確認することができる。
マウスにおける肥満傾向の有無の判定
処置および非処置のT2Dモデル動物および正常な動物の体重が測定され、比較される。非処置動物と比較して処置動物の低下した重量、ならびに/または、処置動物および正常な動物の同程度の重量が、本発明の処置の効率を示すものとして評価される。
2)組織病理学的検査
II型糖尿病動物、非処置のT2Dモデルコントロール、および、正常な動物の膵臓組織が、膵島(ランゲルハンス島)β細胞におけるアミリンのアミロイド沈着物についての実施例4の方法に従って固定処理され、パラフィンに包埋され、染色され、分析される。同様に、β細胞のアポトーシスおよびβ細胞の生存が、適切なマーカーを使用する免疫染色によって評価される(例えば、アポトーシスについてはTUNELおよび切断型カスパーゼ−3の染色、β細胞領域についてはインスリン染色)。非処置動物との比較における処置動物での膵島におけるアミロイド沈着物および/もしくはβ細胞アポトーシスの低下ならびに/またはβ細胞生存における増大、あるいは、処置動物および正常な動物における同程度のレベルが、本発明の防止的および/または治療的な方法の効率を示すものとして評価される。
3)動物の収容
II型糖尿病動物モデルは、SPF条件のもと、以前に記載された条件に従って維持される(Hull他(2003)、Diabetes 52:372〜379;Butler他(2003)、Diabetes 52:2304〜2314;Butler他(2004)、Diabetes 53:1509〜1516):6週齢において、h−IAPP(ヘミ接合性)/C57BL/6/DBAマウスが、膵島のアミロイド形成を促進させることが示される高脂肪食に割り当てられる(Hull他(2003)、Diabetes 52:372〜379)。