JP2020030435A - 薄膜形成材料、光学薄膜、及び光学部材 - Google Patents

薄膜形成材料、光学薄膜、及び光学部材 Download PDF

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Abstract

【課題】低屈折率の光学薄膜の製造方法、薄膜形成材料、光学薄膜及び光学部材を提供する。【解決手段】非酸化雰囲気中で薄膜形成材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、蒸着膜を形成する工程と、前記蒸着膜をpH2.5以上pH3.5以下の範囲である酸性物質を含む第1の酸性溶液に接触させ、空隙を有する第1の薄膜を得る工程を含み、前記薄膜形成材料が、酸化インジウムと、酸化ケイ素とを含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.23モル以上0.27モル以下である混合物を用いることを特徴とする光学薄膜の製造方法である。【選択図】図2

Description

本発明は、薄膜の製造方法、薄膜形成材料、光学薄膜、及び光学部材に関する。
カメラや望遠鏡のレンズ表面には、反射光を低減するために薄膜がコーティングされている。反射光の低減効果を単層膜にて得ようとする場合、被成膜物の屈折率の平方根の数値と近い数値となる屈折率を有する光学薄膜を、被成膜物の最表面に形成することが効果的である。広域の波長に対する反射防止効果を得る場合には、多層膜を形成する必要がある。そのような多層膜でも、斜入射光に対する反射防止効果を高めるには、被成膜物の平方根を下回る屈折率を有する薄膜が必要とされる。
被成膜物の平方根を下回る屈折率を有する薄膜を得るには、薄膜内に屈折率1.0の空気を含有することが有用であり、ゾルゲル法を含む様々な方法で空気を含有させた光学薄膜が提案されている。
例えば、特許文献1には、ガラス基板側から順に、真空蒸着法にて成膜したアルミナを主成分とする第1層と、真空蒸着法にて成膜したMgF及びSiOからなる群から選ばれた少なくとも1つの材料からなる第2層と、この第2層上にメソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる第3層を備えた反射防止膜が記載されている。
また、特許文献2には、基材上に、無機材料からなる無機下地層と、SiO等の無機酸化物を含む表面改質層と、表面改質層上に積層されたアクリル樹脂等のバインダーを含む密着層と、中空シリカ粒子がバインダーにより結着されてなる低屈折率層とを備えた反射防止膜が記載されている。
特許文献3には、フッ化マグネシウム(MgF)微粒子を分散させたゾル液と、非晶質酸化ケイ素系バインダー溶液とを混合した混合液を、基材に塗布して熱処理し、基材とMgF微粒子間が非晶質酸化ケイ素系バインダーにより結着されるとともに、MgF微粒子間に多数の空隙が形成された光学薄膜の製造方法が記載されている。
特開2010−38948号公報 特開2015−222450号公報 国際公開第2006/030848号
しかし、特許文献1から3に記載されている光学薄膜又は反射防止膜は、ゾルゲル法を利用して、微粒子とバインダーとを含むゾルをゲル化することで光学薄膜が形成されている。このゾルゲル法による薄膜の形成は大気中で行なわれるため、最表層よりも下層を真空中で形成した場合に、ゾルゲル法を行なうために大気開放されると異物が吸着されやすく、異物の除去を行なうことが必要となる問題がある。また、膜厚を精密に制御するためにはゾルの粘度の経時変化を厳密に管理することが必要であり、常時ゾルの粘度をモニターしながら薄膜を形成しなければならず、製造が煩雑となる場合がある。さらに、ディップコーティング法によりゾルを被成膜物に塗布する場合は過剰量のゾルが必要となり、スピンコーティング法によりゾルを被成膜物に塗布する場合は曲面へ均一な膜厚で塗布し難いという問題もある。
そこで、本発明の一実施形態は、上述したような課題を解決し、低屈折率の光学薄膜の製造方法、薄膜形成材料、光学薄膜及び光学部材を提供することを目的とする。
本発明は、以下の形態を包含する。
本発明の第一の実施形態は、非酸化雰囲気中で薄膜形成材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、蒸着膜を形成する工程と、前記蒸着膜をpH2.5以上pH3.5以下の範囲である酸性物質を含む第1の酸性溶液に接触させ、空隙を有する第1の薄膜を得る工程を含み、前記薄膜形成材料として、酸化インジウムと、酸化ケイ素とを含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下である混合物を用いることを特徴とする光学薄膜の製造方法である。
本発明の第二の実施形態は、酸化インジウムと、酸化ケイ素とを含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下の範囲で含まれる混合物であることを特徴とする薄膜形成材料である。
本発明の第三の実施形態は、酸化ケイ素を含み、屈折率が1.300以下であることを特徴とする光学薄膜である。
本発明の第四の実施形態は、酸化ケイ素を含み、シリカコートされてなる、屈折率が1.380以下であることを特徴とする光学薄膜である。
本発明の第五の実施形態は、前記光学薄膜と、被成膜物とを有する光学部材である。
本発明の一実施形態によれば、低屈折率の光学薄膜の製造方法、薄膜形成材料、光学薄膜及び光学部材を提供することができる。
図1は、本発明の実施例1の光学薄膜の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 図2は、本発明の実施例1の光学薄膜の断面のSEM写真である。
以下、本開示に係る光学薄膜の製造方法、薄膜形成材料、光学薄膜及び光学部材の一実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の一形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の光学薄膜の製造方法、薄膜形成材料、光学薄膜及び光学部材に限定されない。
薄膜の製造方法
本発明の一実施形態は、非酸化雰囲気中で薄膜形成材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、蒸着膜を形成する工程と、前記蒸着膜を、pH2.5以上pH3.5以下の範囲である酸性物質を含む第1の酸性溶液に接触させ、空隙を有する薄膜を得る工程とを含み、前記薄膜形成材料として、酸化インジウムと、酸化ケイ素とを含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下の範囲で含む混合物を用いる、薄膜の製造方法である。
薄膜形成材料
本発明の一実施形態に係る薄膜形成材料は、酸化インジウムと酸化ケイ素とを含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下の範囲で含まれる混合物である。
薄膜形成材料の原料に用いる酸化インジウムは、酸化インジウム(III)(In)であることが好ましい。酸化インジウム(III)(In)は、不可避的不純物を含んでいてもよい。原料として用いる酸化インジウム(III)(In)中、酸化インジウム(III)(In)の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
薄膜形成材料の原料に用いる酸化ケイ素は、主成分として一酸化ケイ素(SiO)であることが好ましい。本明細書において、「主成分として一酸化ケイ素(SiO)である」とは、原料の酸化ケイ素中、一酸化ケイ素(SiO)の含有量が50質量%以上であることを意味する。原料の酸化ケイ素中、一酸化ケイ素(SiO)の含有量は、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。
薄膜形成材料は、原料として酸化インジウム(III)(In)と、酸化ケイ素とを含み、酸化ケイ素の主成分として一酸化ケイ素(SiO)を含む混合物であり、薄膜形成材料中の酸化インジウム(III)(In)の含有量は、酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下の範囲である。この薄膜形成材料を用いて、非酸化雰囲気中で物理蒸着法により、二酸化ケイ素(SiO)と、酸化インジウム(I)(InO)とを含む蒸着膜を被成膜物に形成することができる。蒸着膜中には、極微量の酸化インジウム(III)(In)、及び/又はインジウム(In)を含む場合がある。薄膜形成材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)は、加熱により酸化インジウム(I)(InO)とインジウム(In)と酸素(O)に解離される。薄膜形成材料に含まれる一酸化ケイ素(SiO)は、一酸化ケイ素(SiO)の酸化の標準生成自由エネルギーが酸化インジウム(I)(InO)の酸化の標準生成自由エネルギーよりも低いため、優先的に酸素(O)と反応して二酸化ケイ素(SiO)を生成する。非酸化雰囲気中で薄膜形成材料を用いて蒸着膜を形成した場合であっても、酸化インジウム(III)(In)から解離した酸素(O)は、優先的に一酸化ケイ素(SiO)に吸収されて二酸化ケイ素(SiO)を生成する。そのため、蒸着膜中には一酸化ケイ素(SiO)がほとんど残存しない。蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させて得られた第1の薄膜(光学薄膜)は、体色が黒色である一酸化ケイ素(SiO)由来の可視光の吸収を生じない。また、薄膜形成材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)から解離した酸素(O)は、一酸化ケイ素(SiO)に吸収されて二酸化ケイ素(SiO)を生成するため、解離した酸化インジウム(I)(InO)のさらなる酸化による酸化インジウム(III)(In)の生成を抑えることができる。酸化インジウム(I)(InO)は、酸性物質に対する溶解性が非常に高いため、蒸着膜を、酸性物質を含む第1の酸性溶液に接触させることによって酸化インジウム(I)(InO)を優先的に溶出させ、所望の屈折率を満たす空隙を有し、骨格が二酸化ケイ素(SiO)によって構成された第1の薄膜(光学薄膜)を得ることができる。
酸化インジウム(III)(In)が解離して生成されたインジウム(In)は、酸化インジウム(III)(In)から解離した雰囲気中に含まれるインジウム(In)ガスの量が、3〜5体積%程度(「酸化物の熱力学」イ・エス・クリコフ著、日ソ通信社、p.146、1987年)であり、蒸着膜形成時に雰囲気中に極微量含まれる場合がある。
酸化インジウム(III)(In)から解離した蒸気中にインジウム(In)が存在する場合には、インジウム(In)が酸化インジウム(III)(In)へ酸化する標準生成自由エネルギーが、一酸化ケイ素(SiO)が二酸化ケイ素(SiO)へ酸化する標準生成自由エネルギーよりもさらに低いため、インジウム(In)が酸素と反応して再び生成された酸化インジウム(III)(In)が蒸着膜中に含まれる原因となる場合がある。
しかしながら、酸化インジウム(In)と酸化ケイ素(SiO)を含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下の範囲で含まれる薄膜形成材料を用いて形成した蒸着膜中には、後述するように、極微量の酸化インジウム(III)(In)及び/又はインジウム(In)しか含まれない。
蒸着膜中に酸化インジウム(III)(In)が存在する場合は、蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させて透明な第1の薄膜が得られた場合であっても、この第1の薄膜をさらにpH2.0以下の強酸性溶液に浸漬すると、第1の薄膜の屈折率が低下する。強酸性溶液に接触させた第1の薄膜の屈折率が低下する場合には、第1の薄膜中に酸化インジウム(III)(In)が残存していることが確認できる。蒸着膜中にインジウム(In)を含む場合には、蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させた際、薄膜の体色が黒色から灰色に変色し、その後透明になることから残存していることが確認できる。
薄膜形成材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)のモル比が、酸化ケイ素1モルに対して0.230未満であると、薄膜形成材料中の酸化インジウム(III)(In)が少なすぎて、蒸着膜中に酸化されない一酸化ケイ素(SiO)が残存する。蒸着膜中に一酸化ケイ素(SiO)が残存すると、蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させても一酸化ケイ素(SiO)が溶出せず、得られる第1の薄膜(光学薄膜)中に体色が黒色の一酸化ケイ素(SiO)が残存する。第1の薄膜(光学薄膜)中に一酸化ケイ素(SiO)が残存すると、第1の薄膜(光学薄膜)は、一酸化ケイ素(SiO)由来の可視光の吸収が高くなる原因となる。また、蒸着膜に酸化されない一酸化ケイ素(SiO)が残存すると、蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させても、蒸着膜から一酸化ケイ素(SiO)が溶出しないため、所望の空隙が形成されず、所望の屈折率を満たす空隙を有する第1の薄膜(光学薄膜)を形成することが困難となる。
薄膜形成材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)のモル比が、酸化ケイ素1モルに対して0.270を超えると、酸化インジウム(III)(In)の量が多すぎて、多くの酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が蒸着膜中に生成され、蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させた場合に、溶出される酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)の量が多すぎて、空隙が多くなりすぎ、骨格となる二酸化ケイ素(SiO)によって構成された第1の薄膜(光学薄膜)の強度が低下し、第1の薄膜が被成膜物から剥がれやすくなる。また、過剰な酸化インジウム(III)(In)からの解離により発生した過剰な酸素により、酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が酸化インジウム(III)(In)に酸化し、第1の薄膜の屈折率が上昇する虞がある。
薄膜形成材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)のモル比は、酸化ケイ素1モルに対して、0.230モル以上0.270モル以下の範囲であり、好ましくは0.240以上0.270モル以下の範囲であり、より好ましくは0.240以上0.265以下の範囲であり、さらに好ましくは0.250以上0.260以下の範囲であり、よりさらに好ましくは0.252以上0.258以下の範囲である。
薄膜形成材料は、酸化インジウム(III)(In)と、酸化ケイ素(SiO、SiO)とを、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下となるように混合して原料混合物とし、この原料混合物をプレス成形して成形物とした後、焼成して、焼結した混合物(焼結体)であることが好ましい。薄膜形成材料として焼結した混合物(焼結体)を用いることにより、物理蒸着法によって、薄膜形成材料が略均一に気化し、酸化インジウム(III)(In)の熱分解により生じた酸化インジウム(I)(InO)と、二酸化ケイ素(SiO)が略均一に混合した蒸着膜を被成膜物の表面に略均等に堆積させることができる。
原料混合物をプレス成形した成形物は、不活性雰囲気中で焼成することが好ましい。不活性雰囲気とは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)を雰囲気中の主成分とする雰囲気を意味する。不活性雰囲気は、必然的に不純物として酸素を含むことがあるが、本明細書において、雰囲気中に含まれる酸素の濃度が15体積%以下であれば不活性雰囲気とする。不活性雰囲気中の酸素の濃度は、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、更に好ましくは1体積%以下である。不活性雰囲気中の酸素の濃度は少ない程好ましく、よりさらに好ましくは0.1体積%以下、特に好ましくは0.01体積%以下であり、最も好ましくは0.001体積%以下(10体積ppm以下)である。原料混合物をプレス成形した固形物は、不活性雰囲気中で焼成することにより、薄膜形成材料中に余分な酸化物を可能な限り含まないようにすることができる。
原料混合物を焼成して焼結体とする温度は、好ましくは500℃以上900℃以下であり、より好ましくは600℃以上880℃以下であり、さらに好ましくは700℃以上850℃以下である。原料混合物を焼成する温度が上限値を超えると、酸化インジウム(III)(In)から還元された金属インジウム(In)が溶解、蒸発し、目的とした組成の薄膜形成材料を得ることができない。原料混合を焼成する温度が下限値未満であると、焼成して得られる焼結体の強度が不足するため蒸着中に熱応力により薄膜形成材料である焼結した混合物(焼結体)が割れる懸念がある。蒸着中に薄膜形成材料である焼結体が割れると、蒸発量が大きく変わってしまうため、安定した蒸着膜を成膜できない場合がある。
蒸着膜を形成する工程
本発明の一実施形態の製造方法は、非酸化雰囲気中で薄膜形成材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて蒸着膜を形成する。
物理蒸着法としては、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等が挙げられる。中でも、電子ビーム蒸着法又は抵抗加熱蒸着法、を用いることが好ましく、電子ビーム蒸着法を用いることがより好ましい。電子ビーム蒸着法又は抵抗加熱蒸着法は、大面積又は曲率半径の小さい曲面にも均一に蒸着膜を形成することができる。さらに電子ビーム蒸着法は、薄膜形成材料に電子ビームを直接照射して加熱するため熱効率がよく、高融点で熱伝導率の低い酸化物等の薄膜形成材料であっても効率良く気化させて、比較的短い時間で被成膜物に、薄膜形成材料の組成に基づく安定した組成を有する蒸着膜を形成することができる。さらに蒸着膜は、イオンアシストを用いて形成してもよい。イオンアシストを用いる場合には、蒸着膜の成膜時にアシストのためのイオン源を備え、イオン銃(イオンビーム)でガスイオンを被成膜物に加速して照射しながら蒸着膜を形成するイオンビームアシスト蒸着(Ion-beam Assisted Deposition:IAD)を用いてもよい。イオンビームアシストのためのイオン源は不活性ガスイオンであることが好ましい。イオンビームアシストのための不活性ガスイオンは、Arイオン又はHeイオンが挙げられ、好ましくはArイオンである。
薄膜形成材料中に含まれる一酸化ケイ素(SiO)は黒色の酸化物であるため、非酸化雰囲気中で蒸着膜を成膜すると体色が黒色である一酸化ケイ素(SiO)が蒸着膜中に含まれ、この蒸着膜を用いた薄膜が光学薄膜として利用できない場合がある。それにもかかわらず非酸化雰囲気中で蒸着膜を形成することとしたのは、一酸化ケイ素(SiO)を優先的に酸素と反応させて二酸化ケイ素(SiO)を生成させるとともに、酸性溶液に対して溶解性が低い酸化インジウム(III)(In)の生成を抑制することができるためである。一酸化ケイ素(SiO)は、酸化インジウム(I)(InO)よりも酸化しやすいため、薄膜形成材料中に含まれる酸化インジウム(III)(In)から解離した酸素により一酸化ケイ素(SiO)が優先的に酸化されて二酸化ケイ素(SiO)となる。一方、酸化インジウム(I)(InO)は酸化されにくく、酸化インジウム(I)(InO)が酸化された酸化インジウム(III)(In)は生成されにくい。
蒸着膜形成時の非酸化雰囲気は、不活性雰囲気、還元雰囲気、及び真空を含み、いずれか1つ以上の雰囲気であればよい。不活性雰囲気は、原料混合物をプレス成形した成形物を焼成する不活性雰囲気と同様に、雰囲気中に含まれる酸素の濃度が15体積%以下であれば不活性雰囲気をいう。還元雰囲気は、水素、一酸化炭素などを含む混合ガスを雰囲気の主成分とする雰囲気をいう。真空とは圧力が1.0×10−5Pa以上1.0×10−2Pa以下の雰囲気をいう。本明細書において、真空とは、不活性雰囲気の主成分となるアルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどの不活性ガス、又は、水素、一酸化炭素などを含む混合ガスを雰囲気中に導入せずに、圧力が1.0×10−5Pa以上1.0×10−2Pa以下であり、酸素の濃度が15体積%以下である雰囲気をいう。非酸化雰囲気が真空である場合、雰囲気中のガス成分の大部分は水蒸気である。
蒸着膜形成時の非酸化雰囲気が、水素、一酸化炭素を含む混合ガスを導入した還元性雰囲気又は真空であると、酸化ケイ素に対する酸化インジウム(In/SiO)のモル比が比較的高くなり、薄膜形成材料から生成される蒸気中の酸素量が増加した場合であっても、薄膜形成材料から生成された酸化インジウム(I)(InO)が酸化するよりも速く、雰囲気中の混合ガス中に含まれる水素もしくは一酸化炭素、又は真空中に含まれる水素の方が優先して酸化し、蒸着膜中の酸化インジウム(III)(In)の生成を抑制することができる。
蒸着膜形成時の非酸化雰囲気中の酸素濃度は、15体積%以下であればよく、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、更に好ましくは1体積%以下である。所望の屈折率を有する第1の薄膜を得るために、蒸着膜を成膜するときの非酸化雰囲気中の酸素の濃度は少ない程好ましく、よりさらに好ましくは0.1体積%以下、特に好ましくは0.01体積%以下であり、最も好ましくは0.001体積%以下(10体積ppm以下)である。蒸着膜形成時の非酸化雰囲気中の酸素濃度が高いと、雰囲気中の酸素によって、生成された酸化インジウム(I)(InO)及び/またはインジウム(In)が再び酸化して、蒸着膜中に酸化インジウム(III)(In)が生成されて、蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させても酸化インジウム(III)(In)が溶出せず、蒸着膜中の残存し、所望の低い屈折率を有する薄膜が得られない場合がある。酸化インジウム(III)(In)は、屈折率が約2.0程度と比較的高く、蒸着膜中に酸化インジウム(III)(In)が残存すると、所望の低い屈折率を有する薄膜が得られない。一方、蒸着膜形成時の非酸化雰囲気中の酸素濃度が低いと、雰囲気中の酸素が少ないため、薄膜形成材料から生成された酸化インジウム(I)(InO)が雰囲気中の酸素によって再び酸化されることを抑制することができ、蒸着膜中に酸化インジウム(III)が生成されることを抑制することができる。
蒸着膜形成時の非酸化雰囲気の圧力は、使用する物理蒸着法の種類によって異なる。物理蒸着法として、電子ビーム蒸着法を使用する場合には、被成膜物に蒸着膜を形成する際の雰囲気圧力は、好ましくは1.0×10−5Pa以上5.0×10−2Pa以下、より好ましくは1.0×10−5Pa以上1.0×10−2Pa以下、さらに好ましくは5.0×10−5Pa以上1.0×10−2Pa以下である。非酸化雰囲気が真空である場合は、不活性ガス又は混合ガスを雰囲気中に導入していない真空雰囲気の圧力が、1.0×10−5Pa以上1.0×10−2Pa以下であればよい。蒸着膜形成時の雰囲気圧力が前記範囲であると、薄膜形成材料から生成された酸化インジウム(I)(InO)が雰囲気中の酸素によって再び酸化されることを抑制することができ、蒸着膜中に酸化インジウム(III)(In)が生成されることを抑制することができる。蒸着膜形成時の非酸化雰囲気の圧力は、例えば、蒸着装置内にアルゴンなどの不活性ガス又は混合ガスを導入することによって制御することができる。
本発明の一実施形態の製造方法において、被成膜物は、ガラスから形成されたものであってもよく、プラスチックから形成されたものであってもよい。ガラスとしては、光学ガラスが挙げられる。プラスチックとしては、ポリエステル系、アクリル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリオレフィン系の樹脂が挙げられる。被成膜物の形態は、例えば平板状又は曲面を有するレンズ状の基板であってもよく、フレキシブルシートであってもよい。本発明の一実施形態の製造方法は、比較的低温でも蒸着膜の形成が可能であるので、耐熱性の低い材料から形成された被成膜物に対しても屈折率が低い光学薄膜を形成することができる。
第1の酸性溶液と接触させる工程
本発明の一実施形態の製造方法は、前記蒸着膜を、pH2.5以上pH3.5以下の範囲である酸性物質を含む第1の酸性溶液に接触させ、空隙を有する第1の薄膜を得る工程を含む。
薄膜形成材料として、酸化インジウムと酸化ケイ素を含み、酸化インジウムが酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下である混合物を用いて、物理蒸着法によって、被成膜物に形成された蒸着膜は、二酸化ケイ素(SiO)と、酸化インジウム(I)(InO)とを含む。これらの蒸着膜を構成する物質のうち、酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)は、酸性物質に対する溶解性が非常に高いため、第1の酸性溶液に含まれる酸性物質が弱酸性物質であっても、pH2.5以上pH3.5以下の範囲である第1の酸性溶液に蒸着膜を接触させることによって酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)を優先的に溶出させ、所望の屈折率を満たす空隙を有し、骨格が二酸化ケイ素(SiO)によって構成された第1の薄膜(光学薄膜)を得ることができる。
多層膜を形成するために、蒸着膜に、当該蒸着膜とは異なる他の組成の膜が積層されている場合であっても、第1の酸性溶液に含まれる酸性物質が弱酸性物質であるため、他の組成の膜に影響を与えることなく、蒸着膜中の酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)を溶出させて、二酸化ケイ素(SiO)の骨格が形成され、所望の空隙率を有する第1の薄膜(光学薄膜)を得ることができる。蒸着膜に積層される膜の組成としては、例えばアルミナを含む組成が挙げられる。
本発明の一実施形態の製造方法によって得られる第1の薄膜(光学薄膜)は、前記蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させることによって、溶出しやすい酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)を蒸着膜内からほぼ全て溶出させることができ、酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)の溶出によって骨格となる二酸化ケイ素(SiO)の間に空隙が生成され、空隙率が高く、屈折率の低い第1の薄膜を有する光学薄膜を形成することができる。
蒸着膜は、酸化インジウム(III)(In)及び/又はインジウム(In)を含む場合があるが、その場合であっても、蒸着膜に含まれる酸化インジウム(III)(In)及び/又はインジウム(In)の量は、第1の薄膜を、pH2.0以下の強酸性溶液に接触させた後に、第1の薄膜の屈折率が約0.01低下する程度の極微量である。第1の薄膜の屈折率が約0.01低下する程度の極微量とは、極微量の酸化インジウム(III)(In)と共に極微量の二酸化(SiO)が脱離して、第1の薄膜の空隙率が約3%増加する程度の量である。
蒸着膜中の二酸化ケイ素(SiO)の一部は、酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)に取り囲まれており、この酸化インジウム(I)に取り囲まれた二酸化ケイ素(SiO)の一部も、酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が蒸着膜から溶出する際に同時に蒸着膜から外れる場合がある。第1の薄膜をpH2.0以下の強酸性溶液に接触させると、第1の薄膜中に極微量含まれる酸化インジウム(III)(In)と共に、酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)に取り囲まれた極微量の二酸化ケイ素(SiO)が脱離して、第1の薄膜の屈折率が約0.01低下し、空隙率が約3%程度増加する。
酸化インジウム(I)(InO)は、体色が黒色であり、第1の薄膜(光学薄膜)に酸化インジウム(I)(InO)が残存していると、可視光を吸収する。例えば分光光度計で薄膜の吸収率{100−(透過率+反射率)}を測定することによって、薄膜が可視光を吸収した場合には薄膜の吸収率が上昇し、吸収率が上昇している場合には、薄膜中に酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が残存していることを確認することができる。
第1の酸性溶液に含まれる酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。酸性物質は、緩衝作用のある複数の酸解離定数を持つ酸が好ましく、弱酸性物質であるクエン酸、シュウ酸がより好ましい。緩衝作用の無い酸では、pHが上昇しやすいため酸処理時間が長時間必要になりやすい。
第1の酸性溶液のpHは、pH2.5以上pH3.5以下の範囲であり、好ましくはpH2.7以上pH3.2以下の範囲である。酸性物質を含む溶液のpHが2.5を下回ると、得られる第1の薄膜と被成膜物との密着性が低く、酸性物質を含む溶液と接触させた後に第1の薄膜が被成膜物から剥離する場合がある。第1の酸性溶液のpHが3.5を超えると、蒸着膜中に含まれる酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)の溶解速度が遅くなり、酸化インジウム(InO)及び/又はインジウム(In)を全て溶出させるまでに時間を要し、製造効率が低下するため、好ましくない。
蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させる温度は、室温であれば十分であり、室温は15℃以上28℃以下の範囲であり、好ましくは15℃以上25℃以下の範囲である。蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させる温度は、高いほど蒸着膜中の酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)の溶出を促進させることができ、接触時間を短縮することができるので、製造上好ましい。温度が高すぎると、第1の酸性溶液の溶媒が蒸発し、pHが下がってしまうため、密閉容器とするか、pHを常時監視し、調整するための設備が必要となるので、製造コストが高くなる虞がある。低すぎると、冷却装置が必要となる場合があるので製造コストが高くなる虞がある。
蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させる時間は、薄膜全体が透明になる時間であればよい。
蒸着膜を第1の酸性溶液に接触させる方法は、一般的には第1の酸性溶液中に蒸着膜を形成した被成膜物を浸漬させる方法や、被成膜物に形成された蒸着膜のみを第1の酸性溶液中に浸漬させる方法が挙げられる。蒸着膜を第1の酸性溶液に浸漬させる方法では、所定時間経過後に蒸着膜中の酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が溶出する。蒸着膜中の酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が溶出し、場合によっては酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)に覆われた二酸化ケイ素(SiO)が酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)と共に溶出することによって、空隙を有する薄膜が得られる。
第1の薄膜:光学薄膜
本発明の一実施形態の方法によって製造された第1の薄膜は、酸化ケイ素を含み、屈折率が1.300以下の光学薄膜である。第1の薄膜(光学薄膜)は、二酸化ケイ素(SiO)と酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)とを含む蒸着膜から酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が溶出されてなる空隙を有し、二酸化ケイ素(SiO)を骨格とする、屈折率が1.300以下の光学薄膜である。第1の薄膜(光学薄膜)は、好ましくは屈折率が1.250以下、より好ましくは屈折率が1.200以下、さらに好ましくは屈折率が1.170以下である。第1の薄膜(光学薄膜)は、蒸着膜を構成する酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が溶出して空隙が多数形成され、溶出されずに残った二酸化ケイ素(SiO)が骨格となって構成される。第1の薄膜には、骨格を構成する二酸化ケイ素(SiO)の他に、極めて僅かな量の酸化インジウム(III)(In)を含む場合があり、その含有量は、第1の酸性溶液で処理した後の第1の薄膜を、pH2.0以下の強酸性溶液に接触した後の第1の薄膜の屈折率が約0.01低下する量である。
光学薄膜である第1の薄膜は、屈折率が1.300以下なので、可視域全体にわたり反射防止効果を高めることができる。
光学薄膜の屈折率は、分光光度計で反射スペクトルを測定し、入射光強度を100としたときの反射光強度の極小値を反射率として測定し、この測定した反射率の極小値からフレネル係数を用いて算出することができる。
光学薄膜である空隙を有する第1の薄膜は、空隙率が30%以上90%以下の範囲であることが好ましい。第1の薄膜の空隙率が30%以上であれば薄膜の屈折率を低くすることができ、90%以下であれば、被成膜物上に形成した薄膜を維持する強度を有しつつ、薄膜の屈折率を低くすることができる。光学薄膜である第1の薄膜は、空隙率が、より好ましくは40%以上90%以下の範囲であり、さらに好ましくは50%以上90%以下の範囲であり、よりさらに好ましくは60%以上85%以下の範囲である。光学薄膜の空隙率(全気孔率Vp)は、後述する実施例に基づき、Lorenz-Lorenz式を用いて求めることができる。
第1の薄膜がシリカコートをされた第2の薄膜を得る工程
本発明の一実施形態に係る製造方法は、前記第1の薄膜の表面を、シリカコート形成材料でコーティングした後に熱処理して第2の薄膜を得る工程を含む。第2の薄膜は、被成膜物に形成された第1の薄膜がシリカコートされてなるものであり、第1の薄膜と第1の薄膜をコートするシリカとを含むものである。本発明の一実施形態に係る製造方法において、空隙を有する第1の薄膜に全体にシリカコートが形成されるように、シリカコート形成材料を第1の薄膜の表面にコーティングした後、熱処理することが好ましい。
シリカコート形成材料は、シリコンアルコキシドを含むことが好ましい。シリカコートは、ゾルゲル法によって形成されるものであることが好ましい。シリコンアルコキシドは、アルコキシル基を2つ以上有するシラン化合物であることが好ましく、具体的にはジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトライソプロポキシシラン、及びテトラブトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
シリカコート形成材料は、成膜を良好とするために、溶媒を含むことが好ましく、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサンノン、イソホロン等のケトン類が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シリカコート形成材料は、好ましくはシリコンアルコキシドと溶媒とを含み、さらに第2の酸性溶液が添加されたものであることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、前記シリカコート形成材料がシリコンアルコキシドを含むものである場合、シリコンアルコキシドを加水分解するためにシリカコート形成材料に第2の酸性溶液を添加することを含み、前記第2の酸性溶液のpHがpH0.8以上pH1.8以下の範囲であることが好ましく、より好ましくはpH1.0以上pH1.5以下である。
前記シリカコート形成材料に添加する第2の酸性溶液は、pHがpH0.8以上pH1.8以下の範囲であれば、シリカコート形成材料中にシリコンアルコキシドが含まれる場合、シリコンアルコキシドを加水分解させ、その後脱水縮合させることができる。第1の薄膜の表面をシリカコート形成材料でコーティングすることによって、第1の薄膜の表面がシリカコートされてなる、第2に薄膜を得ることができる。第2の薄膜は、第1の薄膜とこれにコートされたシリカとを含み、十分な膜強度を持たせることができる。シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液のpHが、pH0.8未満若しくはpH1.8を超えると、加水分解中にシリコンアルコキシドの加水分解によって生成された粒子の粒子成長が促進されすぎて、第1の薄膜の表面を覆うようにシリカコートされにくくなる。シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液に含まれる酸性物質は、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
シリカコート形成材料をコーティングする方法は、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、印刷法が挙げられる。
第1の薄膜の表面にシリカコート形成材料をコーティングした後、熱処理する温度は、シリカコートを形成可能な温度であればよく、250℃以上350℃以下が好ましく、280℃以上320℃以下がより好ましい。又、熱処理する時間は、シリカコートを形成可能な時間であればよく、好ましくは0.5時間以上3時間以下であり、さらに好ましくは0.5時間以上2時間以下である。
第1の薄膜がシリカコートをされてなる第2の薄膜:光学薄膜
第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜は、酸化ケイ素を含み、屈折率が1.380以下であることが好ましい。
光学薄膜である第2の薄膜は、第1の薄膜の骨格となる酸化ケイ素(SiO)の表面を覆うようにシリカコートされてなるものである。第1の薄膜の骨格となる酸化ケイ素(SiO)は空隙を有するため、表面が網目状になっていると推測され、この表面に沿ってシリカがコートされると推測される。光学薄膜である第2の薄膜は、第1の薄膜の表面がシリカコートされてなるため、十分な膜強度を有する。
また、光学薄膜である第2の薄膜は、屈折率が1.380以下と低く、従来の低屈折材料として知られているフッ化マグネシウム(MgF)の屈折率である1.380と同等以下の屈折率となる。第2の薄膜は、屈折率が1.380以下と低いので、例えば光学ガラス又はプラスチックを被成膜物とした場合、被成膜物の屈折率の平方根(約1.200から約1.300)に近い値となり、反射防止効果を高めることができる。第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜の屈折率は、好ましくは1.380以下、より好ましくは1.300以下、さらに好ましくは1.250以下、よりさらに好ましくは1.200以下である。
光学部材
本発明の一実施形態の光学薄膜と、被成膜物とを備えた光学部材は、天体望遠鏡、眼鏡レンズ、カメラ、バンドパスフィルター、ビームスプリッター等の光学ピックアップ部品を備えたディスクドライブ装置、高精細の液晶パネルを備えた表示装置等の光学部材として利用することができる。また、光学薄膜を発光装置の外部への光の取り出し部分に適用することで、発光装置から外部へ光の射出を促進させ、光の取り出し効率の向上や発熱の軽減を期待することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
薄膜形成材料の製造
酸化インジウム(III)粉末(In)(純度:99.99質量%)160gと、一酸化ケイ素粉末(SiO)(純度:99.9質量%)100gとを1Lのナイロンポットに投入し、これらの粉末とともに直径20mm(φ20)のナイロンボールを投入し、凝集物をほぐしながら30分混合し、原料混合物を得た。酸化ケイ素1モルに対する酸化インジウムのモル比(In/SiOモル比)は、0.254であった。原料混合物をポットから取り出し、プレス成形し成形体とした。この成形体を不活性雰囲気(アルゴン(Ar):99.99体積%)中で、800℃で2時間焼成し、薄膜形成材料(焼結体)1を得た。
第1の蒸着膜の製造
被成膜物として、円板状の両面研磨板ガラス(ショット(SCHOTT AG)社製、BK-7)を用いた。蒸着装置内に、被成膜物と、薄膜形成材料1を配置し、蒸着装置内の圧力を1.0×10−4Paまで減圧した状態で、薄膜形成材料1に電子ビーム(日本電子株式会社製、JEBG-102UH0)を140mAで照射し、基板状の被成膜物の片面に酸化インジウム(I)(InO)と二酸化ケイ素(SiO)とを含む蒸着膜を形成した。成膜時の被成膜物の温度を100℃とし、成膜時にイオン銃(シンクロン社製NIS-150)から放出されたArイオンによるイオンビームアシスト蒸着(Ion-beam Assisted Deposition:IAD)(加速電圧値-加速電流値=900V-900mA)を用いた。被成膜物のチャージアップを防止するため、ニュートラライザー(株式会社シンクロン、RFN‐2、バイアス電流値=1000mA)を併用した。
空隙を有する第1の薄膜の製造
pH3.2のシュウ酸溶液を第1の酸性溶液として用い、このシュウ酸溶液に蒸着膜が形成された被成膜物を室温で浸漬し、蒸着膜から酸化インジウム(I)(InO)を優先的に溶出させて、空隙を有する第1の薄膜を作製した。蒸着膜と酸性溶液との接触時間(浸漬時間)は、90分間とし、可視光の吸収の無い第1の薄膜を得た。得られた空隙を有する第1の薄膜の屈折率を後述する方法によって測定した。屈折率が1.091である空隙を有する第1の薄膜が得られた。第1の薄膜に含まれる酸化インジウム(III)(In)及び/又はインジウム(In)の量は、第1の薄膜をpH2.0以下の強酸性溶液と接触させた後に、第1の薄膜の屈折率が0.011低下する量であり、空隙率で約3%増加する量(共に脱落した二酸化ケイ素(SiO)を含む)であった。
第2の薄膜の製造
シリカコート形成材料としてテトラエトキシシラン(TEOS、信越化学工業社製)0.5gを脱水したエタノール12.85g中に添加し、その後、第2の酸性溶液としてpH1.0の塩酸を0.47g添加して、調整した液を24時間混合することでシリカコート形成材料を製造した。空隙を有する第1の薄膜の表面に、シリカコート形成材料を滴下し、含浸させた後、第1の薄膜を回転することで余分なシリカコート形成材料を第1の薄膜の表面から除去し、第1の薄膜の表面をシリカコート形成材料でコーティングし、300℃で1時間保持し、第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.139であった。
実施例2
In粉末155g、SiO粉末100g(In/SiOモル比が0.246)を混合し、実施例1と同様にして焼結した薄膜形成材料2を得た。この薄膜形成材料2を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例1と同様にして空隙を有する第1の薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.140であった。
実施例3
第1の酸性溶液としてpH2.5のシュウ酸溶液を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例1と同様にして空隙を有する第1の薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.094であった。
実施例4
第1の酸性溶液としてpH2.7のシュウ酸溶液を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例1と同様にして空隙を有する第1の薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.093であった。
実施例5
第1の酸性溶液としてpH3.5のシュウ酸溶液を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例1と同様にして空隙を有する第1の薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.092であった。
実施例6
第1の酸性溶液としてpH3.0の塩酸溶液を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例1と同様にして空隙を有する第1の薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.095であった。
実施例7
Arイオンによるイオンビームアシスト蒸着を用いず、シリカコートされていないこと以外は実施例2と同様にして空隙を有する第1の薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.266であった。
比較例1
In粉末140g、SiO粉末100g(In/SiOモル比が0.222)を混合し、実施例7と同様にして焼結した薄膜形成材料3を得た。この薄膜形成材料3を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例7と同様にして空隙を有する薄膜を作製した。得られた薄膜の屈折率は1.321であった。
比較例2
In粉末180g、SiO粉末100g(In/SiOモル比が0.286)を混合し、実施例1と同様にして焼結した薄膜形成材料4を得た。この薄膜形成材料4を用いたこと以外は実施例1と同様にして蒸着膜を作製し、蒸着膜を、実施例1と同様の第1の酸性溶液に接触させたが、酸処理後に蒸着膜が被成膜物から剥離してしまい、空隙を有する薄膜を得ることはできなかった。
比較例3
第1の酸性溶液としてpH2.0のシュウ酸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして蒸着膜を作製し、蒸着膜を、実施例1と同様の第1の酸性溶液に接触させたが、酸処理後に蒸着膜が被成膜物から剥離してしまい、空隙を有する薄膜を得ることはできなかった。
比較例4
第1の酸性溶液としてpH4.0としたシュウ酸溶液を用い、シリカコートされていないこと以外は実施例1と同様にして空隙を有する薄膜を作製した。得られた薄膜は透明にならなかった。
薄膜(光学薄膜)の評価
以下のように実施例及び比較例の光学薄膜である第1の薄膜の評価を行なった。結果を表1に示す。
屈折率
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ、製品名:U−4100、入射角5°)を用いて、実施例の空隙を有する薄膜(光学薄膜)の反射スペクトルを測定した。入射光強度を100としたときの反射光強度の極小値を反射率として測定し、この測定した反射率からフレネル係数を用いて屈折率を算出した。
実施例において、薄膜を形成する基板状の被成膜物として両面研磨ガラスを用いていることから、測定から得られた反射率R’は、裏面反射を含む多重繰り返し反射を含んでいる。測定された反射率R’は、多重繰り返し反射を含んでいることから、薄膜の反射率Rは、以下の式(1)で表すことができる。
前記式(1)中において、Rは基板(被成膜物)の反射率である。実際に測定された薄膜の反射率R’から式(1)に基づき、薄膜の反射率Rを算出した。薄膜の反射率Rは、裏面からの反射を考慮しない反射率である。
薄膜の反射率Rは、フレネル係数を用いると、基板(被成膜物)の屈折率nと薄膜の屈折率nを以下の式(2)を用いて表すことができる。
ここで、大気の屈折率を1と近似し、基板の屈折率nの平方根よりも薄膜の屈折率nが大きい場合には、以下の式(3)で薄膜の屈折率nを表すことができる。
また、基板の屈折率nの平方根よりも薄膜の屈折率nが小さい場合には、以下の式(4)で薄膜の屈折率nを表すことができる。
前記式(1)ないし(4)に基づき、光学薄膜である第1の薄膜及び第2の薄膜の屈折率nを算出した。なお、光学薄膜の屈折率nに関して、「小檜山光信著、「光学薄膜の基礎理論−フレネル係数、特性マトリクス−」、株式会社オプトロニクス社出版、平成23年2月25日、増補改訂版第1刷」を参照にした。
空隙率(%)
光学薄膜である第1の薄膜及び第2の薄膜の空隙率(全気孔率Vp)は、下記式(5)に示すLorenz-Lorenz式を用いて求めた。下記式(5)において、nは薄膜の観測された屈折率であり、nは薄膜の骨格の屈折率である。薄膜の屈折率nは、前記式(1)から(4)に基づき求めた空隙を有する薄膜(光学薄膜)の屈折率である。薄膜の骨格の屈折率nは、主に二酸化ケイ素(SiO)から構成されているため、二酸化ケイ素(SiO)の屈折率(1.460)を用いて求めた。
吸収率(%)
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ、製品名:U−4100、入射角5°)を用いて、実施例の空隙を有する薄膜(光学薄膜)の吸収率を測定した。入射光強度を100としたときの反射光強度と透過光強度を測定し、それらを入射光強度100から減じた値を吸収率として測定した。吸収率は、短波長側が高くなるので、390nmから410nmの平均値とした。
表1に示すように、実施例1から7の第1の薄膜は、屈折率が1.300以下と低くすることができた。Arイオンによりイオンビームアシスト蒸着(IAD)を用いた実施例1から6の第1の薄膜は、屈折率が1.170以下とより屈折率を低くすることができた。実施例1の第1の薄膜は、分光光度計で透過率と反射率から吸収率を測定したところ、吸収率は十分低く、薄膜中に体色が黒色である酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)は存在せず、酸性物質との接触によって薄膜中の酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が全て溶出していることが確認できた。また、実施例1の第1の薄膜は、体色が黒色である一酸化ケイ素(SiO)も存在していないことが確認できた。
比較例1に示すように、薄膜形成材料のIn/SiOモル比が0.222であり、薄膜形成材料のIn/SiOのモル比が0.230を下回ると、第1の薄膜は、屈折率が1.321であり、屈折率が1.300以下と低くならなかった。比較例2に示すように、薄膜形成材料のIn/SiOモル比が0.286であり、薄膜形成材料のIn/SiOモル比が0.270モルを上回ると第1の酸性溶液との接触によって蒸着膜が剥がれ、被成膜物の所望とする部分に空隙を有する第1の薄膜を形成することができなかった。
比較例3に示すように、第1の酸性溶液のpHが低すぎると、接触後に蒸着膜が剥がれ、被成膜物の所望とする部分に空隙を有する第1の薄膜を形成することができなかった。さらに比較例4に示すように、第1の酸性溶液のpHが高すぎると、第1の薄膜中に黒色物質が認められ、黒色物質である酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)を溶出させることができなかった。
次に、第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜の実施例1、8から14について説明する。
実施例8
シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液として、pH1.5の塩酸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.171であった。
実施例9
シリカコート形成材料として、シリコンアルコキシドに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、第1の薄膜がシリカコートされなる第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.178であった。
実施例10
シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液として、pHが0.5の塩酸溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.159であった。
実施例11
シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液として、pHが2.0の塩酸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.151であった。
実施例12
シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液として、pHが3.0の塩酸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.100であった。
実施例13
シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液として、pHが4.0の塩酸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.120であった。
実施例14
シリカコート形成材料に添加される第2の酸性溶液として、pHが5.0の塩酸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして第1の薄膜がシリカコートされてなる、第2の薄膜を作製した。得られた第2の薄膜の屈折率は1.107であった。
薄膜(光学薄膜)の評価
実施例1、8から14の第2の薄膜の評価として、屈折率及び空隙率は、実施例1の第1の薄膜の評価と同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
膜強度試験
第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜(光学薄膜)の上にシルボン紙を重ね、シルボン紙の上から鉛筆硬度試験器(JIS K5600 引っかき硬度(鉛筆法)を準拠した。)を用いて、500g/cmの荷重をかけながら、乾式で20往復した。シルボン紙を外し、第2の薄膜(光学薄膜)の表面を目視で確認し、傷又は反射光の色変化が確認できたものを良くない(B:Bad)と評価し、第2の薄膜の表面に変化がないものを良い(G:good)として評価した。結果を表2に示す。なお、(B:Bad)と評価された実施例も、シリカコートなしの実施例と比較すると良好な膜強度が得られた。
SEM画像
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜のSEM画像を得た。図1は、実施例1の第2の薄膜(光学薄膜)の表面のSEM写真であり、図2は、実施例1の第2の薄膜(光学薄膜)の断面のSEM写真である。
表2に示すように、実施例1、8から14の第1の薄膜は、屈折率が1.300以下であり、より具体的には屈折率が1.098以下と低くすることができた。また、実施例1、8から14の第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜は、屈折率が1.380以下であり、より具体的には、屈折率が1.178以下であり、従来の低屈折材料として知られているフッ化マグネシウム(MgF)の屈折率(1.380)よりも低くすることができた。
実施例1に示すように、pHが1.0の第2の酸性溶液が添加されたシリカコート形成材料を用いた場合や、実施例8に示すように、pH1.5の第2の酸性溶液が添加されたシリカコート形成材料を用いた場合や、実施例9に示すように、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を含むシリカコート形成材料を用いた場合も、得られた第2の薄膜は、十分な膜強度を示した。
実施例11から14に示すように、pHが1.8を超えてpHの高い第2の酸性溶液が添加されたシリカコート形成材料を用いたり、実施例10に示すように、pHが0.8未満のpHの低い第2の酸性溶液が添加されたシリカコート形成材料を用いたりすると、第2の薄膜は十分な膜強度を得ることができなかった。
図1に示すように、実施例1の第1の薄膜は、二酸化ケイ素(SiO)で構成された骨格の間に、酸化インジウム(I)(InO)が溶出することによって形成された空隙が存在する。図2に示すように、実施例1の第1の薄膜がシリカコートされてなる第2の薄膜の断面を観察すると、二酸化ケイ素(SiO)で形成された骨格は、被成膜物から薄膜の表面まで連続し、例えばシリカ粒子の集合体から構成された薄膜とは異なる形状となっていることが確認できる。
本発明の一実施形態における薄膜の製造方法によれば、低屈折率の光学薄膜を比較的に容易に製造することができ、カメラレンズのみならず、高精細の液晶パネル等にも利用できる光学薄膜を提供することができる。本発明の一実施形態における光学薄膜は、天体望遠鏡、眼鏡レンズ、カメラ、バンドパスフィルター、ビームスプリッター等の光学ピックアップ部品を備えたディスクドライブ装置、高精細の液晶パネルを備えた表示装置等の光学部材として利用することができる。

Claims (7)

  1. 二酸化ケイ素によって形成された骨格が、被成膜物から薄膜の表面まで連続し、屈折率が1.30以下であることを特徴とする光学薄膜。
  2. 二酸化ケイ素によって形成された骨格が被成膜物から薄膜の表面まで連続し、前記薄膜がシリカコートされており、そのシリカコートによる酸化ケイ素を含む薄膜の屈折率が1.38以下である、光学薄膜。
  3. 空隙率が30%以上90%以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の光学薄膜。
  4. 空隙率が60%以上85%以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の光学薄膜。
  5. 前記請求項1から4のいずれか1項に記載の光学薄膜と、被成膜物とを含む光学部材。
  6. 一酸化ケイ素(SiO)を50質量%以上含む酸化ケイ素と、酸化インジウム(In)と、を含み、前記酸化インジウムが前記酸化ケイ素1モルに対して0.23モル以上0.27モル以下の範囲で含まれる混合物であることを特徴とする薄膜形成材料。
  7. 前記混合物に含まれる酸化インジウムが、前記酸化ケイ素1モルに対して、0.240モル以上0.265モル以下の範囲である、請求項6に記載の薄膜形成材料。
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