JP7376777B2 - 光学薄膜の製造方法、光学薄膜、及び光学部材 - Google Patents

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Description

本発明は、光学薄膜の製造方法、光学薄膜、及び光学部材に関する。
カメラや望遠鏡のレンズ表面には、反射光を低減するための反射防止構造が形成されている。反射防止構造は、反射光を低減するための薄膜や、蛾の目の構造を模して微細な凹凸が形成されたモスアイ構造が挙げられる。また、斜入射光に対する反射防止効果を高めるには、被成膜物の平方根を下回る屈折率を有する薄膜が提案されている。
薄膜を得るためには、例えば物理蒸着法やゾルゲル法を含む様々な方法で空気を含有させた光学薄膜が提案されている。
特許文献1には、フッ化マグネシウム(MgF)微粒子を分散させたゾル液と、非晶質酸化ケイ素系バインダー溶液とを混合した混合液を、基材に塗布して熱処理し、基材とMgF微粒子間が非晶質酸化ケイ素系バインダーにより結着されるとともに、MgF微粒子間に多数の空隙が形成された光学薄膜の製造方法が記載されている。
特許文献2には、基板上に、それぞれ屈折率が異なる、真空蒸着法により形成された無機系酸化膜からなる第1層及び第2層と、シリカ微粒子を含み、スピンコート法等の塗工方法で形成された第3層とからなる反射防止膜を有する光学素子が記載されている。
特許文献3には、光学透過性を有する基板と、基板上に設けた屈折率傾斜薄膜と、屈折率傾斜薄膜上に設けた多機能膜と、多機能膜上に、可視光の波長よりも短いピッチで多数の微細凹凸構造を有する微細構造体を有する光学フィルタが記載されている。
特許文献4には、基材上に、薄膜層中の水素濃度が異なることで屈折率が異なる第1の薄膜層及び第2の薄膜層が交互に各1層以上積層された多層膜と、凹凸構造を有するアルミナ水和物からなる表面層と、を有する光学部材が記載されている。
国際公開第2006/030848号 特開2014-95877号公報 特開2014-102296号公報 国際公開第2016/159290号
本発明の一態様は、屈折率が低く、膜強度を向上した光学薄膜の製造方法、光学薄膜及び光学部材を提供することを目的とする。
本発明は、以下の形態を包含する。
本発明の第一の態様は、酸化ケイ素と、酸化インジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の第一酸化物と、を含み、
前記酸化インジウムを、前記酸化ケイ素1モルに対して、0.23モル以上0.27モル以下の範囲内で含み、
必要に応じて前記酸化ジルコニウムを、前記酸化ケイ素及び前記酸化インジウムの合計1モルに対して、0.0010モル以上0.15モル以下の範囲内で含み、
必要に応じて前記酸化ハフニウムを、前記酸化ケイ素及び前記酸化インジウムの合計1モルに対して、0.0006モル以上0.09モル以下の範囲内で含む、第一材料を準備する準備工程と、
前記第一材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、第一薄膜を形成する第一工程と、
二酸化ケイ素を含む第二材料を物理蒸着法により第一薄膜上に堆積させて、膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内の第二薄膜を形成する第二工程と、
前記第一工程と前記第二工程を交互に繰り返して、前記第一薄膜と前記第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成する成膜工程と、
前記第一積層膜を、pHが2.5以上3.5以下の範囲内の酸性溶液に接触させ、前記第一積層膜の前記第一薄膜に空隙を形成した第二積層膜を形成する酸処理工程と、を有する、光学薄膜の製造方法である。
本発明の第二の態様は、酸化ケイ素を含む骨格と、前記骨格間に形成された空隙を有する第一薄膜と、二酸化ケイ素を含み、2nm以上40nm以下の範囲内の膜厚を有する第二薄膜とが交互に複数回積層された積層膜を含む、光学薄膜である。
本発明の第三の態様は、前記光学薄膜と、被成膜物とを有する光学部材である。
本発明の一態様によれば、屈折率が低く、膜強度を向上した光学薄膜の製造方法、光学薄膜及び光学部材を提供することができる。
図1は、実施例1の光学薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 図2は、比較例1の光学薄膜の断面のSEM写真である。
光学薄膜が、ゾルゲル法を利用して、微粒子とバインダーとを含むゾルをゲル化することで形成される場合には、薄膜の形成が大気中で行なわれるため、最表層よりも下層を真空中で形成した場合に、ゾルゲル法を行なうために大気開放されると異物が吸着されやすく、異物の除去を行なうことが必要となる場合がある。また、膜厚を精密に制御するためにはゾルの粘度の経時変化を厳密に管理することが必要な場合があり、常時ゾルの粘度をモニターしながら薄膜を形成しなければならず、製造が煩雑となる場合がある。さらに、ディップコーティング法によりゾルを被成膜物に塗布する場合は過剰量のゾルが必要となり、スピンコーティング法によりゾルを被成膜物に塗布する場合は曲面へ均一な膜厚で塗布し難いというおそれもある。
また、薄膜の最表面層に凹凸構造を有する膜を含む複数の膜を有する光学部品は、摩擦に対する耐久性が非常に弱い場合もある。
本発明の一態様は、屈折率が低く、膜強度を向上した光学薄膜の製造方法、光学薄膜及び光学部材を提供する。
以下、本発明に係る光学薄膜の製造方法、光学薄膜及び光学部材の一実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の光学薄膜の製造方法、光学薄膜及び光学部材に限定されない。
光学薄膜の製造方法
光学薄膜の製造方法は、酸化ケイ素と、酸化インジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の第一酸化物と、を含み、
前記酸化インジウムを、前記酸化ケイ素1モルに対して、0.23モル以上0.27モル以下の範囲内で含み、
必要に応じて前記酸化ジルコニウムを、前記酸化ケイ素及び前記酸化インジウムの合計1モルに対して、0.0010モル以上0.15モル以下の範囲内で含み、
必要に応じて前記酸化ハフニウムを、前記酸化ケイ素及び前記酸化インジウムの合計1モルに対して、0.0006モル以上0.09モル以下の範囲内で含む、第一材料を準備する準備工程と、
前記第一材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、第一薄膜を形成する第一工程と、
二酸化ケイ素を含む第二材料を物理蒸着法により第一薄膜上に堆積させて、膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内の第二薄膜を形成する第二工程と、
前記第一工程と前記第二工程を交互に繰り返して、前記第一薄膜と前記第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成する成膜工程と、
前記第一積層膜を、pHが2.5以上3.5以下の範囲内の酸性溶液に接触させ、前記第一積層膜の前記第一薄膜に空隙を形成した第二積層膜を形成する酸処理工程と、を有する。
準備工程
第一材料
第一材料は、酸化ケイ素と、酸化インジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の第一酸化物と、を含み、酸化インジウムを、酸化ケイ素1モルに対して0.23モル以上0.27モル以下の範囲内で含み、必要に応じて酸化ジルコニウムを、酸化ケイ素及び酸化インジウムの合計1モルに対して0.0010モル以上0.15モル以下の範囲内で含み、必要に応じて酸化ハフニウムを、酸化ケイ素及び酸化インジウムの合計1モルに対して0.0006モル以上0.09モル以下の範囲内で含む。
第一材料の原料に用いる酸化インジウムは、酸化インジウム(III)(In)であることが好ましい。酸化インジウム(III)(In)は、不可避的不純物を含んでいてもよい。原料として用いる酸化インジウム(III)(In)中、酸化インジウム(III)(In)の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
第一材料の原料に用いる酸化ケイ素は、主成分として一酸化ケイ素(SiO)であることが好ましい。本明細書において、「主成分として一酸化ケイ素(SiO)である」とは、原料の酸化ケイ素中、一酸化ケイ素(SiO)の含有量が50質量%以上であることを意味する。原料の酸化ケイ素中、一酸化ケイ素(SiO)の含有量は、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。
第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)のモル比は、酸化ケイ素1モルに対して、0.230モル以上0.270モル以下の範囲内であり、好ましくは0.240以上0.270モル以下の範囲内であり、より好ましくは0.240以上0.265以下の範囲であり、さらに好ましくは0.250以上0.260以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは0.252以上0.258以下の範囲内である。第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)のモル比が、酸化ケイ素1モルに対して、0.230モル以上0.270モル以下の範囲内であれば、後述する成膜工程の第一工程において、加熱により酸化インジウム(III)(In)から生成される酸素(O)によって一酸化ケイ素(SiO)を優先的に酸化させて、酸化されない一酸化ケイ素(SiO)を残存させることなく、第一薄膜の骨格となる二酸化ケイ素(SiO)を凝集した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に付着して堆積させて第一薄膜を形成することができる。また、第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)のモル比が、酸化ケイ素1モルに対して0.230モル以上0.270モル以下の範囲内であれば、後述する成膜工程の第一工程において、酸化インジウム(I)(InO)が凝集する大きさを抑制して、酸化インジウム(I)(InO)と二酸化ケイ素(SiO)を含む第一薄膜を形成することができる。第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)が、酸化ケイ素1モルに対して0.230モル未満であると、酸化インジウム(III)(In)が少なすぎて、第一薄膜中に酸化されない一酸化ケイ素(SiO)が残存する場合がある。一酸化ケイ素(SiO)は、体色が黒色であり、後述する成膜工程後の酸処理工程において、酸性溶液と接触させても、一酸化ケイ素(SiO)が溶出しないため、得られる光学薄膜において、一酸化ケイ素(SiO)由来の可視光吸収が高くなる原因となる。第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)が、酸化ケイ素1モルに対して0.270モルを超えると、酸化インジウム(III)(In)が多すぎて、過剰な酸化インジウム(III)(In)から解離した酸素(O)によって、生成された酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(I)が酸化インジウム(III)(In)に酸化されて、得られる光学薄膜の屈折率が上昇するおそれがある。
必要に応じて第一材料の原料に用いる酸化ジルコニウムは、主成分として二酸化ジルコニウム(ZrO)であることが好ましい。原料の酸化ジルコニウム中、酸化ジルコニウム(ZrO)の含有量は、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。
必要に応じて第一材料の原料に用いる酸化ハフニウムは、主成分として二酸化ハフニウム(HfO)であることが好ましい。原料の酸化ハフニウム中、酸化ハフニウム(HfO)の含有量は、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。
酸化ジルコニウム(ZrO)及び酸化ハフニウム(HfO)は、後述する成膜工程の第一工程において、第一材料中から飛散し難いため、第一材料の蒸発面に蓄積される。第一材料の蒸発面には、第一材料中で最も蒸気圧の高い二酸化ケイ素(SiO)が蓄積されるが、二酸化ケイ素(SiO)は電子線を反射しやすい特性がある。酸化ジルコニウム(ZrO)及び酸化ハフニウム(HfO)は、その二酸化ケイ素(SiO)の表面を覆うことで、電子線の吸収を高め、二酸化ケイ素(SiO)の蒸発量を増やし、所望の屈折率をより安定的に得ることができる。
第一材料に、必要に応じて含まれる酸化ジルコニウム(ZrO)は、酸化ケイ素及び酸化インジウムの合計1モルに対して0.0010モル以上0.15モル以下の範囲内であり、好ましくは0.0050モル以上0.12モル以下の範囲内であり、より好ましくは0.0060モル以上0.11モル以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.0070モル以上0.10モル以下の範囲内である。第一材料に必要に応じて含まれる酸化ジルコニウムの量が前記範囲内であると、電子線の吸収を高めるために十分な量の酸化ジルコニウムを、第一材料の蒸発面に蓄積することができる。
第一材料に、必要に応じて含まれる酸化ハフニウム(HfO)は、酸化ケイ素及び酸化インジウムの合計1モルに対して0.0006モル以上0.09モル以下の範囲内であり、好ましくは0.0007モル以上0.08モル以下の範囲内であり、より好ましくは0.0008モル以上0.07モル以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.0009モル以上0.06モル以下の範囲内である。第一材料に必要に応じて含まれる酸化ハフニウムの量が前記範囲内であると、電子線の吸収を高めるために十分な量の酸化ハフニウムを、第一材料の蒸発面に蓄積することができる。
第一酸化物は、酸化インジウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種が含まれていればよく、酸化インジウム及び酸化ハフニウムの両方が含まれていてもよい。第一酸化物に、酸化インジウム及び酸化ハフニウムが両方含まれている場合には、酸化ケイ素及び酸化インジウムの合計1モルに対して、酸化インジウム及び酸化ハフニウムの合計が0.0006モル以上0.15モル以下の範囲内で、第一材料に含まれていればよく、好ましくは0.0007モル以上0.12モル以下の範囲内であり、より好ましくは0.007モル以上0.1モル以下の範囲内である。第一酸化物が、酸化インジウム及び酸化ハフニウムの両方を含む場合には、酸化インジウム:酸化ハフニウムが、1:99以上99:1以下の範囲内で含まれていてもよく、2:98以上98:2以下の範囲内で含まれていてもよく、5:95以上95:5以下の範囲内で含まれていてもよい。
第一材料の製造方法
第一材料は、酸化インジウム(III)(In)と、酸化ケイ素(SiO、SiO)と、酸化ジルコニウム(ZrO)及び酸化ハフニウム(HfO)からなる群から選択される少なくとも1種の第一酸化物とを含む各原料を、各原料が前述の範囲となるように混合して、原料混合物とし、この原料混合物をプレス成形して成形物とした後、焼成した焼結体であることが好ましい。第一材料として焼結体を用いることにより、後述する成膜工程の第一工程における物理蒸着法によって、第一材料が略均一に気化し、酸化インジウム(III)(In)の熱分解により生じた酸化インジウム(I)(InO)と、二酸化ケイ素(SiO)が略均一に混合されて蒸着した第一膜を被成膜物の表面に略均等に堆積させることができる。原料混合物を成形した成形物を焼成する温度は、600℃以上1200℃以下としてもよく、700℃以上1100℃以下としてもよい。また、成形物を焼成する雰囲気は、不純物を低減した焼結体を得るために、不活性雰囲気であることが好ましい。
原料混合物をプレス成形した成形物は、不活性雰囲気中で焼成することが好ましい。不活性雰囲気とは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)を雰囲気中の主成分とする雰囲気を意味する。本明細書において、雰囲気中の主成分とは、雰囲気中に50体積%以上含まれる成分(ガス)をいう。不活性雰囲気は、必然的に不純物として酸素を含むことがあるが、本明細書において、雰囲気中に含まれる酸素の濃度が15体積%以下であれば不活性雰囲気とする。不活性雰囲気中の酸素の濃度は、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、さらに好ましくは1体積%以下である。不活性雰囲気中の酸素の濃度は少ないほど好ましく、よりさらに好ましくは0.1体積%以下、特に好ましくは0.01体積%以下であり、最も好ましくは0.001体積%以下(10体積ppm以下)である。原料混合物をプレス成形した固形物は、不活性雰囲気中で焼成することにより、薄膜形成材料中に余分な酸化物を可能な限り含まないようにすることができる。
原料混合物を成形した成形物を焼成する温度は、好ましくは500℃以上900℃以下であり、より好ましくは600℃以上880℃以下であり、さらに好ましくは700℃以上860℃以下である。原料混合物を焼成する温度が上限値を超えると、酸化インジウム(III)(In)から還元された金属インジウム(In)が溶解、蒸発し、目的とした組成の第一材料を得ることができない。原料混合物を焼成する温度が下限値未満であると、焼結体の強度が不足するため蒸着中に熱応力により焼結体が割れる懸念がある。蒸着中に第一材料である焼結体が割れると、蒸発量が大きく変わってしまうため、安定した第一薄膜を成膜できない場合がある。
成膜工程
成膜工程は、第一材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、第一薄膜を形成する第一工程と、第二材料を物理蒸着法により第一薄膜上に堆積させて第二薄膜を形成する第二工程を含み、第一工程と第二工程を交互に繰り返して、第一薄膜と第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成する工程である。
第一工程
第一工程において、第一材料を用いて物理蒸着法により、二酸化ケイ素(SiO)と、酸化インジウム(I)(InO)を含む第一薄膜を被成膜物に堆積させて、第一薄膜が形成される。第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)は、加熱により酸化インジウム(I)(InO)とインジウム(In)と酸素(O)に解離される。第一材料に含まれる一酸化ケイ素(SiO)は、一酸化ケイ素(SiO)の酸化の標準生成自由エネルギーが酸化インジウム(I)(InO)の酸化の標準生成自由エネルギーよりも低いため、優先的に酸素(O)と反応して二酸化ケイ素(SiO)を生成する。酸素が15体積%以下の不活性雰囲気で第一材料を用いて第一薄膜を形成した場合であっても、酸化インジウム(III)(In)から解離した酸素(O)は、優先的に一酸化ケイ素(SiO)に吸収されて二酸化ケイ素(SiO)を生成する。そのため、形成された第一膜中には一酸化ケイ素(SiO)がほとんど残存しない。そのため第一薄膜及び第二薄膜を交互に積層した第一積層膜を後述する酸処理工程において、酸性溶液に接触させて得られた第二積層膜は、体色が黒色である一酸化ケイ素(SiO)由来の可視光の吸収を生じない。また、第一材料に含まれる酸化インジウム(III)(In)から解離した酸素(O)は、一酸化ケイ素(SiO)に吸収されて二酸化ケイ素(SiO)を生成するため、解離した酸化インジウム(I)(InO)のさらなる酸化による酸化インジウム(III)(In)の生成を抑えることができる。酸化インジウム(I)(InO)は、酸性物質に対する溶解性が非常に高いため、第一薄膜を、酸性物質を含む酸性溶液に接触させることによって酸化インジウム(I)(InO)を優先的に溶出させ、二酸化ケイ素(SiO)によって形成された骨格と、骨格間に形成された空隙とを有する第一薄膜を含む第二積層膜を得ることができる。
第一材料を加熱することによって生成された酸化インジウム(I)(InO)と二酸化ケイ素(SiO)が同時に被成膜物に蒸着すると、蒸着した直後から酸化インジウム(I)(InO)が凝集する。二酸化ケイ素(SiO)は、酸化インジウム(I)(InO)よりも比重が軽いため、凝集する酸化インジウム(I)(InO)からはじき出されるように酸化インジウム(InO)の周囲に二酸化ケイ素(SiO)が付着する。そのため、第一材料を用いて形成された第一薄膜中には、被成膜物に付着した酸化インジウム(I)(InO)が連続して膜厚方向に堆積し、堆積した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に二酸化ケイ素(SiO)が凝集して付着した状態になる。第一材料を用いて、第一薄膜の膜厚が大きくなるように堆積させると、酸化インジウム(I)(InO)が膜厚方向に被成膜物から膜表面まで連続して凝集し、膜厚方向に連続して凝集した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に二酸化ケイ素(SiO)が付着して第一薄膜が形成される。後述する酸処理工程において、第一薄膜をpHが2.5以上3.5以下の範囲内の酸性溶液に接触させると、酸化インジウム(I)(InO)が溶出し、凝集していた酸化インジウム(I)(InO)の部分が空隙となり、凝集した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に付着していた二酸化ケイ素(SiO)が骨格となって、骨格と、骨格間に形成された空隙と、を有する第一薄膜が形成される。第一材料を用いて、膜厚が大きくなるように第一薄膜が形成されると、膜厚方向に被成膜物から膜表面まで連続して凝集した酸化インジウム(InO)が溶出して大きな空隙が形成される。第一薄膜中に膜厚方向に被成膜物から膜表面まで骨格で区画された大きな空隙が形成されると、薄膜面に対し水平方向の破壊に対する耐久性が低下し、膜強度が低下する。大きな空隙を形成させずに、膜強度を向上させるために、第一薄膜の膜厚を小さくし、酸化ケイ素を含む第二材料を用いて、第二薄膜を第一薄膜上に堆積させることによって、第一薄膜中に含まれる酸化インジウム(I)(InO)の膜厚方向の凝集を抑制し、第一薄膜中に形成される空隙の大きさを抑制することができる。
第一材料中の酸化ジルコニウム(ZrO)及び酸化ハフニウム(HfO)は、蒸気圧が酸化インジウム又は酸化ケイ素に比べて非常に低いため、物理蒸着法により加熱しても、第一材料中から飛散せずに、第一材料中に残存し、第一薄膜中には含まれない。物理蒸着法により、第一材料が加熱されると、第一材料の蒸発面に酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択された少なくとも1種の第一酸化物が蓄積される。第一材料の蒸発面に蓄積された酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択された少なくとも1種の第一酸化物は、二酸化ケイ素に比べて電子線を吸収しやすく、電子線の吸収を高め、二酸化ケイ素(SiO)の蒸発量を増やして、安定した第一薄膜を形成することができる。
第一材料中の酸化インジウム(III)(In)は、物理蒸着法により、酸化インジウム(I)(InO)を生成するが、極微量のインジウム(In)が生成される場合もある。酸化インジウム(III)(In)が解離した雰囲気中に含まれるインジウム(I)ガスの量は3体積%以上5体積%以下程度である(「酸化物の熱力学」イ・エス・クリコフ著、日ソ通信社、p.146、1987年)。インジウム(In)は、体色が黒色であり、第一薄膜中に極微量のインジウム(In)が含まれる場合には、成膜後の酸処理工程において、酸性溶液に接触させた際に、インジウム(In)が溶出し、第一積層膜の体色が黒色であった場合、第二積層膜の体色が灰色、透明と変化する。
物理蒸着法
物理蒸着法としては、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等が挙げられる。中でも、電子ビーム蒸着法又は抵抗加熱蒸着法を用いることが好ましく、電子ビーム蒸着法を用いることがより好ましい。電子ビーム蒸着法又は抵抗加熱蒸着法は、大面積又は曲率半径の小さい曲面にも均一に第一薄膜を形成することができる。さらに電子ビーム蒸着法は、第一材料に電子ビームを直接照射して加熱するため熱効率がよく、高融点で熱伝導率の低い酸化物からなる第一材料であっても効率良く気化させて、比較的短い時間で被成膜物に、第一材料の組成に基づく安定した組成を有する第一薄膜を堆積させることができる。さらに第一薄膜は、イオンアシストを用いて形成してもよい。イオンアシストを用いる場合には、第一薄膜の成膜時にアシストのためのイオン源を備え、イオン銃(イオンビーム)でガスイオンを被成膜物に加速して照射しながら第一薄膜を形成するイオンビームアシスト蒸着(Ion-beam Assisted Deposition:IAD)を用いてもよい。イオンビームアシストのためのイオン源は不活性ガスイオンであることが好ましい。イオンビームアシストのための不活性ガスイオンは、Arイオン又はHeイオンが挙げられ、好ましくはArイオンである。
第一工程の雰囲気
第一工程における雰囲気は、酸素が15体積%以下の雰囲気であることが好ましい。雰囲気中の酸素は、10体積%以下であってもよく、5体積%以下であってもよく、1体積%以下であってもよい。雰囲気中の酸素は、少ない程好ましく、0.1体積%以下であってもよく、0.01体積%以下であってもよく、0.001体積%以下(10体積ppm以下)であってもよい。第一薄膜を成膜する際の雰囲気中の酸素が多いと、雰囲気中の酸素によって、生成された酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が再び酸化され、第一薄膜中に酸化インジウム(III)(In)が含まれ、後の酸処理工程において、酸性溶液に第一積層膜を接触させても酸化インジウム(III)(In)が溶出せずに第一薄膜中に残存し、所望の低い屈折率を有する第二積層膜が得られない場合がある。酸化インジウム(III)(In)は、屈折率が約2.0程度と比較的高く、第一薄膜中に酸化インジウム(III)(In)が残存すると、所望の低い屈折率を有する積層膜が得られない。第一工程において、不活性雰囲気中の酸素が少ないと、第一材料から生成された酸化インジウム(I)(InO)が雰囲気中の酸素によって再び酸化して、第一薄膜中に酸化インジウム(III)(In)が生成されることを抑制することができる。
酸素が15体積%以下の雰囲気は、不活性雰囲気、還元雰囲気、及び真空を含み、いずれか1つ以上の雰囲気であればよい。不活性雰囲気は、酸素が15体積%以下であり、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどの不活性ガスを主成分とする雰囲気をいう。還元雰囲気は、水素、一酸化炭素などを含む混合ガスを雰囲気の主成分とする雰囲気をいう。真空とは圧力が1.0×10-5Pa以上1.0×10-2Pa以下の雰囲気をいう。本明細書において、真空とは、不活性雰囲気の主成分となるアルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどの不活性ガス、又は、水素、一酸化炭素などを含む混合ガスを雰囲気中に導入せずに、圧力が1.0×10-5Pa以上1.0×10-2Pa以下であり、酸素の濃度が15体積%以下である雰囲気をいう。非酸化雰囲気が真空である場合、雰囲気中のガス成分の大部分は水蒸気である。
第一工程における雰囲気が、酸素が15体積%以下の雰囲気であって、水素、一酸化炭素を含む混合ガスを導入した還元性雰囲気又は真空であると、酸化ケイ素に対する酸化インジウム(In/SiO)のモル比が比較的高い第一材料から生成される蒸気中の酸素量が増加した場合であっても、第一材料から生成された酸化インジウム(I)(InO)が酸化するよりも速く、雰囲気中の混合ガス中に含まれる水素もしくは一酸化炭素、又は真空中に含まれる水素の方が優先して酸化し、第一薄膜中の酸化インジウム(III)(In)の生成を抑制することができる。
第一材料に含まれる一酸化ケイ素(SiO)は、体色が黒色であるため、一酸化ケイ素(SiO)が第一薄膜中に残存すると、光学薄膜として利用できない場合もある。それにもかかわらず第一工程における雰囲気として、酸素が15体積%以下の雰囲気が好ましいのは、第一材料中に含まれる一酸化ケイ素(SiO)を優先的に雰囲気中の酸素と反応させて、一酸化ケイ素(SiO)が残存しないように二酸化ケイ素(SiO)を生成させることができ、酸性溶液に対して溶解性が低い酸化インジウム(III)(In)の生成を抑制できるからである。
被成膜物
被成膜物は、ガラスから形成されたものであってもよく、プラスチックから形成されたものであってもよい。ガラスとしては、光学ガラスが挙げられる。プラスチックとしては、ポリエステル系、アクリル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリオレフィン系の樹脂が挙げられる。被成膜物の形態は、例えば平板状又は曲面を有するレンズ状の基板であってもよく、フレキシブルシートであってもよい。第一薄膜は、比較的低温でも形成が可能であるので、耐熱性の低い材料から形成された被成膜物に対しても屈折率が低い光学薄膜を形成することができる。
第一工程によって得られる第一薄膜の膜厚は、目的とする光学薄膜の屈折率によって異なる。第一薄膜の膜厚は、目的とする光学薄膜の屈折率が1.380以下である場合には、例えば1nm以上90nm以下の範囲内であってもよく、10nm以上80nm以下の範囲内であってもよく、20nm以上70nm以下の範囲内であってもよい。
第二工程
第二材料
第二材料は、二酸化ケイ素(SiO)を含む。第二材料を物理蒸着法により第一薄膜上に堆積させるのは、薄膜の膜方向に連続して酸化インジウム(I)(InO)が大きく凝集しないようにするためである。第二材料は、酸化インジウム(III)(In)を実質的に含まないことが好ましい。第二材料に、酸化インジウム(III)を実質的に含まないとは、第二材料に意図的に酸化インジウム(III)(In)を含有させないことをいい、不可避的に含まれる酸化インジウム(III)(In)を含んでいてもよい。第二材料は、具体的には、酸化インジウム(III)(In)の含有量が、二酸化ケイ素1モルに対して、0.01モル以下であり、0.001モル以下であってもよい。第二材料は、主成分として二酸化ケイ素(SiO)を含むことが好ましく、「主成分として二酸化ケイ素(SiO)を含む」とは、第二薄膜形成材料に二酸化ケイ素(SiO)を50質量%以上含むことをいう。第二薄膜形成材料中の二酸化ケイ素(SiO)の含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。第二材料は、具体的には、二酸化ケイ素(SiO)を、一定の粒度になるよう粉砕、分級した塊を用いることができる。一定の粒度とは、0.1mm以上20mm以下の粒度であり、より好ましくは0.5mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは1.0mm以上5.0mm以下の粒度である。二酸化ケイ素(SiO)の粒度が0.1mm以下では、蒸着室を真空状態にし始めたとき、二酸化ケイ素(SiO)が蒸着室内に飛散し、蒸着室内に配置した他材料へ付着する原因となるだけでなく、蒸着を望まない部位にも付着し第二薄膜の外観不良の原因となる場合がある。二酸化ケイ素(SiO)の粒度が10mm以上では、電子ビーム照射面が一定でなくなり、二酸化ケイ素(SiO)の蒸発方向が不安定化する。
第二材料を用いて物理蒸着法により、二酸化ケイ素(SiO)を第一薄膜上に堆積させて、膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内の第二薄膜が形成される。
第二工程によって得られる第二薄膜の膜厚は、好ましく3nm以上30nm以下の範囲内である。第二薄膜の膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内であれば、酸化インジウム(I)(InO)の凝集を抑制し、酸化インジウム(I)(InO)の周囲に凝集するように形成された二酸化ケイ素(SiO)を、第二薄膜を形成する二酸化ケイ素(SiO)で支持することができ、後の酸処理工程で酸化インジウム(I)(InO)が溶出されて形成された空隙を小さくすることができ、第二積層膜の二酸化ケイ素(SiO)からなる骨格の強度を向上させることができる。第二薄膜の膜厚が2nm未満であり、第二薄膜の厚さが薄すぎると、酸処理後に第一薄膜の骨格となる二酸化ケイ素(SiO)を支持することができず、第一薄膜の骨格が壊れる場合がある。第二薄膜の膜厚が40μmを超えると、第二薄膜が厚くなりすぎて、第二積層膜の屈折率が高くなる場合がある。
第二工程における物理蒸着法は、第一工程における物理蒸着法で例示した方法と同様の方法を用いることができる。第二工程において、第二薄膜を形成するために、電子ビーム蒸着法を用いることが好ましく、イオンアシストを用いて形成してもよく、イオンビームアシスト蒸着(IAD)を用いてもよい。イオンビームアシストのためのイオン源は不活性ガスイオンであることが好ましい。イオンビームアシストのための不活性ガスイオンは、Arイオン又はHeイオンが挙げられ、好ましくはArイオンである。
第二工程の雰囲気
第二工程における雰囲気は、酸素が15体積%以下の雰囲気であることが好ましい。酸素が15体積%以下の雰囲気とすることで、第一薄膜に含まれる酸化インジウム(I)(InO)の酸化を抑制し、酸処理工程後に所望の屈折率を有する光学薄膜を得ることができる。
第二工程によって得られる第二薄膜の膜厚は、好ましくは2nm以上40nm以下の範囲内であり、より好ましく3nm以上30nm以下の範囲内である。第二薄膜の膜厚が上記範囲内であれば、酸化インジウム(I)(InO)の凝集を抑制し、酸化インジウム(I)(InO)の周囲に凝集するように形成された二酸化ケイ素(SiO)を、第二薄膜を形成する二酸化ケイ素(SiO)で支持することができ、後の酸処理工程で酸化インジウム(I)(InO)が溶出されて形成された空隙を小さくすることができ、積層膜の二酸化ケイ素(SiO)からなる骨格の強度を向上させることができる。
成膜工程は、第一工程と第二工程は、交互に繰り返して、第一薄膜と第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成することを含む。成膜工程において、第一薄層を形成する第一工程と第二薄層を形成する第二工程を交互に繰り返すことによって、第一薄膜中で酸化インジウム(I)(InO)が膜厚方向に連続して凝集するのを、第二薄膜を形成することによって抑制し、酸化インジウム(I)(InO)が膜厚方向に凝集するサイズを小さくすることができる。また、第一薄膜と第二薄膜を交互に積層させることによって、第一薄膜中で凝集した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に付着するように凝集した第一薄膜の骨格となる二酸化ケイ素(SiO)を、第二薄膜を形成する二酸化ケイ素(SiO)で支持し、所望の屈折率を有し、膜強度を向上した第一積層膜を形成することができる。
成膜工程において、第一工程と第二工程は、交互に2回以上繰り返してもよく、交互に3回以上繰り返すことが好ましく、交互に5回以上繰り返してもよく、交互に10回以下繰り返すことが好ましい。成膜工程において、第一工程と第二工程を交互に2回以上繰り返すことによって、所望の屈折率を有し、膜強度が向上された光学薄膜を製造することができる。また、第一工程と第二工程を交互に10回以下繰り返すことによって、第一材料の利用効率を低減させることなく成膜できる。
酸処理工程
光学薄膜の製造方法は、得られた第一積層膜を、pHが2.5以上3.5以下の範囲内である酸性物質を含む酸性溶液に接触させ、第一積層膜の第一薄膜に空隙を形成し、第二積層膜を得る酸処理工程を含む。
第一薄膜中に含まれる凝集した酸化インジウム(I)(InO)と、極微量含まれる場合があるインジウム(In)は、酸性物質に対する溶解性が非常に高いため、pHが2.5以上3.5以下の範囲内にある酸性溶液に第一積層膜を接触させることによって、第一積層膜中の第一薄膜に含まれる酸化インジウム(I)(InO)と、極微量含まれている場合にはインジウム(In)が、優先的に溶出され、所望の屈折率を満たす空隙が、第一薄膜に形成される。第一材料に含まれる酸化ケイ素(SiO)は、第一工程の蒸着を行う際の加熱によって、酸化インジウム(III)(In)から生成される酸素(O)と優先的に反応し、一酸化ケイ素(SiO)を残存させることなく、二酸化ケイ素(SiO)となり、凝集した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に付着して堆積する。このため、酸処理工程において、第一積層膜の第一薄膜から凝集した酸化インジウム(I)(InO)が溶出されると、酸化インジウム(I)(InO)の周囲に堆積した二酸化ケイ素(SiO)が第一薄膜の骨格となり、骨格間に空隙が形成される。第一薄膜の骨格を形成する二酸化ケイ素(SiO)は、第一薄膜と交互に堆積された第二薄膜によって支持される。第一積層膜を酸処理することによって形成された、第二積層膜の骨格は、第一薄膜の骨格と第二薄膜によって構成される。酸処理工程において形成された第二積層膜は、その形成された骨格に含まれる酸化ケイ素が、二酸化ケイ素である。第二薄膜によって第一薄膜中の酸化インジウム(I)(InO)の膜厚方向の凝集が抑制されているため、酸化インジウム(I)(InO)の溶出によって膜厚方向に連続した大きな空隙が形成され難い。これにより、第一薄膜の骨格が第二薄膜によって支持されることになるので、膜強度が向上された空隙を有する積層膜を得ることができる。
酸性溶液
酸性溶液に含まれる酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸と、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸性物質は、緩衝作用のある複数の酸解離定数を持つ酸が好ましく、弱酸性物質であるクエン酸、シュウ酸がより好ましい。酸性溶液に含まれる酸性物質が弱酸酸性物質であると、第二薄膜に影響を与えることなく、第一薄膜中の酸化インジウム(I)(InO)と、極微量含まれる場合にはインジウム(In)を溶出させて、二酸化ケイ素(SiO)の骨格が形成され、所望の空隙率を有する第一薄膜を得ることができる。また、酸性溶液に含まれる酸性物質の緩衝作用が低い酸では、pHが上昇しやすいため酸処理時間が長時間必要になりやすい。
酸性溶液のpHは、2.5以上3.5以下の範囲内にあり、好ましくは2.7以上3.2以下の範囲内にある。酸性溶液のpHが2.5を下回ると、被成膜物と第二積層膜若しくは第二積層膜を構成する第一薄膜と第二薄膜の密着性が低く、膜強度が低下する場合がある。酸性溶液のpHが3.5を超えると、第一薄膜中に含まれる酸化インジウム(I)(InO)と極微量含まれる場合にはインジウム(In)の溶解速度が遅くなり、酸化インジウム(InO)と極微量含まれる場合にはインジウム(In)を全て溶出させるまでに時間を要し、製造効率が低下することが懸念される。
第一積層膜を酸性溶液に接触させる温度は、室温であればよい。具体的には、室温は15℃以上28℃以下の範囲内であり、好ましくは15℃以上25℃以下の範囲内である。第一積層膜を酸性溶液に接触させる温度は、高いほど第一積層膜の第一薄膜中の酸化インジウム(I)(InO)と極微量含まれる場合にはインジウム(In)の溶出を促進させることができ、接触時間を短縮できることができるので、製造上好ましい。温度が高すぎると、酸性溶液の溶媒が蒸発し、pHが下がってしまうため、密閉容器とするか、pHを常時監視し、調整するための設備が必要となるので、製造コストが高くなる虞がある。温度が低すぎると、冷却装置が必要となる場合があるので製造コストが高くなる虞がある。第一積層膜を酸性溶液に接触させる時間は、作業性を低下させることなく薄膜全体を透明にすることができる時間であればよい。
第一積層膜を酸性溶液に接触させる方法は、一般的には酸性溶液中に第一積層膜を形成した被成膜物を浸漬させる方法や、被成膜物に形成された第一積層膜のみを酸性溶液中に浸漬させる方法が挙げられる。場合によっては凝集した酸化インジウム(I)(InO)に取り囲まれた二酸化ケイ素(SiO)が酸化インジウム(I)(InO)と共に溶出する場合もある。
酸処理後に、骨格が二酸化ケイ素(SiO)で形成された空隙を有する第一薄膜と膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内の第二薄膜が交互に複数回積層された第二積層膜を有する光学薄膜となる。
酸処理前の第一積層膜の第一薄膜に極微量のインジウム(In)を含む場合は、第一薄膜に含まれる酸化インジウム(III)(In)及び/又はインジウム(In)の量は、積層膜を、pHが2.0以下の強酸性溶液に接触させた後に、得られる第二積層膜の屈折率が約0.01低下する程度の極微量である。第二積層膜の屈折率が約0.01低下する程度の極微量とは、極微量の酸化インジウム(III)(In)とインジウム(In)と極微量の二酸化(SiO)とが共に共脱離した場合に、第二積層膜の空隙率が約3%増加する程度の量である。
酸化インジウム(I)(InO)は、体色が黒色であり、第一薄膜に酸化インジウム(I)(InO)が残存していると、可視光を吸収する。例えば分光光度計で薄膜の吸収率{100-(透過率+反射率)}を測定することによって、第二積層膜が可視光を吸収した場合には第二積層膜の吸収率が上昇し、吸収率が上昇している場合には、第二積層膜の第一薄膜中に酸化インジウム(I)(InO)及び/又はインジウム(In)が残存していると推測できる。
高湿度処理工程
光学薄膜の製造方法は、酸処理工程の後、第二積層膜を、60℃以上100℃未満の温度範囲、絶対湿度80g/m以上250g/m以下の雰囲気中に1時間以上静置する高湿度処理工程を含むことが好ましい。得られた第二積層膜に高湿度処理工程を施すことによって、第二積層膜における光学特性の経時変化を抑制することができる。高湿度処理工程における温度は、60℃以上85℃以下の温度範囲でもよく、60℃以上80℃以下の温度範囲でもよい。高湿度処理工程における絶対湿度は80g/m以上250g/m以下が好ましく、より好ましくは90g/m以上220g/m以下、さらに好ましくは100g/m以上200g/m以下である。高湿度処理における絶対湿度が80g/m未満であると、高湿度処理の効果を十分得ることができない場合があり、250g/mを超えると、薄膜自体が損傷して、光の散乱が生じ、白濁する場合がある。高湿度処理時間は、1時間以上であればよく、2時間以上であってもよい。高湿度処理時間は、50時間以内であってもよく、効率よく光学薄膜のエージングを完了させるために、20時間以内であることが好ましく、15時間以内であってもよい。高湿度処理工程は、例えば恒温恒湿槽を用いて行うことができる。
第一薄膜、第二積層膜とも、長期間大気中で放置すると、屈折率が大きくなり、物理膜厚が減少する。これは、薄膜が収縮する経時変化を起こしていると考えられる。これを、高湿度処理により強制的に薄膜を十分収縮させることで、その後の経時変化を抑えることができる。
光学薄膜
光学薄膜は、酸化ケイ素を含む骨格と空隙を有する第一薄膜と、2nm以上40nm以下の範囲内の膜厚を有する二酸化ケイ素を含む第二薄膜とが交互に複数回積層された第二積層膜を含む。光学薄膜は、第二積層膜を含むため、第二積層膜の構成により、所望の屈折率を有し、第一薄膜の骨格が第二薄膜で支持され、膜強度が向上する。光学薄膜は、上述の製造方法によって製造された光学薄膜であることが好ましい。
第一薄膜の骨格に含まれる酸化ケイ素は、二酸化ケイ素であることが好ましい。光学薄膜は、上述の製造方法における酸処理工程によって第一薄膜から酸化インジウム(I)(InO)が溶出し、溶出した酸化インジウム(I)(InO)の周囲に付着していた二酸化ケイ素(SiO)によって形成された骨格が、同一の成分である二酸化ケイ素(SiO)を含む第二薄膜によって支持されるため、光学薄膜の膜強度が向上される。
光学薄膜は、断面において、第一薄膜に形成された空隙の最大長さが80nm以下であることが好ましい。光学薄膜の断面において、第一薄膜に形成された空隙の最大長さは、より好ましくは70nm以下であり、さらに好ましくは60nm以下であり、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは5nm以上である。光学薄膜の断面において、第一薄膜に形成された空隙の最大長さが80nm以下であると、所望の屈折率を得るための空隙が大きくならず、光学薄膜の膜強度を向上することができる。また、光学薄膜の断面において、第一薄膜に形成された空隙の最大長さが3nm以上であれば、所望の屈折率を得られる空隙を有する光学薄膜を得ることができる。第一薄膜に形成された空隙の最大長さは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、積層膜の断面のSEM画像を観察し、SEM画像において、骨格で区切られている個々の空隙について測定することができる。SEM画像で確認できる10個の空隙を観察し、その空隙の最大長さを測定することが好ましい。
第二積層膜の第一薄膜は、最大長さ80nm以下の空隙を有し、目的とする光学薄膜の屈折率を得るために、第一薄膜の膜厚が、1nm以上90nm以下の範囲内であってもよく、10nm以上80nm以下の範囲内であってもよく、20nm以上70nm以下の範囲内であってもよい。第一薄膜の膜厚は、第二積層膜の断面のSEM画像において、測定することができる。
光学薄膜の第二薄膜は、膜厚が2μm以上40μm以下であり、好ましくは3nm以上30nm以下の範囲内である。第二薄膜の膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内であれば、第一薄膜の骨格を支持し、膜強度を向上させることができる。第二薄膜の膜厚が2nm未満であり、第二薄膜の厚さが薄すぎると、第一薄膜の骨格を支持して強度を保つことができず、第一薄膜の骨格が壊れる場合がある。第二薄膜の膜厚が40μmを超えると、第二薄膜が厚くなりすぎて、第二積層膜の屈折率が高くなる場合がある。第二薄膜の膜厚は、成膜中に水晶振動子から得ることができる膜厚情報から読み取ることができる。
光学薄膜は、屈折率が1.380以下であることが好ましい。上述の製造方法によって形成された光学薄膜は、酸化ケイ素を含む骨格と、骨格間に形成された空隙を有する第一薄膜と、二酸化ケイ素を含む第二薄膜が交互に積層された第二積層膜を有し、第一薄膜において、第一薄膜の膜厚方向に第一薄膜の表面まで連続した骨格を有し、この骨格で区切られた空隙を有するため、屈折率が1.380以下であり、可視域全体にわたり反射防止効果を高めることができる。光学薄膜は、反射防止効果を高めるために、屈折率が、より好ましくは1.250以下であり、さらに好ましくは1.200以下である。光学薄膜の屈折率は、分光光度計で反射スペクトルを測定し、入射光強度を100としたときの反射光強度の極小値を反射率として測定し、この測定した反射率の極小値からフレネル係数を用いて算出することができる。
光学薄膜は、第二積層膜からなり、空隙率が30%以上90%以下の範囲内であることが好ましい。第二積層膜からなる光学薄膜の空隙率が30%以上であれば屈折率を低くすることができる。光学薄膜は、骨格間に形成された空隙を有する第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された第二積層膜からなり、膜強度が向上されている。そのため、空隙率を90%以下とした場合であっても、剥がれを抑制することができ、優れた膜強度を維持して、屈折率を低くすることができる。光学薄膜の空隙率は、より好ましくは40%以上90%以下の範囲であり、さらに好ましくは50%以上90%以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは60%以上85%以下の範囲内である。光学薄膜の空隙率(全気孔率Vp)は、後述する実施例に基づき、Lorenz-Lorenz式を用いて求めることができる。
光学部材
光学部材は、上述の光学薄膜と、被成膜物を備える。光学薄膜は、上述の製造方法によって形成された第二積層膜からなるものであることが好ましい。光学部材は、光学部材は、天体望遠鏡、眼鏡レンズ、カメラ、バンドパスフィルター、ビームスプリッター等の光学ピックアップ部品を備えたディスクドライブ装置、高精細の液晶パネルを備えた表示装置等の光学部材として利用することができる。また、光学薄膜を発光装置の外部への光の取り出し部分に適用することで、発光装置から外部へ光の射出を促進させ、発光装置における光の取り出し効率の向上や放熱性の向上を期待することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
第一材料の製造
酸化インジウム(III)粉末(In)(純度:99.99質量%)160gと、一酸化ケイ素粉末(SiO)(純度:99.9質量%)100gと、酸化ジルコニウム(ZrO)(純度:99.9質量%)2.6gと、を1Lのナイロンポットに投入し、これらの粉末とともに直径20mm(φ20)のナイロンボールを投入し、凝集物をほぐしながら30分混合し、原料混合物を得た。酸化ケイ素1モルに対する酸化インジウムのモル比(In/SiO)は、0.254であった。酸化インジウム及び酸化ケイ素の合計1モルに対する酸化ジルコニウムのモル比(ZrO/In及びSiO)は、0.0074であった。原料混合物をポットから取り出し、プレス成形し成形体とした。この成形体を不活性雰囲気(アルゴン(Ar):99.99体積%、酸素0.01体積%以下)中で、800℃で2時間焼成し、第一材料(焼結体)1を得た。
成膜工程
第一工程
被成膜物として、円板状の両面研磨板ガラス(ショット(SCHOTT AG)社製、BK-7)を用いた。蒸着装置内に、被成膜物と、第一材料1を配置し、蒸着装置内の圧力を1.0×10-4Paまで減圧した状態で、第一材料1に電子ビーム(日本電子株式会社製、JEBG-102UHO)を90mAで照射し、基板状の被成膜物の片面に酸化インジウム(I)(InO)と二酸化ケイ素(SiO)とを含む第一薄膜を形成した。成膜時の被成膜物の温度を80℃とし、成膜時にイオン銃(シンクロン社製、NIS-150)から放出されたArイオンによるイオンビームアシスト蒸着(Ion-bean Assisted Deposition:IAD)(加速電圧値-加速電流値=800V-800mA)を用いた。被成膜物のチャージアップを防止するため、ニュートラライザー(株式会社シンクロン、RFN-2、バイアス電流値=1000mA)を併用した。
実施例1の光学薄膜を製造する方法とは別に、第一薄膜の膜厚を測定した。すなわち、上述の第一工程を3回繰り返して第一薄膜を形成し、後述する酸処理工程と同様にして、酸性溶液に接触させ、第一薄膜を測定した光学特性から物理膜厚を算出し、その値の5分の1を第一薄膜の膜厚とした。なお、光学特性(制御波長λ、屈折率n)から物理膜厚を算出するには、以下の式(a)を用いた。
Figure 0007376777000001
式(a)中、dは薄膜の膜厚であり、λは制御波長、nは屈折率である。式(a)は、小檜山光信著、「光学薄膜の基礎理論-フレネル係数、特性マトリクス-」、株式会社オプトロニクス社出版、平成23年2月25日、増補改訂版第1刷の61頁を参照にした。
第二工程
第二材料として、市販の二酸化ケイ素(SiO)(純度99.9%、粒度2mmから5mm)を配置し、第一工程の直後に電子ビーム(プラズマテック株式会社製、G-12100)を110mAで照射し、水晶振動子(インフィコン株式会社製、XTC/2)で被成膜物に膜厚を3nmとするために必要な量の第二材料を用いて成膜することで、膜厚が3nmの第二薄膜を得た。第二薄膜の膜厚は、式(a)から計算された物理膜厚が3nmとなる水晶振動子設定値を、事前に光学特性から求めた。
第一工程と第二工程を交互に回繰り返し、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された10層の第一積層膜を得た。
酸処理工程
pH3.2のシュウ酸溶液を酸性溶液として用い、この酸性溶液に第一積層膜が形成された被成膜物を室温で浸漬し、第一積層膜の第一薄膜から酸化インジウム(I)(InO)を優先的に溶出させて、酸化ケイ素を含む骨格と、骨格間に形成された空隙を有する第一薄膜と第二薄膜が交互に10層積層された第二積層膜を得た。第一積層膜と酸性溶液との接触時間(浸漬時間)は、90分間とし、可視光の吸収が少ない第二積層膜を得て、第二積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。
高湿度処理工程
得られた第二積層膜を有する光学部材を、温度が80℃、絶対湿度が146g/mの雰囲気の恒温恒湿槽(エスペック株式会社製、LHU-114)に15時間静置することにより、高湿度処理を行った。
実施例2
成膜工程の第二工程において、第二薄膜の膜厚を5nmとし、第一工程と第二工程を交互に3回繰り返したこと以外は、実施例1と同様にして、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された6層の第二積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。高湿度処理工程も、実施例1と同様に行った。
比較例1
成膜工程において、第一工程のみを行って、第二工程を行うことなく、酸処理工程を行ったこと以外は実施例1と同様にして、膜厚が109nmの第一薄膜からなる光学薄膜と被成膜物を有する光学部材を製造した。高湿度処理工程も、実施例1と同様に行った。
比較例2
第一材料の準備工程において、第一材料に酸化ジルコニウムを26.0g用いた。酸化インジウム及び酸化ケイ素の合計1モルに対する酸化ジルコニウムのモル比(ZrO/In及びSiO)は、0.074であった。この第一材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして第一工程を行い、第二工程を行うことなく、酸処理工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚が97nmの第一薄膜からなる光学薄膜と被成膜物を有する光学部材を製造した。高湿度処理工程も、実施例1と同様に行った。
比較例3
第二工程において、第二薄膜の膜厚を1nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された10層の積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。高湿度処理工程も、実施例1と同様に行った。
比較例4
第二工程において、第二材料を酸化アルミニウム(Al)(純度99.9%、粒度1mmから3mm)とし、膜厚が2nmの酸化アルミニウム(Al)からなる第二薄膜を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、第一工程と第二工程を交互に3回繰り返して、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された6層の第二積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。高湿度処理工程も、実施例1と同様に行った。
比較例5
第二工程において、第二材料を酸化タンタル(Ta)(純度99.99%、粒度0.5mmから2.0mm)とし、膜厚が2nmの酸化タンタル(Ta)からなる第二薄膜を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、第一工程と第二工程を交互に3回繰り返して、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された6層の第二積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。高湿度処理工程も、実施例1と同様に行った。
光学薄膜の評価
以下のように実施例及び比較例の各光学薄膜の評価を行なった。結果を表1に示す。
空隙の最大長さ
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光学薄膜の断面のSEM画像を観察し、SEM画像において、骨格で区切られている個々の空隙の最大長さを測定した。SEM画像で確認できる空隙のうち、目視で大きいと確認された10個の空隙を観察し、骨格と骨格の間の空隙の最大長さを測定し、10個の空隙を測定した最大長さのうち、最大値を空隙の最大長さ(nm)とした。
屈折率
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ、U-4100、入射角5°)を用いて、各光学薄膜(光学薄膜)の反射スペクトルを測定した。入射光強度を100としたときの反射光強度の極小値を反射率として測定し、この測定した反射率からフレネル係数を用いて酸処理後高湿度処理前の各光学薄膜の屈折率と、高湿度処理後の各光学薄膜の屈折率とを算出した。
実施例において、光学薄膜を形成する基板状の被成膜物として両面研磨ガラスを用いていることから、測定から得られた反射率R’は、裏面反射を含む多重繰り返し反射を含んでいる。測定された反射率R’は、多重繰り返し反射を含んでいることから、光学薄膜の反射率Rは、以下の式(1)で表すことができる。
Figure 0007376777000002
前記式(1)中において、Rは基板(被成膜物)の反射率である。実際に測定された光学薄膜の反射率R’から式(1)に基づき、光学薄膜の反射率Rを算出した。光学薄膜の反射率Rは、裏面からの反射を考慮しない反射率である。
光学薄膜の反射率Rは、フレネル係数を用いると、基板(被成膜物)の屈折率nと光学薄膜の屈折率nを以下の式(2)を用いて表すことができる。
Figure 0007376777000003
ここで、大気の屈折率を1と近似し、基板の屈折率nの平方根よりも光学薄膜の屈折率nが大きい場合には、以下の式(3)で光学薄膜の屈折率nを表すことができる。
Figure 0007376777000004
また、基板の屈折率nの平方根よりも光学薄膜の屈折率nが小さい場合には、以下の式(4)で光学薄膜の屈折率nを表すことができる。
Figure 0007376777000005
前記式(1)ないし(4)に基づき、光学薄膜の屈折率nを算出した。なお、光学薄膜の屈折率nに関して、「小檜山光信著、「光学薄膜の基礎理論-フレネル係数、特性マトリクス-」、株式会社オプトロニクス社出版、平成23年2月25日、増補改訂版第1刷」を参照にした。
空隙率(%)
積層膜からなる光学薄膜の酸処理後、高湿度処理の前及び後それぞれの空隙率(全気孔率Vp)は、下記式(5)に示すLorenz-Lorenz式を用いて求めた。下記式(5)において、nは光学薄膜の観測された屈折率であり、nは光学薄膜の骨格の屈折率である。光学薄膜の屈折率nは、前記式(1)から(4)に基づき求めた高湿度処理の前後の光学薄膜の屈折率である。光学薄膜の骨格の屈折率nは、主に二酸化ケイ素(SiO)から構成されているため、二酸化ケイ素(SiO)の屈折率(1.460)を用いて求めた。
Figure 0007376777000006
膜強度試験
光学薄膜の上にシルボン紙を重ね、シルボン紙の上から鉛筆硬度試験器(JIS K5600 引っかき硬度(鉛筆法)を準拠した。)を用いて、500g/cmの荷重をかけながら、乾式で20往復した。シルボン紙を外し、光学薄膜の表面を目視で確認し、傷又は反射光の色変化が確認できたものを良くない(B:Bad)と評価し、第2の薄膜の表面に変化がないものを良い(G:Good)として評価した。
SEM画像
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光学薄膜の断面におけるSEM画像を得た。図1は、実施例1の酸処理後高湿度処理前の第二積層膜からなる光学薄膜の断面のSEM写真である。図2は、比較例1の酸処理後、高湿度処理前の第一薄膜からなる光学薄膜の断面のSEM写真である。
Figure 0007376777000007
実施例1及び2の光学薄膜は、酸処理後、高湿度処理の前後ともに屈折率が1.380以下と低くすることができた。また、実施例1及び2の光学薄膜は、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された第二積層膜を有し、第一薄膜に含まれる空隙の最大長さが60nm以下と小さくなった。このため、実施例1及び2の光学薄膜は、1.380以下の低い屈折率を有していながら、十分な膜強度を示した。
図1に示すように、実施例1の光学薄膜は、被成膜物から表面まで連続する空隙が形成されておらず、骨格間に空隙を有する第一膜と、膜厚方向に第一膜上に積層された第二膜が形成されていた。
比較例1の光学薄膜は、酸処理後、高湿度処理の前後ともに屈折率が1.380以下と低くなった。しかしながら、第一薄膜のみからなる光学薄膜は、二酸化ケイ素で形成された骨格が被成膜物から第一薄膜の表面まで連続し、空隙の最大長さが86nmと大きくなった。このため、比較例1の光学薄膜は、十分な膜強度を有していなかった。
図2に示すように、比較例1の光学薄膜は、被成膜物から表面まで連続する空隙が形成されていた。このため、比較例1の光学薄膜は、十分な膜強度を有していなかった。
比較例2の光学薄膜は、酸処理後、高湿度処理の前後ともに屈折率が1.181と低くなった。しかしながら、第一薄膜のみからなる光学薄膜は、二酸化ケイ素で形成された骨格が被成膜物から第一薄膜の表面まで連続し、空隙の最大長さが82nmと大きくなった。このため、比較例2の光学薄膜は、屈折率が実施例1とほぼ同等であるにもかかわらず、十分な膜強度を有していなかった。
比較例3の光学薄膜は、第一薄膜と第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成したが、第二薄膜の膜厚が1nmと薄く、第一薄膜の骨格を第二薄膜で支持することができず、酸処理によって第一薄膜の骨格が壊れて、骨格で囲われた空隙が形成されなかった。このため、酸処理後の空隙の最大長さ、屈折率及び空隙率が測定できなかった。
比較例4の光学薄膜は、第二薄膜を酸化アルミニウム(Al)で形成し、第一薄膜と第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成したが、第一薄膜の骨格を第二薄膜で支持することができず、酸処理によって第一薄膜の骨格が壊れて、骨格で囲われた空隙が形成されなかった。このため、酸処理後の空隙の最大長さ、屈折率及び空隙率が測定できなかった。
比較例5の光学薄膜は、第二薄膜を酸化タンタル(Ta)で形成し、第一薄膜と第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成したが、第一薄膜の骨格を第二薄膜で支持することができず、酸処理によって第一薄膜の骨格が壊れて、骨格で囲われた空隙が形成されなかった。このため、酸処理後の空隙の最大長さ、屈折率及び空隙率が測定できなかった。
比較例6
高湿度処理工程において、温度を50℃とし、絶対湿度を75g/mとしたこと以外は、実施例2と同様にして、第一工程と第二工程を交互に3回繰り返して、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された6層の第二積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。
比較例7
高湿度処理工程において、温度を80℃とし、絶対湿度を263g/mとしたこと以外は、実施例2と同様にして、第一工程と第二工程を交互に3回繰り返して、第一薄膜と第二薄膜が交互に積層された6層の第二積層膜からなる光学薄膜と被成膜物とを有する光学部材を製造した。
光学薄膜の評価(散乱の有無)
比較例6及び7の各光学薄膜について、実施例2と同様の評価を行い、さらに実施例2、比較例6及び7の各光学薄膜について、光の散乱の有無を目視で確認し、光の散乱がない場合は「無」とし、光の散乱がある場合には「有」と評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007376777000008
表2に示すように、実施例2の光学薄膜は、高湿度処理により屈折率が大きくなったが、透明のままであり、光の散乱も確認できなかった。実施例2の光学薄膜は、高湿度処理により収縮を促進させているため、長期保管しても屈折率の変化が少なくなると推測された。比較例6の光学薄膜は、高湿度処理工程においては屈折率がほとんど変化しなかったため、長期間保管中には屈折率が大きくなると推測された。比較例7の光学薄膜は、高湿度処理後に光学薄膜が収縮しすぎたことにより、白濁しており、光の散乱が発生していた。
本発明の一態様に係る製造方法によって得られた光学薄膜及び光学部材は、天体望遠鏡、眼鏡レンズ、カメラ、バンドパスフィルター、ビームスプリッター等の光学ピックアップ部品を備えたディスクドライブ装置、高精細の液晶パネルを備えた表示装置に利用することができる。

Claims (13)

  1. 酸化ケイ素と、酸化インジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の第一酸化物と、を含み、
    前記酸化インジウムを、前記酸化ケイ素1モルに対して、0.23モル以上0.27モル以下の範囲内で含み、
    必要に応じて前記酸化ジルコニウムを、前記酸化ケイ素及び前記酸化インジウムの合計1モルに対して、0.0010モル以上0.15モル以下の範囲内で含み、
    必要に応じて前記酸化ハフニウムを、前記酸化ケイ素及び前記酸化インジウムの合計1モルに対して、0.0006モル以上0.09モル以下の範囲内で含む、第一材料を準備し、前記第一材料に含まれる前記酸化ケイ素が、一酸化ケイ素を主成分として含む、準備工程と、
    前記第一材料を物理蒸着法により被成膜物に堆積させて、第一薄膜を形成する第一工程と、
    二酸化ケイ素を含む第二材料を物理蒸着法により第一薄膜上に堆積させて、膜厚が2nm以上40nm以下の範囲内の第二薄膜を形成する第二工程と、
    前記第一工程と前記第二工程を交互に繰り返して、前記第一薄膜と前記第二薄膜を交互に積層させた第一積層膜を形成する成膜工程と、
    前記第一積層膜を、pHが2.5以上3.5以下の範囲内の酸性溶液に接触させ、前記第一積層膜の前記第一薄膜に空隙を形成した第二積層膜を形成する酸処理工程と、を有する、光学薄膜の製造方法。
  2. 前記酸処理工程の後、前記第二積層膜を、温度が60℃以上100℃未満の範囲内であり、且つ、絶対湿度が80g/m以上250g/m以下の範囲内である雰囲気中で、1時間以上静置する高湿度処理工程、をさらに有する、請求項1に記載の光学薄膜の製造方法。
  3. 前記成膜工程において、前記第一工程と、前記第二工程を交互に2回以上10回以下繰り返すことを含む、請求項1又は2に記載の光学薄膜の製造方法。
  4. 前記酸処理工程において形成された前記第二積層膜は、その形成された骨格に含まれる酸化ケイ素が二酸化ケイ素である、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学薄膜の製造方法。
  5. 前記第一工程及び前記第二工程が、酸素が15体積%以下である雰囲気下で蒸着を行う工程である、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学薄膜の製造方法。
  6. 前記酸処理工程において、前記第一積層膜と、前記酸性溶液と、を室温で接触させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の光学薄膜の製造方法。
  7. 前記酸処理工程において、前記酸性溶液に含まれる酸性物質が、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、及びシュウ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から6のいずれか1項に記載の光学薄膜の製造方法。
  8. 酸化ケイ素を含む骨格と、前記骨格間に形成された空隙を有する第一薄膜と、二酸化ケイ素を含み、2nm以上40nm以下の範囲内の膜厚を有する第二薄膜と、が交互に複数積層された第二積層膜を含む、光学薄膜。
  9. 前記酸化ケイ素は、二酸化ケイ素である、請求項8に記載の光学薄膜。
  10. 断面における、前記第一薄膜に形成された前記空隙の最大長さが80nm以下である、請求項8又は9に記載の光学薄膜。
  11. 前記光学薄膜は、屈折率が1.380以下であり、
    前記光学薄膜の屈折率は、分光光度計で前記光学薄膜の反射スペクトルを測定し、入射光強度を100としたときの反射光強度の極小値を反射率として測定し、測定した前記反射率の極小値からフレネル係数を用いて算出する、請求項8から10のいずれか1項に記載の光学薄膜。
  12. 前記光学薄膜における空隙率が30%以上90%以下の範囲である、請求項8から11のいずれか1項に記載の光学薄膜。
  13. 前記請求項8から12のいずれか1項に記載の光学薄膜と、被成膜物と、を有する光学部材。
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