本発明の画像形成システムは、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーと画像形成装置とで構成される画像形成システムであって、前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、第1結着樹脂と第2結着樹脂とを含有し、前記画像形成装置が、少なくとも、前記静電荷像現像用トナーを使用して転写材上にトナー画像を形成する画像形成部と、定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とを有し、かつ、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で前記転写材を挟持し前記トナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を調整することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記トナー母体粒子がドメイン・マトリクス構造を有し、かつ前記第2結着樹脂がドメインとして含有されていることで、トナー粒子にかかる前記ずり応力による延展性が、マトリクスを構成する第1結着樹脂の性能が支配的になるため、より延展しやすくなり、好ましい。さらに、当該ドメインがトナー粒子の表面近傍に存在するため耐熱保管性も向上する。加えて、当該静電荷像現像用トナーの結着樹脂組成の一部がドメインとしてトナー粒子表面にあるため、トナー粒子内部にある離型剤の染み出し経路が存在している状態となることから、ドメイン・マトリクス構造の方がコア・シェル構造よりも離型剤が表面に染み出しやすく、光沢度の制御幅をより広くすることができる。
前記トナー母体粒子の断面の最大長さの平均値をrとしたとき、前記第2結着樹脂が、表面からr/4の深さ方向の断面の面積に対して80%以上の占有面積率にて含有されていることが、耐熱性を高める観点から、好ましい。
ここで、ドメインのトナー母体粒子表面近傍の占有面積率は、後述するトナー母体粒子断面画像にて、表面からr/4(r=トナー母体粒子の断面の最大長さの平均値)までの面積をaとし、面積aの中に存在するドメイン(染色で観察される部分)の面積総和をbとして、下記式により定義するものである。
占有面積率(%)=(b/a)×100
また、前記ドメインの平均径が、50〜150nmの範囲であることが好ましく、当該平均径は50nm以上では分散液の安定性がよく、150nm以下では耐熱性に優れるため、好ましい。
また、前記トナー母体粒子が、前記第1結着樹脂として、ビニル樹脂を含有することが好ましく、当該ビニル樹脂がスチレン・アクリル樹脂であることがより好ましい。製造時にトナー内に離型剤を内包しやすく、定着時の離型剤の染み出しを制御しやすい。
前記トナー母体粒子が、前記第2結着樹脂として、非晶性ポリエステルを含有することが好ましく、前記非晶性ポリエステルが、ビニル系重合セグメントとポリエステル系重合セグメントとが化学的に結合して形成されたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂であることが、定着性と耐熱性のバランスをとる観点から好ましい。
さらに、第2結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が、前記第1結着樹脂のTgより10℃以上高いことが、トナー粒子の延展性を高め、光沢度の制御幅を広くする観点から、好ましい。
前記定着部材と前記加圧部材を回転駆動させたときの、それぞれの表面速度の差が、前記加圧部材の表面速度に対して±10%以内であることが、トナー粒子の延展性を高め、光沢度の制御幅を広くすることと、定着部材として破損等が生じないこととの両立を図る観点から、好ましい範囲である。
前記離型剤が炭化水素系化合物を含有し、前記トナー母体粒子中に平均5〜15質量%の範囲内で含有することが、前記第1結着樹脂との溶解パラメーター(SP値)を離すことによって染みだしを大きくできるため、光沢度の制御幅を広くでき、かつ耐熱保管性を維持することができることから、好ましい。
前記母体粒子が、第2結着樹脂を平均5〜25質量%の範囲内で含有することが、耐熱性と定着性を劣化させることがなく、さらに光沢度の制御幅を広くすることができ、好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の画像形成システムの概要≫
本発明の画像形成システムは、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーと画像形成装置とで構成される画像形成システムであって、前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、第1結着樹脂と第2結着樹脂とを含有し、前記画像形成装置が、少なくとも、前記静電荷像現像用トナーを使用して転写材上にトナー画像を形成する画像形成部と、定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とを有し、かつ、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で前記転写材を挟持し前記トナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を調整することを特徴とする。
ここで本発明における静電荷像現像用トナーとは、トナー粒子の集合体をいう。また、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいう。なお、本発明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを区別する必要がない場合には、単にトナー粒子と称することがある。
本発明の画像形成システムは、画像形成装置の定着部材及び加圧部材の表面速度を変化することでトナー粒子上部と下部とに変形速度差(=ずり又はすり応力)が生じ、トナー粒子が転写材上に延展し、当該延展の度合いが変化すると画像表面の凹凸が変化するため光沢度が変化するものである。
延展のしやすさとしては、静電荷像現像用トナーがコア・シェル構造粒子である場合よりもドメイン・マトリクス構造粒子である場合の方が有利である。これは、一般的に高Tgである結着樹脂によりシェルとして膜化した場合は、その硬さゆえにずり応力による変形が発生し難いが、高Tgの結着樹脂が膜化せずにドメイン状態で存在すると、トナー粒子のずり応力による変形は、マトリクスである低Tgの結着樹脂の性能が支配的となるため変形しやすく、かつ延展しやすい。
加えて、トナー粒子内部にある離型剤が、前記コア・シェル構造のシェルとして膜化した場合に比べて、ドメイン・マトリクス構造では結着樹脂の一部がドメインとしてトナー表面にあるため、離型剤の染み出し経路が内部から表層にかけて存在している状態となり、トナー粒子が延展又は割れることにより当該離型剤が染み出しやすいと考えられる。ワックスが画像表面に存在すると画像表面が平滑となるためより高光沢となる。
したがって、駆動部によって回転駆動する定着部材及び加圧部材の表面速度に差を有するように駆動制御する本発明に係る画像形成装置と、第1結着樹脂と第2結着樹脂を有する本発明に係る静電荷像現像用トナーを組み合わせて用いることによって、トナー粒子の延展性とワックス染み出し効果が大きく変化し、光沢度の制御幅をより広げることができる。
図1は、種々なトナー粒子の定着部材による延展のしやすさを説明する模式図である。
図1(a)は、トナー粒子が単一の結着樹脂(ここでは第1結着樹脂とする。)のみで構成されている場合を示し、当該結着樹脂のみではトナーの耐熱保管性のために比較的高Tgに設計されるために、定着部材と加圧部材の表面速度に差があり、ずり応力が発生しても、トナー粒子が変形しにくく光沢度の制御幅が小さい(図1(a)ステップa〜ステップc)。
図1(b)は、トナー粒子が第1結着樹脂を含有するコア部と第2結着樹脂を含有するシェル部からなる、コア・シェル構造を有するトナー粒子の場合を示し、コア部を低Tg化できることから、ずり応力によって単一組成のトナー粒子より延展しやすい。しかしながら、一般的に高Tgであるシェル粒子により膜化すると、その硬さゆえにずりによる変形が生じにくく、また離型剤(ワックス)がトナー粒子表面に出にくいこともあり、光沢度の制御幅が要求されるレベルよりも小さい(図1(b)ステップd〜ステップf)。
図1(c)は、トナー粒子が第1結着樹脂を含有するマトリクスと第2結着樹脂を含有するドメインからなる、ドメイン・マトリクス構造を有する粒子の場合を示す。この場合、前記表面速度差によるずり応力によって、マトリクスである低Tgの第1結着樹脂の性能が変形に対して支配的となるため延展しやすく、かつ、トナー粒子に亀裂が入りやすいことから、トナー粒子内部にある離型剤が表面に染み出しやすくなるため、光沢度の制御幅は広くなる(図1(c)ステップg〜ステップi)。また、当該ドメインが表層近傍には存在するためトナー粒子自体の耐熱保管性も向上する。
〔1〕静電荷像現像用トナー
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有するトナー母体粒子を含み、当該トナー母体粒子が、当該結着樹脂として第1結着樹脂及び第2結着樹脂とを含有することを特徴とする。
[1]トナー母体粒子
前記第1結着樹脂及び第2結着樹脂とを含有するトナー母体粒子の構造は、コア・シェル構造やドメイン・マトリクス構造であることが好ましいが、ドメイン・マトリクス構造であることがより好ましい。
ここで、「ドメイン・マトリクス構造」とは、「海島構造」ともいい、トナー母体粒子の連続相(マトリクス:海に相当する。)中に、閉じた界面(相と相との境界)を有する島状の分散相(ドメイン)が存在する構造のものをいう。
≪ドメイン・マトリクス構造を有するトナー母体粒子≫
本発明に係るドメイン・マトリクス構造を有するトナー母体粒子においては、マトリクスが第1結着樹脂を含有し、ドメインが第2結着樹脂を含有するものであることが好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂として非晶性樹脂を含有することが好ましい。中でも、第1結着樹脂として非晶性樹脂であるビニル樹脂を用いることが好ましい。さらに、第2結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、当該非晶性ポリエステルが、ビニル系重合セグメントとポリエステル系重合セグメントとが化学的に結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
加えて、前記第1結着樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、第2結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が、10℃以上高いことが好ましい。ガラス転移温度(Tg)をそれぞれの材料等の選択により調整することで、トナー粒子の延展性が変わり、光沢制御の幅を大きくすることができる。
また本発明に係る静電荷像現像用トナーは、離型剤を含有している。さらに静電荷像現像用トナーには、着色剤等をさらに含有することができ、必要に応じて荷電制御剤、外添剤等も含有することができる。
本発明に係るドメイン・マトリクス構造を有するトナー母体粒子においては、非晶性樹脂中に非晶性ポリエステル樹脂、又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂が非相溶に導入された部分がある状態を示す。ドメインはラメラ状結晶構造を含有していてもよい。なお、この構造は、下記により観察することができる。また、ドメイン中又はマトリクス中に樹脂以外に離型剤であるワックス等が添加されていることが好ましい。
装置:電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO4)によって染色したトナー粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:30kV
倍率:50000倍
観察条件:透過電子検出器、明視野像
前記染色したトナー粒子の切片の作製方法は以下のとおりである。
トナー1〜2mgを10mLサンプル瓶に広げるように入れ、下記に示すように四酸化ルテニウム(RuO4)を蒸気染色条件下で処理後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子社製)中に分散させ、光硬化させてブロックを形成した。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックから厚さ60〜100nmの超薄片状のサンプルを切り出した。その後、切り出したサンプルを再び下記処理条件にて処理し、染色した。
・四酸化ルテニウム処理条件
四酸化ルテニウム処理は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン(株)製)を用いて行う。装置手順にしたがい、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、トナー又は超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で処理を行う。
上記処理により得られた試料について以下のように観察を行う。
・観察
染色後、24時間以内に電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)にて観察する。
前述のとおり、本発明に係る静電荷像現像用トナーがドメイン・マトリクス構造を有するときに、前記ドメインの平均径が、50〜150nmの範囲であることが好ましい。当該ドメインの平均径は上記の方法によって染色されたドメインを電子顕微鏡及び画像処理解析装置(例えば、「LUZEX(登録商標) AP」(株)ニレコ製)によって観察、解析することによって測定することができる。ここでいう、ドメインの平均径とはドメインの長径の平均値をいう。
〈マトリクス〉
トナー母体粒子を構成するマトリクスとしては、第1結着樹脂として非晶性樹脂であるビニル樹脂を含有することが、好ましい。
ここで、非晶性を示すとは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により得られる吸熱曲線において、ガラス転移点(Tg)を有するが、融点すなわち昇温時の明確な吸熱ピークがないことをいう。明確な吸熱ピークとは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内の吸熱ピークをいう。
(ビニル樹脂)
ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂のなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−アクリル酸エステル樹脂(スチレン・アクリル樹脂ともいう。)が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂としてのスチレン・アクリル樹脂について説明する。
スチレン・アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレン・アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレン・アクリル樹脂セグメントの形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
先ず、スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」を総称したもので、たとえば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル(メチルアクリレート)」と「メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)」を総称したものである。
これらのアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、又は、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
スチレン・アクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
スチレン・アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、60〜85質量%であることが好ましい。また、スチレン・アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、10〜35質量%であることが好ましい。このような範囲とすることにより、非晶性樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
低温定着性確保の観点から、ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜100000であることが好ましく、20000〜90000であることがより好ましい。
ビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、トナー母体粒子の定着時の延展性を高める観点から、30〜75℃の範囲内であることが好ましく、35〜70℃の範囲であることがより好ましく、35〜60℃の範囲内であることが更に好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量測定装置、例えばダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いて測定することができる。具体的には、試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入してホルダーにセットする。リファレンスとして空のアルミニウム製パンをセットする。昇降速度10℃/minで0℃から100℃まで昇温して100℃を1分間保持する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで100℃から0℃まで冷却して、0℃の温度を1分間保持する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から100℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって、2回目の加熱時に得られた測定曲線においてベースラインのシフトを観察し、シフトする前のベースラインの延長線と、ベースラインのシフト部分の最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点(Tg)とする。
また、上述したビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって測定した分子量分布から求めることができる。
試料を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製する。GPC装置HLC−8120GPC(東ソー社製)及びカラムTSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/minで流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。検量線は、分子量がそれぞれ6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106である10点のポリスチレン標準粒子(Pressure Chemical社製)を測定することにより、作成する。
〈ドメイン〉
トナー母体粒子を構成するドメインとしては、第2結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、当該非晶性ポリエステル樹脂が、ビニル系重合セグメントとポリエステル系重合セグメントとが結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
(非晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係るトナー母体粒子には、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。また、非晶性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、使用される非晶性樹脂の分子量は特に限定されるものではない。
非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。具体的な非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
製造の際に使用可能な触媒、重縮合(エステル化)の温度、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様である。
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、5000〜100000の範囲内であることが好ましく、5000〜50000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。上記重量平均分子量(Mw)は、上記した方法により測定することができる。
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
多価カルボン酸としては、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性の樹脂を形成することができれば、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用しても良い。
上記不飽和脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸、炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸、アコニット酸等の不飽和脂肪族トリカルボン酸;4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等の不飽和脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記芳香族多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−フェニレン二酢酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸等の芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸;メリト酸等の芳香族ヘキサカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記多価カルボン酸は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
多価アルコールとしては、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性制御の観点から、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性の樹脂を得ることができれば、飽和脂肪族多価アルコールを併用しても良い。
上記不飽和脂肪族多価アルコールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,4−ジオール、9−オクタデセン−7,12−ジオール等の不飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。
上記芳香族多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、これらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、1,3,5−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。これらの中でも、特に熱特性を適正化しやすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールA化合物を用いることが好ましい。
また、3価以上の多価アルコールの炭素数は特に制限されないが、熱特性を適正化させやすいことから、炭素数3〜20の範囲内であることが好ましい。
上記多価アルコールは、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、トナー粒子の耐熱保管性の観点から、45〜75℃の範囲内であることが好ましく、50〜70℃の範囲であることがより好ましく、55〜65℃の範囲内であることが更に好ましい。
非晶性樹脂のガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び耐熱保管性が両立して得られる。
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070−1992に記載の方法(電位差滴定法)に準拠して測定することができる。今回の測定においては、溶剤はテトラヒドロフランとイソプロピルアルコールを体積比1:1で混合したものを使用する。
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係る結着樹脂においてドメインに含有されるハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、ビニル系重合セグメントとポリエステル系重合セグメントとが化学的に結合した樹脂であることが好ましい。以下、「ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂」を「ハイブリッド樹脂」ともいう。
前記ビニル系重合セグメントとポリエステル系重合セグメントとは、両反応性単量体を介して結合されていることが好ましい。なお、上記ポリエステル系重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
ハイブリッド樹脂を構成するビニル系重合セグメントとは、ビニル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、ビニル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。ここで、ビニル単量体としては、ビニル樹脂を構成する単量体として上述したものが同様に用いられ得るため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ハイブリッド樹脂中におけるビニル系重合セグメントの含有量について特に制限はないが、当該ハイブリッド樹脂のハイブリッド化率は1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、10〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。
ハイブリッド樹脂を構成するポリエステル系重合セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された非晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類については、上述したとおりである。
両反応性単量体とは、ポリエステル系重合セグメントとビニル系重合セグメントとを結合する単量体で、分子内に、ポリエステル系重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、ビニル系重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基又はカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1〜3個)のエステルであっても良いが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介してポリエステル系重合セグメントとビニル系重合セグメントとが結合される。
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、例えば、ビニル系重合セグメントを構成するビニル単量体の総量100質量部に対して1〜10質量部の範囲内が好ましく、4〜8質量部の範囲内がより好ましい。
ハイブリッド樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
〈1〉ポリエステル系重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ポリエステル系重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル系重合セグメントを形成するための芳香族系ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体を反応させることにより、ハイブリッド樹脂を形成する方法。
〈2〉ビニル系重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ビニル系重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル系重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、ポリエステル系重合セグメントを形成する方法。
〈3〉ポリエステル系重合セグメント及びビニル系重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
本発明においては、上記製造方法のうち、いずれも用いることができるが、上記〈2〉項の方法が好ましい。具体的には、ポリエステル系重合セグメントを形成する多価カルボン酸及び多価アルコール、並びにビニル系重合セグメントを形成するビニル単量体及び両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えてビニル単量体と両反応性単量体を付加重合させてビニル系重合セグメントを形成した後、エステル化触媒を加えて、重縮合反応を行うことが好ましい。
ここで、ポリエステル系重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。また、エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、例えば、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)等が挙げられる。
低温定着性と耐熱保管性との両立の観点から、ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜100000であることが好ましく、20000〜90000であることがより好ましい。
ハイブリッド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、非晶性ポリエステル樹脂と同様に、45〜75℃の範囲内であることが好ましく、50〜70℃の範囲であることがより好ましく、55〜65℃の範囲内であることが更に好ましい。
(結着樹脂中の非晶性樹脂、及び非晶性ポリエステル樹脂又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の含有量)
結着樹脂中の第1結着樹脂である非晶性樹脂の含有量は、結着樹脂全体に対して50〜97質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、良好な低温定着性を有しつつ、かつ帯電均一性、耐熱保管性、及びHH転写性が共に向上したトナーが得られる。
さらに結着樹脂中の第2結着樹脂である非晶性ポリエステル樹脂又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全体に対して3〜50質量%が好ましく、4〜40質量%がより好ましく、5〜25質量%がさらに好ましい。この範囲であれば、良好な低温定着性を有しつつ、かつ耐熱保管性が向上し、さらに光沢度の制御幅をより広くすることができる。
≪コア・シェル構造を有するトナー母体粒子≫
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、コア・シェル構造を有するトナー母体粒子であってもよい。ここで、コア・シェル構造とは、コア粒子の表面にシェル層を形成する樹脂を凝集、融着させた形態をいう。
前記非晶性樹脂をコア粒子とし、前記非晶性ポリエステル樹脂又は前記ビニル系重合セグメント及びポリエステル系重合セグメントが結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂をシェル層として、コア粒子上に配置した粒子であることが好ましい。
シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
コア・シェル構造の場合は、コア粒子とシェル層でガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることができ、目的に応じたトナー粒子の設計が可能である。例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤等を含有し、ガラス転移点(Tg)が比較的低いコア粒子の表面に、ガラス転移点(Tg)が比較的高い樹脂を凝集、融着させて、シェル層を形成することが好ましい。
コア・シェル構造を有するトナー粒子の製造方法は、特開2016−161780号公報を参照できる。乳化凝集法によってコア・シェル構造を有するトナー粒子を得るには、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤とを凝集(、融着)させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル部用の結着樹脂微粒子を添加して、コア粒子表面にシェル部用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル部を形成することにより得ることができる。
[2]離型剤
離型剤としては、特に限定されるものではなく公知の種々のワックスを用いることができる。使用できる離型剤としては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素系ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックス等が挙げられる。
離型剤の融点は、60〜90℃の範囲内であることが好ましい。これにより、トナーの製造時に、離型剤がトナー粒子内で分散状態を維持しやすくなり、離型性のトナー粒子表面への露出が抑制される。
好ましい離型剤は炭化水素系化合物を含有し、その含有量は、前記トナー母体粒子100質量%に対して平均1〜20質量%の範囲内で含有することすることが、第1結着樹脂とのSP値を離すことによって染みだしが多くなるため、光沢度の制御幅を広くでき、かつ耐熱保管性を維持することができる。
当該離型剤の含有量は、平均5〜15質量%の範囲内にあることがより好ましい。
[3]着色剤
本発明においてトナー粒子は、着色剤として一般に知られている染料及び顔料を組み合わせて、着色剤として使用することができる。また、着色剤として、イエローの顔料を用いて、低温定着性に優れ、かつ飛散が少ないイエロートナーを好適に製造することができる。
イエロートナー用の着色剤としては、少ない含有量でも優れた着色力を得ることができる観点から、顔料としてC.I.Pigment Yellow74を用いることが好ましい。これにより、着色剤の含有量を少なくすることができるため、トナーへの着色剤の取り込み性がよくなることでトナーの飛散を抑え、フィラー効果を抑えることで優れた低温定着性が得られると考えられる。
また、イエロートナー用の着色剤として目的の色味又はより高い着色力を得る観点からは、C.I.Pigment Yellow74とともに、顔料として、C.I.Pigment Yellow93、C.I.Pigment Yellow155、C.I.Pigment Yellow180、C.I.Pigment Yellow185、C.I.Solvent Yellow93及びC.I.Solvent Yellow163のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの併用できる顔料の含有量は、高い着色力を得ながら、帯電性の低下を防ぐ観点から、トナー母体粒子100質量%に対して1〜10質量%の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3〜8質量%の範囲内である。
上記イエロー系の顔料以外にも、目的の色味に合わせて、一般に知られている染料、有機顔料を組み合わせて、着色剤として使用することができる。有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.Pigment Yellow14、同17、同94、同138、C.I.Pigment Orage31、同43、C.I.Pigment Blue15:3、同60、同76等を挙げることができ、染料としては、例えば、C.I.Solvent Red1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.Solvent Yellow19、同44、同77、同79、同81、同82、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.Solvent Blue25、同36、同69、同70、同93、同95等を挙げることができる。
着色剤の含有量は、トナー母体粒子100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量部の範囲内である。
[4]荷電制御剤、外添剤
本発明に係るトナー粒子中には、上記必須成分の他、必要に応じて、荷電制御剤などの内添剤;無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていてもよい。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩など、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー母体粒子100質量%に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%となる量とされる。
荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均一次粒子径で10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
(外添剤)
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するため、流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤で処理されていてもよい。
外添剤としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等の無機ステアリン酸化合物微粒子、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の向上の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理が行われていることが好ましい。
外添剤の添加量(複数の外添剤を用いる場合はその合計の添加量)は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
[5]静電荷像現像用トナーの製造方法
本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法としては、例えば混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法、その他の公知の方法等を挙げることができる。これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性、ドメイン・マトリクス構造形成の容易性の観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
乳化凝集法による本発明に係るトナー粒子の製造方法は、非晶性ビニル樹脂粒子の水系分散液と、非晶性ポリエステル樹脂粒子又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、着色剤粒子の水系分散液と、を混合し、非晶性樹脂粒子、非晶性ポリエステル樹脂粒子又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させることにより、トナー粒子を形成する方法である。
(乳化凝集法)
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂の微粒子(以下、「樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、着色剤の微粒子などのトナー粒子構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
ここで、樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなるコア・シェル構造を有するトナー粒子や、ドメイン・マトリクス構造を有する複数層で形成された複合粒子とすることができる。
樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂微粒子に離型剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
トナー粒子中に、離型剤を含有させる場合は、樹脂微粒子が離型剤を含有したものとしてもよく、また、別途離型剤のみよりなる離型剤微粒子の分散液を調製し、当該離型剤微粒子を、樹脂微粒子を凝集させる際に、共に凝集させてもよい。
また、乳化凝集法によってはドメイン・マトリクス構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にドメイン・マトリクス構造を有するトナー粒子は、先ず、マトリクス粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤とを凝集(、融着)させてマトリクス粒子を作製しながら、次いで、マトリクス粒子の分散液中にドメイン用の結着樹脂微粒子を添加して、マトリクス粒子内部から表面にかけてドメイン用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてマトリクス粒子にドメインを形成することにより得ることができる。
以下、乳化凝集法によるトナーの製造方法の工程の一例を説明する。
(工程(1))
工程(1)では、非晶性樹脂の分散液として、非晶性ビニル樹脂粒子の水系分散液を調製する。この段階で非晶性ビニル樹脂粒子に離型剤を含有させることが好ましい。
具体的には、非晶性ビニル樹脂を合成し、有機溶媒中に溶解又は分散させて油相液を調製し、この油相液を転相乳化して水系媒体中に非晶性ビニル樹脂粒子を分散させる。油滴の粒径を所望の粒径に制御した後、有機溶媒を除去することにより、非晶性ビニル樹脂の水系分散液を得ることができる。
油相液に使用する有機溶媒としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ水への溶解性が低いものが好ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、非晶性ビニル樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部の範囲内である。
油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。
(工程(2))
工程(2)では、非晶性ポリエステル樹脂粒子又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の水系分散液を調製する。
非晶性ポリエステル樹脂粒子又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液は、上記と同様にして調製することができる。
非晶性ポリエステル樹脂粒子又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(d50)で30〜400nmの範囲内にあることが好ましい。非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、マイクロトラックUPA−150(日機装社製)を用いて測定することができる。
(工程(3))
工程(3)では、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて、着色剤粒子の水系分散液を調製する。
着色剤粒子の水系分散液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度(CMC)以上に添加した水系媒体中に着色剤を分散させることにより得ることができる。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、使用する分散機としては、特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
水系分散液中の着色剤粒子は、体積基準のメジアン径(d50)が10〜300nmの範囲内であることが好ましく、100〜200nmの範囲内であることがより好ましく、100〜150nmの範囲内であることが特に好ましい。
着色剤粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、マイクロトラックUPA−150(日機装社製)を用いて測定することができる。
(工程(4))
工程(4)では、非晶性ビニル樹脂粒子、非晶性ポリエステル樹脂粒子、着色剤粒子及びその他のトナー構成成分の粒子を凝集させて、トナー粒子を形成する。
具体的には、水系媒体と各粒子の水系分散液を混合した系に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え、非晶性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上の温度にすることによって、凝集させる。
(凝集剤)
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等の1価の金属塩、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(工程(5))
工程(5)では、工程(4)により形成したトナー粒子の熟成処理を行い、所望の形状に制御する。工程(5)は、必要に応じて行うことができる。
具体的には、工程(4)において得られたトナー粒子の分散液を加熱撹拌し、トナー粒子が所望の円形度になるように、加熱温度、撹拌速度、加熱時間等を調整する。
(工程(4B))
工程(4B)では、工程(4)又は(5)で得られたトナー粒子をマトリクス粒子として、マトリクス粒子の内部から表面にかけて少なくとも一部にドメインを形成する。工程(4B)は、ドメイン・マトリクス構造のトナー粒子を形成する場合に行えばよい。
ドメイン・マトリクス構造のトナー粒子を形成する場合、ドメインを構成する樹脂を水系媒体中に分散させて、ドメインの樹脂粒子の分散液を調製し、マトリクス粒子の内部から表面にかけてドメインの樹脂粒子を凝集、融着させる。これにより、ドメイン・マトリクス構造を有するトナー粒子の分散液を得ることができる。
マトリクス粒子にドメインの樹脂粒子をより強固に凝集、融着させるため、加熱処理工程を行うことができる。加熱処理は、目的の円形度のトナー粒子が得られるまで行えばよい。
(工程(6))
工程(6)では、トナー粒子の分散液を冷却処理する。冷却処理の条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等を例示することができる。
(工程(7))
工程(7)では、冷却したトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ケーキ状に成形されたウェット状態にあるトナー粒子)から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去して洗浄する。
固液分離は、特に限定されず、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法等を用いることができる。また、洗浄においては、スラリーの電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄することが好ましい。
(工程(8))
工程(8)では、洗浄後のトナーケーキを乾燥する。
トナーケーキの乾燥には、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することが好ましい。
乾燥後のトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
なお、乾燥後のトナー粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、その凝集体を解砕処理してもよい。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(工程(9))
工程(9)では、トナー粒子に対して外添剤を添加する。工程(9)は、必要に応じて行うことができる。
外添剤の添加には、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
[6]静電荷像現像用トナーの物性
<トナー粒子の粒径>
トナー粒子の平均粒径としては、体積基準のメジアン径(d50)が3〜15μmの範囲内にあることが好ましく、4〜8μmの範囲内にあることがより好ましい。
上記範囲内にあれば、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像であっても高い再現性が得られる。
なお、トナー粒子の平均粒径は、製造時に使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
トナー粒子の体積基準のメジアン径(d50)の測定には、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いることができる。
具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmとし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(d50)として得る。
<トナー粒子の平均円形度>
トナー粒子は、帯電特性の安定性及び低温定着性を高める観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内にあることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内にあることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内にあれば、個々のトナー粒子が破砕しにくくなる。これにより、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。
トナー粒子の平均円形度は、FPIA−3000(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にて馴染ませ、超音波分散処理を1分間行って分散させる。その後、FPIA−3000(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行う。HPF検出数が上記の範囲内であれば、再現性のある測定値を得ることができる。撮影した粒子像から、個々のトナー粒子の円形度を下記式(I)に従って算出し、各トナー粒子の円形度を加算して全トナー粒子数で除することにより、平均円形度を得る。
式(I):トナー粒子の円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
[7]現像剤
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリア等用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)としては、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、25〜80μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)は、例えば、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置ヘロス(HELOS)(SYMPATEC社製)により測定することができる。
〔2〕画像形成装置
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る静電荷像現像用トナーを使用して転写材にトナー画像を形成する画像形成部と、定着部材と、前記定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材と、前記加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とを有し、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で転写材を挟持し画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を変更することを特徴とする。
前記定着部材の前記定着駆動部によって回転駆動したときの表面速度が、前記加圧部材の前記加圧駆動部によって回転駆動したときの表面速度に対して、その差が±10%の範囲内に制御することが、光沢度の制御幅をより広げる観点と定着部材として破損等が生じない観点から、好ましい範囲である。
前記定着部材の表面速度及び前記加圧部材の表面速度は、例えば、前記定着部材及び加圧部材がローラーである場合、外周の任意の場所に印をつけ、当該ローラーを所定の回転数で回転した時の印を付けた箇所の移動距離(周長)を、動画撮影装置等を用いて、測定解析することで求めることができる。表面速度の単位は(mm/sec)を用いる。
また、回転駆動する前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との関係は以下の式1によって求めることができる。
式1 加圧部材の表面速度に対する定着部材の表面速度の比率(%)={(定着部材の表面速度(mm/sec)−加圧部材の表面速度(mm/sec))÷加圧部材の表面速度(mm/sec)}×100
[1]定着部材
定着部材としては、定着ローラーや定着ベルトを用いる方式が知られているが、特に制限はなくどちらも好ましく用いることができる。
定着ローラーは、画像形成装置において、トナー粒子を転写材に定着させるゴムローラーであることが好ましく、芯材の外層に、例えば、シリコーンゴム組成物を用いて成形されたゴム部材を被覆してなるものである。同様に、定着ベルトは、トナー粒子を転写材に定着させる樹脂ベルトであることが好ましく、一般にポリアミド等の樹脂ベルトの外層として、例えば、下記シリコーンゴム組成物を用いて成形されたゴム部材を被覆してなるものである。
定着ローラーは、芯金と、芯金の外周面を覆うように設けられたソリッドゴム層と、ソリッドゴム層の外周面を覆うように設けられたスポンジゴム層との3層構造を有しているものであってもよいが、これらに限定されない。ここで、ソリッドゴム層及びスポンジゴム層は、それぞれシリコーンゴムから構成されていることが好ましい。
定着ローラーにおいて、芯金はアルミニウム、鉄、及びSUSなどの金属材料から構成されていることが好ましい。
芯金2の厚さは、0.1〜5mm程度であるが、軽量化及びウォームアップ時間を考慮すると、0.1〜1.5mm程度であることがより好ましい。芯金2の直径は、10〜50mm程度であることが好ましい。
シリコーンゴムは、上記定着温度に対する耐熱性と、転写材が圧接される領域の寸法(ニップ部の長さ)を確保するための弾性とを有していることが好ましい。
ソリッドゴム層は固体状の硬質な層である。ソリッドゴム層の厚さは5〜10mmの範囲内であることが好ましく、7〜8mmの範囲内であることがより好ましい。
他方、スポンジゴム層は無数のマイクロバルーンを含むスポンジ状の軟質な層である。スポンジゴム層4の厚さは、5〜100μmの範囲内であることが好ましく、80〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
図2は、本発明に用いられる定着装置の一例を示す模式図である。
例えば、定着装置は図2で示されるような二軸ベルト方式の定着装置であってもよいし、後述する図3の加熱ローラー132及び加圧ローラー131で示される一軸ベルト方式であってもよい。
図2で示される二軸ベルト方式の定着装置では、定着装置10は、各々が紙面垂直方向に回転軸を有する加熱ローラー12と加圧部材である加圧ローラー13及び加圧ローラー13に圧接された定着部材である定着ローラー14とが配置されておりこの間に転写材Pが搬送される。加熱ローラー12は、少なくとも一部が中空になっており、その中空部分のヒーターなどの熱源(図示しない)が配置される。この内部の発熱によって、定着ベルト11が加熱される。
また、前記定着部材である定着ローラー14を回転駆動する定着駆動部(不図示)と、前記加圧部材である加圧ローラー13を回転駆動する加圧駆動部(不図示)と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部(後述する制御部200)とを有している。当該駆動制御部によって、前記定着ローラーと前記加圧ローラーの表面速度を制御する。
以上の構成において、不図示の駆動手段によって加圧ローラー14が反時計方向に回転すると、定着ベルト11、加熱ローラー12、定着ローラー14が時計方向に回動・回転する。定着ベルト11は当接する加熱ローラー12により加熱され、定着ローラー14も加熱される。そして、トナー像が形成された転写材は、ニップ部を通ることにより、加熱・加圧され、転写材上に転写されたトナー像が溶融定着する。
ここで転写材Pとしては、特に限定されず、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができる。
定着部材の製造方法は、シリコーンゴム原料に、重量平均分子量が900〜1700の範囲内である高分子ケイ素化合物を添加してシリコーン混合物を調製する工程と、当該シリコーン混合物からなるシリコーンゴムの前駆体を加熱する工程とを有することが好ましい。このように、高分子ケイ素化合物をシリコーンゴム原料に添加してシリコーン混合物を調製する工程により、高分子量成分を多く含有し優れた耐久性を有するシリコーンゴム組成物を得ることができ、さらに当該シリコーン混合物からなるシリコーンゴムの前駆体を加熱する工程により、耐久性が優れ、かつ低分子量成分が少ないシリコーンゴム組成物を得ることができる。
(シリコーン混合物を調製する工程)
シリコーン混合物を調製する工程は、シリコーンゴム原料に、重量平均分子量が900〜1700の範囲内である高分子ケイ素化合物を添加してシリコーン混合物を調製する工程である。以下に、定着部材の一例である図3で示した加熱ローラーについて、定着部材のゴム部材となるシリコーンゴムの前駆体の形成方法について、具体的な例を説明する。
まず、低分子量の単量体などで成形されるシリコーンゴム原料に、例えば、重量平均分子量が900〜1700の範囲内である高分子ケイ素化合物及び硬化剤(例えば、CAT−1602,信越化学工業社製)を加え、撹拌機で十分に混合し、シリコーン混合物を得る。必要に応じ熱膨張性マイクロカプセルや他の添加剤を加えても良い。例えば、このシリコーン混合物に、膨脹済みの熱膨張性マイクロカプセル(例えば、アクゾノーベル社製のマイクロバルーンであるエクスパンセル461)を加え、撹拌機で混合し、熱膨張性マイクロカプセルを含有するシリコーン混合物を得ることができる。
例えば、アルミニウム製の芯金と、当該芯金よりも太い紙管を芯金が中心となるようにして被せ、この紙管と芯金との間に、熱膨張性マイクロカプセルを含まないシリコーン混合物を注ぎ込み、加熱させて硬化を完了させた後、紙管を外し、ソリッドゴム層を形成する。
その後、このソリッドゴム層に、熱膨張性マイクロカプセルを含むシリコーン混合物を塗布し、シリコーンゴムの前駆体とする。
次に、このシリコーンゴムの前駆体は、加熱する工程を経て、定着部材のゴム部材を構成するシリコーンゴムとすることができる。
なお、シリコーンゴムの前駆体の形成方法は上記に限定されず、例えば、芯金上に直接ゴム原料を含有するシリコーン混合物を塗布し、シリコーンゴムの前駆体としてもよい。
前駆体を加熱する工程は、前述した、シリコーン混合物からなるシリコーン前駆体を加熱する工程である。加熱は、定着部材を構成するゴム部材の成型又は加硫する際の加熱時に行ってもよいし、成型又は加硫後において別途加熱する工程を有することとしてその加熱時に行ってもよい。加熱する工程における温度は、160〜280℃の範囲内であることが好ましい。また、加熱時間としては、30〜300分の範囲内が好ましく、35〜60分の範囲内がより好ましい。このように、高分子ケイ素化合物をシリコーンゴム原料に添加することにより、高分子量成分が多く存在し、優れた耐久性を有するシリコーンゴム組成物を得ることができ、さらに、これをシリコーンゴムの前駆体として、上記の温度範囲内で加熱処理することにより、耐久性が優れ低分子量成分が少ない定着部材を得ることができる。
加熱の方法は、特に限定されず、公知の方法が適用できる。一般的には、チャンバーを外部から加熱することで、チャンバーの内部に格納されたシリコーンゴムの前駆体を加熱する。加熱の方法は、バッチ式であっても、連続式であってもよい。例えば、バッチ式であれば、チャンバー内で、シリコーンゴムの前駆体は静置されていて、所定の時間加熱したら取り出す方法としてもよい。また、連続式であれば、筒状の加熱チャンバーを使用し、当該加熱チャンバーの内部を、シリコーンゴムの前駆体を移動させながら、所定時間の加熱が行われる方法としてもよい。
[2]画像形成装置
本発明に係る定着部材及び加圧部材を備えたカラータンデム方式の画像形成装置100の概略構成の一例を、図3を用いて説明する。この画像形成装置は、スキャナー、コピー、プリンターなどの機能を備えた複合機であって、MFP(Multi Function Peripheral又はMulti Function Printer)と呼ばれるものである。
図3に示すとおり、画像形成装置100は、本体ケーシング101内のほぼ中央に、2個のローラー102、106に巻回された周方向に移動する環状の中間転写ベルト108を備えている。
2個のローラー102、106のうち、一方のローラー102は図において左側に配置され、他方のローラー106は図において右側に配置されている。中間転写ベルト108は、これらのローラー102、106によって支持されて矢印X方向に回転駆動される。
中間転写ベルト108の下方には、図において左側から順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーに対応する画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kが並べて配置されている。
各画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kは、それらが取り扱うトナー色の違いを除いて互いに同様に構成されている。
例えば、イエローの画像形成セグメント110Yは、感光体ドラム190と、帯電装置191と、露光装置192と、トナーを用いて現像を行う現像装置193と、クリーナー装置195とを一体にして構成されている。
中間転写ベルト108を挟んで感光体ドラム190と対向する位置に、一次転写ローラー194が設けられている。
画像形成時には、まず帯電装置191によって感光体ドラム190の表面が一様に帯電され、続いて、露光装置192によって感光体ドラム190の表面が露光されて、そこに潜像が形成される。次に、現像装置193によって、感光体ドラム190の表面上の潜像が現像されてトナー画像となる。このトナー画像は、感光体ドラム190と一次転写ローラー194との間の電圧印加によって、中間転写ベルト108に転写される。感光体ドラム190の表面上の転写残トナーは、クリーナー装置195によってクリーニングされる。
中間転写ベルト108が矢印X方向に移動するに伴って、各画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kによって中間転写ベルト108上に出力画像として4色のトナー画像が重ねて形成される。
108の左側には、中間転写ベルト108の表面から残留トナーを取り除くクリーニング装置125と、クリーニング装置125によって取り除かれたトナーを回収するトナー回収ボックス126とが設けられている。
中間転写ベルト108の右側には、転写材のための搬送路124を挟んで二次転写ローラー112が設けられている。搬送路124のうち二次転写ローラー112の上流側に相当する位置に、搬送ローラー120が設けられている。中間転写ベルト108上のトナーパターンを検出するための光学式濃度センサー115が設けられている。
本体ケーシング101内の右上部には、トナーを転写材に定着させる定着装置130が設けられている。
本発明では、定着装置130が、定着部材と、前記定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材と、前記加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とを有し、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で転写材を挟持し画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を変更することが特徴である。
定着装置130は、図3において紙面に対して垂直に延在する一対の、本発明に係る定着部材である定着ローラー及び加圧部材である加圧ローラーを備えている。図3では、定着ローラーとして加熱ローラー132があり、他方は加圧ローラー131である。
加熱ローラー132と加圧ローラー131は、それぞれ駆動部(不図示)及び駆動制御部(図3では制御部200)を有し、回転駆動する加熱ローラー132と加圧ローラー131の表面速度を制御する。
加熱ローラー132は、ヒーター133によって所定の目標温度(例えば180〜200℃の範囲内の定着温度)に加熱される。加圧ローラー131は、図示しない、ばねによって加熱ローラー132へ向かって付勢されている。これにより、加圧ローラー131と加熱ローラー132とは定着のためのニップ部を形成している。
トナー像が転写された転写材90がこのニップ部を通ることにより、その転写材90にトナー画像が定着される。加圧ローラー131と加熱ローラー132の温度は、それぞれ温度センサー135、136によって検出される。
本体ケーシング101の下部には、転写材90を収容するための給紙カセット116A、116Bが2段に設けられている。図3では、給紙カセット116Aにのみ転写材90が収容された状態を示している。
給紙カセット116A、116Bにはそれぞれ、転写材を送り出すための給紙ローラー118と、送り出された転写材を検出する給紙センサー117とが設けられている。
本体ケーシング101内には、この画像形成装置全体の動作を制御するCPU(中央演算処理装置)からなる制御部200が設けられている。制御部200は、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する機能も有し、前記定着部材と前記加圧部材で挟持し画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を、あらかじめ条件を入力することで変更する。
画像形成時には、制御部200による制御によって、転写材90は給紙ローラー118によって給紙カセット116Aから搬送路124へ1枚ずつ送り出される。搬送路124に送り出された転写材90は、レジストセンサー114によってタイミングをとって、搬送ローラー120によって中間転写ベルト108と二次転写ローラー112との間のトナー転写位置へ送り込まれる。
一方、上記のように、各画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kによって中間転写ベルト108上に4色のトナー画像が重ねて形成されており、トナー転写位置に送り込まれた転写材90に、中間転写ベルト108上の4色のトナー画像が二次転写ローラー112によって転写される。
トナー像が転写された転写材90は、定着装置130の加圧ローラー131と加熱ローラー132とが作るニップ部を通して搬送され加熱及び加圧を受ける。これにより、その転写材90にトナー画像が定着される。
最終的に、トナー画像が定着された転写材90は、排紙ローラー121によって排紙路127を通して本体ケーシング101の上面に設けられた排紙トレイ部122へ排出される。
なお、画像形成装置100では、両面印刷の場合に転写材90を再びトナー転写位置へ送り込むためのスイッチバック搬送路128が設けられている。
上記のとおり、加圧ローラー131は定着ローラーの一方を構成しており、ここではシリコーンゴム製ローラーが用いられる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
また、上述の説明では、定着部材として加熱ローラー、加圧部材として加圧ローラーの場合を例にして説明したが、図2の定着ベルト方式も同様に製造し、使用することができる。また、本明細書でいう定着ベルトは、画像形成装置において、トナーを転写材に定着させる際に用いられるシリコーンゴムで形成された定着ベルトである。具体的には、例えば、特開2017−194550号公報、特開2017−173445号公報、特開2017−97187号公報等に記載された、定着装置内で用いられる公知の定着ベルトを指す。
以下に、本発明の画像形成装置を用いた、画像形成における各工程を説明する。
前記画像形成における工程は、帯電する工程、静電潜像を形成する工程、現像する工程、定着工程、クリーニングする工程など、一般的な電子写真画像形成方法で使用される工程で行うことが好ましい。
(帯電する工程)
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、帯電ローラーによって電子写真感光体の帯電が行われる帯電ローラー方式など、公知の方法でよい。
(静電潜像を形成する工程)
本工程では、電子写真感光体(静電潜像担持体)上に静電潜像を形成する。
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
静電潜像の形成は、例えば、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。なお、静電潜像とは、このような帯電手段によって電子写真感光体の表面に形成される像である。
帯電手段及び露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
(現像する工程)
現像する工程は、静電潜像を、トナー(一般的には、トナーを含む乾式現像剤)により現像してトナー像を形成する工程である。
トナー像の形成は、例えば、トナーを含む乾式現像剤を用いて、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラーとからなる現像手段を用いて行われる。
具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
(転写する工程)
本工程では、記録媒体へのトナー像の転写をする。
トナー像の転写材への転写は、トナー像を転写材に剥離帯電することにより行われる。
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
また、転写する工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を転写材上に二次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接転写材に転写する態様などによって行うこともできる。
(定着する工程)
本発明に係る定着工程では、トナーを用いて形成された未定着画像(トナー像)が転写された転写材を、加熱された定着ベルト又は定着ローラーと、加圧部材である加圧ローラーとの間を通過させることにより、当該未定着画像を当該転写材に定着させる工程を有する。
定着工程の方式としては、前述のとおり、定着回転体としての定着ベルト又は定着ローラーと、当該定着ベルト又は定着ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧部材としての加圧ローラーとにより構成されてなるベルト定着方式又はローラー定着方式のものが挙げられる。
(クリーニングする工程)
本工程では、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上には、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った現像剤を現像剤担持体上から除去する。
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体等のクリーニング対象に当接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
<トナー用樹脂微粒子分散液の調製>
<スチレン・アクリル系樹脂(1)の微粒子分散液(A1)の調製>
1.第1段重合(「樹脂微粒子(a1)」分散液の調製)
撹拌装置、温度センサー、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にあらかじめアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流化230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム(KPS)」9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n−オクチルメルカプタン 17質量部
からなる単量体溶液(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで重合(第1段重合)を行い「樹脂微粒子(a1)」の分散液を調製した。
2.第2段重合:中間層の形成(「樹脂微粒子(a11)」の分散液の調製)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
からなる単量体溶液(2)に、炭化水素系離型剤としてHNP−51(融点:77℃)57質量部を添加し、85℃に加温して溶解させて単量体溶液(2)を調製した。
一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し、この界面活性剤溶液に「樹脂微粒子(a1)」の分散液を、「樹脂微粒子(a1)」の固形分換算で28質量部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記単量体溶液(2)を4時間混合・分散させ、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し、この分散液に重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第2段重合)を行って「樹脂微粒子(a11)」の分散液を調製した。
3.第3段重合:外層の形成(「スチレン・アクリル系樹脂(1)の微粒子分散液(A1)」)の調製
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
スチレン 200質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
n−オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなる単量体溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中にスチレン・アクリル系樹脂(1)の微粒子が分散した「スチレン・アクリル系樹脂(1)の微粒子分散液(A1)」を調製した。このスチレン・アクリル系樹脂(1)のガラス転移点は35℃であった。
<ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b1微粒子の水性分散液(B1)の調製>
下記の付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー、及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部。
また、下記の重縮合系樹脂(非晶性ポリエステル樹脂:APEs)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し、溶解させた。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
次いで、攪拌下で付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.4質量部投入し、250℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて反応を行った。次いで脱溶剤を行い、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b1を得た。得られたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b1について、ガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量(Mw)は53000であった。
得られたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b1100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(株式会社日本精機製作所製)でV−LEVEL 300μAで60分間超音波分散した。その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間攪拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が13.5質量%のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b1の微粒子の水性分散液(B1)を調製した。このとき、上記分散液(B1)に含まれるハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b1の微粒子は、体積基準のメジアン径が100nmであった。
(着色剤粒子の水性分散液(Cy1)の調製)
n−ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を攪拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の水性分散液(Cy1)を調製した。得られた着色剤粒子の水性分散液(Cy1)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は110nmであった。
<スチレン・アクリルシェル用樹脂微粒子の作製>
撹拌装置、温度センサー、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にあらかじめアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤を仕込み、窒素気流化230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム(KPS)」10.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
スチレン 502.8質量部
n−ブチルアクリレート 185.2質量部
メタクリル酸 112質量部
n−オクチルメルカプタン 14質量部
からなる単量体溶液(4)を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで「スチレン・アクリルシェル用樹脂微粒子(sh1)」の分散液を調製した。Tgは58℃であった。
<トナー1の作製>
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、マトリクス用樹脂微粒子分散液として「スチレン・アクリル系樹脂の微粒子分散液(A1)」を固形分換算で444質量部、イオン交換水1600質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10、液温度を20℃に調整した。
その後、「着色剤微粒子分散液(Cy1)」を固形分換算で40質量部投入した。次いで、塩化マグネシウム75質量部をイオン交換水75質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50%径)が6.2μmになった時点で攪拌数をあげ粒子成長を停止させた。その後、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(B1)を54質量部添加し、上澄みが透明になったところで塩化ナトリウム125質量部をイオン交換水500質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.960になった時点で30℃に冷却し、「トナー母体粒子[1]の分散液」を得た。
(洗浄・乾燥工程)
凝集・融着工程にて作製した「トナー母体粒子[1]の分散液」を遠心分離機で固液分離して粗大粒子や微細粒子を除き、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、10倍量のイオン交換水でのスラリーの電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子[1]」を作製した。
(外添剤処理工程)
上記の「トナー母体粒子[1]」に、疎水性シリカ(個数平均一次粒子径=120nm)2.5質量%、疎水性シリカ(個数平均一次粒子径=12nm)を1.0質量%、及び疎水性チタニア(個数平均一次粒子径=20nm)0.6質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
「トナー2の作製」
トナー1の作製において、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(B1)の作製工程で、30分間超音波分散し160nmの粒子を得たこと以外は同様にしてトナー2を得た。
「トナー3の作製」
トナー1の作製において、下記以外は同様にしてトナー3を得た。
下記の重縮合系樹脂(非晶性ポリエステル樹脂:APEs)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し、溶解させた。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 75.1質量部
フマル酸 42.0質量部
次いで、攪拌下で付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.4質量部投入し、250℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて反応を行った。次いで脱溶剤を行い、第2結着樹脂としてのノンハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b2を得た。得られたノンハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b2について、ガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量(Mw)は33000であった。
得られたノンハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b2100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(株式会社日本精機製作所製)でV−LEVEL 300μAで60分間超音波分散した。その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間攪拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が14.5質量%のノンハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b2の微粒子の水性分散液(B2)を調製した。このとき、上記分散液(B2)に含まれるノンハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂b2の微粒子は、体積基準のメジアン径が100nmであった。
「トナー4の作製」
トナー1の作製において、離型剤をエステル系離型剤であるベヘン酸ベヘニル(融点73℃)としたこと以外は同様にしてトナー4を作製した。
「トナー5の作製」
トナー1の作製において、凝集・融着工程にて、粒径が5.5μmになったときに攪拌数をあげ、上澄みが透明になったときに、再び攪拌数をさげ、粒径が6.2μmとし、更に90℃に加熱昇温し、円形度が0.960になった時点で30℃に冷却したこと以外は同様にしてトナー5を作製した。
「トナー6の作製」
トナー1の作製において、第2段重合の離型剤としてHNP−51を27質量部添加したこと以外は同様にしてトナー6を得た。
「トナー7の作製」
トナー1の作製において、第2段重合の離型剤としてHNP−51を128質量部添加したこと以外は同様にしてトナー7を得た。
「トナー8の作製」
トナー1の作製において、第2段重合の離型剤としてHNP−51を53質量部添加しスチレン・アクリル樹脂を得た。凝集・融着工程にて、前述のスチレン・アクリル樹脂を476.5質量部、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(B1)を21.5質量部としたこと以外は同様にしてトナー8を作製した。
「トナー9の作製」
トナー1の作製において、第2段重合の離型剤としてHNP−51を73質量部添加しスチレン・アクリル樹脂を得た。凝集・融着工程にて、前述のスチレン・アクリル樹脂を358質量部、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(B1)を140質量部としたこと以外は同様にしてトナー8を作製した。
「トナー10の作製」
トナー1の作製において、第3段重合を下記のように変更して得られたものを、スチレン・アクリル樹脂粒子の分散液(A2)とした。
スチレン 240質量部
n−ブチルアクリレート 90質量部
得られた樹脂のTgは45℃であった。
また、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の作製において、下記のように変更した。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 55質量部
フマル酸 56質量部
得られた樹脂の分子量は30000であり、Tgは44℃であった。
トナー1の作製において、凝集・融着工程にて上記に変更した以外は同様にしてトナー10を得た。
「トナー11の作製」
トナー1の作製において、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の代わりに、スチレン・アクリルシェル用樹脂樹脂(sh1)を用いたこと以外は同様にしてトナー11を得た。トナー断面観察を行ったところ、シェルの膜化が確認できた。
「トナー12の作製」
トナー1の作製において、第2段重合の離型剤としてHNP−51を50.5質量部添加した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、前記樹脂粒子液を固形分換算で498質量部、イオン交換水1600質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10、液温度を20℃に調整した。
その後、「着色剤微粒子分散液(Cy1)」を固形分換算で40質量部投入した。次いで、塩化マグネシウム75質量部をイオン交換水75質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(d50)が6.2μmになった時点で塩化ナトリウム125質量部をイオン交換水500質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.960になった時点で30℃に冷却し、「トナー母体粒子[12]の分散液」を得た。
トナー1の作製において、上記に変更した以外は同様にして第1結着樹脂のみのトナー12を得た。
<現像剤の作製>
上記のようにして作製したトナー1〜12について、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均径40μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合し現像剤1〜12を作製し以下の評価を行った。混合機は、V型混合機を用いて、30分間混合した。
≪評価方法≫
作製したトナー1〜12について以下の評価を実施した。
(光沢度)
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)を改造し、転写材「PODグロスコート紙128g/m2」(王子製紙製)上に、トナー付着量8g/m2のベタ画像パッチ(2.5cm×4cm)を紙の長手方向に3か所、短手方向の中央に形成し、未定着画像パッチとした。
単体駆動機として、定着駆動部を上ローラー(上Rと表記)とし、加圧ローラーを下ローラーとし、駆動制御部を兼ね添えた試作機を作成した。速度差なしとは、加圧側の表面速度を315mm/sにし圧着した場合に上ローラーが従動する状態をいう。一方、表面速度差−5%とは、圧着した場合に上ローラーが299.3mm/s(315mm/sに対して5%速度遅い)となるように駆動制御部を調節した状態をいう。速度を適宜調節し、前述の未定着画像パッチを定着させた。
得られた画像を光沢計(75°ガードナー社製)で測定し、3か所の平均値を求め、速度差なしと速度差ありの平均値の差分を求めた。
(耐熱保管性)
トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業社製)を用い、室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmとなる振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式によりトナー凝集率を算出した。この試験を、湿度は35%RHのまま、試験温度を0.1℃ずつ上げながら、トナー凝集率が50質量%を超えるまで繰り返し行った。トナー凝集率が50質量%を超えない最大の試験温度(限界耐熱保管温度)を、耐熱保管性の指標とした。
本発明においては、限界耐熱保管温度が56.0℃以上である場合を合格とする。結果を表Iに示す。
トナー凝集率(質量%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
(定着性(アンダーオフセット(UO)温度))
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)を、定着上ベルト及び定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、転写材「NPi上質紙128g/m2」(日本製紙製)上に、トナー付着量11.3g/m2のベタ画像を、定着温度200℃にて、定着速度315mm/secで出力する試験を、定着温度を5℃刻みで減少させるよう変更しながら、コールドオフセットが発生するまで繰り返し行い、コールドオフセットが発生しなかった最低の定着上ベルトの表面温度を調査し、これを定着下限温度として低温定着性を評価した。各試験において、定着温度とは定着上ベルトの表面温度をいい、定着下ローラーの表面温度は、70℃に設定した。定着下限温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。本評価においては、125℃以下である場合を合格とした。
(ドメイン構造の観測)
評価装置として走査型透過電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)を用い、RuO4染色した厚さ100〜200nmトナー母体粒子切片について、加速電圧30kV、倍率10000倍における明視野像を観測した。
RuO4染色したトナー切片は、以下のようにして作製した。
トナー母体粒子を光硬化性樹脂「D−800」(日本電子(株)製)に分散させた後、光硬化させ、ブロックを形成し、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い、上記ブロックから厚さ100〜200nmの薄片状のサンプルを切り出し、透過電子顕微鏡観察用の支持膜付きグリッドに載せた。このようにして作製したトナー母体粒子切片を5cmφプラスチックシャーレにろ紙を敷き、その上に切片の載ったグリッドを切片の載った面を上にして載せた。次に、0.5%RuO4染色液2〜3滴を、シャーレ内の2点に滴下し、フタをし、10分後、シャーレのフタを外し染色液の水分が無くなるまで放置し、評価に使用した。染色条件(時間、温度、染色剤の濃度と量)は、透過電子顕微鏡観察をする際に各樹脂の区別ができる条件に調整した。
(識別方法)
下記の基準にてトナー母体粒子内の樹脂成分を識別した。
暗く観察される:スチレン・アクリル系樹脂(1)
明るく観察される:非晶性ポリエステル樹脂又はハイブリッド非晶性樹脂(2)
明るく観察され、かつ界面が暗く観察される:離型剤
(ドメイン径、ドメイン面積及びドメイン体積の測定)
評価装置として、透過型電子顕微鏡(ドメイン構造の観察と同じ)、画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP」((株)ニレコ製)を用いた。
測定用トナー像を得る方法は「ドメイン構造の観察」と同様にして行った。
(占有面積率の評価方法)
測定用トナー母体粒子像は、トナー母体粒子の断面の最大長さが、トナー母体粒子の体積平均粒径(D50%径)±10%であるものを25視野以上選択して測定に用いた。
ドメインの表面近傍の占有面積率は、前記トナー母体粒子の断面の最大長さの平均値をrとしたとき、表面からr/4までの深さ方向の断面の面積をaとし、ドメインとして面積a部分のうち染色で観察される非晶性ポリエステル樹脂又はハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を2値化して求められる面積の総和をbとして、下記式により定義するものである。
占有面積率(%)=(b/a)×100
トナー10粒子に対して上記測定を行い、平均した値を用いた。
表Iより、本発明の画像形成装置と、本発明に係るトナー粒子1〜11を組み合わせることで、トナー粒子の定着性、耐熱性を確保しつつ、低光沢度から高光沢度までのより広い範囲の光沢度を実現することができ、光沢度の制御幅が広い画像形成システムを提供することができた。
特に光沢度の制御性は、ドメイン・マトリクス構造を有するトナー粒子を用いることで光沢度の制御幅がより広がることを分かった。