JP2020029540A - ポリアミド組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、半芳香族ポリアミドを含む樹脂組成物や、半芳香族ポリアミドの用途などについても開示されている(例えば、特許文献3及び4)。
特許文献2には、脂肪族ジアミンとして1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとを併用する記載はあるが、側鎖を有する2−メチル−1,8−オクタンジアミンの比率が高い領域のポリアミドについては一切言及されていない。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
該ジカルボン酸単位の40モル%超100モル%以下がナフタレンジカルボン酸単位であり、
該ジアミン単位の60モル%以上100モル%以下が分岐状脂肪族ジアミン単位及び任意構成単位の直鎖状脂肪族ジアミン単位であり、かつ該分岐状脂肪族ジアミン単位と該直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計100モル%に対する該分岐状脂肪族ジアミン単位の割合が60モル%以上である、ポリアミド組成物。
[2]前記ポリアミド組成物からなる成形品。
本発明のポリアミド組成物は、ジカルボン酸単位及びジアミン単位を有するポリアミド(A)と、ハロゲンフリー難燃剤(B)とを含有する。
本明細書において、「〜単位」(ここで「〜」は単量体を示す)とは「〜に由来する構成単位」を意味し、例えば「ジカルボン酸単位」とは「ジカルボン酸に由来する構成単位」を意味し、「ジアミン単位」とは「ジアミンに由来する構成単位」を意味する。
本発明のポリアミド組成物に含まれるポリアミド(A)は、ジカルボン酸単位及びジアミン単位を有する。そして、該ジカルボン酸単位の40モル%超100モル%以下がナフタレンジカルボン酸単位である。また、該ジアミン単位の60モル%以上100モル%以下が分岐状脂肪族ジアミン単位及び任意構成単位の直鎖状脂肪族ジアミン単位であり、かつ該分岐状脂肪族ジアミン単位と該直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計100モル%に対する該分岐状脂肪族ジアミン単位の割合が60モル%以上である。
これに対して、ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であり、ジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位であるポリアミドの場合、上記と同様の縦軸と横軸とを有するグラフにおいて極小部分が示される一方で、直鎖構造の1,9−ノナンジアミン単位が100モル%のときの融点A2と、分岐構造の2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位が100モル%のときの融点B2とを比べた場合、意外なことに融点B2の方が融点A2よりも高くなることが分かった。
図1によれば、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位が0モル%(すなわち、1,9−ノナンジアミン単位が100モル%)であるポリアミドの融点に対し、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有割合が増えるに従い、ポリアミドの融点が低下していくのが分かる。一方、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有割合が50モル%を過ぎる付近から、その含有割合が増えるに従いポリアミドの融点が大幅に上昇しているのが分かる。そして、図1の横軸上の両端近辺の融点を比べると、分岐構造の2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有割合が100モル%付近であるときの融点の方が、直鎖構造の1,9−ノナンジアミン単位の含有割合が100モル%であるときの融点よりも高いことが分かる。横軸上の両端付近以外の部分についても、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有割合が50モル%である付近を境にしてその左右の領域の融点を比較すると、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有割合の高い右側の領域において、1,9−ノナンジアミン単位の含有割合の高い左側の領域よりも融点が高くなる傾向があることが分かる。
ジカルボン酸単位は、40モル%超100モル%以下がナフタレンジカルボン酸単位である。ジカルボン酸単位におけるナフタレンジカルボン酸単位の含有量が40モル%以下であると、ポリアミド組成物の耐薬品性をはじめとする各種物性の向上、及び、ハロゲンフリー難燃剤を含むことによる難燃性の発現が困難となる。
力学特性、耐熱性、及び耐薬品性などの観点から、ジカルボン酸単位におけるナフタレンジカルボン酸単位の含有量は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましく、90モル%以上であることがよりさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
上記と同様の観点から、ナフタレンジカルボン酸単位中、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、100モル%に近い程(実質100モル%)好ましい。
当該他のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロデカンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの他のジカルボン酸に由来する構成単位は1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
ジカルボン酸単位における上記他のジカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%以下であることがよりさらに好ましく、10モル%以下であることがよりさらに好ましい。
ジアミン単位は、60モル%以上100モル%以下が分岐状脂肪族ジアミン単位及び任意構成単位の直鎖状脂肪族ジアミン単位である。すなわち、ジアミン単位は、分岐状脂肪族ジアミン単位を含み直鎖状脂肪族ジアミン単位を含まないか、又は分岐状脂肪族ジアミン単位と直鎖状脂肪族ジアミン単位との両方を含み、そして、ジアミン単位における分岐状脂肪族ジアミン単位と、任意構成単位である直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計含有量が60モル%以上100モル%以下である。ジアミン単位における分岐状脂肪族ジアミン単位及び直鎖状脂肪族ジアミン単位の合計含有量が60モル%未満であると、ポリアミド組成物における耐薬品性及び難燃性などの各種物性向上効果を発現することが困難となる。
耐薬品性、力学特性、及び耐熱性などの観点から、ジアミン単位における分岐状脂肪族ジアミン単位及び直鎖状脂肪族ジアミン単位の合計含有量は、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
本明細書において分岐状脂肪族ジアミンとは、含まれる2つのアミノ基がそれぞれ結合している炭素原子を両端の炭素原子とする直鎖状の脂肪族鎖を想定した際に、当該直鎖状の脂肪族鎖(想定脂肪族鎖)の水素原子の1つ以上が分岐鎖によって置換された構造を有する脂肪族ジアミンを意味する。すなわち、例えば、1,2−プロパンジアミン(H2N−CH(CH3)−CH2−NH2)は、想定脂肪族鎖としての1,2−エチレン基の水素原子の1つが分岐鎖としてのメチル基に置換された構造を有するため、本明細書における分岐状脂肪族ジアミンに分類される。
耐薬品性などの各種物性が向上しやすく、ポリアミド組成物の成形性が向上するなどの観点から、分岐状脂肪族ジアミン単位と直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計100モル%に対する分岐状脂肪族ジアミン単位の割合は、65モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、72モル%以上であることがさらに好ましく、77モル%以上であることがよりさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましく、90モル%以上であってもよい。また、当該割合は100モル%であってもよいが、成形性やジアミンの入手性なども考慮すると、99モル%以下であることが好ましく、98モル%以下、さらには95モル%以下であってもよい。
分岐状脂肪族ジアミン単位を形成する分岐状脂肪族ジアミンが有する分岐鎖の数に特に制限はないが、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、3つ以下であることが好ましく、2つ以下であることがより好ましく、1つであることがさらに好ましい。
上記分岐状脂肪族ジアミン単位の中でも、本発明の効果がより顕著に奏されると共に原料入手性にも優れるなどの観点から、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、及び2−メチル−1,9−ノナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミンに由来する構成単位が好ましく、2−メチル−1,8−オクタンジアミンに由来する構成単位がより好ましい。
なお、直鎖状脂肪族ジアミン単位及び上記した分岐状脂肪族ジアミン単位の炭素数は、同一であっても異なっていてもよいが、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから同一であることが好ましい。
上記直鎖状脂肪族ジアミン単位の中でも、本発明の効果がより顕著に奏され、特に得られるポリアミド(A)を含むポリアミド組成物の耐熱性が向上するなどの観点から、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、及び1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミンに由来する構成単位が好ましく、1,9−ノナンジアミンに由来する構成単位がより好ましい。
脂環式ジアミンとしては、例えば、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルジアミンなどが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
これらの他のジアミンに由来する構成単位は1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
ジアミン単位における上記他のジアミンに由来する構成単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリアミド(A)におけるジカルボン酸単位とジアミン単位とのモル比[ジカルボン酸単位/ジアミン単位]は、45/55〜55/45であることが好ましい。ジカルボン酸単位とジアミン単位とのモル比が上記範囲であれば、重合反応が良好に進行し、所望する物性に優れたポリアミド組成物が得られやすい。
なお、ジカルボン酸単位とジアミン単位とのモル比は、原料のジカルボン酸と原料のジアミンとの配合比(モル比)に応じて調整することができる。
ポリアミド(A)は、ジカルボン酸単位及びジアミン単位の他に、アミノカルボン酸単位をさらに含んでもよい。
アミノカルボン酸単位としては、例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム;11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸などから誘導される構成単位を挙げることができる。ポリアミド(A)におけるアミノカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸単位とジアミン単位の合計100モル%に対して、40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
ポリアミド(A)には、本発明の効果を損なわない範囲内で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸に由来する構成単位を溶融成形が可能な範囲で含ませることもできる。
ポリアミド(A)は末端封止剤に由来する構成単位(末端封止剤単位)を含んでもよい。
末端封止剤単位は、ジアミン単位100モル%に対して、1.0モル%以上であることが好ましく、1.2モル%以上であることがより好ましく、1.5モル%以上であることがさらに好ましく、また10モル%以下であることが好ましく、7.5モル%以下であることがより好ましく、6.5モル%以下であることがさらに好ましい。末端封止剤単位の含有量が上記範囲にあると、力学強度と流動性により優れたポリアミド組成物となる。末端封止剤単位の含有量は、重合原料を仕込む際に末端封止剤の量を適宜調整することにより上記所望の範囲内とすることができる。なお、重合時に単量体成分が揮発することを考慮して、得られるポリアミド(A)に所望量の末端封止剤単位が導入されるように末端封止剤の仕込み量を微調整することが望ましい。
ポリアミド(A)中の末端封止剤単位の含有量を求める方法としては、例えば、特開平7−228690号公報に示されているように、溶液粘度を測定し、これと数平均分子量との関係式から全末端基量を算出し、ここから滴定によって求めたアミノ基量とカルボキシル基量を減じる方法や、1H−NMRを用い、ジアミン単位と末端封止剤単位のそれぞれに対応するシグナルの積分値に基づいて求める方法などが挙げられ、後者が好ましい。
ポリアミド(A)は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができ、例えばジカルボン酸とジアミンとを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造することができる。これらの中でもポリアミド(A)の製造方法は、重合中の熱劣化をより良好に抑制することができるなどの観点から、固相重合法であることが好ましい。
分岐状脂肪族ジアミン単位と直鎖状脂肪族ジアミン単位とのモル比を上述した特定の数値範囲とするためには、原料として用いる分岐状脂肪族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンとを、所望する上記単位のモル比となるような配合比で用いればよい。
分岐状脂肪族ジアミン及び直鎖状脂肪族ジアミンとして、例えば2−メチル−1,8−オクタンジアミン及び1,9−ノナンジアミンをそれぞれ用いる場合、これらは公知の方法により製造することができる。公知の方法としては、例えば、ジアルデヒドを出発原料として還元アミノ化反応することにより得られたジアミン粗反応液を蒸留する方法などが挙げられる。さらに、2−メチル−1,8−オクタンジアミンと1,9−ノナンジアミンとは、上記ジアミン粗反応液を分留して得ることができる。
上記触媒の使用量は、原料の総質量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、また1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。触媒の使用量が上記下限以上であれば良好に重合が進行する。上記上限以下であれば触媒由来の不純物が生じにくくなり、例えばポリアミド組成物をフィルムにした場合に上記不純物による不具合を防ぐことができる。
本発明のポリアミド組成物は、ハロゲンフリー難燃剤(B)を含む。ハロゲンフリー難燃剤(B)を含むことにより、環境負荷を低減しながら、ポリアミド組成物の難燃性を向上させることができる。当該ハロゲンフリー難燃剤(B)に特に制限はなく、ハロゲン元素を含まない難燃剤として公知の化合物を使用することができる。ハロゲンフリー難燃剤(B)としては、リン元素を含むリン系難燃剤を好ましく用いることができ、より具体的には、赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、リン酸アミド系難燃剤、(ポリ)リン酸塩系難燃剤、フォスファゼン系難燃剤、ホスフィン系難燃剤などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン系難燃剤が好ましい。
ホスフィン系難燃剤としては、例えば、モノホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩が挙げられる(以下、両者を総称して「ホスフィン酸塩」と略称する場合がある)。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布装置で測定した値である。
本発明のポリアミド組成物は充填剤(C)を含有してもよい。充填剤(C)を用いることにより、薄肉での難燃性、耐熱性、成形性、及び、機械的強度に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
繊維状充填剤(C1)及び針状充填剤(C2)としては、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、及びホウ酸アルミニウムウィスカーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ガラス繊維及びワラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ガラス繊維がさらに好ましい。
繊維状充填剤(C1)の平均繊維長及び平均繊維径は、電子顕微鏡を用いた画像解析により、任意に選択した400本の繊維状充填剤(C1)のそれぞれ繊維長及び繊維径を測定し、それぞれの質量平均値を算出することにより求めることができる。
また、ポリアミド組成物中、又は該ポリアミド組成物を成形してなる成形品中における、繊維状充填剤(C1)の平均繊維長及び平均繊維径は、例えば有機溶媒中でポリアミド組成物又は成形品を溶解させ、繊維状充填剤(C1)を抽出し、上記と同様に電子顕微鏡を用いた画像解析により求めることができる。
ポリアミド組成物には、上述したポリアミド(A)、ハロゲンフリー難燃剤(B)、及び必要に応じて用いられる充填剤(C)以外にその他の添加剤を必要に応じて含んでもよい。
ポリアミド組成物の製造方法に特に制限はなく、ポリアミド(A)、ハロゲンフリー難燃剤(B)、並びに必要に応じて用いられる上記充填剤(C)及びその他の添加剤等を均一に混合することのできる方法を好ましく採用することができる。混合は、通常、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを使用して溶融混練する方法が好ましく採用される。溶融混練条件は特に限定されないが、例えば、ポリアミド(A)の融点よりも10〜50℃程度高い温度範囲で、約1〜30分間溶融混練する方法が挙げられる。
(成形方法)
本発明のポリアミド組成物からなる成形品は、本発明のポリアミド組成物を用いて、射出成形法、ブロー成形法、押出成形法、圧縮成形法、延伸成形法、真空成形法、発泡成形法、回転成形法、含浸法、レーザー焼結法、熱溶解積層法等の各種成形方法で成形することにより得ることができる。さらに、本発明のポリアミド組成物と他のポリマー等とを複合成形して成形品を得ることもできる。
前記成形品としては、例えば、フィルム、シート、チューブ、パイプ、ギア、カム、各種ハウジング、ローラー、インペラー、ベアリングリテーナー、スプリングホルダー、クラッチパーツ、チェインテンショナー、タンク、ホイール、コネクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ハードディスク部品、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICハウジング、LEDリフレクタなどが挙げられる。
特に、本発明のポリアミド組成物は、高温特性、耐薬品性、難燃性が求められる射出成形部材、耐熱フィルム、各種薬剤/薬液輸送用チューブ、インテークパイプ、ブローバイチューブ、3Dプリンタ用基材などとして好適であり、また、高い耐熱性・耐薬品性が求められる自動車用途の成形品、例えば、自動車の内外装部品、エンジンルーム内の部品、冷却系部品、摺動部品、電装部品などに好適に使用することができる。加えて、本発明のポリアミド組成物は、電気部品・電子部品や、表面実装工程に対応する耐熱性が要求される成形品とすることができる。このような成形品は、表面実装型のコネクタ、ソケット、カメラモジュール、電源部品、スイッチ、センサー、コンデンサー座板、ハードディスク部品、リレー、抵抗器、ヒューズホルダー、コイルボビン、ICハウジング等の表面実装部品などに好適に使用することができる。
・固有粘度
製造例で得られたポリアミド(試料)について、濃硫酸を溶媒とし、濃度0.2g/dl、温度30℃での固有粘度(dl/g)を下記関係式より求めた。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
上記関係式中、ηinhは固有粘度(dl/g)を表し、t0は溶媒(濃硫酸)の流下時間(秒)を表し、t1は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは試料溶液中の試料の濃度(g/dl)(すなわち、0.2g/dl)を表す。
製造例で得られたポリアミドの融点及びガラス転移温度は、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量分析装置「DSC7020」を使用して測定した。
融点は、ISO11357−3(2011年第2版)に準拠して測定を行った。具体的には、窒素雰囲気下で、30℃から340℃へ10℃/分の速度で試料(ポリアミド)を加熱し、340℃で5分間保持して試料を完全に融解させた後、10℃/分の速度で50℃まで冷却し50℃で5分間保持した。再び10℃/分の速度で340℃まで昇温した時に現れる融解ピークのピーク温度を融点(℃)とし、融解ピークが複数ある場合は最も高温側の融解ピークのピーク温度を融点(℃)とした。
ガラス転移温度(℃)は、ISO11357−2(2013年第2版)に準拠して測定を行った。具体的には、窒素雰囲気下で、30℃から340℃へ20℃/分の速度で試料(ポリアミド)を加熱し、340℃で5分間保持して試料を完全に融解させた後、20℃/分の速度で50℃まで冷却し50℃で5分間保持した。再び20℃/分の速度で200℃まで昇温した時に現れる変曲点の温度をガラス転移温度(℃)とした。
UL−94規格の規定に準じて難燃性の評価を行った。
日精樹脂工業(株)製の射出成形機(型締力:80トン、スクリュー径:φ26mm)を使用し、実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物を用いて、ポリアミドの融点よりも20〜30℃高いシリンダー温度とし、実施例1及び比較例1のポリアミド組成物は金型温度160℃の条件下で、比較例2及び3のポリアミド組成物は金型温度140℃の条件下で、Tランナー金型を用いてポリアミド組成物を成形し、厚さ0.4mm、幅13mm、長さ125mmの試験片を得た。
次いで、得られた試験片の上端をクランプで止めて試験片を垂直に固定し、下端に高さ20±1mmの青い所定の炎を10秒間当てて離し、試験片の燃焼時間(1回目)を測定した。消火したら直ちに再び下端に炎を当てて離し、試験片の燃焼時間(2回目)を測定する。5片について同じ測定を繰り返し、1回目の燃焼時間のデータ5個と、2回目の燃焼時間のデータ5個の、計10個のデータを得た。10個のデータの合計をT、10個のデータのうち最大値をMとし、下記評価基準に従って評価した。
また、接炎中のドリップの有無を目視にて確認した。
〔評価基準〕
V−0:Tが50秒以下かつMが10秒以下で、クランプまで燃え上がらず、炎のついた溶融物が落ちても12インチ下の綿に着火しなかった。
V−1:Tが250秒以下かつMが30秒以下で、クランプまで燃え上がらず、炎のついた溶融物が落ちても12インチ下の綿に着火しなかった。
V−2:Tが250秒以下かつMが30秒以下で、クランプまで燃え上がらず、炎のついた溶融物が落ちて12インチ下の綿に着火した。
×:前記UL94のいずれの評価基準も満たさない場合。
住友重機械工業(株)製の射出成形機(型締力:18トン、スクリュー径:φ18mm)を使用し、実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物を用いて、ポリアミドの融点よりも20〜30℃高いシリンダー温度とし、実施例1及び比較例1のポリアミド組成物は金型温度160℃の条件下で、比較例2及び3のポリアミド組成物は金型温度140℃の条件下で、Tランナー金型を用いてポリアミド組成物を成形(射出成形)し、長さ30mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片(シート)を作製した。
得られた試験片を温度85℃、相対湿度85%の条件で168時間静置した。その後、赤外線加熱炉(山陽精工株式会社製、SMTスコープ)を用いて、試験片に対してリフロー試験を行った。リフロー試験では25℃から60秒をかけて150℃まで昇温し、その後90秒をかけて180℃まで昇温し、さらに60秒をかけてピーク温度まで昇温してピーク温度で20秒間保持した。リフロー試験は、ピーク温度を250℃から270℃まで10℃刻みで変化させて行った。リフロー試験終了後、試験片の外観を目視にて観察した。試験片が溶融せず、かつ、ブリスタが発生しない限界の温度を耐ブリスタ温度とし、耐ブリスタ温度が260℃を超える場合を「○」、耐ブリスタ温度が250℃以上260℃以下であった場合を「△」、耐ブリスタ温度が250℃未満であった場合を「×」とすることで、耐ブリスタ性の指標とした。「○」、「△」であれば実用上差し支えないレベルである。
住友重機械工業(株)製の射出成形機(型締力:100トン、スクリュー径:φ32mm)を使用し、実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物を用いて、ポリアミドの融点よりも20〜30℃高いシリンダー温度とし、実施例1及び比較例1のポリアミド組成物は金型温度160℃の条件下で、比較例2及び3のポリアミド組成物は金型温度140℃の条件下で、Tランナー金型を用いてポリアミド組成物を成形し、多目的試験片タイプA1(JIS K7139に記載されたダンベル型の試験片;4mm厚、全長170mm、平行部長さ80mm、平行部幅10mm)を作製した。
上記の方法で作製した多目的試験片タイプA1(4mm厚)を用い、ISO527−1(2012年第2版)に準拠して、オートグラフ((株)島津製作所製)を使用して、23℃における引張破断強度(MPa)を測定した。
上記の方法で作製した多目的試験片タイプA1(4mm厚)から切削して試験片(4mm厚、全長80mm、幅10mm)を作製し、(株)東洋精機製作所製のHDTテスター「S−3M」を用いて、ISO75(2013年第3版)に準拠して熱変形温度(℃)を測定した。
上記の方法で作製した多目的試験片タイプA1(4mm厚)を秤量した。次いで水中に浸漬し、23℃,168時間浸漬処理した後、再び秤量することにより重量増加量を求め、これを浸漬前の重量で除すことにより、吸水率(%)を求めた。
[製造例1]
・半芳香族ポリアミド(PA9N−1)の製造
2,6−ナフタレンジカルボン酸9110.2g(42.14モル)、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物[前者/後者=4/96(モル比)]6853.7g(43.30モル)、安息香酸210.0g(1.72モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物16.2g(原料の総質量に対して0.1質量%)及び蒸留水8.3リットルを内容積40リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけてオートクレーブ内部の温度を220℃に昇温した。この時、オートクレーブ内部の圧力は2MPaまで昇圧した。そのまま5時間、圧力を2MPaに保ちながら加熱を続け、水蒸気を徐々に抜いて反応させた。次に、30分かけて圧力を1.3MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、プレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の粒径まで粉砕した。これを230℃、13Pa(0.1mmHg)にて10時間固相重合しポリアミドを得た。このポリアミドを「PA9N−1」と略称する。
・半芳香族ポリアミド(PA9T−1)の製造
テレフタル酸8190.7g(49.30モル)、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物[前者/後者=85/15(モル比)]7969.4g(50.35モル)、安息香酸171.0g(1.40モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物16.3g(原料の総質量に対して0.1質量%)及び蒸留水5.5リットルを内容積40リットルのオートクレーブに入れ、以降は製造例1と同様にしてポリアミドを得た。このポリアミドを「PA9T−1」と略称する。
ハロゲンフリーのホスフィン酸金属塩系難燃剤(クラリアントケミカルズ社製「Exolit OP1230」)
《充填剤》
・ガラス繊維(1)
ガラス繊維(日東紡績(株)製「CS−3J256S」)
・ガラス繊維(2)
ガラス繊維(日東紡績(株)製「CSH3PA870S」)
・熱安定剤(1)
リン系熱安定剤(BASF社製「Irgafos 168」)
・熱安定剤(2)
ヒンダードフェノール系熱安定剤(BASF社製「Irganox1098」)
・熱安定剤(3)
フェノール系耐熱安定剤(住友化学(株)製「SUMILIZER GA−80」)
・滑剤
低分子量ポリオレフィン滑剤(三井化学(株)製「HiWAX 200P」)
・結晶核剤
タルク(富士タルク工業(株)製「TALC #5000S」)
充填剤以外の各成分を表1に示す割合で予め混合して、二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製「BTN−32」)の上流部ホッパーからフィードすると共に、押出機下流側のサイドフィード口から表1に示す割合となるように充填剤をフィードした。ポリアミドの融点よりも20〜30℃高いシリンダー温度で溶融混練して押出し、冷却及び切断してペレット状のポリアミド組成物を製造した。
なお、表1中、C9DAは1,9−ノナンジアミン単位を示し、MC8DAは2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を示す。
実施例1のポリアミド組成物は、比較例1〜3と比べ、引張破断強度、熱変形温度、及び吸水率の評価が、同等あるいはそれ以上に優れており、本発明のポリアミド組成物は力学特性、耐熱性、低吸水性にも優れていることが分かる。
特許文献1に記載されているように、側鎖を有する脂肪族ジアミンを用いると、得られるポリアミドの結晶性が低下することが知られており、耐熱性、耐薬品性などの面で好ましくない。これに対して本発明のポリアミド組成物は、それに含まれるポリアミド(A)が、ナフタレンジカルボン酸単位を主体とするジカルボン酸単位と、分岐状脂肪族ジアミン単位を主体とするジアミン単位とを有する特定の構成を有することにより、耐薬品性がさらに向上し、加えて力学特性、耐熱性、低吸水性をはじめとする各種物性により優れたものとなる。
Claims (16)
- ジカルボン酸単位及びジアミン単位を有するポリアミド(A)と、ハロゲンフリー難燃剤(B)とを含有し、
該ジカルボン酸単位の40モル%超100モル%以下がナフタレンジカルボン酸単位であり、
該ジアミン単位の60モル%以上100モル%以下が分岐状脂肪族ジアミン単位及び任意構成単位の直鎖状脂肪族ジアミン単位であり、かつ該分岐状脂肪族ジアミン単位と該直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計100モル%に対する該分岐状脂肪族ジアミン単位の割合が60モル%以上である、ポリアミド組成物。 - 前記分岐状脂肪族ジアミン単位と前記直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計100モル%に対する前記分岐状脂肪族ジアミン単位の割合が60モル%以上99モル%以下である、請求項1に記載のポリアミド組成物。
- 前記分岐状脂肪族ジアミン単位と前記直鎖状脂肪族ジアミン単位との合計100モル%に対する前記分岐状脂肪族ジアミン単位の割合が80モル%以上99モル%以下である、請求項1に記載のポリアミド組成物。
- 前記分岐状脂肪族ジアミン単位の炭素数が4以上18以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記分岐状脂肪族ジアミン単位が、分岐鎖としてメチル基及びエチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するジアミンに由来する構成単位である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記分岐状脂肪族ジアミン単位が、任意の一方のアミノ基が結合した炭素原子を1位とした際に、2位の炭素原子及び3位の炭素原子の少なくとも一方に分岐鎖を有するジアミンに由来する構成単位である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記分岐状脂肪族ジアミン単位が、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、及び2−メチル−1,9−ノナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミンに由来する構成単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記直鎖状脂肪族ジアミン単位の炭素数が4以上18以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記直鎖状脂肪族ジアミン単位が、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、及び1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミンに由来する構成単位である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記ポリアミド(A)100質量部に対して、前記ハロゲンフリー難燃剤(B)を5質量部以上100質量部以下含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記ハロゲンフリー難燃剤(B)が、下記一般式(1)で示されるモノホスフィン酸塩、及び、下記一般式(2)で示されるジホスフィン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
[上記一般式(1)及び(2)において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。R5は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数7〜20のアルキルアリーレン基又は炭素数7〜20のアリールアルキレン基を表す。Mは、カルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)又は亜鉛(イオン)を表す。mは2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。] - 充填剤(C)をさらに含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
- 前記ポリアミド(A)100質量部に対して、前記充填剤(C)を0.1質量部以上200質量部以下含有する、請求項12に記載のポリアミド組成物。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリアミド組成物からなる成形品。
- 電気部品、又は、電子部品である、請求項14に記載の成形品。
- 表面実装部品である、請求項14又は15に記載の成形品。
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