JP2020027700A - リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
LiaNixCoyMzO2・・・(A)
(前記式(A)中、Mは、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)及びセリウム(Ce)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属元素である。また、前記式(A)中、a、x、y、zは、0.20≦a≦1.20、0.70≦x<1.00、0.00<y≦0.20、0.00≦z≦0.10の範囲内の値であり、かつ、x+y+z=1である。)
円形度=4πS/L2・・・(式)
(上記式中、Sは粒子の投影面積であり、Lは粒子投影像の周長であり、πは円周率である。)
円形度=4πS/L2・・・(式)
(上記式中、Sは粒子の投影面積であり、Lは粒子投影像の周長であり、πは円周率である。)
図1は、本実施形態に係る正極活物質の一例を示す図面代用写真である。正極活物質100は、リチウムと、少なくとも1種以上の遷移金属と、ランタンとを含有するリチウム金属複合酸化物の粒子10を複数含む。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子10は、複数の一次粒子1が凝集して形成される二次粒子2を含んでもよく、単独の一次粒子1やその他の粒子を少量含んでもよい。
正極活物質100の円形度の平均値は、0.960以上であり、好ましくは0.962以上である。円形度とは、粒子の形状がどの程度球に近いかを表す指標であり、例えば、真球の粒子の円形度はその上限である1.00である。正極活物質100の円形度の平均値が上記範囲である場合、リチウム金属複合酸化物の粒子10の表面の平滑性が向上するとともに粒子の形状がより球状に近い形状になり、その結果、正極活物質100の充填性(例、タップ密度)が高くなる。これにより、二次電池の正極に正極活物質100を用いた際に高い電池容量(エネルギー密度)を付与できる。なお、円形度の平均値の上限は、特に限定されず、例えば1.00未満である。
(上記式中、Sは粒子の投影面積であり、Lは粒子投影像の周長であり、πは円周率である。)
正極活物質100の粒度分布は、特に限定されないが、その粒度分布の広がりを示す指標である[(d90−d10)/体積平均粒径MV]が、0.6以下であり、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.45以下であり、0.41以下であってもよい。
正極活物質100の粒径は、特に限定されないが、体積平均粒径MVが、例えば1μm以上30μm以下であり、好ましくは2μm以上30μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上10μm以下である。体積平均粒径MVが上記範囲である場合、正極活物質の充填性が高くなり、二次電池の正極に用いた際に体積当たりの電池容量が高く、かつ、出力特性に優れる。
正極活物質100のタップ密度は、好ましくは1.9g/cm3以上であり、より好ましくは2.0g/cm3以上である。タップ密度が上記範囲である場合、二次電池の正極におけるエネルギー密度をより高いものとすることができる。なお、タップ密度の上限は、特に限定されず、例えば、3.0g/cm3以下であってもよく、2.5g/cm3以下であってもよい。タップ密度は、例えば、振とう比重測定器(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS−409)を用いて測定することができる。
リチウム金属複合酸化物の粒子10は、ランタン(La)を含有する。ランタン(La)の含有量は、正極活物質100が上述の特性を有する限り特に限定されないが、正極活物質全体に対して、好ましくは0.01質量%以上0.7質量%未満であり、より好ましくは0.05質量%以上0.6質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上0.4質量%以下である。ランタンの含有量が上記範囲である場合、正極活物質100の円形度を容易に上記範囲にさせることができ、その結果、正極活物質100の充填性や導電性を向上させ、高い出力特性と高い電池容量とを有する二次電池を得ることができる。
リチウム金属複合酸化物の粒子10におけるランタンの存在形態は、特に限定されず、例えば、図1に示されるような、ランタン化合物LCとして存在してもよい。ランタン化合物LCは、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト型構造の化合物であってもよく、上記一般式のAサイトの少なくとも一部に、Laを含有する化合物である。上記一般式のBサイトは、金属元素であり、Ni、Co、Mnのうち少なくとも一つの元素を含有してもよい。また、ランタンは、少なくとも一部がリチウム金属複合酸化物の粒子10中に固溶してもよい。
リチウム金属複合酸化物の粒子10は、リチウムと、少なくとも1種以上の遷移金属と、ランタンとを含有する。リチウム金属複合酸化物の粒子10に含まれる遷移金属としては、ニッケル、マンガン、コバルトのうち少なくとも1種類を含むことが好ましく、例えば、LiCoO2系、LiNiO2系、Li(Ni、Co、Mn)O2系、LiMn2O4系、LiNiCoAlO2系等の組成が挙げられる。また、リチウム金属複合酸化物の粒子10は、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有してもよい。
正極活物質100は、比較的均一な粒子を有するものの、高い円形度を有するため、正極活物質100の充填性が向上し、圧粉時の体積抵抗率を低減させることができる。なお、圧粉時の体積抵抗率(Ω・cm)は、正極活物質100の組成などにより変動する値であるが、ランタンを含まない以外は、同様の製造条件で得られた正極活物質の体積抵抗率(基準)に対する正極活物質100の体積抵抗率は、例えば、0.9倍以下であることが好ましく、0.85倍以下であることがより好ましい。なお、体積抵抗率を測定する際における正極活物質を圧粉するときの圧力は、例えば、12.7MPa以上63.7MPa以下の範囲とすることができる。
正極活物質100は、比較的均一な粒子を有するものの、高い円形度を有するため、正極活物質100の充填性が向上し、圧粉時の導電率を低減させることができる。なお、圧粉時の導電率(S/cm)は、正極活物質100の組成などにより変動する値であるが、ランタンを含まない以外は、同様の製造条件で得られた正極活物質(基準)の導電率に対する正極活物質100の導電率は、例えば、1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましい。なお、導電率を測定する際の圧力は、例えば、12.7MPa以上63.7MPa以下の範囲とすることができる。
なお、正極活物質100における二次粒子2の構造は、上述した特性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、二次粒子2は、その内部に空隙が殆ど見られない中実構造を有してもよく、二次粒子2の内部に空隙が存在する中空構造を有してもよく、二次粒子2の内部に多数の空隙が存在する多孔質構造を有してもよい。タップ密度をより向上させるという観点から、二次粒子2は、中実構造を有することが好ましい。
図2は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法(以下、「正極活物質の製造方法」ともいう。)の一例を示す図であり、図3は、本実施形態に係る晶析工程(ステップS10)の一例を示す図である。例えば、上記の正極活物質100は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法により、工業的規模で、容易に生産性高く製造することができる。なお、図2、図3は、正極活物質の製造方法の一例であって、この方法に限定するものではない。
まず、遷移金属と、ランタンとを含む反応水溶液を形成し、晶析反応によって、遷移金属と、ランタンとを含む金属複合化合物(金属複合水酸化物)を得る(ステップS10)。本発明者らは、正極活物質の前駆体として用いる金属複合化合物を晶析で得る際に、ランタンを含む金属複合化合物を所定の条件化で晶析(共沈)させることにより、得られる金属複合化合物の粒子の形状が、ランタンを含有させない場合の金属複合化合物と比較して、より球状になることを見出した。金属複合化合物(前駆体)の粒子形状は、正極活物質100においてもある程度維持されるため、晶析工程(ステップS10)において、ランタンを添加して晶析反応を行うことにより、容易に円形度の高い正極活物質100を得ることができる。
核生成工程(ステップS1)では、例えば、原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体と、を含む反応水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0以上14.0以下の範囲となるように制御して、核の生成を行うことが好ましい。以下、核生成工程(ステップS1)における、反応水溶液(以下、「核生成用水溶液」ともいう)を形成する方法の一例について、説明する。
粒子成長工程(ステップS2)では、核生成工程(ステップS1)で得られた核を含む反応水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が、核生成工程の反応水溶液のpH値よりも低く、かつ、10.5以上12.0以下の範囲となるように制御して、核を成長させる。以下、粒子成長工程(ステップS2)の反応水溶液(以下、「粒子成長用水溶液」ともいう。)を形成する方法の一例について説明する。
(原料)
遷移金属を含む原料水溶液としては、遷移金属を含む化合物を水に溶解させて得られる水溶液を用いてもよい。遷移金属を含む化合物としては、特に制限されないが、取扱いの容易性から、水溶性の化合物を用いることが好ましく、水溶性の硝酸塩、硫酸塩および塩酸塩などを用いることがより好ましく、コストやハロゲンの混入を防止する観点から、硫酸塩を好適に用いることがさらに好ましい。
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度を、好ましくは20質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下とする。アルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い金属複合化合物の粒子を効率的に得ることが可能となる。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、例えば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
核生成工程(ステップS1)では、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を12.0以上14.0以下の範囲に制御し、粒子成長工程(ステップS2)では、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を10.5以上12.0以下の範囲に制御する。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内に制御することが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い金属複合化合物の粒子を得ることが困難となることがある。
反応雰囲気は、特に制限されないが、安定的に製造するためには、過度の酸化性雰囲気は好ましくない。反応雰囲気の制御は、少なくとも粒子成長工程(ステップS1)で行うことが好ましく、例えば、反応槽内空間の酸素濃度を10容量%以下に制御して晶析反応を行ってもよく、反応槽内空間の酸素濃度を2容量%以下の非酸化性雰囲気として晶析反応(晶析工程、ステップS10)を行ってもよい。反応雰囲気を制御した場合、金属複合化合物の粒子の不要な酸化を抑制し、粒度の揃った粒子を得ることができる。反応雰囲気は、例えば、窒素などの不活性ガスを槽内へ流通させることなどにより、調整することができる。
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3g/L以上25g/L以下、より好ましくは5g/L以上20g/L以下である。アンモニウムイオンは、反応水溶液中で錯化剤として機能する。アンモニウムイオン濃度が3g/L未満である場合、反応水溶液中の金属イオンの溶解度を一定に保持することができなかったり、反応水溶液がゲル化しやすくなったりして、形状や粒径の整った金属複合化合物の粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が25g/Lを超える場合、反応水溶液中の金属イオンの溶解度が大きくなりすぎて、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となることがある。
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程(ステップS1)と粒子成長工程(ステップS2)を通じて、好ましくは20℃以上、より好ましくは20℃以上60℃以下の範囲に制御する。反応温度が20℃未満である場合、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して、核生成が起こりやすくなり、得られる金属複合化合物の粒子の平均粒径や粒度分布を好適に範囲に制御することが困難となる。なお、反応温度の上限は、特に限定されないが、60℃を超える場合、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
晶析反応に用いられる晶析装置(反応槽)としては、特に限定されないが、上述した散気管によって反応雰囲気の切り替えを行うことができるものが好ましい。また、晶析反応が終了するまで、析出した生成物を回収しないバッチ式の晶析装置を用いることが好ましい。バッチ式の晶析装置を用いた場合、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置とは異なり、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布の狭い金属複合化合物の粒子を容易に得ることができる。また、晶析反応中の反応雰囲気を適切に制御するという観点から、密閉式の晶析装置を用いることが好ましい。
晶析工程(ステップS10)における撹拌条件は、この工程により得られる金属複合化合物の粒子を含む反応水溶液(スラリー)が均一に撹拌される限り特に制限されることはなく、反応水溶液の濃度、使用する反応容器の大きさ、形状などに応じて適宜調整すればよい。例えば、反応水溶液を撹拌するパドルの回転数を100rpm以上1000rpm以下の範囲内で適宜調整することにより、得られる金属複合化合物の粒径や形状を制御してもよい。
晶析工程(ステップS10)によって得られる金属複合化合物(金属複合水酸化物)は、少なくとも遷移金属と、ランタンとを含む。金属複合化合物は、例えば、ニッケル、コバルト、マンガンから選択される1種以上の金属元素と、ランタンとを含んでもよく、ニッケル、マンガン、及び、ランタンを含んでもよく、ニッケル、マンガン、コバルト、及び、ランタンを含んでもよい。また、金属複合化合物は、これらの金属元素以外の元素を含んでもよい。
後述する混合工程(ステップS20)の前に熱処理工程(ステップS15)を設けてもよい。熱処理工程(ステップS15)では、金属複合化合物(金属複合水酸化物)を熱処理して、熱処理後の粒子を得る。
次に、図2に示すように、上記の金属複合化合物(金属複合水酸化物及び/又は金属複合酸化物)と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る(ステップS20)。
混合工程(ステップS20)で用いるリチウム化合物は、特に限定されないが、例えば、炭酸リチウム(融点723℃)、水酸化リチウム(融点462℃)、硝酸リチウム(融点261℃)などのリチウム化合物が使用できる。特に、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムを用いることが好ましい。
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合、図2に示すように、混合工程(ステップS20)後、焼成工程(ステップS30)の前に、仮焼工程(ステップS25)を備えてもよい。
焼成工程(ステップS30)は、リチウム混合物を焼成してリチウム金属複合酸化物の粒子10を得る。リチウム混合物を焼成することにより、前駆体粒子中にリチウムが拡散する。焼成工程(ステップS30)は、仮焼工程(ステップS25)後のリチウム混合物を、混合工程(ステップS10)で混合したリチウム化合物の融点を超える温度で焼成し、得られる正極活物質100の結晶性を高める工程である。
焼成工程(ステップS30)によって得られたリチウム複合酸化物の粒子10は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合には、リチウム複合酸化物の粒子10の凝集体または焼結体を解砕すること(ステップS35)が好ましい。これによって、得られる正極活物質100の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、上述した正極活物質を含む正極と、負極と、非水系電解質とを備える。二次電池は、例えば、正極、負極、及び非水系電解液を備える。また、二次電池は、例えば、正極、負極、及び固体電解質を備えてもよい。また、二次電池は、リチウムイオンの脱離及び挿入により、充放電を行う二次電池であればよく、例えば、非水系電解液二次電池であってもよく、全固体リチウム二次電池であってもよい。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本実施形態に係る二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用してもよい。
(正極)
まず、上記の正極活物質100、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。その際、目的とする二次電池の性能に応じて、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比は、適宜、調整することができる。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下とし、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下としてもよい。
負極として、金属リチウムやリチウム合金などを用いてもよい。また、負極として、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
正極と負極との間には、必要に応じてセパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解質としては、非水系電解液を用いることができる。非水系電解液は、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いてもよい。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状を示す塩をいう。
二次電池の構成は、特に限定されず、上述したように正極、負極、セパレータ、非水系電解質などで構成されてもよく、正極、負極、固体電解質などで構成されもよい。また、二次電池の形状は、特に限定されず、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
ランタンの含有量をはじめとする、金属複合化合物及び正極活物質の組成は、金属複合化合物、及び、正極活物質を酸溶解した後、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8100)を用いて測定した。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)により測定した。
タッピング装置(セイシン企業社製、KYT3000)を用いて測定し、500回のタッピング後、体積と試料重量からタップ密度を算出した。
円形度は、フロー式粒子像分析装置(Sysmex製、FPIA−3000)を用いて算出した。フロー式粒子像分析装置は、水性または非水性の溶液中に試料(正極活物質)を少量添加し、懸濁液としてこの装置内に導入した後、懸濁液中の正極活物質の粒子の画像の撮影と画像解析とを連続的に行う。円形度は、撮影した個々の二次粒子の投影面積と周長から、次式を用いて計算した。
円形度=4πS/L2・・・(式)
(上記式中、Sは、粒子の投影面積であり、Lは、粒子投影像の周長であり、πは円周率である。)
金属複合化合物、正極活物質の観察には、ショットキー電界放出タイプの走査型電子顕微鏡SEM−EDSである、JSM−7001F(日本電子株式会社製)を用いた。
正極活物質を4.5g以上5.5g以下の範囲内に秤量し、粉体抵抗測定ユニット(三菱化学製 MCP−PD51)を用いて荷重4kN、8kN、12kN、20kNで直径20mmの円柱状に加圧して成型し、得られた成型体の密度を測定した。その後、それぞれ荷重4kN、8kN、12kN、20kNで加圧した状態を維持しながら抵抗率計(三菱化学製 MCP−T610)を用いてJIS K 7194:1994に準拠した4探針法による抵抗率試験方法により成型体の体積抵抗率を測定した。
以下、二次電池の製造方法、及び、電池特性の評価方法について説明する。
正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTFE:7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極PE(評価用電極)を作製した。
2032型コイン電池CBAを作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極PEに対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し初期充電容量とし、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を初期放電容量とした。なお、初期充放電容量の測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
(A)晶析工程
[核生成工程]
はじめに、反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを30分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.6、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
核生成終了後、一旦、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.2となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ランタンを、水に溶解し、2mol/Lの核生成工程用の原料水溶液を調製した。原料水溶液は、ニッケル、マンガン、及び、コバルトのモル比がNi:Mn:Co=38.0:30.0:32.0となるように水に溶解した。また、硫酸ランタンは、得られる金属複合化合物(金属複合水酸化物)全体に対してランタンが0.11質量%となる量を、原料水溶液に添加した。
上記で得られた金属複合化合物を、Li/(Ni+Co+Mn)のモル比が1.10となるように、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて炭酸リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た。
このリチウム混合物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、昇温速度を約2.1℃/分として630℃まで昇温し、この温度で4時間保持することにより焼成(仮焼成)し、冷却速度を約4℃/分として室温まで冷却することで、仮焼粉末を得た。
得られた仮焼粉末を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、昇温速度を約3℃/分として920℃まで昇温し、この温度で4時間保持することにより焼成し、冷却速度を約4℃/分として室温まで冷却することで、正極活物質を得た。また、得られた正極活物質は、凝集または軽度の焼結が生じていたため、この正極活物質を解砕した。得られた正極活物質の特性の評価結果を表1に示す。また、得られた正極活物質の所定の圧力(荷重)下における密度、及び、体積抵抗率の評価結果を図7(密度)、図8(体積抵抗率)に示す。
正極活物質全体に対して、ランタンを0.3質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、金属複合化合物及び正極活物質を作製し評価した。これらの評価結果を表1、図7、図8に示す。
正極活物質全体に対して、ランタンを0.5質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、金属複合化合物及び正極活物質を作製し評価した。これらの評価結果を表1、図7、図8に示す。
ランタンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、金属複合化合物及び正極活物質を作製し評価した。これらの評価結果を表1、図7、図8に示す。
正極活物質全体に対して、ランタンを0.7質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、金属複合化合物及び正極活物質を作製し評価した。これらの評価結果を表1、図7、図8に示す。
また、実施例、及び、比較例で得られた金属複合化合物(金属複合水酸化物)を、SEMによる電子反射像で観察した。図5(A)〜図5(J)は、実施例、及び、比較例で得られた金属複合化合物(金属複合水酸化物)の反射電子像である。なお、図5(A)、(B)は実施例1、図5(C)、(D)は実施例2、図5(E)、(F)は実施例3、図5(G)、(H)は比較例1、図5(I)、(J)は比較例2を示す。また、図5(B)、(D)、(F)、(H)、及び、(J)は、それぞれ、図5(A)、(C)、(E)、(G)、及び、(J)中において点線で囲んだ部分を拡大した反射電子像である。
また、実施例、及び、比較例で得られた正極活物質を、SEMによる電子反射像で観察した。図6(A)〜(J)は、実施例、及び、比較例で得られた正極活物質の反射電子像である。なお、図6(A)、(B)は実施例1、図6(C)、(D)は実施例2、図6(E)、(F)は実施例3、図6(G)、(H)は比較例1、図6(I)、(J)は比較例2を示す。なお、図6(B)、(D)、(F)、(H)、及び、(J)は、それぞれ、図6(A)、(C)、(E)、(G)、及び、(J)中において点線で囲んだ部分を拡大した反射電子像である。また、図6(A)、(C)、(E)、(G)、及び、(J)に示すスケールは10μmであり、図6(B)、(D)、(F)、(H)、及び、(J)に示すスケールは1μmである。なお、図6では、白く見える部分(明るく見える部分)を矢印で示す。この部分は、ランタン(重い元素)を含むランタン化合物LCと示すと考えられる。
図5、6に示されるように、実施例で得られた金属複合化合物、及び、正極活物質(図5(A)〜(F)、図6(A)〜(F))は、比較例1で得られたランタンを含まない金属複合化合物、及び、正極活物質(図5(G)、(H)、図6(G)、(H))と比較して、観察される粒子表面の平滑性が向上した。また、実施例で得られた正極活物質では、比較例1で得られた正極活物質と比較して、円形度が大きく、タップ密度、及び、体積当たりの初期充放電容量(電池容量)も向上した。また、図7、図8に示されるように、実施例では、比較例1と比較して、圧力をかけて測定した際の密度が大きく、体積抵抗率も低下することから、導電性が改善されたことが示された。
10…リチウム金属複合酸化物
1…一次粒子
2…二次粒子
LC…ランタン化合物
CBA…コイン型電池
PE…正極(評価用電極)
NE…負極
SE…セパレータ
GA…ガスケット
PC…正極缶
NC…負極缶
Claims (13)
- リチウムと、少なくとも1種以上の遷移金属と、ランタンとを含有するリチウム金属複合酸化物の粒子を複数含み、
下記の式で算出される円形度の平均値が0.96以上であり、
粒度分布の広がりを示す指標である[(d90−d10)/体積平均粒径MV]が0.60以下である、リチウムイオン二次電池用の正極活物質。
(なお、d90、及び、d10は、それぞれ、レーザー光回折散乱法により測定される累積90体積%径、及び、累積10体積%径を示す値である。)
円形度=4πS/L2・・・(式)
(上記式中、Sは粒子の投影面積であり、Lは粒子投影像の周長であり、πは円周率である。) - 正極活物質全体に対して、ランタンを0.01質量%以上0.7質量%未満含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 体積平均粒径MVが1.0μm以上30μm以下である、請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- タップ密度が1.9g/cm3以上である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記リチウム金属複合酸化物の粒子は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、及び、任意に元素(M)を含み、かつ、それぞれの元素の物質量比(モル比)が、Li:Ni:Mn:Co:M=(1+u):x:y:z:t(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Ti、Cr、Zr、Nb、Hf、及び、Taから選択される1種以上の元素)で表される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 遷移金属と、ランタンとを含む反応水溶液を形成し、晶析反応によって、遷移金属とランタンとを含む金属複合化合物を得る、晶析工程と、
前記金属複合化合物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る、リチウム混合工程と、
前記リチウム混合物を焼成してリチウム金属複合酸化物の粒子を得る焼成工程と、を備え、
下記の式で算出される円形度の平均値が0.96以上である、
リチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法。
円形度=4πS/L2・・・(式)
(上記式中、Sは粒子の投影面積であり、Lは粒子投影像の周長であり、πは円周率である。) - 前記晶析工程は、核生成を行う核生成工程と、粒子成長を行う粒子成長工程とを含む、請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記粒子成長工程の反応水溶液はランタンを含む、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記晶析工程は、前記金属複合化合物全体に対して、ランタンを0.01質量%以上0.7質量%未満含む、前記金属複合化合物を得ることを含む、請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記晶析工程は、粒度分布のばらつきの指数を示す[(d90−d10)/体積平均粒径MV]が0.6以下である前記金属複合化合物を得ることを含む、請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
(なお、d90、及び、d10は、それぞれ、レーザー光回折散乱法により測定される累積90体積%径、及び、累積10体積%径を示す値である。) - 前記晶析工程は、タップ密度が1.9g/cm3以上である前記金属複合化合物を得ることを含む、請求項6〜請求項10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記金属複合化合物は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、及び、任意に元素(M)を含み、かつ、それぞれの元素の物質量比(モル比)が、Ni:Mn:Co:M=x:y:z:t(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Ti、Cr、Zr、Nb、Hf、及び、Taから選択される1種以上の元素)で表される、請求項6〜請求項11のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 正極と、負極と、電解質とを備え、
前記正極は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池。
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