JP2020119784A - ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物およびその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、並びに、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物の粒子構造
本発明のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物(以下、「複合水酸化物」という)は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の前駆体であって、複数の板状一次粒子、および、板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子により構成される。二次粒子は、略球状および楕円球状などを含む、丸みを帯びた塊形状を有する。
本発明の複合水酸化物では、二次粒子の平均粒径MVが、3μm〜12μmの範囲、好ましくは4μm〜11μmの範囲、より好ましくは5μm〜10μmの範囲に調整される。二次粒子の平均粒径MVは、この複合水酸化物を前駆体とする正極活物質の平均粒径MVと相関する。このため、複合水酸化物を構成する二次粒子の平均粒径MVをこのような範囲に制御することで、この複合水酸化物を前駆体とする正極活物質の平均粒径MVを所定の範囲に制御することが可能となる。
本発明の複合水酸化物の二次粒子は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕が、0.65以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下となるように調整される。
本発明の複合水酸化物において、その二次粒子の大きさに対する、中心部の大きさ、第1の低密度層、高密度層、第2の低密度層、および外殻層のそれぞれの厚さを適切に制御することにより、凝集した一次粒子により形成された外殻部と、外殻部の内側に存在し、凝集した一次粒子により形成され、かつ、外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、凝集部の中に分散して存在する空間部とにより構成された二次粒子からなる正極活物質が得られる。
本発明の複合水酸化物において、中心部、高密度層、および、外殻層を構成する板状一次粒子の大きさと、第1の低密度層および第2の低密度層を構成する微細一次粒子の大きさは、複合水酸化物の二次粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより、その断面観察が可能な状態とした後、その断面について、FE−SEMなどのSEMを用いて観察した場合に、撮像の上で明確に構造の相違が把握できる程度に異なる。
本発明の複合水酸化物は、遷移金属として、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物(NMC)からなる三元系の正極活物質の前駆体である。上述した粒子構造、平均粒径、および粒度分布を有する限り、その組成が制限されることはない。ただし、本発明は、特に、高ニッケル比率の組成を有する正極活物質に好適に適用されるため、複合水酸化物全体として、ニッケル、マンガン、およびコバルトの合計に対するニッケルの原子比であるニッケル比率が0.4を超えていることが好ましい。
(1)晶析反応
本発明の複合水酸化物の製造方法は、反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、正極活物質の前駆体となる複合水酸化物を製造する方法である。
核生成工程では、はじめに、この工程における原料となる遷移金属の化合物を水に溶解し、原料水溶液を調製する。同時に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給および混合して、液温25℃基準で測定するpH値が12.0〜14.0、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜25g/Lである反応前水溶液を調製する。なお、反応前水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより測定することができる。
核生成工程終了後、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0に調整し、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を形成する。pH値は、アルカリ水溶液の供給を停止することでも調整可能であるが、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得るためには、一旦、すべての水溶液の供給を停止してpH値を調整することが好ましい。具体的には、すべての水溶液の供給を停止した後、核生成用水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸を供給することにより、pH値を調整することが好ましい。
上述のようにして得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程の時間、核生成用水溶液や粒子成長用水溶液のpH値や、原料水溶液の供給量により制御することができる。たとえば、核生成工程を高いpH値で行うことにより、または、粒子生成工程の時間を長くすることにより、供給する原料水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させ、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径を小さくすることができる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径を大きくすることができる。
本発明の複合水酸化物の製造方法では、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値およびアンモニウムイオン濃度に調整された成分調整用水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用水溶液、好ましくは核生成工程後の核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したものを添加および混合して、これを粒子成長用水溶液として、粒子成長工程を行ってもよい。
本発明の複合水酸化物の製造方法では、反応槽内に、少なくともニッケルとマンガンとコバルトを含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、pH調整剤によって該反応水溶液のpH値を所定範囲に調整しつつ、晶析反応によって、複合水酸化物を得る。
本発明においては、2つの原料水溶液中に含まれる金属元素の比率が、概ね、得られる複合水酸化物の組成比となる。このため、2つの原料水溶液は、ニッケル比率の変更とともに、目的とする複合水酸化物の組成に応じて、それぞれの原料水溶液の金属元素の含有量を適宜調整することが必要となる。
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、好ましくは20質量%〜50質量%、より好ましくは20質量%〜30質量%とする。アルカリ金属水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を効率的に得ることが可能となる。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
本発明の複合水酸化物の製造方法においては、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0〜14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内に制御することが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合には、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得ることが困難となる。なお、反応水溶液のpH値はpH計により測定することができる。
核生成工程においては、反応水溶液(核生成用水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.5、より好ましくは12.5〜13.3の範囲に制御することが必要となる。これにより、核の成長を抑制し、核生成を優先させることが可能となり、この工程で生成する核を均質かつ粒度分布の狭いものとすることができる。一方、pH値が12.0未満では、核生成とともに核(粒子)の成長が進行するため、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。また、pH値が14.0を超えると、生成する核が微細になりすぎるため、核生成用水溶液がゲル化する問題が生じる。
粒子成長工程においては、反応水溶液(粒子成長水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、より好ましくは11.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。これにより、新たな核の生成が抑制され、粒子成長を優先させることが可能となり、得られる複合水酸化物の二次粒子を均質かつ粒度分布が狭いものとすることができる。一方、pH値が10.5未満では、アンモニウムイオン濃度が上昇し、金属イオンの溶解度が高くなるため、晶析反応の速度が遅くなるばかりでなく、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、生産性が悪化する。また、pH値が12.0を超えると、粒子成長工程中の核生成量が増加し、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。
本発明の複合水酸化物の二次粒子の構造は、核生成工程および粒子成長工程における反応水溶液のpH値を上述のように制御するとともに、これらの工程における反応雰囲気を制御することにより形成される。したがって、本発明の複合水酸化物の製造方法においては、それぞれの工程におけるpH値の制御とともに、反応雰囲気の制御が重要な意義を有する。
本発明の製造方法においては、複合水酸化物の二次粒子の中心部、高密度層、および外殻層を形成する段階における反応雰囲気は、非酸化性雰囲気である。具体的には、不活性ガスなどの非酸化性ガスを導入することにより、反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%以下、好ましくは2容量%以下、より好ましくは1容量%以下である非酸化性雰囲気となるように、酸素と不活性ガスの混合雰囲気に制御することが必要となる。これにより、不要な酸化を抑制しつつ、核生成工程で生成した核を一定の範囲まで成長させることができるため、複合水酸化物の二次粒子の中心部、高密度層、および外殻層を板状一次粒子が凝集した構造とすることができる。
一方、複合水酸化物の二次粒子の第1の低密度層および第2の低密度層を形成する段階では、反応雰囲気を、酸化性雰囲気に制御する。具体的には、反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%を超えるように、好ましくは10容量%以上、より好ましくは大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)となるように制御する。反応雰囲気中の酸素濃度をこのような範囲に制御することにより、粒子成長が抑制され、一次粒子の平均粒径が0.01μm〜0.3μmの範囲となるため、中心部、高密度層、および外殻層と十分な密度差を有する第1の低密度層および第2の低密度層を形成することができる。
粒子成長工程において、目的とする粒子構造を有する複合水酸化物が形成されるように、上述した雰囲気制御を行うことが必要となる。
晶析工程中における反応雰囲気の切り替えは、反応槽内に雰囲気ガスを流通させるか、反応水溶液に、内径が1mm〜50mm程度の導管を挿入し、雰囲気ガスによってバブリングすることで行うことが一般的である。この場合、反応雰囲気の切り替えに長時間を要するため、切替中に、原料水溶液の供給を停止することが必要とされる。原料水溶液の供給を停止しないと、複合水酸化物の粒子内部に緩やかな密度勾配が形成される可能性がある。この場合、特に、第1の低密度層および第2の低密度層の形成が不十分となる場合がある。
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3g/L〜25g/L、より好ましくは5g/L〜20g/Lの範囲内で一定値に保持する。反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度が3g/L未満では、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、また、反応水溶液がゲル化しやすくなり、形状や粒径の整った複合水酸化物の二次粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が25g/Lを超えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎるため、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となる。なお、反応水溶液のアンモニウムイオン濃度は、イオンメータにより測定することができる。
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、好ましくは20℃以上、より好ましくは20℃〜60℃の範囲に制御することが必要となる。反応温度が20℃未満では、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して、核生成が起こりやすくなり、得られる複合水酸化物の二次粒子の平均粒径MVや粒度分布の制御が困難となる。なお、反応温度の上限は、特に制限されることはないが、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
本発明の複合水酸化物の製造方法では、原料水溶液中に添加元素Mを含有する化合物を添加することで、粒子内部に添加元素Mが分散した複合水酸化物の二次粒子を得ることができる。しかしながら、より少ない添加量で、添加元素Mの添加による効果を得ようとする場合には、粒子成長工程後に、複合水酸化物の二次粒子の表面を、添加元素Mを含む化合物で被覆する被覆工程を行うことが好ましい。
本発明の複合水酸化物を製造するための晶析装置(反応槽)としては、反応雰囲気の切り替えおよび原料水溶液の切り替えを行うことができるものである限り、特に制限されることはない。しかしながら、晶析反応が終了するまで、析出した生成物を回収しないバッチ式晶析装置を用いることが好ましい。このような晶析装置であれば、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置とは異なり、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を容易に得ることができる。また、本発明の複合水酸化物の製造方法では、晶析反応中の反応雰囲気を適切に制御することが必要となるため、密閉式の晶析装置を用いることが好ましい。
(1)粒子構造
本発明の正極活物質は、遷移金属として、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる、三元系のリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成される。本発明の正極活物質では、図3に示すように、二次粒子は、凝集した一次粒子からなる外殻部6と、外殻部6の内側に存在し、外殻部6と同様に凝集した一次粒子からなり、かつ、外殻部6と電気的に導通する凝集部7、および、外殻部6の内側で凝集部7の間に分散して存在する空間部8とを備えた多孔質構造を有している。
本発明の正極活物質は、平均粒径MVが、3μm〜10μmの範囲、好ましくは4μm〜9μmの範囲、より好ましくは4μm〜8μmの範囲となるように調整される。正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の単位体積あたりの電池容量を増加させることができるばかりでなく、安全性や出力特性も改善することができる。これに対して、平均粒径MVが3μm未満では、正極活物質の充填性が低下し、単位体積あたりの電池容量を増加させることができない。一方、平均粒径MVが10μmを超えると、正極活物質の反応面積が低下し、電解質との界面が減少するため、出力特性を改善することが困難となる。
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕が、0.70以下、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下であり、きわめて粒度分布が狭い二次粒子により構成される。このような正極活物質は、微細粒子や粗大粒子の割合が少なく、これを用いた二次電池は、安全性、サイクル特性および出力特性が優れたものとなる。
本発明の正極活物質において、外殻部および凝集部を構成する一次粒子は、平均粒径が0.01μm〜0.3μmの範囲にある大きさで形成される。一次粒子の大きさは、複合水酸化物の場合と同様に、二次粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより、その断面観察が可能な状態とした後、その断面について、FE−SEMなどのSEMを用いて観察し、二次粒子の断面に存在する10個以上の一次粒子の最大外径(長軸径)を測定し、その平均値を求めることにより得られる。正極活物質は、前駆体である複合水酸化物を適切な焼成条件で焼成することにより、前駆体を構成する板状一次粒子が、微細一次粒子を吸収しつつ、焼結収縮することにより、上記の大きさの一次粒子が形成される。一次粒子の平均粒径が0.01μmを下回ると、脆弱になり十分な電池性能が得られないという問題が生ずる可能性がある。一方、一次粒子の平均粒径が0.3μmを上回ると、粒子内の固体内拡散距離が長くなり、十分な電池性能が得られないという問題が生ずる可能性がある。
二次粒子を構成する外殻部は、低ニッケル比率の組成を有する一次粒子の凝集体によって構成される。外殻部の厚さは、0.1μm〜1.0μmの範囲にあることが好ましい。外殻部の厚さが0.1μm未満では、正極活物質の二次粒子の強度が十分に担保されない。一方、外殻部の厚さが1.0μmを超えると、低ニッケル比率の組成の一次粒子が多くなりすぎて、正極活物質全体を高ニッケル比率の組成とすることが困難となる。外殻部の厚さは、好ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲であり、より好ましくは0.12μm〜0.3μmの範囲である。
本発明の正極活物質は、X線回折による(003)面のピークの半価幅からシェラー式を用いて一次粒子の結晶子径を求めた場合に、その結晶子径が、300Å〜1500Åの範囲、好ましくは400Å〜1300Åの範囲、より好ましくは700Å〜1250Åの範囲にある。このような範囲の結晶子径を有する正極活物質は、結晶性がきわめて高く、二次電池の正極抵抗を低減させ、かつ、その出力特性を向上させることができる。
携帯電子機器の使用時間や電気自動車の走行距離を伸ばすために、二次電池の高容量化は重要な課題となっている。一方、二次電池の電極の厚さは、電池全体のパッキングや電子伝導性の問題から数μm程度とすることが要求される。このため、正極活物質として高容量のものを使用するばかりでなく、正極活物質の充填性を高め、二次電池全体としての高容量化を図ることが必要となる。
本発明の正極活物質は、二次粒子の内部に形成された空間部の存在により比表面積を向上させている点に特徴がある。本発明における正極活物質の比表面積としては、たとえば窒素ガス吸着によるBET法により測定したBET比表面積が用いられる。本発明の正極活物質において、上述の二次粒子の構造が維持される限り、BET比表面積は可能な限り大きくあることが好ましい。BET比表面積が大きくなるほど電解質との接触面積が大きく、これを用いた二次電池の出力特性を大幅に改善することができるためである。具体的には、本発明の正極活物質のBET比表面積は、2.0m2/g〜5.0m2/gの範囲にあることが好ましい。本発明において、正極活物質の比表面積が2.0m2/g未満では、二次電池を構成した場合に、電解質との反応面積を十分に確保することができず、出力特性を十分に向上させることが困難となる。BET比表面積は、2.5m2/g〜5.0m2/gであることがより好ましく、3.0m2/g〜6.0m2/gであることがさらに好ましい。
本発明の正極活物質は、二次粒子の内部に形成された空間部を有する多孔質構造を備えることにより、出力特性を向上させている点に特徴がある。本発明では、二次粒子に存在する空間部の存在比率(以下、「空間部率」という)を示す指標として吸油量を用いることが可能である。
本発明の三元系の正極活物質は、上述した構造を有する限り、その組成が制限されることはないが、本発明は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.4≦x≦0.70、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.3、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる正極活物質に対して好適に適用することができる。
本発明の正極活物質の製造方法は、上述した複合水酸化物を前駆体として用い、所定の粒子構造、平均粒径MVおよび粒度分布を備える正極活物質を合成することができる限り、特に制限されることはない。しかしながら、工業規模の生産を前提とした場合には、上述した複合水酸化物をリチウム化合物と混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、得られたリチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃〜920℃で焼成する焼成工程とを備える製造方法によって正極活物質を合成することが好ましい。なお、必要に応じて、上述した工程に、熱処理工程や仮焼工程などの工程を追加してもよい。このような製造方法によれば、上述した正極活物質、特に、一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることができる。
本発明の正極活物質の製造方法においては、任意的に、混合工程の前に熱処理工程を設けて、複合水酸化物を熱処理粒子としてからリチウム化合物と混合してもよい。ここで、熱処理粒子には、熱処理工程において余剰水分を除去された複合水酸化物のみならず、熱処理工程により、酸化物に転換されたニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物(以下、「複合酸化物」という)、または、これらの混合物も含まれる。
混合工程は、上述した複合水酸化物または熱処理粒子に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ、350℃〜800℃、好ましくは450℃〜780℃で仮焼する仮焼工程を行ってもよい。これにより、複合水酸化物または熱処理粒子中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウム複合酸化物を得ることができる。
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定条件の下で焼成し、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム複合酸化物を得る工程である。
リチウム混合物の焼成温度は、650℃〜920℃とすることが必要となる。焼成温度が650℃未満では、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物または熱処理粒子が残存したり、得られる正極活物質の結晶性が不十分なものとなったりする。一方、焼成温度が920℃を超えると、正極活物質の二次粒子中の気孔が潰れてしまう可能性があり、また、正極活物質の二次流粒子間が激しく焼結し、異常粒成長が引き起こされ、不定形な粗大粒子の割合が増加することとなる。二次粒子を構成する凝集部および空間部をそれぞれ適切な大きさの範囲内に制御する観点からは、リチウム混合物の焼成温度を700℃〜920℃とすることが好ましく、750℃〜900℃とすることがより好ましい。
焼成時間のうち、上述した焼成温度での保持時間は、少なくとも2時間とすることが好ましく、4時間〜24時間とすることがより好ましい。焼成温度における保持時間が2時間未満では、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物または熱処理粒子が残存したり、得られる正極活物質の結晶性が不十分なものとなったりするおそれがある。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、正極活物質の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。
焼成工程によって得られた正極活物質を構成する二次粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合には、凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ、および非水電解質などの構成部材を備える、一般的な非水電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。あるいは、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、および固体電解質などの構成部材を備える、一般的な固体電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。すなわち、本発明は、リチウムイオンの脱離および挿入により、充放電を行う二次電池であれば、非水系電解液二次電池から全固体リチウム二次電池まで広く適用可能である。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、本明細書に記載されている実施形態に基づいて、種々の変更、改良を施した形態のリチウムイオン二次電池に適用することが可能である。
a)正極
上述した正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにしてリチウムイオン二次電池の正極を作製する。
負極には、金属リチウムやリチウム合金などを使用することができる。また、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用することができる。
セパレータは、非水電解質二次電池において、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、非水電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されることはない。
非水電解質二次電池に用いられる非水電解質には、支持塩であるリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液などが用いられる。
リチウムイオン二次電池の構成は、特に限定されず、非水電解質二次電池における、正極、負極、セパレータ、非水系電解質などからなる構成や、固体電解質二次電池における、正極、負極、固体電解質などからなる構成を採りうる。また、二次電池の形状は、特に限定されず、円筒形や積層形など、種々の形状に採ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述したように、本発明の高ニッケル比率の組成を有する多孔質構造で三元系の正極活物質を正極材料として用いているため、容量特性、出力特性、およびサイクル特性に優れる。しかも、本発明の正極活物質は、低ニッケル比率の組成を有する外殻部が、高ニッケル比率の組成を有する内部の凝集部を保護する構造を有するため、従来の均一な高ニッケル比率の組成を有する多孔質構造の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池との比較において、同様の高いエネルギー密度を維持しつつ、正極界面抵抗を低減させることができ、かつ、放電容量維持率をさらに向上させることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述のように、容量特性、出力特性、およびサイクル特性に優れており、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラなど)の電源に好適に利用することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、小型化および高出力化が可能であるばかりでなく、安全性および耐久性にも優れており、高価な保護回路を簡略することができるため、搭載スペースに制約を受ける電気自動車などの輸送用機器の電源としても好適に利用することができる。
a)複合水酸化物の製造
[核生成工程]
はじめに、反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを30分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.6、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
核生成終了後、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.2となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。pH値が所定の値になったことを確認した後、核生成工程と同様の115ml/分と一定の割合で、第1の原料水溶液を供給し、核生成工程で生成した核(粒子)を成長させた。
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000)を用いた分析により、この複合水酸化物の組成は、一般式:Ni0.43Mn0.32Co0.25(OH)2で表されるものであることが確認された。
複合水酸化物の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ(日本電子株式会社製、IB−19530CP)加工によって断面観察可能な状態とした上で、10個以上の複合水酸化物の二次粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM:日本電子株式会社製、JSM−6360LA)により観察した。この結果、この複合水酸化物は、板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に、微細一次粒子が凝集して形成された第1の低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層と、微細一次粒子が凝集して形成された第2の低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された外殻層からなり、また、中心部、高密度層、および外殻層を構成する板状一次粒子の一部は、相互に連結していることが確認された。
レーザ光回折散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、複合水酸化物の二次粒子の平均粒径MVを測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕を算出した。この結果、平均粒径MVは、5.5μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は0.50であることが確認された。
上述のようにして得られた複合水酸化物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、120℃で12時間熱処理した後(熱処理工程)、Li/Meが1.10となるように、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて水酸化リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000)を用いた分析により、この正極活物質の組成は、一般式:Li1.10Ni0.43Mn0.32Co0.25O2で表されるものであることが確認された。
正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ(日本電子株式会社製、IB−19530CP)加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEM(FE−SEM:日本電子株式会社製、JSM−6360LA)により観察した。この結果、この正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、外殻部と、外殻部の内側に分散して存在し、外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、外殻部の内側で凝集部の間に存在する、一次粒子の存在しない気孔構造からなる空間部とを備えていることが確認された。また、上記SEM観察から得た、任意の10個以上の二次粒子を含む断面画像の観察から、二次粒子の外殻部の平均厚さは、0.3μmであった。
X線回折(XRD)装置(スペクトリス株式会社製、X’Pert PRO)を用いて、CuKα線による粉末X線回折で分析して、X線回折パターンの回折ピークの広がりを除き、それぞれの回折ピークからシェラーの式を用いて、(003)面の結晶子径を算出したところ、530Åであった。
走査型透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光(STEM−EDS)装置(日立ハイテクノロジーズ株式会社製、HD―2300A)を用いての結果から、二次粒子を構成する外殻部におけるニッケルとマンガンとコバルトの比は、3.6:3.2:3.2であり、凝集部におけるニッケルとマンガンとコバルトの比は、5:3:2であることを確認した。
レーザ光回折散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、正極活物質の平均粒径MVを測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕を算出した。この結果、平均粒径MVは、5.2μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は0.42であることが確認された。
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ1200シリーズ)によりBET比表面積を、タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS−406)によりタップ密度を、それぞれ測定した。この結果、BET比表面積は4.2m2/gであり、タップ密度は1.4g/cm3であることが確認された。
「JIS K 6217−4(ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む))」に準拠した吸油量測定装置(株式会社あさひ総研製、S−500)により、測定用オイル(油)にフタル酸ジ−n−ブチル(ジ−n−ブチルフタレート、DBP)を用い、吸油量を測定した。その結果、吸油量は、50.0ml/100gであることが確認された。
図4に示すような2032型コイン電池11を作成した。具体的には、上述のようにして得られた正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTEE:7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極12を作製した。
[正極界面抵抗]
正極界面抵抗の測定は、インピーダンス測定法を用い、2032型コイン型電池を充電電位4.4Vで充電し、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用することで、図5に示すナイキストプロットを得た。図5に示すナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗(界面抵抗)とその容量を示す特性曲線の和として表されているため、このナイキストプロットに基づき、図5に示す等価回路を用いてフィッティング計算して、正極界面抵抗の値を算出した。なお、正極界面抵抗については、後述する比較例1の正極活物質を基準とし、これに対する抵抗減少率を示す。その結果、正極界面抵抗は、比較例1に対して0.8倍まで減少していた。
2032型コイン電池を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行なって、初期放電容量を求めた。さらに、充電と放電を繰り返し100回行い、初期放電容量に対する2回目の放電容量の比率を放電容量維持率とした。その結果、放電容量維持率は、90%であった。
硫酸ニッケル、硫酸マンガン、および硫酸コバルトを、それぞれの金属元素のモル比がNi:Mn:Co=6:3:1となるように水に溶解し、2mol/Lの第1の原料水溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物、正極活物質、および、リチウムイオン二次電池を得た。
原料水溶液について、第1の原料水溶液と第2の原料水溶液に分けずに、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、および硫酸コバルトを、それぞれの金属元素のモル比がNi:Mn:Co=5:3:2となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液のみを調製し、切替操作4において原料水溶液の切替を行わずに、第5段階の晶析反応を継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物、正極活物質、および、リチウムイオン二次電池を得た。
2 第1の低密度層
3 高密度層
4 第2の低密度層
5 外殻層
6 外殻部
7 凝集部
8 空間部
11 コイン電池
12 正極(評価用電極)
13 負極
14 セパレータ
15 ガスケット
16 正極缶
17 負極缶
Claims (20)
- リチウムイオン二次電池用正極活物質の前駆体であって、複数の板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなる、ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物であって、
前記二次粒子は、主として前記板状一次粒子が凝集して形成された中心部と、該中心部の外側に、主として前記微細一次粒子が凝集して形成された第1の低密度層と、第1の低密度層の外側に、主として前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度層と、該高密度層の外側に、主として前記微細一次粒子が凝集して形成された第2の低密度層と、第2の低密度層の外側に、主として前記板状一次粒子が凝集して形成された外殻層とを備え、および、
前記中心部、第1の低密度層、前記高密度層、および、第2の低密度層は、ニッケル、マンガン、およびコバルトの合計に対するニッケルの原子比であるニッケル比率が0.4を超える高ニッケル比率の組成を有し、前記外殻層は、前記ニッケル比率が0.1を超えて0.4以下である低ニッケル比率の組成を有する、
ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物。 - 前記二次粒子の平均粒径MVは、4μm〜11μmの範囲にあり、かつ、前記二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は、0.65以下である、請求項1に記載のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物。
- 前記中心部の半径は、前記二次粒子の粒径の20%〜40%の範囲にあり、第1の低密度層の厚さは、前記二次粒子の粒径の3%〜15%の範囲にあり、前記高密度層の厚さは、前記二次粒子の粒径の2%〜10%の範囲にあり、第2の低密度層の厚さは、前記二次粒子の粒径の2%〜10%の範囲にあり、前記外殻層の厚さは、前記二次粒子の粒径の2%〜10%の範囲にある、請求項1または2に記載のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物。
- 一般式(A):NixMnyCozMt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.4≦x≦0.70、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.3、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される組成を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物。
- 反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物を得る工程を備える、ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物の製造方法であって、
前記ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物を得る工程は、前記反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を12.0〜14.0の範囲となるように制御することにより、核生成を行う核生成工程と、該核生成工程で得られた核を含む反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、前記核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5〜12.0の範囲となるように制御することにより、前記核を成長させる、粒子成長工程とを備え、
(1)前記核生成工程および前記粒子成長工程の第1段階における反応雰囲気を酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気に調整し、(2)前記粒子成長工程の第1段階の後に、前記反応雰囲気を、前記非酸化性雰囲気から酸素の濃度が5容量%を超える酸化性雰囲気に切り替えて、前記粒子成長工程の第2段階とし、(3)次に、前記反応雰囲気を、前記酸化性雰囲気から前記非酸化性雰囲気に切り替えて、前記粒子成長工程の第3段階とし、(4)さらに、前記反応雰囲気を、前記非酸化性雰囲気から前記酸化性雰囲気に切り替えて、前記粒子成長工程の第4段階とし、(5)最後に、前記反応雰囲気を、前記酸化性雰囲気から前記非酸化性雰囲気に切り替えて、前記粒子成長工程の第5段階として、前記晶析反応を継続し、および、
前記核生成工程および前記粒子成長工程の第1段階から第4段階までに供給される前記原料水溶液は、ニッケル、マンガン、およびコバルトの合計に対するニッケルの原子比であるニッケル比率が0.4を超える高ニッケル比率の組成を有し、前記粒子成長工程の第5段階で供給される前記原料水溶液は、前記ニッケル比率が0.1を超えて0.4以下である低ニッケル比率の組成を有するようにする、
ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物の製造方法。 - 前記反応雰囲気の切り替えを、前記粒子成長工程において添加される全金属量に対しそれぞれの段階で添加される金属量の割合で定義される、前記粒子成長工程全体に対するそれぞれの段階における晶析反応の割合について、第1段階を8%〜20%の範囲とし、第2段階を2%〜20%の範囲とし、第3段階を12%〜40%の範囲とし、第4段階を3%〜40%とし、第5段階を10%〜50%とする、請求項5に記載のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物の製造方法。
- 前記ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物は、一般式(A):NixMnyCozMt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.4≦x≦0.70、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.3、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される組成を有する、請求項5または6に記載のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物の製造方法。
- リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
該正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在し、前記凝集した一次粒子により形成され、かつ、前記外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、該凝集部の中に分散して存在する空間部とを備え、および、
前記凝集部は、ニッケル、マンガン、およびコバルトの合計に対するニッケルの原子比であるニッケル比率が0.4を超える高ニッケル比率の組成を有し、前記外殻部は、前記ニッケル比率が0.1を超えて0.4以下である低ニッケル比率の組成を有する、
リチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 前記二次粒子の外殻部の厚さは、0.1μm〜1.0μmの範囲にある、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記二次粒子の平均粒径MVは、3μm〜10μmの範囲にあり、かつ、前記二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は、0.7以下である、請求項8または9に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質のタップ密度は、1.1g/cm3〜1.8g/cm3の範囲にある、請求項8〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質のBET比表面積は、2.0m2/g〜5.0m2/gの範囲にある、請求項8〜11のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質の吸油量は、35ml/100g〜60ml/100gの範囲にある、請求項8〜12のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質の(003)面のX線回折による(003)面のピークの半価幅からシェラー式を用いて求めた一次粒子の結晶子径は、300Å〜1500Åの範囲にある、請求項8〜13のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.4≦x≦0.70、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.3、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有する、請求項8〜14のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、該混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃〜920℃の範囲にある温度で焼成して、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質を得る焼成工程を備え、
前記ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物として、請求項1〜4のいずれかに記載のニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物を用いる、
リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記混合工程において、前記リチウム混合物を、該リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和と、リチウムの原子数との比が、1:0.95〜1.5となるように調整する、請求項16に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記混合工程の前に、前記ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物を105℃〜750℃の範囲にある温度で熱処理する、熱処理工程をさらに備える、請求項16または17に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウムイオン二次電池用正極活物質は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.4≦x≦0.70、0.15≦z≦0.4、0.15≦y≦0.3、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、多孔質構造を有する六方晶系のリチウムニッケルマンガン複合酸化物からなる、請求項16〜18のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 正極、負極、セパレータ、および非水電解質、あるいは、正極、負極、および固体電解質を備え、前記正極に用いられる正極活物質として、請求項8〜15のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質が用いられている、リチウムイオン二次電池。
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