JP2020023888A - ブレーキ装置及びこれを備える液圧モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】ブレーキ装置の組み立て性を向上させる。【解決手段】油圧モータ1を制動するブレーキ装置20は、ケース11内の空間を第1室14と第2室15とに仕切る複数のディスクプレート21と、ディスクプレート21に隣接して配置されるフリクションプレート22と、ディスクプレート21とフリクションプレート22との間に摩擦力を生じさせるブレーキ駆動機構25と、第1室14と第2室15とを連通する複数の連通路23と、を備える。それぞれのディスクプレート21には、複数の連通路23を構成する複数の歯欠部21b,21cと、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1歯欠部21bを識別するための識別部21dと、が設けられる。【選択図】 図2
Description
本発明は、ブレーキ装置及びこれを備える液圧モータに関するものである。
特許文献1には、液圧によって回転するシリンダブロックと共に回転する複数のディスクプレートと、ディスクプレートに隣接して配置されるフリクションプレートと、ディスクプレートをフリクションプレートに押し付けるブレーキ駆動機構と、を備えた液圧モータのブレーキ装置が開示されている。このブレーキ装置では、ディスクプレートによって仕切られる2つの室を連通する連通路がそれぞれのディスクプレートに形成されている。
特許文献1に記載のブレーキ装置では、ディスクプレートに連通路を形成することによって、ディスクプレートによって仕切られる2つの室内の圧力に差が生じることが抑制され、結果として、2つの室間の圧力差によりディスクプレートがフリクションプレートに押し付けられることを回避することが可能である。
特許文献1に記載のブレーキ装置において、各ディスクプレートに形成された連通路の位置が周方向においてずれた状態で、複数のディスクプレートがシリンダブロックに組み付けられると、ディスクプレートによって仕切られる2つの室を連通する連通路の流路面積が小さくなり、2つの室間の圧力差が十分に低減されなくなる。このような状態となることを避けるためには、複数のディスクプレートに形成された連通路の位置が互いに一致するように、シリンダブロックに対してディスクプレートを組み付ける必要がある。
しかしながら、先にシリンダブロックに組み付けられたディスクプレートの連通路の位置と、次にシリンダブロックに組み付けられるディスクプレートの連通路の位置と、が互いに一致するように、連通路の位置を確かめながら、ディスクプレートをシリンダブロックに組み付けていては、ディスクプレートの組み付けに要する時間が長くなり、結果として、ブレーキ装置の組み立て性が低下するおそれがある。
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、ブレーキ装置の組み立て性を向上させることを目的とする。
第1の発明は、液圧によって回転するシリンダブロックと、シリンダブロックと一体に回転する出力軸と、出力軸を回転自在に支持するケースと、を備える液圧モータを制動するブレーキ装置が、シリンダブロックと共に回転しケース内の空間を第1室と第2室とに仕切る複数のディスクプレートと、出力軸の軸方向に移動可能にケースに支持されディスクプレートに隣接して配置されるフリクションプレートと、ディスクプレートをフリクションプレートに押し付けることによりディスクプレートとフリクションプレートとの間に摩擦力を生じさせるブレーキ駆動機構と、第1室と第2室とを連通する複数の連通路と、を備え、それぞれのディスクプレートには、複数の連通路の一部を構成する複数の貫通部と、複数の貫通部のうち所定の位置に設けられた第1貫通部を識別するための識別部と、が設けられることを特徴とする。
第1の発明では、複数の連通路の一部を構成する複数の貫通部のうち所定の位置に設けられた第1貫通部を識別するために識別部を設けている。このように、第1貫通部のみに識別部を設けることで、組立作業者は、ディスクプレートを見たり触れたりするだけで、ディスクプレートを組み付けるにあたって基準となる貫通部の位置を把握することができる。したがって、複数のディスクプレートをシリンダブロックに組み付ける際に、識別部の位置が同じ位置になるように組み付けることで、それぞれのディスクプレートに設けられる複数の貫通部の位置を周方向において容易に一致させることが可能となる。
第2の発明は、ディスクプレートが、シリンダブロックの外周面に設けられたスプラインに噛み合う複数の歯を有し、複数の貫通部が、歯を切り欠くことにより形成された複数の歯欠部であり、識別部は、複数の歯欠部のうち所定の位置に設けられた第1歯欠部に径方向内側に向かって延びて形成された凸部または径方向外側に向かって凹んで形成された凹部であることを特徴とする。
第2の発明では、径方向内側に向かって延びる凸部または径方向外側に向かって凹んで形成された凹部が識別部として第1歯欠部に形成される。このため、組立作業者は、ディスクプレートに触れるだけで、ディスクプレートを組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を容易に把握することができる。
第3の発明は、第1歯欠部に凸部が設けられている場合、第1歯欠部以外の複数の歯欠部には、径方向外側に向かって凹んで形成された凹部が設けられ、第1歯欠部に凹部が設けられている場合、第1歯欠部以外の複数の歯欠部には、径方向内側に向かって延びて形成された凸部が設けられることを特徴とする。
第3の発明では、第1歯欠部に凸部が設けられる場合、第1歯欠部以外の複数の歯欠部には、凸部ではなく凹部が設けられ、第1歯欠部に凹部が設けられる場合、第1歯欠部以外の複数の歯欠部には、凹部ではなく凸部が設けられる。このため、組立作業者は、ディスクプレートに触れただけで、触れている歯欠部がディスクプレートを組み付けるにあたって基準となる歯欠部か否かを瞬時に把握することができる。
第4の発明は、ディスクプレートが、シリンダブロックの外周面に設けられたスプラインに噛み合う複数の歯を有し、複数の貫通部が、歯を切り欠くことにより形成された複数の歯欠部であり、識別部が、複数の歯欠部のうち所定の位置に設けられた第1歯欠部に隣接する位置に、歯を切り欠くことにより形成された識別用歯欠部であることを特徴とする。
第4の発明では、歯を切り欠くことにより形成された識別用歯欠部が識別部として第1歯欠部に隣接する位置に設けられる。このため、組立作業者は、ディスクプレートに触れるだけで、ディスクプレートを組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を容易に把握することができる。
第5の発明は、液圧モータが上記ブレーキ装置を備えることを特徴とする。
第5の発明では、液圧モータが、第1〜4の発明のブレーキ装置を備えている。第1〜4の発明のブレーキ装置では、ディスクプレートの組み付けに要する時間を短くすることが可能であるため、結果として、ブレーキ装置を備える液圧モータの組み立て性を向上させることができる。
本発明によれば、ブレーキ装置の組み立て性を向上させることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1を参照して本発明の実施形態であるブレーキ装置20について説明する。図1はブレーキ装置20が適用される液圧モータとしての油圧モータ1の全体構成を示す断面図である。
まず、図1を参照して油圧モータ1の全体構成について説明する。油圧モータ1は、例えば、建設機械等の走行装置や旋回装置に用いられる斜板式の油圧モータである。
油圧モータ1は、負荷(図示せず)に連結される出力軸2と、出力軸2に連結され出力軸2と一体に回転するシリンダブロック3と、を備える。出力軸2はケース11に軸受17,18を介して回転自在に支持されている。ケース11は、シリンダブロック3を収容する収容ケース12と、図示しないボルトを介して収容ケース12に結合され収容ケース12の開口部を覆う蓋部材13と、に分割される。
シリンダブロック3には、出力軸2の軸心O1を中心とする同心円上に配置された複数のシリンダ4が出力軸2と平行に設けられる。シリンダ4は、シリンダブロック3の一端面において開口し、それぞれのシリンダ4には、シリンダ4内に容積室5を画成するピストン6が往復摺動自在に挿入されている。また、シリンダブロック3の外周には、出力軸2の軸心O1に沿って形成されたスプライン3aが設けられる。
ピストン6の先端には球面座6aを介してシュー9が連結されている。シュー9は、収容ケース12に固定された斜板7に面接触している。各ピストン6は、各シュー9が摺接する斜板7の傾転角度に応じたストローク量でシリンダ4内を往復動する。
蓋部材13とシリンダブロック3との間には、シリンダブロック3の基端面が摺接するバルブプレート8が取り付けられている。バルブプレート8は、油圧源に連通する図示しない供給ポートと、タンク側に連通する図示しない排出ポートと、を有する。油圧源から供給ポートを介して各容積室5に導かれる油圧によって各ピストン6がシリンダ4から突出し、各ピストン6がシュー9を介して斜板7を押すことによってシリンダブロック3が回転する。そして、シリンダブロック3の回転が出力軸2を介して負荷へと伝達される。
上記構成の油圧モータ1において、各シリンダ4への圧油の供給が停止されると、各ピストン6がシュー9を介して斜板7を押す力がなくなり、結果としてシリンダブロック3は停止する。
しかしながら、負荷側の慣性力や負荷側に作用する重力の影響等によって負荷側から出力軸2を介して入力があると、各シリンダ4への圧油の供給を停止するだけでは、シリンダブロック3の回転を止めることは困難であり、結果として、負荷側の駆動を完全に停止させることができないおそれがある。
このため、油圧モータ1は、負荷側の駆動を完全に停止させるために、シリンダブロック3の回転を制動する摩擦制動式のブレーキ装置20を備えている。以下に、ブレーキ装置20について説明する。
ブレーキ装置20は、シリンダブロック3と共に回転する複数のディスクプレート21と、収容ケース12に回転不能に設けられ、ディスクプレート21と当接することによってディスクプレート21との間にて摩擦ブレーキ力を発生する複数のフリクションプレート22と、ディスクプレート21とフリクションプレート22とを互いに押し付けることによって摩擦ブレーキ力を発生させると共に、その押し付けを解除することによって摩擦ブレーキ力を解除可能なブレーキ駆動機構25と、を備える。
ディスクプレート21は、円環状部材であり、本実施形態では、図1に示すように、出力軸2の軸心O1方向に離間して、フリクションプレート22を挟んで3枚設けられる。ディスクプレート21の内周側には、シリンダブロック3の外周に形成されるスプライン3aと噛み合う複数の歯21aが設けられる。
ディスクプレート21の歯21aとシリンダブロック3のスプライン3aとが噛み合うことによって、ディスクプレート21はシリンダブロック3の回転に伴って回転し、かつ、ディスクプレート21はシリンダブロック3に対して出力軸2の軸心O1方向に移動可能である。このように、ディスクプレート21は、シリンダブロック3の外周にスプライン係合している。なお、ディスクプレート21は、シリンダブロック3ではなく、出力軸2と共に回転する他の部材にスプライン係合していてもよい。
フリクションプレート22は、円環状部材であり、本実施形態では、図1に示すように、出力軸2の軸心O1方向に離間して、ディスクプレート21に挟まれるように2枚設けられる。フリクションプレート22は、外縁から径方向外側に向かって延びる図示しない突部を有し、この突部は、収容ケース12の内周面に形成された図示しないスプラインに係合する。このため、フリクションプレート22は収容ケース12に対して相対回転不能であり、かつ、フリクションプレート22は収容ケース12に対して出力軸2の軸心O1方向に移動可能である。
フリクションプレート22が組み付けられる収容ケース12には、出力軸2の軸心O1方向へのディスクプレート21及びフリクションプレート22の所定以上の移動を規制する段部12bが形成される。複数のディスクプレート21及び複数のフリクションプレート22は、ブレーキ駆動機構25と段部12bとの間に積層された状態で配置される。
ブレーキ駆動機構25は、収容ケース12に支持され出力軸2の軸方向に移動可能な環状のブレーキピストン27と、蓋部材13とブレーキピストン27との間に介装されブレーキピストン27をディスクプレート21に向かって付勢する複数のブレーキスプリング30と、圧油が供給されることによってブレーキスプリング30の付勢力に抗してブレーキピストン27を移動させるブレーキ解除用チャンバ28と、を有する。
ブレーキピストン27は、収容ケース12の内周壁12aに沿って摺動する摺動部27aと、摺動部27aよりも外径が小さく摺動部27aからディスクプレート21に向けて突出して設けられる当接部27bと、を有する。
当接部27bの外周面27cと収容ケース12の内周壁12aとの間には空間が形成され、この空間には、当接部27bの外周面27cと収容ケース12の内周壁12aとの双方に当接するリング体29が配置される。
そして、リング体29の端面と、当接部27bの外周面27cと、収容ケース12の内周壁12aと、によって、ブレーキ解除用チャンバ28が画成される。
ブレーキ解除用チャンバ28には、油圧供給源又はタンクに選択的に接続される図示しない給排通路が接続されている。ブレーキ解除用チャンバ28に対する作動油の給排を切り換えることによって、ブレーキの作動と非作動が切り換えられる。なお、ブレーキ装置20の具体的な作動については後述する。
また、ブレーキピストン27の摺動部27aには、蓋部材13に対向する面に形成された複数の座繰り穴27dが設けられる。座繰り穴27dは周方向に沿って均等配置されており、それぞれの座繰り穴27dには、ブレーキスプリング30が収装される。
ブレーキスプリング30は、蓋部材13とブレーキピストン27との間に圧縮された状態で介装されたコイルスプリングであり、ブレーキピストン27をディスクプレート21に向けて付勢する付勢力を生じる。なお、ブレーキスプリング30としては、十分な付勢力を確保するために、内側スプリングと外側スプリングとからなる二重スプリングを用いることが好ましい。
次に、ブレーキ装置20の作動について説明する。なお、図1は、ブレーキ装置20によるブレーキ作動が解除された状態を示している。
ブレーキ解除用チャンバ28に加圧された作動油が供給されると、ブレーキピストン27は、ブレーキスプリング30の付勢力に抗してブレーキスプリング30を圧縮させる方向、すなわち、ディスクプレート21から離れる方向に移動する。
このように、ブレーキピストン27がディスクプレート21から離れると、ディスクプレート21とフリクションプレート22とは、互いに押し付け合うことがないため、ディスクプレート21とフリクションプレート22との間には摩擦ブレーキ力は発生しない。したがって、シリンダブロック3は、各シリンダ4に導かれる作動油の圧力によって回転可能な状態となる。
一方、ブレーキ解除用チャンバ28から作動油を排出させると、ブレーキピストン27は、ブレーキスプリング30の付勢力によって、ディスクプレート21に向かって移動する。
ブレーキピストン27がブレーキスプリング30の付勢力によってディスクプレート21に押し付けられると、ディスクプレート21とフリクションプレート22とが互いに押し付け合う状態となり、ディスクプレート21とフリクションプレート22との間に摩擦ブレーキ力が生じる。この摩擦ブレーキ力によってディスクプレート21が回転することが抑制されることでシリンダブロック3は制動された状態となる。
このように、ブレーキピストン27がディスクプレート21から離れるとシリンダブロック3は回転可能な状態となり、ブレーキピストン27がディスクプレート21に押し付けられるとシリンダブロック3は制動された状態となる。
ここで、上記構成の油圧モータ1のケース11内の空間は、ディスクプレート21によって、ブレーキピストン27等が収容される第1室14と斜板7等が収容される第2室15との二つの空間に仕切られる。第1室14には、シリンダブロック3とバルブプレート8との摺接面等から漏れ出た作動油が溜まり、第2室15には、球面座6aとシュー9との摺接面やシュー9と斜板7との摺接面等から漏れ出た作動油が溜まる。
このため、例えば、ブレーキピストン27が収容される第1室14の圧力が高まると、第1室14の圧力によってブレーキピストン27がディスクプレート21に押し付けられ、ブレーキ解除用チャンバ28に作動油が供給されていても、シリンダブロック3が制動状態となるおそれがある。
このような状態となることを避けるために、ブレーキ装置20は、図1に示すように、第1室14と第2室15とを連通する複数の連通路23をさらに備えている。連通路23は、シリンダブロック3の外周面とディスクプレート21との間に形成される隙間と、隣り合うディスクプレート21間の隙間と、により構成される流路であり、シリンダブロック3の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
連通路23を通じて第1室14と第2室15とを連通させることによって、ブレーキピストン27が収容される第1室14の圧力が上昇することを抑制するとともに、タンクに連通する図示しないドレーン通路を第1室14及び第2室15の何れか一方に設けることで、第1室14及び第2室15の圧力を低下させている。
次に、図2を参照し、連通路23の具体的な構成について説明する。図2は、ディスクプレート21の平面図であり、説明のために一部にシリンダブロック3のスプライン3aを示している。
それぞれのディスクプレート21には、図2に示すように、歯21aの一部を切り欠くことによって形成された貫通部としての複数の歯欠部21b,21cが同じように設けられている。本実施形態では、2つの歯21aを切り欠くことによって形成された歯欠部21b,21cが4カ所に設けられている。なお、歯欠部21b,21cは、少なくとも2カ所以上に設けられていればよい。また、歯欠部21b,21cは、1つの歯21aを切り欠くことによって形成されていてもよいし、3つ以上の歯21aを切り欠くことによって形成されていてもよい。
このような歯欠部21b,21cを有するディスクプレート21を、シリンダブロック3に組み付けることによって、歯欠部21b,21cとスプライン3aとの間には、図2に示すように、連通路23の一部を構成する隙間が形成される。このようにディスクプレート21に形成された歯欠部21b,21cは、連通路23の一部を構成している。
そして、歯欠部21b,21cとスプライン3aとの間に形成される隙間の位置が周方向において一致するように、すなわち、それぞれのディスクプレート21に形成された歯欠部21b,21cが出力軸2の軸心O1方向において互いに重なり合うように、複数のディスクプレート21をシリンダブロック3に組み付けることによって、第1室14と第2室15とを連通する連通路23が形成される。
ここで、隣り合う歯欠部21b,21cの間隔がすべて同じであれば、何れか1つの歯欠部21b,21cが出力軸2の軸心O1方向において重なり合うように、複数のディスクプレート21をシリンダブロック3に組み付ければ、他のすべての歯欠部21b,21cも出力軸2の軸心O1方向において重なり合うことになる。このため、所定の流路面積を有する複数の連通路23を構成することは、隣り合う歯欠部21b,21cの間隔がすべて同じであれば容易であるといえる。
しかしながら、スプライン3aの数、すなわち、ディスクプレート21の歯21aの数は、要求される制動力に応じた噛み合い部の接触面圧やスプライン3aの歯元強度、油圧モータ1の外径寸法等によって設定され、加えて、歯欠部21b,21cの数は要求される連通路23の流路面積等によって設定される。このため、隣り合う歯欠部21b,21cの間隔がすべて同じになるように、ディスクプレート21の歯21aの数と歯欠部21b,21cの数とを設定することは困難である。特に、スプライン3aの数、すなわち、ディスクプレート21の歯21aの数が、歯欠部21b,21cの数の倍数ではない場合は、必然的に間隔が異なる部分が生じてしまう。
図2に示す例では、ディスクプレート21は、歯21aの数が38個であるのに対して、歯欠部21b,21cの数が4つであるため、隣り合う歯欠部21b,21cの間隔はすべて同じとはなっていない。
このようなディスクプレート21に形成された各歯欠部21b,21cが周方向においてずれることなく、出力軸2の軸心O1方向において互いに重なり合うようにするには、先にシリンダブロック3に組み付けられたディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、次にシリンダブロック3に組み付けられるディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、を確かめながら、ディスクプレート21をシリンダブロック3に組み付けなければならない。
このように、ディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置を見比べながらディスクプレート21をシリンダブロック3に組み付けていては、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が長くなり、結果として、ブレーキ装置20の組み立て性が低下してしまう。
また、隣り合う歯欠部21b,21cの間隔が異なる場合、1つの歯欠部21b,21cだけが重なり合うように各ディスクプレート21を組み付けると、他の歯欠部21b,21cが周方向においてずれた状態となってしまうおそれがある。このように誤った状態で各ディスクプレート21を組み付けてしまうと、他の歯欠部21b,21cにより構成される連通路23の流路面積が小さくなってしまうため、第1室14の圧力が下がりにくくなり、上述のように、ブレーキ解除用チャンバ28に作動油が供給されていても、シリンダブロック3が制動状態となるおそれがある。
そこで、本実施形態では、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1貫通部としての第1歯欠部21bを識別するための識別部として凸部21dを設けている。
第1歯欠部21bは、例えば、図2において左側に形成される歯欠部であり、この第1歯欠部21bには、径方向内側に向かって延びて形成された凸部21dが設けられている。
このように、第1歯欠部21bのみに凸部21dを設けておくことで、組立作業者は、ディスクプレート21に触れて凸部21dの位置を認識したり、ディスクプレート21を見て凸部21dの位置を確認したりするだけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を把握することが可能となる。
このため、先にシリンダブロック3に組み付けられたディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、次にシリンダブロック3に組み付けられるディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、をわざわざ確かめることなく、第1歯欠部21bが重なり合うようにディスクプレート21を単に組み付ければ、所定の流路面積を有する複数の連通路23を形成することができる。この結果、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が短くなり、ブレーキ装置20の組み立て性を向上させることができる。
また、第1歯欠部21b以外の他の歯欠部21cには、図2に示すように、径方向外側に向かって凹んだ凹部21eがそれぞれ形成される。
このように、第1歯欠部21b以外の他の歯欠部21cに凹部21eを設けることで、ディスクプレート21に触れただけで、組立作業者は、触れている歯欠部21cが第1歯欠部21bではない、つまり、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部ではないことを瞬時に把握することが可能である。
したがって、第1歯欠部21bのみに凸部21dを設け、他の歯欠部21cに凹部21eを設けておくことで、組立作業者は、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を迷うことなく瞬時に認識することが可能となる。この結果、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が短くなり、ブレーキ装置20の組み立て性を向上させることができる。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ブレーキ装置20では、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1歯欠部21bを識別するために凸部21dを設けている。このように、第1歯欠部21bのみに凸部21dを設けることで、組立作業者は、ディスクプレート21に触れただけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を把握することが可能となる。
このため、先にシリンダブロック3に組み付けられたディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、次にシリンダブロック3に組み付けられるディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、を確かめることなく、容易にディスクプレート21を組み付けることができる。この結果、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が短くなり、ブレーキ装置20の組み立て性を向上させることができる。
以下に、上記実施形態に係るブレーキ装置20の変形例について説明する。
上記実施形態では、識別部として、第1歯欠部21bに凸部21dが形成されている。これに代えて、第1歯欠部21bに、識別部として、径方向外側に向かって凹んで形成された凹部を設け、第1歯欠部21b以外の他の歯欠部21cに、径方向内側に向かって延びて形成された凸部を設けた構成としてもよい。このように、第1歯欠部21bのみに凹部を設け、他の歯欠部21cに凸部を設けた場合であっても、組立作業者は、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を迷うことなく瞬時に認識することが可能となる。この結果、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が短くなり、ブレーキ装置20の組み立て性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、識別部として、第1歯欠部21bに凸部21dが形成されている。これに代えて、図3に示すように、識別部として、識別用歯欠部21fを設けてもよい。識別用歯欠部21fは、第1歯欠部21bに隣接した位置に設けられ、第1歯欠部21bよりも少ない数の歯21aを切り欠くことにより形成される。この場合も上記実施形態と同様に、組立作業者は、ディスクプレート21に触れただけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を把握することが可能となる。
また、上記実施形態では、識別部として、第1歯欠部21bに凸部21dが形成されている。これに代えて、図4に示すように、識別部として、識別表示部21gを設けてもよい。識別表示部21gは、第1歯欠部21bの周辺において円状に任意の色で着色されることにより形成される。この場合、組立作業者は、ディスクプレート21を見ただけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を把握することが可能となる。なお、識別表示部21gは、ディスクプレート21の表面からわずかに凹んで形成されていてもよく、この場合は上記実施形態と同様に、組立作業者は、ディスクプレート21に触れただけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を把握することが可能となる。
また、上記実施形態では、フリクションプレート22が2枚、ディスクプレート21が3枚設けられている。ディスクプレート21及びフリクションプレート22の数はこれに限定されず、ディスクプレート21を2枚、または、ディスクプレート21を4枚以上設け、これらの間にフリクションプレート22を設けた構成としてもよい。また、フリクションプレート22は、ブレーキピストン27とディスクプレート21との間や収容ケース12の段部12bとディスクプレート21との間に設けられてもよい。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
油圧によって回転するシリンダブロック3と、シリンダブロック3と一体に回転する出力軸2と、出力軸2を回転自在に支持するケース11と、を備える油圧モータ1を制動するブレーキ装置20は、シリンダブロック3と共に回転し、ケース11内の空間を第1室14と第2室15とに仕切る複数のディスクプレート21と、出力軸2の軸心O1方向に移動可能にケース11に支持され、ディスクプレート21に隣接して配置されるフリクションプレート22と、ディスクプレート21をフリクションプレート22に押し付けることによりディスクプレート21とフリクションプレート22との間に摩擦力を生じさせるブレーキ駆動機構25と、第1室14と第2室15とを連通する複数の連通路23と、を備え、それぞれのディスクプレート21には、複数の連通路23の一部を構成する複数の歯欠部21b,21cと、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1歯欠部21bを識別するための識別部21d,21f,21gと、が設けられる。
この構成では、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1歯欠部21bを識別するために識別部21d,21f,21gを設けている。このように、第1歯欠部21bのみに識別部21d,21f,21gを設けることで、組立作業者は、ディスクプレート21を見たり触れたりするだけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を把握することができる。
このため、先にシリンダブロック3に組み付けられたディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、次にシリンダブロック3に組み付けられるディスクプレート21の歯欠部21b,21cの位置と、を確かめることなく、識別部21d,21f,21gの位置が同じ位置になるように組み付けることで、それぞれのディスクプレート21に設けられる複数の歯欠部21b,21cの位置を周方向において容易に一致させることが可能となる。この結果、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が短くなり、ブレーキ装置20の組み立て性を向上させることができる。
また、ディスクプレート21は、シリンダブロック3の外周面に設けられたスプライン3aに噛み合う複数の歯21aを有し、複数の貫通部は、歯21aを切り欠くことにより形成された複数の歯欠部21b,21cである。
この構成では、それぞれのディスクプレート21に形成された複数の歯欠部21b,21cにより第1室14と第2室15とを連通する複数の連通路23が構成される。このように、複数の連通路23は、歯21aを切り欠くことにより形成された複数の歯欠部21b,21cにより構成されるものであって、ディスクプレート21の歯21aよりも径方向外側に設けられる複数の貫通孔等により構成されるものではない。このため、ディスクプレート21の外径を小さくすることが可能となり、結果として、ブレーキ装置20を小型化することができる。
また、識別部は、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1歯欠部21bに径方向内側に向かって延びて形成された凸部21dまたは径方向外側に向かって凹んで形成された凹部である。
この構成では、径方向内側に向かって延びる凸部21dまたは径方向外側に向かって凹んで形成された凹部が識別部として第1歯欠部21bに設けられる。このため、組立作業者は、ディスクプレート21に触れるだけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を容易に把握することができる。
また、第1歯欠部21bに凸部21dが設けられている場合、第1歯欠部21b以外の複数の歯欠部21cには、径方向外側に向かって凹んで形成された凹部21eが設けられ、第1歯欠部21bに凹部が設けられている場合、第1歯欠部21b以外の複数の歯欠部21cには、径方向内側に向かって延びて形成された凸部が設けられる。
この構成では、第1歯欠部21bに凸部21dが設けられる場合、第1歯欠部21b以外の複数の歯欠部21cには、凸部21dではなく、凸部21dとは反対の方向である径方向外側に向かって凹んだ凹部21eが設けられ、第1歯欠部21bに凹部が設けられる場合、第1歯欠部21b以外の複数の歯欠部21cには、凹部ではなく、凹部とは反対の方向である径方向内側に向かって延びる凸部が設けられる。このように、第1歯欠部21b以外の複数の歯欠部21cには、第1歯欠部21bに設けられた識別部とは反対の方向に向かう部位が設けられる。このため、組立作業者は、ディスクプレート21に触れただけで、触れている歯欠部21cが第1歯欠部21bであるか否か、つまり、触れている歯欠部21cがディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部であるか否かを瞬時に把握することができる。
したがって、組立作業者は、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を迷うことなく瞬時に認識することが可能となる。この結果、ディスクプレート21の組み付けに要する時間が短くなり、ブレーキ装置20の組み立て性を向上させることができる。
また、ディスクプレート21は、シリンダブロック3の外周面に設けられたスプライン3aに噛み合う複数の歯21aを有し、複数の貫通部は、歯21aを切り欠くことにより形成された複数の歯欠部21b,21cであり、識別部は、複数の歯欠部21b,21cのうち所定の位置に設けられた第1歯欠部21bに隣接する位置に、歯21aを切り欠くことにより形成された識別用歯欠部21fである。
この構成では、歯21aを切り欠くことにより形成された識別用歯欠部21fが識別部として第1歯欠部21bに隣接する位置に設けられる。このため、組立作業者は、ディスクプレート21に触れるだけで、ディスクプレート21を組み付けるにあたって基準となる歯欠部の位置を容易に把握することができる。なお、識別用歯欠部21fは、1つの歯21aを切り欠くことにより形成されてもよいし、複数の歯21aを切り欠くことにより形成されてもよい。
また、油圧モータ1は、上記構成のブレーキ装置20を備える。
この構成では、油圧モータ1が、上記構成のブレーキ装置20を備えている。上記構成のブレーキ装置20では、ディスクプレート21の組み付けに要する時間を短くすることが可能であるため、結果として、ブレーキ装置20を備える油圧モータ1の組み立て性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
20・・・ブレーキ装置、1・・・油圧モータ(液圧モータ)、2・・・出力軸、3・・・シリンダブロック、3a・・・スプライン、11・・・ケース、21・・・ディスクプレート、21a・・・歯、21b・・・第1歯欠部(第1貫通部)、21c・・・歯欠部(貫通部)、21d・・・凸部(識別部)、21e・・・凹部、21f・・・識別用歯欠部(識別部)、21g・・・識別表示部(識別部)、22・・・フリクションプレート、23・・・連通路、25・・・ブレーキ駆動機構
Claims (5)
- 液圧によって回転するシリンダブロックと、前記シリンダブロックと一体に回転する出力軸と、前記出力軸を回転自在に支持するケースと、を備える液圧モータを制動するブレーキ装置であって、
前記シリンダブロックと共に回転し、前記ケース内の空間を第1室と第2室とに仕切る複数のディスクプレートと、
前記出力軸の軸方向に移動可能に前記ケースに支持され、前記ディスクプレートに隣接して配置されるフリクションプレートと、
前記ディスクプレートを前記フリクションプレートに押し付けることにより前記ディスクプレートと前記フリクションプレートとの間に摩擦力を生じさせるブレーキ駆動機構と、
前記第1室と前記第2室とを連通する複数の連通路と、を備え、
それぞれの前記ディスクプレートには、前記複数の連通路の一部を構成する複数の貫通部と、前記複数の貫通部のうち所定の位置に設けられた第1貫通部を識別するための識別部と、が設けられることを特徴とするブレーキ装置。 - 前記ディスクプレートは、前記シリンダブロックの外周面に設けられたスプラインに噛み合う複数の歯を有し、
前記複数の貫通部は、前記歯を切り欠くことにより形成された複数の歯欠部であり、
前記識別部は、前記複数の歯欠部のうち前記所定の位置に設けられた第1歯欠部に径方向内側に向かって延びて形成された凸部または径方向外側に向かって凹んで形成された凹部であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。 - 前記第1歯欠部に前記凸部が設けられている場合、前記第1歯欠部以外の前記複数の歯欠部には、径方向外側に向かって凹んで形成された凹部が設けられ、
前記第1歯欠部に前記凹部が設けられている場合、前記第1歯欠部以外の前記複数の歯欠部には、径方向内側に向かって延びて形成された凸部が設けられることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。 - 前記ディスクプレートは、前記シリンダブロックの外周面に設けられたスプラインに噛み合う複数の歯を有し、
前記複数の貫通部は、前記歯を切り欠くことにより形成された複数の歯欠部であり、
前記識別部は、前記複数の歯欠部のうち前記所定の位置に設けられた第1歯欠部に隣接する位置に、前記歯を切り欠くことにより形成された識別用歯欠部であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。 - 請求項1から4の何れか1つに記載のブレーキ装置を備えることを特徴とする液圧モータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018147874A JP2020023888A (ja) | 2018-08-06 | 2018-08-06 | ブレーキ装置及びこれを備える液圧モータ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018147874A JP2020023888A (ja) | 2018-08-06 | 2018-08-06 | ブレーキ装置及びこれを備える液圧モータ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020023888A true JP2020023888A (ja) | 2020-02-13 |
Family
ID=69619355
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018147874A Pending JP2020023888A (ja) | 2018-08-06 | 2018-08-06 | ブレーキ装置及びこれを備える液圧モータ |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2020023888A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115183724A (zh) * | 2022-06-23 | 2022-10-14 | 山西柴油机工业有限责任公司 | 一种适用于内燃机定时端曲轴相位输出结构 |
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2018
- 2018-08-06 JP JP2018147874A patent/JP2020023888A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115183724A (zh) * | 2022-06-23 | 2022-10-14 | 山西柴油机工业有限责任公司 | 一种适用于内燃机定时端曲轴相位输出结构 |
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