JP2020023519A - 異常な皮膚瘢痕化の治療 - Google Patents

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Abstract

【課題】APC又はその類似体を用いた病的瘢痕の予防及び治療手段の提供。【解決手段】皮膚細胞とAPC又はその類似体とを接触させ、それにより皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を誘導する工程を含む、皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を誘導する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、肥厚性、萎縮性及びケロイド様瘢痕化を含む異常な皮膚瘢痕化及びその治療に関する。
本明細書におけるいずれの従来技術の参照も、この従来技術が何らかの権限における共通の一般的な知識の一部を形成し、又はこの従来技術が当業者によって理解され、関連があると見なされ、及び/又は従来技術の他の部分と組み合わせることを合理的に予測することができると認識されたもの又は示唆されたものではない。
成人において、傷害に対する正常な反応には一般に創傷修復があるが、これは、瘢痕組織の形成につながる幾分かの線維化を生じる生理学的過程である。おそらく、美容上の不完全さはあるが、創傷修復に起因する瘢痕組織は、実際には正常な組織形成であると広く受け入れられている。
組織学的に、正常な創傷修復過程に起因する瘢痕組織は、主にI型コラーゲンからなる高密度の、ほぼ無血管の、小細胞性細胞外マトリクスとして現れる。I型コラーゲンの分布及び配列は傷害前の組織のものとは異なる可能性があり、特に瘢痕組織は傷害前の組織に沈着しているコラーゲンに比べて単一方向のI型コラーゲンの配列がより顕著となり得る。さらに、傷害前の組織に観察されたものに比べて瘢痕内のコラーゲン線維間での架橋がより広範囲になることもあり得る。
生理学的瘢痕形成は以下の3つの個別の段階:フィブリン凝血塊が形成される最初の段階と、フィブリン凝血塊が溶解し、プロテオグリカン、糖タンパク質及びIII型コラーゲンからなる一過性のマトリクスを沈着させる中間の段階と、この一過性の段階を消化し、I型コラーゲンの多いマトリクスと置き換える最終の段階とからなるものとして従来は説明されてきた。
創傷の種類、大きさ及び位置等の局所的因子、創傷への血管供給、感染の有無、局所運動及び放射線及び紫外線への曝露は、創傷修復、ひいては生理学的瘢痕形成に影響を及ぼす。心血管機能の状態、感染、代謝状態及びホルモンを含む全身性因子も生理学的瘢痕形成に影響を及ぼす。
一般に、傷害に対する正常な生理学的反応は、傷害から約3週間〜4週間でI型コラーゲン沈着をもって完了する創傷修復過程であると受け入れられてきた。この時期を超えて創傷修復過程が長引くと生理学的瘢痕の代わりに病的瘢痕の形成の可能性が高まる(非特許文献1)。
病的瘢痕は、線維化組織の無調節な増殖又は形成に起因する皮膚の障害と呼ばれることもある。具体的な例として、肥厚性瘢痕、萎縮性瘢痕及びケロイド様瘢痕が挙げられる。病的瘢痕は、より顕著な美容上の外観損傷並びに疼痛、掻痒、熱不耐性、可動範囲の減少及び終生にわたる拘縮に至る身体的障害を含む機能的制限を生じるおそれがあるため特に懸念される。
肥厚性瘢痕と萎縮性瘢痕とケロイド様瘢痕との間にいくつかの明らかな違いがある一方で、一般に病的瘢痕は概ね細胞、特に線維芽細胞及び筋線維芽細胞の異常なシグナル伝達及び増殖に起因すると考えられている。
さらに、TGF−β1とTGF−β3とのバランスは、瘢痕形成の重要な調節因子となる。TGF−β1の活性が増加又は延長すると、線維芽細胞によりコラーゲンの過剰産生及び過剰沈着を生じ、これが多くの場合、肥厚性瘢痕を生じる(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
TGF−β1及びβ2の過剰発現は、TGF−β3 mRNA発現の顕著な低下とともにケロイド及びケロイド由来の線維芽細胞において認められる(非特許文献5、非特許文献6)。抗TGF−β1抗体及びβ2抗体は、ラット切開創傷において創傷瘢痕化を減少させることができることが示されている(非特許文献7)。TGF−β1及びβ2に対するアンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドをin vivoにおいて使用し、ウサギ及びマウスモデルにおける緑内障手術の術後の瘢痕化を大きく減少させた(非特許文献8)。瘢痕化することなく正常に治癒すると思われるラット胎児の創傷にTGFβ1を添加すると、瘢痕形成を生じる(非特許文献9)。さらに、ケロイド線維芽細胞は、TGF−βに高感受性を示した(非特許文献10)。マウス胚はTGFβ3に対して遺伝的にヌルであり、瘢痕なしの治癒を示す野生型同腹子に比べ瘢痕を伴い治癒する(非特許文献11)。3つの二重盲検プラセボ対照試験において、組換え型ヒト皮内TGFβ3であるアボテルミンは、瘢痕の様相(appearance)を改善する(非特許文献12)。
上記の試験は、TGF受容体及び/又はTGF−β1の持続的な発現、及び/又はTGF−β3の欠失(創傷修復が長引き病的な瘢痕形成を生じることに関連する)を示唆する。さらに、TGF−β1の発現は長引く創傷修復過程に起因した病的瘢痕の持続に関連があることも理解されている。これは今日、肥厚性瘢痕の治療にクリニックで利用されている方式の多くがTGF−β1自体を標的としていることからもわかる。
コルチコステロイド、メトトレキサート、インターフェロンα及びβ並びにいくつかのサイトカイン阻害剤を肥厚性瘢痕及びケロイドの治療に使用し、いくつか成功している。コルチコステロイドは、基準となる標準物質であると考えられ、線維芽細胞の成長を阻害し、コラーゲンの分解を促進すると理解されている(非特許文献13)。トリアムシノロンは、TGF−β1発現を阻害し、線維芽細胞のアポトーシスを誘導することがわかっているコルチコステロイドの一例である(非特許文献14)。
コルチコステロイド療法は、瘢痕萎縮、組織色素沈着及び疼痛の望ましくない副作用を生じるおそれがある。インターフェロン療法は、熱、頭痛、関節痛、疲労、寒気及び混乱を生じるおそれがあり(非特許文献15)、全体の有効性に関する問題がいくつかある(非特許文献16)。
病的瘢痕の治療に提案されている他の方式は、標的としようとする化学物質及び作用の機構に対して多様である。これらの方式には、ボツリヌス毒素A、ペントキシフィリン、ミノサイクリン、コラーゲン−グリコサミノグリカンコポリマー、組換え型TGF β3、マンノース−6−リン酸、インターロイキン−10、インスリン及びプロプラノロールがある(非特許文献16)。
依然として、病的瘢痕形成の可能性を最小限にし、特に肥厚性瘢痕形成の可能性を最小限にすることが必要とされている。
肥厚性瘢痕等の病的瘢痕を治療する必要も依然としてある。
Momtazi et al. 2013 Wound Repair and Regeneration 21:77-87 Abdou et al. 2011 Am J Dermatopathol. 33: 84-91 Honardoust, et al. 2012, J. Burn Care Res. 33: 218-227 Chalmers 2011 Int Wound J 8: 218-223 Lee TY, et al. Ann Plast Surg. 1999;43:179-84 Xia W, et al. Wound Repair Regen. 2004;12:546-56 Shah, M. et al, J Cell Sci 107: 1137-57, 1994 Cordeiro MF, et al. Gene Ther. 2003;10:59-71 Lin RY, et al. Ann Surg. 1995;222(2):146-154 Bettinger et al. 1996 Plast Reconstr Surg 98:827-833 Occleston NL, et al. J Biomater Sci Polym Ed. 2008;19(8):1047-63 Bush J, et al. Dermatol Res Pract. 2010;2010:690613 McCoy et al. 1980 Proc Soc Exp Biol Med 163: 216-222 Xu et al. 2009 Chinese J. Plastic Surg 25:37-40 al Khawajah 1996 Int. J. Dermatol. 35: 515-517 Ledon et al. 2013 Dermatol Surg 39:1745-1757
本発明は、従来技術の限界の1つ又は複数に対処することを模索し、TGF−β3を発現又は産生する皮膚細胞、例えば線維芽細胞又はケラチノサイトを誘導する方法を提供する。本発明はさらに、皮膚細胞によるTGF−β1発現又は産生を阻害する方法を提供する。
本発明はまた、病的瘢痕、特に肥厚性瘢痕の形成を阻害又は予防する方法を提供する。本発明はまた、病的瘢痕の様相を最小限にし、又は減少させる方法を提供する。本発明のこれらの方法は、活性化プロテインC(APC)又はAPC−3K3Aを含むその類似体を利用し、TGF−β3産生を誘導し、又はTGF−β1誘導を阻害し、それにより病原性瘢痕形成の阻害及び病的瘢痕の様相の最小化を可能にする。
本発明の更なる態様及び上記の段落に記載の態様の更なる実施形態は、実施例に挙げられ、かつ添付の図面を参照することで、以下の説明から明らかとなるだろう。
APC処理したヒトケラチノサイトによるTGF−β1及びTGF−β3の産生を示すグラフである。 APC−3K3A処理したヒト線維芽細胞によるTGF−β1及びTGF−β3の産生を示すグラフである。 (配列番号1):APC−3K3Aのアミノ酸配列を示す図である。
活性化プロテインC(APC)は、プロテインCの活性化形態(オートプロトロンビンIIA及び血液凝固因子XIVとしても知られる)であり、ヒト及び他の動物における血液凝固、炎症、細胞死の調節及び血管壁の透過性を維持する重要な役割を果たす。APCは、主に第Va因子及び第VIIIa因子のタンパク質を分解して不活性化することによりこれらの作用を行う。
本明細書に記載されるように、本発明者らは、APC及びAPC 3K3Aがそれぞれ皮膚細胞によるTGF−βの種々のアイソフォームの産生に共通して影響を及ぼすことを同定した。特に、本発明者らはAPC及びAPC 3K3Aがともに皮膚細胞のTGF−
β3産生を高めることを示した。TGF−β3を恒常的に発現する細胞は、未処理の対照に比べ、APC又はAPC 3K3Aとの接触によりTGF−β3の産生を増大させることを示した。APC又はAPC−3K3A処理した皮膚細胞において、TGF−β1の産生が実質的に増大しなかったことは重要である。
TGF−β3産生又は発現の増大が大きいことは(未処理の対照に比べ、APC−3K3A処理した皮膚細胞において最大6倍)、TGF−β1産生又は発現の量に関係なく、病的瘢痕形成を最小限にし、又は病的瘢痕の治療に重要であると考えられている。
さらに、APCにより高められた皮膚細胞のTGF−β3産生が停止しても、TGF−β1の恒常的発現は阻害された。さらに、APC処理した皮膚細胞における恒常的TGF−β1発現の阻害は、TGF−β3の恒常的発現を阻害しなかった。
上記の観察から、本発明者らは、皮膚細胞、例えば線維芽細胞、筋線維芽細胞、ケラチノサイト及び内皮細胞又はこれらの細胞の1つ又は複数を含む組成物によるTGF−β3の恒常的発現又は産生の選択的向上並びに皮膚細胞によるTGF−β1の恒常的発現又は産生の選択的阻害におけるAPC及びAPC−3K3Aの利用性を同定した。これらの発見並びに創傷修復及び病原性瘢痕の持続におけるTGF−β1及びTGF−β3のアイソフォームの既知の重要性に基づき、本発明者らは病的瘢痕形成の可能性を最小限し、かつ病的瘢痕の様相を最小限にすると考えられる方式として、APC及びAPC−3K3A等のAPC類似体を同定した。
A.定義
「含む(comprise)」という用語及びこの用語の変形例、例えば「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、更なる追加物、構成要素、整数又は工程を除外することを意図しない。
「正常な瘢痕」又は「生理学的瘢痕」は一般に、正常な創傷修復過程に起因する組織形成である。組織学的には、正常な瘢痕又は生理学的瘢痕は主にI型コラーゲンからなる高密度の、ほぼ無血管の、小細胞性細胞外マトリクスとして出現することがある。
「病的瘢痕」は一般に、異常な創傷修復過程、例えば長引き、又は延長したことによる一過性若しくは最終的なマトリクスの形成の遅れ又はいずれかのマトリクスが生成できないことにつながる創傷修復過程に起因する瘢痕を指す。創傷修復過程が長引くことは、炎症が著しく、又は延長することに関連している可能性がある。これらの瘢痕は、渦巻き状のヒアリン化したコラーゲンの線維束の存在により正常な瘢痕と組織学的に区別され、正常な瘢痕よりも多くの血管分布及び細胞充実性を有し得る。病的瘢痕は、傷害部位の境界内に制限される瘢痕又はこれらの境界を越えて広がる瘢痕であり得る。病的瘢痕は、可動範囲の減少及び終生にわたる拘縮に至る身体的障害、顕著な美容上の外観損傷並びに疼痛、掻痒、熱不耐性を含む機能的制限を生じ得る。
一般に、「病的瘢痕形成」は、病的瘢痕が形成される過程を指す。このような過程においては、正常に一過性又は最終的なマトリクスの形成を生じる正常な創傷修復期の少なくとも1つが妨げられる。このような過程は、病的瘢痕による創傷の閉鎖の時期を遅らせる可能性がある。その意味では、病的瘢痕が形成される過程は、正常な創傷修復過程が長引き又は延長したものと表せるかもしれないが、病的瘢痕形成の基盤となる作用の機構は、創傷修復の形態において傷害に対する正常な生理学的反応の基盤となるものと同じではないことが理解される。
「線維増殖性障害」は一般に、線維芽細胞及び線維細胞の異常な増殖又は線維芽細胞若
しくは線維細胞による異常なサイトカインプロファイルの発達を含む線維芽細胞及び線維細胞の異常な活性レベルを含み、過剰な線維化組織の形成を生じる障害を指す。
「肥厚性瘢痕」は病的瘢痕の一例であり、元の病変の境界内にあり、一般に最初の傷害の後、自然退縮する隆起した瘢痕である。これらの瘢痕は硬く、隆起し、赤く、痒みがあり、圧痛があり、収縮している。これらの瘢痕は、火傷の傷害後に見られ、瘢痕の境界を押圧することにより拡大する。肥厚性瘢痕は、急速に増殖し、合成の活性化を示す非増殖性及び小さな集合体の線維芽細胞を含有し得る。組織学的に、肥厚性瘢痕は、筋線維芽細胞及び多くのムコ多糖を含有する大量の結節を含む、上皮表面に平行に配向された微細な、十分に組織化された波状のIII型コラーゲンの線維束として存在し得るが、PCNA(増殖細胞核抗原)/p53レベル/ATP発現レベルは低い。肥厚性瘢痕は、傷害後4週間〜8週間以内に生じ、6カ月までに急速な成長期に入り、その後数年間にわたって退縮することがある。
「ケロイド」又は「ケロイド様瘢痕」は、最初の創傷又は傷害部位の境界を越えて広がる良性の線維性増殖である。これは退縮しない永久的な瘢痕である。組織学的には、これらの瘢痕は結節又は過剰な筋線維芽細胞を含まない、組織化されていない、大きく、厚みのあるI型及びIII型の低細胞性のコラーゲン線維束として存在し得る。ケロイド又はケロイド様瘢痕は、あまり血管がなく、拡張した血管が広範囲に分散し得る。PCNA/p53レベル/ATP発現レベルは高くなり得る。
「萎縮性瘢痕」は、皮膚組織のくぼみを形成する異常な創傷修復過程に起因する瘢痕である。
「線維芽細胞」は一般に、細胞外マトリクスの前駆物質を産生する中胚葉系の細胞である。これらの細胞は、創傷修復に不可欠である。
「創傷床線維芽細胞」は、正常な創傷修復を行う傷害部位から分離され、又は隣接し得る線維芽細胞である。
「ケロイド線維芽細胞」は、ケロイドから分離され、又は隣接し得る線維芽細胞である。
「肥厚性瘢痕線維芽細胞」は肥厚性瘢痕から分離され、又は隣接し得る線維芽細胞である。
「筋線維芽細胞」は一般に、分化の過程において線維芽細胞と平滑筋細胞との間にある細胞を指す。一般に、筋線維芽細胞では、一般的な間葉系のマーカーである中間フィラメントのビメンチン及び「α平滑筋アクチン」が通常染色される。筋線維芽細胞は他の平滑筋マーカーにおいて(染色)陽性であり、例えば別の中間フィラメント型のデスミンは一部の組織では陽性であるが、他のいくつかにおいては陰性である場合もある。一部の衛星形態の筋線維芽細胞はGFAPにおいて陽性である場合もある。
「ケラチノサイト」は一般に、ケラチン及び他のタンパク質及びステロールを合成する上皮細胞を指す。これらの細胞は上皮の95%を構成し、真皮−上皮接合部で未分化細胞又は基底細胞から形成される。その特徴的な中間フィラメントタンパク質は、サイトケラチンである。その種々の連続した段階において、ケラチンは、有棘細胞層及び果粒細胞層を形成し、これらの細胞は薄くなってゆっくり死滅し、最終層の、徐々に剥離される角質層を形成する。
「内皮細胞」は一般に、内皮を形成する細胞を指す。内皮は、血管及びリンパ管の内面を裏打ちする薄い細胞層であり、管腔内の循環血又はリンパ液と、血管壁のその他の層(rest)との接触面を形成する。
「活性化プロテインC」(「APC」)は、生理学的な抗凝固の中心的な役割を担う約56kDの分子量のセリンプロテアーゼである。不活性の前駆物質であるプロテインCは、肝臓及び内皮により合成されるビタミンK依存性糖タンパク質であり、血漿に存在する。プロテインCの活性化は内皮細胞表面で生じ、トロンビンとトロンボモジュリンとの間で形成された複合体により刺激される。別の内皮特異的膜タンパク質である、内皮プロテインC受容体(EPCR)はこの反応を1000倍超に促進することが示されている。
「APC又はその類似体」の句の「類似体」は「APC類似体」を指す。APC類似体は一般に、内皮プロテインC受容体(EPCR)及びタンパク質分解酵素活性化受容体−1(PAR−1)又はPAR−1及びタンパク質分解酵素活性化受容体−3(PAR−3)を介して作用し、アポトーシスを最小限にし、又は負荷がかかった若しくは損傷した細胞の細胞生存を向上させ得る化合物である。本明細書において更に記載されるように、APC類似体は一般にヒトプロテインC配列に相同な配列を有する。
「治療すること(Treating)」及び「治療(treatment)」は一般に、疾患、病態若し
くは障害と闘うために、この場合疾患、病態若しくは障害を排除し、又は予防的に症状若しくは疾患の合併症、病的な状態若しくは障害の発症を阻止するよう患者を管理及び看護することを指す。
B.APCによるTGF−b3発現の誘導
或る特定の実施形態において、皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を誘導する方法であって、皮膚細胞とAPC又はAPC−3K3Aとを接触させる工程と、それにより皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を誘導する工程とを含む、方法を提供する。
1つの実施形態において、皮膚細胞は恒常的にTGF−β3を発現し、又は産生する。
1つの実施形態において、皮膚細胞は恒常的にTGF−β1を発現し、又は産生する。
皮膚細胞は線維芽細胞、筋線維芽細胞、ケラチノサイト又は内皮細胞であってよい。
皮膚細胞が線維芽細胞である場合、皮膚細胞は創傷床線維芽細胞、ケロイド線維芽細胞及び肥厚性瘢痕線維芽細胞からなり得る。
通例、皮膚細胞とAPC又はAPC3K3Aとの接触は、皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を高め、例えば皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を増大させ、その結果、皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生は、未処理の皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生より大きくなる。
したがって、1つの実施形態において、本発明は皮膚細胞、例えば線維芽細胞、筋線維芽細胞、ケラチノサイト又は内皮細胞によるTGF−β3の恒常的発現又は産生を高める方法であって、TGF−β3を恒常的に発現又は産生する皮膚細胞と、APC又はAPC−3K3Aとを接触させ、それにより皮膚細胞によるTGF−β3の恒常的発現又は産生を高める工程を含む、方法を提供する。
通例、APC又はAPC−3K3A処理した皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産
生は、皮膚細胞のTGF−β3の恒常的発現又は産生に対して、処理した線維芽細胞の約100%〜500%及び処理したケラチノサイトの約5%〜50%向上する。
通例、皮膚細胞とAPC又はAPC−3K3Aとを最初に接触させてから少なくとも3日〜4日間において、APC又はAPC−3K3A処理した皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生が誘導又は向上する。
通例、TGF−β1の恒常的発現又は産生は、皮膚細胞とAPC又はAPC−3K3Aとの接触によって向上しない。
通例、APC又はAPC−3K3Aは皮膚細胞の増殖を誘導しない。
C.APCによるTGF−β1発現の阻害
本発明はまた、皮膚細胞、例えば線維芽細胞、筋線維芽細胞、ケラチノサイト又は内皮細胞によるTGF−β1の恒常的発現又は産生を阻害する方法であって、皮膚細胞とAPCとを接触させ、それにより皮膚細胞によるTGF−β1の恒常的発現又は産生を阻害する工程を含む、方法を提供する。
皮膚細胞が線維芽細胞である場合、皮膚細胞は創傷床線維芽細胞、ケロイド線維芽細胞及び肥厚性瘢痕線維芽細胞からなる群から選択され得る。
通例、TGF−β1の発現又は産生は、皮膚細胞のTGF−β1の恒常的発現又は産生に対して、APCにより約5%〜30%、好ましくは約10%〜25%、好ましくは約20%阻害される。
通例、TGF−β1の発現又は産生は、皮膚細胞とAPCとを接触後に少なくとも約3日間〜5日間にて阻害される。
通例、皮膚細胞は恒常的にTGF−β3を発現し、又は産生する。
通例、TGF−β3の恒常的発現又は産生は、皮膚細胞とAPCとの接触により阻害されない。
通例、APCは皮膚細胞の増殖を誘導しない。
D.病的瘢痕形成の阻害
本発明は、個体の病的瘢痕形成を阻害し、又は予防する方法であって、
創傷修復を行う組織傷害部位を有する個体を確保する(providing:準備する)工程と

該組織傷害部位とAPC又はAPC−3K3Aとを接触させ、それにより該個体の病的瘢痕形成を阻害し、又は予防する工程と、
を含む、方法を提供する。
本発明はまた、個体の傷害部位での創傷修復が長引くことを阻害又は予防する方法であって、
創傷修復を行う組織傷害部位を有する個体を確保する工程と、
組織傷害部位とAPC又はAPC−3K3Aとを接触させ、それにより個体の傷害部位の創傷修復が長引くことを阻害又は予防する工程と、
を含む、方法を提供する。
上記の方法において、個体は病的瘢痕形成の危険のある個体であってよい。特に、個体は創傷修復が長引き、さもなければ病的瘢痕が形成される全身性又は局所的危険因子を有する個体であり得る。全身性の危険因子には、全身性感染、メタボリックシンドローム、糖尿病又は耐糖能異常、心血管機能の損傷がある。個体は遺伝的にケロイド又は肥厚性瘢痕形成を生じやすい個体であり得る。局所的危険因子には、傷害自体の性質(例えば、外傷又は火傷)、異常な炎症、運動により繰り返される身体的ストレス又はUV放射線への曝露を含む傷害に関するものがある。
本発明は、個体又は傷害部位が病的瘢痕を形成し、又は創傷修復過程を長引かせる、上記の1つ又は複数の全身性又は局所的危険因子を有するか否かを決定するために個体を評価する工程を含み得る。通例、個体の、肥厚性瘢痕成形に該当する1つ又は複数の全身性又は局所的危険因子を評価する。
火傷の傷害において、具体的な危険因子として、遺伝的、特に暗色皮膚、例えばアメリカ先住民/アラスカ原住民、顔面日焼け、より高い%TBSA、日焼けの重症度を挙げることができる(Thompson CM et al, Genetic risk factors for hypertrophic scar development. J Burn Care Res. 2013 Sep-Oct;34(5):477-82)。
他の危険因子として、年齢及びホルモンの影響が挙げられる。ケロイド様瘢痕及び肥厚性瘢痕はいかなる年齢でも発症するおそれがあるが、思春期及びそれ以降に更に発症しやすい傾向がある。更年期は瘢痕化の退縮を促す傾向にあり、妊娠期は悪化させる傾向にある。甲状腺手術による瘢痕(甲状腺摘出術の瘢痕)は、ホルモン変化による問題であり得る。
遺伝的因子及び既往歴も関連する。特に、異常な瘢痕化は、皮膚が黒めの個体に生じる可能性は15倍である。ケロイド様瘢痕形成は、メラニン細胞濃度が高い領域で生じ、眼瞼、生殖器、足底部及び掌部に見つかることは稀である。赤毛及びそばかすのある個体もケロイド様瘢痕の危険が高い。ケロイド様瘢痕化の個人的な既往歴のある人は、再度異常な形状の瘢痕になる可能性が高く、家族歴のある者も危険が高くなる。
瘢痕の位置及び手術の技法は、特に活動的な筋肉の全体又は周囲の瘢痕は多くの場合広がり、又はあまり活動的でない領域に形成された瘢痕より可視化しやすくなるという点で関連がある。創傷修復中の皮膚及び創傷の伸長も瘢痕化を増大させる寄与因子である。
創傷感染は異常な瘢痕化の危険を増大させ、それとは別に、種々の様々な種類の皮膚傷害が手術、火傷及び炎症性の皮膚過程、例えば座瘡、乾癬及び水疱瘡を含むケロイド及び肥厚性瘢痕化の発症を生じるおそれがある。
病的瘢痕を形成し、又は創傷修復過程を長引かせる1つ又は複数の局所的又は全身性の危険因子を有する個体を評価する場合、本方法はAPC又はAPC−3K3Aを用いて治療する個体を選択し、個体の病的瘢痕形成を阻害又は予防する更なる工程を含むことができる。
通例、傷害は真皮組織、皮膚系組織又は皮膚組織(cutaneous or skin tissue:皮膚の組織、すなわち皮膚組織)への損傷から生じるものである。損傷は真皮組織の全ての層に対して、例えば基底細胞層(胚芽層)、有棘層、果粒層、淡明層に対して影響を及ぼす可能性がある。特定の傷害の例として、裂傷、擦り傷、破裂、火傷、挫傷、圧迫がある。
傷害は、1度、2度又は3度の火傷を含む火傷であってよい。
通例、傷害は急性傷害である。
通例、傷害は慢性炎症と関連しない。
通例、傷害は線維化と関連しない。
通例、傷害は炎症性障害、アレルギー性障害又は特発性障害若しくは疾患ではない。
特に好ましい1つの実施形態において、個体は、肥厚性瘢痕を形成する1つ又は複数の危険因子を有し、また、更に以下に定義されるように、APCを3K3Aの形態において提供する。
APC又はAPC−3K3Aを創傷修復過程により一過性のマトリクスが形成される前に、組織傷害の部位に塗布することができる。別の実施形態において、APC又はAPC−3K3Aを創傷修復過程により最終的なマトリクスが形成される前に、組織傷害の部位に塗布することができる。通例、APC又はAPC−3K3Aを一過性のマトリクスのおおよそ形成時又は直後に塗布することができる。
通例、個体を、組織傷害の約3週間〜4週間以内に創傷修復が完了するようにAPC又はAPC−3K3Aを用いて治療する。
治療により形成された瘢痕は一般に、I型コラーゲンを主に含む生理学的瘢痕の特徴を有し、肥厚性瘢痕又はケロイドに特有の特徴は一般的にない。これらの特徴を、慣例の組織学検査又は肉眼的検査により決定することができる。
上記にも関わらず、当業者であれば、APC又はAPC−3K3Aの投与量は用いられる特定の化合物又は化合物の組合せ、治療する疾患又は病態、疾患又は病態の重症度、局所投与の種類(複数の場合もある)、化合物の排泄率、治療期間、動物に投与する他の任意の薬剤の特定、動物の年齢、大きさ及び種等の医療分野において既知の因子に伴い変化することが理解されるだろう。概して、化合物又は化合物の組合せの好適な1日の用量は、治療効果を得るのに有効な量の最小用量である。投与量、投与形態及び投与様式は、正当な医療判断の範囲内において担当医により決定される。種々の化合物及び化合物の組合せ(複数の場合もある)の効果的な投与量、投与形態及び投与様式は、経験的に決定することができ、このような決定は、当該技術分野の範囲内である。
或る特定の実施形態において、仮説に束縛されることを望まないが、この接触によりAPC又はAPC−3K3Aが病的瘢痕形成の危険を最小限にすると思われることから、組織傷害部位にてAPC又はAPC−3K3Aと本明細書に記載の皮膚細胞とを接触させることができるように、APC又はAPC−3K3Aを提供することが重要である。概して、APC又はAPC−3K3Aに接触しているこのような細胞を以下の特徴を有することによって認識することができる:増殖の増大及びアポトーシスの減少;カスパーゼ−3の減少;タンパク質分解酵素活性化受容体1、2又は3の活性化;NF−kB活性化の低下;シグナル伝達分子p38の活性化の低下;TNF分泌の減少;マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)−2タンパク質の増加及び活性化;MMP−9の減少;スフィンゴシン−1−リン酸の増加;アンジオポエチン(Ang)1の増加及びAng2の低下;Tie2活性化の増大;シグナル伝達分子Aktの活性化。それゆえ、細胞とAPC又はAPC−3K3Aとの接触、ひいては治療の治療効力を、これらの細胞表現型を評価することにより確立させることができる。
或る特定の実施形態において、一般に治療有効量のAPC又はAPC−3K3Aを、T
GF−β3の恒常的産生又は発現を向上及びTGF−β1の恒常的産生又は発現を阻害するために提供する。この結果を上記のパートBにおいて考察した方法により評価し、それにより治療有効量のAPCが提供されたか否かを確立することができる。
1つの実施形態において、治療有効量のAPC又はAPC−3K3Aは、個体の病的瘢痕の形成を予防又は阻害することができる。この結果は以下で考察する定性的又は定量的手段により評価することができる。
瘢痕尺度を考案し、治療に応答する瘢痕の様相を定量化している。現在、客観的な方法における主観的パラメータを評価するよう当初考案された瘢痕尺度が少なくとも5つある:バンクーバー瘢痕尺度(VSS)、マンチェスター瘢痕尺度(MSS)、患者及び観察者瘢痕評価尺度(POSAS)、視覚的アナログ尺度(VAS)及びストーニーブルック瘢痕評価尺度(SBSES)。これらの観察者依存型尺度は、瘢痕の深さ又は厚さ、柔軟性、表面積、質感、色素沈着及び血管分布等の因子を考慮している。測定は、連続する値で行われる。したがって、この尺度は、個人間ではなく個人内の変化を決定するために使用することが最も良い。
いくつかのツールを適用し、柔軟性を評価した:空気眼圧計及びキュートメーターは最も一般的なものである。空気眼圧計は圧を利用し、皮膚の柔軟性を客観的に測定する。
キュートメーターは皮膚の弾力性の客観的及び定量的測定に適用されている非侵襲的吸引デバイスである。陰圧に応答した垂直変形を分析することにより皮膚の粘弾性を測定する。キュートメーターは火傷の瘢痕に対する治療効果を測定するため、また瘢痕の化膿を評価するために使用されている。
デュロメーターは瘢痕に垂直方向の押込み荷重を負荷し、組織の堅固さを測定する。
比色計(ミノルタ株式会社(Minolta:現コニカミノルタ株式会社)、日本、東京)、
Derma分光計(cyberDERM, Inc, Media、米国、ペンシルバニア州)、メグザメータ
ー(Courage-Khazaka、ドイツ、ケルン)及び三刺激値測色計は、瘢痕の色を測定する最
も広く適用されているデバイスのものである。これらのデバイスは、分光学的色分析を使用し、紅斑及びメラニン指数を算出する。
超音波スキャナー、例えば組織超音波触診システム(tissue ultrasound palpation system:TUPS)を使用して瘢痕厚を定量化している。
レーザードップラー灌流イメージングは、火傷の瘢痕の灌流を測定する確立された技法である。火傷の深さ及びその後の治療方針の早期決定に役立つ。組織の微小灌流の色分けされたマップを構築することにより、レーザードップラー灌流イメージングは、火傷の創傷生検に対する非侵襲的代替物を提供する。
3次元光学プロファイリングシステム(Primosイメージング)を使用し、瘢痕の高解像度のトポグラフィー表示を作製し、それにより瘢痕を特徴付けることができる。代替法として、非接触3次元デジタイザーをケロイドの試験に適用し、瘢痕体積及び治療に対する応答を測定することができる。
別の実施形態において、上記の結果は、皮膚組織1g当たり0.1μg〜10mg、好ましくは1μg〜1mgのAPC又はAPC−3K3Aという皮膚領域のAPC又はAPC−3K3Aの局所組織濃度を確立することにより得ている。これは、同じ傷害部位を局所麻酔し、皮膚にパンチ生検を行うことにより決定することができる。次いでAPC又は
APC−3K3Aの量を当該技術分野において既知の方法により決定することができる。1つの例において、生検組織を細分化し、氷上で溶解させる。遠心分離後に、透明な上清を使用し、ELISAによりPC濃度及び色素原基質スペクトロザイムPCaアッセイ(American Diagnostica)によりAPC活性を測定している。酵素活性はλ450nmにて単位時間当たりに作製された遊離発色団の吸光度の増加を測定することにより決定している。
或る特定の実施形態において、APC又はAPC−3K3Aの治療有効量は、APC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり0.1μg〜5000μgのAPC若しくはAPC−3K3A又はAPC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり1μg〜2000μgのAPC若しくはAPC−3K3A又はAPC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり10μg〜1000μgのAPC若しくはAPC−3K3A又はAPC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり10μg〜500μgのAPC若しくはAPC−3K3Aである。
APC又はAPC−3K3Aを組織傷害の性質に応じて、1週間に1回から最大1日2回投与することができる。概ね、連続して20週間以下又は連続して6週間以下にて提供される。
或る特定の実施形態において、APC又はAPC−3K3Aを4日〜5日間毎に投与することができる。
D.1 局所塗布
局所治療方法は、例えばペースト、ゲル、クリーム、オイル、ローション、フォーム、軟膏等の物質を用いて、関連の皮膚領域が破裂した皮膚表面を含有するものである場合に特に有用であり、これにより線維芽細胞がある皮膚組織の関連層へのAPC又はAPC−3K3Aの浸透が可能となる。
1つの実施形態において、APC又はAPC−3K3Aの治療有効量は、皮膚領域1cm当たり0.1μg〜2000μg、好ましくは10μg〜1000μgのAPC又はAPC−3K3Aであり得る。皮膚がかなり重度に冒されている(affected)場合に又は上記のように病的瘢痕形成に対する局所的又は全身性因子が存在することから個体が特定の危険な状態にある場合に、量が多いほど一般的に好ましい。皮膚が重度に冒されていない場合、少量が好ましくなり得る。
配合物中のAPC又はAPC−3K3Aの濃度は、約100μg/ml〜5mg/mlであり得る。この実施形態では、皮膚領域に塗布する組成物の容量は約100ul〜5mlであり得る。
本組成物を皮膚に、概ね消毒した表面、例えば指又はヘラを用いて、約10mm以下の厚さ、好ましくは約3mmの厚さの層にて提供することができる。次いで、皮膚領域及び周囲領域に擦り込む又は揉み込むことができる。塗布は概ね1日1回〜1週間に1回、また概ね20週間以内又は12週間以内である。
1つの実施形態において、APC又はAPC−3K3Aを含有する組成物を固形の基材、すなわち救急絆、包帯等に塗布し、次いで、この基材を関連の皮膚領域に固定することができる。
D.2 皮内注射の適用
或る特定の実施形態において、上記の結果は基準線より少なくとも2倍高いAPC又はAPC−3K3Aの局所的濃度を確立することにより得られる。この量のAPC又はAPC−3K3Aを、上記の通り、ELISA及び色素原基質スペクトロザイムPCaアッセイを用いて皮膚生検のAPC又はAPC−3K3A活性を測定することにより測定することができる。皮内又は皮下注射は、角質層が無傷であり、皮膚層を通したAPC又はAPC−3K3Aの浸透が制限されるような性質のあるときの投与経路として一般に好ましい。一般に微細ゲージ針(約28G〜34G)の付いた1mlのシリンジを使用することができる。1cm当たり約1回の注射として、皮膚の表面積に対応するため複数回の注射を行うことができる。1回の注射当たりの量は10μl〜1mlまで変化し、典型的な量は50μlである。投与は概ね1日1回〜1週間に1回、概ね20週以内で行われる。皮内又は皮下注射をAPC又はAPC−3K3Aの局所塗布と同時に使用することができる。
E.病的瘢痕の治療
本発明は、個体の病的瘢痕の様相を最小限にし、又は減少させる方法であって、
病的瘢痕を有する個体を確保する工程と、
該病的瘢痕とAPC又はAPC−3K3Aとを接触させ、それにより該個体の病的瘢痕の様相を減少させる工程と、
を含む、方法を提供する。
治療は、例えば、瘢痕が隣接の組織に広がる深さを少なくし、瘢痕に覆われる組織の表面積を少なくすることにより瘢痕の体積を減らすことができる。
1つの実施形態において、本方法は、瘢痕の部分的又は完全な退縮を得ることができる。
本方法は、色素沈着の減少、特に暗色又は赤色の色素沈着を減少させ、正常な皮膚にかなり近い皮膚の色素沈着を有する瘢痕を形成させることができる。
1つの実施形態において、本方法は、例えば神経組織の瘢痕への供給を少なくすることにより、又は瘢痕の柔軟性を改善し、それにより運動の収縮を少なくすることにより病的瘢痕に起因する疼痛を減少させることを含む。運動の収縮を少なくする実施形態には瘢痕による組織収縮を少なくすることを含むことができる。
本方法は、病的瘢痕の細胞充実性及び/又は血管分布を減少させ、又はTGF−β3の恒常的発現若しくは産生を増大させ、又は病的瘢痕内若しくは隣接してTGF−β1の恒常的発現若しくは減少を低下若しくは阻害することができる。
病的瘢痕は、以下の真皮組織に対する傷害:裂傷、擦り傷、破裂、火傷、挫傷、圧迫を含むいずれか1つに起因し得る。
傷害は、1度、2度又は3度の火傷を含む火傷であってよい。
病的瘢痕は、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕又は萎縮性瘢痕であり得る。
特に好ましい1つの実施形態において、病的瘢痕は、火傷の傷害に起因する肥厚性瘢痕であり、APC又はその類似体は3K3Aである(以下に更に定義される通り)。
或る特定の実施形態において、本明細書において言及したように、仮説に束縛されることを望まないが、APC又はAPC−3K3Aと皮膚細胞との接触により、APC又はA
PC−3K3Aが病的瘢痕の治療に提供されると考えられることから、APC又はAPC−3K3Aと皮膚細胞とを病的瘢痕の部位にて接触させることができるようにAPC又はAPC−3K3Aを提供することは重要である。概して、APC又はAPC−3K3Aに接触しているこのような細胞を以下の特徴:増殖の増大及びアポトーシスの減少;カスパーゼ−3の減少;タンパク質分解酵素活性化受容体1、2又は3の活性化;NF−kB活性化の低下;シグナル伝達分子p38の活性化の低下;TNF分泌の減少;マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)−2タンパク質の増加及び活性化;MMP−9の減少;スフィンゴシン−1−リン酸の増加;アンジオポエチン(Ang)1の増加及びAng2の低下;Tie2活性化の増大;シグナル伝達分子Aktの活性化を有することによって認識することができ、細胞とAPCとのそのような接触、ひいては治療の治療効力をこれらの細胞表現型を評価することにより確立させることができる。
或る特定の実施形態において、治療有効量のAPC又はAPC−3K3Aは一般に、TGF−β3の恒常的産生又は発現の向上及びTGF−β1の恒常的産生又は発現の阻害に提供される。この結果を、上記のパートBにおいて考察された方法により評価し、それにより治療有効量のAPC又はAPC−3K3Aが提供されたか否かを確立することができる。
別の実施形態において、上記の結果は、皮膚組織1g当たり0.1μg〜10mg、好ましくは1μg〜1mgのAPC又はAPC−3K3Aという皮膚領域のAPCの局所組織濃度を確立することにより得ている。これは、同じ病的瘢痕部位を局所麻酔し、皮膚にパンチ生検を行うことにより決定することができる。次いでAPCの量を当該技術分野において既知の方法により決定することができる。1つの例において、生検組織を細分化し、氷上で溶解させる。遠心分離後に、透明な上清を使用し、ELISAによりPC濃度及び色素原基質スペクトロザイムPCaアッセイ(American Diagnostica)によりAPC活性を測定している。酵素活性はλ450nmにて単位時間当たりに作製された遊離発色団の吸光度の増加を測定することにより決定している。
或る特定の実施形態において、APC又はAPC−3K3Aの治療有効量は、APC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり0.1μg〜5000μgのAPC若しくはAPC−3K3A又はAPC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり1μg〜2000μgのAPC若しくはAPC−3K3A又はAPC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり10μg〜1000μgのAPC若しくはAPC−3K3A又はAPC若しくはAPC−3K3Aが適用される皮膚領域1cm当たり10μg〜500μgのAPC若しくはAPC−3K3Aである。
APC又はAPC−3K3Aを組織傷害の性質に応じて、1週間に1回から最大1日2回投与することができる。概ね、連続して20週間以下又は連続して6週間以下にて提供される。
或る特定の実施形態において、APC又はAPC−3K3Aを4日〜5日間毎に投与することができる。
E.1 病変内注射
或る特定の実施形態において、上記の結果は、基準線より少なくとも2倍高く投与することができるAPC又はAPC−3K3Aの局所的濃度を確立することにより得られる。投与することができるこの量のAPC又はAPC−3K3Aを、上記の通り、ELISA及び色素原基質スペクトロザイムPCaアッセイを用いて皮膚生検のAPC又はAPC−3K3A活性を測定することにより測定することができる。皮内又は皮下注射は角質層が
無傷であり、皮膚層を通したAPC又はAPC−3K3Aの浸透が制限されるような性質のあるこれらの環境における病的瘢痕の治療の投与経路として一般に好ましい。一般に微細ゲージ針(約28G〜34G)の付いた1mlのシリンジを使用することができる。1cm当たり約1回の注射として、皮膚の表面積に対応するため複数回の注射を行うことができる。1回の注射当たりの量は10μl〜1mlまで変化し、典型的な量は50μlである。投与は概ね1日1回〜1週間に1回、概ね20週以内で行われる。真皮内又は皮下注射をAPC又はAPC−3K3Aの局所塗布と同時に使用することができる。
F.APC及びその配合物
上記の方法において使用されるAPC又はAPC−3K3Aは、組成物の形態をとることができ、さもなければ以下に記載の方法により得ることができる。
APCは、血漿から精製されたプロテインCをin vitroで活性化させることにより調製することができ、又は当該技術分野においてよく知られた方法による組換えDNA技法により調製することができる。例えば、米国特許第4,981,952号、同第5,151,268号、同第5,831,025号、同第6,156,734号、同第6,268,344号及び同第6,395,270号を参照のこと。
代替法として、APCを組換えDNA技法により直接調製することができる。例えば米国特許第4,981,952号、同第5,151,268号、同第6,156,734号、同第6,268,344号及び同第6,395,270号を参照のこと。組換え型活性化プロテインCを、組換え型ヒトプロテインCのチモーゲンをin vitroで活性化させることにより、又はプロテインCの活性化形態を細胞から直接分泌させることにより生成することができる。プロテインCを、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は、例えばチモーゲンとしてヒト腎臓293細胞からの分泌物を含む種々の真核生物細胞において産生させた後、当業者に既知の技法により精製及び活性化させることができる。
APCは、任意の種の動物由来であってよいが、ヒトAPCが好ましい。
APCのフラグメント及び誘導体が本明細書に記載の活性を示すのであれば、これらを本発明の実施において使用することができる。例えば、米国特許第5,151,268号、同第5,453,373号及び同第5,516,650号並びに国際公開第89/12685号、国際公開第01/56532号、国際公開第01/59084号及び国際公開第01/72328号を参照のこと。
APCは、ヒトAPCの特徴的なタンパク質分解活性、アミド分解活性、エステル分解活性及び生物学的(抗凝固性、抗炎症性又は線維素溶解促進性)活性を有するヒトAPCの誘導体であってよい。プロテインC誘導体の例は、教示全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Gerlitz, et al.、米国特許第5,453,373号及びFoster, et al.、米国特許第5,516,650号に記載されている。
組換え型APC又はプロテインCは、修飾(例えば、アミノ酸の置換、欠失及び異種アミノ酸配列の付加)を組込み、それにより例えば各タンパク質の生物学的活性又は発現を高めることができるAPC類似体を形成することができる。1つの例として、遺伝子操作したAPCの変異体であり、抗凝固活性が低い、ZZ Biotechの3K3A−APCが挙げられる。特に、3K3A−APCはKKK191/193AAA突然変異を有する。この突然変異はAPCの37−ループに対応し得る。APC類似体の別に例では、APCのカルシウムループに対応するRR229/230AA突然変異を含有する。APC類似体の別の例は、APCの自己融解ループに対応するRR306/312AA突然変異を含有する
。別のAPC類似体は、APCの自己融解ループに対応するRKRR306/314AAAAを含有する。APC類似体のこれらの例のそれぞれは、天然APCの活性と比較して抗凝固活性が少ない。しかし、これらはそれぞれ、EPCR及びPAR−1又はPAR−3に結合する点から関連のAPC機能を有する。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、TGF−β3の恒常的発現又は産生を高め、又はTGF−β1の恒常的発現又は産生を阻害し、又は病的瘢痕形成の危険を最小限にし、又は病的瘢痕の様相を少なくするためを含む、本明細書に記載の種々の用途に3K3A−APC類似体(KKK191/193AAA)を利用する。3K3A−APCのアミノ酸配列を配列番号1に示す。
APC類似体は一般に、ヒトプロテインC配列と相同な配列を有する。一対の配列間の同一性の割合をBESTFITコンピュータープログラムに実装されたアルゴリズムにより算出することができる(Smith & Waterman. J. Mol. Biol. 147:195-197, 1981; Pearson, Genomics 11:635-650, 1991)。配列の相違を算出する別のアルゴリズムを迅速デー
タベース検索(rapid database searching)に適合させ、BLASTコンピュータープログラムにおいて実装した(Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389-3402, 1997)。ヒト配列と比較して、プロテインCのポリヌクレオチド又はポリペプチドは、アミノ酸レベルにて約60%のみの同一性、70%以上の同一性、80%以上の同一性、90%以上の同一性、95%以上の同一性、97%以上の同一性又は99%を超える同一性であり得る。
保存アミノ酸の置換(例えば、Glu/Asp、Val/lle、Ser/Thr、Arg/Lys、Gln/Asn)も、このような対のアミノ酸残基の化学的類似性が多くの場合、機能的に等価となることが見込まれることから比較するときに考慮することができる。ポリペプチドの生物学的機能を保存することが見込まれるアミノ酸置換は、置換アミノ酸残基の化学的属性、例えば疎水性、親水性、側鎖電荷又は大きさを保存する。ヒト配列に比較して、プロテインCのポリペプチドは、約80%以上のみの類似性、90%以上の類似性、95%以上の類似性、97%以上の類似性、99%以上の類似性又は約100%の類似性であってよい。生物学的機能の機能的等価性又は保存を、構造決定の方法及びバイオアッセイにより評価することができる。
使用するコドンは宿主のコドン選好性を取り入れることにより異種の宿主における翻訳に適応させることもできる。これにより、ポリペプチドの化学構造が大きく変化することなく、異種の宿主の翻訳機構に適応する。
プロテインCの組換え形態を、選択した化学構造(例えば、天然、突然変異体又は多型)を用いて作製することができる。例として、ヒトプロテインCをコードする遺伝子は、米国特許第4,775,624号に記載され、この遺伝子を使用して米国特許第4,981,952号に記載の組換え型ヒトプロテインCを作製することができる。ヒトプロテインCは、米国特許第6,037,322号に記載のように、組織培養物において組換えにより作製し、活性化させることができる。米国特許第5,084,274号に記載のように、天然のヒトプロテインCを血漿から精製し、活性化させ、アッセイすることができる。これらの特許に開示のヌクレオチド及びアミノ酸配列をプロテインCの基準物質として使用することができる。
APC及び/又はプロテインCを当該技術分野においてよく知られた方法によりグリコシル化することもでき、これには酵素手段及び非酵素手段を含むことができる。
APCの好適な機能的フラグメントを、精製された天然のAPC又は組換え型APCを
よく知られたタンパク質分解酵素、例えばトリプシン等を用いて、又はより好ましくは組換えDNA技法若しくはペプチド/ポリペプチド合成により切断することにより作製することができる。このような機能的フラグメントを、候補フラグメントを作製し、例えばMMP−2の活性化、創傷した内皮単層の修復の促進及び/又はニワトリ胚漿尿膜(CAM)における血管形成をアッセイして生物学的活性を評価することにより、本明細書に提供された実施例に記載のものと同様に同定することができる。好ましくは、機能的フラグメントは、5アミノ酸長〜100アミノ酸長、より好ましくは10アミノ酸長〜30アミノ酸長のものである。機能的フラグメントは、直鎖状又は環状であってよく、天然のAPC配列から得られたアミノ酸配列の修飾物(例えば、アミノ酸の置換、欠失及び異種アミノ酸配列の付加)を含むことができる。機能的フラグメントはまた、当該技術分野において十分に知られ、かつ酵素手段及び非酵素手段を含むことができる方法によりグリコシル化することができる。
好適なAPC模倣化合物(すなわち、APCの機能を模倣した化合物)を二次的及び三次的構造の情報がなくてもペプチド配列に基づいたペプチドの模倣物を設計する当該技術分野においてよく知られた方法のいずれかを使用して設計することができる。例えば、ペプチド模倣化合物を、アミノ酸側鎖を修飾し、ペプチドの規定の領域の疎水性を増大させ(例えば、水素をペプチドの芳香族残基のメチル基で置換)、アミノ酸側鎖を非アミノ酸側鎖で置換(例えば、ペプチドの芳香族残基を他のアリール基で置換)し、アミノ及び/又はカルボキシ末端を種々の置換基で置換(例えば、脂肪族基を置換し、疎水性を増大させる)することにより生成することができる。
代替法として、模倣化合物は、ペプチド骨格を(すなわち、例えば骨格内の窒素原子を炭素原子に置き換えることによりアミド結合の代理物(amide bond surrogates)を導入
して)修飾することを含み、又はN置換グリシン残基、1つ若しくは複数のD−アミノ酸(L−アミノ酸(複数の場合もある)の代わり)及び/又は1つ若しくは複数のα−アミノ酸(β−アミノ酸又はγ−アミノ酸の代わり)を含むいわゆるペプトイド(すなわち、非ペプチド)であり得る。更なる模倣化合物代替物には「レトロ−インベルソペプチド」(ペプチド結合が反転しており、D−アミノ酸が、ベースとなるペプチド配列のL−アミノ酸の順序と逆の順序に組み込まれている)及び他の非ペプチドフレームワーク、例えばステロイド、糖、ベンザゼピン、3,4−三置換ピロリジノン、ピリドン及びピリドピラジンがある。好適な模倣化合物はまた、構造モデリング/決定により、天然生成物のスクリーニング、ファージディスプレイライブラリの作成、タンパク質の最小化、SELEX(アプタマー)選択、コンビナトリアルライブラリ及び焦点コンビナトリアルライブラリ、バーチャルスクリーニング/データベース検索、並びに当該技術分野においてよく知られた合理的ドラッグデザイン法により設計/同定することができる。
APCの好適な医薬組成物は、APC及び薬学的に許容される担体を含む。例えば、米国特許第6,395,270号及び同第6,159,468号並びに国際公開第98/48818号、国際公開第01/56532号及び国際公開第01/72328号を参照のこと。APC含有組成物は一般に、増量剤(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース及びラフィノース)、塩(例えば、塩化ナトリウム及び塩化カリウム)、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム、トリス酢酸塩及びリン酸ナトリウム)及びAPCを含む高純度の安定した凍結乾燥生成物であってよい。例えば、安定した凍結乾燥組成物は、約1部のAPC、約7部〜8部の塩及び約5部〜7部の増量剤の重量比を含み得る。このような安定した凍結乾燥組成物の例は、バイアル当たり5.0mgのAPC、30mgのスクロース、38mgのNaCl及び7.56mg、pH6.0のクエン酸である。
APC及びAPC類似体の種々の組換え体及び合成形態の、病的瘢痕の治療への使用を、確立した動物モデルにおいて関連の有効性をスクリーニングすることにより試験するこ
とができ、その例として非特許文献1で考察された肥厚性瘢痕のヌードマウスモデルが挙げられる。
F.1 局所投与用配合物
特に好ましい1つの実施形態において、APC又はAPC−3K3Aを、上記のD欄又はE欄に記載の方法に従い、組織傷害の関連部位の局所投与に適応させた組成物又は配合物の形態において提供する。このような配合物の例として、関連表面に直接塗布し、APC又はAPC−3K3Aの関連部位への局所的投与を可能にすることができるものが挙げられる。これらの配合物には、ゲル、オイル、噴霧剤、ロールオン式配合物、軟膏、ローション、フォーム等がある。1つの実施形態において、APC又はAPC−3K3Aは、メチルセルロースゲルの形態において提供され、炭水化物及び塩等の安定剤を含有することができる。
皮膚軟膏は、通常石油基剤に有機成分、健康成分、美容成分又は医学成分を組み合わせたものであってよい。これにより皮膚軟膏が、体表により長く滞留する粘度がより高く水溶性がより低い配合物になり、その結果、成分が多種多様な問題により効率的に対応するよう作用することができる。各会社(例えばTherapex)から注文することができる多くの天然及び有機皮膚軟膏がある。
プロピオン酸クロベタゾール(CP)フォーム(0.05%)も使用することができる。これは乳濁液のエアロゾルフォームであり、米国においてコルチコステロイド反応性皮膚病の炎症及び掻痒兆候の治療に使用されており、またカナダにおいて、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の炎症及び掻痒兆候の治療に使用されている(Olux−E(プロピオン酸クロベタゾール)フォーム、0.05%、Stiefel Laboratories Inc、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク(2011))。
配合物がゲルである場合、APC又はAPC−3K3Aを100μg/g〜5000μg/gの量にてゲルに含有させることができる。
F.2 注射用配合物
APCの一配合物には、インディアナ州、インディアナポリスのEli Lilly and Co.よ
り商標名Xigris(商標)で販売されている製品がある。Xigris(商標)は、静脈注射用の滅菌済み凍結乾燥粉末として供給されている。Xigris(商標)の5mgバイアルは、5.3mg/バイアルの組換え型ヒトAPC、31.8mg/バイアルのスクロース、40.3mg/バイアルのNaCl及び10.9mg/バイアルのクエン酸ナトリウムを含有し、Xigris(商標)の20mgバイアルは、20.8mg/バイアルの組換え型ヒトAPC、124.9mg/バイアルのスクロース、158.1mg/バイアルのNaCl及び42.9mg/バイアルのクエン酸ナトリウムを含有する。バイアルをUSP規格の注射用滅菌水を用いて再構成して、約2mg/mlのAPCの濃度にすることができ、次いでこのAPC希釈液を0.9%塩化ナトリウム注射液に添加し、患者投与用に約100μg/ml〜約5000μg/mlのAPCの濃度にすることができる。これは、上記のD欄又はE欄に記載の皮下注射用技法によるAPC投与用の特に好ましい配合物である。
局所又は皮下注射により投与する場合、或る特定の実施形態において、関連の配合物に、APCの代替物として又はAPCに追加してプロテインCを含有させることができる。例えば、内因性プロテインC経路によりin vivoにて活性化し、APCを産生する有効量のプロテインCを投与することができる。例えば、米国特許第5,151,268号及び国際公開第93/09807号を参照のこと。上述のように、プロテインCを血漿から精製することができ、又は組換えDNA技法により作製することができる。例えば、
米国特許第4,959,318号、同第4,981,952号、同第5,093,117号、同第5,151,268号、同第5,571,786号、同第6,156,734号、同第6,268,344号及び同第6,395,270号を参照のこと。プロテインCを含む好適な医薬組成物が知られている(例えば米国特許第5,151,268号及び同第5,571,786号を参照のこと)。
動物におけるプロテインCの合成を増大させる或る量の物質を投与することにより、APCの内因性による産生も増大させることができる。例えば国際公開第93/09807号を参照のこと。好適な物質には、アナボリックステロイド(例えば、ダナゾール)があ
る。例えば国際公開第93/09807号を参照のこと。
或る特定の実施形態において、APCの内因性による産生を、内因性により合成されたプロテインC及び/又は共投与されたプロテインC由来の、in vivoにてAPCの産生を生じるのに有効な或る量のプロテインC活性剤を投与することにより増加させることができる。例えば国際公開第93/09807号を参照のこと。プロテインC活性剤は、APCの生成を生じ、又は増大させる任意の化合物である。好適なプロテインC活性剤には、トロンビン、α−トロンビン、活性部位をアシル化したトロンビン、トロンビン類似体及び突然変異体(例えば、トロンビンE192Q及びトロンビンK52E)、可溶性トロンビン−トロンボモジュリン複合体、トロンビン−トロンボモジュリン複合体のクリアランス又は崩壊を防ぐ物質、トロンボモジュリンの合成を高め、又はトロンボモジュリンのクリアランスを遅らせる物質、毒液(プロタック又はラッセル蛇毒液等)、第Xa因子、プラスミン、トリプシン及び他の任意の毒液、プロテインCからAPCの生成を生じ又は増大させることが可能な酵素又は化合物がある。例えば国際公開第93/09807号を参照のこと。好ましいプロテインC活性剤は、トロンビン及び活性部位をアシル化したトロンビンである。
いくつかの実施形態において、APCを炎症、細胞増殖及びアポトーシスの1つ又は複数を制御する別の物質とともに投与することができる。特に好ましい一物質には、抗IL−17抗体、特にイキセキズマブがあり、イキセキズマブは慢性尋常性乾癬の患者の第II相試験においてプラセボに比べて皮膚疾患の重症度スコアの大きな改善を示している(NEJM、2012)。炎症を制御する物質の他の例として、TNF−α阻害剤及び抗炎症性サイトカイン及び生物学的製剤が挙げられる。
本明細書において開示及び定義される本発明は、本文又は図面に挙げられ又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の全ての代替的組合せに拡大されることが理解されるだろう。これらの様々な組合せの全ては、本発明の種々の代替的態様を構成する。
実施例1
ヒト新生児の包皮ケラチノサイトを24ウェルプレートにおいてコンフルエントに培養した。単層を1μg/mlの組換え型APCを用いて処理した。培養上清を処理後1日目、2日目、3日目及び5日目に回収した。上清のTGF−β1及びTGF−β3を酵素結合免疫吸着測定法により検出した。
実施例2
新生児の真皮線維芽細胞に対する3K3A−APCの効果。細胞を24ウェルプレートにてコンフルエントに培養し、無血清培地に置き換えた。次いで、細胞を3K3A−APCを用いて1日、4日間又は7日間処理した。培養上清を計画した時点にて回収した。TGFβ1及びTGFβ3をELISAにより測定した。データは2回の実験の平均値を表
す。同じ時点の対照と比較した場合、*P<0.05、**P<0.01。

Claims (19)

  1. 皮膚細胞とAPC又はその類似体とを接触させ、それにより皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を誘導する工程を含む、皮膚細胞によるTGF−β3の発現又は産生を誘導する方法。
  2. 前記皮膚細胞が恒常的にTGF−β3及びTGF−β1を産生し、該皮膚細胞と前記APC又はその類似体との接触が該皮膚細胞によるTGF−β3の恒常的発現又は産生を高める、請求項1に記載の方法。
  3. 前記皮膚細胞と前記APC又はその類似体との接触が該皮膚細胞によるTGF−β1の恒常的発現又は産生を向上させない、請求項1又は2に記載の方法。
  4. TGF−β3の発現又は産生が、TGF−β3の恒常的発現又は産生に対して、処理した線維芽細胞の約100%〜500%又は処理したケラチノサイトの約5%〜50%高まる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記皮膚細胞が線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞又はケラチノサイトである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記皮膚細胞が線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞及びケラチノサイトの1つ又は複数を含む組成物において提供される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 個体の病的瘢痕形成を阻害し、又は予防する方法であって、
    創傷修復を行う組織傷害部位を有する個体を確保する工程と、
    該組織傷害部位とAPC又はその類似体とを接触させ、それにより該個体の病的瘢痕形成を阻害し、又は予防する工程と、
    を含む、方法。
  8. 前記個体が病的瘢痕を形成する危険のある個体である、請求項7に記載の方法。
  9. 個体に病的瘢痕形成の危険があるか否かを決定する工程と、
    治療のために、前記方法において病的瘢痕形成の危険があると決定された個体を選択する工程と、
    を更に含む、請求項7に記載の方法。
  10. 前記傷害が火傷である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 個体の病的瘢痕の様相を最小限にし、又は減少させる方法であって、
    病的瘢痕を有する個体を確保する工程と、
    該病的瘢痕とAPC又はその類似体とを接触させ、それにより該個体の病的瘢痕の様相を減少させる工程と、
    を含む、方法。
  12. 前記瘢痕が肥厚性瘢痕である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記瘢痕が火傷に起因する、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記APC又はその類似体が、局所又は前記方法において使用する注射用組成物の形態にて提供される、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記APC又はその類似体は、該APCが適用される皮膚領域の1cm当たり0.1μg〜5000μgのAPC又は該APCが適用される皮膚領域の1cm当たり1μg〜2000μgのAPC又は該APCが適用される皮膚領域の1cm当たり10μg〜1000μgのAPC又は該APCが適用される皮膚領域の1cm当たり10μg〜500μgのAPCの量にて提供される、請求項7〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記APC又はその類似体が1日当たり少なくとも1回提供される、請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記APC又はその類似体が前記傷害の時点から約4週間〜5週間以内にて提供される、請求項7〜10、14及び15のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記APC又はその類似体が約4週間〜20週間提供される、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記APC類似体が3K3A−APCである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
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