JP2020022940A - 分離材、分離材の製造方法及びカラム - Google Patents

分離材、分離材の製造方法及びカラム Download PDF

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Abstract

【課題】低分子タンパク質の非特異吸着を充分に低減することができる分離材、該分離材を備えるカラム、及び該分離材の製造方法を提供すること。【解決手段】本発明は、孔質ポリマー粒子と、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、被覆層が、水酸基を有する架橋高分子と、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子と、を含み、多孔質ポリマー粒子に鎖状親水性高分子がグラフトされている、分離材に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、分離材、分離材の製造方法及び該分離材を備えるカラムに関する。
従来、タンパク質に代表される生体高分子を分離精製する場合、一般的には、多孔質型の合成高分子を母体とするイオン交換体、親水性天然高分子の架橋ゲルを母体とするイオン交換体等が用いられている。多孔質型の合成高分子を母体とするイオン交換体の場合、塩濃度による体積変化が小さいため、カラムに充填してクロマトグラフィーで用いると、通液時の耐圧性に優れる傾向にある。しかし、このイオン交換体を、タンパク質等の分離に用いると、疎水的相互作用に基づく不可逆吸着等の非特異吸着が起きるため、ピークの非対称化が発生する、又は、疎水的相互作用でイオン交換体に吸着されたタンパク質が吸着されたまま回収できないという問題点がある。
一方、デキストラン、アガロース等の多糖に代表される親水性天然高分子の架橋ゲルを母体とするイオン交換体の場合、タンパク質の非特異吸着が殆どないという利点がある。ところが、このイオン交換体は、水溶液中で著しく膨潤するため、溶液のイオン強度による体積変化及び、遊離酸形と負荷形との体積変化が大きく、機械的強度も十分ではないという欠点を有する。特に、架橋ゲルをクロマトグラフィーで使用する場合、通液時の圧力損失が大きく、通液によりゲルが圧密化するといった欠点がある。
親水性天然高分子の架橋ゲルの欠点を克服するため、これをいわば“骨格”となる剛直な物質と組み合わせる試みがこれまでになされている。例えば、多孔性高分子の細孔内に天然高分子ゲル等のゲルを保持した複合体が、ペプチド合成の分野で知られている(例えば、特許文献1参照)。このような複合体を用いることにより、反応性物質の負荷係数を高め、高収率の合成が可能となる。また、硬質な合成高分子物質でゲルを包囲するため、カラムベッドの形態で使用しても、容積変化がなく、カラムを通過するフロースルーの圧力が変化しないという利点を有する。
セライト等の無機多孔質体にデキストラン、セルロースといった多糖等のキセロゲルを保持させた分離材が知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。このゲルには収着性能を付加するために、ジエチルアミノエチル(DEAE)基等が付与されており、ヘモグロビンの除去に用いられる。このような分離材は、カラムでの通液性が良好である。
マクロネットワーク構造のコポリマーの細孔を、モノマーから合成した架橋共重合体のゲルで埋めたハイブリッドコポリマーのイオン交換体が知られている(例えば、特許文献4参照)。架橋共重合体ゲルは、架橋度が低い場合、圧力損失、体積変化等の問題があるが、ハイブリッドコポリマーにすることで通液特性が改善され、圧力損失が少なく、イオン交換容量が向上し、リーク挙動が改善される。
有機合成ポリマー基体の細孔内に巨大網目構造を有する親水性天然高分子の架橋ゲルを充填した複合化充填材が提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。また、メタクリル酸グリシジルとアクリル架橋モノマーにより構成される多孔質粒子を合成する技術が知られている(例えば、特許文献7参照)。さらに、ジビニルベンゼン等の多官能のスチレン系モノマーを重合した架橋多孔質ポリマー粒子の表面を、アガロース、デキストラン等の多糖類で被覆した分離材が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
米国特許第4965289号明細書 米国特許第4335017号明細書 米国特許第4336161号明細書 米国特許第3966489号明細書 特開平1−254247号公報 米国特許第5114577号明細書 特開2009−244067号公報 国際公開第2016/117574号
従来の分離材は、BSA、IgG等の分子量の大きいタンパク質の非特異吸着を低減できるものの、DNA、エンドトキシン、HCP等の夾雑物で分子量が小さいタンパク質の非特異吸着を低減することが難しい。
本発明は、低分子タンパク質の非特異吸着を充分に低減することができる分離材、該分離材を備えるカラム、及び該分離材の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、下記[1]〜[11]に記載の分離材、下記[12]に記載のカラム、下記[13]に記載の分離材の製造方法を提供する。
[1]多孔質ポリマー粒子と、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、被覆層が、水酸基を有する架橋高分子と、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子とを含み、多孔質ポリマー粒子に鎖状親水性高分子がグラフトされている、分離材。
[2]水酸基を有する架橋高分子が、多糖類又はその変性体由来の架橋高分子である、[1]に記載の分離材。
[3]多糖類が、アガロース、デキストラン又はプルランである、[2]に記載の分離材。
[4]多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を有するポリマーを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の分離材。
[5]平均粒径が10〜300μmであり、モード細孔径が0.05〜0.6μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載の分離材。
[6]空隙率が40〜70体積%である、[1]〜[5]のいずれかに記載の分離材。
[7]比表面積が20m/g以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の分離材。
[8]粒径の変動係数が5〜15%である、[1]〜[7]のいずれかに記載の分離材。
[9]水酸基を有する架橋高分子の被覆量が、多孔質ポリマー粒子の1g当たり30〜500mgである、[1]〜[8]のいずれかに記載の分離材。
[10]鎖状親水性高分子のグラフト密度が、0.01〜0.5chains/nmである、[1]〜[9]のいずれかに記載の分離材。
[11]当該分離材が充填されたカラムに、該カラムの圧力が0.3MPaとなるように水を通液させたときに、水の通液速度が800cm/h以上である、[1]〜[10]のいずれかに記載の分離材。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の分離材を備えるカラム。
[13][1]〜[11]のいずれかに記載の分離材の製造方法であって、多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基を有する高分子を吸着させ、当該高分子を架橋する工程と、多孔質ポリマー粒子に、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子をグラフトする工程とを備える、方法。
本発明の一側面に係る分離材は、低分子タンパク質の非特異吸着を充分に低減することができる。本発明のいくつかの側面は、カラムとして用いた時の通液性等のカラム特性に優れ、タンパク質等の生体高分子の分離に対する優れた分離能を保持しながら、疎水的相互作用による非特異吸着が充分に少なく、かつ、静電的相互作用、又はアフィニティ精製等により生体高分子を分離精製するための分離材を提供することができる。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<分離材>
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマー粒子と、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とから構成される。被覆層は、水酸基を有する架橋高分子と、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子とを含み、多孔質ポリマー粒子に鎖状親水性高分子がグラフトされている。本明細書において、「多孔質ポリマー粒子の表面」は、多孔質ポリマー粒子の外側の表面のみでなく、多孔質ポリマー粒子の内部における細孔の表面も含む。また、本明細書中(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレート等の類似の表現においても同様である。
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基を有する高分子を吸着させ、当該高分子を架橋する工程と、多孔質ポリマー粒子に、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子をグラフトする工程とを備える方法により作製することができる。
[多孔質ポリマー粒子]
本実施形態に係る多孔質ポリマー粒子は、多孔質化剤含むモノマーを硬化させた粒子であり、例えば、従来の懸濁重合、乳化重合等により合成することができる。モノマーとしては、特に限定されないが、スチレン系モノマー等のビニルモノマーを使用することができる。すなわち、多孔質ポリマー粒子は、スチレン系モノマーに由来する構造単位を有するポリマーを含むことができる。具体的なモノマーとしては、以下のような多官能性モノマー、単官能性モノマー等が挙げられる。
多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフェナントレン等のジビニル化合物が挙げられる。これらの多官能性モノマーは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。耐久性、耐酸性及び耐アルカリ性の観点より、ジビニルベンゼンを使用することが好ましい。
単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。これらの単官能性モノマーは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。耐酸性及び耐アルカリ性の観点から、スチレンを使用することが好ましい。カルボキシル基、アミノ基、水酸基、アルデヒド基等の官能基を有するスチレン誘導体も使用することができる。
多孔質化剤としては、重合時に相分離を促し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類及びアルコール類が挙げられる。多孔質化剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール及びシクロヘキサノールから選ぶことができる。これらの多孔質化剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
多孔質化剤の量はモノマー全質量に対して0〜300質量%であってもよい。多孔質化剤の量によって、多孔質ポリマー粒子の空隙率をコントロールすることができる。さらに、多孔質化剤の種類によって、多孔質ポリマー粒子の細孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
溶媒として使用する水を多孔質化剤とすることもできる。水を多孔質化剤とする場合は、モノマーに油溶性界面活性剤を溶解させ、水を吸収することによって、粒子を多孔質化させることが可能である。
多孔質化に使用される油溶性界面活性剤としては、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のソルビタンモノエステル、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノミリステート又はヤシ脂肪酸から誘導されるソルビタンモノエステル;分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のジグリセロールモノエステル、例えば、ジグリセロールモノオレエート(例えば、C18:1(炭素数18個、二重結合数1個)脂肪酸のジグリセロールモノエステル)、ジグリセロールモノミリステート、ジグリセロールモノイソステアレート又はヤシ脂肪酸のジグリセロールモノエステル;分岐C16〜C24アルコール(例えば、ゲルベアルコール)、鎖状不飽和C16〜C22アルコール又は鎖状飽和C12〜C14アルコール(例えば、ヤシ脂肪アルコール)のジグリセロールモノ脂肪族エーテル;及びこれらの混合物が挙げられる。
これらのうち、ソルビタンモノラウレート(例えば、SPAN(登録商標)20、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノラウレート)、ソルビタンモノオレエート(例えば、SPAN(登録商標)80、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノオレエート)、ジグリセロールモノオレエート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノオレエート)、ジグリセロールモノイソステアレート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノイソステアレート)、ジグリセロールモノミリステート(純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノミリステート)、ジグリセロールのココイル(例えば、ラウリル基、ミリストイル基等)エーテル、又はこれらの混合物が挙げられる。
これらの油溶性界面活性剤は、モノマー全質量に対して、5〜80質量%の範囲で使用することが好ましい。油溶性界面活性剤の量が5質量%以上である場合、水滴の安定性が良好となり、大きな単一孔の形成が抑制される傾向にある。油溶性界面活性剤の量が80質量%以下である場合、重合後に多孔質ポリマー粒子が形状をより保持し易くなる。
水性媒体としては、水、又は、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマーの重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
必要に応じて添加される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、モノマー100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用することができる。
重合温度は、モノマー及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
多孔質ポリマー粒子の合成において、粒子の分散安定性を向上させるために、モノマーの乳化液に分散安定剤を添加してもよい。
分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。分散安定剤の添加量は、モノマー100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
モノマーが単独で重合することを抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは100μm以下である。また、多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上であり、更に好ましくは50μm以上である。平均粒径が小さくなると、カラム充填後のカラム圧が増加する可能性がある。
多孔質ポリマー粒子又は分離材の変動係数(C.V.)は通液性を向上させるためには5〜15%であることが好ましく、5〜10%であることがより好ましい。粒径の変動係数を低減する方法としてマイクロプロセスサーバー(株式会社日立製作所製)等の乳化装置により単分散化する方法がある。
多孔質ポリマー粒子又は分離材の平均粒径及び粒径の変動係数は、以下の測定法により求めることができる。
1)粒子を、水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、分散液中の粒子1万個の画像により平均粒径と粒径の変動係数を測定する。
多孔質ポリマー粒子の細孔容積は、多孔質ポリマー粒子の全体積基準で30〜70体積%であってもよく、40〜70体積%であることが好ましい。多孔質ポリマー粒子は、細孔径が0.05μm以上0.6μm以下である細孔、すなわちマクロポアー(マクロ孔)を有していてもよい。多孔質ポリマー粒子の細孔径分布におけるモード径(モード細孔径)は、0.05〜0.6μmであってもよく、0.05μm以上0.3μm未満であることが好ましい。細孔径が0.05μm以上であると、細孔内に物質が入り易くなる傾向にあり、細孔径が0.6μm以下であると、比表面積が充分なものになる。これらは上述の多孔質化剤により調整可能である。
多孔質ポリマー粒子の比表面積は、30m/g以上であることが好ましい。実用性の観点から、比表面積が35m/g以上であることがより好ましく、40m/g以上であることが更に好ましい。比表面積が30m/g以上であると、分離する物質の吸着量が大きくなる傾向にある。
多孔質ポリマー粒子又は分離材のモード細孔径、比表面積及び空隙率は、水銀圧入測定装置(オートポア:株式会社島津製作所製)にて測定した値であり、以下のようにして測定することができる。約0.05gの試料を、標準5mL粉体用セル(ステム容積0.4mL)に採り、初期圧21kPa(約3psia、細孔直径約60μm相当)の条件で測定する。水銀パラメータは、装置デフォルトの水銀接触角130°、水銀表面張力485dynes/cm、に設定する。細孔径0.05〜5μmの範囲に限定してそれぞれの値を算出する。
[被覆層]
本実施形態に係る被覆層は、水酸基を有する架橋高分子と、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子とを含む。鎖状親水性高分子は、多孔質ポリマー粒子にグラフトしている。多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部が、水酸基を有する架橋高分子及び鎖状親水性高分子で被覆され、かつ、鎖状親水性高分子が多孔質ポリマー粒子にグラフトされていることにより、低分子タンパク質の非特異吸着を充分に低減することができる。また、水酸基を有する架橋高分子は、多孔質ポリマー粒子及び鎖状親水性高分子のいずれにもグラフトしておらず、多孔質ポリマー粒子にグラフトした鎖状親水性高分子は、水酸基を有する架橋高分子の隙間に存在すると考えられ、これによって、被覆層を薄膜化することができ、高流速で通液したときにカラム圧の上昇を抑制しつつ、高い吸着能の発現に寄与できる。
(水酸基を有する架橋高分子)
水酸基を有する架橋高分子は、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましく、親水性高分子であることがより好ましい。水酸基を有する架橋高分子は、水酸基を有する高分子を架橋したものである。水酸基を有する高分子としては、例えば、多糖類又はその変性体が挙げられる。多糖類としては、例えば、アガロース、デキストラン、プルラン、セルロース及びキトサンが挙げられる。水酸基を有する高分子として、例えば、平均分子量1万以上の高分子を使用できる。水酸基を有する架橋高分子は、多糖類(糖鎖)又はその変性体由来の架橋高分子であることが好ましい。多糖類としては、アガロース、デキストラン、プルラン、セルロース、キトサン等が挙げられる。水酸基を有する架橋高分子は、アガロース、デキストラン又はプルラン由来の架橋高分子であってもよい。
水酸基を有する高分子は、界面吸着能を向上させる観点から、疎水性基を導入した変性体であることが好ましい。疎水性基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。疎水性基は、水酸基と反応する官能基(例えば、エポキシ基)及び疎水性基を有する化合物(例えば、グリシジルフェニルエーテル)を、水酸基を有する高分子と従来公知の方法で反応させることにより、導入することができる。
疎水性基を導入した水酸基を有する高分子の変性体における疎水性基の含有量は、粒子表面に吸着するための疎水的相互作用力の保持と、タンパク質の非特異吸着の抑制のバランスとから、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましく、12〜17質量%であることが更に好ましい。
(水酸基を有する架橋高分子の被覆方法)
本実施形態に係る水酸基を有する架橋高分子の被覆は、例えば、多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基を有する高分子を吸着させた後、当該高分子を架橋して、多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基を有する架橋高分子の層を形成することができる。以下、被覆層を形成する方法の具体例について説明する。
まず、水酸基を有する高分子の溶液を多孔質ポリマー粒子表面に吸着させる。水酸基を有する高分子の溶液の溶媒としては、水酸基を有する高分子を溶解することのできるものであれば、特に限定されないが、水が最も一般的である。溶媒に溶解させる高分子の濃度は、5〜20mg/mLが好ましい。
この溶液を、多孔質ポリマー粒子に含浸させる。含浸方法は、水酸基を有する高分子の溶液に多孔質ポリマー粒子を加えて一定時間放置する。含浸時間は多孔質体の表面状態によっても変わるが、通常一昼夜含浸すれば高分子濃度が多孔質体の内部で外部濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分の水酸基を有する高分子を除去する。
(架橋処理)
次いで、架橋剤を加えて多孔質ポリマー粒子表面に吸着された水酸基を有する高分子を架橋反応させて、架橋体を形成する。このとき、架橋体は、水酸基を有する3次元架橋網目構造を有する。
架橋剤としては、例えば、エピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、メチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物などのような水酸基に活性な官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。また、水酸基を有する高分子としてキトサンのようなアミノ基を有する化合物を使用する場合には、ジクロロオクタンのようなジハライド化合物も架橋剤として使用できる。
この架橋反応には通常触媒が用いられる。該触媒は架橋剤の種類に合わせて適宜従来公知のものを用いることができるが、例えば、架橋剤がエピクロルヒドリン等の場合には水酸化ナトリウム等のアルカリが有効であり、ジアルデヒド化合物の場合には塩酸等の鉱酸が有効である。
架橋剤による架橋反応は、通常、分離材を適当な媒体中に分散、懸濁させた系に架橋剤を添加することによって行われる。架橋剤の添加量は、水酸基を有する高分子として多糖類を使用した場合、単糖類の1単位を1モルとすると、それに対して0.1〜100モル倍の範囲内で、分離材の性能に応じて選定することができる。一般に、架橋剤の添加量を少なくすると、被覆層が多孔質ポリマー粒子から剥離し易くなる傾向にある。また、架橋剤の添加量が過剰で、かつ、水酸基を有する高分子との反応率が高い場合、原料の水酸基を有する高分子の特性が損なわれる傾向にある。
触媒の使用量としては、架橋剤の種類により異なるが、通常、水酸基を有する高分子として多糖類を使用する場合に、多糖類を形成する単糖類の1単位を1モルとすると、これに対して0.01〜10モル倍の範囲、好ましくは0.1〜5モル倍で使用される。
例えば、該架橋反応条件を温度条件とした場合、反応系の温度を上げ、その温度が反応温度に達すれば架橋反応が生起する。
水酸基を有する高分子の溶液等を含浸させた多孔質ポリマー粒子を分散、懸濁させる媒体としては、含浸させた高分子溶液から高分子、架橋剤等を抽出してしまうことなく、かつ、架橋反応に不活性なものである必要がある。媒体の具体例としては、水、アルコール等が挙げられる。
架橋反応は、通常、5〜90℃の範囲の温度で、1〜10時間かけて行う。好ましくは、30〜90℃の範囲の温度である。
架橋反応終了後、生成した粒子を濾別し、次いでメタノール、エタノール等の親水性有機溶媒で洗浄し、未反応の高分子、懸濁用媒体等を除去すれば、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部が、水酸基を有する高分子を含む被覆層により被覆された分離材が得られる。
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマー粒子の1g当たり30〜500mgの水酸基を有する架橋高分子を含む被覆層を備えると好ましい。該架橋高分子の被覆量は、多孔質ポリマー粒子の1g当たり100〜450mgであることがより好ましく、200〜400mgであることが更に好ましい。架橋高分子の被覆量が多孔質ポリマー粒子1gに対して500mg以下であると、被覆層を薄膜とすることができ、カラムとして用いたときの通液性がより向上する傾向にある。また、架橋高分子の被覆量が多孔質ポリマー粒子1gに対して30mg以上であると、タンパク質吸着量がより高まる傾向にある。水酸基を有する架橋高分子の被覆量は、熱分解の重量減少等で測定することができる。
(鎖状親水性高分子)
被覆層は、多孔質ポリマー粒子にグラフトした、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子を含む。ただし、鎖状親水性高分子高分子は、水酸基を有する架橋高分子を構成する高分子とは異なる。
鎖状親水性高分子は、非特異吸着を効果的に防止するために、リビングラジカル重合である原子移動ラジカル重合(ATRP)によって、水酸基を有するラジカル重合性モノマーを重合させて多孔質ポリマー粒子の表面に導入してもよい。すなわち、鎖状親水性高分子は、水酸基を有するラジカル重合性モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーであることが好ましい。非特異吸着を防止する観点から、水酸基を有するラジカル重合性モノマーとして、水に溶解するモノマーを使用することが好ましい。
水酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、糖単位の側鎖を有する(メタ)アクリレート及びオリゴエチレングリコール側鎖を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。オリゴエチレングリコール側鎖を有する(メタ)アクリレートにおけるエチレンオキシドの繰返し単位(EO)は、1〜35であってもよく、特にグラフト密度を増加し、非特異吸着を抑制する観点から、EOは4〜23であることが好ましい。側鎖の末端は、メトキシ基又は水酸基であることが好ましい。
鎖状親水性高分子は、多孔質ポリマー粒子の表面にATRP開始基を導入後、形成させることができる。ATRP開始基の導入方法は特に限定されないが、多孔質ポリマー粒子の架橋性ポリマーに二重結合が残存している場合は、臭酸、塩酸等を二重結合に反応させることでATRP開始基を導入することができる。多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基がある場合、水酸基を2−ブロモプロピオニルブロミドと反応させることにより、簡便にATRP開始基を導入することができる。簡便な方法として、2−ブロモプロピオニルブロミドをドーパミンを反応させて得られる物質を使用して、多孔質ポリマー粒子の表面に膜を形成することによりATRP開始基を導入することもできる。
ATRP法において用いられる触媒は、特に限定されず、ATRP法において通常使用されるものの中から幅広く選択できる。通常は遷移金属錯体が用いられる。遷移金属錯体は特に限定されず、幅広く選択できる。例えば、以下に例示する配位子群と遷移金属群から適宜それぞれ配位子と遷移金属を選び出して組み合わせることができる。
配位子群は、例えば、2,2’−Bipyridyl、4,4’−Dimethyl−2,2’−dipyridyl、4,4’−Di−tert−butyl−2,2’−dipyridyl、4,4’−Dinonyl−2,2’−dipyridyl、N−Butyl−2−pyridylmethanimine、N−Octyl−2−pyridylmethanimine、N−Dodecyl−N−(2−pyridyl−methylene)amine、N−Octadecyl−N−(2−pyridylmethylene)amine、N,N,N’,N’,N’−Pentamethyl−diethylenetriamine、Tris(2−pyridylmethyl)amine、1,1,4,7,10,10−Hexamethyltriethylene−tetramine、Tris[2−(dimethylamino)ethylamine、1,4,8,11−Tetraazacyclotetra−decane、1,4,8,11−Tetramethyl−1−4−8−11−tetraazacyclotetradecane及びN,N,N’N’−Tetrakis(2−pyridylmethyl)−ethylenediamineからなる。
遷移金属群は、例えば、CuCl、CuCl、CuBr、CuBr、TiCl、TiCl、TiCl、TiBr、FeCl、FeCl、FeBr、FeBr、CoCl、COBr、NiCl、NiBr、MoCl、MoCl及びRuClからなる。遷移金属錯体は、好ましくは一価銅錯体である。一価銅錯体として、特に限定されないが、CuBr/ビピリジル(bpy)錯体を使用してもよい。
ATRP法に溶媒を用いる場合、溶媒は、特に限定されないが、フリーラジカル重合にて使用されている溶媒であって、触媒がある程度均一に溶解できるものであれば使用可能である。例えば、水、エーテル類、アミド類、ニトリル類及びアルコール類からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒、又はその溶媒をその他の溶媒と組み合わせて用いることができる。エーテル類としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール及びジメトキシベンゼンが挙げられる。アミド類としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。ニトリル類としては、特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリルが挙げられる。アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール及びイソアミルアルコールが挙げられる。溶媒としては、特に、水、エーテル類、アミド類及びアルコール類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水、アニソール又はDMFがより好ましい。
上記の溶媒と組み合わせられ得る他の溶媒は、特に限定されないが、例えば、芳香族炭化水素である溶媒又はハロゲン化炭化水素であってもよい。芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン及びトルエンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム及びクロロベンゼンが挙げられる。この場合、上記の重合溶媒の量を開始剤のモル量以上とするのが好ましい。
鎖状親水性高分子をATRPにより導入する場合、本実施形態に係る分離材の製造方法は、多孔質ポリマー粒子に、原子移動ラジカル重合の開始基を導入する工程と、開始基が導入された多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基を有する高分子を吸着させ、当該高分子を架橋する工程と、開始基に対して、親水性モノマーを原子移動ラジカル重合させることにより、多孔質ポリマー粒子に、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子をグラフトする工程とを備えていてもよい。
鎖状親水性高分子の導入方法は、リビングラジカル重合でグラフトする方法以外にも、多孔質ポリマー粒子に鎖状親水性高分子を固定化できれば、グラフト方法は問わない。グラフト方法は、例えば、多孔質ポリマー粒子表面に存在する多官能モノマー由来のビニル基を、チオールエン反応で末端にチオール有する鎖状親水性高分子と反応させる方法であってもよい。グラフト方法は、フェントン反応で多孔質ポリマー粒子表面に水酸基を導入し、縮合反応で末端にカルボン酸を有する鎖状親水性高分子をグラフトする方法、グリシジル基を有する鎖状親水性高分子をグラフトする方法等であってもよい。また、鎖状親水性高分子の固定は、化学結合でなくても、物理的に固定化する方法でもよい。例えば、多孔質ポリマー粒子との疎水性相互作用を利用し、芳香族化合物を末端に有するポリエチレングリコール鎖を含む鎖状親水性高分子をグラフトする方法が挙げられる。このような方法であれば、ポリエチレングリコール鎖を含む鎖状親水性高分子を多孔質ポリマー粒子に導入可能である。
ポリエチレングリコール鎖を含む鎖状親水性高分子は、大きい排除体積を有するためリビングラジカル重合で導入しなくても、充分な低分子タンパク質の非特異吸着の抑制効果を発揮することができる。低分子タンパク質の非特異吸着をより一層低減する観点から、ポリエチレングリコール鎖の平均分子量は1000〜1000000が好ましく、特に高いグラフト密度で導入する観点から、平均分子量は2000〜200000が好ましい。ポリエチレングリコール鎖の片末端は、多孔質ポリマー粒子表面にグラフトできる官能基を有していれば特に指定はない。このような官能基として、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、チオール基、アジ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、フェニル基、ナフチル基及びピリジル基が挙げられる。もう一方の末端には、親水性を維持する観点から、水酸基又はメトキシ基を有していることが好ましい。
鎖状親水性高分子の数平均分子量(Mn)は、グラフトされた鎖状親水性高分子をアルカリ等により加水分解させた後、GPC等により測定することができる。高い動的吸着量と非特異吸着抑制とを両立する観点から、鎖状親水性高分子のMnは、1000〜1000000であってもよい。特に非特異吸着を抑制する観点から、鎖状親水性高分子のMnは、2000以上が好ましい。動的吸着量を向上する観点から、生体高分子の吸着部位を導入する水酸基を有する架橋高分子の運動を妨げないことが重要であるため、鎖状親水性高分子のMnは、500000以下が好ましい。
鎖状親水性高分子のグラフト密度は、下記式より算出することができる。タンパク質の非特異吸着を防止する観点から、グラフト密度σは、0.01chain/nm以上であることが好ましい。特に夾雑物(低分子タンパク質)の非特異吸着を抑制する観点から、0.03chain/nm以上であることが好ましい。鎖状親水性高分子のグラフト密度は、0.01〜0.5chain/nm、0.03〜0.45chain/nm又は0.05〜0.4chain/nmであってもよい。
σ(chain/nm)=被覆量(g/粒子g)/鎖状親水性高分子のMn×アボガドロ数/粒子の比表面積(nm/g)
(イオン交換基の導入)
被覆層に、イオン交換基、リガンド(プロテインA)を、水酸基を介して導入することにより、分離材をイオン交換精製、アフィニティ精製に使用することができる。
イオン交換基を導入するために、ハロゲン化アルキル基を有する化合物を用いることができる。その例としては、モノハロゲノ酢酸、モノハロゲノプロピオン酸等のモノハロゲノカルボン酸及びそのナトリウム塩、ジエチルアミノエチルクロライドといった1級、2級、3級アミン、又は4級アンモニウム塩のハロゲン化物及びその塩酸塩等が挙げられる。ハロゲン化物としては臭化物、塩化物が好ましい。ハロゲン化アルキル基含有化合物の種類により付与されたイオン交換基が決定される。ハロゲン化アルキル基含有化合物の使用量としては、イオン交換基を付与する粒子の重量に対して0.2%以上であってもよい。
イオン交換基を導入する反応を促進するために、有機溶媒を用いるのが有効である。有機溶媒としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール等のアルコール類を用いることができる。通常、多孔質ポリマー粒子及び被覆層を有する粒子を、湿潤状態で濾過等により水切りした後、所定濃度のアルカリ性水溶液に浸漬し、一定時間放置する。通常、水−有機溶媒混合系で、ハロゲン化アルキル基含有化合物を添加し反応させる。この反応は温度40〜90℃で還流下、0.5〜12時間行うのが好ましい。
弱塩基性基であるアミノ基は、ハロゲン化アルキル基含有化合物のうち、モノ−、ジ−又はトリ−アルキルアミノクロライド、モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミノクロライド、モノ(又はジ−)アルキル−モノ(又はジ−)アルカノールアミノクロライド(但し、0内が同時に示されることはない。)等の2級又は3級アミノハロゲナイド等を反応させることにより得られる。これらのアミンの使用量は、粒子の質量に対して0.2質量%以上であってもよい。反応条件は、例えば40〜90℃で0.5〜12時間である。
強塩基性基の四級アンモニウム基をイオン交換基として導入する方法の例としては、まず上述の様に3級アミノ基を導入し、該3級アミノ基にエピクロルヒドリンのハロゲン化アルキル基含有化合物を反応させ4級アンモニウム基に変換させる方法が挙げられる。4級アンモニウムクロライド等の4級アミノハロゲナイド等を上述の1〜3級アミノクロライドの様に複合体に反応させてもよい。
イオン交換基として弱酸性基であるカルボキシル基を導入する方法の例としては、該ハロゲン化アルキル基含有化合物としてモノハロゲノ酢酸、モノハロゲノプロピオン酸等のモノハロゲノカルボン酸又はそのナトリウム塩を反応する方法がある。カルボン酸又はそのナトリウム塩の使用量はイオン交換基を導入する粒子の質量に対して0.2%以上であってもよい。
強酸性基であるスルホン酸基の導入方法の例としては、複合体に対してエビクロロヒドリン等のグリシジル化合物を反応させ、さらに亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩の飽和水溶液に該複合体を添加し、30〜90℃で1〜10時間反応させる方法がある。
イオン交換基を導入する他の方法としては、アルカリ性雲囲気下で粒子を1,3−プロパンスルトンと反応させる方法がある。1.3−プロパンスルトンの量は、粒子の質量に対して0.4質量%以上であってもよい。反応条件は、例えば0〜90℃で0.5〜12時間である。一般には、水酸化ナトリウム水溶液に、水酸基を有する水溶性高分子で被覆した多孔質ポリマー粒子を投入し、水−有機溶媒混合系で、ハロゲン化アルキル基含有化合物と反応させる方法が挙げられる。ハロゲン化アルキル基含有化合物の使用量は、水溶性高分子の質量に対して例えば0.2質量%以上である。この反応は温度40〜90℃、還流下で、0.5〜12時間行うのが好ましい。
イオン交換基が導入された分離材は、タンパク質を静電的相互作用による分離、アフィニティ精製に用いるのに好適である。例えば、タンパク質を含む混合溶液の中に分離材を添加し、静電的相互作用によりタンパク質だけを分離材に吸着させた後、分離材を溶液から濾別し、塩濃度の高い水溶液中に添加すれば、分離材に吸着しているタンパク質を容易に脱離、回収できる。分離材は、カラムクロマトグラフィーにおけるカラム充填剤としても有用である。カラムは、通常、管状体と、該管状体内に充填された分離材(カラム充填剤)を備えるものである。
一実施形態に係る分離材を用いて分離できる生体高分子としては、水溶性の物質が好ましい。生体高分子の具体例は、血清アルブミン、免疫グロブリン等の血液タンパク質等のタンパク質、生体中に存在する酵素、バイオテクノロジーにより生産されるタンパク質生理活性物質、DNA、及び生理活性を有するペプチドを含む。生体高分子の分子量は200万以下、さらに好ましくは50万以下である。タンパク質の等電点、イオン化状態等によって、イオン交換基の性質及び条件を選ぶことができる。この点に関して、例えば、特開昭60−169427号公報を参照することができる。
被覆層を形成後、細孔内にイオン交換基、リガンドを導入することにより、タンパク質等の生体高分子の分離において、天然高分子、合成ポリマーからなる粒子の持つそれぞれの利点をあわせ持った特性を示すことができる。この性能は、従来の技術では発揮されなかったものである。イオン交換体の骨格となる多孔質体は、上記のような方法で作られる多孔質ポリマー粒子であるため、耐久性、耐アルカリ性が強い。また、水酸基を有するポリマーによって被覆層を形成することにより非特異吸着も起こりにくく、タンパク質の脱吸着がし易い。さらにイオン交換体は、同一流速下でのタンパク質等の吸着容量(動的吸着容量)が大きい点でも従来のイオン交換樹脂に比べて好ましい性質を有する。
分離材の粒径は、通常、10〜300μmが好ましい。分取用又は工業用のクロマトグラフィーの充填剤として使用される場合、カラム内圧の極端な増加を避けるために、分離材の粒径が50〜100μmであることが好ましい。
分離材は、モード細孔径が0.05〜0.6μmである細孔、すなわちマクロポアー(マクロ孔)を有することが好ましい。モード細孔径は、好ましくは、0.1〜0.5μmである。細孔径が0.05μm以上であると、細孔内に物質が入り易くなる傾向にあり、細孔径が0.6μm以下であると、比表面積が充分なものになる。
分離材の比表面積は、20m/g以上であることが好ましい。より高い実用性の観点から、比表面積は25m/g以上であることがより好ましい。比表面積が20m/g以上であると、分離する物質の吸着量が大きくなる傾向にある。分離材の比表面積の上限値は、1000m/g以下とすることができる。
分離材の空隙率は、40〜70体積%であることが好ましい。空隙率がこの範囲にあると、タンパク質吸着量を多くすることができる。
カラムでタンパク質の分離を行う場合、カラムに通液されるタンパク質溶液等の通液速度は、一般に400cm/h以下の範囲である。これに対して、本実施形態の分離材は、800cm/h以上の通液速度でも高い吸着容量で使用できる。当該分離材が充填されたカラムに、カラムの圧力が0.3MPaとなるように水を通液させたときに、水の通液速度が800cm/h以上であることが好ましい。ここでの通液速度とはφ7.8×300mmのステンレスカラムに充填剤を充填し、液を流した際の通液速度を意味する。
本実施形態の分離材は、カラムクロマトグラフィーの充填剤として使用した場合、使用する溶出液の性質に依らず、カラム内での体積変化が殆どないという、操作性における優れた効果を発揮し得る。本実施形態の分離材は、タンパク質等の生体高分子の分離において、天然高分子からなる粒子又は合成高分子からなる粒子のそれぞれの利点を有する。特に本実施形態の分離材は、低分子タンパク質の非特異吸着を低減し、タンパク質の吸脱着が起こり易い傾向にある。
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[多孔質ポリマー粒子]
500mLの三口フラスコに、純度96%のジビニルベンゼン(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「DVB960」)16g、ソルビタンモノオレエート6g、過酸化ベンゾイル0.64gを、0.5質量%のポリビニルアルコール水溶液に加え、マイクロプロセスサーバーを使用して乳化した。形成された乳化液において、連続相としてのポリビニルアルコール水溶液中に、ジビニルベンゼン、ソルビタンモノオレエート及び過酸化ベンゾイルを含むモノマー相が分散していた。得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間撹拌をした。ジビニルベンゼンの重合により生成した粒子をろ過により取り出し、アセトンで洗浄して、多孔質ポリマー粒子を得た。多孔質ポリマー粒子の粒径をフロー型粒径測定装置(シスメックス株式会社製、商品名「FPIA−3000」)で測定し、平均粒径(体積基準)及び粒径のC.V.を算出したところ、平均粒径は95μm、C.V.は7.9%であった。
(ATRP開始基の導入)
多孔質ポリマー粒子10g、チオグリセロール0.1mmol及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1mmolを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mLに加えた液を70℃で12時間攪拌した。その後、液から取り出した粒子をアセトンで洗浄した。洗浄した粒子10g、イソブチリルブロマイド1g、DMF50g及びトリエチルアミン0.5gを3時間室温で攪拌した。液から取り出した粒子をアセトンで洗浄して、ATRP開始基が導入された多孔質ポリマー粒子を得た。
[変性デキストラン]
2質量%のデキストラン(Mw:50万)水溶液480mLに、水酸化ナトリウム0.98g及びグリシジルフェニルエーテル4.90gを添加し、60℃で6時間反応させ、デキストランにフェニル基を導入した。得られた変性デキストランをイソプロピルアルコールで再沈殿させ、洗浄した。変性デキストランの疎水性基含有量を下記方法により算出したところ、14.2%であった。
乾燥状態の粉末デキストラン(変性されていないデキストラン)と、揮発分0.1質量%未満まで乾燥させた疎水性基導入デキストランとを、それぞれ70℃の純水に溶解させ、0.05質量%の水溶液を調製した。分光光度計により各水溶液の269nmの吸光度を測定して濃度を求めることで、下記式より疎水性基含有量を算出した。
・疎水性基含有量(%)=(CAG/(CHAG+CAG))×100
・CAG:変性デキストラン構成単位の濃度(mmol/L)=A/εGPE×1000
・CHAG:変性されていないアガロース構成単位の濃度(mmol/L)=[変性されてないデキストラン構成単位の濃度(g/L)/デキストラン構成単位(306g/mol)]×1000
・A:変性デキストランの真の吸光度=変性デキストランの吸光度−変性されていないデキストランの吸収
・εGPE:グリシジルフェニルエーテルの吸光係数=1372(L/(mol・cm))
・変性されてないデキストラン構成単位の濃度(g/L)=変性デキストランのサンプル濃度(質量%)×10−変性されているアガロース構成単位の濃度(g/L)
・変性されていないデキストランの吸収=変性されてないデキストランの吸光度×[変性デキストランのサンプル濃度(mmol/L)/変性されてないデキストランのサンプル濃度(mmol/L)]
・変性デキストラン成単位の濃度(g/L)=(CAG×変性デキストラン構成単位(456g/mol))/1000
[変性アガロース]
2質量%のアガロース(Mw:50万)水溶液を用いた以外は、デキストランの変性と同様にして、変性アガロースを得た。変性アガロースの疎水性基含有量は14.2%であった。
[実施例1]
(架橋高分子の被覆)
20mg/mLの変性デキストラン水溶液に、ATRP開始基を導入した多孔質ポリマー粒子を70mL/粒子gの濃度で投入し、55℃で24時間攪拌して、多孔質ポリマー粒子に変性アガロースを吸着させた後、ろ過を行い、熱水で洗浄した。
多孔質ポリマー粒子に吸着した変性デキストランは次のようにして架橋した。変性デキストランが吸着した粒子10gを0.4M水酸化ナトリウム水溶液に分散させ、0.04Mエピクロロヒドリンを添加し、8時間室温にて攪拌した。その後、2質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液の熱水で洗浄後、純水で洗浄した。水酸基を有する架橋高分子で被覆された粒子(被覆粒子A)を乾燥後、熱重量分析により水酸基を有する架橋高分子の被覆量を測定した。結果を表1に示す。
(鎖状親水性高分子のグラフト)
被覆粒子A10gを、グリセリンモノメタクリレート(GMA)13g、二臭化銅670mg、トリスジメチルアミノエチルアミン335mg、及びDMF80gを含む反応液に添加し、窒素バブリングを行った。そこに、1190mgのアスコルビン酸を溶解させたエタノール200gを添加し、ATRPによるグリセリンモノメタクリレートの重合を5時間かけて行った。重合後の粒子をろ過し、DMFにて洗浄し、変性デキストランの架橋体で被覆され、かつ、グリセリンモノメタクリレートの重合体であるPGMAがグラフトされた粒子(分離材)を得た。
粒子の質量の変化から、多孔質ポリマー粒子1gに対するグラフト量(mg/粒子g、グラフト量)を求めた。グラフト鎖の分子量は、3Nの水酸化ナトリウム水溶液4gに粒子1gを分散し、25℃で3時間攪拌して、加水分解によって分離したPGMAが溶解した上澄みを回収した。次に、このPGMAの溶液に、溶液のpHが7になるまで1Mの塩酸を加え中和した。得られた水溶液を用いたGPCによりMnを算出し、Mnを使用してグラフト密度を算出した。結果を表1に示す。
[実施例2]
GMAの量を2.6gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、分離材を作製し、評価した。
[実施例3]
GMAの量を32.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、分離材を作製し、評価した。
[実施例4]
GMAに代えてヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)をモノマーとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、分離材を作製した。
[実施例5]
GMAに代えてポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(OEGMA400、EO=9mol、Mw468)をモノマーとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、分離材を作製した。
[実施例6]
GMAに代えてポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(OEGMA1000、EO=23mol、Mw1068)をモノマーとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、分離材を作製した。
[実施例7]
(架橋高分子の被覆)
ATRP開始基を導入する前の多孔質ポリマー粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、変性デキストランの架橋体で被覆された粒子(被覆粒子B)を得た。
(鎖状親水性高分子のグラフト)
被覆粒子Bを10g、ポリエチレングリコール2−メルカプトエチルメチルエーテル(PEG50、Mw5000)0.1mmol、及びAIBN1mmolを、DMF100mLに添加し、70℃で12時間、攪拌した。得られた粒子をアセトンで洗浄した。洗浄した粒子10g、イソブチリルブロマイド1g、DMF50g、及びトリエチルアミン0.5gを3時間室温で攪拌した。得られた粒子をアセトンで洗浄し、ポリエチレングリコール鎖がグラフトされた粒子(分離材)を得た。
[実施例8]
PEG50に代えてポリエチレングリコール2−メルカプトエチルメチルエーテル(PEG400、Mw40000)を使用したこと以外は実施例7と同様にして、分離材を作製した。
[実施例9]
変性デキストランに代えて変性アガロースを使用したこと以外は実施例1と同様にして、分離材を作製した。
[比較例1]
被覆粒子Bを分離材として用いた。
[比較例2]
GMAに代えてフェニルメタクリレート(PMA)をモノマーとして使用したこと以外は実施例1と同様にして、分離材を作製した。
[比較例3]
市販のイオン交換クロマトグラフィー担体(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製、商品名「Capto DEAE」)を分離材として用いた。
[分離材の評価]
(低分子タンパク質の非特異吸着)
実施例及び比較例の各分離材0.2gを、インスリン(Mw5800)濃度24mg/mLのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)20mLに投入し、24時間室温で攪拌を行った後、遠心分離で上澄みをとり、分光光度計でろ液のインスリン濃度より、粒子に吸着したインスリン量を算出した。インスリンの濃度は分光光度計により280nmの吸光度から確認した。結果を表1に示す。
(イオン交換基の導入)
実施例及び比較例の各分離材20gを、5Mの水酸化ナトリウム水溶液200mLに投入し、室温で1時間放置した水溶液aを調製した。水溶液aを、ジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩60gを含む水溶液200mLに添加し、水溶液の温度を70℃まで上げ、撹拌しながら8時間反応させた。反応終了後、濾過により分離材を取り出し、水/エタノール(体積比5/1)で3回洗浄し、ジエチルアミノエチル(DEAE)基をイオン交換基として有するDEAE変性分離材を得た。DEAE変性分離材のモード細孔径、空隙率及び比表面積は、水銀圧入法にて測定した。結果を表2に示す。
(5%圧縮変形弾性率)
DEAE変性分離材の5%圧縮変形弾性率を上述の方法で測定した。結果を表2に示す。
(通液性)
DEAE変性分離材をメタノールに分散して濃度30質量%のスラリーを調製した。このスラリーをφ7.8×300mmのステンレスカラムに15分かけて充填し、充填カラムを得た。その後、充填カラムに流速を変えながら水を流し、流速とカラム圧との関係を測定し、0.3MPa時の通液速度(線流速)を測定した。結果を表2に示す。
(動的吸着量)
20mmol/LのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)を充填カラムに10カラム容量流した。その後、BSA濃度2mg/mLの20mmol/LのTris−塩酸緩衝液を流し、UV測定によりカラム出口でのBSA濃度を測定した。カラム入口と出口のBSA濃度が一致するまで液を流し、5カラム容量分の1M NaCl Tris−塩酸緩衝液で希釈した。10%breakthroughにおける動的吸着量を以下の式を用いて算出した。結果を表1に示す。
q10=cfF(t10−t0)/VB
q10:10%breakthroughにおける動的吸着量(mg/mL wet resin)
cf:注入しているBSA濃度
F:流速(mL/min)
VB:ベッド体積(mL)
t10:10%breakthroughにおける時間(min)
t0:BSA注入開始時間(min)
(耐アルカリ性)
DEAE変性分離材を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で24時間攪拌し、Tris−塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、カラムに上記条件にて充填した。BSAの10%breakthrough動的吸着量を測定し、アルカリ処理前の動的吸着量と比較した。動的吸着量の減少が3%未満である場合を「A」、3〜20%を「B」、20%超を「C」とした。結果を表2示す。
(耐久性評価)
800cm/hの流速で水を充填カラムに流し、カラム圧を測定後、3000cm/hに流速を上昇させ、1h通液させた。再度800cm/hにカラム圧を下げた際に、カラム圧が初期値(3000cm/hに流速を上げる前)より10%以上上昇した場合を「B」、10%未満である場合を「A」とした。結果を表2に示す。
Figure 2020022940
Figure 2020022940
表1より、実施例の分離材は、多孔質ポリマー粒子表面が水酸基を有する架橋高分子で被覆され、かつ、多孔質ポリマー粒子に鎖状親水性高分子がグラフトされていることで、低分子タンパク質の非特異吸着を充分に低減できることが確認できた。また、表2より、実施例の分離材は、高い動的吸着量及び良好な通液性を示し、耐アルカリ性及び耐久性にも優れることがわかった。

Claims (13)

  1. 多孔質ポリマー粒子と、前記多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を備え、
    前記被覆層が、水酸基を有する架橋高分子と、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子と、を含み、
    前記多孔質ポリマー粒子に前記鎖状親水性高分子がグラフトされている、分離材。
  2. 前記水酸基を有する架橋高分子が、多糖類又はその変性体由来の架橋高分子である、請求項1に記載の分離材。
  3. 前記多糖類が、アガロース、デキストラン又はプルランである、請求項2に記載の分離材。
  4. 前記多孔質ポリマー粒子が、スチレン系モノマーに由来する構造単位を有するポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の分離材。
  5. 平均粒径が10〜300μmであり、モード細孔径が0.05〜0.6μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離材。
  6. 空隙率が40〜70体積%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離材。
  7. 比表面積が20m/g以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分離材。
  8. 粒径の変動係数が5〜15%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分離材。
  9. 前記水酸基を有する架橋高分子の被覆量が、前記多孔質ポリマー粒子の1g当たり30〜500mgである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分離材。
  10. 前記鎖状親水性高分子のグラフト密度が、0.01〜0.5chain/nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分離材。
  11. 当該分離材が充填されたカラムに、該カラムの圧力が0.3MPaとなるように水を通液させたときに、水の通液速度が800cm/h以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分離材。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の分離材を備えるカラム。
  13. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の分離材の製造方法であって、
    多孔質ポリマー粒子の表面に水酸基を有する高分子を吸着し、当該高分子を架橋する工程と、
    前記多孔質ポリマー粒子に、水酸基又はポリエチレングリコール鎖を有する鎖状親水性高分子をグラフトする工程と、を備える、方法。
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