JP2020022934A - プラスチック成形品の塗装方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水性塗料を用いて低VOC化を図りつつ、3コート1ベークによる塗装方法を採用しても、プラスチック成形品上に高明度であり、かつ、優れた仕上がり外観、耐タレ性、耐ワキ性および耐水性を兼ね備えた複層塗膜を形成可能な、プラスチック成形品の塗装方法の提供。【解決手段】プラスチック成形品に水性白色プライマー、水性干渉色ベースコート塗料、クリヤーコート塗料を順次塗装し、形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させるプラスチック成形品の塗装方法であって、水性白色プライマーが水性ポリオレフィン系樹脂、水性アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、ジエステル化合物、及び白色顔料を含有し、水性白色プライマーを60℃で3分間加熱したときの粘度が100〜1000Pa・sの範囲内、かつ白色プライマー層の吸水率が50質量%以下である特性を有する塗装方法。【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチック成形品の塗装方法に関する。
プロピレン樹脂などのプラスチック成形品は、軽量でありかつ機械的強度等に優れ、バンパーなどの自動車部品として多く使用されている。該プラスチック成形品は、通常、プライマー塗料、ベース塗料及びクリヤー塗料が塗装される。このうちプライマー塗料は、プラスチック成形品とベース塗料の密着性を向上させる機能を有する塗料である。
また、プライマー塗料、ベース塗料及びクリヤー塗料を用いてホワイトパール色を形成する場合、通常、プライマー塗料として白色のプライマー塗料が使用され、ベース塗料として光干渉性顔料を含有し、かつ下層の白色プライマー塗膜が透けて見えるベース塗料が使用されるが、塗膜の質感の観点から、一般に上記白色プライマー塗膜が高明度の白色塗膜であることが求められる。
また、最近は環境保護の観点から、プライマー塗料及びベース塗料として水性塗料を使用することが望まれている。下記特許文献1には、モノマー成分の35〜60重量%がグリシジル(メタ)アクリレートであるエポキシ基含有アクリル樹脂を、樹脂固形分の重量基準で、5〜25重量%の割合で含有することを特徴とする、水性白色プライマー塗料組成物が開示されている。
特開2010−241911号公報
しかし、特許文献1に開示された技術では、優れた仕上がり外観、耐タレ性、耐ワキ性及び耐水性を兼ね備えた複層塗膜を得られないという問題点がある。
したがって本発明は、水性塗料を用いて低VOC化を図りつつ、3コート1ベークによる塗装方法を採用しても、プラスチック成形品上に高明度であり、かつ、優れた仕上がり外観、耐タレ性、耐ワキ性及び耐水性を兼ね備えた複層塗膜を形成可能な、プラスチック成形品の塗装方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、プラスチック成形品に水性白色プライマー(I)、水性干渉色ベースコート塗料(II)およびクリヤーコート塗料(III)を順次塗装し、形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる3コート1ベークによる塗装方法において、前記水性白色プライマー(I)の構成を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)プラスチック成形品に水性白色プライマー(I)を塗装し、白色プライマー層を形成する工程、
(2)前記白色プライマー層上に、水性干渉色ベースコート塗料(II)を塗装し、干渉色ベースコート層を形成する工程、
(3)前記干渉色ベースコート層上に、クリヤーコート塗料(III)を塗装し、クリヤーコート層を形成する工程、
(4)前記工程(1)〜(3)により形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、
を含むプラスチック成形品の塗装方法であって、
前記水性白色プライマー(I)が、前記(A)〜(F)成分の固形分中、水性ポリオレフィン系樹脂(A)を16〜50質量%、水性アクリル系樹脂(B)を26〜50質量%、ポリエステル樹脂(C)を4〜10質量%、メラミン樹脂(D)を2.5〜10質量%、ブロックポリイソシアネート化合物(E)を4〜20質量%および下記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)を2.5〜10質量%含有し、さらに白色顔料(G)を前記(A)〜(F)成分の固形分100質量部に対して100〜200質量部の範囲内で含有し、
前記水性白色プライマー(I)を60℃で3分間加熱したときの粘度が100〜1000Pa・s(シェアレート0.1秒−1)の範囲内であり、かつ前記白色プライマー層の20℃、2分間水浸漬後における吸水率が50質量%以下である
ことを特徴とするプラスチック成形品の塗装方法。
Figure 2020022934
[式中、R及びRは独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜20の整数であり、m個のRは互いに同一であっても異なっていてもよい]
本発明によれば、プラスチック成形品に水性白色プライマー(I)、水性干渉色ベースコート塗料(II)およびクリヤーコート塗料(III)を順次塗装し、形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる3コート1ベークによる塗装方法において、前記水性白色プライマー(I)に、水性ポリオレフィン系樹脂(A)、水性アクリル系樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、メラミン樹脂(D)、ブロックポリイソシアネート化合物(E)、ジエステル化合物(F)および白色顔料(G)を特定量で含有させ、かつ、水性白色プライマー(I)の粘度およびプラスチック成型品に水性白色プライマー(I)を塗装して形成した白色プライマー層の吸水率を特定範囲に設定しているので、水性塗料を用いて低VOC化を図りつつ、3コート1ベークによる塗装方法を採用しても、プラスチック成形品上に高明度であり、かつ、優れた仕上がり外観、耐タレ性、耐ワキ性及び耐水性を兼ね備えた複層塗膜を形成可能な、プラスチック成形品の塗装方法を提供することができる。
とくに、本発明の塗装方法では、水性塗料を用いていることから、低VOC化を図ることができる。また、水性白色プライマー(I)を60℃で3分間加熱したときの粘度が100〜1000Pa・s(シェアレート0.1秒−1)の範囲内であることから、白色プライマー層のフロー性に優れるという理由で、優れた仕上がり外観、タレおよびワキ性を提供できる。さらに、白色プライマー層の20℃、2分間水浸漬後における吸水率が50質量%以下であることから、水性干渉色ベースコート塗料(II)からの水移行が抑制され、これにより白色プライマー層の過度の粘度低下及び水性干渉色ベースコート層の過度の粘度上昇が抑制されるという理由で、優れた仕上がり外観を提供できる。
本発明のプラスチック成形品の塗装方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう)は、下記工程(1)〜(4)を順次行なうものである。
(1)プラスチック成形品に水性白色プライマー(I)を塗装し、白色プライマー層を形成する工程、
(2)前記白色プライマー層上に、水性干渉色ベースコート塗料(II)を塗装し、干渉色ベースコート層を形成する工程、
(3)前記干渉色ベースコート層上に、クリヤーコート塗料(III)を塗装し、クリヤーコート層を形成する工程、および
(4)前記工程(1)〜(3)により形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる工程。
本発明の方法では、とくに前記水性白色プライマー(I)が前記(A)〜(F)成分の固形分中、水性ポリオレフィン系樹脂(A)を16〜50質量%、水性アクリル系樹脂(B)を26〜50質量%、ポリエステル樹脂(C)を4〜10質量%、メラミン樹脂(D)を2.5〜10質量%、ブロックポリイソシアネート化合物(E)を4〜20質量%および下記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)を2.5〜10質量%含有し、さらに白色顔料(G)を前記(A)〜(F)成分の固形分100質量部に対して100〜200質量部の範囲内で含有し、前記水性白色プライマー(I)を60℃で3分間加熱したときの粘度が100〜1000Pa・s(シェアレート0.1秒−1)の範囲内であり、かつ前記白色プライマー層の20℃、2分間水浸漬後における吸水率が50質量%以下であることを特徴とする。
Figure 2020022934
[式中、R及びRは独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜20の整数であり、m個のRは互いに同一であっても異なっていてもよい]
以下、本発明の方法について詳細に説明する。
(プラスチック成形品)
本発明の方法におけるプラスチック成形品としては、特に限定されないが、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外板部や、家庭電化製品の外板部などに使用される各種プラスチック成形品などが挙げられる。
プラスチック成形品の材質としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2〜10のオレフィンの少なくとも1種を重合せしめてなるポリオレフィンが特に好適であるが、これらに限られるものではなく、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ナイロンなどの材質であってもよい。また、これらのプラスチック成形品は、予め、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行っておくことができる。
(水性白色プライマー(I))
本発明の方法に使用される水性白色プライマー(I)は、水性ポリオレフィン系樹脂(A)、水性アクリル系樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、メラミン樹脂(D)、ブロックポリイソシアネート化合物(E)、前記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)および白色顔料(G)を含有する。
水性ポリオレフィン系樹脂(A)としては、オレフィン系重合体を主骨格とし、その分子中にカルボキシル基などの親水性基を導入してなる樹脂を使用することができる。具体的には、重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物で変性されたオレフィン系重合体が包含され、例えば、オレフィン系重合体に重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物を既知の方法によりグラフト重合することにより得られたものが挙げられる。
変性前のオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィン系単量体を(共)重合してなる重合体、又はこれらのオレフィン系単量体とその他の単量体(例えば、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリルなど)とを共重合してなる共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらのオレフィン系重合体は、一般に30000〜150000、特に50000〜120000、さらに特に60000〜110000の範囲内の重量平均分子量を有していることが好ましい。上記オレフィン系重合体の重量平均分子量は、オレフィン系重合体メーカーのカタログ値を用いることができる。
オレフィン系重合体の変性に使用される重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物は、1分子中に1個の重合性不飽和結合と少なくとも2個のカルボキシル基又はその酸無水基を有する化合物であり、例えば、マレイン酸又はその無水物、イタコン酸又はその無水物、シトラコン酸又はその無水物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
オレフィン系重合体への重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物のグラフト重合反応はそれ自体既知の方法により行なうことができる。その際の重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物の使用割合は、得られる変性されたポリオレフィン系樹脂の酸価が通常10〜60mgKOH/g、特に10〜30mgKOH/g、さらに特に10〜20mgKOH/gの範囲内となるようなものであることが好ましい。
また、オレフィン系重合体は塩素化されていてもよく、この塩素化はグラフト重合の前又は後に行なうことができる。
また、前記オレフィン系重合体は、必要に応じて、さらにアクリル変性されていてもよく、該アクリル変性に供し得る重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマー;さらにスチレンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを、そして「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。
前記アクリル変性は、例えば、まずオレフィン系重合体中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなどを反応させてオレフィン系重合体に重合性不飽和基を導入し、次いで該重合性不飽和基に1種もしくはそれ以上の他の重合性不飽和モノマーを共重合させることによりおこなうことができる。アクリル変性する場合の前記重合性不飽和モノマーの使用量は、他成分との相溶性や形成塗膜の付着性などの観点から、得られるポリオレフィン系樹脂の固形分重量を基準にして30質量%以下、好ましくは0.05〜25質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%の範囲内とすることが好ましい。
また、得られる水性ポリオレフィン系樹脂(A)は、その水溶化又は水分散化を容易にするために、導入されたカルボキシル基の一部又は全部をアミン化合物で中和することが好ましい。中和に使用しうるアミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミンなどが挙げられる。水溶化又は水分散化のために、これらのアミン化合物による中和と共に、界面活性剤を併用することも可能である。
水性アクリル系樹脂(B)は、水酸基含有アクリル樹脂を好適に使用することができる。また、水への溶解性乃至分散性、架橋性等のために、カルボキシル基を有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体及び必要に応じてその他の単量体を、既知の重合方法、例えば溶液重合法等により、重合することにより得ることができる。
水酸基含有単量体は、水酸基及び重合性不飽和基を有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜10のアルキレングリコールとのモノエステル化物等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のモノアルコールとのモノエステル化物等を挙げることができる。
その他の単量体としては、水酸基含有単量体及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体以外の、重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基価が10〜100mgKOH/g程度、好ましくは30〜70mgKOH/g程度であり、酸価が10〜100mgKOH/g程度、好ましくは20〜50mgKOH/g程度であり、数平均分子量が2,000〜100,000程度、好ましくは10,000〜70,000程度であるのが適当である。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー株式会社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
本発明の方法に使用されるポリエステル樹脂(C)は、通常、多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得ることができる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物(無水物を含む)であり、また、多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、それぞれこの分野で通常使用されるものを使用することができる。さらに、一塩基酸、高級脂肪酸、油成分などで変性することもできる。
ポリエステル樹脂は水酸基を有することができ、その導入は、2価アルコールと共に3価以上のアルコールを併用することによって行うことができる。また、ポリエステル樹脂には、水酸基と共にカルボキシル基を併有していてもよく、一般に、1,000〜100,000程度、好ましくは1,500〜70,000程度の範囲内の重量平均分子量を有していることが好ましい。
メラミン樹脂(D)は、具体的には、メラミンにホルムアルデヒドを反応してなるメチロール化メラミン樹脂;メチロール化メラミン樹脂に炭素数1〜10のモノアルコールを反応させて得られる部分又はフルエーテル化メラミン樹脂などが挙げられる。これらのメラミン樹脂はイミノ基が併存しているものも使用できる。これらは疎水性及び親水性のいずれでも差し支えない。特に、重量平均分子量が400〜6,000であることが好ましく、500〜4,000であることがより好ましく、600〜2,000であることがさらに好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加してブロック化して得られるものである。
ポリイソシアネート化合物としては、未反応のイソシアネート基を有する親水性のポリイソシアネート化合物が挙げられ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)などの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添MDIなどの脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネート化合物を不揮発性化し、毒性を低くした形態の化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレット体、ウレトジオン体、イソシアヌレート体又はアダクト体;比較的低分子のウレタンプレポリマー;などのポリイソシアネート化合物を、親水性化したものを挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物の親水性化は、例えば、当該化合物にカルボキシル基、スルホン酸基、第三級アミノ基などの親水性基を導入し、中和剤、例えば、ジメチロールプロピオン酸等のヒドロキシカルボン酸、アンモニア、第三アミンなどで中和することによって、行うことができる。また、例えば、ポリイソシアネート化合物に、界面活性剤を混合乳化させて、いわゆる自己乳化型のポリイソシアネート化合物として使用することもできる。
親水性のポリイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、「バイヒジュール3100」(商品名、住化バイエルウレタン社製、親水性ヘキサメチレンジイソシアヌレート)などが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
なかでも、好ましいブロック剤としては、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物のブロック化は、該化合物をブロック剤でブロックした後、一般に疎水性であることから、例えば、適当な乳化剤及び/又は保護コロイド化剤を用いて水分散することにより行うことができる。
ジエステル化合物(F)は、下記一般式(1)で表される。
Figure 2020022934
[式中、R及びRは独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜20の整数であり、m個のRは互いに同一であっても異なっていてもよい]
ジエステル化合物(F)は、特に、上層の水性干渉色ベースコート塗料(II)から白色プライマー層への水移行を抑制し、これにより白色プライマー層の過度の粘度低下及び水性干渉色ベースコート層の過度の粘度上昇が抑制されるという理由で、高明度、優れた仕上がり外観、耐タレ性および耐ワキ性を有する複層塗膜を形成できるという作用効果を発現する。
前記式(1)において、R又はRで表される炭化水素基としては、炭素数5〜11のアルキル基が好ましく、炭素数5〜9のアルキル基がより好ましく、炭素数6〜8のアルキル基がさらに好ましい。特に、R及びRが、炭素数6〜8の分岐状のアルキル基である場合、塗料を比較的長期間貯蔵した後に塗装した場合にも、形成される塗膜に優れた成膜性を付与することができる。また、Rは好ましくはエチレンであり、さらに、mは特に4〜10の整数であることが好ましい。
ジエステル化合物(F)は、例えば、2個の末端水酸基を有するポリオキシアルキレングリコールと炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸とをエステル化反応させることにより得ることができる。
ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、ポリブチレングリコールなどを挙げることができ、この中でも特に、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。これらのポリオキシアルキレングリコールは、耐水性等の点から、一般に約120〜約800、特に約150〜約600、さらに特に約200〜約400の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
また、前記炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸としては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、3−メチルペンタン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸、デカン酸、2−エチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸などを挙げることができる。この中でも、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸、デカン酸、2−エチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸などの炭素数5〜9のアルキル基を有するモノカルボン酸が好ましく、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸などの炭素数6〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸がより好ましく、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸などの炭素数6〜8の分岐状のアルキル基を有するモノカルボン酸がさらに好ましい。
前記ポリオキシアルキレングリコールと前記モノカルボン酸とのジエステル化反応はそれ自体既知の方法で行なうことができる。前記ポリオキシアルキレングリコール及び前記モノカルボン酸はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
得られるジエステル化合物(F)は、一般に約320〜約1,000、特に約400〜約800、さらに特に約500〜約700の範囲内の分子量を有することが好ましい。
白色顔料(G)は、例えば、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンなど)、鉛白、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポンなどを挙げることができる。これらの内、耐薬品性、高白色度を得やすい点から酸化チタンが好ましい。該白色顔料としては、平均粒子径が、約0.05〜2.0μm、特に0.1〜1.0μm程度であるルチル型の酸化チタンが最も好適である。
本発明の方法に使用される水性白色プライマー(I)は、前記(A)〜(F)成分の固形分中、前記水性ポリオレフィン系樹脂(A)を16〜50質量%、前記水性アクリル系樹脂(B)を26〜50質量%、前記ポリエステル樹脂(C)を4〜10質量%、前記メラミン樹脂(D)を2.5〜10質量%、前記ブロックポリイソシアネート化合物(E)を4〜20質量%および前記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)を2.5〜10質量%含有し、さらに前記白色顔料(G)を前記(A)〜(F)成分の固形分100質量部に対して100〜200質量部の範囲内で含有することが必要である。
これら成分の量的関係を一つでも満たさない場合は、本発明の効果を奏することができない。
前記水性白色プライマー(I)は、前記(A)〜(F)成分の固形分中、前記水性ポリオレフィン系樹脂(A)を好ましくは23〜43質量%、前記水性アクリル系樹脂(B)を好ましくは27〜49質量%、前記ポリエステル樹脂(C)を好ましくは5〜9質量%、前記メラミン樹脂(D)を好ましくは4〜7質量%、前記ブロックポリイソシアネート化合物(E)を好ましくは8〜16質量%および前記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)を好ましくは4〜7質量%含有し、さらに前記白色顔料(G)を前記(A)〜(F)成分の固形分100質量部に対して好ましくは120〜180質量部の範囲内で含有することが好ましい。
また前記水性白色プライマー(I)は、前記(A)〜(F)成分の固形分中、前記水性ポリオレフィン系樹脂(A)をより好ましくは28〜38質量%、前記水性アクリル系樹脂(B)をより好ましくは32〜44質量%、前記ポリエステル樹脂(C)をより好ましくは6〜8質量%、前記メラミン樹脂(D)をより好ましくは4〜6質量%、前記ブロックポリイソシアネート化合物(E)をより好ましくは10〜14質量%および前記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)をより好ましくは4〜6質量%含有し、さらに前記白色顔料(G)を前記(A)〜(F)成分の固形分100質量部に対してより好ましくは140〜160質量部の範囲内で含有することがとくに好ましい。
前記水性白色プライマー(I)の固形分含量は、通常、10〜80質量%程度とするのがよい。前記水性白色プライマー(I)は、水性タイプであるので、低VOC化などの観点から好適である。
前記水性白色プライマー(I)は、プラスチック成形品上に直接塗装される塗料であり、JIS Z 8729(2004年)に規定されるL*a*b*表色系に基づく明度(L*値)として85以上という白色度が高い塗膜を形成できる。
(水性干渉色ベースコート塗料(II))
本発明の方法に使用される水性干渉色ベースコート塗料(II)は、干渉性顔料を水性干渉色ベースコート塗料(II)の全樹脂固形分100質量部に対して例えば1〜80質量部、好ましくは2〜60質量部の範囲で含有する。
前記干渉性顔料としては、例えば、天然マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレーク等の半透明の基材を金属酸化物で被覆した顔料を使用することができる。
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、基材表面に金属酸化物を被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材であり、人工マイカとは、SiO、MgO、Al、KSiF、NaSiF等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。具体的には、フッ素系雲母、カリウム四ケイ素雲母、ナトリウム四ケイ素雲母、Naテニオライト、LiNaテニオライト等が知られている。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面に金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを、基材とは屈折率が異なる金属酸化物で被覆したものである。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラス基材に金属酸化物を被覆したものであって、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じて粒子感を発現する。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
上記干渉性顔料は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。上記干渉性顔料は、単独又は2種以上組み合わせて用いられうる。
水性干渉色ベースコート塗料(II)は、白色度を大きく低下させない範囲で、その他の顔料をさらに含むことができる。前記その他の顔料として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、亜鉛華、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の無機系又は有機系のソリッドカラー顔料等が挙げられる。前記顔料は、単独又は2種以上組み合わせて用いられうる。
水性干渉色ベースコート塗料(II)は、樹脂成分を含有する。樹脂成分としては、例えば、前記水性白色プライマー(I)の項で説明した、水酸基含有水性アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂が挙げられる。また、架橋剤として前記水性白色プライマー(I)の項で説明した、メラミン樹脂(D)、ブロックポリイソシアネート化合物(E)等を使用できる。
前記架橋剤は、水性干渉色ベースコート塗料(II)の全樹脂固形分100質量部に対して、通常5〜50質量部、好ましくは20〜40質量部の範囲で含有される。これら範囲の下限値は、塗膜の凝集剥離、リコート付着性の点で意義がある。これら範囲の上限値は、得られる塗膜の屈曲性の点で意義がある。
水性干渉色ベースコート塗料(II)には、必要に応じて各種塗料用添加剤を適宜選択して配合することができる。
(クリヤーコート塗料(III))
本発明の方法に使用されるクリヤーコート塗料(III)は、上塗りクリヤーコート用の塗料としてそれ自体公知の塗料をいずれも使用でき、例えば、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂と、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤とを、水及び/又は有機溶剤に溶解ないし分散させて塗料化したものを、好適に使用できる。
クリヤーコート塗料(III)は、その塗膜を通じて下層の水性干渉色ベースコート塗料(II)の塗膜、更には水性白色プライマー(I)の塗膜を観察できる透明性を有するものであるが、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、メタリック顔料、体質顔料、染料、紫外線吸収剤などを適宜含有することができる。
次に本発明の方法の各工程について説明する。
本発明の方法における工程(1)は、プラスチック成形品に前記水性白色プライマー(I)を塗装し、白色プライマー層を形成する工程である。
白色プライマー層は、前記水性白色プライマー(I)を、公知の塗装方法により塗装することにより形成することができる。塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等を挙げることができる。塗装膜厚は、通常、乾燥膜厚として、5〜45μm程度、好ましくは25〜40μm程度の範囲である。
形成された白色プライマー層は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、45〜90℃程度がより好ましく、50〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。また、予備加熱をする前に、適宜、セッティングを施してもよい。
また本発明の方法では、水性白色プライマー(I)を60℃で3分間加熱したときの粘度が100〜1000Pa・s(シェアレート0.1秒−1)の範囲内であり、かつ前記白色プライマー層の20℃、2分間水浸漬後における吸水率が50質量%以下であることが必要である。
前記粘度が100Pa・s未満では、耐タレ性及び耐ワキ性が悪化し、逆に1000Pa・sを超えると仕上がり外観が悪化する。前記粘度は、500〜1000Pa・sがさらに好ましい。
なお、前記粘度は、水性白色プライマー(I)について、シェアレート0.1秒−1において、測定温度を3分間で20℃から60℃まで変化させたときの、60℃における粘度を、粘弾性測定装置「HAAKE RheoStress RS150」(商品名、HAAKE社製)を用いて測定することができる。
また、白色プライマー層の20℃、2分間水浸漬後における吸水率が、50質量%を超えると、水性干渉色ベースコート塗料(II)から白色プライマー層への水移行が抑制されず、本発明の効果を奏することができない。前記吸水率は、35〜45質量%がさらに好ましい。
なお、前記吸水率は、以下の方法により測定できる。あらかじめ質量(W1)を測定しておいたブリキ板上に、水性白色プライマー(I)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、60℃で3分間プレヒートを行なった後、水性白色プライマー(I)が塗装されたブリキ板の質量(W2)を測定する。その後、水性白色プライマー(I)が塗装されたブリキ板を20℃の脱イオン水に2分間浸漬した後に取り出し、ブリキ板に付着している余分な水分をろ紙で軽く拭った後の該ブリキ板の質量(W3)を測定する。吸水率は以上のW1〜W3の質量測定結果から下記式(1)により求めた。
吸水率(%)={(W3−W1)/(W2−W1)−1}×100 (1)
前記粘度を調整するには、水性アクリル系樹脂(B)の配合量及び分子量を調整する等の方法がある。
前記吸水率を調整するには、ジエステル化合物(F)の配合量を調整する等の方法がある。
本発明の方法における工程(2)は、前記白色プライマー層上に、水性干渉色ベースコート塗料(II)を塗装し、干渉色ベースコート層を形成する工程である。
干渉色ベースコート層の膜厚は、通常、硬化膜厚として、5〜30μm程度、好ましくは10〜20μm程度の範囲内とすることができる。塗装後、適宜、セッティングを施してもよい。
本発明の方法における工程(3)は、前記干渉色ベースコート層上に、クリヤーコート塗料(III)を塗装し、クリヤーコート層を形成する工程である。該塗装は、必要に応じて、前記干渉色ベースコート層の予備加熱を行った後に行うことができる。
前記クリヤーコート層の膜厚は、通常、硬化膜厚として、10〜40μm程度、好ましくは20〜35μm程度の範囲内とすることができる。塗装後、適宜、セッティングを施してもよい。
本発明の方法における工程(4)は、前記工程(1)〜(3)により形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる工程である。
この3層の塗膜の焼き付け条件としては、通常、80〜130℃程度で、5〜60分間程度であるのが好ましい。かくして、高明度であり、かつ、優れた仕上がり外観、耐タレ性、耐ワキ性及び耐水性を兼ね備えた複層塗膜を、3コート1ベーク方式により、好適に形成することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものであり、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
実施例および比較例では、下記の各成分を使用した。
<水性ポリオレフィン系樹脂(A)>
塩素化ポリプロピレン(塩素含有率15%、マレイン酸変性量2.0%、ケン化価30mgKOH/g、重量平均分子量80,000)500部、n−ヘプタン150部、N−メチル−ピロリドン50部からなる混合物(50℃)に、ジメチルエタノールアミン12部、及びノニオン系界面活性剤(商品名「ノイゲンEA−140」、第一工業製薬社製)5部を仕込み、同温度で1時間攪拌した後、脱イオン水2,000部を徐々に仕込み、さらに1時間攪拌を行った。次に、70℃の温度で減圧して、n−ヘプタン及び脱イオン水の合計600部を留去して、固形分24%の水性ポリオレフィン系樹脂(A)を得た。
<水性アクリル系樹脂(B)>
撹拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル40部、イソブチルアルコール30部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから下記の単量体等の混合物を3時間かけて滴下した。
スチレン 10部
メチルメタクリレート 38部
n−ブチルアクリレート 25部
2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト 20部
アクリル酸 7部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 1部
イソブチルアルコール 5部
滴下終了後、更に30分間100℃に保持した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部とエチレングリコールモノブチルエーテル10部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。さらに100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却し、イソブチルアルコール15部を加え、75℃になったところでN,N−ジメチルアミノエタノール4部を加え、30分間撹拌して固形分含量50%の水性アクリル系樹脂(B)溶液を得た。この水性アクリル系樹脂(B)の水酸基価は86mgKOH/g、酸価は54.5mgKOH/g、数平均分子量は20,000であった。
<ポリエステル樹脂(C)>
トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸およびアジピン酸を用いて常法によりエステル化反応せしめた。数平均分子量4500、水酸基価120、酸価10。
<メラミン樹脂(D)>
重量平均分子量1200、イミノ基含有メチルブチル混合エーテル化メラミン。
<ブロックポリイソシアネート化合物(E)>
ヘキサメチレンジイソシアネ−トをマロン酸ジメチルでフルブロックした化合物。
<前記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)>
ジエステル化合物(F−1):ポリオキシエチレングリコールとn−ヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)において、R及びRがそれぞれペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが5である化合物。分子量:434。
ジエステル化合物(F−2):ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とのジエステル化合物。前記一般式(1)において、R及びRがそれぞれ2−エチルペンチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である化合物。分子量:578。
<白色顔料(G)>
ルチル型酸化チタン(商品名「JR−806」、テイカ社製)。
前記各成分(A)〜(G)を、下記表1に示す配合割合(固形分の質量%)で混合し、ミキサーで十分に攪拌し、各種水性白色プライマー(I)を得た。水性白色プライマー(I)の60℃で3分間加熱したときの粘度、および該水性白色プライマー(I)塗膜の20℃、2分間水浸漬後の吸水率を、前記の方法により測定した。結果を表1に併せて示す。
続いて、本発明の方法の工程(1)を行った。
すなわち、プラスチック成形体として、黒色のポリプロピレンを用い、脱脂処理し、これに水性白色プライマー(I)を、乾燥膜厚で30μmになるようにエアスプレー塗装した。得られた塗装塗膜を、室温で3分間放置してセッティングしてから、60℃、3分間のプレヒートを施し、白色プライマー層を形成した。
次に、工程(2)として、工程(1)で得られた白色プライマー層上に、水性干渉色ベースコート塗料(II)である、水性の熱硬化性透明着色塗料(商品名「WBC−713T No.062」、関西ペイント社製)を硬化膜厚が15μmになるように非静電塗装し、室温で2分間放置してセッティングしてから、80℃、3分間のプレヒート加熱を施し、干渉色ベースコート層を形成した。
続いて、工程(3)として、工程(2)で得られた干渉色ベースコート層上に、クリヤーコート塗料(III)である、アクリル樹脂・ウレタン樹脂系熱硬化性クリヤー塗料(商品名「ソフレックス7175」、関西ペイント社製)を硬化膜厚が25μmになるように非静電塗装し、室温で7分間放置してセッティングした。
次に、工程(4)として、工程(1)〜(3)により形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化した。硬化条件は、120℃、30分間とした。
得られた各サンプルに対し、以下の項目を評価した。
耐タレ性及び耐ワキ性評価用試験板の作成
11cm×45cmの大きさとしたポリプロピレン板の長尺側の端部から3cmの部分に、直径5mmのポンチ孔を、2cm間隔で21個一列状に設けたものを使用し、該ポリプロピレン板上に、水性白色プライマー(I)を、長尺方向にほぼ30μm〜60μmの膜厚が得られるように膜厚勾配をつけて塗装し、3分間放置後、60℃で3分間プレヒートを行なった。
次いで、該未硬化の白色プライマー層上に、水性干渉色ベースコート塗料「WBC−713T No.062」(製品名、関西ペイント社製)を、乾燥膜厚で15μmとなるように非静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
さらに、該干渉色ベースコート層上に、クリヤーコート塗料「ソフレックス7175」(製品名、関西ペイント社製)を、乾燥膜厚で25μmとなるように非静電塗装し、該塗装板をほぼ垂直に立てて、塗装後7分間経過後、120℃で30分間加熱して、水性白色プライマー層、干渉色ベースコート層及びクリヤーコート層を硬化させることにより試験板を作製した。
<耐タレ性>
得られた各試験板のポンチ孔下端部から5mmの塗膜のタレが観察される位置を調べ、該位置の膜厚[タレ限界膜厚(μm)]を測定し、以下の基準で耐タレ性の評価を行なった。タレ限界膜厚が大きいほど耐タレ性は良好である。
◎:タレ限界膜厚が40μm以上
○:タレ限界膜厚が35μm以上40μm未満
×:タレ限界膜厚が35μm未満
<耐ワキ性>
得られた各試験板のワキが観察される位置を調べ、該位置の膜厚[ワキ限界膜厚(μm)]を測定し、以下の基準で耐ワキ性の評価を行なった。ワキ限界膜厚が大きいほど耐ワキ性は良好である。
◎:ワキ限界膜厚が40μm以上
○:ワキ限界膜厚が35μm以上40μm未満
×:ワキ限界膜厚が35μm未満
<仕上がり(平滑性)>
平滑性:試験板について、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWd値を用いて評価した。Wd値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。Wd値は小さいほどよいが、少なくとも、27未満という条件を満たす必要がある。
A:21未満
B:21以上24未満
C:24以上27未満
D:27以上30未満
E:30以上
耐水性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
結果を表1及び表2に併せて示す。なお、比較例11、12は、ジエステル化合物の替わりにポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製商品名「サンニックス GP−1000」)を用いた。
Figure 2020022934
Figure 2020022934
表1及び表2に示すように、実施例では、プラスチック成形品に水性白色プライマー(I)、水性干渉色ベースコート塗料(II)およびクリヤーコート塗料(III)を順次塗装し、形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる3コート1ベークによる塗装方法において、前記水性白色プライマー(I)の構成を前記のように特定化しているので、各比較例に比べて、水性塗料を用いて低VOC化を図りつつ、3コート1ベークによる塗装方法を採用しても、プラスチック成形品上に高明度であり、かつ、優れた仕上がり外観、耐タレ性および耐ワキ性を兼ね備えた複層塗膜が形成されることが判明した。

Claims (1)

  1. (1)プラスチック成形品に水性白色プライマー(I)を塗装し、白色プライマー層を形成する工程、
    (2)前記白色プライマー層上に、水性干渉色ベースコート塗料(II)を塗装し、干渉色ベースコート層を形成する工程、
    (3)前記干渉色ベースコート層上に、クリヤーコート塗料(III)を塗装し、クリヤーコート層を形成する工程、
    (4)前記工程(1)〜(3)により形成された3層の塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、
    を含むプラスチック成形品の塗装方法であって、
    前記水性白色プライマー(I)が、前記(A)〜(F)成分の固形分中、水性ポリオレフィン系樹脂(A)を16〜50質量%、水性アクリル系樹脂(B)を26〜50質量%、ポリエステル樹脂(C)を4〜10質量%、メラミン樹脂(D)を2.5〜10質量%、ブロックポリイソシアネート化合物(E)を4〜20質量%および下記一般式(1)で表されるジエステル化合物(F)を2.5〜10質量%含有し、さらに白色顔料(G)を前記(A)〜(F)成分の固形分100質量部に対して100〜200質量部の範囲内で含有し、
    前記水性白色プライマー(I)を60℃で3分間加熱したときの粘度が100〜1000Pa・s(シェアレート0.1秒−1)の範囲内であり、かつ前記白色プライマー層の20℃、2分間水浸漬後における吸水率が50質量%以下である
    ことを特徴とするプラスチック成形品の塗装方法。
    Figure 2020022934
    [式中、R及びRは独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは3〜20の整数であり、m個のRは互いに同一であっても異なっていてもよい]
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