上記特許文献1の磁化器は、検出器の前段に配置されている。つまり、磁化器と検出器とが別々に構成され、それらが検証物の搬送方向に離間している。したがって、磁性体検出装置全体としての寸法(とくに、検証物の移動方向の寸法)が比較的大きくなる傾向にある。また、磁化器と検出器とを別々に構成しているので、部品点数が多い。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、部品点数を削減するとともに小型化した磁性体検出装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、所定の搬送路(L)に沿って第1方向(前後方向)へ移動する検証物(OB)に含まれる磁性体(MS)を検出するための磁性体検出装置(1、1A)であって、前記第1方向に直交する第2方向(左右方向)に延設された第1磁石(M1)であって、前記第1方向に交差し、且つ前記第2方向に直交する方向に磁化された第1磁石と、前記第1磁石から見て前記第1方向に離間した位置にて前記第2方向に延設されていて、前記第1磁石と協働して、所定の空間に磁界を形成する第2磁石(M2)と、前記第1磁石と前記第2磁石との間の前記磁界の磁力線経路内に配置された基板(22)、及び前記基板面にて前記第2方向に対して所定の角度だけ傾斜した方向へ延びる線状部分を有するように形成されていて、前記基板面内における前記第2方向に直交する方向の前記磁界の変化に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子(23、24、23−1、23−2、24−1、24−2)を有する磁気センサ回路(MC)と、を備え、前記第1磁石及び前記第2磁石により、前記磁気抵抗効果素子の飽和磁界より小さな強さの前記磁界が、前記磁気抵抗効果素子に対して前記基板の平面内の前記第2方向に直交する方向にバイアス磁界(H1x、H2x)として付与されるように、前記第1磁石、前記第2磁石及び前記磁気センサ回路を配置するとともに、前記第1磁石の近傍の所定の領域内にて前記検証物の磁性体が前記磁界の影響を受けて所定の状態に磁化されるように、前記第1磁石と前記検証物の搬送路との距離を前記第2磁石と前記搬送路との距離よりも小さく設定した、磁性体検出装置としたことにある。
この場合、前記検証物の磁性体の磁化状態が前記第2磁石の近傍の所定の領域内にて変化しないように、前記搬送路と前記第2磁石との距離を設定するとよい。
また、この場合、前記第2磁石から見て前記第1磁石とは反対方向に離間した位置にて前記第2方向に延設された第3磁石であって、前記第1方向に交差し、且つ前記第2方向に直交する方向に磁化されていて、前記第1磁石及び前記第2磁石と協働して、前記所定の空間に磁場を形成する第3磁石をさらに備え、前記第3磁石の近傍の所定の領域内にて前記検証物の磁性体が前記磁界の影響を受けて所定の状態に磁化されるように、前記第3磁石と前記検証物の搬送路との距離を前記第2磁石と前記搬送路との距離よりも小さく設定するとよい。
また、この場合、前記第1磁石の磁化方向と前記第3磁石の磁化方向とが同一方向であるとよい。
なお、本発明における第2磁石は、磁界の影響を受けて磁石としての性質を帯びる物体を含むものとする。
検証物が搬送路を通過する際、検証物の磁性体が磁気抵抗効果素子に近づくと、検証物の磁性体の影響を受けて、バイアス磁界が変化する。これにより、磁気抵抗効果素子の電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値の変化に基づいて、検証物の真偽を判定できる。
本発明においては、第1磁石の磁極面と搬送路との距離が、第2磁石の磁極面と搬送路との距離よりも小さく設定されている。これにより、検証物が、搬送路を通過する際、磁気抵抗効果素子に接近する前に、第1磁石によって、検証物の磁性体の磁化状態が所定の状態に矯正される。すなわち、検証物の流通過程において、その硬磁性が前記所定の状態とは異なる状態に磁化されていたとしても、予め、検証物の磁性体の磁化状態が矯正される。このように、検証物の磁性体の磁化状態を矯正することにより、真の検証物であれば、バイアス磁界の変化が所定の基準の変化に一致するので、磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化も、所定の基準の変化に一致する。よって、本発明によれば、検証物の真偽を高精度に判定できる。また、本発明に係る磁性体検出装置では、バイアス磁界を形成する第1磁石を用いて、検証物の磁性体の磁化状態を矯正するため、従来の磁性体検出装置のような磁化器を別途設ける必要がない。よって、本発明によれば、部品点数を削減できる。また、磁性体検出装置を小型化できる。
また、第1磁石及び第2磁石は、長尺状に形成されて第2方向にそれぞれ平行に延設されている。したがって、第1磁石及び第2磁石による磁力線は第2方向に直交する平面内にて楕円状に発生され、第1磁石及び第2磁石の形状、特に磁極面部分の形状に多少の誤差があっても、磁力線の方向は安定して、磁気抵抗効果素子を通過する磁力線は常に一定方向となる。その結果、磁気抵抗効果素子に付与される基板の平面内の第2方向に直交する方向のバイアス磁界が安定化し、磁性体の移動による磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の変化を安定化させることができ、磁性体を高精度に検出できるようになる。また、第1磁石と第2磁石の距離、姿勢などを調整することにより、磁力線の通過経路の形状を種々に変更することができ、磁気抵抗効果素子に対するバイアス磁界の設定が簡単になる。
また、本発明の他の特徴は、前記磁気抵抗効果素子は、前記基板面内における前記第2方向の同一位置にて互いに対向する第1磁気抵抗素子及び第2磁気抵抗素子を有し、前記第1磁気抵抗素子及び前記第2磁気抵抗素子に対する前記バイアス磁界が反対方向になるように、前記磁界を設定するとともに前記磁気センサ回路を配置した磁性体検出装置としたことにある。
これによれば、基板の平面内における第1磁気抵抗素子及び第2磁気抵抗素子の延設方向に直交する方向に付与されるバイアス磁界がほぼ反対方向であって同じ大きさになり、磁性体の第1方向への移動による第1磁気抵抗素子及び第2磁気抵抗素子の電気抵抗値の変化を正負反対方向にほぼ対称に変化させるようにでき、第1磁気抵抗素子及び第2磁気抵抗素子の電気抵抗値の変化を利用し易くすることができる。
また、本発明の他の特徴は、第1磁気抵抗素子(23)と第2磁気抵抗素子(24)を直列に接続し、両端に所定電圧を印加して第1磁気抵抗素子と第2磁気抵抗素子の接続点の電圧を取り出す電気回路(31)を備えたことにある。
これによれば、第1磁気抵抗素子及び第2磁気抵抗素子はハーフブリッジ接続されるので、大きな出力電圧を取り出すことができる。
また、本発明の他の特徴は、前記磁気抵抗効果素子は、さらに、前記基板面内において、前記第1磁気抵抗素子(23−1)及び前記第2磁気抵抗素子(24−1)から見て前記第2方向に離間した位置にそれぞれ設けられ、前記基板面内における前記第2方向の同一位置にて互いに対向する第3磁気抵抗素子及び第4磁気抵抗素子であって、前記基板面内における前記第2方向と直交する方向の磁界の変化に対して電気抵抗値が変化する第3磁気抵抗素子(23−2)及び第4磁気抵抗素子(24−2)を有し、
前記第3磁気抵抗素子及び前記第4磁気抵抗素子に対する前記バイアス磁界が反対方向になるように構成し、さらに、前記第1磁気抵抗素子の前記第3磁気抵抗素子側の端子と前記第4磁気抵抗素子の前記第2磁気抵抗素子側の端子を接続し、前記第2磁気抵抗素子の前記第4磁気抵抗素子側の端子と前記第3磁気抵抗素子の前記第1磁気抵抗素子側の端子を接続し、前記第1磁気抵抗素子の前記第3磁気抵抗素子と反対側の端子と前記第2磁気抵抗素子の前記第4磁気抵抗素子と反対側の端子を接続し、かつ前記第3磁気抵抗素子の前記第1磁気抵抗素子と反対側の端子と前記第4磁気抵抗素子の前記第2磁気抵抗素子と反対側の端子を接続し、前記第1磁気抵抗素子と前記第2磁気抵抗素子の接続点と、前記第3磁気抵抗素子と前記第4磁気抵抗素子の接続点との間に所定電圧を印加して、前記第1磁気抵抗素子と前記第4磁気抵抗素子の接続点の電圧と、前記第2磁気抵抗素子と前記第3磁気抵抗素子の接続点の電圧との差電圧を取り出す電気回路(32)を備えた磁性体検出装置としたことにある。
これによれば、第1磁気抵抗素子、第2磁気抵抗素子、第3磁気抵抗素子及び第4磁気抵抗素子はフルブリッジ接続されるので、出力電圧を前記ハーフブリッジ接続の場合の2倍にすることができる。また、電気回路が、第1磁気抵抗素子と第4磁気抵抗素子の接続点の電圧と、第2磁気抵抗素子と第3磁気抵抗素子の接続点の電圧との差電圧を出力することにより、第1磁気抵抗素子及び第3磁気低抵抗素子の電気抵抗値の変化をもたらすバイアス磁界と、第2磁気抵抗素子及び第4磁気低抵抗素子の電気抵抗値の変化をもたらすバイアス磁界とにそれぞれノイズが含まれていても、これらのノイズがもたらす抵抗値変化が互いに相殺されて、出力電圧のS/N比が向上する。
また、本発明の他の特徴は、前記磁気抵抗効果素子は、さらに、前記基板面内において、前記第1磁気抵抗素子(23−1)及び前記第2磁気抵抗素子(24−1)から見て前記第2方向に離間した位置にそれぞれ設けられ、前記基板面内における前記第2方向の同一位置にて互いに対向する第3磁気抵抗素子及び第4磁気抵抗素子であって、前記基板面内における前記第2方向と直交する方向の磁界の変化に対して電気抵抗値が変化する第3磁気抵抗素子(23−2)及び第4磁気抵抗素子(24−2)を有し、前記第3磁気抵抗素子及び前記第4磁気抵抗素子に対する前記バイアス磁界が反対方向になるように構成し、さらに、前記第1磁気抵抗素子の前記第3磁気抵抗素子と反対側の端子と前記第2磁気抵抗素子の前記第4磁気抵抗素子と反対側の端子を接続し、前記第3磁気抵抗素子の前記第1磁気抵抗素子の反対側の端子と前記第4磁気抵抗素子の前記第2磁気抵抗素子と反対側の端子を接続し、前記第1磁気抵抗素子の前記第3磁気抵抗素子側の端子と前記第4磁気抵抗素子の前記第2磁気抵抗素子側の端子を接続し、かつ前記第2磁気抵抗素子の前記第4磁気抵抗素子側の端子と前記第3磁気抵抗素子の前記第1磁気抵抗素子側の端子を接続し、前記第1磁気抵抗素子と前記第4磁気抵抗素子の接続点と、前記第2磁気抵抗素子と前記第3磁気抵抗素子の接続点との間に所定電圧を印加して、前記第1磁気抵抗素子と前記第2磁気抵抗素子の接続点の電圧と、前記第3磁気抵抗素子と前記第4磁気抵抗素子の接続点の電圧との差電圧を取り出す電気回路(32)を備えた磁性体検出装置としたことにある。
これによっても、第1磁気抵抗素子、第2磁気抵抗素子、第3磁気抵抗素子及び第4磁気抵抗素子はフルブリッジ接続されるので、出力電圧を前記ハーフブリッジ接続の場合の2倍にすることができる。また、この場合も、電気回路が、第1磁気抵抗素子と第2磁気抵抗素子の接続点の電圧と、第3磁気抵抗素子と第4磁気抵抗素子の接続点の電圧との差電圧を出力することにより、第1磁気抵抗素子及び第3磁気低抵抗素子の電気抵抗値の変化をもたらすバイアス磁界と、第2磁気抵抗素子及び第4磁気低抵抗素子の電気抵抗値の変化をもたらすバイアス磁界とにそれぞれノイズが含まれていても、これらのノイズがもたらす抵抗値変化が互いに相殺されて、出力電圧のS/N比が向上する。
さらに、本発明の実施にあたっては、移動する検出物に含まれる磁性体を検出するための磁性体検出方法の発明としても実施し得るものである。
本発明の一実施形態に係る磁性体検出装置1について図面を用いて説明する。まず、磁性体検出装置1の概略について説明する。磁性体検出装置1は、図1及び図2に示すように、検証物OBを搬送路Lに沿って直線移動させて、検証物OBの真偽を判定する装置(例えば、現金自動預け払い機)に適用される。検証物OBは、例えば、紙幣、有価証券などであり、この検証物OBには、磁性体MSが含まれているものとする。以下の説明において、検証物OBの移動方向を前後方向と呼び、検証物OBの厚さ方向を上下方向と呼ぶ。また、前後方向に垂直且つ上下方向に垂直な方向を左右方向と呼ぶ。磁性体検出装置1は、検証物OBの搬送路Lの下方に配置されており、検証物OBに含まれる磁性体MSの移動による磁界(バイアス磁界)の変化を利用して、磁性体MSの有無(又は配列パターン)を検出する。なお、以下の説明において、検証物OBを、搬送路Lの一端側(入口側)から他端側(出口)側へ搬送する方向を前方とし、その逆方向を後方とする。図示省略しているが、検証物OBは、コンベアプレート、ローラなどを用いて前後方向へ搬送される。
つぎに、磁性体検出装置1の構成について説明する。磁性体検出装置1は、図2乃至図4に示すように、ケース11、磁石M1,M2,M3、磁石固定部材12及びカバー13、並びに複数(例えば10個)の磁気センサ回路MCを備える。
ケース11は、後述する磁石M1,M2,M3、磁石固定部材12などを収容する。ケース11は、左右方向に延びる溝状(又は箱状)部材である。ケース11の上面が開放されている。ケース11は、磁性体材料(例えば、軟磁性を呈するステンレス)により一体的に形成されている。また、ケース11の底面には、複数(10個)のスリット状の貫通孔TH11が、左右方向に等間隔に配列されている。貫通孔TH11は、左右方向に延設されている。
磁石M1,M2,M3は、永久磁石(例えば、フェライト磁石、ボンド磁石など)で構成されている。磁石M1,M2,M3は、左右方向にそれぞれ延設されている。磁石M1及び磁石M3の左右方向に垂直な断面は、略長方形を呈する。磁石M1及び磁石M3の断面形状は略同一である。磁石M2の左右方向に垂直な断面は、略長方形を呈する。磁石M2の上下方向の寸法は、磁石M1,M3の上下方向の寸法よりも小さい。磁石M1,M2,M3は、上下方向に磁化されている。ただし、磁石M2の磁化の向きは、磁石M1及び磁石M3の磁化の向きとは反対である。本実施形態においては、磁石M1及び磁石M3の上面がN極であり、下面がS極であるのに対し、磁石M2の上面がS極であり、下面がN極である。
磁石固定部材12は、合成樹脂製であり、一体的に形成されている。磁石固定部材12は、磁石M1,M2,M3を、この順に、前後方向に所定距離だけ隔てて平行に保つ部材である。磁石固定部材12は、左右方向に延びる溝状部材である。磁石固定部材12の外寸は、ケース11の内寸と略同一である。磁石固定部材12は、磁石M1,M2,M3をそれぞれ収容する溝部G1,G2,G3を有する。溝部G1,G2,G3は、左右方向にそれぞれ延設されている。溝部G2は、溝部G1と溝部G3との間に設けられている。溝部G1及び溝部G3は、上側へ開放され、溝部G2は、下側へ開放されている。
溝部G1は、側壁部121、底壁部122及び側壁部123から構成される。溝部G2は、側壁部123、底壁部124及び側壁部125から構成される。また、溝部G3は、側壁部125、底壁部126及び側壁部127から構成される。側壁部121,123,125,127は、前後方向に垂直な板状部である。一方、底壁部122,124,126は、上下方向に垂直な板状部である。底壁部122と底壁部126は同一高さに位置し、底壁部124は、底壁部122及び底壁部124よりも高い位置にある。
側壁部121は、底壁部122の後端から上方へ延設されている。側壁部121の上端面は、底壁部124より高い位置にある。側壁部123は、底壁部122の前端から上方へ延設されて、底壁部124の後端に接続されている。また、側壁部127は、底壁部126の前端から上方へ延設されている。側壁部127の上端面は、側壁部121の上端面と同一高さにある。側壁部125は、底壁部126の後端から上方へ延設されて、底壁部124の前端に接続されている。側壁部123及び側壁部125の壁厚が、側壁部121及び側壁部127の壁厚よりも大きく設定されている。側壁部123の上面から下面へ貫通する複数のスリット状の貫通孔TH12が、左右方向に配列されている。これらの貫通孔TH12は、ケース11の貫通孔TH11に対応している。磁石固定部材12がケース11に収容された状態で、各貫通孔TH12と各貫通孔TH11とが連通する。
磁石M1及び磁石M3が溝部G1及び溝部G3にそれぞれ収容され、その磁石固定部材12がケース11内に収容される。
カバー13は、ケース11に組み付けられて、ケース11の上端を覆う蓋部材である。カバー13は、左右方向に延びる溝状(又は箱状)部材である。カバー13の下面が開放されている。カバー13は、剛性が高く且つ弾性を有する非磁性材料を用いて形成されている。
ケース11及びカバー13の左右方向の長さは同一である。また、磁石M1,M2,M3及び磁石固定部材12の左右方向の長さは、ケース11及びカバー13の左右方向方の長さよりも若干短い。
つぎに、磁気センサ回路MCの構成について説明する。磁気センサ回路MCは、図5に示すように、基板支持部材21、基板22、強磁性体薄膜磁気抵抗素子23,24及びフレキシブルプリント基板25を備えている。基板支持部材21は、合成樹脂製であり、一体的に形成されている。基板支持部材21は、左右方向に延設されている。基板支持部材21の左右方向に垂直な断面形状は略六角形状である。つまり、基板支持部材21は、下面211、後面212、斜面213、上面214、斜面215及び前面216、並びに右側面217及び左側面218を有する。下面211は、上下方向に垂直である。後面212は、下面211の後端から上方へ延設されている。斜面213は、後面212の上端から前方且つ上方へ斜めに延設されている。上面214は、斜面213の先端(前側且つ上側の端部)から前方へ延設されている。斜面215は、上面214の前端から前方且つ下方へ斜めに延設されている。前面216は、斜面215の先端(前側且つ下側の端部)から下方へ延設され、下面211の前端に接続されている。右側面217及び左側面218は、左右方向に垂直な平面状に形成されている。基板支持部材21の左右方向の長さは磁石固定部材12の左右方向の長さの1/10である。
基板22は、非磁性体材料で構成された平板状部材である。基板22は、基板支持部材21の斜面213と同等の大きさに形成されている。基板22の裏面が基板支持部材21の斜面213に固着されている。強磁性体薄膜磁気抵抗素子23,24は、強磁性体磁気抵抗材により基板22の上面に、スパッタリングなどにより薄膜に形成された磁気抵抗素子(例えば、AMR素子)である。なお、以下の説明では、簡単化のために、強磁性体薄膜磁気抵抗素子23,24を単に磁気抵抗素子23,24という。磁気抵抗素子23,24は、略左右方向に直線的に延設された線状部分を有する。これらの線状部分が互いに対向している。基板22の表面内において左右方向に直交する方向の磁界(磁力)の強さに応じて、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が変化する。なお、磁気抵抗素子23,24として、異方性磁気抵抗効果(AMR)素子、巨大磁気抵抗効果(GMR)素子、トンネル磁気抵抗効果(TMR)素子などを採用できる。
前記説明においては、磁気抵抗素子23,24は略左右方向に直線的に延設された線状部分を有していると説明したが、磁気抵抗素子23,24の延設方向、すなわち磁気抵抗素子23,24の線状部分は、基板22の表面(平面)内において左右方向に対して所定角度だけ傾けられている。この所定角度は、例えば、1°乃至65°の範囲内にある。
この点について具体的に説明する。図6Aに示すように、磁気抵抗素子23,24は、例えば略左右方向に延設された線状部分を分割した2つの分割線状部分23a,23b,24a,24bを有し、分割線状部分23a,23b,24a,24bは、基板22の表面内にて左右方向に対して傾斜している。本実施形態では、分割線状部分23a,23bは図示右端が高くなり、分割線状部分24a,24bは図示右端が低くなるようにしているが、これらの傾き方向は同図に限られない。ただし、分割線状部分23a,23bの傾き方向が同一であり、かつ分割線状部分24a,24bの傾き方向が同一であるものとする。そして、分割線状部分23a,24aの各一端は導体26a,26bを介して基板22に設けた端子27a,27bにそれぞれ接続されている。分割線状部分23aの他端は分割線状部分23bの一端に導体26dを介して接続され、分割線状部分24aの他端は分割線状部分24bの一端に導体26eを介して接続され、分割線状部分23b,24bの各他端は導体26fを介して接続されている。すなわち、分割線状部分23a,23bからなる磁気抵抗素子23と分割線状部分24a,24bからなる磁気抵抗素子24とが直列に接続されている。そして、磁気抵抗素子23,24の接続点、すなわち分割線状部分23b,24bの接続点が導体26cを介して端子27cに接続されている。導体26a〜26fは、基板22の表面に、導電性材料(非磁性材料)をスパッタリングなどにより形成されている。端子27a,27bは直列に接続された磁気抵抗素子23,24間に電圧(+Vb,GND)を付与するための端子であり、端子27cは磁気抵抗素子23,24間の電位を出力電圧Voutとして取り出すための端子である。
なお、本実施形態では、磁気抵抗素子23,24の線状部分をそれぞれ2つに分割したが、3つ以上にそれぞれ分割するようにしてもよい。ただし、この場合も、磁気抵抗素子23の線状部分を分割した複数の分割線状部分及び磁気抵抗素子24の線状部分を分割した複数の分割線状部分は、それぞれ同一方向に傾くようにする。また、図6Bに示すように、磁気抵抗素子23,24の線状部分を分割することなく、基板22の表面において左右方向に対して傾けた一本の線状部分でそれぞれ構成するようにしてもよい。この場合には、磁気抵抗素子23,24の線状部分の各一端は前記場合と同様な導体26a,26bを介して基板22に設けた端子27a,27bにそれぞれ接続されている。磁気抵抗素子23,24の線状部分の各他端は導体26fにより接続されて磁気抵抗素子23,24が直列に接続されて、磁気抵抗素子23,24の接続点が導体26cを介して基板22に設けた端子27cに接続されている。
さらに、図6Cに示すように、磁気抵抗素子23,24を左右方向に延設した延設部分を折り返して2本の線状部分を有するように構成してもよい。この場合、磁気抵抗素子23は一対の線状部分23A,23Bからなり、線状部分23Aは前記場合と同様な分割線状部分23a,23bからなり、分割線状部分23Bは分割線状部分23c,23dからなる。分割線状部分23c,23dは、基板22の上面において、分割線状部分23a,23bと対向させて、左右方向に直交する方向に分割線状部分23a,23bと平行に設けられている。磁気抵抗素子24は一対の線状部分24A,24Bからなり、線状部分24Aは前述の場合と同様な分割線状部分24a,24bからなり、分割線状部分24Bは分割線状部分24c,24dからなる。分割線状部分24c,24dは、基板22の上面において、分割線状部分24a,24bと対向させて、左右方向に直交する方向に分割線状部分24a,24bと平行に設けられている。
分割線状部分23cの他端は分割線状部分23dの一端に導体26gを介して接続され、分割線状部分23b,23dの各他端は導体26hを介して接続されて、分割線状部分23a,23bと分割線状部分23c,23dとが折り返して直列に接続されている。分割線状部分24cの他端は分割線状部分24dの一端に導体26iを介して接続され、分割線状部分24b,24dの各他端は導体26jを介して接続されて、分割線状部分24a,24bと分割線状部分24c,24dとが折り返して直列に接続されている。そして、この場合には、磁気抵抗素子23の分割線状部分23a及び磁気抵抗素子24の分割線状部分24aの各一端は前記場合と同様な導体26a,26bを介して基板22に設けた端子27a,27bにそれぞれ接続されている。磁気抵抗素子23の分割線状部分23c及び磁気抵抗素子24の分割線状部分24cの各一端が導体26kにより接続されて磁気抵抗素子23,24が直列に接続され、磁気抵抗素子23,24の接続点が導体26cを介して基板22に設けた端子27cに接続されている。
ここで、磁気抵抗素子23,24の延設方向(磁気抵抗素子23,24の線状部分)を基板22の表面(平面)内において左右方向に対して所定角度だけ傾けた理由について説明しておく。磁気抵抗素子23,24すなわちAMRからなる強磁性体薄膜磁気抵抗素子の磁界による抵抗を安定して変化させるために、磁気抵抗素子23,24の長手方向にすなわち磁化容易軸方向に一定方向の磁力を与える必要がある。言い換えれば、磁気抵抗素子23,24を左右方向に延設した場合、磁石M1,M2,M3による磁力線(バイアス磁界)が基本的には磁気抵抗素子23,24の延設方向に直交し、磁気抵抗素子23,24内には磁力は発生せず、磁気抵抗素子23,24の動作が安定しない。そこで、本実施形態では、磁気抵抗素子23,24の延設方向を基板22の表面において左右方向に対して所定角度だけ傾けることにより、磁気抵抗素子23,24の動作を安定させるようにしている。なお、この点に関しては、磁気抵抗素子23,24の前述した各種変形(図6B及び図6C)においても同様である。
フレキシブルプリント基板25は、細長いプリント回路基板である。フレキシブルプリント基板25は、可とう性を有する。フレキシブルプリント基板25には、電気配線が施されており、磁気抵抗素子23,24のハーブリッジ回路を含む電気回路が構成されている。この電気回路は、複数の基板22の端子27aに直流電圧Vbを印加し、端子27bを接地(GND)し、端子27cを増幅器31に接続する(図13参照)。これにより、直列に接続された磁気抵抗素子23,24間には直流電圧Vbが付与され、磁気抵抗素子23,24の接続点の出力電圧Voutが増幅器31を介して出力される。なお、これらの回路を、フレキシブルプリント基板25ではなく、フレキシブルプリント基板25に接続された回路装置に設けるようにしてもよい。
上記のように構成された複数(本実施形態では10個)の磁気センサ回路MCが、左右方向に配列されて、磁石固定部材12に固定される(図3及び図4参照)。具体的には、各磁気センサ回路MCの基板支持部材21の下面211が、底壁部124の上面に固定される。そして、各フレキシブルプリント基板25の下端部が、磁石固定部材12の貫通孔TH12及びケース11の貫通孔TH11に挿し通される。最後に、カバー13がケース11の上部に被せられて固定される。
上記のように構成された磁性体検出装置1において、磁石M1,M2,M3の上側の磁極面が搬送路Lにそれぞれ対向している。ただし、磁石M1及び磁石M3の上側の磁極面(N極)は略同一の高さにあり、磁石M2の上側の磁極面(S極)は、磁石M1及び磁石M3の上面よりも低い位置にある。すなわち、磁石M1及び磁石M3の上側の磁極面と搬送路Lとの距離が、磁石M2の上側の磁極面と搬送路Lとの距離よりも小さく設定されている。磁石M1,M2,M3は協働して、ケース11及びカバー13の周辺部に及ぶ磁界を形成する。
つぎに、磁石M1,M2,M3と磁気センサ回路MCとの配置関係について詳述する。前記磁界の磁力線であって、磁石M1から磁石M2に向かう磁力線及び磁石M3から磁石M2に向かう磁力線は、検証物OB(磁性体MS)が存在しない状態で、左右方向に垂直な平面内において、図7(A)に示すような曲線を呈する。そして、これらの磁力線の経路は、検証物OBの搬送路Lに交差している。また、磁石M1から磁石M2に向かう磁力線の経路の中間部に基板22の磁気抵抗素子23,24が位置する。そして、左右方向に垂直な平面内において、磁気抵抗素子23を通る磁力線(磁力線ベクトルH1)の成分であって、基板22の表面に平行な成分H1xと、磁気抵抗素子24を通る磁力線(磁力線ベクトルH2)の成分であって、基板22の表面に平行な成分H2xとが、反対方向を向き、且つそれらの大きさが同一となるように、磁石M1,M2,M3、磁気センサ回路MC(基板22の傾斜角度(つまり、斜面213の傾斜角度))の配置関係が設定される。
例えば、図8Aに示すように、左右方向に垂直な平面内において、磁気抵抗素子23と磁気抵抗素子24を結ぶ直線上の点であって、磁気抵抗素子23と磁気抵抗素子24との間の中央位置Po(磁気抵抗素子23と磁気抵抗素子24までの距離が等しい位置)における磁力線が、基板22の表面に対して垂直となり、磁力線ベクトルH1の向きと、磁力線ベクトルH2の向きが、中央位置Poを通る磁力線(磁力線ベクトルHo)に対してほぼ対称に内側方向に傾いたものとなるように、磁石M1,M2,M3及び磁気センサ回路MCが配置される。すなわち、磁力線ベクトルH1,H2は、左右方向に垂直な平面内にて、磁力線ベクトルHoから見て、反対方向(内側)に傾斜する。なお、磁気抵抗素子23,24の距離は小さいので、磁力線ベクトルH1,H2の大きさはほぼ等しい。
この場合、磁力線ベクトルH1,H2を、基板22の表面に平行な成分H1x,H2xと垂直な成分H1y,H2yに分けると、成分H1x,H2xは互いに反対方向(内側)であると同時に、その大きさはほぼ等しい。成分H1y,H2yは、方向が等しく且つその大きさもほぼ等しい。
一方、例えば、図8Bに示すように、磁力線ベクトルH1の向きと、磁力線ベクトルH2の向きが、中央位置Poを通る磁力線(磁力線ベクトルHo)に対してほぼ対称に外側方向に傾いたものとなるように、磁石M1,M2,M3と磁気センサ回路MCとが配置されてもよい。この場合、成分H1x,H2xは互いに反対方向(外側)であると同時に、その大きさはほぼ等しく設定される。
以下、バイアス磁界を図8Aのように設定した例について説明するが、バイアス磁界を図8Bのように設定したとしても、後述する同一の効果が得られる。
ここで、磁気抵抗素子23,24を構成する強磁性薄膜磁気抵抗素子(異方性磁気抵抗素子)の磁界に対する電気抵抗値の変化特性について説明しておく。強磁性体薄膜磁気抵抗素子の延設方向の両端間の電気抵抗値は、図9に示すように、薄膜が存在する平面内において強磁性体薄膜磁気抵抗素子の延設方向と略直交する方向の磁界の強さが「0」であるとき最大である。そして、電気抵抗値は、前記磁界の強さの絶対値が大きくなるに従って小さくなり、その磁界の強さが飽和磁界に達すると、電気抵抗値はほぼ一定となる。すなわち、本実施形態では、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値は、成分H1x,H2xが「0」であるときが最大となる。また、成分H1x,H2xが大きくなるに従って、電気抵抗値が徐々に小さくなり、磁界の強さがさらに大きくなって、成分H1x,H2xが飽和磁界に達すると、電気抵抗値はほぼ一定となる。
したがって、検証物OB(磁性体MS)の通過により、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が、飽和することなく、それぞれ最大に変化するように、磁石M1,M2,M3により、磁気抵抗素子23,24に対してバイアス磁界を付与することが好ましい。そのため、検証物OB(磁性体MS)が存在しない状態で、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が磁界の変化による磁気抵抗素子23,24の最大抵抗値と飽和磁界時の電気抵抗値との平均値(中央値)になるような成分H1x,H2xをバイアス磁界として設定する。この場合、前述のように、検証物OB(磁性体MS)が存在しない状態では、成分H1x,H2xは互いに反対方向であると同時に、その大きさはほぼ等しいので、図9に示すように、成分H1x,H2xがバイアス磁界+Hb,−Hbになるように、磁石M1,M2,M3の磁力、磁石M1,M2,M3と磁気センサ回路MCとの距離などを設定する。なお、図9においては、バイアス磁界+Hb,−Hbが成分H1x,H2xとして磁気抵抗素子23,24に付与された状態における磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値を基準抵抗値Rbとして示している。この基準抵抗値Rbが、前記磁界の変化による磁気抵抗素子23,24の最大抵抗値と飽和磁界時の電気抵抗値との平均値にほぼ等しい。
このようにバイアス磁界+Hbが磁気抵抗素子23に付与された状態では、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は、バイアス磁界+Hbを中心に、成分H1xの絶対値|H1x|の増加(図8Aの左下方向に対応した正方向への増加)に従って基準抵抗値Rbから徐々に小さくなくなり、成分H1xの絶対値|H1x|の減少(図8Aの左下方向に対応した正方向への減少)に従って基準抵抗値Rbから徐々に大きくなる。磁気抵抗素子24の電気抵抗値は、バイアス磁界−Hbを中心に、成分H2xの絶対値|H2x|の増加(図8Aの右上方向に対応した負方向への増加)に従って基準抵抗値Rbから徐々に小さくなり、成分H2xの絶対値|H2x|の減少(図8Aの右上方向に対応した負方向への減少)に従って基準抵抗値Rbから徐々に大きくなる。なお、後述するように、本実施形態においては、磁性体MSの移動による磁界の変化に対して、磁気抵抗素子23を通る磁界の成分H1xが負になったり、磁気抵抗素子24を通る磁界の成分H2xが正になったりすることはない。
次に、上記のように構成した実施形態に係る磁性体検出装置1の動作を説明する。なお、磁性体MSは、検証物OBにおいて左右方向に細長く延設されている。また、磁性体MSは、複数の硬磁性体部MS1及び複数の軟磁性体部MS2を含む。硬磁性体部MS1及び軟磁性体部MS2は、左右方向に延びる線状にそれぞれ形成されている。これらの硬磁性体部MS1と軟磁性体部MS2とが、前後方向に所定の順に配列されて所定のパターンを形成しているものとする。
まず、図10に示すように、検証物OBを、前方(つまり、搬送路Lの後端(入口側)から前端(出口側))へ移動させたときの磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化について説明する。
検証物OBに含まれる硬磁性体部MS1は、搬送路Lを通過する際、磁力線の影響を受けて磁化される。ここで、磁性体MSが搬送路Lに存在しない状態において、磁石M1,M2,M3によって形成された磁界の磁力線のうち、搬送路Lに交差する磁力線の向き及び大きさ(磁力線ベクトル)は、図7(B)に示すように、位置に応じて異なる。例えば、磁石M1の近傍の領域においては、前方へ向かうに従って、磁力線ベクトルが時計方向に回転している。したがって、硬磁性体部MS1は、磁石M1の近傍の位置P1から前方へ向かうに従って、その磁化方向(磁気ベクトル)が、図10(A)において時計方向に回転するように変化する。以下、前方へ向かう磁気ベクトルの向きを「0°」とし、当該ベクトルを反時計方向へ回転させたベクトルの角度を正の値で表わす。また、前方へ向かう磁気ベクトルの向きを「0°」とし、当該ベクトルを時計方向へ回転させたベクトルの角度を負の値で表わす。
以下、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きについて具体的に説明する。本実施形態では、硬磁性体部MS1が位置P1にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは略「45°」である。硬磁性体部MS1がさらに前方へ移動して磁気抵抗素子23,24の直上の位置A1にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、略「―45°」である。また、硬磁性体部MS1が磁石M2の直上の位置A2にあるとき、その磁気ベクトルの向きは、「−80°」乃至「−90°」である。図7(B)に示すように、位置A2の近傍から前方へ向かうに従って、磁力線ベクトルは徐々に大きくなるが、硬磁性体部MS1の磁化特性はヒステリシスを有するので、その磁気ベクトルが変化することなく、略一定に保たれたまま、さらに前方へ移動する。そして、硬磁性体部MS1は、磁石M3の近傍の位置P2にて、再着磁される。その磁気ベクトルの向きは、略「135°」である。
硬磁性体部MS1が、その磁気ベクトルの向きを図10(A)のように変化させながら磁気抵抗素子23,24の上方を通過する際、磁力線ベクトルH1,H2が硬磁性体部MS1の影響を受けて、成分H1x,H2xが変化して、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が変化する。
硬磁性体部MS1が磁気抵抗素子23,24から十分に離れた状態では、磁気抵抗素子23,24を通過する磁力線は、磁性体MSの影響を受けない。そのため、磁気抵抗素子23,24における磁力線ベクトルH1,H2の成分H1x,H2xはバイアス磁界+Hb,−Hbに保たれており、磁気抵抗素子23,24の両端間の電気抵抗値はともに基準抵抗値Rbに保たれる。磁性体MSが磁気抵抗素子23,24に近づくと、磁気抵抗素子23,24を通過する磁界は硬磁性体部MS1の影響を受け始めて、磁気抵抗素子23,24における磁力線ベクトルH1,H2の成分H1x,H2xが変化して、磁気抵抗素子23,24の両端間の電気抵抗値がそれぞれ変化する。以下、電気抵抗値の変化について具体的に説明する。
図10(B)に示すように、硬磁性体部MS1が、位置P1から位置A1に向かうに従って、磁力線が、硬磁性体部MS1の影響を受けて、上方へ徐々に引き寄せられる。これにより、磁気抵抗素子23を通過する磁力線ベクトルH1の成分H1xはバイアス磁界Hbよりも大きくなり、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbより小さくなる。つまり、図10(D)の実線グラフのように、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に減少し、位置A1にて最小値になる。そして、硬磁性体部MS1が、位置A1からさらに前方へ向かうに従って、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に増大し、基準抵抗値Rbに戻る。
硬磁性体部MS1がさらに前方に移動するに従って、図10(C)に示すように、磁力線が、硬磁性体部MS1の影響を受けて、下方へ徐々に押される。これにより、磁気抵抗素子23を通過する磁力線ベクトルH1の成分H1xはバイアス磁界Hbよりも小さくなり、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbより大きくなる。つまり、図10(D)の実線グラフのように、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に増大し、位置A2にて最大値になる。そして、硬磁性体部MS1がさらに前方に移動するに従って、電気抵抗値が徐々に減少し、磁力線への硬磁性体部MS1の影響がなくなると、成分H1xはバイアス磁界+Hbに戻り、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbに戻る。
つぎに、磁気抵抗素子24の電気抵抗値の変化について説明する。磁力線ベクトルH2は、磁力線ベクトルHoを中心にして、磁力線ベクトルH1と対称関係にあり、磁力線ベクトルH2の成分H2xは前記成分H1xと正負逆方向であってバイアス磁界−Hbになるように設定されている。したがって、硬磁性体部MS1の位置に応じて、磁気抵抗素子24の電気抵抗値は、磁気抵抗素子23の電気抵抗値の変化(図10(D)における実線グラフ)を基準抵抗値Rbに対して反転した、図10(D)の破線グラフのように変化する。なお、厳密には、磁気抵抗素子23,24の距離に応じて、図10(D)の実線グラフと破線グラフが左右方向に少しずれるが、磁気抵抗素子23,24の距離は微小なので、上記のずれを無視できる。
一方、検証物OBに含まれる軟磁性体部MS2の前方への移動に伴い、軟磁性体部MS2の磁気ベクトルの向きは、磁力線の影響を受けて逐次変化する。言い換えれば、軟磁性体部MS2は、常に、磁力線を引き寄せる。このような軟磁性体部MS2が磁気抵抗素子23,24の上方を通過する際、磁力線ベクトルH1,H2が軟磁性体部MS2の影響を受けて、成分H1x,H2xが変化して、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が変化する。
具体的には、図11(A)に示すように、軟磁性体部MS2が磁気抵抗素子23の上方を通過する際、軟磁性体部MS2の影響を受けて、磁力線が上方へ引き寄せられる。これにより、磁気抵抗素子23を通過する磁力線ベクトルH1の成分H1xはバイアス磁界Hbよりも大きくなり、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は、図11(B)の実線グラフのように、基準抵抗値Rbより小さくなる。なお、軟磁性体部MS2が、位置P1から位置A1に向かうに従って、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に減少し、位置A1にて最小値になる。軟磁性体部MS2が、位置A1からさらに前方に移動するに従って、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に増大し、基準抵抗値Rbに戻る。硬磁性体部MS1とは異なり、軟磁性体部MS2の場合には、磁力線が基準状態から押し下げられる領域が存在しない。よって、この場合、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は、基準抵抗値Rbを超えることはない。
また、軟磁性体部MS2の前方への移動による磁気抵抗素子24の電気抵抗値は、軟磁性体部MS2の前方への移動による磁気抵抗素子23の電気抵抗値の変化(図11(B)における実線グラフ)を基準抵抗値Rbに対して反転した、図11(B)の破線グラフのように変化する。
つぎに、検証物OBを、後方(つまり、搬送路Lの前端(出口側)から後端(入口側))へ移動させたときの磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化について説明する。
まず、硬磁性体部MS1の通過による磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化について説明する。検証物OBに含まれる硬磁性体部MS1は、搬送路Lを通過する際、磁力線の影響を受けて磁化される。図7(B)に示すように、磁石M3の近傍から後方へ向かうに従って、磁力線ベクトルが反時計方向に回転している。したがって、硬磁性体部MS1は、磁石M3の近傍の位置P2から後方へ向かうに従って、その磁化方向(磁気ベクトル)が、図12(A)において反時計方向に回転するように変化する。
具体的には、本実施形態では、硬磁性体部MS1が位置P2にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、略「135°」である。硬磁性体部MS1がさらに後方へ移動して位置A2の直上付近にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、「−100°」乃至「―90°」である。図7(B)に示すように、位置A2の近傍から後方へ向かうに従って、磁力線ベクトルは徐々に大きくなるが、硬磁性体部MS1の磁化特性はヒステリシスを有するので、その磁気ベクトルが変化することなく、略一定に保たれたまま、さらに後方へ移動する。そして、硬磁性体部MS1は、位置P1にて、再着磁される。その磁気ベクトルの向きは、略「45°」である。
硬磁性体部MS1が、その磁気ベクトルの向きを図12(A)のように変化させながら磁気抵抗素子23,24の上方を通過する際、磁力線ベクトルH1,H2が硬磁性体部MS1の影響を受けて、成分H1x,H2xが変化して、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が変化する。
具体的には、図12(B)及び図12(C)に示すように、硬磁性体部MS1が、磁石M2の上方付近から後方へ向かうに従って、磁力線が、硬磁性体部MS1の影響を受けて、上方へ徐々に引き寄せられる。これにより、磁気抵抗素子23を通過する磁力線ベクトルH1の成分H1xはバイアス磁界Hbよりも大きくなり、図12(D)の実線グラフのように、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbより小さくなる。つまり、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に減少し、位置A1にて最小値になる。そして、硬磁性体部MS1が、位置A1からさらに後方へ向かうに従って、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に増大し、基準抵抗値Rbに戻る。
つぎに、硬磁性体部MS1の通過による磁気抵抗素子24の電気抵抗値の変化について説明する。この場合も、硬磁性体部MS1の位置に応じて、磁気抵抗素子24の電気抵抗値は、磁気抵抗素子23の電気抵抗値の変化(図12(D)における実線グラフ)を基準抵抗値Rbに対して反転した、図12(D)の破線グラフのように変化する。なお、この場合も、厳密には、磁気抵抗素子23,24の距離に応じて、図12(D)の実線グラフと破線グラフが左右方向に少しずれるが、磁気抵抗素子23,24の距離は微小なので、上記のずれを無視できる。
つぎに、軟磁性体部MS2の通過による磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化について説明する。上記のように、軟磁性体部MS2は、常に、磁力線を引き寄せる。よって、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化は、図11(B)の変化と同一である。
このように、磁性体MSを有する検証物OBを搬送路Lに沿って移動させることにより、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値は図10(D)、図11(B)及び図12(D)に示すように変化する。一方、磁気抵抗素子23,24は、図13の電気回路図に示すように、直列に接続されて、その両端に直流電圧(+Vb,GND)が印加されている。そして、磁気抵抗素子23,24の接続点の電位が増幅器31を介して出力電圧Voutとして出力される。したがって、出力電圧Voutは、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化の差分(図10(D)、図11(B)及び図12(D)の実線グラフと破線グラフの差分)に対応した電圧となる。その結果、出力電圧Voutとしては、磁気抵抗素子23(又は磁気抵抗素子24)の電気抵抗値の変化を2倍したものとなる。なお、前記説明では、磁気抵抗素子23,24からなる1つの磁気センサに関してのみ説明したが、複数組の磁気抵抗素子23,24からなる複数の磁気センサについても増幅器31から前記出力電圧Voutがそれぞれ出力されることは同じである。
上記のように、磁性体検出装置1においては、搬送路Lの入口及び出口にそれぞれ配置された磁石M1及び磁石M3の磁極面と搬送路Lとの距離が、磁石M2の磁極面と搬送路Lとの距離よりも小さく設定される。これにより、検証物OBが搬送路Lを通過する際、磁気センサ回路MCに接近する前に、磁性体MSが磁石M1又は磁石M3によって、硬磁性体部MS1の磁化状態が所定の状態に矯正される。すなわち、検証物OBの流通過程において、硬磁性体部MS1が前記所定の状態とは異なる状態に磁化されていたとしても、磁気センサ回路MCによって硬磁性体部MS1を検出する前に、硬磁性体部MS1の磁化状態が矯正される。このように、硬磁性体部MS1の磁化状態を矯正することにより、真の検証物OBであれば、磁性体検出装置1の出力電圧Voutの波形が、正規の波形と同一になる。よって、磁性体検出装置1によれば、検証物OBの真偽を高精度に判定できる。また、磁性体検出装置1では、磁気センサ回路MCに付与するバイアス磁界+Hb,−Hbを形成する磁石M1,M2,M3のうちの磁石M1及び磁石M3を用いて、硬磁性体部MS1を矯正するため、従来の磁性体検出装置のような磁化器を別途設ける必要がない。よって、本実施形態によれば、磁性体検出装置1の部品点数を削減できる。また、磁性体検出装置1を小型化できる。
また、硬磁性体部MS1を前方へ移動させたときの検出波形(図10(D)参照)と、軟磁性体部MS2を前方へ移動させたときの検出波形(図11(B)参照)とを異ならせることができる。また、硬磁性体部MS1を前方へ移動させたときの検出波形(図10(D)参照)と、硬磁性体部MS1を後方へ移動させたときの検出波形(図12(D)参照)とを異ならせることができる。よって、磁性体検出装置1によれば、上記の検出波形の違いに基づいて、検証物OBの真偽を高精度に判定できる。例えば、検証物OBを前方へ移動させたときの検証波形のパターンと正規のパターンとの比較だけでなく、検証物OBを後方へ移動させたときの検証波形のパターンと正規のパターンとの比較も実施することにより、検証物OBの真偽をより高精度に判定できる。
また、磁性体検出装置1においては、左右方向に延びる3つの磁石M1,M2,M3を、前後方向に所定の間隔をおいて配置した。これにより、磁石M1,M2,M3間の磁力線は左右方向に垂直な平面内にて曲線状に発生される。そして、磁石M1,M2,M3の形状、特に磁極面部分の形状に多少の誤差があっても、磁力線の方向は安定して、磁気抵抗素子23,24を通過する磁力線は常に一定方向となる。その結果、磁気抵抗素子23,24に付与されるバイアス磁界+Hb,−Hbが安定化し、磁性体MSの移動による磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化を安定化させることができ、磁性体MSを高精度に検出できるようになる。また、磁石M1,M2,M3の距離、配置方向(磁化方向)を調整することにより、磁力線の軌跡の形状を種々に変更することができ、磁気抵抗素子23,24に対するバイアス磁界+Hb,−Hbの向き及び大きさの設定が簡単になる。
また、上記実施形態においては、磁気抵抗素子23,24又は磁気抵抗素子23,24の分割線状部分23a〜23d,24a〜24dの延設方向を、基板22の表面において左右方向に対して少し傾けて配置した。これにより、磁気抵抗素子23,24又は磁気抵抗素子23,24の分割線状部分23a〜23d,24a〜24d内に、それらの延設方向に沿った一定方向の磁束線を発生させて、磁気抵抗素子23,24の抵抗の変化を安定化させることができる。その結果、磁性体検出装置による磁性体MSの検出精度を高めることができる。
また、上記実施形態においては、ケース11は、磁性体材料(軟磁性体であるステンレス)で構成され、磁石M1,M2,M3の磁気抵抗素子23,24の下側を覆っている。これにより、磁石M1,M2,M3による磁気抵抗素子23,24側の磁力線の分布を、外部磁界による影響を受けずに安定化させることができ、磁性体検出装置による磁性体MSの検出精度を高めることができる。
また、上記実施形態においては、磁気抵抗素子23,24に付与されるバイアス磁界(成分H1x及び成分H2x)がほぼ反対方向であって同じ大きさになるように設定した。これにより、磁性体MSの前後方向への移動による磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化を正負反対方向にほぼ対称に変化させるようにでき、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化を利用し易くすることができる。そして、1つの磁気センサ回路MCを構成する磁気抵抗素子23,24をハーフブリッジ接続して出力電圧Voutを取り出すようにしたので、1つの磁気抵抗素子を用いる場合に比べて、出力電圧Voutの変化を大きくすることができる。
上記実施形態では、前述のように、1つの磁気センサ回路MCを構成する磁気抵抗素子23,24をハーフブリッジ接続して出力電圧Voutを取り出すようにした。しかし、これに代えて、1つの磁気センサ回路MCを4つの磁気抵抗素子23−1,23−2,24−1,24−2で構成して、これらの磁気抵抗素子23−1,23−2,24−1,24−2をフルブリッジ接続して出力電圧Voutを取出すようにしてもよい。この場合、図14(A)に示すように、1つの基板22の表面に、磁気抵抗素子23−1,23−2,24−1,24−2が設けられている。磁気抵抗素子23−1,24−1は上記磁気抵抗素子23,24と同様に形成され、基板上の導体に関しても上記磁気抵抗素子23,24の場合と同じである。そして、端子に関しては、端子27a−1,27b−1,27c−1が上記端子27a,27b、27cにそれぞれ対応する。また、磁気抵抗素子23−2,24−2、端子27a−2,27b−2,27c−2及びこれらを接続する導体は、磁気抵抗素子23−1,24−1、端子27a−1,27b−1,27c−1及びこれらを接続する導体と同様に構成されて左右方向に対称に設けられる。すなわち磁気抵抗素子23−2,24−2は基板22の表面において、磁気抵抗素子23−1,24−1をそれぞれ左右方向に延長した位置にて、基板22の表面上に左右方向にほぼ沿って延設されるとともに互いに対向して配置されている。なお、磁気抵抗素子23−1,24−1、端子27a−1,27b−1,27c−1及びこれらを接続する導体と、磁気抵抗素子23−2,24−2、端子27a−2,27b−2,27c−2及びこれらを接続する導体とを独立した基板22にそれぞれ設けるようにしてもよい。
そして、フレキシブルプリント基板25上にて、端子27a−1,27b−1,27c−1及び端子27a−2,27b−2,27c−2は次のように電気的に接続されている。端子27c−1に直流電圧Vbが印加され、端子27c−2は接地されている(GND)。そして、端子27a−1と端子27b−2とが接続されて、その接続点が増幅器32の非反転入力に接続されている。端子27b−1と端子27a−2とが接続されて、その接続点が増幅器32の反転入力に接続されている。これにより、磁気抵抗素子23−1,24−2が直列に接続されるとともに、その両端に電圧Vb−GNDが印加されて、磁気抵抗素子23−1,24−2の接続点の電圧が増幅器32の非反転入力に供給される。また、磁気抵抗素子24−1,23−2が直列に接続されるとともに、その両端に電圧Vb−GNDが印加されて、磁気抵抗素子24−1,23−2の接続点の電圧が増幅器32の反転入力に供給される。増幅器32は、非反転入力と反転入力の差電圧を出力電圧Voutとして出力する。
このような接続はフルブリッジ回路を構成するもので、磁性体MSの移動に伴い、磁気抵抗素子23−1,24−2の電気抵抗値は正負反対に変化するとともに、磁気抵抗素子23−2,24−1の電気抵抗値は正負反対に変化し、磁気抵抗素子23−1と磁気抵抗素子24−2の接続点の電圧と、磁気抵抗素子24−1と磁気抵抗素子23−2の接続点の電圧も正負反対方向に変化する。そして、前記両接続点の電圧が増幅器31の非反転入力と反転入力に供給されて増幅器31は前記両接続点の電圧差を出力するので、増幅器31は実質的には前記両接続点の電圧変化を加算合成した出力電圧Voutを出力する。その結果、上述したハーフブリッジ接続の場合よりも、2倍大きな出力電圧Voutを得ることができる。
また、増幅器32が前記両接続点の電圧差を出力することにより、磁気抵抗素子23−1,23−2の電気抵抗値の変化をもたらす成分H1x及び磁気抵抗素子24−1,24−2の電気抵抗値の変化をもたらす成分H2xにそれぞれノイズが含まれていても、これらのノイズがもたらす抵抗値変化が互いに相殺されて、出力電圧VoutのS/N比が向上する。
さらに、前記図14(A)のフルブリッジ接続に代えて、磁気抵抗素子23−1,23−2,24−1,24−2及び増幅器32を図14(B)のようにフルブリッジ接続してもよい。すなわち、端子27b−1,27a−2に直流電圧Vbが印加され、端子27a−1,27b−2は接地されている(GND)。そして、端子27c−1が増幅器32の反転入力に接続され、端子27c−2が増幅器32の非反転入力に接続されている。これにより、磁気抵抗素子24−1,23−1が直列に接続されるとともに、その両端に電圧Vb−GNDが印加されて、磁気抵抗素子24−1,23−1の接続点の電圧が増幅器32の反転入力に供給される。また、磁気抵抗素子23−2,24−2が直列に接続されるとともに、その両端に電圧Vb−GNDが印加されて、磁気抵抗素子23−1,24−2の接続点の電圧が増幅器32の非反転入力に供給される。増幅器32は、非反転入力と反転入力の差電圧を出力電圧Voutとして出力する。
このような接続もフルブリッジ回路を構成するもので、磁性体MSの移動に伴い、磁気抵抗素子23−2,24−2の電気抵抗値は正負反対に変化するとともに、磁気抵抗素子24−1,23−1の電気抵抗値は正負反対に変化し、磁気抵抗素子23−2と磁気抵抗素子24−2の接続点の電圧と、磁気抵抗素子24−1と磁気抵抗素子23−1の接続点の電圧も正負反対方向に変化する。そして、前記両接続点の電圧が増幅器31の非反転入力と反転入力に供給されて増幅器31は前記両接続点の電圧差を出力するので、この場合も、増幅器31は実質的には前記両接続点の電圧変化を加算合成した出力電圧Voutを出力し、前述の場合と同様に、上述したハーフブリッジ接続の場合よりも、2倍大きな出力電圧Voutを得ることができる。
また、この場合も、増幅器32が前記両接続点の電圧差を出力することにより、磁気抵抗素子23−1,23−2の電気抵抗値の変化をもたらす成分H1x及び磁気抵抗素子24−1,24−2の電気抵抗値の変化をもたらす成分H2xにそれぞれノイズが含まれていても、これらのノイズは互いに相殺されて、出力電圧VoutのS/N比が向上する。
さらに、1つの磁気センサを複数の磁気抵抗素子23,24(又は23−1,23−2,24−1,24−2)で構成しなくてもよく、1つの磁気抵抗素子のみで構成するようにしてもよい。この場合、図15に示すように、基板22の上面に磁気抵抗素子23のみを設け、端子27cに直流電圧+Vbを印加する。磁気抵抗素子23、導体及び端子27a,27cは上記実施形態の場合と同様に構成されている。そして、端子27aをフレキシブルプリント基板25上に設けた固定抵抗33の一端に接続し、固定抵抗33の他端を接地する(GND)。そして、磁気抵抗素子23と固定抵抗33の接続点を増幅器31に入力し、増幅器31から出力電圧Voutを取り出すようにする。
このように構成しても、磁性体MSの移動に伴う、磁気抵抗素子23の電気抵抗値の変化に応じて変化する出力電圧Voutを取出すことができるので、検証物OBに含まれる磁性体MSを検出することは可能である。ただし、この場合の出力電圧Voutは、上記実施形態の場合の1/2程度である。
なお、上記実施形態の変形例である図14A、図14B及び図15の磁気抵抗素子23,24,23−1,23−2,24−1,24−2を、上記図6A、図6Bを用いて説明したように、3つ以上の線状部分をそれぞれ有するように分割したり、一本の線状部分でそれぞれ構成したりするようにしてもよい。また、図6Cを用いて説明したように、磁気抵抗素子23,24,23−1,23−2,24−1,24−2を左右方向に延設した部分を折り返して2本以上の線状部分を有するように構成してもよい。
また、図16に示すように、磁石M3の磁化方向を磁性体検出装置1とは反対方向に設定した磁性体検出装置1Aとしてもよい。磁性体検出装置1Aの構成のうち、磁石M3の磁化方向を除く構成は、磁性体検出装置1と同一である。
つぎに、磁性体検出装置1Aの動作について説明する。まず、図17に示すように、検証物OBを、前方(つまり、搬送路Lの後端(入口側)から前端(出口側))へ移動させたときの磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化について説明する。
磁性体検出装置1Aでは、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きが、下記の通りになるように(図17(A)参照)、各種パラメータ(磁石M1,M2,M3の磁力及び配置など)が設定されている。硬磁性体部MS1が位置P1にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは略「45°」である。硬磁性体部MS1がさらに前方へ移動して位置A1及び位置A2にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、略「0°」である。そして、硬磁性体部MS1が位置P2にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、略「−45°」である。
硬磁性体部MS1が、その磁気ベクトルの向きを上記のように変化させながら磁気抵抗素子23,24の上方を通過する際、磁力線ベクトルH1,H2が硬磁性体部MS1の影響を受けて、成分H1x,H2xが変化して、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値が変化する。
具体的には、図17(B)に示すように、硬磁性体部MS1が、位置P1から位置A1に向かうに従って、磁力線が、硬磁性体部MS1の影響を受けて、上方へ徐々に引き寄せられる。これにより、磁気抵抗素子23を通過する磁力線ベクトルH1の成分H1xはバイアス磁界Hbよりも大きくなり、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbより小さくなる。つまり、図17(D)の実線グラフのように、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に減少し、位置A1にて最小値になる。そして、硬磁性体部MS1が、位置A1からさらに前方へ移動するに従って、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に増大し、基準抵抗値Rbに戻る。
硬磁性体部MS1がさらに前方に移動するに従って、図17(C)に示すように、磁力線が、硬磁性体部MS1の影響を受けて、下方へ徐々に押される。これにより、磁気抵抗素子23を通過する磁力線ベクトルH1の成分H1xはバイアス磁界Hbよりも小さくなり、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbより大きくなる。つまり、図17(D)の実線グラフのように、磁気抵抗素子23の電気抵抗値が徐々に増大し、位置A2にて最大値になる。そして、硬磁性体部MS1がさらに前方に移動するに従って、電気抵抗値が徐々に減少し、磁力線への硬磁性体部MS1の影響がなくなると、成分H1xはバイアス磁界+Hbに戻り、磁気抵抗素子23の電気抵抗値は基準抵抗値Rbに戻る。
また、磁気抵抗素子24の電気抵抗値は、磁気抵抗素子23の電気抵抗値の変化(図17(D)における実線グラフ)を基準抵抗値Rbに対して反転した、図17(D)の破線グラフのように変化する。
一方、上記のように、軟磁性体部MS2は、常に、磁力線を引き寄せる。よって、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化は、図11(B)の変化と同一である。
つぎに、検証物OBを、後方(つまり、搬送路Lの前端(出口側)から後端(入口側))へ移動させたときの磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化について説明する。
この場合、図18(A)に示すように、硬磁性体部MS1が位置P2にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは略「―45°」である。硬磁性体部MS1がさらに後方へ移動して位置A2及び位置A1にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、略「0°」である。そして、硬磁性体部MS1が位置P1にあるとき、硬磁性体部MS1の磁気ベクトルの向きは、略「45°」である。図17(A)及び図18(A)に示すように、磁性体検証装置1Aでは、硬磁性体部MS1が前方へ移動する際の各位置における磁気ベクトルの向きと、後方へ移動する際の各位置における磁気ベクトルの向きが同一である。したがって、図18(B)及び図18(C)に示すように、硬磁性体部MS1が後方へ移動する際には、硬磁性体部MS1が前方へ移動する際と同様の影響を磁力線が受ける。よって、図18(D)及び図17(D)に示すように、硬磁性体部MS1が後方へ移動する際の磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化は、硬磁性体部MS1が前方へ移動する際と同一である。
一方、上記のように、軟磁性体部MS2は、常に、磁力線を引き寄せる。よって、磁気抵抗素子23,24の電気抵抗値の変化は、図11(B)の変化と同一である。
上記の磁性体検出装置1Aによっても、磁性体検出装置1と同等の効果が得られる。ただし、この場合、硬磁性体部MS1が前方へ移動する際の検出波形と、後方へ移動する際の検出波形は同一である(図17(D)及び図18(D)参照)。
さらに、この変形例に係る磁性体検出装置1Aにおいても、磁性体検出装置1の項で説明した各種変形は適用されるものである。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
例えば、上記実施形態における磁石M2は永久磁石であるが、磁石M1及び磁石M3と協働して磁界を形成する磁性体であってもよい。また、検証物OBを前方へ移動させた際の検出波形と後方へ移動させた際の検出波形とを比較する必要がなければ、上記実施形態の磁石M3を省略しても良い。また、上記実施形態では、磁石M1,M2,M3の磁化方向(上下方向)が、検証物OBの搬送方向(前後方向)に直交しているが、磁石M1,M2,M3の磁化方向が、検証物OBの搬送方向に対して傾斜していてもよい。