JP2020015844A - 無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体 - Google Patents

無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】無機ナノシートの分散性が高く、配向が高く制御された状態の無機ナノシートを含む、無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体を提供する。【解決手段】無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法は、無機ナノシート分散液を調製する無機ナノシート分散液調製工程と、無機ナノシート分散液に、第1の重合性モノマーと、架橋剤と、第1の重合開始剤とを含有させ、第1の重合性モノマーを重合させることで架橋点を有する第1ネットワークゲルを合成する第1ネットワークゲル合成工程と、第2の重合性モノマーと、架橋剤と、第2の重合開始剤とを第1ネットワークゲルに含有させ、第2の重合性モノマーを重合させることで第2ネットワークを合成し、無機ナノシート、第1ネットワークゲル、及び第2ネットワークを含むダブルネットワークポリマーを合成するダブルネットワークポリマー合成工程とを備える。【選択図】図3

Description

本発明は、無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体に関する。特に、本発明は、ヒドロゲル(水で膨潤したネットワークポリマー)を利用した無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体に関する。
従来、ナノフィラーと、ナノフィラーの表面に結合する、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4〜50の含フッ素アルキル基を有する有機イオンであって、有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオン、及び含窒素複素環オニウムイオンから成る群より選択される少なくとも1種の有機イオンと、ポリマーと、を含有する、高分子複合材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1においては、優れた耐熱性、機械的物性、物質透過遮断性、難燃性、導電性等を備える高分子複合材料を提供できる。
また、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)のハイドロゲルと無機ナノシート液晶との複合化により巨視的に異方性を有するハイドロゲルを合成し、その構造及び特性の異方性が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献1においては、無機ナノシートの液晶構造がハイドロゲル中に固定され、ハイドロゲルの機械的強度が向上し、異方的な性質が得られたことが報告されている。
特許5228486号
N.Miyamoto,et al.,Chem.Commun,2013,49,1082
近年、無機/高分子ナノ複合材料について、当該材料の機械的特性、弾性率、ガスバリア性等の各種特性を向上させる観点から研究が進められている。これまでの研究の中で、非特許文献1のように、高アスペクト比を有する無機ナノシートと親水性高分子ゲル(ハイドロゲル)とを複合化させることで、無機ナノシートの液晶構造を高分子ハイドロゲル中に固定化させることができ、機械的強度が向上すると共に異方的な性質が発現することが報告されているものの、親水性高分子ゲルは溶媒を必要とし、また、空気中で当該溶媒が蒸発することから、親水性高分子ゲルを用いることができる環境は限定される。
また、親水性の無機ナノシートとエラストマー等の疎水性の高分子とを複合化すること、すなわち、無機ナノシートと高分子自体とを複合化する場合において、無機ナノシートの分散性を高くすると共に無機ナノシートの配向を高く制御することは、従来の有機化層状粘土鉱物の利用、混練による複合等による手法では実現できない。更に、特許文献1のような高分子複合材料においては、フッ素アルキル基を有する有機イオンでナノフィラーの表面を修飾しなければならない。
したがって、本発明の目的は、無機ナノシートの分散性が高く、かつ、配向が高く制御された状態の無機ナノシートを含む、無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、水系溶媒中に無機ナノシートを分散させ、無機ナノシート分散液を調製する無機ナノシート分散液調製工程と、無機ナノシート分散液に、第1の重合性モノマーと、架橋剤と、第1の重合開始剤とを含有させ、第1の重合性モノマーを重合させることで架橋点を有する第1ネットワークゲルを合成し、無機ナノシートを第1ネットワークゲル内に含有させる第1ネットワークゲル合成工程と、第2の重合性モノマーと、架橋剤と、第2の重合開始剤とを前記第1ネットワークゲルに含有させ、第2の重合性モノマーを重合させることで第2ネットワークを合成し、無機ナノシート、第1ネットワークゲル、及び第2ネットワークを含むダブルネットワークポリマーを合成するダブルネットワークポリマー合成工程とを備える無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法が提供される。
また、上記無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法において、無機ナノシート分散液調製工程が、液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有する無機ナノシートを、液晶相を形成する濃度範囲内の濃度で分散させて無機ナノシート分散液を調製することが好ましい。
また、上記無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法において、第1ネットワークゲルが、液晶相の無機ナノシートを含有することが好ましい。
また、上記無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法において、無機ナノシートが液晶相の状態であり、ダブルネットワークポリマーが、第1ネットワークゲルと第2ネットワークとを含み、第1ネットワークゲル及び第2ネットワーク内で無機ナノシートの液晶相が維持されていることが好ましい。
また、上記無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法において、第1ネットワークゲル合成工程の後に、水系溶媒を有機溶媒に交換する溶媒交換工程を更に備えてもよい。
また、上記無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法において、ダブルネットワークポリマーから第1ネットワークゲルを除去する第1ネットワークゲル除去工程を更に備えてもよい。
また、上記無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法において、第1ネットワークゲル合成工程における架橋剤が、分解性架橋剤であることが好ましい。
また、本発明は上記目的を達成するため、無機ナノシートと、架橋点を有する、親水性の第1ネットワークゲルと、疎水性又は親水性の第2ネットワークとを含有し、第1ネットワークゲルと第2ネットワークとによるダブルネットワークポリマー内で、無機ナノシートが液晶相を維持している無機ナノシート−ポリマー複合体が提供される。
また、本発明は上記目的を達成するため、無機ナノシートと、疎水性のネットワークゲルとを含有し、ネットワークゲル内で無機ナノシートが液晶相を維持している無機ナノシート−ポリマー複合体が提供される。
本発明に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体によれば、無機ナノシートの分散性が高く、かつ、配向が高く制御された状態の無機ナノシートを含む、無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法、及び無機ナノシート−ポリマー複合体を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る無機ナノシートの模式図である。 本発明の実施の形態に係る無機ナノシート配向ドメインの模式図である。 第1ネットワークゲル及びダブルネットワークゲルの小角X線散乱測定の結果を示す図である。
[実施の形態]
<無機ナノシート−ポリマー複合体、及びその製造方法の概要>
本発明の実施の形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体は薄板形状の無機結晶である無機ナノシートとポリマーとの複合体である。無機ナノシートとポリマーとの複合体は、無機ナノシートを所定のポリマーに含有させて形成したゲルをテンプレートにし、このテンプレート内部で他のポリマーを合成することで、無機ナノシートを含有するダブルネットワークポリマーとして得られる。また、無機ナノシートとポリマーとの複合体は、テンプレートとして用いたゲルを上記ダブルネットワークポリマーから除去することで、テンプレートが除去された、無機ナノシートを含有するポリマー複合体(つまり、無機ナノシートと他のポリマーとの複合体)として得ることもできる。
ここで、無機ナノシートの粒径や濃度を制御することで、ゲル内での無機ナノシートの分散性を高くすると共に配向を高い状態に制御できる。また、電場、磁場、せん断等の外場を作用させることで、巨視的な配向を制御できる。そして、この状態を維持したままナノシートが固定されたゲルをテンプレートにすることができ、テンプレート内部で他のポリマーを合成できるので、ダブルネットワークポリマー内においても無機ナノシートの分散性及び配向性は高い状態が維持される。これにより、本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体においては、無機ナノシートの分散性が高く、かつ、配向が高く制御された状態の無機ナノシート−ポリマー複合体を得ることができる。また、ダブルネットワークポリマーからテンプレートとして用いたゲルを除去した場合であっても、無機ナノシートの分散性、及び配向性は高く制御された状態で維持される。
具体的な無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法は、例えば、以下のとおりである。まず、無機ナノシートを含み、架橋点を含むヒドロゲル(「無機ナノシート−ポリマー複合ゲル」とも称する。)を合成する(第1ネットワークゲルの合成)。このゲルを、第2ネットワーク形成のためのテンプレートにする。次に、第2ネットワークを形成するためのモノマー、架橋剤、及び開始剤を第1ネットワークゲル内に含有させ、モノマーを重合させることでテンプレート内に第2ネットワークを形成する。
これによりダブルネットワークポリマーが合成される。このダブルネットワークポリマー内において無機ナノシートは、無機ナノシートの分散性と配向性(つまり、単層剥離と階層構造)とが高く維持された状態で含まれる。すなわち、第1ネットワークゲルをテンプレートにして第2ネットワークが形成されるので、テンプレートの存在により無機ナノシートの状態が維持されたまま、第2ネットワークの形成に用いられるモノマーがテンプレート内に含まれ、この状態でモノマーを重合させると、第2ネットワークがテンプレート内に形成される。これにより、第1ネットワークゲルと第2ネットワークとからなるダブルネットワーク内に無機ナノシートが高い分散性、及び高い配向性を有した状態で維持されたダブルネットワークポリマー(無機ナノシート−第1ネットワーク−第2ネットワーク複合ゲル)が得られる。
このダブルネットワークポリマーが、高分散性と高配向性を維持している無機ナノシートと、第1ネットワークを構成するポリマー及び第2ネットワークを構成するポリマーとが複合化された、本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の1つである。
なお、この例においては、親水性の第1ネットワークゲル及び親水性の第2ネットワークを構成するポリマーを有して構成されるダブルネットワークポリマーと、親水性で液晶相の無機ナノシートとが複合化した無機ナノシート−ポリマー複合体が得られる。
更に、ダブルネットワークポリマーからテンプレートである第1ネットワークを除去することで無機ナノシートの分散性が高く、異方性を発揮する無機ナノシート−ポリマー複合体が、テンプレートが除去された、無機ナノシートを含有するポリマー複合体として取り出される。なお、第2ネットワークを形成するポリマーがエラストマーである場合、得られる複合体は、無機ナノシート−エラストマー複合体と呼ぶこともある。
なお、第2ネットワークを形成するためのモノマー等をテンプレートに含有させる前に、第1ネットワークゲルの溶媒(つまり、無機ナノシート分散液の溶媒)を有機溶媒に交換することもできる。溶媒交換することで、通常の方法では複合化が困難な疎水性の高い高分子と無機ナノシートとの複合化が容易にできる。すなわち、溶媒交換後、第1ネットワークゲルに疎水性のポリマーの出発材料であり、第2ネットワークを形成するためのモノマー、架橋剤、及び開始剤を含有させ、このモノマーを重合させることで第1ネットワークゲル内に疎水性の第2ネットワークを形成する。これにより、親水性の第1ネットワークゲル及び疎水性の第2ネットワークを構成するポリマーを有して構成されるダブルネットワークポリマーと、液晶相の無機ナノシートとが複合化した無機ナノシート−ポリマー複合体が得られる。
更に、ダブルネットワークポリマーからテンプレートである第1ネットワークを除去することで無機ナノシートの分散性が高く、異方性を発揮すると共に、従来の製法では実現できなかった、無機ナノシートと疎水性のポリマーとの複合体である無機ナノシート−ポリマー複合体を得ることができる。
なお、第1ネットワークゲルを合成する場合の架橋点は、分解性であることが好ましい。架橋点を分解性架橋点にすることで、第1ネットワークゲルの除去が容易になる。
ここで、ネットワークポリマーとは、ポリマー鎖がネットワーク(網目)構造を有するポリマーの総称であり、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、架橋エラストマー、及びソフトゲル等の各種の架橋ポリマーを指す。また、ネットワークゲルとは、ネットワークポリマーのゲルである。更に、ダブルネットワークポリマーとは、互いに独立した2種類のポリマーによるネットワーク構造を備えるポリマーを指す。本実施形態では、第1ネットワークを形成するポリマーと第2ネットワークを形成するポリマーとからなるポリマーを、ダブルネットワークポリマーと呼ぶ。そして、ダブルネットワークゲルとは、ダブルネットワークポリマーのゲルである。
以下、本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体、及びその製造方法について詳細に説明する。
<無機ナノシート−ポリマー複合体、及びその製造方法の詳細>
本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体は、おおよそ、無機ナノシート分散液を調製する無機ナノシート分散液調整工程と、第1ネットワークゲルを合成する第1ネットワークゲル合成工程と、第2ネットワークを合成することでダブルネットワークポリマーを合成するダブルネットワークポリマー合成工程とを備える。また、第1ネットワークゲル合成工程後に溶媒を交換する溶媒交換工程、及び/又はダブルネットワークポリマー合成工程後に第1ネットワークゲルを除去する第1ネットワークゲル除去工程を更に備えることもできる。
[無機ナノシート分散液]
無機ナノシート分散液調整工程で用いる無機ナノシート分散液は、無機材料から剥離して得られる無機ナノシートにより構成される秩序構造を有する無機ナノシート配向ドメインと、無機ナノシートの分散媒である溶媒とを含む無機ナノシート分散液である。具体的に、無機ナノシート分散液は、無機材料から剥離して得られる複数の無機ナノシートとその対イオン、溶媒、共存物質(例えば、塩、高分子電解質、コロイド粒子等)を含み、これら複数の無機ナノシートによる秩序構造(すなわち、配向秩序構造、又は二次元周期や三次元周期を有する位置秩序構造)を有する複数の無機ナノシート配向ドメインと、複数の無機ナノシートの分散媒である溶媒とを含んで構成される。そして、この無機ナノシート分散液は、溶媒中で自発的に液晶相を形成し、液晶相として挙動する。
無機ナノシート分散液において秩序構造は、板状の構造単位が一定の規則に従って配向・配列してなる構造である。例えば、秩序構造はラメラ構造である。そして、無機ナノシートは溶媒中においてラメラ構造を有する無機ナノシートの液晶相を形成する。また、無機ナノシート分散液において、無機ナノシートが液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有すると共に、無機ナノシート分散液中の無機ナノシートの濃度が液晶相を形成する濃度範囲内の濃度を有する。ここで、共存物質、溶媒組成、対イオン種、及び/又はナノシートの組合せや濃度は、秩序構造を形成させ、秩序構造の秩序性を最適化し、秩序構造の構造周期を制御するファクターである。
(無機ナノシート)
本実施の形態に係る無機ナノシートは、積層構造若しくは層状構造を有する無機材料を剥離させることによって得られる単位構造としての薄板形状の無機結晶である。無機ナノシートの組成及び形状は、無機材料の種類に応じて決定される。すなわち、無機ナノシートの組成は出発物質である無機材料の組成を反映しており、無機ナノシートの形状は出発物質である無機材料の結晶学的構造を反映している。したがって、無機ナノシートは、例えば、数nmの厚さ(例えば、フルオロヘクトライト等の粘土鉱物においては約1nm)及び数十nm以上数百μm以下程度の横幅を有する。これにより無機ナノシートは、異方性が極めて大きな形状(すなわち、非常に高いアスペクト比を有する形状)を有することになる。ここで、本実施の形態に係る無機ナノシートの「粒径」は以下のように定義する。
図1は、本実施の形態に係る無機ナノシートの模式的な図の一例を示す。具体的に図1(a)は、無機ナノシートの平面視における模式的な図の一例を示し、(b)は、無機ナノシートの断面の模式的な図の一例を示す。
無機ナノシート1の「粒径」は、実質的には無機ナノシート1の横幅である。図1に示すように、無機ナノシート1の平面視における最大幅を横幅wとした場合、この横幅wの平均値を本実施の形態における「粒径」とする。無機ナノシート1の「粒径」は、例えば、動的光散乱法等の測定手段を用いて計測及び算出できる。また、無機ナノシート1の厚さtは、無機ナノシート1の出発原料である無機材料の結晶構造に応じて決定される。
無機ナノシート1の出発材料としての無機材料は層状無機化合物である。層状無機化合物としては、グラファイト、層状金属カルコゲン化物、層状金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ニオブを主体とする層状ペロブスカイト化合物、チタン・ニオブ酸塩、モリブデン酸塩等)、層状金属オキシハロゲン化物、層状金属リン酸塩(例えば、層状アンチモンリン酸塩等)、粘土鉱物若しくは層状ケイ酸塩(例えば、雲母、スメクタイト族(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト等)、カオリン族(カオリナイト等)、マガディアイト、カネマイト等)、及び層状複水酸化物等が挙げられる。なお、本実施の形態では粘土鉱物若しくは層状ケイ酸塩が入手の容易さ等から好ましく用いられる。粘土鉱物若しくは層状ケイ酸塩としては、天然の粘土鉱物若しくは天然の層状ケイ酸塩、又は合成の粘土鉱物若しくは合成の層状ケイ酸塩のいずれを用いてもよい。また、本実施形態では、低コストで環境負荷が低く、低粘性、低濃度で構造秩序性の高いラメラ構造を形成しやすく、また、外場により配向制御が容易である観点から、粘土鉱物を用いることが好ましく、粘土鉱物のうちフルオロヘクトライトを用いることが好ましい。
(無機ナノシート配向ドメイン)
図2は、本発明の実施の形態に係る無機ナノシート配向ドメインの模式的な図の一例を示す。
無機ナノシート配向ドメイン10は、複数の無機ナノシート1が規則的な構造をとることで形成される。具体的に、無機ナノシート配向ドメイン10は、所定の面間隔dを有する秩序構造が、複数の無機ナノシート1により構成されることで得られる。例えば無機ナノシート配向ドメイン10は、数十μm以上数mm以下程度のサイズLを有して構成される。ここで、秩序構造はラメラ構造である。そして、本実施の形態に係るラメラ構造は、例えば、90nm以上300nm以下、好ましくは100nm以上280nm以下、より好ましくは110nm以上260nm以下程度、更に好ましくは120nm以上240nm以下程度の面間隔dを有する。なお、無機ナノシート配向ドメイン10は、溶媒中においてランダムな配向を有する。溶媒中における無機ナノシート配向ドメイン10の配向状態は、クロスニコル観察により確認できる。
(溶媒)
無機ナノシート分散液において、無機ナノシートの分散媒である溶媒は水系溶媒である。例えば、無機ナノシートの出発原料を粘土鉱物とした場合、純水を用いることができる。また、溶媒としては、水溶性の低いモノマーや開始剤の使用を目的として、無機ナノシートの出発原料である無機材料の種類に応じ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ノルマルホルムアミド等の他の極性溶媒と水との混合溶媒を用いることもできる。
(液晶相)
無機ナノシート分散液において、無機ナノシートは液晶相を自発的に形成する。無機ナノシート分散液の液晶相は、分散媒中において複数の無機ナノシートの主面が実質的に同一方向に向いた状態で定常的に配向して無機ナノシート配向ドメインを形成することで発現する。液晶相が形成されるか否かは、主として無機ナノシートの粒径と無機ナノシートの濃度によって決定される。すなわち、無機ナノシートの粒径及び無機ナノシートの濃度が、溶媒中で無機ナノシートの液晶相が形成される範囲内である場合、液晶相が形成される。
なお、液晶相の形成において、実測された等方相−液晶相転移濃度と無機ナノシート粒径との関係は剛体粒子間の排除体積のみを考慮したOnsagerの理論によってある程度は予測できる。しかしながら、本実施形態に係る秩序構造、すなわち、ラメラ構造の形成についてはOnsagerの理論では説明することが困難な面があり、また、ラメラ構造の面間隔が理想膨潤則と一致しない等、構造形成のメカニズムの詳細についてはまだ不明な点が多い。しかしながら本発明者らは、無機ナノシート−溶媒分子間、溶媒分子−対イオン間、無機ナノシート−対イオン間の相互作用のバランスや、枯渇効果等のエントロピー力によって、基本的な理論で想定されていない無機ナノシート間の引力相互作用が誘起されたためであると推測している。
[無機ナノシート分散液調整工程]
本実施の形態に係る無機ナノシート分散液の調整工程は、水系溶媒中に無機ナノシートを分散させ、無機ナノシート分散液を調製する工程を備える。より詳細には、概略、以下の各工程を備える。すなわち、層状無機化合物から無機ナノシートを剥離させる剥離工程と、剥離して得られた無機ナノシートの粒径を所定の粒径に制御する粒径制御工程と、粒径が制御された無機ナノシートの溶媒中における濃度を所定の濃度に調整する濃度調整工程とを備える。なお、粒径制御工程は、製造する無機ナノシート分散液に用いる無機ナノシート原料の種類によっては省略することができる。
(剥離工程)
まず、層状無機化合物から無機ナノシートを剥離させる。例えば、層状無機化合物を所定の溶媒に添加する。すると、層状無機化合物の層間に溶媒が侵入し、溶媒中で層状無機化合物の層間が膨潤する。これにより、層状無機化合物から無機ナノシートが剥離して、溶媒中に分散する。剥離した無機ナノシートは、溶媒中で分散コロイドを形成する。
(粒径制御工程)
次に、得られた無機ナノシートの粒径を所定の粒径に制御する。具体的には、無機ナノシートの分散コロイドに所定の振動数の弾性振動波を照射する。例えば、無機ナノシートの分散コロイドに、予め定められた時間、予め定められた振動数の超音波を照射する。これにより、無機ナノシートの粒径を所定の粒径範囲内の粒径に制御する。ここで、無機ナノシートの粒径が小さくなりすぎると無機ナノシート分散液の液晶性が喪失される場合があるので、粒径制御工程においては、無機ナノシートの粒径を無機ナノシートの液晶相が溶媒中で形成される範囲内の粒径に制御することが好ましい。
(濃度調整工程)
そして、所定の粒径に制御された無機ナノシートの溶媒中における濃度を調整する。すなわち、少なくとも無機ナノシートの液晶相が形成される濃度以上の濃度に、無機ナノシートの溶媒中における濃度を調整する。これにより、本実施の形態に係る無機ナノシート分散液が得られる。
なお、無機ナノシートの出発原料である無機材料や無機ナノシート分散液の溶媒の種類によっても異なるが、無機ナノシート分散液の製造方法は、以下の各工程を備えることもできる。
まず、無機ナノシート分散液の製造方法は、剥離工程と粒径制御工程との間に遠心分離工程を備えることができる。剥離工程において、層状無機化合物を溶媒に分散させた分散液を準備した場合、分散液には不純物、未剥離又は剥離度の低い層状物質、及び無機ナノシートの分散コロイドが混合していることがある。したがって、この分散液を遠心分離することで、主成分を溶媒とする上澄み液と、無機ナノシートの分散コロイドと、主として不純物からなる沈殿物とを分離する。また、無機ナノシート分散液の製造方法は、遠心分離工程の後に、遠心分離により分離された無機ナノシートの分散コロイドを採取する採取工程を備えることもできる。この採取工程で、無機層状化合物から完全に剥離した無機ナノシートを採取する。
[第1ネットワークゲル合成工程]
第1ネットワークゲル合成工程は、無機ナノシート分散液調製工程で得られた無機ナノシート分散液に、第1の重合性モノマーと、架橋剤と、第1の重合開始剤とを含有させる。そして、第1の重合性モノマーを重合させる。これにより、架橋剤に基づく架橋単位、すなわち、第1の重合性モノマーが重合して合成されるポリマーが架橋点によって架橋されて形成される第1ネットワークによる第1ネットワークゲルが合成される。
ここで、本実施形態においては無機ナノシート分散液の溶媒が水系溶媒である場合、水系溶媒に混合若しくは溶解する溶媒、すなわち、水系溶媒若しくは極性溶媒に混合若しくは溶解する第1の重合性モノマー、架橋剤、及び第1の重合開始剤を用いる。なお、無機ナノシート分散液の溶媒が無極性溶媒の場合は、無極性溶媒に混合若しくは溶解する第1の重合性モノマー、架橋剤、及び第1の重合開始剤を用いる。
また、第1ネットワークゲル内には、無機ナノシートが含有されている。本実施形態においては、第1ネットワークゲルは、液晶相の無機ナノシートを含有する。すなわち、無機ナノシートは、第1ネットワークゲル内において液晶相の状態が維持されている。
なお、用いる重合反応は特に限定されないが、例えば、光ラジカル開始剤を用いたラジカル重合法が挙げられる。
第1ネットワークゲルを構成する第1ネットワークとしてのポリマーは、無機ナノシート分散液に混合若しくは溶解可能な出発物質から合成可能なポリマーであり、第1の重合性モノマーを重合し、架橋することでネットワーク構造を形成できるポリマーであれば様々なポリマーを用いることができる。無機ナノシート分散液の溶媒が水系溶媒である場合、第1ネットワークとしてのポリマーは親水性であることが好ましい。例えば、第1ネットワークを構成するポリマーのネットワーク構造内(三次元構造内)に水が含有されて膨潤したゲルである、ハイドロゲルを用いることが好ましい。例えば、第1ネットワークとしてのポリマーは、ポリジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
(第1の重合性モノマー)
第1の重合性モノマーとしては、特に限定されないが、アミド基を有するモノマー、水酸基を有するモノマー、又はカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。例えば、(メタ)アクリルアミド誘導体、ヒドロキシ基やアミノ基等を含有する(メタ)アクリレート、及びその他のモノマーが挙げられる。ここで、(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを示す。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
((メタ)アクリルアミド誘導体)
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、又はメタクリロイルモルホリン等が挙げられる。
(ヒドロキシ基やアミノ基等を含有する(メタ)アクリレート)
(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の第1の重合性モノマーとしては、アクリロニトリル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル等の水溶性のモノマーや、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。これらの第1の重合性モノマーは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(架橋剤)
架橋剤としては、第1ネットワークを構成するポリマーを架橋させる化合物、すなわち、2個以上の架橋性官能基、及び/又は1個以上の極性基を分子内に有する化合物であれば各種の化合物を用いることができる。
また、本実施形態において、第1ネットワークゲル合成工程で用いる架橋剤は、分解性架橋剤であることが好ましい。分解性架橋剤は、所定の条件(すなわち、分解条件)下で、ポリマー内において分解性架橋剤に由来する架橋点が分解されて、架橋ポリマーの架橋度の減少に寄与する架橋剤である。すなわち、分解性架橋剤は、ポリマー鎖同士を架橋した後において、ポリマー鎖が架橋されている部分である架橋点が所定の作用により分解する、分解性の結合を形成する架橋剤である。
具体的に、分解性架橋剤は、架橋剤自体が、所定の条件下で少なくともその一部が分解する架橋剤や、所定の条件下で当該分解性架橋剤による架橋点の少なくとも一部が分解することでポリマーの膨潤等の物性変化を開始させることができる架橋剤である。ここで、所定の条件とは、pH条件、溶媒の種類の条件、光や熱等のエネルギー条件、及び/又は振動等の外力条件等が挙げられる。なお、分解性架橋剤は、分解速度や分解の程度等が異なっていてもよい。分解性架橋剤としては、例えば、酸、アルカリ等に反応して分解する架橋点を形成する架橋剤、所定の溶媒に接することで分解する架橋点を形成する架橋剤、光や熱等のエネルギーを与えることにより分解する架橋点を形成する架橋剤、振動等の外力に応じて分解する架橋点を形成する架橋剤等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ジアリルアミン、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリアリルアミン、ビス(ビニルスルホニル)メタン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,6−ビス(アクリロイルオキシ)ヘキサン、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、ビス(ビニルスルホニル)メタン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、N,N’−ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミン、アジピン酸ジアリル、10−ウンデセン酸ビニル、trans,cis−2,6−ノナジエナール、アジピン酸ジビニル、cis−3−ヘキセン酸cis−3−ヘキセニル、2−イソプロペニル−5−メチル−5−ビニルテトラヒドロフラン、(2,7−オクタジエン−1−イル)こはく酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル(cis−,trans−混合物);ジビニルグリコール、ジビニルスルホン、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、ビスアクリル酸1,4−フェニレン、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、N,N’−ジアクリロイルエチレンジアミン、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド;ジアクリル酸1,4−ブタンジオール等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いても、複数種類を併用してもよい。
架橋性官能基としては、例えば、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。また、極性基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
また、分解性架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジ、(トリ)、若しくは(テトラ)(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等のエステル結合を有する多官能化合物が挙げられる。
また、分解性架橋剤として所定の条件で分類する場合、酸分解性架橋剤、加水分解性架橋剤、光分解性架橋剤、及び熱分解性架橋剤等が挙げられる。
酸分解性架橋剤としては、酸の作用により分解する架橋点を形成する化合物であって、例えば、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
加水分解性架橋剤としては、アルカリの作用により分解する架橋点を形成する化合物であって、例えば、分子内に2個以上10個以下のエチレン性不飽和結合を有する共重合性架橋剤が挙げられ、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアクリレート等が挙げられる。
光分解性架橋剤としては、所定の波長の光の作用により分解する架橋点を形成する化合物が挙げられる。光分解性架橋剤としては、例えば、April M.Kloxinら,Science,324,59−63(2009)等に記載の光分解性アクリレートのペンダントヒドロキシル基による光不安定性部分のアクリル化によって塩基性の光分解性モノマーを合成し、続いて、ポリエチレングリコール‐ビス‐アミンにペンダントカルボン酸を結合させて光開裂性架橋ジアクリレートマクロマーを作製し、そこからポリエチレングリコールベースの光分解性ハイドロゲルを合成することで得られるニトロベンジルエーテル部位を有する化合物等が挙げられる。
熱分解性架橋剤としては、所定の温度で分解する架橋点を形成する化合物であって、例えば、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸等が挙げられる。
本実施形態において、架橋剤は、第1の重合性モノマー100重量部に対して、1重量部以上13重量部以下添加することが好ましい。
(第1の重合開始剤)
第1の重合開始剤としては、第1ネットワークを構成するポリマーの合成方法に応じ、光開始剤、熱開始剤、又はレドックス開始剤等を用いることができる。
光開始剤としては、光ラジカル発生剤や、光塩基発生剤、光酸発生剤等を用いることができる。光ラジカル発生剤は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生させる化合物である。
光開始剤としては、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α−アミノアルキルフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、α−アミノアルキルフェノン系重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系重合開始剤、及びオキシムエステル系重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の開始剤を用いることが好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤として、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、α−アミノアルキルフェノン系重合開始剤として、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
また、α−ヒドロキシケトン系重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)、メタノン,エタノン,1−[9−エチル−6−(1,3−ジオキソラン,4−(2−メトキシフェノキシ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)等が挙げられる。
熱開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、クメンハイドロパーオキサイト等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
レドックス開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤と還元剤(メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ尿素化合物等)との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンとの組み合わせ(例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンとの組み合わせ、クメンハイドロパーオキサイドとアニリン類との組み合わせ等);有機過酸化物と遷移金属との組み合わせ等が挙げられる。
本実施形態において、第1の重合開始剤は、第1の重合性モノマー100重量部に対して、1重量部以上35重量部以下添加することが好ましい。
[ダブルネットワークポリマー合成工程]
ダブルネットワークポリマー合成工程は、第1ネットワークゲル合成工程で得られた液晶相の無機ナノシートを含む第1ネットワークゲルに、第2の重合性モノマーと、架橋剤と、第2の重合開始剤とを含有(若しくは含侵)させる。そして、第2の重合性モノマーを重合、架橋させる。これにより第2ネットワークを第1ネットワークゲル内に合成し、液晶相の無機ナノシート、第1ネットワークゲル、及び第2ネットワークを含むダブルネットワークポリマーを合成する。
本実施形態では、第1ネットワークゲル内の無機ナノシートは液晶相の状態を維持している。この状態の第1ネットワークゲル内において第2の重合性モノマーを重合、架橋させて第2ネットワークを第1ネットワークゲル内に形成することでダブルネットワークポリマーが合成される。これにより、第1ネットワークゲルと第2ネットワークとを含み、第1ネットワークゲル及び第2ネットワーク内で無機ナノシートの液晶相が維持されているダブルネットワークポリマーが合成される。
ここで、第1ネットワークゲル合成工程後に溶媒交換をしない場合、水系溶媒に混合若しくは溶解する第2ネットワークの出発材料、すなわち、水系溶媒若しくは極性溶媒に混合若しくは溶解する第2の重合性モノマー、架橋剤、及び第2の重合開始剤を用いる。この場合、第2ネットワークを構成するポリマーは、無機ナノシート分散液に混合若しくは溶解可能な出発物質から合成可能なポリマーであり、第2の重合性モノマーを重合し、架橋することでネットワーク構造を形成できるポリマーであれば様々なポリマーを用いることができる。この場合、第2ネットワークを構成するポリマーは、例えば、第1ネットワークを構成するポリマーや、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(pNIPA)等が挙げられる。但し、第1ネットワークを構成するポリマーと第2ネットワークを構成するポリマーとは互いに相違する。また、無機ナノシート分散液の溶媒が水系溶媒である場合、第2ネットワークを構成するポリマーは、親水性であることが好ましい。なお、無機ナノシート分散液の溶媒が無極性溶媒の場合は、無極性溶媒に混合若しくは溶解する第2の重合性モノマー、架橋剤、及び第2の重合開始剤を用いる。
水系溶媒若しくは極性溶媒に混合若しくは溶解する第2の重合性モノマー、架橋剤、及び第2の重合開始剤を用いる場合、第2の重合性モノマーとしては、第1の重合性モノマーにおいて説明したモノマーを用いることができる。また、架橋剤としては、第1ネットワークゲル合成工程において説明した架橋剤を用いることができる。更に、第2の重合開始剤としては、第1の重合開始剤において説明した開始剤を用いることができる。この場合において、第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーとは相違する。なお、架橋剤、及び第2の重合開始剤は、第1ネットワークゲル合成工程における架橋剤、及び第1の重合開始剤と同一でも異なっていてもよい。
一方、第1ネットワークゲル合成工程後に溶媒交換をする場合(例えば、水系溶媒を有機溶媒に交換する場合)、第2の重合性モノマー、架橋剤、及び第2の重合開始剤としては、疎水性若しくは無極性溶媒(典型的には、トルエン)に溶解する化合物を用いることができる。この場合において、第2のネットワークを構成するポリマーは水系溶媒に溶解しないポリマー、すなわち、疎水性のポリマーである。疎水性のポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ニトリルブタジエンゴム等のポリマー若しくはエラストマー、更には、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸(例えば、新日本理化株式会社製のリカシッドMH700G)やジエトキシジメチルシラン等による第2のネットワークが挙げられる。
疎水性若しくは無極性溶媒に溶解する第2の重合性モノマー、架橋剤、及び第2の重合開始剤としては、上記の疎水性のポリマーの出発物質として公知の化合物を適宜用いることができる。また、疎水性のポリマーの重合方法としても特に限定はなく、第1ネットワークゲル合成工程において説明したラジカル重合法等の重合方法を用いることができる。なお、第2ネットワークの重合において、架橋剤は、第2の重合性モノマー100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下添加することが好ましい。また、第2ネットワークの重合において、第2の重合開始剤は、第2の重合性モノマー100重量部に対して、0.1重量部以上1.0重量部以下添加することが好ましい。
[溶媒交換工程]
本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法は、第1ネットワークゲル合成工程の後に、無機ナノシート分散液、及び/又は第1ネットワークゲル合成工程において用いた水系溶媒を他の溶媒に交換する溶媒交換工程を更に備えてもよい。他の溶媒としては、有機溶媒が好ましい。溶媒を有機溶媒に交換することで、ダブルネットワークポリマー合成工程において用いる第2の重合性モノマー、架橋剤、及び/又は第2の重合開始剤として、有機溶媒に可溶な化合物、すなわち、疎水性の化合物を用いることができる。これにより、第2のネットワークを構成するポリマーを疎水性ポリマーにすることができる。有機溶媒としては公知の各種の有機溶媒を用いることができる。
[第1ネットワークゲル除去工程]
本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法は、ダブルネットワークポリマーから第1ネットワークゲルを除去する第1ネットワークゲル除去工程を更に備えてもよい。第1ネットワークゲル除去工程は、例えば、ダブルネットワークポリマーに所定の温度で分解剤を作用させることで第1ネットワークゲルを分解し、第1ネットワークゲルを除去することができる。ダブルネットワークポリマーから第1ネットワークゲルを除去することで、第2ネットワークと液晶相の無機ナノシートとを含んで構成される無機ナノシート−ポリマー複合体(エラストマー)が合成される。
分解剤は、第1ネットワークゲル内の架橋点の性質に応じて適宜選択できる。架橋点が酸分解性架橋剤を用いて構成される場合、分解剤は酸である。また、架橋点が加水分解性架橋剤を用いて構成される場合、分解剤はアルカリである。分解剤により分解された第1ネットワークゲルは、ろ過や透析等により除去される。一方、架橋点が光分解性架橋剤を用いて構成される場合、ダブルネットワークポリマーに所定波長の光を所定時間、照射することで第1ネットワークゲルが分解され、分解された第1ネットワークゲルをろ過や透析等により除去することができる。更に、架橋点が熱分解性架橋剤を用いて構成される場合、ダブルネットワークポリマーを所定の温度で所定時間、加熱することで第1ネットワークゲルが分解され、分解された第1ネットワークゲルをろ過や透析等により除去することができる。
酸は、酸分解性架橋剤の種類によって適宜選択できる。アルカリも同様である。また、ダブルネットワークポリマーに照射する光についても、光分解性架橋剤の種類によって、その光のピーク波長、照射時間、及び積算光量は適宜調整でき、光源についても特に限定はない。ダブルネットワークポリマーに与える熱については、熱分解性架橋剤の種類によって、その温度、及び加熱時間は適宜調整できる。
本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体は、医療材料、ソフトアクチュエータを構成する材料、誘電エラストマー型発電素子を構成する材料、導電性エラストマーセンサーを構成する材料、自動車部品用材料等の様々な分野に応用できる。また、無機ナノシート−ポリマー複合体は、異方的な物性や弾性率等の物性の向上が要求される部品の素材としての応用が期待される。
<実施の形態の効果>
本実施の形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法においては、第1ネットワークゲルをテンプレートにし、テンプレート内部に第2ネットワークを合成できるので、第1ネットワークゲルを構成するポリマーと第2ネットワークを構成するポリマーとの双方の特性を有し、無機ナノシートの分散性が高く、配向が高く制御されたダブルネットワークポリマー(無機ナノシート−第1ネットワーク−第2ネットワーク複合ゲル)を合成することができる。
また、本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法においては、ダブルネットワークポリマーから第1ネットワークゲルを除去することができるので、無機ナノシートの分散性が高く、配向が高く制御された無機ナノシート−ポリマー複合体(エラストマー)を合成することもできる。ここで、第1ネットワークゲルの合成時に分解性架橋剤を用いることで、第1ネットワークゲルの除去を容易にできる。
更に、本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法においては、第1ネットワークゲル合成時に無機ナノシートの配向及び分散性を制御できる。そして、得られるダブルネットワークポリマー、及び無機ナノシート−ポリマー複合体内でも第1ネットワークゲル内での無機ナノシートの配向と分散性とが維持される(引き継がれる)ので、無機ナノシートの配向及び分散性について従来よりも高い自由度で設計できる。
以下、実施例を用い、本実施形態に係る無機ナノシート−ポリマー複合体、及びその製造方法について具体的に説明する。
[無機ナノシート分散液の調整]
まず、分散剤を添加していない合成フルオロヘクトライト/水コロイド分散液(FHT−CF. Lot.No.30329、トピー工業製)を出発原料として準備した。この出発原料は等方相であった。次に、この合成フルオロヘクトライト/水コロイド分散液を複数の遠沈管に均等に入れた。そして、遠心分離機(HITACHI製CF−15RXII)を用い、回転速度1500rpmで1時間、遠沈管の合成フルオロヘクトライト/水コロイド分散液を遠心分離した。
遠心分離後の遠沈管には上澄みと、中間層と、最下層とが存在していた。上澄みは主成分が水であり、中間層は流動性のある無機ナノシートの分散コロイドであり、最下層は灰色の不純物を含む沈殿物であった。遠沈管から上澄みを除去し、中間層の無機ナノシートの分散コロイドのみを採取した。
ここで、無機ナノシートの分散コロイドの一部を採取し、重量を測定した。更に、採取した一部の無機ナノシートの分散コロイドを乾燥させ、乾燥後の重量を測定した。そして、無機ナノシートの分散コロイドの乾燥前後による重量比から無機ナノシートの分散コロイドの濃度を算出した。続いて、算出した濃度に基づいて、遠心分離後に得られた無機ナノシートの分散コロイドを200ml、2wt%の濃度に純水を用いて調整した。
なお、無機ナノシートの平均粒径は、得られた無機ナノシートの分散コロイド中の無機ナノシートをダイナミック光散乱光度計(Photal DLS−8000、大塚電子株式会社製)によって測定することにより得た。測定により得られた平均粒径は、860nm(標準偏差390nm)であった。
次に、無機ナノシートに純水を添加して、無機ナノシートの純水中における濃度を調製した。すなわち、無機ナノシートの分散コロイドを2wt%の濃度に調整した試料を作製した。これにより、無機ナノシート分散液(以下、「フルオロヘクトライト(FHT)ナノシート水分散液」と称する。)が得られた。
[第1ネットワークゲルの合成]
次に、10mlのフルオロヘクトライト(FHT)ナノシート水分散液に、モノマーとして6.4重量部のN‘N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、酸分解性架橋剤として0.41重量部の3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン(DVTO)、重合開始剤として0.37重量部の2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノンを溶解させた。ここに光照射(光源:東芝FL10BLB、ピーク波長:350nm、積算光量:93.6mJ/cm、照射時間:120分)して光重合を進行させ、酸分解性架橋点を有する第1ネットワークゲル(FHT/pDMAA分解性ゲル、ポリジメチルアクリルアミドゲル)を得た。
[ダブルネットワークポリマーの合成]
続いて、得られた第1ネットワークゲルに、第2の重合性モノマーとして6.4重量部のN−イソプロピルアクリルアミド(NIPA)、架橋剤として4.1重量部のN’N−メチレンビスアクリルアミド、第2の重合開始剤として3.7重量部の2−ヒドロキシ―4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノンを含侵させた。ここに光照射(光源:東芝FL10BLB、ピーク波長:350nm、積算光量:1123mJ/cm、照射時間:1440分)してダブルネットワークポリマー(FHT/pDMAA/pNIPAゲル、ポリジメチルアクリルアミドゲルとポリN−イソプロピルアクリルアミドのダブルネットワークゲル)を合成した。なお、このダブルネットワークポリマーは、ゲル状であった。
[第1ネットワークゲルの目視観察]
得られた第1ネットワークゲルを偏光顕微鏡(Olympus社製、BX51)で観察した。その結果、無機ナノシートの液晶相の発現に起因する複屈折が観察された。液晶相は、完全剥離した無機ナノシートが大部分を占めた状況でのみ発現することが分かっている。一方、無機ナノシートの凝集物は観察されなかった。したがって、第1ネットワークゲル内においてFHTが、高い分散性で分散していると考えられた。
[第1ネットワークゲルの酸分解性]
得られた第1ネットワークゲルを水、3Mの塩酸(pKa=−7.0)、1.5Mの硫酸(pKa=−3.0)、3Mのメタンスルホン酸(pKa=−2.6)のそれぞれに浸し、100℃30分の加熱処理をして、その酸分解性を確認した。その結果、3Mのメタンスルホン酸に浸して100℃30分に加熱することで第1ネットワークゲルが完全に分解することが確認された。なお、3Mの塩酸、及び1.5Mの硫酸を用いた場合は、第1ネットワークゲルは一部、分解することが確認された。
[ダブルネットワークポリマーのキャラクタリゼーション(目視観察)]
得られたダブルネットワークポリマーをクロスニコル観察した(Olympus社製のBX51を使用)。その結果、強い複屈折が確認された。無機ナノシートが凝集した場合や、無機ナノシートが高い配向性の液晶状態を保持していない場合、このような複屈折は観察されない。したがって、実施例で合成したダブルネットワークポリマー中で、無機ナノシートが高い分散性と配向状態とを保持していることが確認された。
[ダブルネットワークポリマーの体積相転移]
第1ネットワークゲル(FHT/pDMAA分解性ゲル)とダブルネットワークポリマー(FHT/pDMAA/pNIPAゲル)とのそれぞれを、略正方形の形状にし、室温(23℃)における形状と、80℃下における形状とを確認した。なお、第1ネットワークゲルについては、約18mm角の略正方形の形状にし、ダブルネットワークポリマーについては、約11mm角の略正方形の形状にし、厚さはいずれも約1.0mmにした。
その結果、第1ネットワークゲルにおいて、80℃における体積は室温における体積より約30%収縮することが確認された。また、ダブルネットワークポリマーにおいて、80℃における体積は室温における体積より約10%収縮することが確認された。加熱による体積収縮は、ポリN−イソプロピルアクリルアミド特有の性質である。したがって、これにより、ダブルネットワークポリマーにおいては、ポリジメチルアクリルアミドとポリN−イソプロピルアクリルアミドとからなるダブルネットワークポリマーが合成されていることが確認された。
[小角X線散乱測定]
図3は、第1ネットワークゲル及びダブルネットワークゲルの小角X線散乱測定の結果を示す。具体的に図3は、2次元パターンを円環積分して得られる、散乱ベクトルqに対する散乱強度Iを示すグラフである。
第1ネットワークゲル(FHT/pDMAAゲル)、及びダブルネットワークゲル(FHT/pDMAA/pNIPAゲル)について小角X線散乱測定(Rigaku社製、NANOPIX)をした。なお、測定条件は、X線源CuKαで30V,40mA、カメラ長720mm厚さ1mmの試料を1時間測定した。その結果、2次元パターンでいずれのゲルも、強い異方性を示す散乱が確認されたことから、無機ナノシートの液晶相に由来する高い配向性が、いずれのゲルにおいても保持されていることが確認された。更に、図3に示すように、2次元パターンを円環積分して得られる、散乱ベクトルqに対する散乱強度Iを示すグラフにおいていずれのゲルにおいてもI〜q−2のベキ則が観察された。このことから、いずれのゲルにおいても無機ナノシートが凝集を起こさず、高い分散状態を保っていることが示された。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
1 無機ナノシート
10 無機ナノシート配向ドメイン
w 横幅
t 厚さ
L サイズ
d 面間隔

Claims (9)

  1. 水系溶媒中に無機ナノシートを分散させ、無機ナノシート分散液を調製する無機ナノシート分散液調製工程と、
    前記無機ナノシート分散液に、第1の重合性モノマーと、架橋剤と、第1の重合開始剤とを含有させ、前記第1の重合性モノマーを重合させることで架橋点を有する第1ネットワークゲルを合成し、前記無機ナノシートを前記第1ネットワークゲル内に含有させる第1ネットワークゲル合成工程と、
    第2の重合性モノマーと、架橋剤と、第2の重合開始剤とを前記第1ネットワークゲルに含有させ、前記第2の重合性モノマーを重合させることで第2ネットワークを合成し、前記無機ナノシート、前記第1ネットワークゲル、及び前記第2ネットワークを含むダブルネットワークポリマーを合成するダブルネットワークポリマー合成工程と
    を備える無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  2. 前記無機ナノシート分散液調製工程が、液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有する前記無機ナノシートを、液晶相を形成する濃度範囲内の濃度で分散させて前記無機ナノシート分散液を調製する請求項1に記載の無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  3. 前記第1ネットワークゲルが、液晶相の前記無機ナノシートを含有する請求項1又は2に記載の無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  4. 前記無機ナノシートが液晶相の状態であり、
    前記ダブルネットワークポリマーが、前記第1ネットワークゲルと前記第2ネットワークとを含み、前記第1ネットワークゲル及び前記第2ネットワーク内で前記無機ナノシートの前記液晶相が維持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  5. 前記第1ネットワークゲル合成工程の後に、前記水系溶媒を有機溶媒に交換する溶媒交換工程
    を更に備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  6. 前記ダブルネットワークポリマーから前記第1ネットワークゲルを除去する第1ネットワークゲル除去工程
    を更に備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  7. 前記第1ネットワークゲル合成工程における架橋剤が、分解性架橋剤である請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機ナノシート−ポリマー複合体の製造方法。
  8. 無機ナノシートと、
    架橋点を有する、親水性の第1ネットワークゲルと、
    疎水性又は親水性の第2ネットワークと
    を含有し、
    前記第1ネットワークゲルと前記第2ネットワークとによるダブルネットワークポリマー内で、前記無機ナノシートが液晶相を維持している無機ナノシート−ポリマー複合体。
  9. 無機ナノシートと、
    疎水性のネットワークゲルと
    を含有し、
    前記ネットワークゲル内で前記無機ナノシートが液晶相を維持している無機ナノシート−ポリマー複合体。
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