JP2020015670A - Enpp1阻害剤及びその用途 - Google Patents

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充康 川口
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充康 川口
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秀彦 中川
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Abstract

【課題】阻害活性及び/又は選択性が高い新規ENPP1阻害剤を提供することを課題とする。【解決手段】1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジンを母骨格としたENPP1阻害剤及びそれを有効成分とした医薬等が提供される。【選択図】なし

Description

本発明はENPP1(Ecto-Nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1)阻害剤及びその用途(医薬、がん治療等)に関する。
ENPP1 (Ecto-Nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1) は細胞外でATPなどのヌクレオチドを代謝する加水分解酵素である。ENPP1はピロリン酸を産生する酵素であることから骨代謝に重要であるだけでなく、インスリン受容体と相互作用しインスリン抵抗性を惹起することから2型糖尿病にも関与することが古くから知られていた。一方、近年ENPP1は乳がんや脳腫瘍で過剰発現することが示され、がん幹細胞性の形成・維持に関与することが報告されただけでなく(非特許文献1、2)、STINGのリガンド分子であるcGAMPの加水分解にも関与し自然免疫系を不活化することが示された(非特許文献3)。興味深いことに、乳がんにおいてはトリプルネガティブに分類される悪性度の高い腫瘍においてその発現が高い点から(非特許文献4)、ENPP1は治療法が十分確立されていない腫瘍における新たな創薬標的になる可能性がある。
これまでにもENPP1阻害剤の報告があるものの(図6)、基質であるATPを模倣した阻害剤が多く、またdrug-likeな構造を持つ阻害剤においてもATPを基質とした場合に阻害活性が非常に弱いことが知られていた。加えて、これらの化合物において乳がん細胞株などに対する増殖阻害活性については検討されていなかった。
Nat. Commun. 6, 7318 (2015). Cell Death Differ. 21, 929-940(2014). Nat. Chem. Biol. 10, 1043-1048 (2014). PLoS One 8, e66752 (2013).
上記背景の下、本発明は阻害活性及び/又は選択性が高く、ENPP1を標的とした治療薬の有効成分等への応用を期待できる新規ENPP1阻害剤を提供することを課題とする。
有用性の高いENPP1阻害剤を見出すべく、様々な化合物を被験物質として大規模スクリーニングを実施した結果、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジンを母核とした化合物に優れたENPP1阻害活性が認められたことから、当該化合物の類似化合物/誘導体を新たに合成し、その特性を評価した。その結果、阻害活性及び選択性(特異性)に優れた複数の化合物の同定に成功した。また、特筆すべきことに、ENPP1に対して優れた阻害活性及び選択性を示した化合物は、トリプルネガティブ乳がん細胞株及びラット由来グリオーマ細胞株の増殖を阻害し、新たな治療法の確立が切望されるがん/悪性腫瘍に対する治療薬への応用が期待できるものであった。
以下の発明は上記の成果及び考察に基づく。
[1]以下の化学式1で表されるENPP1(Ecto-Nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1)阻害剤:
Figure 2020015670
但し、式中のR1は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセトアミド基、シアノ基、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、又は置換もしくは非置換のアルキニルである。
[2]前記式中のR1が水素原子、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセトアミド基、メチル基又はメトキシ基である、[1]に記載のENPP1阻害剤。
[3]前記式中のR1が水素原子、4-クロロ、2-クロロ、3-クロロ、3-フルオロ、3-メチル、3,4−ジメトキシ、4-ニトロ、3-ニトロ、2-ニトロ、4-アミノ、4-アセトアミド、3-アミノ、3-アセトアミド又は3-ヒドロキシである、[1]に記載のENPP1阻害剤。
[4]以下の化学式2〜5のいずれかで表される、[1]に記載のENPP1阻害剤。
Figure 2020015670
Figure 2020015670
Figure 2020015670
Figure 2020015670
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載のENPP1阻害剤又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する医薬。
[6]ENPP1の高発現を認めるがんの治療に使用される、[5]に記載の医薬。
[7]トリプルネガティブに分類される乳がん又は神経膠腫の治療に使用される、[5]に記載の医薬。
[8]標的のがん細胞に細胞死を誘導することにより治療効果を発揮する、[6]又は[7]に記載の医薬。
[9]がん患者に対して、[6]に記載の医薬を治療上有効量投与するステップを含む、がんの治療法。
[10][1]〜[4]のいずれか一項に記載のENPP1阻害剤を含む研究用試薬。
化合物51618のENPPファミリー間での阻害の選択性。 化合物51618のATPを基質とした際のENPP1阻害活性。 化合物51618のがん細胞増殖阻害活性。トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231細胞およびラット由来グリオーマ細胞株C6細胞でENPP1が過剰発現していることが知られている。N. C. = ネガティブコントロール化合物。 MDA-MB-231細胞に対する化合物51618 (100μM) の継時的な増殖阻害作用。 細胞死の観察。化合物51618 (100μM) はMDA-MB-231細胞において細胞死を誘導した。DIC:微分干渉観察(differential interference contrast)。PI:プロピジウムヨージド。 既存のENPP1阻害剤の構造、及びpNP-TMPあるいはATPを基質として用いた際の阻害定数 (Ki)。
本発明の第1の局面はENPP1(Ecto-Nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1)阻害剤に関する。「ENPP1阻害剤」とは、ENPP1の活性を阻害ないし抑制する剤である。ENPP1は特に細胞外でのATPの加水分解に関与する。前述の通り、ENPP1は骨代謝や2型糖尿病にも関与する。また、乳がんや脳腫瘍での過剰発現が認められ、がん/悪性腫瘍の標的としても重要と考えられる。事実、後述の実施例に示す通り、本発明者らが見出したENPP1阻害剤は、悪性度の高いトリプルネガティブ乳がん細胞株及びグリオーマ細胞株に対して増殖阻害活性を示し、乳がんや脳腫瘍の治療への適用が期待できるものであった。
ENPP1はENPPファミリーに属する代表的な分子である。ENPPファミリーには、ENPP1の他、ENPP2〜ENPP7が含まれる。本発明のENPP1阻害剤はENPP1に対して高い阻害活性を示す。本発明の好ましい態様のENPP1阻害剤は、この点に加え、ENPP1に対する選択性が高いことによっても特徴付けられる。本明細書において「ENPP1に対する選択性が高い」とは、ENPPファミリーメンバー分子の中で選択的に(換言すれば特異的に)ENPP1を阻害することを意味する。ENPP1に対する選択性が高いことは副作用の軽減の点で重要であり、ENPP1に対する選択性が高いENPP1阻害剤には、例えば、in vivoで用いる際、ENPP3阻害により惹起され得るアレルギー反応を回避ないし抑制できるという利点がある。ATPを基質として用いた場合の阻害活性で比較した場合、本発明のENPP1阻害剤のENPP1に対する阻害活性は、ENPP2〜7に対する阻害活性の例えば2倍以上、好ましくは4倍以上、更に好ましくは8倍以上、一層好ましくは10倍以上である。
本発明のENPP1阻害剤は以下の化学式1で表される。
Figure 2020015670
但し、式中のR1は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセトアミド基、シアノ基、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、又は置換もしくは非置換のアルキニルである。
「ハロゲン」とは第17属元素であり、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が該当する。本発明におけるハロゲンは、好ましくはフッ素又は塩素である。
「アルキル」とは、炭素数が例えば1〜10、好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を意味する。アルキルの具体例はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n-へプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシルである。
「アルケニル」とは、1以上の二重結合(位置は特に問わない)を有する、炭素数が例えば2〜10、好ましくは3〜8、更に好ましくは3〜6の直鎖又は分枝状の炭化水素基を意味する。アルケニルの具体例はビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、プレニル、ブタジエニル、ペンテニル、イソペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、イソヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルである。
「アルキニル」とは、1以上の三重結合(位置は特に問わない)を有する、炭素数が例えば2〜10、好ましくは2〜6、更に好ましくは2〜4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を意味する。アルキニルの具体例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルである。尚、三重結合に加えて二重結合(位置は特に問わない)を有していてもよい。
アルキル、アルケニル及びアルキニルにおける置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アミノ、カルボキシ、メルカプト、芳香族炭素環式基、非芳香族炭素環式基、芳香族複素環式基、非芳香族複素環式基、置換カルバモイル、置換スルファモイル、置換アミジノ等を挙げることができる。置換基の数、位置は特に限定されない。
好ましくは、式中のR1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセトアミド基、メチル基又はメトキシ基である。
更に好ましくは、式中のR1は水素原子、4-クロロ、2-クロロ、3-クロロ、3-フルオロ、3-メチル、3,4−ジメトキシ、4-ニトロ、3-ニトロ、2-ニトロ、4-アミノ、4-アセトアミド、3-アミノ、3-アセトアミド又は3-ヒドロキシである。
特に好ましいENPP1阻害剤として、以下の4つの化合物(化学式2〜5)を挙げることができる。
Figure 2020015670
Figure 2020015670
Figure 2020015670
Figure 2020015670
これらの化合物はENPP1に対する阻害活性及び選択性が高い。また、トリプルネガティブ乳がん細胞株及びマウスグリオーマ細胞株に対する優れた増殖阻害活性を示した。
上記の通り、ENPP1は骨代謝や2型糖尿病に関与する他、乳がんや脳腫瘍等における標的としても重要と考えられる。この点に着目し、本発明の第2の局面は、本発明のENPP1阻害剤又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する医薬を提供する。本発明の医薬の好ましい治療標的は、ENPP1の高発現を認めるがん/悪性腫瘍であるが、骨粗鬆症等の治療への適用も想定される。トリプルネガティブ(エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、HER2陰性)に分類される乳がんや悪性度の高い神経膠芽種(グリオブラストーマ)でENPP1の高発現が認められていることと、実施例に示した実験の結果を踏まえれば、本発明は特に、トリプルネガティブ乳がんと神経膠腫(特に悪性度の高い神経膠芽腫(グリオブラストーマ))の治療に有効と考えられる。即ち、本発明の医薬の特に好ましい治療標的はトリプルネガティブ乳がんと神経膠腫(特に神経膠芽腫)であり、本発明の医薬は抗がん薬として利用される。トリプルネガティブ乳がんには、内分泌療法や抗HER2療法の効果は期待できず、また、概して予後が悪く、早期の再発も多い。また、神経膠腫は脳内の膠細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍であり、その多くは予後不良である。特に、悪性度の高い神経膠芽腫では外科的摘出、放射線・化学療法などが試みられるものの奏効率は芳しくない。本発明の医薬は、有効な治療法の創出が切望されるこれらの疾患ないし症例に対する新たな治療戦略を提供し得るものであり、その意義は大きい。尚、理論に拘泥する訳ではないが、典型的には、がんの治療に適用した場合に本発明の医薬は、標的のがん細胞に細胞死を誘導することによってその治療効果を発揮する。
本発明において用語「がん」は広義に解釈され、用語「悪性腫瘍」と互換的に使用される。また、病理学的に診断が確定される前の段階、すなわち腫瘍としての良性、悪性のどちらかが確定される前には、良性腫瘍、良性悪性境界病変、悪性腫瘍を総括的に含む場合もあり得る。一般に、がんはその発生の母体となった臓器の名、もしくは発生母組織の名で呼ばれ、主なものを列記すると、舌癌、歯肉癌、咽頭癌、上顎癌、喉頭癌、唾液腺癌、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆道癌、胆嚢癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、副腎癌、脳下垂体腫瘍、松果体腫瘍、子宮癌、卵巣癌、膣癌、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、尿道癌、網膜芽細胞腫、結膜癌、神経芽腫、神経膠腫(グリオーマ)、神経膠芽腫(グリオブラストーマ)、皮膚癌、髄芽種、白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などである。そして、さらに発生臓器の部位の特徴によって、上・中・下咽頭癌、上部・中部・下部食道癌、胃噴門癌、胃幽門癌、子宮頚癌、子宮体癌などと細分類されているが、これらが限定的ではなく本発明の「がん」としての記載に含まれる。
「抗がん薬」とは、標的の疾病ないし病態である、がんに対する治療的又は予防的効果を示す医薬のことをいう。治療的効果には、がんに特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、がんに特徴的な症状の再発発現(発症)を阻止ないし遅延することである。尚、がんに対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、抗がん薬に該当する。
本明細書における「薬理学的に許容される塩」の例として塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等との塩(無機酸塩)や、ギ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸等との塩(有機酸塩)を挙げることができる。これらの塩の調製は慣用手段によって行なうことができる。尚、以上の例示は、「薬理学的に許容される塩」が限定解釈されるために用いられるべきではない。即ち、「薬理学的に許容される塩」は、広義に解釈されるべきであり、各種の塩を含む用語である。
本発明の医薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、稀釈剤、被覆剤、糖衣剤、矯味矯臭剤、乳化・可溶化・分散剤、pH調製剤、等張剤、可溶化剤、香料、着色剤、溶解補助剤、生理食塩水など)を含有させることができる。製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、注射剤、外用剤、吸入剤、点鼻剤、点眼剤及び座剤である。本発明の医薬には、期待される治療効果(又は予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の医薬中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.01重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。
本発明の医薬の有効成分をプロドラッグの形態としてもよい。「プロドラッグ」とは、不活性又は活性の低い形態の化合物であり、生体に投与されると活性体に変換されて薬効を示すものをいう。例えば、バイオアベイラビリティ(bioavailability)の改善や副作用の軽減等を目的としてプロドラッグが利用される。プロドラッグとしては、活性体である本来の薬剤に対してアミノ基やスルフィド基などのスルホニル化、アシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化、炭酸化、エステル化、アミド化、ウレタン化等が施された化合物が挙げられる。
本発明の医薬はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。全身投与によらず、局所投与することにしてもよい。ドラッグデリバリーシステム(DDS)を利用して標的組織特異的に有効成分が送達されるように投与してもよい。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい適用対象はヒトである。
本発明の更なる局面は、本発明の医薬を使用した、がんに対する治療法(予防的処置も治療法の概念に含まれる)。本発明の治療法は、上記本発明の医薬(抗がん薬)を、がんを罹患する又はがんの兆候を認める患者(「がん患者」と総称する)に投与するステップを含む。医薬の投与量は一般に、患者の症状、年齢、性別、及び体重などによって変動し得るが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの設定においては、患者の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
ENPP1は、細胞外でのATPなどのヌクレオチドの代謝といった重要な生理機能を有する分子であり、また、骨代謝、2型糖尿病、がん等にも関与し、基礎研究や治療薬ないし治療法の開発の対象となる。本発明のENPP1阻害剤は、このような研究・開発におけるツール(研究用試薬)としても有用である。
大規模スクリーニングの結果、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジンを母核とした化合物に優れたENPP1阻害活性が認められた。そこで、当該化合物の類似化合物/誘導体を新たに合成し、その特性を評価することにした。
1.各種化合物の合成
Figure 2020015670
<第一工程>
カリウムtert-ブトキシド (561 mg, 5.0 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 (10 mL) にアセト酢酸エチル (化合物1, 638μL, 5.0 mmol) を0℃にて加え30分撹拌した。その溶液に、臭化ベンジル (598μL, 5.0 mmol) を添加し、その後4時間加熱還流した。放冷し室温に戻した後、酢酸エチルにて反応液を希釈し水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル) で精製することにより化合物2 (790 mg, 3.6 mmol, y. 72%) を無色オイルとして得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 1.20 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 2.19 (s, 3H), 3.16 (d, 2H, J = 7.2 Hz), 3.77 (t, 1H, J = 7.2 Hz), 4.10-4.18 (m, 2H), 7.14-7.29 (m, 5H).
<第二工程>
化合物2 (441 mg, 2.0 mmol) および3-アミノ-1,2,4-トリアゾール (168 mg, 2.0 mmol) の酢酸 (2 mL) 溶液を5時間加熱還流した後、室温に放冷した。生じた固体をろ取し、冷酢酸エチルで洗浄することにより化合物3 (350 mg, 1.5 mmol, y. 73%) を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.34 (s, 3H), 3.86 (s, 2H), 7.15-7.28 (m, 5H), 8.20 (s, 1H), 13.16 (brs, 1H).
<第三工程>
化合物3 (240 mg, 1.0 mmol) の塩化ホスホリル溶液 (1.5 mL) を2.5時間加熱還流し、放冷後溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をジクロロメタンに溶解させ水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル) で精製することにより化合物4 (148 mg, 0.57 mmol, y. 57%) を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.64 (s, 3H), 4.30 (s, 2H), 7.11 (d, 2H, J = 6.6 Hz), 7.25-7.29 (m, 1H), 7.29-7.34 (m, 2H), 8.50 (s, 1H).
<第四工程>
化合物4 (148 mg, 0.57 mmol) のエタノール溶液 (5 mL) に50%ジメチルアミン水溶液 (155μL, 1.72 mmol) を加え、室温で3時間撹拌した。減圧下溶媒を留去した後に得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル/メタノール) で精製することにより化合物5 (120 mg, 0.45 mmol, y. 78%) を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.50 (s, 3H), 3.10 (s, 6H), 4.18 (s, 2H), 7.08 (d, 2H, J = 7.3 Hz), 7.25 (dd, 1H, J = 7.3, 7.4 Hz), 7.31 (dd, 2H, J = 7.3, 7.4 Hz), 8.35 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.8, 32.3, 41.9, 111.0, 126.2, 127.6, 128.6, 139.3, 150.4, 154.0, 155.0, 166.0; HRMS (ESI+): calcd: 268.1562; found: 268.1560 [M+H]+ (- 0.69 ppm).
同様の方法にて化合物615も合成した。
Figure 2020015670
化合物6: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.37 (s, 3H), 3.03 (s, 6H), 4.16 (s, 2H), 7.19 (d, 2H, J = 8.3 Hz), 7.35 (d, 2H, J = 8.3 Hz), 8.45 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.7, 31.7, 41.9, 110.6, 128.5, 129.5, 130.8, 138.4, 150.5, 154.0, 155.1, 165.9; HRMS (ESI+): calcd: 302.1173; found: 302.1174 [M+H]+ (+ 0.42 ppm).
化合物7: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.31 (s, 3H), 3.00 (s, 6H), 4.12 (s, 2H), 6.97 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.21 (dd, 1H, J = 7.6, 7.7 Hz), 7.27 (dd, 1H, J = 7.6, 8.0 Hz), 7.50 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.44 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.5, 30.9, 41.8, 109.1, 127.6, 128.3, 128.7, 129.4, 133.1, 136.5, 150.6, 154.1, 155.2, 165.8; HRMS (ESI+): calcd: 302.1173; found: 302.1166 [M+H]+ (-2.01 ppm).
化合物8: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.35 (s, 3H), 3.02 (s, 6H), 4.17 (s, 2H), 7.09 (d, 1H, J = 7.4 Hz), 7.24-7.33 (m, 3H), 8.43 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.8, 32.0, 41.9, 110.3, 126.3, 126.3, 127.6, 130.4, 133.3, 142.1, 150.5, 154.0, 155.2, 165.8; HRMS (ESI+): calcd: 302.1173; found: 302.1171 [M+H]+ (-0.54 ppm).
化合物9: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.37 (s, 3H), 3.04 (s, 6H), 4.20 (s, 2H), 7.00 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.02-7.07 (m, 2H), 7.32-7.38 (m, 1H), 8.45 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.8, 32.1 (J = 1.4 Hz), 41.9, 110.5, 113.1 (J = 21 Hz), 114.5 (J = 22 Hz), 123.7 (J = 2.8 Hz), 130.4 (J = 8.6 Hz), 142.5 (J = 7.2Hz), 150.5, 154.0, 155.1, 162.4 (J = 242 Hz), 165.8; HRMS (ESI+): calcd: 308.1287; found: 308.1308 [M+Na]+ (+6.53 ppm).
化合物10: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.26 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 3.05 (s, 6H), 4.14 (s, 2H), 6.92 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 6.98 (s, 1H), 7.02 (d, 1H, J = 7.0 Hz), 7.19 (dd, 1H, J = 7.0, 7.3 Hz), 8.67 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 21.0, 23.8, 32.3, 41.9, 110.9, 124.7, 126.9, 128.2, 128.5, 137.8, 139.2, 150.4, 154.0, 155.1, 166.0; HRMS (ESI+): calcd: 282.1719; found: 282.1724 [M+H]+ (+1.96 ppm).
化合物11: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.39 (s, 3H), 3.07 (s, 6H), 3.71 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 4.09 (s, 2H), 6.55 (dd, 1H, J = 1.8, 8.3 Hz), 6.82 (d, 1H, J = 1.8 Hz), 6.84 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.67 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.7, 31.9, 42.0, 55.4, 55.5, 111.2, 111.7, 111.9, 119.1, 131.4, 147.2, 148.9, 150.4, 154.0, 155.0, 166.1; HRMS (ESI+): calcd: 350.1593; found: 350.1593 [M+Na]+ (- 0.12 ppm).
化合物12: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.37 (s, 3H), 3.02 (s, 6H), 4.32 (s, 2H), 7.46 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 8.16 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 8.46 (s, 1H); HRMS (ESI+): calcd: 313.1413; found: 313.1417 [M+H]+ (+ 1.27 ppm).
化合物13: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.39 (s, 3H), 3.03 (s, 6H), 4.32 (s, 2H), 7.57-7.63 (m, 2H), 8.07 (s, 1H), 8.09 (d, 1H, J = 7.6 Hz), , 8.46 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.9, 32.0, 41.9, 110.1, 121.4, 122.5, 130.1, 134.3, 141.9, 148.0, 150.7, 154.1, 155.2, 165.8; HRMS (ESI+): calcd: 313.1413; found: 313.1415 [M+H]+ (+ 0.78 ppm).
化合物14: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.33 (s, 3H), 2.98 (s, 6H), 4.41 (s, 2H), 7.25 (d, 1H, J = 7.9 Hz), 7.52 (dd, 1H, J = 7.0, 7.2 Hz), 7.60 (ddd, 1H, J = 1.2, 7.6, 7.6 Hz), 8.05 (dd, 1H, J = 1.2, 8.3 Hz), 8.46 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.6, 29.8, 41.7, 109.0, 124.8, 128.0, 129.8, 133.6, 133.7, 149.0, 150.7, 154.1, 155.3, 165.8; HRMS (ESI+): calcd: 313.1413; found: 313.1415 [M+H]+ (+ 0.78 ppm).
化合物15: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.38 (s, 3H), 3.05 (s, 6H), 3.71 (s, 3H), 4.15 (s, 2H), 6.68 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 6.74 (s, 1H), 6.79 (dd, 1H, J = 2.2, 8.2 Hz), 7.21 (dd, 1H, J = 7.7, 7.8 Hz), 8.45 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 28.9, 37.5, 47.1, 60.1, 116.0, 116.7, 118.7, 124.9, 134.9, 146.1, 155.6, 159.2, 160.3, 164.7, 171.2; MS (ESI+): 298 [M+H]+.
Figure 2020015670
<第一工程>
化合物12 (140 mg, 0.4 mmol) のジクロロメタン/メタノール (6 mL/6 mL) 溶液に10%パラジウムカーボンを加え、水素雰囲気下で2.5時間撹拌した。反応液をセライト濾過した後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ジクロロメタン/メタノール) で精製することにより化合物16 (71 mg, 0.25 mmol, y. 56%) を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.38 (s, 3H), 3.05 (s, 6H), 3.97 (s, 2H), 4.91 (s, 2H), 6.49 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 6.76 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 8.43 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.7, 31.4, 41.9, 111.8, 114.2, 125.6, 128.0, 146.9, 150.1, 153.9, 155.0, 166.1; HRMS (ESI+): calcd: 283.1671; found: 283.1674 [M+H]+ (+ 1.13 ppm).
<第二工程>
化合物16 (71 mg, 0.25 mmol) およびジイソプロピルエチルアミン (66μL, 0.38 mmol) のジクロロメタン (2 mL) 溶液に無水酢酸 (29μL, 0.30 mmol) を加え、室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去した後に得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ジクロロメタン/メタノール) で精製することにより化合物17 (81 mg, 0.25 mmol, y. 99%) を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.20 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 3.04 (s, 6H), 4.11 (s, 2H), 7.06 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.50 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 8.44 (s, 1H), 9.89 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.8, 23.9, 31.8, 41.9, 111.2, 1119.3, 127.8, 133.6, 137.5, 150.3, 154.0, 155.0, 166.0, 168.1; HRMS (ESI+): calcd: 325.1777; found: 325.1772 [M+H]+ (- 1.47 ppm).
同様の方法にて化合物18及び化合物19も合成した。
Figure 2020015670
化合物18: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.39 (s, 3H), 3.07 (s, 6H), 4.02 (s, 2H), 5.00 (s, 2H), 6.26 (s, 1H), 6.31 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 6.38 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 6.94 (dd, 1H, J = 7.6, 8.3 Hz), 8.44 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.7, 32.3, 41.9, 111.1, 111.8, 112.7, 115.3, 129.1, 139.7, 149.0, 150.2, 154.0, 155.0, 166.2; HRMS (ESI+): calcd: 283.1671; found: 283.1673 [M+H]+ (+ 0.64 ppm).
化合物19: 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 1.97 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 3.05 (s, 6H), 4.14 (s, 2H), 6.89 (d, 1H, J = 7.4 Hz), 7.20 (s, 1H), 7.23 (dd, 1H, J = 7.4, 8.6 Hz), 7.51 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 8.46 (s, 1H), 9.82 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.8, 24.0, 32.3, 41.9, 110.8, 116.7, 117.6, 122.6, 129.0, 139.7, 139.8, 150.4, 154.1, 155.0, 166.1, 168.3; HRMS (ESI+): calcd: 325.1777; found: 325.1776 [M+H]+ (- 0.37 ppm).
化合物20は化合物15を用いて以下のように合成した。
Figure 2020015670
化合物15 (255 mg, 0.86 mmol) のジクロロメタン (5 mL) 溶液に三臭化ホウ素 (943μL, 0.94 mmol) を0℃にて加え、0℃で30分、さらに室温で24時間撹拌した。生じた沈殿をろ取しジクロロメタンで洗浄することにより化合物20 (160 mg, 0.56 mmol, y. 66%) を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 2.39 (s, 3H), 3.07 (s, 6H), 4.09 (s, 2H), 6.50 (s, 1H), 6.55-6.62 (m, 2H), 7.09 (dd, 1H, J = 7.7, 7.8 Hz), 8.50 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): 23.5, 32.2, 42.1, 111.0, 113.3, 114.4, 118.2, 129.6, 140.5, 150.7, 152.3, 153.6, 157.7, 166.3; MS (ESI+): 284 [M+H]+.
2.ENPP1阻害活性の評価
2−1.方法(TG-mAMPを基質として用いたENPP1阻害活性の測定)
リコンビナントENPP1タンパク質はマウスENPP1を強制発現させたHEK293細胞の培養上清に溶解した分を回収することにより得た。その上清中のタンパク質量はBCA法により定量し、濃度を決定した。素反応は全て100 mM Tris-HCl (pH 9.0), 100 mM NaCl, 5 mM MgCl2, 0.05% Triton-X100の組成にて調製した緩衝液をアッセイバッファーとして用いて行った。ENPP1蛍光基質であるTG-mAMPをアッセイバッファーにて溶解させ1 mMストックソリューションを調製し、さらにアッセイバッファーにて2μMまで希釈した。また、被験化合物の10 mMストックソリューションをDMSOにて調製し、希釈系列を作成し終濃度の4倍濃度までアッセイバッファーにて希釈した (120, 40, 12, 4, 1.2, 0.4, 0.12, 0.04μM, 2% DMSO)。さらに、ENPP1酵素溶液をアッセイバッファーにて希釈し、7.2 nM ENPP1酵素溶液を調製した。
96穴プレート (Corning 96 well half-area microplate, flat-bottom, black) に2μM TG-mAMP (20μL) および各濃度の被験化合物 (10μL) を加え、最後に7.2 nM ENPP1 (10μL) を加えた後、37℃にて1時間インキュベーションした。反応後、プレートリーダーにて蛍光強度測定を行った (Ex = 485/14 nm, Em = 535/25 nm)。それぞれの被験化合物のIC50値は、測定データを基にGraphPad Prism6を用いて算出した。
2−2.結果
化合物520のENPP1阻害活性は表1に示すとおりであった。
Figure 2020015670
化合物520のENPP1阻害活性 (IC50)
3.ENPP1阻害選択性の評価
3−1.方法
(1)ENPP1阻害選択性の測定
チミジン5’-一リン酸 p-ニトロフェニルエステル (pNP-TMP, sigma) およびO-(4-ニトロフェニルホスホリル)コリン (pNPPC, simga) をそれぞれアッセイバッファーに溶解させ10 mMのストックソリューションを調製し、さらに希釈することで200μMの溶液をそれぞれ調製した。また、被験化合物の10 mMストックソリューションをDMSOにて調製し、アッセイバッファーにて希釈することで200μM (2% DMSO) のストックソリューションを調製した。さらに、ENPP1~ENPP7酵素溶液をアッセイバッファーにて希釈し、7.2 nM ENPP1〜7酵素溶液を調製した。
96穴プレート (IWAKI) に200μM pNP-TMPまたはpNPPC (50μL, ENPP1〜5ではpNP-TMPを、ENPP6及びENPP 7ではpNPPCを基質として用いた) および被験化合物 (25μL) を加え、最後に7.2 nM ENPP1〜7 (10μL) を加えた後、37℃にて1時間インキュベーションした。反応後、プレートリーダーにて405 nmの吸光度測定を行った。測定データを基に各被験化合物のENPP1〜7への阻害率を算出した。
(2)ATPを基質として用いたENPP1阻害活性の測定
ATPを基質として用いた場合のENPP1阻害活性はピロリン酸の産生阻害活性を指標に算出した。900μM ATP、終濃度の3倍濃度までアッセイバッファーにて希釈した被験化合物 (150, 45, 15, 4.5, 1.5, 0.45, 0.15, 0.045μM. 1.5% DMSO)、および72 nM ENPP1溶液を調製した。
96穴プレート (IWAKI) に900μM ATP (10μL) および各濃度の被験化合物 (10μL) を加え、最後に72 nM ENPP1 (10μL) を加えた後、37℃にて1時間インキュベーションした。モリブデン試薬 (20 mM七モリブデン酸六アンモニウム、四水和物の2.5 mM硫酸水溶液、30μL) およびエイコノゲン試薬 (1.4 mM 1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸、2.8 mM 亜硫酸ナトリウム、200 mM 亜硫酸水素ナトリウム、380 mM 2-メルカプトエタノール in MilliQ, 42μL) を添加・混合し30分間室温でインキュベーションした後、プレートリーダーにて570 nmの吸光度測定を行った。それぞれの被験化合物のIC50値は、測定データを基にGraphPad Prism6を用いて算出した。
3−2.結果
ENPP1阻害活性の強い化合物51618はENPPファミリーの間でENPP1に対して高い選択性を示した(図1)。また、これらの化合物はATPを基質として用いても強い阻害活性を示し、その阻害活性は既存の阻害剤よりも強いことが明らかとなった(図2、6)。
4.がん細胞に対する増殖阻害活性の評価
4−1.方法
乳がん細胞株 (MDA-MB-231, Hs578T, MCF7, ZR-75-1, SK-BR-3, HCC1954)、脳腫瘍細胞株 (C6, SK-N-SH)、およびHEK293細胞をそれぞれ96穴プレート (IWAKI, poly-L-lysine coated) に1.0 × 104細胞 (100μL) 播種し24時間、37℃で培養した。1 mM (10% DMSO) の被験化合物を添加し72時間37℃で培養した後、CCK-8試薬 (10μL) を添加しさらに2時間培養後450 nmの吸光度測定を行った。測定データを基に各被験化合物の各細胞株に対する増殖阻害活性を算出した。
4−2.結果
化合物51618はトリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231細胞およびラットグリオーマ細胞株C6細胞で増殖阻害活性を示すことが明らかとなった(図3)。これらの細胞ではENPP1の発現レベル高いことが報告されている。一方、ENPP1の発現レベルが低いそれら以外の乳がん細胞株、脳腫瘍細胞株およびHEK293細胞ではほとんど増殖阻害活性を示さなかった。
5.細胞死の観察
5−1.方法
MDA-MB-231細胞を35 mm ガラスボトムディッシュに3.0× 105細胞 (2 mL) 播種し24時間、37℃で培養した。1 mM (10% DMSO) の被験化合物を添加し48時間37℃で培養した後、D-PBSにて細胞を二回洗浄した。1 mL D-PBSに置換し1 mg/mLプロピジウムヨージド (PI, 5μL) を添加し30分間37℃で培養した後、共焦点蛍光顕微鏡 (オリンパス社、IX-71) にて細胞を観察した。
また、PIの代わりに1 mM caspase3/7 green (2μL) を添加し60分間37℃で培養した後、共焦点蛍光顕微鏡 (オリンパス社、IX-71) にて細胞を観察することにより、アポトーシスのイメージングを行った。
5−2.結果
化合物51618をMDA-MB-231細胞に処理することで、継時的に細胞増殖を阻害できることが分かった(図4)。その増殖阻害作用は細胞死(特にアポトーシス)を誘導することによると考えられる(図5)。
本発明のENPP1阻害剤はENPP1に対する高い阻害活性及び選択性を発揮し得る。トリプルネガティブ乳がんや悪性度の高い神経膠芽種の治療に本発明のENPP1阻害剤が利用ないし活用されることが期待される。また、ENPP1を対象とした基礎研究、ENPP1が関与するその他の疾患(骨疾患、2型糖尿病など)の治療薬ないし治療法の開発における、本発明の利用も想定される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (10)

  1. 以下の化学式1で表されるENPP1(Ecto-Nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1)阻害剤:
    Figure 2020015670
    但し、式中のR1は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセトアミド基、シアノ基、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、又は置換もしくは非置換のアルキニルである。
  2. 前記式中のR1が水素原子、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセトアミド基、メチル基又はメトキシ基である、請求項1に記載のENPP1阻害剤。
  3. 前記式中のR1が水素原子、4-クロロ、2-クロロ、3-クロロ、3-フルオロ、3-メチル、3,4−ジメトキシ、4-ニトロ、3-ニトロ、2-ニトロ、4-アミノ、4-アセトアミド、3-アミノ、3-アセトアミド又は3-ヒドロキシである、請求項1に記載のENPP1阻害剤。
  4. 以下の化学式2〜5のいずれかで表される、請求項1に記載のENPP1阻害剤。
    Figure 2020015670
    Figure 2020015670
    Figure 2020015670
    Figure 2020015670
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のENPP1阻害剤又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する医薬。
  6. ENPP1の高発現を認めるがんの治療に使用される、請求項5に記載の医薬。
  7. トリプルネガティブに分類される乳がん又は神経膠腫の治療に使用される、請求項5に記載の医薬。
  8. 標的のがん細胞に細胞死を誘導することにより治療効果を発揮する、請求項6又は7に記載の医薬。
  9. がん患者に対して、請求項6に記載の医薬を治療上有効量投与するステップを含む、がんの治療法。
  10. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のENPP1阻害剤を含む研究用試薬。
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